(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】機能性材施工構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20240515BHJP
E04B 2/74 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
E04B1/94 D
E04B1/94 L
E04B1/94 R
E04B2/74 551A
E04B2/74 511A
(21)【出願番号】P 2019232134
(22)【出願日】2019-12-23
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 剣一
(72)【発明者】
【氏名】福山 友理
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-084665(JP,A)
【文献】特開2011-094350(JP,A)
【文献】特開平11-117421(JP,A)
【文献】特開2006-161435(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0317909(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
E04B 2/72 - 2/82
E04B 2/56 - 2/70
E04F 13/00 -13/30
B32B 1/00 -43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性材と、
前記機能性材に対向する化粧材と、
前記機能性材と前記化粧材との間において前記機能性材に重なるように配置され、前記化粧材を保持する複数の留め具とを備え、
前記機能性材は、複数のシート部材で構成され、前記シート部材は上下左右に並べて配置され、かつ前記機能性材は、上下及び左右に隣合う二枚以上の前記シート部材の端部同士が重ね合わされて形成された厚肉部を有し、
前記複数の留め具の各々は、前記厚肉部には重ならないように配置される、
機能性材施工構造。
【請求項2】
前記機能性材に対して前記化粧材とは反対側に配置される複数の支持材を更に備え、
前記支持材は、前記留め具を支持する留め具支持材を含む、
請求項1に記載の機能性材施工構造。
【請求項3】
前記機能性材と前記支持材との間に介在する下地材を更に備える、
請求項2に記載の機能性材施工構造。
【請求項4】
前記機能性材が発泡性を有し、
前記化粧材と前記下地材との間に発泡空間が形成されている、
請求項3に記載の機能性材施工構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性材施工構造に関し、詳しくは、建物の外壁、内壁、屋根、天井などに適用可能な機能性材施工構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、耐火壁構造が開示されている。この耐火壁構造は、木製の間柱の片側に、珪酸カルシウム板である板材を釘で固定した後、その板材に発泡性耐火シートをタッカーで固定し、更に、木製の胴縁を間柱に釘で固定して、その上から窯業系サイディングの板材を胴縁に釘で固定して形成されている。
【0003】
このような耐火壁構造では、発泡性耐火シートが火災時に加熱されることによって発泡して膨張し、珪酸カルシウム板の板材と窯業系サイディングの板材との間で、不燃性の多孔質な断熱層を形成する。したがって、屋外から屋内あるいは屋内から屋外への熱及び炎を伝わりにくくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような耐火壁構造では、隣接する珪酸カルシウム板の板材の接合部分(突付け部分)を通じて、火炎や熱が屋外側から屋内側に向かって侵入しやすく、耐火性が損なわれることがあった。
【0006】
そのため、隣接する珪酸カルシウム板の板材の接合部分において、発泡性耐火シートを重ねて耐火性が損なわれにくいようにすることが考えられるが、発泡性耐火シートを重ね合わせた部分の厚みが厚くなり、窯業系サイディングなどの板材の固定に支障が出ることがあった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされ、施工性が良好な機能性材施工構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る機能性材施工構造は、機能性材と、前記機能性材に対向する化粧材と、前記機能性材と前記化粧材との間において前記機能性材に重なるように配置され、前記化粧材を保持する複数の留め具とを備える。前記機能性材は、複数のシート部材で構成され、かつ前記機能性材は、二枚以上の前記シート部材が重ね合わされて形成された厚肉部を有する。前記複数の留め具の各々は、前記機能性材と前記化粧材とが対向する方向の配置高さが、基準面から2mm以内となるよう配置される。前記基準面は、前記留め具が設置される面における、前記厚肉部とは重ならない領域を含む仮想平面である。
【0009】
本発明の別の一態様に係る機能性材施工構造は、機能性材と、前記機能性材に対向する化粧材と、前記機能性材と前記化粧材との間において前記機能性材に重なるように配置され、前記化粧材を保持する複数の留め具とを備える。前記機能性材は、複数のシート部材で構成され、かつ前記機能性材は、二枚以上の前記シート部材が重ね合わされて形成された厚肉部を有する。前記複数の留め具の各々は、前記厚肉部には重ならないように配置される。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、化粧材の外観を損なわず、かつ機能性材施工構造の施工性が良好である、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明に係る実施形態における支持材、シート部材及び留め具の位置関係の一例を示す正面図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る実施形態における支持材、シート部材及び留め具の位置関係の他の例を示す正面図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る実施形態1を示す概略の断面図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る実施形態1を示す横断面図である。
【
図5】
図5は、本発明に係る実施形態1を示す縦断面図である。
【
図6】
図6は、本発明に係る実施形態1における下地材の施工状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明に係る実施形態1における機能性材の施工状態を示す斜視図である。
【
図8】
図8Aは、本発明に係る実施形態1における機能性材の施工方法の一例を示す斜視図である。
図8Bは、本発明に係る実施形態1における機能性材の施工方法の他例を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明に係る実施形態1における機能性材の施工状態の他例を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、本発明に係る実施形態1を示す斜視図である。
【
図11】
図11Aは本発明に係る実施形態1の一例を示す断面図である。
図11Bは本発明に係る実施形態1の他の一例を示す断面図である。
図11Cは本発明に係る実施形態1の他の一例を示す断面図である。
【
図12】
図12は、本発明に係る実施形態2を示す断面図である。
【
図13】
図13Aは、本発明に係る実施形態の変形例で使用するシート付き下地部材を示す断面図である。
図13Bは、同上のシート付き下地部材を示す斜視図である。
図13Cは同上のシート付き下地部材の施工状態を示す斜視図である。
【
図14】
図14Aは、本発明に係る実施形態の変形例で使用するシート付き下地部材を示す斜視図である。
図14Bは、同上のシート付き下地部材の施工状態を示す斜視図である。
【
図15】
図15は、本発明に係る実施形態3を示す断面斜視図である。
【
図16】
図16は、本発明に係る実施形態3を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
