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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】ハウジングおよびそれを含む回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/20 20060101AFI20240515BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20240515BHJP
   H02K 5/06 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
H02K5/20
H02K9/19 A
H02K5/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020016643
(22)【出願日】2020-02-03
(65)【公開番号】P2021125929
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101351
【弁理士】
【氏名又は名称】辰巳 忠宏
(72)【発明者】
【氏名】神近 拓朗
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-157195(JP,A)
【文献】特開2004-312886(JP,A)
【文献】特開2014-068513(JP,A)
【文献】特開2012-228105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/20
H02K 9/19
H02K 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機の固定子が収容されかつ前記固定子を貫通しつつ回転子が固定されたシャフトが内側に設けられるハウジングであって、
前記固定子の外周面に対向する内周面を有しかつその軸方向の一端部に開口を有する筒状部と、
前記筒状部の軸方向の他端部に前記筒状部と一体的に形成されかつその中央に前記シャフトの一端部が突出する貫通孔を有する板状部と、
前記筒状部の内部に設けられる冷却水路と、
当該ハウジングの鋳造後に前記冷却水路から中子の砂を抜くために前記筒状部の外周面のうち前記開口寄りに設けられかつ前記冷却水路に連通する複数の砂抜き孔と、
前記筒状部の外周面に設けられかつ前記冷却水路に連通して冷却水の入口および出口になる2つの継手口とを備え、
前記冷却水路は、外部に露出することなく前記筒状部の内部に設けられかつジグザグ状に前記筒状部の周方向に延びる主水路と、外部に露出することなく前記筒状部の内部に設けられかつ前記筒状部の周方向に隣り合う前記主水路同士を連結するバイパス水路とを含む、ハウジング。
【請求項2】
前記バイパス水路は、前記主水路のうち前記筒状部の軸方向の端部に設けられる、請求項1に記載のハウジング。
【請求項3】
前記バイパス水路は、前記主水路のうち前記筒状部の軸方向の両端部に設けられる、請求項2に記載のハウジング。
【請求項4】
前記主水路の幅は、前記主水路の厚みより大きい、請求項1から3のいずれかに記載のハウジング。
【請求項5】
前記バイパス水路の幅は、前記主水路の幅より小さい、請求項1から4のいずれかに記載のハウジング。
【請求項6】
前記2つの継手口は、前記筒状部の中心を挟んで正反対方向に設けられる、請求項1から5のいずれかに記載のハウジング。
【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載のハウジングを含む、回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はハウジングおよびそれを含む回転電機に関し、より特定的にはモビリティ駆動用のハウジングおよびそれを含む回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術の一例が特許文献1において開示されている。特許文献1には、電動機のハウジングが開示されている。ハウジングは両端面のそれぞれが開口する円筒状をなし、円筒状の内周面を有している。ハウジングはアルミニウム系の合金を材料とする鋳物からなり、抗張力および硬さを改善するための熱処理が施されている。ハウジングの一端部には座板が一体形成されている。
【0003】
ハウジングには、ウオータージャケットが形成されている。ウオータージャケットは固定子鉄心を強制冷却するための冷却水の流通路であり、ハウジングの厚み内に位置している。ウオータージャケットは円周方向に配列された複数の縦長な通路間を上端部および下端部で交互に接続してなり、蛇行状をなしている。
【0004】
