(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用電極、およびリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/66 20060101AFI20240515BHJP
H01M 4/80 20060101ALI20240515BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240515BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240515BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240515BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20240515BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240515BHJP
【FI】
H01M4/66 A
H01M4/80 C
H01M4/13
H01M4/139
H01M10/052
H01M10/0566
H01M10/0562
(21)【出願番号】P 2019188756
(22)【出願日】2019-10-15
【審査請求日】2022-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】田名網 潔
(72)【発明者】
【氏名】磯谷 祐二
(72)【発明者】
【氏名】青柳 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】酒井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】奥野 一樹
(72)【発明者】
【氏名】細江 晃久
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 菊雄
(72)【発明者】
【氏名】竹林 浩
【審査官】窪田 陸人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109786757(CN,A)
【文献】特開2010-272427(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110165289(CN,A)
【文献】特表2014-502046(JP,A)
【文献】特開2015-173030(JP,A)
【文献】特開2017-027654(JP,A)
【文献】国際公開第2012/127653(WO,A1)
【文献】特開平08-087996(JP,A)
【文献】特開2012-014993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/64-4/84
H01M 4/00-4/62
H01M 10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン二次電池用電極であって、
前記リチウムイオン二次電池用電極は、集電体と、前記集電体に充填された電極合材と、を含み、
前記集電体は、金属からなる発泡多孔質体の表面に、炭素材料からなるカーボン層を有し、
前記炭素材料は、アセチレンブラックである、リチウムイオン二次電池用電極。
【請求項2】
前記集電体はさらに、前記発泡多孔質体と前記カーボン層との間に、前記金属の酸化物からなる酸化物層を有する、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用電極。
【請求項3】
前記発泡多孔質体は、発泡アルミニウムである、請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用電極。
【請求項4】
前記リチウムイオン二次電池用電極は、正極である、請求項1~3いずれかに記載のリチウムイオン二次電池用電極。
【請求項5】
請求項1~4いずれかに記載のリチウムイオン二次電池用電極の製造方法であって、
前記カーボン層は、気相法にて形成される、リチウムイオン二次電池用電極の製造方法。
【請求項6】
前記気相法は、前記発泡多孔質体の表面に、流体を接触させつつ加熱するものである、請求項5に記載のリチウムイオン二次電池用電極の製造方法。
【請求項7】
前記流体は、炭化水素ガス
である、請求項6に記載のリチウムイオン二次電池用電極の製造方法。
【請求項8】
前記炭化水素ガスは、アセチレンガスである、請求項7に記載のリチウムイオン二次電池用電極の製造方法。
【請求項9】
請求項1~4いずれかに記載のリチウムイオン二次電池用電極の製造方法であって、
前記カーボン層は、液相法にて形成される、リチウムイオン二次電池用電極の製造方法。
【請求項10】
正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に位置するセパレータまたは固体電解質層と、を備えるリチウムイオン二次電池であって、
前記正極および前記負極の少なくとも一方は、請求項1~4いずれかに記載のリチウムイオン二次電池用電極である、リチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池用電極、および当該リチウムイオン二次電池用電極を用いたリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高エネルギー密度を有する二次電池として、リチウムイオン二次電池が幅広く普及している。リチウムイオン二次電池は、正極と負極との間にセパレータを存在させ、液体の電解質(電解液)を充填した構造を有する。
【0003】
