(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】コミュニティ通貨と法定通貨を組み合わせて決済する決済システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 20/04 20120101AFI20240515BHJP
【FI】
G06Q20/04
(21)【出願番号】P 2024061633
(22)【出願日】2024-04-05
(62)【分割の表示】P 2024016597の分割
【原出願日】2024-02-06
【審査請求日】2024-04-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523221120
【氏名又は名称】株式会社コミューン
(74)【代理人】
【識別番号】100108051
【氏名又は名称】小林 生央
(72)【発明者】
【氏名】西部 忠
(72)【発明者】
【氏名】前田 諭志
(72)【発明者】
【氏名】讃岐 浩太
(72)【発明者】
【氏名】金子 哲司
【審査官】岡北 有平
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0027239(KR,A)
【文献】韓国登録特許第2173129(KR,B1)
【文献】特開2021-108051(JP,A)
【文献】特開2023-86976(JP,A)
【文献】特開2022-62242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品販売者または役務提供者の店に設置された決済端末と、前記決済端末に店舗決済業者間通信手段を介して接続される決済業者の決済サーバコンピュータと、前記決済サーバコンピュータに決済業者金融機関間通信手段を介して接続されるクレジットカード会社、デビットカード会社、プリペイドカード会社、電子マネー会社、コード決済アプリ管理会社、ポイント管理会社、掛け売り管理会社を含む金融機関の決済認証サーバコンピュータとを有し、法定通貨を用いた商品または役務の代金決済を可能とする決済システムであって、
前記決済サーバコンピュータはさらに、閉じたコミュニティ内で用いられ、法定通貨との交換を行わない通貨であり消費税の支払いには用いない口座型コミュニティ通貨を管理するコミュニティ通貨管理サーバコンピュータに接続され、
前記コミュニティ通貨管理サーバコンピュータは、
前記閉じたコミュニティに属する会員を特定可能であり、本人確認に必要な会員情報を保存する会員情報保存装置と、
前記会員の一人一人が有するコミュニティ通貨の取引額、残高の履歴を記録する会員口座取引履歴記録装置と、
前記会員口座取引履歴記録装置に記録されている口座残高についての総和を計算してゼロであることを確認するゼロサム確認装置と
を有し、
前記決済端末は、
前記商品販売者又は前記役務提供者が、顧客と同一のコミュニティ通貨を利用するコミュニティに属する場合であって、商品または役務の代金のうち消費税を含まない本体価格の一部を当該コミュニティ通貨を用いて支払うことに合意した場合に、前記本体価格のうち法定通貨で支払う額とそれに対応する消費税額、前記コミュニティ通貨を用いて支払うコミュニティ通貨の取引額、そして当該顧客が前記コミュニティに属することを確認するために必要な本人確認情報を前記決済サーバコンピュータに送って決済の可否を問う決済可否照会装置と、
前記サーバコンピュータから決済が可能であるとの回答がある場合に決済を実行する決済実行装置と、
決済を実行した旨を前記決済サーバコンピュータに送る決済実行結果通知装置と
を有し、
前記決済サーバコンピュータは、
前記決済端末の前記決済可否照会装置から法定通貨とコミュニティ通貨との双方の取引を組み合わせて決済する決済の可否を問う照会があると、法定通貨の取引額については前記決済認証サーバコンピュータに問合せ、前記コミュニティ通貨の取引については前記コミュニティ通貨管理サーバコンピュータに問合せる認証要求装置と、
前記認証要求装置の求めに応じて、前記決済認証サーバコンピュータと前記コミュニティ通貨管理サーバコンピュータとの双方が決済可能との回答である場合に前記決済端末に決済が可能であるとの回答を送り、いずれか一方が決済が不可であるとの回答である場合に前記決済端末に決済が不可であるとの回答を送る決済可否回答装置と、
前記決済端末の前記決済実行結果通知装置から決済を実行した旨を受け取った場合に、前記決済認証サーバコンピュータ及び前記コミュニティ通貨管理サーバコンピュータに当該取引の金額を含む情報を送る取引結果処理装置と
を有し、
一つの取引についてコミュニティ通貨と法定通貨とを組み合わせて決済することを可能とする決済システム。
【請求項2】
請求項1に記載した決済システムであって、
前記口座型コミュニティ通貨の一つの取引における取引額または個々の口座における残高は、マイナス額になり得るものであり、
前記コミュニティ通貨管理サーバコンピュータは、
一つの取引における取引額の上限、または個々の口座における残高の下限及び上限を監視する取引額残高上限監視装置
を更に有しており、
前記決済サーバコンピュータの認証要求装置が前記コミュニティ通貨の取引について前記コミュニティ通貨管理サーバコンピュータに問い合わせる際に、顧客の本人確認だけでなく、取引額又は口座残高の上限に達するか否かをも確認して、回答する
ことを特徴とする決済システム。
【請求項3】
請求項1に記載した決済システムであって、
前記決済端末は、専用品としての決済端末であって、
さらに、
顔認証カメラ又は情報埋め込み図形読込カメラ
を有しており、
前記顔認証カメラで顧客の顔を読み取ること、又は前記情報埋め込み図形読込カメラで顧客本人を識別する情報埋め込み図形を読み込んで、本人確認情報とし、当該本人確認情報を前記決済サーバコンピュータに送る
ことを特徴とする決済システム。
【請求項4】
請求項1に記載した決済システムであって、
前記決済端末は、前記商品販売者または役務提供者の店に設置されたスマートフォンにコミュニティ通貨の取引と法定通貨の取引との双方を可能とするアプリケーションプログラムをインストールしたものであって、
前記スマートフォンに内蔵されたカメラを用いて、顧客の顔又は顧客本人を識別する情報埋め込み図形を読み込んで、本人確認情報とし、当該本人確認情報を前記決済サーバコンピュータに送る
ことを特徴とする決済システム。
【請求項5】
請求項1に記載した決済システムであって、
前記決済端末は、顧客のスマートフォンにコミュニティ通貨の取引と法定通貨の取引との双方を可能とするアプリケーションプログラムをインストールしたものであって、
前記スマートフォンに内蔵されたカメラを用いて、前記商品販売者または役務提供者の店を識別する情報埋め込み図形を読み込んで、本人確認情報とし、当該本人確認情報を前記決済サーバコンピュータに送る
