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特許7488641カテーテルワイヤ固定具及びこれを用いた医療用具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】カテーテルワイヤ固定具及びこれを用いた医療用具
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/02 20060101AFI20240515BHJP
   A61M 25/09 20060101ALI20240515BHJP
   A61M 25/092 20060101ALI20240515BHJP
   A61M 39/06 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
A61M25/02 510
A61M25/09 540
A61M25/092
A61M39/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019206795
(22)【出願日】2019-11-15
(65)【公開番号】P2021078576
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】519408766
【氏名又は名称】塚本 隆二
(74)【代理人】
【識別番号】100166589
【弁理士】
【氏名又は名称】植村 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】塚本隆二
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-079565(JP,A)
【文献】特開2013-118988(JP,A)
【文献】特開平09-051954(JP,A)
【文献】特開平06-197980(JP,A)
【文献】特開平07-088193(JP,A)
【文献】特開2003-230631(JP,A)
【文献】特開平11-89938(JP,A)
【文献】特表平6-502563(JP,A)
【文献】特表2020-508802(JP,A)
【文献】特開2008-450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/02
A61M 25/09
A61M 25/092
A61M 39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸部と、前記主軸部に対して傾斜して接続する分岐部を有し、前記主軸部を挿入されるカテーテル及びガイドワイヤを挿脱可能な孔を有し、前記分岐部は少なくとも薬液注入器と接続可能に形成されたY字コネクタよりも、基端側に設けられるカテーテルワイヤ固定具であって、
前記カテーテル及び前記ガイドワイヤを挿脱可能であるとともに、挿入された前記カテーテル及び前記ガイドワイヤを把持することが可能な第1孔を有する把持部を備え、
前記把持部は、前記Y字コネクタと着脱自在に固定できるように形成されている
ことを特徴とするカテーテルワイヤ固定具。
【請求項2】
軸心に前記カテーテル及び前記ガイドワイヤを挿脱可能な第2孔を有する筒状の本体と、
基端が前記本体の先端に固定されるとともに、先端には前記把持部が固定され、軸心に、前記第1孔及び前記第2孔と連通し、前記カテーテル及び前記ガイドワイヤを挿脱可能な第3孔を有する嵌合部と、
前記嵌合部に対し、先端側から嵌脱自在であり、軸心に前記カテーテル及び前記ガイドワイヤを挿脱可能な第4孔を有するキャップとを備え、
前記キャップは、少なくとも前記嵌合部及び前記把持部を覆うようにして前記第4孔を前記第1孔に連通させるとともに、前記把持部を径方向内側に押圧することで前記第1孔を縮径するように、前記嵌合部に挿入され、
前記把持部は、前記第1孔が縮径することで、挿入された前記カテーテル及び前記ガイドワイヤを把持することを可能とする
ことを特徴とする請求項1に記載のカテーテルワイヤ固定具。
【請求項3】
前記把持部は、周方向に離間して複数配され、それぞれの基端が前記嵌合部の内周面に固定された金属片からなる
ことを特徴とする請求項2に記載のカテーテルワイヤ固定具。
【請求項4】
前記把持部の基端において前記第3孔の前記内周面に固定される円環状部材を備える
ことを特徴とする請求項3に記載のカテーテルワイヤ固定具。
【請求項5】
軸心に前記カテーテル及び前記ガイドワイヤを挿脱可能な第2孔を有する筒状の本体と、
基端が前記本体の先端に固定され、軸心に、前記第2孔と連通し、前記カテーテル及び前記ガイドワイヤを挿脱可能な第3孔を有する嵌合部と、
前記嵌合部に対し、先端側から嵌脱自在であり、軸心に前記カテーテル及び前記ガイドワイヤを挿脱可能な第4孔を有するキャップとを備え、