ここで、リチウムイオン二次電池の電解液は、通常、可燃性の有機溶媒であるため、特に、熱に対する安全性が問題となる場合があった。そこで、有機系の液体の電解質に代えて、無機系の固体の電解質を用いたリチウムイオン固体電池も提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
このようなリチウムイオン二次電池は、用途によって様々な要求があり、例えば、自動車等を用途とする場合には、体積エネルギー密度をさらに高める要請がある。これに対しては、電極活物質の充填密度を大きくする方法が挙げられる。
【0005】
電極活物質の充填密度を大きくする方法としては、正極層および負極層を構成する集電体として、発泡金属を用いることが提案されている(特許文献2および3参照)。発泡金属は、細孔径が均一な網目構造を有し、表面積が大きい。当該網目構造の内部に、電極活物質を含む電極合材を充填することで、電極層の単位面積あたりの活物質量を増加させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-106154号公報
【文献】特開平7-099058号公報
【文献】特開平8-329954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来、発泡金属を集電体として用いた電極においては、発泡金属体と電極合材との間に隙間が生じ、その結果、電極活物質への電子パスが不足して電子抵抗が増加し、形成されるリチウムイオン二次電池セルの抵抗を増加させていた。さらに、抵抗が増大することで、サイクル特性も低下させていた。
【0008】
また、発泡金属体の表面には、絶縁体である酸化物層が形成されていることから、電子の供給が不足して電子抵抗が増加し、その結果、リチウムイオン二次電池の出力特性が低下するという問題も生じていた。
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、発泡金属体を集電体とするリチウムイオン二次電池用電極において、発泡金属体と電極活物質との間の電子伝導性を十分に確保し、リチウムイオン二次電池の抵抗を低減するとともに、耐久性を向上させることのできる、リチウムイオン二次電池用電極、および当該リチウムイオン二次電池用電極を用いたリチウムイオン二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。そして、金属からなる発泡多孔質体の表面に、炭素材料からなるカーボン層を配置し、集電体として用いれば、発泡金属体と電極活物質との間の電子伝導性を十分に確保できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち本発明は、リチウムイオン二次電池用電極であって、前記リチウムイオン二次電池用電極は、集電体と、前記集電体に充填された電極合材と、を含み、前記集電体は、金属からなる発泡多孔質体の表面に、炭素材料からなるカーボン層を有するものである、リチウムイオン二次電池用電極である。
【0012】
前記集電体はさらに、前記発泡多孔質体と前記カーボン層との間に、前記金属の酸化物からなる酸化物層を有していてもよい。
【0013】
前記発泡多孔質体は、発泡アルミニウムであってもよい。
【0014】
前記液相法に用いる炭素材料は、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、またはアセチレンブラックからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0015】
前記リチウムイオン二次電池用電極は、正極であってもよい。
【0016】
前記カーボン層は、気相法にて形成されたものであってもよい。
【0017】
前記気相法は、前記発泡多孔質体の表面に、流体を接触させつつ加熱するものであってもよい。
【0018】
前記気相法に用いる流体は、炭化水素ガスまたはアルコール蒸気であってもよい。
【0019】
前記気相法に用いる炭化水素ガスは、メタンガスまたはアセチレンガスであってもよい。
【0020】
前記気相法に用いるアルコール蒸気は、メタノール蒸気であってもよい。
【0021】
前記カーボン層は、液相法にて形成されたものであってもよい。
【0022】
また別の本発明は、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に位置するセパレータまたは固体電解質層と、を備えるリチウムイオン二次電池であって、前記正極および前記負極の少なくとも一方は、上記に記載のリチウムイオン二次電池用電極である、リチウムイオン二次電池である。
【発明の効果】
【0023】
本発明のリチウムイオン二次電池用電極によれば、リチウムイオン二次電池を構成した場合に、その抵抗が低減するとともに、耐久性が向上したリチウムイオン二次電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】金属からなる発泡多孔質体および本発明のリチウムイオン二次電池用電極に用いる集電体を示す図である。
【
図2】本発明のリチウムイオン二次電池用電極および従来のリチウムイオン二次電池用電極の拡大写真である。
【
図3】本発明のリチウムイオン二次電池用電極に用いる集電体の積層構成を示す図である。
【
図4】実施例および比較例で作製したリチウムイオン二次電池の初期セル抵抗を示すグラフである。
【
図5】実施例および比較例で作製したリチウムイオン二次電池のCレート特性を示すグラフである。
【
図6】実施例および比較例で作製したリチウムイオン二次電池の200サイクルごとの容量維持率を示すグラフである。
【
図7】実施例および比較例で作製したリチウムイオン二次電池の600サイクル耐久後の抵抗変化率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0026】
<リチウムイオン二次電池用電極>
