(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】コンプレッサの運転状態分析装置
(51)【国際特許分類】
F04B 49/06 20060101AFI20240515BHJP
F04D 27/00 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
F04B49/06 331Z
F04D27/00 P
F04B49/06 341L
(21)【出願番号】P 2020154067
(22)【出願日】2020-09-14
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】520285880
【氏名又は名称】中部電力ミライズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】竹部 祐介
(72)【発明者】
【氏名】吉添 一城
(72)【発明者】
【氏名】前田 一真
【審査官】田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-291870(JP,A)
【文献】特開2013-209902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/06
F04D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のコンプレッサから、消費電力に関する値である電力関連値及び圧力に関する値である圧力関連値を、それぞれ複数取得するデータ取得手段と、
複数の前記電力関連値及び複数の前記圧力関連値から、前記消費電力に関するしきい値を、前記コンプレッサ毎に設定するしきい値設定手段と、
を有しており、
前記しきい値は、前記消費電力がこのしきい値以上であると定格運転中であるとみなし、前記消費電力がこのしきい値未満であると定格運転中でないものとみなすものである
ことを特徴とするコンプレッサの運転状態分析装置。
【請求項2】
更に、複数の前記電力関連値及び複数の前記圧力関連値から、前記コンプレッサの機種を判別する機種判別手段が設けられており、
前記しきい値設定手段は、前記機種判別手段により判別された前記機種に応じ、前記しきい値を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載のコンプレッサの運転状態分析装置。
【請求項3】
更に、前記しきい値により分析された非定格運転の継続時間が所定時間以上であると、当該継続時間が計算上特定時間以内となるような新たな前記コンプレッサの運転制御データを出力する新制御データ出力手段が設けられている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコンプレッサの運転状態分析装置。
【請求項4】
1以上のコンプレッサから、消費電力に関する値である電力関連値及び圧力に関する値である圧力関連値を、それぞれ複数取得するデータ取得手段と、
複数の前記電力関連値及び複数の前記圧力関連値から、前記コンプレッサの機種を判別する機種判別手段と、
を有している
ことを特徴とするコンプレッサの運転状態分析装置。
【請求項5】
前記データ取得手段は、所定周期毎の前記電力関連値及び前記圧力関連値を取得するものであり、
前記所定周期は、30秒以下である
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れかに記載のコンプレッサの運転状態分析装置。
【請求項6】
前記電力関連値は、前記コンプレッサに供給される電流値である
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載のコンプレッサの運転状態分析装置。
【請求項7】
前記データ取得手段は、通信により前記電力関連値及び前記圧力関連値を取得する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れかに記載のコンプレッサの運転状態分析装置。
【請求項8】
更に、複数の前記圧力関連値のうち圧力値の最低値である圧力値の下限値を、前記コンプレッサ毎に取得する下限値取得手段を有している
ことを特徴とする請求項1ないし請求項7の何れかに記載のコンプレッサの運転状態分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンプレッサ(圧縮機)の運転状態を分析する装置であるコンプレッサの運転状態分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第5887217号公報(特許文献1)には、圧縮機の運転状態を管理するシステムが開示されている。
このシステムでは、請求項1及び[0077]に記載されるように、所定期間における圧縮機の運転傾向として、無負荷(アンロード)運転の占める割合が所定値以上である場合、アンロード運転の占める割合をその所定値よりも小さくする設定値(アンロード圧力の値)を決定し、ネットワークを介して圧縮機に対応するユーザのコンピュータに送信する。
アンロード運転の占める割合は、[0078]に記載されるように、稼働情報として圧縮機から得られる負荷(ロード)運転及びアンロード運転のうち何れが実行されたかを示す情報から把握される。
あるいは、[0080]に記載されるように、アンロード運転の占める割合としての圧縮機の負荷率が、所定期間において圧縮機に供給される電流値に基づいて算出され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のシステムのうち、アンロード運転の占める割合がロード運転及びアンロード運転のうち何れが実行されたかを示す情報から把握されるものでは、圧縮機がロード運転の実行情報及びアンロード運転の実行情報を出力するものでなければならず、適用可能範囲が狭い。
又、上記のシステムのうち、負荷率を電流値から算出するものでは、負荷率の具体的な算出方法が不明であるし、圧縮機の電流値のみに基づいて負荷率が把握されることとなり、圧縮機の運転状態の把握の正確性に、向上の余地がある。
【0005】
そこで、本発明の主な目的の一つは、様々なコンプレッサに対応可能なコンプレッサの運転状態分析装置を提供することである。
