(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 1/12 20060101AFI20240515BHJP
B43K 8/02 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
B43K1/12 B
B43K8/02 100
(21)【出願番号】P 2020000816
(22)【出願日】2020-01-07
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】大本 慶
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-014117(JP,A)
【文献】特開2015-199353(JP,A)
【文献】特開2014-148082(JP,A)
【文献】特開2019-131683(JP,A)
【文献】特開2008-274005(JP,A)
【文献】特開2019-181892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00-1/12
B43K 5/00-8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペン芯における筆記部が形成されたペン先を軸筒の先端部に突出するように配置した筆記具であって、
前記ペン芯は、
外径がΦ1.3~Φ1.4mmかつ糸の太さが5デニールのPET製の繊維加工体を含んで構成され、
前記ペン先は、先端形状が曲面に形成され、
前記ペン先を筆記面に対して65°の角度で垂直方向に
荷重0~5(N)を掛けて押し当て
て0(mm)~
0.25(mm)変位させたときに、前記ペン芯の弾性特性において、各変位(mm)x
1と
荷重(N)y
1
とが、
前記荷重0~5(N)全域でy
1=20x
1からy
1=45x
1の間に入るように構成
され、
さらに前記ペン芯は、外周部が硬めに、内部が柔らかめに構成され、ペン先では、内部の柔らかめの部分が硬めの外周部よりも先方に露出し、筆記時の筆記圧によりペン先の先端部の柔らかめの部分が弾性変形可能に形成され、
筆記時に、前記ペン先を筆記面に対して65°の角度で接しさせ、筆記圧により前記露出した柔らかめの部分が弾性変形し、ペン先の先端部の柔らかめの部分と硬めの外周部の先端が同時に接触するように構成されたペン芯を有することを特徴とする筆記具。
【請求項2】
ペン芯における筆記部が形成されたペン先を軸筒の先端部に突出するように配置した筆記具であって、
前記ペン芯は、
外径がΦ1.4mm、かつ、糸の太さが3デニールのPET製の繊維加工体を含んで構成され、
前記ペン先は、先端形状が曲面に形成され、
前記ペン先を筆記面に対して65°の角度で垂直方向に
荷重0~5(N)を掛けて押し当
てて0(mm)~
0.20(mm)変位させたときに、前記ペン芯の弾性特性において、各変位(mm)x
1と荷重
(N)y
1
とが、
前記荷重0~5(N)全域でy
1=20x
1からy
1=45x
1の間に入るように構成
され、
さらに前記ペン芯は、外周部及び内部を略均一の硬さとし、
筆記時に、前記ペン先を筆記面に対して65°の角度で接しさせ、筆記圧によりペン先の先端部が筆記圧で押し広がるように構成したものであり、
前記ペン芯を径方向に、平面に対して垂直に荷重0~10(N)を掛けて圧縮した際に0(mm)~0.2(mm)径方向に変位させたときに、圧縮時の前記ペン芯の弾性特性において、変位(mm)x
2
と荷重(N)y
2
とが、前記圧縮の荷重0~10(N)の全域で、y
2
=43.2x
2
からy
2
=54.4x
2
の間に入るように構成したペン芯を有することを特徴とする筆記具。
【請求項3】
前記筆記具に用いられる筆記用インクのpHが7.5~9.5であることを特徴とする請求項1
又は2に記載の筆記具。
【請求項4】
押し付けの荷重と戻りの荷重の変位曲線が異なることを特徴とする請求項1
又は2に記載の筆記具。
【請求項5】
請求項
1及び請求項
2にそれぞれ記載の筆記具を
有したことを特徴とする筆記具セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維加工体又は合成樹脂多孔質体よりなるペン芯を有する筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筆記具又は筆記具に用いられるペン芯には、筆記部を形成したペン先を軸筒の先端部に突出するように配した筆記具のペン先であって、このペン先が繊維を集束して、バインダー樹脂で接着硬化させて得られた繊維加工体からなり、且つ、先端形状が先細り形状を有するペン先であり、撓みやすいペン先(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【0003】
また、繊維を集束して、バインダー樹脂で接着硬化させて得られる繊維束からなる筆記具用ペン先において、上記繊維束の少なくとも筆記面となる表面に熱可塑性樹脂粉体からなる焼結体を被覆してなる、外層と内層が異なる筆記具用ペン先(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0004】
また、繊維加工体又は合成樹脂多孔質体よりなるペン先において、ペン先の外周部を固めに内部を柔らかめに形成し、先端形状を曲面形状に研磨形成することで、内部の柔らかい部分を露出させて塗布部とした、外層と内層が異なる筆記具用ペン先(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【0005】
特許文献1は繊維束加工体のペン先を有し、耐潰れ性を考慮した撓みやすいペン先であり、特許文献2、3は、内層と外層の異なり筆記圧によって描線を太くすることができるペン先である。
【0006】
しかしながら、限られた外径寸法で、極力描線幅を太くできるペン芯は開示されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-199353号公報
【文献】特開2004-98518号公報
【文献】特開2019-14117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、限られた外径寸法で、描線幅を極力太くできる筆記具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ペン芯において筆記部が形成されたペン先を軸筒の先端部に突出するように配置した筆記具であって、
前記ペン芯は、繊維加工体又は合成樹脂多孔質体を含んで構成され、
前記ペン先は、先端形状が曲面に形成され、
前記ペン先を筆記面に対して65°の角度で垂直方向に0(mm)~1(mm)下方に押し当てた際の各変位(mm)をx1とし、変位x1が0(mm)~1(mm)押し付ける間の弾性荷重y1(N)が、y1=20x1からy1=45x1の間、より好ましくはy1=20x1からy1=30x1の間に入るように構成されたペン芯を有することを特徴とする筆記具である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の筆記具によれば、ペン芯は繊維加工体又は合成樹脂多孔質体を含んで構成されたペン先は、先端形状が曲面に形成され、前記ペン先を筆記面に対して65°の角度で垂直方向に0(mm)~1(mm)下方に押し当てた際の各変位(mm)をx1とし、変位x1が0(mm)~1(mm)押し付ける間の弾性荷重y1(N)が、y1=20x1からy1=45x1の間に入るように構成したペン芯を有するので、限られた外形寸法で極力太い描線を筆記面に施すことができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る筆記具の説明であって、(a)が正面図、(b)が(a)から周方向に90°回転させた側面図、(c)が(a)のC-C線に沿う縦断面図である。
