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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】編物製品、及び、編物製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/00 20060101AFI20240515BHJP
   A41D 13/11 20060101ALI20240515BHJP
   D04B 1/22 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
D04B1/00 B
A41D13/11 Z
D04B1/22
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020101418
(22)【出願日】2020-06-11
(65)【公開番号】P2021195640
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100124958
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 建志
(72)【発明者】
【氏名】城田 将司
(72)【発明者】
【氏名】小川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】川端 篤
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-115365(JP,A)
【文献】特開2010-110413(JP,A)
【文献】特開2004-267566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/11
A62B 7/00 - 33/00
D04B 1/00 - 1/28
D04B 21/00 - 21/20
D06B 1/00 - 23/30
D06C 3/00 - 29/00
D06G 1/00 - 5/00
D06H 1/00 - 7/24
D06J 1/00 - 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表編地及び裏編地を含む編物製品であって、
前記表編地と前記裏編地とが分かれた分離部と、
該分離部における前記表編地と前記裏編地との間の隙間に配置され、前記分離部における前記表編地及び前記裏編地を通すことが可能な裏返し口を少なくとも除いて前記表編地における折り返し部分と前記裏編地における折り返し部分とが接結編みにより接結した接結部と、
紐と、を備え、
前記接結部は、前記分離部における前記表編地及び前記裏編地が前記裏返し口を経て裏返されたときに前記分離部の周囲となる位置にあり、
前記接結部は、前記分離部の外部と前記隙間との間で前記紐が通り抜けた切れ間を有し、
前記紐は、前記切れ間から脱落することを抑制する構造を有する、編物製品。
【請求項2】
前記紐は、
前記表編地と前記裏編地とが分かれた第二の分離部と、
該第二の分離部における前記表編地と前記裏編地との間の第二の隙間に配置され、前記第二の分離部における前記表編地及び前記裏編地を通すことが可能な第二の裏返し口を少なくとも除いて前記表編地における折り返し部分と前記裏編地における折り返し部分とが接結編みにより接結した第二の接結部と、を備え、
前記第二の接結部は、前記第二の分離部における前記表編地及び前記裏編地が前記第二の裏返し口を経て裏返されたときに前記第二の分離部の周囲となる位置にある、請求項1に記載の編物製品。
【請求項3】
編物製品の製造方法であって、
表編地及び裏編地を編成しながら、前記表編地と前記裏編地とが分かれた分離部の周囲のうち少なくとも裏返し口を除く接結部において前記表編地と前記裏編地とを接結編みにより接結する編物形成工程と、
前記分離部及び前記接結部を含む単位部位の周りを切断する切断工程と、
前記単位部位のうち前記分離部における前記表編地及び前記裏編地を前記裏返し口から引き出すことにより、前記分離部における前記表編地及び前記裏編地を裏返し前記接結部を前記分離部における前記表編地と前記裏編地との間に配置する裏返し工程と、を含み、
前記裏返し工程の後の前記接結部は、前記分離部の外部と、前記分離部における前記表編地と前記裏編地との間の隙間と、の間で紐を通すための切れ間を有し、
前記製造方法は、前記紐を前記切れ間に通して前記紐に前記切れ間から脱落することを抑制する構造を形成する工程をさらに含む、編物製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表編地及び裏編地を含む編物製品、並びに、編物製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マスクとして、使い捨てを前提とした不織布マスクが市販されている。不織布マスクが不足している場合には、洗濯して再利用することが可能なマスクがあると好適である。
特許文献1には、ダブルジャガード筬付ダブルラッシェル機により二層三層構造に連続編成された無縫製編物を一定単位長さ毎に切離すると共に捨て部を切離除去してマスクを形成することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-353146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、編物のマスクの縁部は切離された部位であるため、マスクのユーザーは装着時に違和感を覚えることがある。
尚、感触に違和感を覚えることは、座席カバーやサンバイザーカバーといった車両用内装品等に適用したときにも想定される。
【0005】
本発明は、編物製品の感触を向上させ、利便性を向上させることが可能な技術を開示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の編物製品は、表編地及び裏編地を含む編物製品であって、
