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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】マスク製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20240515BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240515BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240515BHJP
   A61K 8/72 20060101ALI20240515BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20240515BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20240515BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
A61K8/02
A61Q19/00
A61K8/34
A61K8/72
A61K8/44
A61K8/67
A61K8/49
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020034247
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2020143053
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2019036811
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年11月14日に、ロート製薬株式会社内で販売代理店、販売店等の守秘義務を有しない者への提示可能な資料として電子書類で配布 平成30年11月22日に、スパイラルホールで雑誌編集者、ライター等の守秘義務を有しない者へ配布
(73)【特許権者】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 仁見
(72)【発明者】
【氏名】北岡 侑
(72)【発明者】
【氏名】松下 瑠美
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-133289(JP,A)
【文献】特開2017-200904(JP,A)
【文献】特開2010-116392(JP,A)
【文献】特開2016-088882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目付が40g/m~80g/mである不織布と、
前記不織布に含浸されたマスク組成物と、を備えるマスク製剤であって、
前記マスク組成物は、
(A) 0.5質量%以上のlogP値が0以下であり、分子量が1000以下である水溶性の有効成分と、
(B) 60質量%以上の水および低級アルコールの少なくともいずれかと、
(C) 質量%以上25質量%未満のポリオールと、
(D) 少なくとも1種の高分子化合物と、を含有し、
前記有効成分は、トラネキサム酸およびニコチン酸アミドの少なくともいずれかであり、
前記ポリオールは、ブチレングリコールおよび1,3-プロパンジオールの少なくともいずれかであり、
前記少なくとも1種の高分子化合物は、カルボキシビニルポリマーおよびアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体の少なくともいずれかであり、
前記有効成分がトラネキサム酸を含有する場合、前記マスク組成物中のトラネキサム酸の含有率は1~5質量%であり、
前記有効成分がニコチン酸アミドを含有する場合、前記マスク組成物中のニコチン酸アミドの含有率は3~7質量%であり、
前記マスク組成物の粘度が3000mPa・s以上である、マスク製剤。
【請求項2】
前記マスク組成物の粘度が3000~30000mPa・sである、請求項1に記載のマスク製剤。
【請求項3】
前記マスク組成物の化粧料のLab表色系におけるL値が50~100である、請求項1または2のいずれか1項に記載のマスク製剤。
【請求項4】
目付が40g/m~80g/mである不織布と、
マスク組成物と、を備えるマスク製剤キットであって、
前記マスク組成物は、
(A) 0.5質量%以上のlogP値が0以下及び分子量1000以下である水溶性
の有効成分と、
(B) 60質量%以上の水および低級アルコールの少なくともいずれかと、
(C) 質量%以上25質量%未満のポリオールと、
(D) 少なくとも1種の高分子化合物と、を含有し、
前記有効成分は、トラネキサム酸およびニコチン酸アミドの少なくともいずれかであり、
前記ポリオールは、ブチレングリコールおよび1,3-プロパンジオールの少なくともいずれかであり、
前記少なくとも1種の高分子化合物は、カルボキシビニルポリマーおよびアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体の少なくともいずれかであり、
前記有効成分がトラネキサム酸を含有する場合、前記マスク組成物中のトラネキサム酸の含有率は1~5質量%であり、
前記有効成分がニコチン酸アミドを含有する場合、前記マスク組成物中のニコチン酸アミドの含有率は3~7質量%であり、
前記マスク組成物の粘度が3000mPa・s以上である、マスク製剤キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化粧品市場では、主として美容目的でマスク製剤が販売されており、主な成分としてヒアルロン酸やセラミド、コラーゲンなど保湿作用等を奏するものが配合されている。消費者の様々のニーズに対応すべく、各社マスクの使用感の研究には余念がなく、例えば、特許文献1(特開2008-50305号公報)、特許文献2(特開2011-84539号公報)などに開示されている。
【0003】
一方、トラネキサム酸やニコチン酸アミド、アスコルビン酸グルコシド、3-O-エチルアスコルビン酸などは、美白効果を有する成分として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-50305号公報
【文献】特開2011-84539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、みずみずしい使用感が得られ、かつ、肌への密着性に優れたマスク製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔1〕 目付が40g/m~80g/mである不織布と、
前記不織布に含浸されたマスク組成物と、を備えるマスク製剤であって、
前記マスク組成物は、
(A) 0.5質量%以上のlogP値が0以下であり、分子量が1000以下である水溶性の有効成分と、
