(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】熱気球
(51)【国際特許分類】
B64B 1/62 20060101AFI20240515BHJP
B64B 1/60 20060101ALI20240515BHJP
B64U 10/30 20230101ALI20240515BHJP
B64U 50/31 20230101ALI20240515BHJP
B64U 50/36 20230101ALI20240515BHJP
【FI】
B64B1/62
B64B1/60
B64U10/30
B64U50/31
B64U50/36
(21)【出願番号】P 2023200536
(22)【出願日】2023-11-28
【審査請求日】2023-12-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522355695
【氏名又は名称】株式会社T-Betz
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】谷口 伸幸
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-217077(JP,A)
【文献】特開平06-227494(JP,A)
【文献】特開平06-024389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64B 1/62
B64B 1/60
B64U 10/30
B64U 50/31
B64U 50/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から注入又は排気可能な空気を加温して浮力を生ずる熱気球であって、
外気と接する第1の球皮と、前記第1の球皮の内側に位置し、前記第1の球皮との間に
断熱性を有するガスが充填された外空部を形成し、内部に内空部を形成する第2の球皮と、を備える気嚢と、
自然エネルギーによって発電する発電装置と、
前記第2の球皮内の前記内空部に配置され、
前記浮力を生ずるために、前記発電装置で発電された電力によって前記内空部内の空気を加温する加温装置と、
前記内空部の空気と外気とを区画するキャップと、
を備える
熱気球。
【請求項2】
前記外空部は、前記内空部を包含する、
請求項1に記載の
熱気球。
【請求項3】
リング状部材をさらに備え、
前記第1の球皮の下端部は、前記リング状部材の外周部に気密に固定されており、
前記第2の球皮の下端部は、前記リング状部材の内周部に気密に固定されており、
前記キャップは、前記リング状部材の中心穴を塞ぐように配置されている、
請求項1に記載の
熱気球。
【請求項4】
前記発電装置は、風力によって発電する風力発電装置を含む、
請求項1に記載の
熱気球。
【請求項5】
前記発電装置は、太陽光によって発電する太陽光発電装置を含む、
請求項1に記載の
熱気球。
【請求項6】
前記第1の球皮と前記第2の球皮とを接続する連結部を更に有する、
請求項1に記載の
熱気球。
【請求項7】
前記内空部の圧力を調整する圧力調整手段を更に有する、
請求項1に記載の
熱気球。
【請求項8】
前記加温装置は、吸い込んだ空気を加温し、加温した空気を上方に放出する、
請求項1に記載の
熱気球。
【請求項9】
前記
熱気球に推進力を与える推進機構と、通信機器または観測機器とを更に有する、
請求項1から8のいずれか1項に記載の
熱気球。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱気球に関する。
【背景技術】
【0002】
加温された空気を利用して浮遊する気球が知られている。例えば、特許文献1には、バーナの火災噴射を利用して気嚢内の空気を加温して浮力を得る熱気球が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の熱気球では、気嚢の延焼を防止すると共に酸素を供給するため、ガスバーナは、気嚢の下部に設置されている。このため、飛行状態では、上空の低温の空気を加温する必要がある。このため、エネルギー効率が低い。
また、ガスバーナを利用した熱気球では、燃料がなくなったときには、一旦、着陸し、燃料を充填する必要がある。このため、飛行期間が相対的に短く、長時間上空に留まることが困難であり、結果的に、エネルギー効率が低い。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、エネルギー効率の高い熱気球を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る熱気球は、
外部から注入又は排気可能な空気を加温して浮力を生ずる熱気球であって、
外気と接する第1の球皮と、前記第1の球皮の内側に位置し、前記第1の球皮との間に断熱性を有するガスが充填された外空部を形成し、内部に内空部を形成する第2の球皮と、を備える気嚢と、
自然エネルギーによって発電する発電装置と、
前記第2の球皮内の前記内空部に配置され、前記浮力を生ずるために、前記発電装置で発電された電力によって前記内空部内の空気を加温する加温装置と、
前記内空部の空気と外気とを区画するキャップと、
