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  • 特許-フォトクロミック組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】フォトクロミック組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 9/02 20060101AFI20240515BHJP
   C09D 11/50 20140101ALI20240515BHJP
【FI】
C09K9/02 B
C09D11/50
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020563022
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(86)【国際出願番号】 JP2019047972
(87)【国際公開番号】W WO2020137469
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2018244604
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000111890
【氏名又は名称】パイロットインキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221589
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 俊博
(72)【発明者】
【氏名】神戸 靖章
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-001757(JP,A)
【文献】特開2017-132114(JP,A)
【文献】特開2014-122318(JP,A)
【文献】特開2014-121860(JP,A)
【文献】国際公開第2013/008936(WO,A1)
【文献】米国特許第05840926(US,A)
【文献】米国特許第05464567(US,A)
【文献】特開2015-137259(JP,A)
【文献】特開平11-116565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 9/02
C09D
C08L 101/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるフォトクロミック化合物と、オリゴマーとからなるフォトクロミック組成物。
【化1】
〔一般式(1)中、XとXは、酸素原子を表し、YとYは、CHを表し、R乃至Rは、一般式(2)を表し、R11乃至R14は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基を表し、R15は、炭素数3以上のアルキル基を表す。*は、ピラン骨格との結合部位を表す。XとY、及び、XとYはそれぞれ、ナフタレン骨格を構成する炭素原子のうち隣り合う炭素原子に結合する。〕
【請求項2】
前記一般式(1)が、下記一般式(3)乃至(9)のいずれかである請求項1記載のフォトクロミック組成物。
【化2】
【請求項3】
前記一般式(1)が、前記一般式(7)乃至(9)のいずれかである請求項記載のフォトクロミック組成物。
【請求項4】
15が、炭素数3以上8以下のアルキル基である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のフォトクロミック組成物。
【請求項5】
前記オリゴマーが、重量平均分子量が200~6000のスチレン系オリゴマー、重量平均分子量が12000以下のアクリル系オリゴマー、重量平均分子量が250~4000のテルペン系オリゴマー、重量平均分子量が200~2000のテルペンフェノール系オリゴマーから選ばれるオリゴマーである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のフォトクロミック組成物。
【請求項6】
前記フォトクロミック化合物と、前記スチレン系オリゴマー又はアクリル系オリゴマーの重量比が1:1~1:10000の範囲にある請求項5記載のフォトクロミック組成物。
【請求項7】
前記フォトクロミック化合物と、前記テルペン系オリゴマーの重量比が1:1~1:5000の範囲にある請求項5記載のフォトクロミック組成物。
【請求項8】
前記フォトクロミック化合物と、前記テルペンフェノール系オリゴマーの重量比が1:1~1:50の範囲にある請求項5記載のフォトクロミック組成物。
【請求項9】
前記フォトクロミック化合物と、前記オリゴマーとをマイクロカプセルに内包してなる、或いは、樹脂粒子中に分散してなる請求項1乃至8のいずれか一項に記載のフォトクロミック組成物。
【請求項10】
紫外線吸収剤を含む請求項1乃至9のいずれか一項に記載のフォトクロミック組成物。
【請求項11】
ヒンダードアミン系光安定剤を含む請求項10記載のフォトクロミック組成物。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載のフォトクロミック組成物と、ビヒクルとからなるフォトクロミック液状組成物。
【請求項13】
印刷用インキ、筆記具用インキ、塗布具用インキ、インクジェット用インキ、塗料、紫外線硬化型インキ、絵の具、化粧料、繊維用着色液から選ばれる請求項12記載のフォトクロミック液状組成物。
【請求項14】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載のフォトクロミック組成物と、成形用樹脂とからなるフォトクロミック成形用樹脂組成物。
