(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】用紙搬送装置、画像読取装置、用紙搬送装置の制御プログラムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
B65H 7/08 20060101AFI20240515BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240515BHJP
B65H 1/00 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
B65H7/08
H04N1/00 567M
B65H1/00 501A
(21)【出願番号】P 2020139076
(22)【出願日】2020-08-20
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168217
【氏名又は名称】大村 和史
(72)【発明者】
【氏名】廣 英幸
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-027851(JP,A)
【文献】特開2007-230681(JP,A)
【文献】特開2020-077968(JP,A)
【文献】特開2020-083638(JP,A)
【文献】特開2020-97462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/08
H04N 1/00
B65H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置部に載置された用紙を1枚単位で搬送路に取り込んで当該搬送路に沿って搬送させる用紙搬送装置であって、
前記載置部に載置された前記用紙の搬送方向に垂直な方向における寸法である幅寸法を検知する幅寸法検知手段、
前記搬送路を搬送中の前記用紙の基本姿勢に対する当該用紙の傾き度合を検知する傾き度合検知手段、
前記傾き度合検知手段による検知結果が閾値を超えるときに前記用紙の搬送を停止させる停止手段、
前記幅寸法検知手段による検知結果に基づいて前記閾値を設定する閾値設定手段
、および
前記用紙が薄紙であることを指示するユーザ操作を受け付けるユーザ操作受付手段を備え
、
前記閾値設定手段は、前記幅寸法検知手段による検知結果に加えて、前記ユーザ操作受付手段により前記ユーザ操作が受け付けられたかどうかに基づいて、前記閾値を設定し、詳しくは当該ユーザ操作受付手段により当該ユーザ操作が受け付けられていない場合は、当該幅寸法検知手段による検知結果に基づいて当該閾値を設定し、当該ユーザ操作受付手段により当該ユーザ操作が受け付けられた場合は、当該閾値に代えて、当該閾値に所定の係数が乗ぜられた薄紙用閾値を設定し、
前記所定の係数の値は、前記幅寸法検知手段による検知結果に応じて変更される、用紙搬送装置。
【請求項2】
前記載置部に載置された前記用紙のサイズを検知するサイズ検知手段をさらに備え、
前記幅寸法検知手段は、前記サイズ検知手段による検知結果に基づいて前記幅寸法を検知する、請求項1に記載の用紙搬送装置。
【請求項3】
前記載置部に載置された前記用紙の前記搬送方向に垂直な方向における両側縁の位置を規制する規制手段、および
前記規制手段による規制位置を検知する規制位置検知手段をさらに備え、
前記幅寸法検知手段は、前記規制位置検知手段による検知結果に基づいて前記幅寸法を検知する、請求項1に記載の用紙搬送装置。
【請求項4】
前記用紙は、原稿であり、
前記搬送路の途中に、前記原稿の画像を読み取るための画像読取手段による画像読取位置が配される、請求項1から
3のいずれかに記載の用紙搬送装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の用紙搬送装置、および
前記画像読取手段を備える、画像読取装置。
【請求項6】
載置部に載置された用紙を1枚単位で搬送路に取り込んで当該搬送路に沿って搬送させる用紙搬送装置の制御プログラムであって、
前記載置部に載置された前記用紙の搬送方向に垂直な方向における寸法である幅寸法を検知する幅寸法検知手順、
前記搬送路を搬送中の前記用紙の基本姿勢に対する当該用紙の傾き度合を検知する傾き度合検知手順、
前記傾き度合検知手順による検知結果が閾値を超えるときに前記用紙の搬送を停止させる停止手順、および
前記幅寸法検知手順による検知結果に基づいて前記閾値を設定する閾値設定手順を、前記用紙搬送装置のコンピュータに実行させ
、
前記用紙搬送装置は、前記用紙が薄紙であることを指示するユーザ操作を受け付けるユーザ操作受付手段を備え、
前記閾値設定手順では、前記幅寸法検知手順による検知結果に加えて、前記ユーザ操作受付手段により前記ユーザ操作が受け付けられたかどうかに基づいて、前記閾値を設定し、詳しくは当該ユーザ操作受付手段により当該ユーザ操作が受け付けられていない場合は、当該幅寸法検知手順による検知結果に基づいて当該閾値を設定し、当該ユーザ操作受付手段により当該ユーザ操作が受け付けられた場合は、当該閾値に代えて、当該閾値に所定の係数が乗ぜられた薄紙用閾値を設定し、
前記所定の係数の値は、前記幅寸法検知手順による検知結果に応じて変更される、制御プログラム。
【請求項7】
載置部に載置された用紙を1枚単位で搬送路に取り込んで当該搬送路に沿って搬送させる用紙搬送装置の制御方法であって、
前記載置部に載置された前記用紙の搬送方向に垂直な方向における寸法である幅寸法を検知する幅寸法検知ステップ、
前記搬送路を搬送中の前記用紙の基本姿勢に対する当該用紙の傾き度合を検知する傾き度合検知ステップ、
前記傾き度合検知ステップによる検知結果が閾値を超えるときに前記用紙の搬送を停止させる停止ステップ、および
前記幅寸法検知ステップによる検知結果に基づいて前記閾値を設定する閾値設定ステップを含
み、
前記用紙搬送装置は、前記用紙が薄紙であることを指示するユーザ操作を受け付けるユーザ操作受付手段を備え、
前記閾値設定ステップでは、前記幅寸法検知ステップによる検知結果に加えて、前記ユーザ操作受付手段により前記ユーザ操作が受け付けられたかどうかに基づいて、前記閾値を設定し、詳しくは当該ユーザ操作受付手段により当該ユーザ操作が受け付けられていない場合は、当該幅寸法検知ステップによる検知結果に基づいて前記閾値を設定し、当該ユーザ操作受付手段により当該ユーザ操作が受け付けられた場合は、当該閾値に代えて、当該閾値に所定の係数が乗ぜられた薄紙用閾値を設定し、
前記所定の係数の値は、前記幅寸法検知ステップによる検知結果に応じて変更される、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙搬送装置、画像読取装置、用紙搬送装置の制御プログラムおよび制御方法に関し、特に、載置部に載置された用紙を1枚単位で搬送路に取り込んで当該搬送路に沿って搬送させる、用紙搬送装置、画像読取装置、用紙搬送装置の制御プログラムおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術の一例が、特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示された技術によれば、原稿の姿勢に適合した傾き補正を行うことのできる画像読取装置において、搬送路を搬送中の原稿の姿勢が検出される。そして、検出された原稿の姿勢が予め定められた第1閾値以上に傾いた姿勢であるときに、原稿の傾きが補正される。一方、原稿の傾きが第1閾値未満であるときには、原稿の傾きは補正されない。さらに、原稿の搬送方向における寸法が予め定められた寸法よりも大きい長尺原稿については、第1閾値に代えて、当該第1閾値よりも傾き量が小さいことを表す第2閾値が、適用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、搬送路を搬送中の原稿の傾きが過度に大きい場合には、原稿が搬送路の側縁部に引っ掛かって破損するなどのダメージを受ける虞がある。これを回避するために、原稿の傾きが過度に大きい場合には、原稿の搬送が停止されるのが、望ましい。このとき、原稿の傾き度合が同じであっても、原稿の寸法、とりわけ搬送方向に垂直な方向における寸法、いわゆる幅寸法、が大きいほど、原稿が搬送路の側縁部に引っ掛かる可能性が高い。一方、原稿の幅寸法が比較的に小さい場合には、原稿が多少傾いても、原稿が搬送路の側縁部に引っ掛かる可能性は低い。したがって、原稿が搬送路の側縁部に引っ掛かることによる当該原稿へのダメージを確実に回避しつつ、原稿の搬送が不必要に停止されずに効率的に行われるようにすることが、肝要である。
