(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】検量線設定方法、検量線設定プログラムおよび検体分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
G01N35/00 A
(21)【出願番号】P 2020146069
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】加藤 輝人
(72)【発明者】
【氏名】黒野 浩司
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-190960(JP,A)
【文献】特開2008-122316(JP,A)
【文献】特開2009-133796(JP,A)
【文献】特開2009-180676(JP,A)
【文献】特開2008-249576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検量線を設定する検量線設定方法であって、
所定成分の濃度が既知である標準試料を測定して得られた測定値に基づいて、第1検量線を作成することと、
作成された前記第1検量線を補正することにより第2検量線を作成することと、
前記第2検量線を前記第1検量線に戻すことについてオペレータを支援する画面を表示することと、
前記第2検量線を前記第1検量線に戻す指示を受け付けることと、
前記戻す指示を受け付けると、前記第1検量線を表示することと、
を含む、検量線設定方法。
【請求項2】
前記画面は、前記第2検量線を前記第1検量線に戻す指示を前記オペレータから受け付けるための指示受付ボタンを含み、
前記戻す指示を、前記指示受付ボタンを介して受け付ける、
請求項1に記載の検量線設定方法。
【請求項3】
前記指示受付ボタンを介した前記戻す指示の受け付けにおいて、前記第2検量線が表示された状態で前記戻す指示を受け付ける、
請求項2に記載の検量線設定方法。
【請求項4】
前記標準試料の測定に用いられた試薬の残量が所定量を下回ると、前記戻す指示の受け付けが可能であることを前記オペレータに通知し、前記指示受付ボタンを含む前記画面を表示する、
請求項2又は3に記載の検量線設定方法。
【請求項5】
前記指示受付ボタンは、前記第2検量線が作成されているときには有効化され、前記第2検量線が作成されていないときには無効化される、
請求項2~4のいずれか一項に記載の検量線設定方法。
【請求項6】
補正の有無を示す補正フラグを前記第1検量線および/または
前記第
2検量線に付加すること、
を更に含み、
前記第1検量線の表示において、前記戻す指示を前記指示受付ボタンを介して受け付けると、前記補正フラグに基づいて前記第1検量線を選択し、表示する、
請求項2~5のいずれか一項に記載の検量線設定方法。
【請求項7】
前記第1検量線の表示において、前記第1検量線と前記第2検量線とを並べて表示する、
請求項2~6のいずれか一項に記載の検量線設定方法。
【請求項8】
表示された前記第1検量線を、使用可能な検量線として設定するための指示を受け付けること、
を更に含む、請求項2~7のいずれか一項に記載の検量線設定方法。
【請求項9】
前記画面は、前記第1検量線に対して実施された補正の履歴情報を含む、
請求項1に記載の検量線設定方法。
【請求項10】
前記補正の履歴情報は、検量線の補正の有無を示す情報を含む、
請求項9に記載の検量線設定方法。
【請求項11】
前記画面は、過去に作成された複数の検量線を示す検量線リストを更に含む、
請求項9又は10に記載の検量線設定方法。
【請求項12】
前記検量線リストに表示された複数の前記検量線から前記第1検量線の選択を受け付けることと、
選択された前記第1検量線を表示することと、
受け付けた選択に応じて表示された前記第1検量線を、使用可能な検量線として設定することと、
を更に含む、請求項11に記載の検量線設定方法。
【請求項13】
検量線を設定する検量線設定プログラムであって、
コンピュータに、
所定成分の濃度が既知である標準試料を測定して得られた測定値に基づいて、第1検量線を作成することと、
作成された前記第1検量線を補正することにより第2検量線を作成することと、
前記第2検量線を前記第1検量線に戻すことについてオペレータを支援する画面を表示することと、
前記第2検量線を前記第1検量線に戻す指示を受け付けることと、
前記戻す指示を受け付けると、前記第1検量線を表示することと、
を実行させる、
検量線設定プログラム。
【請求項14】
検量線を用いて検体を分析する検体分析装置であって、
所定成分の濃度が既知である標準試料を測定する測定部と、
制御部と、
情報を表示する表示部と、を備え、
前記制御部は、
前記測定部によって、所定成分の濃度が既知である標準試料を測定して得られた測定値に基づいて、第1検量線を作成することと、
作成された前記第1検量線を補正することにより第2検量線を作成することと、
前記第2検量線を前記第1検量線に戻すことについてオペレータを支援する画面を前記表示部によって表示することと、
前記第2検量線を前記第1検量線に戻す指示を受け付けることと、
前記戻す指示を受け付けると、前記第1検量線を前記表示部によって表示することと、
を実行する、
検体分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検量線設定方法、検体分析方法、検量線設定プログラム、検体分析プログラム、および検体分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査の分野において、血漿、血清および尿等の検体に含まれる特定の物質の濃度を分析する検体分析装置が知られている。このような検体分析装置は、検体を透過した光、又は検体から発せられた光等を受光し、その光量に基づく測定値を検体に含まれる所定の物質の濃度に換算する。濃度への換算には、光量に基づく測定値と、物質の濃度との対応関係を表す検量線が用いられる。検量線は、特定の物質の濃度が既知であって当該濃度が互いに異なる複数の標準物質を測定することによって生成される。特許文献1には、試薬は、装置上で一般的に2~8℃で管理されているが、試薬の劣化は回避できないため、検量線の補正が必要になる旨が記載されている。そのような状況に対応するため、特許文献1には、検量線の補正までの残時間をCRT画面に表示させ、当該残時間を時間の経過に応じて減少させ、残時間がゼロになると、自動的に検量線の補正を行う自動分析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検体分析装置に用いられる試薬を交換する場合、例えば交換前の試薬と交換後の試薬の種類および製造ロットが同じであれば、交換前の試薬のために作成された検量線を、交換後の試薬のために使用できることがある。このとき、検量線が補正されている場合、装置上で劣化した試薬に適合するよう補正された検量線を用いて濃度換算を行うと誤差が生じてしまうため、補正前の検量線に戻す必要がある。しかし、上記特許文献1には、検量線が補正された後に、補正前の検量線に戻すことについては記載されていない。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、補正された検量線を補正前の検量線に戻すためのオペレータの操作を簡便にする検量線設定方法、検体分析方法、検量線設定プログラム、検体分析プログラム、および検体分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる検量線設定方法は、所定成分の濃度が既知である標準試料を測定して得られた測定値に基づいて、第1検量線を作成することと、作成された前記第1検量線を補正することにより第2検量線を作成することと、前記第2検量線を前記第1検量線に戻すことについてオペレータを支援する画面を表示することと、前記第2検量線を前記第1検量線に戻す指示を受け付けることと、前記戻す指示を受け付けると、前記第1検量線を表示することと、を備える。