【請求項15】
請求項14記載のフォトクロミック成形用樹脂組成物を成形してなるフォトクロミック成形体。
【請求項16】
支持体上に、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のフォトクロミック組成物を含む光変色層を設けてなるフォトクロミック積層体。
【請求項17】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載のフォトクロミック組成物を用いた物品。
【請求項18】
玩具類、包装用容器、刺繍糸、又はインジケーターである請求項17記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フォトクロミック組成物に関する。さらに詳細には、発色時に橙色乃至赤色を呈し、変色感度の調整が可能で、且つ、発色状態での濃度が高く、消色状態での残色が少ないナフトピラン系フォトクロミック化合物を用いたフォトクロミック組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐光性と発色濃度を向上させたフォトクロミック材料として、スピロオキサジン誘導体又はスピロピラン誘導体から選ばれるフォトクロミック化合物と、重量平均分子量が200~6000のスチレン系オリゴマーとからなるフォトクロミック材料が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、十分な発色濃度を有すると共に、消色感度の調整が可能なフォトクロミック材料として、スピロオキサジン誘導体又はスピロピラン誘導体から選ばれるフォトクロミック化合物と、重量平均分子量が12000以下のアクリル系オリゴマーとからなるフォトクロミック材料が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、変色感度の調整が可能なフォトクロミック組成物として、特定構造のクロメン系フォトクロミック化合物と、重量平均分子量が250~4000のスチレン系オリゴマー又はテルペン系オリゴマーとからなるフォトクロミック組成物が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
さらに、消色状態での残色が少なく、且つ、発色状態での濃度が高いフォトクロミック色材として、フォトクロミック化合物と、テルペンフェノール樹脂とからなるフォトクロミック色材が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
上記の特許文献1乃至4は、耐光性、発色濃度を向上させることができ、また、変色感度を調整して玩具分野、筆記具分野、教育分野、医療分野、インテリア分野、装飾分野、印刷分野等の各種分野に適用することが可能な発明であるが、特定構造のナフトピラン系フォトクロミック化合物を適用することは開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-48159号公報
【文献】特開2014-231573号公報
【文献】特開2010-180396号公報
【文献】国際公開第2015/111744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、特定構造のナフトピラン系フォトクロミック化合物と、オリゴマーとを用いたフォトクロミック組成物であって、変色感度の調整が可能であり、且つ、発色状態での濃度が高く、消色状態での残色が少ないフォトクロミック組成物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、下記一般式(1)で示されるフォトクロミック化合物と、オリゴマーとからなるフォトクロミック組成物を要件とする。
【化1】
〔一般式(1)中、XとXは、酸素原子を表し、YとYは、CHを表し、R乃至Rは、一般式(2)を表し、R11乃至R14は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基を表し、R15は、炭素数3以上のアルキル基を表す。*は、ピラン骨格との結合部位を表す。XとY、及び、XとYはそれぞれ、ナフタレン骨格を構成する炭素原子のうち隣り合う炭素原子に結合する。〕
更には、ある実施形態において、前記一般式(1)が、下記一般式(3)乃至(9)のいずれかであること、ある実施形態において、前記一般式(1)が、下記一般式(5)乃至(9)のいずれかであること、ある実施形態において、R15が、炭素数3以上8以下のアルキル基であることを要件とする。
【化2】
更には、ある実施形態において、前記オリゴマーが、重量平均分子量が200~6000のスチレン系オリゴマー、重量平均分子量が12000以下のアクリル系オリゴマー、重量平均分子量が250~4000のテルペン系オリゴマー、重量平均分子量が200~2000のテルペンフェノール系オリゴマーから選ばれるオリゴマーであること、ある実施形態において、前記フォトクロミック化合物と前記スチレン系オリゴマー又はアクリル系オリゴマーの重量比が1:1~1:10000の範囲にあること、ある実施形態において、前記フォトクロミック化合物と前記テルペン系オリゴマーの重量比が1:1~1:5000の範囲にあること、ある実施形態において、前記フォトクロミック化合物と前記テルペンフェノール系オリゴマーの重量比が1:1~1:50の範囲にあること、ある実施形態において、前記フォトクロミック化合物と、前記オリゴマーとをマイクロカプセルに内包してなる、或いは、樹脂粒子中に分散してなることを要件とする。