ハウジングには、軸方向の中央部に位置してプラグ口が一体形成されている。プラグ口はハウジングの外周面から突出する円筒状をなし、ウオータージャケット内に通じている。プラグ口の内周面には鋼板製のプラグが固定されており、プラグはプラグ口を塞いでいる。
【0005】
ハウジングには、2つの継手口が一体形成されている。両継手口のそれぞれはハウジングの外周面から突出する円筒状をなし、両継手口のうち一方はウオータージャケット内の一端部に通じ、他方はウオータージャケット内の他端部に通じている。両継手口のそれぞれの内周面には、鋼板製の継手が固定されている。
【0006】
このようなハウジングは、以下のように製造される。
【0007】
鋳型内に塩中子を収納した状態で溶融金属を鋳込む。鋳型はハウジングを成形するためのものである。塩中子はウオータージャケットを模ったものであり、水に接触することで溶解する塩から成形されている。鋳型内の溶融金属を凝固させることでハウジングを成形し、鋳型内からハウジングを取出す。ハウジングに熱処理(T6)を施す。塩中子は熱処理での熱的な衝撃力で粉砕され、熱処理の終了後にはハウジングの厚み内に塩中子の粉砕物が残される。ウオータージャケット内に一方の継手から温水を注入する。この温水中に塩中子の粉砕物が溶解し、温水と共に他方の継手から排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-143697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように特許文献1では、ハウジングの鋳造に用いられる中子は、蛇行状のウオータージャケットを模った一体物であるので、中子の強度を大きくできない。したがって、中子は、ハウジングを製造するために運搬されるときや鋳型内に収納されるときに、破損することがあり、ハウジングの生産性を高くできなかった。
【0010】
それゆえにこの発明の主たる目的は、生産性を高くできる、ハウジングおよびそれを含む回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するために、回転電機の固定子を収容するハウジングであって、固定子の外周面に対向する内周面を有する筒状部と、筒状部の内部に設けられる冷却水路とを備え、冷却水路は、ジグザグ状に筒状部の周方向に延びる主水路と、主水路同士を連結するバイパス水路とを含む、ハウジングが提供される。
【0012】
この発明では、筒状部の内部に設けられる冷却水路は、ジグザグ状に形成される主水路だけではなく、主水路同士を連結するバイパス水路をさらに含む。ここで、鋳造時にハウジングに冷却水路を形成するために、冷却水路を模った一体物の中子が用いられるが、冷却水路が主水路を連結するバイパス水路を有することにより、中子の強度を上げることができる。したがって、中子がハウジングを製造するために運搬されるときや鋳型内に収納されるときに、中子が破損することを抑制でき、ハウジングの生産性を高めることができる。
【0013】
好ましくは、バイパス水路は、主水路のうち筒状部の軸方向の端部に設けられる。この場合、ジグザグ状に延びる主水路のうち筒状部の軸方向の端部が連結されるため、中子が運搬されるときや鋳型内に収納されるときに加えられる外力に対して、連結された端部間の変位が抑制されるので、中子が破損することをより抑制でき、ハウジングの生産性を高めることができる。
【0014】
また好ましくは、バイパス水路は、主水路のうち筒状部の軸方向の両端部に設けられる。この場合、ハウジングの鋳造時にハウジングの内部に冷却水路を形成するために用いられる中子の強度をさらに向上でき、ハウジングの生産性をより高めることができる。
【0015】
さらに好ましくは、主水路の幅は、主水路の厚みより大きい。この場合、同一断面積の主水路で比較すると、主水路の幅が主水路の厚みより小さい場合と比べて、ハウジングの内周面をより冷却できるので、固定子に及ぼす冷却効果を大きくできる。
【0016】
好ましくは、バイパス水路の幅は、主水路の幅より小さい。この場合、バイパス水路に流れる水量を抑制でき、主水路に十分な量の水を流すことができ、良好な冷却効果を得ることができる。
【0017】
また、上述のハウジングを含む、回転電機が提供される。この場合、ハウジングの生産性を高くできるので、回転電機の生産性を上げることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、ハウジングおよび回転電機の生産性を高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明の一実施形態に係る回転電機を示す正面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3図1の回転電機に含まれるハウジングを示す正面図である。
