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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】ポリウレタン樹脂水性分散体
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20240515BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20240515BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20240515BHJP
   C09D 11/023 20140101ALI20240515BHJP
   C09D 11/102 20140101ALI20240515BHJP
【FI】
C08G18/00 C
C08G18/08 019
C08G18/40 009
C09D11/023
C09D11/102
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020069481
(22)【出願日】2020-04-08
(65)【公開番号】P2021165353
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中尾 文彦
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-081887(JP,A)
【文献】特表2015-531812(JP,A)
【文献】国際公開第2018/077624(WO,A1)
【文献】特開2021-075602(JP,A)
【文献】特開平05-148341(JP,A)
【文献】特開2011-140560(JP,A)
【文献】特開2012-201787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C09D 11/023
C09D 11/102
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させてなるポリウレタン樹脂(U)と水とを含有するポリウレタン樹脂水性分散体であって、前記ポリウレタン樹脂(U)がカルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基並びに側鎖にエチレンオキサイド単位を有するポリウレタン樹脂であり、前記ポリウレタン樹脂(U)中の側鎖のエチレンオキサイド単位の含有量が、(U)の重量を基準として2.5~10.5重量%であり、前記ポリウレタン樹脂(U)中のカルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基の構成単位の含有量が(U)の重量を基準として0.20~1.20重量%であり、前記ポリオール成分がポリエーテルジオール(C)及びポリカーボネートジオール(D)を含有するポリオール成分であり、ポリエーテルジオール(C)とポリカーボネートジオール(D)の重量比(C)/(D)が0.25~0.9であるポリウレタン樹脂水性分散体。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂(U)中の側鎖のエチレンオキサイド単位の含有量並びにカルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基の含有量から下記計算式(1)に従って求められる係数Xが8~12である請求項1に記載のポリウレタン樹脂水性分散体。
計算式(1):係数X=(側鎖のエチレンオキサイド単位の含有量(重量%))+5×(カルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基の含有量(重量%))
【請求項3】
前記ポリウレタン樹脂(U)中のウレタン基及びウレア基の(合計)含有量が3.0~5.0mol/kgである請求項1又は2に記載のポリウレタン樹脂水性分散体。
【請求項4】
前記ポリオール成分が側鎖にエチレンオキサイド単位を有するジオール(A)及びカルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基を有するジオール(B)を含有するポリオール成分である請求項1~3のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂水性分散体。
【請求項5】
前記ポリウレタン樹脂(U)中のポリエーテルジオール(C)の構成単位の合計重量割合が(U)の重量を基準として5~20重量%であり、ポリカーボネートジオール(D)の構成単位の合計重量割合が(U)の重量を基準として15~30重量%である請求項1に記載のポリウレタン樹脂水性分散体。
【請求項6】
前記ポリエーテルジオール(C)がポリテトラメチレンエーテルグリコールである請求項に記載のポリウレタン樹脂水性分散体。
【請求項7】
光散乱測定法によるポリウレタン樹脂(U)の体積平均粒子径が15~100nmである請求項1~のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂水性分散体。
【請求項8】
前記ポリウレタン樹脂水性分散体が印刷インク用である請求項1~のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂水性分散体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂水性分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は優れた柔軟性、耐薬品性及び機械強度を有することから、塗料、印刷インク及び接着剤等のバインダー樹脂として広く用いられている。また、近年では環境面の配慮から乾燥工程でのVOCが少ない、水分散型のポリウレタン樹脂のニーズが高まっており、水分散型のポリウレタン樹脂を印刷インクに添加することが検討されている。
特に、低吸収または非吸収の記録媒体用のインクジェットインクへの利用が、今後、期待されており、このような用途では、高いレベルの画像の発色性や堅牢性(擦過性、耐光性、耐オゾンガス性、耐水性など)が要求される。
【0003】
色材として顔料を含む顔料インクで印刷される印刷物は、記録媒体の表面上に顔料成分が局在化しやすく、発色性が高い。顔料は、インクが記録媒体に付着する過程や付着後に起こるビヒクル成分の蒸発や浸透により、記録媒体の表面にとどまる。しかし、顔料インクは、色材である顔料が記録媒体の表面上に存在しやすいため、インクの皮膜の密着性、耐擦性、などが特に重要である。顔料インクで記録されるこれら特性を向上するために、インクにウレタン樹脂を添加することが検討されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-81826号公報
【0005】
フィルム系の記録媒体として、PET、ナイロンなどの極性基を多く有する極性基材と、OPPなどの極性基が少ない低極性基材とがある。これらのどちらの基材に対しても、インクの皮膜が、密着性などの優れた特性が得られるインクという点で、未だ充分ではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、印刷インクとして非浸透性基材に印刷した場合に滲み、ビーディングおよび凝集による画像の変形が起こらず目的とする画像が得られ、乾燥皮膜がPET及びナイロン等の極性基材並びにOPP等の低極性基材のいずれに対しても優れた密着性を示し、印刷インクにして前処理した樹脂フィルム上に印刷した場合でも画像の変形が起こらず目的とする画像が得られるポリウレタン樹脂水性分散体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、本発明に到達した。即ち本発明は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させてなるポリウレタン樹脂(U)と水とを含有するポリウレタン樹脂水性分散体であって、前記ポリウレタン樹脂(U)がカルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基並びに側鎖にエチレンオキサイド単位を有するポリウレタン樹脂であり、前記ポリウレタン樹脂(U)中の側鎖のエチレンオキサイド単位の含有量が、(U)の重量を基準として2.5~10.5重量%であり、前記ポリウレタン樹脂(U)中のカルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基の構成単位の含有量が(U)の重量を基準として0.20~1.20重量%であるポリウレタン樹脂水性分散体である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体から得られる印刷インクは非浸透性基材に印刷した場合に滲み、ビーディングおよび凝集による画像の変形が起こらず目的とする画像が得られ、乾燥皮膜がPET及びナイロン等の極性基材並びにOPP等の低極性基材のいずれに対しても優れた密着性を示し、造膜助剤や保湿剤等の溶剤を含む印刷インクとして使用した場合でも優れたラミネート強度および耐ブロッキング性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させてなるポリウレタン樹脂(U)と水とを含有する。また、ポリウレタン樹脂(U)はカルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基並びに側鎖にエチレンオキサイド単位を有するポリウレタン樹脂である。
