(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】真空積層装置及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 37/00 20060101AFI20240515BHJP
H01G 13/00 20130101ALN20240515BHJP
H01G 4/30 20060101ALN20240515BHJP
【FI】
B32B37/00
H01G13/00 341
H01G13/00 331C
H01G4/30 311
(21)【出願番号】P 2020157699
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 智世
(72)【発明者】
【氏名】森 隆博
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/041293(WO,A1)
【文献】特開2010-267821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H01L 21/68
H01G 13/00
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワークを順次積層する真空積層装置であって、
前記ワークを保持する搬送板と、
前記搬送板を固定支持しつつ、前記搬送板に保持された前記ワークの位置合わせを行うアライメント手段と、
真空下において、位置合せされた前記ワークを積層ステージ上に積層する積層手段と、
常時、互いに離隔配置される、前記アライメント手段と前記積層手段との間を移動し、前記ワークが前記搬送板に保持された状態において、前記搬送板を固定支持しつつ、前記アライメント手段から前記積層手段へと前記ワークを搬送する搬送手段と、を備え、
前記搬送板は、前記アライメント手段及び前記搬送手段のそれぞれと着脱可能であり、一側に前記ワークを帯電固定し、他側が前記搬送手段と磁気固定されることを特徴とする真空積層装置。
【請求項2】
前記搬送板は、磁性体で構成されるとともに、前記搬送板の一側には、絶縁体が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の真空積層装置。
【請求項3】
前記搬送板は、粘着性を有する前記ワークの第1面とは反対側にする非粘着性の第2面を帯電固定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の真空積層装置。
【請求項4】
前記アライメント手段は、アライメントステージと、前記アライメントステージ上に設置ブロックとを備え、
前記搬送板は、前記ワークと前記アライメントステージとが非接触状態となるように、前記設置ブロックに載置されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の真空積層装置。
【請求項5】
前記搬送手段を前記積層手段に当接させて、密閉空間を形成するとともに、真空下とした前記密閉空間内において、前記搬送手段により、前記搬送板を移動させて、前記ワークを積層することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の真空積層装置。
【請求項6】
搬送板回収手段をさらに備え、
前記搬送板回収手段は、前記搬送板に対して除電を行って前記ワークから前記搬送板を剥離可能とし、前記搬送板を回収することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の真空積層装置。
【請求項7】
複数のワークを順次積層する積層体の製造方法であって、
搬送板の一側に前記ワークを帯電固定するステップと、
前記搬送板をアライメントステージに固定支持した状態で、前記搬送板に帯電固定された前記ワークの位置合わせを行うステップと、
前記搬送板の一側に前記ワークを帯電固定した状態で、前記搬送板の他側を磁気固定し、
常時、互いに離隔配置される、前記アライメントステージから積層ステージへと、位置合せされた前記ワークを搬送するステップと、
真空下において、前記積層ステージ上に位置合せされた前記ワークを積層するステップと、
を備えることを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項8】
前記ワークを搬送するステップは、上壁及び側壁を有する真空チャンバー内に、前記搬送板を磁気固定させるものであり、前記真空チャンバーを前記積層ステージに当接させることにより、密閉空間を形成することを特徴とする請求項7に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、着脱可能な搬送板を備える真空積層装置及び積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空積層装置は、電子部品を構成する複数枚のワークを積層するものであり、アライメント手段と、積層手段とを備える。このアライメント手段は、積層手段によってワークが積層される前に、各ワークの位置合わせを行うことより、形成される積層体の各ワーク同士のずれを抑制している。また、積層手段は、ワークの積層動作を行う際、真空下において積層することにより、ワークの層間への空気の混入を防止している。このような真空下において、ワークを吸着固定させるために、例えば、帯電固定などの負圧吸引以外の手段が採用されている。