図4図1の回転電機に含まれるハウジングを示す右側面図である。
図5図1の回転電機に含まれるハウジングを示す背面図である。
図6図1の回転電機に含まれるハウジングを示す左側面図である。
図7図1の回転電機に含まれるハウジングを示す底面図である。
図8図4のB-B線断面図である。
図9図4のC-C線端面図である。
図10図5のD-D線断面図である。
図11図1の回転電機に含まれるハウジングの冷却水路の一例を示す図解図である。
図12】ハウジングの冷却水路の他の例を示す図解図である。
図13】ハウジングに設けられる砂抜き孔の形成箇所の他の例を示す図解図である。
図14】ハウジングに設けられる砂抜き孔の形成箇所のその他の例を示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照してこの発明の好ましい実施形態について説明する。
【0021】
図1および図2を参照して、この発明の一実施形態に係る回転電機10は、ハウジング12を含む。
【0022】
図3図10を参照して、ハウジング12は、略円筒形の筒状部14を含む。
【0023】
筒状部14は、固定子58(後述)の外周面に対向する内周面16を有し、その軸方向の一端部に開口18を有し、その軸方向の他端部に略四角形の板状部20が設けられる。板状部20は、その中央に貫通孔22を有する。筒状部14の開口18側端部には、筒状部14の外周面24より外方に突出する収容部26が設けられる。収容部26は、中空部28と、中空部28から外方に延びる3つの貫通孔30とを有する。
【0024】
筒状部14の内部(厚み内)には、冷却水路32が設けられる。
【0025】
図11をさらに参照して、冷却水路32は、固定子58を囲みかつジグザグ状に筒状部14の周方向に延びる主水路34と、主水路34同士を連結するバイパス水路36とを含む。
【0026】
主水路34は、複数の第1路38と複数の第2路40とを含む。複数の第1路38は、それぞれ筒状部14の軸方向に延び、かつ筒状部14の周方向に相互に間隔をあけて設けられる。筒状部14の周方向に隣り合う第1路38同士は、ややV字状に開いた状態で相互の端部で、Uターン部となる第2路40によって連結される。すなわち、複数の第1路38において、隣り合う第1路38の一端部同士と他端部同士とが、筒状部14の周方向に延びる第2路40によって交互に連結される。その結果、ジグザグ状に延びる主水路34が得られる。好ましくは、主水路34の幅W1は、主水路34の厚みTより大きく、より好ましくは、主水路34の幅W1は、主水路34の厚みTの1.5倍以上である(図6図9参照)。また、第2路40の幅(第2路40における、筒状部14の軸方向の寸法)は、第1路38の幅(第1路38における、筒状部14の周方向の寸法)より大きい。すなわち、第2路40の水流方向に直交する方向の寸法は、第1路38の水流方向に直交する方向の寸法より大きい。
【0027】
このような主水路34同士は、バイパス水路36によって連結される。バイパス水路36は、主水路34のうち、筒状部14の軸方向の一端部に設けられ、当該一端部同士を連結する。また、バイパス水路36は、主水路34のうち、筒状部14の軸方向の他端部に設けられ、当該他端部同士を連結する。すなわち、バイパス水路36は、主水路34のうち、筒状部14の周方向に隣り合う第2路40同士を連結する。この実施形態では、バイパス水路36は、筒状部14の軸方向の一端部(開口18側)に設けられる複数の第2路40について、筒状部14の周方向に隣り合う第2路40同士を、位相決めキー60(後述)の溝部G(図11参照)を除くすべての箇所で連結する。また、バイパス水路36は、筒状部14の軸方向の他端部(板状部20側)に設けられる複数の第2路40について、筒状部14の周方向に隣り合う第2路40同士をすべての箇所で連結する。好ましくは、バイパス水路36の幅W2は、主水路34の幅W1より小さく、より好ましくは、バイパス水路36の幅W2は、主水路34の幅W1の1/2以下である(図6参照)。この実施形態では、バイパス水路36の厚みは、主水路34の厚みTと略等しい。
【0028】
筒状部14の外周面24には、冷却水路32に連通する中空状の継手口41,43が突出するように設けられる。より具体的には、継手口41,43は、筒状部14の外周面24のうち開口18寄りに設けられる。継手口41,43は、筒状部14の中心を挟んで正反対方向に設けられる。継手42,44は、継手口41,43に設けられる。継手42は、管状かつ略L字状に形成され、略L字状の貫通孔46を有する。貫通孔46は、冷却水路32に連通し、冷却水路32への水の入口となる。継手44は、管状かつ略V字状に形成され、略V字状の貫通孔48を有する。貫通孔48は、冷却水路32に連通し、冷却水路32からの水の出口となる。より具体的には、貫通孔46,48は、主水路34(第2路40)に連通する(図9図11参照)。
