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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 3/04 20060101AFI20240515BHJP
   A47C 7/56 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
A47C3/04
A47C7/56
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020028090
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021129917
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】笹崎 悟
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-142903(JP,A)
【文献】実開平03-096748(JP,U)
【文献】特開平06-269330(JP,A)
【文献】特開2016-073550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 3/04
A47C 7/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に対して接地可能な前脚接地部を有すると共に上下方向に延伸した前脚と、前記前脚接地部と離間状態で後方かつ側方に変位して配置された後脚接地部を有する後脚とを備え、
前記前脚と前記後脚とが固定されており、
前記前脚接地部は、前後方向の一方の端面に設けられると共に前後方向の他方の端部を収容可能な形状の凹部を有する
ことを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記凹部は、前記前脚接地部の後端面に設けられていることを特徴とする請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記凹部の内壁面は、中央が前方に膨出された湾曲面とされていることを特徴とする請求項1または2記載の椅子。
【請求項4】
前記前脚接地部は、前記凹部を上方から覆う上方壁部を有することを特徴とする請求項1~3いずれか一項に記載の椅子。
【請求項5】
前記前脚は、
上下方向に延伸する鉛直杆部と、
前記鉛直杆部の下端から前方に延出すると共に金属によって形成された前方延出部と、 前記前方延出部に嵌合されると共に樹脂によって形成された前記前脚接地部と
を有することを特徴とする請求項1~4いずれか一項に記載の椅子。
【請求項6】
前記前脚及び前記後脚により支持されると共に座面を上方に向けた使用姿勢とすることが可能な座を有し、
前記使用姿勢における前記座面よりも上方に配置されると共に、前記前脚接地部の前端が前方に配置された他の椅子の前記前脚接地部の後端と当接した状態にて、前記前方に配置された椅子に当接可能な前側当接部と、
前記使用姿勢における前記座面よりも上方に配置されると共に、前記前脚接地部の前端が後方に配置された他の椅子の前記前脚接地部の前端と当接した状態にて、前記後方に配置された椅子に当接可能な後側当接部とを
有する
ことを特徴とする請求項1~5いずれか一項に記載の椅子。
【請求項7】
前記前脚は、使用姿勢における前記座面よりも上方に配置されると共に上側ほど前側に位置するように傾斜した上傾斜部を有し、
前記後脚は、前後方向に延伸すると共に前記前脚の上端部と前記後脚の上端部とを連結する連結杆部に対して後端屈曲部を介して連なり、
前記上傾斜部が前記前側当接部とされ、前記後端屈曲部が前記後側当接部とされている ことを特徴とする請求項6記載の椅子。
【請求項8】
床面に対して接地可能な前脚接地部を有すると共に上下方向に延伸した前脚と、前記前脚接地部と離間状態で後方かつ側方に変位して配置された後脚接地部を有する後脚とを備え、
前記前脚接地部は、前後方向の一方の端面に設けられると共に前後方向の他方の端部を収容可能な形状の凹部を有し、
前記前脚は、
上下方向に延伸する鉛直杆部と、
前記鉛直杆部の下端から前方に延出すると共に金属によって形成された前方延出部と、 前記前方延出部に嵌合されると共に樹脂によって形成された前記前脚接地部と
を有する
ことを特徴とする椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、収容時や搬送時にスタッキングが可能な椅子が開示されている。特許文献1に開示された椅子は、前脚の下端と後脚の下端とを接続する長板状の連結杆を有しており、さらに連結杆の上面に設けられるストッパ突部を有している。このような特許文献1に開示された椅子では、スタッキングする場合に、後方(上下方向にスタッキングする場合には下方)に位置する椅子の連結杆の前端を、前方(上下方向にスタッキングする場合には上方)に位置する椅子の連結杆の上面に設けられたストッパ突部に差し込む。このように後方の椅子の連結杆の前端を前方の椅子のストッパ突部に差し込むことで、前後の椅子が互いに位置決めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-169638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に開示された椅子では、前後方向に長い板状の連結杆の上面に対してストッパ突部が設けられている。このため、椅子の下方(すなわち連結杆の下面側)からストッパ突部を視認することが困難となる。上下方向に複数の椅子をスタッキングする場合には、椅子の前側を上方に向け、椅子の下側から作業者が椅子を把持した状態で、複数の椅子を重ねることが想定される。このような場合には、作業者から見てストッパ突部が連結杆の裏側に隠れ、先に配置された椅子の連結杆の前端を把持した椅子のストッパ突部を差し込む作業が困難となる可能性がある。つまり、従来の椅子では、スタッキング作業において、椅子の把持の仕方等によって、作業時の視認性が悪くなる場合があった。