を備える。
【0007】
前記外空部は、前記内空部を包含してもよい。
【0008】
例えば、リング状部材をさらに備え、前記第1の球皮の下端部は、前記リング状部材の外周部に気密に固定されており、前記第2の球皮の下端部は、前記リング状部材の内周部に気密に固定されており、前記キャップは、前記リング状部材の中心穴を塞ぐように配置されている、ように構成されてもよい。
【0009】
前記発電装置は、風力によって発電する風力発電装置を含んでもよい。
【0010】
前記発電装置は、太陽光によって発電する太陽光発電装置を含んでもよい。
【0011】
前記第1の球皮と前記第2の球皮とを接続する連結部を更に有してもよい。
【0012】
前記内空部の圧力を調整する圧力調整手段を更に有してもよい。
【0013】
前記加温装置は、吸い込んだ空気を加温し、加温した空気を上方に放出してもよい。
【0014】
前記熱気球に推進力を与える推進機構と、通信機器または観測機器とを更に有してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、熱気球自体が発電装置を備え、発電した電力を加温装置に供給する。発電装置は、自然エネルギーにより発電するので、上空に留まったままでも、発電が可能である。このため、熱気球が、無着陸で長期間上空に留まることが可能となる。また、気嚢が内空部と内空部を囲む外空部とを備えるので、外空部が一種の断熱部材として機能し、内空部のガスが冷却されにくく、内空部の温度を高い温度に維持しやすくなる。このため、エネルギー効率が高い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る気球の飛行状態での全体図である。
【
図2】
図1に示す気球に搭載される制御装置の機能的構成を示す図である。
【
図3】
図2に示す制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】
図1に示す気球が巡行飛行している状態で、制御装置が実行する温度制御処理のフローチャートである。
【
図5A】本発明の実施の形態1に係る気球の飛行までの手順を説明するための図である。
【
図5B】本発明の実施の形態1に係る気球の飛行までの手順を説明するための図である。
【
図5C】本発明の実施の形態1に係る気球の飛行までの手順を説明するための図である。
【
図6】本発明の実施の形態1に係る気球の変形例を説明するための図である。
【
図7】本発明の実施の形態2に係る気球の飛行状態での全体図である。
【
図8】
図7に示す気球が巡行飛行している状態で、制御装置が実行する気圧制御処理のフローチャートである。
【
図9】本発明の実施の形態3に係る気球の飛行状態での全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態に係る気球とその動作について図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
実施の形態1に係る気球について図面を参照して説明する。
図1に示すように、実施の形態1に係る気球1は、飛行可能状態では、気嚢BA1と、気嚢BA1に吊下部材21により吊り下げられたゴンドラ部BA2と、を備える。
【0018】
気嚢BA1は、全体として、その上部が略半球形状を有し、下部に向けて略円錐形状を有し、下端部に開口部を有する。
気嚢BA1は、外皮2と、外皮2内に配置された内皮3と、外皮2と内皮3とを連結する連結部6と、断熱キャップ7と、外皮2と内皮3の下端に位置するリング形状のリングキャップ8と、電気ヒータ10と、を備える。
【0019】
外皮2は、気嚢BA1の外観を形成する球皮であり、気嚢BA1の外気と内気層とを区画する。内皮3は、外皮2よりもサイズが小さい球皮であり、外皮2に包含されている。外皮2と内皮3とによって、気嚢BA1内の気体層は二重に形成されている。具体的には、気嚢BA1は、外皮2と内皮3との間に外空部4を有し、内皮3の内側に内空部5を有する。外空部4は、内空部5を包み込むように配置及び形成される。外空部4は、一種の断熱材として機能し、内空部5の熱が外気に伝達して、内空部5内の温度が低下するのを抑える機能を有する。外皮2と内皮3は、例えば、フッ素樹脂がコーティングされたガラス繊維から形成される。このため、気嚢BA1の断熱性は高い。本実施の形態では、外空部4に、例えばアルゴンガスが封入されている。このため、気嚢BA1の断熱性は更に高められる。なお、外皮2は、本発明の「第1の球皮」の一例であり、内皮3は、本発明の「第2の球皮」の一例である。
【0020】
気嚢BA1は、外皮2と内皮3とを繋ぐ複数の連結部6を備える。連結部6は、通気性で帯状の布等から構成され、一方の端部が、外皮2の内面に固定され、他方の端部が内皮3の外面に固定されている。連結部6によって、外皮2と内皮3との相対的な位置関係が維持され、また、外皮2と内皮3の膨張時の形状が保持されるとともに、外空部4の領域が保たれる。外皮2と内皮3は、下端部に開口部を有する。
【0021】