【0029】
さらに、筒状部14の外周面24には、ハウジング12の鋳造後に冷却水路32から中子の砂を抜くための砂抜き孔50,52が設けられる。より具体的には、砂抜き孔50,52は、筒状部14の外周面24のうち開口18寄りに設けられる。砂抜き孔50は、継手42と収容部26との間に設けられ、砂抜き孔52は、継手44からみて、収容部26とは反対側に設けられる。砂抜き孔50,52は冷却水路32に連通する。より具体的には、砂抜き孔50,52は、主水路34(第2路40)に連通する(図6図7図9図11参照)。ハウジング10の完成時には、砂抜き孔50,52にはそれぞれ、蓋54,56が嵌められ、砂抜き孔50,52は塞がれる。
【0030】
このようなハウジング12は、たとえば以下のように製造される。
【0031】
図示しない鋳型内に中子を収納した状態で溶融金属が鋳込まれる。鋳型はハウジング12を成形するためのものである。中子は、冷却水路32と継手口41,43の中空部と砂抜き孔50,52とを模ったものである。この実施形態では、中子として、砂がレジンによってバインドされるシェル中子が用いられる。鋳型内の溶融金属を凝固させることでハウジング12が成形され、鋳型内からハウジング12が取り出される。ハウジング12の筒状部14の厚み内に残された中子は、振動を加えることにより粉砕され、各継手口41,43および砂抜き孔50,52から排出される。ハウジング12内から中子の砂が排出された後、継手口41,43にはそれぞれ継手42,44が嵌められる。さらに、砂抜き孔50,52にはそれぞれ、蓋54,56が嵌められ、砂抜き孔50,52が塞がれる。
【0032】
図1および図2に戻って、ハウジング12内には固定子58が収容される。固定子58は、位相決めキー60によって、ハウジング12内の所定の位置に配置される。ハウジング12の開口18には、カバー62が設けられる。カバー62は、ボルト98(後述)近傍にアクセス可能な位置に、略四角形状の貫通部64を有する。また、カバー62には、信号線カプラ66が設けられる。カバー62は、複数の締結部材68によってハウジング12に固定される。
【0033】
ハウジング12内には、シャフト70が設けられる。シャフト70は、固定子58を貫通し、シャフト70の一端部は、ハウジング12の貫通孔22から突出する。シャフト70は、カバー62およびハウジング12に、ボールベアリング72,74を介して回転可能に支持される。シャフト70の外周面には、固定子58に対向する回転子76が固定される。カバー62とシャフト70との間には、シャフト70の回転角度を検出するためのレゾルバ78が設けられる。レゾルバ78は、カバー62に取り付けられるレゾルバ固定子80と、シャフト70に取り付けられるレゾルバ回転子82とを含む。レゾルバ固定子80は、位相決めキー84によって所定の位置に配置される。レゾルバ回転子82は、その両側からカラー86,88によって挟まれ、所定の位置に配置される。
【0034】
3相用の3つの高圧配線コネクタ90がそれぞれ、収容部26の対応する貫通孔30に挿入され、各高圧配線コネクタ90の下方の端子92が収容部26の中空部28にもたらされる(図8参照)。各高圧配線コネクタ90は、締結部材94によって収容部26に取り付けられる。
【0035】
中空部28内には、樹脂などの絶縁材料からなるホルダ96が固定され、ホルダ96とボルト98との間に、高圧配線コネクタ90の端子92が保持される。ホルダ96内には、ナット100とカラー102とが収容され、端子92とボルト98の頭部との間には、ワッシャ104および板状の接続部材106が挟まれる。ボルト98が、接続部材106、ワッシャ104、端子92およびカラー102に挿通され、ナット100に螺入されることによって、これらの部材が固定される。端子92は、ワッシャ104および接続部材106を介して、固定子58の図示しないコイルに連結される。
【0036】
カバー62の貫通部64には、カバー108が設けられる。カバー108は、複数の締結部材110によってカバー62に取り付けられる。カバー108と貫通部64との間は、Oリング112によって封止される。
【0037】
このような回転電機10のハウジング12によれば、筒状部14の内部に設けられる冷却水路32は、ジグザグ状に形成される主水路34だけではなく、主水路34同士を連結するバイパス水路36をさらに含む。ここで、鋳造時にハウジング12に冷却水路32を形成するために、冷却水路32を模った一体物の中子が用いられるが、冷却水路32が主水路34を連結するバイパス水路36を有することにより、中子の強度を上げることができる。したがって、中子がハウジング12を製造するために運搬されるときや鋳型内に収納されるときに、中子が破損することを抑制でき、ハウジング12の生産性を高めることができる。
【0038】
