(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】窓箔自動交換装置
(51)【国際特許分類】
G21K 5/00 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
G21K5/00 E
(21)【出願番号】P 2024014313
(22)【出願日】2024-02-01
【審査請求日】2024-02-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】317003143
【氏名又は名称】株式会社特殊金属エクセル
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】附田 賢治
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-084395(JP,A)
【文献】特開昭53-067673(JP,A)
【文献】特開昭63-285499(JP,A)
【文献】特開昭63-285500(JP,A)
【文献】特開2011-218293(JP,A)
【文献】米国特許第04734586(US,A)
【文献】米国特許第04785254(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被照射物に照射される電子線が通過する真空のチャンバ部と、前記チャンバ部の開口部を閉塞して前記チャンバ部の内部から外部に前記電子線を透過させる窓箔と、を備えた電子線照射装置において前記窓箔を交換するための装置であって、
前記窓箔を巻き取るとともに巻き出して前記窓箔を交換する窓箔交換機構
と、
前記窓箔交換機構が前記窓箔を交換する際に前記チャンバ部の真空状態を維持するための真空維持機構と、を備え、
前記窓箔交換機構は、
前記窓箔を巻き取る巻取ロールと、
前記窓箔を巻き出す巻出ロールと、
前記巻取ロールと前記巻出ロールとの間で、前記電子線の透過方向における前記窓箔の位置を一定に保つレベリングロールと、
前記窓箔を透過して前記被照射物に照射される前記電子線の累積照射量に応じて、前記巻取ロールでの前記窓箔の巻取長さおよび前記巻出ロールでの前記窓箔の巻出長さを制御する窓箔交換制御部と、を有
し、
前記真空維持機構は、
直列に配置された少なくとも一つの永久磁石と、
少なくとも一つの前記永久磁石の各々の磁極面に磁力で吸着された第1の磁性部材と、
隣り合う前記第1の磁性部材同士の間に介在する非磁性部材と、
前記電子線の透過方向における前記第1の磁性部材の一端部に磁性流体を供給する磁性流体サーバと、
前記窓箔を挟んで前記磁性流体とは反対側に配置され、前記窓箔と接触する第2の磁性部材と、を有することを特徴とする
窓箔自動交換装置。
【請求項2】
前記真空維持機構は、前記窓箔が交換される際、該窓箔を冷却する窓箔冷却部を有し、
窓箔交換制御部は、前記窓箔が交換される際、前記窓箔が前記窓箔冷却部によって所定温度まで冷却可能に、前記巻取ロールの前記窓箔の巻き取りおよび前記巻出ロールの前記窓箔の巻き出しを制御する
ことを特徴とする請求項
1に記載の窓箔自動交換装置。
【請求項3】
前記真空維持機構は、前記第2の磁性部材における前記窓箔との接触側とは反対側に配置され、前記窓箔および前記第2の磁性部材を介して磁力により前記磁性流体を引き付ける電磁石を有する
ことを特徴とする請求項
1に記載の窓箔自動交換装置。
【請求項4】
前記真空維持機構は、前記チャンバ部が真空状態とされる際の排気経路および前記チャンバ部が前記真空状態から大気開放される際のパージガスの充填経路に配置されるフィルタを有する
ことを特徴とする請求項
1に記載の窓箔自動交換装置。
【請求項5】
前記窓箔は、β型チタン合金からなり、
前記β型チタン合金は、チタン(Ti)にモリブデン(Mo)当量を10[wt%]以上含有する合金であり、
前記Mo当量は、Mo+0.67×V+0.44×W+0.28×Nb+0.22×Ta+2.9×Fe+1.6×Cr-1.0×Al[wt%]なる関係式で表される
ことを特徴とする請求項1から
4のいずれか一項に記載の窓箔自動交換装置。
【請求項6】
前記窓箔交換制御部は、
前記電子線の前記累積照射量が所定の閾値を超えた場合、前記巻取ロールの前記窓箔の巻き取りおよび前記巻出ロール前記窓箔の巻き出しを制御する主制御部と、
前記巻出ロールにおける前記窓箔の累積巻出量を検出するロール監視部と、
前記ロール監視部によって検出された前記窓箔の累積巻出量に基づいて、前記巻出ロールに関する情報を報知する報知部と、を有する
ことを特徴とする請求項
5に記載の窓箔自動交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、窓箔自動交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子線照射装置は、電子を高真空中で高電圧により加速させた後、加速電子を大気中に取り出し、該加速電子が持つエネルギーを物質に与え、様々な反応を引き起こす(特許文献1および特許文献2参照)。このような電子線照射処理は、通常の化学反応で用いる熱エネルギーと比較してエネルギー利用率が高く、反応促進剤などの添加物が不要で、かつ低温で効果が得られるという特徴がある。また、電子線は、放射線の一種であるが電源のON/OFFで放射線の発生を制御できるなど、取り扱いが容易で安全性が高い。さらに、単位時間あたりの物質に与えるエネルギーは、同様の現象を起こすことができるガンマ線と比較すると桁違いに大きい。そのため、連続生産性が高く、特に滅菌および印刷の分野での工業的利用が積極的になされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-8386号公報
【文献】特許第7153783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
連続生産性が高く積極的に工業利用がなされている電子線照射装置ではあるが、真空チャンバの窓箔は、電子線照射によりダメージを受け、ある照射量で新品に交換する必要がある。窓箔は、照射された電子を透過しつつ、真空チャンバの高真空を維持する役割を担う部材である。窓箔を交換する際には、真空チャンバを高真空の状態から大気圧に戻す必要がある。このため、窓箔の交換時には生産ラインを停止させなければならず、生産性の低下を招くという問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するため、電子線照射装置において電子線が照射される真空チャンバの窓箔を自動的に交換することが可能な窓箔自動交換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る窓箔自動交換装置は、被照射物に照射される電子線が通過する真空のチャンバ部と、前記チャンバ部の開口部を閉塞して前記チャンバ部の内部から外部に前記電子線を透過させる窓箔と、を備えた電子線照射装置において前記窓箔を交換する。前記窓箔自動交換装置は、前記窓箔を巻き取るとともに巻き出して前記窓箔を交換する窓箔交換機構を備える。前記窓箔交換機構は、巻取ロールと、巻出ロールと、レベリングロールと、窓箔交換制御部と、を有する。前記巻取ロールは、前記窓箔を巻き取る。前記巻出ロールは、前記窓箔を巻き出す。前記レベリングロールは、前記巻取ロールと前記巻出ロールとの間で、前記電子線の透過方向における前記窓箔の位置を一定に保つ。前記窓箔交換制御部は、前記窓箔を透過して前記被照射物に照射される前記電子線の累積照射量に応じて、前記巻取ロールでの前記窓箔の巻取長さおよび前記巻出ロールでの前記窓箔の巻出長さを制御する。