(B) 60質量%以上の水および低級アルコールの少なくともいずれかと、
(C) 1質量%以上30質量%未満のポリオールと、
(D) 少なくとも1種の高分子化合物と、を含有し、
前記マスク組成物の粘度が3000mPa・s以上である、マスク製剤。
【0007】
〔2〕 前記有効成分は、トラネキサム酸およびその塩、アスコルビン酸グルコシド、3-O-エチルアスコルビン酸、並びに、ニコチン酸アミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分である、〔1〕に記載のマスク製剤。
【0008】
〔3〕 前記マスク組成物中のトラネキサム酸の含有率が0.5~10質量%である、〔1〕または〔2〕に記載のマスク製剤。
【0009】
〔4〕 前記マスク組成物中のニコチン酸アミドの含有率が0.5~10質量%である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のマスク製剤。
【0010】
〔5〕 前記マスク組成物の粘度が3000~30000mPa・sである、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のマスク製剤。
【0011】
〔6〕 前記マスク組成物の化粧料のLab表色系におけるL値が50~100である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のマスク製剤。
【0012】
〔7〕 目付が40g/m~80g/mである不織布と、
マスク組成物と、を備えるマスク製剤キットであって、
前記マスク組成物は、
(A) 0.5質量%以上のlogP値が0以下及び分子量1000以下である水溶性の有効成分と、
(B) 60質量%以上の水および低級アルコールの少なくともいずれかと、
(C) 1質量%以上30質量%未満のポリオールと、
(D) 少なくとも1種の高分子化合物と、を含有し、
前記マスク組成物の粘度が3000mPa・s以上である、マスク製剤キット。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、みずみずしい使用感が得られ、かつ、肌への密着性に優れたマスク製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<マスク製剤>
本発明のマスク製剤は、不織布と、該不織布に含浸されたトラネキサム酸を含有するマスク組成物と、を備える。
【0015】
〔不織布〕
本実施形態のマスク製剤に用いられる不織布は、目付が40g/m~80g/mである。この場合、不織布の含浸性が良く、よれが少ない。
【0016】
不織布を構成する繊維の材質としては、レーヨン、コットンリンター、コットンの少なくともいずれかを含むことが好ましい。不織布は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、パルプ、麻、アクリル、ナイロン、シルク、ポリアミド、ポリウレタンなどを含んでいてもよい。
【0017】
なお、不織布がPETを含む場合、特に限定はされないが、不織布中のPETの含有率は、好ましくは60質量%未満であり、より好ましくは50質量%以下である。また、不織布がコットンまたはコットンリンターを含む場合、不織布中のコットンまたはコットンリンターの総量の含有量率は、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上である。
【0018】
〔マスク組成物〕
本実施形態のマスク製剤に用いられる(上記の不織布に含浸される)マスク組成物は、少なくとも以下の(A)~(D)の成分を含有する。
【0019】
(A) 有効成分
有効成分のlogP値は0以下であり、分子量が1000以下である。なお、logP値とは、物質の親水性又は疎水性を表す指標であって、Chemical Review vol71(6), 525(1971)などで定義されているように、オクタノール相および水相間の物質(生理活性成分)の分配係数の常用対数値である。尚、logP値は、計算用ソフトウェア(例えば、Cambridgesoft社製の「CS Chem3D ver.9.0」(商品名))を用いることにより、算出することができる。
【0020】
有効成分は、好ましくは、トラネキサム酸およびその塩、アスコルビン酸グルコシド、3-O-エチルアスコルビン酸、並びに、ニコチン酸アミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分である。なお、これらの成分は美白成分としても知られている。トラネキサム酸の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;亜鉛塩;鉄塩;アンモニウム塩;アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチンなどの塩基性アミノ酸との塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミンとの塩などが挙げられる。トラネキサム酸の塩としては、中でも、ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩、アルギニン塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
【0021】
マスク組成物中の有効成分は単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。組成物中の(A)成分の含有量は、組成物の用途や水溶性成分(A)の機能等に応じて選択できるが、組成物の全量に対して、例えば、その含有率は、0.5質量%~10.0質量%であり、好ましくは1.0質量%~9.0質量%であり、より好ましくは2.0量%~7.0質量%である。
【0022】
(A)成分の割合は、(B)成分1質量部に対して、例えば、0.005~0.2質量部、好ましくは0.008~0.15質量部、さらに好ましくは0.01~0.14質量部程度であってもよい。
【0023】
(A)成分の割合は、(C)成分1質量部に対して、例えば、0.01~10質量部、好ましくは0.03~5質量部、さらに好ましくは0.04~2.0質量部程度であってもよい。
【0024】
組成物が、(B)成分及び(C)成分を含有する場合、(A)成分の割合は、(B)成分及び(C)成分の総量1質量部に対して、例えば、0.001~0.20質量部、好ましくは0.005~0.15質量部、さらに好ましくは0.01~0.12質量部程度であってもよい。
【0025】
logP値が0以下及び分子量1000以下である水溶性の有効成分を用いる場合、一定以上の粘度を加えたマスクとすることで、マスク製剤の使用後の肌の軋みが抑制される。なお、一定以上の粘度を加えたマスクにlogP値が0以下及び分子量1000以下である水溶性の有効成分を配合することにより、マスク製剤の密着感や浸透感も向上する。また、保液性の向上効果や防腐力の向上効果も得られる。