ことを特徴とする決済システム。
【請求項6】
請求項1に記載した決済システムであって、
前記決済端末は、顧客のスマートフォンにコミュニティ通貨の取引を可能とするアプリケーションプログラムをインストールするとともに、
法定通貨の取引を可能とするアプリケーションプログラムをもインストールしたものであって、
前記スマートフォンに内蔵されたカメラを用いて、前記商品販売者または役務提供者の店を識別する情報埋め込み図形を読み込んで、本人確認情報とし、当該本人確認情報を前記決済サーバコンピュータに送る
ことを特徴とする決済システム。
【請求項7】
請求項1に記載した決済システムであって、
前記コミュニティ通貨管理サーバコンピュータの前記ゼロサム確認装置は、一定周期で口座残高の総和を計算してゼロであることを確認し、万一ゼロでない場合には、その原因となった取引を検出し、その旨を当該取引に関わった決済サーバコンピュータに通知し、訂正を求める
ことを特徴とする決済システム。
【請求項8】
請求項1に記載した決済システムであって、
前記コミュニティに属する会員は、自己の保有するコミュニティ通貨の残高、取引履歴を確認するための口座アプリケーションプログラムを自己のスマートフォンにダウンロードし、インストールすることができ、当該アプリケーションを用いて会員相互間のコミュニティ通貨の授受を可能とすることを特徴とする決済システム。
【請求項9】
請求項1に記載した決済システムであって、
前記コミュニティ通貨管理サーバコンピュータは、
さらに
当該コミュニティ通貨の流れを把握し、可視化するためのコミュニティ通貨可視化装置
を有しており、当該可視化装置により当該コミュニティ通貨が会員の誰から誰への流れがよくなされているかが一目でわかるようにしたことを特徴とする決済システム。
【請求項10】
請求項1に記載した決済システムであって、
前記コミュニティ通貨は、値引き権利として機能することを特徴とする決済システム。
【請求項11】
請求項1に記載した決済システムであって、
前記コミュニティ通貨は、当該コミュニティに属するメンバー間で交換可能であることを特徴とする決済システム。
【請求項12】
請求項1に記載した決済システムであって、
前記コミュニティ通貨の口座残高はマイナス額になり得るものであることを特徴とする決済システム。
【請求項13】
請求項1に記載した決済システムであって、
前記コミュニティ通貨の当該コミュニティにおける口座残高の総和はゼロであることを特徴とする決済システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉じたコミュニティ内で用いられる通貨であるコミュニティ通貨と、日本国における日本円のように国家の中央銀行が発行する通貨である法定通貨とを一つの商取引において組み合わせて決済することを可能とするコンピュータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、地域通貨とも呼ばれる閉じたコミュニティ内で用いられる通貨がさまざまな形で使われてきた。地域活動、ボランティア活動を活性化する目的でボランティア活動をした人に対して地域通貨を発行し、それを受け取った人は地域内の飲食店で食事ができたり、地域内の商店で買い物ができたりするものがあった。地域通貨は所定の地方自治体の住民であることを前提として発行し、使えるようにする場合もあるが、住所の限定を設けずにコミュニティを広げることも可能であるので、この明細書にあっては「コミュニティ通貨」と呼ぶこととする。
とりわけLETS(Local Exchange Trading System)型通貨と呼ばれる中央銀行や政府の管理下にない通貨は、地域内で財やサービスを提供するために使用される。商品や役務の需要と供給の調整を促進することができる。地域経済の成長を促進し、地域経済の成長を促進することができる。LETS型通貨のやりとりは、消費税のかからないものである。
一方で、ポイント制度と呼ばれるものがある。クレジットカード会社や、ドラッグストアのチェーン店、飲食店のチェーン店など様々な業種において顧客の囲い込み(リピーターの確保)のために、顧客の消費額に応じてポイントを発行し、たまったポイントを景品に交換する、または現金と同等の価値に交換する(値引きに用いる)ということがなされる。ここでは、私企業の売り上げを伸ばす目的の値引きに使われるものであるので、ポイント消費を消費税の計算と切り離すという概念はなくなって、消費税と切り分けずに使うようになっている。
【0003】
特許文献1には、
電子通貨を収納した記録手段を多数格納して、金庫の外部の記録手段との間で電子通貨の出し入れを行う電子通貨システムにおける電子金庫において、その本体部内部に、制御回路、電源、及び、前記記録手段に対するカードリーダ/ライタを収納したことを特徴とする電子通貨システムにおける電子金庫が開示されている。
前記記録手段がICカードであることを特徴とする電子通貨システムにおける電子金庫が開示されている。
前記本体部内部に収納される制御回路、電源、及び、多数のカードリーダ/ライタを含む内部装置が引き出し機構により前面側に引き出し可能であることを特徴とする電子通貨システムにおける電子金庫が開示されている。
電子通貨を収納したICカードを多数格納して、金庫の外部のICカードとの間で電子通貨の出し入れを行う電子通貨システムにおける電子金庫において、少なくとも、本体部と、前面扉とを有し、本体部内部に、制御回路、電源、及び、多数のICカードリーダ/ライタを収納し、前記本体部内部に収納される制御回路、電源、及び、多数のICカードリーダ/ライタを含む内部装置が引き出し機構により前面側に引き出し可能であり、引き出し部の両側面または上面に前記ICカードリーダ/ライタの挿入口を配列したことを特徴とする電子通貨システムにおける電子金庫が開示されている。
前記多数のICカードのぞれぞれに対するアクセス回数をカウントし、予め定められている回数に達したとき、あるいは、前記回数に近づいたとき、その旨を表示する表示部を備えることを特徴とする電子通貨システムにおける電子金庫が開示されている。
前記電子金庫の一面に、前記多数のICカードの動作状態を表示する集中表示部を備たことを特徴とする電子通貨システムにおける電子金庫が開示されている。
前記電子金庫に、本体ケース、本体収納部、扉を設け、前記多数のICカードの動作状態を表示する集中表示部を、前記本体収納部に設けたことを特徴とする電子通貨システムにおける電子金庫が開示されている。
前記制御回路は、前記多数のICカードのぞれぞれに対するアクセス回数が平均化するように、ICカードに対するアクセスを制御することを特徴とする電子通貨システムにおける電子金庫が開示されている。