【
図2】
図1の筆記部のキャップを外した状態の説明図であって、(a)が正面図、(b)が(a)のB-B線に沿う縦断面図、(c)が(b)の二点鎖線Cで示す先端部の拡大断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る筆記具の説明であって、(a)が正面図、(b)が(a)から周方向に90°回転させた側面図、(c)が(a)のC-C線に沿う縦断面図である。
【
図4】
図1の筆記部のキャップを外した状態の説明図であって、(a)が正面図、(b)が(a)のB-B線に沿う縦断面図、(c)が(b)の二点鎖線Cで示す先端部の拡大断面図である。
【
図5】ペン芯、保持パイプ、及び口プラの各部品図であって、(a)が第2実施形態の筆記具に使用する各部品の組み立て前の説明図、(b)が(a)の各部品を組み立てた部分組立図、(c)が(a)の部品を90°回転させた状態を示した各部品の組み立て前の説明図、(d)が(b)の90°回転させた状態を示す各部品を組み立てた部分組立図である。
【
図6】実施形態の筆記具を筆記面に対して65°の角度にして筆記する状態の説明図である。
【
図7】実施例1~3のペン芯とそれに用いるパイプの対比説明である。
【
図8】実施形態の筆記具に使用する実施例1~3のペン芯の先端形状と描線幅の説明図であって、(a)、(b)が実施例1及び実施例2のペン芯先端部の縦断イメージ図、横断イメージ図、(c)、(d)が実施例3のペン芯先端部の縦断イメージ図、横断イメージ図、(e)が実施例1~3の描線幅の比較説明図である。
【
図9】実施例1~3のペン芯の説明図であって、(a)がペン芯を径方向に圧縮する状態の説明図、(b)が実施例1のペン芯の拡大横断面画像、(c)が実施例2のペン芯の先端の拡大横断面画像、(d)が実施例3にペン芯の先端の拡大横断面画像である。
【
図10】実施例1~3のペン芯の特性の説明図であって、(a)が各実施例1~3の弾性を比較した図、(b)が各実施例1~3の描線幅の比較した図である。
【
図11】実施例1のペン芯の特性の説明図であって、(a)が径方向に圧縮及び開放した際の弾性特性、(b)が径方向への圧縮した際の弾性特性を示す。
【
図12】実施例2のペン芯の特性の説明図であって、(a)が径方向に圧縮及び開放した際の弾性特性、(b)が径方向への圧縮した際の弾性特性を示す。
【
図13】実施例3のペン芯の特性の説明図であって、(a)が径方向に圧縮及び開放した際の弾性特性、(b)が径方向への圧縮した際の弾性特性を示す。
【
図14】実施例1~3のペン芯の筆記角65°における、ペン先弾性特性試験の説明図であって、(a)がペン芯を筆記角65°にして圧縮する状態の説明図、(b)が実施例1のペン芯の先端の拡大画像、(c)が実施例2のペン芯の先端の拡大面画像、(d)が実施例3にペン芯の先端の拡大画像である。
【
図15】実施例1のペン芯の筆記角65°における弾性特性の説明図であって、(a)が圧縮及び開放した際の弾性特性、(b)が圧縮した際の弾性特性を示す。
【
図16】実施例2のペン芯の筆記角65°における弾性特性の説明図であって、(a)が圧縮及び開放した際の弾性特性、(b)が圧縮した際の弾性特性を示す。
【
図17】実施例3のペン芯の筆記角65°における弾性特性の説明図であって、(a)が圧縮及び開放した際の弾性特性、(b)が圧縮した際の弾性特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0013】
図1、
図2は第1実施形態に係る筆記具の説明図である。
図3、
図4は第2実施形態に係る筆記具、
図5は実施形態1、2に係る筆記具のペン芯の説明図である。
【0014】
第1実施形態に係る筆記具は、
図1、
図2にペン芯10において筆記部12aが形成されたペン先12を軸筒14の先端部に突出するように配置した筆記具である。キャップ16を外した状態は
図2に示す。
【0015】
軸筒14は、先端部14aは中央部より段状に細く形成された筒状体である。軸筒14の後端部は尾栓18で閉鎖されて中央部内に収容部14bが構成される。収容部14b内にインクを含侵する中綿20が収容されている。先端部14aには、全体が概略筒状の口プラ(支持体)22の内側に保持パイプ24が外装された状態のペン芯10が挿通されて支持されている。
【0016】
ペン芯10は、繊維加工体又は合成樹脂多孔質体を含んで構成され、ペン先12は、先端形状が曲面に形成されている。
【0017】
ペン先12を筆記面26に対して65°の角度で垂直方向に0(mm)~1(mm)下方に押し当てた際の各変位(mm)をx1とし、変位x1が0(mm)~1(mm)押し付ける間の弾性荷重y1(N)が、y1=20x1からy1=45x1の間に入るように構成されたペン芯10を有する。
【0018】
ペン先12は、繊維を収束してバインダー樹脂で接着固化させて得られる繊維加工体からなるものとすることが好適である。
【0019】
また、ペン先12は押し付けの荷重と戻りの荷重の変位曲線が異なる。
【0020】
図2(c)に示すよう、口プラ22は先端から後端部途中まで保持パイプ24が挿入された状態でペン芯10を支持している。
【0021】
図5(a)、(b)に示すように、ペン芯10は、保持パイプ24に挿入された状態で、口プラ22内に挿通されて保持されている。同図に示すように、外観的に口プラ22は、外周が、先部の傘状の先細いテーパーに形成され、後部が筒状となって、後端部が面取りされている。同図に示すように、ペン芯10は、先端が半球状、又は砲弾状に形成され、後部が中綿に差し込みやすくするためテーパー状に後ろ細く形成されている。保持パイプ24は、
図5(a)に示すように、装着前(組み立て前)は概略円筒形状であり、
図5(b)に示すように装着状態(組み立て状態)では、先端部24aがカシメされて(縮径加工されて)いるので加工前よりも細くなっている。
【0022】
図2(c)に示すように、第1実施形態のペン芯10は、外周部10oが硬め、内部10iが柔らかめに構成され、ペン先12が半球状又は砲弾状の曲面に形成され、内部の柔らかめの部分を外周部よりも前方に露出させている。
【0023】
図2(c)に示すように、口プラ22は、内部に、先端から後端部付近まで保持パイプ24が装着され、後端部の内部が段状に縮径した段部に保持パイプ24の後端部が付き当たって位置決めて抜け止めされている。保持パイプ24の先端部24aは縮径されてペン芯10が固定されている。
【0024】
なお、口プラ22の外周に凹凸が形成されていて、軸筒14の先端部14a内への嵌合を抜け止めして緊密に行うようになっている。
【0025】
図6は筆記状態を示す。実施形態の筆記具では、図
8に示すように、内部10iの柔らかめの部分を外周部10oよりも前方に露出させ、筆記時に筆記圧によりペン芯10の先端部の柔らかい層を弾性変形させ