前記表編地と前記裏編地とが分かれた分離部と、
該分離部における前記表編地と前記裏編地との間の隙間に配置され、前記分離部における前記表編地及び前記裏編地を通すことが可能な裏返し口を少なくとも除いて前記表編地における折り返し部分と前記裏編地における折り返し部分とが接結編みにより接結した接結部と、
紐と、を備え、
前記接結部は、前記分離部における前記表編地及び前記裏編地が前記裏返し口を経て裏返されたときに前記分離部の周囲となる位置にあり、
前記接結部は、前記分離部の外部と前記隙間との間で前記紐が通り抜けた切れ間を有し、
前記紐は、前記切れ間から脱落することを抑制する構造を有する、態様を有する。
【0007】
また、本発明の編物製品の製造方法は、表編地及び裏編地を編成しながら、前記表編地と前記裏編地とが分かれた分離部の周囲のうち少なくとも裏返し口を除く接結部において前記表編地と前記裏編地とを接結編みにより接結する編物形成工程と、
前記分離部及び前記接結部を含む単位部位の周りを切断する切断工程と、
前記単位部位のうち前記分離部における前記表編地及び前記裏編地を前記裏返し口から引き出すことにより、前記分離部における前記表編地及び前記裏編地を裏返し前記接結部を前記分離部における前記表編地と前記裏編地との間に配置する裏返し工程と、を含み、
前記裏返し工程の後の前記接結部は、前記分離部の外部と、前記分離部における前記表編地と前記裏編地との間の隙間と、の間で紐を通すための切れ間を有し、
前記製造方法は、前記紐を前記切れ間に通して前記紐に前記切れ間から脱落することを抑制する構造を形成する工程をさらに含む、態様を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、編物製品の感触を向上させ、利便性を向上させることが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】マスクを製造するための編物の例を模式的に示す図。
図2】編物の単位部位の例を模式的に示す図。
図3】編物の単位部位を図2のA1-A1に相当する位置で切断したときの垂直断面の例を模式的に示す図。
図4】編物の単位部位を図2のA2-A2に相当する位置で切断したときの垂直断面の例を模式的に示す図。
図5】編物の単位部位を裏返す例を模式的に示す図。
図6】マスクの例を模式的に示す図。
図7】マスクを図6のA3-A3に相当する位置で切断したときの垂直断面の例を模式的に示す図。
図8】紐を図6のA3-A3に相当する位置で切断したときの垂直断面の例を模式的に示す図。
図9】紐となる単位部位を裏返す例を模式的に示す図。
図10】ダブルニット丸編機の構成例を模式的に示す図。
図11】マスクの別の例を模式的に示す図。
図12】単位部位の別の例を模式的に示す図。
図13】マスクの別の例を模式的に示す図。
図14】単位部位の別の例を模式的に示す図。
図15】柄を有する本体の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0012】
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、図1~15に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。
また、本願において、数値範囲「Min~Max」は、最小値Min以上、且つ、最大値Max以下を意味する。化学式で表される組成比は化学量論比を示し、化学式で表される物質には化学量論比から外れたものも含まれる。
【0013】
[態様1]
本技術の一態様に係る編物製品1は、表編地10及び裏編地15を含む編物製品1であって、前記表編地10と前記裏編地15とが分かれた分離部20、及び、該分離部20における前記表編地10と前記裏編地15との間の隙間CL1に配置された接結部25を備える。前記接結部25は、前記編物製品1において、前記分離部20における前記表編地10及び前記裏編地15を通すことが可能な裏返し口28を少なくとも除いて前記表編地10における折り返し部分11と前記裏編地15における折り返し部分16とが接結編みにより接結した部分である。さらに、前記接結部25は、前記分離部20における前記表編地10及び前記裏編地15が前記裏返し口28を経て裏返されたときに前記分離部20の周囲となる位置にある。
【0014】
表編地10と裏編地15とが接結した接結部25は、縫製ではなく接結編みにより接結しているので、強固に接結している。接結部25は、表編地10及び裏編地15における折り返し部分11,16にあり、分離部20における表編地10と裏編地15との間の隙間CL1という、編物製品1の外部から触れ難い位置にある。従って、上記態様は、感触を向上させた編物製品を提供することができる。
【0015】
ここで、編物製品は、上述した表編地及び裏編地とは異なる部位を含んでいてもよい。
編物製品には、マスク、車両用内装品、等が含まれる。車両用内装品には、座席のカバー、サンバイザーのカバー、等が含まれる。
上述した付言は、以下の態様においても適用される。
【0016】
[態様2]
図6,7等に例示するように、本編物製品1は、紐3をさらに備えてもいてもよい。前記接結部25は、前記分離部20の外部O1と前記隙間CL1との間で前記紐3が通り抜けた切れ間30を有していてもよい。前記紐3は、前記切れ間30から脱落することを抑制する構造4を有していてもよい。本態様は、編物製品1に紐3があるので、利便性を向上させた編物製品を提供することができる。
【0017】
ここで、紐が切れ間から脱落することを抑制する構造には、紐自体のループ形状、切れ間を通り抜けることができない結び目、等が含まれる。
尚、分離部の外部と隙間との間で紐が裏返し口を通り抜けている場合、裏返し口が上述した切れ間を兼ねる。
上述した付言は、以下の態様においても適用される。