又、本発明の主な目的の他の一つは、分析の精度がより一層高いコンプレッサの運転状態分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、1以上のコンプレッサから、消費電力に関する値である電力関連値及び圧力に関する値である圧力関連値を、それぞれ複数取得するデータ取得手段と、複数の前記電力関連値及び複数の前記圧力関連値から、前記消費電力に関するしきい値を、前記コンプレッサ毎に設定するしきい値設定手段と、を有しており、前記しきい値は、前記消費電力がこのしきい値以上であると定格運転中であるとみなし、前記消費電力がこのしきい値未満であると定格運転中でないものとみなすものであることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、上記発明において、更に、複数の前記電力関連値及び複数の前記圧力関連値から、前記コンプレッサの機種を判別する機種判別手段が設けられており、前記しきい値設定手段は、前記機種判別手段により判別された前記機種に応じ、前記しきい値を設定することを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、上記発明において、更に、前記しきい値により分析された非定格運転の継続時間が所定時間以上であると、当該継続時間が計算上特定時間以内となるような新たな前記コンプレッサの運転制御データを出力する新制御データ出力手段が設けられていることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、1以上のコンプレッサから、消費電力に関する値である電力関連値及び圧力に関する値である圧力関連値を、それぞれ複数取得するデータ取得手段と、複数の前記電力関連値及び複数の前記圧力関連値から、前記コンプレッサの機種を判別する機種判別手段と、を有していることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、上記発明において、前記データ取得手段は、所定周期毎の前記電力関連値及び前記圧力関連値を取得するものであり、前記所定周期は、30秒以下であることを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明は、上記発明において、前記電力関連値は、前記コンプレッサに供給される電流値であることを特徴とするものである。
請求項7に記載の発明は、上記発明において、前記データ取得手段は、通信により前記電力関連値及び前記圧力関連値を取得することを特徴とするものである。
請求項8に記載の発明は、上記発明において、更に、複数の前記圧力関連値のうち圧力値の最低値である圧力値の下限値を、前記コンプレッサ毎に取得する下限値取得手段を有していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の主な効果の一つは、様々なコンプレッサに対応可能なコンプレッサの運転状態分析装置が提供されることである。
又、本発明の主な効果の他の一つは、分析の精度がより一層高いコンプレッサの運転状態分析装置が提供されることである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係るコンプレッサの運転状態分析装置(分析装置)を含む分析システム及びその周辺構成のブロック図である。
【
図2】本発明の分析装置の動作例に係るフローチャートである。
【
図3】動作例における第1コンプレッサ(ロード・アンロード制御機)の電力圧力グラフである。
【
図4】動作例における第1コンプレッサの圧力変動グラフである。
【
図10】動作例における第3コンプレッサ(絞り弁制御機)の電力圧力グラフである。
【
図11】動作例における第4コンプレッサ(インバータ機)の電力圧力グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態及びその変更例が、適宜図面に基づいて説明される。
本発明は、下記の形態及び変更例に限定されない。
【0010】
[構成等]
図1は、本発明に係るコンプレッサの運転状態分析装置(分析装置1)を含むコンプレッサの運転状態分析システム(分析システムDS)及びその周辺構成のブロック図である。
分析システムDSは、分析装置1と、工場Fに設置されるデータ収集ゲートウェイGと、を備えている。
【0011】
分析装置1は、工場Fに設置された、第1コンプレッサC1,第2コンプレッサC2,第3コンプレッサC3,第4コンプレッサC4の運転状態を分析する。
第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4は、容積型でスクリュー式のコンプレッサである。尚、第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4の少なくとも何れかは、速度型(ターボ式)であっても良いし、容積型でレシプロ式あるいはスクロール式であっても良い。
第1コンプレッサC1~第3コンプレッサC3は、給油式の定速機である。これらのうち、第1コンプレッサC1,第2コンプレッサC2では、ロード・アンロード制御がなされる。ロード・アンロード制御は、上述の特許文献1のもののように、所定以上の負荷(圧力)となると負荷運転から無負荷運転に切り替える制御である。即ち、第1コンプレッサC1,第2コンプレッサC2の機種は、ロード・アンロード制御機である。他方、第3コンプレッサC3では、絞り弁制御がなされる。即ち、第3コンプレッサC3の機種は、絞り弁制御機である。絞り弁制御は、絞り弁により吸込み空気量を負荷に応じて増減(調整)して空気の圧力を制御するものである。尚、第1コンプレッサC1,第2コンプレッサC2の少なくとも何れかは、オイルフリー式であっても良いし、その他のコンプレッサであっても良い。又、第3コンプレッサC3は、ロード・アンロード制御と絞り弁制御とが組み合わせられたものであっても良いし、その他のコンプレッサであっても良い。
第4コンプレッサC4の機種は、給油式のインバータ機である。即ち、第4コンプレッサC4は、圧縮部(モータ)の回転数をインバータに基づいて制御して負荷の調整を行うものである。尚、第4コンプレッサC4は、オイルフリー式のインバータ機であっても良いし、その他のコンプレッサであっても良い。
第1コンプレッサC1は、第1電流センサA1と接続されている。第1電流センサA1は、第1コンプレッサC1に与えられる電流を検知する。第1電流センサA1は、データ収集ゲートウェイGと接続されている。第1電流センサA1は、第1コンプレッサC1に組み込まれたものであっても良いし、外付けされたものであっても良い。
同様に、第2コンプレッサC2は、第2電流センサA2と接続されている。第3コンプレッサC3は、第3電流センサA3と接続されている。第4コンプレッサC4は、第4電流センサA4と接続されている。第2電流センサA2~第4電流センサA4は、データ収集ゲートウェイGと接続されている。
第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4は、それぞれ圧縮空気(