【0005】
そこで、本発明は、原稿などの用紙を搬送路に沿って搬送させる用紙搬送装置、用紙搬送装置を備える画像読取装置、用紙搬送装置の制御プログラムおよび制御方法において、用紙が搬送路の側縁部に引っ掛かることによる当該用紙へのダメージを確実に回避しつつ、用紙の搬送が不必要に停止されずに効率的に行われるようにすることができる、新規な技術を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明は、用紙搬送装置に係る第1の発明と、当該用紙搬送装置を備える画像読取装置に係る第2の発明と、用紙搬送装置の制御プログラムに係る第3の発明と、用紙搬送装置の制御方法に係る第4の発明と、を含む。
【0007】
このうちの用紙搬送装置に係る第1の発明は、載置部に載置された用紙を1枚単位で搬送路に取り込んで当該搬送路に沿って搬送させる装置であって、幅寸法検知手段と、傾き度合検知手段と、停止手段と、閾値設定手段と、ユーザ操作受付手段と、を備える。幅寸法検知手段は、載置部に載置された用紙の搬送方向に垂直な方向における当該用紙の寸法である幅寸法を検知する。傾き度合検知手段は、搬送路を搬送中の用紙の基本姿勢に対する当該用紙の傾き度合を検知する。停止手段は、傾き度合検知手段による検知結果が、つまり搬送中の用紙の傾き度合が、閾値を超えるときに、用紙の搬送を停止させる。そして、閾値設定手段は、幅寸法検知手段による検知結果に基づいて、つまり用紙の幅寸法に基づいて、閾値を設定し、厳密には少なくとも傾き度合検知手段による用紙の傾き度合の検知の前に、当該閾値を設定する。さらに、ユーザ操作受付手段は、用紙が薄紙であることを指示するユーザ操作を受け付ける。ここで、閾値設定手段は、幅寸法検知手段による検知結果に加えて、ユーザ操作受付手段により前述のユーザ操作が受け付けられたかどうかに基づいて、つまり用紙が薄紙であるかどうかに基づいて、閾値を設定する。詳しくは、閾値設定手段は、ユーザ操作受付手段により前述のユーザ操作が受け付けられていない場合は、つまり用紙が薄紙でない場合は、幅寸法検知手段による検知結果に基づいて閾値を設定する。一方、ユーザ操作受付手段により前述のユーザ操作が受け付けられた場合は、つまり用紙が薄紙である場合は、閾値設定手段は、幅寸法検知手段による検知結果に基づく閾値に代えて、当該閾値に所定の係数が乗ぜられた薄紙用閾値を設定する。さらに、所定の係数の値は、幅寸法検知手段による検知結果に応じて変更される。
【0008】
なお、本第1の発明においては、サイズ検知手段が、さらに備えられてもよい。サイズ検知手段は、載置部に載置された用紙のサイズを検知する。この場合、幅寸法検知手段は、サイズ検知手段による検知結果に基づいて、つまり用紙のサイズに基づいて、当該用紙の幅寸法を検知してもよい。
【0009】
また、本第1の発明においては、規制手段と、規制位置検知手段と、がさらに備えられてもよい。規制手段は、載置部に載置された用紙の搬送方向に垂直な方向における当該用紙の両側縁の位置を規制し、たとえば機械的(物理的)に規制する。そして、規制位置検知手段は、規制手段による規制位置を、つまり用紙の搬送方向に垂直な方向における当該用紙の両側縁の位置を、検知する。この場合、幅寸法検知手段は、規制位置検知手段による検知結果に基づいて、つまり用紙の搬送方向に垂直な方向における当該用紙の両側縁の位置に基づいて、当該用紙の幅寸法を検知してもよい。
【0012】
本第1の発明における用紙は、たとえば原稿であってもよい。そして、搬送路の途中に、原稿の画像を読み取るための画像読取手段による画像読取位置が、配されてもよい。すなわち、本第1の発明は、原稿を1枚単位で画像読取手段による画像読取位置に送り込む、いわゆる原稿送り装置に、適用されてもよい。
【0013】
本発明のうちの第2の発明に係る画像読取装置は、第1の発明に係る用紙搬送装置を備え、厳密には原稿送り装置としての用紙搬送装置を備える。併せて、本第2の発明に係る画像読取装置は、画像読取手段を備える。
【0014】
本発明のうちの第3の発明に係る用紙搬送装置の制御プログラムは、当該用紙搬送装置のコンピュータに、幅寸法検知手順と、傾き度合検知手順と、停止手順と、閾値設定手順と、を実行させる。ここで、用紙搬送装置は、載置部に載置された用紙を1枚単位で搬送路に取り込んで当該搬送路に沿って搬送させる装置である。併せて、用紙搬送装置は、ユーザ操作受付手段を備える。このユーザ操作受付手段は、用紙が薄紙であることを指示するユーザ操作を受け付ける。その上で、幅寸法検知手順では、載置部に載置された用紙の搬送方向に垂直な方向における当該用紙の寸法である幅寸法を検知する。傾き度合検知手順では、搬送路を搬送中の用紙の基本姿勢に対する当該用紙の傾き度合を検知する。停止手順では、傾き度合検知手順による検知結果が、つまり搬送中の用紙の傾き度合が、閾値を超えるときに、用紙の搬送を停止させる。そして、閾値設定手順では、幅寸法検知手順による検知結果に基づいて、つまり用紙の幅寸法に基づいて、閾値を設定し、厳密には少なくとも傾き度合検知手順による用紙の傾き度合の検知の前に、当該閾値を設定する。ここで、閾値設定手順では、幅寸法検知手順による検知結果に加えて、ユーザ操作受付手段により前述のユーザ操作が受け付けられたかどうかに基づいて、つまり用紙が薄紙であるかどうかに基づいて、閾値を設定する。詳しくは、閾値設定手順では、ユーザ操作受付手段により前述のユーザ操作が受け付けられていない場合は、つまり用紙が薄紙でない場合は、幅寸法検知手順による検知結果に基づいて閾値を設定する。一方、ユーザ操作受付手段により前述のユーザ操作が受け付けられた場合は、つまり用紙が薄紙である場合は、閾値設定手順では、幅寸法検知手順による検知結果に基づく閾値に代えて、当該閾値に所定の係数が乗ぜられた薄紙用閾値を設定する。さらに、所定の係数の値は、幅寸法検知手順による検知結果に応じて変更される。
【0015】
本発明のうちの第4の発明に係る用紙搬送装置の制御方法は、幅寸法検知ステップと、傾き度合検知ステップと、停止ステップと、閾値設定ステップと、を含む。ここで、用紙搬送装置は、載置部に載置された用紙を1枚単位で搬送路に取り込んで当該搬送路に沿って搬送させる装置である。併せて、用紙搬送装置は、ユーザ操作受付手段を備える。このユーザ操作受付手段は、用紙が薄紙であることを指示するユーザ操作を受け付ける。その上で、幅寸法検知ステップでは、用紙の搬送方向に垂直な方向における当該用紙の寸法である幅寸法を検知する。傾き度合検知ステップでは、搬送路を搬送中の用紙の基本姿勢に対する当該用紙の傾き度合を検知する。停止ステップでは、傾き度合検知ステップによる検知結果が、つまり搬送中の用紙の傾き度合が、閾値を超えるときに、用紙の搬送を停止させる。そして、閾値設定ステップでは、幅寸法検知ステップによる検知結果に基づいて、つまり用紙の幅寸法に基づいて、閾値を設定し、厳密には少なくとも傾き度合検知ステップによる用紙の傾き度合の検知の前に、当該閾値を設定する。ここで、閾値設定ステップでは、幅寸法検知ステップによる検知結果に加えて、ユーザ操作受付手段により前述のユーザ操作が受け付けられたかどうかに基づいて、つまり用紙が薄紙であるかどうかに基づいて、閾値を設定する。詳しくは、閾値設定ステップでは、ユーザ操作受付手段により前述のユーザ操作が受け付けられていない場合は、つまり用紙が薄紙でない場合は、幅寸法検知ステップによる検知結果に基づいて閾値を設定する。一方、ユーザ操作受付手段により前述のユーザ操作が受け付けられた場合は、つまり用紙が薄紙である場合は、閾値設定ステップでは、幅寸法検知ステップによる検知結果に基づく閾値に代えて、当該閾値に所定の係数が乗ぜられた薄紙用閾値を設定する。さらに、所定の係数の値は、幅寸法検知ステップによる検知結果に応じて変更される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、搬送路に沿って搬送される用紙が搬送路の側縁部に引っ掛かることによる当該用紙へのダメージを確実に回避しつつ、用紙の搬送が不必要に停止されずに効率的に行われるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施例に係る複合機の斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施例における自動原稿送り装置の原稿載置トレイに原稿が載置される状態を上方から見た図である。