ることが可能である。
図6に示すように、ペン芯10を筆記対象物の平坦面、紙面やシート面等の筆記面26に対して65°の角度θで接しさせて、ペン先12の先端部の柔らかい層及び硬めの外周部の先端を同時に接触させるようにしたものである。
【0026】
図3、
図4は第2実施形態に係る筆記具の説明図である。
図5(c)、(d)は第2実施形態に係るペン芯10、保持パイプ24、及び口プラ22を示す。
図3、
図4では、第1実施形態と同様部分に同一の符号を付している。
【0027】
第2実施形態では、
図4(c)に示すように、ペン芯10は、外周部及び内部を略均一の硬さとし、ペン芯10を径方向に、平面に対して垂直に0(mm)~0.2(mm)押し付けた際の変位(mm)をx
2とし、変位x
2が0(mm)~0.2(mm)押し付ける間の弾性荷重y
2(N)が、y
2=60x
2未満になるように構成したものである。
【0028】
ペン芯10は、
図4に示すように、外周部及び内部を略均一の硬さとされる。
図5(c)(d)に示すように、口プラ22は後部の外周部にリブ22aが形成され,軸筒14の先端部14a内でリブ22aの外側面が接して固定されている。リブ22aの外側面に凹凸が形成されていて、先端部14a内からの抜け止めがされている。
図6に示すように、ペン芯10を筆記対象物の平坦面、紙面やシート面等の筆記面26に対して65°の角度θで接しさせて、ペン先12の先端部が筆記圧で押し広がるように形成されたものである。
【0029】
第1実施形態及び第2実施形態に使用する各部について説明する。
【0030】
〔ペン芯10〕
実施形態において、ペン芯10を構成する繊維加工体としては、例えば、繊維を収束して、溶着やバインダー樹脂等で接着硬化せしめた繊維束芯、繊維を熱や圧力、バインダーを混合して繊維同士を結合させたフェルトや不織布などが挙げられる。
【0031】
用いることができる繊維としては、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系繊維、アクリル系繊維、アクリロニトリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニル系繊維、ポリカーボネート系繊維、ポリエーテル系繊維、ポリフェニレン系繊維などの1種又は2種以上の組み合わせからなる繊維が挙げられ、繊維糸の形態としては、フィラメント、スライバーなどを用いることができる。バインダー樹脂としては、接着硬化に用いられるものが挙げられ、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フラン樹脂、等を挙げることができる。
【0032】
また、ペン芯10を構成する合成樹脂多孔質体としては、例えば、ポリアセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂などの合成樹脂粉末などを焼結したポーラス体(焼結芯)、発泡体などが挙げられる。
【0033】
ペン芯10を構成する上記繊維加工体又は合成樹脂多孔質体において、ペン芯10の外周部10oを硬めに、内部10iを柔らかめに形成する方法としては、例えば、繊維加工体では、内部側の溶着度合いやバインダー樹脂量を少なくし、外周部側の溶着度合いや、バインダー樹脂量を多くしたり、また、繊維を束ね熱溶着する際、外部側を強固に溶着させた後、バインダー樹脂を浸透させる、また、内部側の繊維量を外部側より少なくする事で、バインダーが染み込む毛管力バランスを調整(繊維量が多いと密になり、毛管力高い)することにより、また、合成樹脂多孔質体では、例えば、外部側の粒子径を内部側の粒子径より小さくする(接着比表面積を外側部の方を大きくする)、また、溶融温度条件で外部側の温度を内部側の温度より高くすることにより、形成することができる。
【0034】
上記塗布具の軸筒14の収容部14b内に収容される筆記用インクとしては、コーンプレート型回転粘度計にて粘度が25℃における回転粘度計にて100rpmでの測定値が1~100mPa・sである筆記用インクが収容されていることが好ましい。なお、粘度は、筆記用インクの流出やインク流出の点から、筆記用インクの粘度が25℃における回転粘度計にて10rpmでの測定値で、10~100mPa・s、1rpmでの測定値は20~400mPa・sであることが望ましい。
【0035】
このインク粘度で100rpmでの測定値が1.0mPa・s未満のものは、調合が非常に困難であるうえに、仮に調合出来たとしても、インク流量が多く、描線乾燥性が悪くなり、好ましくなく、一方、100mPa・sを超えて大きいと、インク流量が少なく、隠ぺい性を確保できなくなり、好ましくない。
【0036】
また、筆記用インクは、インク組成物のpH値が7.5~9.5のアルカリ性であることが好ましく、8~9であることがより好ましい。インク組成物のpH値が上記数値範囲内であれば、ペン芯に含まれるバインダー樹脂を軟質化させて、筆記時に柔らかいタッチ感を得ることができる。pH値は、例えばIM-40S型pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製)により20℃にて測定することができる。
【0037】
また、筆記用インクの表面張力は、好ましくは、4~45mN/m(測定温度:25℃、測定器:協和界面科学社製 表面張力測定器)、より好ましくは、10~40mN/mの範囲が望ましい。上記特性の筆記用インクとすることでペン芯が変形しても安定した塗布幅(筆記幅)を確保することができる。この表面張力が4mN/m未満では、直流現象を起こしやすく、また顔料の沈降や凝集を起こしやすくなってしまう。一方、45mN/mを越えると、保存環境や筆記状態によってインク流出量が不安定になり、描線の濃度や幅にバラツキを生じやすくなってしまうので、好ましくない。
【0038】
更に、筆記具のインク流量が、100gの荷重で、筆記角度65°、4m/minの筆記速度で100~400mg/2.5mとすることが好ましい。
【0039】
筆記用インクは、少なくとも、水と着色剤と、分散剤と、樹脂と、浸透剤とを含有することで構成することができる。
【0040】
ここで挙げる筆記用インクのインク組成物の詳細を述べると、着色剤は、顔料からなり、無機顔料、有機顔料、ならびに光沢のある光輝性顔料から任意に選択することができる。具体的には、無機顔料として、カーボンブラックや酸化チタン、酸化亜鉛、鉄黒、黄色酸化鉄、ベンガラ、複合酸化物系顔料等の金属酸化物、および群青などが、また有機顔料としてはアゾ系顔料、インジゴ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、チオインジゴ系顔料、スレン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、フタロン系顔料、ジオキサン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体系顔料、メチン・アゾメチン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料などが挙げられ、光沢のある光輝性顔料としては、アルミニウム顔料やガラスフレーク顔料などが挙げられる。