【0010】
本発明におけるポリオール成分は、ポリウレタン樹脂(U)の側鎖にエチレンオキサイド単位を導入する観点から、側鎖にエチレンオキサイド単位を有するジオール(A)を含有することが好ましい。(A)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0011】
側鎖にエチレンオキサイド単位を有するジオール(A)としては、例えば一般式(1)で表される構成単位が挙げられる。
【化1】

一般式(1)におけるRは水素原子、メチル基、エチル基又はイソプロピル基を表し、Rはメチル基、エチル基又はイソプロピル基を表す。nは1~50の整数である。
【0012】
側鎖にエチレンオキサイド単位を有するジオール(A)の市販品としては、例えば、TEGOMER D3403[数平均分子量(Mn)=1,200のポリオキシエチレングリコール、Evonik Industries AG社製]及びYmer N120[Mn=1,000のポリオキシエチレングリコール、パーストープ社製]等が挙げられる。
【0013】
上記エチレンオキサイド単位を有するジオール(A)のうち好ましくは、一般式(1)で表される構造単位を有するジオールであり、より好ましくは、一般式(1)のRがメチル基であり、Rがメチル基であり、nが15~25で表される構造単位を有するジオールある。
【0014】
ポリウレタン樹脂(U)中の側鎖にエチレンオキサイド単位を有するジオール(A)の構成単位の合計重量割合は、印刷時の画質、ポリウレタン樹脂水性散体の分散安定性および記録媒体との密着性の観点から、(U)の重量を基準として1~20重量%であることが好ましく、より好ましくは2~15重量%であり、さらに好ましくは2.5~13重量%である。
【0015】
本発明におけるポリオール成分は、ポリウレタン樹脂(U)にカルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基を導入する観点から、カルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基を有するジオール(B)を含有することが好ましい。(B)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0016】
カルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基を有するジオール(B)としては、カルボキシル基を1つ有するジオール(b1)、カルボキシル基を2つ以上有するジオール(b2)並び上記ジオールを後述の中和剤で中和した塩が挙げられる。
カルボキシル基を1つ有するジオール(b1)としては、例えば2,2’-ジメチロールプロピオン酸、2,2’-ジメチロールブタン酸、2,2’-ジメチロール酪酸、2,2’-ジメチロール吉草酸等が挙げられる。
カルボキシル基を2つ以上有するジオール(b2)としては、例えば酒石酸等が挙げられる。
【0017】
(b1)及び(b2)の中和剤としては、例えばアンモニア、炭素数1~20のアミン化合物及びアルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウム等)が挙げられる。
【0018】
炭素数1~20のアミン化合物としては、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン、モノエタノールアミン及び2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール等の1 級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン及びN-メチルジエタノールアミン等の2 級アミン並びにトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン及びトリエタノールアミン等の3級アミンが挙げられる。
【0019】
これらの内、生成するポリウレタン樹脂水性分散体の乾燥性及び得られる皮膜の耐水性の観点から好ましいものは、25℃における蒸気圧が低いアミン化合物であり、より好ましくはアンモニア、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチル、トリエチルアミン及びジメチルエチルアミンである。
【0020】
上記カルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基を有するジオール(B)のうち好ましくは、カルボキシル基を1つ有するジオール(b1)及び(b1)を中和剤で中和した塩であり、より好ましくは、2,2’-ジメチロールプロピオン酸、2,2’-ジメチロールブタン酸、2,2’-ジメチロールプロピオン酸を中和剤で中和した塩及び2,2’-ジメチロールブタン酸を中和剤で中和した塩である。
【0021】
ポリウレタン樹脂(U)中のカルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基を有するジオール(B)の構成単位の合計重量割合は、ポリウレタン樹脂水性分散体の分散安定性、画像の発色性および印刷時の画質の観点から、(U)の重量を基準として0.1~10重量%であることが好ましく、より好ましくは0.3~5.0重量%であり、さらに好ましくは0.5~4.0重量%である。
【0022】
本発明におけるポリオール成分は、OPPフィルムとPETフィルムへの密着性の観点から、ポリエーテルジオール(C)を含有することが好ましい。(C)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ポリエーテルジオール(C)としては、脂肪族ポリエーテルジオール及び芳香族環含有ポリエーテルジオールが挙げられる。
【0023】
脂肪族ポリエーテルジオールとしては、前記炭素数2~20の脂肪族多価アルコールへの炭素数2~12のAO付加物等が挙げられ、具体的にはポリオキシアルキレングリコール(ポリエチレングリコール等)、ポリオキシプロピレングリコール(ポリプロピレングリコール等)、ポリオキシエチレン/プロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0024】
脂肪族ポリエーテルジオールの市販品としては、PTMG1000[Mn=1,000のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、三菱化学(株)製]、PTMG2000[Mn=2,000のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、三菱化学(株)製]、PTMG3000[Mn=3,000のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、三菱化学(株)製]、PTGL2000[Mn=2,000の変性ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、保土谷化学工業(株)製]、PTGL3000[Mn=3,000の変性ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、保土谷化学工業(株)製]及びサンニックスPP-2000[Mn=2,000のポリオキシプロピレングリコール、三洋化成工業(株)製]等が挙げられる。
【0025】
芳香族ポリエーテルジオールとしては、例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド(以下、EOと略記)付加物(ビスフェノールAのEO2モル付加物、ビスフェノールAのEO4モル付加物、ビスフェノールAのEO6モル付加物、ビスフェノールAのEO8モル付加物、ビスフェノールAのEO10モル付加物及びビスフェノールAのEO20モル付加物等)及びビスフェノールAのプロピレンオキサイド(以下、POと略記)付加物(ビスフェノールAのPO2モル付加物、ビスフェノールAのPO3モル付加物及びビスフェノールAのPO5モル付加物等)等のビスフェノール骨格を有するジオール並びにレゾルシンのEO又はPO付加物等が挙げられる。
【0026】
上記ポリエーテルジオール(C)のうちOPPフィルムへの密着性と塗膜物性の観点から、好ましくは、脂肪族ポリエーテルジオールであり、より好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルグリコールである。
【0027】