リングキャップ8は、リング状の帯状部材(リング状部材)から構成され、外皮2と内皮3の下端の開口部に気密に取り付けられる。これにより、外皮2と内皮3の下部の形状が保持されると共に外空部4が気密状態に維持される。リングキャップ8は、外部から外空部4にアルゴンガスを注入又は排気するための継手jbを備える。リングキャップ8の中央部には、穴(開口)が形成されている。外皮2の下端部は、リングキャップ8の外周に沿って気密に取り付けられている。また、内皮3の下端部は、リングキャップ8の内周に沿って気密に取り付けられている。リングキャップ8の中心穴は、断熱キャップ7によって塞がれている。
【0022】
断熱キャップ7は、断熱性の材料から形成され、気嚢BA1の下端に、内皮3の開口部を塞ぐ形で取り付けられている。断熱キャップ7は、気嚢BA1の内空部5の内気と外気とを区画し、気嚢BA1内と気嚢BA1外との熱の移動を抑制する役割を担う。断熱キャップ7には、配線EL、SLを通す孔haが設けられている。配線(電源線)ELは、内空部5に配置されている電気ヒータ10と、ゴンドラ部BA2に配置されるバッテリー22とを接続する。また、配線(信号線)SLは、制御装置30と、電気ヒータ10,バッテリー22,及び高度測定機器60を接続する。また、信号線SLは、制御装置30と高度測定機器60及び監視装置90を接続する。また、断熱キャップ7には、外部から内空部5に空気を注入又は排気するための継手jaを備える。継手jaは、圧力弁の機能を備え、内空部5内の圧力Pinが、外気の圧力Poutよりも一定の割合α以上だけ高くなった場合{Pin≧Pout*(1.0+α)}に、内空部5内の空気を外気に排気する。なお、αは1より小さい正の値であり、例えば、0.5~0.05程度である。継手jaは、内空部5の圧力を調整する圧力調整手段の一例である。
【0023】
電気ヒータ10は、固定部材11によって断熱キャップ7に固定されている。固定部材11は、例えば、フレーム状に構成され、電気ヒータ10と断熱キャップ7の間を空気が流通可能なように、電気ヒータ10と断熱キャップ7の距離を維持する。
【0024】
電気ヒータ10は、例えば、電動セラミックヒータ、赤外線カーボンヒータ等を備えるファンヒータから構成される。電気ヒータ10は、自身の下面に配置された吸い込み口から吸い込んだ空気を加温し、加温した空気を内空部5の上方へ向けて放出する。電気ヒータ10は、内空部5の空気の温度を200℃程度に維持できる加温能力を有する。電気ヒータ10は、本発明の「加温装置」の一例である。
【0025】
一点鎖線の矢印AFで示すように、電気ヒータ10は、内空部5の下端部の空気を吸い込んで加温し、内空部5に放出する。放出された加温空気は、内空部5内を上昇し、内皮3の近傍で、外空部4の内皮3との温度差により冷却され、降下する。降下した空気は、電気ヒータ10に吸い込まれて、加温され、放出される。このようにして、空気は、内空部5を循環する。気嚢BA1は、外皮2と内皮3を有する二重構造のため、一重構造よりも断熱効果が得られる。また、外空部4は、アルゴンガスで満たされているので、更なる断熱効果が得られる。また、低温の外気を温めるガス燃焼の構成と比較して、電気ヒータ10は、気嚢BA1内で循環する空気を温めるので、低い消費エネルギーで加温できる。
【0026】
ゴンドラ部BA2は、ゴンドラ20を備える。ゴンドラ20は、気嚢BA1の下端部に、吊下部材21により、吊り下げられている。本実施の形態では、ゴンドラ20の形状は、直方体状の箱形形状を有する。ゴンドラ20の底面外側には、風力発電装置50が取り付けられている。また、ゴンドラ20は、バッテリー22と、高度測定機器60と、制御装置30とを搭載する。
【0027】
風力発電装置50は、自然エネルギーの一つである風力によって、電力を発電する装置である。風力発電装置50は、風力によるタービンの回転により発電する発電機を備え、タービンの回転を電力に変換する。風力発電装置50は、少なくとも水平方向の風成分により発電することが望ましい。また、風力発電装置50は、水平方向の様々な方向からの風により発電する水平面内で無指向性であることが望ましい。風力発電装置50の発電能力は、気嚢BA1のサイズと予定飛行高度に応じて選定されるが、巡行状態で、風力により、電気ヒータ10の消費電力を満たす発電能力を有することが望ましい。発電機で発電された電力は、バッテリー22に蓄電される。なお、発電機とタービンの回転部との間に、増速機が設けられてもよい。風力発電装置50は、例えば、特許第7002797号に開示された発電装置であってもよい。特許第7002797号に開示された発電装置は、様々な方向からの風を高い効率で電力に変換可能であり、本願発明の発電装置として有効である。
【0028】
バッテリー22は、風力発電装置50に図示せぬ配線で接続され、風力発電装置50が発電した電力を蓄電する。バッテリー22の出力端は配線(電力線)ELを介して電気ヒータ10に接続され、電力を供給する。また、バッテリー22は、制御装置30及び高度測定機器60にも動作用電力を供給する。
【0029】
高度測定機器60は、気球1の飛行高度を測定する。本実施の形態では、高度測定機器60は、GPS(Global Positioning Sensor)を含む。なお、飛行高度の測定は、GPSを利用した測定方法に限定されず、他の任意の種類の測定方法であってもよい。
【0030】
