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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】遮光システム及び反射日光源導出装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/264 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
E06B9/264 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020134867
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022030695
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑山 絹子
(72)【発明者】
【氏名】和田 一樹
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-132194(JP,A)
【文献】特開2009-155845(JP,A)
【文献】特開2006-161309(JP,A)
【文献】特開2014-224346(JP,A)
【文献】特開2001-73657(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0293270(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/00-9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁の窓に設置された遮光装置と、
手動で操作した前記遮光装置の遮光履歴及び採光履歴の少なくとも一方を記録する遮光記録部と、
前記窓又は該窓の近傍の照度の履歴を記録する照度記録部と、
前記遮光記録部の記録と、太陽位置と、前記照度記録部の記録と、を用いて、前記遮光装置を制御して遮光及び採光する制御装置と、
を備えた遮光システム。
【請求項2】
前記建物の屋上で照度を測定する照度測定部を有し、
前記制御装置は、前記照度測定部が測定した照度が閾値以下の場合は遮光しないように制御する、
請求項1に記載の遮光システム。
【請求項3】
建物の外壁の窓に設置された遮光装置を手動で操作した前記遮光装置の遮光履歴を記録する遮光記録部と、
前記遮光記録部に記録された遮光時の太陽位置と、前記窓の向きと、を用いて、前記窓から直射日光が入射しない前記太陽位置の場合の入射光を反射体に反射した反射日光とし、前記反射体の反射光源位置を導出する導出部と、
を備えた反射日光源導出装置。
【請求項4】
前記窓又は該窓の近傍の照度の履歴を記録する照度記録部を有し、
前記導出部は、前記遮光記録部に記録された遮光時及び前記照度記録部に記録された閾値以上の照度時における太陽位置と、前記窓の向きと、に基づいて前記反射光源位置を導出する、
請求項3に記載の反射日光源導出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光システム及び反射日光源導出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動ブラインドのスラット昇降動作及びスラット角度調節動作を自動制御する電動ブラインドの制御装置に関する技術が開示されている。この先行技術では、電動ブラインドの制御装置は、太陽光の入射角を一定時間毎に算出する演算手段と、演算手段で算出された入射角に基づいて、室内への直射光の入射を遮断するように電動ブラインドのスラット角度を制御する制御部を備えている。演算手段は、反射物に反射して入射する反射光の入射角を算出可能とし、制御部は、演算手段で算出された反射光の入射角に基づいて、当該電動ブラインドが設置された制御ビル内への反射光の入射を遮断するようにスラット角度を制御する。
【0003】
特許文献2には、ブラインド制御システムに関する技術が開示されている。この先行技術では、ブラインド制御システムは、窓面に対向する屋外の輝度分布を計測する輝度分布計測部と、輝度分布計測部により計測された屋外の輝度分布に基づいてブラインドを制御する制御部とを備えている。輝度分布計測部は、外部から窓面に入射する光に関する輝度分布の画像データを得るために屋外に向けられたカメラを有している。
【0004】