図1における点線矢印)を生成し、工場Fに設置されたレシーバタンクRに送る。
【0012】
レシーバタンクRは、圧縮空気を貯留すると共に、工場Fにおける圧縮空気を必要とする箇所に、圧縮空気を配給する。
レシーバタンクRには、圧力センサPGが接続されている。圧力センサPGは、レシーバタンクRにおける圧縮空気の圧力を検知する。圧力センサPGは、データ収集ゲートウェイGと接続されている。
尚、工場Fにおける各種の装置の数は様々に増減されても良く、例えばコンプレッサは3台以下あるいは5台以上であっても良いし、インバータ機は設置されずあるいは複数台設置されても良いし、定速機は設置されずあるいは3台以外で設置されても良いし、レシーバタンクは設置されずあるいは複数台設置されても良い。又、圧力センサPGは、少なくとも1台のコンプレッサと接続されていても良い。
【0013】
分析装置1は、分析装置表示手段2と、分析装置入力手段4と、分析装置記憶手段6と、データ取得手段としての分析装置通信手段8と、制御手段としての分析装置制御手段9と、を備えている。
分析装置1は、例えば持ち運び可能なコンピュータにより形成される。尚、分析装置1は、インターネットINに接続されるサーバコンピュータ(クラウド)においてプログラムが実行されることで形成されても良い(クラウドサービスとしての分析装置1)。この場合、サーバコンピュータにおいて、分析装置1における分析機能以外の他の機能が合わせて提供されていても良い。
分析装置1は、第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4の保守を行う団体の管理下に置かれている。尚、分析装置1は、例えば第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4のメーカー、あるいは工場Fを管理する団体等、他の団体により管理されていても良い。
【0014】
分析装置表示手段2は、各種の情報を表示可能な手段である。
分析装置表示手段2は、例えば、液晶ディスプレイを始めとするフラットディスプレイ、及びプリンタの少なくとも一方である。
【0015】
分析装置入力手段4は、各種の情報を入力可能な手段である。
分析装置入力手段4は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、ボタン及びスイッチの少なくとも何れかである。
分析装置表示手段2及び分析装置入力手段4は、タッチセンサ付きディスプレイ、即ちタッチパネルにより形成されても良い。
【0016】
分析装置記憶手段6は、各種の情報を記憶可能な手段である。
分析装置記憶手段6は、例えば、ハードディスク、メモリ、及び光学ディスクの少なくとも何れかである。
分析装置記憶手段6には、分析装置プログラムDP、第1電流値群AA1~第4電流値群AA4及び圧力値群PGV、電力圧力グラフCPG並びにしきい値TH及び圧力値の下限値PL、圧力変動グラフPCG、並びに個別性能グラフIPG及び吐出量群DAAが記憶されている。
【0017】
分析装置通信手段8は、各種の情報を通信可能な手段である。
分析装置通信手段8は、例えばインターフェイス、及びモデムの少なくとも一方である。
【0018】
分析装置制御手段9は、分析装置1に係る各種の手段を制御する手段である。
分析装置制御手段9は、例えばCPUである。
分析装置制御手段9は、分析装置記憶手段6を参照して分析装置プログラムDPを実行することにより、各種の手段を制御する。
【0019】
分析装置通信手段8には、インターネットINを介して、データ収集ゲートウェイGが通信可能に接続されている。尚、データ収集ゲートウェイGは、専用線等により分析装置通信手段8と接続されても良い。
データ収集ゲートウェイGは、第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4について計測された各種のデータを取得し、蓄積する。
データ収集ゲートウェイGは、ゲートウェイ表示手段12と、ゲートウェイ入力手段14と、ゲートウェイ記憶手段16と、ゲートウェイ構内通信手段17と、ゲートウェイ通信手段18と、ゲートウェイ制御手段19と、を備えている。
データ収集ゲートウェイGは、例えば持ち運び可能なコンピュータにより形成される。
データ収集ゲートウェイGは、分析装置1に係る団体の管理下に置かれている。尚、データ収集ゲートウェイGは、分析装置1と同様に、他の団体により管理されていても良い。
【0020】
ゲートウェイ表示手段12は、分析装置表示手段2と同様に成る。
ゲートウェイ入力手段14は、分析装置入力手段4と同様に成る。
【0021】
ゲートウェイ記憶手段16は、記憶される情報の内容が一部異なることを除き、分析装置記憶手段6と同様に成る。
ゲートウェイ記憶手段16は、第1電流センサA1の信号が示す第1コンプレッサC1の電流値の集合である第1電流値群AA1、第2電流センサA2の信号が示す第2コンプレッサC2の電流値の集合である第2電流値群AA2、第3電流センサA3の信号が示す第3コンプレッサC3の電流値の集合である第3電流値群AA3、及び第4電流センサA4の信号が示す第4コンプレッサC4の電流値の集合である第4電流値群AA4を記憶する。これらの電流値は、後述の通り消費電力を算出可能であるから、消費電力に関する値(電力関連値)である。尚、電力関連値は、消費電力そのものであっても良いし、消費電力を算出可能な他の値(例えば電流値と電圧値との組合せ)であっても良い。
又、ゲートウェイ記憶手段16は、圧力センサPGの信号が示すレシーバタンクRの圧力値の集合である圧力値群PGVを記憶する。圧力値は、圧力そのものを示す値であり、圧力に関する値(圧力関連値)である。尚、圧力関連値は、圧力を算出可能な他の値であっても良い。
更に、ゲートウェイ記憶手段16は、ゲートウェイプログラムGPを記憶する。
【0022】
ゲートウェイ構内通信手段17は、第1電流センサA1~第4電流センサA4、及び圧力センサPGと通信する。
尚、ゲートウェイ構内通信手段17は、第1電流センサA1~第4電流センサA4、及び圧力センサPGからの信号の受信のみを行い、送信を行わないものであっても良い。
【0023】
ゲートウェイ通信手段18は、分析装置通信手段8と同様に成り、インターネットINを介して他の装置等と通信する。
尚、ゲートウェイ構内通信手段17及びゲートウェイ通信手段18は、一体であっても良い。
【0024】
ゲートウェイ制御手段19は、データ収集ゲートウェイGに係る各種の手段を制御する手段である。
ゲートウェイ制御手段19は、例えばCPUである。
ゲートウェイ制御手段19は、ゲートウェイ記憶手段16を参照してゲートウェイプログラムGPを実行することにより、各種の手段を制御する。