【0007】
このような検体分析方法は、前記第2検量線を前記第1検量線に戻すことについてオペレータを支援する画面を表示すること、を備えるので、補正された検量線を補正前の検量線に戻すためのオペレータの操作を簡便にすることができる。
【0008】
本発明の他の一態様にかかる検量線設定プログラムは、所定成分の濃度が既知である標準試料を測定して得られた測定値に基づいて、第1検量線を作成することと、作成された前記第1検量線を補正することにより第2検量線を作成することと、前記第2検量線を前記第1検量線に戻すことについてオペレータを支援する画面を表示することと、前記第2検量線を前記第1検量線に戻す指示を受け付けることと、をコンピュータに実行させる。
【0009】
このような検量線設定プログラムは、前記第2検量線を前記第1検量線に戻すことについてオペレータを支援する画面を表示すること、をコンピュータに実行させるので、補正された検量線を補正前の検量線に戻すためのオペレータの操作を簡便にすることができる。
【0010】
本発明の他の一態様にかかる検体分析装置は、所定成分の濃度が既知である標準試料を測定する測定部と、制御部と、情報を表示する表示部と、を備え、前記制御部は、前記測定部によって、所定成分の濃度が既知である標準試料を測定して得られた測定値に基づいて、第1検量線を作成することと、作成された前記第1検量線を補正することにより第2検量線を作成することと、前記第2検量線を前記第1検量線に戻すことについてオペレータを支援する画面を前記表示部によって表示することと、前記第2検量線を前記第1検量線に戻す指示を受け付けることと、前記戻す指示を受け付けると、前記第1検量線を前記表示部によって表示することと、を実行する。
【0011】
このような検体分析装置は、前記第2検量線を前記第1検量線に戻すことについてオペレータを支援する画面を前記表示部によって表示するので、補正された検量線を補正前の検量線に戻すためのオペレータの操作を簡便にすることができる。
【0012】
本発明の他の一態様にかかる検体分析方法は、特定の製造ロット番号の試薬のために、標準物質を用いて第一検量線を作成することと、上記試薬を用いて検体を測定した測定値と上記第一検量線とを用いて分析結果を生成することと、上記試薬の経時的特性変化に対応するために、上記第一検量線を補正して第二検量線を作成することと、上記経時的特性変化の生じた試薬を用いて検体を測定した測定値と上記第二検量線とを用いて分析結果を提供することと、前記特定の製造ロットの試薬が同種の試薬に交換された後、交換された試薬の製造ロット番号が、交換前の前記試薬の製造ロット番号と同じ場合、前記交換された試薬を用いて検体を測定した測定値と前記第一検量線とを用いて分析結果を提供することと、を備える。
【0013】
このような検体分析方法は、前記特定の製造ロットの試薬が同種の試薬に交換された後、交換された試薬の製造ロット番号が、交換前の前記試薬の製造ロット番号と同じ場合、前記交換された試薬を用いて検体を測定した測定値と前記第一検量線とを用いて分析結果を提供するので、補正された検量線を補正前の検量線に戻すためのオペレータの操作を簡便にすることができる。
【0014】
本発明の他の一態様にかかる検体分析プログラムは、特定の製造ロット番号の試薬のために、標準物質を用いて第一検量線を作成することと、上記試薬を用いて検体を測定した測定値と上記第一検量線とを用いて分析結果を生成することと、上記試薬の経時的特性変化に対応するために、上記第一検量線を補正して第二検量線を作成することと、上記経時的特性変化の生じた試薬を用いて検体を測定した測定値と上記第二検量線とを用いて分析結果を提供することと、前記特定の製造ロットの試薬が同種の試薬に交換された後、交換された試薬の製造ロット番号が、交換前の前記試薬の製造ロット番号と同じ場合、前記交換された試薬を用いて検体を測定した測定値と前記第一検量線とを用いて分析結果を提供することと、をコンピュータに実行させる。
【0015】
このような検体分析プログラムは、前記特定の製造ロットの試薬が同種の試薬に交換された後、交換された試薬の製造ロット番号が、交換前の前記試薬の製造ロット番号と同じ場合、前記交換された試薬を用いて検体を測定した測定値と前記第一検量線とを用いて分析結果を提供するので、補正された検量線を補正前の検量線に戻すためのオペレータの操作を簡便にすることができる。
【0016】
本発明の他の一態様にかかる検体分析装置は、検量線を用いて検体を分析する検体分析装置であって、検体および所定成分の濃度が既知である標準試料を測定する測定部と、制御部と、を備え、前記制御部は、特定の製造ロット番号の試薬のために、標準物質を用いて第一検量線を作成することと、上記試薬を用いて検体を測定した測定値と上記第一検量線とを用いて分析結果を生成することと、上記試薬の経時的特性変化に対応するために、上記第一検量線を補正して第二検量線を作成することと、上記経時的特性変化の生じた試薬を用いて検体を測定した測定値と上記第二検量線とを用いて分析結果を提供することと、前記特定の製造ロットの試薬が同種の試薬に交換された後、交換された試薬の製造ロット番号が、交換前の前記試薬の製造ロット番号と同じ場合、前記交換された試薬を用いて検体を測定した測定値と前記第一検量線とを用いて分析結果を提供することと、を実行する。
【0017】
このような検体分析装置は、前記特定の製造ロットの試薬が同種の試薬に交換された後、交換された試薬の製造ロット番号が、交換前の前記試薬の製造ロット番号と同じ場合、前記交換された試薬を用いて検体を測定した測定値と前記第一検量線とを用いて分析結果を提供するので、補正された検量線を補正前の検量線に戻すためのオペレータの操作を簡便にすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかる、検量線設定方法、検体分析方法、検量線設定プログラム、検体分析プログラム、および検体分析装置は、補正された検量線を補正前の検量線に戻すためのオペレータの操作を簡便にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る検体分析装置の外観構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2A】測定部及び搬送部の構成を模式的に示す上面図である。
【
図2B】試料測定部の構成を模式的に示す図である。
【
図5】凝固時間の算出に用いられる凝固曲線の基本形状を示す図である。
【
図7A】測定部の制御部による検体分析処理を示すフローチャートである。
【
図7B】分析部の制御部による検体分析処理を示すフローチャートである。
【
図8A】測定部の制御部が実行する試薬残量監視の主な処理を示すフローチャートである。
【
図8B】分析部の制御部が実行する試薬残量監視の主な処理を示すフローチャートである。
【
図9A】検量線の作成の主な処理を示すフローチャートである。
【
図9B】検量線の補正の主な処理を示すフローチャートである。
【
図10】検量線入替支援処理の主な処理を示すフローチャートである。
【
図11】試薬残量リセット画面の一例を示す図である。
【
図12B】問い合わせ画面の他の一例を示す図である。
【
図14】補正前の検量線が表示された検量線画面の一例を示す図である。
【
図16】変形例による検量線入替支援処理の主な処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る検体分析装置1の外観構成を模式的に示す斜視図である。本実施形態の検体分析装置1のハードウェア構成は、米国公開特許公報2018-0267069号に詳細に開示されており、その開示内容のすべてが本明細書に参照としてここに組み込まれる。本明細書では、本発明に関連する部分を中心に装置構成を説明する。検体分析装置1は、測定部2、搬送部3、及び分析部4を備えている。検体分析装置1は、検体としての血液の凝固能を分析する血液凝固分析装置である。本明細書では、前後左右上下の各方向を、