【0003】
ここで、特許文献1には、真空積層装置であって、真空チャンバー内に、帯電手段と、アライメント手段と、を備え、一方のワークを帯電手段に帯電固定させるとともに、他方のワークをアライメント手段に載置し、真空下とした真空チャンバー内において、アライメント動作や積層動作を行うものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1において、多数の部品から構成される帯電手段及びアライメント手段に対して、シール性や摺動性などを維持する真空対策を施すことにより、コストの増加が引き起こされるおそれがあった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、真空対策を施す必要がある部品を少なくし、アライメント動作及び積層動作を行うことができる真空積層装置及び積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の複数のワークを順次積層する真空積層装置であって、前記ワークを保持する搬送板と、前記搬送板を固定支持しつつ、前記搬送板に保持された前記ワークの位置合わせを行うアライメント手段と、真空下において、位置合せされた前記ワークを積層ステージ上に積層する積層手段と、前記アライメント手段と前記積層手段との間を移動し、前記ワークが前記搬送板に保持された状態において、前記搬送板を固定支持しつつ、前記アライメント手段から前記積層手段へと前記ワークを搬送する搬送手段と、を備え、前記搬送板は、前記アライメント手段及び前記搬送手段のそれぞれと着脱可能であり、一側に前記ワークを帯電固定し、他側が前記搬送手段と磁気固定されるものである。
【0008】
また、上記真空積層装置であって、前記搬送板は、磁性体で構成されるとともに、前記搬送板の一側には、絶縁体が設けられているものとしてもよい。
【0009】
また、上記真空積層装置であって、前記搬送板は、粘着性を有する前記ワークの第1面とは反対側にする非粘着性の第2面を帯電固定するものとしてもよい。
【0010】
また、上記真空積層装置であって、前記アライメント手段は、アライメントステージと、前記アライメントステージ上に設置ブロックとを備え、前記搬送板は、前記ワークと前記アライメントステージとが非接触状態となるように、前記設置ブロックに載置されるものとしてもよい。
【0011】
また、上記真空積層装置であって、前記搬送手段を前記積層手段に当接させて、密閉空間を形成するとともに、真空下とした前記密閉空間内において、前記搬送手段により、前記搬送板を移動させて、前記ワークを積層するものとしてもよい。
【0012】
また、上記真空積層装置であって、搬送板回収手段をさらに備え、前記搬送板回収手段は、前記搬送板に対して除電を行って前記ワークから前記搬送板を剥離可能とし、前記搬送板を回収するものとしてもよい。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の複数のワークを順次積層する積層体の製造方法であって、搬送板の一側に前記ワークを帯電固定するステップと、前記搬送板をアライメントステージに固定支持した状態で、前記搬送板に帯電固定された前記ワークの位置合わせを行うステップと、前記搬送板の一側に前記ワークを帯電固定した状態で、前記搬送板の他側を磁気固定し、前記アライメントステージから積層ステージへと、位置合せされた前記ワークを搬送するステップと、真空下において、前記積層ステージ上に位置合せされた前記ワークを積層するステップと、を備えるものである。
【0014】
また、上記積層体の製造方法であって、前記ワークを搬送するステップは、上壁及び側壁を有する真空チャンバー内に、前記搬送板を磁気固定させるものであり、前記真空チャンバーを前記積層ステージに当接させることにより、密閉空間を形成するものとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、真空対策を施す必要がある部品を少なくし、アライメント動作及び積層動作を行うことができる真空積層装置及び積層体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る真空積層装置を示す平面模式図である。
【
図2】
図1に示される真空積層装置をXZ平面において切断した断面模式図である。
【
図3】ワークの積層工程における帯電動作からアライメント動作までを説明する断面模式図であり、(a)帯電動作、(b)保護層の剥離及び反転ユニットによる反転動作、(c)反転ユニットによる搬送動作、(d)アライメント動作、をそれぞれ表す。
【
図4】ワークの積層工程における搬送ユニットによる搬送動作を説明する断面模式図であり、(a)搬送準備状態、(b)搬送板の磁気固定状態、(c)アライメントステージからの離間状態、(d)積層ステージへの当接状態、をそれぞれ表す。
【
図5】ワークの積層工程における真空下の積層動作を説明する断面模式図であり、(a)真空引き状態、(b)積層状態、(c)引き剥がしピストンの伸張状態、(d)搬送板の磁気固定解除状態、(e)引き剥がしピストンの縮めた状態、をそれぞれ表す。
【
