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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】高所作業車の安全装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20240515BHJP
   B66F 9/06 20060101ALI20240515BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
B66F9/24 F
B66F9/06 B
B66F11/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020036156
(22)【出願日】2020-03-03
(65)【公開番号】P2021138480
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】森山 亮
(72)【発明者】
【氏名】狩野 翔
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102017209695(DE,A1)
【文献】特開2015-093640(JP,A)
【文献】特開2001-151497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵輪を備えるとともに前方及び後方へ走行可能な走行体と、
前記走行体に昇降可能に設けられた昇降装置と、
前記昇降装置により移動可能であるとともに作業者が搭乗可能な作業台と、
前記作業台に設けられ、前記作業台に搭乗した作業者により操作される操舵操作装置と、
前記操舵操作装置の操作に応じて前記操舵輪の操舵作動を行わせる操舵アクチュエータと、を備えた高所作業車の安全装置であって、
前記操舵輪を回転自在に支持し、前記操舵アクチュエータの作動に応じて前記操舵輪とともに転舵されるステアリングブラケットと、
前記ステアリングブラケットに設けられ、前記操舵輪の進行方向の前方において前記操舵輪のタイヤ幅方向における中心線上の路面を含む検知領域を有し、前記検知領域内の路面状態を検知する路面状態検知装置と、
を備えることを特徴とする高所作業車の安全装置。
【請求項2】
前記路面状態検知装置の検知領域は、前記操舵輪の進行方向の前方及び後方の双方において前記操舵輪のタイヤ幅方向における中心線上の路面を含むことを特徴とする請求項1に記載の高所作業車の安全装置。
【請求項3】
前記路面状態検知装置によって検知された路面状態に基づいて作業者に警報を発する警報装置を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の高所作業車の安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブームの先端部に設けられた作業台上から走行操作を行うことが可能に構成された高所作業車の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車の一例として、車輪又はクローラ装置を有して走行可能な走行体と、その走行体上に水平旋回可能に設けられた旋回体と、その旋回体に起伏および伸縮可能に設けられたブームと、そのブームの先端部に旋回可能に支持された作業台とを備えた自走式の高所作業車が知られている。このような高所作業車には、作業台に操作装置が設けられており、その操作装置を操作することにより、旋回体の旋回作動、ブームの起伏作動等および作業台の旋回(首振り)作動を行わせるとともに、走行体を走行させることも可能に構成されている。
【0003】