【0007】
また、前記窓箔自動交換装置は、前記窓箔交換機構が前記窓箔を交換する際に前記チャンバ部の真空状態を維持するための真空維持機構を備える。前記真空維持機構は、少なくとも一つの永久磁石と、第1の磁性部材と、非磁性部材と、磁性流体サーバと、第2の磁性部材と、を有する。少なくとも一つの前記永久磁石は、直列に配置される。前記第1の磁性部材は、少なくとも一つの前記永久磁石の各々の磁極面に磁力で吸着される。前記非磁性部材は、隣り合う前記第1の磁性部材同士の間に介在する。前記磁性流体サーバは、前記電子線の透過方向における前記第1の磁性部材の一端部に磁性流体を供給する。前記第2の磁性部材は、前記窓箔を挟んで前記磁性流体とは反対側に配置され、前記窓箔と接触する。
【0008】
前記真空維持機構は、前記窓箔が交換される際、該窓箔を冷却する窓箔冷却部を有する。窓箔交換制御部は、前記窓箔が交換される際、前記窓箔が前記窓箔冷却部によって所定温度まで冷却可能に、前記巻取ロールの前記窓箔の巻き取りおよび前記巻出ロールの前記窓箔の巻き出しを制御する。
前記真空維持機構は、前記第2の磁性部材における前記窓箔との接触側とは反対側に配置され、前記窓箔および前記第2の磁性部材を介して磁力により前記磁性流体を引き付ける電磁石を有する。
前記真空維持機構は、前記チャンバ部が真空状態とされる際の排気経路および前記チャンバ部が前記真空状態から大気開放される際のパージガスの充填経路に配置されるフィルタを有する。
【0009】
前記窓箔は、β型チタン合金からなる。前記β型チタン合金は、チタン(Ti)にモリブデン(Mo)当量を10[wt%]以上含有する合金である。前記Mo当量は、Mo+0.67×V+0.44×W+0.28×Nb+0.22×Ta+2.9×Fe+1.6×Cr-1.0×Al[wt%]なる関係式で表される。
【0010】
前記窓箔交換制御部は、主制御部と、ロール監視部と、報知部と、を有する。前記電子線の前記累積照射量が所定の閾値を超えた場合、前記巻取ロールの前記窓箔の巻き取りおよび前記巻出ロール前記窓箔の巻き出しを制御する。前記ロール監視部は、前記巻出ロールにおける前記窓箔の累積巻出量を検出する。前記報知部は、前記ロール監視部によって検出された前記窓箔の累積巻出量に基づいて、前記巻出ロールに関する情報を報知する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の窓箔自動交換装置によれば、電子線照射装置において電子線が照射される真空チャンバの窓箔を自動的に交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る窓箔自動交換装置を備えた電子線照射装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図2】本実施形態に係る窓箔自動交換装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図3】
図2に示す窓箔自動交換装置の構成を矢印A3の方向から概略的に示す平面図である。
【
図4】本実施形態における窓箔交換処理に対応する窓箔交換制御部の概略的な構成を示すブロック図である。
【
図5】本実施形態に係る窓箔自動交換装置の主制御部が実行する窓箔交換処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。本発明に係る窓箔自動交換装置は、電子線照射装置において窓箔を交換するための装置である。電子線照射装置は、被照射物に電子線を照射して該被照射物の改質や滅菌などを図る装置であり、例えばグラビア印刷やペットボトルの滅菌などに用いられる。ただし、その用途はこれらに限定されるものではない。窓箔は、電子線が通過する真空チャンバの窓部(開口部)を閉塞して真空状態を維持しつつ、該真空チャンバの内部から外部に電子線を透過させるために用いられる(詳細は後述)。
【0014】
図1から
図3には、本実施形態に係る窓箔自動交換装置の構成を概略的に示す。
図1は、本実施形態に係る窓箔自動交換装置が電子線照射装置に固定された状態の一例を示す断面図である。
図2は、本実施形態に係る窓箔自動交換装置の構成例を示す断面図である。
図3は、
図2に示す窓箔自動交換装置の構成を矢印A3の方向から示す平面図である。
図3においては、便宜上、後述するハウジングを省略した状態を示す。
図1から
図3に示すように第1の方向D1、第2の方向D2、および第3の方向D3をそれぞれ定義する。これらの方向D1,D2,D3は、互いに直交する方向である。本実施形態では一例として、第1の方向D1および第2の方向D2は水平面を規定する。第3の方向D3は、鉛直線に沿った方向(上下方向)であり、図示例では矢印の向きが下向き(下方)、その逆向きが上向き(上方)である。ただし、D1,D2,D3で規定される方向および平面は、上記の例に限定されない。
【0015】
図1および
図2に示すように、窓箔自動交換装置1は、電子線照射装置10に備えられており、該電子線照射装置10において使用済の窓箔31を未使用の窓箔32に交換するための装置である。例えば、窓箔自動交換装置1は、電子線照射装置10が有する機能の一つとして該電子線照射装置10に当初から備えられていてもよいし、電子線照射装置10の追加機能(オプション)として後付けされるものであってもよい。
【0016】
したがって、窓箔自動交換装置1について説明する前に、電子線照射装置10についてまず説明する。上述したように、窓箔自動交換装置1は電子線照射装置10に後付け可能に構成されている。このため、電子線照射装置10の基本的な構成は、従来から利用されている一般的な電子線照射装置と同様であって構わない。
【0017】
図1および
図2に示すように、電子線照射装置10は、主たる構成要素として、電子線発生部12と、チャンバ部14と、電子線照射窓部16とを備えている。
電子線発生部12は、例えば電子線を発生するフィラメント121、該フィラメント121に電力を供給する電源122などを有する。フィラメント121は、かかる電源122から供給された電力により加熱されて電子を放出する。
【0018】
チャンバ部14は、例えば電子線発生部12のフィラメント121で発生した電子線を真空空間で加速する加速管141、加速管141で加速された電子線を走査する走査管142などを有する。
加速管141は、管軸方向(以下、軸方向という)の一端に電子線発生部12のフィラメント121が設けられ、他端に向けて並んだ複数の電極を有する。フィラメント121が設けられた加速管141の軸方向の一端は、気密に閉塞されている。図示例では、軸方向は第3の方向D3に沿った方向である。これらの電極が通電されることで、加速管141はフィラメント121から放出された電子を軸方向の他端に向けて加速させるような電界を生じさせる。
【0019】
走査管142は、加速管141の軸方向の他端に連続し、その連続箇所に走査コイル143を有している。走査コイル143が通電されることで、加速管141で加速された電子線が偏向する。加速管141と走査管142とが連通する内部空間は、フィラメント121から放出された電子が電子線となって通過する真空チャンバ140を構成する。電子線は、
