(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】配管接続用樹脂管及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 23/024 20060101AFI20240515BHJP
F16L 47/14 20060101ALI20240515BHJP
B29C 57/00 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
F16L23/024
F16L47/14
B29C57/00
(21)【出願番号】P 2020089262
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】391033724
【氏名又は名称】シーケー金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】大橋 一善
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-168095(JP,U)
【文献】特開昭52-138718(JP,A)
【文献】実開昭53-045522(JP,U)
【文献】特表2019-518922(JP,A)
【文献】特開2006-037981(JP,A)
【文献】特開2019-203549(JP,A)
【文献】特開平06-297505(JP,A)
【文献】特開平04-078396(JP,A)
【文献】特開昭54-132680(JP,A)
【文献】特開2000-084947(JP,A)
【文献】特開平01-242229(JP,A)
【文献】米国特許第05967566(US,A)
【文献】特開2018-179266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 23/024
F16L 47/14
B29C 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型は熱可塑性樹脂管を端部側から挿入する挿入部と、挿入された熱可塑性樹脂管の一部を溶融して接続部を形成するためのフランジ成形部を有し、前記フランジ成形部にサポート部材又は接続孔成形部材を配設
してあり、
前記金型を用いて、前記金型の挿入部に熱可塑性樹脂管の端部側を挿入し、
金型を加熱し前記挿入された端部が溶融状態になった状態で前記熱可塑性樹脂管を金型に向けて加圧することで前記フランジ成形部にて前記サポート部材に溶融接合された接続部又は接続孔を有する接続部を形成することを特徴とする配管接続用樹脂管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種配管に用いられる樹脂管に関し、特に管材に接続部が一体的に形成された配管接続用樹脂管及びその製造方法に係る。
【背景技術】
【0002】
水配管やガス配管等の配管として、樹脂製の管材が使用されることがある。
この場合に、樹脂管同士あるいは継手等と配管接続するのに、フランジ形状の接続部が設けられている。
この場合に、樹脂管材にフランジ形状の接続部を溶着する方法の他に、樹脂管の端部側にフランジ部を一体的に成形する方法がある。
例えば特許文献1には、樹脂配管と接合フランジとを射出成形にて一体的に成形する例が開示されている。
【0003】
しかし、樹脂材料は、溶融状態から冷却固化される際に、体積収縮する性質があるために、接合フランジ部の一部にヒケが生じやすい。
特に、フランジ部の肉厚が管材の一般肉厚よりも厚い場合には、そのヒケが大きくなる。
特許文献1は、このヒケ対策としてフランジの接合面に環状突起を形成する例を開示している。
しかし、これでは配管同士を接続する際には、一方の配管側に突起を設けると、他方の配管側にその突起を吸収するシール部材等が必要になり、配管接続の自由度が制限される問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、接続部を一体的に形成した樹脂管であって、接続部のヒケを抑え、成形性にも優れた配管接続用樹脂管及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る配管接続用樹脂管は、熱可塑性樹脂の端部側に当該熱可塑性樹脂の一部を溶融して溶融成形された接続部を有し、前記接続部はサポート部材に前記熱可塑性樹脂の一部が溶融接合されていることを特徴とする。
ここで、熱可塑性樹脂管の端部側と表現したのは、管材の端部又はその端部寄りを意味し、端部に限定されない。
【0007】
本発明における配管接続用樹脂管は、管材の端部付近を金型内に挿入し、この管材の一部を溶融状態に加熱し、加圧成形したものである点で、特許文献1に開示する射出成形とは相違する。
【0008】
金型内に管材の端部を挿入して加熱溶融し、接続部を金型成形した後に冷却固化させることになるが、これにより体積収縮しても接続部はサポート部材に溶融した樹脂が溶着するように成形されるので、このサポート部材の体積(肉厚)に相当する分だけ溶融樹脂の量が少なくなるので、固化時のヒケの量が少なくなる。
また、接続部は加熱溶融された溶融樹脂がサポート部材に密着するように流動し、その後に冷却・固化することになるが、その際の歪みや変形をサポート部材が抑える作用も有する。
【0009】
本発明において、サポート部材を管材と同一又は同系統の樹脂材料とした場合に、管材の一部が溶着してサポート部材と接続した場合の溶融密着性に優れる。
熱可塑性樹脂としては、加熱溶融可能な樹脂であれば管材として使用される樹脂に制限はない。
代表的には、ポリエチレン,ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂やナイロン,塩化ビニル樹脂等が一例として挙げられる。
【0010】
本発明において、サポート部材を管材の樹脂材料よりも高強度の樹脂材で製作してあったり、金属製で製作すると接合部の強度を向上させることができる。