この種の高所作業車の中には、特許文献1に記載された高所作業車のように、クローラ装置によって走行可能な車体の前方及び後方に赤外線センサを設けて地面に赤外線を照射し、その反射波に基づいて車体の進行方向にある段差の大きさを検知するものがある。そして、検知された段差の大きさと、車体に対する作業台の現在位置とに応じて、検知された段差上を走行することができる走行速度(安全速度)を算出し、現在の走行速度が安全速度を上回っていた場合は、安全速度未満となるように減速制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-151497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車輪によって走行する高所作業車では、車体の進行方向を右方又は左方へ変更する場合、操舵輪の舵角を変位させるが、その際、操舵輪の向きと車体の向きとが乖離する場合がある。このような場合、特許文献1に記載されている高所作業車ように、車体に固定されたセンサでは、高所作業車が進もうとしている方向にある地面の凹凸や障害物の有無などの路面状態が検知しにくくなる虞があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、高所作業車の進行方向の路面状態を的確に検知することができる高所作業車の安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る高所作業車の安全装置は、操舵輪を備えるとともに前方及び後方へ走行可能な走行体と、前記走行体に昇降可能に設けられた昇降装置(例えば、実施形態における旋回体20及びブーム30)と、前記昇降装置により移動可能であるとともに作業者が搭乗可能な作業台と、前記作業台に設けられ、前記作業台に搭乗した作業者により操作される操舵操作装置(例えば、実施形態における操舵レバー72)と、前記操舵操作装置の操作に応じて前記操舵輪の操舵作動を行わせる操舵アクチュエータ(例えば、実施形態における操舵シリンダ66及びコントローラ50)と、を備えた高所作業車の安全装置であって、前記操舵輪を回転自在に支持し、前記操舵アクチュエータの作動に応じて前記操舵輪とともに転舵されるステアリングブラケット(例えば、実施形態におけるステアリングブラケット61R,61L)と、前記ステアリングブラケットに設けられ、前記操舵輪の進行方向の前方において前記操舵輪のタイヤ幅方向における中心線上の路面を含む検知領域(例えば、実施形態における検知可能領域DT)を有し、前記検知領域内の路面状態を検知する路面状態検知装置(例えば、実施形態における右障壁検知センサ91R及び左障壁検知センサ91L)と、を備える。
【0008】
なお、上記構成の高所作業車の安全装置において、前記路面状態検知装置の検知領域は、前記操舵輪の進行方向の前方及び後方の双方において前記操舵輪のタイヤ幅方向における中心線上の路面を含むのが好ましい。
【0009】
また、上記構成の高所作業車の安全装置において、前記路面状態検知装置によって検知された路面状態に基づいて作業者に警報を発する警報装置(例えば、実施形態における警報装置76)を備えるのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る高所作業車の安全装置によれば、路面状態検知装置の検知領域が、操舵輪の進行方向の前方において操舵輪のタイヤ幅方向における中心線上の路面を含んでおり、作業台に設けられた操舵操作装置が作業者によって操作されると、操舵アクチュエータが作動して操舵輪とともにステアリングブラケットが転舵され、これに従って路面状態検知装置の検知領域の向きも変位する。このため、操舵輪の舵角が変位したとしても、操舵輪の進行方向の前方における路面状況を的確に検知することができる。
【0011】
また、上記の構成の高所作業車の安全装置において、好ましくは、路面状態検知装置の検知領域は、操舵輪の進行方向の前方及び後方の双方において前記操舵輪のタイヤ幅方向における中心線上の路面を含む。これにより、走行体が走行する際に、操舵輪の進行方向の前後方向における路面状態を検知することができる。
【0012】
また、上記いずれかの構成の高所作業車の安全装置において、前記路面状態検知装置によって検知された路面状態に基づいて作業者に警報を発する警報装置を備えるのが好ましい。これにより、操舵輪の進行方向に地面の段差や障害物などの障壁がある場合に、作業者に注意を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る高所作業車の外観を示す図であり、(a)は高所作業車の側面図、(b)は高所作業車の平面図である。
図2】上記高所作業車の作動制御構成を示すブロック図である。
図3】上記高所作業車に設けられた障壁検知センサの検知領域を示す側面図である。