ポリウレタン樹脂(U)中のポリエーテルジオール(C)の構成単位の合計重量割合は、OPPフィルムとの密着性および耐ブロッキング性の観点から、(U)の重量を基準として5~20重量%であることが好ましく、より好ましくは7~18重量%であり、さらに好ましくは10~15重量%である。
【0028】
本発明におけるポリオール成分は、OPPフィルムとPETフィルムへの密着性の観点から、ポリカーボネートジオール(D)を含有することが好ましい。(D)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0029】
ポリカーボネートジオール(D)としては、炭素数2~20の多価アルコールの1種又は2種以上と、低分子カーボネート化合物(例えば、アルキル基の炭素数1~6のジアルキルカーボネート、炭素数2~6のアルキレン基を有するアルキレンカーボネート及び炭素数6~9のアリール基を有するジアリールカーボネート)から、脱アルコール反応させながら縮合させることによって製造されるポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0030】
ポリカーボネートジオール(D)としては、例えばポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、3-メチル-5-ペンタン-カーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオール及びポリ(テトラメチレン/ヘキサメチレン)カーボネートジオール(1,4-ブタンジオールと1,6-ヘキサンジオールをジアルキルカーボネートと脱アルコール反応させながら縮合させて得られるジオール等)等が挙げられる。
【0031】
ポリカーボネートジオール(D)の市販品としては、ニッポラン980R[1,6-ヘキサンジオールを用いたMn=2,000のポリカーボネートジオール、日本ポリウレタン工業(株)製]、デュラノール T6002[1,6-ヘキサンジオールを用いたMn=2,000のポリカーボネートジオール、旭化成ケミカルズ(株)製]、ETERNACOLL UH-300[1,6-ヘキサンジオールを用いたMn=3,000のポリカーボネートジオール、宇部興産(株)製]、ETERNACOLL UH-200[1,6-ヘキサンジオールを用いたMn=2,000のポリカーボネートジオール、宇部興産(株)製]、ETERNACOLL UM-90(1/3)[1,4-シクロヘキサンジメタノール/1,6-ヘキサンジオール=1/3(モル比)を用いたMn=900のポリカーボネートジオール、宇部興産(株)製]、デュラノール G4672[1,4-ブタンジオール/1,6-ヘキサンジオール=70/30(モル比)を用いたMn=2,000のポリカーボネートジオール、旭化成ケミカルズ(株)製]、デュラノール T5652[1,5-ペンタンジオール/1,6-ヘキサンジオール=50/50(モル比)を用いたMn=2,000のポリカーボネートジオール、旭化成ケミカルズ(株)製]、T4672[1,4-ブタンジオール/1,6-ヘキサンジオールを用いたMn=2,000のポリカーボネートジオール、旭化成ケミカルズ(株)製]、クラレポリオール C-2090[3-メチル-1,5-ペンタンジオール/1,6-ヘキサンジオール=90/10(モル比)を用いたMn=2,000のポリカーボネートジオール、クラレ(株)製]、クラレポリオールC-3090[3-メチル-1,5-ペンタンジオール/1,6-ヘキサンジオールを用いたMn=3,000のポリカーボネートジオール、クラレ(株)製]、クラレポリオール C-2050[3-メチル-1,5-ペンタンジオール/1,6-ヘキサンジオール=50/50(モル比)を用いたMn=2,000のポリカーボネートジオール、クラレ(株)製]等が挙げられる。
【0032】
上記ポリカーボネートジオール(D)のうち、下記の炭素数2~20の多価アルコールとアルキル基の炭素数1~6のジアルキルカーボネートから、脱アルコール反応させながら縮合させることによって製造されるポリカーボネートジオールが好ましい。
【0033】
ポリウレタン樹脂(U)中のポリカーボネートジオール(D)の構成単位の合計重量割合は、PETフィルムとの密着性および耐ブロッキング性の観点から、(U)の重量を基準として15~30重量%であることが好ましく、より好ましくは7~18重量%であり、さらに好ましくは10~15重量%である。
さらにOPPフィルムとPETフィルムへの密着性の観点から、ポリエーテルジオール(C)とポリカーボネートジオール(D)の重量比(C)/(D)が0.25~0.9であることが好ましく、より好ましくは0.3~0.7であり、さらに好ましくは0.4~0.6である。
【0034】
本発明におけるポリオール成分は、上記(A)、(B)、(C)、(D)以外に低分子ポリオール、ポリエステルポリオール及びポリオレフィンポリオール等を含んでもよい。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0035】
低分子ポリオールとしては、炭素数2~20の多価アルコールが挙げられる。
炭素数2~20の多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン、2,2-ビス(4,4’-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、α-メチルグルコシド、ソルビトール、キシリット、マンニット、ジペンタエリスリトール、グルコース、フルクトース、ショ糖等の4~8価のアルコールが挙げられる。
【0036】
ポリエステルポリオールとしては、縮合型ポリエステルポリオール、ポリラクトンポリオール、ヒマシ油系ポリオール等が挙げられる。
【0037】
縮合型ポリエステルポリオールとしては、例えば、炭素数4~20の多価カルボン酸と炭素数2~20の多価アルコールとの脱水縮合により得られるポリエステルポリオール及び炭素数4~20の多価カルボン酸のエステル形成性誘導体と炭素数2~20の多価アルコールとの脱水縮合により得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0038】
2~20の多価アルコールとしては上記と同様のものが挙げられる。
炭素数4~20の多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としては、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フマル酸及びマレイン酸等)、脂環式ジカルボン酸(ダイマー酸等)、芳香族ジカルボン酸(フタル酸及びイソフタル酸、テレフタル酸等)、3価又はそれ以上のポリカルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等)、これらの無水物(無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸及び無水トリメリット酸等)、これらの酸ハロゲン化物(アジピン酸ジクロライド等)、これらの低分子量アルキルエステル(コハク酸ジメチル及びフタル酸ジメチル等)並びこれらの混合物が挙げられる。
【0039】
ポリラクトンポリオールとしては、前記炭素数2~20の多価アルコールへのラクトンの重付加物であり、ラクトンとしては、炭素数4~12のラクトン(例えばγ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン及びε-カプロラクトン)等が挙げられる。
ポリラクトンポリオールの具体例としては、例えばポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール及びポリカプロラクトントリオール等が挙げられる。
【0040】
ヒマシ油系ポリオールには、ヒマシ油及びポリオール又は炭素数2~12のアルキレンオキサイド(以下、AOと略記)で変性された変性ヒマシ油が含まれる。変性ヒマシ油はヒマシ油とポリオールとのエステル交換及び/又はAO付加により製造できる。ヒマシ油系ポリオールとしては、ヒマシ油、トリメチロールプロパン変性ヒマシ油、ペンタエリスリトール変性ヒマシ油及びヒマシ油のEO付加物(付加モル数4~30モル)等が挙げられる。
【0041】
炭素数2~12のAOとしては、EO、PO、1,2-、2,3-又は1,3-ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、α-オレフィンオキサイド、スチレンオキサイド及びエピハロヒドリン(エピクロルヒドリン等)等が挙げられる。
【0042】
ポリオレフィンポリオールとしてはポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水添ポリイソプレンポリオール、及び例えば特開2018-076428等に記載されるポリオレフィンを不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)で変性した酸変性ポリオレフィンとアミノアルコールを反応させて得ることができる水酸基変性ポリオレフィン等が挙げられる。