図1および
図2に示す矢印A10で示す方向、例えば上下方向(第3の方向D3)の下方に真空チャンバ140を通過し、被照射物に照射される。
【0020】
電子線照射窓部16は、チャンバ部14の軸方向の端部、例えば走査管142における加速管141との連続箇所とは反対側の端部の開口部である。すなわち、電子線照射窓部16は、チャンバ部14の開口部である。電子線照射窓部16の開口形状は特に限定されず、例えば円形、長円形、楕円形、正方形など任意の形状とすることが可能である。図示例では略矩形状、具体的には後述する窓箔3の移動方向に長手の略長方形状とされている。電子線照射窓部16、端的にはチャンバ部14は窓箔3で閉塞可能とされている。窓箔3は、チャンバ部14を閉塞する一方で、該チャンバ部14の内部から外部に電子線を透過させる。電子線発生部12で発生させた電子線が被照射物に照射される際には、電子線照射窓部16が窓箔3で閉塞されてチャンバ部14の内部が真空状態とされる。チャンバ部14は、例えば真空ポンプなどによって真空引きされて真空状態となる。
【0021】
次に、本実施形態に係る窓箔自動交換装置1について説明する。
図2および
図3に示すように、窓箔自動交換装置1は、主たる構成要素として、窓箔交換機構2と、真空維持機構4とを備えている。これらの窓箔交換機構および真空維持機構4は、ハウジング6に取り付けられて、該ハウジング6を介して電子線照射装置10に固定されている。ハウジング6は、電子線照射装置10のチャンバ部14と連通する開口部61を有しており、シール部材、図示例ではOリング51を開口部61のフランジ61aと電子線照射窓部16の周縁との間に挟んで電子線照射装置10に固定されている。これにより、ハウジング6と電子線照射窓部16、端的には窓箔自動交換装置1と電子線照射装置10は、チャンバ部14の真空性を維持可能に気密に一体化されている。
【0022】
窓箔交換機構2は、窓箔3を巻き取るとともに巻き出して該窓箔3を交換するための機構である。本実施形態において、窓箔3は、全長が幅に対して十分に大きく、厚さが数μ程度の極めて薄い金属箔である。図示例では、全長は第1の方向D1における寸法であり、幅は第2の方向D2における寸法であり、厚さは第3の方向D3における寸法である。
【0023】
窓箔3は、チャンバ部14を閉塞する一方で、該チャンバ部14の内部から外部に電子線を透過させることが可能であれば、任意の素材で形成できる。本実施形態では一例として、窓箔3の素材にはβ型チタン合金が用いられている。したがって、窓箔3は非磁性となり、磁力では吸着されない。β型チタン合金は、例えばチタン(Ti)にモリブデン(Mo)当量を10[wt%]以上含有する合金である。Mo当量は、次のような関係式(1)で表される。
Mo当量=Mo+0.67×V+0.44×W+0.28×Nb+0.22×Ta+2.9×Fe+1.6×Cr-1.0×Al[wt%] …(1)
関係式(1)において、Vはバナジウム、Wはタングステン、Nbはニオブ、Taはタンタル、Feは鉄、Crはクロム、Alはアルミニウムをそれぞれ示す。
【0024】
窓箔交換機構2は、主たる要素として、巻取ロール21と、巻出ロール22と、レベリングロール23と、窓箔交換制御部24とを備えている。
巻取ロール21は、使用済の窓箔31を巻き取る巻取軸211と、該巻取軸211に巻き取られてロール状をなす使用済の窓箔31とを有する。以下の説明では便宜上、ロール状に巻かれた使用済の窓箔31も巻取ロール21と称する。使用済の窓箔31は、窓箔3を透過する所定強度の電子線が所定時間に亘って透過された窓箔3である。本実施形態では、電子線照射窓部16を閉塞する領域単位で窓箔3が使用済となる。巻取軸211は、所定の駆動装置で駆動されて、後述する巻出軸221と同期して回転する。例えば、巻取軸211は、巻出軸221と同一方向に略同一速度で回転する。図示例では、巻取軸211は第2の方向D2に伸びている。
【0025】
上述したとおり、窓箔3は長尺に連続した金属箔である。したがって、窓箔3は、交換時の移動方向において、電子線照射窓部16よりも奥側に移動した部分が使用済の部分となる。電子線照射窓部16を閉塞する窓箔3の部分、つまり照射された電子線が透過する窓箔3の部分は、使用中の部分に相当する。以下の説明では、かかる使用中の部分も含めて使用済の窓箔31という。窓箔3のこれ以外の部分、つまり交換時の移動方向において電子線照射窓部16よりも手前側に位置する部分は、まだ電子線が透過されていない部分であり、以下の説明では該部分を未使用の窓箔32という。
【0026】
所定長さの使用済の窓箔31が巻取軸211に巻き取られると、該使用済の窓箔31は巻取軸211から取り外される。これにより、使用済の窓箔31が巻取軸211に再び巻き取られる。巻取ロール21は、巻取軸211に挿入されて該巻取軸211とともに回転する筒状の巻取芯を有していてもよい。この場合、使用済の窓箔31は、巻取芯に巻き取られる。所定長さの使用済の窓箔31が巻取芯に巻き取られると、該使用済の窓箔31は巻取芯とともに巻取軸211から取り外される。
【0027】
巻出ロール22は、未使用の窓箔32を巻き出す巻出軸221と、該巻出軸221に巻かれてロール状をなす未使用の窓箔32とを有する。以下の説明では便宜上、ロール状に巻かれた未使用の窓箔32も巻出ロール22と称する。未使用の窓箔32は、電子線が透過されていない状態(初期状態)の窓箔3である。本実施形態では、電子線照射窓部16を閉塞する領域単位で巻出ロール22から巻き出された未使用の窓箔32が使用される。巻出軸221は、所定の駆動装置で駆動されて、巻取軸211と同期して回転する。例えば、巻出軸221は、巻取軸211と同一方向に略同一速度で回転する。図示例では、巻出軸221は巻取軸211と平行に第2の方向D2に伸びている。これらの回転軸のうち、例えば巻取軸211が巻出軸221に対する主動軸(駆動軸)、該巻出軸221が従動軸であってもよい。
【0028】
所定長さの未使用の窓箔32が巻出軸221から巻き出されると、新たな巻出ロール22がセットされる。例えば、未使用の窓箔32が巻出軸221にロール状に巻き付けられる。巻出ロール22は、巻出軸221に挿入されて該巻出軸221とともに回転する筒状の巻出芯を有していてもよい。この場合、未使用の窓箔32は、巻出芯に巻かれる。所定長さの未使用の窓箔32が巻出芯から巻き出されると、該巻出芯が巻出軸221から取り外され、別の巻出芯に巻かれた新たな未使用の窓箔32が巻出軸221にセットされる。
【0029】
レベリングロール23は、巻取ロール21で巻き取られる窓箔3の巻取開始位置と巻出ロール22から巻き出される窓箔3の巻出開始位置を、所定の基準面からの垂直距離が一致するように調整する。換言すれば、レベリングロール23は、巻取ロール21と巻出ロール22との間で、電子線の透過方向(図示例では第3の方向D3)における窓箔3の位置を一定に保つ。電子線は、
図2に示す矢印A1で示す方向(上下方向(第3の方向D3)の下方)に窓箔3を透過し、被照射物に照射される。本実施形態では一例として、基準面を電子線照射装置10の据付面、具体的には第1の方向D1と第2の方向D2で規定される平面である水平面としている。すなわち、レベリングロール23は、第3の方向D3である上下方向の窓箔3の巻取開始位置と巻出開始位置とを一致させる。その結果、窓箔3は、上下方向の高さが一定に保たれた状態で、つまり水平状態を保ったまま巻取ロール21と巻出ロール22との間を移動する。