【0005】
また、特許文献1に開示された椅子では、連結杆の上面に対してストッパ突部が設けられているため、後方の椅子の連結杆の先端を前方の椅子のストッパ突部に差し込むと、後方の椅子の連結杆が前方の椅子の連結杆の上方に配置されることとなる。このため、多数の椅子をスタッキングすると、前方に向かうに連れて椅子の連結杆が下方側に変位する。したがって、鉛直方向に椅子を重ねてスタッキングする場合には、上方に向かうほど椅子の集合体の上部が水平方向に変位することとなり、椅子の集合体の重量バランスが悪化する。よって、鉛直方向にスタッキングする場合の椅子の重ね合わせ数を少なく制約せざるを得なくなる。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、スタッキング可能な椅子において、スタッキング作業時の視認性を高めると共に、鉛直方向へスタッキングした場合の水平方向における重量バランスの悪化を抑止可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0008】
第1の発明は、床面に対して接地可能な前脚接地部を有すると共に上下方向に延伸した前脚と、前記前脚接地部と離間状態で後方かつ側方に変位して配置された後脚接地部を有する後脚とを備え、前記前脚接地部が、前後方向の一方の端面に設けられると共に前後方向の他方の端部を収容可能な形状の凹部を有するという構成を採用する。
【0009】
このような第1の発明によれば、前脚接地部と後脚接地部とが離間されており、前脚接地部の前後方向の一方の端面に、前脚接地部の前後方向の他方の端部が収容可能な凹部が設けられている。このため、スタッキングする場合には、背面側に配置された椅子の前脚接地部の前端を、正面側に配置された椅子の前脚接地部の後端と当接させることで、椅子同士を位置決めすることが可能となる。このような本発明によれば、椅子の下方からであっても、両方の椅子の前脚接地部の前端と後端とを視認することができ、スタッキング作業時の視認性を高めることができる。
【0010】
また、本発明においては、鉛直方向にスタッキングする場合に、両方の椅子の前脚接地部の前端と後端とを突き合わせることによって、両方の椅子が位置決めされる。このため、互いの前脚接地部が鉛直方向に変位することなく、スタッキングが可能となる。したがって、鉛直方向にスタッキングした場合であっても、水平方向における重量バランスが偏ることがなく、安定的に多数の椅子を積み重ねることが可能となる。
【0011】
よって、本発明によれば、スタッキング可能な椅子において、スタッキング作業時の視認性を高めると共に、鉛直方向へスタッキングした場合の水平方向における重量バランスの悪化を抑止することが可能となる。
【0012】
第2の発明は、上記第1の発明において、前記凹部が、前記前脚接地部の後端面に設けられているという構成を採用する。
【0013】
このような第2の発明によれば、凹部が前脚接地部の後端面に設けられている。椅子の背面側は正面側と比較して椅子の使用者等から視認され難い。このため、本発明によれば、前脚接地部の前端面に凹部を設ける場合と比較して、凹部を目立たなくすることができ、凹部が椅子の外観印象に与える影響を抑えることが可能となる。
【0014】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、前記凹部の内壁面が、中央が前方に膨出された湾曲面とされているという構成を採用する。
【0015】
このような第3の発明によれば、凹部の内壁面が屈曲部のない湾曲面とされているため、凹部の内壁面に前脚接地部の端部が引っ掛かることを防ぎ、凹部に他の椅子の前脚接地部の端部の挿入を円滑に行うことができる。
【0016】
第4の発明は、上記第1~第3いずれかの発明において、前記前脚接地部が、前記凹部を上方から覆う上方壁部を有するという構成を採用する。
【0017】
このような第4の発明によれば、凹部に収容された前脚接地部の端部が凹部から抜け出ることを抑止し、互いに位置決めされた椅子同士が意図せずに変位することを防止することが可能となる。
【0018】
第5の発明は、上記第1~第4いずれかの発明において、前記前脚が、上下方向に延伸する鉛直杆部と、前記鉛直杆部の下端から前方に延出すると共に金属によって形成された前方延出部と、前記前方延出部に嵌合されると共に樹脂によって形成された前記前脚接地部とを有するという構成を採用する。
【0019】
このような第5の発明によれば、スタッキングする場合に、樹脂によって形成された前脚接地部同士が当接することなる。このため、スタッキング時に前脚の金属部分が他の部材と接触することを防止し、前脚の金属部分の表面が傷つくことを防止することが可能となる。
【0020】
第6の発明は、上記第1~第5いずれかの発明において、前記前脚及び前記後脚により支持されると共に座面を上方に向けた使用姿勢とすることが可能な座を有し、前記使用姿勢における前記座面よりも上方に配置されると共に、前記前脚接地部の前端が前方に配置された他の椅子の前記前脚接地部の後端と当接した状態にて、前記前方に配置された椅子に当接可能な前側当接部と、前記使用姿勢における前記座面よりも上方に配置されると共に、前記前脚接地部の前端が後方に配置された他の椅子の前記前脚接地部の前端と当接した状態にて、前記後方に配置された椅子に当接可能な後側当接部とを有するという構成を採用する。
【0021】
このような第6の発明によれば、スタッキングの際に前脚接地部の他に座よりも上方に位置にて、前側当接部が正面側に配置された他の椅子の後側当接部に当接され、後側当接部が背面側に配置された他の椅子の前側当接部に当接される。つまり、本発明によれば、椅子の下部に位置する前脚接地部の他、椅子の上部に位置する前側当接部及び後側当接部が他の椅子と当接される。このため、スタッキングされた椅子を安定支持することが可能となる。
【0022】