図4】上記高所作業車に設けられた障壁検知センサの検知領域を示す平面図である。
図5】上記高所作業車に設けられた障壁検知センサの検知領域を示す図であり、(a)は正面図、(b)は背面図である。
図6】上記障壁検知センサの検知領域が操舵輪の舵角の変位に追従していることを説明する平面図である。
図7】上記高所作業車の前方障壁検知センサの取付位置について他の実施形態を示す図であり、(a)は走行体の平面図、(b)は高所作業車の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本発明に係る高所作業車の一例として、図1に自走式の高所作業車1を示している。高所作業車1は、走行可能に構成された走行体10と、走行体10の上部に設けられ、水平方向に旋回可能な旋回体20と、旋回体20の上部に設けられ、起伏可能なブーム30と、ブーム30の先端部に設けられた作業台40とを備えて構成される。
【0015】
走行体10は、走行体フレーム11に回転自在に設けられた左右一対の操舵輪12(左
操舵輪12L及び右操舵輪12R)と、左右一対の駆動輪13(左駆動輪13L及び右駆動輪13R)を有している。なお、本実施形態では図1(a)に示すように、走行体10は、図中、左方向への移動を前進とし、図中、右方向への移動を後退としている。また、走行体10が前進する方向を前方といい、後退する方向を後方という。左操舵輪12L及び右操舵輪12Rの操舵作動(舵角の変位作動)は、ステアリング装置60によって行われるように構成されている。ステアリング装置60は、走行体フレーム11にキングピン62によって枢結され、対応する操舵輪12を回転自在に支持するステアリングブラケット61と、キングピン62を軸としてステアリングブラケット61を転舵させる力(延いては操舵輪12を操舵作動させる力)を伝達するためのナックルアーム63とを有している。
【0016】
ここで、ステアリングブラケット61、キングピン62及びナックルアーム63は、左操舵輪12L及び右操舵輪12Rに各々対応して設けられており、左操舵輪12L用のステアリングブラケット61、キングピン62及びナックルアーム63には、各名称の冒頭に「左」の文字を付すとともに各符号の末尾に「L」を付し、右操舵輪12R用のステアリングブラケット61、キングピン62及びナックルアーム63には、各名称の冒頭に「右」の文字を付すとともに各符号の末尾に「R」を付して表記する。なお、図1(b)においては、左ナックルアーム63Lが、後述する操舵シリンダ66及び操舵アーム67に隠れた状態になっている。
【0017】
左ナックルアーム63Lと右ナックルアーム63Rとは、タイロッド64によって連結されている。具体的には、タイロッド64の一方端が左連結ピン65Lによって左ナックルアーム63Lに回動自在に固定され、タイロッド64の他方端が右連結ピン65Rによって右ナックルアーム63Rに回動自在に固定されている。このように、左右のナックルアームがタイロッド64によって連結していることにより、各々のステアリングブラケットが連動して転舵される(延いては操舵輪12の舵角が連動して変位する)ようになっている。
【0018】
さらに、左ステアリングブラケット61Lには、左右の操舵輪12の舵角を変位させる駆動源となる操舵シリンダ66と連結するための操舵アーム67が設けられており、操舵シリンダ66と操舵アーム67とがシリンダ連結ピン68によって連結される。これにより、操舵シリンダ66のロッドの伸縮に応じて、左キングピン62Lを軸に左ステアリングブラケット61Lが回動する。また、左ステアリングブラケット61Lの動きがタイロッド64を介して右ナックルアーム63Rに伝達され、左ステアリングブラケット61Lの動きに連動して右ステアリングブラケット61Rが右キングピン62Rを軸に回動する。図1(b)に示すステアリング装置60では、操舵シリンダ66のシリンダロッドが中立位置から伸長すると、作業台40から旋回体20の方向を見て、操舵輪12の舵角が中心線(図1(b)中、一点鎖線)に対して左方向に変位し、この状態で前進すると、走行体10の進行方向は右に曲がることになる。また、操舵シリンダ66のシリンダロッドが中立位置から収縮すると、作業台40から旋回体20の方向を見て、操舵輪12の舵角が中心線に対して右方向に変位し、この状態で前進すると、走行体10の進行方向は左に曲がることになる。
