(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/494 20060101AFI20240515BHJP
A61F 13/475 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
A61F13/494 113
A61F13/475 111
A61F13/494 111
(21)【出願番号】P 2020140205
(22)【出願日】2020-08-21
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】須田 裕喜
【審査官】西尾 元宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-072612(JP,A)
【文献】特開2008-086494(JP,A)
【文献】特開2011-206108(JP,A)
【文献】特開平08-269859(JP,A)
【文献】実開平05-009525(JP,U)
【文献】特表平11-506955(JP,A)
【文献】国際公開第93/012746(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108451722(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記トップシートの肌側面の幅方向両端付近に長手方向に沿って固定され、起立領域としての遊離端とその近傍領域を有し、撥水性及び/又は防水性のシートを含む一対の第1立体ギャザーと、
前記一対の第1立体ギャザーの幅方向外側に長手方向に沿って固定された、撥水性及び/又は防水性のシートを含む一対の第2立体ギャザーと、
前記第1立体ギャザーの幅方向外側から前記第2立体ギャザーの幅方向内側までの長手方向に延びる領域で、幅方向の一端である外側端が前記第2立体ギャザーの幅方向内側面に固定されて長手方向に延びる一対の高吸収性シートと、を更に備え、
前記高吸収性シートは、前記第1立体ギャザー及び前記第2立体ギャザーに固定されない不織布と、前記不織布に対向配置され、少なくとも前記第2立体ギャザーの前記幅方向内側面に固定されるパルプ含有不織布と、これらの間に配置された高吸収性ポリマーの固着担持層と、を含み、
前記パルプ含有不織布は、スパンボンド不織布と、前記スパンボンド不織布の少なくとも一方の表面に一体化されたパルプ繊維層と、を含むことを特徴とする、吸収性物品。
【請求項2】
前記高吸収性シートは、
幅方向他端である内側端が、前記第1立体ギャザーの前記起立領域まで延在し、
幅方向途中部が、前記第1立体ギャザーの前記起立領域の幅方向外端から前記第2立体ギャザーの固定界面を跨ぐ幅領域に固定され、
幅方向一端である前記外側端が、前記第2立体ギャザーの幅方向内側面に固定されている、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記高吸収性シートは、前記第1立体ギャザー及び前記第2立体ギャザーに固定されない前記不織布がエアスルー不織布である、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記高吸収性シートは、前記トップシートの長手方向の一の途中部から他の途中部までの長さ領域に固定され、その長手方向長さが、前記トップシートの長手方向長さの10%以上90%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記高吸収性シートは、前記トップシートの幅方向一端及び他端から、前記トップシートの幅方向長さの10%以上30%以下の幅領域に固定されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の吸収性物品では、尿、便等の体液の横漏れを防止するために、立体ギャザーを利用した技術が提案されている。特に、外部への漏れ防止に関しては、以下の様々な技術が開示されている。
【0003】
特許文献1には、使用状態で自由起立するウエスト用のバリヤーカフスを製品長手方向端部の使用面側に有し、バリヤーカフスはバリヤーシートを二重にして構成され、バリヤーカフスの起立遠位縁近傍及び起立領域内の起立近位縁近傍に、弾性伸縮部材をそれぞれ配設した吸収性物品が開示されている。この構造によれば、吸収性物品の肌側面に補助パッドを重ねた場合でも、ウエスト部での漏れが防止されると記載されている。
【0004】