【0043】
ポリオレフィンポリオールの市販品としては、例えば、NISSO-PB G シリーズ[ポリブタジエンポリオール、日本曹達(株)製]、Poly bd シリーズ[ポリブタジエンポリオール、出光興産(株)製]、NISSO-PB GI シリーズ[水添ポリブタジエンポリオール、日本曹達(株)製]、ポリテールH[水添ポリブタジエンポリオール、三菱ケミカル(株)製]、Poly ip シリーズ[ポリイソプレンポリオール、出光興産(株)製]、EPOL シリーズ[水添ポリイソプレンポリオール、出光興産(株)製]等が挙げられる。
【0044】
ポリオール成分のうち低分子ポリオール以外の数平均分子量(Mn)は、ポリウレタン樹脂(U)の機械物性の観点から、好ましくは300以上、更に好ましくは300~10,000、特に好ましくは500~6,000である。尚、本発明におけるポリオールのMnはポリエチレングリコールを標準としてゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されるものである。但し、低分子ポリオールのMnは化学式からの計算値である。
【0045】
本発明におけるポリオール成分のMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、例えば以下の条件で測定することができる。
装置:「Waters Alliance 2695」[Waters社製]
カラム:「Guardcolumn Super H-L」(1本)、「TSKgel SuperH2000、TSKgel SuperH3000、TSKgel SuperH4000(いずれも東ソー株式会社製)を各1本連結したもの」
試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:10μl
流量:0.6ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリエチレングリコール
【0046】
本発明におけるポリイソシアネート成分としては、2個以上のイソシアネート基を有する炭素数8~26の芳香族ポリイソシアネート、炭素数4~22の脂肪族ポリイソシアネート、炭素数8~18の脂環式ポリイソシアネート、炭素数10~18の芳香脂肪族ポリイソシアネート及びこれらのポリイソシアネートの変性物等が挙げられる。ポリイソシアネート成分は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0047】
炭素数8~26の芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば1,3-又は1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート(以下、トリレンジイソシアネートをTDIと略記)、粗製TDI、4,4’-又は2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、ジフェニルメタンジイソシアネートをMDIと略記)、粗製MDI、ポリアリールポリイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート及びm-又はp-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートが挙げられる。
【0048】
炭素数4~22の脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えばエチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略記)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート及び2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエートが挙げられる。
【0049】
炭素数8~18の脂環式ポリイソシアネートとしては、例えばイソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略記)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、水添MDIと略記)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート及び2,5-又は2,6-ノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。
【0050】
炭素数10~18の芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えばm-又はp-キシリレンジイソシアネート及びα,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0051】
ポリイソシアネートの変性物としては、前記ポリイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロハネート基、ウレア基、ビウレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基又はオキサゾリドン基含有変性物等;遊離イソシアネート基含有量が8~33重量%、好ましくは10~30重量%、特に12~29重量%のもの)、例えば変性MDI(ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI及びトリヒドロカルビルホスフェート変性MDI等)、ウレタン変性TDI、ビウレット変性HDI、イソシアヌレート変性HDI及びイソシアヌレート変性IPDI等のポリイソシアネートの変性物が挙げられる。
【0052】
またポリウレタン樹脂(U)の側鎖にエチレンオキサイド単位を導入する観点から上記のイソシアネート成分の一部にエチレンオキサイド単位有するモノオール(例えば、ユニオックス M-1000:Mn=1,000のポリオキシエチレンモノオール、日油(株)製等)を反応させたイソシアネートを使用してもよい。
【0053】
ポリイソシアネート成分の内、ポリウレタン樹脂(U)の柔軟性及び密着性の観点から、好ましいのは炭素数8~18の脂環式ポリイソシアネートであり、更に好ましいのはIPDIである。
【0054】
上記ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させてポリウレタン樹脂(U)を得る際に分子量の制御を目的として鎖伸長剤及び反応停止剤を使用してもよい。
【0055】
鎖伸長剤としては、水、炭素数2~36の脂肪族ポリアミン[エチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジヘキシレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチエレンヘキサミン及びヘキサエチレンヘプタミン等のポリ(n=2~6)アルキレン(炭素数2~6)ポリ(n=3~7)アミン等]、炭素数6~20の脂環式ポリアミン(1,3-又は1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-又は2,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン及びイソホロンジアミン等)、炭素数6~20の芳香族ポリアミン(1,3-又は1,4-フェニレンジアミン、2,4-又は2,6-トリレンジアミン、4,4’-又は2,4’-メチレンビスアニリン等)、炭素数3~20の複素環式ポリアミン(2,4-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、ピペラジン及びN-アミノエチルピペラジン等)、ヒドラジン又はその誘導体(二塩基酸ジヒドラジド例えばアジピン酸ジヒドラジド等)及び炭素数2~20のアミノアルコール(例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール及びトリエタノールアミン)等が挙げられる。鎖伸長剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0056】
反応停止剤としては、炭素数1~20のモノアルコール(メタノール、エタノール、ブタノール、オクタノール、デカノール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール及びステアリルアルコール等)、炭素数1~20のモノアミン(モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン及びモノオクチルアミン等のモノ又はジアルキルアミン並びにモノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びジイソプロパノールアミン等のモノ又はジアルカノールアミン等)が挙げられる。反応停止剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0057】