本発明のリチウムイオン二次電池用電極は、集電体と、前記集電体に充填された電極合材と、を含む。集電体は、金属からなる発泡多孔質体の表面に、炭素材料からなるカーボン層を有する。
【0027】
本発明のリチウムイオン二次電池用電極が適用できる電池は、特に限定されるものではない。液体の電解質を備える液系のリチウムイオン二次電池であっても、固体またはゲル状の電解質を備える固体電池であってもよい。また、固体またはゲル状の電解質を備える電池に適用する場合には、電解質は、有機系であっても無機系であってもよい。
【0028】
また、本発明のリチウムイオン二次電池用電極は、リチウムイオン二次電池において正極に適用しても、負極に適用しても、あるいは両者に適用しても問題なく使用できる。正極と負極を比較した場合には、負極に用いられる活物質の電子伝導性が高いことから、本発明のリチウムイオン二次電池用電極は正極に用いるほうが、より高い効果を享受することができる。
【0029】
[電極合材]
本発明において、発泡多孔質体の集電体に充填される電極合材は、電極活物質を少なくとも含む。本発明に適用できる電極合材は、電極活物質を必須成分として含んでいれば、その他の成分を任意で含んでいてもよい。その他の成分としては特に限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池を作製する際に用い得る成分であればよい。例えば、固体電解質、導電助剤、結着剤等が挙げられる。
【0030】
正極を構成する電極合材の場合には、少なくとも正極活物質を含有させ、その他成分として、例えば、固体電解質、導電助剤、結着剤等を含有させてもよい。正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出することができるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、LiCoO2、Li(Ni5/10Co2/10Mn3/10)O2、Li(Ni6/10Co2/10Mn2/10)O2、Li(Ni8/10Co1/10Mn1/10)O2、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O2、Li(Ni1/6Co4/6Mn1/6)O2、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2、LiCoO4、LiMn2O4、LiNiO2、LiFePO4、硫化リチウム、硫黄等を挙げることができる。
【0031】
負極を構成する電極合材の場合には、少なくとも負極活物質を含有させ、その他成分として、例えば、固体電解質、導電助剤、結着剤等を含有させてもよい。負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、金属リチウム、リチウム合金、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、Si、SiO、および人工黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料等を挙げることができる。
【0032】
[集電体]
本発明のリチウムイオン二次電池用電極に用いる集電体は、金属からなる発泡多孔質体の表面に、炭素材料からなるカーボン層を有する。
【0033】
(金属からなる発泡多孔質体)
金属からなる発泡多孔質体としては、発泡による空間を有する金属の多孔質体であれば、特に限定されるものではない。金属発泡体は、網目構造を有し、表面積が大きい。金属からなる発泡多孔質体を集電体として用いることにより、当該網目構造の内部に、電極活物質を含む電極合材を充填することができ、電極層の単位面積あたりの活物質量を増加させることができ、リチウムイオン二次電池の体積エネルギー密度を向上させることができる。
【0034】
また、電極合材の固定化が容易となるため、電極合材となる塗工用スラリーを増粘することなく電極合材層を厚膜化することできる。また、増粘に必要であった有機高分子化合物からなる結着剤を低減できる。
【0035】
したがって、従来の金属箔を集電体として用いる電極と比較して、抵抗の増加を伴うことなく電極合材層を厚くすることができ、その結果、電極の単位面積当たりの容量を増加させることができ、リチウムイオン二次電池の高容量化に貢献することができる。
【0036】
本発明のリチウムイオン二次電池用電極の集電体について、
図1を用いて説明する。
図1(a)は、金属からなる発泡多孔質体1を示す図であり、
図1(b)は、本発明のリチウムイオン二次電池用電極の集電体を示す図である。
【0037】
本発明のリチウムイオン二次電池用電極の集電体は、
図1(a)に示される金属からなる発泡多孔質体1の表面に、
図1(b)に示されるように、炭素材料からなるカーボン層2が配置されている。そして、本発明のリチウムイオン二次電池用電極は、
図1(b)に示される集電体の網目構造の内部に、電極活物質を含む電極合材が充填される。
【0038】
本発明のリチウムイオン二次電池用電極の集電体を構成する、金属からなる発泡多孔質体の金属としては、例えば、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、チタン、銅、銀等が挙げられる。これらの中では、正極を構成する集電体としては、発泡アルミニウムが好ましく、負極を構成する集電体としては、発泡銅や発泡ステンレスを好ましく用いることができる。
【0039】
(炭素材料からなるカーボン層)
本発明のリチウムイオン二次電池用電極は、金属からなる発泡多孔質体の表面に、炭素材料からなるカーボン層を有する集電体を備えることを特徴とする。
【0040】
図2に、本発明のリチウムイオン二次電池用電極および従来のリチウムイオン二次電池用電極の拡大写真を示す。
図2(a)は、本発明のリチウムイオン二次電池用電極の拡大写真であり、
図2(b)は、発泡多孔質体を集電体として用いた従来のリチウムイオン二次電池用電極の拡大写真である。