【0026】
なお、マスク製剤に配合する美容成分や配合量によっては、肌の軋みを生じることがあり、マスクの密着性の悪さや使用時の乾燥感、浸透感の悪さが軋み感につながる場合があることが新たにわかった。
【0027】
本発明者らの研究によると、60質量%以上の水および低級アルコールの少なくともいずれかと、1質量%以上30質量%未満のポリオールと、少なくとも1種の高分子化合物を含み、組成物の粘度が3000mPa・s以上の構成のジュレ状の組成物においては、目付が40g/m~80g/mである不織布に含浸させたところ、これまでにないみずみずしい使用感が得られ、かつ、肌への密着性に優れたマスク製剤となることが分かった。
【0028】
さらに驚くべきことに、上記構成に加え、logP値が0以下であり、分子量が1000以下である水溶性の有効成分を配合すると、従来のマスクに比べ、保液性や防腐力の向上が見られることが分かった。
【0029】
有効成分がトラネキサム酸である場合、マスク組成物中のトラネキサム酸の含有率は、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以上3質量%以下がさらに好ましい。もっとも好ましいのは2質量%以上2.5質量%以下である。この範囲において、上記の効果がより確実に発揮され、美白効果も十分に発揮される。
【0030】
有効成分がニコチン酸アミドである場合、マスク組成物中のニコチン酸アミドの含有率は、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1質量%以上8質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上7質量%以下がさらに好ましい。もっとも好ましいのは5質量%以上5.5質量%以下である。この範囲において、上記の効果がより確実に発揮され、美白効果も十分に発揮される。また、美白用途に加えて抗シワ効果も期待でき、エイジングケア効果も十分に発揮されうる。
【0031】
(B) 水、低級アルコール
マスク組成物は、水および低級アルコールの少なくともいずれかを含む。なお、マスク組成物は少なくとも50質量%以上の水を含むことが好ましい。マスク組成物中の水と低級アルコールの合計の含有率は60質量%以上である。マスク組成物中の水と低級アルコールの合計の含有率の上限は制限はされないが、98質量%以下、95質量%以下、93質量%以下、90質量%以下であってよい。(B)成分の割合は、(A)成分1質量部に対して、例えば、1~100質量部、好ましくは5~80質量部、さらに好ましくは8~50質量部程度であってもよい。
【0032】
低級アルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロパノール、などが挙げられる。
【0033】
(C) ポリオール(多価アルコール)
本実施形態に用いられるマスク組成物は、ポリオールを含有する。ポリオールは、好ましくは、ブチレングリコール、プロピレングリコール、1,3プロパンジオール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ソルビトールおよびジグリセリンからなる群から選択される少なくとも1種のポリオールである。
マスク組成物中のポリオールの合計の含有率は、1質量%以上30質量%未満であり、好ましくは2質量%以上28質量%未満であり、より好ましくは5質量%以上25質量%未満である。(C)成分の割合は、(A)成分1質量部に対して、例えば、0.1~15質量部、好ましくは0.2~14質量部、さらに好ましくは0.5~13質量部程度であってもよい。
【0034】
(D) 高分子化合物
マスク組成物は、さらに、少なくとも1種の高分子化合物を含む。
高分子化合物としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタアクリル酸アルキル共重合体、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸/メタクリル酸アンモニウム/ジメチルアクリルアミド)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマー、ポリアクリル酸及びその塩、ポリアクリルアミド、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、ポリアクリレートクロスポリマー-6、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリルアミド/アクリル酸アンモニウム)コポリマー、アクリレーツクロスポリマー、アクリレーツコポリマー、PEG-240/HDIコポリマービスデシルテトラデセス-20エーテル、ステアレス-100/PEG-136/HDIコポリマー、ヒアルロン酸およびその塩、ジェランガム、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、セルロース系高分子化合物(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど)、デンプン系高分子(例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプンなど)アラビアゴム、カラヤガム、トラガカントガム、ガラクタン、キャロブガム、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、アルギン酸系高分子(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステルなど)、キサンタンガム、寒天、アルギン酸、ムコ多糖類(例えば、ヘパリン類似物質、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリノイド、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩(ナトリウム塩など)など)、デンプン、デキストラン、サクシノグルカン、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、キチン及びその誘導体、キトサン及びその誘導体、カラギーナン、シロキクラゲ多糖体などが挙げられ、好ましくはカルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタアクリル酸アルキル共重合体、ヒアルロン酸及びその塩、ジェランガム、シロキクラゲ多糖体である。
【0035】
(粘度)
マスク組成物の粘度は、3000mPa・s以上であり、好ましくは3000~50000mPa・sであり、より好ましくは3300~40000mPa・sであり、さらに好ましくは3500~30000mPa・sである。ここで、マスク組成物の粘度は、VISCOMETER TV-10(東機産業株式会社製)を用いて、測定条件を、ロータがM4、回転数が12rpm、回転時間が60秒とした際に測定される値である。