特許文献2には、吸収体とギャザーシートと不透液性フィルム材と表面シートとによって囲まれ、軟便等の体液を一旦貯留可能な断面視略三角形状の空間部を備え、排泄された体液を該空間部に一旦貯留して吸収体に吸収させるように構成した吸収性物品が開示されている。この構成によれば、体液、特に軟便漏れが低減すると記載されている。
【0005】
特許文献3には、吸収体の長手方向両側縁に沿って設けられた、液不透過性のシートからなる一対の第1立体ギャザーと、その幅方向外側に設けられた一対の第2立体ギャザーと、を備え、第1立体ギャザーのトップシート表面から立ち上がる起立点(以下単に「起立点」ともいう)と、第2立体ギャザーの起立点との間に、液透過性のトップシートを幅方向に露出させた吸収性物品が開示されている。この構造によれば、内側の第1立体ギャザーを超えて外側の第2立体ギャザーで堰き止められた体液を、トップシートの露出面から内部の吸収体に吸収させることができ、漏れが防止されるとともに、吸収体への体液捕集性が向上すると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-293032号公報
【文献】特開2007-143874号公報
【文献】特開2011-206108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の吸収性物品では、大量の尿や軟便が一度に排出された場合には、確実に漏れを防止することは難しいという課題が存在する。
本発明の目的は、大量に排出された尿や軟便を容易に吸収し、漏れを防止できる吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、第1立体ギャザーと、その幅方向外側に配設された第2立体ギャザーとを有する吸収性物品において、第1立体ギャザーと第2立体ギャザーとの間の所定位置に、体液を吸収可能な特定の高吸収性シートを配設することで、目的に叶う吸収性物品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記の吸収性物品に係る。
【0009】
(1)液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記トップシートの肌側面の幅方向両端付近に長手方向に沿って固定され、起立領域としての遊離端とその近傍領域を有し、撥水性及び/又は防水性のシートを含む一対の第1立体ギャザーと、
前記一対の第1立体ギャザーの幅方向外側に長手方向に沿って固定された、撥水性及び/又は防水性のシートを含む一対の第2立体ギャザーと、
前記第1立体ギャザーの幅方向外側から前記第2立体ギャザーの幅方向内側までの長手方向に延びる領域で、幅方向の一端である外側端が前記第2立体ギャザーの幅方向内側面に固定されて長手方向に延びる一対の高吸収性シートと、を更に備え、
前記高吸収性シートは、前記第1立体ギャザー及び前記第2立体ギャザーに固定されない不織布と、前記不織布に対向配置され、少なくとも前記第2立体ギャザーの前記幅方向内側面に固定されるパルプ含有不織布と、これらの間に配置された高吸収性ポリマーの固着担持層と、を含み、
前記パルプ含有不織布は、スパンボンド不織布と、前記スパンボンド不織布の少なくとも一方の表面に一体化されたパルプ繊維層と、を含むことを特徴とする、吸収性物品。
(2)前記高吸収性シートは、
幅方向他端である内側端が、前記第1立体ギャザーの前記起立領域まで延在し、
幅方向途中部が、前記第1立体ギャザーの前記起立領域の幅方向外端から前記第2立体ギャザーの固定界面を跨ぐ幅領域に固定され、
幅方向一端である前記外側端が、前記第2立体ギャザーの幅方向内側面に固定されている、上記(1)の吸収性物品。
(3)前記高吸収性シートは、前記第1立体ギャザー及び前記第2立体ギャザーに固定されない前記不織布がエアスルー不織布である、上記(1)又は(2)の吸収性物品。
(4)前記高吸収性シートは、前記トップシートの長手方向の一の途中部から他の途中部までの長さ領域に固定され、その長手方向長さが、前記トップシートの長手方向長さの10%以上90%以下である、上記(1)~(3)のいずれかの吸収性物品。
(5)前記高吸収性シートは、前記トップシートの幅方向一端及び他端から、前記トップシートの幅方向長さの10%以上30%以下の幅領域に固定されている、上記(1)~(4)のいずれかの吸収性物品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、大量に排出された尿や軟便を容易に吸収し、漏れを防止できる吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る吸収性物品の構成を示す模式平面図である。