また、顔料は、被覆材により表面処理されていることが好ましく、該被覆材の材料としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化亜鉛等の無機酸化物や、モリブデン等の金属、またはリン酸塩などが好ましい。これは、顔料を上記被覆材で表面処理することにより、インク中で顔料同士の凝集が抑制されて顔料の分散が安定し、また、顔料と水との反応が抑制されて気泡発生を抑えることができるからである。さらには、金属を含む顔料がインク製造時にミキサーなどから剪断力を受けた際、顔料が変形、損傷して、金属イオンが溶出することが抑制されるため、インクの経時安定性を向上させることが可能になるのである。上記の、インク中での分散安定性を考慮すれば、顔料の被覆材は、シリカまたはアルミナを含む無機酸化物であることがより好ましい。顔料について、被覆材により表面処理された顔料の被覆量は、被覆材により表面処理された後の顔料質量100質量部に対する被覆材の質量の割合は、0.01%質量部~20%質量部であることが好ましく、0.1%質量部~8.0%質量部であることがより好ましい。被覆量が上記数値範囲内であれば、インクの分散や金属の溶出抑制を容易とすることができる。また、無機酸化物で表面処理された顔料を用いる場合は、インク中での分散安定性を考慮すれば、無機酸化物で表面処理された顔料は正の値または負の値の表面電荷を有することが好ましく、特にシリカを含む無機酸化物で処理された顔料を用いる場合は、負の値の表面電荷を有することが好ましく、アルミナを含む無機酸化物で処理された顔料を用いる場合は正の値を有することが好ましい。そのような顔料は、組成物において良好な分散性を呈するが、後述する分散剤と組み合わせることによって、分散性や再分散性をさらに高めることができる。表面処理された顔料が上記の表面電荷を有する場合は、インク中での分散安定性を考慮すると、表面処理された顔料は酸化チタンであることが好ましい。顔料の平均粒子径は、0.01μm~30μmであることが好ましく、0.05μm~15μmであることがより好ましく、0.1μm~5μmであることがさらに好ましい。顔料の平均粒子径が上記数値範囲内であれば、紙、布等の繊維間の隙間が大きい被筆記体に筆記した際においても、顔料が前記繊維間の隙間に入り込みづらく、鮮明な発色性が得られやすいためである。また、平均粒子径が上記数値範囲内の顔料を含むインク組成物をマーカーなどの筆記用具に使用した場合、インク吐出性を向上させることができる。なお、顔料の平均粒子径は、一例としては、レーザー回折式粒度分布測定機(商品名「MicrotracHRA9320-X100」、日機装株式会社)を用いてレーザー回折法で測定される粒度分布の体積累積50%時の粒子径(D50)により測定することができる。本明細書では、顔料の「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、体積基準の平均粒子径のことを指すものとする。インク組成物における顔料の含有量は、インク組成物全量に対して、1質量%~40質量%であることが好ましく、2質量%~30質量%であることがより好ましい。顔料の含有量が上記数値範囲内であれば、インク吐出性の低下を防止することができるとともに、インク組成物、およびそれを用いて形成させた筆跡の鮮明性や隠蔽性を維持することができる。
【0041】
分散剤は、顔料と組み合せることによって、顔料同士が凝集することを抑制し、インクの安定性を高めることが可能である。分散剤は、顔料の分散性を高める効果を奏するものであれば特に限定されないが、無機酸化物で表面処理された顔料を用いる場合は、顔料の分散安定性を考慮すると、アニオン性吸着基またはカチオン性吸着基を有する分散剤を用いることが好ましい。インク組成物にシリカを含む無機酸化物で表面処理された顔料を用いる場合は、分散剤はカチオン性吸着基を有するものが好ましい。インク組成物の安定性を考慮すると、インク組成物の酸塩基性は中性付近であることが好ましいが、この液性においてインク組成物中の上記顔料は負の値の表面電荷を有するため、カチオン性吸着基が電気的引力によって顔料に吸着し易く、分散を容易とすることができる。本発明でのインク組成物に用いられるカチオン性吸着基を有する分散剤はこれらに限定されるものではない。分散剤は、1種または複数種を用いることが可能である。また、インク組成物にアルミナを含む無機酸化物で表面処理された顔料を用いる場合は、分散剤はアニオン性吸着基を有することが好ましい。前記酸塩基性において、上記顔料は正の値の表面電荷を有するため、アニオン性吸着基が電気的引力によって顔料に吸着し易く、分散を容易とすることができる。アニオン性吸着基を有する分散剤はこれらに限定されるものではない。分散剤は、1種または2種以上を用いることが可能である。インク組成物における分散剤の含有量は、有効成分の固形分換算で、インク組成物全量に対して、0.01質量%~5質量%であることが好ましく、0.05質量%~3質量%であることがより好ましい。また、前記無機酸化物で表面処理された顔料のインク組成物全量に対する総含有量をS、分散剤のインク組成物全量に対する総含有量をTとすると、T/Sは、0.005≦T/S≦0.5であることが好ましく、0.01≦T/S≦0.2であることがさらに好ましい。分散剤の含有量および、分散剤の含有量と無機酸化物で表面処理された顔料の含有量との比が上記数値範囲内であると、顔料の分散性が良好となり、インク組成物の粘度が過度に高くなることを抑制することができる。
【0042】
インク組成物には、グアーガム誘導体を含むことができる。グアーガム誘導体は、インク組成物において顔料粒子や後述するポリオレフィン粒子と吸着し、顔料の嵩高い凝集体を形成することにより、紙、布等の、繊維間に大きな隙間を有する被筆記体へ筆記した際、顔料が前記繊維間の隙間を通って被筆記体内部へ浸透することを防ぎ、被筆記体の表面において顔料を繊維に付着し易くして、筆跡の発色性を良好とするものである。また、グアーガム誘導体は、インク組成物に剪断減粘性を付与し、筆記の際に筆跡のにじみを抑制すると共に、インク組成物中の顔料がハードケーキを形成することを抑制することや、インク組成物を用いた筆記具、特にはボールペンを静置した際に筆記具のインク吐出部からのインク漏れを抑制することを可能とする。グアーガムは、マンノースからなる直線状主鎖(β-(1-4)-D-マンノピラノース)にガラクトース(α-D-ガラクトピラノース)がα-(1-6)-結合した多糖類であり、マンノースとガラクトースとが、2:1の比率で構成しているものである。その主鎖はマンノースのβ結合に起因する線状構造を有し、また、グアーガム分子内の水酸基はシス側に存在するため、グアーガムがセルロース等の水酸基を有する物質と接触すると、互いの水酸基同士が結びつき易く、強固な結合が形成し易い。グアーガム誘導体は、グアーガムを4級アンモニウム塩で変性したカチオン化グアーガム、カルボキシメチル基を付加したカルボキシメチル化グアーガム、ヒドロキシプロピル基を付加したヒドロキシプロピルグアーガム、およびカチオン性を有するグアーガム変性物とアニオン性を有するグアーガム変性物とを混合したものである両性グアーガムであって、グアーガムが有するセルロースとの親和性を有するとともに、インク組成物中において安定的に分散し、顔料の嵩高い凝集体を形成することにより、筆跡の発色性を良好とするため好ましく用いることが出来る。