【0036】
本実施形態のマスク組成物は、上記(B)~(D)および粘度の要件を満たすことにより、みずみずしいジュレの使用感が得られ、マスク製剤(ジュレマスク)を提供することができる(例えば、特許文献1~3参照)。
【0037】
(L値)
マスク組成物の化粧料のLab表色系(Hunter Lab system)におけるL値は、好ましくは50~100であり、より好ましくは60~100、さらに好ましくは70~100、さらに好ましくは80~100、最も好ましくは90~100である。
【0038】
化粧料のLab表色系におけるL値は、精製水の透明度を100とし、全く光の透過がない場合を0としたときの透明度を表す値である。即ち、L値は100に近いほど透明度が高いことを意味する。L値は、例えば、試験液をガラスセル(CM-A99、厚さ20mm)に入れ、分光測色計CM-5(コニカミノルタ株式会社製)等を用いて測定することができる。本実施形態のマスク組成物は、L値が50以上の透明または半透明の組成物である。これにより、見た目にもみずみずしい印象を与え、使用者の心理にも訴えることができるという利点がある。
【0039】
(pH)
マスク組成物のpHは、好ましくは3.0~9.0であり、より好ましくは3.5~8.0であり、さらに好ましくは4.0~7.5である。上記範囲であれば、有効成分(例えば、トラネキサム酸、ニコチン酸アミド)などが製剤中で安定に存在し易く、また、皮膚への刺激などを避けることができる。
【0040】
(他の成分)
マスク組成物は、上記の成分以外に酸またはその塩を含有してもよい。酸またはその塩としては、例えば、乳酸;乳酸ナトリウム;クエン酸;クエン酸ナトリウム;リンゴ酸;リンゴ酸ナトリウム;コハク酸;コハク酸ナトリウム;酒石酸;酒石酸ナトリウム;グルコン酸;グルコン酸ナトリウム等の有機酸、リン酸;塩酸;硫酸等の無機酸を用いることができる。これらの酸をpH調整剤として用いてもよい。また、トリエタノールアミン;ジイソプロパノールアミン;トリイソプロパノールアミン;アルギニン等の有機塩基、水酸化カリウム;水酸化ナトリウム等の無機塩基をpH調整剤として用いることもできる。
【0041】
マスク組成物は、さらに、医薬外用剤、医薬部外品、化粧品等に用いられる薬学的または生理学的に許容される有効成分を含むことができる。このような有効成分としては、例えば、保湿成分、抗炎症成分、抗菌成分、ビタミン類、ペプチド又はその誘導体、アミノ酸又はその誘導体、細胞賦活化成分、老化防止成分、血行促進成分、角質軟化成分、美白成分、収斂成分などが挙げられる。
本発明では、このような有効成分を含んでいても、前記(A)~(D)成分の機能を有効に発揮しうる。
なお、有効成分は、(A)~(D)成分に該当する成分であってもよく、該当しない成分であってもよい。
【0042】
保湿成分としては、例えば、グリセリン、プロパンジオール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、トレハロース、イノシトール、ソルビトールのような多価アルコール;コラーゲン、エラスチン、ケラチン、キチン、キトサン、フコイダン、ヒアルロン酸類のような高分子化合物;グリシン、アスパラギン酸、アルギニンのようなアミノ酸;乳酸ナトリウム、尿素、ピロリドンカルボン酸ナトリウムのような天然保湿因子;セラミド、コレステロール、リン脂質のような脂質;カミツレエキス、ハマメリスエキス、チャエキス、レモンエキス、ツボクサエキス、アーティチョークエキス、レモンエキス、グレープフルーツエキスのような植物抽出エキスなどが挙げられる。
【0043】
抗炎症成分としては、植物(例えば、コンフリー)に由来する成分、酸化亜鉛、塩酸ピリドキシン、酢酸トコフェロール、サリチル酸又はその誘導体、ε-アミノカプロン酸などが挙げられる。
【0044】
抗菌成分としては、クロルヘキシジン、サリチル酸、塩化ベンザルコニウム、アクリノール、エタノール、塩化ベンゼトニウム、クレゾール、グルコン酸及びその誘導体、ポピドンヨード、ヨウ化カリウム、ヨウ素、イソプロピルメチルフェノール、トリクロカルバン、トリクロサン、感光素101号、感光素201号、パラベン、フェノキシエタノール、1,2-ペンタンジオール、塩酸アルキルジアミノグリシン等が挙げられる。
【0045】
ビタミン類としては、dl-α-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール、コハク酸dl-α-トコフェロール、コハク酸dl-α-トコフェロールカルシウム等のビタミンE類;リボフラビン、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド、リボフラビン酪酸エステル、リボフラビンテトラ酪酸エステル、リボフラビン5’-リン酸エステルナトリウム、リボフラビンテトラニコチン酸エステル等のビタミンB2類;ニコチン酸dl-α-トコフェロール、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸メチル、ニコチン酸β-ブトキシエチル、ニコチン酸1-(4-メチルフェニル)エチル等のニコチン酸類;アスコルビゲン-A、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、ジパルミチン酸L-アスコルビルなどのビタミンC類;メチルヘスペリジン、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロールなどのビタミンD類;フィロキノン、ファルノキノン等のビタミンK類、γ-オリザノール、ジベンゾイルチアミン、ジベンゾイルチアミン塩酸塩;チアミン塩酸塩、チアミンセチル塩酸塩、チアミンチオシアン酸塩、チアミンラウリル塩酸塩、チアミン硝酸塩、チアミンモノリン酸塩、チアミンリジン塩、チアミントリリン酸塩、チアミンモノリン酸エステルリン酸塩、チアミンモノリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル塩酸塩、チアミントリリン酸エステル、チアミントリリン酸エステルモノリン酸塩等のビタミンB1類;塩酸ピリドキシン、酢酸ピリドキシン、塩酸ピリドキサール、5’-リン酸ピリドキサール、塩酸ピリドキサミン等のビタミンB6類;シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、デオキシアデノシルコバラミン等のビタミンB12類;葉酸、プテロイルグルタミン酸等の葉酸類;ニコチン酸、ニコチン酸アミドなどのニコチン酸類;パントテン酸、パントテン酸カルシウム、パントテニルアルコール(パンテノール)、D-パンテサイン、D-パンテチン、補酵素A、パントテニルエチルエーテル等のパントテン酸類;ビオチン、ビオチシン等のビオチン類;アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、デヒドロアスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム等のアスコルビン酸誘導体であるビタミンC類;カルニチン、フェルラ酸、α-リポ酸、オロット酸等のビタミン様作用因子などが挙げられる。