更には、ある実施形態において、紫外線を含むことを要件とし、ある実施形態において、紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤とを含むことを要件とする。
更には、ある実施形態において、前記フォトクロミック組成物とビヒクルとからなるフォトクロミック液状組成物であること、ある実施形態において、前記フォトクロミック液状組成物が印刷用インキ、筆記具用インキ、塗布具用インキ、インクジェット用インキ、塗料、紫外線硬化型インキ、絵の具、化粧料、繊維用着色液から選ばれること、ある実施形態において、前記フォトクロミック組成物と成形用樹脂とからなるフォトクロミック成形用樹脂組成物であること、ある実施形態において、前記フォトクロミック成形用樹脂組成物を成形してなるフォトクロミック成形体であること、ある実施形態において、支持体上に前記フォトクロミック組成物を含む光変色層を設けてなるフォトクロミック積層体であることを要件とする。
更には、ある実施形態において、前記フォトクロミック組成物を用いた物品であること、ある実施形態において、前記物品が、玩具類、包装用容器、刺繍糸、又はインジケーターであることを要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態は、特定構造のナフトピラン系フォトクロミック化合物と、オリゴマーとを用いたフォトクロミック組成物であって、発色時に橙色乃至赤色を呈し、変色感度の調整が可能であり、且つ、発色状態での濃度が高く、消色状態での残色が少ないフォトクロミック組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】フォトクロミック化合物の波長と吸光度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態に適用される、一般式(1)で示されるナフトピラン系フォトクロミック化合物としては、
2,2,7,7-テトラ(4′-n-プロポキシフェニル)-2H,7H-ナフト[1,2-b:4,3-b′]-ジピラン、
2,2,7,7-テトラ(4′-イソプロポキシフェニル)-2H,7H-ナフト[1,2-b:4,3-b′]-ジピラン、
2,2,7,7-テトラ(4′-n-ブトキシフェニル)-2H,7H-ナフト[1,2-b:4,3-b′]-ジピラン、
2,2,7,7-テトラ(4′-イソブトキシフェニル)-2H,7H-ナフト[1,2-b:4,3-b′]-ジピラン、
2,2,7,7-テトラ(4′-sec-ブトキシフェニル)-2H,7H-ナフト[1,2-b:4,3-b′]-ジピラン、
2,2,7,7-テトラ(4′-tert-ブトキシフェニル)-2H,7H-ナフト[1,2-b:4,3-b′]-ジピラン、
2,2,7,7-テトラ(4′-n-ペンチルオキシフェニル)-2H,7H-ナフト[1,2-b:4,3-b′]-ジピラン、
2,2,7,7-テトラ(4′-n-ヘキシルオキシフェニル)-2H,7H-ナフト[1,2-b:4,3-b′]-ジピラン、
2,2,7,7-テトラ(4′-n-ヘプチルオキシフェニル)-2H,7H-ナフト[1,2-b:4,3-b′]-ジピラン、
2,2,7,7-テトラ(4′-n-オクチルオキシフェニル)-2H,7H-ナフト[1,2-b:4,3-b′]-ジピラン、
2,2,8,8-テトラ(4′-n-プロポキシフェニル)-2H,8H-ナフト[1,2-b:5,6-b′]-ジピラン、
2,2,8,8-テトラ(4′-イソプロポキシフェニル)-2H,8H-ナフト[1,2-b:5,6-b′]-ジピラン、
2,2,8,8-テトラ(4′-n-ブトキシフェニル)-2H,8H-ナフト[1,2-b:5,6-b′]-ジピラン、
2,2,8,8-テトラ(4′-イソブトキシフェニル)-2H,8H-ナフト[1,2-b:5,6-b′]-ジピラン、
2,2,8,8-テトラ(4′-sec-ブトキシフェニル)-2H,8H-ナフト[1,2-b:5,6-b′]-ジピラン、
2,2,8,8-テトラ(4′-tert-ブトキシフェニル)-2H,8H-ナフト[1,2-b:5,6-b′]-ジピラン、
2,2,8,8-テトラ(4′-n-ペンチルオキシフェニル)-2H,8H-ナフト[1,2-b:5,6-b′]-ジピラン、
2,2,8,8-テトラ(4′-n-ヘキシルオキシフェニル)-2H,8H-ナフト[1,2-b:5,6-b′]-ジピラン、
2,2,8,8-テトラ(4′-n-ヘプチルオキシフェニル)-2H,8H-ナフト[1,2-b:5,6-b′]-ジピラン、
2,2,8,8-テトラ(4′-n-オクチルオキシフェニル)-2H,8H-ナフト[1,2-b:5,6-b′]-ジピラン、
3,3,8,8-テトラ(4′-n-プロポキシフェニル)-3H,8H-ナフト[2,1-b:5,6-b′]-ジピラン、
3,3,8,8-テトラ(4′-イソプロポキシフェニル)-3H,8H-ナフト[2,1-b:5,6-b′]-ジピラン、
3,3,8,8-テトラ(4′-n-ブトキシフェニル)-3H,8H-ナフト[2,1-b:5,6-b′]-ジピラン、
3,3,8,8-テトラ(4′-イソブトキシフェニル)-3H,8H-ナフト[2,1-b:5,6-b′]-ジピラン、
3,3,8,8-テトラ(4′-sec-ブトキシフェニル)-3H,8H-ナフト[2,1-b:5,6-b′]-ジピラン、
3,3,8,8-テトラ(4′-tert-ブトキシフェニル)-3H,8H-ナフト[2,1-b:5,6-b′]-ジピラン、
3,3,8,8-テトラ(4′-n-ペンチルオキシフェニル)-3H,8H-ナフト[2,1-b:5,6-b′]-ジピラン、
3,3,8,8-テトラ(4′-n-ヘキシルオキシフェニル)-3H,8H-ナフト[2,1-b:5,6-b′]-ジピラン、