【
図2】
図1に示すX
1-X
1切断線での幅方向の模式断面図である。
【
図3】
図1に示すX
1-X
1切断線での体液吸収後の幅方向の模式断面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る吸収性物品の体液吸収後の幅方向断面図である。
【
図5】第1実施形態及び第2実施形態に係る吸収性物品中高吸収性シートの構成を示す模式平面図である。
【
図6】
図5に示すY
1-Y
1切断線での幅方向の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、吸収性物品の着用とは、体液の吸収前後を問わず、吸収性物品を身体に装着した状態をいう。吸収性物品において、長手方向とは吸収性物品を身体に着用したときに着用者の股間部を介して身体の前後に亘る方向であり、幅方向とは長手方向に対して直交する方向であり、厚み方向とは各構成部材を積層する方向である。肌側面とは、吸収性物品を着用したときに、着用者の肌に当接する表面及び肌を臨む表面であり、非肌側面とは、着用者の衣服に接触する表面又は衣服を臨む表面である。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0013】
<吸収性物品>
以下、図面を参照しつつ、第1実施形態に係る吸収性物品1及び第2実施形態に係る吸収性物品2について説明する。
図1及び
図2は吸収性物品1を示し、
図3は体液吸収後の吸収性物品1を示し、
図4は、体液吸収後の吸収性物品2を示す。
図5及び
図6は高吸収性シート20を示す。これらの図面は吸収性物品1、2中の各構成部材の形状や寸法、大小関係等を規定するものではない。
【0014】
本実施形態の吸収性物品1、2は、ベビー用又は成人用を問わず種々の吸収性物品として使用でき、例えば、軽失禁パッド、尿吸収パッド、生理用ナプキン、失禁用使い捨ておむつ、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等が挙げられる。アウターとしての各種紙おむつと、インナーとしての吸収性物品1、2とを組み合わせてもよい。吸収性物品1、2の、長手方向の寸法(最大長さ)、及び幅方向の寸法(最大幅)はいずれも特に限定されないが、例えば、100mm以上800mm以下の範囲、及び50mm以上500mm以下の範囲である。これらの寸法範囲を有する吸収性物品1、2から、種々の用途のものが容易に得られる。
【0015】
<吸収性物品>
吸収性物品1は、
図1及び
図2に示すように、着用者の肌側に位置する、液透過性のトップシート10と、トップシート10に対向して配置され、着用者の非肌側に位置する液不透過性のバックシート12と、トップシート10とバックシート12との間に配置された吸収体11と、幅方向途中部又は幅方向一端部がトップシート10の肌側面に固定された一対の第1立体ギャザー13と、第1立体ギャザー13の幅方向外側に固定された一対の第2立体ギャザー14と、少なくとも幅方向の一端が第2立体ギャザー14の内側面14xに固定された高吸収性シート20と、を備える。吸収性物品1の用途やタイプに応じて、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を適宜設けることができる。
【0016】
本実施形態によれば、少なくとも第2立体ギャザー14、必要に応じて第1立体ギャザー13の幅方向外側面13x及び第2立体ギャザー14の第1立体ギャザー13を臨む内側面14xに、高吸収性シート20のパルプ含有不織布16(
図3)側を固定することで、一度に多量の体液が排出され、第1立体ギャザー13を越える横漏れが発生しても、高吸収性シート20が体液を吸収して、第2立体ギャザー14を起立させるので、体液のそれ以上の横漏れを防止することができる。また、高吸収性シート20の、第1立体ギャザー13の外側面13xや第2立体ギャザー14の内側面14xへの固定面になるパルプ含有不織布16は、体液を一時的に保持する機能を有することから、体液の漏出を抑制しつつ、高吸収性ポリマーの固着担持層(不図示)による体液吸収を促進することができる。このような横漏れ防止機構を設けることで、体液量が多くても、横漏れをほぼ確実に防止できる。
【0017】
以下、各構成部材について、トップシート10、吸収体11、バックシート12、第1立体ギャザー13、第2立体ギャザー14、及び高吸収性シート20の順でさらに詳しく説明する。これらの構成部材は、シート状及び板状以外の立体形状を有していてもよい。
【0018】
(トップシート)