制御装置30は、気球1を制御する装置であり、
図2に示すように、気球1の制御に必要な情報を取得する取得部31と、制御装置30の全体を制御する制御部32と、通信インタフェースの役割を担う通信部33と、制御に必要なデータを記憶する記憶部34とを備える。
【0031】
取得部31は、高度測定機器60によって測定された飛行高度を取得する。制御部32は、取得部31によって取得した飛行高度に基づいて、電気ヒータ10のONとOFFを制御する処理を実行する。本実施の形態では、この制御処理を「温度制御処理」と呼ぶ。詳しくは後述する。飛行高度に基づいた温度制御によって、浮力が制御されるので、バラストが不要である。通信部33は、電気ヒータ10と、高度測定機器60と無線通信する。また、通信部33は、地上の監視装置90と無線通信する。
【0032】
記憶部34は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などのメモリで構成されており、制御に必要なプログラムとデータを記憶する。具体的には、記憶部34は、後述の温度制御処理を実行する制御プログラム、即ち、温度制御プログラムを記憶している。また、記憶部34は、各種閾値を保存している。
【0033】
制御装置30は、例えば、パーソナルコンピュータにより実現され、
図3に例示するように、バス1000を介して互いに接続された、温度制御プログラムを実行するプロセッサ1001と、主記憶領域として機能するメモリ1002と、温度制御プログラムを記憶する二次記憶装置1003と、信号を入出力する入出力(I/O)(Input/Output)インタフェース1004と、通信を行う通信モジュール1005と、を備える。
【0034】
プロセッサ1001は、例えばCPU(Central Processing Unit:中央算出装置)を備える。プロセッサ1001が、二次記憶装置1003に記憶された温度制御プログラムをメモリ1002に読み込んで実行する。
【0035】
メモリ1002は、例えば、RAMにより構成される主記憶装置を含む。メモリ1002は、プロセッサ1001のワークメモリとして機能し、プロセッサ1001が二次記憶装置1003から読み込んだ温度制御プログラムを記憶する。
【0036】
二次記憶装置1003は、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等から構成される。二次記憶装置1003は、プロセッサ1001が実行する温度制御プログラム、固定データ等を記憶する。
【0037】
I/Oインタフェース1004は、USB(Universal Serial Bus)ポートインタフェース等から構成される。I/Oインタフェース1004は、例えば、プロセッサ1001からの制御信号を電気ヒータ10とバッテリー22に送信し、高度測定機器60からの測定信号をプロセッサ1001に伝達する。
【0038】
通信モジュール1005は、ネットワークインタフェース等から構成される。通信モジュール1005は、例えば、プロセッサ1001と地上の監視装置90との間の通信を仲介する。
【0039】
図2および
図3を参照しながら説明すると、取得部31は、例えば、プロセッサ1001とI/Oインタフェース1004から構成される。制御部32は、例えば、プロセッサ1001から構成される。また、通信部33は、例えば、通信モジュール1005から構成される。また、記憶部34は、メモリ1002と二次記憶装置1003から構成される。
【0040】
次に、上記構成を有する気球1の動作を説明する。
気球1は、風力発電装置50で発電された電力を消費して、無補給で長期間上空に留まる能力を有する。この動作を説明する。
【0041】
気球1は、地上にあって飛行準備状態では、外空部4にアルゴンガスが充填され、内空部5に例えば、40℃~80℃程度に加温された空気が充填された状態にある。地上から上昇する場合、電気ヒータ10を稼働させる。これにより、内空部5の空気の温度がさらに上昇する。空気の温度の上昇に伴い、内空部5内の圧力が上昇し、継手jaを介して、内空部5の空気が外気に排気される。これにより、気嚢BA1の浮力が増大し、気球1は上昇を開始する。
【0042】
上昇に伴い、気球1の外気圧は徐々に低下する。また、電気ヒータ10の稼働によって、内空部5の温度はさらに上昇する。外気圧が内空部5内よりも一定の割合以上低くなると、継手jaを介して、内空部5の空気が外気に排気される。これにより、気嚢BA1に浮力が生じ、気球1はさらに上昇する。
【0043】
上空では、高度によるが、地上の2-4倍の風速で風が吹いている。この風に流されて気球1が移動する。このため、風速と気球1の移動速度との差に相当する風速の風が風力発電装置50に常時吹き付け、風力発電装置50は、昼夜、天候の差にかかわらず発電を継続し、電力をバッテリー22に蓄電する。
【0044】