第7の発明は、上記第6の発明において、前記前脚が、使用姿勢における前記座面よりも上方に配置されると共に上側ほど前側に位置するように傾斜した上傾斜部を有し、前記後脚が、前後方向に延伸すると共に前記前脚の上端部と前記後脚の上端部とを連結する連結杆部に対して後端屈曲部を介して連なり、前記上傾斜部が前記前側当接部とされ、前記後端屈曲部が前記後側当接部とされているという構成を採用する。
【0023】
このような第7の発明によれば、スタッキングの際に、上傾斜部が正面側に配置された他の椅子の後端屈曲部に背面側から当接され、後端屈曲部が背面側に配置された他の椅子の上傾斜部に正面側から当接される。このため、上下方向にスタッキングする場合には、上傾斜部が下方から正面側に配置された他の椅子の後端屈曲部に当接され、後端屈曲部が背面側に配置された椅子の上傾斜部に下方から支持され、椅子を安定支持することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、床面に対して接地可能な前脚接地部を有すると共に上下方向に延伸した前脚と、前脚接地部と離間状態で後方かつ側方に変位して配置された後脚接地部を有する後脚とを備え、前脚接地部が、前後方向の一方の端面に設けられると共に前後方向の他方の端部を収容可能な形状の凹部を有する。このため、スタッキング可能な椅子において、スタッキング作業時の視認性を高めると共に、上下方向へスタッキングした場合の水平方向における重量バランスの悪化を抑止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態における椅子を前外側から見た斜視図である。
図2】上記椅子を後外側から見た斜視図である。
図3】上記椅子の座を跳ね上げた状態の図1に相当する斜視図である。
図4図3の状態を左側方から見た側面図である。
図5】上記椅子を前外側から見た前面図である。
図6】上記椅子が備える前脚カバーを含む部位の拡大斜視図である。
図7】上記前脚カバーを後外側から見た拡大斜視図である。
図8】上記椅子が備える前脚カバーを含む部位の拡大正面図である。
図9】上記椅子を鉛直方向で複数重ねた状態の側面図である。
図10】上記椅子を鉛直方向で複数重ねた状態での前脚カバーを含む部位の拡大側面図である。
図11】上記椅子の変形例が備える前脚の模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明に係る椅子の一実施形態について説明する。
【0027】
以下の説明において、前後上下左右等の向きは、特に記載がなければ、水平な床面(椅子設置面)F上に設置した状態の椅子1に、正規姿勢で着座した着座者の正面側を「前」、その逆側を「後」とし、上下左右も着座者から見た向きと同一とする。着座者が正規姿勢で着座したとき、椅子1の座3は後述する使用位置P1にあり、特に記載がなければ、座3の説明で用いる向きは使用位置P1での向きと同一とする。図中において、矢印UPは上方を示し、矢印FRは前方を示し、矢印LHは左方を示す。
【0028】
<椅子全体>
図1図4に示すように、本実施形態の椅子1は、座面3aを形成する座3を、座面3aを上方に向けた使用位置(着座位置、図参照)P1と、使用位置P1(使用姿勢)に対して前端部を上方に移動させた跳ね上げ位置(格納位置、図参照)P2と、の間で回動可能とした、座跳ね上げ式の椅子1である。
【0029】
椅子1は、左右方向(椅子1の幅方向)に離間して配置される左右一対の脚体2と、左右脚体2の間に配置される座3と、座3と左右脚体2との間に配置される回動機構15と、座3の後方で左右脚体2の間に配置される背凭れ4と、座3の左右側部の上方に配置される左右一対の肘掛け5と、を備えている。
【0030】
<脚体>
図1図4を参照し、左右脚体2の各々は、互いに前後方向(椅子1の奥行方向)に離間して上下方向に延びる前脚20および後脚25(以下、前後脚20,25ということがある。)を備えている。前後脚20,25の上端部の間は、略水平に前後方向に延びる連結杆部30を介して連結されている。詳細には、連結杆部30は、後下がりに傾斜し、かつ側面視で上方に凸の湾曲状をなして前後方向に延びている。左右連結杆部30は、それぞれ左右肘掛け5を構成する部材である。
【0031】
前後脚20,25の上下中間部の間は、幅方向と直交する板状をなす支持部材35を介して連結されている。本願における「中間」とは、対象部品の両端間の中央に限らず、両端間の内側にある部位を含む。椅子1が椅子設置面F上に起立するとき、椅子1の前後方向は椅子1の奥行方向となる。前後方向前側は奥行方向手前側に相当し、前後方向後側は奥行方向奥側に相当する。
【0032】
左右支持部材35は、座3の左右側部および背凭れ4の左右側部をそれぞれ支持する部材である。左右支持部材35は、座3の前端部(図4の前端位置P3参照)よりも後方に位置し、座3の前端部側を跳ね上げ可能とするべく座3を回動可能に支持している。左右支持部材35は、座3の後端部(図4の後端位置P4参照)よりも前方に位置している。左右支持部材35(および座3の回動中心軸線C1)は、座3の前後方向中央よりも後方に位置している。左右支持部材35は、使用位置P1にある座3の座面3aよりも下方に位置している。
【0033】
前後脚20,25は、連結杆部30に至る上端部から椅子設置面Fに至る下端部まで(すなわち上下端部に渡って)、互いに前後方向に離間して上下方向に延びている。前後脚20,25は、それぞれ長さ方向に直交する断面で矩形状(長方形状)の断面形状を有する脚杆を構成している。前後脚20,25の上部は、使用位置P1とされた座3の座面3aよりも上方に延びている。前後脚20,25の上端部間を連結する連結杆部30は、左右肘掛け5の高さに位置している。
【0034】
脚体2において、連結杆部30を含む上構造部2Aと前後脚20,25の残余の下構造部2B,2Cとは、それぞれ前後結合部6,7において一体的に結合されている。具体的に、前脚20の下構造部2Bの上端部と上構造部2Aの前垂下部31の下端部とは、前結合部6において互いに結合されている。後脚25の下構造部2Cの上端部と上構造部2Aの後垂下部32の下端部とは、後結合部7において互いに結合されている。前垂下部31は後垂下部32よりも上下方向で短く、したがって前結合部6は後結合部7よりも上方に位置している。前後結合部6,7は、それぞれキー状突部を含むインロー嵌合と抜け止めボルトとを用いた結合構造部である。