本発明におけるポリウレタン樹脂(U)中の側鎖のエチレンオキサイド単位の含有量は、(U)の重量を基準として2.5~10.5重量%であり、前記ポリウレタン樹脂(U)中のカルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基の構成単位の含有量は(U)の重量を基準として0.20~1.20重量%である。
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体を印刷インクとして使用した場合、ポリウレタン樹脂の側鎖のエチレンオキサイド単位およびカルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基の構成単位を上記範囲に制御することによりの印刷時のインクの凝集および滲みを制御することができ画質の高い印刷物が得られる。
側鎖のエチレンオキサイド単位の含有量は(U)の重量を基準として好ましくは4.0~10.0重量%であり、より好ましくは3~6重量%である。また、カルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基の構成単位の含有量は(U)の重量を基準として好ましくは0.3~1.1重量%であり、より好ましくは0.5~1.0重量%である。
なお、本発明におけるポリウレタン樹脂(U)中の側鎖のエチレンオキサイド単位の含有量およびカルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基の構成単位の含有量は原料の仕込み組成から計算した。また、カルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基の構成単位の含有量はJIS K 0070:1992記載の方法(電位差滴定法)で測定される酸価からも算出できる。
【0058】
本発明におけるポリウレタン樹脂(U)中の側鎖のエチレンオキサイド単位の含有量並びにカルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基の含有量から下記計算式(1)に従って求められる係数Xが印刷時のインクの画質、凝集および滲みの観点から好ましくは8~12である。
計算式(1):係数X=(側鎖のエチレンオキサイド単位の含有量(重量%))+5×(カルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基の含有量(重量%))
【0059】
ポリウレタン樹脂中にカルボキシル基を導入する方法としては、例えばカルボキシル基を有するポリオール成分等の単量体を用いる方法が挙げられ、さらに単量体又はポリウレタン樹脂中のカルボキシル基を中和剤で中和することでカルボキシレートアニオン基を含有するポリウレタン樹脂が得られる。
【0060】
本発明におけるポリウレタン樹脂(U)中のウレタン基及びウレア基の(合計)含有量は、水性印刷インクの塗膜としての柔軟性、機械物性及び密着性の観点から、好ましくは3.0~5.0mol/kg、より好ましくは3.5~4.5mol/kgである。
なお、本発明におけるウレタン基及びウレア基の(合計)含有量は、原料の仕込み組成から算出した。また、必要により以下の分析方法により測定することもできる。
<ウレタン基及びウレア基の(合計)含有量の測定方法>
ポリウレタン樹脂のウレタン基及びウレア基含有量は、窒素分析計[ANTEK7000(アンテック社製)]によって定量される窒素原子含有量とH-NMRによって定量されるウレタン基とウレア基の比率から算出する。H-NMR測定については、「N
MRによるポリウレタン樹脂の構造研究:武田研究所報34(2)、224-323(1975)」に記載の方法で行う。即ちH-NMRを測定して、脂肪族を使用した場合、化学シフト6ppm付近のウレア基由来の水素の積分量と化学シフト7ppm付近のウレ
タン基由来の水素の積分量の比率からウレア基とウレタン基の重量比を測定し、当該重量比と上記の窒素原子含有量からウレタン基濃度及びウレア基濃度を算出する。芳香族イソシアネートを使用した場合、化学シフト8ppm付近のウレア基由来の水素の積分量と化
学シフト9ppm付近のウレタン基由来の水素の積分量の比率からウレア基とウレタン基の重量比を算出し、当該重量比と上記の窒素原子含量からウレタン基及びウレア基含量を算出する。
【0061】
本発明におけるポリウレタン樹脂(U)のMnは、(U)の機械物性、密着性及び耐擦過性の観点から、好ましくは1万~100万である。
【0062】
ポリウレタン樹脂(U)は、ポリウレタン樹脂水性分散体から得られる乾燥皮膜の耐水性の観点から、分散剤(H)を用いない自己乳化型の水性分散体とすることが好ましい。
【0063】
ポリウレタン樹脂(U)を水性媒体に分散させる場合の分散剤(H)としては、非イオン性界面活性剤(h1)、アニオン性界面活性剤(h2)、カチオン性界面活性剤(h3)、両性界面活性剤(h4)及びその他の乳化分散剤(h5)が挙げられる。(H)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0064】
(h1)としては、例えばAO付加型非イオン性界面活性剤及び多価アルコール型非イオン性界面活性剤が挙げられる。AO付加型としては、炭素数10~20の脂肪族アルコールのEO付加物、フェノールのEO付加物、ノニルフェノールのEO付加物、炭素数8~22のアルキルアミンのEO付加物及びポリオキシプロピレングリコールのEO付加物等が挙げられ、多価アルコール型としては、多価(3~8価又はそれ以上)アルコール(炭素数2~30)の脂肪酸(炭素数8~24)エステル(例えばグリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート及びソルビタンモノオレエート等)及びアルキル(炭素数4~24)ポリ(重合度1~10)グリコシド等が挙げられる。
【0065】
(h2)としては、例えば炭素数8~24の炭化水素基を有するエーテルカルボン酸又はその塩[ラウリルエーテル酢酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム等];炭素数8~24の炭化水素基を有する硫酸エステル又はエーテル硫酸エステル及びそれらの塩[ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ラウリル硫酸トリエタノールアミン及び(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム等];炭素数8~24の炭化水素基を有するスルホン酸塩[ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等];炭素数8~24の炭化水素基を1個又は2個有するスルホコハク酸塩;炭素数8~24の炭化水素基を有するリン酸エステル又はエーテルリン酸エステル及びそれらの塩[ラウリルリン酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム等];炭素数8~24の炭化水素基を有する脂肪酸塩[ラウリン酸ナトリウム及びラウリン酸トリエタノールアミン等];並びに炭素数8~24の炭化水素基を有するアシル化アミノ酸塩[ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸ナトリウム及びラウロイルメチル-β-アラニンナトリウム等
]が挙げられる。
【0066】
(h3)としては、例えば第4級アンモニウム塩型[塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム及びエチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等]並びにアミン塩型[ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩、ジラウリルアミン塩酸塩及びオレイルアミン乳酸塩等]が挙げられる。
【0067】
(h4)としては、例えばベタイン型両性界面活性剤[ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン及びラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタインヒドロキシプロピルリン酸ナトリウム等]並びにアミノ酸型両性界面活性剤[β-ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等]が挙げられる。
【0068】
(h5)としては、例えばポリビニルアルコール、デンプン及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体並びにポリアクリル酸ソーダ等のカルボキシル基含有(共)重合体及び米国特許第5906704号明細書に記載のウレタン基又はエステル基を有する乳化分散剤[例えばポリカプロラクトンポリオールとポリエーテルジオールをポリイソシアネートで連結させたもの]等が挙げられる。