トップシート10は、例えば、体液を集約的に吸収体11に供給する。トップシート10の基材は、体液が吸収体11に移動する液透過性を備えていればよく、例えば、サーマルボンド不織布等の不織布、サーマルボンド不織布/スパンボンド不織布積層体である複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、これらの2種以上を積層した複合シート等が挙げられる。また、トップシート10は、液透過性を向上させる観点から、表面にエンボス加工や穿孔加工を施すことができる。肌への刺激を低減させる観点から、トップシート10に、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等の1種又は2種以上を含有させてもよい。強度及び加工性の観点から、トップシート10の坪量は、例えば、14g/m2以上40g/m2以下の範囲である。トップシート10の形状は、体液を吸収体11に誘導する観点から、吸収体11の全部又は一部を覆う形状であればよい。
【0019】
(吸収体)
吸収体11はトップシート10とバックシート12との間に挟まれ、トップシート10を通して尿等の体液を吸収及び保持する。一実施形態の吸収体11は、吸収性繊維と、高吸収性ポリマーと、を含有する。吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンや紙おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものを限定なく使用でき、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等が挙げられる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプが好ましい。フラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等の綿状の解繊物が挙げられる。吸収体11の吸収性繊維の坪量は、吸収性能及び肌触りを損なわない観点から、例えば、50g/m2以上800g/m2以下の範囲である。
【0020】
吸収体11に使用される高吸収性ポリマー(Super Absorbent Polymer、以下「SAP」ともいう)としては、体液を吸収及び保持し、かつ、逆流を防止できるものを特に限定なく使用でき、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムがより好ましい。高吸収性ポリマーは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。吸収体11のSAPの坪量は、吸収性能及び肌触りを損なわない観点から、例えば10g/m2以上500g/m2以下の範囲であり、SAP含有量は吸収体11全量の例えば15質量%以上50質量%以下の範囲である。
【0021】
吸収体11の形態としては、例えば、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成した積層マット等が挙げられる。繊維形態のSAPも使用できる。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体11の形状の安定化の観点から、吸収体11をキャリアシートに包む形態が挙げられる。キャリアシートの基材としては親水性を有するものを使用でき、例えば、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布等が挙げられる。キャリアシートを複数備える場合は、キャリアシートの基材は同一でも異なっていてもよい。
【0022】
吸収体11は、2層以上の吸収体からなるものでもよく、例えば、上層吸収体と下層吸収体とを積層したものでもよい。この場合、上層吸収体と下層吸収体の長手方向及び幅方向の寸法は、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法より大きくてもよく、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法と同じでもよく、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法より小さくてもよい。
【0023】