特許文献3には、スラットの高さ及び角度を自動的に調整する機能を備えた電動ブラインドの制御装置に関する技術が開示されている。この先行技術では、電動ブラインドの制御装置は、太陽からの直射光の有無を検出する屋外照度計と、各電動ブラインドにそれぞれ設けた屋内照度計と、太陽からの直射光が入射する位置に設置された電動ブラインドに対し、屋外照度計で検出した照度値があらかじめ設定された規定値を超えるとともに、屋内照度計で検出した照度値が規定値を超えないとき、当該電動ブラインドのスラットの角度を、外光を採り入れる角度に制御する日陰制御装置とを備えている。
【0005】
特許文献4には、省エネルギー制御装置に関する技術が開示されている。この先行技術では、省エネルギー制御装置は、複数のスラットを建物の開口部に並設して、スラットの昇降位置およびスラットの回転角度を調整自在に構成されたブラインドを、協調制御ユニットが制御する。協調制御ユニットは、スラットの昇降位置を制御する昇降制御およびスラットの回転角度を制御する開閉制御を行い、ブラインドを介して建物内に入射する入射光を利用して、建物内の照明負荷および空調負荷の各消費エネルギーの和を抑制する方向に、スラットの昇降位置およびスラットの回転角度を制御する制御部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-073657号公報
【文献】特開2016-023428号公報
【文献】特開2008-156817号公報
【文献】特開2012-132194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
建物の外壁の窓に設置された遮光装置を自動で遮光する制御、例えばブラインドを自動開閉する制御の場合、例えば周辺建物に反射した反射日光を事前にシミュレーションを行いし、制御プログラムに組み込んでおく必要がある。更に、当該建物が竣工後に建てられた周辺建物の場合は、新たにシミュレーションを行って、制御プログラムを更新する必要がある。
【0008】
本発明は、上記事実を鑑み、建物の外壁の窓に設置された遮光装置の制御に対して周辺建物に反射した反射日光の影響を容易に反映させることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一態様は、建物の外壁の窓に設置された遮光装置と、手動で操作した前記遮光装置の遮光履歴及び採光履歴の少なくとも一方を記録する遮光記録部と、前記遮光記録部の記録と、太陽位置と、を用いて、前記遮光装置を制御して遮光及び採光する制御装置と、を備えた遮光システムである。
【0010】
第一態様の遮光システムでは、手動で操作した遮光装置の遮光履歴及び採光履歴の少なくとも一方と、太陽位置と、を用いて、制御装置が遮光装置を制御して遮光及び採光する。よって、建物の外壁の窓に設置された遮光装置の制御に対して、周辺建物に反射した反射日光の影響を容易に反映させることができる。
【0011】
第二態様は、前記窓又は該窓の近傍の照度の履歴を記録する照度記録部を有し、前記制御装置は、前記遮光記録部の記録及び前記照度記録部の記録、を用いて、前記遮光装置を制御して遮光及び採光する、第一態様に記載の遮光システムである。
【0012】
第二態様の遮光システムでは、制御装置は、遮光記録部の記録に加え、窓又は窓の近傍の照度の履歴を記録する照度記録部の記録を用いるので、例えば、休業日等で手動による遮光装置の操作がない日があっても、建物の外壁の窓に設置された遮光装置の制御に対して周辺建物に反射した反射日光の影響を容易に反映させることができる。
【0013】
第三態様は、前記建物の屋上で照度を測定する照度測定部を有し、前記制御装置は、前記照度測定部が測定した照度が閾値以下の場合は遮光しないように制御する、第一態様又は第二態様に記載の遮光システムである。
【0014】
第三態様の遮光システムでは、照度が閾値以下の場合、すなわち曇りや雨の日等は、遮光しないようにできる。
【0015】
第四態様は、建物の外壁の窓に設置された遮光装置を手動で操作した前記遮光装置の遮光履歴を記録する遮光記録部と、前記遮光記録部に記録された遮光時の太陽位置と、前記窓の向き、とを用いて、前記窓から直射日光が入射しない前記太陽位置の場合の入射光を反射体に反射した反射日光とし、前記反射体の反射光源位置を導出する導出部と、を備えた反射日光源導出装置である。
【0016】
第四態様の反射日光源導出装置では、建物の外壁の窓に設置された遮光装置を手動で操作した遮光履歴における遮光時の太陽位置と、前記窓の向き、を用いて、導出部が反射体の反射光源位置を導出する。よって、例えば、建物が竣工後に周辺に建築された周辺建物が反射体であっても反射光源位置を導出することができる。
【0017】