【0030】
レベリングロール23は、巻取ロール21と巻出ロール22との間で移動する窓箔3に合わせて回転する。図示例では、レベリングロール23は、回転軸231と、該回転軸231の周りを覆うカバー232を有している。回転軸231は巻取軸211および巻出軸221と平行に第2の方向D2に伸びている。カバー232は、例えば樹脂材などにより形成され、窓箔3と接触しながら回転軸231とともに回転する。本実施形態では一例として、回転軸231は、駆動軸(主動軸)ではなく、巻取軸211や巻出軸221の回転に伴って回転する従動軸である。ただし、回転軸231は、駆動軸であってもよい。なお、レベリングロール23は、回転しない静止軸と、該静止軸の周りで回転する回転カバーにより構成されていてもよい。
【0031】
レベリングロール23は、一対をなし、該一対のレベリングロール23a,23bが窓箔3の移動方向において巻取ロール21と巻出ロール22との間に配置されている。これらのレベリングロール23a,23bのうち、一方のレベリングロール23aは巻取ロール21の近傍に配置され、他方のレベリングロール23bは巻出ロール22の近傍に配置されている。レベリングロール23aは、主として巻取ロール21で巻き取られる使用済の窓箔31の巻取開始位置の上下方向の高さを調整する。レベリングロール23bは、主として巻出ロール22から巻き出される未使用の窓箔32の巻出開始位置の上下方向の高さを調整する。
【0032】
窓箔交換制御部24は、窓箔3を透過して被照射物に照射される電子線の累積照射量に応じて、使用済の窓箔31を未使用の窓箔32に交換するための処理(以下、窓箔交換処理という)を実行する。窓箔交換処理においては、巻取ロール21の巻取軸211および巻出ロール22の巻出軸221を所定の回転速度で回転させ、使用済の窓箔31を巻き取るとともに未使用の窓箔32を巻き出し、これらの交換を行う。換言すれば、窓箔交換処理において、窓箔交換制御部24は、窓箔3を透過して被照射物に照射される電子線の累積照射量に応じて、巻取ロール21での窓箔3の巻取長さおよび巻出ロール22での窓箔3の巻出長さを制御する。
【0033】
図4に示すように、窓箔交換制御部24は、窓箔交換処理を実行するべく、例えば主制御部241、ロール監視部242、報知部243を有している。
図4は、窓箔交換処理に対応する窓箔交換制御部24の概略的な構成を示すブロック図である。
【0034】
主制御部241は、CPU、メモリ、記憶装置(不揮発メモリ)、入出力回路、タイマ、表示器などを含み、所定の演算処理を実行する。例えば、主制御部241は、各種データを入出力回路により読み込み、記憶装置からメモリに読み出したプログラムを用いてCPUで演算処理し、処理結果に基づいて巻取ロール21の巻取軸211および巻出ロール22の巻出軸221などの動作制御を行う。
【0035】
窓箔交換処理は、プログラム(窓箔交換処理プログラム)としてコード化される。かかるプログラムは、例えば主制御部241の記憶装置に格納され、電子線照射装置10の起動時にメモリに読み出されてCPUで実行される。
【0036】
窓箔交換処理において、主制御部241は、窓箔3を透過して被照射物に照射される電子線の累積照射量に応じて、巻取ロール21と巻出ロール22との間で窓箔3の移動量を制御する。具体的には、主制御部241は、電子線の累積照射量に応じて、巻取ロール21での使用済の窓箔31の巻取長さを制御するとともに、巻出ロール22での未使用の窓箔32の巻出長さを制御する。その際、主制御部241は、巻取軸211を回転させ、使用済の窓箔31を所定長さだけ巻取軸211に巻き取らせるとともに、巻出軸221を回転させ、未使用の窓箔32を所定長さだけ巻出軸221から巻き出させる。
【0037】
所定長さは、例えば窓箔3の移動方向における電子線照射窓部16の距離、換言すれば電子線照射窓部16の開口長さである。図示例では、第1の方向D1が窓箔3の移動方向に相当する。電子線の累積照射量は、例えば窓箔3を透過して照射される電子線の強度と照射時間によって算出された値である。したがって、例えば電子線の累積照射量が所定の閾値(以下、交換基準値という)と比較され、累積照射量が交換基準値を超えた場合、使用済の窓箔31が巻取ロール21と巻出ロール22との間で所定長さだけ移動され、未使用の窓箔32に交換される。交換基準値は、窓箔3が寿命となる前に該窓箔3を交換可能となるように、例えば窓箔3に対して許容される累積照射量の最大値の80%から90%程度に設定される。交換基準値は、例えば主制御部241の記憶装置(不揮発メモリ)に書き込まれ、後述する窓箔交換処理において電子線の累積照射量の判断時、つまり窓箔3の交換要否の判断時にパラメータとして読み出される。
【0038】
ロール監視部242は、巻出ロール22を監視する累積巻出量検出部242aを有する。
累積巻出量検出部242aは、巻出ロール22における未使用の窓箔32の累積巻出量を検出する。累積巻出量は、未使用の窓箔32を巻き出していない状態から巻出軸221が巻き出した該窓箔32の量である。累積巻出量検出部242aは、例えば巻出ロール22の巻出軸221の回転数を検出するセンサ、巻出軸221から巻き出された未使用の窓箔32の長さを検出するセンサ、巻出軸221に巻かれた未使用の窓箔32の残厚(径方向の寸法)を検出するセンサ、巻出ロール22の重量を検出するセンサなどである。累積巻出量検出部242aは、例えば主制御部241によって動作制御され、検出結果の情報を有線もしくは無線を介して主制御部241に適宜付与する。
【0039】
なお、ロール監視部242は、累積巻出量検出部242aに加えてもしくは代えて、巻取ロール21を監視する累積巻取量検出部を有していてもよい。
累積巻取量検出部は、巻取ロール21における使用済の窓箔31の累積巻取量を検出する。累積巻取量は、使用済の窓箔31が巻き付けられていない状態から巻取軸211が巻き取った該窓箔31の量である。累積巻取量検出部は、例えば巻取ロール21の巻取軸211の回転数を検出するセンサ、巻取軸211に巻き取られた使用済の窓箔31の巻取長さや巻取厚さ(径方向の寸法)を検出するセンサ、巻取ロール21の重量を検出するセンサなどである。
【0040】
報知部243は、ロール監視部242による巻出ロール22の監視結果に基づいて、所定の情報を報知する。所定の情報は、巻出ロール22に関する情報であり、例えば巻出ロール22の交換を促す情報である。報知部243は、例えばメッセージを表示する表示器(ディスプレイ)、警告音を鳴動させるスピーカ、所定の信号を発光させる警告灯、あるいはこれらを任意に組み合わせた報知装置などである。報知部243は、例えば主制御部241によって動作制御され、所定の情報を適宜報知する。なお、ロール監視部242が累積巻取量検出部を有する場合、報知部243は、巻出ロール22に関する情報に加えてもしくは代えて、巻取ロール21に関する情報、例えば巻取ロール21の交換を促す情報を報知してもよい。
【0041】
これらのロール監視部242および報知部243については、以下に説明する主制御部241が実行する窓箔交換処理の中で改めて説明する。
図5は、主制御部241が実行する窓箔交換処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0042】