吸収体11は、その長手方向の寸法(最大長さ)が、例えば、100mm以上800mm以下の範囲、150mm以上500mm以下の範囲、又は270mm以上500mm以下の範囲である。吸収体11の幅方向の寸法(最大幅)は、例えば、50mm以上500mm以下の範囲、60mm以上400mm以下の範囲、又は70mm以上105mm以下の範囲である。また、吸収体11の平面視形状が砂時計型である場合は、長手方向寸法が180mm以上480mm以下の範囲、着用者の腹部及び背部にそれぞれ当接する腹側部及び背側部の幅方向寸法がともに60mm以上160mm以下の範囲であり、着用者の股間部に当接する股部の幅方向寸法が50mm以上140mm以下の範囲である。吸収体11の全面又は一部にエンボス加工を施してもよい。吸収体11の平面視形状としては、例えば、砂時計型、Iの字状、長方形、4角が丸まった角丸四角形、長円等が挙げられる。また、吸収体11は、吸収基材として、吸収性繊維と、高吸収性ポリマー(以下「SAP」ともいう)と、を含有する。
【0024】
(バックシート)
バックシート12には、吸収体11が保持する体液が漏れない液不透過性を有する基材を特に限定なく使用でき、例えば、不織布、樹脂フィルム、これらを積層体である複合シート等が挙げられる。不織布としては、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布積層体、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体等の複合不織布、これらの2種以上の複合材料等が挙げられる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルム、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。また、着用時の蒸れを防止する観点から、透湿性を有するバックシート12が好ましい。バックシート12に透湿性を付与する方法としては、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合する方法、バックシート12に穿孔のためのエンボス加工を施す方法等が挙げられる。
【0025】
(第1立体ギャザー)
第1立体ギャザー13は、例えば、吸収性物品1の着用者が排泄した体液の横漏れを防止するために、吸収性物品1の幅方向両端付近で吸収性物品1の長手方向に沿ってトップシート10の肌側面に固定される。第1立体ギャザー13は、弾性伸縮部材13aと、撥水性及び/又は防水性の第1シート部材13bと、を含む。
【0026】
弾性伸縮部材13aは、第1シート部材13bの自由端(他端)付近に長手方向に沿って配設され、該自由端に起立性を付与し、第1シート部材13bの自由端及びその近傍領域を着用者の体型に合わせて変形可能にする。第1シート部材13bは、本実施形態では幅方向一端(固定端)がバックシート12の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向途中部がトップシート10の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向他端が起立性を有する自由端である。該自由端は、例えば体液が浸透したときに、弾性伸縮部材13aの伸縮度や配設本数、第1シート部材13bの材質や坪量、厚み等に応じて、自由端から幅方向の所定長さが起立して起立領域を形成する。なお、起立領域は、複数回の有限な実験により、第1立体ギャザー13の外側面13xにおける起立点を決定し、該起立点から自由端までの領域として決定することができる。第1シート部材13bの固定端(幅方向一端)の固定位置は、本実施形態に限定されず、例えば、バックシート12の非肌側面、内部に吸収体11を収納したトップシート10とバックシート12との各縁辺の全部又は一部接合体の肌側面又は非肌側面の幅方向両端付近、トップシート10の肌側面の幅方向両端付近等が挙げられる。
【0027】
第1シート部材13bは撥水性及び/又は防水性を有するシートであり、例えば不織布から構成される。第1シート部材用不織布としては、疎水性繊維にて形成された撥水性及び/又は防水性(液不透過性)の不織布を特に限定なく使用でき、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体である複合不織布(SMS不織布)等が挙げられる。第1シート部材13bの坪量は、例えば、10g/m2以上100g/m2以下の範囲である。弾性伸縮部材13aとしては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものを適宜使用することができる。
【0028】
(第2立体ギャザー)