本実施形態における機能性材施工構造1は、機能性材20と、機能性材20に対向する化粧材10と、複数の留め具80とを備える。留め具80は、機能性材20と化粧材10との間において機能性材20に重なるように配置され、化粧材10を保持する。
【0014】
図1及び
図2に示すように、機能性材20は、複数のシート部材27で構成され、かつ機能性材20は、二枚以上のシート部材27が重ね合わされて形成された厚肉部21を有する。複数の留め具80の各々は、機能性材20と化粧材10とが対向する方向(前後方向)の配置高さが、基準面から2mm以内となるよう配置される。或いは、複数の留め具80の各々は、厚肉部21には重ならないように配置される。
【0015】
基準面とは、留め具80が設置される面における、厚肉部21とは重ならない領域を含む仮想平面である。例えば留め具80が機能性材20に直接設置される場合には、機能性材20の化粧材10と対向する面が留め具80が設置される面であり、この機能性材20の面のうちの厚肉部21が無い領域を含む仮想平面が基準面である。また、後述のように機能性材20と留め具80との間に透湿防水シート65、271を介在させる場合には、透湿防水シート65、271における化粧材10と対向する面が留め具80が設置される面であり、この透湿防水シート65、271の面のうちの厚肉部21と重ならない領域含む仮想平面が基準面である。機能性材20と留め具80との間に透湿防水シート65、271以外の適宜の部材が介在する場合も、同様である。配置高さとは、基準面と留め具80との間の、前後方向の距離であるともいえる。
【0016】
なお、
図1及び
図2は、支持材50(詳しくは後述する)、シート部材27及び留め具80の相互の位置関係を示し、それ以外の要素は図示していない。
【0017】
本実施形態によると、機能性材20によって、機能性材施工構造1の耐火性能等の機能を向上させることができる。さらに、各留め具80の前後方向の位置が厚肉部21によって前方に過度に浮き上がるようなことが起こりにくくなる。そのため複数の留め具の相互間に前後方向の位置ずれが生じにくくなる。また、留め具80の相互間には厚肉部21に起因する前後方向の位置ずれが生じにくく、そのため留め具80に化粧材10を保持させやすく、かつ化粧材10にも位置ずれが生じにくい。そのため、機能性材施工構造1の施工性が良好であり、かつ化粧材10の仕上がりが損なわれない。
【0018】
厚肉部21は、例えば二枚のシート部材27が重なり合うことで形成された部位(二枚重ね部位212)と、三枚のシート部材27が重なり合うことで形成された部位(三枚重ね部位213)と、四枚のシート部材27が重なり合うことで形成された部位(四枚重ね部位214)とのうち、少なくとも一種を有しうる。二枚重ね部位212は、例えば
図1及び
図2に示すように、二つのシート部材27の端縁同士が重なり合うことで形成された部位である。四枚重ね部位214は、例えば
図1に示すように、四つのシート部材27の各隅部が重なり合うことで形成された部位である。三枚重ね部位213は、例えば
図2に示すように、一つのシート部材27の端縁と二つのシート部材27の各隅部とが重なり合うことで形成された部位である。
【0019】
一枚のシート部材27の厚みは、例えば0.1mm以上5mm以下であり、0.3mm以上3mm以下であればより好ましく、0.4mm以上1mm以下であれば更に好ましい。
【0020】
複数の留め具80は、いずれも厚肉部21には重なっていないことが好ましい。
【0021】
留め具80が厚肉部21に重なる場合には、上述のように留め具80の配置高さが2mm以内であることが好ましい。そのためには、留め具80は厚肉部21における配置部位のみに重なること好ましい。配置部位とは、一枚のシート部材27との厚みの差が2mm以内である部位のことである。この場合、配置高さが2mm以内であることを実現しやすい。例えば一枚のシート部材27の厚みが2/3mmより大きく1mm以下であれば二枚重ね部位212及び三枚重ね部位213を配置部位とすることは可能であり、一枚のシート部材27の厚みが1mmより大きく2mm以下であれば二枚重ね部位212を配置部位とすることは可能である。配置部位と一枚のシート部材27との厚みとの差は、2mm以下であることが好ましく、1.8mm以下であればより好ましく、1mm以下であれば更に好ましい。
【0022】
シート部材27を施工するに当たっては、厚肉部21における、支持材50(特に後述する留め具支持材501)の長手方向に沿って長い部位が、支持材50に重ならないことが好ましい。この部位は、シート部材27の、支持材50に沿った端縁同士(例えば側端同士)が重なることで構成される。また、厚肉部21における、支持材50の長手方向と交差する方向に長い部位が、留め具80の位置と重ならないことが好ましい。この部位は、シート部材27の、支持材50の長手方向と交差する方向に沿った端縁同士(例えば上端と下端)が重なることで構成される。この場合、留め具支持材501に支持される留め具80が、厚肉部21には重ならないように配置されやすくなる。
【0023】
本実施形態の機能性材施工構造の、より具体的な例を示す。
【0024】
(実施形態1)
(1)概略
図3、
図4及び
図5は、本実施形態の機能性材施工構造1として外壁構造2を示す。外壁構造2は、化粧材10と機能性材20と下地材30と断熱材40と支持材50とを備える。化粧材10と機能性材20と下地材30と断熱材40及び支持材50は、この順で前後方向に並んでいる。すなわち、断熱材40及び支持材50の前方に下地材30が配置されている。また下地材30の前方に機能性材20が配置されている。さらに機能性材20の前方に化粧材10が配置されている。本明細書において、前後方向は機能性材20と化粧材10とが対向する方向であって、外壁構造2の厚み方向であり、屋内外方向と同じである。前方は前後方向における機能性材20から化粧材10へ向かう側のことであり、後方は前方の反対側である。前後方向を基準に左右方向及び上下方向が規定される。
【0025】
(2)化粧材10
化粧材10は機能性材施工構造1の外装材であって、化粧材10によって機能性材施工構造1が化粧される。外壁構造2の場合、化粧材10は外壁材であって、例えば、窯業系サイディングである。窯業系サイディングは、セメントを含む水硬性材料の硬化物である。化粧材10は、略平板状に形成されるが、その表面に凹凸模様や塗膜を備えて意匠性を有していることが好ましい。化粧材10の厚みは、例えば、10mm以上50mm以下に形成されるが、これに限定されるものではない。化粧材10の形状も任意であるが、例えば、正面視(後方に向けて見た場合)で矩形板状に形成される。化粧材10は実を有している。化粧材10の上端部には実凹部101が設けられている。化粧材10の下端部には実凸部102が設けられている。上下に隣接して施工される化粧材10は実凹部101と実凸部102とが嵌合することにより接続される。なお、化粧材10としては、金属板を成形して得られる金属系サイディング材であってもよい。
【0026】
(3)機能性材20
機能性材20は機能性材施工構造1の機能を向上させる。機能性材20は、例えば遮音材、防水材、又は耐火材であるが、これらのみには制限されない。機能性材20が耐火材である場合、機能性材20は機能性材施工構造1の耐火性を向上させる。そのために、例えば機能性材20は火災の熱で発泡して、火災前の初期状態よりも体積を増加させる。ここで、耐火性とは、熱が伝わるのを抑制することを意味する。
【0027】
機能性材20は複数のシート部材27で形成することができる。機能性材20が耐火材である場合、シート部材27は、例えば、正面視で矩形状の発泡性耐火シートで形成することができ、この場合、合成樹脂、多価アルコール、及び難燃性発泡剤などを含有するものが好ましい。
【0028】
合成樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン/酢ビ樹脂、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル共重合樹脂、酢酸ビニル/ポリオレフィン樹脂、酢酸ビニル/バーサチック酸/アクリル樹脂、酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、アクリル/スチレン共重合樹脂、ポリブタジエン樹脂等を挙げることができる。なお、ポリオレフィンとしてはポリエチレン等が挙げられる。
【0029】
多価アルコールとしては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール等が例示される。