【0046】
ペプチド又はその誘導体としては、ケラチン分解ペプチド、加水分解ケラチン、コラーゲン、魚由来コラーゲン、アテロコラーゲン、ゼラチン、エラスチン、エラスチン分解ペプチド、コラーゲン分解ペプチド、加水分解コラーゲン、塩化ヒドロキシプロピルアンモニウム加水分解コラーゲン、エラスチン分解ペプチド、コンキオリン分解ペプチド、加水分解コンキオリン、シルク蛋白分解ペプチド、加水分解シルク、ラウロイル加水分解シルクナトリウム、大豆蛋白分解ペプチド、加水分解大豆蛋白、小麦蛋白、小麦蛋白分解ペプチド、加水分解小麦蛋白、カゼイン分解ペプチド、アシル化ペプチド(パルミトイルオリゴペプチド、パルミトイルペンタペプチド、パルミトイルテトラペプチド等)などが挙げられる。
【0047】
アミノ酸又はその誘導体としては、ベタイン(トリメチルグリシン)、プロリン、ヒドロキシプロリン、アルギニン、リジン、セリン、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、β-アラニン、スレオニン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、ヒスチジン、タウリン、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸、カルニチン、カルノシン、クレアチン等が挙げられる。
【0048】
細胞賦活化成分としては、γ-アミノ酪酸、ε-アミノプロン酸などのアミノ酸類;レチノール、チアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、パントテン酸類などのビタミン類;グリコール酸、乳酸などのα-ヒドロキシ酸類;タンニン、フラボノイド、サポニン、アラントイン、感光素301号などが挙げられる。
【0049】
老化防止成分としては、パンガミン酸、カイネチン、ウルソール酸、ウコンエキス、スフィンゴシン誘導体、ケイ素、ケイ酸、N-メチル-L-セリン、メバロノラクトン等が挙げられる。
【0050】
血行促進作用成分としては、植物(例えば、オタネニンジン、アシタバ、アルニカ、イチョウ、ウイキョウ、エンメイソウ、オランダカシ、カミツレ、ローマカミツレ、カロット、ゲンチアナ、ゴボウ、コメ、サンザシ、シイタケ、セイヨウサンザシ、セイヨウネズ、センキュウ、センブリ、タイム、チョウジ、チンピ、トウキ、トウニン、トウヒ、ニンジン、ニンニク、ブッチャーブルーム、ブドウ、ボタン、マロニエ、メリッサ、ユズ、ヨクイニン、ローズマリー、ローズヒップ、モモ、アンズ、クルミ、トウモロコシ)に由来する成分;グルコシルヘスペリジンなどが挙げられる。
【0051】
角質軟化成分としては、例えば、サリチル酸、グリコール酸、フルーツ酸、フィチン酸、イオウなどが挙げられる。
【0052】
美白成分としては、例えば、トコフェロールなどが挙げられる。
【0053】
抗シワ成分としては、レチノール、レチナール、レチノイン酸、およびその誘導体またはそれらの塩、ハルパゴフィタム根エキス、アスコルビン酸およびその誘導体またはそれらの塩、ヒアルロン酸およびその塩、コラーゲン、加水分解コラーゲン、エラスチン、加水分解コラーゲン、加水分解大豆タンパク、コメ発酵液、プラセンタ、ユズセラミド、プロテオグリカン、オウゴンエキス、ビルベリー葉エキス、アーティチョークエキスなどが挙げられる。
【0054】
収斂成分としては、例えば、パラフェノールスルホン酸亜鉛、酸化亜鉛、メントール、エタノール、ユキノシタエキス、ローズマリーエキス、ハマメリスエキスなどが挙げられる。
【0055】
なお、有効成分は単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0056】
また、マスク組成物は、医薬外用剤、医薬部外品、化粧品等に用いられる薬学的または生理学的に許容される添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤、増粘剤、pH調整剤、緩衝剤、等張化剤、増粘剤又は粘稠化剤、油分、安定化剤、刺激軽減剤、着色剤、香料、キレート剤、溶解補助剤等を含んでいてもよい。
【0057】
本発明では、このような添加剤を含んでいても、前記(A)~(D)成分の機能を有効に発揮しうる。
【0058】
なお、添加剤は、(A)~(D)成分に該当する成分であってもよく、該当しない成分であってもよい。
【0059】
界面活性剤としては、例えば、非イオン界面活性剤などが挙げられる。具体的な界面活性剤(非イオン界面活性剤)としては、例えば、オレイン酸ポリグリセリル-2、ペンタオレイン酸ポリグリセリル-10、ラウリン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-10、イソステアリン酸ポリグリセリル-10、オレイン酸ポリグリセリル-10、ジステアリン酸ポリグリセリル-10、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10、トリステアリン酸ポリグリセリル-10、トリオレイン酸ポリグリセリル-10、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10、ペンタヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-10、ペンタイソステアリン酸ポリグリセリル-10、ペンタオレイン酸ポリグリセリル-10、デカオレイン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-2、イソステアリン酸ポリグリセリル-2、ミリスチン酸ポリグリセリル-6、ラウリン酸ポリグリセリル-6、ステアリン酸ポリグリセリル-6、トリステアリン酸ポリグリセリル-6、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-6、オレイン酸ポリグリセリル-4、ステアリン酸ポリグリセリル-6等のポリグリセリン脂肪酸エステル;PEG-5水添ヒマシ油、PEG-10水添ヒマシ油、PEG-20水添ヒマシ油、PEG-40水添ヒマシ油、PEG-50水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油、PEG-100水添ヒマシ油等のPEG[ポリエチレングリコール又はポリオキシエチレン(POE)]水添ヒマシ油(POE硬化ヒマシ油);POEヒマシ油3、POEヒマシ油4、POEヒマシ油6、POEヒマシ油7、POEヒマシ油10、POEヒマシ油13.5、POEヒマシ油17、POEヒマシ油20、POEヒマシ油25、POEヒマシ油30、POEヒマシ油35、POEヒマシ油50等のPOEヒマシ油;セスキオレイン酸ソルビタン、ラウリン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル;モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、トリオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート85)等のポリソルベート(POEソルビタン脂肪酸エステル);POEPOPグリコール(196E.O.)