電気ヒータ10は、制御装置30の制御に従って、バッテリー22に蓄電された電力を消費し、予め設定された飛行高度範囲内で飛行するように、内空部5の空気を加温しあるいは加温を停止する。気嚢BA1内の空気と外気との流通がなく、気嚢BA1内の空気層と、アルゴンガスが封入された断熱層との2層構造であることから、気嚢BA1内の空気の温度は低下しにくい。また、電気ヒータ10は、内空部5の比較的高温の空気を加温する。このため、気球1は、高エネルギー効率で、飛行状態を維持できる。また、飛行中でも風力発電装置50が常時発電を継続し、バッテリー22に蓄電する。電気ヒータ10は、バッテリー22の蓄電電力を消費して加温する。このため、気球1は地上に降りることなく、飛行を継続することができる。
【0045】
次に、気球1の上記飛行動作時において、気嚢BA1内の空気の温度を制御する「温度制御処理」について説明する。上述したように、本実施の形態における「温度制御処理」は、飛行高度に基づいて、電気ヒータ10のON、OFFを制御する処理である。この温度制御処理によって、気球1の高度が、目標とする飛行高度範囲内に維持される。ユーザが、制御装置30を起動すると、制御部32は、温度制御プログラムを実行し、
図4に示す温度制御処理を開始する。また、ユーザは、制御装置30に、気球1の巡行飛行時の予定高度範囲を設定する。
【0046】
図4に示す温度制御処理を開始すると、まず、取得部31は、高度測定機器60から、気球1の飛行高度を取得する(ステップS101)。制御部32は、気球1の飛行高度が、ユーザにより設定された高度範囲の下限値に相当する第1の閾値よりも低いか否かを判定する(ステップS102)。気球1の飛行高度が第1の閾値よりも低いと判定された場合(ステップS102:Yes)、気球1の飛行高度は、目標とする飛行高度範囲に至っていない。このため、制御部32は、電気ヒータ10を稼働させて、内空部5の空気を加温する(ステップS103)。これにより、気球1の高度が上昇する。
【0047】
一方、気球1の飛行高度が第1の閾値以上と判定された場合(ステップS102:No)、制御部32は、気球1の飛行高度は、第2の閾値以下か否かを判定する(ステップS104)。第2の閾値は、第1の閾値よりも大きく、気球1の目標高度範囲の上限に相当する。気球1の飛行高度が、第2の閾値以下であると判定された場合(ステップS104:Yes)、制御部32は、処理をステップS106に移す。気球1の高度が、第1の閾値以上であって、かつ、第2の閾値以下の場合、気球1は、目標とする飛行高度範囲内の高度で飛行している。このため、制御部32は、電気ヒータ10への制御を行わず、処理をステップS106に移す。
【0048】
気球1の飛行高度が、第2の閾値よりも高いと判定された場合(ステップS104:No)、気球1の飛行高度は、目標飛行高度範囲を超えている。このため、制御部32は、電気ヒータ10を停止する(ステップS105)。気嚢BA1内の空気は加温されなくなる。これにより、気球1の高度は下降に向かう。
【0049】
ステップS103の後、ステップS105の後、ステップS104においてYesと判定された後、制御部32は、温度制御処理の終了コマンドが有るか否かを判定する(ステップS106)。制御部32は、例えば、地上の監視装置90から終了コマンドが送信されたか否かを判定する。温度制御処理の終了コマンドが送信されたと判定した場合(ステップS106:Yes)、制御部32は電気ヒータ10の稼働を停止させ(ステップS107)、温度制御処理を終了する。気嚢BA1内の空気の温度が低下すると、気球1の高度は低下する。
【0050】
温度制御処理の終了コマンドが送信されていないと判定した場合(ステップS106:No)、制御部32は、処理をステップS101へ戻す。
【0051】
このようにして、気球1は、予め設定された高度範囲内を風力発電装置50で発電した電力を消費しつつ無補給で長期間飛行を継続可能である。
【0052】
次に、気球1が飛行するまでの準備作業について、
図5Aから
図5Cを参照して説明する。
【0053】
保存状態では、気嚢BA1とゴンドラ部BA2とは分離されている。また、
図5Aに示すように、気嚢BA1における外皮2と内皮3は萎んだ状態である。また、断熱キャップ7,リングキャップ8,電気ヒータ10は、気嚢BA1から取り外されている。
【0054】
この状態で、内皮3と外皮2の下端部に気密に接続されているリングキャップ8に、固定部材11により電気ヒータ10が固定された断熱キャップ7を装着する。そして、
図5Bに例示するように、エアコンプレッサAICを使用して、継手jaを介して、内空部5に、例えば、40℃~80℃程度のわずかに浮力が生ずる温度の空気を注入し、内皮3をある程度膨ませる。また、アルゴンガスが入っているガスボンベGBを使用して、継手jbを介して外空部4にアルゴンガスを注入し、外皮2を膨らませる。なお、エアコンプレッサAICに繋がれたホースAHと、ガスボンベGBに繋がれたホースBHを、それぞれ継手ja,jbに接続して、空気とアルゴンガスを注入する。
【0055】
外空部4へのアルゴンガスの注入が終了すると、ガスボンベGBに繋がれたホースBHを継手jbから取り外す。内空部5への空気の注入がある程度のレベル、例えば8割程度空気が注入されると、エアコンプレッサAICに繋がれたホースAHを継手jaから取り外す。
【0056】
続いて、電気ヒータ10を駆動して内空部5の空気を加温する。ただし、飛行開始までは、バッテリー22の蓄積電力を維持することが望ましいので、
図5Cに示すように、配線ELを外部電源Egに接続し、外部電源Egから電気ヒータ10に電力を供給する。