【0041】
図2(b)に示されるように、従来のリチウムイオン二次電池用電極においては、発泡多孔質体1の網目構造の内部に電極合材4を充填すると、発泡多孔質体1からなる集電体と電極合材4との間に、空隙5が生じている。そして、空隙5が存在することで、電極合材4に含まれる電極活物質への電子パスが不足し、電子抵抗が増加していた。
【0042】
一方、
図2(a)に示されるように、本発明のリチウムイオン二次電池用電極においては、発泡多孔質体1の網目構造の内部に電極合材4を充填すると、発泡多孔質体1の表面にカーボン層2が存在することで、集電体と電極合材4との間に空隙5がみられない。したがって、十分な電子パスを形成することができ、その結果、電子抵抗を抑制することができる。
【0043】
カーボン層を構成する炭素材料は、特に限定されるものではない。例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン等が挙げられる。なお、後記するように、カーボン層を形成する方法によって、当該方法に適した炭素材料を適宜選択することができる。
【0044】
例えば、DBP吸収量の大きい、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、あるいはファーネスブラック等の多孔質カーボンを用いてカーボン層を形成したリチウムイオン二次電池用電極とする場合には、電解液の保液性が向上するためリチウムイオン二次電池のイオン拡散が向上し、その結果、レート特性を向上させることができる。
【0045】
また、気相法を用いて、炭素を構成元素として含むガスや蒸気を加熱してカーボン層を形成した場合には、得られるリチウムイオン二次電池の電子抵抗が大幅に抑制される。その結果、電池の耐久性を大幅に向上することができる。
【0046】
したがって、本発明のリチウムイオン二次電池用電極においては、カーボン層を構成する材料を適宜選択することによって、所望のリチウムイオン二次電池の性能を実現することができる。
【0047】
カーボン層の発泡多孔質体表面に対する被覆率は、特に限定されるものではないが、十分な電子パスを実現するためには、例えば、50%以上であることが好ましく、さらに好ましくは70%以上である。
【0048】
また、カーボン層の厚みは、特に限定されるものではないが、5μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがさらに好ましい。5μmを超える場合には、電極におけるカーボンの組成割合が高くなるため、得られるリチウムイオン二次電池のエネルギー密度が低下する。
【0049】
(酸化物層)
本発明のリチウムイオン二次電池用電極に用いる集電体は、金属からなる発泡多孔質体と炭素材料からなるカーボン層との間に、金属の酸化物からなる酸化物層を有していてもよい。
【0050】
図3に、本発明のリチウムイオン二次電池用電極に用いる集電体の積層構成の一例を示す。
図3(a)は、従来の金属からなる発泡多孔質体1の断面図であり、
図3(b)は、本発明のリチウムイオン二次電池用電極の集電体の一例の断面図である。
【0051】
図3(a)に示されるように、金属からなる発泡多孔質体1の表面には、当該金属の酸化物からなる酸化物層3が形成されている場合がある。酸化物層3は絶縁層であるため、酸化物層3によって発泡多孔質体1が被覆されると、電極合材に含まれる電極活物質への電子供給が不足し、得られるリチウムイオン二次電池の抵抗が増加する。
【0052】
発泡多孔質体1の表面に酸化物層3が形成されている場合には、本発明のリチウムイオン二次電池用電極の集電体は、
図3(b)に示されるように、酸化物層3の外側に、カーボン層2を配置する。
【0053】
酸化物層3の外側に、カーボン層2を配置する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、気相法によれば、用いるガスや蒸気が酸化されてカーボン層を形成するときに、酸化物層3を形成している酸化物から酸素を奪う。このため、酸化物層3の膜厚を減少させることができ、場合によっては、酸化物層3の存在をなくすことができる。
【0054】
上記の通り、酸化物層3は、リチウムイオン二次電池の抵抗増加の要素となりうるため、酸化物層3の膜厚が減少し、もしくはなくなることで、得られるリチウムイオン二次電池の出力の増加に大きく貢献することができる。
【0055】
<集電体の製造方法>
本発明のリチウムイオン二次電池用電極を構成する集電体の製造方法は、特に限定されるものではない。金属からなる発泡多孔質体、あるいは発泡多孔質体の表面に存在する当該金属からなる酸化物の表面に、炭素材料からなるカーボン層を形成する。カーボン層の形成方法としては、例えば、気相法や、液相法等が挙げられる。
【0056】
[気相法]
気相法によって炭素材料からなるカーボン層を形成する場合には、金属からなる発泡多孔質体の表面、あるいは発泡多孔質体の表面に存在する当該金属からなる酸化物の表面に、流体を接触させつつ加熱する。
【0057】
気相法による場合の装置は、特に限定されるものではなく、例えば、管状炉等を挙げることができる。管状炉に発泡多孔質体を固定し、流体をフローさせながら加熱することで、カーボン層を形成することができる。
【0058】
加熱の条件についても、特に限定されるものではない。例えば、温度500~600℃で、1~60分間加熱する。
【0059】
気相法に用いる流体は、炭化水素ガスまたはアルコール蒸気であることが好ましい。炭化水素ガスまたはアルコール蒸気を、カーボン層を形成する対象物の表面に接触させつつ加熱することで、炭化水素またはアルコールが対象物の表面で酸化され、炭素と水とを生成する。このとき、炭素は対象物の上に堆積してカーボン層となり、水は水蒸気となって外部へ排気される。
【0060】