3,3,8,8-テトラ(4′-n-ヘプチルオキシフェニル)-3H,8H-ナフト[2,1-b:5,6-b′]-ジピラン、
3,3,8,8-テトラ(4′-n-オクチルオキシフェニル)-3H,8H-ナフト[2,1-b:5,6-b′]-ジピラン、
2,2,10,10-テトラ(4′-n-プロポキシフェニル)-2H,10H-ナフト[1,2-b:7,8-b′]-ジピラン、
2,2,10,10-テトラ(4′-イソプロポキシフェニル)-2H,10H-ナフト[1,2-b:7,8-b′]-ジピラン、
2,2,10,10-テトラ(4′-n-ブトキシフェニル)-2H,10H-ナフト[1,2-b:7,8-b′]-ジピラン、
2,2,10,10-テトラ(4′-イソブトキシフェニル)-2H,10H-ナフト[1,2-b:7,8-b′]-ジピラン、
2,2,10,10-テトラ(4′-sec-ブトキシフェニル)-2H,10H-ナフト[1,2-b:7,8-b′]-ジピラン、
2,2,10,10-テトラ(4′-tert-ブトキシフェニル)-2H,10H-ナフト[1,2-b:7,8-b′]-ジピラン、
2,2,10,10-テトラ(4′-n-ペンチルオキシフェニル)-2H,10H-ナフト[1,2-b:7,8-b′]-ジピラン、
2,2,10,10-テトラ(4′-n-ヘキシルオキシフェニル)-2H,10H-ナフト[1,2-b:7,8-b′]-ジピラン、
2,2,10,10-テトラ(4′-n-ヘプチルオキシフェニル)-2H,10H-ナフト[1,2-b:7,8-b′]-ジピラン、
2,2,10,10-テトラ(4′-n-オクチルオキシフェニル)-2H,10H-ナフト[1,2-b:7,8-b′]-ジピラン、
3,3,6,6-テトラ(4′-n-プロポキシフェニル)-3H,6H-ナフト[2,1-b:3,4-b′]-ジピラン、
3,3,6,6-テトラ(4′-イソプロポキシフェニル)-3H,6H-ナフト[2,1-b:3,4-b′]-ジピラン、
3,3,6,6-テトラ(4′-n-ブトキシフェニル)-3H,6H-ナフト[2,1-b:3,4-b′]-ジピラン、
3,3,6,6-テトラ(4′-イソブトキシフェニル)-3H,6H-ナフト[2,1-b:3,4-b′]-ジピラン、
3,3,6,6-テトラ(4′-sec-ブトキシフェニル)-3H,6H-ナフト[2,1-b:3,4-b′]-ジピラン、
3,3,6,6-テトラ(4′-tert-ブトキシフェニル)-3H,6H-ナフト[2,1-b:3,4-b′]-ジピラン、
3,3,6,6-テトラ(4′-n-ペンチルオキシフェニル)-3H,6H-ナフト[2,1-b:3,4-b′]-ジピラン、
3,3,6,6-テトラ(4′-n-ヘキシルオキシフェニル)-3H,6H-ナフト[2,1-b:3,4-b′]-ジピラン、
3,3,6,6-テトラ(4′-n-ヘプチルオキシフェニル)-3H,6H-ナフト[2,1-b:3,4-b′]-ジピラン、
3,3,6,6-テトラ(4′-n-オクチルオキシフェニル)-3H,6H-ナフト[2,1-b:3,4-b′]-ジピラン、
3,3,9,9-テトラ(4′-n-プロポキシフェニル)-3H,9H-ナフト[2,1-b:6,5-b′]-ジピラン、
3,3,9,9-テトラ(4′-イソプロポキシフェニル)-3H,9H-ナフト[2,1-b:6,5-b′]-ジピラン、
3,3,9,9-テトラ(4′-n-ブトキシフェニル)-3H,9H-ナフト[2,1-b:6,5-b′]-ジピラン、
3,3,9,9-テトラ(4′-イソブトキシフェニル)-3H,9H-ナフト[2,1-b:6,5-b′]-ジピラン、
3,3,9,9-テトラ(4′-sec-ブトキシフェニル)-3H,9H-ナフト[2,1-b:6,5-b′]-ジピラン、
3,3,9,9-テトラ(4′-tert-ブトキシフェニル)-3H,9H-ナフト[2,1-b:6,5-b′]-ジピラン、
3,3,9,9-テトラ(4′-n-ペンチルオキシフェニル)-3H,9H-ナフト[2,1-b:6,5-b′]-ジピラン、
3,3,9,9-テトラ(4′-n-ヘキシルオキシフェニル)-3H,9H-ナフト[2,1-b:6,5-b′]-ジピラン、
3,3,9,9-テトラ(4′-n-ヘプチルオキシフェニル)-3H,9H-ナフト[2,1-b:6,5-b′]-ジピラン、
3,3,9,9-テトラ(4′-n-オクチルオキシフェニル)-3H,9H-ナフト[2,1-b:6,5-b′]-ジピラン、
3,3,10,10-テトラ(4′-n-プロポキシフェニル)-3H,10H-ナフト[2,1-b:7,8-b′]-ジピラン、
3,3,10,10-テトラ(4′-イソプロポキシフェニル)-3H,10H-ナフト[2,1-b:7,8-b′]-ジピラン、
3,3,10,10-テトラ(4′-n-ブトキシフェニル)-3H,10H-ナフト[2,1-b:7,8-b′]-ジピラン、
3,3,10,10-テトラ(4′-イソブトキシフェニル)-3H,10H-ナフト[2,1-b:7,8-b′]-ジピラン、
3,3,10,10-テトラ(4′-sec-ブトキシフェニル)-3H,10H-ナフト[2,1-b:7,8-b′]-ジピラン、
3,3,10,10-テトラ(4′-tert-ブトキシフェニル)-3H,10H-ナフト[2,1-b:7,8-b′]-ジピラン、
3,3,10,10-テトラ(4′-n-ペンチルオキシフェニル)-3H,10H-ナフト[2,1-b:7,8-b′]-ジピラン、
3,3,10,10-テトラ(4′-n-ヘキシルオキシフェニル)-3H,10H-ナフト[2,1-b:7,8-b′]-ジピラン、
3,3,10,10-テトラ(4′-n-ヘプチルオキシフェニル)-3H,10H-ナフト[2,1-b:7,8-b′]-ジピラン、