前記電子金庫に、その電子金庫に対する保守、点検を促す表示を行う表示器を備えることを特徴とする電子通貨システムにおける電子金庫が開示されている。
前記電子金庫に、その電子金庫が積み重ねられ、あるいは、横に並べて使用される場合に、自動的に相互を接続するする機構をそなえると共に、内部に接続のためのインタフェースとを備えることを特徴とする電子通貨システムにおける電子金庫が開示されている。
また段落0029には、前述では、多数のPOS端末と、センタ装置24に多数のICカードを格納した電子金庫を備える流通システムにおいて、商品の取引代金を支払うものとして説明を行ったが、個人商店等で、1台の入金機のみを備えるようなシステムの場合、入金機に顧客のICカードのためのICカードリーダ/ライタを設け、また、入金機の内部に、その商店が所持するICカードを持たせることにより、この商店が所持するICカードと、ICカードリーダ/ライタを介して接続される顧客のICカードとの間で、電子通貨による支払を行うことができる。そして、商店が所持するICカード内の電子通貨は、前述したように、銀行の口座に入金することができ、あるいは、銀行の窓口で現金化することもできる。と記載されている。
【0004】
特許文献2には、
電子通貨を収納したICカードにより買物の支払いを行うために使用する電子通貨用POS端末装置において、顧客のICカードを挿入するICカード挿入口と、該ICカードに対するICカードリーダ/ライタユニットと、顧客のICカードとの間で電子通貨のやり取りを行う制御回路と、レシート送出口とを備えることを特徴とする電子通貨用POS端末装置が開示されている。
また、
店用のICカードを挿入するICカード挿入口と、該ICカードに対するICカードリーダ/ライタユニットとをさらに備えることを特徴とする前記電子通貨用POS端末装置が開示されている。
さらに、
買上げ金額を表示する表示部を一体に備え、または、外付けの表示装置との接続のためのインタフェースを備えることを特徴とする前記電子通貨用POS端末装置が開示されている。
バーコードスキャナ、現行POS端末、POSシステム内の他の機器との接続のためのインタフェースを備えることを特徴とする前記電子通貨用POS端末装置が開示されている。
前記顧客のICカードを挿入するICカード挿入口が顧客側となるように配置され、前記レシート送出口及び店用のICカード挿入口が店員側となるように配置されることを特徴とする前記電子通貨用POS端末装置が開示されている。
小型軽量な暗証番号入力リモコン装置からの電磁波による信号を受け、顧客のICカード内に収納される電子通貨に対する処理を可能とするように顧客のICカードのロックの解除を行うことを特徴とする請求項1ないし5のうち1記載の電子通貨用POS端末装置が開示されている。
前記店用のICカード内に収納された電子通貨は、予め定められた時間に、あるいは、情報制御システムからの指令により、センタ装置の電子金庫内のICカードに転送され、あるいは、銀行の口座に送金されることを特徴とする前記電子通貨用POS端末装置が開示されている。
さらに段落0017には、エンドユーザーシステム3におけるパソコン32、ICカード電話装置34は、その内部に2枚のICカードに対する2組のカードリーダ/ライタを設けることにより、2枚のICカード相互間で電子通貨のやり取りを行うことができる。これにより、例えば、ご主人のICカード内の電子通貨を、奥様のICカードに移す等の、通常の現金を取り扱う場合と同様な処理を行わせることができる。と記載されている。
【0005】
特許文献3には、電子マネー決済サービスの決済処理を行う電子マネー決済制御部と前記電子マネー決済制御部に接続して前記電子マネー決済制御部による決済が完了した場合に機内の商品販売制御を行う自動販売機主制御部とを備え、前記電子マネー決済制御部と前記自動販売機主制御部との通信プロトコルが、所定ブランド数以下の電子マネー決済サービスの各ブランド識別番号を用いて通信処理を行う自動販売機であって、
前記電子マネー決済制御部は、前記所定ブランド数を超える電子マネー決済サービスのブランドの使用を許容し、各ブランドを、前記所定ブランド数以下で所定分類カテゴリに分類し、分類したグループの各グループ番号を前記ブランド識別番号に相当するダミーブランド識別番号として前記自動販売機主制御部と通信処理を行うことを特徴とする自動販売機が開示されている。
また、
前記グループ番号は、前記ブランド識別番号とは異なり、かつ、前記ブランド識別番号と同じ桁数であることを特徴とする前記自動販売機が開示されている。
また、
前記グループの数は、1を含むことを特徴とする前記自動販売機が開示されている。
さらに、
前記所定分類カテゴリは、ブランド毎の割引価格、前記電子マネー決済サービスの上位分類、電子マネー決済サービスの決済種別のいずれかであることを特徴とする前記自動販売機が開示されている。
【0006】
特許文献4には、利用者識別子毎の仮想通貨貯蓄額を記憶する第1の記憶手段と、各紙幣の識別番号と該紙幣データが使用済みか否かを示す識別子とを対にして記憶する第2の記憶手段とを設けたコンピュータシステムが、
オンライン経由で利用者識別子及び紙幣の識別番号が送られてくると、第2の記憶手段を参照して該識別番号に対応した擬似貨幣が使用済みかを確認し、
使用済みではない場合、該識別番号に対応した擬似貨幣の額を、第1の記憶手段に記憶されている該利用者識別子の貯蓄額に加算するとともに、前記第2の記憶手段の該仮想紙幣識別番号と対となる識別子を、使用済みを示す識別子とする処理を行い、商店端末より仮想紙幣識別番号が到来した場合、前記第2の記憶手段に記憶されている仮想紙幣識別番号が使用済みかを照会し、その照会結果を該商店端末へ送信する処理を行う、
事を特徴とする仮想通貨管理方法が開示されている。
また、
利用者識別子毎の仮想通貨貯蓄額を記憶する第1の記憶手段と、各紙幣の識別番号と該紙幣データが使用済みか否かを示す識別子とを対にして記憶する第2の記憶手段とを設けたコンピュータシステムが、
商店端末より仮想紙幣識別番号が到来した場合、前記第2の記憶手段に記憶されている仮想紙幣識別番号が使用済みかを照会し、その照会結果を該商店端末へ送信する処理を行うとともに、
使用済みでなければ、該識別番号に対応した擬似貨幣の額を、第1の記憶手段に記憶されている該利用者識別子の貯蓄額に加算するとともに、前記第2の記憶手段の該仮想紙幣識別番号と対となる識別子を、使用済みを示す識別子とする処理を行い、
オンライン経由で利用者識別子及び紙幣の識別番号が送られてくると、第2の記憶手段を参照して該識別番号に対応した擬似貨幣が使用済みかを確認し、