【0035】
前脚20の下構造部2Bの上下方向中間部(後述する下傾斜部23b)と後脚25の下構造部2Cの上部とは、支持部材35を介して互いに連結されている。支持部材35は、前後脚20,25の上下中間部の間を連結する連結部材としても機能する。支持部材35は、前端部が前脚20に結合されて支持され、後端部が後脚25に結合されて支持されている。すなわち、支持部材35は、前後脚20,25に両持ち支持されている。
【0036】
図1図4を参照し、前後脚20,25は、少なくとも支持部材35および座3よりも下方において、互いに前後方向に離間した杆状をなしている。前後脚20,25は、例えば支持部材35と重なる高さおよびそれ以上の高さにおいて、部分的に前後方向で一体化されたり、前後方向位置を入れ替えたり(すなわち側面視でX字状に交差したり)してもよい。
【0037】
前後脚20,25の各々の下端部(接地端部)21,26は、それぞれ椅子設置面Fに当接して支持されている。前脚20の下端部21は、後脚25の下端部26よりも前方に位置し、使用位置P1にある座3の前端位置P3(図4参照)よりも後方に位置している。前脚20は、全体が前記前端位置P3よりも後方の領域に配置されている。前脚20の下端部21は、できるだけ前方に接地位置を設けるために、椅子設置面Fに沿って前方に延びる前方延出部21aを備えている。前方延出部21aは、脚体2における前後方向で支持部材35から離間する側へ延びる延長接地部2Dを構成している。
【0038】
前脚20は、前方延出部21aの基端部(後端部)21bから上方へ鉛直方向に沿って延びる前脚鉛直杆部23を備えている。前脚20における前方延出部21aおよび前脚鉛直杆部23を含む部位は、側面視でL字状に形成されている。
【0039】
図4を参照し、後脚25は、支持部材35を結合する上下中間部から下後方へ、側面視で傾斜して直線状に延びている。後脚25の下端部26は、使用位置P1にある座3の後端位置P4よりも後方の領域に配置されている。後脚25の下端部26は、後傾する背凭れ4の上後端位置P5と同等の前後方向位置に配置されている。図1図3を併せて参照し、左右後脚25における下後方へ延びる部位は、左右前脚20に対して幅方向内側にオフセットしている。
【0040】
前記オフセットにより、図9に示すように、複数の椅子1を前後方向で並べたとき、前側の椅子1の左右後脚25は、後側の椅子1の左右前脚20の間に進入することが可能である。すなわち、左右前脚20の間には、前側に位置する他の椅子1の左右後脚25を収容可能な脚収容部が構成されている。これにより、複数の椅子1を前後方向で並べたとき、前側に位置する他の椅子1の左右後脚25を左右前脚20の間に入り込ませる(入れ子状に重ねる)ことが可能となる。したがって、複数の椅子1を、相互間のピッチを詰めてコンパクトに収納することが可能となる。
【0041】
前後脚20,25についてさらに詳述する。
図1図4を参照し、前脚20は、下部が側面視でL字状に形成されるのに対し、上部が側面視で後方に凸のV字状に形成されている。前脚20の上部は、前脚鉛直杆部23上に前方に凸の中段屈曲部23aを介して連なり、上側ほど後側に位置するように傾斜した下傾斜部23bと、下傾斜部23bの上方に後方に凸の頂部屈曲部23cを介して連なり、上側ほど前側に位置するように傾斜した上傾斜部23dと、を備えている。頂部屈曲部23cは、使用位置P1にある座3の座面3aよりも上方に位置している。
【0042】
上下傾斜部23b,23dおよび頂部屈曲部23cを含んで、前脚上部屈曲部23eが構成されている。前脚上部屈曲部23eを設けることで、着座者の大腿部が幅方向外側を向いた際に、大腿部が前脚20に干渉し難くなる。上傾斜部23dには、前記前結合部6が設けられている(図2参照)。前脚20の上傾斜部23d(前垂下部31含む)は、座3よりも上方において、側面視で前上方に向けて斜めに延出する前上方延出部24を構成している。前上方延出部24の前上端部は、前端屈曲部33を介して、連結杆部30の前端部に連なっている。
【0043】
前脚20は、長方形状の断面を有して、椅子設置面Fから連結杆部30に至るまで延びている。前脚20は、椅子設置面Fから連結杆部30に至るまで、長方形状の断面形状の長手方向を幅方向に向けて(実施形態では幅方向と平行にして)延びている。
【0044】
前脚20の下端部21には、前脚鉛直杆部23の下端に対して前下屈曲部21dを介して連なり、前脚鉛直杆部23の下端から前方に延出した前方延出部21aが設けられている。前方延出部21aは、椅子設置面Fおよび前後方向に沿って前方に向けて延びており、前脚鉛直杆部23と一体的にアルミニウム等の金属によって形成されている。
【0045】
また、前脚20の下端部21には、前方延出部21aに取り付けられ、例えば合成樹脂で形成された前脚カバー22(前脚接地部)が設けられている。この前脚カバー22は、椅子1が椅子設置面Fに載置される場合に、椅子設置面Fに接地される部位である。図6及び図7を参照し、前脚カバー22は、前方延出部21aの前端部(先端部)21cを前方から覆う前端被覆部22aと、前方延出部21aの下面を覆う下面被覆部22bと、前方延出部21aの後端部21b(前下屈曲部21dの外周部)を覆う後端被覆部22cと、を備えている。下面被覆部22bの下面(接地面)には、溝状(凹状)またはビード状(凸状)の滑り止めパターンが形成されている。
【0046】