【0018】
[態様3]
図2,8等に例示するように、前記紐3は、前記表編地10と前記裏編地15とが分かれた第二の分離部40、及び、該第二の分離部40における前記表編地10と前記裏編地15との間の第二の隙間CL2に配置された第二の接結部45を備えていてもよい。前記第二の接結部45は、前記紐3において、前記第二の分離部40における前記表編地10及び前記裏編地15を通すことが可能な第二の裏返し口48を少なくとも除いて前記表編地10における折り返し部分12と前記裏編地15における折り返し部分17とが接結編みにより接結した部分である。さらに、前記第二の接結部45は、前記第二の分離部40における前記表編地10及び前記裏編地15が前記第二の裏返し口48を経て裏返されたときに前記第二の分離部40の周囲となる位置にある。
【0019】
表編地10と裏編地15とが接結した第二の接結部45は、縫製ではなく接結編みにより接結しているので、強固に接結している。第二の接結部45は、表編地10及び裏編地15における折り返し部分12,17にあり、第二の分離部40における表編地10と裏編地15との間の第二の隙間CL2という、紐3の外部から触れ難い位置にある。従って、上記態様は、紐の感触を向上させることができる。
【0020】
ここで、本願における「第一」、「第二」、…は、類似点を有する複数の構成要素に含まれる各構成要素を識別するための用語であり、順番を意味しない。複数の構成要素のうちどの構成要素が「第一」、「第二」、…に当てはまるのかは、相対的に決まる。
上述した付言は、以下の態様においても適用される。
【0021】
[態様4]
ところで、本技術の一態様に係る編物製品1の製造方法は、以下の工程(a)~(c)を含む。
(a)表編地10及び裏編地15を編成しながら、前記表編地10と前記裏編地15とが分かれた分離部20の周囲のうち少なくとも裏返し口28を除く接結部25において前記表編地10と前記裏編地15とを接結編みにより接結する編物形成工程ST1(例えば、図1参照)。
(b)前記分離部20及び前記接結部25を含む単位部位51の周りを切断する切断工程ST2(例えば、図2参照)。
(c)前記単位部位51のうち前記分離部20における前記表編地10及び前記裏編地15を前記裏返し口28から引き出すことにより、前記分離部20における前記表編地10及び前記裏編地15を裏返し前記接結部25を前記分離部20における前記表編地10と前記裏編地15との間に配置する裏返し工程ST3(例えば、図5参照)。
【0022】
表編地10と裏編地15との接結部25は、縫製ではなく接結編みにより接結されるので、強固に接結する。分離部20における表編地10及び裏編地15が裏返されると、接結部25は、分離部20における表編地10と裏編地15との間という編物製品1の外部から触れ難い位置となる。従って、上記態様は、感触を向上させる編物製品を製造することができる。
【0023】
[態様5]
また、本技術の一態様に係る編物60は、表編地10及び裏編地15を含む編物60であって、前記表編地10と前記裏編地15とが分かれた分離部20、及び、該分離部20の周囲のうち少なくとも裏返し口28を除いて前記表編地10と前記裏編地15とが接結編みにより接結した接結部25を備える。本編物60は、前記分離部20及び前記接結部25を含む単位部位51の周りが除去されたとき、前記分離部20における前記表編地10及び前記裏編地15を前記裏返し口28から引き出すことにより前記分離部20における前記表編地10及び前記裏編地15を裏返し前記接結部25を前記分離部20における前記表編地10と前記裏編地15との間に配置することが可能に構成されている。
【0024】
表編地10と裏編地15とが接結した接結部25は、縫製ではなく接結編みにより接結しているので、強固に接結している。上記態様の編物60は分離部20における表編地10及び裏編地15を裏返すことができ、これにより、接結部25は分離部20における表編地10と裏編地15との間という編物製品1の外部から触れ難い位置となる。従って、上記態様は、感触を向上させる編物を提供することができる。
【0025】
(2)編物製品の製造方法の具体例:
図1は、マスクを製造するための編物60を模式的に例示している。編物60を丸編機で製造する場合、編物60は図1のB1の位置で繋がった筒状となる。図2は、編物60の単位部位50を模式的に例示している。図3は、マスクの本体となる単位部位51を図2のA1-A1に相当する位置で切断したときの垂直断面を模式的に例示している。図4は、単位部位51を図2のA2-A2に相当する位置で切断したときの垂直断面を模式的に例示している。図5は、単位部位51を裏返す様子を模式的に例示している。図5に示す二点鎖線は、裏返す前の単位部位51の位置を示している。図6は、編物製品1としてのマスクを模式的に例示している。図7は、マスクを図6のA3-A3に相当する位置で切断したときの垂直断面を模式的に例示している。尚、図3,4,7では、編地10,15の厚さが誇張して示されている。図7では、図示の都合上、マスクの本体2における編地10,15がマスクの紐3における編地10,15よりも厚く示されている。図8は、紐3を図6のA3-A3に相当する位置で切断したときの垂直断面を模式的に例示している。図8では、編地10,15の厚さが誇張して示されている。図9は、紐3となる単位部位52を裏返す様子を模式的に例示している。尚、単位部位50は、単位部位51,52を総称している。
【0026】
図1~4に示すように、編物60は、表編地10、及び、該表編地10と重なっている裏編地15を含み、表編地10と裏編地15とが部分的に接結している。表編地10は、表編地用の糸で形成された連続した編目を有している。裏編地15は、裏編地用の糸で形成された連続した編目を有している。編物60は、前述の編地10,15の二重構造を有する。編物60は、表編地10を見る面(編成外面10b)において、図6,7に示す本体2となる単位部位51が並べられた本体領域61、及び、図6~8に示す耳紐3となる単位部位52が並べられた紐領域62を有している。