第2立体ギャザー14は、例えば、第1立体ギャザー13を越えてくる横漏れを受け止め、横漏れが吸収性物品1の外に拡がるのを防止するために、第1立体ギャザー13の幅方向外側に長手方向に沿って固定されている、一対の部材である。第2立体ギャザー14の固定位置では、その下層に存在する第1立体ギャザー13に固定される。第2立体ギャザー14は、弾性伸縮部材14aと、撥水性及び/又は防水性の第2シート部材14bとを含む。
【0029】
弾性伸縮部材14aは、第2シート部材14bの自由端(他端)付近に長手方向に沿って配設され、該自由端に起立性を付与し、第2シート部材14bの自由端及びその近傍領域を着用者の体型に合わせて変形可能にする。第2シート部材14bは、本実施形態では幅方向一端(固定端)がバックシート12の肌側面において、第1シート部材13bの固定端の固定位置よりも幅方向外側に固定され、幅方向途中部がトップシート10の肌側面において、第1シート部材13bの途中部の固定位置よりも幅方向外側に固定され、幅方向他端が起立性を有する自由端である。第2立体ギャザー14(又は第2シート部材14b)の幅方向一端の固定位置(又は取付け位置)は本実施形態に限定されず、例えば、バックシート12の非肌側面、トップシート10とバックシート12との袋体の幅方向端部周辺、トップシート10の肌側面の幅方向端部周辺等が挙げられる。いずれの場合も、第1立体ギャザー13(又は第1シート部材13b)の幅方向外側に固定される。
【0030】
弾性伸縮部材14aとしては、上述の弾性伸縮部材13aと同じものを使用できる。また、第2シート部材14bは撥水性及び/又は防水性を有するシートであり、例えば不織布から構成される。第2シート部材用不織布としては、上述の第1シート部材用不織布と同じものを使用できる。
【0031】
(高吸収性シート)
高吸収性シート20は、
図5及び
図6に示すように、立体ギャザー非固定面を構成する不織布17と、不織布17に対向配置され、立体ギャザー固定面を構成するパルプ含有不織布16と、不織布17とパルプ含有不織布16との間に介在する高吸収性ポリマー18の固着担持層(以下「SAP固着担持層」ともいう)と、を含む。ここで、立体ギャザー非固定面とは、第1立体ギャザー13の外側面13x及び第2立体ギャザー14の内側面に固定されない面である。立体ギャザー固定面とは、第2立体ギャザー14の内側面14xに固定され、第1立体ギャザー13の外側面13xにも固定されることがある面である。
【0032】
SAP固着担持層は、
図6に示すように、長手方向に延びるSAP固定領域30、不織布17とパルプ含有不織布16とを固定して長手方向に延びるシート固定領域31とが幅方向に交互に配列されている。このように構成することで、SAP固定領域30中の高吸収性ポリマー18がゲルブロッキングを起こしにくくなり、高吸収性シート20が複数回の体液排出を経ても、その機能が維持される。
【0033】
第1実施形態に係る吸収性物品1では、
図1及び
図3に示すように、高吸収性シート20は、幅方向他端である内側端が第1立体ギャザー13の外側面13xにおける、起立点よりも幅方向外側に長手方向に沿って固定され、幅方向途中部が第2立体ギャザー14と第1立体ギャザー13との固定界面を跨いで長手方向に沿って固定され、幅方向一端である外側端が第2立体ギャザー14の第1立体ギャザー13の外側面13xを臨む内側面14xに長手方向に沿って固定されている。この実施形態によれば、第1立体ギャザー13を幅方向外側に越えてきた体液が高吸収性シート20に吸収されると、高吸収性ポリマー18の膨潤応力が発生し、第2立体ギャザー14を起立させる(
図3)。これにより、第2立体ギャザー14が容易に起立し、尿や軟便の漏れを防ぐことができる。
【0034】
第2実施形態に係る吸収性物品2では、
図4に示すように、高吸収性シート20bは、幅方向他端である内側端が、第1立体ギャザー13の外側面13xにおいて起立領域まで延在して長手方向に沿って固定され、幅方向途中部が、第1立体ギャザー13の起立領域の幅方向外端から、第2立体ギャザー14と第1立体ギャザー13との固定界面を跨いで長手方向に沿って固定され、幅方向一端である外側端が、第2立体ギャザー14の、第1立体ギャザー13の外側面13xを臨む幅方向内側面14xに長手方向に沿って固定されている。
【0035】
この実施形態によれば、排出された体液は、第1立体ギャザー13の外側にあり、第2立体ギャザー14の内側にある高吸収性シート20に吸収される。そして、高吸収性シート20内部のSAP18が膨潤することで、