ゲートウェイ制御手段19は、ゲートウェイ構内通信手段17において第1電流センサA1から受信する各電流値を、1秒(所定周期)毎に、第1電流値群AA1の構成要素としてゲートウェイ記憶手段16に記憶させる。同様に、第2電流センサA2~第4電流センサA4に係る各電流値、及び圧力センサPGに係る各圧力値を、1秒(所定周期)毎に、第2電流値群AA2~第4電流値群AA4の構成要素、あるいは圧力値群PGVの構成要素として、ゲートウェイ記憶手段16に記憶させる。
尚、第1電流値群AA1の電流値等の取得間隔(周期)は、2秒毎、3秒毎、5秒毎、10秒毎、15秒毎、20秒毎、あるいは30秒毎等であっても良い。又、第1電流センサA1等は、常に電流値を示す信号を発信していても良いし、1秒毎に断続的に当該信号を発信していても良いし、0.5秒毎等で断続的に当該信号を発信していても良い。
【0025】
又、工場の管理に係る管理端末Mが、インターネットINに接続されている。
管理端末Mは、管理端末表示手段22と、管理端末入力手段24と、管理端末記憶手段26と、管理端末構内通信手段27と、管理端末通信手段28と、管理端末制御手段29と、を備えている。
管理端末Mは、工場F内に設けられ、例えば持ち運び可能なコンピュータにより形成される。
管理端末Mは、工場Fに係る団体の管理下に置かれている。尚、管理端末Mは、他の団体により管理されていても良い。
【0026】
管理端末表示手段22は、ゲートウェイ表示手段12と同様に成る。
管理端末入力手段24は、ゲートウェイ入力手段14と同様に成る。
【0027】
管理端末記憶手段26は、記憶される情報の内容が一部異なることを除き、ゲートウェイ記憶手段16と同様に成る。
管理端末記憶手段26には、管理端末プログラムMP、電力圧力グラフCPG並びにしきい値TH及び圧力値の下限値PL、並びに圧力変動グラフPCGが記憶されている。
【0028】
管理端末構内通信手段27は、ゲートウェイ構内通信手段17と同様に成り、第1電流センサA1~第4電流センサA4、及び圧力センサPGと通信する。尚、管理端末構内通信手段27と、第1電流センサA1~第4電流センサA4及び圧力センサPGとの通信について、図示が省略される。
管理端末通信手段28は、ゲートウェイ通信手段18と同様に成り、インターネットINを介して他の装置等と通信する。
【0029】
管理端末制御手段29は、管理端末Mに係る各種の手段を制御する手段である。
管理端末制御手段29は、例えばCPUである。
管理端末制御手段29は、管理端末記憶手段26を参照して管理端末プログラムMPを実行することにより、各種の手段を制御する。
尚、管理端末Mは、工場F外に設けられても良い。又、管理端末Mは、データ収集ゲートウェイGと同様な変更例を適宜有する。
【0030】
[動作例等]
以下、分析装置1の動作例が説明される。
図2は、分析装置1の動作例に係るフローチャートである。
分析装置1及びデータ収集ゲートウェイGを管理する団体に属する作業者は、まず、データ収集ゲートウェイGを工場Fに搬入し、ゲートウェイ構内通信手段17の対応する端子に、第1電流センサA1~第4電流センサA4、及び圧力センサPGからの各リード線を接続して、第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4に係るデータとしての第1電流値群AA1~第4電流値群AA4及び圧力値群PGVの収集を開始する。第1電流値群AA1~第4電流値群AA4及び圧力値群PGVの収集は、所定期間にわたり行われる(ステップS1)。所定期間は、例えば工場Fの1日の稼働時間に応じた12時間、あるいは工場Fの1サイクルの稼働時間に応じた1週間である。
作業者は、通常、収集の開始時と終了後においてデータ収集ゲートウェイGを取り扱えば足りる。
尚、所定期間は、12時間以外であっても良い。又、作業者は、上述の団体とは別の団体に属していても良いし、無所属であっても良い。
【0031】
次に、作業者は、データ収集ゲートウェイGを分析装置1の設置箇所に持ち運んで分析装置1と接続し、収集した第1電流値群AA1~第4電流値群AA4及び圧力値群PGVを、分析装置記憶手段6に記憶させる。即ち、分析装置1は、データ収集ゲートウェイGにより収集された第1電流値群AA1~第4電流値群AA4及び圧力値群PGVを取得する(ステップS2)。分析装置1は、第1電流値群AA1~第4電流値群AA4及び圧力値群PGVを、他の工場等と区別するため、工場Fに係る識別子(工場ID)を付して記憶する。
尚、分析装置1は、インターネットINを介した通信により、データ収集ゲートウェイGから第1電流値群AA1~第4電流値群AA4及び圧力値群PGVを取得しても良い。あるいは、各種のセンサがインターネットINに直接接続され、分析装置1がセンサからインターネットINを介して第1電流値群AA1~第4電流値群AA4及び圧力値群PGVを取得しても良い。ここで、分析装置1がクラウド上に形成された場合、第1電流値群AA1~第4電流値群AA4及び圧力値群PGVはクラウドに直接アップロードされる。
【0032】
続いて、作業者は、分析装置入力手段4により、第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4の運転の分析処理の開始を、分析装置1に指令する(ステップS3)。
分析装置1は、この指令に基づき、分析処理を開始する。
尚、分析装置1は、第1電流値群AA1~第4電流値群AA4及び圧力値群PGVの取得(ステップS2)がなされた時点で、指令によらず分析処理を開始しても良い。
【0033】
そして、分析装置制御手段9は、第1電流値群AA1及び圧力値群PGVを参照し、第1コンプレッサC1の運転状態の分析処理を行う(ステップS4,n=1)。
この分析処理において、分析装置制御手段9は、第1電流値群AA1の各電流値を、消費電力に換算する(ステップS4-1)。ここでは、「消費電力=電流値×定格電圧×√3×力率」の換算式により換算する。定格電圧及び力率は、第1コンプレッサC1に係る値が、予め入力され、第1電流値群AA1に対応付けた状態で、分析装置記憶手段6に記憶されている。尚、定格電圧及び力率として、初期値(一般値)、あるいは算出値等が用いられても良い。又、消費電力の算出において、他の換算式が用いられても良い。更に、第1コンプレッサC1に係る消費電力センサが設けられ、データ収集ゲートウェイGにおいて、消費電力センサから直接得られた消費電力が記憶されても良い。
次いで、分析装置制御手段9は、