これらのグアーガム誘導体の中でも、インク組成物中で、後述する難水溶性樹脂と併用することにより、筆跡の発色性を向上しやすくすることを考慮すれば、カチオン化グアーガム、カルボキシメチル化グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガムが好ましい。特に、ヒドロキシプロピルグアーガムはインク組成物中で架橋構造を形成し、より嵩高い顔料の凝集体が形成されやすくなるため筆跡の発色性向上に効果的であり、好ましく用いることができる。インク組成物に上記のカチオン化グアーガムを用いる場合は、顔料はインク組成物中で負の値の表面電荷を有するものが好ましい。カチオン化グアーガムはインク組成物中で電離してカチオンになるため、このような組み合わせにすることによって顔料とカチオン化グアーガムとが電気的引力で吸着して嵩高い凝集物を形成し易くなり、筆跡の発色性や定着性をより良好とすることができる。また、本発明のインク組成物に上記のカルボキシメチル化グアーガムを用いる場合は、顔料はインク組成物中で正の値の表面電荷を有するものが好ましい。カルボキシメチル化グアーガムはインク組成物中で電離してアニオンとなるため、このような組み合わせにすることによって顔料とカルボキシメチル化グアーガムとが電気的引力で吸着して嵩高い凝集物を形成し易くなり、筆跡の発色性や定着性をより良好とすることができる。なお、カチオン化グアーガムおよびヒドロキシプロピルグアーガムはインク組成物中で中和されることによって筆跡の発色性や定着性を向上する効果が発現しやすくなるため、カチオン化グアーガムまたはヒドロキシプロピルグアーガムを用いる場合は中和剤を用いることが好ましい。中和剤の具体例としては、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酢酸等の有機酸や塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸が挙げられ好ましく用いられる。インク組成物中におけるカチオン化グアーガムまたはヒドロキシプロピルグアーガムと顔料とからなる凝集体の良好な分散安定性を考慮すると、中和剤は有機酸がより好ましい。グアーガム誘導体の含有量は、インク組成物全量に対して0.005質量%~1質量%とすることが好ましい。グアーガム誘導体の含有量が上記範囲内であると、インク粘度が高くなりすぎることや筆記する際のインク吐出性の低下が抑制されると共に、顔料と吸着して嵩高い凝集体を形成し、筆跡の発色性を向上させることができる。また、筆跡の定着性や発色性および筆記性をより考慮すると、前記顔料のインク組成物全量に対する総含有量をU、グアーガム誘導体のインク組成物全量に対する総含有量をVとした場合、V/Uは、0.0005≦V/U≦0.05であることが好ましい。これは、上記数値範囲内であれば、顔料が被筆記面の表面により定着し易くなり、発色性を良好とすると共に、インク組成物の粘度が高くなりすぎず、インク吐出性を良好とし、優れた筆記性としやすいためである。
【0043】
インク組成物は、樹脂として難水溶性樹脂を含む。難水溶性樹脂とは、水への溶解度(水100gに対する溶質の量)が、1.0g未満である樹脂であり、インク組成物において、前記の、嵩高い凝集体、顔料、および後述するポリオレフィン粒子に対して結合し、筆記の際、被筆記面へ接着することで、筆跡の、定着性や耐擦性を向上させ、筆跡の発色性を向上させるものである。そのため、水性インク組成物においては、グアーガム誘導体と、難水溶性樹脂とを併用することで、より筆跡の定着性と発色性が向上するため、両者を併用することが重要である。難水溶性樹脂は、エマルション、またはディスパーションとして用いることが好ましく、これによって難水溶性樹脂は安定した分散状態をとることができる。 インク組成物に用いられる難水溶性樹脂としては、具体的には、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、アルキッド樹脂、ケトン樹脂、スルフォアミド樹脂、マレイン酸樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン酢ビ樹脂、塩ビ-酢ビ樹脂、スチレンとマレイン酸エステルとの共重合体、スチレン-アクリロニトリル樹脂、シアネート変性ポリアルキレングリコール、エステルガム、キシレン樹脂、尿素樹脂、尿素アルデヒド樹脂、フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン系樹脂やその水添化合物、ロジンフェノール樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルキルエーテル、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、シクロヘキサノン系樹脂等が挙げることができ、好ましく用いることができる。これらは、1種または2種以上を用いることが可能である。筆跡の発色性や筆跡の定着性、耐擦性の向上を考慮すれば、本発明の組成物はポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、およびポリエステル樹脂から1種以上を選択して含むことがより好ましい。上記筆跡性能をより考慮すれば、組成物はポリオレフィン樹脂またはアクリル樹脂を含むことがさらに好ましく、ポリオレフィン樹脂を含むことが特に好ましい。インク組成物は、ポリオレフィン樹脂またはアクリル樹脂を含むことにより、良好な発色性と、高い、筆跡の定着性および耐擦性を両立することができ、このような効果は、グアーガム誘導体と上記難水溶性樹脂を併用することにより効果的に発現する。用いられるポリオレフィン樹脂としては、エチレン、プロピレン、またはブテン、等のオレフィンをモノマーとした重合体の他、オレフィンとオレフィン以外のモノマーとの重合体や変性物が挙げられ、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレンプロピレン共重合体、エチレンブテン共重合体、プロピレンブテン共重合体、エチレンプロピレンブテン共重合体や、エチレンとアクリル酸との共重合体、エチレンとメタクリル酸との共重合体、エチレンと無水マレイン酸との共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体等を好ましく用いることができる。水性インク組成物の発色性や定着性をより考慮すれば、インク組成物に用いられるポリオレフィン樹脂としては、エチレンとアクリル酸との共重合物がより好ましく、さらには、エチレンとアクリル酸との共重合物を変性し、自己乳化型としたものが特に好ましい。また、用いられるアクリル樹脂は、繰り返し単位にアクリル酸またはメタクリル酸を含むポリマーであり、単独あるいは複数種のアクリル樹脂を用いることが可能である。具体的には、アクリル酸エステル樹脂、アクリルスチレン樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルニトリル樹脂、アクリルスチレンニトリル樹脂、アクリル酢ビ樹脂、メタクリル酸エステル樹脂などを好ましく用いることができる。これらのアクリル樹脂の中でも、より筆跡の定着性、耐擦性を向上させることを考慮すれば、アクリルスチレン樹脂が好ましく、さらに好ましくは、自己架橋型のアクリルスチレン共重合樹脂が好ましい。アクリル樹脂の分子量は、質量平均分子量で1,000~1,000,000のものが用いられる。難水溶性樹脂の含有量は、インク組成物全量に対して0.1質量%~10質量%とすることが好ましい。また、前記、グアーガム誘導体のインク組成物全量に対する総含有量をV、前記難水溶性樹脂のインク組成物全量に対する総含有量をXとした場合、X/Vは、5≦X/V≦75であることが好ましい。難水溶性樹脂の含有量や、難水溶性樹脂の含有量とグアーガム誘導体の含有量との比が上記数値範囲内であれば、より顔料の被筆記面への定着性が高まると共に、優れた筆記性としやすいためである。