前記把持部は、前記第1孔が前記第4孔と同軸となるようにして当該第4孔に設けられ、
前記キャップは、少なくとも前記嵌合部及び前記把持部を覆うようにして前記第4孔を前記第3孔に連通させるとともに、前記嵌合部の先端の開口端面が前記把持部を先端側に押圧することで前記第1孔を縮径するようにして、前記嵌合部に挿入され、
前記把持部は、前記第1孔が縮径することで、挿入された前記カテーテル及び前記ガイドワイヤを把持することを可能とする
ことを特徴とする請求項1に記載のカテーテルワイヤ固定具。
【請求項6】
前記把持部は可撓性の円筒状部材である
ことを特徴とする請求項5に記載のカテーテルワイヤ固定具。
【請求項7】
前記キャップと前記嵌合部とは、前記第4孔の内周面と前記嵌合部の外周面とが螺合することで嵌合される
ことを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載のカテーテルワイヤ固定具。
【請求項8】
前記キャップは、前記第4孔が前記Y字コネクタの前記孔と連通するようにして、前記Y字コネクタの基端に対し取り外し可能に固定されている
ことを特徴とする請求項2から7のいずれか1項に記載のカテーテルワイヤ固定具。
【請求項9】
前記キャップの先端は、前記Y字コネクタの基端と螺合することで固定されている
ことを特徴とする請求項8に記載のカテーテルワイヤ固定具。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のカテーテルワイヤ固定具と、
前記Y字コネクタとを備える
ことを特徴とする医療用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルワイヤ固定具及びこれを用いた医療用具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冠動脈は、心臓に繋がっている動脈から枝分かれし、心臓の表面に冠のように乗っている毛細血管である。冠動脈は心臓を取り囲むようにして走行しており、右冠動脈と左冠動脈に分かれている。
【0003】
冠動脈インターベンション治療の基本である「バルーン血管形成術」は、先端にバルーンが設けられたカテーテルを用いて、下記1~6のようにして血管を拡張する治療である。
【0004】
1:腿の付け根などから穿刺用の針を用いて第1のガイドワイヤを挿入し、その先端が冠動脈の入口(枝分かれの起点部分)に位置するようにする。
2:ガイディングカテーテルを第1のガイドワイヤに沿って進行させ、その先端が第1のガイドワイヤの先端すなわち冠動脈の入口に位置するまで挿入する。
3:第1のガイドワイヤを抜く。
4:第1のガイドワイヤよりも細い第2のガイドワイヤ(PTCAガイドワイヤ)を、ガイディングカテーテル内に通し、ガイディングカテーテルの先端のさらに先にある、冠動脈の狭窄部位あるいは閉塞部位まで到達させる。
5:ガイディングカテーテルよりも細く、先端にバルーンが設けられた、バルーンカテーテル(PTCAバルーンカテーテル。例えば下記特許文献1参照)を、第2のガイドワイヤに沿って進行させ、その先端が冠動脈の狭窄部位あるいは閉塞部位に位置するようにする。
6:バルーンを膨らませることで冠動脈の狭窄部位あるいは閉塞部位を拡張する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】再表2009/054509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記「バルーン血管形成術」では、第2のガイドワイヤやバルーンカテーテルを冠動脈の狭窄部位や閉塞部位に到達させることが容易ではなく、しっかり当該部位まで到達させることができなかった場合には、一度抜いてから再度挿し直す必要があり、非常に手間がかかってしまっていた。
【0007】
本発明は、上記技術的課題に鑑み、冠動脈インターベンション治療等の一般的な血管治療において、カテーテル及びガイドワイヤの操作を容易にすることを可能とする、カテーテルワイヤ固定具及びこれを用いた医療用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の発明に係るカテーテルワイヤ固定具は、
カテーテル及びガイドワイヤを挿脱可能な孔を有するY字コネクタよりも、基端側に設けられるカテーテルワイヤ固定具であって、
前記カテーテル及び前記ガイドワイヤを挿脱可能であるとともに、挿入された前記カテーテル及び前記ガイドワイヤを把持することが可能な第1孔を有する把持部を備える
ことを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するための第2の発明に係るカテーテルワイヤ固定具は、