【0057】
気嚢BA1にゴンドラ部BA2を吊下部材21を介して吊り下げる。また、電気ヒータ10とバッテリー22を配線ELを介して接続し、また、電気ヒータ10と制御装置30を配線SLを介して接続する。
【0058】
電気ヒータ10は、気嚢BA1内の空気を加温して、加温した空気を内空部5に放出する。すると、気嚢BA1内の空気が、密度の小さい軽い空気となって浮力が生じて気球1が浮上し得る状態となる。その後、離陸時までに、外部電源Egから配線ELが外されて、
図1に示すように、配線ELはバッテリー22に接続される。
【0059】
監視装置90からの指示により、制御装置30が制御動作を開始し、ゴンドラ20内の砂袋が取り除かれて、気球1が飛行し始める。なお、飛行開始後は、電気ヒータ10は、バッテリー22に蓄電された電力によって作動する。
【0060】
以上説明したように、実施の形態1に係る気球1は、気嚢BA1の内部に電気ヒータ10を備える。電気ヒータ10は、気球1に搭載したバッテリー22を電力源として作動する。バッテリー22には、気球1に搭載した風力発電装置50が発電した電力が蓄電される。電気ヒータ10は、気嚢BA1の内部の空気を加温するので、外気の低温空気を燃焼する構成と比較して、エネルギー消費が小さい。その上、気球1は風力発電装置50によって自家発電できる。このため、気球1は、燃料切れとなる構成と異なり、着陸することなく、長期間飛行し続けられる。
【0061】
また、気球1は、外皮2と内皮3を有する二重構造のため、一重構造と比較して、断熱効果が大きい。また、外空部4には、アルゴンガスが封入されているので、断熱効果が更に大きい。
【0062】
(変形例)
上記実施の形態1は、種々の変更が可能である。
例えば、上記実施の形態1では、気球1は風力発電によって自家発電を行う構成であったが、これに加えて、太陽光発電によって自家発電を行ってもよい。
図6に示すように、ゴンドラ20の側面の外側に太陽光発電装置40を備えてもよい。風力発電装置50によって発電した電力に加えて、太陽光発電装置40が発電した電力がバッテリー22に蓄電されてもよい。これにより、風力発電と太陽光発電との自家発電によって、より安定した蓄電が実現可能となる。
【0063】
また、上記の実施の形態1では、ゴンドラ20内部にバッテリー22、高度測定機器60が配置されていたが、これに加えて、携帯アンテナ、テレビアンテナなどの備品、気象センサを搭載してもよい。
【0064】
また、電気ヒータ10は、自身の吸い込み口に温度センサを備えてもよい。これにより、気嚢BA1内の温度が予め定められた第1の温度に達したら、電気ヒータ10は吸気の加温を停止してもよい。また、気嚢BA1内の温度が予め定められた第2の温度以下となったら、電気ヒータ10は吸気の加温を再開してもよい。
【0065】
実施の形態1では、電気ヒータ10として、ファンヒータを例示したが、ファンヒータに限定されない。電気ヒータ10は、内空部5の空気を加熱できれば、その構成は任意である。
【0066】
また、実施の形態1では、外空部4にアルゴンガスを注入したが、アルゴンガス以外のガスでもよい。ただし、空気より比重の小さいガスが望ましい。また、外空部4の断熱機能を確保するため、内空部5内の空気よりも熱伝達率の小さいガスが望ましい。
【0067】
また、外空部4に代えて、比重の小さい材料、例えば、発砲ウレタンを断熱材として内皮3の外表面の全部又は一部を覆い、断熱するようにしてもよい。
【0068】
外空部4が内空部5のほぼ全体を包含する例を示したが、外空部4は内空部5の一部の上のみに配置される構成でもよい。外空部4の断熱効果の必要度に応じて配置すればよい。
【0069】
実施の形態1において、温度制御処理に関し、第1と第2の閾値にヒステリシスを与えてもよい。また、実施の形態1では、温度制御処理で、電気ヒータ10をオン・オフ制御したが、高度測定機器60で測定された飛行高度Hrと目標高度Htとに応じて、空気の加温量を制御してもよい。例えば、
図4のステップS102~S105に代えて、飛行高度Hrと目標高度Htとの偏差ΔHに基づいて、PID(比例積分微分)制御により、例えば、電気ヒータ10の加温に使用する電力PをP=α・ΔH+β・∫ΔHdt+γ・dΔH/dtとなるように、制御してもよい。ここで、α、β、γは任意の係数である。その他、制御の手法自体は任意である。
【0070】
実施の形態1では、外皮2と内皮3の下端部をリングキャップ8に固定したが、外空部4と内空部5を形成できるならば、リングキャップ8を使用する例に限定されない。例えば、内皮3の下端部を外皮2の内面に気密に固定してもよい。同様に、外皮2の下端部を内皮3の外面に気密に固定する等してもよい。
【0071】
上記実施の形態では、気球1の上昇開始時(地上)に、内空部5内の空気の温度を比較的低温の40℃~80℃としたが、これに限定されない。例えば、上昇予定高度に応じて地上で150℃~300℃、例えば、200℃程度の、大きい浮力を発生させる高温の空気を内空部5に充填してもよい。この場合、内空部5から外気への排気、外気の内空部5への供給を行わなくても、電気ヒータ10による内空部5の空気の温度制御で気球1の上昇及び下降が可能となる。また装置構成も簡易にできる。