炭化水素ガスとしては、メタンガスまたはアセチレンガスであることが好ましい。メタンガスまたはアセチレンガスであれば、均一なカーボン状態で表面に層を形成することができる。
【0061】
アルコール蒸気としては、メタノール蒸気であることが好ましい。メタノール蒸気であれば、均一な厚みのカーボン層を形成することができる。
【0062】
なお、気相法によれば、用いるガスや蒸気が酸化されてカーボン層を形成するときに、発泡多孔質体の表面に存在する酸化物層を形成している酸化物から、酸素を奪う。このため、酸化物層の膜厚を減少させることができ、場合によっては、酸化物層の存在をなくすことができる。
【0063】
酸化物層は、リチウムイオン二次電池の抵抗増加の原因となりうる。したがって、気相法によれば、酸化物層の膜厚を薄くし、もしくは存在をなくすことができることから、得られるリチウムイオン二次電池の出力の増加に大きく貢献することができる。
【0064】
[液相法]
液相法によって炭素材料からなるカーボン層を形成する場合には、カーボンが分散されたカーボン分散液中に、発泡多孔質体を浸漬させる方法が挙げられる。その方法は、特に限定されるものではないが、例えば、以下の方法で実施することができる。
【0065】
まず、カーボン層を形成する材料となるカーボンを、溶媒に分散させたカーボン分散液を調製する。カーボン分散液の溶媒種やカーボン濃度は、形成したいカーボン層の膜厚等によって適宜調製する。例えば、溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を用いて、カーボン濃度を5~30重量%とする条件が挙げられる。
【0066】
次に、カーボン層を形成する対象物となる発泡多孔質体を、乾燥する。乾燥の条件は、特に限定されるものではないが、例えば、真空中で、120℃で、12時間乾燥する条件が挙げられる。
【0067】
続いて、調整したカーボン分散液に、乾燥させた発泡多孔質体を浸漬する。浸漬の条件は、特に限定されるものではないが、例えば、10~25℃にて、10分~1時間浸漬させる条件が挙げられる。
【0068】
続いて、カーボン分散液から発泡多孔質体を取り出し、発泡多孔質体に付着しているカーボン分散液を、真空中で含浸させる。真空含浸の条件は、特に限定されるものではないが、例えば、デシケーター内で1~3分間含浸させる方法が挙げられる。
【0069】
含浸の後には、余分なカーボン分散液を除去するために、エアブローを行う。エアブローの方法および条件は、特に限定されるものではないが、例えば、圧縮空気ガスを用いて、エアブローする方法が挙げられる。
【0070】
続いて、予備乾燥を行う。予備乾燥の条件は、特に限定されるものではないが、例えば、大気雰囲気で、120℃で、10分~1時間乾燥する条件が挙げられる。
【0071】
最後に、完全に乾燥させることにより、カーボン層の形成を完了させる。最終の乾燥条件は、特に限定されるものではないが、例えば、真空下で、120℃で、12時間以上の乾燥を実施する方法が挙げられる。
【0072】
液相法によってカーボン層を形成する場合には、溶媒に分散させるカーボンとしては、粉体であれば、特に限定されることなく使用することができる。また、その粒径も特に限定されるものではない。例えば、一次粒子として10~1000nmの範囲の粒子サイズを挙げることができる。
【0073】
例えば、DBP吸収量の大きい、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、あるいはファーネスブラック等の多孔質カーボンを用いた場合には、リチウムイオン二次電池用電極の電解液の保液性を向上させることができる。その結果、リチウムイオン二次電池において、イオン拡散が向上し、レート特性を向上させることができる。
【0074】
したがって、液相法によれば、カーボン層を構成する材料を適宜選択することができるため、所望のリチウムイオン二次電池の性能を実現することができる。
【0075】
<リチウムイオン二次電池用電極の製造方法>
本発明のリチウムイオン二次電池用電極の製造方法は、特に限定されるものではなく、本技術分野における通常の方法を適用することができる。
【0076】
本発明のリチウムイオン二次電池用電極は、金属からなる発泡多孔質体の表面に、カーボン層を有する集電体を用いて、この集電体に電極合材が充填されていることを特徴とする。集電体に電極合材を充填する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、プランジャー式ダイコーターを用いて、圧力をかけて電極合材を含むスラリーを集電体の網目構造の内部に充填する方法が挙げられる。
【0077】
あるいは、集電体において電極合材を投入する面と、その裏面との間に圧力差を生じさせ、圧力差により、集電体の網目構造を形成している空孔を通して、電極合材を集電体内部に浸透させて充填する、差圧充填による方法が挙げられる。差圧充填による場合の電極合材の性状は、特に限定されるものではなく、粉体を適用する乾式法であっても、スラリー等の液体を含む合材を適用する湿式法であってもよい。
【0078】
電極活物質の充填量を高くするためには、網目構造の空孔全域に電極合材を充填することが好ましい。
【0079】
電極合材を充填した後は、本技術分野における通常の方法を適用して、リチウムイオン二次電池用電極を得ることができる。例えば、電極合材が充填された集電体を乾燥し、その後にプレスして、リチウムイオン二次電池用電極を得る。プレスにより電極合材の密度を向上させることができ、所望の密度となるよう調整することができる。
【0080】
<リチウムイオン二次電池>
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、正極と負極との間に位置するセパレータまたは固体電解質層と、を備える。本発明のリチウムイオン二次電池においては、正極および負極の少なくとも一方が、上記した本発明のリチウムイオン二次電池用電極となっている。