【0044】
用いることができる溶媒としては、水、および水と有機溶剤との混合溶媒が挙げられる。水としては、イオン交換水、蒸留水および水道水などの慣用の水を用いることができ、水と有機溶媒との混合溶媒を用いる場合、有機溶剤としては、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノールなどを用いることができる。グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどの比較的沸点の高いジオール類またはトリオール類を用いることができるが、その配合量は少ないことが好ましい。なお、有機溶媒の含有率は、溶媒の総質量に対して、1質量%~30質量%であることが好ましく、1質量%~20質量%であることがより好ましい。特にジオール類またはトリオール類の含有率は1質量%~10質量%であることが好ましい。有機溶媒の含有率が溶媒の総質量に対して上記数値範囲内であれば、良好な、ドライアップ性能と筆跡乾燥性を両立させることができる。インク組成物における溶媒の含有量は、インク組成物全量に対して、20質量%~90質量%であることが好ましく、30質量%~80質量%であることがより好ましい。溶媒の含有量は、上記数値範囲内であれば、各成分を安定的に溶解または分散することができ、水性インク組成物中で再分散性が容易な嵩高い凝集体を作ることができる。
【0045】
インク組成物は、浸透剤を含むことによってインク組成物の表面張力を下げて濡れ性を改善し、インクをはじきやすいガラスやプラスチック、ホウロウ等の非浸透面への筆記性を高めることも可能である。本発明に用いられる浸透剤としては、リン酸エステル系界面活性剤、アセチレン結合を有する界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、およびコハク酸系界面活性剤の中から、1種以上選択して用いることが好ましい。インク組成物に上記のような界面活性剤を含有させることで、表面張力を下げて、フィルムなど非浸透性の記録媒体に対するインク組成物の濡れ性を改善し、該非浸透性の記録媒体に対する筆跡カスレ・中抜けなどを良好として、筆記性を向上させることができる。前記浸透剤の中でも、本発明により好ましい浸透剤は、リン酸エステル系界面活性剤およびアセチレン結合を有する界面活性剤である。リン酸エステル系界面活性剤は、構造中にリン酸基を有する界面活性剤であり、上述のようにインク組成物の表面張力を下げて非浸透面に対する筆記性を向上させる効果を奏する。リン酸エステル系界面活性剤は、濡れ性の向上効果やインク組成物への溶解安定性を考慮すると、一般式として、HLB値=7+11.7log(Mw/Mo)、(Mw;親水基の分子量、Mo;親油基の分子量)から求められるHLB値が4~18であることが好ましい。アセチレン結合を有する界面活性剤は、非常に安定性が高く、濡れ性の改善効果を持続的に発揮して筆記性の向上を奏することができる。アセチレン結合を有する界面活性剤としては、例えば、アセチレンアルコール系界面活性剤、およびアセチレングリコール系界面活性剤等が挙げられる。特に、アセチレングリコール系界面活性剤は、気泡発生を抑制することに優れ、筆記の際の筆跡の泡立ちを抑えて、筆跡表面を平滑にする効果を奏しやすいため、好ましい。アセチレングリコール結合を有する界面活性剤は、濡れ性の向上効果やインク組成物への溶解安定性を考慮すると、一般式として、HLB値=20×(親水基の質量%)=20×(親水基の式量の総和/界面活性剤の分子量)から求められるHLB値が4~18のHLB値を有することが好ましく、6~15のHLB値を有することがより好ましく、7~11のHLB値を有することが特に好ましい。インク組成物は、前記リン酸エステル系界面活性剤とアセチレングリコール結合を有する界面活性剤とを併用することが好ましく、両者を併用することによって非浸透面に対する筆記性がさらに高まる。本発明における浸透剤の含有量は、インク組成物全量に対して、0.001質量%~1.5質量%であることが好ましく、0.01質量%~0.7質量%であることがより好ましい。含有量が上記数値範囲内であると、筆跡の泡立ち抑制性と、濡れ性の向上とを両立させることができる。浸透剤を併用する際、特にはリン酸エステル系界面活性剤とアセチレングリコール結合を有する界面活性剤とを併用する場合、リン酸エステル系界面活性剤のインク組成物全量に対する総含有量をYとし、アセチレングリコール結合を有する界面活性剤のインク組成物に対する総含有量をZとすると、Y/Zは、0.5≦Y/Z≦15であることが好ましく、1≦Y/Z≦5であることがより好ましい。Y/Zが上記数値範囲内であると、非浸透面に対する良好な筆記性と、潤滑性、筆跡の泡立ち抑制性および浸透剤の溶解安定性とを両立させることができる。
【0046】
また、インク組成物はポリオレフィン樹脂粒子を用いることによって、筆跡により高い、定着性や耐擦性を付与することができる。ポリオレフィン樹脂粒子とは、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ならびにそれらの混合物から成る、表面潤滑性を有する微粒子であり、筆跡が擦過等の外力を受けた際、筆跡に過剰な力が加わることを抑制するものであって、上述の難水溶性樹脂とは異なる種類のポリオレフィン樹脂である。ポリオレフィンは、直鎖状ポリオレフィン、分岐鎖を有するポリオレフィン、官能基が導入された変性ポリオレフィンなどであってもよい。例えば、ポリオレフィンとしてポリエチレンを用いる場合には、低密度ポリエチレン、直鎖状低分子ポリエチレン、高密度ポリエチレン、変性ポリエチレン、変性高密度ポリエチレンなどを用いることができる。これらのポリオレフィンの分子量は特に限定されないが、例えば質量平均分子量が500~100,000であるポリオレフィンが好ましく、重量平均分子量が800~5,000であることがさらに好ましい。ポリオレフィン樹脂粒子の質量平均分子量が上記数値範囲内であれば、このインク組成物で筆記を行った場合に、形成される筆記線に対し、より高い滑性と、それに伴う高い耐擦性を付与することができ、良好な筆跡を得ることができる。ポリオレフィン樹脂粒子は、必要に応じてポリオレフィン以外の材料を含んでいてもよい。そのため、前記難水溶性樹脂とポリオレフィン樹脂を併用して用いることで、筆跡の発色性や筆跡の定着性、耐擦性がより向上しやすいため、好ましく、特に、非浸透性の記録媒体に筆記する場合も、良好に筆記しやすい。ポリオレフィン樹脂粒子の形状は、特に限定されず、不定形、球状、針状、板状、方形など任意の形状をとることができる。ポリオレフィン樹脂粒子の平均粒子径は、0.1μm~35μmであることが好ましい。ポリオレフィン樹脂粒子の平均粒子径が上記数値範囲内であれば、この筆記用インクで筆記を行った場合に、形成される筆記線に対し、より高い滑性と、それに伴う高い耐擦性を付与することができ、良好な筆跡を得ることができる。ポリオレフィン樹脂粒子の平均粒子径は、コールターカウンター法により測定することができる。インク組成物におけるポリオレフィン樹脂粒子の含有量は、インク組成物全量に対して、0.01質量%~10質量%であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂粒子の含有量が上記数値範囲内であれば、インク吐出性を維持することができるとともに、筆記線に対し、より高い滑性を付与することができる。