図6】ワークの積層工程における搬送板の回収動作を説明する断面模式図(a)-(c),(e)、及び、平面模式図(d)であり、(a)大気開放状態、(b)搬送ユニットの積層ステージから離間状態、(c),(d)搬送板の回収動作、(e)搬送板の回収動作終了状態、をそれぞれ表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下に説明する実施形態は、本発明を具体的に実現した形態を例示するものである。よって、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって、以下に説明される実施形態の構成は適宜修正又は変更されるべきものであり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
<用語について>
本明細書および特許請求の範囲の記載において、各用語を以下のように定義する。「積層」とは、複数枚(2枚も含む)の貼り合わせを示す。「積層体」とは、複数枚(2枚も含む)のワークWを貼り合わせたものを示す。「XYθ軸への移動」とは、X軸方向及びY軸方向への移動とθ方向への回動を示す。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る真空積層装置100を示す平面模式図であり、
図2は、
図1に示される真空積層装置100をXZ平面において切断した断面模式図である。ここで、X軸方向は、ワークWに対する各処理工程が実施される際にワークWが移動する方向を示すものであり、Y軸方向は、X軸方向と直交する方向を示すものである。また、Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向と直交し、かつ、ワークWに対する各処理工程が実施される際にワークWが面する方向を示すものである。
【0020】
<真空積層装置について>
真空積層装置100は、電子部品の薄化された各種基板である複数のワークWを高精度かつ高速に積層するものである。この真空積層装置100は、搬送板1と、反転ユニット(反転手段)10と、帯電ユニット(帯電手段)20と、アライメントユニット(アライメント手段)30と、搬送ユニット(搬送手段)40と、積層ユニット(積層手段)50と、搬送板回収ユニット(搬送板回収手段)60と、を備える。以下、それらを順に説明する。なお、真空積層装置100は、反転ユニット10、帯電ユニット20、アライメントユニット30、搬送ユニット40、積層ユニット50、及び、搬送板回収ユニット60の駆動などを制御する制御手段(不図示)をさらに備える。
【0021】
本実施形態において、ワークWは、
図3(a)に示すように、片面側(第1面)に粘着層a及びこの粘着層aに埃等が付着することを防ぐ保護層pを設けるものを用いている。しかしながら、これに限らず、例えば、両面側に粘着層a及び保護層pを設けるものや、いずれの面にも粘着層a及び保護層pを設けないものなど、様々な様態のワークWを用いることができる。
【0022】
<搬送板について>
搬送板1は、Z軸方向から見て、ワークWがはみ出さないように載置可能とするように設定された略矩形形状を有し、鉄系及びSUS440などの磁性体から構成される。また、搬送板1の表面である一側1a(
図3(a)参照)における、少なくともワークWが載置される領域には、絶縁体(不図示)、例えば、シリコンゴム等のシリコン系材料が設けられる。この絶縁体を介して、搬送板1の一側1aには、ワークWが帯電固定される。一方、一側1aとは反対側に位置する搬送板1の裏面である他側1b(
図3(a)参照)は、搬送板チャック42(
図4(b)参照)によって磁気固定される。
【0023】
本実施形態の搬送板1は、磁性体から構成され、一側1aに、絶縁体が設けられることにより、同一の搬送板1に対して、異なる固定手段(搬送板1の一側1aに帯電固定、及び、搬送板1の他側1bに磁気固定)を適用することができる。また、本実施形態において、搬送板1を、各ユニット(反転ユニット10、アライメントユニット30、搬送ユニット40)に対して着脱可能とすることにより、ワークWが、搬送板1を介して、各ユニットへと移動することができる。このように、各ユニットを物理的に分けることができるため、特許文献1のように、真空チャンバー内に、帯電ユニット及びアライメントユニットを配置するのではなく、ワークWが帯電固定される搬送板1のみを配置することができる。これにより、真空対策を施す必要がある部材を少なくし、アライメント動作及び積層動作を行うことができる。
【0024】
<反転ユニットについて>
反転ユニット10は、反転ステージ11と、反転ユニット10のX軸方向(矢印III方向:帯電・反転位置A、アライメントステージ位置B)の移動、Z軸方向(矢印IV方向)への移動、及び、Y軸周り(矢印II方向)への回転を行う反転ユニット駆動機構(不図示)と、を備える。反転ステージ11は、反転ステージ11上に搬送板1を載置した状態で固定する搬送板固定機構(不図示)を備える。この搬送板固定機構は、反転ステージ11上に設ける複数の吸着ポートによる真空吸着、メカチャック及び磁力など、又は、これらの組み合わせから構成してもよい。なお、搬送板固定機構による保持力は、搬送板1を固定した反転ステージ11が反転した際に、反転ステージ11から搬送板1が落下しないような値に予め設定されている。
【0025】
<帯電ユニットについて>
帯電ユニット20は、荷電粒子cを照射する荷電粒子照射部21と、帯電ユニット20のX軸方向(矢印I方向)への移動を行う帯電ユニット駆動機構(不図示)と、を備え、反転ユニット10のZ軸方向の上方に配置されている。荷電粒子照射部21は、荷電粒子cを鉛直方向下側に照射するものであり、例えば、陰イオンや陽イオンを照射するイオナイザであってもよい。この荷電粒子照射部21は、