(67P.O.)(又はポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、以下同様の表現において同じ、ポロキサマー407)、POEPOPグリコール(20E.O.)(20P.O.)、POEPOPグリコール(42E.O.)(67P.O.)(ポロキサマー403)、POEPOPグリコール(54E.O.)(39P.O.)(ポロキサマー235)、POEPOPグリコール(124E.O.)(39P.O.)、POEPOPグリコール(160E.O.)(30P.O.)、POEPOPグリコール(200E.O.)(70P.O.)、POEPOPグリコール(30E.O.)(150P.O.)(ポロキサマー188)等のPOE・POPグリコール;モノステアリン酸ポリエチレングリコール(2E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(4E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(9E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(10E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(23E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(25E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(32E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40E.O.、ステアリン酸ポリオキシル40)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(45E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(55E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(75E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(140E.O.)等のモノステアリン酸ポリエチレングリコール;POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル類;POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE-POPアルキルエーテル類;POE(10)ノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類等が挙げられる。なお、上記例示した化合物において、POEはポリオキシエチレン、POPはポリオキシプロピレン、及び括弧内の数字は付加モル数を示す。
【0060】
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ソルビン酸、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、エリソルビン酸、L-システイン塩酸塩などが挙げられる。
【0061】
防腐剤(保存剤)としては、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ベンジル、パラオキシ安息香酸メチル、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビン酸及びその塩、グルコン酸クロルヘキシジン、アルカンジオール、グリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0062】
増粘剤としては、例えば、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、ポリエチレングリコール、ベントナイト、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマーなどが挙げられる。
【0063】
pH調整剤としては、例えば、無機酸(塩酸、硫酸など)、有機酸(乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウムなど)、無機塩基(水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなど)、有機塩基(トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンなど)などが挙げられる。
【0064】
緩衝剤としては、例えば、ホウ酸系緩衝剤、リン酸系緩衝剤、炭酸系緩衝剤、クエン酸系緩衝剤、酢酸系緩衝剤等が挙げられる。
【0065】
等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、グリセリン、プロピレングリコールなどが挙げられる。
【0066】
増粘剤又は粘稠化剤としては、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、セルロース系高分子化合物(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど)、アラビアゴム、カラヤガム、キサンタンガム、寒天、アルギン酸、α-シクロデキストリン、デキストリン、デキストラン、ムコ多糖類(例えば、ヘパリン類似物質、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリノイド、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩(ナトリウム塩など)など)、デンプン、キチン及びその誘導体、キトサン及びその誘導体、カラギーナン、ソルビトール、ポリビニル系高分子化合物(ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマーなど)、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、及びカリウム塩など)、ポリアクリル酸のアミン塩(モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩など)、カゼイン、ゼラチン、コラーゲン、ペクチン、エラスチン、セラミド、流動パラフィン、グリセリン、ポリエチレングリコール、マクロゴール、ポリエチレンイミンアルギン酸塩(ナトリウム塩など)、アルギン酸エステル(プロピレングリコールエステルなど)、トラガント末、並びにトリイソプロパノールアミンなどが挙げられる。