図5に示すように、窓箔交換処理にあたって、主制御部241は、被照射物に対する電子線の累積照射量、換言すれば現在使用中の窓箔3(使用済の窓箔31)を透過する電子線の累積量を取得する(S101)。例えば、主制御部241は、被照射物に対する電子線の照射量を検出し、例えば該電子線の強度と照射時間によって電子線の照射量を算出し、その値を累積して主制御部241のメモリなどに保持する。被照射物に対する電子線の照射量は、例えば電子線照射装置10の電子線発生部12から主制御部241に付与され、主制御部241は、付与された電子線照射量に基づいて電子線の累積照射量を算出する。主制御部241は、電子線発生部12と所定の制御信号やデータ信号を有線もしくは無線を介して送受信する。
【0043】
電子線の累積照射量を取得すると、主制御部241は、メモリに保持した電子線の累積照射量を交換基準値と比較する。主制御部241は、例えば電子線の累積照射量が交換基準値を超えているか否かを判定する(S102)。電子線の累積照射量が交換基準値を超えていない場合(S102においてNo)、つまり交換基準値未満である場合、主制御部241は、かかる判定を繰り返す。かかる判定を繰り返す際の待機時間(インターバル)は、任意に設定可能である。例えば、主制御部241は、待機時間を実質的に0(ゼロ)として累積照射量の判定を常に繰り返してもよいし、所定の待機時間(インターバル)が経過した後、累積照射量を再判定してもよい。
【0044】
これに対し、電子線の累積照射量が交換基準値を超えた場合(S102においてYes)、主制御部241は、巻出ロール22の交換要否を判定する。すなわち、主制御部241は、巻出ロール22において未使用の窓箔32の巻き出しが可能か否かを判定する。なお、ロール監視部242が累積巻取量検出部を有する場合、主制御部241は、巻出ロール22の交換要否の判定に代えてもしくは加えて巻取ロール21の交換要否を判定してもよい。巻取ロール21の交換要否を判定は、巻取ロール21において使用済の窓箔31の巻き取りが可能か否かの判定である。
【0045】
主制御部241は、巻出軸221からの未使用の窓箔32の累積巻出量を取得する(S103)。未使用の窓箔32の累積巻出量は、上述したようにロール監視部242の累積巻出量検出部242aによって検出されている。
【0046】
主制御部241は、取得した累積巻出量に基づいて、巻出ロール22の交換要否を判定する。巻出ロール22の交換要否の判定にあたって、主制御部241は、未使用の窓箔32の累積巻出量を所定の閾値(以下、巻出上限値という)と比較する。主制御部241は、例えば未使用の窓箔32の累積巻出量が巻出上限値を超えているか否かを判定する(S104)。巻出上限値は、例えば主制御部241の記憶装置(不揮発メモリ)に書き込まれ、累積巻出量の判断時、つまり巻出ロール22の交換要否の判断時にパラメータとして読み出される。
【0047】
累積巻出量が巻出上限値を超えていない場合、つまり累積巻出量が巻出上限値以下である場合(S104においてNo)、主制御部241は、窓箔3の交換を行う(S105)。この場合、巻取ロール21での使用済の窓箔31の巻き取りおよび巻出ロール22での未使用の窓箔32の巻き出しがいずれも可能であるため、窓箔3の交換が自動で行われる。その際、主制御部241は、巻取ロール21の巻取軸211を回転させて所定長さだけ使用済の窓箔31を巻き取らせるとともに、巻出ロール22の巻出軸221を回転させて所定長さだけ未使用の窓箔32を巻き出させる。これにより、使用済の窓箔31が未使用の窓箔32に交換される。所定長さの使用済の窓箔31が巻き取られ、所定長さの未使用の窓箔32が巻き出されて窓箔3が交換されると、主制御部241は、巻取軸211および巻出軸221を停止させる。
【0048】
窓箔3が交換されると、主制御部241は、電子線の累積照射量を初期値(例えば0(ゼロ))にリセットする(S106)。例えば、主制御部241は、メモリなどに保持した電子線の累積照射量を0に上書きする。
【0049】
そして、主制御部241は、S105での交換後に使用される窓箔3(未使用の窓箔32)を透過して被照射物に照射される電子線の照射量の累積照射量の取得を開始する(S101)。すなわち、S105での交換後に使用される窓箔3に対する窓箔交換処理が新たに開始される。
【0050】
一方、累積巻出量が巻出上限値を超えている場合(S104においてYes)、主制御部241は、巻出ロール22の交換を促す情報を発する(S107)。この場合、主制御部241は、報知部243を動作させ、巻出ロール22の交換を促すべく、例えば表示器(ディスプレイ)に対するメッセージの表示、スピーカに対する音声の出力、警告灯に対する光の点灯などを行う。これにより、巻出ロール22の迅速な交換が可能となる。なお、累積巻出量が巻出上限値を超える前に、任意の回数で巻出ロール22の交換についての注意喚起や警告などを発するようにしてもよい。これにより、巻出ロール22の交換を要するまでに補充用や交換用の巻出ロール22を準備するなどの対応を取ることが可能となる。
【0051】
巻出ロール22の交換時には、巻取ロール21も併せて交換される。これらを同時に交換するのは、各々のロール交換に加えて、所定の調整作業が必要となるためである。例えば、交換後の巻出ロール22の未使用の窓箔32の先端部を、後述する磁性流体40によるシール箇所の直下から交換後の巻取ロール21まで導いて噛み込み固定し、窓箔3に適切な張力(テンション)をかけてレベリング調整などを行う必要がある。これらの作業は、真空状態のチャンバ部14を大気圧(常圧)に戻して(大気開放して)行われる。予備の巻取ロール21および巻出ロール22を常備しておくことで、ロール交換および調整作業を迅速に行うことができる。
【0052】
巻出ロール22の交換を促す情報を発すると、主制御部241は、窓箔自動交換装置1の運転停止条件を判定する(S108)。運転停止条件は、窓箔自動交換装置1を運転停止させるか否かの判定条件である。窓箔自動交換装置1は、電子線照射装置10の運転開始(起動)時に運転開始され、電子線照射装置10の運転停止(終了)時に運転停止される。したがって、運転停止条件は、例えば主制御部241が電子線照射装置10の運転停止を示す信号を受信したか否かなどに応じて判定される。運転停止を示す信号は、例えば電子線照射装置10の操作パネルやリモコンなどからユーザ等が運転停止を選択することで発信される。
【0053】
運転停止条件が成立しない場合(S108においてNo)、主制御部241は、運転停止を促す情報(以下、運転停止準備情報という)を発する(S109)。この場合、巻取ロール21および巻出ロール22の交換および所定の調整作業を要するため、窓箔自動交換装置1および電子線照射装置10を運転停止させる必要がある。したがって、主制御部241は、運転停止条件が成立するまで運転停止準備情報を報知する。運転停止準備情報は、例えば窓箔自動交換装置1や電子線照射装置10の操作パネルやリモコンなどからユーザ等が運転停止を選択するように促すための情報である。運転停止準備情報の報知にあたって、主制御部241は、報知部243を動作させ、窓箔自動交換装置1および電子線照射装置10の運転停止を促すべく、例えば表示器(ディスプレイ)に対するメッセージの表示、スピーカに対する音声の出力、警告灯に対する光の点灯などを行う。かかる報知は、例えば所定の待機時間(インターバル)が経過した後、繰り返し行われてもよい。