図1に示すように、Y軸方向において、反転ステージ11を覆うように延在する。
【0026】
<アライメントユニットについて>
アライメントユニット30は、アライメントステージ31と、アライメントステージ31上に設けられる設置ブロック32と、アライメントステージ31のXYθ軸への移動を行うXYθ軸電動アクチュエータ33と、を備える。さらに、アライメントユニット30は、ワークWの位置合わせ参照用のマークであるアライメントマークを下方より撮像するアライメント撮像ユニット34を備える。以下、それらを順に説明する。
【0027】
アライメントステージ31は、アライメントステージ31の各角部から中心部に向かって延在し、透明な部材からなる複数の窓部(不図示)と、を備える。
【0028】
設置ブロック32は、Z軸方向からみて、アライメントステージ31の中心に対して、点対称となるように、アライメントステージ31上の外周縁に沿って、複数配置されている。また、設置ブロック32は、上面に、搬送板1を真空吸着させる複数の吸着ポート(不図示)を備える。本実施形態における設置ブロック32は、アライメントステージ31の中心に対して、点対称となるように複数配置されるものであるが、これに限らず、アライメントステージ31上の外周縁を全て囲むように設けてもよい。
【0029】
XYθ軸電動アクチュエータ33は、ワークWを基準位置へと位置合わせするために、XYθ軸への移動、つまり、XY平面内における移動及び回動を行うことができる。
【0030】
アライメント撮像ユニット34は、アライメント用カメラ(不図示)及びアライメント用照明(不図示)を備えるものであり、複数の窓部を介して、アライメントステージ31の下方からワークWのアライメントマークを撮像する。
【0031】
<搬送ユニットについて>
搬送ユニット40は、真空チャンバー41と、搬送板チャック42と、搬送ユニット40のX軸方向(矢印V方向:アライメントステージ位置B、待機位置C,積層ステージ位置D)及びZ軸方向(矢印IV及びVI方向)への移動を行う搬送ユニット駆動機構(不図示)と、を備える。以下、それらを順に説明する。
【0032】
真空チャンバー41は、略矩形形状の上壁41tと、上壁41tの各外周縁を連続的に囲むように垂下する周壁41sと、を備える。
【0033】
真空チャンバー41の上壁41tには、昇降ピストン43と、一対のガイドシャフト部44と、一対の引き剥がしピストン45とから構成され、真空チャンバー41内における駆動をになう駆動機構が設けられる。まず、昇降ピストン43は、下端が搬送板チャック42に固定されており、Z軸方向に縮んだ待機状態と、Z軸方向(矢印VII方向)に伸張した伸張状態との間を伸縮することにより、搬送板チャック42をZ軸方向(矢印VII方向)に移動させる。また、一対のガイドシャフト部44は、下端が搬送板チャック42にそれぞれ固定されており、昇降ピストン43がZ軸方向に伸縮する際に、搬送板チャック42の水平度を維持するために、昇降ピストン43に同期して伸縮する。さらに、一対の引き剥がしピストン45は、Z軸方向に縮んだ待機状態と、搬送板チャック42の貫通孔42hを介して、Z軸方向(矢印VIII方向)に伸張した移動規制状態との間を伸縮する。なお、この一対の引き剥がしピストン45が、Z軸方向(矢印VIII方向)に伸張した移動規制状態においては、引き剥がしピストン45の下端が、搬送板チャック42の下面と面一となるように設定されている(
図5(c)参照)。
【0034】
本実施形態において、昇降ピストン43及び一対の引き剥がしピストン45は、例えば、エアシリンダや油圧シリンダなどにより伸縮自在に構成される。また、本実施形態の真空チャンバー41内の駆動機構は、シール部材を介在させるガイドブロック構造を採用するものであり、これにより、真空チャンバー41の内部空間と外部空間とが、駆動機構を介して流体連通することを防止している。なお、本実施形態における真空チャンバー41内の駆動機構の配置や個数は、単なる例示にすぎず、最適な配置や個数を適宜選択することができる。
【0035】
真空チャンバー41の周壁41sの下端には、Z軸方向の下方から見て、閉じた領域を形成するようにシール部材(不図示)が連続して設けられる。この真空チャンバー41のシール部材を、積層ステージ51上に当接及び密着させることにより、真空チャンバー41の内部空間を密閉状態に維持することができる(
図4(d)参照)。
【0036】
搬送板チャック42は、Z軸方向から見て、搬送板1がはみ出さないように保持可能とするように設定された略矩形形状を有し、一対の貫通孔42hと、複数の磁力部42mと、を備える。この一対の貫通孔42hは、引き剥がしピストン45と対応する位置に配置され、引き剥がしピストン45が非接触状態で挿通し得るように、貫通孔42hの直径が、引き剥がしピストン45の直径より大きく設定されている。また、複数の磁力部42mは、搬送板1を搬送板チャック42に磁気固定するためのものであり、永久磁石からなる。
【0037】
本実施形態の搬送板チャック42は、引き剥がしピストン45のZ軸方向の伸縮を許容するように、貫通孔42hを有するものであるが、これに限らず、例えば、搬送板チャック42の外周縁に連続する切り欠き部を設けてもよい。また、本実施形態の磁力部42mは、永久磁石からなるが、これに限らず、例えば、制御手段からの指示により、ON・OFF制御を行う電磁石を用いても良い。なお、本実施形態の搬送板チャック42における貫通孔42h及び磁力部42mの配置や個数は、単なる例示にすぎず、最適な配置や個数を適宜選択することができる。
