(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】縄跳び用の縄止め具
(51)【国際特許分類】
A63B 5/20 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
A63B5/20 A
(21)【出願番号】P 2024028389
(22)【出願日】2024-02-28
【審査請求日】2024-02-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513044500
【氏名又は名称】有限会社氷川工作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100104396
【氏名又は名称】新井 信昭
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 幸治
【審査官】宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-178865(JP,A)
【文献】実公昭48-033269(JP,Y1)
【文献】実開昭63-053564(JP,U)
【文献】中国実用新案第212880746(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側開口から差し入れた跳び縄の端を他端側開口から引き出し可能な中空部を有する円筒状のグリップ内に配され、前記グリップの中空部内に差し入れた前記跳び縄の所望部位に解除可能に仮固定されかつ前記一端側開口から抜けない形状に構成された縄跳び用の縄止め具において、
前記跳び縄を差し入れるための外中空部と前記外中空部より大径の圧入凹部を有する外リング部材と、前記圧入凹部に解除可能に圧入できかつ前記跳び縄を差し入れるための内中空部を有する内リング部材と、を備え、
前記外中空部と前記内中空部とは、それぞれに差し入れた前記跳び縄の所望部位が圧入により屈曲した状態で挟まれることで仮固定されるように互いに非同心に構成されている、
ことを特徴とする縄跳び用の縄止め具。
【請求項2】
前記内リング部材は、前記圧入凹部に圧入する内小径部と、前記内小径部より大径で内段部を介して連続する内大径部と、を備える、
ことを特徴とする請求項1の縄跳び用の縄止め具。
【請求項3】
前記外中空部は前記外リング部材の径方向中心に形成され、前記内中空部は前記内リング部材の径方向に偏心して形成されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の縄跳び用の縄止め具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、跳び縄の端をグリップ内で仮固定するための縄跳び用の縄止め具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、縄跳びのグリップ内にそれぞれ差し込んだロープの両端を、同じくグリップの細径部内のそれぞれに差し込んだ挟着手段を径方向に縮めて楔挟持するよう長さ調整用止め具が示されている。挟着手段は、複数本の足を持つ五徳に類似した形態を備え、それぞれの足の先端がロープ両端を楔挟持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の挟着手段は、上記のとおり五徳に類似する形状であるため、その構造が複雑である点に課題がある。本発明は、構造が単純な縄跳び用の縄止め具(以下、単に「縄止め具」という)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本発明は、次の特徴を備えている。
【0006】
(請求項1記載の発明の特徴)
請求項1記載の発明に係る縄止め具は、一端側開口から差し入れた跳び縄の端を他端側開口から引き出し可能な中空部を有する円筒状のグリップ内に配され、前記グリップの中空部内に差し入れた前記跳び縄の所望部位に解除可能に仮固定されかつ前記一端側開口から抜けない形状に構成された縄跳び用の縄止め具である。請求項1の縄止め具は、前記跳び縄を差し入れるための外中空部と前記外中空部より大径の圧入凹部を有する外リング部材と、前記圧入凹部に解除可能に圧入できかつ前記跳び縄を差し入れるための内中空部を有する内リング部材と、を備え、前記外中空部と前記内中空部とは、それぞれに差し入れた前記跳び縄の所望部位が圧入により屈曲した状態で挟まれることで仮固定されるように互いに非同心に構成されている、ことを特徴とする。
【0007】
(請求項2記載の発明の特徴)
請求項2記載の発明に係る縄止め具は、請求項1の止め具の好ましい態様として、前記内リング部材は、前記圧入凹部に圧入する内小径部と、前記内小径部より大径で内段部を介して連続する内大径部と、を備える、
ことを特徴とする、ことを特徴とする。
【0008】
(請求項3記載の発明の特徴)