第五態様は、前記窓又は該窓の近傍の照度の履歴を記録する照度記録部を有し、前記導出部は、前記遮光記録部に記録された遮光時及び前記照度記録部に記録された閾値以上の照度時における太陽位置と、前記窓の向きと、に基づいて前記反射光源位置を導出する、第四態様に記載の反射日光源導出装置である。
【0018】
第五態様の反射日光源導出装置では、遮光記録部の記録に加え、窓又は窓の近傍の照度の履歴を用いるので、例えば、休業日等で手動による遮光装置の操作がない日があっても、反射光源位置をより正確に導出できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、建物の外壁の窓に設置された遮光装置の制御に対して周辺建物に反射した反射日光の影響を容易に反映させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ブラインドが設けられた窓がある居室の東西に沿った縦断面図である。
図2】建物及び周辺建物を模式的に示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態の遮光システムのブロック図である。
図4図3の遮光システムの制御装置を機能的に示すブロック図である。
図5】ブラインドの自動開閉制御のフローチャートである。
図6】建物及び周辺建物を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施形態>
本実施形態の遮光システム100について説明する。なお、図における南の方角を符号Sで示し、北の方角を符号Nで示し、東の方角を符号Eで示し、西の方角を符号Wで示す。
【0022】
[建物構成]
まず、遮光システム100が設けられた建物10について説明する。
【0023】
図2に示す本実施形態の建物10は、所謂オフィスビルである。また、この建物10の横に別の建物500が建築されている。なお、この別の建物500を以降、「周辺建物500」と記す。
【0024】
図2に示すように、建物10の屋上12には、日射計42が設置されている。また、図1に示すように、建物10の外壁20の窓30に、遮光装置の一例としてのブラインド50が設けられている。また、ブラインド50が設けられた窓30には、照度計40が設けられている。なお、本実施形態では、窓30及びブラインド50が設けられている部屋を居室22とする。
【0025】
ブラインド50は、水平方向に沿って配置された長尺で板状の複数のスラット52を有し、スラット52の角度を変えることで、開閉される構造となっている。なお、スラット52の面外方向が水平方向又は略水平方向に沿っている場合が、ブラインド50が閉じた状態である。また、スラット52の面外方向が上下方向又は略上下方向に沿っている場合が、ブラインド50が開いている状態である。
【0026】
ブラインド50は、スラット52の角度を変えて開閉する開閉機構部54を有している。また、ブラインド50は、居室22に居る人が、手動でブラインド50を開閉するためのコントローラ56を有している。なお、開閉機構部54は、図示していない電気モータ及びリンク機構等を有している。
【0027】
[遮光システム]
次に遮光システム100について説明する。
【0028】
図3に示すように、遮光システム100は、ブラインド50と、制御装置60と、照度計40と、日射計42と、を含んで構成されている。遮光システム100は、手動操作によるブラインド50の開閉履歴及び照度計40の照度履歴から自動的にブラインド50を開閉する。
【0029】
前述した開閉機構部54は、制御装置60と電気的に接続され、制御装置60によってブラインド50の開閉が制御されている。また、前述したコントローラ56、窓30(図1参照)に設けられた照度計40及び屋上12(図2参照)に設置された日射計42は、それぞれ制御装置60と電気的に接続されている。
【0030】
遮光システム100を構成する制御装置60のハードウェア構成は、図示していないCPU(Central Processing Unit)、各処理ルーチンを実現するためのプログラム等を記憶したROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、記憶手段としてのHDD(Hard Disk Drive)及びネットワークインタフェース等を含んだコンピュータによって構成されている。なお、制御装置60は、複数のサーバやクラウド等を用いて構成されていてもよい。
【0031】
図4に示すように、制御装置60は、機能的には、開閉履歴記録部62、照度履歴記録部64、導出部66及び開閉制御部68を備えている。