【0027】
接結しているか否かの点から、本体領域61における編物60は、表編地10と裏編地15とが分かれた分離部20、及び、表編地10と裏編地15とが接結編みにより接結した接結部25を備えている。また、紐領域62における編物60は、表編地10と裏編地15とが分かれた第二の分離部40、及び、表編地10と裏編地15とが接結編みにより接結した第二の接結部45を備えている。接結部25及び第二の接結部45は、表編地用の糸と裏編地用の糸とが互いに編み込まれた網目構造を有している。
【0028】
図6,7に示す編物製品1は、本体領域61にある単位部位51から作られる本体2、及び、紐領域62にある単位部位52から作られる二本の紐3を含んでいる。本体2は、分離部20における表編地10及び裏編地15が裏返された構造を有する。各紐3は、第二の分離部40における表編地10及び裏編地15が裏返された構造を有する。分離部20における編地10,15を裏返すため、図2に示す編物60は、接結部25同士の間に裏返し口28を有している。接結部25は、編物60において分離部20の周囲のうち少なくとも裏返し口28を除いて表編地10と裏編地15とが接結編みにより接結した部位である。また、第二の分離部40における編地10,15を裏返すため、編物60は、第二の接結部45同士の間に第二の裏返し口48を有している。第二の接結部45は、編物60において第二の分離部40の周囲のうち少なくとも第二の裏返し口48を除いて表編地10と裏編地15とが接結編みにより接結した部位である。
【0029】
図2に示すように、本体領域61にある単位部位51は、六角形状である。この単位部位51に含まれる接結部25は、六角形の4つの角部において、それぞれ、紐3を通すための切れ間31,32,33,34を有している。ここで、個別の切れ間31,32,33,34を切れ間30と総称する。切れ間32,34の間隔は、切れ間31,33の間隔よりも広い。これにより、切れ間32,34は、裏返し口28としても機能する。分離部20における編地10,15を裏返すときには、2箇所の裏返し口28のうち一方を使用すればよい。紐領域62にある単位部位52は、細長い長方形状であり、2箇所の第二の裏返し口48を有している。第二の分離部40における編地10,15を裏返すときには、2箇所の第二の裏返し口48のうち一方を使用すればよい。尚、耳紐3となる単位部位52の長さは、顔の大きさに合わせて適宜調整すればよい。
【0030】
領域61,62を有する編物60は、編機により形成することができる。編機には、緯(よこ)方向に連続したループ段同士が繋ぎ合わされた編物を作る緯編機、及び、経(たて)方向に連続したループ列同士が繋ぎ合わされた編物を作る経編機を用いることができる。緯編機には、筒状に連続した編目を有する編物を作る丸編機、及び、編目が横方向に連続形成された偏平状の編物を作る横編機が含まれる。編物60を高速に製造する点から、編機は丸編機が好ましい。丸編機には、シリンダとダイヤルの両方に編針を備えるダブルニット丸編機を用いることができる。編地に様々な柄を作るため、編機にジャカード機構が設けられてもよい。
【0031】
図10は、編機として電子式のダブルニット丸編機100の構造を模式的に例示している。ダブルニット丸編機100は、鉛直向きの仮想軸を中心として回転可能な円筒状のシリンダ101、該シリンダ101に対して移動可能に設けられた複数のシリンダ針(編針)102、シリンダ101の上部に配置された円盤状のダイヤル103、該ダイヤル103に対して移動可能に設けられた複数のダイヤル針(編針)104、これらの部分101~104を駆動する駆動部110、該駆動部110の駆動を制御する制御部120、等を備える。ダイヤル103は、シリンダ101の回転に同期して回転する。シリンダ針102は垂直に大きく移動し、ダイヤル針104は前述の仮想軸に直交する径方向D1に大きく移動する。図示していないが、ダブルニット丸編機100は、各シリンダ針102に外糸を給糸する外側給糸口、及び、各ダイヤル針104に内糸を給糸する内側給糸口を有する。駆動部110は、制御部120による制御に従って、外糸で連続した編目を形成するように各シリンダ針102を駆動し、内糸で連続した編目を形成するように各ダイヤル針104を駆動する。制御部120は、プロセッサーであるCPU(Central Processing Unit)121、半導体メモリーであるROM(Read Only Memory)122、半導体メモリーであるRAM(Random Access Memory)123、等を備える。
【0032】
図1に示す編物60をダブルニット丸編機100で製造する場合、制御部120は、編物60に対応する組織情報をROM122又はRAM123に保持し、該組織情報に従って駆動部110に各シリンダ針102及び各ダイヤル針104を駆動させる。各シリンダ針102は、駆動部110に駆動されることにより、外糸で連続した編目を形成し、該編目を有する筒状表編地10を編成する。各ダイヤル針104は、駆動部110に駆動されることにより、内糸で連続した編目を形成し、該編目を有する筒状裏編地15を筒状表編地10の内側において編成する。従って、筒状の編物60の全体にわたって、外側に筒状表編地10が配置され、内側に筒状裏編地15が配置される。
【0033】
分離部20及び第二の分離部40において、制御部120は、表編地10と裏編地15とが別々に編成されるように、駆動部110に各シリンダ針102及び各ダイヤル針104を駆動させる。これにより、分離部20及び第二の分離部40において、表編地10と裏編地15との間に隙間が生じ得る。図3,4には、分離部20において表編地10と裏編地15との間に生じ得る隙間CL3が示されている。図9には、第二の分離部40において表編地10と裏編地15との間に生じ得る隙間CL4が示されている。