図1に示す矢印の方向によって定義する。
【0022】
図2Aは、測定部2及び搬送部3の構成を模式的に示す上面図である。搬送部3は、測定部2の前方に配置されている。
【0023】
搬送部3は、ラックセット部11、ラック搬送部12、及びラック回収部13を備えている。ラックセット部11は、分析対象である一又は複数の検体容器14がセットされた検体ラック15を、検体分析装置1に配置するための領域である。ラックセット部11には、検体が収容された検体容器14を載せた検体ラック15がオペレータによってセットされる。
【0024】
ラック搬送部12は、ラックセット部11とラック回収部13の間に配置されている。
【0025】
ラック回収部13は、検体の採取が完了してラック搬送部12によって搬送されてきた検体ラック15を回収及び留置するための領域である。ラック回収部13は、ラック搬送部12の下流側に配置される。
【0026】
搬送部3は、ラックセット部11に配置された検体ラック15をラック搬送部12に搬送し、各検体容器14を、順次、検体吸引位置16に位置付ける。検体分注部18は、検体吸引位置16に位置付けられた検体容器14から、吸引によって検体を採取する。搬送部3は、検体ラック15にセットされている全ての検体容器14からの検体の採取が完了すると、検体ラック15をラック回収部13へ搬送して回収及び留置する。
【0027】
測定部2は、検体吸引位置16で採取した検体に試薬を混合することによって測定試料を調製し、この調製した測定試料を測定する。測定部2は、検体分注部18、反応容器保持部22、試薬貯留部23、試薬分注部27-1、試薬分注部27-2、加温部30、試料測定部34、及び検体情報読取部17を備えている。
【0028】
試薬貯留部23は、測定試料の調製に用いる試薬を貯留する。具体的に、試薬貯留部23は、試薬が収容された試薬容器を保持するための複数の試薬保持孔25を周方向に所定の間隔を空けて形成した、平面視にて円板状の部材である。
図2Aに示した例では、周方向に並ぶ複数の試薬保持孔25は、径方向に3列、形成されている。試薬貯留部23は、その中心を軸にして周方向に回転可能に構成されている。試薬貯留部23に貯留される試薬は、プロトロンビン時間測定用の試薬、又はフィブリノゲン測定用の試薬等である。
【0029】
試薬情報読取部81は、試薬情報を収容した試薬情報部材から、試薬情報を読み取る装置である。試薬情報読取部81は、試薬貯留部23に保持された試薬容器に付加された試薬情報部材から試薬情報を読み取ることができるように、試薬貯留部23を臨む位置に配置されている。具体的には、試薬情報部材は試薬情報が記録されたバーコードを印刷したシールであり、試薬情報読取部81はバーコードリーダを備えて構成される。バーコードは、1次元バーコードであっても良く、あるいは2次元バーコード(いわゆるQRコード(登録商標))であっても良い。なお、試薬情報部材を、試薬情報を記憶したRFIDタグとし、試薬情報読取部81をRFIDリーダとしてもよい。試薬情報には、試薬の種類を示す情報、および試薬の製造ロットを示す情報が含まれる。
【0030】
反応容器保持部22は、検体と試薬とを反応させて測定試料を調製するための反応容器26を保持する。反応容器保持部22は、反応容器26を保持するための複数の保持孔24を周方向に所定の間隔を空けて形成した、平面視にて環状の部材である。反応容器保持部22は、その中心を軸として周方向に回転可能に構成されている。
【0031】
検体分注部18は、検体吸引位置16に位置付けられた検体容器14から検体を吸引することによって採取し、この採取した検体を反応容器保持部22の反応容器26へ吐出する。具体的に、検体分注部18は、検体容器14から検体を吸引する検体用吸引ノズル19と、下方に吸引口を向けた検体用吸引ノズル19-1を一方端部に取り付けた棒状の部材であるアーム20と、アーム20の他方端部に取り付けられた駆動機構21とを備えている。駆動機構21は、上下方向、及び、アーム20の他方端部を軸として周方向に、アーム20を駆動可能である。検体分注部18は、検体吸引位置16で検体を採取し、この採取した検体を反応容器保持部22の反応容器26へ吐出できるように、検体吸引位置16と反応容器保持部22との間に配置される。
【0032】
検体吸引位置16と反応容器保持部22との間には、所定の希釈液が収容された希釈液容器を保持するための希釈液保持孔38が形成されている。検体分注部18は、希釈液保持孔38に保持されている希釈液容器から希釈液を吸引し、反応容器26に分注することが可能である。これにより、検体分注部18は、後述する検量線作成処理において、標準試料と希釈液を反応容器に分注し、標準試料に基づき希釈倍率の異なる複数の測定試料を調製可能である。
【0033】
加温部30は、反応容器保持部22に隣接してその右後方に配置されている。加温部30は、反応容器26に収容された検体を測定に応じた所定の温度(例えば37℃)に加温する。加温部30は、加温保持部31及び移送部33を備えている。加温保持部31は、反応容器26を保持するための複数の保持孔32が周縁部に周方向に所定の間隔を空けて形成された、平面視にて円板状のユニットである。加温保持部31は、その中心を軸として回転可能に構成されている。加温保持部31は、水平方向に延伸可能な水平アーム33-1、水平アーム33-1の先端に設けられた容器キャッチャ33-2、および、水平アーム33-1を、その基端を軸として回転させる回転機構33-3を備える。移送部33は、回転機構33-3により水平アーム33-1を回転および延伸させることにより、反応容器保持部22に保持された反応容器26を容器キャッチャ33-2によって捕捉し、水平アーム33-1を短縮させることにより、加温保持部31に移送する。また、移送部33は回転機構33-3により水平アーム33-1を回転および延伸させることにより、試薬分注部27-2の試薬用吸引ノズル28-1の直下の位置28-1-1と、試薬分注部27-2の試薬用吸引ノズル28-2の直下の位置28-2-1に、容器キャッチャ33-2によって保持された反応容器26を移送する。
【0034】
試薬分注部27-1は、試薬貯留部23、反応容器保持部22、及び加温部30の上方に設けられている。試薬分注部27-1は、試薬貯留部23に貯留されている試薬を所定量だけ吸引することによって採取し、この採取した試薬を、試薬用吸引ノズル28-1の直下の位置28-1-1に移送された反応容器26へ吐出する。これにより、検体と試薬とが混合されて試料が調製される。試薬分注部27-1は、試薬保持孔25に保持されている試薬容器から試薬を吸引する試薬用吸引ノズル28-1と、下方に吸引口を向けた試薬用吸引ノズル28-1を取り付けた棒状の部材であるガイド29-1とを備えている。試薬用吸引ノズル28-1は、ステッピングモータ29A(
図3参照)によって、ガイド29-1の一方端部と他方端部との間で水平方向に移動可能である。また、試薬用吸引ノズル28-1は、ステッピングモータ29B(
図3参照)によって、上下方向に移動可能である。ガイド29-1の一方端部は試薬貯留部23の上方に位置し、他方端部は加温部30の近傍に位置している。試薬貯留部23から試薬を採取できるように、試薬分注部27-1は、ガイド29-1が円板状の試薬貯留部23における中心付近から周縁部まで架け渡されるように配置される。このため、試薬分注部27-1は平面視で反応容器保持部22及び試薬貯留部23と重なるため、
図2Aでは試薬分注部27-1を破線で示している。試薬分注部27-2についても同様である。
【0035】