3,3,10,10-テトラ(4′-n-オクチルオキシフェニル)-3H,10H-ナフト[2,1-b:7,8-b′]-ジピラン
等が挙げられる。
【0009】
本発明の実施形態に適用されるナフトピラン系フォトクロミック化合物は、アルコキシ基を有することにより、発色時に橙色乃至赤色を呈する。
また、ナフトピラン系フォトクロミック化合物の一般式(2)におけるR15は、炭素数3以上のアルキル基、好ましくは、炭素数3以上8以下のアルキル基、より好ましくは、炭素数3又は4のアルキル基であるプロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、さらに好ましくは、sec-ブチル基である。
一般式(2)におけるR15のアルキル基の炭素数が、上記の範囲を満たすことにより、ナフトピラン系フォトクロミック化合物はオリゴマーに対して優れた溶解性を発現し、発色状態で高い濃度を示し易くなる。
【0010】
ナフトピラン系フォトクロミック化合物は、太陽光により発色させることができるが、光を照射する光源を備えた光照射具を用いて変色させることもできる。
光源はピーク発光波長が400~495nmの範囲にあって、主に青色光を照射するものが好適であり、従来のフォトクロミック化合物を良好に変色させる光源である350~390nm付近にピーク発光波長を有する紫外光を照射する光照射具とは異なり、紫色乃至青色光であるため、人体への影響が少なく、安全性が高い。
光源としては、上記のピーク発光波長を有する光源であれば全て用いることができるが、好ましくは青色発光ダイオードが用いられる。
発光ダイオードとしては、日亜化学工業(株)製、青色LED、商品名:NSPB336CS(ピーク波長465nm)、京セミ(株)製、青色LED、商品名:KED471M53A(ピーク波長465nm)、星和電機(株)製、青色LED、商品名:SDDB16001A1(ピーク波長460nm)、京セミ(株)製、紫色LED、商品名:KED405UH3(ピーク波長405nm)、OPTOSUPPLY製、紫色LED、商品名:OSSV5111A(ピーク波長430nm)、OPTOSUPPLY製、紫色LED、商品名:OSSV9131A(ピーク波長430nm)等が挙げられる。
【0011】
ナフトピラン系フォトクロミック化合物は、400nm未満における最大吸光度を示す波長から波長400nmまでの範囲における吸光度積算値(x)と、400nm~700nmまでの波長範囲における吸光度積算値(y)が下記式(1)を満たす(図1参照)。
y/x≧0.02 (1)
式(1)を満たすことにより、ピーク波長が400~495nmの範囲の光源に対しフォトクロミック性を発現し、光照射時に視認可能な色濃度を呈することができる。
y/xが0.02未満では、光照射具を用いて光照射してもフォトクロミック化合物が発色しなかったり、或いは、殆ど発色せず十分な色濃度が得られないため、使用者が色変化を視認することができ難い。
なお、y/xは好ましくは0.025以上であり、より好ましくは0.03以上である。
【0012】
ナフトピラン系フォトクロミック化合物はオリゴマーに溶解して用いられる。オリゴマーとしては、スチレン系オリゴマー、アクリル系オリゴマー、テルペン系オリゴマー、テルペンフェノール系オリゴマー等が挙げられる。
【0013】
スチレン系オリゴマーは重量平均分子量が200~6000、好ましくは200~4000のものが用いられる。
スチレン系オリゴマーの重量平均分子量が6000を超えると、光照射により色残りが発生し、且つ、発色濃度が低くなり易い。また、変色感度の調整が困難となるため、上記の範囲内であることが望ましい。
一方、重量平均分子量が200未満の場合、含有モノマーが多くなり安定性に欠けるため、耐光性を損ない易くなる。
【0014】
スチレン系オリゴマーは、スチレン骨格を有する化合物又はその水添物であり、具体的には、低分子量ポリスチレン、スチレン-α-メチルスチレン共重合体、α-メチルスチレン重合体、α-メチルスチレンとビニルトルエンの共重合体等が挙げられる。
低分子量ポリスチレンとしては、三洋化成工業(株)製、商品名:ハイマーSB-75(重量平均分子量2000)、同ST-95(重量平均分子量4000)等を例示できる。
スチレン-α-メチルスチレン共重合体としては、イーストマンケミカル社製、商品名:ピコラスチックA-5(重量平均分子量317)、同A-75(重量平均分子量917)等を例示できる。
α-メチルスチレン重合体としては、イーストマンケミカル社製、商品名:クリスタレックス3085(重量平均分子量664)、同3100(重量平均分子量1020)、同1120(重量平均分子量2420)等を例示できる。
α-メチルスチレンとビニルトルエンの共重合体としては、イーストマンケミカル社製、商品名:ピコテックスLC(重量平均分子量950)、同100(重量平均分子量1740)等を例示できる。
【0015】
アクリル系オリゴマーは重量平均分子量が12000以下、好ましくは1000~8000、より好ましくは1500~6000のものが用いられる。
アクリル系オリゴマーの重量平均分子量が12000を超えると、変色感度の調整が困難となるため、上記の範囲内であることが望ましい。
一方、重量平均分子量が1000未満の場合、含有モノマーが多くなり安定性に欠けるため、発色濃度が低くなり易いと共に、耐光性を損ない易くなる。
【0016】
アクリル系オリゴマーは、具体的には、アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