使用済みではない場合、該識別番号に対応した擬似貨幣の額を、第1の記憶手段に記憶されている該利用者識別子の貯蓄額に加算するとともに、前記第2の記憶手段の該仮想紙幣識別番号と対となる識別子を、使用済みを示す識別子とする処理を行う事を特徴とする仮想通貨管理方法が開示されている。
また、
紙幣画像を記憶した紙幣画像記憶手段を有し、
前記コンピュータシステムは、オンライン経由で紙幣発行数を含む紙幣発行要求が送られてくると、前記第2の記憶手段に要求があった発行数の各紙幣の識別番号を追加する事を特徴とする前記仮想通貨管理方法が開示されている。
前記コンピュータシステムは、紙幣画像を記憶した紙幣画像記憶手段を有し、
前記コンピュータシステムは、各紙幣の識別番号を追加する際、前記紙幣画像記憶手段に記憶されている紙幣画像を基に印刷用の紙幣画像情報を生成し、要求先に該紙幣画像情報を送信する事を特徴とする付記3に記載の仮想通貨管理方法が開示されている。
さらに、
利用者識別子毎の仮想通貨貯蓄額を記憶する第1の記憶手段と、
各紙幣の識別番号と該紙幣データが使用済みか否かを示す識別子とを対にして記憶する第2の記憶手段と
オンライン経由で利用者識別子及び紙幣の識別番号が送られてくると、第2の記憶手段を参照して該識別番号に対応した擬似貨幣が使用済みかを確認し、使用済みではない場合、該識別番号に対応した擬似貨幣の額を第1の記憶手段に記憶されている該利用者識別子の貯蓄額に加算するとともに、前記第2の記憶手段の該仮想紙幣識別番号と対となる識別子を、使用済みを示す識別子とする処理を行い、商店端末より仮想紙幣識別番号が到来した場合、前記第2の記憶手段に記憶されている仮想紙幣識別番号が使用済みかを照会し、その照会結果を該商店端末へ送信する処理を行う制御手段と、
を設けた事を特徴とする仮想通貨管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平09-158569号公報
【文献】特開平09-161152号公報
【文献】特開2021―026513号公報
【文献】特開2004-258969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のとおり、地方自治体内などにおける地域活動を活性化することを目的としたコミュニティ通貨という概念があり、日本全国のいくつかの地方において運営されている。一方で、私企業の売り上げ増大を目的としたポイント制度が幅を利かせているという現状がある。LETS通貨の取引は、地域経済の活性化という役割をもつものであって、消費税のかからない取引が繰り返されることで地域経済を活性化するという意義をもつものであるにも関わらず、私企業のポイント制度が幅を利かせたのでは、LETS通貨の良さが生かされず「悪貨が良貨を駆逐する」という事態を生じかねない。
本発明の発明者は、
第一に、コミュニティ通貨を用いる場面を増やすことが地域活動の活性化につながる。
第二に、法定通貨を用いる商取引の場において併せてコミュニティ通貨を用いることを可能にする。
第三に、法定通貨との交換をしないというルールを守る。
第四に、企業が発行するポイント制度とは一線を画す。
このような特質をもった「コミュニティ通貨と法定通貨とを同時に決済する決済システム」を提供することにより、コミュニティ内の経済活動をはじめとした活動が活発になることが期待できると考える。
本発明は、「コミュニティ通貨と法定通貨とを同時に決済する決済システム」を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記解決課題に鑑みて鋭意研究の結果、本発明者は、以下の実施形態に示されるような解決方法を発明するに至った。
要点を挙げると、
コミュニティ通貨と法定通貨(現金、クレジットカード、プリペイドカード、電子マネー、バーコード決済、ポイント払い、掛け売りなど)とを交換はしない。現金チャージ、前払い、換金などは一切しない。コミュニティメンバー一人一人の口座は、マイナス額になることができる。
法定通貨を用いる商取引の場においてコミュニティ通貨を「値引き権利」として用いる。
当該値引きは、消費税抜きの価格(本体価格)に対する値引きとして扱う。コミュニティ通貨の取引に対しては、消費税の対象とはならない。
コミュニティ通貨は当該コミュニティに属するメンバーの間で交換可能である。
コミュニティ通貨を当該コミュニティの構成メンバーすべての所有額を総和するといつでも「ゼロ」である。
である。
この決済システムを具体的に記述すると次のようになる。
【0010】
商品販売者または役務提供者の店に設置された決済端末と、前記決済端末に店舗決済業者間通信手段を介して接続される決済業者の決済サーバコンピュータと、前記決済サーバコンピュータに決済業者金融機関間通信手段を介して接続されるクレジットカード会社、デビットカード会社、プリペイドカード会社、電子マネー会社、コード決済アプリ管理会社、ポイント管理会社、掛け売り管理会社を含む金融機関の決済認証サーバコンピュータとを有し、法定通貨を用いた商品または役務の代金決済を可能とする決済システムであって、
前記決済サーバコンピュータはさらに、閉じたコミュニティ内で用いられ、法定通貨との交換を行わない通貨でありるコミュニティ通貨を管理するコミュニティ通貨管理サーバコンピュータに接続され、
前記コミュニティ通貨管理サーバコンピュータは、
前記閉じたコミュニティに属する会員を特定可能であり、本人確認に必要な会員情報を保存する会員情報保存装置と、
前記会員の一人一人が有するコミュニティ通貨の取引額、残高の履歴を記録する会員口座取引履歴記録装置と、
前記会員口座取引履歴記録装置に記録されている口座残高についての総和を計算してゼロであることを確認するゼロサム確認装置と
を有し、
前記決済端末は、
前記商品販売者又は前記役務提供者が、顧客と同一のコミュニティ通貨を利用するコミュニティに属する場合であって、商品または役務の代金のうち消費税を含まない本体価格の一部を当該コミュニティ通貨を用いて支払うことに合意した場合に、前記本体価格のうち法定通貨で支払う額とそれに対応する消費税額、前記コミュニティ通貨を用いて支払うコミュニティ通貨の取引額、そして当該顧客が前記コミュニティに属することを確認するために必要な本人確認情報を前記決済サーバコンピュータに送って決済の可否を問う決済可否照会装置と、
前記サーバコンピュータから決済が可能であるとの回答がある場合に決済を実行する決済実行装置と、
決済を実行した旨を前記決済サーバコンピュータに送る決済実行結果通知装置と
を有し、
前記決済サーバコンピュータは、
前記決済端末の前記決済可否照会装置から法定通貨とコミュニティ通貨との双方の取引を組み合わせて決済する決済の可否を問う照会があると、法定通貨の取引額については前記決済認証サーバコンピュータに問合せ、前記コミュニティ通貨の取引については前記コミュニティ通貨管理サーバコンピュータに問合せる認証要求装置と、