【0019】
加えて、左ステアリングブラケット61Lには、左操舵輪12Lの進行方向の路面状態を検知する左障壁検知センサ91Lが取り付けられている。また、右ステアリングブラケット61Rには、右操舵輪12Rの進行方向の路面状態を検知するための右障壁検知センサ91Rが取り付けられている。これら右障壁検知センサ91R及び左障壁検知センサ91Lについては後に詳しく説明する。
【0020】
走行体フレーム11の上部中央には旋回機構15が設けられ、旋回機構15によって、
旋回体20を図1(b)の矢印アで示す方向に旋回させるように構成されている。また、図1(a)及び(b)において、旋回体20の前方端部にはカウンタウエイトCWが取り付けられており、このカウンタウエイトCWには、高所作業車1の前方に存在する障壁を検知するための前方障壁検知センサ91Fが取り付けられている(詳しくは後述する。)。ここで、本実施形態における「障壁」には、地面の凹凸の他、立体的な構造物や移動物体なども含まれる。また以下では、右障壁検知センサ91R、左障壁検知センサ91L及び前方障壁検知センサ91Fをまとめて呼称する場合は、単に障壁検知センサ91という。本実施形態における障壁検知センサ91は、LiDAR(Light Detection and Ranging又はLaser Imaging Detection and Rangingの略称。)を採用している。
【0021】
旋回機構15は、走行体フレーム11に固定された外輪と、この外輪に係合し、旋回体20に固定された内輪と、旋回体20に設けられている各種アクチュエータ(後述する)に作動油を供給するためのロータリーセンタージョイント(図示略)とを有している。旋回体20の上部にはブーム30が設けられており、枢結ピン34を軸として図1(a)の矢印イで示す方向に回動自在(起伏自在)になっている。ブーム30は、旋回体20に枢結された基端ブーム31と、基端ブーム31に入れ子式に組み合わされた中間ブーム32と、先端ブーム33とを有し、これらブームを伸縮自在に構成されている。先端ブーム33の先端部には、枢結ピン33aにより垂直ポスト37が上下方向に揺動自在に設けられている。
【0022】
垂直ポスト37の上部には、枢結ピン37aを中心として、作業台40が図1(b)の矢印ウで示す方向に旋回自在(首振り自在)に設けられている。作業台40は、作業者Mが搭乗可能な略矩形状の作業床41と、その作業床41の周囲に立設された手摺り42とを有している。作業台40には、走行体10の走行制御やブーム30の作動制御等を行うための操作装置70が設けられている。
【0023】
次に、操作装置70の操作に基づいて、走行体10の走行制御や、旋回体20、ブーム30及び作業台40の作動制御を行う制御装置について、図2を参照して説明する。この制御装置は、走行体10、旋回体20、ブーム30及び作業台40を作動させる各種アクチュエータを制御するものであり、前述した作業台40に設けられている操作装置70と、上述した各種アクチュエータの駆動源として各種アクチュエータに作動油を供給する油圧ユニット80と、旋回体20に設けられ、操作装置70に設けられた各種操作レバーに対する操作に応じて油圧ユニット80から各種アクチュエータに供給する作動油を制御するコントローラ50とによって構成されている。
【0024】
高所作業車1が備えているアクチュエータには、走行体10を走行駆動するための走行駆動用アクチュエータと、旋回体20、ブーム30及び作業台40の動きを駆動するための上部駆動用アクチュエータとがある。本実施形態では、走行駆動用アクチュエータとして、走行体10を所定の速度範囲で前進又は後退させる走行アクチュエータと、操舵輪12の操舵作動をさせる操舵アクチュエータと、走行中の走行体10を制動する制動アクチュエータとを備えている。そして、図2に示す走行モータ16が走行アクチュエータに該当し、操舵シリンダ66が操舵アクチュエータに該当し、ブレーキシリンダ18が制動アクチュエータに該当する。また、上部駆動用アクチュエータとして、旋回モータ26、ブーム起伏シリンダ35、ブーム伸縮シリンダ36及び首振りモータ46を備えている。
【0025】