同様に、試薬分注部27-2は、試薬貯留部23に貯留されている、凝固反応を開始させるためのアクティベート試薬を所定量だけ吸引することによって採取し、この採取したアクティベート試薬を、加温部30から移送部37によって試薬分注部27-2の試薬用吸引ノズル28-2の直下の位置28-2-1に移送された反応容器26へ吐出する。これにより、検体とアクティベート試薬とが混合されて凝固反応が開始される。試薬分注部27-2は、試薬保持孔25に保持されている試薬容器から試薬を吸引する試薬用吸引ノズル28-2と、下方に吸引口を向けた試薬用吸引ノズル28-2を取り付けた棒状の部材であるガイド29-2とを備えている。試薬用吸引ノズル28-2は、液面センサ28A(
図3参照)を備えている。試薬用吸引ノズル28-2は、ステッピングモータ29A(
図3参照)によって、ガイド29-2の一方端部と他方端部との間で水平方向に移動可能である。また、試薬用吸引ノズル28-2は、ステッピングモータ29B(
図3参照)によって、上下方向に移動可能である。ガイド29-2の一方端部は試薬貯留部23の上方に位置し、他方端部は加温部30および試料測定部34の近傍に位置している。試薬貯留部23から試薬を採取できるように、試薬分注部27-2は、ガイド29-2が円板状の試薬貯留部23における中心付近から周縁部まで架け渡されるように配置される。
【0036】
試料測定部34は、加温部30に隣接してその後方に配置されている。試料測定部34は、反応容器26に収容されている試料に光を照射して光学信号を検出し、光強度に応じたデジタル信号を出力する。試料測定部34は、試料保持板35、移送部37、及び検出部39(
図3参照)を備えている。試料保持板35は、反応容器26を保持するための複数の試料保持孔36が所定の間隔を空けて形成された、箱型の部材である。移送部37は、水平方向に延伸可能な水平アーム37-1、水平アーム37-1の先端に設けられた容器キャッチャ37-2、および、水平アーム37-1を左右方向にスライドさせるスライド機構37-3を備える。移送部37は、加温部30の加温保持部31の保持孔32に保持されている反応容器26を、試薬分注部27-2の試薬用吸引ノズル28-2の直下の位置28-2-1を経由して、試料保持板35の試料保持孔36へ移送する。
【0037】
検出部39は、
図2Bに示すように、各試料保持孔36において、試料保持孔36に保持されている反応容器26に収容された試料に対して光を照射する光源部39Aと、試料を透過した光を受光し、受光強度に応じたアナログ電気信号をデジタル信号に変換して出力する受光部39Bとを有している。
【0038】
図2Aに戻って、検体情報読取部17は、検体情報を格納した検体情報部材から、検体情報を読み取る装置である。検体情報読取部17は、ラック搬送部12によって搬送されている検体容器14に付加された検体情報部材から検体情報を読み取ることができるように、ラック搬送部12を臨む位置に配置されている。検体情報部材は検体情報が記録された機械可読コードを印刷したラベルであり、検体情報読取部17はコードリーダを備えて構成される。機械可読コードは、1次元バーコードであり、検体情報読取部17はバーコードリーダである。
【0039】
図3は、測定部2の構成を示すブロック図である。測定部2は、制御部41、記憶部42、及び通信部43と、
図2Aに示したように検体分注部18、反応容器保持部22、移送部33,37、加温部30、試薬貯留部23、検体情報読取部17、試薬分注部27、及び検出部39とを備えている。
【0040】
制御部41は、測定部2の各部及び搬送部3の動作を、各々の機能に応じて制御するための回路である。制御部41は、例えば、CPU及びその周辺回路を備えて構成される。
【0041】
記憶部42は、制御部41が測定部2の各部及び搬送部3を制御するための各種のプログラム及び各種のデータ等を記憶するハードディスクを備える。
【0042】
通信部43は、制御部41の制御に従って、外部機器との間でデータの入出力を行う回路である。通信部43は、例えば、イーサネット(登録商標)、及びIEEE1394等の任意の通信規格を用いたインタフェース回路を備えて構成される。
【0043】
図4は、分析部4の構成を簡略化して示すブロック図である。分析部4は、制御部51、記憶部52、表示部53、入力部54、及び通信部55を備えている。
【0044】
制御部51は、分析部4の各部の動作を、各々の機能に応じて制御するための回路である。制御部51は、例えば、CPU及びその周辺回路を備えて構成される。
【0045】
記憶部52は、各種のプログラム60及び各種のデータ等を記憶する回路である。記憶部52は、記憶部42と同様にハードディスク装置を備えて構成される。記憶部52にはプログラム60が格納されている。
【0046】
プログラム60には、制御プログラム、分析処理プログラム、検量線処理プログラム、及び精度管理プログラムが含まれる。制御プログラムは、分析部4の各部(記憶部52、表示部53、入力部54、及び通信部55)を、当該各部の機能に応じてそれぞれ制御するためのプログラムである。分析処理プログラムは、検体測定に関する所定の処理(試薬の設定、検量線の設定、及び測定結果の分析等)を実行するためのプログラムである。検量線処理プログラムは、標準試料測定に関する所定の処理(検量線の作成及び表示等)を実行するためのプログラムである。精度管理プログラムは、精度管理試料測定に関する所定の処理(実行条件の設定、及び測定結果の表示等)を実行するためのプログラムである。
【0047】
表示部53は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等の表示装置を備えるタッチパネル式のディスプレイである。
【0048】
入力部54は、検量線の作成を指示するコマンド等の各種のコマンド、及び、検体分析装置1を動作させる上で必要な各種のデータ等を、検体分析装置1に入力する機器である。入力部54は、キーボード、マウスまたはタッチパネルを含むポインティングデバイス、及び、所定の機能が割り付けられた複数の入力スイッチ等を備えて構成される。
【0049】
通信部55は、制御部51の制御に従って、測定部2の通信部43を含む外部機器との間でデータの入出力を行う回路である。通信部55は、例えば、イーサネット(登録商標)、及びIEEE1394等の任意の通信規格を用いたインタフェース回路等を備えて構成される。
【0050】
図2A~
図4を参照し、検体の測定処理について説明する。検体を分析するための検体測定を行う場合には、検体分注部18は、検体吸引位置16に位置付けられた検体容器14から、検体用吸引ノズル19によって検体を所定量だけ吸引することによって採取し、反応容器保持部22の保持孔24に保持されている反応容器26へ検体を吐出する。これによって検体容器14内の検体が反応容器26に分注される。検体が反応容器26に分注されると、反応容器保持部22が回転し、反応容器26が加温部30の近傍に移送される。加温部30の移送部33は、反応容器26を反応容器保持部22の保持孔24から加温部30の保持孔32へ移送する。加温部30は、反応容器26を加温する。試薬分注部27-1は、試薬用吸引ノズル28-1によって試薬貯留部23から所定の試薬を所定量だけ吸引することによって採取する。移送部33は、加温保持部31から、試薬用吸引ノズル28-1の直下の位置28-1-1に反応容器26を移送する。試薬分注部27-1は、当該位置28-1-1に試薬用吸引ノズル28-1を移動させ、当該位置28-1-1において試薬用吸引ノズル28-1から反応容器26に試薬を吐出する。これにより試薬が反応容器26に分注され、検体と試薬とが混合することによって試料が調製される。移送部33は、試薬が分注された反応容器26を、加温部30の保持孔32へ移送する。次に、加温部30の加温保持部31が回転し、反応容器26を試料測定部34の近傍に位置付ける。試料測定部34の移送部37は、加温保持部31から、試薬用吸引ノズル28-2の移動路の直下の位置28-2-1に反応容器26を移送する。次に、凝固反応を開始させるため、試薬分注部27-2は、当該位置28-2-1に試薬用吸引ノズル28-2を移動させ、当該位置28-2-1において試薬用吸引ノズル28-2から反応容器26にアクティベート試薬を吐出する。移送部37は、アクティベート試薬が分注された反応容器26を、試料測定部34の試料保持孔36に移送する。