ジグザグ状に延びる主水路34のうち筒状部14の軸方向の端部がバイパス水路36によって連結されるため、中子が運搬されるときや鋳型内に収納されるときに加えられる外力に対して、連結された端部間の変位が抑制されるので、中子が破損することをより抑制でき、ハウジング12の生産性を高めることができる。
【0039】
バイパス水路36は、主水路34のうち筒状部14の軸方向の両端部に設けられるので、ハウジング12の鋳造時にハウジング12の内部に冷却水路32を形成するために用いられる中子の強度をさらに向上でき、ハウジング12の生産性をより高めることができる。
【0040】
主水路34の幅W1は、主水路34の厚みTより大きいので、同一断面積の主水路で比較すると、主水路の幅が主水路の厚みより小さい場合と比べて、ハウジング12の内周面をより冷却できる。したがって、固定子58に及ぼす冷却効果を大きくできる。
【0041】
バイパス水路36の幅W2は、主水路34の幅W1より小さいので、バイパス水路36に流れる水量を抑制でき、主水路34に十分な量の水を流すことができ、良好な冷却効果を得ることができる。
【0042】
このように、ハウジング12の生産性を高くできるので、回転電機10の生産性を上げることができる。
【0043】
主水路34は、隣り合う第1路38同士がややV字状に開いた状態で、ジグザグ状に延びるので、冷却水路32に水を円滑に流すことができ、さらに良好な冷却効果を得ることができる。さらに、第2路40の幅(第2路40における、筒状部14の軸方向の寸法)を、第1路38の幅(第1路38における、筒状部14の周方向の寸法)より大きく設定することによって、冷却水路32に水をより円滑に流すことができ、一層良好な冷却効果を得ることができる。
【0044】
上述の実施形態では、バイパス水路36は、筒状部14の軸方向の一端部(開口18側)に設けられる複数の第2路40について、筒状部14の周方向に隣り合う第2路40同士を、溝部G(図11参照)を除くすべての箇所で連結し、さらに、筒状部14の軸方向の他端部(板状部20側)に設けられる複数の第2路40について、筒状部14の周方向に隣り合う第2路40同士をすべての箇所で連結したが、これに限定されない。図12に示すように、筒状部14の軸方向の一端部に設けられる複数の第2路40と筒状部14の軸方向の他端部に設けられる複数の第2路40とにおいて、バイパス水路36を設けない箇所を2つ飛ばしで設けるようにしてもよい。すなわち、バイパス水路36が筒状部14の周方向に2つ続くと、その次にはバイパス水路36を設けないように構成されてもよい。
【0045】
上述の実施形態では、筒状部14の外周面24のうち一端部側(開口18寄り)にのみ砂抜き孔50,52が設けられたが、これに限定されない。これらに加えて、筒状部14の外周面24のうち他端部側(板状部20寄り)に、複数の砂抜き孔が設けられてもよい。
【0046】
たとえば、図11に示す実施形態の場合には、図13においてP1,P2,P3で示す位置に、砂抜き孔がさらに設けられてもよい。すなわち、筒状部14の軸方向の他端部に設けられる第2路40に連通する砂抜き孔が、筒状部14の周方向に第2路40を一つ飛ばしで、設けられてもよい。当該砂抜き孔は、筒状部14の周方向の両側においてバイパス水路36がある第2路40に設けられる。この場合、ハウジング12の製造時に、冷却水路32から中子の砂と鋳造時に発生するガスとをさらに排出しやすくなる。
【0047】
また、図12に示す実施形態の場合には、図14においてP4,P5で示す位置に、砂抜き孔がさらに設けられてもよい。すなわち、筒状部14の軸方向の他端部に設けられる第2路40に連通する砂抜き孔が、筒状部14の周方向に第2路40を2つ飛ばしで、設けられてもよい。当該砂抜き孔は、筒状部14の周方向の両側においてバイパス水路36がある第2路40に設けられる。この場合も、ハウジング12の製造時に、冷却水路32から中子の砂と鋳造時に発生するガスとをさらに排出しやすくなる。
【0048】
上述の実施形態では、バイパス水路36は主水路34の両端部に設けられたが、これに限定されない。パイパス水路36は、主水路34の一端部および他端部のいずれか一方にのみ設けられてもよい。また、バイパス水路36は、主水路34の端部ではなく、その他の任意の箇所を連結してもよい。
【0049】
主水路は、直線部分を有することなく、曲線状に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 回転電機
12 ハウジング
14 筒状部
16 筒状部の内周面
32 冷却水路
34 主水路
36 バイパス水路
50,52 砂抜き孔
58 固定子
70 シャフト
76 回転子
T 主水路の厚み
W1 主水路の幅
W2 バイパス水路の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14