【
図3】
図3は、第1実施例における自動原稿送り装置の内部構成を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施例における自動原稿送り装置の傾きセンサの配置位置を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施例における自動原稿送り装置により原稿が搬送される際の一状態を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施例における自動原稿送り装置により原稿が搬送される際の別の状態を模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施例における自動原稿送り装置により搬送中の原稿が傾くことによる不都合を説明するための図である。
【
図8】
図8は、第1実施例における自動原稿送り装置により搬送中の原稿が傾いた状態の一例を模式的に示す図である。
【
図9】
図9は、第1実施例における原稿のサイズごとの幅寸法を含む各値の一覧を示す図である。
【
図10】
図10は、第1実施例における原稿の推定幅寸法と閾値との関係を示す図である。
【
図11】
図11は、第1実施例に係る複合機の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図12】
図12は、第1実施例における主記憶部のRAM内の構成を概念的に示すメモリマップである。
【
図13】
図13は、第1実施例における閾値設定タスクの流れを示すフロー図である。
【
図14】
図14は、第1実施例における斜行監視タスクの流れを示すフロー図である。
【
図15】
図15は、本発明の第2実施例における他の機能設定画面を示す図である。
【
図16】
図16は、本発明の第3実施例における自動原稿送り装置の内部構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施例]
本発明の第1実施例について、
図1に示される複合機(MFP)10を例に挙げて説明する。
【0019】
本第1実施例に係る複合機10は、画像形成装置の一種であり、コピー機能、イメージスキャナ機能、ファクス機能などの複数の機能を有する。なお、
図1は、使用可能な状態に設置された複合機10の前面、上面および左側面を示す当該複合機10の斜視図である。すなわち、
図1における上下方向は、複合機10の上下方向に対応する。そして、
図1における右斜め下方は、複合機10の前方に対応し、
図1における左斜め上方は、複合機10の後方に対応する。また、
図1における左斜め下方は、複合機10の左方に対応し、
図1における右斜め上方は、複合機10の右方に対応する。
【0020】
この複合機10の上部には、画像読取手段の一例としての画像読取部12が設けられる。この画像読取部12は、後述する原稿100の画像を読み取って、その読取画像に応じた2次元の読取画像データを出力する、画像読取処理を担う。このため、画像読取部12は、原稿100が載置される不図示の原稿台を有する。この原稿台は、概略矩形平板状のガラスなどの透明部材により形成され、その両主面を水平方向に沿わせた状態で設けられる。この原稿台の両主面のうちの上面が、原稿100の載置面である。そして、原稿台の下方には、不図示の光源、ミラー、レンズ、ラインセンサなどを有する画像読取ユニット、ならびに、当該画像読取ユニットによる後述する画像読取位置Pを原稿台の下面に沿って移動(走査)させるための駆動機構などが、設けられる。すなわち、原稿台に原稿100が載置された状態で、画像読取ユニットによる画像読取位置Pが駆動機構により移動されることで、原稿100の画像が読み取られ、いわゆる固定読み方式により読み取られる。さらに、原稿台の上方には、当該原稿台に載置された原稿100を押さえるための原稿押さえカバーを兼ねる自動原稿送り装置(ADF)14が設けられる。
【0021】
自動原稿送り装置14は、原稿台の上面(原稿載置面)を外部に露出させる状態と、原稿台の上面を覆う状態と、に遷移可能に設けられる。このため、自動原稿送り装置14は、不図示のヒンジなどの適当な支点支持部材を介して複合機10の本体(筐体)に結合される。なお、
図1は、自動原稿送り装置14が原稿台の上面を覆った状態を示す。また、自動原稿送り装置14は、
図1に示される如く原稿台の上面を覆った状態にあるときに、厳密にはその上で、当該原稿台に原稿100などの何らかの(自動原稿送り装置14自体を除く)物体が載置されていない状態にあるときに、それ本来の機能を発揮する。
【0022】
この自動原稿送り装置14については、後で詳しく説明するが、当該自動原稿送り装置14は、載置部の一例としての原稿載置トレイ14aを有する。この原稿載置トレイ14aには、原稿100が、厳密にはシート状の原稿100が、載置可能であり、とりわけ複数枚の原稿100、100、…が積層状に載置可能である。そして、自動原稿送り装置14は、原稿載置トレイ14aに載置された原稿100を1枚単位で(1枚ずつ)自動的に取り込み、搬送路の一例としての後述する原稿搬送路200に沿って搬送させる。その途中で、原稿100は、前述の画像読取位置Pを通過し、厳密には固定された状態にある画像読取位置Pを通過する。これにより、原稿100の画像が読み取られ、いわゆる流し読み方式で読み取られる。その後、原稿100は、原稿排出トレイ14bに排出される。
【0023】
さらに、画像読取部12の下方に、画像形成手段の一例としての画像形成部16が設けられる。この画像形成部16は、前述の読取画像データなどの適宜の画像データに基づく画像を不図示のシート状の画像記録媒体としての用紙に形成する、つまり印刷する、画像形成処理を担う。この画像形成処理は、たとえば公知の電子写真方式(カールソンプロセス方式)により行われる。このため、画像形成部16は、不図示の感光体ドラム、帯電装置、露光装置、現像装置、転写装置、定着装置、クリーニング装置、除電装置などを備える。この画像形成部16による画像形成処理後の用紙、言わば印刷済の用紙は、排紙トレイ18に排出される。なお、排紙トレイ18は、画像形成部16と画像読取部12との間に設けられ、いわゆる複合機10の洞内空間に設けられる。また、画像形成部16は、電子写真方式に限らず、たとえばインクジェット方式によって、画像形成処理を行うものであってもよい。
【0024】
そして、画像形成部16の下方に、換言すれば複合機10の下部に、給紙手段の一例としての給紙部20が設けられる。この給紙部20は、複数の、たとえば4つの、給紙カセット20a、20a、…を有する。各給紙カセット20a、20a、…には、適宜のサイズの用紙が収容され、たとえば互いに異なるサイズの用紙が収容され、厳密には複数枚の用紙が積層状に収容可能である。また、
図1には示されないが、複合機10の右側面には、補助的な給紙トレイである手差しトレイ20b(
図11参照)が設けられる。この手差しトレイ20bには、任意のサイズの用紙が載置され、厳密には複数枚の用紙が積層状に載置可能である。給紙部20は、各給紙カセット20a、20a、…および手差しトレイ20bのいずれかを給紙元として、当該給紙元から画像形成部16へ用紙を1枚単位で供給する。
【0025】