【0051】
試料測定部34の光源部39Aは、試料保持孔36に移送された反応容器26に収容された試料に光を照射する。受光部39Bは、試料を透過した光を受光し、受光強度に応じたアナログ電気信号をデジタル信号に変換して出力する。光源部39Aによる光照射および受光部39Bによる受光は、所定時間、継続して実施され、受光部39Bから出力されたデジタル信号は、時系列データとして記憶部42に記憶される。測定部2の制御部41は、記憶部42に記憶された時系列データを、分析部4の制御部51に送信する。
【0052】
分析部4の制御部51は、受信した時系列データに基づき、検体の凝固時間を算出する。
図5は、凝固時間の算出に用いられる凝固曲線の基本形状を示している。
図5のグラフにおける縦軸は、受光部39Bから出力されたデジタル信号の大きさ、すなわち透過光量を表す。
図5のグラフにおける横軸は、受光部39Bが受光を開始してからの経過時間を表す。
図5は、凝固時間の算出の仕方の一例として、パーセント検出法を示している。パーセント検出法は、凝固反応の進行が確認される前のベースラインL1となる透過光量を0%とし、凝固反応停止点における透過光量(L2)を100%とし、透過光量が凝固検出%に達する時間を凝固時間として算出する方法である。凝固検出%は、ベースラインL1における透過光量と凝固反応停止点における透過光量との間隔に対する所定割合の値として設定される。凝固検出%は、透過光量が、ベースラインL1から所定割合(凝固検出%)ほど変化した凝固点を探索するために用いられる。凝固検出%は、0よりも大きく100よりも小さい値に設定される。凝固検出%は、例えば、50%に設定される。制御部51は、凝固検出%が50%になったときの経過時間を、凝固時間として算出する。
【0053】
次に、分析部4の制御部51は、算出した凝固時間を、検量線に適用し、検体に含まれる所定成分の濃度に換算する。検量線は、検体の測定に先立ち、予め作成される。
図6は、検量線の一例を示す。
図6のグラフにおける縦軸は、凝固時間を表し、横軸は、所定成分の一例であるアンチトロンビン(AT)の濃度を表し、線αが検量線である。検体を測定して凝固時間が算出されると、当該凝固時間における検量線上の濃度が、その検体の所定成分の濃度として求められる。
【0054】
検量線の作成には、所定成分の濃度が既知である標準試料が用いられる。検体容器14の代わりに、同一の標準試料を収容した容器を複数、検体ラック15に設置し、上述した検体の測定と同様の手順で標準試料の凝固時間を算出する。但し、所定成分の濃度を互いに異ならせるため、検体分注部18は、一部の標準試料については、希釈液保持孔38に設置された希釈液を混合せず、一部の標準試料については、希釈液を反応容器26に分注し、所定成分の濃度を低下させる。標準試料を測定して得られる凝固時間と、当該標準試料の既知の濃度(標準試料を希釈した場合は、希釈倍率に応じた濃度)が交差する点を
図6のグラフ上に複数プロット(P1,P2,P3)し、それらプロットに基づく近似線を検量線αとする。
【0055】
次に、測定部2の制御部41および分析部4の制御部51による検体分析処理を、
図7Aおよび
図7Bを用いて説明する。
図7および
図7Bに示す各処理は、検体分析装置1が起動している間、継続的に繰り返される処理である。
【0056】
図7Aに示すように、制御部41は、ステップS1において、試薬容器25に収容された試薬の残量を監視する試薬残量監視処理を実行する。試薬残量監視処理の詳細については、後述する。
【0057】
制御部41は、ステップS2において、試薬交換処理を実行する。この処理は、オペレータが、分析部4の表示部53を介して試薬交換の指示を入力したときに実行される。この処理において、試薬情報読取部81は、オペレータが新たに試薬保持孔25に載置した試薬容器25に付加された試薬情報部材から、試薬の種類を示す情報、および試薬の製造ロットを示す情報を読み取り、記憶部42に記憶する。
【0058】
制御部41は、ステップS3において、試料測定処理を実行する。この処理は、オペレータが、分析部4の表示部53を介して試料(被験者の検体又は標準試料)測定の指示を入力したときに実行される。試料測定処理による測定部2の動作は、上述した通りである。この処理によって、測定部2および搬送部3の各部が動作し、検体又は標準試料を検体容器14から吸引し、試料調製・加温等の処理がなされ、検出部34によって受光量に応じたデジタル信号が出力され、記憶部42に記憶される。
【0059】
制御部41は、ステップS4において、通信処理を実行する。この処理において、ステップS2において記憶された試薬の種類を示す情報、および試薬の製造ロットを示す情報、ステップS3において記憶された受光量に応じたデジタル信号などの情報が分析部4の通信部55に送信される。
【0060】
図7Bに示すように、制御部51は、ステップS5において、検量線作成処理を実行する。この処理において、制御部51は、標準試料を測定することによって測定部2から得られたデジタル信号に基づき凝固時間を算出し、算出した凝固時間と、当該標準試料の既知濃度とに基づき、
図6Aに示した補正前の検量線(例えば、検量線α)を作成する。検量線作成処理の詳細については、後述する。
【0061】
制御部51は、ステップS6において、検量線補正処理を実行する。この処理において、制御部51は、補正前の検量線を補正し、
図6Bに示した補正後の検量線(例えば、検量線β、検量線γ、検量線θ)を作成する。検量線補正処理の詳細については、後述する。
【0062】
制御部51は、ステップS7において、試薬容器25に収容された試薬の残量を監視する試薬残量監視処理を実行する。試薬残量監視処理の詳細については、後述する。
【0063】
制御部51は、ステップS8において、検量線入替処理を実行する。検量線入替処理については、後述する。
【0064】
制御部51は、ステップS9において、分析結果提供処理を実行する。この処理において、制御部51は、測定部2から送信された受光量に応じたデジタル信号に基づき、凝固時間を算出し、使用可能に設定されている検量線を用いて、当該凝固時間を濃度に換算する。換算された濃度は、表示部53に表示される。濃度換算に使用される検量線は、検量線が補正されていないときは、当該補正前の検量線であり、検量線が補正されているときは、当該補正後の検量線である。
【0065】
制御部51は、ステップS10において、通信処理を実行する。この処理において、制御部51は、測定部2から送信されたデジタル信号および試薬情報等の各種情報の受信、オペレータにより入力された指示等の各種情報の測定部2への送信を実行する。
【0066】
次に、測定部2の制御部41および分析部4の制御部51によって実行される試薬残量監視処理について
図8Aおよび
図8Bを用いて説明する。
【0067】
制御部41は、ステップS11において、試薬残量監視処理を実行する。この処理において、制御部41は、試薬分注部27の液面センサ28A(
図3参照)が試薬の液面を検知したときの吸引ノズルの下降量と、試薬の残量が所定量を下回ったことを判定するための閾値と、を比較する。
【0068】
制御部41は、ステップS12において、ステップS11の比較結果に基づき、試薬の残量が所定量を下回ったか否かを判定する。制御部41は、試薬の残量が所定量を下回った場合(ステップS12:YES)、ステップS13において、試薬の残量が少ないことを分析部4の制御部51に通知する。試薬の残量が所定量を下回っていない場合(ステップS12:NO)、処理を