【0038】
搬送ユニット駆動機構は、搬送ユニット40を、X軸方向(矢印V方向:アライメントステージ位置B、待機位置C,積層ステージ位置D)及びZ軸方向(矢印IV及びVI方向)へと移動させることができる。特に、搬送ユニット駆動機構が、搬送ユニット40を、Z軸方向(矢印IV及びVI方向)へと移動させることにより、搬送板1の回収(
図4(b)及び
図4(c)参照)や、真空引きに用いられる密閉空間の形成(
図4(d)参照)などを行うことができるが、詳細は後述する。
【0039】
<積層ユニットについて>
積層ユニット50は、ワークWが積層される積層ステージ51を備える。この積層ステージ51は、Z軸方向から見て、搬送ユニット40の真空チャンバー41がはみ出さないように設置可能とするように設定された略矩形形状を有し、真空チャンバー41の周壁41sが積層ステージ51上に着座することにより、密閉空間が形成される。また、積層ステージ51は、真空チャンバー41及び積層ステージ51により形成される密閉空間を、真空引き及び大気開放するための排気ポート(不図示)及び開放ポート(不図示)を備える。さらに、積層ステージ51は、積層ステージ51上にワークWを載置した状態で固定するワーク固定機構(不図示)を備える。
【0040】
本実施形態における排気ポート及び開放ポートは、積層ステージ51に設けられるものであるが、これに限らず、例えば、真空チャンバー41に設けられても良い。また、本実施形態におけるワーク固定機構は、ワークWが積層ステージ51上に固定されていれば、どのような形態であってもよく、例えば、真空吸着や接着剤による貼り付け等を採用することができる。ここで、ワーク固定機構が真空吸着である場合には、ワークWの真空吸着における真空度を、真空チャンバー41内に形成される密閉空間の真空度に比べ、大きく設定する。
【0041】
<搬送板回収ユニットについて>
搬送板回収ユニット60は、把持手段61と、除電手段62と、搬送板回収ユニット60のX軸方向(矢印IX方向)への移動を行う搬送板回収ユニット駆動機構(不図示)と、を備える。以下、それらを順に説明する。
【0042】
把持手段61は、搬送板1を上下方向より把持するともに、搬送板1を、XY平面内(XY軸方向及びθ方向)(
図6(d)参照)へと移動させることができる。この把持手段61は、搬送板1を把持できれば、どのような形態であってもよく、例えば、電動アクチュエータやエアアクチュエータなどにより駆動されるメカハンドやプッシャーなどを採用してもよい。
【0043】
除電手段62は、電荷中和に必要な電荷を生成し、この電荷を除電エアiとして、帯電物体(搬送板1の一側1aに設けられる絶縁体)へと供給するイオナイザからなる。この除電手段62が、
図6(c)に示すように、搬送板1の一側1aに設けられる絶縁体に対して、除電エアiを流し込むことにより、搬送板1と積層体Lの最上部との静電吸着力を積極的に低下させる。
【0044】
本実施形態における除電手段62は、イオナイザを採用するものであるが、これに加え、例えば、搬送板1の一側1aに設けられる絶縁体を、ワークWが載置される領域より広く形成し、この絶縁体の外周縁を導電性がある把持手段61で直接把持するものを採用してもよい。これにより、絶縁体の外周縁及び把持手段61を介して、絶縁体における電荷中和が行われるため、搬送板1と積層体Lの最上部との静電吸着力をより積極的に低下させることができる。
【0045】
搬送板回収ユニット駆動機構は、把持手段61を、搬送板1に近接させるとともに、除電手段62を、積層ステージ51に近接させるように、それぞれをX軸方向(矢印IX方向)へと移動させることができる。
【0046】
<ワークの積層工程について>
図3乃至
図6を用いて、具体的な真空積層装置100におけるワークWの積層工程を順に説明する。なお、各ユニット(反転ユニット10、帯電ユニット20、アライメントユニット30、搬送ユニット40、積層ユニット50、及び、搬送板回収ユニット60)の駆動は、制御手段を主体とし、制御手段からの指示により実行される。ここで、このワークの積層工程において、搬送板1は、常に、各ユニットの何れかに、固定されているため、ワークWの位置合わせや搬送などを安定した状態で行うことができる。
【0047】
<帯電動作について>
まず、
図3(a)に示すように、帯電・反転位置Aに配置された反転ステージ11上に、搬送板供給ユニット(不図示)により、搬送板1の他側1bが接触するように載置されるとともに、搬送板1が、搬送板固定機構により、反転ステージ11に固定される。次に、搬送板1の一側1aに設けられる絶縁体上に、ワーク供給ユニット(不図示)により、粘着層a及び保護層pが設けられていないワークWの面(第2面)が接触するように載置される。さらに、反転ステージ11の上方を横切るように、帯電ユニット駆動機構により、帯電ユニット20が、X軸方向(矢印I(1)方向)に移動される。この際、荷電粒子cが、荷電粒子照射部21から下方に向けて照射されることにより、搬送板1の一側1aに設けられる絶縁体が、面的に帯電され、この絶縁体を介して、ワークWが搬送板1の一側1aに帯電固定される。ここで、
図1に示すように、ワークWが載置された搬送板1の一側1aを、Z軸方向から見ると、ワークWが載置されていない領域がワークWを囲むように、形成されている。
【0048】