【0032】
開閉履歴記録部62は、ブラインド50のコントローラ56(図1及び図3参照)を用いての手動による開閉の履歴(以降「開閉履歴」と記す)を記憶する。なお、本実施形態における開閉履歴とは、ブラインド50が閉じられているときと開いているときの時間(月、日、時、分)を記録したものである。
【0033】
照度履歴記録部64は、照度計40(図1及び図3参照)が測定した照度の履歴(以降「照度履歴」と記す)を記憶する。なお、本実施形態における照度履歴とは、窓30における照度の時間経過を記録したものである。
【0034】
導出部66は、後述する反射光源位置HK(図2及び図6参照)を導出する。
【0035】
開閉制御部68は、開閉機構部54(図1及び図3参照)を制御してブラインド50(図1及び図3参照)を開閉する。
【0036】
また、開閉制御部68は、時間情報を取得する。時間情報は、年、月、日、時及び分を含む現在時刻であり、本実施形態では、インターネット16を介してNTPサーバ18から取得している。更に、開閉制御部68は、日射計42(図2及び図3参照)の測定値が入力される。
【0037】
開閉制御部68には、開閉履歴記録部62に記憶された開閉履歴、照度履歴記録部64に記録された照度履歴、日射計42の測定値及び取得した時間情報を用いて、開閉機構部54の制御、すなわちブラインド50(図1参照)の開閉の制御を行うための制御プログラム及びデータベース等が格納されている。なお、データベースには、窓30の向き等のデータが格納されている。なお、「窓30の向き」とは、窓30が向いている方角である。
【0038】
[ブラインドの自動開閉制御]
次に、ブラインド50の自動開閉制御について説明する。なお、図2及び図6における実線で示す太陽Tは周辺建物500に直射日光CNが反射した反射日光HNが窓30に照射される場合を示し、想像線で示す太陽Tは直射日光CNが窓30に照射される場合を示している。
【0039】
開閉制御部68は、屋上12の日射計42の照度が閾値以上であるか否かを判断する。なお、照度の閾値は、適宜設定する。例えば、照度の閾値は曇り及び雨等の照度であってもよいし、居室22に居る人が眩しいと感じる照度であってもよい。
【0040】
そして、日射計42の照度が閾値未満の場合は、ブラインド50を開ける。一方、日射計42の照度が閾値以上の場合は、時間情報から太陽T(図2及び図6参照)の太陽位置を求め、太陽位置と窓30の向きから窓30から直射日光CN(図2及び図6参照)が入るか否かを求める。なお、太陽位置とは、太陽方位角及び太陽高度である。
【0041】
直射日光が入らない場合は、反射光源位置HK(図2及び図6参照)と、太陽位置と、窓30の向きと、から反射光源位置HK(図2及び図6参照)で反射した反射日光HN(図2及び図6参照)が窓30から入るか否かを求める。なお、本実施形態では、反射光源位置HKとは、日光が反射する周辺建物500の壁面502(図2及び図6参照)における反射位置である。また、反射光源位置HKは、導出部66で導出されると共に導出部66に導出結果が記憶されている。
【0042】
そして、開閉制御部68は、直射日光CN(図2及び図6参照)及び反射日光HN(図2及び図6参照)の少なくも一方が窓30から入る場合は、ブラインド50を閉じる。直射日光CN及び反射日光HNの両方共が窓30から入らない場合は、ブラインド50を開ける。
【0043】
次に、ブラインド50の上記の自動開閉制御について、図5のフローチャートを用いて説明する。
【0044】
ステップS102では、開閉制御部68は屋上12の日射計42の照度が閾値以上であるか否かを判断する。日射計42の照度が閾値未満の場合(ステップS102:NO)は、ステップS108に進みブラインド50を開ける。日射計42の照度が閾値以上の場合(ステップS102:YES)は、ステップS104に進む。
【0045】
ステップS104では、時間情報から太陽位置を求め、太陽位置と窓30の向きから窓30から直射日光が入るか否かを求める。直射日光が入る場合(ステップS104:YES)は、ステップS110に進み、ブラインド50を閉じる。窓30から直射日光が入らない場合(ステップS104:NO)は、ステップS106に進む。
【0046】
ステップS106では、導出部66から読み出した反射光源位置HKと、太陽位置と、窓30の向きと、から反射光源位置HKで反射した反射日光HNが窓30から入るか否かを求める。反射日光が入る場合(ステップS106:YES)は、ステップS110に進み、ブラインド50閉じる。窓30から直射日光が入らない場合(ステップS106:NO)は、ステップS108に進みブラインド50を開ける。