【0072】
(実施の形態2)
実施の形態2においては、内空部5の内圧を調整することによって、気球1の上昇と降下の両方に対応可能とする。以下、このような特徴を有する実施の形態2の気球を、
図7および
図8を参照しつつ、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
【0073】
図7に示すように、断熱キャップ7の内面には、気圧センサ15が取り付けられている。配線(信号線)SLは、気圧センサ15と制御装置30とを、孔haを介して接続する。
【0074】
ゴンドラ20には、コンプレッサ、空気ボンベ、等のガス供給装置が配置される。以下の説明では、ガス供給装置を空気ボンベAiBであるとする。
【0075】
空気ボンベAiBにはエアホースAHが取り付けられている。また、継手jaは、三方向継手から構成されている。三方向継手の3方向のうちの1方向の端部は、継手jaに取り付けられている。残りの2方向の端部は、それぞれ、第1電磁弁B1,第2電磁弁B2を備える。エアホースAHは、第1電磁弁B1を備える端部と、空気ボンベAiBとを接続する。継手ja、空気ボンベAiB、制御装置30は、内空部5の圧力を調整する圧力調整手段の一例である。
【0076】
また、制御装置30の記憶部34は、気球1の高度H別に、内空部5のサイズを維持しつつ浮力を得るために必要な内空部5内の圧力の基準値Pr(H)を記憶している。
【0077】
次に、このような構成の気球1の飛行動作時において、気嚢BA1の内空部5の気圧を制御する「気圧制御処理」について説明する。本実施の形態における「気圧制御処理」は、気球1の高度Hと内空部5内の気圧Pinに基づいて、第1電磁弁B1,第2電磁弁B2の開閉を制御する処理である。第1電磁弁B1が開くと、空気ボンベAiBから内空部5へ空気が注入される。一方、第2電磁弁B2が開くと、内空部5の空気が気嚢BA1の外部へ排出される。気圧制御処理によって、内皮3の形状が、一定程度維持される。気球1が飛行を開始すると、制御部32は、気圧制御プログラムを実行し、
図8に示す気圧制御処理を開始する。
【0078】
図8に示す気圧制御処理を開始すると、まず、取得部31は、気圧センサ15から、内空部5の気圧Pinを取得し、高度測定機器60から気球1の飛行高度Hを取得する(ステップS201)。制御部32は、取得した高度Hに対応する基準値Pr(H)を記憶部34から読み出す。制御部32は、読み出した基準値Pr(H)に基づいて、内空部5内の高度Hに適正圧力範囲の下限値PrLに相当する第1の気圧閾値を求める。第1の気圧閾値、即ち、適正圧力範囲の下限値PrLは、例えば、基準値Pr(H)の0.95~0.85倍に設定される。
【0079】
続いて、制御部32は、ステップS201で取得した内空部5の気圧Pinが下限値PrL(=第1の気圧閾値)よりも低いか否かを判定する(ステップS202)。内空部5の気圧が第1の気圧閾値よりも低いと判定された場合(ステップS202:Yes)、内空部5の気圧は、内空部5のサイズを維持しつつ浮力を得るために必要な圧力に達していない。このため、制御部32は、第1電磁弁B1を開く制御(開弁)を行い、空気ボンベAiBから内空部5に空気を注入する(ステップS203)。空気の注入によって内空部5の気圧が上昇し、内空部5の形状が維持される。
【0080】
一方、内空部5の気圧が第1の気圧閾値以上と判定された場合(ステップS202:No)、制御部32は、基準値Pr(H)に基づいて、内空部5内の高度Hに適正な圧力範囲の上限値PrUに相当する第2の気圧閾値を求める。第2の気圧閾値、即ち、適正圧力範囲の上限値PrUは、例えば、基準値Pr(H)の1.05~1.15倍に設定される。続いて、制御部32は、ステップS201で取得した内空部5の気圧Pinが上限値PrU(=第2の気圧閾値)以下か否かを判定する(ステップS204)。内空部5の気圧が、第2の閾値以下であると判定された場合(ステップS204:Yes)、内空部5の気圧は、高度Hに対して適切な圧力範囲にある。このため、制御部32は、第1電磁弁B1及び第2電磁弁B2を閉じて、内空部5の空気の注入及び排気を行わず、処理をステップS207に移す。
【0081】
内空部5の気圧が、第2の気圧閾値よりも高いと判定された場合(ステップS204:No)、内空部5の気圧が高度Hに対応する適切な圧力範囲を超えている。このため、制御部32は、第2電磁弁B2を開く制御を行う(ステップS206)。これにより、内空部5の空気が排気され、内皮3の形状が維持される。
【0082】
ステップS203の後、ステップS205の後、ステップS206の後、制御部32は、気圧制御処理の終了コマンドが有るか否かを判定する(ステップS207)。制御部32は、例えば、地上の監視装置90から終了コマンドが送信されたか否かを判定する。気圧制御処理の終了コマンドが送信されたと判定した場合(ステップS207:Yes)、制御部32は、第1電磁弁B1及び第2電磁弁B2を閉じる制御を行う(ステップS208)。気圧制御処理を終了する。
【0083】
地上の監視装置90から終了コマンドが送信された場合、上述の温度制御処理も終了する。
【0084】