【0069】
分散剤(H)は、ポリウレタン樹脂(U)のウレタン化反応後、(U)の水分散工程前、水分散工程中又は水分散後のいずれの時期に添加してもよいが、(U)の分散性及び水性分散体の安定性の観点から、水分散工程前又は水分散工程中に添加することが好ましい。
【0070】
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体を製造する方法としては、例えば、以下の[1]及び[2]の方法等が挙げられる。
【0071】
[1]ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、必要により鎖伸長剤及び反応停止剤を、有機溶剤(S)の存在下又は非存在下で一段又は多段で反応させてポリウレタン樹脂(U)を製造し、必要によりカルボキシル基を中和剤により塩として、水性媒体に分散させた後に、必要により有機溶剤(S)を留去する方法。
【0072】
[2]ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを、有機溶剤(S)の存在下又は非存在下で一段又は多段で反応させてイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(P)を製造し、次いで必要によりプレポリマー(P)中のカルボキシル基を中和剤により塩として水性媒体に分散させて、鎖伸長剤及び/又は反応停止剤とプレポリマー(P)中のイソシアネート基とを反応させた後に、必要により有機溶剤(S)を留去する方法。
【0073】
[1]及び[2]の方法の内、ポリウレタン樹脂(U)の分散安定性及び乾燥皮膜の機械強度の観点から好ましいのは[2]の方法である。
【0074】
[1]の方法におけるポリウレタン樹脂(U)及び[2]の方法におけるウレタンプレポリマー(P)を製造する際の反応温度は、副反応抑制の観点から、60~120℃が好ましく、更に好ましくは60~110℃であり、特に好ましくは60~100℃である。製造時間は、使用する設備により適宜選択することができるが、一般的に1分~100時間が好ましく、更に好ましくは3分~30時間であり、特に好ましくは5分~20時間である。
【0075】
有機溶剤(S)は、イソシアネート基と実質的に非反応性の溶剤から選ばれ、例えばケトン系溶剤(例えばアセトン及びメチルエチルケトン)、エステル系溶剤[例えば酢酸エチル、ニ塩基酸エステル(DBE)]、エーテル系溶剤(例えばテトラヒドロフラン)、アミド系溶剤(例えばN,N-ジメチルホルムアミド及びN-メチルピロリドン)及び芳香族炭化水素系溶剤(例えばトルエン)等が挙げられる。これらの有機溶媒(S)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
また、本発明における水性媒体とは、水又は水と有機溶媒(S)との混合物を意味する。
【0076】
有機溶剤(S)として好ましいのは、沸点が100℃未満の有機溶剤であり、例えばアセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。
沸点が100℃以上の有機溶剤を使用すると、水性媒体から有機溶剤のみを完全に除去することが困難になり、水性分散体中に残存し、乾燥時に有機溶剤が発生するため好ましくない。また、有機溶剤が皮膜中に残存しやすくなり、皮膜の機械物性が経時的に変化するため好ましくない。
【0077】
ポリウレタン樹脂水性分散体における有機溶媒(S)の含有量は、臭気、経時安定性、環境負荷及び安全性の観点からは、ポリウレタン樹脂水性分散体の重量に基づいて、1重量%以下であることが好ましく、更に好ましくは0.8重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。
【0078】
上記[1]及び[2]の方法におけるウレタン化反応では、反応を促進させるため、必要により公知のウレタン化触媒等を使用することができる。ウレタン化触媒の添加量は、ポリウレタン樹脂(U)又はプレポリマー(P)の重量に基づき、好ましくは0.001~3重量%、更に好ましくは0.005~2重量%、特に好ましくは0.01~1重量%
である。
【0079】
ウレタン化触媒としては、金属触媒[錫系触媒(トリメチルチンラウレート、トリメチルチンヒドロキサイド、ジメチルチンジラウレート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエート及びジブチルチンマレエート等)、鉛系触媒(オレイン酸鉛、2-エチルヘキサン酸鉛、ナフテン酸鉛及びオクテン酸鉛等)、コバルト系触媒(ナフテン酸コバルト等)、ビスマス系触媒{ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート等}及び水銀系触媒(フェニル水銀プロピオン酸塩等)等]、アミン触媒[トリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルヘキシレンジアミン、ジアザビシクロアルケン{1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン}等;ジアルキルアミノアルキルアミン{ジメチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノオクチルアミン及びジプロピルアミノプロピルアミン等]又は複素環式アミノアルキルアミン[2-(1-アジリジニル)エチルアミン及び4-(1-ピペリジニル)-2-ヘキシルアミン等]の炭酸塩又は有機酸塩(ギ酸塩等)等;N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、トリエチルアミン、ジエチルエタノールアミン及びジメチルエタノールアミン等]並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0080】
上記[1]の方法におけるポリウレタン樹脂(U)又はその有機溶剤溶液、上記[2]の方法におけるウレタンプレポリマー(P)又はその有機溶剤溶液を水中に分散する装置としては特に制限されないが、回転式分散混合装置、超音波式分散機又は混練機を用いることが好ましく、なかでも分散能力が特に優れる回転式分散混合装置が更に好ましい。
【0081】
回転式分散混合装置としては、例えばマックスブレンドやヘリカル翼等の一般的な攪拌羽を有する混合装置、TKホモミキサー[プライミクス(株)製]、クレアミックス[エムテクニック(株)製]、フィルミックス[プライミクス(株)製]、ウルトラターラックス[IKA(株)製]、エバラマイルダー[荏原製作所(株)製]、キャビトロン(ユーロテック社製)及びバイオミキサー[日本精機(株)製]等が例表される。
【0082】
ポリウレタン樹脂水性分散体における光散乱測定法によるポリウレタン樹脂(U)の体積平均粒子径(Dv)は、好ましくは15~100nm、更に好ましくは20~70nmである。(Dv)が15nm以上であるとポリウレタン樹脂水性分散体の粘度が適正でありハンドリング性が良好であり、100nm以下であると分散安定性が良好である。
【0083】
(U)の体積平均粒子径(Dv)は、(U)中の側鎖のエチレンオキサイド単位の含有量並びにカルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基の含有量、中和剤、分散剤量並びに分散工程で使用する分散機の種類及び分散条件によって制御することができる。
体積平均粒子径(Dv)は、光散乱粒度分布測定装置[堀場製作所(株)製「LA950 V2」]で測定することができる。
【0084】
ポリウレタン樹脂水性分散体の固形分濃度(揮発性成分以外の成分の含有量)は、ポリウレタン樹脂水性分散体の取り扱い易さの観点から、好ましくは20~65重量%、更に好ましくは25~55重量%である。固形分濃度は、水性分散体約1gをペトリ皿上にうすく伸ばし、精秤した後、循環式定温乾燥機を用いて130℃で、45分間加熱した後の重量を精秤し、加熱前の重量に対する加熱後の残存重量の割合(百分率)を計算することにより得ることができる。
【0085】
ポリウレタン樹脂水性分散体の25℃での粘度は、ハンドリング性の観点から、好ましくは5,000mPa・s以下、更に好ましくは1,000mPa・s以下である。粘度はBL型粘度計を用いて測定することができる。
【0086】
ポリウレタン樹脂水性分散体の25℃でのpHは、分散安定性の観点から、好ましくは2~12、更に好ましくは4~10である。pHは、pH Meter M-12[堀場製作所(株)製]を用いて測定することができる。
【0087】
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体は印刷インク用として用いることが、画像のラミネート強度および耐ブロッキング性の観点から好ましい。
【0088】
ポリウレタン樹脂水性分散体を含有する印刷インク(L)は、ポリウレタン樹脂水性分散体以外に色材、保湿剤、浸透剤、水、及びその他の添加剤を含有する。
【0089】
色材としては、染料及び顔料が挙げられる。