本実施形態における帯電動作は、反転ステージ11に固定された搬送板1上にワークWを載置した後に、帯電ユニット20により、ワークWを絶縁体に帯電固定させるものとしたが、これに限らない。例えば、反転ステージ11に固定された搬送板1上にワークWを載置する前に、帯電ユニット20により、搬送板1の絶縁体を帯電させて、その後、ワークWを絶縁体に帯電固定させてもよい。なお、本実施形態の帯電動作のように、反転ステージ11に固定された搬送板1上にワークWを載置した後に、ワークWを絶縁体に帯電固定させることにより、搬送板1におけるワークWの位置ずれや、シワの発生などを抑制できるとともに、絶縁体からの放電の危険性や、絶縁体にコンタミメーションが発生することなどを抑制することができる。
【0049】
<反転ユニットによる反転及び搬送動作について>
まず、
図3(b)に示すように、搬送板1に帯電固定されたワークWに設けられる保護層pが、剥離ユニット(不図示)により、剥離される。これにより、搬送板1上に帯電固定されたワークWは、粘着性を有する粘着層aを片面側のみに設けたワークW(以下、「粘着剤付きワークWa」という)となる。その後、反転ユニット10が、反転ユニット駆動機構により、Y軸周り(矢印II(2)方向)に180°回転されるとともに、粘着剤付きワークWaの粘着層aが、下方を向くように配置される。ここで、搬送板固定機構による反転ステージ11に対する搬送板1の他側1bの固定保持力、及び、帯電固定による搬送板1の一側1aに対する粘着剤付きワークWaの静電吸着力は、反転ステージ11が反転した際に、搬送板1及び粘着剤付きワークWaが反転ステージ11から落下しないような値に、予め設定されている。
【0050】
本実施形態においては、搬送板1上に帯電固定されるワークWとして、粘着層a及び保護層pを片面側のみに設けるワークWを採用するものであるが、これに限らず、例えば、粘着層a及び保護層pを両面側に設けるワークWや、粘着層a及び保護層pを両面側に設けないワークWを採用してもよい。なお、搬送板1上に帯電固定されるワークWとして、粘着層a及び保護層pを両面側に設けるワークWを採用する場合には、ワークWの何れかの面の保護層pが、搬送板1の一側1aの絶縁体上に直接載置される。
【0051】
次に、
図3(c)に示すように、反転ユニット10が、反転ユニット駆動機構により、帯電・反転位置Aからアライメントステージ位置Bへと、X軸方向(矢印III(3)方向)に移動された後、Z軸方向の下方(矢印IV(4)方向)へと移動される。これにより、搬送板1の一側1aのワークWaが載置されていない領域を、アライメントユニット30の設置ブロック32の上面に当接させる。そして、搬送板1を設置ブロック32の上面に吸着固定させた後、搬送板固定機構による反転ステージ11に対する搬送板1の他側1bへの固定を解除する。その後、
図3(d)に示すように、反転ユニット10が、反転ユニット駆動機構により、Z軸方向の上方(矢印IV(5)方向)に移動された後、アライメントステージ位置Bから帯電・反転位置Aへと、X軸方向(矢印III(6)方向)に移動される。
【0052】
<アライメント動作について>
図3(d)に示すように、アライメント撮像ユニット34が、粘着剤付きワークWaに設けられた一対のアライメントマークを下方より撮像する。この撮像された画像は、画像処理装置(不図示)に送信され、画像処理により、一対のアライメントマークのそれぞれの位置が算出されるとともに、この算出された一対のアライメントマークの位置と予め定められた基準位置との誤差が算出される。ここで、この誤差が所定範囲内であれば、粘着剤付きワークWaの位置合わせが適切に行われたものと判断され、粘着剤付きワークWaの位置合わせ動作を終了にする。一方、この誤差が所定範囲外であれば、粘着剤付きワークWaの位置合わせが適切に行われなかったものと判断される。この際、XYθ軸電動アクチュエータ33が、誤差が最小となるように、アライメントステージ31、設置ブロック32及び搬送板1を介して、粘着剤付きワークWaのXYθ軸への移動を行う。この予め定められた基準位置への位置合わせは、誤差が所定範囲内となるまで続けられる。
【0053】
本実施形態におけるアライメント動作は、粘着剤付きワークWaとアライメントステージ31とが非接触状態において行われるため、粘着層aに埃等が付着することなく、円滑に行うことができる。
【0054】
<搬送ユニットによる搬送動作について>
搬送ユニットによる搬送動作について、
図4(a)乃至
図4(d)を用いて、搬送板の磁気固定状態及び搬送状態の2つの状態に分けてそれぞれ説明する。
【0055】
(搬送板の磁気固定状態)
搬送ユニット40は、昇降ピストン43及び引き剥がしピストン45を縮めた待機状態で、待機位置Cに停止している。まず、アライメントユニット30において、粘着剤付きワークWaの位置合わせが適切に行われたと判断されると、
図4(a)に示すように、搬送ユニット40が、搬送ユニット駆動機構により、待機位置Cからアライメントステージ位置Bへと、X軸方向(矢印V(7)方向)に移動される。その後、
図4(b)に示すように、搬送ユニット40が、搬送ユニット駆動機構により、Z軸方向の下方(矢印IV(8)方向)に移動され、搬送板チャック42が、搬送板1の他側1bに当接される。この際、磁性体からなる搬送板1が、永久磁石からなる複数の磁力部42mにより、搬送板チャック42に磁気固定される。ここで、搬送板1において、Z軸方向の下方に作用する設置ブロック32への吸着保持力が、Z軸方向の上方に作用する磁力部42mへの磁力より大きく設定されている。これにより、搬送板1が、設置ブロック32から浮上することなく、設置ブロック32に吸着固定された状態で、搬送板チャック42に磁気固定されるため、搬送板1上に帯電固定された粘着剤付きワークWaの位置がずれることを防止できる。