【0030】
難燃性発泡剤としては、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アルミニウム、ポリリン酸マグネシウムリン酸塩等のリン酸塩が好適に用いられるが、スルファミン酸塩(スルファミンアンモニウム等)、ホウ酸塩(ホウ酸アンモニウム等)、膨張性黒鉛等を例示することができる。
【0031】
機能性材20における合成樹脂、多価アルコール、難燃性発泡剤の含有比率は、合成樹脂100質量部に対して、多価アルコールが10質量部以上50質量部以下、難燃性発泡剤が50質量部以上200質量部以下であることが好ましい。
シート部材27の厚みは、0.1mm以上5mm以下であることが好ましくは、0.3mm以上3mm以下であることがより好ましく、さらに0.4mm以上1mm以下が好ましい。
【0032】
発泡後の機能性材20の遮熱性を高めるに、機能性材20は発泡前の体積に比べた発泡後の体積の倍率(発泡倍率)が10~30倍であることが好ましい。例えば、化粧材10と下地材30の間に形成される15mmの通気層に、厚み0.6mmのシート状の機能性材20を用いることによって、発泡倍率が25倍となり、比較的安価に耐火性を高められる。また耐火性能を高める部位には、例えば、1.2mmのシート状の機能性材20を用いて発泡倍率12.5倍として使用すると更に耐火性が高まる。
【0033】
(4)下地材30
機能性材施工構造1は、下地材30を備えることが好ましい。下地材30は不燃性であり、また平板状で、機能性材20よりも硬質に形成される。下地材30は複数の下地部材35で形成される。下地部材35としては、例えば、正面視で矩形状で、石膏ボード及び珪酸カルシウム板などが使用される。下地部材35の厚みは、例えば、5mm以上30mm以下にすることができ、好ましくは9mm以上21mm以下にすることができるが、これに限定されない。下地部材35は、建築基準法第68条の26第1項の規定に基づき、同法第2条第九号及び同法施行令第108条の2(不燃材料)の規定に適合するものであることについて、国土交通大臣の認定を受けているものが好ましい。
【0034】
(5)断熱材40
機能性材施工構造1は、断熱材40を備えることが好ましい。断熱材40は機能性材施工構造1の断熱性を向上させる。すなわち。機能性材施工構造1を前後方向で通過する熱量を低減するためのものである。ここで、断熱性とは熱の出入りを低減する性能のことを意味する。
【0035】
断熱材40は、耐火性及び不燃性の高い材料で形成されていることが好ましい。例えば、断熱材40は、人造鉱物繊維系断熱材(例えば、ロックウール又はグラスウール)などの繊維系断熱材を材料として形成される。断熱材40の形態はボード又は綿状などであるが、これに限定されるものではない。断熱材40の密度は10kg/m3以上32kg/m3以下、好ましくは15kg/m3以上25kg/m3以下で、厚みが50mm以上150mm以下、好ましくは80mm以上120mm以下である。断熱材40の密度及び厚みが上記所定の範囲であれば、断熱性能が損なわれにくく、且つ熱が内部に保留されるのを低減することができる。
【0036】
(6)支持材50
機能性材施工構造1は、複数の支持材50を備えることが好ましい。
図4に示すように、支持材50は、化粧材10及び下地材30が取り付けられて、これらを支持する。支持材50は上下方向に長い部材であって、例えば胴縁などとして形成される。支持材50は金属製であって、例えば、C形鋼(リップ付き溝形鋼)から作製される。この他に、支持材50は、各種の断面形状の形鋼から作製され、例えば、角型鋼管、溝形鋼などから作製される。
【0037】
支持材50は取付部51を有している。取付部51は上下方向に長い平板状に形成されている。取付部51には、下地材30が取り付けられる。支持材50は対向部52を有している。対向部52は上下方向に長い平板に形成されている。対向部52は取付部51の後方に位置し、取付部51と対向している。支持材50は結合部53を有している。結合部53は上下方向に長い平板に形成されている。結合部53の短手(幅)方向の一端は取付部51の短手(幅)方向の一端と全長にわたって結合されている。結合部53の短手(幅)方向の他端は対向部52の短手(幅)方向の一端と全長にわたって結合されている。取付部51の結合部53側とは反対側の端部、及び対向部52の結合部53側とは反対側の端部には、補強部55が支持材50の上下方向の全長にわたって設けられている。
【0038】
(7)全体構成
機能性材施工構造1として形成される外壁構造2は以下のように構成される。
【0039】
図6に示すように、複数の支持材50が基礎63の上側に土台64を介して設けられている。複数の支持材50は一つずつ所定の間隔を介して左右方向に並べられている。また二つ以上の支持材50を組み合わせて配置してもよい。二つの支持材50を組み合わせる場合は、各結合部53の外面同士を接合することができる。
【0040】
複数の支持材50の前方には複数の下地部材35が取り付けられる。複数の下地部材35は上下方向及び左右方向に並べて配置されている。上下方向に隣接する下地部材35は、上側の下地部材35の下端と下側の下地部材35の上端とが突付けて取り付けられている。また左右方向に隣接する下地部材35は、右側の下地部材35の左端と左側の下地部材35の右端とが突付けて取り付けられている。すなわち、上下に並ぶ下地部材35は隣接部分31を介しては隣接し、左右方向に並ぶ下地部材35は隣接部分32を介しては隣接している。各下地部材35はビスや釘などの固定具33で支持材50の取付部51に取り付けて固定される。
【0041】
左右方向に並ぶ下地部材35の隣接部分32は、支持材50の取付部51の前方に位置させることが望ましい。これにより、火災時に下地部材35が変形し、隣接部分32に隙間が生じても、取付部51により塞がれているため、耐火性能が損なわれにくい。また、本実施形態では、矩形状の下地部材35を横長に施工しているが、縦長に施工しても良いものである。
【0042】
断熱材40は下地材30の後方を向く面(後面)に配置される。複数の断熱材40はそれぞれ隣り合う支持材50の間に配置される。断熱材40は接着剤などで下地材30の後面に接着されて固定されてもよい。また断熱材40は接着の他に、粘着テープで下地材30に固定することも可能である。なお、断熱材40は、下地材30の後面に密着するのが好ましい。これにより、下地材30と断熱材40との間に上下に連通する空間が形成されず、下地材30から伝わる熱が下地材30と断熱材40との間で上下方向に移動するのを抑制することができる。また支持材50が木材である場合は、タッカー止めなどで支持材50に固定してもよい。また、断熱材40は粘着テープで支持材50に固定することも可能である。
【0043】
図7、
図8A及び
図8Bに示すように、下地材30の前方側には機能性材20が配置される。機能性材20は複数のシート部材27で形成されているため、複数のシート部材27が上下左右に並べて配置される。シート部材27はタッカーなどの固定具23で下地材30に固定される。
【0044】
シート部材27は、機能性材20における隣合うシート部材27の端部26同士が重なり合うように施工される。このため、機能性材20は、シート部材27の端部26同士が重ね合わされて形成された厚肉部21を有する。本実施形態では、厚肉部21は、上下に隣合うシート部材27の上端部26aとシート部材27の下端部26bとが重なり合うことで形成された二枚重ね部位212を有する。
【0045】
機能性材20が施工された後、後述のとおり、複数の留め具80を機能性材20の前面に重なるように配置する。このとき、本実施形態では、上述のとおり、複数の留め具80の各々は、配置高さが2mm以内となるように配置され、又は厚肉部21には重ならないように配置される。
【0046】
ここで、
図8A及び
図8Bに示すように、シート部材27の表面にはマーク部22が設けられている。マーク部22はシート部材27を下地材30に取り付ける際の目安になる。例えば、マーク部22は左右方向に長く線状に形成されており、作業者がマーク部22と隣接部分31とを位置合わせしながら固定具23でシート部材27を固定していく。またマーク部22を目安にして隣り合うシート部材27の重ね寸法を調整することもできる。またマーク部22を破線で形成し、その破線の間隔を例えば100mmピッチなど等間隔にすることができる。この場合、破線の間隔を目安にしてシート部材27を施工することができる。さらにシート部材27の幅方向中央を中心として線対称となる位置にもマーク部22の破線をもう一方のマーク部22の破線と幅方向に一致して形成し、線対称となるマーク部22の破線同士を一致させ、シート部材27を直角での切断加工する際の目安にすることもできる。