【0054】
運転停止準備情報を報知すると、主制御部241は、窓箔自動交換装置1の運転停止条件を再び判定する(S108)。すなわち、主制御部241は、運転停止条件が成立するまで該条件を繰り返し判定する。かかる判定を繰り返す際の待機時間(インターバル)は、任意に設定可能である。例えば、主制御部241は、待機時間を実質的に0(ゼロ)として運転停止条件の判定を常に繰り返してもよいし、所定の待機時間(インターバル)が経過した後、運転停止条件を再判定してもよい。
【0055】
運転停止条件が成立する場合(S108においてYes)、主制御部241は、巻出ロール22の累積巻出量をリセットする(S110)。例えば、主制御部241は、累積巻出量検出部242aが検出した未使用の窓箔32の累積巻出量を、累積巻出量検出部242aに0に上書きさせる。なお、ロール監視部242が累積巻取量検出部を有する場合、主制御部241は、巻出ロール22の累積巻出量のリセットに代えてもしくは加えて巻取ロール21の累積巻取量をリセットする。例えば、主制御部241は、累積巻取量検出部が検出した使用済の窓箔31の累積巻取量を、累積巻取量検出部に0に上書きさせる。
【0056】
そして、主制御部241は、窓箔自動交換装置1の運転を停止する(S111)。その際、例えば電子線照射装置10に電子線発生部12から被照射物に対する電子線の照射が停止するとともに、該被照射物の生産ラインも停止する。換言すれば、主制御部241は、電子線照射装置10および窓箔自動交換装置1が運転されている間、一連の窓箔交換処理を繰り返し、電子線照射装置10および窓箔自動交換装置1の運転が停止されると、一連の窓箔交換処理を終了する。これにより、巻取ロール21および巻出ロール22の交換が可能となる。巻取ロール21および巻出ロール22の交換は、人手によるものであってもよいし、自動によるものであっても構わない。
【0057】
このような窓箔交換処理は、チャンバ部14の真空状態が維持されたまま実行される。
真空維持機構4は、窓箔交換機構2が窓箔3を交換する際に電子線照射装置10のチャンバ部14の真空状態を維持するための機構である。換言すれば、上述した窓箔交換処理が実行されている間は、真空維持機構4によってチャンバ部14の真空状態が維持される。真空維持機構4としては、任意の機構を適用可能であるが、本実施形態では一例として、磁性流体を用いたシール機構(磁性流体シール機構)を適用する。上述したように、本実施形態では、使用済の窓箔31が未使用の窓箔32に交換される際、巻取ロール21と巻出ロール22との間で窓箔3が一方向へ連続的に、つまり直線的に移動する。すなわち、本実施形態では、このように直線的に移動する窓箔3が大気側との境界となっているチャンバ部14において、該チャンバ部14の真空状態を維持する機構として磁性流体シール機構が適用されている。
【0058】
図2および
図3に示すように、真空維持機構4は、主たる要素として、永久磁石41と、第1の磁性部材(以下、ポールピースという)42と、非磁性部材43と、フィルタ44と、磁性流体サーバ45と、第2の磁性部材(以下、下敷きという)46と、電磁石47と、窓箔冷却部48とを備えている。本実施形態では一例として、真空維持機構4のうち、永久磁石41、ポールピース42、非磁性部材43、フィルタ44、および磁性流体サーバ45がモジュール化され、該モジュールが取付盤49に溶接などにより固定されている。取付盤49は、シール部材、図示例ではOリング52をハウジング6との間に挟んで該ハウジング6に固定されている。これにより、取付盤49とハウジング6は、気密に、端的には電子線照射装置10のチャンバ部14の真空性を維持可能に一体化されている。
【0059】
永久磁石41は、例えば鉄(Fe)、コバルト(Co)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、およびサマリウム(Sm)などを原料の一部もしくは全部に含んで構成されている。永久磁石41は、電子線照射装置10の電子線照射窓部16の外周を取り囲むような環状をなしている。図示例では、五個の永久磁石41が電子線照射窓部16の開口中心と同心に間隔をあけて、放射線方向に直列となるように配置されている。電子線照射窓部16の開口の中心は、略長方形の対角線の交点であり、例えば開口形状が円形および長円形であれば円の中心、楕円であれば長軸と短軸の交点、正方形であれば長方形と同様に対角線の交点である。
【0060】
このように五個の永久磁石41が電子線照射窓部16の開口中心と同心に配置されることで、電子線照射装置10の電子線照射窓部16を境にして窓箔3の移動方向(図示例では第1の方向D1)の両側には、永久磁石41が五個、間にポールピース42、非磁性部材43、ポールピース42を挟んで並んだ状態となる。すなわち、これらの永久磁石41は、窓箔3の移動方向に各々の磁極面が並ぶように配置されている。電子線照射窓部16を境にした一方側は、使用済の窓箔31が巻き取られる側であり、他方側は未使用の窓箔32が巻き出される側である。以下、窓箔3の移動方向において電子線照射窓部16を境にした一方側を巻取側、他方側を巻出側という。配置される永久磁石41の数は、図示例のような五個には限定されず、後述する磁性流体40によるシール箇所の必要数、つまり求められるシール性に応じて任意に設定される。
【0061】
ポールピース42は、任意の磁性材で構成され、永久磁石41と同様に、電子線照射装置10の電子線照射窓部16の外周を取り囲むような環状をなしている。ポールピース42は、永久磁石41の各々の磁極面に磁力で吸着されている。換言すれば、ポールピース42は、永久磁石41の各々に対して一対をなして配置されている。本実施形態において、ポールピース42は、窓箔3における電子線の透過方向の前方(上下方向(第3の方向D3)の下方)に永久磁石41よりも突出している。
【0062】
図示例では、五個の永久磁石41の各々の磁極面にポールピース42がそれぞれ吸着されている。すなわち、二個で一組をなし、全部で十個のポールピース42が電子線照射窓部16の外周を取り囲むように配置されている。窓箔3の移動方向(図示例では第1の方向D1)においては、巻取側の五個の永久磁石41の各々の磁極面にそれぞれ吸着された十個のポールピース42が配置され、巻出側の五個の永久磁石41の各々の磁極面にそれぞれ吸着された十個のポールピース42が配置されている。
【0063】
非磁性部材43は、任意の非磁性材で構成され、隣り合うポールピース42の間に介在する。これにより、非磁性部材43を挟んで隣り合うポールピース42の各々には、それぞれ異なる永久磁石41の磁力が作用される。非磁性部材43は、隣り合うポールピース42の間で、これらのポールピース42と同心の環状をなしている。図示例では、五組のポールピース42の隣り合う組同士の間にそれぞれ一個ずつ、全部で四個の非磁性部材43が配置されている。一組のポールピース42は、一つの永久磁石41の各々の磁極面に対をなして吸着された二個のポールピース42である。
【0064】