加えて、複合機10の上部であって、当該複合機10の本体の前部に、概略矩形板状の操作ユニット22が設けられる。この操作ユニット22は、その一側縁を複合機10の本体に結合させつつ、当該一側縁を軸として回動可能に設けられる。この操作ユニット22の一方主面(
図1において上方を向いている主面)は、操作面であり、この操作面には、タッチパネル22a付きのディスプレイ22bが設けられる。
【0026】
タッチパネル22a付きのディスプレイ22bは、矩形状の表示面を有するディスプレイ22bと、このディスプレイ22bの表示面上に重なるように設けられたシート状のタッチパネル22aとが、一体的に組み合わされた構成品である。このうちのタッチパネル22aは、複合機10を使用する不図示のユーザによるタッチ操作を受付可能な操作受付手段の一例であり、たとえば投影型の静電容量方式のパネルである。そして、ディスプレイ22bは、表示手段の一例であり、たとえば液晶ディスプレイ(LCD)である。なお、タッチパネル22aは、投影型の静電容量方式に限らず、表面型の静電容量方式や電磁誘導方式、抵抗膜方式、赤外線方式などの他方式のパネルであってもよい。また、ディスプレイ22bは、液晶ディスプレイに限らず、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイなどであってもよい。
【0027】
ユーザは、常套的には複合機10の前方に立って、当該複合機10を使用し、とりわけ操作ユニット22を操作する。その際のユーザによる操作ユニット22の操作面の操作性および視認性が良好となるように、当該操作ユニット22は、前述の如く画像読取部12との結合部を軸として回動可能に設けられ、つまりユーザに対する当該操作面の角度が調整可能に設けられる。また、操作ユニット22は、タッチパネル22a以外に、押しボタンスイッチなどの適宜のハードウェアスイッチを有する。併せて、操作ユニット22は、ディスプレイ22b以外に、発光ダイオード(LED)などの適宜の発光手段を有する。
【0028】
ここで、
図2をも参照しつつ、自動原稿送り装置14に注目すると、自動原稿送り装置14は、規制手段の一例としての一対の原稿ガイド14cおよび14cを有する。この原稿ガイド14cおよび14cは、原稿載置トレイ14aに載置される原稿100の幅方向、厳密には自動原稿送り装置14による原稿100の搬送方向に垂直な方向(複合機10の前後方向)である言わば搬送幅方向、における原稿100の両側縁の位置を規制する。具体的には、原稿ガイド14cおよび14cは、
図2に矢印14dおよび14dで示されるように、搬送幅方向に沿って手動により移動(摺動)可能であり、原稿100の両側縁に当接することで、原稿100の両側縁の位置を機械的に規制する。なお、
図2においては、その見易さを考慮して、ならびに、説明の便宜上、原稿100を破線で示してある。また、原稿ガイド14cおよび14cは、互いに連動して対称的に移動し、つまり一方が移動されると、これに連動して他方が対称的に移動する。
【0029】
併せて、
図1および
図2には示されないが、自動原稿送り装置14は、規制位置検知手段の一例としての後述するガイド幅検知部14e(
図11参照)を有する。このガイド幅検知部14eは、原稿ガイド14cおよび14cによる規制位置を検知し、ひいては原稿ガイド14cおよび14cの相互間距離であるガイド幅を検知する。したがってたとえば、原稿ガイド14cおよび14cにより原稿100の搬送幅方向における両側縁の位置が規制された状態にあるときのガイド幅は、原稿100の搬送幅方向における寸法である幅寸法La(
図8参照)におおむね相当する。なお、図示を含む詳しい説明は省略するが、ガイド幅検知部14eは、原稿ガイド14cおよび14cの一方または両方の位置に応じた抵抗値を示すように設けられる可変抵抗器を含み、この可変抵抗器の抵抗値に基づいて、ガイド幅を検知する。これに代えて、ガイド幅検知部14eは、光センサなどの適宜のセンサにより原稿ガイド14cおよび14cの一方または両方の位置を検知し、ひいてはガイド幅を検知する構成であってもよい。
【0030】
さらに、自動原稿送り装置14は、複数の、たとえば2つの、扁平突起状の原稿検知片14fおよび14gを有する。これら2つの原稿検知片14fおよび14gは、原稿載置トレイ14aの搬送幅方向における略中央であって、原稿載置トレイ14aの搬送方向における互いに異なる適宜の位置に配される。そして、各原稿検知片14fおよび14gのそれぞれは、自身に外力が加わっていないときに、とりわけ上方からの外力が加わっていないときに、原稿載置トレイ14aの上面(原稿載置面)よりも上方へ突出した状態にある。一方、各原稿検知片14fおよび14gのそれぞれは、自身に外力が加わると、たとえば原稿100によって覆われると、その原稿100の重みにより原稿載置トレイ14a内に押し込められ、つまりはそうなるように構成される。
【0031】
加えて、
図1および
図2には示されないが、自動原稿送り装置14は、各原稿検知片14fおよび14gそれぞれの状態を検知するための後述する2つの原稿長さセンサ14hおよび14i(
図3参照)を有する。これら2つの原稿長さセンサ14hおよび14iは、原稿載置トレイ14a内に設けられる。そして、一方の原稿長さセンサ14hは、一方の原稿検知片14fの状態を検知し、他方の原稿長さセンサ14iは、他方の原稿検知片14gの状態を検知する。このような各原稿長さセンサ14hおよび14iは、たとえば光センサであり、詳しくは透過型の光センサである。また、各原稿長さセンサ14hおよび14iは、各原稿検知片14fおよび14gと協働して、後述する原稿長さ検知部14j(
図11参照)を構成する。
【0032】
図3を参照して、自動原稿送り装置14の内部に注目すると、自動原稿送り装置14は、原稿載置トレイ14a側の給紙口14kから原稿排出トレイ14b側の排紙口14mに至る原稿搬送路200を有する。この原稿搬送路200は、たとえばこれを横方から見ると、概略U字状(または概略C字状)である。
【0033】
原稿搬送路200の給紙口14kの近傍には、原稿載置トレイ14aに載置された原稿100を当該原稿載置トレイ14aから1枚単位で取り出すためのピックアップローラ14nが設けられる。このピックアップローラ14nにより原稿載置トレイ14aから取り出された原稿100は、給紙口14kを介して原稿搬送路200に取り込まれる。そのために、原稿搬送路200の給紙口14k側の端部、言わば上流側端部に、給紙ローラ14pが設けられる。
【0034】
そして、原稿搬送路200の途中には、原稿搬送路200に取り込まれた原稿100を当該原稿搬送路200に沿って搬送させるための複数の搬送ローラ14q、14q、…が適宜に設けられる。併せて、原稿搬送路200の途中に、前述の画像読取位置Pが配される。なお、各搬送ローラ14q、14q、…のうちの搬送方向における画像読取位置Pの直前(画像読取位置Pに最も近い上流側)にある搬送ローラ14q’は、画像読取位置Pへの原稿100の供給タイミングを調整するためのレジストローラを兼ねる。また、画像読取位置Pは、
図3の紙面に対して垂直な方向(主走査方向)へ延伸する。そして、原稿100が原稿搬送路200に沿って搬送される過程で当該原稿100が画像読取位置Pを通過することにより、画像読取位置Pが原稿100の搬送方向(副走査方向)へ相対的に移動し、その結果、原稿100の画像が流し読み方式で読み取られる。
【0035】
画像読取位置Pを通過した原稿100は、原稿搬送路200の下流側端部である排紙口14mを介して原稿排出トレイ14bに排出される。排紙口14mには、排紙ローラ14rが設けられる。この排紙ローラ14rを含め、ピックアップローラ14n、給紙ローラ14pおよび各搬送ローラ14q、14q、…のそれぞれは、後述するローラ駆動部14s(
図11参照)により駆動される。
【0036】
さらに、原稿搬送路200の途中には、当該原稿搬送路200に沿って搬送される原稿100を検知するための、換言すれば原稿100が通過したことを検知するための、複数の原稿搬送センサ14t、14t、…が適宜に設けられる。これら各原稿搬送センサ14t、14t、…は、たとえば光センサであり、詳しくは反射型の光センサである。なお、各原稿搬送センサ14t、14t、…は、後述する搬送検知部14u(