【0047】
前述したように、ステップS108では開閉制御部68はブラインド50を開け、ステップS110では開閉制御部68はブラインド50を閉じ、それぞれステップS102に戻る。
【0048】
[反射光源位置の導出]
次に導出部66における反射光源位置HKの導出方法について説明する。
【0049】
図4に示す導出部66は、開閉履歴記録部62に記憶された開閉履歴を用いて、ブラインド50(図1参照)が閉じられたときの太陽位置を求める。すなわち、ブラインド50が閉じられた時間における太陽位置を求める。
【0050】
次に、導出部66は、太陽位置と、窓30の向きとから、ブラインド50が閉じられた時間における窓30に照射されている日光が直射日光CN(図2及び図6参照)及び周辺建物500の壁面502(図2及び図6参照)で反射した反射日光HN(図2及び図6参照)のいずれかであるかを判断する。
【0051】
反射日光HNの場合は、導出部66は、太陽位置と窓30の向きとから、反射光源位置HKを求める。反射光源位置HKの計算方法は、後述する。
【0052】
また、導出部66は、照度履歴記録部64に記憶された照射履歴を用いて、照度が所定値以上である場合の太陽位置を求める。すなわち、窓30の照度が所定値以上である時間における太陽位置を求める。なお、窓30に設けた照度計40の照度が所定以上であるとは、窓30に直射日光CN又は反射日光HNが照射されていることを示している。
【0053】
導出部66は、太陽位置と、窓30の向きとから、窓30の照度が所定値以上である時間における窓30に照射されている日光が直射日光CN及び周辺建物500で反射した反射日光HNのいずれかであるかを判定する。
【0054】
反射日光HNの場合は、導出部66は、同様に太陽位置と窓30の向きとから、反射光源位置HKを求める。反射光源位置HKの計算方法は、後述する。
【0055】
[反射光源位置の計算方法]
次に導出部66における反射光源位置HKの計算方法の一例について説明する。
【0056】
図2及び図6に示す建物10の位置を
緯度φ:北緯35.667397
経度L:東経139.81984
とし、
窓30を東向きとする。
また、日時を夜の時間が最も長い日(冬至の日)の12:00とする。
【0057】
まず、ブラインド50(図2参照)が閉じられたときの太陽Tの太陽位置、つまり太陽方位角α及び太陽高度hを求める。
【0058】
また、その他の条件を
真太陽時:th
日赤緯:δ
時角:t
元旦からの通し日:n(日)
日本標準時:T
均時差:e
とする。
【0059】
th=T+(L-135)×4+e (1)
【0060】
t=(th-12)×15 (2)
【0061】
Δ=23.45×sin(0.017166n-1.3988) (3)
【0062】
sinHN=sinφ×sinΔ+cosφ×cosΔ×cost (4)
【0063】
sinα=cosΔ×sint/cosh (5)
【0064】
となり、
これら(1)~(4)から
【0065】
th=T+(L-135)×4+e
=12+(139.819848-135)×4+1.309
=12:20:35(12時20分35秒)
【0066】
t=(th-12)×15
=(12.343-12)×15
=5.145
【0067】
Δ=23.45×sin(0.017166n-1.3988)
=23.45×sin(0.017166×357-1.3988)
=-23.45
【0068】
sinHN=sinφ×sinΔ+cosφ×cosΔ×cost
=30.72
【0069】
sinα=cosΔ×sint/cosh
=185.49
【0070】
となる。
【0071】
なお、均時差eは、
均時差e=平均太陽時-視太陽時
=(時差-経度/15)+12時-太陽の南中時刻
から算出した、
【0072】
また、周辺建物500の反射面である壁面502は、鉛直面且つ西向きとする。
【0073】
そして、壁面502における直射日光CNの入射角と反射日光HNの反射角とは等しいので、太陽方位角α及び太陽高度hの反射日光HNの延長線上の壁面502が反射光源位置HKとなる。
【0074】
なお、照度計40の照度が所定値以上の場合も同様に反射光源位置HKを計算できる。
【0075】
ここで、この反射光源位置HKは、太陽Tの太陽位置の移動に伴って移動する。つまり、反射光源位置HKは、時間の経過と共に移動する。よって、導出された周辺建物500の壁面502の反射光源位置HKのデータを導出部66が蓄積してくことで、反射光源位置HKの範囲が正確に導出され、前述したブラインド50の自動開閉制御の精度が向上していく。別の観点から説明すると、反射光源位置HKをプロットしていくことで、反射光源位置HKの範囲が正確に求められる。