前記認証要求装置の求めに応じて、前記決済認証サーバコンピュータと前記コミュニティ通貨管理サーバコンピュータとの双方が決済可能との回答である場合に前記決済端末に決済が可能であるとの回答を送り、いずれか一方が決済が不可であるとの回答である場合に前記決済端末に決済が不可であるとの回答を送る決済可否回答装置と、
前記決済端末の前記決済実行結果通知装置から決済を実行した旨を受け取った場合に、前記決済認証サーバコンピュータ及び前記コミュニティ通貨管理サーバコンピュータに当該取引の金額を含む情報を送る取引結果処理装置と
を有し、
一つの取引についてコミュニティ通貨と法定通貨とを組み合わせて決済することを可能とする決済システム。
これにより、コミュニティ通貨の流通を、法定通貨の流通とは独立のものとして活性化することが可能となる。
【0011】
前記コミュニティ通貨管理サーバコンピュータは、
一つの取引における取引額の上限、または個々の口座における残高の下限及び上限を監視する取引額残高上限監視装置
を更に有しており、
前記決済サーバコンピュータの認証要求装置が前記コミュニティ通貨の取引について前記コミュニティ通貨管理サーバコンピュータに問い合わせる際に、顧客の本人確認だけでなく、取引額又は口座残高の上限に達するか否かをも確認して、回答する
ことを特徴とする決済システム。
これにより、一部の会員に大きく負担がかかることを回避できる。
【0012】
前記決済端末は、専用品としての決済端末であって、
さらに、
顔認証カメラ又は情報埋め込み図形読込カメラ
を有しており、
前記顔認証カメラで顧客の顔を読み取ること、又は前記情報埋め込み図形読込カメラで顧客本人を識別する情報埋め込み図形を読み込んで、本人確認情報とし、当該本人確認情報を前記決済サーバコンピュータに送る
ことを特徴とする決済システム。
これにより、不正使用を防ぐことができる。
【0013】
前記決済端末は、前記商品販売者または役務提供者の店に設置されたスマートフォンにコミュニティ通貨の取引と法定通貨の取引との双方を可能とするアプリケーションプログラムをインストールしたものであって、
前記スマートフォンに内蔵されたカメラを用いて、顧客の顔又は顧客本人を識別する情報埋め込み図形を読み込んで、本人確認情報とし、当該本人確認情報を前記決済サーバコンピュータに送る
ことを特徴とする決済システム。
これにより、専用品としての決済端末を準備しなくても、本決済システムを運用することができる。
【0014】
前記決済端末は、顧客のスマートフォンにコミュニティ通貨の取引と法定通貨の取引との双方を可能とするアプリケーションプログラムをインストールしたものであって、
前記スマートフォンに内蔵されたカメラを用いて、前記商品販売者または役務提供者の店を識別する情報埋め込み図形を読み込んで、本人確認情報とし、当該本人確認情報を前記決済サーバコンピュータに送る
ことを特徴とする決済システム。
これにより、店に決済端末がない場合でも、本決済システムを運用できる。
【0015】
前記決済端末は、顧客のスマートフォンにコミュニティ通貨の取引を可能とするアプリケーションプログラムをインストールするとともに、
法定通貨の取引を可能とするアプリケーションプログラムをもインストールしたものであって、
前記スマートフォンに内蔵されたカメラを用いて、前記商品販売者または役務提供者の店を識別する情報埋め込み図形を読み込んで、本人確認情報とし、当該本人確認情報を前記決済サーバコンピュータに送る
ことを特徴とする決済システム。
これにより、決済事業者のサーバ側がこれまで同様であっても、本決済システムを運用できる。
【0016】
前記コミュニティ通貨管理サーバコンピュータの前記ゼロサム確認装置は、一定周期で口座残高の総和を計算してゼロであることを確認し、万一ゼロでない場合には、その原因となった取引を検出し、その旨を当該取引に関わった決済サーバコンピュータに通知し、訂正を求める
ことを特徴とする決済システム。
これにより、コミュニティ通貨のゼロサムを保つことができる。
【0017】
前記コミュニティに属する会員は、自己の保有するコミュニティ通貨の残高、取引履歴を確認するための口座アプリケーションプログラムを自己のスマートフォンにダウンロードし、インストールすることができ、当該アプリケーションを用いて会員相互間のコミュニティ通貨の授受を可能とすることを特徴とする決済システム。
これにより、個人間のコミュニティ通貨のやりとりが可能となる。
【0018】
前記コミュニティ通貨管理サーバコンピュータは、
さらに
当該コミュニティ通貨の流れを把握し、可視化するためのコミュニティ通貨可視化装置
を有しており、当該可視化装置により当該コミュニティ通貨が会員の誰から誰への流れがよくなされているかが一目でわかるようにしたことを特徴とする決済システム。
これにより、地域経済の活性化を可視化できる。
【発明の効果】
【0019】
以上、説明したように、本発明によれば、コミュニティ通貨の流通を、法定通貨の流通とは独立した効果をもって、経済活性化に寄与する決済システムが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明にかかる決済システムの構成を示す図である。
【
図2】商品「コーヒー」について、法定通貨(日本円)とコミュニティ通貨(どうも)を同時に用いて決済する例を示す図である。
【
図3】店舗側に設置した専用品としての決済端末(専用決済端末)を用いて顧客の顔認証を行ってコーヒーを飲む場合の取引を示す図である。
【
図4】店舗側のスマートフォンに決済アプリケーションプログラムをインストールしたものを用いて顧客の顔認証を行ってコーヒーを飲む場合の取引を示す図である。
【
図5】顧客がコミュニティ通貨(どうも)と法定通貨(日本円)とを連動し、組み合わせて取引可能なアプリケーションプログラムをインストールしたスマートフォンを持参して、携帯端末を設置していないが情報埋め込み図形を備えた店でコーヒーを飲む場合の取引を示す図である。
【
図6】顧客がコミュニティ通貨のアプリケーションプログラムと、電子マネーのアプリケーションプログラムとをインストールしたスマートフォンを持参して、携帯端末を設置していないが情報埋め込み図形を備えた店でコーヒーを飲む場合の取引を示す図である。
【
図8】デモシステムにおける処理の手順を示す図である。
【
図11】店頭における取引を処理するようすを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明のシステムを実施するための最良の形態を詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明にかかる決済システムの構成を示す図である。