図3に示されるように、1秒毎に存在する、同時刻(互いに最も接近した時刻)における電流値から換算された消費電力と圧力値との組を、消費電力(縦軸)及び圧力値(横軸)を軸とする平面にプロットして、電力圧力グラフCPGを形成する(ステップS4-2)。電力圧力グラフCPGは、消費電力と圧力値との関係を示すものである。電力圧力グラフCPGは、分析装置記憶手段6において、第1コンプレッサC1を示す識別子(コンプレッサID)と関連付けた状態で記憶される。尚、分析装置制御手段9は、ある時刻の電流値を消費電力に換算し、同時刻の圧力値を参照して、その時刻の消費電力及び圧力値の組をプロットし、次の時刻の電流値を消費電力に換算して、以下同様に処理しても良い。即ち、ステップS4-1,S4-2がひとまとめに行われても良い。又、電力圧力グラフCPGにおける縦軸と横軸は、上述のものから入れ替えられても良い。更に、分析装置制御手段9は、電力圧力グラフCPGを分析装置表示手段2において表示しても良い。加えて、電力圧力グラフCPGは、データベースとして記憶されても良い。縦軸と横軸の入れ替え、分析装置表示手段2における表示、及びデータベースとしての記憶の少なくとも何れかは、他のグラフにおいて適宜なされても良い。
【0034】
続いて、分析装置制御手段9は、電力圧力グラフCPGの形状から、第1コンプレッサC1の機種(制御種別)を推測する(ステップS4-3,機種判別手段)。
第1コンプレッサC1の電力圧力グラフCPGの形状は、矩形に近い四辺形であって各辺に幅を有するものを含むから、第1コンプレッサC1はロード・アンロード制御機であると推測できる。
より詳しくは、四辺形のうち幅のある上辺に当たる、定格消費電力付近の多数のプロット(ロード運転に相当する)、四辺形のうち幅のある下辺に当たる、定格消費電力未満の多数のプロット(アンロード運転に相当する)、四辺形のうち幅のある右辺に当たる、圧力値がほぼ一定の多数のプロット(ロード運転からアンロード運転への切り替えに相当する)、及び四辺形のうち幅のある左辺に当たる、圧力値がほぼ一定の多数のプロット(アンロード運転からロード運転への切り替えに相当する)、の少なくとも何れかの特徴が存在すると、分析装置制御手段9は、機種をロード・アンロード制御と推測する。特に、四辺形の左右の辺は運転の切り替えに相当し、プロット間隔が分単位程度以上に長いと左右の辺としてプロットされない可能性が高いところ、データ収集ゲートウェイGでは1秒間隔で電流値及び圧力値が取得されるため、左右の辺は十分に表れる。よって、分析装置制御手段9における機種の判別精度は、十分なものとなる。
尚、第1コンプレッサC1の機種が把握されている場合等において、機種が予め分析装置入力手段4により入力されても良い。この場合等において、機種の判別(ステップS4-3)は、省略されても良い。
【0035】
又、分析装置制御手段9は、第1コンプレッサC1の機種がロード・アンロード制御であることに基づき、電力圧力グラフCPGから、定格運転(ロード運転)に係るしきい値THを設定する(ステップS4-4,しきい値設定手段)。このしきい値THは、消費電力に関するものであり、消費電力がしきい値TH以上の場合に定格運転中であることとみなし、消費電力がしきい値TH未満の場合に定格運転中でないこととみなすものである。
分析装置制御手段9は、このしきい値THを、
図3において水平な点線で示されるように設定する。即ち、分析装置制御手段9は、電力圧力グラフCPGにおける四辺形のうち幅のある上辺の下端部を通る水平線を想定し、その水平線が示す消費電力を、定格運転に係るしきい値THとする。
しきい値THは、コンプレッサIDに対応付けられた状態で、分析装置記憶手段6に記憶される。
【0036】
このようにしきい値THが設定されることで、しきい値TH以上の消費電力を有するプロット(圧力値)が定格運転に係るものとして処理されるため、第1コンプレッサC1の定格消費電力(カタログ値,仕様値)が入力されて処理される場合に比べて、より実態に即した処理が行える。即ち、第1コンプレッサC1の仕様値が入力される場合、仕様値以上の消費電力を有するプロットが全て仕様値として処理されるため、消費電力について実際の値より過小に処理されるところ、しきい値THを設定する分析装置1では、しきい値TH以上の消費電力を有するプロットが、定格運転として、実測された消費電力値で処理されるため、実際の消費電力にきわめて近い消費電力において処理が行える。よって、仕様値入力時の処理から第1コンプレッサC1の運転制御等の改善提案を行う場合、改善前の消費電力が過小評価されるために改善効果が過大に出てしまうところ、分析装置1では改善前の消費電力が実態に即し評価されたものであるために改善効果も実際的なものとなる。尚、消費電力の過小評価について余裕を持って回避するため、分析装置制御手段9は、しきい値TH以上のプロットの一部又は全部について、プロットの消費電力値にかかわらず全てのプロットで最大の消費電力(計測最大電力)がそのプロットの消費電力値であるものとみなして処理しても良い。
そして、ここでの処理としては、例えば、アンロード時間(アンロード運転された時間)の把握が挙げられる。例えば、分析装置制御手段9は、しきい値TH未満のプロットが連続する時間を1つのアンロード時間として把握し、又適宜各アンロード時間を積算する。
又、分析装置制御手段9は、各プロットを吐出量に換算し、その集合である吐出量群DAAを把握しても良い。分析装置制御手段9は、しきい値TH以上のプロットを定格運転における吐出量で換算し、しきい値TH未満のプロットを、第1コンプレッサC1に係る個別性能グラフIPGから換算した吐出量とする。個別性能グラフIPGは、非定格運転における消費電力と吐出量の関係を示すグラフであり、第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4等の機種毎に個別のものである。個別性能グラフIPGは、予め分析装置記憶手段6に記憶されていても良いし、第1電流値群AA1等の受け付け完了時等に合わせて入力されても良い。分析装置制御手段9は、コンプレッサID、及び電力圧力グラフCPGの形状、の少なくとも一方等に基づいて、予め分析装置記憶手段6に記憶された複数の個別性能グラフIPGから、最も適した(最も近い)ものを抽出して換算に使用しても良い。
各プロットが吐出量に換算されて吐出量群DAAが形成されれば、吐出量という統一された分かり易い基準が、第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4において用いられることとなり、工場Fにおける第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4の正確な分析が、容易に行える。
アンロード時間の把握及び吐出量群DAAの生成等の処理は、しきい値THの設定(ステップS4-4)と共に行われても良いし、
【0037】
更に、分析装置制御手段9は、圧力値の下限値PLを把握する(ステップS4-5,下限値取得手段)。
電力圧力グラフCPG(