【0081】
すなわち、本発明のリチウムイオン二次電池においては、正極が本発明のリチウムイオン二次電池用電極であっても、負極が本発明のリチウムイオン二次電池用電極であっても、あるいは両者が本発明のリチウムイオン二次電池用電極であってもよい。
【0082】
[正極および負極]
本発明のリチウムイオン二次電池において、本発明のリチウムイオン二次電池用電極を適用しない正極および負極は、特に限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池の正極および負極として機能するものであればよい。
【0083】
リチウムイオン二次電池を構成する正極および負極は、電極を構成することのできる材料から2種類を選択し、2種類の化合物の充放電電位を比較して、貴な電位を示すものを正極に、卑な電位を示すものを負極に用いて、任意の電池を構成することができる。
【0084】
[セパレータ]
本発明のリチウムイオン二次電池がセパレータを含む場合には、セパレータは、正極と負極との間に位置する。その材料や厚み等は特に限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池に用いうる公知のセパレータを適用することができる。
【0085】
[固体電解質層]
本発明のリチウムイオン二次電池が固体電解質を含む場合には、セルを構成する固体電解質層は、正極と負極との間に位置する。固体電解質層に含まれる固体電解質は、特に限定されるものではなく、正極と負極との間でリチウムイオン伝導が可能なものであればよい。例えば、酸化物系電解質や硫化物系電解質が挙げられる。
【実施例】
【0086】
本発明の実施例等について以下に説明するが、本発明はこれら実施例等に限定されるものではない。ただし、実施例5及び実施例6は、参考例である。
【0087】
<実施例1>
[リチウムイオン二次電池用正極の作製]
(正極集電体の作製:液相法)
集電体として、厚み1.0mm、気孔率95%、セル数46~50個/インチ、孔径0.5mm、比表面積5000m2/m3の発泡アルミニウムを準備した。発泡アルミニウムに、液相法にて、下記の要領でカーボン層を形成した。形成したカーボン層の厚みは、2μmであった。
【0088】
カーボン層の材料となるアセチレンブラック(平均1次粒子径:35nm)を、溶媒に分散させて、カーボン分散液を調製した。カーボン分散液の濃度は、20質量%とし、溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を用いた。カーボン層を形成する対象物となる発泡多孔質体を、真空中で、120℃で12時間乾燥させ、続いて、調整したカーボン分散液に、25℃で10分間浸漬させた。その後、カーボン分散液から発泡多孔質体を取り出し、発泡多孔質体に付着しているカーボン分散液を、デシケーター内で、1分間含浸させた。含浸の後には、エアブローを行い、続いて、大気雰囲気で、120℃で1時間予備乾燥を実施し、さらに真空化で120℃で1時間乾燥させて、最終的にカーボン層を完成させた。
【0089】
(正極合材スラリーの調製)
正極活物質として、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2を準備した。正極活物質94質量%、導電助剤としてカーボンブラック4質量%、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)2質量%とを混合し、得られた混合物を適量のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に分散させて、正極合材スラリーを作製した。
【0090】
(正極合材層の形成)
作製した正極合材スラリーを、プランジャー式ダイコーターを用いて、塗工量90mg/cm2となるよう集電体に塗布した。真空にて120℃で12時間乾燥させ、次いで、圧力15tonでロールプレスすることにより、リチウムイオン二次電池用正極を作製した。得られたリチウムイオン二次電池用正極における電極合材層は、目付が90mg/cm2、密度が3.2g/cm3であった。作製した正極は、3cm×4cmに打ち抜き加工して用いた。
【0091】
[リチウムイオン二次電池用負極の作製]
(負極合材スラリーの調製)
天然黒鉛96.5質量%、導電助剤としてカーボンブラック1質量%、結着剤としてスチレンブタジエンゴム(SBR)1.5質量%、増粘剤としてカルボキシルメチルセルロースナトリウム(CMC)1質量%を混合し、得られた混合物を適量の蒸留水に分散させて、負極合材スラリーを作製した。
【0092】
(負極合材層の形成)
集電体として、厚み8μmの銅箔を準備した。作製した負極合材スラリーを、ダイコーターを用いて、塗工量45mg/cm2となるよう集電体に塗布した。真空にて120℃で12時間乾燥させ、次いで、圧力10tonでロールプレスすることにより、リチウムイオン二次電池用負極を作製した。得られたリチウムイオン二次電池用負極における電極合材層は、目付が45mg/cm2、密度が1.5g/cm3であった。作製した負極は、3cm×4cmに打ち抜き加工して用いた。
【0093】
[リチウムイオン二次電池の作製]
セパレータとして、厚さ25μmのポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層積層体となった微多孔膜を準備し、3cm×4cmの大きさに打ち抜いた。二次電池用アルミニウムラミネートを熱シールして袋状に加工したものの中に、上記で作製した正極と負極との間にセパレータを配置した積層体を挿入し、ラミネートセルを作製した。
【0094】