アクリル酸エステル共重合体としては、東亜合成(株)製、商品名:ARUFON UP-1170(重量平均分子量8000)、同1080(重量平均分子量6000)、同1000(重量平均分子量3000)、同1020(重量平均分子量2000)、同1010(重量平均分子量1700)、UH-2000(重量平均分子量11000)、US-6100(重量平均分子量2500)、UC-3510(重量平均分子量2000)等を例示できる。
【0017】
テルペン系オリゴマーは、重量平均分子量が250~4000、好ましくは300~4000のものが用いられる。
テルペン系オリゴマーの重量平均分子量が4000を超えると、光照射により色残りが発生し、且つ、発色濃度が低くなり易い。また、変色感度の調整が困難となるため、上記の範囲内であることが望ましい。
一方、重量平均分子量が250未満の場合、含有モノマーが多くなり安定性に欠けるため、耐光性を損ない易くなる。
【0018】
テルペン系オリゴマーは、テルペン骨格を有する化合物であり、具体的には、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、d-リモネン重合体等が挙げられる。
α-ピネン重合体としては、イーストマンケミカル社製、商品名:ピコライトA115(重量平均分子量833)等を例示できる。
β-ピネン重合体としては、イーストマンケミカル社製、商品名:ピコライトS115(重量平均分子量1710)等を例示できる。
d-リモネン重合体としては、イーストマンケミカル社製、商品名:ピコライトC115(重量平均分子量902)等を例示できる。
【0019】
テルペンフェノール系オリゴマーは、重量平均分子量が200~2000、好ましくは500~1200のものが用いられる。
テルペンフェノール系オリゴマーの重量平均分子量が2000を超えると、変色感度の調整が困難となるため、上記の範囲内であることが望ましい。
一方、重量平均分子量が200未満の場合、含有モノマーが多くなり安定性に欠けるため、発色濃度が低くなり易くなる。
【0020】
テルペンフェノール系オリゴマーは、環状テルペンモノマーとフェノール類とを共重合させた化合物又はその水添物であり、具体的には、α-ピネン-フェノール共重合体等が挙げられる。
【0021】
α-ピネン-フェノール共重合体としては、ヤスハラケミカル(株)製、商品名:YSポリスターT145(重量平均分子量1050)、同T130(重量平均分子量900)、同T500(重量平均分子量500)、同S145(重量平均分子量1050)等を例示できる。
【0022】
上記のスチレン系オリゴマー、アクリル系オリゴマー、テルペン系オリゴマー、テルペンフェノール系オリゴマーの重量平均分子量は、GPC法(ゲル浸透クロマトグラフ法)により測定する。
オリゴマーは、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いることもできる。
【0023】
フォトクロミック化合物:スチレン系オリゴマー又はアクリル系オリゴマーの重量比は、1:1~1:10000であることが好ましく、より好ましくは1:5~1:500である。
フォトクロミック化合物:テルペン系オリゴマーの重量比は、1:1~1:5000であることが好ましく、より好ましくは1:5~1:500である。
フォトクロミック化合物:テルペンフェノール系オリゴマーの重量比は、1:1~1:50であることが好ましく、より好ましくは1:2~1:30であり、さらに好ましくは1:2~1:20である。
フォトクロミック化合物とオリゴマーの重量比は、上記の範囲を満たすことにより、フォトクロミック化合物が発消色機能を満たすと共に、十分な発色濃度を示し易くなる。
【0024】
本発明の実施形態のフォトクロミック組成物には、紫外線吸収剤を添加して耐光性を向上させることもできる。
以下に、紫外線吸収剤を例示するが、本発明の実施形態はこれらの化合物に限定されるものではない。
2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、
2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、
2,2′-ジヒドロキシ-4,4′-ジメトキシベンゾフェノン、
2,2′,4,4′-テトラヒドロキシベンゾフェノン、
2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、
2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシベンゾフェノン、
ビス-(2-メトキシ-4-ヒドロキシ-5-ベンゾイルフェニル)メタン、
2-(2′-ヒドロキシ-3′,5′-ジ-t-アミルフェニル)-ベンゾフェノン、
2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシベンゾフェノン、
2-ヒドロキシ-4-オクタデシルオキシベンゾフェノン、
2,2′-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、
2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシベンゾフェノン
等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、
サリチル酸フェニル、
サリチル酸パラ-t-ブチルフェニル、
サリチル酸パラオクチルフェニル、
2,4-ジ-t-ブチルフェニル-4-ヒドロキシベンゾエート、
1-ヒドロキシベンゾエート、
1-ヒドロキシ-3-t-ブチルベンゾエート、
1-ヒドロキシ-3-t-オクチルベンゾエート、
レゾシノールモノベンゾエート
等のサリチル酸系紫外線吸収剤、