気圧制御処理の終了コマンドが送信されていないと判定した場合(ステップS207:No)、制御部32は、処理をステップS201へ戻す。
【0085】
このようにして、気球1は、内空部5の気圧を、気球1の高度H別に、内空部5のサイズを維持して浮力を得るために必要な圧力範囲に維持する。これにより、気球1は、高度Hを変化させながら飛行を継続可能である。
【0086】
制御装置30は、
図4に示す温度制御処理と
図8に示す気圧制御処理を並行して実行することにより、気球1の上昇及び下降を繰り返して制御することができる。
【0087】
(変形例)
なお、上記実施の形態においては、浮力が得られる程度に適切な圧力Pr(H)にほぼ一致するように、内空部5内の圧力を制御した。この発明は、これに限定されない。気球1が浮力を得られる程度に内空部5の圧力を調整できれば、その手法は任意である。例えば、外気圧を測定する外気圧センサを設け、外気圧より基準値だけ大きくなるように内空部5の気圧を制御してもよい。基準値は、例えば、気球1の浮力が得られる程度に内空部5のサイズと形状を確保できる値に設定される。また、例えば、内皮3に伸長計を貼付し、内空部5のサイズと形状が、気球1が浮力を得られる程度となる程度に内皮3が伸長するように、内空部5の気圧を制御してもよい。また、内空部5のサイズまたは形状を計測するセンサを配置し、内空部5のサイズ又は形状が基準条件を満たすように、内空部5の気圧を制御してもよい。
【0088】
(実施の形態3)
実施の形態1,2では、気球1は、自力航行能力を備えてない。そのため気球1自身の位置を自立的に制御できない。
例えば、
図9に例示するように、気球1は、推進装置101を備えてもよい。推進装置101は、気球1の水平方向への推進力を生成し、気球1の水平方向への移動を可能とする。なお、鉛直方向への移動は、電気ヒータ10の制御により可能である。
図9に例示する推進装置101は、プロペラ102と、舵103と、プロペラ102を回転させると共に舵103を操縦する駆動操舵装置104を備える。推進装置101は、本発明の「推進機構」の一例である。
【0089】
制御装置30は、駆動操舵装置104を制御し、プロペラ102の回転方向と回転速度を制御する。これにより、気球1は、前進及び後進が可能となる。制御装置30は、駆動操舵装置104を制御し、舵103の向きを制御する。これにより、気球1の進行方向を制御することができる。このような構成とすれば、気球1をほぼ一定位置に滞在させたり、任意の経路で移動させることが可能となる。
【0090】
制御装置30は、慣性航法の手法等の既知の航法を用いて、気球1の運行を制御できる。例えば、制御装置30は、GPS信号から気球1の位置を測定し、記憶部34に設定されている目標位置(例えば、緯度、経度)を維持するように推進装置101を制御し、或いは、記憶部34に記憶されているルートに従って、移動するように推進装置101を制御する。
【0091】
なお、高度Hは、実施の形態1,2で説明したように、電気ヒータ10の温度を制御しつつ、内空部5の圧力を制御することによって、調整されればよい。
【0092】
このような構成とすることにより、例えば、ゴンドラ20に通信機器(例えば、基地局を構成する機器あるいは中継局を構成する機器)、観測用機器を配置し、ほぼ一定位置で長期間浮遊した状態を維持することにより、既存の基地局、中継局、定点観測装置以上の機能を達成できる。また、移動しながら、通信を中継、地上を観測すること等も可能でとなる。観測用機器は、本発明の「観測機器」の一例である。
【0093】
以上の説明では、外空部4については、圧力制御を行っていないが、圧力制御を行っても良い。
【0094】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0095】
1 気球、2 外皮、3 内皮、4 外空部、5 内空部、6 連結部、7 断熱キャップ、8 リングキャップ、10 電気ヒータ、11 固定部材、15 気圧センサ、20 ゴンドラ、21 吊下部材、22 バッテリー、30 制御装置、31 取得部、32 制御部、33 通信部、34 記憶部、40 太陽光発電装置、50 風力発電装置、60 高度測定機器、90 監視装置、101 推進装置、102 プロペラ、103 舵、104 駆動操舵装置、1000 バス、1001 プロセッサ、1002 メモリ、1003 二次記憶装置、1004 入出力(I/O)インタフェース、1005 通信モジュール、BA1 気嚢、BA2 ゴンドラ部、EL 配線(電源線)、ha 孔、ja,jb 継手、AIC エアコンプレッサ、AiB 空気ボンベ、AH エアホース、B1 第1電磁弁、B2 第2電磁弁、Eg 外部電源、SL 配線(信号線)。
【要約】
【課題】エネルギー効率の高い気球を提供する。
【解決手段】気球1は、外気と接する第1の球皮2と、第1の球皮2の内側に位置し、第1の球皮2との間にガスが充填された外空部4を形成し、内部に内空部5を形成する第2の球皮3と、を備える気嚢BA1と、自然エネルギーによって発電する発電装置と、第2の球皮3内の内空部5に配置され、発電装置で発電された電力によって内空部5の空気を加温する加温装置と、内空部5の空気と外気とを区画するキャップと、を備える。
【選択図】
図1