染料としては特に限定されないが、使用するメディアに応じて、反応染料、バット染料、ナフトール染料、硫化染料、直接染料、酸性染料、金属錯塩型染料、分散染料及びカチオン染料等を選択することができる。
【0090】
顔料としては、無機顔料(例えば白色顔料、黒色顔料、灰色顔料、赤色顔料、茶色顔料、黄色顔料、緑色顔料、青色顔料、紫色顔料及びメタリック顔料)及び有機顔料(例えば天然有機顔料合成系有機顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、顔料色素型アゾ顔料、水溶性染料から作られるアゾレーキ、難溶性染料から作られるアゾレーキ、塩基性染料から作られるレーキ、酸性染料から作られるレーキ、キサンタンレーキ、アントラキノンレーキ、バット染料からの顔料及びフタロシアニン顔料)が挙げられる。
【0091】
これら色材の内で好ましいのは顔料である。色材は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
色材の含有量は、(L)の重量に基づいて好ましくは50重量%以下、更に好ましくは30重量%以下である。
【0092】
保湿剤としては、特に限定されないが、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、2-ブテン-1、4-ジオール、2-エチル-1、3-ヘキサンジオール、2-メチル-2、4-ペンタンジオール、トリプロピレングリコール、Mnが2,000以下のポリエチレングリコール、1、3-プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、及びN-エチル-2-ピロリドンが挙げられる。保湿剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0093】
浸透剤としては、特に限定されないが、例えば、グリコールエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1-メチル-1-メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル及びジプロピレングリコールモノブチルエーテル等)及び炭素数4~8の脂肪族ジオール(1,2-ペンタンジオール及び1,2-ヘキサンジオール等の1,2-アルキルジオール並びに1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール及び1,8-オクタンジオール等の直鎖アルコール)等の有機溶剤;アセチレングリコール系界面活性剤;アセチレンアルコール系界面活性剤;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のエーテル系界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート及びポリオキシエチレンステアレート等のエステル系界面活性剤;ジメチルポリシロキサン等のシリコーン系界面活性剤;フッ素アルキルエステル及びパーフルオロアルキルカルボン酸塩等のフッ素系界面活性剤等の界面活性剤が挙げられる。浸透剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0094】
水としては、特に限定されないが、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加等によって滅菌した水を用いると、インクジェットインク組成物を長期保存する場合に細菌類や真菌類の発生を防止することができる。
【0095】
その他添加剤としては、キレート剤、防腐剤及びpH調整剤等が挙げられる。
キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)、エチレンジアミンのニトリロトリ酢酸塩、ヘキサメタリン酸塩、ピロリン酸塩、又はメタリン酸塩等が挙げられる。
【0096】
防腐剤としては、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム及び1,2―ジベンジンチアゾリン-3-オン等が挙げられる。
【0097】
pH調製剤としては、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0098】
印刷インク(L)を用いた印刷方法としては、従来のプラスチック印刷に使用される印刷方法、例えば、グラビア印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷及び感熱転写印刷等の印刷方法が挙げられる。これらの中でも特にインクジェット印刷が本発明の印刷インク(L)の印刷方法として好適である。
【0099】
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体は、印刷インク以外にも、水性塗料、水性接着剤、水性繊維加工処理剤(不織布用バインダー、補強繊維用集束剤、抗菌剤用バインダー及び人工皮革・合成皮革用原料等)、水性コーティング及び水性紙処理剤等に使用することができる。
【0100】
これらの用途に用いる場合には、上記の色材、保湿剤、浸透剤、水、キレート剤、防腐剤及びpH調製剤以外にも、必要によりその他の樹脂並びに架橋剤、粘度調整剤、レベリング剤、劣化防止剤、安定化剤及び凍結防止剤等を1種又は2種以上添加することができる。
【実施例
【0101】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下において部は重量部を表す。
また、以下において実施例13及び14は参考例1及び2を意味する。

【0102】
<実施例1>
撹拌機及び加熱装置を備えた簡易加圧反応装置に側鎖にエチレンオキサイド単位を有するジオールとしてのTEGOMER D3403[Evonik Industries AG社製]70.1部、ポリエーテルジオールとしてのPTMG2000[三菱化学(株)製]114.8部、ポリカーボネートジオールとしてのETERNACOLL UH-200[宇部興産(株)製]232.5部、側鎖にカルボキシル基を有するジオールとしての2,2-ジメチロールプロピオン酸23.9部、低分子ポリオールとしての1,4-ブタンジオール121.4部、ポリイソシアネート成分としてのイソホロンジイソシアネート434.9部及び反応用有機溶剤としてのメチルエチルケトン538部を仕込み、80℃で12時間攪拌しウレタン化反応を行い、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(P1)のメチルエチルケトン溶液を製造した。
次いで、得られたウレタンプレポリマー(P1)のメチルエチルケトン溶液に中和剤としてのトリエチルアミン18.0部を加えて均一化した後、200rpmで撹拌しながら水性媒体としてのイオン交換水2328部を加え、ポリウレタンプレポリマーを水に分散させた。得られた分散体を50℃に加熱して4時間攪拌して水による伸長反応を行い、更に減圧下60℃に加熱してメチルエチルケトンを留去した。その後、水を加えて固形分濃度を30重量%に調製することでポリウレタン樹脂水性分散体(Q-1)得た。
【0103】
<実施例2~15>
使用する原料及び使用量を表1に記載のものに変更する以外は実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂水性分散体(Q-2)~(Q-15)を得た。
【0104】
<実施例16>
撹拌機及び加熱装置を備えた簡易加圧反応装置にエチレンオキサイド単位を有するモノオールであるユニオックス M-1000[日油(株)製]46.5部、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体であるデュラネート TPA-100[旭化成(株)製]23.6部を仕込み90℃で3時間撹拌しウレタン化反応をおこない、イソシアネート基と側鎖にエチレンオキサイド単位を有するポリイソシアネートの変性物を製造した。次いで得られたポリイソシアネートの変性物にポリエーテルジオールであるPTMG2000[三菱化学(株)製]114.5部、ポリカーボネートジオールであるETERNACOLL UH-200[宇部興産(株)製]231.8部、側鎖にカルボキシル基を有するジオールとして2,2-ジメチロールプロピオン酸23.9部、低分子ポリオールとして1,4-ブタンジオール122.4部、ポリイソシアネート成分としてイソホロンジイソシアネート434.9部及び反応用有機溶剤としてのメチルエチルケトン538部を仕込み、80℃で12時間攪拌しウレタン化反応を行い、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(P16)のメチルエチルケトン溶液を製造した。
次いで、得られたウレタンプレポリマー(P16)のメチルエチルケトン溶液に中和剤としてトリエチルアミン18部を加えて均一化した後、200rpmで撹拌しながら水性媒体としてのイオン交換水2328部を加え、ポリウレタンプレポリマーを水に分散させた。得られた分散体を50℃に加熱して4時間攪拌して水による伸長反応を行い、更に減圧下60℃に加熱してメチルエチルケトンを留去した。その後、水を加えて固形分濃度を30重量%に調製することでポリウレタン樹脂水性分散体(Q-16)得た。