上記第1の発明に係るカテーテルワイヤ固定具において、
軸心に前記カテーテル及び前記ガイドワイヤを挿脱可能な第2孔を有する筒状の本体と、
基端が前記本体の先端に固定されるとともに、先端には前記把持部が固定され、軸心に、前記第1孔及び前記第2孔と連通し、前記カテーテル及び前記ガイドワイヤを挿脱可能な第3孔を有する嵌合部と、
前記嵌合部に対し、先端側から嵌脱自在であり、軸心に前記カテーテル及び前記ガイドワイヤを挿脱可能な第4孔を有するキャップとを備え、
前記キャップは、少なくとも前記嵌合部及び前記把持部を覆うようにして前記第4孔を前記第1孔に連通させるとともに、前記把持部を径方向内側に押圧することで前記第1孔を縮径するように、前記嵌合部に挿入され、
前記把持部は、前記第1孔が縮径することで、挿入された前記カテーテル及び前記ガイドワイヤを把持することを可能とする
ことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するための第3の発明に係るカテーテルワイヤ固定具は、
上記第2の発明に係るカテーテルワイヤ固定具において、
前記把持部は、周方向に離間して複数配され、それぞれの基端が前記嵌合部の内周面に固定された金属片からなる
ことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するための第4の発明に係るカテーテルワイヤ固定具は、
上記第3の発明に係るカテーテルワイヤ固定具において、
前記把持部の基端において前記第3孔の前記内周面に固定される円環状部材を備える
ことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するための第5の発明に係るカテーテルワイヤ固定具は、
上記第1の発明に係るカテーテルワイヤ固定具において、
軸心に前記カテーテル及び前記ガイドワイヤを挿脱可能な第2孔を有する筒状の本体と、
基端が前記本体の先端に固定され、軸心に、前記第2孔と連通し、前記カテーテル及び前記ガイドワイヤを挿脱可能な第3孔を有する嵌合部と、
前記嵌合部に対し、先端側から嵌脱自在であり、軸心に前記カテーテル及び前記ガイドワイヤを挿脱可能な第4孔を有するキャップとを備え、
前記把持部は、前記第1孔が前記第4孔と同軸となるようにして当該第4孔に設けられ、
前記キャップは、少なくとも前記嵌合部及び前記把持部を覆うようにして前記第4孔を前記第3孔に連通させるとともに、前記嵌合部の先端の開口端面が前記把持部を先端側に押圧することで前記第1孔を縮径するようにして、前記嵌合部に挿入され、
前記把持部は、前記第1孔が縮径することで、挿入された前記カテーテル及び前記ガイドワイヤを把持することを可能とする
ことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するための第6の発明に係るカテーテルワイヤ固定具は、
上記第5の発明に係るカテーテルワイヤ固定具において、
前記把持部は可撓性の円筒状部材である
ことを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するための第7の発明に係るカテーテルワイヤ固定具は、
上記第2から6のうちいずれか1つの発明に係るカテーテルワイヤ固定具において、
前記キャップと前記嵌合部とは、前記第4孔の内周面と前記嵌合部の外周面とが螺合することで嵌合される
ことを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するための第8の発明に係るカテーテルワイヤ固定具は、
上記第2から7のうちいずれか1つの発明に係るカテーテルワイヤ固定具において、
前記キャップは、前記第4孔が前記Y字コネクタの前記孔と連通するようにして、前記Y字コネクタの基端に対し取り外し可能に固定されている
ことを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するための第9の発明に係るカテーテルワイヤ固定具は、
上記第8の発明に係るカテーテルワイヤ固定具において、
前記キャップの先端は、前記Y字コネクタの基端と螺合することで固定されている
ことを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決するための第10の発明に係る医療用具は、
上記第1から9のいずれか1つの発明に係るカテーテルワイヤ固定具と、
前記Y字コネクタとを備える
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るカテーテルワイヤ固定具及びこれを用いた医療用具によれば、カテーテル及びガイドワイヤの操作を容易にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例1に係る医療用具を説明する概略図である。