【0076】
なお、反射光源位置HKのデータの蓄積は、終日(24時間)且つ通年(365日)に亘って行われることが望ましい。しかし、一部の日のみデータであってもよい。その場合、昼の長さが最も長い日(夏至の日)、夜の長さが最も長い日(冬至の日)及び昼と夜の長さが同じ日(春分の日又は秋分の日)のデータがあった方が望ましい。
【0077】
<作用及び効果>
次に本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0078】
遮光システム100では、コントローラ56を用いて手動で操作したブラインド50の開閉履歴を用いて、制御装置60がブラインド50を開閉する。よって、建物10の外壁20の窓30に設置されたブラインド50の制御に対して、周辺建物500に反射した反射日光HKの影響を容易に反映させることができる。
【0079】
また、制御装置60は、ブラインド50の開閉履歴に加え、窓30に設けられた照度計40の照度履歴を用いるので、例えば、居室22に土日等でコントローラ56を用いた手動によるブラインド50の開閉操作がない日があっても、周辺建物500に反射した反射日光HNの影響を容易に反映させることができる。
【0080】
また、屋上12に設けた日射計42で測定した照度が閾値以下の場合、例えば曇りや雨の日等は、ブラインド50を閉じないで開けておくことができる。
【0081】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0082】
例えば、上記実施形態では、ブラインド50の開閉履歴、すなわち閉じた遮光履歴と開いた採光履歴の両方を記録したが、これに限定されない。いずれか一方であってもよい。
【0083】
また、例えば、上記実施形態では、照度計40は窓30に設けたが、これに限定されない。窓30の近傍に照度計40を設けてもよい。つまり、居室22に人が居ないとき等に、窓30から直射日光CN及び反射日光HNが入るときに検知可能な位置に照度計40を設けていればよい。
【0084】
また、例えば、上記実施形態では、ブラインド50の開閉履歴に加え、照度計40の照度履歴を用いて制御したが、これに限定されない。ブラインド50の開閉履歴のみを用いて制御してもよい。
【0085】
また、例えば、上記実施形態では、屋上12に設置した日射計42の測定した照度が所定値以下の場合は、ブラインド50を閉じないように制御したが、これに限定されない。屋上12に設置した日射計42を用いなくてもよい。
【0086】
また、例えば、上記実施形態では、遮光装置としてブラインド50を用いたが、これに限定されない。例えば、印加される電圧に応じて透過率が増減する調光フィルムが貼られた窓であってもよい。
【0087】
ここで、反射光源位置HKは、ブラインド50の自動開閉制御等の遮光装置の自動制御に用いたが、これに限定されない。反射光源位置HKは、例えば、新たに建築されたり、建て替えられたりした周辺建物500の位置や大きさの概要の推定や光害の調査等に使用することができる。例えば、反射光源位置HKをプロットしていくことで、反射光源位置HKの範囲が正確に求められる。また、複数の窓30の反射光源位置HKを合わせることで、周辺建物500の壁面502の位置や大きさが推定できる。
【0088】
また、制御装置60が、前述の周辺建物500の壁面502の位置や大きさを推定した結果と、太陽位置と、窓30の向きと、から直射日光CHが周辺建物500に遮られ窓30に照射しないときを求め、ブラインド50の開閉の制御に用いてもよい。つまり、周辺建物500の影になり直射日光CHが窓30に照射しない場合は、ブラインド50を閉じるように制御してもよい。
【0089】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。複数の実施形態及び変形例等は、適宜、組み合わされて実施可能である。
【符号の説明】
【0090】
10 建物
12 屋上
20 外壁
30 窓
40 照射計
42 日射計(照度測定部の一例)
50 ブラインド(遮光装置の一例)
60 制御装置(反射日光源導出装置の一例)
62 開閉履歴記録部(遮光記録部の一例)
64 照度履歴記録部(照度記録部の一例)
66 導出部
100 遮光システム
500 周辺建物(反射体の一例)
CN 直射日光
HN 反射日光
HK 反射光源位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6