フィルタ44は、例えば通気性セラミックで構成され、電子線照射装置10のチャンバ部14が真空引きされる際に後述する磁性流体40によるシール性の低下を抑止する。例えば、チャンバ部14に対する真空引き開始時に空気が粘性流動して対流すると、その程度によっては磁性流体40が破壊され、該磁性流体40によるシール性が低下する場合がある。このため、本実施形態においては、チャンバ部14が真空引きされる際、フィルタ44を通してのみ排気(真空引き)がなされる。また、真空状態のチャンバ部14を大気圧(常圧)に戻す(大気開放する)際、フィルタ44を通してのみパージガスの充填がなされる。したがって、フィルタ44は、チャンバ部14が真空状態とされる際の排気経路およびチャンバ部14が真空状態から大気開放される際のパージガスの充填経路に配置される。
【0065】
フィルタ44は、電子線照射装置10の電子線照射窓部16の外周を取り囲むような環状をなし、後述する磁性流体40によるシール範囲よりも電子線照射窓部16に対して内側に配置されている。図示例では、五組のポールピース42のうち、電子線照射窓部16に対して内側に配置された一組のポールピース(以下、最内ポールピースペアという)42aにフィルタ44が配置されている。例えば、最内ポールピースペア42aの各々には、貫通孔421が設けられており、該貫通孔421にフィルタ44が挿入される。フィルタ44と貫通孔421との間には、チャンバ部14の真空状態が維持されるように気密性を持ったシール部材を介在される。貫通孔421は、チャンバ部14が真空状態とされる際の排気経路およびチャンバ部14が真空状態から大気開放される際のパージガスの充填経路である。
【0066】
磁性流体サーバ45は、補充用の磁性流体40を貯留し、ポールピース42の一端部に吸着された磁性流体40が消耗されると、磁性流体40を自動的に補給する。すなわち、磁性流体サーバ45は、ポールピース42の一端部に磁性流体40を供給する。
【0067】
磁性流体40は、磁力によって引き寄せられて気体の漏れを防ぐ液状やゾル状のシール材であり、例えば水や油などをベース液とする磁性を有する液体やゾルである。磁性流体40は、ポールピース42の一端部に永久磁石41の磁力で吸着されている。ポールピース42の一端部は、窓箔3における電子線の透過方向の前端(上下方向(第3の方向D3)の下端)である。したがって、磁性流体40は、電子線照射装置10の電子線照射窓部16の外周を取り囲むように環状に連続する。
【0068】
図示例では、十個のポールピース42の各々の一端部に吸着された磁性流体40が電子線照射窓部16の外周を取り囲むように配置されている。窓箔3の移動方向(図示例では第1の方向D1)においては、巻取側の十個のポールピース42の一端部にそれぞれ吸着された磁性流体40が配置され、巻出側の十個のポールピース42の一端部にそれぞれ吸着された磁性流体40が配置されている。
【0069】
これらの磁性流体40は、電子線照射窓部16の外周で窓箔3と気密に接触する。すなわち、これらの磁性流体40が窓箔3と接触する箇所が各々の磁性流体40によるシール箇所となる。図示例では、巻取側の十箇所で磁性流体40が窓箔3と接触し、巻出側の十箇所で磁性流体40が窓箔3と接触している。したがって、巻取側の十箇所で電子線照射装置10のチャンバ部14がシールされ、巻出側の十箇所で該チャンバ部14がシールされている。
図2には、これら十箇所のシール箇所をまとめてシール領域40aとして模式的に示す。シール箇所の数、つまり磁性流体40と窓箔3との接触箇所の数は、チャンバ部14に要求される真空度に応じて任意に設定される。すなわち、かかる真空度に応じた数の永久磁石41およびポールピース42が配置され、該ポールピース42の一端部に磁性流体40が吸着されていればよい。
【0070】
磁性流体サーバ45からの磁性流体40の補給方法は、特に限定されない。本実施形態では一例として、磁性流体サーバ45は、毛細管現象により磁性流体40を補給する。ただし、磁性流体サーバ45は、ポンプ装置や噴出装置などを用いて磁性流体40を補給してもよい。
【0071】
図示例では、電子線照射窓部16の外周を取り囲むように配置された十個のポールピース42の各々の一端部に吸着された磁性流体40に対し、磁性流体サーバ45から磁性流体40が補給される。具体的には、磁性流体サーバ45は、磁性流体40が消耗したポールピース42の一端部に対し、磁性流体サーバ45から磁性流体40が適宜補給される。したがって、電子線照射窓部16の外周を取り囲む各々の磁性流体40によるシール箇所のシール性が常に適正に保たれる。これにより、電子線照射装置10のチャンバ部14を所望の真空状態に維持可能となる。
【0072】
下敷き46は、任意の磁性材で構成され、電子線照射装置10の電子線照射窓部16との間に窓箔3を介在させた状態で、該電子線照射窓部16の外周を取り囲むような環状をなしている。下敷き46は、窓箔3を挟んで磁性流体40とは反対側に配置されている。これにより、下敷き46は、窓箔3を挟んで磁性流体40と永久磁石41の磁力で引き合う。磁性流体40と下敷き46とが引き合うことで、両者がシール箇所において窓箔3とそれぞれ密着する。窓箔3の磁性流体40側は、電子線照射装置10のチャンバ部14と連通する真空側であり、下敷き46は窓箔3の大気側に位置する。
【0073】
このとき、磁性流体40は、窓箔3における電子線の透過方向の後方の面3aと密着する。一方、下敷き46は、窓箔3における電子線の透過方向の前方の面3bと密着する。図示例において、窓箔3の面3aは上下方向(第3の方向D3)の上面であり、面3bは下面である。下敷き46は、上面(窓箔3における電子線の透過方向の後方の面)46aが窓箔3の下面である面3bと密着する。
【0074】
電磁石47は、下敷き46における窓箔3との接触側とは反対側に配置され、窓箔3および磁性材である下敷き46を介して磁力により磁性流体40を引き付ける。図示例では、下敷き46の下面(窓箔3における電子線の透過方向の前方の面)46b側に電磁石47が配置されている。電磁石47は、下敷き46の下面46bの略全体に亘る磁極面(磁場)を有する環状をなしている。これにより、電磁石47は、下敷き46の下面46bの略全体に対して磁力を作用させる。
【0075】
ここで、例えば窓箔3の材質や表面性状などによっては、窓箔3と磁性流体40との摩擦が大きくなり、巻取ロール21と巻出ロール22との間で窓箔3が移動する際、磁性流体40が窓箔3に引きずられて該窓箔3とともに移動する場合がある。上述したように、窓箔3が移動する際、該窓箔3を介して磁性流体40と下敷き46とが永久磁石41の磁力で引き合うとともに、該磁性流体40が電磁石47の磁力で磁性流体40に引き付けられる。したがって、磁性流体40を下敷き46に対して固着させることができ、移動する窓箔3に磁性流体40が引きずられることを抑止できる。
【0076】
窓箔冷却部48は、使用済の窓箔31が未使用の窓箔32に交換される際、使用済の窓箔31および該窓箔31と連続する未使用の窓箔32を冷却する。被照射物に電子線が照射されると該電子線は窓箔3を透過するが、すべてが透過する訳ではなく、その一部は該窓箔3にとどまる。このため、使用済の窓箔31の温度が上昇する。例えば、加速電圧が高い条件下で電子線照射される場合、使用済の窓箔31の温度が非常に高温となる。このように高温の状態のままで窓箔3を巻取軸211で巻き取ると、高温の窓箔3が磁性流体40を加熱させる。磁性流体40が過度に加熱されると、該磁性流体40のベース液が加熱、昇温、蒸発して磁性流体40のシール性が低下するおそれがある。
【0077】