図7に示したメインルーチンに戻す。
【0069】
一方、分析部4の制御部51は、ステップS15において、測定部2の制御部41から、試薬の残量が少ないことの通知があったか否かを判定する。制御部51は、通知があった場合(ステップS15:YES)、ステップS16において、試薬残量リセット画面を表示部52に表示し、オペレータの指示に応じて試薬残量をリセットする。通知がない場合、処理を
図7に示したメインルーチンに戻す。
【0070】
図11に、ステップS16で表示される試薬残量リセット画面の一例を示す。試薬残量リセット画面71は、「残量をリセットします。よろしいですか?」等の、残量のリセットを問い合わせる旨のメッセージを表示する第1メッセージ表示領域711と、「はい」ボタン712と、「いいえ」ボタン713とを備える。「はい」ボタン712は、残量をリセットさせる指示を入力するためのボタンである。「いいえ」ボタン713は、残量のリセットをせずに、当該残量リセット問合せ画面71を終了させるためのボタンである。
【0071】
オペレータによって「はい」ボタン712が選択されると、制御部51は、ステップS16において、試薬残量をリセット、すなわち、記憶部52に記憶されている試薬残量情報を削除するとともに、検量線画面を表示するか否かを問い合わせるための問い合わせ画面を表示部53に表示する。。なお、オペレータは、残量が所定量を下回った試薬容器を試薬貯留部23の試薬保持孔25から取り出し、同種の新しい試薬容器を同じ試薬保持孔に配置する。
【0072】
図12Aに、問い合わせ画面の一例を示す。問い合わせ画面72は、「補正した検量線を測定に使用する試薬の残量をリセットしました」等の、残量のリセットの完了を通知する旨のメッセージを表示する第2メッセージ表示領域721と、「検量線画面を表示しますか?」等の、検量線の表示を問い合わせる旨のメッセージを表示する第3メッセージ表示領域722と、「検量線画面の[リセット]ボタンを押すと、補正前の検量線に戻すことができます。」等の、補正後の検量線を補正前の検量線に戻すことが可能であることを通知する第4メッセージ表示領域723と、「はい」ボタン724と、「いいえ」ボタン725と、を備える。「はい」ボタン724は、検量線を表示させる指示を入力するためのボタンである。「いいえ」ボタン725は、問い合わせ画面72の表示を終了させるためのボタンである。
【0073】
なお、検量線が補正されていない場合、制御部51は、ステップS16において、
図12Bに示す問い合わせ画面を表示部53に表示する。この問い合わせ画面においては、検量線が補正されていないため、第4メッセージ表示領域723には何も表示されない。
【0074】
図8Bに戻り、制御部51は、ステップS17において、検量線画面表示フラグをONにセットする。検量線は、試薬の状態に依存して決定されるため、試薬貯留部23に保持された試薬を交換した場合には、作成し直す必要があるが、交換前の試薬と、交換後の試薬の製造ロットが同じ場合には、同じ検量線を使用できる。一方で、交換前の試薬と、交換後の試薬の製造ロットが同じ場合であっても、検量線を作成した後、交換前の試薬の劣化に伴って検量線を補正した場合には、補正された検量線を補正前の検量線に戻すことが必要になる。
【0075】
図9Aおよび
図9Bは、検量線の作成および補正の主な処理を示すフローチャートである。
図9Aに示すように、分析部4の制御部51は、ステップS19において、オペレータから入力部54を介して、検量線の作成指示を受け付けたか否かを判定する。制御部51は、指示を受け付けた場合(ステップS19:YES)、ステップS20において、測定部2の制御部41から受信した標準試料の吸光度を示す時系列のデジタル信号に基づき、検量線を作成する。検量線の作成手順は、上述の通りである。制御部51は、作成した検量線に、試薬情報読取部81によって読み取られた、標準試料の測定に使用した試薬の種類および製造ロット情報と、補正前の検量線であることを示す補正前フラグと、濃度の算出に使用可能な検量線であることを示す使用可能フラグと、を付加し、当該検量線とともに記憶部52に記憶する。これにより、補正されていない検量線が、濃度の算出に使用可能な検量線として設定される。ステップS19において、検量線の作成指示を受け付けていないと判定した場合(ステップS19:NO)、処理をメインルーチンに戻す。
【0076】
図9Bに示すように、分析部4の制御部51は、ステップS24において、オペレータから入力部54を介して、検量線の補正指示を受け付けたか否かを判定する。制御部51は、指示を受け付けた場合(ステップS24:YES)、ステップS25において、検量線を補正することにより、補正後の検量線を生成し、記憶部52に記憶する。
図6Bに、検量線の補正の一例を示す。
図6Bに示す例では、検量線αを、凝固時間が減少する方向に平行移動させた、1回目の補正後の検量線βが表示されている。なお、検量線βを更に補正した場合には、2回目の補正後の検量線γが表示され、検量線γを更に補正した場合には、3回目の補正後の検量線θが表示される。
【0077】
また、制御部51は、ステップS25において、補正前の検量線に付加されている試薬の種類および製造ロット情報をコピーし、補正により得られた補正後の検量線に付加する。また、制御部51は、補正後の検量線に、濃度の算出に使用可能な検量線であることを示す使用可能フラグ、および補正された検量線であることを示す補正後フラグを付加し、当該補正後の検量線とともに記憶部52に記憶する。また、制御部51は、ステップS20で作成した補正前の検量線に付加されていた使用可能フラグを削除する。但し、記憶部52に記憶されている補正前の検量線、試薬情報および補正前フラグは、削除せず保持する。ステップS24において、検量線の補正指示を受け付けていないと判定した場合(ステップS24:NO)、処理をメインルーチンに戻す。
【0078】
図10は、検量線入替処理を示すフローチャートを示す。制御部51は、ステップS30において、検量線画面表示フラグがONにセットされているか否かを判定する。制御部51は、検量線画面表示フラグがONにセットされている場合(ステップS30:YES)、ステップS31において、検量線画面を表示する。制御部51は、検量線画面表示フラグがONにセットされていない場合(ステップS30:NO)、処理をメインルーチンに戻す。
【0079】
図13Aは、ステップS31において表示される検量線画面の一例(検量線画面(A))を示す。検量線画面73は、項目情報表示領域731と、ポイント情報表示領域732と、グラフ表示領域733と、コマンド領域734と、検量線状態表示領域735と、を備える。
【0080】
項目情報表示領域731は、使用可能フラグが付加されている検量線に関する検量線属性情報を表示するための領域である。項目情報表示領域731には、検量線属性情報として、検量線の有効期限、検量線作成日時、バリデート日時(使用可能フラグが付加された日時)、標準試料の名称および製造ロット、および検量線の作成に用いられた試薬の製造ロット等が表示される。グラフ表示領域733は、検量線を表示するための領域である。
図13Aに示す例では、3回補正後の検量線である検量線θが表示されている。ポイント情報表示領域732は、グラフ表示領域733に表示されている検量線における所定の濃度と、その濃度に対応する凝固時間とを互いに対応させて数値で表示する領域である。
【0081】