【0047】
筆記具は、繊維加工体又は合成樹脂多孔質体より構成されるペン芯の外周部を硬めに、内部を柔らかめに形成し、先端形状を曲面形状、例えば、砲弾形状に研磨形成することで、内部の柔らかい部分を露出させ塗布部とし、塗布時に塗布圧によりペン先の先端部を柔らかい層を弾性変形させ、先端及び硬めの外周層の先端を同時に被筆記面に接触させてなることを特徴とするものであるため、例えば、上記曲面形状として砲弾形状以外に、球形状、ドーム形状などにすることができ、また、上記実施形態では、円柱状の繊維加工体を用いて塗布具用ペン先としたが、シート状の繊維加工体(フェルト)や合成樹脂多孔体(焼結芯)を用いて塗布具用ペン先とすることができる。
【0048】
次に、実施例により、更に詳述するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0049】
第1実施形態、第2の実施形態の筆記具に使用するペン芯について要求性能を検討した。
(1)描線幅(平均値)が従来製品と関係性を保つことができる。
(2)安定したペン芯保持力を発揮できる。
【0050】
図7は、得られた繊維加工体から構成される筆記具ペン芯の例の実施例1~実施例3を示す電子顕微鏡写真図(SEM画像)である。先端断面写真図、径方向の横断面写真図である。
【0051】
写真図面から明らかなように、実施例1、実施例2は、内部が疎状態であり、外周層は密状態であり、ペン芯の外周部が硬めに、内部が柔らかめに形成されていることが判る。実施例3は、ペン芯の外周部及び内部を略均一の硬さとされる。実施例1、2は実施形態1の筆記具に使用できる。また、実施例3は実施形態2の筆記具に使用できる。
【0052】
また、
図7に示すように、実施例1は、外径がφ1.3(mm)、繊維種がPET(ポリエチレンテレフタレート)、糸の太さが5デニール、先端形状が半球状(SR)であった。パイプ(第1実施形態、第2実施形態の保持パイプ24)は、仕様が普通肉パイプであり、外径がφ1.65(mm)、内径がφ1.40(mm)であった。
【0053】
実施例2は、外径がφ1.4(mm)、繊維種がPET(ポリエチレンテレフタレート)、糸の太さが5デニール、先端形状が砲弾形状(先細)であった。パイプは仕様が薄肉パイプで、外径がφ1.65(mm)、内径がφ1.45(mm)であった。
【0054】
実施例3は、外径がφ1.4(mm)、繊維種がPET(ポリエチレンテレフタレート)、糸の太さが3デニール、先端形状が半球状(SR)であった。パイプは仕様が薄肉パイプで、外径がφ1.65(mm)、内径がφ1.45(mm)であった。
【0055】
ペン芯10のイメージは、実施例1、実施例2は、
図8(a)のペン芯先端部の断面イメージ図、(b)の横断面イメージ図に示すように、外周部10oが硬めで、内部10iが柔らかめとなっている。内部の柔らかめの部分を外周部よりも前方に露出させている。
【0056】
この場合、ペン芯10外周部を硬め(密、ペン芯強度を維持)、内部を柔らかめ(粗)に仕上げ、先端形状を半球状、砲弾形状に研磨している。
【0057】
実施例3は、
図8(c)のペン芯先端部の断面イメージ図、(d)の横断面イメージ図に示すように、外周部及び内部を略均一の硬さとされ、実施例1、実施例2よりも実施例3は細い繊維を使用しているため、全体的に軟かめとなっている。
【0058】
図8(e)は、各実施例1~3の筆記状態のイメージ図である。同図に示すように、実施例1と実施例2では、硬い外周部10oで変形を抑制するため、筆記圧に対して変形しにくい。実施例1は先端形状が半球状であるため、描線幅R1は細くなる。実施例2は、先端形状が砲弾形状であるため、描線幅R2が実施例1よりも太くなる。
【0059】
実施例3では、硬い外周部がないため、変形量が非常に多いため、描線幅R3は実施例1、2よりも太くなる。
【0060】
〔実施例1~3の弾性特性及び描線幅〕
図9は各実施例1~3のペン芯の説明図である。
図9(a)に示すように、ペン芯10を台28上に横向きに載置して、プレス部材30にて径方向(F方向)に圧縮して試験した。
図9(b)が実施例1のペン芯、(c)が実施例2のペン芯、(d)が実施例3のペン芯の各拡大横断面図である。
【0061】
【0062】
各実施例1~3のペン芯の弾性を比較した。
図10(a)は、実施例1、実施例2、実施例3(符号「J1」、「J2」、「J3」で示す)の径方向への荷重(N)が0から10(N)に変化させた場合の径方向の変位x(mm)を示している。これから判るように、実施例1、実施例2は外周部10oが硬いため変位が大きく、一方、実施例3は、他の実施例に比較して非常に柔らかいため変位が緩やかであった。
【0063】
描線幅に関して、試験を行った。筆記条件は筆記角が65°(
図6参照)であり、描線荷重が0.5(N)、丸書き(自転有)であった。試験結果は
図10(b)に示すように、描線幅は0.5(mm)~0.8(mm)付近にほぼ比例して変化していた。なお、図において、実施例1~3は符号J1~J3で示す。また、比較例1~2(符号K1、K2で示す)は、ペン芯の外径を変えて描線幅を設定する構造のものである。
【0064】
図10(b)から、比較例1~2の描線幅の変化に対応して、実施例1~3でも描線幅を変化可能であることが理解される。
【0065】
図10(b)の示される比較例1~2と実施例1~3の関係を見ると、実施例1~3の描線幅(平均値)が比較例と比例の関係性を持っていることが判る。
【0066】
ここで、実施例1~3について
図11~
図13にペン芯の径方向に圧縮した場合の弾性特性を示す。
【0067】
図11は、実施例1のペン芯に関する。
図11(a)は、ペン芯を径方向に圧縮した場合の荷重0~20(N)付近に対する、径方向への変位0.00~0.l4(mm)付近となった。荷重を掛けて圧縮して行く過程の変化Ffと、荷重を開放した戻りの変化Fbを示している。また、いずれの実施例において、ペン先弾性特性として押し付けの荷重と戻りの荷重の変位曲線が異なるヒステリシス曲線を示している。
【0068】
図11(b)はペン芯のn数を3本にしてそれぞれのペン芯に荷重をかけて行く過程の弾性特性を示している。漸近線を引くと、一つ目は、y=182.2x-2.0、二つ目は、y=161.6x-1.6、三つ目は、y=143.3x-0.7となった。
【0069】
図12は、実施例2のペン芯に関する。
図12(a)は、ペン芯を径方向に圧縮した場合の荷重0~20(N)に対する、径方向への変位0.00~0.l0(mm)となった。荷重を掛けて圧縮して行く過程の変化Ffと、荷重を開放した戻りの変化Fbを示している。また、いずれの実施例において、ペン先弾性特性として押し付けの荷重と戻りの荷重の変位曲線が異なるヒステリシス曲線を示している。