【0056】
本実施形態において、磁力部42mは、永久磁石を採用するものであるが、これに代えて、ON・OFF制御を行う電磁石を採用する場合には、搬送板チャック42が、搬送板1の他側1bに当接する前後のタイミングで、OFF制御からON制御へと切り換えて、磁力を発生させてもよい。
【0057】
(搬送状態)
まず、設置ブロック32の上面に対する搬送板1の一側1aの吸着固定を解除した後、
図4(c)に示すように、搬送ユニット40が、搬送ユニット駆動機構により、Z軸方向の上方(矢印IV(9)方向)に移動される。その後、
図4(d)に示すように、搬送ユニット40が、搬送ユニット駆動機構により、アライメントステージ位置Bから積層ステージ位置Dへと、X軸方向(矢印V(10)方向)に移動された後、Z軸方向の下方(矢印VI(11)方向)に移動される。これにより、真空チャンバー41の周壁41sの下端に設けられるシール部材が、積層ステージ51に当接及び密着することにより、真空チャンバー41内に密閉空間(内部圧力は大気圧Pa)が形成される。この際、搬送板1に帯電固定された粘着剤付きワークWa、及び、積層ステージ51に積層されている積層体Lは、非接触状態で上下方向に対向配置される。
【0058】
ここで、積層ステージ51に積層されている積層体Lにおいて、最下部のワークWのみが、粘着層aを設けないワークWであり、ワーク固定機構により、積層ステージ51に固定されており、その他のワークWは、粘着剤付きワークWaからなり、互いの接着力により固定されている。本実施形態において、搬送ユニット駆動機構により、積層ステージ51に対する真空チャンバー41の押圧力が、所望の値となるように調整することにより、真空チャンバー41内に形成される密閉空間の気密度を高めている。
【0059】
<積層動作について>
ここから、積層動作について、
図5(a)乃至
図5(e)を用いて、真空引き状態、積層状態及び搬送板の磁気固定解除状態の3つの状態に分けてそれぞれ説明する。なお、
図5(b)乃至
図5(e)において、昇降ピストン43又は一対の引き剥がしピストン45の動作を把握し易くするために、動作状態にある部材を灰色で示している。
【0060】
(真空引き状態)
まず、
図5(a)に示すように、真空チャンバー41内に形成された密閉空間内の気体が、積層ステージ51に設けられる排気ポートを介して、排気されることにより、真空引きが行われる(図中のドット領域参照)。この密閉空間内における真空圧Pvは、例えば、-100(kpa)程度に設定されている。ここで、粘着剤付きワークWaは、搬送板1に帯電固定されるとともに、搬送板1は、搬送板チャック42に磁気固定されるため、真空下においても、粘着剤付きワークWaや搬送板1が搬送板チャック42から落下することはない。
【0061】
(積層状態)
真空チャンバー41内の真空圧Pvが所望の値に達した後、
図5(b)に示すように、昇降ピストン43は、伸張状態へと移行し、搬送板チャック42が、Z軸方向の下方(矢印VII(12)方向)に移動される。そして、搬送板1に帯電固定された粘着剤付きワークWaが、積層ステージ51に積層されている積層体Lの最上部に当接される。さらに、この状態から、昇降ピストン43は、粘着剤付きワークWaに用いられている粘着剤の種類により、予め設定されている押し込み量だけ、搬送板チャック42を、Z軸方向の下方(矢印VII(12)方向)へと移動させる。これにより、搬送板1に帯電固定された粘着剤付きワークWaは、接着力により積層体Lと一体的に積層される。
【0062】
本実施形態において、搬送板1に帯電固定された粘着剤付きワークWaと、積層ステージ51に積層されている積層体Lとの間の空間を真空引きした後に、粘着剤付きワークWaが、積層体Lへと一体的に積層されることにより、積層体Lの層間への空気の混入が防止される。また、本実施形態において、搬送ユニット40は、単に、搬送板1の搬送を行うのみならず、密閉空間の形成や、ワークWの積層などを行うことができるため、真空積層装置100を構成する各ユニットの簡略化や、コストの削減を行うことができる。なお、本実施形態の積層動作において、積層体Lの積層精度をさらに向上させるために、例えば、ピンガイド積層方式、つまり、積層ステージ51及び搬送板チャック42に設けたピン及びガイド穴を互いに係合させて、積層を行う方法を採用してもよい。
【0063】
(搬送板の磁気固定解除状態)
まず、
図5(c)に示すように、一対の引き剥がしピストン45が、Z軸方向の下方(矢印VIII(13)方向)へと伸張されるとともに、搬送板チャック42に設けられる貫通孔42hを非接触状態で挿通される。そして、引き剥がしピストン45の下端が、搬送板チャック42の下面と面一となる位置、つまり、搬送板1の他側1bに当接する位置に達した状態で、引き剥がしピストン45の伸張が停止される。ここで、引き剥がしピストン45は、下端が搬送板1に当接するとともに、堅固に固定された移動規制状態となっているため、搬送板1のZ軸方向の上方への移動が規制される。
【0064】
次に、