図11参照)を構成する。
【0037】
併せて、原稿搬送路200の途中であって、当該原稿搬送路200における上流側の適宜の位置に、たとえば最も上流側にある原稿搬送センサ14tと給紙ローラ14pとの間の位置に、傾きセンサ14vが設けられ、厳密には2つの傾きセンサ14vおよび14vが設けられる。これら2つの傾きセンサ14vおよび14vは、傾き度合検知手段の一例としての後述する傾き検知部14w(
図11参照)を構成する。なお、各傾きセンサ14vおよび14vは、互いに同じ仕様のセンサであり、たとえば反射型の光センサである。
【0038】
加えて、原稿載置トレイ14aの適宜の位置に、たとえば原稿載置トレイ14a内における給紙口14kに近い位置に、原稿載置センサ14xが設けられる。この原稿載置センサ14xは、原稿載置トレイ14aに原稿100が載置されているかどうかを検知するため原稿載置検知手段の一例である。この原稿載置センサ14xもまた、たとえば反射型の光センサである。そして、原稿載置トレイ14a内の適宜の位置に、詳しくは前述の各原稿検知片14fおよび14gの配置位置に対応して、各原稿長さセンサ14hおよび14iが設けられる。
【0039】
さて、前述の2つの傾きセンサ14vおよび14vは、
図4に示されるように、原稿搬送路200の中心線(原稿搬送路200の搬送幅方向(
図4における上下方向)における中心を表す線)200aに関して対称に設けられる。具体的には、各傾きセンサ14vおよび14vは、搬送方向(
図4における左右方向)においては、互いに同じ(共役な)位置に設けられ、詳しくは前述の如く最も上流側にある原稿搬送センサ14tと給紙ローラ14pとの間に設けられる。そして、搬送幅方向においては、各傾きセンサ14vおよび14vは、原稿搬送路200の中心線200aから互いに同じ距離Dを置いた位置に設けられる。
【0040】
この距離Dは、たとえば70mmである。すなわち、搬送幅方向における各傾きセンサ14vおよび14vの相互間距離2・Dは、140mmである。この相互間距離2・Dは、原稿100の最小サイズに応じて定められる。ここでは、原稿100の最小サイズとしてA5サイズが想定されており、相互間距離2・Dは、当該A5サイズの短辺寸法(148mm)よりも少し小さい値とされる。
【0041】
なお、
図4においては、原稿載置トレイ14aに原稿100が載置されるとともに、この原稿100の搬送幅方向における両側縁の位置が原稿ガイド14cおよび14cにより規制された状態にある。この状態にあるときには、原稿100の搬送幅方向における両側縁は、原稿搬送路200の中心線200aと平行を成す。このように原稿100の搬送幅方向における両側縁が原稿搬送路200の中心線200aと平行を成す状態にあるときの当該原稿100の姿勢を、基本姿勢と称する。また、
図4においては、(最も上流側にある)原稿搬送センサ14tが原稿搬送路200の中心線200a上から外れた位置にあるが、それぞれの原稿搬送センサ14tは、原稿搬送路200の中心線200a上に設けられてもよい。
【0042】
この
図4に示される状態において、原稿載置トレイ14aに載置された原稿100が給紙口14kを介して一枚単位で原稿搬送路200に取り込まれ、当該原稿搬送路200に沿って搬送される、とする。そして、
図5に示されるように、原稿100が基本姿勢を維持した状態で、当該原稿100の下流側端縁(
図5における左側の端縁)が各傾きセンサ14vおよび14vそれぞれの配置位置に到達する、とする。この場合は、各傾きセンサ14vおよび14vのそれぞれによって同時に原稿100の下流側端縁が検知される。言い換えれば、各傾きセンサ14vおよび14vのそれぞれによる原稿100の下流側端縁の検知タイミングが一致する。なお、
図5においては、その見易さを考慮して、原稿100を破線で示してある。
【0043】
これに対して、たとえば
図6に示されるように、原稿100が斜めに傾いた状態で搬送される、つまり斜行する、とする。この場合、原稿100の下流側端縁が各傾きセンサ14vおよび14vそれぞれの配置位置に到達するタイミングに、つまり各傾きセンサ14vおよび14vのそれぞれによる原稿100の下流側端縁の検知タイミングに、ΔTdという時間のズレが生ずる。言い換えれば、搬送方向において、一方の傾きセンサ14vによる原稿100の下流側端縁の検知位置と、他方の傾きセンサ14vによる原稿100の下流側端縁の検知位置との間に、ΔLdという位置のズレが生ずる。なお、
図6においても、その見易さを考慮して、原稿100を破線で示してある。
【0044】
ここで、原稿100の搬送速度をVcとすると、位置ズレΔLdと時間ズレTdとの関係は、次の式1によって表される。
【0045】
《式1》
ΔLd=Vc・ΔTd
この位置ズレΔLdおよび時間ズレΔTdは、原稿100の基本姿勢に対する傾き度合を示す。そして、原稿100の傾き度合が過度に大きいと、当該原稿100が原稿搬送路200の側縁部に引っ掛かって破損するなどのダメージを受ける虞がある。これを回避するために、本第1実施例では、原稿100の傾き度合が過度に大きい場合に、たとえば位置ズレΔLdが所定の閾値ΔLsよりも大きい(ΔLd>ΔLs)場合に、原稿100の搬送が自動的に停止される。
【0046】
ただし、位置ズレΔLdが同じであっても、つまり原稿100の基本姿勢に対する傾き度合が同じであっても、たとえば
図7に長破線100aで示されるように、原稿100のサイズが大きいほど、とりわけ幅寸法La(
図8参照)が大きいほど、原稿100が原稿搬送路200の側縁部に引っ掛かる可能性が高い。一方、原稿100の幅寸法Laが比較的に小さい場合には、原稿100が多少傾いても、原稿100が原稿搬送路200の側縁部に引っ掛かる可能性は低い。
【0047】
このことから、ここで言う閾値ΔLsについては、原稿100のサイズに応じて、とりわけ幅寸法Laに応じて、適宜に変更されるのが、好ましい。すなわち、原稿100の幅寸法Laが大きいほど、閾値ΔLsが小さくなるように、当該閾値ΔLsが適応的に変更されるのが、好ましい。これにより、原稿100が原稿搬送路200の側縁部に引っ掛かることによる当該原稿100へのダメージを確実に回避しつつ、原稿100の搬送が不必要に停止されずに効率的に行われるようにすることができる。
【0048】
具体的には、たとえば
図8に示されるように、原稿100の基本姿勢に対する傾き角θと、搬送方向における原稿100の位置ズレ最大値ΔLmaxと、原稿100の幅寸法Laと、が定義される。なお、傾き角θは、原稿搬送路200の中心線200aと、原稿100が基本姿勢にあるときの当該原稿100の中心線(原稿100の搬送幅方向における中心を表す線)100bと、が成す角度である。そして、位置ズレ最大値ΔLmaxは、原稿100の下流側(または上流側)の2つの角部の搬送方向における相互間距離である。そして、幅寸法Laは、原稿100が基本姿勢にあるときの当該原稿100の搬送幅方向における寸法である。
【0049】
その上で、たとえば原稿100のサイズに関係なく、位置ズレ最大値ΔLmaxが7mmという一定の値に制限される場合を、換言すれば位置ズレ最大値ΔLmaxが7mmまで許容される場合を、考える。この場合、原稿100のサイズとして想定されるそれぞれのサイズごとに、幅寸法La、傾き角θおよび位置ズレΔLdを整理すると、
図9に示されるようになる。なお、
図9においては、位置ズレ最大値ΔLmaxについても、確認的に記載してある。また、傾き角θは、次の式2によって表される。
【0050】
《式2》
θ=arcsin(ΔLmax/La)
この