図2】本発明の実施例1におけるY字コネクタの概略図である。
図3】本発明の実施例1におけるY字コネクタの断面図である。
図4】本発明の実施例1に係るカテーテルワイヤ固定具の概略図である。
図5】本発明の実施例1に係るカテーテルワイヤ固定具の概略図である。
図6】本発明の実施例1に係るカテーテルワイヤ固定具の概略図である。
図7】(a)は自然状態における図4のA-A矢視図である。(b)はキャップを嵌合部に締結した際における図4のA-A矢視図である。
図8】本発明の実施例2に係るカテーテルワイヤ固定具の概略図である。
図9】本発明の実施例2に係るカテーテルワイヤ固定具の概略図である。
図10】(a)は自然状態における図9のB-B矢視図である。(b)はキャップを嵌合部に締結した際における図9のB-B矢視図である。
図11】本発明の実施例3に係るカテーテルワイヤ固定具の概略図である。
図12】自然状態における図11のC-C矢視図である。
図13A】本発明の実施例4に係るカテーテルワイヤ固定具の一部の概略図である。
図13B】本発明の実施例4に係るカテーテルワイヤ固定具の一部の概略図(他の形態)である。
図14A】本発明の実施例4におけるY字コネクタの一部の概略図である。
図14B】本発明の実施例4におけるY字コネクタの一部の概略図(他の形態)である。
図15】本発明の実施例4に係るカテーテルワイヤ固定具の一部の概略図(他の形態)である。
図16】本発明の実施例4に係る医療用具を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るカテーテルワイヤ固定具及びこれを用いた医療用具について、実施例にて図面を用いて説明する。なお、実施例中の「先」「後」「先端」「基端」は、カテーテル及びガイドワイヤの(人体への)挿入方向を基準としており、カテーテルCはバルーンカテーテル(あるいはマイクロカテーテル、血栓吸引カテーテル、検査カテーテル(血管内超音波カテーテル)など)を、ガイドワイヤWは上述の第2のガイドワイヤをそれぞれ想定している。
【0021】
[実施例1]
図1は、本実施例に係る医療用具を説明する概略図である。
本実施例に係る医療用具は、図1に示すように、カテーテルC及びガイドワイヤWを挿脱可能なカテーテルワイヤ固定具1及びY字コネクタ2を備えている。Y字コネクタ2はカテーテルワイヤ固定具1の先に配置される。
【0022】
以下では、まずY字コネクタ2について説明する。
一般的にY字コネクタとは、既に説明したカテーテル及びガイドワイヤの挿入に際して用いられるものであり、基本構造として、円筒状のメインブランチに固定弁と止血弁とが設けられている。
【0023】
図2はY字コネクタ2の概略図、図3はY字コネクタ2の断面図である。
Y字コネクタ2は、円筒状の主軸部21a、及び、主軸部21aに対し傾斜して接続する分岐部21bを有する本体21と、主軸部21aの先端側に配置されるロテーター22と、主軸部21aの基端側に配置されるスクリュー23、オープナー24、プッシャー25、止血弁26、及び固定弁27とを有する。
【0024】
本体21の主軸部21aは、基端側に拡径部31を有する孔32を備えている。また、分岐部21bは孔32に通ずる孔33を有しており、分岐部21bの主軸部21a側の一端21baは主軸部21aの先端側に配置され、他端21bbは液剤注入器(図示略)等と接続可能に形成されている。
【0025】
ロテーター22は、主軸部21aの軸心回りの回転を可能とした状態で主軸部21aの先端側に接続されており、孔32に連通する孔22aが径方向中央に形成されている。また、孔22aは、ロテーター22の基端から先端を貫通するようにして形成されている。なお、ロテーター22の先端には、既に説明したガイディングカテーテルの基端が接続される。
【0026】
スクリュー23は、内周面23aにネジ溝23aaを有し、基端側に軸心方向と略直交する垂直内面23bを有する筒状の部材である。ネジ溝23aaは、主軸部21aの拡径部31の外周面31aに形成されたネジ山31aaに対応した形状となっており、ネジ山31aaと螺合している。
【0027】
オープナー24は、基端から先端まで貫通する孔24aを有する筒状の部材であり、基端には外壁が拡径された盤状部24bを備えている。また、先端側はスクリュー23の基端側に挿入されており、軸心方向に移動可能になっている。
【0028】
プッシャー25は、主軸部21aの軸心方向の移動が可能な状態で、スクリュー23及び拡径部31に内包される筒状の部材であり、基端がスクリュー23の垂直内面23bに接している。また、プッシャー25は、基端縁に拡径した弁受入部25aを有する孔25bを備えている。
【0029】