請求項3記載の発明に係る縄止め具は、請求項1または2の止め具の好ましい態様として、前記外中空部は前記外リング部材の径方向中心に形成され、前記内中空部は前記内リング部材の径方向に偏心して形成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、部材自体が単純な構造の外リングに、同じく単純な構造の内リングを圧入するだけで両者に差し入れた跳び縄に固定しグリップからの抜け止めにすることができる。このように単純な構造で跳び縄をグリップに固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】縄止め具の縦断面図である。ハッチングは省略する。
【
図6】
図5と反対方向から見た縄止め具の斜視図である。
【
図7】グリップ内に収納された縄止め具の縦断面部分図である。ハッチングは省略する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
各図を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下、適宜「本実施形態」という)を説明する。
【0012】
(跳び縄具の構造)
図1に示す符号1は、跳び縄具を示す。跳び縄具101は、主として自らが両手で回す跳び縄が地上付近を通過する際に飛び越していく遊びや運動のための道具のことである。単に縄跳び縄あるいはジャンプロープなどと呼ばれることもある。跳び縄具101は、跳び縄3と、飛び縄3の両端に取り付けられたグリップ5,5と、グリップ5,5の中に入っている縄止め具1,1を主要部材とする。二個あるうちの一方の縄止め具1は、一方のグリップ5(
図1の左側)の中に見えるように描いてあるが、他方のグリップ5(
図1の右側)の中に入っている縄止め具1は
図1では隠れて見えない。なお、以下の説明においては、一方のグリップ5のみの説明を行い、他方のグリップ5については一方のグリップ5と同じ構造・機能であるから説明を省略する。
【0013】
グリップ5は、中空部5cを有する所定径・所定長さの円筒状部材である。グリップ5の素材は、その軽さと製造のしやすさから合成樹脂が一般的であるが、特に制限はない。中空部5cは、跳び縄3側に位置する一端側開口5aから始まり、反対側に位置する他端側開口5bで終わる。ここで、中空部5cは、一端側開口5aから差し入れた跳び縄3の端を他端側開口5bから引き出し可能になっている。つまり、跳び縄3の一部が中空部5cの中に配される。縄止め具1は、中空部5c内に差し入れた跳び縄3の所望部位に解除可能に仮固定されかつ一端側開口5aから抜けない形状に構成されている。その一方で、縄止め具1は、他端側開口5bから抜けられるようになっている。つまり縄止め具1は、一端側開口5aから他端側開口5bに向かって一方通行に移動抑制されている。解除可能な仮固定については、後述する。なお、跳び縄3の素材は、縄跳びができるものであれば何でもよく、おもにプラスチック、ワイヤー、綱、ビーズなどが用いられる。本実施形態の跳び縄3の断面形状は円形であるが、これに限定されるものではない。
【0014】
(縄止め具の構成)
図2から7に示す縄止め具1は、跳び縄3を差し入れる外リング部材9と同じく内リング部材7を含む部材であり、全体が合成樹脂で構成されている。外リング部材9と内リング部材7は、それらを後述するように組み合わせた状態でグリップ5の中空部5cの中にスカスカにすっぽり入る外径に作られている(
図1,7)。
【0015】
(外リング部材の構造)
主として
図5および6に示すように外リング部材9は、言葉そのままリング状の部材であって、長さ方向に貫通する断面円形の外中空部9cを有している。外中空部9cの位置は外リング部材9の中心に配してある。外中空部9cが中心にあることにより跳び縄3がグリップ5の一端側開口5aの中心に位置することになり、これにより跳び縄3の回転を均一に保ちやすいからである。その一方で半径方向に所望寸法だけ偏心させておくともできる。外中空部9cの断面形状は、上述のとおり円形にしたのは、跳び縄3の断面形状が円形に合わせてそれを差し入れやすくするためであるが、円形以外の形状を妨げる趣旨ではない。外中空部9cの径寸法は、差し入れた跳び縄3が自重で滑り落ちない程度の摩擦を与えられる、すなわち、解除可能に仮固定できる寸法に設定することが好ましい。仮固定可能にすることにより、跳び縄3の長さ(グリップ4内に差し入れる長さ)の調整の際に一時的に手放しができるなど、作業が簡単になるからである。仮固定のための特別な構造を設けることを妨げるものではないが、摩擦による仮固定であれば、構造的に簡単である。解除や解除を伴う位置変えは、外リング部材9を持って跳び縄3の長さ方向にスライドするだけで行えるのでとても簡単である。
【0016】
外リング部材9は、外中空部9cを直接囲む外小径部9bと、外小径部9bより大径同心で内リング部材7の方向にずれた位置にある外大径部9aとを有している。見た目では、外大径部9aから外小径部9bが長さ方向に突き出た状態になっている(