図9において、とりわけ位置ズレΔLdに注目すると、たとえば原稿100のサイズがA5R(横置きA5)サイズであるときの位置ズレΔLdは、約6.6mm(小数点第2位以下切捨て)となる。そして、原稿100のサイズがB5R(横置きB5)サイズであるときの位置ズレΔLdは、約5.3mmとなる。さらに、原稿100のサイズがA4R(横置きA4)サイズまたはA5サイズであるときの位置ズレΔLdは、約4.6mmとなる。そして、原稿100のサイズがB4(厳密には横置きB4)サイズまたはB5サイズであるときの位置ズレΔLdは、約3.8mmとなる。加えて、原稿100のサイズがA3(厳密には横置きA3)サイズまたはA4サイズであるときの位置ズレΔLdは、約3.2mmとなる。
【0051】
この
図9に示されるそれぞれの原稿100のサイズごとの、厳密にはそれぞれの幅寸法Laごとの、位置ズレΔLdに基づいて、当該それぞれの幅寸法Laごとの、厳密には幅寸法Laの推定値である推定幅寸法La’ごとの、閾値ΔLsが定められる。
図10に、その一例を示す。
【0052】
この
図10に示されるように、たとえば推定幅寸法La’が153mm未満(La’<153mm)である場合は、閾値ΔLsとして6.6mmという値が設定される。ここで、153mmという値は、A5Rサイズの原稿100の幅寸法(148mm)に応じて定められ、詳しくは当該幅寸法よりも少し(5mm)大きめの値である。そして、推定幅寸法La’が153mm以上かつ187mm未満(153mm≦La’<187mm)である場合は、閾値ΔLsとして5.3mmという値が設定される。ここで、187mmという値は、B5Rサイズの原稿100の幅寸法(182mm)に応じて定められ、詳しくは当該幅寸法よりも少し(5mm)大きめの値である。さらに、推定幅寸法La’が187mm以上かつ215mm未満(187mm≦La’<215mm)である場合は、閾値ΔLsとして4.6mmという値が設定される。ここで、215mmという値は、A4RサイズまたはA5サイズの原稿100の幅寸法(210mm)に応じて定められ、詳しくは当該幅寸法よりも少し(5mm)大きめの値である。また、推定幅寸法La’が215mm以上かつ262mm未満(215mm≦La’<262mm)である場合は、閾値ΔLsとして3.8mmという値が設定される。ここで、262mmという値は、B4サイズまたはB5サイズの原稿100の幅寸法(257mm)に応じて定められ、詳しくは当該幅寸法よりも少し(5mm)大きめの値である。そして、推定幅寸法La’が262mm以上(La’≧262mm)である場合は、閾値ΔLsとして3.2mmという値が設定される。
【0053】
この閾値ΔLsは、原稿載置トレイ14aに原稿100が載置されている状態で、自動原稿送り装置14による原稿100の送り込み動作の開始を指示する操作が受け付けられたときに、そのときの推定幅寸法La’に基づいて、設定される。また、推定幅寸法La’については、ガイド幅検知部14eによる検知結果(ガイド幅)と、後述する原稿サイズ検知機能による検知結果(原稿サイズ)に基づく幅寸法Laの規定値と、のうちの最小値が、当該推定幅寸法La’として特定される。
【0054】
このようにして原稿100の幅寸法Laに応じた閾値ΔLsが設定された上で、自動原稿送り装置14による原稿100の送り込み動作が開始され、つまり原稿100の搬送が開始される。そして、前述の各傾きセンサ14vおよび14vのそれぞれによる原稿100の下流側端縁の検知タイミングに基づいて、時間ズレΔTdが求められ、さらに、式1に基づいて、位置ズレΔLdが求められる。ここでたとえば、位置ズレΔLdが閾値ΔLsよりも大きい場合に、原稿100の搬送が停止される。一方、位置ズレΔLdが閾値ΔLs以下(ΔLd≦ΔLd)である場合には、原稿100の搬送が継続される。
【0055】
図11は、複合機10の電気的な構成を示すブロック図である。この
図11に示されるように、複合機10は、画像読取部12、自動原稿送り装置14、画像形成部16、給紙部20および操作ユニット22の他に、制御部24、補助記憶部26および通信部28を備える。これらは、互いに共通のバス30を介して接続される。なお、画像読取部12、自動原稿送り装置14、画像形成部16、給紙部20および操作ユニット22については、前述の通りである。
【0056】
制御部24は、複合機10の全体的な制御を司る、制御手段の一例である。このため、制御部24は、制御実行手段としてのコンピュータ、たとえばCPU24aを、有する。併せて、制御部24は、CPU24aが直接的にアクセス可能な主記憶手段としての主記憶部24bを有する。主記憶部24bは、不図示のROMおよびRAMを含む。このうちのROMには、CPU24aの動作を制御するための制御プログラム、いわゆるファームウェアが、記憶される。そして、RAMは、CPU24aが制御プログラムに基づく処理を実行する際の作業領域およびバッファ領域を構成する。
【0057】
補助記憶部26は、補助記憶手段の一例である。すなわち、補助記憶部26には、前述の読取画像データなどの種々のデータが適宜に記憶される。この補助記憶部26は、たとえば不図示のハードディスクドライブを有する。併せて、補助記憶部26は、フラッシュメモリなどの書き換え可能な不揮発性メモリを有する場合がある。
【0058】
通信部28は、通信手段の一例である。すなわち、通信部28は、不図示の通信網と接続されることで、当該通信網を介しての双方向通信を担う。ここで言う通信網としては、LANやインターネット、公衆交換電話網などがある。また、LANには、無線LANが含まれる。
【0059】
そして改めて、自動原稿送り装置14に注目すると、当該自動原稿送り装置14は、ガイド幅検知部14e、原稿長さ検知部14j、ローラ駆動部14s、搬送検知部14uおよび傾き検知部14wを有する。前述したように、ガイド幅検知部14eは、原稿ガイド14cおよび14cによる規制位置を検知し、ひいては原稿ガイド14cおよび14cの相互間距離であるガイド幅を検知する。原稿長さ検知部14jは、各原稿検知片14fおよび14gと、各原稿長さセンサ14hおよび14iと、を含む。この原稿長さ検知部14jは、各原稿長さセンサ14hおよび14iそれぞれの出力信号に基づいて、つまり各原稿検知片14fおよび14gそれぞれの状態に基づいて、搬送方向における原稿100の寸法である原稿長さ寸法を検知する。
【0060】
なお、ガイド幅検知部14eおよび原稿長さ検知部14jは、CPU24aと協働して、前述の原稿サイズ検知機能を実現する。すなわち、CPU24aは、ガイド幅検知部14eによる検知結果(ガイド幅)と、原稿長さ検知部14jによる検知結果(原稿長さ寸法)と、に基づいて、原稿100のサイズを検知(算出)する。このような原稿サイズ検知機能を実現するCPU24aと、ガイド幅検知部14eと、原稿長さ検知部14jとは、サイズ検知手段の一例である。
【0061】
さらに、ローラ駆動部14sは、前述の如くピックアップローラ14n、給紙ローラ14p、各搬送ローラ14q、14q、…および排紙ローラ14rのそれぞれを駆動する。そして、搬送検知部14uは、各原稿搬送センサ14t、14t、…を含む。この搬送検知部14uは、各原稿搬送センサ14t、14t、…それぞれの出力信号に基づいて、原稿搬送路200を搬送中の原稿100の位置(搬送位置)を検知する。また、傾き検知部14wは、各傾きセンサ14vおよび14vを含む。この傾き検知部14wは、各傾きセンサ14vおよび14vそれぞれの出力信号に基づいて、前述の時間ズレΔTdを求め、ひいては式1に基づいて、位置ズレΔLdを求める。
【0062】
加えて、給紙部20に注目すると、当該給紙部20は、前述の各給紙カセット20a、20a、…の他に、手差しトレイ20bを有する。そして、操作ユニット22に注目すると、当該操作ユニット22は、タッチパネル22aおよびディスプレイ22bを有し、つまりタッチパネル22a付きのディスプレイ22bを有する。
【0063】
図12は、主記憶部24bのRAM内の構成を概念的に表すメモリマップ300である。このメモリマップ300に示されるように、RAMは、プログラム記憶領域310と、データ記憶領域350と、を有する。
【0064】
このうちのプログラム記憶領域310には、前述の制御プログラムが記憶される。具体的には、制御プログラムは、表示制御プログラム312、操作検出プログラム314、画像読取プログラム316、原稿送り制御プログラム318、画像形成プログラム320および給紙制御プログラム322を含む。併せて、制御プログラムは、補助記憶制御プログラム324および通信制御プログラム326を含む。