止血弁26は、径方向略中央にスリット(図示略)を設けた板状の弾性体(例えばシリコンゴム)であり、プッシャー25の弁受入部25aに対し、軸心方向に略垂直な状態ではめ込まれている。また、止血弁26は、オープナー24の先端側の移動範囲内に配置されており、オープナー24が最も基端側にある場合に、止血弁26の基端とオープナー24の先端とが接するように配置されている。
【0030】
なお、ロテーター22、本体21の主軸部21a、スクリュー23、オープナー24、及びプッシャー25は、一連の孔22a,32,25b,24aよりなる孔28を有するメインブランチ29を構成している。また、本体21の分岐部21bは、液剤注入用の孔33を有するサブブランチ30を構成している。さらに、止血弁26及び固定弁27は、メインブランチ29の内部に配置されたものとなっている。
【0031】
上述のY字コネクタ2は、次のように動作する。
すなわち、メインブランチ29の孔28に設置された止血弁26は、この孔28に通されるカテーテルC又はガイドワイヤWの通過をスリットにおいて包み込み状態で許容する。
【0032】
また、止血弁26は、オープナー24の移動範囲内に配置されており、オープナー24の先端側への移動によってスリットが広げられ、カテーテルC又はガイドワイヤWを包み込み状態から脱させることができる。
【0033】
さらに、メインブランチ29の孔に設置された固定弁27は、基端側においてプッシャー25に接しており、プッシャー25の先端側への移動によって軸心方向に圧縮されることで、内径が縮小する。この内径は、プッシャー25の移動量によって調節することができ、カテーテルCに対する圧力を調整することができる。
【0034】
なお、プッシャー25の移動は、スクリュー23を回すことで行われる。スクリュー23は、回転操作を受けると、ネジ溝23a及びネジ山31aを介して主軸部21aに対し軸心方向に移動し、垂直内面23bを介してプッシャー25を移動させる。
【0035】
次に、カテーテルワイヤ固定具1について説明する。
図4~6はカテーテルワイヤ固定具1の概略図であり、図7図4におけるA-A矢視図である。
【0036】
図4,5に示すように、カテーテルワイヤ固定具1は、基端から先端まで貫通する孔11aを有する円筒状の本体11、本体11の先端に接続する嵌合部12、嵌合部12に固定される把持部13、及びキャップ14を備えている。
【0037】
嵌合部12は、基端及び先端が開口した円筒状のものであり、基端が本体11の先端に接続している。また、外周面にネジ溝12aが形成されている。
【0038】
把持部13は、図7(a)にも示すように、周方向に放射状に配される複数の金属片13aから成るものであり、それぞれの基端が、嵌合部12内を貫通する孔12bに対し内側から固定されている。
【0039】
一方、キャップ14は、基端14bから先端14cまで貫通する孔14dが形成されている。また、孔14dの内周面にネジ山14aaが形成されており、ネジ溝12aとネジ山14aaとは対応した形状となっている。これにより、キャップ14は、本体11の先端、嵌合部12、及び把持部13を被覆するようにして、把持部12に螺合することが可能である。この状態を図6に示す。
【0040】
また、キャップ14は、軸心方向中央付近から先端14c側に向けて、内径(及び外径)が縮径している。これにより、キャップ14を嵌合部12に対して螺合させ締結すると、孔14dの内周面の先端部分から先端部13の各金属片13aに対し、径方向内側に向けた押圧力を与えることになる。
【0041】
把持部13の各金属片13aは、上述のようにキャップ14の孔14dの内周面から応力を受けると、それぞれの先端が径方向内側に移動するようにして変形する。
【0042】
図7(a)は自然状態における図4のA-A矢視図、図7(b)はキャップ14を嵌合部12に締結した際における図4のA-A矢視図である。
【0043】
図7(a)に示すように、自然状態において、各金属片13aの内径側の空隙O(すなわち孔13b)は、カテーテルC及びガイドワイヤWが挿入可能な大きさとなっている。そして、キャップ14と嵌合部12の螺合状態(どの程度キャップ14を回して挿入したか)によって、空隙Oの大きさが変化していき、完全に螺合させると図7(b)に示すように空隙Oは無くなる(すなわち孔13bが縮径していく)。
【0044】
さらに、キャップ14の外周面には、軸心方向に延伸するとともに径方向外側に突起する羽根部14eが設けられている。羽根部14eは、外周面に対し周方向に所定間隔で複数設けられている。これにより、キャップ14を作業者の手によって回す際の操作性が向上する。
【0045】
以下では、本実施例に係る医療用具を用いたバルーン血管形成術について説明する。
【0046】
まず、第1のガイドワイヤ及びガイディングカテーテル(図示略)を挿入し、第1のガイドワイヤを抜く。これについては従来と同様である。なお、挿入されたガイディングカテーテルはY字コネクタ2に基端が接続された状態とする。