【0070】
図12(b)はペン芯のn数を3本にしてそれぞれのペン芯に荷重をかけて行く過程の弾性特性を示している。漸近線を引くと、一つ目は、y=208.3x-2.5、二つ目は、y=207.5x-2.2、三つ目は、y=195.9x-2.1となった。
【0071】
図13は、実施例3のペン芯に関する。
図13(a)は、ペン芯を径方向に圧縮した場合の荷重0~10(N)付近に対する、径方向の変位0.00~0.20(mm)付近であった。荷重を掛けて圧縮して行く過程の変化Ffと、荷重を開放した戻りの変化Fbを示している。また、いずれの実施例において、ペン先弾性特性として押し付けの荷重と戻りの荷重の変位曲線が異なるヒステリシス曲線を示している。
【0072】
図13(b)はペン芯のn数を3本にしてそれぞれのペン芯に荷重をかけて圧縮して行く過程の弾性特性を示している。漸近線を引くと、一つ目は、y=54.4x-0.7、二つ目は、y=52.3x-0.5、三つ目は、y=43.2x-0.5となった。
【0073】
実施例3のペン芯は、外周部及び内部を略均一の硬さとし、実施例2と同じ外径でも太い描線を得られやすくするために、ペン芯を径方向に、平面に対して垂直に0(mm)~0.2(mm)押し付けた際の変位(mm)をx2とし、変位x2が0(mm)~0.2(mm)押し付ける間の弾性荷重y2(N)が、実施例1及び実施例2より著しく低いy2=60x2未満になるように構成したものである。
【0074】
実施例1~3について
図14(a)に示すように、ペン芯ついて筆記角を65°にして圧縮した場合のペン先の変形特性を示す。
図14(b)が実施例1のペン芯の先端の拡大画像、(c)が実施例2のペン芯の先端の拡大面画像、(d)が実施例3にペン芯の先端の拡大画像である。
【0075】
図15は、実施例1のペン芯に関する。
図15(a)は、ペン芯を筆記角65°にして圧縮した場合の変形特性を示す。実施例1の変形特性は、荷重0~5(N)付近に対する、ペン先の変位0.00~0.l5(mm)付近であった。荷重を掛けて圧縮して行く過程の変化Ffと、荷重を開放した戻りの変化Fbを示している。
【0076】
図15(b)はペン芯のn数を3にしてそれぞれのペン芯に荷重をかけて行く過程の弾性特性を示している。近似曲線は、一つ目は、y=36.5x-0.1、二つ目は、y=41.9x-0.4、三つ目は、y=33.6x-0.6となった。
【0077】
図16は、実施例2のペン芯に関する。
図16(a)は、ペン芯を筆記角65°にして圧縮した場合の変形特性を示す。実施例2の変形特性は、荷重0~5(N)付近に対する、ペン先の変位0.00~0.25(mm)付近であった。荷重を掛けて圧縮して行く過程の変化Ffと、荷重を開放した戻りの変化Fbを示している。また、いずれの実施例において、ペン先弾性特性として押し付けの荷重と戻りの荷重の変位曲線が異なるヒステリシス曲線を示している。
【0078】
図16(b)はペン芯のn数を3本にしてそれぞれのペン芯に荷重をかけて行く過程の弾性特性を示している。漸近線を引くと、一つ目は、y=23.6x-0.2、二つ目は、y=23.3x-0.6、三つ目は、y=23.0x-0.5となった。
【0079】
図17は、実施例3のペン芯に関する。
図17(a)は、ペン芯を筆記角65°にして圧縮した場合の変形特性を示す。変形特性は、荷重0~5(N)付近に対する、ペン先の変位0.00~0.20(mm)付近となった。荷重を掛けて圧縮して行く過程の変化Ffと、荷重を開放した戻りの変化Fbを示している。また、いずれの実施例において、ペン先弾性特性として押し付けの荷重と戻りの荷重の変位曲線が異なるヒステリシス曲線を示している。
【0080】
図17(b)はペン芯のn数を3本にしてそれぞれのペン芯に荷重をかけて行く過程の弾性特性を示している。漸近線を引くと、一つ目は、y=25.2x-0.3、二つ目は、y=24.7x-0.2、三つ目は、y=22.8x-0.4となった。
【0081】
なお、上記の試験に用いた筆記用インクは、以下の通りである。
(1)ph=8.5(20℃):IM-40S型pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製)
(2)粘度=180mPa・s:E型回転粘度計(DV-II+Pro、コーン型ローターCPE-42、ブルックフィールド社製)、剪断速度3.8sec- 1 (回転速度1rpm)
(3)表面張力=36.5mN/m:表面張力計測器(20℃環境下、垂直平板法、協和界面科学株式会社製)
(4)配合
・顔料=30質量%:シリカ、アルミナにより表面処理された酸化チタン、平均粒子径0.26μm、堺化学工業株式会社製、商品名:GTR-100
・分散剤=1.5質量%:カチオン性吸着基を有する顔料分散剤、固形分含有量52%、ビックケミー株式会社製、商品名:DISPERBYK-184
・グアーガム誘導体=0.1質量%:カチオン化グアーガム、三晶株式会社製、商品名:JAGUAR C-500STD
・難水溶性樹脂=10質量%:自己乳化型ポリオレフィンディスパージョン、固形分含有量25%、住友精化株式会社製、商品名:ザイクセンL
・クエン酸=0.1質量%
・ジエチレングリコール=2質量%
・消泡剤=0.3質量%:シリコーン系消泡剤、ビックケミー株式会社製、商品名BYK-024
・防腐剤=0.2質量%:ベンゾイソチアゾリン-3-オン、ロンザジャパン株式会社製、商品名:プロキセルXL-2
・イオン交換水=残量
(5)手順
1.グアーガム誘導体を下記配合量の半量のイオン交換水に溶解させ、後にクエン酸を加えてグアーガム誘導体の水溶液を得る。
2.残りの全量のイオン交換水とグアーガム誘導体やクエン酸以外の原材料とを室温で1時間混合し、顔料等の分散体を得る。
3.上記グアーガム誘導体水溶液と顔料等の分散体とを室温で1時間混合する。
【0082】
以上のように、ペン先を筆記面に対して65°の角度で垂直方向に0(mm)~1(mm)下方に押し当てた際の各変位(mm)をx1とし、変位x1が0(mm)~1(mm)押し付ける間の弾性荷重y1(N)が、実施例1ではy1=20x1からy1=45x1の間、実施例2、3では、y1=20x1からy1=30x1の間に入るように構成されたペン芯であることが理解される。これらの実施例1~3のペン芯を筆記具に使用して同筆記荷重、及び同筆記角度において描線幅が比例関係になるようにし筆記具セットとすることができる。たとえば、比較例1~2と実施例1~3のペン芯を使用した筆記具をセットとして、各種描画例えばデザイン、イラスト、設計図等の各線幅の筆記具セットとして便利に使用することができる。
【0083】
なお、実施形態、実施例に限定されず、本発明の技術的範囲内で自由に変形実施できる。実施例1~実施例3のペン芯を使用したが、これは一例であり、本発明の範囲内で変形実施できる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の筆記具は、ペン芯を装着した筆記具に利用することができる。
【符号の説明】
【0085】
10 ペン芯
10i ペン芯の内部
10o ペン芯の外周部
12 ペン先
12a 筆記部
14 軸筒
14a 先端部
14b 収容部
16 キャップ
18 尾栓
20 中綿
22 口プラ
22a リブ
24 保持パイプ
24a 先端部
26 筆記面
28 台
30 プレス部材