【0034】
接結部25及び第二の接結部45において、制御部120は、外糸に編目を形成するシリンダ針102と内糸に編目を形成するダイヤル針104とを交差させることにより表編地10と裏編地15とが一体的に編成されるように、駆動部110に各シリンダ針102及び各ダイヤル針104を駆動させる。外糸と内糸とを交差させて接結編みを行うことにより、接結部25及び第二の接結部45において、表編地10と裏編地15とが接結編みにより接結する。
【0035】
以上により、編地10,15を編成しながら、表編地10と裏編地15とが分かれた分離部20の周囲のうち裏返し口28を含む切れ間30を除く接結部25において表編地10と裏編地15とを接結編みにより接結する編物形成工程ST1が実施される。図1に示す編物形成工程ST1では、編地10,15の編成時に、表編地10と裏編地15とが分かれた第二の分離部40の周囲のうち第二の裏返し口48を除く第二の接結部45において表編地10と裏編地15とが接結編みにより接結する。
【0036】
尚、経編機や横編機で編物60を製造する場合、図1に示すB1の位置で繋がっていない編物60を製造することが可能である。
【0037】
編地10,15を編成するための糸は、ポリエステル繊維やポリアミド繊維やポリウレタン繊維といった合成樹脂繊維、レーヨンといった合成繊維、木綿や羊毛といった天然繊維、等を用いることができ、捲縮(けんしゅく)糸でもよいし、非捲縮糸でもよい。編物製品1がマスクである場合、編成用の糸にポリエステル繊維を用いると、ポリエステル繊維に由来する柔らかい装着感が得られ、耳紐による痛みが生じ難い。また、編成用の糸に抗菌糸、抗血栓性を有する糸、等といった機能糸を用いると、編物製品1に機能性を発揮させることができる。編成用の糸には、例えば、75~300デニールの糸を用いることができる。編地10,15のうち肌に触れる方を編成するための糸には、ソフトな肌触り感を出すため、単糸の太さが0.3~1.0デニール程度のハイマルチ糸を用いてもよい。
【0038】
編地10,15の編目の密度は、糸の太さにより変わるが、例えば、1cm当たりのコース数9~13、及び、1cm当たりのウェール数10~14とすることができる。また、編地10,15が互いに編み込まれた部位(接結部25及び第二の接結部45)における接結点の密度は、糸の太さにより変わるが、例えば、緯方向において1cm当たり3~5箇所、及び、経方向において1cm当たり6~8箇所とすることができる。接結部25及び第二の接結部45において編地10,15が面状に編み込まれていることにより、接結部25及び第二の接結部45における接結の強度は縫製による強度よりも高い。
【0039】
製造された編物60は、図2に示す仮想の切断線CU1で切断され、複数の単位部位50に分割される。切断線CU1は、本体領域61において分離部20及び接結部25を含む単位部位51の周りにあり、紐領域62において第二の分離部40及び第二の接結部45の周りにある。図2に示す切断線CU1は、本体領域61において切れ間30を含めて接結部25に沿った位置にあり、紐領域62において第二の裏返し口48を含めて第二の接結部45に沿った位置にある。編物60を切断線CU1で切断することにより、本体2を作るための複数の単位部位51が本体領域61から形成され、紐3を作るための複数の単位部位52が紐領域62から形成される。
【0040】
編物60の切断には、各種の裁断機を用いることができる。また、人がはさみ等といった切断具で編物60を切断線CU1で切断してもよい。例えば、製造工場の作業員が切断具で編物60を切断したり、編物60を購入したユーザーが切断具で編物60を切断したりすることが考えられる。
【0041】
以上により、分離部20及び接結部25を含む単位部位51の周りを切断する切断工程ST2が実施される。図2に示す切断工程ST2では、第二の分離部40及び第二の接結部45を含む単位部位52の周りが切断される。尚、単位部位52の周りの切断線CU1は、顔の大きさに応じて適宜調整すればよい。
【0042】
図3,4に示すように、本体領域61に由来する単位部位51は、分離部20において表編地10と裏編地15とが分かれている。図3,4に示す単位部位51において、表編地10の編成外面10bと裏編地15の編成外面15bとが外部O1に現れ、表編地10の編成内面10aと裏編地15の編成内面15aとが内部に隠れている。分離部20において、表編地10の編成内面10aと裏編地15の編成内面15aとの間には隙間CL3を生じ得る。そこで、図5に示すように、単位部位51のうち分離部20における編地10,15を裏返し口28から引き出すことができる。図6,7に示すように分離部20における編地10,15が裏返されると、接結部25が分離部20における表編地10と裏編地15との間に配置される。この裏返し状態の単位部位51が本体2である。
尚、図5は切れ間32を裏返し口28として単位部位51を裏返す例を示しているが、切れ間34を裏返し口28として単位部位51を裏返すことも可能である。
【0043】
図7に示すように、本体2の分離部20において、表編地10の編成内面10aと裏編地15の編成内面15aとが外部O1に現れ、表編地10の編成外面10bと裏編地15の編成外面15bとが内部に隠れている。分離部20において、表編地10と裏編地15との間には、隙間CL1が生じている。本体2の表編地10の縁部は、隙間CL1の方へ折り返されている。表編地10において折り返された縁部を折り返し部分11と呼ぶことにする。また、本体2の裏編地15の縁部は、隙間CL1の方へ折り返されている。裏編地15において折り返された縁部を折り返し部分16と呼ぶことにする。両折り返し部分11,16は、隙間CL1に配置されている。表編地10における折り返し部分11と裏編地15における折り返し部分16とは、分離部20における編地10,15を通すことが可能な裏返し口28を含む切れ間30を除いて接結編みにより接結している。従って、折り返し部分11,16にある接結部25は、隙間CL1に配置されている。むろん、接結部25は、分離部20における編地10,15が裏返し口28を経て裏返されたときに分離部20の周囲となる位置にある。