決済端末10は、専用品としての決済端末であって、店舗に設置されているもの、そして顔認証カメラまたは情報埋め込み図形読込カメラがついたものが望ましい。店舗に専用品としての決済端末がない場合に、店舗の経営者又は従業員が所有するスマートフォンに決済のためのアプリケーションプログラムをインストールして用いるものであってもよい。さらに、店舗に決済端末もスマートフォンもない場合に、顧客のスマートフォンに決済に必要なアプリケーションプログラムをインストールしたものを用いて、店舗の情報を埋め込んだ図形を顧客のスマートフォンで読み込んで決済をするようにしてもよい。
決済端末10は、店舗決済事業者間通信手段2を介して決済サーバコンピュータ20と接続される。店舗決済事業者間通信手段2は、例えばインターネット網を用いることができる。
決済端末10は、店舗における顧客と店舗との間の取引を成立させるための決済が可能か否かを決済サーバコンピュータ20に照会する決済可否照会装置11,決済が可能であるとの回答を得た場合に決済を実行する決済実行装置13,顧客がコミュニティ通貨を用いることができる正当性を当該コミュニティへの属否で判定すべく顔認証する顔認証カメラ15または顧客の本人認証のための情報埋め込み図形読込カメラ17、決済実行装置13が決済を実行した場合にその旨を決済サーバコンピュータ20に通知する決済実行結果通知装置19を有している。
決済サーバコンピュータ20は、決済業者のサーバコンピュータであり、決済端末が実行しようとする決済を金融機関の決済認証サーバコンピュータ40との間で仲介する役割を果たすサーバコンピュータである。金融機関は、クレジットカード、プリペイドカード、電子マネー、バーコード決済、ポイント払い、掛け売りなどの会社であって、決済認証サーバコンピュータ40を管理運営する会社である。法定通貨(日本国における日本円)を扱う取引は現金取引ならば、店舗と顧客間で紙幣や硬貨を用いてなされるが、クレジット、プリペイド、電子マネー、バーコード決済、ポイント払い、掛け売りの場合は、クレジットカードの認証手続きと同様に、その手続を用いる顧客について本人確認し、決済しようとする額が当該本人の信用情報との関係で認められる額か否かが判定される。その判定をするのが金融機関の決済認証サーバコンピュータ40であり、決済業者の決済サーバコンピュータ20と金融機関の決済認証サーバ40との間は、例えば専用ケーブルで接続される。
決済認証サーバコンピュータ40は、決済サーバコンピュータ20からの照会に答えて当該取引を認証する認証装置43と取引が実行された後の処理を実行する後処理装置45を有する。
決済サーバコンピュータ20は、決済端末10からの求めに応じて、決済認証サーバコンピュータ40への認証要求を実行する認証要求装置21,決済認証サーバコンピュータ40からの回答に基づいて、決済可否を決済端末10に回答する決済可否回答装置23,当該回答に応じて決済端末10が決済を実行し、その旨を決済サーバコンピュータ20に返した場合にその後の処理を実行する取引結果処理装置25を有する。
法定通貨を用いる取引をするだけであれば、以上の構成で足りるが、コミュニティ通貨を併せて利用する場合には、コミュニティ通貨管理サーバコンピュータ30を、決済サーバコンピュータ20に接続する必要がある。この接続は例えば専用線で結んでなされる。
コミュニティ通貨管理サーバコンピュータ30は、当該コミュニティに属する会員の情報を本人確認に必要な情報を含めて保存する会員情報保存装置31,会員一人一人が有する口座の取引履歴及び残高の履歴を記録する会員口座取引履歴記録装置33,会員の口座の残高をすべての会員について総和をとるとゼロであることを確認するゼロサム確認装置35,会員一人一人の取引額の大きさ、残高の大きさを監視して、あらかじめ上限がある場合にはその上限を超えることを許さない取引額残高上限監視装置37,コミュニティ通貨が誰から誰へどれだけ移動しているかをマッピングすることにより可視化するコミュニティ通貨可視化装置39を有する。
【0023】
図2は、商品「コーヒー」について、法定通貨とコミュニティ通貨を同時に用いて決済する例を示す図である。ここでは法定通貨は日本円であり、コミュニティ通貨は「どうも」という名前であるとし、その略号を「d」とする。この図で「Bal」は残高を意味し、「¥」、「d」はは、取引により動いた額を示す。小売店Bと住民Cの取引について説明する。
最初の状態(
図2の1行目)では小売店は円の残高ゼロ、どうもの残高ゼロ。住民Cは円の残高千円、どうもの残高ゼロである。
2行目では、まだ住民Cは、コミュニティ通貨のコミュニティに属していない。そこで100円のコーヒーを購入すると、円の残高は900円に減る。なお
図2では消費税のことは考えない。
3行目では、小売店も住民Cもコミュニティ通貨のコミュニティに属している。100円のコーヒーは、コミュニティに属する人に対しては日本円80円、どうも20の組み合わせで販売する。そこで、3行目では小売店については、円が80円増えて円の残高180円。どうもの残高が20となる。住民Cは、80円とどうも20を消費したので、円の残高が80円減り、どうもの残高が20減っている。この図で▲はマイナスを意味する。
4行目では、100円のコーヒーを90円の日本円とどうも10とで販売している。コミュニティ通貨どうもは値引き権利として機能するので、どれだけの値引き権利を行使するかは、取引のたびに変化して構わない。
5行目では、小売店は100円のコーヒーを100円で売り、どうも10を顧客に返すことで値引きをしている。このとき住民Cのどうも残高はどうも10だけ増えている。
6行目では、小売店は100円のコーヒーを90円で売り、どうも5を顧客に返すという取引をしている。このとき住民Cのどうも残高は5だけ増えている。
図2でX軸に法定通貨、Y軸にコミュニティ通貨を配置してベクトル通貨として扱う意味は、コミュニティ通貨が法定通貨とは交換できない通貨であるから成り立つものである。コミュニティ通貨は商品やサービスの値引きを可能とするが、消費税抜きの本体価格に対する値引きをすることができるものであって、消費税の支払いに対しては使えない。消費税は法定通貨で納めるものだからである。その意味で世の中に出回っているポイント制度とは一線を画す。
【0024】
図3は、店舗側に設置した専用品としての決済端末を用いて顧客の顔認証を行ってコーヒーを飲む場合の取引を示す図である。
図3では、「どうも」と表記してあるのが、コミュニティ通貨である。この
図3の例では住民はスマホをもっていなくても法定通貨とコミュニティ通貨を同時に用いて100円のコーヒーを88円支払って飲むことができている。このとき、どうも値引きを20円分、使ってコーヒーの本体価格80円、それに対する消費税を8円、支払っている。
【0025】