この場合に、サポート部材が高融点のフッ素樹脂材や金属材である場合には、溶融樹脂との密着面に凹凸等の接合面にしてもよい。
【0011】
サポート部材の形状は、接続部の形状に応じて設定され、形状には制限がない。
例えば、外形が円形つば形状の接続部にあっては、このサポート部材はドーナツ形状であってもよい。
サポート部材は、接続部の強度向上の作用もあり、接続部を形成する際に溶融樹脂で包設するようにしてもよく、複数のサポート部材に分割してもよい。
また、サポート部材の替わりに金型側に孔形成部材を配置することで、熱可塑性樹脂管の端部側に当該熱可塑性樹脂の一部を溶融して溶融成形された接続部を有し、前記接続部は溶融成形時に形成されたボルト等による接続孔を有しているようにしてもよい。
【0012】
本発明に係る配管接続用樹脂管の製造方法は、金型は熱可塑性樹脂管を端部側から挿入する挿入部と、挿入された熱可塑性樹脂管の一部を溶融して接続部を形成するためのフランジ成形部を有し、前記フランジ成形部にサポート部材又は接続孔成形部材を配設した状態で前記熱可塑性樹脂管を端部側から前記金型に挿入加圧することで前記接続部を溶融成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、管材の端部側に管材の一部を加熱溶融して、フランジ形状等の接続部を成形する際に、接続部となる部分にサポート部材を配置したので、接続部における溶融樹脂量、例えば肉厚が小さくなる。
これにより、固化時のヒケ量を少なくすることができる。
また、溶融樹脂量が少なくなる分だけ、固化するまでの冷却時間が短くなり、生産性が向上する。
また、サポート部材の形状,配置,材質等を適宜選定することで、接続部の強度が向上し、薄肉化,小型化も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る配管接続用樹脂管の成形(製造)例を示す。(a)は樹脂管材を金型に挿入する前、(b)は金型に挿入した状態、(c)は金型を加熱した状態で樹脂管材に加圧力を加え、さらに挿入した状態、(d)は外形型を開き製品を取り出す状態を示す。
【
図2】成形が終了した製品(配管接続用樹脂管)の外観を示す。
【
図3】サポート部材と溶融接合部との接合面に凹凸部を設けた例を示す。
【
図4】フランジ部の取付孔を成形時に形成した例を示す。(a)は金型構造、(b)は製品の正面図を示す。
【
図5】管材の端部に接続部(フランジ)を成形する例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る配管接続用樹脂管(製品)の構造例及び製造例を以下図に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0016】
図1の流れに基づいて製造例を説明する。
図1は断面図で説明したが、樹脂管材11は断面円形状の熱可塑性樹脂からなる管材である。
金型は半割構造で、
図1(d)に示すように左右に開閉可能になっていて、中央部には樹脂管材1の内側に挿入され、内周部を拘束する円柱状のコア型11を有する。
コア型11は、ベース部11aから円柱部11bを立設した例になっている。
金型は、接続部を形成するためのキャビティ部を有し、成形後に製品を取り出すことができれば、その構造に制限がない。
【0017】
図1では、左右に配置した半割形状の外形型12,13にて樹脂管材1の外周部に、つば形状の接続部3aを形成するようになっている。
外形型は、成形後に製品を取り出すことができれば、半割構造に制限されない。
管材の溶融加圧時には、外形型が相対的に開く方向に力が加わるので、例えば一対の半割外形型の外周部をリング部材で保持してもよく、シリンダー等にて両側から型締めしてもよい。
外形型12,13の内周面にリング溝状のフランジ成形部14を有する。
この溝状のフランジ成形部14の内側に、ドーナツ状のサポート部材2を配置した例になっている。
図1(a)では、サポート部材2をフランジ成形部の内側上部に配置した例になっているが、下部側や中央部でもよい。
【0018】
図1(a)に示すように、中央のコア型11と外形型12,13の間に形成した隙間(挿入部)15に、樹脂管材1をその端部から挿入する。
図1(b)は、挿入が完了した状態を示す。
この状態で樹脂管材1の溶融温度、例えば190℃になるように金型を加熱する。
さらに、
図1(c)に示すように樹脂管材1を上側から加圧fにて加圧すると、管材の一部がフランジ成形部14に向けて変形し、サポート部材2に密着しながらフランジ成形部14の空間部(キャビティ)に流れ込み、つば形状の接続部3aが形成される。
金型が冷却され、外形型12,13が開き、取り出した製品の外形形状を
図2に示す。
接続部3aは、サポート部材2に重ね合うように溶融接合部3bが形成されている。
【0019】
サポート部材2は樹脂管材1と同系統の熱可塑性樹脂でもよいが、フッ素樹脂等の高融点材料や金属材である場合には、接合面の密着性を向上させる目的で
図3に示すように、サポート部材2の接合面2aに凹凸形状を設けることで、その部分に溶融樹脂3cが流れ込み、密着強度が向上する。
【0020】
図4に示した例は、金型のフランジ成形部14にピン部材13aを配置することで、接続部3aにボルト等の締結部材を挿入する接続孔3dをつば部の成形と同時に成形することもできる。
【0021】
本実施例は、管材の端部寄りの外周部に、つば形状の接続部3aを形成した例となっているが、管材の端部に段差状のフランジ部を形成したりすることができる。
また、接続部の形状も円形状に限らず、楕円形状,六角形状等、目的に応じて設計できる。
図5には、接続部3a(2,3b)を樹脂管材1の端部に設ける例を示す。
【符号の説明】
【0022】
1 樹脂管材
2 サポート部材
3 配管接続用樹脂管
3a 接続部
3b 溶融接合部
11 コア型
12 外形型
13 外形型
14 フランジ成形部