図5)。外大径部9aは、外中空部9cより大径同心の圧入凹部9dを備え、両者間には外段部9eが介在している(
図6)。圧入凹部9dは、外中空部9cの一部を包囲している、もしくは、外中空部9cの一部を兼ねる空間である、ということもできよう。外大径部9aの外周面は、作業時に指の力が伝わりやすいように、ローレット加工(図示省略)などを施しておくとよい。なお、
図6の符号9fは、外大径部9aの内リング部材7に面する側の端面(外端面)を示す。外大径部9aの外径寸法は、グリップ5のから抜け出ないようにするため、一端側開口5aの内径よりも大径に形成されている。
【0017】
(内リング部材の構造)
引き続き
図5および6を中心に説明を続ける。内リング部材7は、外リング部材9の圧入凹部9dに圧入する内小径部7bと、内小径部7bと同心でそれより大径の内大径部7aとを備える。内小径部7bと内大径部7aとの間には、内段部7eが介在している。内小径部7bの外径は、圧入凹部9dの内径より、解除可能な手動圧入に適した分だけ小径になっている。内小径部7の長さは、圧入凹部9dの長さより長く形成することが好ましい。これが短すぎると、圧入したときの内端面7fと外段部9eとの間にできる空間が飛び縄3を屈曲状態で挟持することが十分にできないことが考えられるからである(
図7)。
【0018】
内大径部7bと内大径部7aの両者を貫通するのが、内中空部7cである。内中空部7cの径寸法は、外中空部9cの径寸法と同様に、差し入れた跳び縄3が自重で滑り落ちない程度の摩擦を与えられる、すなわち、解除可能に仮固定できる寸法に設定することが好ましい。内中空部7cは、内大径部7bと内大径部7aの中心に対し径方向に偏心している。これは、外中空部9cの中心と非同心の関係にするためである。非同心であるから、内中空部7cに差し入れた跳び縄3が、圧入したときに内端面7fと外段部9eとの間で屈曲状態にて挟持されるのである(
図7)。なお、非同心を形成するため本実施形態では、上述のとおり外中空部9cを外リング部材9の中心に、内中空部7cを内リング部材7の径方向に偏心させた位置に、それぞれ配してあるが、この関係は逆であってもよい。また、内中空部7cと外中空部9cの両方を中心から径方向に偏心させてもよい。なお、内大径部7aの外周面は、作業時に指の力が伝わりやすいように、ローレット加工(図示省略)などを施しておくとよい。
【0019】
(跳び縄具の使用方法)
前述のとおり縄止め具1は、グリップ5の中空部5c内に差し入れた跳び縄3の所望部位に解除可能に仮固定されかつ一端側開口5aから抜けない形状に構成されている(
図7)。ここで跳び縄3を持ってグリップ5の中に押し返すと、縄止め具1が飛び縄3とともにグリップ5の他端側開口5bから出てくる。出てきた縄止め具1の外大径部9aと内大径部7aのそれぞれを手で持って引き離すと、圧入凹部9d(外リング部材9)に圧入されていた内小径部7b(内リング部材7)が抜け跳び縄3の屈曲状態が解けて移動が可能になる。ここで、内リング部材7と外リング部材9の両者を跳び縄3の所望位置に移動させてから再圧入すると、跳び縄3の屈曲が縄止め具1の中で再形成されて移動が制限される。この状態で跳び縄3を一端側開口5aの方に引くと、縄止め具1が他端側開口5b(
図1)からグリップ5(中空部5c)内に引き込まれ一端側開口5aに邪魔され、それ以上の移動ができなくなる(
図7)。これで跳び縄3の長さ調整が完了する。以上は、一方のグリップにおける長さ調整であるが、他方のグリップ5における長さ調整も同じである。
【0020】
(本実施形態特有の効果)
以上のとおり、内リング部材7と外リング部材9という2個の最小数部材のみによって跳び縄の長さ調整ができるし、その調整操作も簡単である。たいへん使い勝手のよい縄止め具1である。
【符号の説明】
【0021】
1:縄止め具、3:跳び縄、3a:屈曲部、5:グリップ、5a:一端側開口、5b:他端側開口、5c:中空部、7:内リング部材、7a:内大径部、7b:内小径部、7c:内中空部、7e:内段部、7f:内端面、9:外リング部材、9a:外大径部、9b:外小径部、9c:外中空部、9d:圧入凹部、9e:外段部、9f:外端面、101:跳び縄具
【要約】
【課題】 構造が単純な縄跳び用の縄止め具を提供する
【解決手段】 中空部(5c)を有する円筒状のグリップ(5)内に配され、前記グリップの中空部内に差し入れた跳び縄(3)の所望部位に解除可能に仮固定されかつ抜けない形状に構成された縄跳び用の縄止め具(1)において、前記跳び縄を差し入れるための外中空部(9c)と前記外中空部より大径の圧入凹部(9d)を有する外リング部材(9)と、前記圧入凹部に解除可能に圧入できかつ前記跳び縄を差し入れるための内中空部(7c)を有する内リング部材(77)と、を備え、前記外中空部と前記内中空部とは、それぞれに差し入れた前記跳び縄の所望部位が圧入により屈曲した状態で挟まれることで仮固定されるように互いに非同心に構成されている。外リングに内リングを圧入するだけで跳び縄を固定しグリップからの抜け止めにすることができる。
【選択図】
図7