図4は、店舗側のスマートフォンに決済アプリケーションプログラムをインストールしたものを用いて顧客の顔認証を行ってコーヒーを飲む場合の取引を示す図である。
図3の取引と同様のことを、専用決済端末を用いずに店が持っているスマホを用いて実現する例である。
【0026】
図5は、顧客がコミュニティ通貨と電子マネーとを連動し、組み合わせて取引可能なアプリケーションプログラムをインストールしたスマートフォンを持参して、携帯端末を設置していないが情報埋め込み図形を備えた店でコーヒーを飲む場合の取引を示す図である。
【0027】
図6は、顧客がコミュニティ通貨のアプリケーションプログラムと、電子マネーのアプリケーションプログラムとをインストールしたスマートフォンを持参して、携帯端末を設置していないが情報埋め込み図形を備えた店でコーヒーを飲む場合の取引を示す図である。
住民が、どうも連動専用QRコードを用いて、どうも連動専用アプリをインストールして、前述と同様の取引をする例を示している。
【0028】
図7は、ベクトル通貨デモシステム概略図を示す。
AWSクラウド上で動く二つのサーバ「LETS決済システム(コミュニティ通貨決済システム)」(Y軸)と「法定通貨決済システム」(X軸)とが置かれており、中央部に描かれたインターネット網を介して専用決済端末(ここでは、SATURN 1000 Lane)が接続され、当該専用決済端末を介して仮想町民登録手続をした。そして、200円の品物を割引率45%、すなわち90円の値引きをして110円の値段で取引する例を示す。
ここでコミュニティ通貨は口座の残高下限を-1,000円に設定し、LETS通貨とする。コミュニティ通貨は特定のコミュニティ内において商品価値又はサービス価値と交換する通貨であって、法定通貨との交換はできない。したがって、商品代金の支払いの際にコミュニティ通貨をを用いる際は、消費税を課税する前の価格(税抜き価格)に対する値引きとして機能する。
法定通貨決済システムにあっては、口座の残高下限をゼロとする。ここでは日本円とする。
【0029】
図8は、デモシステムにおける処理の手順を示す図である。
図8から
図11までにあっては、〇の中に数字を入れた記号を用いているが、本明細書では( )に数字を入れたものと読み替えて説明する。
図8は、
図9,
図10,
図11に描かれた全体の手続きをまとめて俯瞰する図である。
【0030】
図9は、QRコードの読み込みを示す図である。
図9において、CCW、C.C.Walletと記載されているのは、スマホとサーバーとを組み合わせて法定通貨決済を行うシステムである。ユーザは、まずCCWの登録を行う(1)。
図9の右上に示すようにQRコード(登録商標)をカメラに読み込ませてスキャンすることで登録が可能となる。
さらにユーザはコミュニティ通貨(ここでは「ばんだいコイン」)の登録を行うためにQRコード(登録商標)を読み込ませる(2)。
これによりばんだい登録コードとValueコード携帯とが紐づけられる。
【0031】
図10は、使用開始時の登録を示す図である。マイナンバーカードをカメラでスキャンして読込み(5)、コミュニティ通貨が特定の地域内に居住する者のためである場合には、居住者であるば「実町民登録」、居住者以外のものは「仮想町民登録」として登録する(6)。
【0032】
図11は、店頭における取引を処理するようすを示す図である。ばんだいコインのチャージQRコード(登録商標)を読み込ませる(7)。
コード変換された結果、ばんだいコードの代理DoとValueコードが紐づけられた状態で取引の決済に向かうことになる(9)。
商品の読み込みがなされてから、実町民であるか仮想町民であるかによって異なる可能性のある割引率を読み込んでコード、値段、割引率をユーザのスマホ(又は決済端末)に表示させて(12)、割引券の利用をするか否かの選択をさせ、支払いを実行する。その結果口座の管理(13)、残高表示(14)に反映させる。
【0033】
以上、本発明の決済システムについて、具体的な実施の形態を示して説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上述の実施形態における構成及び機能に様々な変更・改良を加えることが可能である。
【0034】
本願は、分割出願である。親の出願は拒絶理由を一度も受けることなく特許査定を得た。そして特許査定を受けてから30日以内に本願を分割出願としたものである。以下、審査官の審査の都合、第三者の利便性のために親出願の当初の請求の範囲をここに記載する。
≪親出願の当初の請求項1≫
商品販売者または役務提供者の店に設置された決済端末と、前記決済端末に店舗決済業者間通信手段を介して接続される決済業者の決済サーバコンピュータと、前記決済サーバコンピュータに決済業者金融機関間通信手段を介して接続されるクレジットカード会社、デビットカード会社、プリペイドカード会社、電子マネー会社、コード決済アプリ管理会社、ポイント管理会社、掛け売り管理会社を含む金融機関の決済認証サーバコンピュータとを有し、法定通貨を用いた商品または役務の代金決済を可能とする決済システムであって、
前記決済サーバコンピュータはさらに、閉じたコミュニティ内で用いられ、法定通貨との交換を行わない通貨であるコミュニティ通貨を管理するコミュニティ通貨管理サーバコンピュータに接続され、
前記コミュニティ通貨管理サーバコンピュータは、
前記閉じたコミュニティに属する会員を特定可能であり、本人確認に必要な会員情報を保存する会員情報保存装置と、
前記会員の一人一人が有するコミュニティ通貨の取引額、残高の履歴を記録する会員口座取引履歴記録装置と、
前記会員口座取引履歴記録装置に記録されている口座残高についての総和を計算してゼロであることを確認するゼロサム確認装置と
を有し、
前記決済端末は、
前記商品販売者又は前記役務提供者が、顧客と同一のコミュニティ通貨を利用するコミュニティに属する場合であって、商品または役務の代金のうち消費税を含まない本体価格の一部を当該コミュニティ通貨を用いて支払うことに合意した場合に、前記本体価格のうち法定通貨で支払う額とそれに対応する消費税額、前記コミュニティ通貨を用いて支払うコミュニティ通貨の取引額、そして当該顧客が前記コミュニティに属することを確認するために必要な本人確認情報を前記決済サーバコンピュータに送って決済の可否を問う決済可否照会装置と、
前記サーバコンピュータから決済が可能であるとの回答がある場合に決済を実行する決済実行装置と、
決済を実行した旨を前記決済サーバコンピュータに送る決済実行結果通知装置と
を有し、
前記決済サーバコンピュータは、
前記決済端末の前記決済可否照会装置から法定通貨とコミュニティ通貨との双方の取引を組み合わせて決済する決済の可否を問う照会があると、法定通貨の取引額については前記決済認証サーバコンピュータに問合せ、前記コミュニティ通貨の取引については前記コミュニティ通貨管理サーバコンピュータに問合せる認証要求装置と、