図3)では、プロットPLWが圧力値の下限値PLに対応する。データ収集ゲートウェイGが1秒毎に圧力値を得ることにより、分単位程度以上で圧力値を得る場合に比べて、真の下限値に極めて近い下限値PLが把握される。
正確な圧力値の下限値PLの把握により、圧力低下の事象の分析等が正確に行える。
又、
図4に示されるように、分析装置制御手段9は、縦軸を圧力値とし、横軸を時刻とした圧力変動グラフPCGを、電力圧力グラフCPGと同様に形成可能である。圧力変動グラフPCGの形成において、電流値及び消費電力は用いられない。圧力変動グラフPCGは、1秒間毎の圧力値を用いて形成されるため、圧力変動の事象の分析等が正確に行える。
【0038】
ここで、データ収集ゲートウェイGの変更例が、数例説明される。これらの変更例では、電流値及び圧力値の取得間隔(周期)が変更されている。その周期が2,5,10,30,60秒とされた各変更例は、以下順に変更例1~変更例5とされる。
図5~
図9は、順に変更例1~変更例5に係る電力圧力グラフCPGである。周期が長くなるほど、電力圧力グラフCPGの四辺形が全体的に薄くなり、特に左右の辺のプロット数が減少する。又、四辺形の左辺より圧力値のプロット数も、周期が長くなるほど減少する。特に、変更例5(周期60秒)では、圧力値の下限値PL(プロットPLW5に対応)が0.58MPa程度となっており、他の変更例に比べて圧力値の下限値PL(プロットPLW1~PLW4)が真の下限値からかけ離れている。従って、正確性の観点からは、周期が分単位程度未満であることが好ましく、できる限り短いことが好ましい。但し、周期が短くなるほど、データ数が増え、管理及び演算にコストを要することとなる。よって、正確性とコスト低減とのバランスからは、電流値及び圧力値の取得の周期は、1秒以上30秒以下が好ましい。
【0039】
変更例の説明から分析装置1の説明に戻ると、分析装置制御手段9は、第1コンプレッサC1についてこれらの処理を行った後、第2電流値群AA2及び圧力値群PGVを参照し、第2コンプレッサC2の運転状態の分析処理を、同様に行う(ステップS4,n=2)。
第2コンプレッサC2は、第1コンプレッサC1と同様にロード・アンロード制御機であるから、第2コンプレッサC2の運転状態の分析処理は、第1コンプレッサC1の運転状態の分析処理と同様に行われる。
【0040】
次いで、分析装置制御手段9は、第3コンプレッサC3の運転状態の分析処理を行う(ステップS4,n=3)。
この分析処理においても、第3電流値群AA3の各電流値は、消費電力に換算される(ステップS4-1)。
【0041】
又、分析装置制御手段9は、電力圧力グラフCPGを形成する(ステップS4-2)。
第3コンプレッサC3の電力圧力グラフCPGは、
図10に示されるように、“^”字状である山型形状を有する。山型形状の頂部の圧力値(約0.48MPa,垂直点線参照)から左側(低圧力側)の領域(A領域とする)は、絞り弁制御圧力以下の領域に相当する。絞り弁制御圧力は、絞り弁が作動しない(絞り弁の開度が設定可能範囲中最大である)最大の圧力値であり、A領域は、絞り弁による吸込み量の低減がなされない領域である。他方、山型形状の頂部の圧力値から右側(高圧力側)の領域(B領域とする)は、絞り弁制御圧力を超える領域に相当する。このB領域は、絞り弁による吸込み量の低減がなされる領域である。
分析装置制御手段9は、山型形状を有することから、第3コンプレッサC3を絞り弁制御機と分析する(ステップS4-3,機種判別手段)。
【0042】
そして、分析装置制御手段9は、A領域に属するデータ(プロット)について、次のように概ねロード・アンロード制御機と同様に処理する。即ち、分析装置制御手段9は、A領域内の山型形状における圧力値の最小値を、定格運転に係るしきい値THとして設定する(ステップS4-4,しきい値設定手段,水平点線参照)。又、分析装置制御手段9は、しきい値TH以上の消費電力に係るプロットについて、定格運転として処理する。更に、分析装置制御手段9は、しきい値未満の消費電力に係るプロットについて、例えば第3コンプレッサC3の個別性能グラフIPGから吐出量群DAAを得る等、非定格運転として処理する。かようなしきい値THの設定により、より現実に即した正確なデータの処理が可能となる。
又、分析装置制御手段9は、B領域に属するデータ(プロット)について、A領域の非定格運転の場合と同様に、例えば第3コンプレッサC3の個別性能グラフIPGから吐出量群DAAを得る等の処理を行う。A領域及びB領域の区分けによっても、より現実に即した正確なデータの処理が可能となる。
【0043】
更に、分析装置制御手段9は、圧力値の下限値PLを把握する(ステップS4-5,下限値取得手段)。
電力圧力グラフCPG(
図10)では、プロットPLWC3が圧力値の下限値PLに対応する。データ収集ゲートウェイGが1秒毎に圧力値を得ることにより、分単位程度以上で圧力値を得る場合に比べて、真の下限値に極めて近い下限値PLが把握される。
正確な圧力値の下限値PLの把握により、圧力低下の事象の分析等が正確に行える。
又、分析装置制御手段9は、第3コンプレッサC3についても、圧力変動グラフPCGを、第1コンプレッサC1の場合と同様に、1秒間毎の圧力値により、正確に生成することができる。
尚、第3コンプレッサC3の処理において、第1コンプレッサC1の処理と同様の変更例が適宜存在する。
【0044】
続いて、分析装置制御手段9は、第4コンプレッサC4の運転状態の分析処理を行う(ステップS4,n=4)。
この分析処理においても、第4電流値群AA4の各電流値は、消費電力に換算される(ステップS4-1)。
【0045】
又、分析装置制御手段9は、電力圧力グラフCPGを形成する(ステップS4-2)。
第4コンプレッサC4の電力圧力グラフCPGは、
図11に示されるように、右下がりのアーモンド形状(ラグビーボール形状,長軸が右下がりの楕円形状)を有している。更に、この電力圧力グラフCPGでは、アーモンド形状の左上から左に水平線状部分が延びており(左水平線状部分)、又アーモンド形状の右下から右に水平線状部分が延びている(右水平線状部分)。
分析装置制御手段9は、アーモンド形状を有することから、あるいは更に左水平線状部分及び右水平線状部分の少なくとも一方を有することから、第4コンプレッサC4をインバータ機と分析する(ステップS4-3,機種判別手段)。
【0046】
そして、分析装置制御手段9は、左水平線状部分における圧力値の最小値を、定格運転に係るしきい値THとして設定する(ステップS4-4,しきい値設定手段,
図11の水平点線参照)。尚、分析装置制御手段9は、アーモンド形状の上端部における圧力値等を、定格運転に係るしきい値THとして設定しても良い。