走行モータ16は、供給される作動油の油圧によって駆動されるモータ軸の回転を駆動輪13(図1参照)に伝達し、モータ軸を正転又は逆転することで、駆動輪13を正転又は逆転させ、これにより走行体10(図1参照)を前進又は後退させる。またモータ軸の回転速度を制御して、走行体10の走行速度を変化させる。ブレーキシリンダ18は、作動油の供給を受けていないときに、内蔵されたスプリングの力により走行モータ16のモ
ータ軸の回転を制動ロックし、駆動輪13の回転を制動するネガティブブレーキである。操舵シリンダ66は、シリンダロッドの先端が操舵アーム67(図1(b)参照)に連結されており、このシリンダロッドの伸縮によって操舵輪12を操舵作動させる。
【0026】
旋回モータ26は旋回体20に設けられ、そのモータ軸の回転を、走行体フレーム11に固定された外輪と係合する内輪に伝達し、旋回モータ26を正転又は逆転させることで、旋回体20を走行体10に対して時計回り又は反時計回りの方向(図1(b)矢印ア参照)に旋回させる。ブーム起伏シリンダ35は、旋回体20とブーム30の間に跨設され、シリンダロッドを伸縮させることで、枢結ピン34を軸として図1(a)矢印イの方向にブーム30を起伏させる。ブーム伸縮シリンダ36は、ブーム30内に設けられ、シリンダロッドを伸縮させることで、基端ブーム31に入れ子式に組み合わされた中間ブーム32及び先端ブーム33を基端ブーム31に対して伸縮させる。
【0027】
首振りモータ46は、作業台40に設けられ、供給される作動油の油圧によって駆動されるモータ軸の回転により、作業台40を垂直ポスト37に対して図1(b)の矢印ウの方向に旋回作動(首振り作動)を可能とする。先端ブーム33の先端部と垂直ポスト37との間には上側レベリングシリンダ(図示略)が跨設されている。この上側レベリングシリンダは、基端ブーム31と旋回体20との間に跨設される下側レベリングシリンダ(図示略)との間で油圧ホースによって閉回路が形成されており、下側レベリングシリンダの伸縮作動に応じて上側レベリングシリンダが伸縮作動されることにより、垂直ポスト37を先端ブーム33に対して上下揺動させてブーム30の起伏角度によらず常に作業台40の床面を水平な状態に保持するように構成されている。
【0028】
上述した各種アクチュエータを作動させる駆動源となる作動油を供給する油圧ユニット80は、旋回体20に設けられたエンジンEと、エンジンEによって駆動される油圧ポンプPと、作動油タンクTと、油圧ポンプPから各油圧アクチュエータに供給する作動油の供給方向および供給量を制御する制御バルブユニット85とを有している。制御バルブユニット85は、各油圧アクチュエータに対応して設けられた複数の制御バルブを有している。これら複数の制御バルブには、走行モータ16を駆動制御するための走行制御バルブV1と、ブレーキシリンダ18を制御するブレーキ制御バルブV2と、操舵シリンダ66を制御する操舵方向切換バルブV3と、旋回制御バルブV4と、起伏制御バルブV5と、伸縮制御バルブV6と、首振り制御バルブV7とがある。
【0029】
図2に示す制御装置を構成する操作装置70は、走行体10の発進停止、前進後退及び走行速度の切り替え等を行う走行操作レバー71と、走行体10の舵取り操作(操舵輪12の操舵操作)を行う操舵レバー72と、旋回体20の旋回操作を行う旋回操作レバー73と、ブーム30の起伏および伸縮操作を行うブーム操作レバー74と、作業台40の首振り操作(旋回操作)を行う首振り操作レバー75とを有している。これらの各操作レバーは、非操作状態のときは、レバーの向きが垂直姿勢となる中立位置に位置し、この中立位置を基準に各操作レバーに応じて定められた方向へ傾倒操作可能に構成されている。また、操作装置70には警報装置76が設けられており、コントローラ50から警報信号が出力されると、作業台40に搭乗している作業者Mに対して警報を発する。
【0030】
コントローラ50は、上述した各操作レバーに対して作業者が行う傾倒操作に応じて、制御バルブユニット85内の各制御バルブを制御する。以下、各操作レバーに対する傾倒操作に応じた各制御バルブの制御について説明する。まず、走行操作レバー71は中立位置から前後方向に傾倒操作可能であり、走行操作レバー71が前方向に傾倒操作されたときは、コントローラ50は、走行体10がレバーの傾倒角度に応じた速度で前進するように、走行制御バルブV1のスプール移動方向及びバルブ開度を制御して、走行モータ16へ供給する作動油の供給方向とその流量とを制御する。一方、走行操作レバー71が後方