【0067】
油分としては、炭化水素油(例えば、流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、スクワレン、α-オレフィンのオリゴマー)、油脂{例えば、植物油[例えば、大豆油、菜種油、コーン油、ゴマ油、亜麻仁油、紅花油、ひまわり油、綿実油、ナッツ油(マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、ピーナッツ油、アーモンド油、クルミ油等)、種子油(ブドウ種子油、カボチャ種子油等)、レモン油、椿油、茶実油、エゴマ油、ボラージ油、オリーブ油、米油、米糠油、小麦胚芽油、ヤシ油、パーム油、パームオレイン、パーム核油等]、動物油(例えば、魚油、肝油、鯨油等)、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)等}、エステル油{例えば、アジピン酸エステル(例えば、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジ2-エチルへキシル、アジピン酸ジブチル)、イソオクタン酸エステル[例えば、トリイソオクタン酸グリセリン(トリイソオクタン酸グリセリド)]、イソノナン酸エステル(例えば、イソノナン酸イソノニル)、ミリスチン酸エステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピル)、イソステアリン酸エステル(例えば、イソステアリン酸バチル)、セバシン酸エステル(例えば、セバシン酸ジエチル)等}、シリコーン油、脂肪酸(例えば、イソステアリン酸等)、高級アルコールなどが挙げられる。
【0068】
安定化剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ピロ亜硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0069】
刺激低減剤としては、例えば、甘草エキス、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0070】
着色料としては、例えば、法定色素ハンドブック(日本化粧品工業連合会編(2004)等)に記載された色素などが挙げられる。
【0071】
香料としては、例えば、ラベンダー油、ローズマリー油、クラリセージ油、タイム油、ベルガモット油、ユーカリ油等のハーブ系精油、ペパーミント油、スペアミント油、ハッカ油等のミント系精油、オレンジ油、レモン油、グレープフルーツ油等の柑橘系精油のような各種精油、調合香料等が挙げられる。
【0072】
キレート剤としては、EDTA・2ナトリウム塩、EDTA・カルシウム・2ナトリウム塩などが挙げられる。
【0073】
なお、添加剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0074】
マスク組成物の形態は、特に限定されないが、例えば、ゾル状、ゲル状などである。なお、マスク組成物は、例えば、日本薬局方総則に従い、またはこれに準拠して、各成分を混合することにより製造できる。
【0075】
マスク製剤は、特に限定されずヒトの皮膚などに適用することができるが、好適には全顔用として使用される。
【0076】
<マスク製剤キット>
本実施形態のマスク製剤キットは、不織布と、マスク組成物と、を備える。不織布およびマスク組成物は、上記と同様であるため重複する説明は繰り返さない。マスク製剤キットは、マスク組成物を不織布に含浸させた後に上記のマスク製剤と同様に使用することができる。また、マスク製剤キットは、複数枚のマスク製剤をひとまとめにしてなるマルチパックでもよく、1枚ずつ個包装されたマスク製剤でもよい。
【実施例
【0077】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
<試料1~8>
表1に示される組成を有する各マスク組成物(試料1~8)を常法に従って調製した。なお、表1の「適量」とは、マスク組成物のpHを表1に示す値に調整するために必要な量である。
【0079】
なお、試料1~8のマスク組成物の粘度を、VISCOMETER TV-10(東機産業株式会社製)によって測定した。粘度の測定条件は、ロータがM4、回転数が12rpm、回転時間が60秒とした。なお、試料5、8については上記条件では測定することができなかったが、水と同程度(1mPa・s前後、大きくとも10mPa・s以下)と推定される。
【0080】
また、試料1~8の各マスク組成物について、化粧料のLab表色系におけるL値はガラスセル(CM-A99、厚さ20mm)に入れ、分光測色計CM-5(コニカミノルタ株式会社製)を用いて測定した。
【0081】
<試料1~8の評価試験>
上記の試料1~8(マスク組成物)、または、それらを含むマスク製剤について、以下の評価試験(官能試験、保液性試験、防腐力試験)を行った。
【0082】
〔官能試験〕
不織布(SE603、ベンリーゼ(登録商標)60目付)を2cm×2cmの大きさにカットし、当該不織布(0.024g)の8倍重量(0.192g)のマスク組成物(試料1~8の各々)を含浸させて、各マスク製剤を作製した。それらについて使用感(密着感、浸透感、刺激、軋みのなさ)を、3人の被験者により1~5点で評価した。なお、点数が高い程、使用感(密着感、浸透感、刺激、軋みのなさ)が高いことを示す。評価結果の平均値を表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
表1に示されるように、従来のマスク(試料8を用いたマスク製剤)にトラネキサム酸を配合した場合(試料5、6)では、軋みが増加した(軋みのなさが低下した)。しかし、これをトラネキサム酸を含有し、粘度を上げたジュレマスク(試料1~4)にすることで軋みが抑制された(「軋みのなさ」が向上した)。なお、トラネキサム酸含有従来マスク(試料5、6)をトラネキサム酸を含有し、粘度を上げたジュレマスク(試料1~4)にすることにより、密着感や浸透感も向上した。
【0085】
〔保液性試験〕
不織布(SE603、ベンリーゼ60目付)を5cm×5cmの大きさにカットし、不織布(0.15g)の8倍重量(1.2g)のマスク組成物(試料1~8の各々)を含浸させて、各マスク製剤を作製した。各マスク製剤を70℃の恒温槽に静置させ、10分経過後のマスク製剤中に残存するマスク組成物の質量を測定し、初期のマスク組成物の質量に対する10分後のマスク組成物の質量の比率(保液率)を算出した。試料8を用いたマスク製剤(従来マスク)の保液率を1としたときの他の製剤の保液率の比率を表2の保液性の欄に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