【0047】
例えば、
図11Aに示すように、上下に隣接する下地部材35の隣接部分31に対応する位置において、厚肉部21が形成されている。厚肉部21は、シート部材27の端部26同士を重ねて形成している。またこれに限られず、例えば、
図11Bに示すように、シート部材27の端部26を折り返すことにより、シート部材27が二重に重なった部分を厚肉部21として形成することができる。
図11Bにおける二重に重なった部分は、二枚重ね部位212を構成する。すなわち、一枚のシート部材27を折り返すことでシート部材27が二重に重なった部位は、二枚のシート部材27が重なった部位とみなす。また
図11Cに示すように、機能性材20の表面に短片状の他の機能性材(耐火シート部材)25を重ね、二枚のシート状の機能性材20が重なった部分を厚肉部21として形成することができる。この
図11Cにおける二枚のシート状の機能性材20が重なった部位も、二枚重ね部位212を構成する。厚肉部21は、機能性材20において、隣接する下地部材35同士の境目に対応する部分に形成され、少なくとも支持材50と対向しない部分に設けられるのが好ましい。
【0048】
なお、機能性材20(シート部材27)としてロール状の長尺シートを一例として説明してきたが、これに限らず、下地部材35より僅かに大きなサイズの機能性材20(シート部材27)であっても良い。例えば、
図8Bに示すように、矩形状の下地部材35と矩形状のシート部材27からなり、下地部材35を横長に施工する場合で説明する。矩形状の下地部材35と矩形状のシート部材27は、長辺が略同寸法、短辺が矩形状の下地部材35より矩形状のシート部材27を長くしている。一例として、矩形状の下地部材35が1820mm(長辺)×606mm(短辺)、矩形状のシート部材27が1820mm(長辺)×700mm(短辺)である。この矩形状の下地部材35と矩形状のシート部材27を用いた施工について説明する。なお、矩形状の下地部材35および以下に説明する透湿防水シート65の施工については、同様であるので省略する。
【0049】
支持材50の前方に複数の矩形状の下地部材35が縦横突き付けて取り付けられており、左右方向に並ぶ下地部材35の隣接部分32は、支持材50の取付部51の前方に位置させることが望ましい。そして、矩形状の下地部材35の前方に矩形状のシート部材27をタッカーで固定する。その際、矩形状の下地部材35の短辺と矩形状のシート部材27の短辺とを略一致させる。一方、矩形状の下地部材35の長辺と矩形状のシート部材27の長辺とは一致しておらず、矩形状のシート部材27の上下の長辺がそれぞれ、矩形状の下地部材35の上下の長辺から上下に略同寸法はみださせる。すなわち、矩形状のシート部材27の上端部26aが矩形状の下地部材35の上側の長辺よりも上方に位置し、矩形状のシート部材27の下端部26bが矩形状の下地部材35の下側の長辺よりも下方に位置する。なお、最下部の矩形状のシート部材27を施工する場合は、矩形状の下地部材35の下側の長辺は、矩形状のシート部材27の下側の長辺と一致させて、矩形状のシート部材27を矩形状の下地部材35の上側の長辺よりも上方にのみはみださせてもよい。このように矩形状のシート部材27を矩形状の下地部材35の表面に施工するにあたっては、上記と同様に、矩形状のシート部材27に設けたマーク部22を下地材30に取り付ける際の目安にすることができる。なお、
図9に示すように、左右方向に並ぶシート部材27の隣接位置(境目)29が支持材50及び左右方向に並ぶ下地部材35の隣接部分32から左右にずれていてもよい。
【0050】
矩形状のシート部材27は、下段から上方に施工していくことで、はみだし部分を前方(表面側)2枚重ねることができる。この重なり部分は厚肉部21として形成される。この厚肉部21が矩形状の下地部材35の隣接部分31の前方に位置すると、耐火性を向上することができる。また、本実施形態では、矩形状の下地部材35の短辺の突き付け部分と矩形状のシート部材27の短辺の突付け部分を前後方向で略一致させたが、これに限らず、それぞれの突き付け部分を左右方向に位置ずれさせても良い。
【0051】
このように、下地部材35とシート部材27のサイズを近いものにすることで、施工、梱包、運搬などを向上させることができる。なお、本実施形態では矩形状の下地部材35を横長に施工する場合について説明したが、縦長に施工しても良い。この場合、矩形状のシート部材27は、短辺が矩形状の下地部材35の短辺と略同寸法であり、長辺が矩形状の下地部材35の長辺より長くしている。
【0052】
本実施形態では、機能性材20を下地材30に全面にわたって取り付けた後、留め具80を施工する前に、透湿防水シート65を機能性材20の前面に取り付ける。透湿防水シート65は湿気を通し、水滴は通さないシートである。透湿防水シート65もタッカーなどの固定具で取り付けられる。透湿防水シート65は機能性材20の全面にわたって取り付けられる。なお、透湿防水シート65に代えて湿気を通さない防水シートが設けられてもよい。
【0053】
次に、複数の留め具80が、機能性材20に重なるように配置される。本実施形態では、透湿防水シート65の前方に複数の留め具80が配置される。留め具80は透湿防水シート65の前面に配置される。本実施形態では支持材50は留め具支持材501を含み、留め具80は、ビスなどの固定具86で留め具支持材501に固定される。これにより、複数の留め具80が、透湿防水シート65を介して、機能性材20に重ねられる。
【0054】
留め具80を施工するに当たり、本実施形態では上述のとおり、複数の留め具80の各々は、配置高さが2mm以内となるように配置され、又は厚肉部21には重ならないように配置される。このため、各留め具80の前後方向の位置が厚肉部21によって前方に過度に浮き上がるようなことが起こりにくくなり、そのため複数の留め具80の相互間に前後方向の位置ずれが生じにくくなる。
【0055】
図10に示すように、化粧材10は留め具80により保持されることで、透湿防水シート65の前方に取り付けられる。化粧材10は複数配置され、各化粧材10が複数の留め具80に保持される。すなわち、化粧材10の上端はその化粧材10の上側に配置される留め具80に引っ掛けられて保持され、化粧材10の下端はその化粧材10の下側に配置される留め具80に引っ掛けられて保持される。また上下に隣接する化粧材10は実凸部102と実凹部101の実接合で接続される。また、
図4及び
図10に示すように、左右方向に隣接する化粧材10の間には目地材81が配置されている。目地材81の前側にはシーリング材83が設けられている。また最も下側の化粧材10の下方には水切り材84が設けられている。そして、化粧材10の後方には通気層85が形成されている。すなわち、化粧材10の後面と透湿防水シート65の前面との間に通気層85が形成される。
【0056】
本実施形態では、上述のとおり、複数の留め具80には相互に前後方向の位置ずれが生じにくい。そのため、化粧材10にも前後方向の位置ずれが生じにくいため、位置ずれによる外観の悪化及び隣り合う化粧材10の間の防水性の低下が生じにくい。また、化粧材10を留め具80に保持させて施工する際の施工性が良好である。
【0057】
また、厚肉部21は、高耐火部24としても設けられる。高耐火部24は、熱発泡性シート240における外側耐火ボード230の隣接部分に対応する箇所に配置される、他の箇所よりも耐火性が高い部分である。すなわち、厚肉部21は、熱発泡性シート240における外側耐火ボード230の隣接部分に対応する箇所に配置されてもよい。
【0058】
隣接する化粧材10の目地と、隣接する下地部材35の目地とは、正面視において、重ならないようにずらすことが好ましい。すなわち、左右方向に隣接する化粧材10の間のシーリング材83の位置と、左右方向に隣接する下地部材35の隣接部分32の位置とが、正面視において、重ならないようにずらすことが好ましい。また上下方向に隣接する化粧材10の隣接部分11の位置と、上下方向に隣接する下地部材35の隣接部分31の位置とが、正面視において、重ならないようにずらすことが好ましい。この場合、隣接する化粧材10の目地及び隣接部分11に前方から炎が侵入しても、その炎が隣接する下地部材35の目地及び隣接部分31に直接侵入しにくくなって、耐火性を向上させることができる。ただし、左右方向に隣接する化粧材10の目地と、左右方向に隣接する下地部材35の目地とが、正面視において、支持材50に一致する場合は、両目地をずらさなくてもよい。