【0105】
<比較例1~2>
使用する原料及び使用量を表1に記載のものに変更する以外は実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂水性分散体(Q’-1)及び(Q’-2)を得た。
【0106】
表1における各原料の組成は以下の通りである。
・TEGOMER D3403:Mn=1,200のポリオキシエチレングリコール[Evonik Industries AG社製]
・Ymer N120:Mn=1,000のポリオキシエチレングリコール[パーストープ社製]
・ユニオックス M-1000:Mn=1,000のポリオキシエチレンモノオール[日油(株)製]
・サンニックスPP-2000:Mn=2,000のポリオキシプロピレングリコール[三洋化成工業(株)製]
・PTMG2000:Mn=2,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール[三菱化学(株)製]
・ETERNACOLL UH-200:Mn=2,000のポリカーボ―ネートジオール[宇部興産(株)製]
・デュラノール G4672:Mn=2,000のポリカーボ―ネートジオール[旭化成(株)製]
・デュラネート TPA-100:NCO基含量23.1%のヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体[旭化成(株)製]
【0107】
【表1】
【0108】
ポリウレタン樹脂水性分散体(Q-1)~(Q-16)及び(Q’-1)~(Q’-2)について以下の方法で密着性を評価した。
【0109】
<ポリウレタン樹脂(U)の密着性の評価方法>
ポリプロピレンフィルム(OPP)[東洋紡株式会社製「パイレンP-2161」(厚さ30μm)]およびポリエステルフィルム(PET)[東洋紡株式会社製「エスペットE-5102」(厚さ12μm)]にポリウレタン樹脂水性分散体(Q-1)~(Q-16)及び(Q’-1)~(Q’-2)を乾燥後の厚みが2μmになるようにそれぞれバーコーターで塗布し、90℃で10分間乾燥させ、各プラスチックフィルム上にポリウレタン樹脂が塗工された試験片を作製した。作製した試験片のポリウレタン樹脂水性分散体の乾燥膜面にJIS K5600-5-6に準拠して、100個(10個×10個)のマスができるよう1mm幅にカッターナイフで切込みを入れ、透明感圧付着テープで剥離試験を行い、基材フィルムに残存したマス数をカウントした。残存マス数が多いほど、ポリウレタン樹脂の密着性に優れる。
【0110】
<印刷インク(L-1)~(L-16)及び(L’-1)~(L’-2)の製造>
実施例1~16又は比較例1~2で得られたポリウレタン樹脂水性分散体(Q-1)~(Q-16)又は(Q’-1)~(Q’-2)2.7部、顔料[カーボンブラック水分散体{東海カーボン(株)製「Aqua-Black162」、固形分濃度20重量%}]25部、保湿剤としてのプロピレングリコール10部、浸透剤としての1,2-ヘキサンジオール1.0部、2-ピロリドン1.0部及び水63部を容器に仕込み、10分間混合して印刷インク(L-1)~(L-16)及び比較用の印刷インク(L’-1)~(L’-2)を作製した。
【0111】
<前処理液作成方法>
カチオン性樹脂[ウレタン樹脂水性分散体「パーマリン UC-20」 三洋化成工業(株)製固形分濃度23%]21.7部、金属塩としての塩化カルシウム3.0部、保湿剤としてのプロピレングリコール10部、浸透剤としての1,2-ヘキサンジオール1.0部、2-ピロリドン1.0部及び水63.3部を容器に仕込み、10分間混合して、前処理液を作製した。
【0112】
<画質の評価方法>
前処理液を乾燥後の厚みが0.5μmになるようにバーコーターで塗布し、90℃で10分間乾燥させ前処理をおこなった樹脂フィルムおよび前処理していない樹脂フィルムにMicrosoft Word2010にて作成したフォントサイズ6pointの文字列を印刷し90℃で10分間乾燥したものと前処理していない光沢紙[FUJIFILM社製 G3A4100A]に同様に印刷したものとを光学顕微鏡[キーエンス社製]および目視で比較観察した。なお、樹脂フィルムはポリプロピレンフィルム(OPP)[東洋紡株式会社製「パイレンP-2161」(厚さ30μm)]を使用した。
評価基準は以下のとおりである。
5点:樹脂フィルムに印刷した文字と光沢紙に印刷した文字が同じである。
4点:凝集または滲みにより文字がわずかに変化しているが目視では差は見られない。
3点:凝集または滲みにより文字が変化しており目視でも差が見られるが文字として認識できる。
2点:凝集または滲みにより文字が変化しており一部文字を認識できない。
1点:凝集または滲みにより文字が変化しておりほとんど文字を認識できない。
3点以上が実用レベルである。
【0113】
<印刷インクの密着性の評価方法>
ポリプロピレンフィルム(OPP)[東洋紡株式会社製「パイレンP-2161」(厚さ30μm)]およびポリエステルフィルム(PET)[東洋紡株式会社製「エスペットE-5102」(厚さ12μm)]に印刷インク(L-1)~(L-16)及び比較用の印刷インク(L’-1)~(L’-2)を乾燥後の厚みが1μmになるようにそれぞれバーコーターで塗布し、90℃で10分間乾燥させ、各樹脂フィルム上にポリウレタン樹脂が塗工された試験片を作製した。作製した試験片の印刷インクの乾燥膜面にJIS K5600-5-6に準拠して、100個(10個×10個)のマスができるよう1mm幅にカッターナイフで切込みを入れ、透明感圧付着テープで剥離試験を行い、基材フィルムに残存したマス数をカウントした。残存マス数が多いほど、印刷インクの密着性に優れる。
【0114】
<印刷インクの耐ブロッキング性およびラミネート強度の評価方法>
ポリプロピレンフィルム(OPP)[東洋紡株式会社製「パイレンP-2161」(厚さ30μm)]およびポリエステルフィルム(PET)[東洋紡株式会社製「エスペットE-5102」(厚さ12μm)]に印刷インク(L-1)~(L-16)をインクジェット方式で全面に塗布後、90℃10分間乾燥した。印刷にはインクジェットプリンター[セイコーエプソン社製 PX-105]を用いた。
【0115】
<耐ブロッキング性の評価方法>
樹脂フィルムに印刷インクを全面に塗布後、4cm×8cmに切り取り、このサンプルの印刷面と同じ大きさの未印刷フィルムの非処理面とを合わせて、50℃24時間、7kg/平方cmの加圧をおこない、フィルムを剥離した時の、印刷面の剥がれの程度及び抵抗感を観察した。
5点:印刷物からインキの剥がれが全く見られず、剥離時の抵抗感もなかった。
4点:印刷物からインキの剥がれは全く認められなかったが、剥離時の抵抗感があった。
3点:印刷物からインキの剥がれが認められたが、印刷面全体の1割未満であった。
2点:印刷物からインキの剥がれが印字面積全体の1割以上5割未満であった。
1点:印刷物からインキの剥がれが印字面積の5割以上であった。
3点以上が実用レベルである。
【0116】
<ラミネート強度>
樹脂フィルムに印刷インクを全面に塗布後、ラミネート接着剤[三洋化成工業(株)製 ポリボンドAY-651A/AY-651C2液タイプ)にてシーラントフィルムとしてPEフィルム[三井化学東セロ株式会社製「T.U.X HC-E」(厚さ25μm)]を貼り合わせ、24時間40℃で養生後、インストロン型引張試験機(株式会社島津製作所製オートグラフ)にて測定した。
【0117】
ラミネート条件は、下記の通りである。
・接着剤:AY-651A/AY-651C/酢酸エチル=6.7/1/9.3(固形分約30%)
・塗布:接着剤をバーコーター#3にてインキ面に塗布
・乾燥条件:ドライヤーの温風(約80)で10秒
・貼り合わせ:ラミネート試験機[テスター産業(株)製]でシーラントフィルムを貼り合わせる。(ラミネート圧力:0.1MPa、1回転、室温)
・養生:40℃、24時間
接着力測定条件は下記のとおりである。
・試料:15mm幅
・剥離速度:50mm/分
【0118】
ポリウレタン樹脂水性分散体(Q-1)~(Q-16)、(Q’-1)~(Q’-2)及び印刷インク(L-1)~(L-16)、(L’-1)~(L’-2)について上記の方法で密着性、画質、耐ブロッキング性及びラミネート強度を評価した結果を表2に示す。
【0119】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体(Q)は、水性インキ組成物(特にインクジェットインク)、水性塗料組成物、水性接着剤組成物、水性繊維加工処理剤組成物(顔料捺染用バインダー組成物、不織布用バインダー組成物、補強繊維用集束剤組成物、抗菌剤用バインダー組成物及び人工皮革・合成皮革用原料組成物等)、水性コーティング組成物(防水コーティング組成物、撥水コーティング組成物及び防汚コーティング組成物等)及び水性紙処理剤組成物等に好適に使用できる。