図4に示すように、第1立体ギャザー13の起立根元(又は起立点)は幅方向内側に、第2立体ギャザー14の起立根元は幅方向外側に押され、第1立体ギャザーの起立根元と第2立体ギャザー14の起立根元と間の空間が拡張される。この底広がりの拡張空間が形成されることにより、万一、第一立体ギャザー13を越えた体液はこの拡張空間にトラップさせることができ、これにより、横漏れ防止効果をさらに向上させることができる。
【0036】
好ましい実施形態では、高吸収性シート20は、トップシート10の長手方向において、一の途中部から他の途中部までの長さ領域に固定され、その長手方向長さが、トップシート10の長手方向長さの10%以上90%以下の範囲、又は20%以上80%以下の範囲である。この範囲から外れた場合、高吸収性シート20が体液を吸収して膨潤するときに、長手方向両端分の固定が外れ、第2立体ギャザー14が外れやすくなる傾向がある。
【0037】
他の好ましい実施形態では、高吸収性シート20は、トップシート10の幅方向一端及び他端から、トップシート10の幅方向長さの10%以上30%以下の幅領域に固定されている。第1立体ギャザー13の幅方向一端及び他端の、10%未満の位置に固定する場合、第2立体ギャザー14の固定部位が無くなり、第2立体ギャザー14の強度が弱くなる傾向がある。第1立体ギャザー13の幅方向一端及び他端の、30%より大きい位置に固定する場合、高吸収性シート20が体液を吸収して高吸収性ポリマー18が膨潤したとき、第1立体ギャザー13が起立しにくくなる傾向がある。
【0038】
別の好ましい実施形態では、高吸収性シート20は、第1立体ギャザー13、及び第2立体ギャザー14に固定されるが、第1立体ギャザー13、及び第2立体ギャザー14に固定された弾性部材13a、14aの位置よりも、厚み方向の低い位置に固定される。弾性部材13a、14aの位置よりも高い位置に固定された場合、第1立体ギャザー13、及び第2立体ギャザー14と高吸収性シート20が肌に当たる際、着用者が硬さを感じる傾向がある。
【0039】
立体ギャザー非固定面を構成する不織布17には、体液が高吸収性シート20の内部へと移動するような液透過性を有する不織布を使用でき、例えば、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布等の単体不織布、サーマルボンド不織布/スパンボンド不織布積層体、等の複合不織布等が挙げられる。また、立体ギャザー非固定面を構成する不織布17に代えて液透過性シート基材を使用でき、例えば、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、これら2種以上の積層体である複合シート等が挙げられる。また、不織布17と、前記した液透過性シート基材との積層体も使用できる。これらの中でも、エアスルー不織布が好ましい。不織布17の坪量は、例えば、14g/m2以上40g/m2以下の範囲である。
【0040】
立体ギャザー固定面を構成するパルプ含有不織布16は、例えば、上述したように、高吸収性シート20の体液吸収を補助する機能を有している。パルプ含有不織布16は、スパンボンド不織布とパルプ繊維層とを一体化した不織布シートである。このような不織布シートとしては、例えば、スパンボンド不織布を構成する繊維とパルプ繊維とを併用して不織布として作製した混在型不織布シート、スパンボンド不織布とパルプ繊維からなる不織布とを重ね合わせ、加圧処理及び/加熱処理を施して得られる圧着又は融着型不織布シート、スパンボンド不織布とパルプ繊維からなる不織布とを比較的少量の接着剤で接合した接着型不織布シート、水流交絡法によりスパンボンド不織布に水流及びパルプ繊維を吹き付けて得られる水流交絡型不織布シート等が挙げられる。なお、水流交絡型不織布シートでは、スパンボンド不織布にパルプ繊維が絡みつき、不織布の一方の表面にパルプ繊維層が形成されるだけでなく、他方の面にもスパンボンド不織布内部を通過してきたパルプ繊維が部分的に突出したり、絡みついたりしていることがある。これらの不織布シートの中でも、パルプ繊維層の機能を十分に発揮させる観点から、水流交絡型不織布シートが好ましい。
【0041】
SAP固着担持層のSAP固定領域30に用いられる高吸収性ポリマー(SAP)18としては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものを特に制限なく使用でき、例えば、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムがより好ましい。高吸収性ポリマー18は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。SAP18の坪量は、各種の吸収性物品に要求される吸収性能を確保する観点から、例えば、200g/m2以上1200g/m2以下の範囲である。また、吸収性能、吸収後の肌触り及び着用者の動きやすさをより向上させる観点から、SAP18の坪量は、例えば、300g/m2以上900g/m2以下の範囲である。