【0059】
上記のように形成される機能性材施工構造1(外壁構造2)では、特にシート部材27が熱発泡性シート240であることで機能性材20が発泡性を有すると、火災発生の際に、化粧材10の屋外側から加熱されて、機能性材20が発泡して膨張することにより通気層85内で膨張する。すなわち、通気層85は機能性材20が発泡して膨張するための発泡空間88として形成される。そして、これにより、発泡膨張した機能性材20の遮熱効果や遮炎効果により、火炎及び熱が屋外から屋内へと侵入するのを低減することができ、したがって、耐火性を向上させることができると共に、発泡膨張した機能性材20によって化粧材10と下地材30との間に上下に連通する空間が形成されず、熱がこれら化粧材10と下地材30との間で上下方向に移動するのを抑制することができる。また化粧材10の後方に機能性材20を設けることにより、機能性材20に高い耐候性や耐水性は要求されず、耐火性を向上させることができる。また機能性材20は、火災がなければ薄い材料なので、通常時は通気層85を阻害せず、また、機能性材施工構造1の前後方向の寸法(化粧材10から下地材30までの寸法)は、従来のものと比べても大きくなりにくい。さらに断熱材40を備えることにより、下地材30よりも後方(屋内側)に熱が伝わりにくくなり、これにより、耐火性をさらに向上させることができる。
【0060】
(実施形態2)
図12に示す本実施形態の機能性材施工構造1は、支持材50に充填材54を設けたものである。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。実施形態2で説明した構成は、実施形態1で説明した構成と適宜組み合わせて適用可能である。
【0061】
充填材54は支持材50の内側の空間である中空部56に充填することによって、中空部56は充填材54で閉塞される。すなわち、支持材50の取付部51と対向部52と結合部53及び補強部55で囲まれる空間である中空部56の上下方向の連通を充填材54で閉塞する。このように支持材50の中空部56を充填材54で充填して閉塞することによって、中空部56を通じて熱が移動することが少なくなり、耐火性を向上させることができる。
【0062】
充填材54は断熱材40を延長して形成することができる。すなわち、充填材54は断熱材40と同じ材料のロックウール又はグラスウールなどの繊維系断熱材で形成される。この場合、火災発生時の熱が充填材54で断熱されて伝わりにくくなり、屋内側への熱の伝わりが低減されて耐火性を向上させることができる。また断熱材40を下地材30へ取り付ける作業と一連の作業で、充填材54も施工することができ、部材の共通化や作業の簡素化によるコストダウンを図ることができる。
【0063】
(実施形態3)
本実施形態に係る機能性材施工構造1は、下地材30よりも屋内側(室内側)の構成が実施形態1または2に係る機能性材施工構造1と相違する。以下、実施形態1または2と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。実施形態3で説明した構成は、実施形態1または2で説明した構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて適用可能である。
【0064】
図15及び
図16に示すように、本実施形態に係る機能性材施工構造1では、室内側から室外側に向かって、内側耐火ボード210、金属製の支持材50、下地材30、機能性材20、発泡空間88及び化粧材260が、順次配置されている。
【0065】
本実施形態では、下地材30は、外側耐火ボード230で構成されている。内側耐火ボード210は、実施形態1及び2における「下地部材35」と同等のものを用いることができる。
【0066】
ここで、本実施形態における「室内側」及び「室外側」とは、実施形態1及び2における「屋内側」及び「屋外側」に、各々、相当する。
【0067】
金属製の支持材50は、縦支持材221と、ランナー222と、内側縦支持材(スタッド)223とを備える。なお、
図15では支持材50はその長手方向に見てコ字状であるが、これに限られることなくロ字状であってもよい。
【0068】
ランナー222は、縦支持材221よりも室内側に位置する。ランナー222は上ランナー(図示省略)と下ランナー225とを備えている。上ランナーは天井面に配置されている。下ランナー225は床面に配置されている。上ランナーは下方に開口する断面略コ字状のチャンネル材(レール材)で形成される。下ランナー225は上方に開口する断面略コ字状のチャンネル材(レール材)で形成されている。各ランナー222は、機能性材施工構造1の室内側面又は室外側面を正面視した場合の左右方向(略水平方向)に長く形成されている。なお、上ランナーは天井面に固定してもよく、また、縦支持材221に固定してもよい。下ランナーは床面に固定してもよく、また、縦支持材221に固定してもよい。
【0069】
内側縦支持材223は複数あって、各内側縦支持材223は側方に開口する断面略コ字状のチャンネル材(レール材)で形成されている。各内側縦支持材223は上下方向(略鉛直方向)に長く形成されている。各内側縦支持材223はランナー222に端部が保持されている。各内側縦支持材223の上端部は上ランナーに挿入されて保持されている。各内側縦支持材223の下端部は下ランナー225に挿入されて保持されている。なお、内側縦支持材223は断面略ロ字状であってもよい。
【0070】
外側耐火ボード230(下地部材35)は、好ましくは、厚さ15mm以上の石膏ボードである。
【0071】
機能性材20は、実施形態1及び2と同様、シート部材27から構成され、かつ厚肉部21を有する。なお、シート部材27のサイズとしては、外側耐火ボード230の外形寸法よりも一回り大きく、縦辺および横辺の重ね合わせが可能であればよい。
【0072】
本実施形態の機能性材施工構造1は、実施形態1及び2の構造から、下地材30よりも屋内側(室内側)にある断熱材40を除いた構成で、かつ、ランナー222と内側縦支持材223とを付加した構成である。その他の構成においては、本実施形態の機能性材施工構造1と実施形態1及び2の機能性材施工構造1とはほぼ同等である。
【0073】
本実施形態の機能性材施工構造1は、複数の縦支持材221が基礎63の上側に土台64を介して設けられている。複数の縦支持材221は一つずつ所定の間隔を介して左右方向に並べられている。複数の縦支持材221の前方(室外側)には複数の外側耐火ボード230が取り付けられる。複数の外側耐火ボード230は上下方向及び左右方向に並べて配置されている。上下方向に隣接する外側耐火ボード230は、上側の外側耐火ボード230の下端と下側の外側耐火ボード230の上端とが突付けて取り付けられている。また左右方向に隣接する外側耐火ボード230は、右側の外側耐火ボード230の左端と左側の外側耐火ボード230の右端とが突付けて取り付けられている。各外側耐火ボード230はビスや釘などの固定具で縦支持材221の取付部51に取り付けて固定される。複数の外側耐火ボード230により、
図6に示す場合と同様の下地材30が形成される。
【0074】
左右方向に並ぶ外側耐火ボード230は縦辺231同士を突付けて縦辺突付け部234が形成される。縦辺突付け部234は、縦支持材221の取付部51の前方に位置させることが望ましい。これにより、火災時に外側耐火ボード230が変形し、縦辺突付け部234に隙間が生じても、取付部51により塞がれているため、耐火性能を損なわないようにすることができる。なお、本実施形態では、矩形状の外側耐火ボード230を横長に施工しているが、縦長に施工してもよい。
【0075】
縦支持材221に固定した外側耐火ボード230の室外側には、
図7に示す場合と同様にして、シート部材27が配置される。シート部材27は例えば熱発泡性シート240である。シート部材27は上下左右に並べて配置される。シート部材27はタッカーなどの固定具で外側耐火ボード230に固定される。ここで、シート部材27の表面には、
図8及び
図9に示されているマーク部22と同様のマーク部が設けられていることが好ましい。これにより、シート部材27を外側耐火ボード230に取り付ける際の目安になる。
【0076】