エチル-2-シアノ-3,3′-ジフェニルアクリレート、
2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3′-ジフェニルアクリレート、
2-エチルヘキシル-2-シアノ-3-フェニールシンナート
等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤、
2-(5-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-ベンゾトリアゾール、
2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-ベンゾトリアゾール、
2-〔2-ヒドロキシ-3,5-ビス(a,a-ジメチルベンジル)フェニル〕-2H-ベンゾトリアゾール、
2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-ベンゾトリアゾール、
2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、
2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、
2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)-ベンゾトリアゾール、
2-(3-ドデシル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、
2-(3-t-ブチル-5-プロピルオクチレート-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、
2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、
2-(3-t-ブチル-5-オクチルオキシカルボニルエチル-2-ヒドロキシフェニル)-ベンゾトリアゾール、
2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-ベンゾトリアゾール、
2-〔2-ヒドロキシ-3-ジメチルベンジルフェニル-5-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)〕-2H-ベンゾトリアゾール
2-〔2′-ヒドロキシ-3′-(3″4″5″6″-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5′-メチルフェニル〕-ベンゾトリアゾール
等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、
エタンジアミド-N-(2-エトキシフェニル)-N′-(4-イソドデシルフェニル)、
2,2,4,4-テトラメチル-20-(β-ラウリル-オキシカルボニル)-エチル-7-オキサ-3,20-ジアゾジスピロ(5,1,11,2)ヘンエイコ酸-21-オン
等の蓚酸アニリド系紫外線吸収剤、
2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ペンチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジフェニル-6-〔2-ヒドロキシ-4-(2-ブトキシエトキシ)フェニル〕-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジ-p-トレイル-6-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジ-p-トレイル-6-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジ-p-トレイル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジ-p-トレイル-6-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジ-p-トレイル-6-(2-ヒドロキシ-4-ペンチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジ-p-トレイル-6-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジ-p-トレイル-6-(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジ-p-トレイル-6-〔2-ヒドロキシ-4-(2-ヘキシルオキシエトキシ)フェニル〕-1,3,5-トリアジン、
2-{4-〔2-ヒドロキシ-3-(ドデシルオキシ)プロピルオキシ〕-2-ヒドロキシフェニル}-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2-{4-〔2-ヒドロキシ-3-(トリデシルオキシ)プロピルオキシ〕-2-ヒドロキシフェニル}-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2-{4-〔2-ヒドロキシ-3-(2′-エチル)ヘキシルオキシ〕-2-ヒドロキシフェニル}-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2-{4-〔2-ヒドロキシ-3-(トリデシルオキシ)プロピルオキシ〕-2-ヒドロキシフェニル}-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと2-{4-〔2-ヒドロキシ-3-(ドデシルオキシ)プロピルオキシ〕-2-ヒドロキシフェニル}-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンの混合物、