【0042】
また、粉体としての流動性が悪い微粉末のSAP18は、パルプ含有不織布16又は不織布17からの漏出防止、SAP18が硬くなることにより発生するごつごつした触感の低減等の観点から、SAP18の粒子径は、例えば、50μm以上600μm以下の範囲、又は100μm以上500μm以下の範囲である。
【0043】
高吸収性シート20の好ましい実施形態では、高吸収性ポリマー18は、パルプ含有不織布16と不織布17との間に、ホットメルト接着剤により固着担持されている。なお、高吸収性ポリマー18の吸収性を阻害せず、かつ、着用時の肌触りを損なわない観点から、ホットメルト接着剤の含有量は例えば10g/m2以下の範囲である。ホットメルト接着剤としては、融点が100℃以上180℃以下の、スチレン-ブタジエン-スチレン系共重合体やスチレン-イソプレン-スチレン系共重合体等の合成ゴム系ホットメルト接着剤、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系ホットメルト接着剤が挙げられる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、ノズルから溶融状態のホットメルト接着剤を非接触式で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法等の公知の方法が利用できる。なお、ホットメルト接着剤は、シート固定領域31でのパルプ含有不織布16と不織布17との接合や、後述する高吸収性シート20の固定にも用いられる。
【0044】
高吸収性シート20は、ホットメルト接着剤により、第1立体ギャザー13の外側面13xと第2立体ギャザー14の内側面14xに固定されている。なお、高吸収性シート20中の高吸収性ポリマー18の吸収性を阻害せず、かつ、着用時の肌触りを損なわない観点から、ホットメルト接着剤の含有量は例えば10g/m2以下の範囲である。ここで、ホットメルト接着剤としては、SAP固着担持層のSAP固定領域30中の高吸収性ポリマー18の固着担持に用いられるホットメルト接着剤と同じものの中から適宜選択して使用でき、また、塗布方法も同じ方法から適宜選択して使用できる。
【0045】
本実施形態では、排出された体液は、第2立体ギャザー14の内側面14xに固定された高吸収性シート20にも吸収される。これにより、高吸収性シート20内部のSAP18が膨潤することで、第2立体ギャザー14が起立する。このように、二重の横漏れ防止機構を設けることにより、横漏れをほぼ確実に防止できると共に、体液が着用者自身及びその着衣にも付着し難くなるので、衛生的である。
【0046】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品1、2の製造方法としては、特に限定はなく、従来公知の方法を採用することができ、例えば、衣類側から、バックシート12、吸収体11、トップシート10の順に積層し、トップシート10とバックシート12とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定した上で、第1立体ギャザー13を所定の位置に固定し、さらにその幅方向外側に高吸収性シート20、更にその外側に第2立体ギャザー14を固定することで、吸収性物品1、2を製造することができる。第2立体ギャザー14を固定した後に、高吸収性シート20を固定してもよい。こうして得られた吸収性物品1、2を包装体に個別包装した後、長手方向に3つ折りにして折り畳むことにより、市販製品が得られる。
【0047】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることは当業者に明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0048】
1、2 吸収性物品
10 トップシート
11 吸収体
12 バックシート
13 第1立体ギャザー
13a 弾性伸縮部材
13b 第1シート部材
13x 第1立体ギャザーの外側面
14 第2立体ギャザー
14a 弾性伸縮部材
14b 第2シート部材
14x 第2シート部材の内側面
16 パルプ含有不織布
17 不織布
18 高吸収性ポリマー
20、20b 高吸収性シート
30 SAP固定領域
31 シート固定領域