後端被覆部22cの後端面22dは、前脚カバー22の後端面を構成しており、図7に示すように、凹部22eが設けられている。この凹部22eは、後方から前方に向けて窪むように形成されており、内壁面22fが平面視にて中央が前方に膨出された湾曲面とされている。前端被覆部22aは、前脚カバー22の前端部を構成している。この前端被覆部22aの前端面22gは、前脚カバー22の前端面を構成しており、後方から前方に向けて突出するように形成されている。この前端面22gは、平面視にて中央が前方に膨出された湾曲面とされており、凹部22eの内壁面22fと同一あるいは略同一の曲率にて湾曲された湾曲面とされている。このため、前端被覆部22aの先端部の形状は、凹部22eに収容可能な形状とされている。つまり、本実施形態においては、前脚カバー22は、前後方向の一方の端面である後端面22dに設けられると共に前後方向の他方の端部である前端被覆部22aの先端部を収容可能な形状の凹部22eを有している。このような凹部22eに他の椅子1の前端被覆部22aが収容されると、前端面22gが凹部22eの内壁面22fの一部あるいは全部に面接触される。
【0047】
また、前脚カバー22には、後端被覆部22cの上部から後方に突出し、凹部22eを上方から覆う上方壁部22hが設けられている。この上方壁部22hは、後端被覆部22cの下面から、前端被覆部22aの上下寸法を越えた位置に下面が位置するように配置されている。この上方壁部22hは、凹部22eに他の椅子1の前端被覆部22aが収容されている状態にて、他の椅子1の前端被覆部22aが上方に移動することを規制する。
【0048】
また、前脚カバー22の下面被覆部22bには、上下方向に貫通するボルト挿通孔22iが設けられている。このボルト挿通孔22iに下方からボルトが挿通され、このボルトが前方延出部21aに螺合されることによって、前脚カバー22が前方延出部21aに締結されている。
【0049】
図8を参照し、下面被覆部22bの左右方向の幅寸法d1は、前方延出部21aの左右方向の幅寸法d2よりも大きい。このため、下面被覆部22bの側面は、前方延出部21aの側面よりも前脚20の外側に位置している。このため、スタッキング時において、樹脂製の下面被覆部22bの側面が前方延出部21aの側面よりも先に他の椅子1の前脚20や後脚25に接触することになり、金属製の前方延出部21aの表面が傷つくことを防止することができる。
【0050】
図1図4を参照し、後脚25は、前脚20の頂部屈曲部23cの後方位置から下後方へ、側面視で傾斜して直線状に延びる前記下構造部2Cを備えている。
後脚25は、下構造部2Cよりも上方の上部が、側面視で前方に凸のV字状に形成されている。後脚25の上部は、下部である下構造部2Cの上方に直線状に連なり、上側ほど前側に位置するように傾斜した下傾斜部28bと、下傾斜部28bの上方に前方に凸の頂部屈曲部28cを介して連なり、上側ほど後側に位置するように傾斜した上傾斜部28dと、を備えている。頂部屈曲部28cは、使用位置P1にある座3の座面3aよりも上方に位置している。
【0051】
上下傾斜部28b,28dおよび頂部屈曲部28cを含んで、後脚上部屈曲部28eが構成されている。後脚25の上傾斜部28dは、座3よりも上方において、側面視で後上方に向けて斜めに延出する後上方延出部29を構成している。後上方延出部29の後上端部は、後端屈曲部34を介して、連結杆部30の後端部に連なっている。後上方延出部29の前下端部は、頂部屈曲部28cを介して、下構造部2C(以下、後下方延出部29aということがある。)の前上端部に連なっている。
【0052】
また、後端屈曲部34は、前脚20の上傾斜部23dの一部を構成する前垂下部31と同一の高さに配置されている。この後端屈曲部34は、使用位置P1とされた座3の座面3aよりも上方に配置されており、椅子1同士がスタッキングされた場合に、椅子1の後方に配置された他の椅子1の前脚20の上傾斜部23dに前方から当接可能とされた後側当接部として機能する。また、前脚20の上傾斜部23d(前垂下部31)は、使用位置P1とされた座3の座面3aよりも上方に配置されており、椅子1同士がスタッキングされた場合に、椅子1の前方に配置された他の椅子1の後脚25の後端屈曲部34に当接可能とされた前側当接部として機能する。
【0053】
下傾斜部28bは、側面視で前脚20の上傾斜部23dと直線状又は平行をなすように配置されている。上傾斜部28dは、側面視で前脚20の下傾斜部23bと直線状又は平行をなすように配置されている。前脚20および後脚25は、側面視であたかもX字状に交差するような外観をなしている。
【0054】
後脚25は、長方形状の断面を有して、椅子設置面Fから連結杆部30に至るまで延びている。後脚25は、椅子設置面Fから連結杆部30に至る途中で、長方形状の断面形状の長手方向の向きを変化させている。後脚25は、頂部屈曲部28cにおいて、断面形状の向きを90°捻っている。つまり、頂部屈曲部28cは、後脚25の断面形状の向きを捩じりながら、後脚25を側面視で屈曲させている。
【0055】
後脚25において、上傾斜部28dは、長方形状の断面形状の長手方向を幅方向に向けているのに対し、下傾斜部28bは、長方形状の断面形状の短手方向を幅方向に向けている。上傾斜部28dにおける幅方向外側で幅方向と直交する外側面は、頂部屈曲部28cで前方に向けて90°の捻りが加えられ、下傾斜部28bにおける前下方を向きかつ幅方向と平行な前下傾斜面に変化する。上傾斜部28dにおける後下方を向きかつ幅方向と平行な後下傾斜面は、頂部屈曲部28cで幅方向外側に向けて90°の捻りが加えられ、下傾斜部28bにおける幅方向外側で幅方向と外側面に変化する。
【0056】
後脚25は、頂部屈曲部28cで捩じれる際、上傾斜部28dに対して下傾斜部28bを、上傾斜部28dの全幅分だけ幅方向内側にオフセットさせる。頂部屈曲部28cは、上傾斜部28dに対して下傾斜部28bを下後方に屈曲させる屈曲部であり、後脚25の断面形状の向きを捻る捻り部であり、上傾斜部28dに対して下傾斜部28bを幅方向内側に変位させる変位部である。
【0057】
後脚25における下傾斜部28bの後下方に直線状に連なる下構造部2C(後下方延出部29a)は、着座者の背凭れ荷重F1(図4参照)を支持するため、座3の後端部3dよりも後方まで延び、背凭れ4の上端部4d(後端部でもある)と同等となる前後方向位置で下端部26を接地させている。前記背凭れ荷重F1とは、図4に示すように、着座者が背凭れ4に寄りかかった際に、背凭れ4に入力される後方向への荷重である。後脚25の下端部26には、例えば合成樹脂で形成された後脚カバー27(後脚接地部)が取り付けられている。後脚カバー27の下面(接地面)には、溝状(凹状)またはビード状(凸状)の滑り止めパターンが形成されている。