【0044】
単位部位51の裏返しは、機械が行ってもよいし、製造工場の作業員や編物60のユーザーが行ってもよい。単位部位51の裏返す機械は、例えば、裏返し口28を開口させた状態で単位部位51における裏返し口28の周辺を保持する保持部、分離部20の編地10,15を引っ掛ける引掛部、及び、該引掛部を裏返し口28から挿入したり編地10,15が引っ掛かった引掛部を裏返し口28から抜き出したりする駆動部を備えてもいてもよい。保持部が単位部位51における裏返し口28の周辺を保持し、駆動部が引掛部を裏返し口28から挿入し、引掛部に分離部20の編地10,15を引っ掛けさせ、編地10,15が引っ掛かった引掛部を裏返し口28から抜き出すと、分離部20における編地10,15が裏返し口28から引き出され、単位部位51が裏返る。また、保持部に相当する保持用治具、及び、引掛部に相当する引掛治具が用意されている場合、人が保持用治具で単位部位51における裏返し口28の周辺を保持し、引掛治具を裏返し口28から挿入し、引掛治具で分離部20の編地10,15を引っ掛け、この状態で引掛治具を裏返し口28から抜き出すと、単位部位51が裏返る。
【0045】
以上により、単位部位51のうち分離部20における編地10,15を裏返し口28から引き出すことにより分離部20における編地10,15を裏返し接結部25を分離部20における表編地10と裏編地15との間に配置する裏返し工程ST3が実施される。
【0046】
その後、長尺状の耳紐3を2箇所の切れ間30に通し、該紐3の両端を結ぶことにより、編物製品1としてマスクが出来上がる。図6に示す紐3には、切れ間31,32に通された紐3a、及び、切れ間33,34に通された紐3bが含まれている。すなわち、紐3aは、分離部20の外部O1と隙間CL1との間で切れ間31及び切れ間32を通り抜けている。紐3bは、分離部20の外部O1と隙間CL1との間で切れ間33及び切れ間34を通り抜けている。図6において、紐3aの両端を結ぶ結び目5、及び、紐3bの両端を結ぶ結び目5は、外部O1から見えない隙間CL1に配置されている。結び目5を有する紐3がループ形状であるので、紐3が切れ間30から脱落しない。紐3のループ形状は、紐3が切れ間30から脱落することを抑制する脱落抑制構造4に相当する。
【0047】
図1,2に示す紐領域62に由来する単位部位52は、第二の分離部40において表編地10と裏編地15とが分かれている。第二の分離部40において、表編地10と裏編地15との間には隙間CL4を生じ得る(図9の筒状治具挿入工程ST31参照)。そこで、図9に示すように、単位部位52のうち第二の分離部40における編地10,15を第二の裏返し口48から引き出すことができる。図8に示すように第二の分離部40における編地10,15が裏返されると、第二の接結部45が第二の分離部40における表編地10と裏編地15との間に配置される。この裏返し状態の単位部位52が紐3である。
【0048】
図8に示すように、紐3の第二の分離部40において、表編地10の編成内面10aと裏編地15の編成内面15aとが外部O1に現れ、表編地10の編成外面10bと裏編地15の編成外面15bとが内部に隠れている。第二の分離部40において、表編地10と裏編地15との間には、第二の隙間CL2が生じている。長尺な紐3における表編地10の側部は、第二の隙間CL2の方へ折り返されている。表編地10において折り返された側部を折り返し部分12と呼ぶことにする。また、長尺な紐3における裏編地15の側部は、第二の隙間CL2の方へ折り返されている。裏編地15において折り返された側部を折り返し部分17と呼ぶことにする。両折り返し部分12,17は、第二の隙間CL2に配置されている。表編地10における折り返し部分12と裏編地15における折り返し部分17とは、第二の分離部40における編地10,15を通すことが可能な2箇所の第二の裏返し口48を除いて接結編みにより接結している。従って、折り返し部分12,17にある第二の接結部45は、第二の隙間CL2に配置されている。むろん、第二の接結部45は、第二の分離部40における編地10,15が第二の裏返し口48を経て裏返されたときに第二の分離部40の周囲となる位置にある。
【0049】
むろん、単位部位52の裏返しも、機械が行ってもよいし、製造工場の作業員や編物60のユーザーが行ってもよい。
以上により、裏返し工程ST3では、単位部位52のうち第二の分離部40における編地10,15を第二の裏返し口48から引き出すことにより、第二の分離部40における編地10,15が裏返され、第二の接結部45が第二の分離部40における表編地10と裏編地15との間に配置される。
【0050】
図9は、治具J1,J2を用いて単位部位52を裏返す様子を模式的に例示している。図9に示す筒状治具J1は、単位部位52の第二の分離部40において表編地10と裏編地15との間の隙間CL4に配置された状態で一端J1iから他端J1oに単位部位52を通すための治具である。図9に示す引掛治具J2は、先端J2tが鉤状に返されて編地10,15を引っ掛けることが可能である長尺な治具である。引掛治具J2において、先端J2tとは反対側の端部を基端J2eと呼ぶことにする。
まず、単位部位52の第二の裏返し口48から隙間CL4に筒状治具J1を挿入する筒状治具挿入工程ST31が実施される。便宜上、2箇所の第二の裏返し口48の内、一方を裏返し口48iと呼び、他方を裏返し口48oと呼ぶ。筒状治具J1は端J1iから裏返し口48oに挿入される。筒状治具J1の挿入は、端J1oを残して筒状治具J1がほぼ隙間CL4に挿入するまで行われる。
【0051】