上下に隣接する外側耐火ボード230の横辺突付け部233に対応する位置において、上下に位置するシート部材27の横辺端部241同士を重ね合わせる。これにより、上記厚肉部21が形成されている。厚肉部21の上下方向の寸法(横辺端部241同士を重ね合わせ寸法)L1は、50mm以上とすることができる。上記厚肉部21は、上下に隣接する外側耐火ボード230の隣接部分に対応する部分だけではなく、左右方向に隣接する外側耐火ボード230の隣接部分に対応する部分にも形成されてもよい。厚肉部21は、上下方向はもちろんのこと左右方向に隣接する外側耐火ボード230同士の境目(突付け部分)に対応する部分に形成されてもよい。
【0077】
矩形状の外側耐火ボード230の長辺と矩形状のシート部材27の長辺とは一致しておらず、矩形状のシート部材27の上下の長辺がそれぞれ、矩形状の外側耐火ボード230の上下の長辺から上下に略同寸法はみださせることができる。この場合、矩形状のシート部材27の上端部が矩形状の外側耐火ボード230の上側の長辺よりも上方に位置し、矩形状のシート部材27の下端部が矩形状の外側耐火ボード230の下側の長辺よりも下方に位置する。
【0078】
なお、最下部の矩形状のシート部材27を施工する場合は、矩形状の外側耐火ボード230の下側の長辺は、矩形状のシート部材27の下側の長辺と一致させて、矩形状のシート部材27を矩形状の外側耐火ボード230の上側の長辺よりも上方にのみはみださせてもよい。また最下部のシート部材27の室外側には、土台水切り84を配置し、土台水切り84の上部の室外側に、防水層270の下端部を位置させる。防水層270は透湿防水シート271をシート部材27の室外側にタッカーなどの固定具で固定して配置される。
【0079】
矩形状の外側耐火ボード230の短辺と矩形状のシート部材27の短辺とを略一致させてもよいが、左右方向に隣接するシート部材27の縦辺端部242同士を重ね合わせてもよい。この場合、シート部材27の縦辺端部242同士の重ね合い部分で厚肉部21が形成される。厚肉部21の左右方向の寸法(縦辺端部242同士を重ね合わせ寸法)L2は、50mm以上とすることができる。これにより、火災時等に発泡した際に、左右の発泡層に隙間を生じにくくなり、耐火性を向上することができる。
【0080】
このように矩形状のシート部材27を矩形状の外側耐火ボード230の表面に施工するにあたっては、上記と同様に、矩形状のシート部材27に設けたマーク部22を外側耐火ボード230に取り付ける際の目安にすることができる。なお、左右方向に並ぶシート部材27の隣接位置が縦支持材221及び左右方向に並ぶ外側耐火ボード230の隣接部分から左右にずれていてもよい。
【0081】
矩形状のシート部材27は、下段から上方に施工していくことで、はみだし部分を前方(表面側)2枚重ねることができる。この重なり部分が厚肉部21として形成され、矩形状の外側耐火ボード230の隣接部分の室外側に位置することになり、耐火性を向上することができる。また、矩形状の外側耐火ボード230の短辺の突き付け部分と矩形状のシート部材27の短辺の突付け部分を前後方向で略一致させてもよく、また、それぞれの突き付け部分を左右方向に位置ずれさせてもよい。
【0082】
上記ではシート部材27における外側耐火ボード230の隣接部分に対応する箇所に、他の箇所よりも耐火性が高くなる高耐火部24として厚肉部21を配置したが、厚肉部21以外の要素を高耐火部24として設けてもよい。例えば、高耐火部24はシート部材27の一部であって他の部分よりも耐火性が高ければよい。したがって、シート部材27の隣接部分に対応する箇所が、例えば、他の箇所よりも熱伝導率が低ければよく、シート部材27の隣接部分に対応する箇所に、他の箇所よりも熱伝導率が低い材質の機能性材が設けられて、熱伝導率が低い材質の機能性材を設けた部分が高耐火部24として形成されてもよい。または、シート部材27が発泡シート材の場合、シート部材27の隣接部分に対応する箇所が他の箇所よりも厚肉でなくてもよく、例えば、発泡時、シート部材27の隣接部分に対応する箇所における独立気泡の割合が、他の箇所における独立気泡の割合よりも高くなるよう構成されることにより、シート部材27の隣接部分に対応する箇所を高耐火部24として形成することができる。また、例えば、シート部材27の隣接部分に対応する箇所における発泡倍率が、他の箇所における発泡倍率よりも高くなるように構成されてもよい。
【0083】
シート部材27で構成される機能性材20を下地材30に全面にわたって取り付けた後、
図10の場合と同様にして、透湿防水シート65を機能性材20の室外側に取り付ける。透湿防水シート65は湿気を通し、水滴は通さないシートである。透湿防水シート65もタッカーなどの固定具で取り付けられる。透湿防水シート65は機能性材20の全面にわたって取り付けられる。なお、湿気も水滴も通さない防水シートであってもよい。
【0084】
透湿防水シート65の室外側には複数の留め具80が配置される。留め具80は透湿防水シート65の室外側に配置される。これにより、複数の留め具80が、透湿防水シート65を介して、機能性材20に重ねられるように配置される。本実施形態でも、支持材50は留め具支持材501を含み、留め具80は、ビスなどの固定具86で、留め具支持材501に固定される。このため、複数の留め具80が、透湿防水シート65を介して、機能性材20に重ねられる。
【0085】
本実施形態でも、留め具80を施工するに当たり、複数の留め具80の各々は、配置高さが2mm以内となるように配置され、又は厚肉部21には重ならないように配置される。このため、複数の留め具80には相互に前後方向の位置ずれが生じにくくなる。
【0086】
化粧材10は留め具80により透湿防水シート65の室外側に取り付けられる。化粧材10は複数配置され、各化粧材10が複数の留め具80に保持される。化粧材10の上端はその化粧材10の上側に配置される留め具80に引っ掛けられて保持され、化粧材10の下端はその化粧材10の下側に配置される留め具80に引っ掛けられて保持される。また上下に隣接する化粧材10は実凸部と実凹部の実接合で接続される。また、
図4及び
図10に示す場合と同様に、左右方向に隣接する化粧材10の間には目地材81が配置されている。目地材81の室外側にはシーリング材83が設けられている。また最も下側の化粧材10の下方には水切り材84が設けられている。そして、化粧材10の室内側には通気層85が形成されている。化粧材10の後面(室内側面)と透湿防水シート65の前面(室外側面)との間に通気層85が形成される。本実施形態でも、複数の留め具80には相互に前後方向の位置ずれが生じにくくなるため、化粧材10にも前後方向の位置ずれが生じにくいため、位置ずれによる外観の悪化及び隣り合う化粧材10の間の防水性の低下が生じにくい。また、化粧材10を留め具80に保持させて施工する際の施工性が良好である。
【0087】
上下方向に隣接する化粧材10の隣接部分の位置と、上下方向に隣接する外側耐火ボード230の隣接部分の位置とが、正面視において、重ならないようにずらすことが好ましい。また隣接する化粧材10の目地と、隣接する外側耐火ボード230の目地とは、正面視において、重ならないようにずらすことが好ましい。すなわち、左右方向に隣接する化粧材10の間のシーリング材83の位置と、左右方向に隣接する外側耐火ボード230の隣接部分の位置とが、正面視において、重ならないようにずらすことが好ましい。この場合、隣接する化粧材10の目地及び隣接部分に室外側から炎が侵入しても、その炎が隣接する外側耐火ボード230の目地及び隣接部分に直接侵入しにくくなって、耐火性を向上させることができる。なお、左右方向に隣接する化粧材10の目地と、左右方向に隣接する外側耐火ボード230の縦辺突付け部は、正面視において、縦支持材221に一致させることが好ましく、前記目地と前記縦辺突付け部とを同じ縦支持材221に一致させてもよく、また前記目地と前記縦辺突付け部とを異なる縦支持材221に一致させてもよい。
【0088】
縦支持材221の室内側には、ランナー222と複数の内側縦支持材223とが配置される。ランナー222のうち、上ランナーは天井面に配置され、下ランナー225は床面に配置される。各内側縦支持材223の上端部は上ランナーに挿入されて保持されている。各内側縦支持材223の下端部は下ランナー225に挿入されて保持されている。そして、ランナー222と複数の内側縦支持材223との少なくとも一方に、複数の内側耐火ボード210がビス又は釘などの固定具224で固定される。複数の内側耐火ボード210は上下方向及び左右方向に並べて配置される。上下方向及び左右方向に隣接する内側耐火ボード210は端部同士が突付けて配置される。なお、上ランナーは天井面に固定してもよく、また、縦支持材221に固定してもよい。下ランナーは床面に固定してもよく、また、縦支持材221に固定してもよい。