図5(d)に示すように、昇降ピストン43により、搬送板チャック42は、Z軸方向の上方(矢印VII(14)方向)に移動されるとともに、縮んだ待機状態に置かれる。この際、搬送板1に作用する磁力部42mの磁力より大きい力が、昇降ピストン43により、搬送板チャック42に負荷されて、搬送板チャック42と搬送板1との磁気固定が解除される。また、引き剥がしピストン45により、搬送板1のZ軸方向の上方への移動が規制されているため、積層体Lの層間には、引き剥がされるような外力が負荷されず、積層体Lの積層精度を維持することができる。そして、
図5(e)に示すように、一対の引き剥がしピストン45は、Z軸方向の上方(矢印VIII(15)方向)に移動され、縮んだ待機状態に置かれる。
【0065】
本実施形態において、磁力部42mは、永久磁石を採用するものであるが、これに代えて、ON・OFF制御を行う電磁石を採用する場合には、引き剥がしピストン45の下端が、搬送板1の他側1bに当接する前後のタイミングで、ON制御からOFF制御へと切り換えて、磁力を消失させてもよい。
【0066】
<搬送板の回収動作について>
搬送板の回収動作について、
図6(a)乃至
図6(e)を用いて、回収準備状態及び回収状態の2つの状態に分けてそれぞれ説明する。なお、
図6(a)乃至
図6(c)、
図6(e)は、搬送板1の回収動作を説明する断面模式図であり、
図6(d)は、
図6(c)における搬送板1及び積層体Lのみを示す平面模式図である。
【0067】
(回収準備状態)
まず、
図6(a)に示すように、真空チャンバー41内に形成される密閉空間内へと、積層ステージ51に設けられる開放ポートを介して、気体を供給し、内部圧力が大気圧Paとなるように大気開放が行われる。そして、
図6(b)に示すように、搬送ユニット40が、搬送ユニット駆動機構により、Z軸方向の上方(矢印VI(16)方向)に移動された後、積層ステージ位置Dから待機位置Cへと、X軸方向(矢印V(17)方向)に移動される。
【0068】
(回収状態)
図6(c)に示すように、搬送板回収ユニット60が、搬送板回収ユニット駆動機構により、X軸方向(矢印IX方向)に移動されることにより、把持手段61が、搬送板1に近接されるとともに、除電手段62が、積層ステージ51に近接される。そして、把持手段61により、把持位置Gにおいて搬送板1が、上下方向から把持された後、
図6(d)に示すように、搬送板1がXY平面内(XY軸方向及びθ方向)に移動される。加えて、除電手段62により、搬送板1と積層体Lとの間には、除電エアiが流し込まれる。
【0069】
ここで、把持手段61及び除電手段62を用いた除電メカニズムについて説明する。まず、積層体Lの最上部に積層された粘着剤付きワークWaと搬送板1との間の帯電固定は、Z軸方向への引張力に対しては、強固であるが、XY平面に平行なせん断力に対しては、比較的容易に横ずれを生じる。このため、
図6(d)に示すように、積層体Lの位置は、固定されたままで、把持手段61により、搬送板1が、積層体Lに対して、XY平面内へとスライドされる。この際、搬送板1と積層体Lとの間には、除電手段62により、除電エアiが流し込まれるため、積層体Lの最上部に積層された粘着剤付きワークWaと搬送板1との静電吸着力は、絶縁体の外側から内側に向かって順に弱まっていく。このスライド及び除電エアiの流し込みが繰り返されることにより、搬送板1が積層体Lから分離され、回収される。その結果、
図6(e)に示すように、積層ステージ51上には、粘着剤付きワークWaが、積層体Lの最上部に一体的に積層される。
【0070】
本実施形態において、搬送板1を積層体Lから分離し回収する際に、積層体Lの層間には、引き剥がされるような外力が負荷されないため、層間に空気が混入することを防止できる。また、本実施形態におけるワークWは、粘着剤付きワークWaを用いて説明したが、これに代えて、粘着層a及び保護層pを両面側に設けるワークWを用いる場合には、ワークWが積層体Lに積層された後に、ワークWの上面側に位置する保護層pが剥離されてもよい。さらに、本実施形態において、積層体Lにおける層間の粘着剤の接着力が、積層体Lと搬送板1との静電吸着力より比較的大きい場合には、搬送板1は、把持手段61により、XY平面内に移動されるのに加え、Z軸方向へと移動されてもよい。これは、把持手段61により、積層体Lに対してZ軸方向の外力が負荷されても、積層体Lの層間が引き剥がされないため、層間への空気の混入を防止することや、積層精度を維持することができるためである。
【0071】
以上のように、一枚のワークWを積層体Lに積層する積層工程について説明したが、さらなるワークWを積層体Lに積層する必要がある場合には、積層工程(
図3乃至6)を必要枚数分さらに繰り返すことにより、所望の積層体Lを形成することができる。
【符号の説明】
【0072】
100 真空積層装置
1 搬送板
10 反転ユニット(反転手段)
11 反転ステージ
20 帯電ユニット(帯電手段)
30 アライメントユニット(アライメント手段)
31 アライメントステージ
32 設置ブロック
40 搬送ユニット(搬送手段)
41 真空チャンバー
42 搬送板チャック
43 昇降ピストン
44 ガイドシャフト部
45 引き剥がしピストン
50 積層ユニット(積層手段)
51 積層ステージ
60 搬送板回収ユニット(搬送板回収手段)
61 把持手段
62 除電手段
A 帯電・反転位置
B アライメントステージ位置
C 待機位置
D 積層ステージ位置
L 積層体
W ワーク
Wa 粘着剤付きワーク