電解液として、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートを、体積比3:4:3で混合した溶媒に、1.2モルのLiPF6を溶解した溶液を準備し、上記のラミネートセルに注入して、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0095】
<実施例2>
[リチウムイオン二次電池用正極の作製]
(正極集電体の作製:液相法)
実施例1と同様にして、発泡アルミニウムに、液相法にてカーボン層を形成した。
【0096】
(正極合材スラリーの調製)
実施例1と同様にして、正極合材スラリーを作製した。
【0097】
(正極合材層の形成)
作製した正極合材スラリーを、実施例1と同様にして集電体に塗布して乾燥し、ロールプレスを行う際のギャップを小さくした以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用正極を作製した。得られたリチウムイオン二次電池用正極における電極合材層は、目付が90mg/cm2、密度が3.6g/cm3であった。作製した正極は、3cm×4cmに打ち抜き加工して用いた。
【0098】
[リチウムイオン二次電池用負極の作製]
実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用負極を作製した。
【0099】
[リチウムイオン二次電池の作製]
上記で作製した正極と負極とを用いた以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0100】
<比較例1>
[リチウムイオン二次電池用正極の作製]
発泡アルミニウムにカーボン層を形成せず、そのまま集電体として用いた以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極を作製した。得られたリチウムイオン二次電池用正極における電極合材層は、目付が90mg/cm2、密度が3.2g/cm3であった。
【0101】
[リチウムイオン二次電池用負極の作製]
実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用負極を作製した。
【0102】
[リチウムイオン二次電池の作製]
上記で作製した正極と負極とを用いた以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0103】
<比較例2>
[リチウムイオン二次電池用正極の作製]
発泡アルミニウムにカーボン層を形成せず、そのまま集電体として用いた以外は、実施例2と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極を作製した。得られたリチウムイオン二次電池用正極における電極合材層は、目付が90mg/cm2、密度が3.6g/cm3であった。
【0104】
[リチウムイオン二次電池用負極の作製]
実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用負極を作製した。
【0105】
[リチウムイオン二次電池の作製]
上記で作製した正極と負極とを用いた以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0106】
<実施例3>
[リチウムイオン二次電池用正極の作製]
(正極集電体の作製:気相法)
実施例1と同様に、集電体として、厚み1.0mm、気孔率95%、セル数46~50個/インチ、孔径0.5mm、比表面積5000m2/m3の発泡アルミニウムを準備した。発泡アルミニウムに、気相法にて、下記の要領でカーボン層を形成した。形成したカーボン層の厚みは、1μmであった。
【0107】
管状炉内に発泡金属を固定し、10体積%アセチレンガス、90体積%アルゴンガスの混合ガスをフローさせながら、500℃で10分間加熱することで、カーボン層を形成した。
【0108】
(正極合材スラリーの調製・正極合材層の形成)
実施例1と同様にして正極合材スラリーを作製し、実施例1と同様にして正極合材層を形成することで、リチウムイオン二次電池用正極を作製した。
【0109】
[リチウムイオン二次電池用負極の作製]
実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用負極を作製した。
【0110】
[リチウムイオン二次電池の作製]
上記で作製した正極と負極とを用いた以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0111】
<実施例4>
[リチウムイオン二次電池用正極の作製]
(正極集電体の作製:気相法)
実施例3と同様にして、発泡アルミニウムに、気相法にてカーボン層を形成した。
【0112】
(正極合材スラリーの調製・正極合材層の形成)
実施例1と同様にして正極合材スラリーを作製し、実施例2と同様にして正極合材層を形成することで、リチウムイオン二次電池用正極を作製した。
【0113】
[リチウムイオン二次電池用負極の作製]
実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用負極を作製した。
【0114】
[リチウムイオン二次電池の作製]
上記で作製した正極と負極とを用いた以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0115】
<実施例5>
[リチウムイオン二次電池用正極の作製]
(正極集電体の作製:液相法)
カーボン層の材料を、ファーネスブラック(平均1次粒子径:10nm)とした以外は、実施例1と同様にして、発泡アルミニウムの表面にカーボン層を形成した。
【0116】
(正極合材スラリーの調製・正極合材層の形成)
実施例1と同様にして、正極合材スラリーを作製し、実施例1と同様にして正極合材層を形成することで、リチウムイオン二次電池用正極を作製した。
【0117】
[リチウムイオン二次電池用負極の作製]