【0089】
上記のように形成される機能性材施工構造1では、実施形態1及び2と同様の効果が得られる。つまり、機能性材施工構造1では、機能性材20が特に耐火材であり、シート部材27が特に熱発泡性シート240であると、火災発生の際に、化粧材10の屋外側から加熱されて、熱発泡性シート240が発泡して膨張することにより通気層85内で発泡層が形成される。通気層85は熱発泡性シート240が発泡して膨張するための発泡空間88として利用される。これにより、発泡膨張した熱発泡性シート240の遮熱効果や遮炎効果により、火炎及び熱が屋外から屋内へと侵入するのを低減することができ、したがって、耐火性を向上させることができると共に、発泡膨張した熱発泡性シート240によって化粧材10と外側耐火ボード230との間に上下に連通する空間が形成されず、熱がこれら化粧材10と外側耐火ボード230との間で上下方向に移動するのを抑制することができる。また化粧材10の後方に熱発泡性シート240を設けることにより、熱発泡性シート240に高い耐候性や耐水性は要求されず、耐火性を向上させることができる。また熱発泡性シート240は、火災がなければ薄い材料なので、通常時は通気層85を阻害せず、また、機能性材施工構造1の前後方向の寸法(化粧材10から外側耐火ボード230までの寸法)は、従来のものと比べても大きくなりにくい。また、熱発泡性シート240は、外側耐火ボード230に比べて比較的軽量なため、施工時の負担を軽減することができる。また、機能性材施工構造1では、熱発泡性シート240を備えることにより、火災発生の際に、内側耐火ボード210の屋内側から加熱されて、熱発泡性シート240が発泡して膨張することにより通気層85内で発泡層が形成される。これにより、発泡膨張した熱発泡性シート240の遮熱効果や遮炎効果により、火炎及び熱が屋内から屋外へと放出されるのを低減することができ、したがって、耐火性を向上させることができる。
【0090】
なお、実施態様3は、断熱材40を用いない構造として説明したが、必要に応じて実施態様1または2のように断熱材40を設けてもよい。
【0091】
(変形例)
実施形態1~3は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態1~3は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0092】
(1)機能性材施工構造について
上記では、実施形態1~3の機能性材施工構造1として外壁構造を説明したが、これに限られない。機能性材施工構造1は、例えば、内壁構造、屋根構造、天井構造などに適用可能である。内壁構造の場合、化粧材10は合板などの内壁材となる。屋根構造の場合、化粧材10は屋根材となる。天井構造の場合、化粧材10は天井板となる。
【0093】
また、上記実施形態1~2では、断熱材40が設けられているが、これに限定されず、断熱材40が設けられていなくてもよい。また、上記実施形態3では、断熱材40が設けられていないが、これに限定されず、断熱材40が設けられていてもよい。
【0094】
また、上記実施形態1~3では、例えば
図6に示すように、下地部材35の左右方向の隣接部分32が支持材50と一致しているが、これに限定されず、当該隣接部分32が支持材50と一致していなくてもよい。この場合、機能性材20の上記隣接部分32に対応する部分が当該機能性材20の他の部分よりも厚肉に形成されていてもよい。
【0095】
また、上記実施形態1~3では、化粧材10の長手方向が水平となるように設けられた「横張り」構造であったが、これに限定されず、化粧材10の長手方向が鉛直となるように設けられた「縦張り」構造であってもよい。なお、上記実施形態が屋根構造の場合は、化粧材が屋根材であって、横葺き構造及び縦葺き構造のいずれであってもよい。
【0096】
また、上記実施形態1~3では、複数の下地部材35を施工して下地材30を形成した後、複数のシート部材27を施工して機能性材20を形成したが、これに限られず、下地部材35とシート部材27とを予め(施工前に)一体化してシート付き下地部材36を形成した後、複数のシート付き下地部材36を施工してもよい。
【0097】
図13A及び
図13Bは、シート付き下地部材36の一例を示している。シート付き下地部材36は、上記と同様の横長の矩形状の下地部材35の片面(表面)に、上記と同様の横長の矩形状のシート部材27が設けられている。下地部材35の左右方向の寸法とシート部材27の左右方向の寸法は同じであり、正面視において、下地部材35の左端とシート部材27の左端とが一致し、下地部材35の右端とシート部材27の右端とが一致している。シート部材27の上下方向の寸法は下地部材35の上下方向の寸法よりも長く形成されている。シート部材27の上端部26aの先端は、下地部材35の上端面よりも上側に突出している。シート部材27の下端部26bの先端は、下地部材35の下端面より
も下側に突出している。下地部材35の表面とシート部材27とは、ほぼ全面にわたって接着等されているが、
図13Aのように、下地部材35の表面の下部とシート部材27の下端部26bとは剥離可能に形成されている。
【0098】
上記と同様の下地材30と機能性材20は、
図13Cのように、複数のシート付き下地部材36を上下方向及び左右方向に並べ、支持材50に取り付けることによって形成される。すなわち、複数の下地部材35で下地材30が形成され、複数のシート部材27で機能性材20が形成される。上下方向に隣接する下地部材35の隣接部分31に対応して、機能性材20の厚肉部21が形成される。厚肉部21は、下側のシート付き下地部材36のシート部材27の上端部26aと、上側のシート付き下地部材36のシート部材27の下端部26bとが重なって形成される。すなわち、下側の下地部材35の上端と、上側の下地部材35の下端とを突付けた後、上側の下地部材35の表面から上側のシート部材27の下端部26bを剥離した状態にし、次に、下側のシート部材27の上端部26aを上側の下地部材35の下部と上側のシート部材27の下端部26bとの間に差し入れる。この後、上側のシート部材27の下端部26bを下側のシート部材27の上端部26aに重ねる。このようにして二つのシート部材27の上端部26aと下端部26bとの重なりにより厚肉部21が形成される。なお、左右方向に隣接する下地部材35の隣接部分32に対応する部分では、左右方向に隣接するシート部材27の側端部同士が隣接する。
【0099】
本例では、厚肉部21は、上端部26aと下端部26bとの重なりによる二枚重ね部位212のみを有する。なお、この例において、下地部材35の左右方向の寸法よりもシート部材27の左右方向の寸法が大きくてもよい。この場合、左右方向に隣接するシート部材27の側端部同士が重なることで、厚肉部21は、左右方向に隣接する下地部材35の隣接部分31にも対応して形成され、そのため、厚肉部21は
図1に示す場合と同様に、二枚重ね部位212と四枚重ね部位214とを有する。複数の留め具80を取り付ける際は、留め具80の各々は、配置高さが2mm以内となるように配置され、又は厚肉部21には重ならないように配置される。
【0100】
図14Aは、シート付き下地部材36の他例を示している。
図13A及び
図13Bのものに比べて、シート部材27が下地部材35に対して左右方向の一方にずれている。すなわち、例えば、シート部材27の右端部が覆い部28として下地部材35の右端面よりも側方(外側)に突出している。したがって、下地部材35の表面の左端部はシート部材27で覆われていない被覆い部37として形成されている。また逆に、シート部材27の左端部が覆い部28として下地部材35の左端面よりも側方(外側)に突出し、下地部材35の表面の右端部がシート部材27で覆われていない被覆い部37として形成されていてもよい。
【0101】
図14Bのように、このようなシート付き下地部材36は、上記と同様に、上下方向及び左右方向に並べ、支持材50に取り付けることによって施工される。そして、上記と同様に、下側のシート付き下地部材36のシート部材27の上端部26aと、上側のシート付き下地部材36のシート部材27の下端部26bとが重なることにより、上下方向に隣接する下地部材35の隣接部分31に対応して、機能性材20の厚肉部21が形成される。