次に、引掛治具J2の基端J2eを端J1iから筒状治具J1に通し先端J2tを第二の分離部40の編地10,15に引っ掛ける引掛工程ST32が実施される。
さらに、引掛治具J2を引っ張り単位部位52を裏返し口48oから引き出す引出工程ST33が実施される。これにより、裏返された単位部位52が筒状治具J1を端J1iから端J1oまで通り抜け、図6,8に示される紐3が作られる。その後、2本の紐3をそれぞれ2箇所の切れ間30に通し、各紐3の両端を結ぶことにより、編物製品1としてマスクが出来上がる。
【0052】
得られる編物製品1の本体2は、表編地10と裏編地15とが分かれた分離部20、及び、該分離部20の隙間CL1に配置された折り返し部分11,16が接結編みにより接結した接結部25を備えている。接結部25は、分離部20における編地10,15が裏返し口28を経て裏返されたときに分離部20の周囲となる位置にある。
従って、本体2となる単位部位51が並べられた編物60は、単位部位51の周りが除去されたとき、分離部20における編地10,15を裏返し口28から引き出すことにより分離部20における編地10,15を裏返し接結部25を分離部20における表編地10と裏編地15との間に配置することが可能に構成されている。
【0053】
また、得られる編物製品1の紐3は、表編地10と裏編地15とが分かれた第二の分離部40、及び、該第二の分離部20の第二の隙間CL2に配置された折り返し部分12,17が接結編みにより接結した第二の接結部45を備えている。第二の接結部45は、第二の分離部40における編地10,15が第二の裏返し口48を経て裏返されたときに第二の分離部40の周囲となる位置にある。
従って、紐3となる単位部位52が並べられた編物60は、単位部位52の周りが除去されたとき、第二の分離部40における編地10,15を第二の裏返し口48から引き出すことにより第二の分離部40における編地10,15を裏返し第二の接結部45を第二の分離部40における表編地10と裏編地15との間に配置することが可能に構成されている。
【0054】
接結部25及び第二の接結部45において、編地10,15は接結編みにより面状に編み込まれている。このため、編地同士を点線状に繋ぐ縫製と比べて、接結部25及び第二の接結部45は破れ難いなど強度が高い。
接結部25及び第二の接結部45は、表編地10及び裏編地15における折り返し部分にあり、表編地10と裏編地15との間の隙間という、編物製品1の外部から触れ難い位置にある。このため、接結部25及び第二の接結部45への負荷が少なく、接結部25及び第二の接結部45が破れ難いなど接結部25及び第二の接結部45の高強度が保たれるうえ、感触が向上する。
さらに、編物形成工程ST1において編地10,15の編成と同時に接結部25及び第二の接結部45における接結編みが行われるので、編地同士を繋ぐ縫製を別途行う必要が無くなり、編物製品1の製造効率が向上し、編物製品1の製造コストが削減される。
【0055】
マスクの観点からは、本具体例は、耳紐3も含めて無縫製で接結部分が肌に触れない新規格のマスクを提供することができる。本具体例のマスクは、接結部25及び第二の接結部45に触れ難いため、装着時に接結部25及び第二の接結部45による違和感を覚え難い。紐3は、自分に合う長さに調整可能である。本具体例のマスクは、使い捨てを前提とした不織布マスクとは異なり、洗濯して再利用することが可能である。従って、本具体例は、不織布マスクの不足時に不織布マスクの代わりに使用可能なマスクを提供することができる。編機で製造される編物60からマスクが作られるので、本具体例のマスクは、編機でデザインを容易に付与することができる。また、編物60自体を販売することが可能であり、編物60を購入したユーザーが編物60を切断し単位部位50を裏返すことを経てマスクを作ることができる。
【0056】
(3)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、編物製品は、マスクに限定されず、自動車に用いられる車両用内装品等でもよい。車両用内装品としては、座席のカバー、ヘッドレストのカバー、アームレストのカバー、サンバイザーのカバー、等が考えられる。
本技術の編物製品は、分離部及び接結部を備えていればよい。従って、紐が第二の分離部及び第二の接結部を備えていない編物製品も、本技術に含まれる。
紐が切れ間から脱落することを抑制する構造は、紐のループ形状に限定されず、隙間CL1にあって切れ間30を通り抜けることができない結び目等でもよい。
また、紐には、様々な例が考えられる。
【0057】
図11は、紐3に繋がった形状保持部材6を備えるマスク(編物製品1)を模式的に例示している。分かり易く示すため、図11は、本体2を透視し、形状保持部材6を実線で示している。
形状保持部材6は、細長い板状部材であり、両端にそれぞれ紐3の端部が結び付けられている。従って、紐3と形状保持部材6の組合せがループ形状であり、このループ形状が脱落抑制構造4に相当する。紐3の両端には、結び目5がある。形状保持部材6は、弾性により曲がる性質を有するものの、紐3よりも本体2の形状を保持させる機能を発揮する。形状保持部材6の材料には、熱可塑性樹脂といった合成樹脂等を用いることができる。洗濯可能なマスクとして、形状保持部材6は、樹脂板が好ましい。図11において、板状の形状保持部材6の厚さ方向は、紙面と略直交する方向である。形状保持部材6及び結び目5は、分離部20の隙間CL1に配置され、マスクの外部から触れ難い位置にある。図11において、左側の紐3aは切れ間31,32に通され、右側の紐3bは切れ間33,34に通されている。
【0058】
図11に示すマスクは本体2の左縁近傍、及び、本体2の右縁近傍にそれぞれ形状保持部材6を備えているので、本体2において左縁及び右縁の形状が保持される。従って、図11に示す例は、マスクの使い勝手を向上させることができる。
【0059】