表2に示されるように、マスクのみ(試料8)よりもジュレマスク(試料7)の方が保液性は高いが、粘度向上マスクにトラネキサム酸を配合するとさらに保液性が向上することが分かる(試料1、2)。一方、マスクのみ(試料8)にトラネキサム酸を配合しても保液性は変わらず(試料5)、粘度を3000mPa・s未満程度の範囲で少し上げると保液性はむしろ低下する(試料6)。このことから、トラネキサム酸により保液性が向上する効果は、高粘度(例えば、3000mPa・s以上)のジュレマスクに特有の効果であると考えられる。
【0088】
〔防腐力試験〕
試料1,2,4,5,6および8のマスク組成物と、試料1,7および8のマスク組成物とについて、直接接種法により防腐力試験を行った。
【0089】
具体的には、各マスク組成物に菌液を約10CFU/mLになるように接種し、菌液の摂取から24時間後に各マスク組成物を希釈し、カンテン平板表面塗沫法により生菌数を測定した。生菌数測定は、17局「4.05微生物限度試験法 カンテン平板表面塗沫法」に準ずる。菌液中の試験菌としては、Staphylococcus aureus(ATCC 6538)およびEscherichia coli(ATCC 8739)の2種を用いた。生菌数の測定結果を表3および表4に示す。尚、接種直後の生菌数は、表3および表4に示すとおりである。
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
表3に示されるように、従来マスク(試料8)にトラネキサム酸を配合した場合(試料5,6)には、防腐力の有意な変化は見られなかった。これに対して、表4に示されるように、ジュレマスク(試料7)にトラネキサム酸を配合した場合(試料1)には、大幅に防腐力が向上した。なお、表3においても、トラネキサム酸含有ジュレマスク(試料1,2,4)にした場合、トラネキサム酸含有従来マスク、従来マスクに比べて大幅に防腐力が向上した。防腐力が格段に向上したことで、本発明のマスク製剤は、単回使用を想定した個包装に加えて、マスクを複数枚数をひとまとめにしたマルチパックとして適用しても、一定期間防腐力を維持でき、良好な品質のマスク製剤の提供が可能である。
【0093】
<試料11~17>
表5に示される組成を有する各マスク組成物(試料11~17)を常法に従って調製した。なお、表5の「適量」とは、マスク組成物のpHを調整するために必要な量である。
【0094】
なお、試料11~17のマスク組成物の粘度を、VISCOMETER TV-10(東機産業株式会社製)によって測定した。粘度の測定条件は、ロータがM4、回転数が12rpm、回転時間が60秒とした。なお、試料15,17については上記条件では測定することができなかったが、水と同程度(1mPa・s前後、大きくとも10mPa・s以下)と推定される。
【0095】
【表5】
【0096】
<試料11~17の評価試験>
上記の試料11~17(マスク組成物)、または、それらを含むマスク製剤について、以下の評価試験(保液性試験、防腐力試験)を行った。
【0097】
〔保液性試験〕
不織布(SE603、ベンリーゼ60目付)を5cm×5cmの大きさにカットし、不織布(0.15g)の8倍重量(1.2g)のマスク組成物(試料11~17の各々)を含浸させて、各マスク製剤を作製した。各マスク製剤を70℃の恒温槽に静置させ、10分経過後のマスク製剤中に残存するマスク組成物の質量を測定し、初期のマスク組成物の質量に対する10分後のマスク組成物の質量の比率(保液率)を算出した。試料17を用いたマスク製剤(従来マスク)の保液率を1としたときの他の製剤の保液率の比率を表6の保液性の欄に示す。
【0098】
【表6】
【0099】
【表7】
【0100】
表6および表7に示されるように、マスクのみ(試料17)よりもジュレマスクにニコチン酸アミドを配合するとさらに保液性が向上することが分かる(試料11,13)。また、ニコチン酸アミドを配合したマスク(試料15)よりも、さらにジュレマスクとする方が保液性が向上した(試料12)。
【0101】
〔防腐力試験〕
試料14~17のマスク組成物について、直接接種法により防腐力試験を行った。
【0102】
具体的には、各マスク組成物に菌液を約10CFU/mLになるように接種し、菌液の摂取から24時間後に各マスク組成物を希釈し、カンテン平板表面塗沫法により生菌数を測定した。生菌数測定は、17局「4.05微生物限度試験法 カンテン平板表面塗沫法」に準ずる。菌液中の試験菌としては、Staphylococcus aureus(ATCC 6538)、Escherichia coli(ATCC 8739)およびCandida albicans(ATCC 10231)の3種を用いた。生菌数の測定結果を表7に示す。尚、接種直後の生菌数は、表7に示すとおりである。
【0103】
【表8】
【0104】
【表9】
【0105】
【表10】
【0106】
表8~表10に示されるように、従来マスク(試料17)、ジュレマスク(試料16)にニコチン酸アミドを配合した場合(試料11~14)には、大幅に防腐力が向上した。防腐力が格段に向上したことで、本発明のマスク製剤は、単回使用を想定した個包装に加えて、マスクを複数枚数をひとまとめにしたマルチパックとして適用しても、一定期間防腐力を維持でき、良好な品質のマスク製剤の提供が可能である。
【0107】
<不織布の特性試験>
表11に示される素材からなる数種の不織布について、以下の特性試験を行った。尚、表11の「素材」欄中の数値は、素材中の各材料の含有率(質量%)を示す。
【0108】
具体的には、各不織布を2cm×2cmの大きさにカットし、不織布の8倍重量のマスク組成物(試料1)を含浸させてマスク製剤を得た。得られた各マスク製剤について、目視で観察することにより、含浸性、よれ、及び、密着感を1~5点で評価した。なお、点数が高い程、含浸性、よれ、及び、密着感が高いことを示す。評価結果を表11に示す。
【0109】
【表11】
【0110】
表11に示されるように、ベンリーゼ(登録商標)での比較や他素材の結果から、目付が40~80g/mの不織布を用いた場合に、含浸性が良く、よれが少ないマスク製剤が得られると考えられる。なお、ベンリーゼは、コットンリンターを原料とするキュプラ長繊維不織布(旭化成株式会社製)である。
【0111】
〔処方例〕
以下の表12~表20に、本発明のマスク製剤に用いられるマスク組成物の処方例を示す。なお、表中の各成分の数値は、組成物中の配合率(単位:質量%)を示す。
【0112】
【表12】
【0113】
【表13】
【0114】
【表14】
【0115】
【表15】
【0116】
【表16】
【0117】
【表17】
【0118】
【表18】
【0119】
【表19】
【0120】
【表20】
【0121】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。