【0058】
複数の椅子1を前後方向(奥行方向)で並べた際、前側に位置する椅子1の後脚25の後下方延出部29aは、後側に位置する椅子1の前脚20と前後方向位置をラップさせる配置となる。後脚25の後下方延出部29aは、後上方延出部29の全幅を超える程度だけ、すなわち前脚20の全幅を超える程度だけ、幅方向内側へオフセットしている。このため、図5に示すように、左右後脚25の後下方延出部29aの外側面間の間隔K2は、左右前脚20の内側面間の間隔K1よりも小さくなる。
【0059】
このため、前側に位置する椅子1の左右後脚25の後下方延出部29aは、後側に位置する椅子1の左右前脚20に干渉することなく、左右前脚20の幅方向内側に入り込むことが可能となる。したがって、前後方向に並ぶ椅子1を入れ子式に重ねることが可能となる。また、後上方延出部29のオフセット量は後上方延出部29の全幅を超える程度に抑えるので、左右後脚25の後下方延出部29a間のピッチが確保され、椅子1の安定性への影響が抑えられる。また、後脚25が頂部屈曲部28cで捩じれつつ後下方延出部29aをオフセットさせるので、後下方延出部29aを段差状にオフセットさせる場合に比べて、後下方延出部29aの変位が滑らかになり、応力集中の発生が抑えられる。
【0060】
そして、上記実施形態における椅子1では、前脚20の座3よりも上方に延びる部位が、側面視で前上方に向けて斜めに延出する前上方延出部24とされ、後脚25の座3よりも上方に延びる部位が、側面視で後上方に向けて斜めに延出する後上方延出部29とされている。前上方延出部24の上端部と後上方延出部29の上端部との間には、肘掛け5を構成する連結杆部30が渡設され、この連結杆部30の前後端部が、前脚20および後脚25にそれぞれ支持されている。
【0061】
このように、肘掛け5を杆状の前後脚20,25で支持することで、肘掛け5周辺の構成が簡素で軽量になる。前脚20の座3よりも上方に延びる部位が、座面3a側ほど後方に位置するように傾斜した前上方延出部24となるので、前脚20で連結杆部30の前端部を支持しつつ、座3の側方に脚部材(前脚20)が張り出すことが抑えられる。
【0062】
さらに、後脚25の座3よりも上方に延びる部位が、座面3a側ほど前方に位置するように傾斜した後上方延出部29とされるので、後脚25で連結杆部30の後端部を支持しつつ、座3の後部においても座3の側方に脚部材(後脚25)が張り出すことが抑えられる。また、前後脚20,25間の間隔を狭めてスリムで軽量な外観に寄与することができる。
【0063】
前上方延出部24および後上方延出部29よりも下方の部位では、前後脚20,25の間に支持部材35が渡設されている。これにより、前後脚20,25の上下中間部同士が連結されて、脚体2全体の強度剛性が確保されるとともに、支持部材35が前後脚20,25に両持ち支持されるので、座3の支持強度(支持部材35の強度剛性)が効率よく確保される。また、前後脚20,25が前上方延出部24および後上方延出部29を有するので、前後脚20,25間の間隔が上端部間の間隔に比べて狭まり、支持部材35の大型化が抑えられ、この点でも座3の支持強度(支持部材35の強度剛性)が確保される。
【0064】
<座>
図1図3を参照し、座3は、左右脚体2の支持部材35に対し、回動機構15を介して回動可能に支持されている。座3は、平面視矩形状の厚板状をなしている。座3は、厚さ方向を上下方向に向けた使用位置P1(図1参照)において、上面に形成した座面3aを略水平にして配置される。座3は、その後部に配置された幅方向に沿う軸線C1を中心に、使用位置P1から前端部を上方に移動させるように回動する。これにより、座3は、前上がりに起立した跳ね上げ位置P2(図3参照)に変化する。回動機構15は、座3を使用位置P1から跳ね上げ位置P2へ回動させる向きに付勢する付勢機構を備えている。付勢機構は、回動機構15とともに、脚体2の支持部材35に支持されている。このような回動機構15は、座3を使用位置P1と格納位置P2との間に姿勢変更可能に支持している。
【0065】
座3の後端部3dは、使用位置P1にある状態での上面視(座面3aの平面視)で、後方に凸の湾曲形状をなしている。座3の後端部3dは、背凭れ4の下部の平面視の湾曲形状に沿うように形成されている。座3の使用位置P1において、跳ね上げ位置P2側と反対側への回動は、回動機構15に設けた不図示のストッパによって規制される。ストッパは、使用位置P1にある座3に着座者が着座したとき、着座荷重によるモーメントと反対回りのモーメントが生じるように、座3の回動規制を行う。
【0066】
座3の跳ね上げ位置P2における使用位置P1側と反対側への回動も、前記ストッパによって規制される。椅子1は、座3を跳ね上げた状態で後方に倒れ、奥行方向を上下方向に向けた状態で、上下方向に複数積み上げて収納すること(スタッキング)が可能である。複数の椅子1を上下方向に平積みすると、跳ね上げ位置P2にある椅子1には、上方に重なった椅子1の重量が加わる。この重量によるモーメントと反対方向のモーメントが作用するように、前記ストッパが座3の回動規制を行う。
【0067】
<背凭れ>
図1図4を参照し、背凭れ4は、座3の後方で後上方に向けて起立し、着座者の背中を後方から支える。背凭れ4は、下部が平面視で後方に凸の湾曲形状をなしている。背凭れ4の下部の湾曲形状は、着座者の腰部の湾曲に沿うように形成されており、着座者の腰部のサポート性を高めている。背凭れ4の下部は、左右脚体2の支持部材35に固定されて支持されている。
【0068】
<肘掛け>
図1図4を参照し、左右肘掛け5は、例えば左右連結杆部30により構成されている。左右連結杆部30の上面は、着座者の前腕を載せる肘載せ面5aを形成している。左右肘掛け5(左右連結杆部30)は、それぞれ同側の支持部材35の上方に離間して配置されている。左右肘掛け5(左右連結杆部30)の下方に空間が形成されることで、椅子1を運搬する際等に作業者が肘掛け5を把持しやすい。また、脚体2の軽量化も図られる。