又、分析装置制御手段9は、しきい値TH以上の消費電力に係るプロットについて、上述の場合と同様に、定格運転として処理する。更に、分析装置制御手段9は、しきい値未満の消費電力に係るプロットについて、上述の場合と同様に、非定格運転として処理する。かようなしきい値THの設定により、より現実に即した正確なデータの処理が可能となる。
【0047】
更に、分析装置制御手段9は、圧力値の下限値PLを把握する(ステップS4-5,下限値取得手段)。
電力圧力グラフCPG(
図11)では、プロットPLWC4が圧力値の下限値PLに対応する。データ収集ゲートウェイGが1秒毎に圧力値を得ることにより、分単位程度以上で圧力値を得る場合に比べて、真の下限値に極めて近い下限値PLが把握される。
正確な圧力値の下限値PLの把握により、圧力低下の事象の分析等が正確に行える。
又、分析装置制御手段9は、第4コンプレッサC4についても、圧力変動グラフPCGを、第1コンプレッサC1の場合と同様に、1秒間毎の圧力値により、正確に生成することができる。
尚、第4コンプレッサC4の処理において、第1コンプレッサC1の処理及び第3コンプレッサC3の処理と同様の変更例が適宜存在する。
【0048】
作業者は、以上の処理により、第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4の運転を分析し、改善提案のための分析等のために役立てる。
改善提案として、例えば、ロード・アンロード制御機におけるアンロード時間の短縮化を目的としたアンロード圧力値の設定変更、あるいは絞り弁制御機における絞り弁の作動開始圧力の見直し、インバータ機における他の定速機より先行して運転されているかどうかの確認、等が挙げられる。
これらのうちアンロード圧力値の設定変更の動作例について詳述すると、分析装置制御手段9は、第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4のうち分析対象となっているものにおいて、設定されたしきい値から把握されたアンロード時間(非定格運転の継続時間)が所定時間(例えば1時間)以上であると、当該継続時間が計算上特定時間(45分間)以内となるような第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4の少なくとも何れかの新たな運転制御データを計算して出力する(新制御データ出力手段)。例えば、分析装置制御手段9は、第1コンプレッサC1のアンロード時間が所定時間以上であると、第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4の特定期間(例えば1週間)にわたる特定周期(例えば1分)毎のそれぞれの運転指令値を、新たな運転制御データとして算出して出力する。尚、アンロード時間に係る特定時間は、所定時間以下であれば良く、所定時間と同じであっても良い。又、新たな運転制御データに係る特定期間は、第1電流値群AA1~第4電流値群AA4及び圧力値群PGVの収集期間に係る所定期間と同じであっても良いし、異なっていても良い。更に、新たな運転制御データに係る特定周期は、第1電流値群AA1の電流値等の取得間隔に係る所定周期と同じであっても良いし、異なっていても良い。加えて、例えば第1コンプレッサC1のアンロード時間が所定時間以上である場合に、第1コンプレッサC1についてのみ新たな運転制御データが生成されても良いし、第1コンプレッサC1以外についてのみ新たな運転制御データが生成されても良いし、第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4のうちの一部についてのみ新たな運転制御データが生成されても良い。即ち、アンロード時間が所定時間以上となった場合における新たな運転制御データの生成対象は、第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4の全てに限られない。又更に、アンロード時間が所定時間以上となった場合において、新たな運転制御データの生成の有無は、第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4の機種に応じ、分けられても良い。
又、以上の処理及び改善提案の分析の少なくとも何れかは、クラウド上で行われても良い。尚、しきい値の設定、新たな運転制御データの出力、機種の判別、及び下限値の取得の少なくとも何れかは、他の装置で行われても良い。又、しきい値の設定、新たな運転制御データの出力、機種の判別、及び下限値の取得と、これら以外の処理とは、互いに異なる装置において行われても良い。
作業者は、工場Fあるいは管理端末Mの設置箇所を訪問し、第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4の管理担当者等に、分析結果等を提示することができる。
【0049】
又、作業者は、分析結果等を、インターネットIN経由で、管理担当者等に属する管理端末Mに送信することができる(ステップS5)。
この場合、分析装置制御手段9は、分析装置通信手段8を制御して、工場IDに対応する工場Fの管理端末Mへ、第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4の各電力圧力グラフCPG、圧力変動グラフPCG、圧力値の下限値PL、及び吐出量群DAAを送信する。尚、送信されるデータは、これらのうちの一部であっても良いし、しきい値TH等の他の要素が追加されたものであっても良い。又、改善提案に係るデータが送信されても良い。更に、分析装置1がクラウド上に形成されている場合、管理端末M側の管理者は、クラウドにアクセスして、分析結果等をインターネットIN経由でダウンロードすることができる。
【0050】
管理端末制御手段29は、これらのデータ(処理結果)を管理端末通信手段28において受信すると、管理端末記憶手段26に記憶する(ステップS6)。
又、管理端末制御手段29は、その記憶を参照し、これらのデータを、そのまま、あるいは別の形式のグラフに変換する等表示形式を整えて、又は第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4の少なくとも何れか2つについて加算等の演算を施して、管理端末表示手段22に表示させる(ステップS7)。
尚、上述の加算等の演算は、分析装置1においてなされ、インターネットIN経由で取得されても良い。又、上述の変更例のように他のデータが送信された場合には、当該他のデータは、同様に記憶され(ステップS6)、表示され(ステップS7)ても良い。更に、管理端末記憶手段26はデータを記憶せず、管理端末制御手段29は受信したデータをそのまま表示しても良い。ここで、分析装置1がクラウド上に形成された場合、管理端末制御手段29はクラウド上のデータを表示することとなる。