コマンド領域734は、検量線画面73で実行できるコマンドに対応するコマンドボタンを表示するための領域である。コマンド領域734には、「バリデート」ボタン7342、「リセット」ボタン7343、および「選択」ボタン7344を含む複数のコマンドボタンが表示されている。「バリデート」ボタン7342は、表示中の検量線を、使用可能な検量線として設定させる指示を入力するためのボタンである。「リセット」ボタン7343は、記憶部52に記憶されている補正前の検量線(ステップS20で作成された検量線)を選択して読み出し、グラフ表示領域733に表示させるためのボタンである。「選択」ボタン7344は、過去に作成され、記憶部52に記憶されている複数の検量線から、使用可能な検量線を選択する画面に遷移するためのボタンである。使用可能に設定されている検量線が補正されたものである場合(すわわち、補正後フラグが付加されている場合)には、「リセット」ボタン7343は、記憶部52に記憶されている補正前の検量線を読み出すことが可能になるように設定される(リセットボタンが有効化される)。
【0082】
検量線状態表示領域735は、グラフ表示領域733に表示されている検量線が使用可能な検量線として設定されているか否か、すなわち、当該検量線に使用可能フラグが付加されているか否かを示す領域である。使用可能な検量線として設定されている場合、「Validated」が表示され、使用可能な検量線として設定されていない場合、「Not Validated」が表示される。なお、グラフ表示領域733に検量線が表示されていない場合は、「No Calibration Curve」が表示される。また、グラフ表示領域733に検量線が表示されているが、例えば標準試料の測定中に測定エラーが発生した場合など、検量線が適切に作成されなかったと判定される場合には、使用可能な検量線として設定できないこと(バリデート不可であること)を表す「Error」が表示される。
【0083】
なお、ステップS31において、検量線が補正されていない場合には、
図13Bに示すように、補正されていない検量線(
図13Bの例では、検量線α)を表示した検量線画面73が表示される。また、この検量線画面73においては、「リセット」ボタン7343はグレーアウトされるとともに、補正前の検量線を読み出す機能が無効化される。
【0084】
図10に戻り、制御部51は、ステップS32において、「リセット」ボタン7343の入力を受け付けたか否かを判定する。制御部51は、入力を受け付けた場合(ステップS32:YES)、処理をS33に進め、入力を受け付けていない場合(ステップS32:NO)、処理をステップS36に進める。なお、オペレータは、交換前の試薬の製造ロットと、交換後の試薬の製造ロットと、を確認し、両者が同じであるか否かにより、「リセット」ボタン7343を選択するか否かを決定することができる。
【0085】
制御部51は、ステップS33において、グラフ表示領域733に補正前の検量線を表示する処理を実行する。補正前の検量線には、補正前フラグが付加されているため、制御部51は、補正前フラグが付加されており、かつ、補正後の検量線と試薬の種類および製造ロット情報が同一である検量線を、補正前の検量線として選択し、記憶部52から読み出し、表示部53に表示する。
【0086】
図14は、補正前の検量線が表示された検量線画面の一例を示す。
図14に示すように、検量線画面73のグラフ表示領域733には、3回補正後の検量線θに加え、補正前の検量線αが表示され、項目情報表示領域731には、検量線θの情報に加え、検量線αの検量線属性情報が表示され、ポイント情報表示領域732には、検量線θの情報に加え、検量線αの凝固時間および濃度が数値で表示される。検量線状態表示領域735の表示には、検量線αは、この時点で使用可能に設定されていない(使用可能フラグが付加されていない)ため、「Not Validated」が表示される。オペレータは、検量線画面73に表示された各種情報から、検量線αを使用可能なフラグとして設定してよいかを判断し、設定してよいと判断した場合には、「バリデート」ボタン7342を選択する。
【0087】
オペレータにより「バリデート」ボタン7342が選択された場合、制御部51は、ステップS34において、検量線αに、濃度の算出に使用可能な検量線であることを示す使用可能フラグを付加し、検量線αとともに記憶部52に記憶する。また、それまで使用中であった検量線θに付加されていた使用可能フラグを削除する。
【0088】
図10に戻り、制御部51は、ステップS32において、「リセット」ボタン7343の入力を受け付けていないと判断した場合(ステップS31:NO)、ステップS36において、「選択」ボタン7344の入力を受け付けたか否かを判断する。「選択」ボタン7344の入力を受け付けたと判断した場合、制御部51は、ステップS37において、検量線選択画面を表示し、検量線の選択を受け付ける。
【0089】
図15は、検量線選択画面の一例を示す。この検量線選択画面には、試薬の種類が、PTおよびTHSであり、製造ロットが505401の試薬ロット組について作成された検量線ID0000001の検量線と、当該検量線を補正することによって作成された検量線ID0000002~0000004の検量線とが一覧で表示されている。
【0090】
検量線選択画面76は、検量線リスト761を表示する検量線リスト表示領域762と、「OK」ボタン764と、「キャンセル」ボタン765とを備える。検量線リスト761は、当該検量線の作成に用いられた試薬組を表示する試薬ロット組表示列7611と、当該検量線を、使用可能な検量線として設定した日を表示するバリデート日表示列7612と、当該検量線を識別するための検量線IDを表示する検量線ID表示列7613と、当該検量線が使用可能な検量線として設定されているか、および、当該検量線が補正されたものであるか、を示す検量線状態表示列7614とを含む。検量線状態表示列7614には、当該検量線が、使用可能な検量線として設定されている場合には、「Validated」が表示される。また、当該検量線が補正されたものである場合には、「Corrected」が表示される。すなわち、検量線状態表示列7614には、検量線ID0000001~0000004で示される各検量線に対する補正の有無を示す補正の履歴情報が表示される。
【0091】
検量線リスト761の各行は、入力部54の操作により、選択可能に構成されている(
図15の例では、検量線ID0000001の検量線が選択されている)。「OK」ボタン764は、選択された行の検量線を、
図14に示す検量線画面73のグラフ表示領域733に表示させる指示を入力するためのボタンである。「キャンセル」ボタン765は、検量線選択画面76の表示を終了させ、元の検量線画面73を表示させる指示を入力するためのボタンである。
【0092】
オペレータにより「OK」ボタン764が選択されると、制御部51は、ステップS38において、検量線選択画面76の表示を終了し、選択した検量線(
図14の例では、検量線α)をグラフ表示領域733に追加した検量線画面73を、表示部53に表示する。
【0093】
オペレータにより検量線画面73上の「バリデート」ボタン7342が選択されると、制御部51は、ステップS39において、検量線αに、濃度の算出に使用可能な検量線であることを示す使用可能フラグを付加し、検量線αとともに記憶部52に記憶する。また、それまで使用中であった検量線(
図14の例では、検量線θ)に付加されていた使用可能フラグを削除する。
【0094】
上記した実施形態による検体分析装置1および検量線設定方法によれば、補正後の検量線(第2検量線)を補正前の検量線(第1検量線)に戻す(入れ替える)ことを支援するための画面として、「リセット」ボタン7343を含む検量線画面73および、補正の履歴情報を含む検量線選択画面76を表示するので、オペレータは、簡便に、補正前の検量線に戻すことができる。
【0095】
また、オペレータは、補正後の検量線を表示させた状態で、「リセット」ボタン7343を選択することができるので、補正前の検量線に戻す操作を行っていることを容易に把握することができる。