【0069】
左右肘掛け5の前部(および左右前脚20の前上方延出部24の前上部)は、跳ね上げ位置P2にある座3よりも前方に飛び出している(図4参照)。このため、歩行者がバランスを崩した際等に左右肘掛け5を掴みやすく、かつ椅子1を運搬する際にも左右肘掛け5を持ちやすい(跳ね上げ位置P2にある座3が邪魔になり難い)。左右肘掛け5は、左右連結杆部30に装着されるパッド部材等を含んでもよい。左右連結杆部30を含む上構造部2Aは、アルミ合金等の金属材料に限らず、合成樹脂材料で形成してもよい。なお、スタッキングの際に金属部分が傷つくことを防止するためにも、上構造部2Aの少なくとも表層部は樹脂によって形成されていることが好ましい。例えば、スタッキングの際に、上構造部2Aの前垂下部31には、前方に配置された他の椅子1の上構造部2Aに含まれる後端屈曲部34が当接される。このため、上構造部2Aの少なくとも表層部を樹脂によって形成することで、スタッキングの際に、互いの接触によって上構造部2Aが傷つくことを抑止することができる。
【0070】
<スタッキング>
図9を参照し、本実施形態の椅子1は、座3を跳ね上げ位置P2とした状態で、奥行方向で入れ子状に複数重ねることが可能である。複数の椅子1を台車D上において、椅子の前方が上方に向くように鉛直方向で積み重ねた際、鉛直方向の下側にある椅子1の跳ね上げ位置P2にある座3は、座面3aと反対側の下面において、鉛直方向の上方に重なった椅子1の重量を受ける。ここでは、上述のように、本実施形態の椅子1を鉛直方向に積み重ねるスタッキングについて説明する。
【0071】
図3図5を併せて参照し、座3の下面には、布製のアンダーカバー11が取り付けられている。アンダーカバー11は、座3を跳ね上げた椅子1を奥行方向で重ねた際、奥行方向手前側に位置する椅子1の背凭れ4の後下端部を整合可能とするクッション性を有している。これにより、樹脂製等の強度が高いアンダーカバーを設ける場合よりも、奥行方向で重なる複数の椅子1の間の間隔を小さくすることができる。複数の椅子1を上下方向で積み重ねた際、上側の椅子1の背凭れ4の後下端部が下側の椅子1の座3のアンダーカバー11に整合して支持されるので、重なり合った椅子1間の位置ズレが抑えられる。
【0072】
座3を跳ね上げた椅子1を鉛直方向で重ねた際、図10に示すように、鉛直方向における上(椅子1の正面側)に位置する椅子1の前脚カバー22の凹部22eには、鉛直方向における下(椅子1の背面側)に位置する椅子1の前脚カバー22の前端被覆部22aの先端部が鉛直方向の下側から差し込まれる。つまり、鉛直方向の下側の椅子1の前脚カバー22の先端部が鉛直方向の上側の椅子1の前脚カバー22の凹部22eに収容される。このように、鉛直方向の下側の椅子1の前脚カバー22の先端部が鉛直方向の上側の椅子1の前脚カバー22の凹部22eに収容されることで、鉛直方向の上側の椅子1の凹部22eの内壁面22fが、椅子1の左右方向かつ椅子1の前方向から鉛直方向の下側の椅子1の前脚カバー22の先端部に当接し、鉛直方向の上側の椅子1の、鉛直方向の下側の椅子1に対する椅子1の左右方向及び上方向への移動が規制される。
【0073】
また、鉛直方向の上側の椅子1の後端屈曲部34は、鉛直方向の下側の椅子1の上傾斜部23dの一部を構成する前垂下部31に鉛直方向の上側から当接される。このように、鉛直方向の上側の椅子1の後端屈曲部34が鉛直方向の下側の椅子1の上傾斜部23dに当接されることで、鉛直方向の上側の椅子1に対して椅子1の下方に向かう押圧力が作用する。このため、鉛直方向の上側の椅子1の、鉛直方向の下側の椅子1に対する椅子1の下方向への移動が規制される。
【0074】
上述のような鉛直方向の上側の椅子1の、鉛直方向の下側の椅子1に対する椅子1の左右方向及び上下方向への規制は、アンダーカバー11に背凭れ4の後下端部が整合することと併せて、複数の椅子1の安定した積み重ねに寄与する。これにより、複数の椅子1を安定して等間隔に積み重ねて収納することが可能である。
【0075】
このように本実施形態の椅子1は、専用の台車D上で上下方向に複数積み重ねることで、複数の椅子1を台車Dで搬送して規定の場所に収納することが可能である。
なお、椅子1は、椅子設置面F上に起立した姿勢のまま、椅子設置面F上で前後方向にスタッキングした状態として、規定の場所に収納すること(ネスティング)も可能である。
【0076】
以上のような本実施形態の椅子1は、椅子設置面Fに対して接地可能な前脚カバー22を有すると共に鉛直方向に延伸した前脚20と、前脚カバー22と離間状態で後方かつ側方に変位して配置された後脚カバー27を有する後脚25とを備え、前脚カバー22が、前後方向の一方の端面に設けられると共に前後方向の他方の端部を収容可能な形状の凹部22eを有している。
【0077】
このような本実施形態の椅子1によれば、前脚カバー22と後脚カバー27とが離間されており、前脚カバー22の前後方向の一方の端面に、前脚カバー22の前後方向の他方の端部が収容可能な凹部22eが設けられている。このため、スタッキングする場合には、背面側に配置された椅子1の前脚カバー22の前端を、正面側に配置された椅子1の前脚カバー22の後端と当接させることで、椅子1同士を位置決めすることが可能となる。このような本実施形態の椅子1によれば、椅子1の下方からであっても、両方の椅子1の前脚カバー22の前端と後端とを視認することができ、スタッキング作業時の視認性を高めることができる。
【0078】
また、本実施形態の椅子1においては、鉛直方向にスタッキングする場合に、両方の椅子1の前脚カバー22の前端と後端とを突き合わせることによって、両方の椅子1が位置決めされる。このため、互いの前脚カバー22が鉛直方向に変位することなく、スタッキングが可能となる。したがって、鉛直方向にスタッキングした場合であっても、水平方向における重量バランスが偏ることがなく、安定的に多数の椅子1を積み重ねることが可能となる。
【0079】
よって、本実施形態の椅子1によれば、スタッキング作業時の視認性を高めると共に、鉛直方向へスタッキングした場合の水平方向における重量バランスの悪化を抑止することが可能となる。