【0047】
次に、ガイドワイヤW(第2のガイドワイヤ)を、カテーテルワイヤ固定具1そしてY字コネクタ2に対して基端側から通過させ、ガイディングカテーテル内を通し、先端を対象部位までに到達させる。
【0048】
カテーテルC(PTCAバルーンカテーテルあるいはマイクロカテーテル)を、カテーテルワイヤ固定具1そしてY字コネクタ2に対して基端側から通過させ、ガイドワイヤWに沿って進行させ、その先端が対象部位に位置するようにする。
【0049】
ガイドワイヤWあるいはカテーテルCの挿入時に、先端が対象部位からずれた位置となってしまった場合には、カテーテルワイヤ固定具1のキャップ14を閉めて孔13bを縮径することで、ガイドワイヤWあるいはカテーテルCを把持し、その状態においてカテーテルワイヤ固定具1を回転させることで、ガイドワイヤWあるいはカテーテルCの位置を調整する。
【0050】
すなわち、本実施例に係るカテーテルワイヤ固定具1は、
カテーテルC及びガイドワイヤWを挿脱可能な孔を有するY字コネクタ2よりも、基端側に設けられるカテーテルワイヤ固定具であって、
カテーテルC及びガイドワイヤWを挿脱可能であるとともに、挿入されたカテーテルC及びガイドワイヤWを把持することが可能な孔13b(第1孔)を有する把持部13を備えるものである。
【0051】
さらに、本実施例に係るカテーテルワイヤ固定具1は、
軸心にカテーテルC及びガイドワイヤWを挿脱可能な孔11a(第2孔)を有する筒状の本体11と、
基端が本体11の先端に固定されるとともに、先端には把持部13が固定され、軸心に、孔13b及び孔11aと連通し、カテーテルC及びガイドワイヤWを挿脱可能な孔12b(第3孔)を有する嵌合部12と、
嵌合部12に対し、先端側から嵌脱自在であり、軸心にカテーテルC及びガイドワイヤWを挿脱可能な孔14d(第4孔)を有するキャップ14とを備え、
キャップ14は、少なくとも嵌合部12及び把持部13を覆うようにして孔14dを孔13bに連通させるとともに、把持部13を径方向内側に押圧することで孔13bを縮径するように、嵌合部12に挿入され、
把持部13は、孔13bが縮径することで、挿入されたカテーテルC及びガイドワイヤWを把持することを可能とするものである。
【0052】
さらに、本実施例に係るカテーテルワイヤ固定具1は、
把持部13が、周方向に離間して複数配され、それぞれの基端が嵌合部12の内周面に固定された金属片12aからなるものである。
【0053】
さらに、本実施例に係るカテーテルワイヤ固定具1は、
キャップ14と嵌合部12とが、孔14dの内周面14aと嵌合部12の外周面12aとが螺合することで嵌合されるものである。
【0054】
これにより本実施例では、カテーテルワイヤ固定具1によって、カテーテルC及びガイドワイヤWを把持することができるため、カテーテルワイヤ固定具1を回すことでカテーテルC及びガイドワイヤWを回すことができ、カテーテルC及びガイドワイヤWの先端の位置が対象部位からずれた場合に、挿入し直さずに位置調整を行うことができ、操作を容易にすることができる。
【0055】
また、本実施例では、インサーター(ガイドワイヤWを挿入する際に用いる器具であり、従来はY字コネクタ2の孔28の基端に接続させて使用される)を、カテーテルワイヤ固定具1の基端にて使用することによっても、ガイドワイヤWをカテーテルワイヤ固定具1の基端から挿入することができる。さらに、本実施例では、カテーテルワイヤ固定具1を抜かずにカテーテルCを挿脱することができる。
【0056】
[実施例2]
本実施例は、実施例1で説明したカテーテルワイヤ固定具1の形状を一部変更したものである。以下では、実施例1と異なる部分を中心に説明し、同一部分については極力説明を省略する。
【0057】
図8,9は、本実施例に係るカテーテルワイヤ固定具3の概略図である。
図8,9に示すように、カテーテルワイヤ固定具3は、実施例1の把持部13に代えて把持部16を備えるものである。
【0058】
把持部16は、可撓性部材から成る円筒状部材であり、軸心に形成される孔16aが、キャップ15の基端14bから先端14cにかけて形成される孔14dと同軸となるようにして、キャップ15の内部に設けられている。なお、嵌合部12の内側に形成される孔12bの孔径よりも、把持部16の孔16aの孔径の方が小さくなっている。
【0059】
さらに、キャップ15は、軸心方向中央付近から先端15b側に向けて、内径が縮径する方向に傾斜する傾斜面15aを有している。把持部16は傾斜面15aに対応する形状であり、当該傾斜面15aに径方向内側から嵌合するようにして設けられている。
【0060】