向に傾倒操作されたときは、走行モータ16へ供給する作動油の供給方向が、走行操作レバー71が前方向に傾倒操作されたときとは逆方向になるように走行制御バルブV1のスプール移動方向及びバルブ開度を制御して、レバーの傾倒角度に応じた速度で走行体10が後退するように作動油の供給方向とその流量を制御する。
【0031】
また、走行操作レバー71が中立状態から前後いずれかの方向に傾倒操作されると、コントローラ50は、ブレーキ制御バルブV2をオープン状態にしてブレーキシリンダ18へ作動油を供給する。これにより、走行モータ16のモータ軸において、制動ロック状態が解除され、モータ軸が回転可能な状態となる。これに対して、走行操作レバー71が中立位置にあるとき、又は傾倒操作された状態から中立位置に復帰したときは、コントローラ50は、ブレーキ制御バルブV2をクローズ状態にしてブレーキシリンダ18への作動油の供給を停止させる。これにより、走行モータ16のモータ軸が制動ロック状態となり、駆動輪13の回転に制動をかける。
【0032】
操舵レバー72は、中立位置から左右方向に傾倒操作可能であり、コントローラ50は、レバーが左方向に傾倒操作された状態で走行体10が前進したときは左に曲がり、レバーが右方向に傾倒操作された状態で走行体10が前進したときは右に曲がるように、操舵輪12の舵角を変位させる。操舵輪12の舵角作動は、コントローラ50によって、操舵方向切換バルブV3のスプール移動方向及びバルブ開度を制御することで行われる。旋回操作レバー73は、中立位置から左右方向に傾倒操作可能に構成され、コントローラ50は、レバーが右方向に傾倒操作された場合、図1(b)において旋回体20が時計回りに回転し、レバーが左方向に傾倒操作された場合、図1(b)において旋回体20が反時計回りに回転するように、旋回制御バルブV4のスプール移動方向およびバルブ開度を制御して、旋回モータ26を駆動する。
【0033】
ブーム操作レバー74は、中立位置から前後及び左右方向に傾倒操作可能に構成されており、ブーム操作レバー74が前後方向に傾倒操作された場合、コントローラ50は、起伏制御バルブV5のスプール移動方向をレバーの傾倒方向に応じて切り換えるとともに、所定のバルブ開度に制御して、ブーム起伏シリンダ35駆動させてブーム30を起伏作動させる。これに対して、ブーム操作レバー74が左右方向に傾倒操作されたときは、コントローラ50は、伸縮制御バルブV6のスプール移動方向を操作レバーの傾倒方向に応じて切り換えるとともに、所定のバルブ開度に制御して、ブーム伸縮シリンダ36を駆動させてブーム30を伸縮作動させる。首振り操作レバー75は、中立位置から左右方向に傾倒操作可能に構成され、コントローラ50は、レバーが右方向に傾倒操作された場合、作業台40が、図1(b)の矢印ウの方向において反時計回りに、かつ、レバーの傾倒角度に応じた角度を向くまで、首振り制御バルブV7のスプール移動方向およびバルブ開度を制御する。また、首振り操作レバー75が左方向に傾倒操作された場合、コントローラ50は、作業台40が、図1(b)の矢印ウの方向において時計回りに、かつ、操作レバーの傾倒角度に応じた角度を向くまで、首振り制御バルブV7のスプール移動方向およびバルブ開度を制御する。
【0034】
また、コントローラ50は、障壁検知センサ91による障壁の検知結果に基づいて警報装置76へ警報信号を出力する。コントローラ50が警報信号を出力するか否かを判定する処理は、公知の判定処理を採用することができる。例えば、障壁検知センサ91によって検知された立体物や窪みの大きさ(高さ又は深さや幅等)が所定値を超えていた場合、又は障壁検知センサ91によって障害物が検知されたときの作業台40の位置などに応じて、警報装置76に対して警報信号を出力してもよい。
【0035】
また、走行操作レバー71が前方に傾倒操作された場合、コントローラ50は、右障壁検知センサ91R、左障壁検知センサ91L及び前方障壁検知センサ91Fの検知結果に