【0080】
また、本実施形態の椅子1においては、凹部22eが、前脚カバー22の後端面に設けられている。椅子1の背面側は正面側と比較して椅子1の使用者等から視認され難い。このため、本実施形態の椅子1によれば、前脚カバー22の前端面に凹部22eを設ける場合と比較して、凹部22eを目立たなくすることができ、凹部22eが椅子1の外観印象に与える影響を抑えることが可能となる。
【0081】
また、本実施形態の椅子1においては、凹部22eの内壁面22fが、中央が前方に膨出された湾曲面とされている。このため、凹部22eの内壁面22fに前脚カバー22の端部が引っ掛かることを防ぎ、凹部22eに他の椅子1の前脚カバー22の端部の挿入を円滑に行うことができる。
【0082】
また、本実施形態の椅子1においては、前脚カバー22が、凹部22eを上方から覆う上方壁部22hを有している。このような本実施形態の椅子1によれば、凹部22eに収容された前脚カバー22の端部が凹部22eから抜け出ることを抑止し、互いに位置決めされた椅子1同士が意図せずに変位することを防止することが可能となる。
【0083】
また、本実施形態の椅子1においては、前脚20が、鉛直方向に延伸する前脚鉛直杆部23と、前脚鉛直杆部23の下端から前方に延出すると共に金属によって形成された前方延出部と、前方延出部に嵌合されると共に樹脂によって形成された前脚カバー22とをしている。このため、スタッキングする場合に、樹脂によって形成された前脚カバー22同士が当接することなり、前脚20の金属部分が他の部材と接触することを防止し、前脚20の金属部分の表面が傷つくことを防止することが可能となる。
【0084】
また、本実施形態の椅子1においては、前脚20及び後脚25により支持されると共に座面3aを上方に向けた使用姿勢とすることが可能な座3を有し、使用位置P1における座面3aよりも上方に配置されると共に、前脚カバー22の前端が前方に配置された他の椅子1の前脚カバー22の後端と当接した状態にて、前方に配置された椅子1に当接可能な前側当接部(上傾斜部23dの前垂下部31)と、使用位置P1における座面3aよりも上方に配置されると共に、前脚カバー22の前端が後方に配置された他の椅子1の前脚カバー22の前端と当接した状態にて、後方に配置された椅子1に当接可能な後側当接部(後端屈曲部34)とを有している。このため、スタッキングの際に前脚カバー22の他に座3よりも上方に位置にて、前側当接部が正面側に配置された他の椅子1の後側当接部に当接され、後側当接部が背面側に配置された他の椅子1の前側当接部に当接される。つまり、本実施形態の椅子1によれば、椅子1の下部に位置する前脚カバー22の他、椅子1の上部に位置する前側当接部及び後側当接部が他の椅子1と当接される。このため、スタッキングされた椅子1を安定支持することが可能となる。
【0085】
また、本実施形態の椅子1においては、前脚20が、使用姿勢における座面3aよりも上方に配置されると共に上側ほど前側に位置するように傾斜した上傾斜部23dを有し、後脚25が、前後方向に延伸すると共に前脚20の上端部と後脚25の上端部とを連結する連結杆部30に対して後端屈曲部34を介して連なり、上傾斜部23dが前側当接部とされ、後端屈曲部34が後側当接部とされている。このため、鉛直方向にスタッキングする場合には、上傾斜部23dが下方から正面側に配置された他の椅子1の後端屈曲部34に当接され、後端屈曲部34が背面側に配置された椅子1の上傾斜部23dに下方から支持され、椅子1を安定支持することが可能となる。
【0086】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0087】
例えば、上記実施形態においては、前脚カバー22の後端面22dに凹部22eを設ける構成を採用した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、前脚カバー22の前端面に凹部を設け、他の椅子1の前脚カバー22の後端部が前端面に設けられた凹部に収容可能とする構成を採用しても良い。
【0088】
また、上記実施形態においては、前脚20が前方延出部21aを有し、この前方延出部21aの前後方向を長手方向とする前脚カバー22が固定された構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図11に示すように、前脚20が、前方延出部を有していない前脚鉛直杆部23を有し、この前脚鉛直杆部23の下端部に前脚カバー22が取り付けられた構成を採用することも可能である。このような構成を採用する場合には、図11に示すように、前脚カバー22は、前後方向に長い形状を採用する必要はない。
【0089】
また、上記実施形態において、前脚20が前脚カバー22を有する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、前脚20が前脚カバー22を備えない構成とし、このような前脚20の下端部(接地端部)の前後方向の一端に対して凹部を設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0090】
1……椅子、2……脚体、3……座、3a……座面、4……背凭れ、5……肘掛け、20……前脚、21……下端部、21a……前方延出部、22……前脚カバー(前脚接地部)、22a……前端被覆部、22b……下面被覆部、22c……後端被覆部、22d……後端面、22e……凹部、22f……内壁面、22g……前端面、22h……上方壁部、22i……ボルト挿通孔、23……前脚鉛直杆部(鉛直杆部)、23d……上傾斜部(前側当接部)、25……後脚、26……下端部(接地端部)、27……後脚カバー(後脚接地部)、30……連結杆部、31……前垂下部、32……後垂下部、33……前端屈曲部、34……後端屈曲部(後側当接部)、35……支持部材、D……台車、F……椅子設置面(床面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11