【0096】
また、オペレータが「リセット」ボタン7343を選択すると、補正前の検量線と補正後の検量線が並べて表示されるため、補正前の検量線に戻すことにより検量線がどの程度変化するかを、容易に把握することができる。
【0097】
また、オペレータは、「バリデート」ボタン7342を選択するだけで、表示された補正前の検量線を使用可能な検量線として設定することができるので、簡便に、補正前の検量線に戻すことができる。
【0098】
また、標準試料の測定に用いられた試薬の残量が所定量を下回ると、補正前の検量線に戻すことができることを示すメッセージを含む問い合わせ画面72が表示され、検量線画面73が表示されるため、オペレータは、適切なタイミングで補正前の検量線に戻すことができる。
【0099】
また、「リセット」ボタン7343は、検量線が補正されているときには有効化され、検量線が補正されていないときには無効化されるため、オペレータは、検量線の補正の有無を確認する必要がない。
【0100】
また、上記した実施形態による検体分析装置1および検量線設定方法によれば、検量線に対して実施された補正の履歴情報を含む検量線リスト761が表示されるので、オペレータは、どの検量線が補正されていな検量線であるかを、容易に把握することができる。また、検量線リスト761から補正されていな検量線を選択し、選択した検量線を検量線画面73に表示させることができるため、簡便に、補正前の検量線に戻すことができる。
【0101】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【0102】
例えば、上記した実施形態では、補正後の検量線(第2検量線)を補正前の検量線(第1検量線)に戻すことを支援するための画面として、「リセット」ボタン7343を含む検量線画面73および、補正の履歴情報を含む検量線選択画面76を表示しているが、いずれか一方の画面のみを表示可能な構成としてもよい。
【0103】
例えば、上記した実施形態では、制御部51は、ステップS25において、記憶部52に記憶されている補正前の検量線は、削除せず保持したが、実行した補正の内容を記憶部52に記憶しておき、補正前の検量線は削除してもよい。この場合、検量線画面73に補正前の検量線を表示するにあたっては、制御部51は、記憶部52に記憶されている補正後の検量線と、記憶部52に記憶された補正の内容と、に基づき、補正前の検量線を再生してもよい。
【0104】
また、上記した実施形態では、ステップS20において、補正されていない検量線に補正前フラグを付加し、ステップS33において、補正前フラグが付加されている検量線を選択し、検量線画面73に表示させたが、補正前フラグは付加せず、補正後フラグが付加されていない検量線を、補正されていない検量線として選択し、検量線画面73に表示させてもよい。また、補正前フラグおよび補正後フラグを検量線に付加せず、使用可能フラグが付加された日時が最も古い検量線を、補正前の検量線として選択してもよい。
【0105】
また、上記した実施形態では、ステップS31において、補正後の検量線を検量線画面73に表示させたが、補正前の検量線を表示させてもよい。すなわち、上記した実施形態では、「リセット」ボタン7343の選択により、補正前の検量線を表示させていたが、本変形例によれば、問い合わせ画面72の「はい」ボタン724の選択により、補正前の検量線を表示させてもよい。すなわち、本変形例によれば、問い合わせ画面72の「はい」ボタン724が、上記した実施形態における「リセット」ボタン7343と同様に、補正後の検量線(第2検量線)を補正前の検量線(第1検量線)に戻すことを支援する役割を果たす。
【0106】
また、上記した実施形態では、ステップS33において、補正前の検量線と、補正後の検量線とを並べて検量線画面73に表示させたが、補正後の検量線を画面から削除し、補正前の検量線のみを表示させてもよい。
【0107】
また、上記した実施形態では、「バリデート」ボタン7342が選択されることにより、補正前の検量線に使用可能フラグを付加したが、「リセット」ボタン7343が選択されることにより、補正前の検量線を表示するとともに、自動的に使用可能フラグを付加してもよい。
【0108】
また、上記した実施形態では、問い合わせ画面72を表示させ、「はい」ボタン724が選択されることにより、検量線画面73を表示させたが、試薬残量リセット画面71の「はい」ボタン712が選択されることにより、検量線画面73を表示させてもよい。
【0109】
また、上記した実施形態では、血液凝固分析装置について説明したが、免疫分析装置、生化学分析装置、核酸分析装置など、検量線を用いる他の検体分析装置に本発明を適用してもよい。例えば免疫分析装置に本発明を適用する場合、測定部は、所定の抗原/抗体の濃度が既知である標準試料に含まれる抗原/抗体の量に対応する光量のデジタル換算値を分析部に送付し、分析部は、光量のデジタル換算値と、抗原/抗体の既知の濃度と、を2軸とする検量線を作成する。
【0110】
また、上記した実施形態では、検体および標準試料の測定処理を、測定部の制御部が実行し、検量線の作成、補正などの処理を分析部の制御部が実行したが、これらの処理を1つの制御部(1つのCPUおよびその周辺回路)により実行してもよい。
【0111】
(他の変形例)
図16に、検量線入替支援処理の他の変形例を示す。本変形例は、制御部51により、交換前の試薬容器の試薬の製造ロットと、交換後の試薬容器の試薬の製造ロットと、を比較する点で、上記実施形態と異なる。
【0112】
制御部51は、ステップS50において、試薬が交換されたか、すなわち、
図8Bに示したステップS16が実行されたか、および、使用中の検量線が補正されたものであるか、すなわち、使用中の検量線に補正後フラグが付加されているか、を判定する。試薬が交換され、かつ、検量線が補正されたものである場合(ステップS50:YES)、制御部51は、ステップS51において、記憶部52に記憶されている交換前の試薬容器の試薬の製造ロットと、試薬情報読取部81により読み取られた交換後の試薬容器の試薬の製造ロットと、を比較する。試薬が交換されていない、または、検量線が補正されたものでない場合(ステップS50:NO)、処理をメインルーチンに戻す。
【0113】
制御部51は、比較した製造ロットが互いに同一である場合(ステップS52:YES)、ステップS53において、補正前の検量線に使用可能フラグを付加し、使用中の補正後の検量線に付加されている使用可能フラグを削除する。比較した製造ロットが互いに同一である場合(ステップS52:NO)、処理をメインルーチンに戻す。
【0114】
本変形例では、試薬交換前に検量線が補正された場合、試薬交換までは、
図7に示したステップS9において、補正された検量線を用いて分析結果が提供され、試薬が交換された後は、交換前の試薬容器の試薬の製造ロットと、交換後の試薬容器の試薬の製造ロットと、が互いに同一である場合、自動的に補正後の検量線が補正前の検量線に戻され、ステップS9において、補正前の検量線を用いて分析結果が提供される。このように、本変形例では、交換後の試薬容器の試薬の製造ロットと、が互いに同一である場合、自動的に補正後の検量線が補正前の検量線に戻されるので、オペレータは、試薬の製造ロットを確認する必要がなく、補正された検量線を補正前の検量線に戻す操作が簡便になる。
【0115】
なお、本変形例において、比較した製造ロットが互いに同一である場合(ステップS52:YES)、
図13又は
図14に示した検量線画面73を表示し、「リセット」ボタン7343による補正前検量線の表示、及び/又は、「バリデート」ボタン7342による補正前の検量線の承認を実行しても良い。
【符号の説明】
【0116】
1 検体分析装置
2 測定部
3 搬送部
4 分析部
72 検量線表示問合せ画面
73 検量線画面
76 検量線リスト画面