【0065】
表示制御プログラム312は、ディスプレイ22bに不図示のホーム画面などの各種の画面を表示させるのに必要な表示画面データを生成するためのプログラムである。操作検出プログラム314は、タッチパネル22aに対する操作状態を検出するためのプログラムである。画像読取プログラム316は、画像読取部12を制御するためのプログラムである。原稿送り制御プログラム318は、自動原稿送り装置14を制御するためのプログラムである。画像形成プログラム320は、画像形成部16を制御するためのプログラムである。給紙制御プログラム322は、給紙部20を制御するためのプログラムである。補助記憶制御プログラム324は、補助記憶部26を制御するためのプログラムである。そして、通信制御プログラム326は、通信部28を制御するためのプログラムである。
【0066】
なお、詳しい図示は省略するが、原稿送り制御プログラム318は、CPU24aに後述する閾値設定タスクを実行させるための閾値設定プログラムを含む。この閾値設定プログラムには、
図10に示される推定幅寸法La’と閾値ΔLsとの関係が纏められた閾値テーブルが含まれる。併せて、原稿送り制御プログラム318は、CPU24aに後述する斜行監視タスクを実行させるための斜行監視プログラムを含む。
【0067】
一方、データ記憶領域350には、各種のデータが記憶される。この各種のデータとしては、表示画像生成データ352、操作データ354、閾値データ356などがある。
【0068】
表示画像生成データ352は、前述の表示制御プログラム312に基づく表示画面データの生成に用いられるポリゴンデータやテクスチャデータなどのデータである。操作データ354は、タッチパネル22aに対する操作状態を表すデータであり、詳しくは当該タッチパネル22aに対するユーザのタッチ位置(座標)を表す時系列のデータである。そして、閾値データ356は、閾値ΔLsを表すデータであり、詳しくは次に説明する閾値設定タスクにより設定される閾値ΔLsを表すデータである。
【0069】
CPU24aは、前述の閾値設定プログラムに従って、閾値設定タスクを実行する。この閾値設定タスクの流れを、
図13に示す。なお、CPU24aは、原稿載置トレイ14aに原稿100が載置されている状態で、自動原稿送り装置14による原稿100の送り込み動作の開始を指示する操作が受け付けられたときに、これに応答して、閾値設定タスクを実行する。
【0070】
この閾値設定タスクによれば、CPU24aは、まず、ステップS1において、推定幅寸法La’を特定する。具体的には、CPU24aは、ガイド幅検知部14eによる検知結果(ガイド幅)と、原稿サイズ検知機能による検知結果(原稿サイズ)に基づく幅寸法Laの規定値と、のうちの最小値を、推定幅寸法La’として特定する。そして、CPU24aは、処理をステップS3へ進める。
【0071】
ステップS3において、CPU24aは、前述の閾値テーブルを参照して、ステップS1で特定された推定幅寸法La’に対応する閾値ΔLsを認識する。そして、CPU24aは、処理をステップS5へ進める。
【0072】
ステップS5において、CPU24aは、ステップS3で認識した閾値ΔLsを設定し、詳しくは当該閾値ΔLsを表す閾値データ356を記憶する。これをもって、CPU24aは、閾値設定タスクを終了する。
【0073】
なお、閾値設定タスクを実行するCPU24aは、とりわけステップS1を実行するCPU24aは、幅寸法検知手段の一例である。そして、ステップS3およびステップS5を実行するCPU24aは、閾値設定手段の一例である。
【0074】
この閾値設定タスクを実行した上で、CPU24aは、前述の斜行監視プログラムに従って、斜行監視タスクを実行する。この斜行監視タスクの流れを、
図14に示す。なお、CPU24aは、原稿載置トレイ14aから原稿100が給紙口14kを介して原稿搬送路200に取り込まれるタイミングに応答して、斜行監視タスクを実行する。
【0075】
この斜行監視タスクによれば、CPU24aは、まず、ステップS11において、傾き検知部14wにより位置ズレΔLdが検知されるのを待つ(S11:NO)。そして、傾き検知部14wにより位置ズレΔLdが検知されると(S11:YES)、CPU24aは、処理をステップS13へ進める。
【0076】
ステップS13において、CPU24aは、ステップS11で検知された位置ズレΔLdと、閾値データ356に基づく閾値ΔLsと、を比較する。ここでたとえば、位置ズレΔLdが閾値ΔLsよりも大きい場合(S13:YES)、CPU24aは、処理をステップS15へ進める。一方、位置ズレΔLdが閾値ΔLs以下(ΔLd≦ΔLs)である場合は(S13:NO)、CPU24aは、斜行監視タスクを終了する。
【0077】
ステップS15において、CPU24aは、原稿100の搬送を停止させ、厳密にはそうさせるように自動原稿送り装置14を制御し、とりわけローラ駆動部14sを制御する。これをもって、CPU24aは、斜行監視タスクを終了する。
【0078】
なお、斜行監視タスクを実行するCPU24aは、とりわけステップS15を実行するCPU24aは、停止手段の一例である。また、ステップS15が実行されることで、原稿100の搬送が停止された場合には、そのことをユーザへ報知するための適当なメッセージが出力されてもよい。
【0079】
このように本第1実施例によれば、原稿搬送路200を搬送される原稿100の基本姿勢に対する傾き度合が過度に大きい場合に、詳しくは位置ズレΔLdが閾値ΔLsよりも大きい場合に、原稿100の搬送が停止される。そして、閾値ΔLsは、原稿100の幅寸法Laに応じて設定され、詳しくは幅寸法Laが大きいほど小さい値に設定される。これにより、原稿100が原稿搬送路200の側縁部に引っ掛かることによる当該原稿100へのダメージを確実に回避しつつ、原稿100の搬送が不必要に停止されずに効率的に行われるようにすることができる。
【0080】
[第2実施例]
次に、本発明の第2実施例について説明する。
【0081】
本第2実施例は、原稿100が厚みの小さい薄紙(薄葉紙)である場合に好適である。すなわち、トレーシングペーパなどの薄紙は、たとえば普通紙に比べて、機械的に繊細であり、ダメージを受け易い。このため、自動原稿送り装置14に供される原稿100が薄紙である場合は、たとえば原稿100が普通紙である場合に比べて、搬送速度Vcが低減されるなどの適宜の条件が変更される。
【0082】
具体的には、本第2実施例においては、
図15に示されるような薄紙読込キー400が設けられ、たとえばタッチパネル22a付きのディスプレイ22bに表示される。そして、原稿100が薄紙である場合には、薄紙読込キー400が操作されることで、当該薄紙用の条件が設定される。なお、薄紙読込キー400は、ユーザ操作受付手段の一例である。
【0083】
このようにして薄紙用の条件が設定された場合、つまり原稿100が薄紙である場合、前述の閾値ΔLsに代えて、当該閾値ΔLsに所定の係数αが乗ぜられた薄紙用閾値α・ΔLsが、適用される。ここで言う係数αは、ゼロよりも大きく、かつ、1よりも小さい値(0<α<1)であり、たとえば0.5である。
【0084】
このように本第2実施例によれば、原稿100が薄紙である場合に、前述の閾値ΔLsに代えて、当該閾値ΔLsよりも小さい薄紙用閾値α・ΔLsが、適用される。要するに、原稿100が薄紙である場合には、原稿100の搬送を停止させるかどうかの判定基準が厳しくなる。これにより、原稿100が薄紙である場合でも、原稿100が原稿搬送路200の側縁部に引っ掛かることによる当該原稿100へのダメージを確実に回避しつつ、原稿100の搬送が不必要に停止されずに効率的に行われるようにすることができる。
【0085】