実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用負極を作製した。
【0118】
[リチウムイオン二次電池の作製]
上記で作製した正極と負極とを用いた以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0119】
<実施例6>
[リチウムイオン二次電池用正極の作製]
(正極集電体の作製:液相法)
カーボン層の材料を、ケッチェンブラック(平均1次粒子径:40nm)とした以外は、実施例1と同様にして、発泡アルミニウムの表面にカーボン層を形成した。
【0120】
(正極合材スラリーの調製)
実施例1と同様にして、正極合材スラリーを作製し、実施例1と同様にして正極合材層を形成することで、リチウムイオン二次電池用正極を作製した。
【0121】
[リチウムイオン二次電池用負極の作製]
実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用負極を作製した。
【0122】
[リチウムイオン二次電池の作製]
上記で作製した正極と負極とを用いた以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0123】
[リチウムイオン二次電池の評価]
実施例1~6、および比較例1~2で得られたリチウムイオン二次電池につき、以下の評価を行った。
【0124】
[初期放電容量]
リチウムイオン二次電池について、測定温度(25℃)で3時間放置し、0.33Cで4.2Vまで定電流充電を行い、続けて4.2Vの電圧で定電圧充電を5時間行い、30分間放置した後、0.33Cの放電レートで2.5Vまで放電を行って、放電容量を測定した。得られた放電容量を、初期放電容量とした。
【0125】
[初期セル抵抗]
初期放電容量測定後のリチウムイオン二次電池を、充電レベル(SOC(State of Charge))50%に調整した。次に、電流値を0.2Cの値として10秒間放電し、放電後10秒後の電圧を測定した。そして、横軸を電流値、縦軸を電圧として、0.2Cにおける電流に対する放電後10秒後の電圧をプロットした。次に、10分間放置後、補充電を行ってSOCを50%に復帰させた後、さらに10分間放置した。次に、上記の操作を、0.5C、1C、1.5C、2C、2.5Cの各Cレートについて行い、各Cレートにおける電流に対する放電後10秒後の電圧をプロットした。各プロットから得られた近似直線の傾きを、リチウムイオン二次電池の初期セル抵抗とした。
【0126】
[Cレート特性]
初期放電容量測定後のリチウムイオン二次電池を、測定温度(25℃)で3時間放置し、0.33Cで4.2Vまで定電流充電を行い、続けて4.2Vの電圧で定電圧充電を5時間行い、30分間放置した後、0.5Cの放電レートで2.5Vまで放電を行って、放電容量を測定した。上記試験を、1C、1.5C、2C、2.5Cの各Cレートについて行い、各Cレートにおける放電容量を、0.33Cの容量を100%とした際の容量維持率でまとめたデータを、Cレート特性とした。
【0127】
[耐久後放電容量]
充放電サイクル耐久試験として、45℃の恒温槽にて、0.6Cで4.2Vまで定電流充電を行った後、続けて4.2Vの電圧で定電圧充電を5時間もしくは0.1Cの電流になるまで充電を行い、30分間放置した後、0.6Cの放電レートで2.5Vまで定電流放電を行い、30分間放置する操作を1サイクルとし、該操作を200サイクル繰り返した。200サイクル終了後、恒温槽を25℃として2.5V放電後の状態で24時間放置し、その後、初期放電容量の測定と同様にして、放電容量を測定した。200サイクルごとに、この操作を繰り返し、600サイクルまで測定した。
【0128】
[耐久後セル抵抗]
600サイクル終了後、充電レベル(SOC(State of Charge))50%に調整し、初期セル抵抗の測定と同様の方法で、耐久後セル抵抗を求めた。
【0129】
[容量維持率]
初期放電容量に対する200サイクルごとの耐久後放電容量を求め、それぞれのサイクルにおける容量維持率とした。
【0130】
[抵抗変化率]
初期セル抵抗に対する耐久後セル抵抗を求め、抵抗変化率とした。
【0131】
表1に、実施例および比較例で作製したリチウムイオン二次電池の構成や、各種の測定結果を示す。
図4には、実施例および比較例で作製したリチウムイオン二次電池の初期セル抵抗を示す。
図5には、Cレート特性を示す。また、
図6には、実施例および比較例で作製したリチウムイオン二次電池の200サイクルごとの容量維持率を示し、
図7には、600サイクル耐久後の抵抗変化率を示す。
【0132】
【0133】
図4に示されるように、発泡多孔質体の表面にカーボン層を有する集電体で構成した本発明のリチウムイオン二次電池用電極を用いた実施例1~6の電池は、カーボン層を有さない集電体で構成した電極を用いた比較例1~2の電池と比較して、セル抵抗が抑制された。
【0134】
図5に示されるように、実施例1~6のCレート特性は、比較例1~2と比較して、高い値となった。すなわち、発泡多孔質体の表面にカーボン層を有する集電体で構成した本発明のリチウムイオン二次電池用電極を用いた電池は、イオン拡散性が向上した。
【0135】
図6に示されるように、実施例1~6の200サイクルごとの容量維持率は、比較例1~2と比較して、サイクル数が増加するほど高い値となった。すなわち、発泡多孔質体の表面にカーボン層を有する集電体で構成した本発明のリチウムイオン二次電池用電極を用いた電池は、耐久性が向上した。
【0136】
図7に示されるように、実施例1~6の抵抗変化率は、比較例1~2と比較して、その上昇率が低い。すなわち、発泡多孔質体の表面にカーボン層を有する集電体で構成した本発明のリチウムイオン二次電池用電極を用いた電池は、耐久性が向上した。
【符号の説明】
【0137】
1 発泡多孔質体
2 カーボン層
3 酸化物層
4 電極合材
5 空隙