前記認証要求装置の求めに応じて、前記決済認証サーバコンピュータと前記コミュニティ通貨管理サーバコンピュータとの双方が決済可能との回答である場合に前記決済端末に決済が可能であるとの回答を送り、いずれか一方が決済が不可であるとの回答である場合に前記決済端末に決済が不可であるとの回答を送る決済可否回答装置と、
前記決済端末の前記決済実行結果通知装置から決済を実行した旨を受け取った場合に、前記決済認証サーバコンピュータ及び前記コミュニティ通貨管理サーバコンピュータに当該取引の金額を含む情報を送る取引結果処理装置と
を有し、
一つの取引についてコミュニティ通貨と法定通貨とを組み合わせて同時に決済することを可能とする決済システム。
≪親出願の当初の請求項2≫
請求項1に記載した決済システムであって、
前記コミュニティ通貨管理サーバコンピュータは、
一つの取引における取引額の上限、または個々の口座における残高の絶対値の上限を監視する取引額残高上限監視装置
を更に有しており、
前記決済サーバコンピュータの認証要求装置が前記コミュニティ通貨の取引について前記コミュニティ通貨管理サーバコンピュータに問い合わせる際に、顧客の本人確認だけでなく、取引額又は口座残高の上限に達するか否かをも確認して、回答する
ことを特徴とする決済システム。
≪親出願の当初の請求項3≫
請求項1に記載した決済システムであって、
前記決済端末は、専用品としての決済端末であって、
さらに、
顔認証カメラ又は情報埋め込み図形読込カメラ
を有しており、
前記顔認証カメラで顧客の顔を読み取ること、又は前記情報埋め込み図形読込カメラで顧客本人を識別する情報埋め込み図形を読み込んで、本人確認情報とし、当該本人確認情報を前記決済サーバコンピュータに送る
ことを特徴とする決済システム。
≪親出願の当初の請求項4≫
請求項1に記載した決済システムであって、
前記決済端末は、前記商品販売者または役務提供者の店に設置されたスマートフォンにコミュニティ通貨の取引と法定通貨の取引との双方を可能とするアプリケーションプログラムをインストールしたものであって、
前記スマートフォンに内蔵されたカメラを用いて、顧客の顔又は顧客本人を識別する情報埋め込み図形を読み込んで、本人確認情報とし、当該本人確認情報を前記決済サーバコンピュータに送る
ことを特徴とする決済システム。
≪親出願の当初の請求項5≫
請求項1に記載した決済システムであって、
前記決済端末は、顧客のスマートフォンにコミュニティ通貨の取引と法定通貨の取引との双方を可能とするアプリケーションプログラムをインストールしたものであって、
前記スマートフォンに内蔵されたカメラを用いて、前記商品販売者または役務提供者の店を識別する情報埋め込み図形を読み込んで、本人確認情報とし、当該本人確認情報を前記決済サーバコンピュータに送る
ことを特徴とする決済システム。
≪親出願の当初の請求項6≫
請求項1に記載した決済システムであって、
前記決済端末は、顧客のスマートフォンにコミュニティ通貨の取引を可能とするアプリケーションプログラムをインストールするとともに、
法定通貨の取引を可能とするアプリケーションプログラムをもインストールしたものであって、
前記スマートフォンに内蔵されたカメラを用いて、前記商品販売者または役務提供者の店を識別する情報埋め込み図形を読み込んで、本人確認情報とし、当該本人確認情報を前記決済サーバコンピュータに送る
ことを特徴とする決済システム。
≪親出願の当初の請求項7≫
請求項1に記載した決済システムであって、
前記コミュニティ通貨管理サーバコンピュータの前記ゼロサム確認装置は、一定周期で口座残高の総和を計算してゼロであることを確認し、万一ゼロでない場合には、その原因となった取引を検出し、その旨を当該取引に関わった決済サーバコンピュータに通知し、訂正を求める
ことを特徴とする決済システム。
≪親出願の当初の請求項8≫
請求項1に記載した決済システムであって、
前記コミュニティに属する会員は、自己の保有するコミュニティ通貨の残高、取引履歴を確認するための口座アプリケーションプログラムを自己のスマートフォンにダウンロードし、インストールすることができ、当該アプリケーションを用いて会員相互間のコミュニティ通貨の授受を可能とすることを特徴とする決済システム。
≪親出願の当初の請求項9≫
請求項1に記載した決済システムであって、
前記コミュニティ通貨管理サーバコンピュータは、
さらに
当該コミュニティ通貨の流れを把握し、可視化するためのコミュニティ通貨可視化装置
を有しており、当該可視化装置により当該コミュニティ通貨が会員の誰から誰への流れがよくなされているかが一目でわかるようにしたことを特徴とする決済システム。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のシステムは、都道府県、市町村などの地方自治体において用いるコミュニティ通貨、ボーイスカウト、ガールスカウト、信徒組織、国家資格・民間資格などの資格者の組織、芸能人のファン組織、趣味の組織、学術団体の組織において用いるコミュニティ通貨などに広く利用することができるものである。
【符号の説明】
【0036】
2 店舗決済業者間通信手段
10 決済端末
11 決済可否照会装置
13 決済実行装置
15 顔認証カメラ
17 情報埋め込み図形読込カメラ
19 決済実行結果通知装置
20 決済サーバコンピュータ
21 認証要求装置
23 決済可否回答装置
25 取引結果処理装置
30 コミュニティ通貨管理サーバコンピュータ
31 会員情報保存装置
33 会員口座取引履歴記録装置
35 ゼロサム確認装置
37 取引額残高上限監視装置
39 コミュニティ通貨可視化装置
40 決済認証サーバコンピュータ
41 決済業者金融機関間通信手段
43 認証装置
45 後処理装置
【要約】
【課題】コミュニティ内の経済活動を活性化する決済システムを提供する。
【解決手段】決済端末と、決済サーバと、決済認証サーバを有する決済システムであって、決済サーバはさらに、コミュニティ通貨管理サーバに接続され、コミュニティ通貨管理サーバは、会員情報保存装置と、会員口座取引履歴記録装置と、ゼロサム確認装置とを有し、 前記決済端末は、法定通貨で支払う額とそれに対応する消費税額、コミュニティ通貨の取引額、本人確認情報を決済サーバに送る決済可否照会装置と、決済実行装置と、決済実行結果通知装置とを有し、決済サーバコンピュータは、法定通貨の取引額については前記決済認証サーバコンピュータに問合せ、前記コミュニティ通貨の取引については前記コミュニティ通貨管理サーバコンピュータに問合せる認証要求装置と、決決済可否回答装置と、取引結果処理装置とを有する。
【選択図】
図1