【0051】
[作用効果等]
以上の分析装置1は、合計4台の第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4から、消費電力に関する値である電流値(第1電流値群AA1~第4電流値群AA4)及び圧力に関する値である圧力値(圧力値群PGV)を、それぞれ複数取得する分析装置通信手段8と、複数の電流値から算出した複数の消費電力及び複数の圧力値(消費電力と圧力との関係)から、消費電力に関するしきい値THを、第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4毎に設定する分析装置制御手段9(しきい値設定手段,ステップS4-4)と、を有しており、しきい値THは、消費電力がこのしきい値TH以上であると定格運転中であるとみなし、消費電力がこのしきい値TH未満であると定格運転中でないものとみなすものである。
よって、分析装置1では、圧力値等について、実態に即した処理を行うことができ、分析の精度がより一層高いものとなる。又、しきい値THは、上述の通り、スクリュー式で給油式のロード・アンロード制御機(第1コンプレッサC1,第2コンプレッサC2)、絞り弁制御機(第3コンプレッサC3)、インバータ機(第4コンプレッサC4)等に設定可能であり、分析装置1は、様々なコンプレッサに対応可能である。
【0052】
更に、第1電流値群AA1~第4電流値群AA4及び圧力値群PGVから、第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4の機種を判別する分析装置制御手段9(機種判別手段,ステップS4-3)が設けられており、分析装置制御手段9(しきい値設定手段)は、分析装置制御手段9(機種判別手段)により判別された機種に応じ、しきい値THを設定する。よって、しきい値がより適切に設定され、第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4のより適切な運転制御を実現するための分析が、より正確に実行される。
又更に、しきい値THにより分析されたアンロード時間が所定時間以上であると、アンロード時間が計算上特定時間以内となるような新たな運転制御データを出力する分析装置制御手段9(新制御データ出力手段)が設けられている。よって、運転制御改善のための具体的な新たな制御データが出力される。従って、作業者は、出力された新制御データを参照することにより、容易に運転制御の改善を提案することができる。又、新制御データは、第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4に対してすぐに設定可能であり、運転制御が直ちに容易に改善される。
【0053】
加えて、分析装置1は、合計4台の第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4から、消費電力に関する値である電流値(第1電流値群AA1~第4電流値群AA4)及び圧力に関する値である圧力値(圧力値群PGV)を、それぞれ複数取得する分析装置通信手段8と、第1電流値群AA1~第4電流値群AA4及び圧力値群PGVから、第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4の機種を判別する分析装置制御手段9(機種判別手段,ステップS4-3)と、を有している。
よって、分析装置1は、消費電力と圧力との関係から自動的に第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4の機種を判別可能であり、又判別された機種に応じてデータを処理可能である。作業者は、判別された機種、及びその機種に応じて分析された改善運転制御を、容易に得ることができる。又、作業者による機種の判定ミス及び入力ミスが防止され、誤った処理及び分析の発生が防止される。
【0054】
又、分析装置通信手段8は、所定周期毎の電流値及び圧力値を取得するものであり、所定周期は、30秒以下とされる。よって、分析の精度が一層優れたものとなる。
更に、各電力関連値は、第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4に供給される各電流値である。よって、消費電力が低コストで容易に得られる。
加えて、分析装置通信手段8は、通信により第1電流値群AA1~第4電流値群AA4及び圧力値群PGVを取得する。よって、運転分析用の第1電流値群AA1~第4電流値群AA4及び圧力値群PGVを、低コストで容易に取得することができる。
又、分析装置制御手段9(下限値取得手段,ステップS4-5)は、圧力値群PGVのうち圧力値の最低値である圧力値の下限値PLを、第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4毎に取得する。よって、作業者は、第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4等の動作異常に関連する圧力低下について把握して、第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4等の動作の改善等に活かすことができる。
【0055】
[変更例等]
尚、本発明の形態は、上記の形態及び変更例に限定されず、次に示すような更なる変更例を適宜有する。
上記の形態は、第1コンプレッサC1~第4コンプレッサC4が工場Fに設置されているところ、運転分析対象としてのコンプレッサは、工場以外に設置されていても良い。
又、しきい値設定手段,新制御データ出力手段,機種判別手段及び下限値取得手段等は、1つのCPU(分析装置制御手段9)により実現されることが必須ではなく、CPUが2つ使用され、これらの一部の手段が実現されるCPUと、他の手段が実現されるCPUとが、互いに異なるものとされていても良いし、3つ以上のCPUが使用されても良いし、各手段に個別のCPUが割り当てられていても良い。
【符号の説明】
【0056】
1・・コンプレッサの運転状態分析装置(分析装置)、8・・分析装置通信手段(データ取得手段)、9・・分析装置制御手段(しきい値設定手段,新制御データ出力手段,機種判別手段,下限値取得手段)、AA1・・第1電流値群(電力関連値)、AA2・・第2電流値群(電力関連値)、AA3・・第3電流値群(電力関連値)、AA4・・第4電流値群(電力関連値)、C1・・第1コンプレッサ(コンプレッサ)、C2・・第2コンプレッサ(コンプレッサ)、C3・・第3コンプレッサ(コンプレッサ)、C4・・第4コンプレッサ(コンプレッサ)、G・・データ収集ゲートウェイ、PGV・・圧力値群(圧力関連値)、PL・・圧力値の下限値、TH・・しきい値。