なお、係数αは、一定ではなく、たとえば推定幅寸法La’に応じて変更されてもよく、詳しくは推定幅寸法La’が大きいほど小さい値とされてもよい。また、閾値ΔLsに係数αが乗ぜられることに代えて、前述の閾値テーブルとは別の薄紙用の閾値テーブルが予め設けられ、この薄紙用の閾値テーブルに纏められた薄紙用の閾値ΔLs’(=α・ΔLs)が、適用されてもよい。
【0086】
[第3実施例]
次に、本発明の第3実施例について説明する。
【0087】
本第3実施例においては、原稿100の厚みに基づいて、前述の閾値ΔLsが設定され、厳密には閾値ΔLsに代えて、当該閾値ΔLsに所定の係数βが乗ぜられた厚み順応閾値β・ΔLsが、適用される。
【0088】
具体的には、本第3実施例においては、
図16に示されるように、原稿搬送路200の途中であって、当該原稿搬送路200における上流側の適宜の位置に、たとえば各傾きセンサ14vおよび14vと給紙ローラ14pとの間の位置に、重送センサ500が設けられる。この重送センサ500は、原稿100が重送されているかどうかを、つまり複数枚の原稿100が重なった状態で搬送されているかどうかを、超音波を利用して検知する重送検知手段の一例である。併せて、重送センサ500は、原稿100の厚みを検知する厚み検知手段の一例としても機能する。なお、重送センサ500は、超音波を発する発信部(
図16における上側の四角形で示される要素)と、当該超音波を受ける受信部(
図16における下側の四角形で示される要素)と、を有する。これらの発信部および受信部は、原稿搬送路200を間に挟んで設けられる。
【0089】
そして、本第2実施例においては、重送センサ500による検知結果に基づいて、とりわけ原稿100の厚みの検知結果に基づいて、係数βの値が適宜に変更される。この係数βの値は、たとえば1を上限として、原稿100の厚みが小さいほど小さく、かつ、0よりも大きい値(0<β≦1)である。すなわち、原稿100の厚みが小さいほど、厚み順応閾値β・ΔLsが小さくなり、つまり原稿100の搬送を停止させるかどうかの判断基準が厳しくなる。これにより、原稿100の厚みが変わっても、原稿100が原稿搬送路200の側縁部に引っ掛かることによる当該原稿100へのダメージを確実に回避しつつ、原稿100の搬送が不必要に停止されずに効率的に行われるようにすることができる。
【0090】
なお、係数βは、重送センサ500による検知結果(原稿100の厚み)のみならず、推定幅寸法La’に応じても変更されてもよく、たとえば推定幅寸法La’が大きいほどさらに小さい値とされてもよい。また、閾値ΔLsに係数βが乗ぜられることに代えて、前述の閾値テーブルとは別の厚み順応閾値テーブルが予め設けられ、この厚み順応閾値テーブルに纏められた厚み順応閾値ΔLs”(=β・ΔLs)が、適用されてもよい。加えて、重送センサ500に代えて、別のセンサが、厚み検知手段として採用されてもよい。
【0091】
[その他の適用例]
以上の各実施例は、本発明の具体例であり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。これら各実施例以外の局面にも、本発明を適用することができる。
【0092】
たとえば、前述の位置ズレ最大値ΔLmaxについては、7mmという値を例示したが、この値は、いわゆる経験値であり、7mmという値に限定されない。
【0093】
また、前述の距離Dについては、70mmとされたが、この値に限定されない。距離Dについては、前述の如く原稿100の最小サイズに応じて適宜に定められる。
【0094】
そして、閾値ΔLsについては、原稿100の幅寸法La(推定幅寸法La’)に加えて、当該原稿100の搬送方向における寸法である長さ寸法に基づいて、設定されてもよい。この場合、原稿100の長さ寸法が大きいほど、閾値ΔLsが小さくなるように設定されるのが、好ましい。
【0095】
併せて、閾値ΔLsに代えて、つまり位置ズレΔLdについての閾値ΔLsに代えて、たとえば時間ズレΔTdについての閾値ΔTsが、採用されてもよい。すなわち、時間ズレΔTdが閾値ΔTsよりも大きい場合(ΔTd>ΔTs)に、原稿100の搬送が停止されるように構成されてもよい。またたとえば、傾き角θを検出して、この傾き角θが当該傾き角θについての閾値θsよりも大きい場合(θ>θs)に、原稿100の搬送が停止されるように構成されてもよい。すなわち、原稿100の傾き度合を表す何らかの値を検出して、この値が所定の閾値よりも大きい場合に、原稿100の搬送が停止されるように構成されればよい。
【0096】
さらに、傾き度合検知手段の一例としての傾き検知部14wについては、2つの傾きセンサ14vおよび14vを有する構成とされたが、3つ以上の傾きセンサ14v、14v、…を有する構成とされてもよい。すなわち、3つ以上の傾きセンサ14v、14v、…のそれぞれの出力信号に基づいて、原稿100の傾き度合が検知される構成とされてもよい。また、それぞれの傾きセンサ14vとして、反射型の光センサが採用されたが、これに限らず、透過型の光センサや、光センサ以外の適宜のセンサが採用されてもよい。
【0097】
加えて、推定幅寸法La’については、ガイド幅検知部14eによる検知結果(ガイド幅)と、原稿サイズ検知機能による検知結果(原稿サイズ)に基づく幅寸法Laの規定値と、のうちの最小値が、当該推定幅寸法La’として特定されたが、これに限らない。たとえば、ガイド幅検知部14eによる検知結果と、原稿サイズ検知機能による検知結果に基づく幅寸法Laの規定値と、のいずれか一方のみに基づいて、推定幅寸法La’が特定されてもよい。
【0098】
また、ガイド幅検知部14eに代えて、原稿100の幅寸法Laを検知するための別の手段が、設けられてもよい。この別の手段として、たとえば原稿載置トレイ14a内における給紙口14kに近い位置において、搬送幅方向に沿って複数の光センサが適当な間隔で配され、これら複数のセンサそれぞれの出力信号に基づいて、原稿100の幅寸法Laが(概略的に)検知される構成が、採用されてもよい。
【0099】
併せて、原稿サイズ検知機能については、CPU24aと、ガイド幅検知部14eと、原稿長さ検知部14jと、によって実現されることとしたが、これに限らない。たとえば、ガイド幅検知部14eに代えて、前述の原稿100の幅寸法Laを検知するための別の手段が、採用されてもよい。すなわち、CPU24aと、ここで言う別の手段と、原稿長さ検知部14jと、によって原稿サイズ検知機能が実現されてもよい。
【0100】
そして、各実施例においては、複合機10に付属される自動原稿送り装置14に本発明が適用される場合について説明したが、これに限らない。たとえば、コピー専用機やイメージスキャナ専用機などに付属される自動原稿送り装置にも、本発明を適用することができる。また極端には、自動原稿送り装置がそれ単体で動作可能である場合には、この単体の自動原稿送り装置にも、本発明を適用することができる。さらに、自動原稿送り装置に限らず、手差しトレイ20b(
図11参照)にも、本発明を適用することができる。
【0101】
加えて、本発明は、自動原稿送り装置14などの用紙搬送装置という装置の形態に限らず、当該用紙搬送装置の制御プログラムというプログラムの形態、および、用紙搬送装置の制御方法という方法の形態によっても、提供することができる。
【0102】
併せて、本発明は、用紙搬送装置の制御プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体という形態によっても、提供することができる。ここで言う記録媒体としては、たとえばSDメモリカードやUSBメモリなどの半導体メディア、あるいは、CDやDVDなどのディスクメディアがある。これらの可搬型の記憶媒体に限らず、ROMやハードディスクドライブなどのような装置組込み型(内蔵型)の記憶媒体もまた、ここで言う記録媒体として適用可能である。
【符号の説明】
【0103】
10 … 複合機
12 … 画像読取部
14 … 自動原稿送り装置
14a … 原稿載置トレイ
14c … 原稿ガイド
14e … ガイド幅検知部
14j … 原稿長さ検知部
14v … 傾きセンサ
14w … 傾き検知部
24a … CPU
100 … 原稿
200 … 原稿搬送路
400 … 薄紙読込キー
500 … 重送センサ