基づいて警報信号の出力制御を行い、走行操作レバー71が後方に傾倒操作された場合は、コントローラ50は、前方障壁検知センサ91Fの検知結果を考慮せず、右障壁検知センサ91R及び左障壁検知センサ91Lの検知結果に基づいて警報信号の出力制御を行ってもよい。
【0036】
次に、図3図6を参照して、障壁検知センサ91の取付位置、検知領域の形状及び範囲について説明する。ここで、図3図6において、図1(a)及び図1(b)に示した各部と同じ構成については同一の符号を付し、その詳しい説明を省略する。また、右障壁検知センサ91R及び左障壁検知センサ91Lの検知領域の形状等が同様であるため、以下では左障壁検知センサ91L及び右障壁検知センサ91Rの双方をまとめて、各障壁検知センサ91R,91Lと称して説明する。まず、図3に示すように、各障壁検知センサ91R,91Lの検知領域の形状は半径r1[m]の半円形(すなわち、視野角が180゜)であり、検知領域の中心点は、高所作業車1の前後方向において操舵輪12の回転軸の位置と一致している。したがって、各障壁検知センサ91R,91Lよって障壁を検知することができる検知可能領域DT(図3において薄いハッチングで示す領域。)は、操舵輪12よりも前方及び後方の双方に及ぶことになる。ただし、検知可能領域DTの一部は、操舵輪12及び駆動輪13によって遮られて死角となり、障壁を検出することができない検知不可領域ND(図3において濃いハッチングで示す領域。)となる。
【0037】
図4に示すように、各障壁検知センサ91R,91Lの検知領域(薄いハッチングで示す領域。)は、操舵輪12のタイヤ幅方向における中心線TC(以下、単に「中心線TC」という。)上に位置している。各障壁検知センサ91R,91Lは、図5(a)に示すように、棒状の左右の固定部材69R,69Lによって、各々、左右のステアリングブラケット61R,61L(図1(b)参照)に固定されている。また、各障壁検知センサ91R,91Lの取付位置の高さは、旋回体20の底面及び底面からの突起物に当たらない範囲内で、最も高くなる位置に定められている。加えて、操舵輪12の進路上における障壁を検知するため、検知可能領域DTが、操舵輪12のタイヤ幅を含む範囲となるように、各障壁検知センサ91R,91Lの本体は、対応するステアリングブラケット61の直上から操舵輪12の方向に傾けて固定部材69R,69Lに固定されている。このように、各障壁検知センサ91R,91Lを対応するステアリングブラケット61に取り付けることで、作業者が操舵レバー72で操舵操作を行ったことにより操舵輪12の舵角が変位すると、それに合わせて検知可能領域DTの向きも変位することになる。
【0038】
次に、図6を参照して、操舵輪12の軌跡と検知可能領域DTの向きとの位置関係について説明する。図6(a)は、高所作業車1がまっすぐ後退する場合の走行体10の平面図を示し、図6(b)は、右方向に曲がりつつ後退する場合の走行体10の平面図を示している。また、符号RMは走行体フレーム11において旋回機構15が設けられる位置を示している。
【0039】
作業者が、操舵レバー72を中立位置にしたまま、走行操作レバー71を後方向に傾倒操作すると、図6(a)に示すように高所作業車1はまっすぐ後退し、左操舵輪12Lの軌跡TL及び右操舵輪12Rの軌跡TR(破線で示す部分)は、直線を描く。このとき、左障壁検知センサ91L及び右障壁検知センサ91Rは、各々、軌跡TL及び軌跡TRを検知可能領域DT内に含んでいるため、各障壁検知センサによって操舵輪の進路上にある障壁を検知することができる。
【0040】
また、図6(b)に示すように、作業者が操舵レバー72を右方向に傾倒操作した状態で、走行操作レバー71を後方向に傾倒操作すると、左操舵輪12L及び右操舵輪12Rの舵角は左方向へ変位し、各操舵輪の軌跡TL及びTRは、右方向へ曲がる曲線を描く。このとき、各操舵輪の舵角とともに左右のステアリングブラケット61L及び61Rの角
度も変位するため、左障壁検知センサ91L及び右障壁検知センサ91Rの検知可能領域DT内に、操舵輪12の進路が含まれることになる。したがって、左障壁検知センサ91L及び右障壁検知センサ91Rは、高所作業車1の進行方向にある障壁を的確に検知することができる。
【0041】