【0102】
また左右方向に隣接するシート付き下地部材36は、下地部材35の側端部同士が突付けられて施工されるが、このとき、一方の下地部材35は覆い部28が突出した方の側端部であり、他方の下地部材35は被覆い部37側の側端部である。そして、下地部材35の側端部同士を突付けた後、一方のシート付き下地部材36の覆い部28を他方のシート付き下地部材36の被覆い部37の表面に配置する。この場合、左右方向に隣接するシート部材27の隣接位置(境目)29と隣接部分32とが正面視で一致せず、両者は左右方向にずれている。したがって左右方向に隣接する下地部材35の隣接部分32に対応する部分は、シート部材27の覆い部28で覆われて隣接部分32の隙間から炎や熱が侵入しにくくなる。
【0103】
本例でも、厚肉部21は、上端部26aと下端部26bとの重なりによる二枚重ね部位212のみを有する。なお、この例においても、下地部材35の左右方向の寸法よりもシート部材27の左右方向の寸法が大きくてもよい。この場合、左右方向に隣接するシート部材27の側端部同士が重なることでも、厚肉部21が形成され、そのため、厚肉部21は、
図1に示す場合と同様に、二枚重ね部位212と四枚重ね部位214とを有する。複数の留め具80を取り付ける際は、留め具80の各々は、配置高さが2mm以内となるように配置され、又は厚肉部21には重ならないように配置される。
【0104】
そして、シート付き下地部材36を使用した場合は、下地部材35とシート部材27とを一度の作業で同時に施工することができ、施工性が向上する。また下地部材35とシート部材27とを別々に梱包、搬送する必要がなく、作業性が向上する。
【0105】
(2)機能性材について
上記の各実施形態において、機能性材20における厚肉部21は、上下方向に隣接する二枚のシート部材27における下側のシート部材27の上端部と上側のシート部材27の下端部との重なりのみで形成されてもよく、この場合、例えば
図8Bに示されるように左右方向に隣合うシート部材27同士は隣接位置(境目)29で突き合わされていてもよい。また、厚肉部21は、左右方向に隣接する二枚のシート部材27の側端部同士の重なりのみで形成されてもよく、その場合は上下方向に隣合うシート部材27同士は隣接位置(境目)で突き合わされていてもよい。前記のいずれの場合も、厚肉部21は、二枚重ね部位212を有する。また、厚肉部21は、
図1、
図2及び
図15に示す場合のように、上下方向に隣接する二枚のシート部材27における下側のシート部材27の上端部と上側のシート部材27の上端部との重なりと、左右方向に隣接する二枚のシート部材27の側端部同士の重なりとの、両方によって形成されることで、二枚重ね部位212と、三枚重ね部位213又は四枚重ね部位214とを有してもよい。シート部材27は、前記以外の種々の態様で重なっていてもよい。いずれの場合においても、複数の留め具80を取り付ける際は、留め具80の各々は、配置高さが2mm以内となるように配置され、又は厚肉部21には重ならないように配置される。
【0106】
厚肉部21は、配置部位と、配置部位よりも厚みの大きい部位との、両方を有することができる。また、厚肉部21は、配置部位のみを有してもよく、すなわち厚肉部21は、全体的に、配置部位を規定する厚み以下の厚みを有していてもよい。そのためには、シート部材27を施工するにあたり、シート部材27を重ねて厚肉部21を形成する際は、シート部材27を重ねる枚数の上限が、厚肉部21の厚みが全体的に、配置部位を規定する厚み以下となるように規制されてもよい。この場合、複数の留め具80は、機能性材20におけるいかなる部位に重なる位置に配置されていてもよい。また、厚肉部21は、配置部位を有さなくてもよい。すなわち、厚肉部21は、全体的に、配置部位を規定する厚みよりも大きな厚みを有していてもよい。この場合、複数の留め具80は、いずれも、厚肉部21には重ならないように配置される。
【0107】
また、シート部材27には、水平位置を示すように、左右方向に長く線状に形成されたマーク部22だけでなく、鉛直位置を示すように、上下方向に長く線状に形成されたマーク部を設けてもよい。
【0108】
なお、本実施形態では、機能性材20を構成するシート部材27として耐火性を有する耐火シート(熱発泡性シート)について記載したが、これに限定されることはなく、例えば、通気防水シート、防水シート、遮熱シート又は遮音シート等、耐火シート以外の機能性シートであってもよい。
【0109】
(3)支持材について
支持材50は、上下方向に長い縦胴縁であってもよいし、左右方向に長い横胴縁であってもよい。
【0110】
本実施形態では支持材50は、留め具80を支持する留め具支持材501を含むが、留め具支持材501を含まなくてもよい。すなわち、留め具80は、支持材50以外の部材で支持されていてもよい。また、支持材50は留め具支持材501のみを含んでもよい。
【0111】
(4)その他
実施形態3に係る機能性材施工構造1は内側耐火ボード210を備えるが、実施形態3において機能性材施工構造1が内側耐火ボード210を備えなくてもよい。
【0112】
(まとめ)
第一の態様に係る機能性材施工構造(1)は、機能性材(20)と、機能性材(20)に対向する化粧材(10)と、機能性材(20)と化粧材(10)との間において機能性材(20)に重なるように配置され、化粧材(10)を保持する複数の留め具(80)とを備える。機能性材(20)は、複数のシート部材(27)で構成され、かつ機能性材(20)は、二枚以上のシート部材(27)が重ね合わされて形成された厚肉部(21)を有する。複数の留め具(80)の各々は、機能性材(20)と化粧材(10)とが対向する方向の配置高さが、基準面から2mm以内となるよう配置される。基準面は、留め具(80)が設置される面における、厚肉部(21)とは重ならない領域を含む仮想平面である。
【0113】
この態様によると、機能性材(20)によって、機能性材施工構造(1)の耐火性能を向上させることができる。さらに、各留め具(80)の前後方向の位置が厚肉部(21)によって前方に過度に浮き上がるようなことが起こりにくくなるため、化粧材の外観が良好であり、また機能性材施工構造(1)の施工性が良好である。
【0114】
第二の態様に係る機能性材施工構造(1)は、機能性材(20)と、機能性材(20)に対向する化粧材(10)と、機能性材(20)と化粧材(10)との間において機能性材(20)に重なるように配置され、化粧材(10)を保持する複数の留め具(80)とを備える。機能性材(20)は、複数のシート部材(27)で構成され、かつ機能性材(20)は、二枚以上のシート部材(27)が重ね合わされて形成された厚肉部(21)を有する。複数の留め具(80)の各々は、厚肉部(21)には重ならないように配置される。
【0115】
この態様によると、機能性材(20)によって、機能性材施工構造(1)の耐火性能を向上させることができる。さらに、各留め具(80)の前後方向の位置が厚肉部(21)によって前方に過度に浮き上がるようなことが起こりにくくなるため、化粧材の外観が良好であり、また機能性材施工構造(1)の施工性が良好である。
【0116】
第三の態様に係る機能性材施工構造(1)は、第一又は第二の態様において、機能性材(20)に対して化粧材(10)とは反対側に配置される複数の支持材(50)を更に備える。支持材(50)は、留め具(80)を支持する留め具支持材(501)を含む。
【0117】
この態様によると、留め具(80)を留め具支持材(501)で支持させることで、留め具(80)を施工しやすい。
【0118】
第四の態様に係る機能性材施工構造(1)は、第一から第三のいずれか一の態様において、機能性材(20)と支持材(50)との間に介在する下地材(30)を更に備える。
【0119】
この態様によると、下地材(30)に重ねて機能性材(20)を配置できるため、機能性材(20)を施工しやすい。
【0120】
第五の態様に係る機能性材施工構造(1)は、第四の態様において、機能性材(20)が発泡性を有し、化粧材(10)と下地材(30)との間に発泡空間(88)が形成されている。
【0121】
この態様では、機能性材(20)が発泡空間(88)において発泡しやすくなり、火災発生時に機能性材(20)による熱の伝わりを低減しやすくなる。
【符号の説明】
【0122】
1 機能性材施工構造
10 化粧材
20 機能性材
21 厚肉部
27 シート部材
30 下地材
40 断熱材
50 支持材
501 留め具支持材
80 留め具
88 発泡空間