図12は、本体2となる単位部位51の別の例を模式的に示している。図13は、図12に示す単位部位51から作られる本体2を備えるマスク(編物製品1)を模式的に例示している。
図12に示す単位部位51は、六角形の最も下の角部において、紐3を通すための切れ間31,32,33,34とは別に裏返し口28を有している。切れ間32,34の間隔は、切れ間31,33の間隔に合わせられている。裏返し口28の間隔は、切れ間31,32,33,34の間隔よりも広く、図2で示した切れ間32,34の間隔よりも広い。単位部位51のうち分離部20における編地10,15を裏返し口28から引き出すことにより、分離部20における編地10,15が裏返り、接結部25が分離部20における表編地10と裏編地15との間に配置される。この裏返し状態の単位部位51が本体2であり、左側の紐3aが切れ間31,32に通され、右側の紐3bが切れ間33,34に通されると、図13に示すマスクが得られる。
【0060】
単位部位51が切れ間30とは別に裏返し口28を有していることにより、紐3を通すための切れ間30よりも裏返し口28を広くすることができる。これにより、単位部位51を裏返す裏返し工程を容易に実施することができる。従って、図12,13に示す例は、マスクの製造を容易にさせる編物60、該編物60から製造される編物製品1、及び、その製造方法を提供することができる。
【0061】
図14は、単位部位50の別の例を模式的に示している。図14において、本体2となる単位部位51の接結部25は、複数の厚み付与部26を有している。単位部位51における各厚み付与部26は、図2で示した接結部25の外側に存在し、切れ間30に近付くほど広がっている。図14において、接結部25のうち左側の切れ間33と右側の切れ間31との間にある部分は、厚み付与部26の無い中央部、及び、該中央部を挟んで厚み付与部26を有する外側部を含んでいる。また、接結部25のうち左側の切れ間34と右側の切れ間32との間にある部分も、厚み付与部26の無い中央部、及び、該中央部を挟んで厚み付与部26を有する外側部を含んでいる。すなわち、接結部25のうち隣り合う切れ間30同士の間にある部分は、厚み付与部26の無い中央部、及び、該中央部を挟んで厚み付与部26を有する外側部を含んでいる。
【0062】
裏返し口28から単位部位51を裏返すと、厚み付与部26を有する接結部25が分離部20における表編地10と裏編地15との間に配置される。得られる本体は、左右が中央部よりも厚み付与部26により厚くなる。この本体を備えるマスクを顔に装着すると、鼻の左右において厚み付与部26による厚みにより頬とマスクとの間の隙間が埋められ、顎の左右においても厚み付与部26による厚みにより頬とマスクとの間の隙間が埋められ、マスクのずれが抑制される。
【0063】
図15は、柄を有する本体の例を示している。編地10,15には、編み方により様々な柄を付与することができる。図15に例示するように、編地10,15には、名前や数字といった文字、市松模様や花柄といった模様、様々な絵、等の柄を付与することが可能である。柄は、本体に限らず、紐に付与されてもよい。マスクが柄を有していると、マスクの所有者が容易に分かるので、マスクを洗濯して使い回す際に便利である。
【0064】
(4)実施例:
以下、実施例を示して具体的に本発明を説明するが、本発明は以下の例により限定されるものではない。
【0065】
表編地10を編成するための外糸には、ポリエステル167T48糸(太さ150デニール)を用いた。裏編地15を編成するための内糸には、ポリエステル84T144糸(太さ150デニール)を用いた。丸編機には、ダブルニット電子柄編機(針密度20ゲージ)を用いた。
上述した丸編機に外糸及び内糸を給糸し、図1,2に示すような筒状編物60のサンプルを編成した。このサンプルを切断線CU1に沿って切断することにより1つの単位部位51と2つの単位部位52を作製した。図5に示すように裏返し口28から単位部位51を裏返すことにより本体2のサンプルを作製し、図9に示すように第二の裏返し口48から単位部位52を裏返すことにより紐3a,3bのサンプルを作製した。本体2の切れ間31,32に紐3aを通して紐3aの両端を結び、本体2の切れ間33,34に紐3bを通して紐3bの両端を結ぶことにより、マスクサンプルを作製した。
【0066】
得られたマスクサンプルは、接結部25及び第二の接結部45が肌に触れず、装着感が良好であった。本体2において表編地10と裏編地15とを引き離す向きに強く引っ張ったが、接結部25に破れは生じなかった。従って、本技術の編物製品は、表編地と裏編地とが接結部で接結編みにより強固に接結し、感触を向上させることが確認された。
【0067】
(5)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、感触を向上させた編物製品、感触を向上させる編物製品の製造方法、感触を向上させる編物、等の技術を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1…編物製品、2…本体、3,3a,3b…紐、4…構造、5…結び目、
6…形状保持部材、
10…表編地、10a…編成内面、10b…編成外面、11,12…折り返し部分、
15…裏編地、15a…編成内面、15b…編成外面、16,17…折り返し部分、
20…分離部、25…接結部、26…厚み付与部、28…裏返し口、
30,31,32,33,34…切れ間、
40…第二の分離部、45…第二の接結部、48…第二の裏返し口、
50,51,52…単位部位、
60…編物、61…本体領域、62…紐領域、
100…ダブルニット丸編機、
CL1…隙間、CL2…第二の隙間、CL3,CL4…隙間、
CU1…切断線、
O1…外部、
ST1…編物形成工程、ST2…切断工程、ST3…裏返し工程。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15