窓箔冷却部48は、窓箔3の交換時に該窓箔3を冷却し、このような磁性流体40のシール性の低下を抑止する。したがって、窓箔3の交換時における該窓箔3の巻出側から巻取側への移動速度は、該窓箔3が窓箔冷却部48によって適切に冷却できるだけの冷却時間を確保可能な速度に調整されている。すなわち、巻取ロール21の巻取軸211および巻出ロール22の巻出軸221の回転速度が窓箔3を適切に冷却可能な速度に調整される。
【0078】
窓箔冷却部48の冷却機構は、磁性流体40のシール性を低下させることのない温度まで窓箔3を冷却することが可能であれば特に限定されない。例えば、窓箔3と接触して吸熱する銅製やアルミニウム製などの吸熱パネルを有する水冷式の冷却機構、あるいは冷却ガスなどを窓箔3に向けて噴出するノズルを有する空冷式の冷却機構などを窓箔冷却部48として適用できる。本実施形態では一例として、水冷式の冷却機構が適用された例を図示する。図示例では、窓箔冷却部48は、窓箔3の下面である面3bに吸熱パネルを接触させて窓箔3を冷却する。
【0079】
窓箔冷却部48は、電子線照射装置10の電子線照射窓部16との間に窓箔3を介在させた状態で、該電子線照射窓部16の外周を取り囲むような環状をなしている。窓箔冷却部48は、永久磁石41、ポールピース42、非磁性部材43、および磁性流体サーバ45からなるモジュールよりも、電子線照射窓部16に対して内側に配置されている。これにより、窓箔冷却部48は、被照射物に対して照射される電子線が透過する窓箔3の部位の近傍を大気側から冷却する。
【0080】
すなわち、窓箔冷却部48によって窓箔3が冷却される領域(以下、窓箔冷却領域という)は、磁性流体40によるシール箇所よりも内側に位置し、該シール箇所からは外れている。したがって、窓箔冷却領域において、窓箔3には所定の押圧部材50によって押圧力が作用されている。押圧部材50から窓箔3に対して押圧力が作用されることで、窓箔3が移動する際に該窓箔3の窓箔冷却領域が波打ったり、しわになったりすることが抑止される。このような波打ちやしわを抑制可能であれば、押圧部材50は任意に適用できる。本実施形態では一例として、スプリング(コイルばね)が適用された例を図示する。
【0081】
図示例において、押圧部材50は、窓箔冷却部48を窓箔3に向けて押圧して該窓箔冷却部48を窓箔3に押し付けることで、窓箔冷却部48を介して窓箔3に押圧力を作用させる。したがって、押圧部材50は、窓箔3の下面である面3bに対して上向きの押圧力を作用させる。
【0082】
本実施形態において、窓箔3は、レベリングロール23によって水平状態を保ったまま巻取ロール21と巻出ロール22との間を移動する。その際、レベリングロール23は、窓箔3の上面である面3aに対して下向きの押圧力を作用させる。このため、押圧部材50は、レベリングロール23によって作用される下向きの押圧力、つまり押圧部材50が窓箔3に対して作用させる押圧力とは逆向きの力に応じて、上向きの押圧力を窓箔3に作用させる。これにより、窓箔3には、移動時の姿勢が水平状態に保たれるように適切な張力(テンション)がかけられる。
【0083】
本実施形態に係る窓箔自動交換装置1は、次のような作用効果を奏する。窓箔自動交換装置1は、窓箔交換機構2を備えており、使用済の窓箔31が巻取軸211で巻き取られて巻取ロール21とされ、未使用の窓箔32が巻出ロール22とされて巻出軸221で巻き出される。したがって、巻取ロール21および巻出ロール22を適切にセットしておくことで、使用中の窓箔3を透過して照射される電子線の累積照射量が交換基準値を超えた場合、該窓箔3を未使用の窓箔32に自動的に交換することができる。交換基準値は、例えば窓箔3に対して許容される累積照射量の最大値の80%から90%程度に設定可能であるため、窓箔3が寿命となる前に該窓箔3を自動的に交換できる。このため、窓箔3を適切に使用し続けることができる。これにより、被照射物に対する電子線の照射を適切に繰り返すことができる。
【0084】
加えて、窓箔自動交換装置1は、電子線照射装置10のチャンバ部14の真空状態を維持する真空維持機構4を備えている。真空維持機構4において、磁性流体40が電子線照射窓部16の外周で窓箔3と気密に接触し、チャンバ部14がシールされている。これにより、使用済の窓箔31の未使用の窓箔32との交換時、巻取ロール21と巻出ロール22との間で窓箔3が移動する際にも、磁性流体40を該窓箔3と気密に接触させることができる。したがって、窓箔3の交換時にチャンバ部14の真空状態を適切に維持することができる。すなわち、チャンバ部14の真空状態を維持しながら、窓箔3を交換することができる。これにより、例えば定期点検や修理などの理由で電子線照射装置10を停止させる場合以外は、電子線照射装置10を連続的に稼働させることができる。その結果、被照射物に対する電子線の照射し続けることができる。
【0085】
このため、例えば従来のように窓箔3を交換する際、電子線照射装置10を一旦停止させてチャンバ部14を高真空の状態から大気圧に戻す必要がない。したがって、生産ラインを窓箔3の交換のために停止させずに済む。
【0086】
このように本実施形態に係る窓箔自動交換装置1によれば、電子線照射装置10をほぼ無停止で連続稼働させることができるため、生産性の向上を図ることができる。
【0087】
以上、本発明の実施形態を説明したが、かかる実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。かかる新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1…窓箔自動交換装置、2…窓箔交換機構、3…窓箔、3a…窓箔の面(上面)、3b…窓箔の面(下面)、4…真空維持機構、6…ハウジング、10…電子線照射装置、12…電子線発生部、14…チャンバ部、16…電子線照射窓部、21…巻取ロール、22…巻出ロール、23,23a,23b…レベリングロール、24…窓箔交換制御部、25…窓箔冷却部、31…使用済の窓箔、32…未使用の窓箔、40…磁性流体、40a…シール領域、41…永久磁石、42…第1の磁性部材(ポールピース)、43…非磁性部材、44…フィルタ、45…磁性流体サーバ、46…第2の磁性部材(下敷き)、46a…第2の磁性部材(下敷き)の上面、46b…第2の磁性部材(下敷き)の下面、47…電磁石、48…窓箔冷却部、49…取付盤、50…押圧部材、51,52…Oリング、61…開口部、61a…フランジ、121…フィラメント、122…電源、140…真空チャンバ、141…加速管、142…走査管、143…走査コイル、211…巻取軸、221…巻出軸、231…回転軸、232…カバー、241…主制御部、242…ロール監視部、242a…累積巻出量検出部、243…報知部、D1…第1の方向、D2…第2の方向、D3…第3の方向。
【要約】
【課題】電子線照射装置において電子線が照射される真空チャンバの窓箔を自動的に交換することが可能な窓箔自動交換装置を提供する。
【解決手段】窓箔自動交換装置1は、電子線照射装置10の窓箔3を巻き取るとともに巻き出して窓箔を交換する窓箔交換機構2を備える。窓箔交換機構は、窓箔の巻取ロール21と、窓箔の巻出ロール22と、レベリングロール23と、窓箔交換制御部24とを有する。窓箔交換制御部は、窓箔を透過して被照射物に照射される電子線の累積照射量に応じて、巻取ロールでの窓箔の巻取長さおよび巻出ロールでの窓箔の巻出長さを制御する。
【選択図】
図1