次に、前方障壁検知センサ91Fは、図3に示すように、旋回体20のカウンタウエイトCWの上部かつ後端部において、検知可能領域DTが地面GNDを向くように下向きに取り付けられている。このとき、検知可能領域DTと地面GNDとの成す角度は垂直ではなく、高所作業車1の前方端よりも前方に傾くように、前方障壁検知センサ91Fが取り付けられている。また、図5(b)に示すように、前方障壁検知センサ91Fの検知領域の形状は半径r2[m]の半円形(すなわち、視野角が180゜)であり、検知領域の中心点は高所作業車1の車幅方向の中心線C上に位置している。このように前方障壁検知センサ91FをカウンタウエイトCWの高い位置に取り付けることで、高所作業車1の前方にある障壁を広範囲で検知することができる。また、作業台40が高所にいる状態で、作業台40に搭乗している作業者Mが高所作業車1を走行させる場合、旋回体20によって死角となる範囲内の障壁を検知し、作業者Mに対して警報を発することができる。
【0042】
なお、前方障壁検知センサ91Fは、カウンタウエイトCWに限らず、図7に示すように走行体フレーム11の前方に取り付けてもよい。ここで、図7(a)は走行体フレーム11の平面図を示し、図7(b)は高所作業車1の背面図を示している。これらの図に示すように、前方障壁検知センサ91Fは走行体フレーム11の前方端に取り付けられ、その検知可能領域が地面に及ぶように、やや下向きに取り付けられている。前方障壁検知センサ91Fを走行体フレーム11に取り付けた場合は、カウンタウエイトCWに取り付けた場合に比べ、障壁を検知することができる領域は狭くなるが、旋回体20の旋回に影響されることなく、常に走行体フレーム11の進行方向における障壁を検出することができる。
【0043】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば適宜改良可能である。例えば、本実施形態では、障壁検知センサ91としてLiDARを採用しているが、センサの種類はこれに限らず、赤外線センサや超音波センサなど、他の種類のセンサを用いてもよい。また、障壁検知センサ91の検知領域の形状は、本実施形態のように半円形に限らず、各種センサに応じた形状であってもよい。また、例えば、検知領域の視野角が180゜未満の扇形であった場合において、その検知範囲では図3に示したように操舵輪12の前後方向をカバーできないときは、前方(高所作業車1が後退する方向)または後方(高所作業車1が前進する方向)のいずれか一方(好ましくは前方)のみの障壁を検知するようにしてもよい。さらに、コントローラ50が警報装置76に対して警報信号を出力する際は、併せて走行制御バルブV1及びブレーキ制御バルブV2を制御して、高所作業車1の走行速度が特定の速度(例えば、特許文献1に記載されている「安全速度」)になるまで減速し、又は走行を停止するようにしてもよい。
【0044】
また、本実施形態では、走行体10の走行制御を行うための走行駆動用アクチュエータとして、走行モータ16、操舵シリンダ66及びブレーキシリンダ18のように、油圧を駆動源とするアクチュエータを用いているが、これに限らず、電動機や内燃機関などの各種アクチュエータを用いてもよい。また、本実施形態では、操舵レバー72により操舵操作するようにしていたが、操舵ダイヤルにより操舵操作を行うようにしてもよい。さらに、上述の実施形態では、起伏、伸縮及び旋回動可能な伸縮式のブームを備えた高所作業車を例示して説明したが、例えばシザースリンクによって作業台を垂直に昇降させる高所作業車や、屈伸式のブーム等を備える高所作業車であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 高所作業車
10 走行体
12 操舵輪
20 旋回体
30 ブーム
40 作業台
50 コントローラ(操舵アクチュエータ制御装置)
60 ステアリング装置(検知領域追従装置)
61L 左ステアリングブラケット
61R 右ステアリングブラケット
66 操舵シリンダ(操舵アクチュエータ)
69 取付部材
70 操作装置
72 操舵レバー(操舵操作装置)
76 警報装置
91L 左障壁検知センサ
91R 右障壁検知センサ
91F 前方障壁検知センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7