キャップ15を嵌合部12に対して締結させると、嵌合部12の先端の開口端面12cが、把持部16に対し、先端側に向けた押圧力を与えることになる。当該押圧力を受けた把持部16は、先端側に向けて圧縮されるようにして変形する。
【0061】
図10(a)は自然状態における図9のB-B矢視図、図10(b)はキャップ15を嵌合部12に締結した際における図9のB-B矢視図である。
【0062】
図10(c)に示すように、自然状態において、孔16aの内側の空隙Oaは、カテーテルC(及びガイドワイヤW)が挿入可能な大きさとなっている。そして、キャップ15と嵌合部12の螺合状態(どの程度キャップ15を回して挿入したか)によって、空隙Oaの大きさが変化していき、完全に螺合させると、図10(b)のようになる。
【0063】
すなわち、本実施例に係るカテーテルワイヤ固定具3は、
軸心にカテーテルC及びガイドワイヤWを挿脱可能な孔11a(実施例1参照)(第2孔)を有する筒状の本体11と、
基端が本体11の先端に固定され、軸心に、孔11aと連通し、カテーテルC及びガイドワイヤWを挿脱可能な孔12b(実施例1参照)(第3孔)を有する嵌合部12と、
嵌合部12に対し、先端側から嵌脱自在であり、軸心にカテーテルC及びガイドワイヤWを挿脱可能な孔14d(第4孔)を有するキャップ15とを備え、
把持部16は、孔16a(第1孔)が孔14dと同軸となるようにして孔14dに設けられ、
キャップ15は、少なくとも嵌合部12及び把持部16を覆うようにして孔14dを孔12bに連通させるとともに、嵌合部12の先端の開口端面12cが把持部16を先端側に押圧することで孔16aを縮径するようにして、嵌合部16に挿入され、
把持部16は、孔16aが縮径することで、挿入されたカテーテルC及びガイドワイヤWを把持することを可能とするものである。
【0064】
さらに、本実施例に係るカテーテルワイヤ固定具3は、
把持部16が可撓性の円筒状部材であるものとする。
【0065】
さらに、本実施例に係るカテーテルワイヤ固定具3は、
実施例1同様、キャップ15と嵌合部12とが、孔14dの内周面と嵌合部12の外周面12aとが螺合することで嵌合されるものとしてもよい。
【0066】
これにより本実施例では、実施例1と同等の効果を奏する。
【0067】
[実施例3]
本実施例は、実施例1で説明したカテーテルワイヤ固定具1の形状を一部変更したものである。以下では、実施例1と異なる部分を中心に説明し、同一部分については極力説明を省略する。
【0068】
図11は本実施例に係るカテーテルワイヤ固定具4の概略図であり、図12は自然状態における図11のC-C矢視図である。なお、キャップについては図示していないが、実施例1のキャップ14と同一である。
【0069】
図11に示すように、カテーテルワイヤ固定具4は、実施例1の把持部13に代えて把持部17及び円環状部材18を備えている。
【0070】
把持部17は、図12に示すように、周方向に放射状に配される複数の金属片17aから成るものであり、それぞれの基端が、嵌合部12内を貫通する孔12bに対し内側から固定されている。ただし、実施例1の把持部13に比べて各金属片17a間の離間距離が大きくなっている。
【0071】
円環状部材18は、把持部17よりも基端側において、孔12bに対し内側から固定されており、径方向の厚み(幅)が各金属片17a以上となっている(図12中では各金属片17aと同じ厚みにして表わしている)。
【0072】
キャップ14(実施例1参照)を嵌合部12に対して締結させることで、把持部17の各金属片17aが、キャップ14の孔14d(実施例1参照)内周面から押圧力を受け、それぞれの先端が径方向内側に移動するようにして変形する。
【0073】
自然状態において、円環状部材18の内径側(各金属片17aの内径側)の空隙Obは、カテーテルC(及びガイドワイヤW)が挿入可能な大きさとなっている。そして、キャップ14と嵌合部12の螺合状態によって、徐々に空隙Obの大きさが変化していき、完全に螺合させると空隙Obは無くなる。なお、円環状部材18自体はこの一連の動きにより変形することはない。
【0074】
すなわち、本実施例に係るカテーテルワイヤ固定具4は、
把持部17の基端において嵌合部12の孔12b(第3孔)の内周面に固定される円環状部材を備えるものである。
【0075】
これにより本実施例では、円環状部材18が設けられていることで、挿入されたカテーテルC及びガイドワイヤWが金属片17a間の隙間に入ることを防止することができるので、実施例1よりも金属片17a間の間隔を広げることができる。
【0076】
[実施例4]
本実施例は、実施例1で説明したカテーテルワイヤ固定具1及びY字コネクタ2の形状を一部変更したものである。以下では、実施例1と異なる部分を中心に説明し、同一部分については極力説明を省略する。
【0077】
図13Aは本実施例に係るカテーテルワイヤ固定具5の一部の概略図である。なお、図13Aではキャップ19Aのみしか表わしていないが、その他の構成については、実施例1のカテーテルワイヤ固定具1と同一である。
【0078】
図13Aに示すように、カテーテルワイヤ固定具5のキャップ19Aは、先端にネジ山20Aが形成されている。
【0079】
また、図14Aは本実施例におけるY字コネクタ6の一部の概略図である。なお、図14Aでは盤状部34のみしか表わしていないが、その他の構成については、実施例1のY字コネクタ2と同一である。
【0080】
図14Aに示すように、盤状部34の基端には先端側に向けて凹んだ凹部35が形成されている。そして凹部35の先端側底面35aは、径方向中央部分が開口しており、孔24a(28)に連通している。さらに、凹部35の内周面には、キャップ19Aのネジ山20Aに対応するネジ溝36が形成されている。なお、羽根部14eは、ネジ山20Aよりも基端側に形成されるものとする。
【0081】
これにより、キャップ19Aの先端は、初期状態として盤状部34の基端に対し取り外し可能に螺合した状態となる。
【0082】
また、図13B,14Bは、図13A,14Aとは異なる形状にてキャップと盤状部とを羅合可能としたものである。
【0083】
図13Bに示すように、図6のキャップ14と同様の構成のキャップ19C(図13Bに羽根14eは記載していないが設けてもよい)の先端には、第2嵌合部20Bが接続している。
【0084】
第2嵌合部20Bには、孔20Baが軸心に形成されるとともに、先端側に開口するようにして円環状の凹部20Bbが形成されている。また、凹部20Bbの内周面には下記ネジ山36Aに対応するネジ溝28Baが形成されている。
【0085】
図14Bに示すように、盤状部34Aの基端には円筒部35Aが接続している。また、円筒部35Aの基端にはネジ山36Aが形成されている。
【0086】
これにより、キャップ19Cの先端は、初期状態として盤状部34Aの基端に対し取り外し可能に螺合した状態となる。
【0087】
さらに本実施例では、キャップと盤状部とを螺合させるのではなく、接着させるものとしてもよい。すなわち、図15のキャップ19Bのように、先端の開口端面に接着材20Bを塗布し、この開口端面を実施例1で説明した盤状部24bに固着させる。その際、キャップ19Bを基端から先端にかけて貫通する孔14dと盤状部24b内の孔24aとが連通する(同軸となる)ように、固着させる。
【0088】
ただし、この固着はあくまで初期状態のものであり、図14の場合同様、作業者によって容易に取り外すことができるものとする。
【0089】
図13A,13B,14A,14B,15のようにして、カテーテルワイヤ固定具5をY字コネクタ6に接続(固定)した状態を図16に示す。
【0090】
すなわち、本実施例に係るカテーテルワイヤ固定具5は、
キャップ19A(19B,19C)が、孔14d(第4孔)がY字コネクタ6の孔24a(28)と連通するようにして、Y字コネクタ6の基端に対し取り外し可能に固定されているものである。
【0091】
さらに、本実施例に係るカテーテルワイヤ固定具5は、
キャップ19Aの先端が、Y字コネクタ6の基端と螺合することで固定されているものとする。
【0092】
これにより本実施例では、初期状態として、カテーテルワイヤ固定具5をY字コネクタ6に固定しているため、カテーテルC及びワイヤガイドWの挿脱を容易にすることができる。
【0093】
例えばワイヤガイドWの挿入の際、カテーテルワイヤ固定具5とY字コネクタ6とが離間している場合には、ガイドワイヤWをカテーテルワイヤ固定具5に挿入してから、改めてY字コネクタ6に対して位置決めして挿入することになるが、本実施例では、カテーテルワイヤ固定具5に挿入した時点で自ずとY字コネクタ6に対する位置決めが成されているため、そのままY字コネクタ6に挿入することができる。
【0094】
また、本実施例では、カテーテルワイヤ固定具5をY字コネクタ6から分離することができるので、実施例1で説明したように、作業者がカテーテルワイヤ固定具5を回すことで、カテーテルC及びガイドワイヤWの位置を調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、医療用具として好適である。
【符号の説明】
【0096】
1,3,4,5 カテーテルワイヤ固定具
2,6 Y字コネクタ
11 本体(カテーテルワイヤ固定具)
12 嵌合部
13,16,17 把持部
14,15,19A,19B,19C キャップ
18 円環状部材
21 本体(Y字コネクタ)
22 ロテーター
23 スクリュー
24 オープナー
25 プッシャー
26 止血弁
27 固定弁
C カテーテル
W ガイドワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16