2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2-{2-ヒドロキシ-4-〔(1-オクチルオキシカルボニルエトキシ)フェニル〕}-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン
2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、
2-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、
トリス(3-メチルアニリノ)トリアジン
等のトリアジン系紫外線吸収剤
等を例示できる。
【0025】
さらに、本発明の実施形態のフォトクロミック組成物には、紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤を併用して添加することで、耐光性をいっそう向上させることもできる。
以下に、ヒンダードアミン系光安定剤を例示するが、本発明の実施形態はこれらの化合物に限定されるものではない。
セバシン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、
2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、
ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、
ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)、
セバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)、
セバシン酸ビス〔2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジル〕
ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノール及び3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物、
セバシン酸ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル)、
ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸と2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノール及び3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物、
ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノール及び1-トリデカノールとの混合エステル化物、
メタクリル酸1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル、
セバシン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)とセバシン酸1-メチル10-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)の混合物、
N,N′,N″,N″′-テトラキス-{4,6-ビス-〔ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ〕-トリアジン-2-イル}-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、
N-メチル-3-ドデシル-1-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペレジニル)ピロリジン-2,5-ジオン
等を例示できる。
なお、ヒンダードアミン系光安定剤として、下記一般式(10)で示される化合物が好適に用いられる。
【化3】
(式中、Rは炭素数1~30のアルキル基を示し、R、R、R、Rはそれぞれ炭素数1~5のアルキル基を示し、nは1以上の整数を示し、Rはn価の有機残基を示す。)
【0026】
本発明の実施形態のフォトクロミック組成物において、優れた耐光性を得るための、紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤の組合せとして、好ましくは、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤又はトリアジン系紫外線吸収剤から選ばれる紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤の組合せであり、より好ましくは、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-3-ジメチルベンジルフェニル-5-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)〕-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-ベンゾトリアゾール、又は、2-{4-〔2-ヒドロキシ-3-(トリデシルオキシ)プロピルオキシ〕-2-ヒドロキシフェニル}-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと2-{4-〔2-ヒドロキシ-3-(ドデシルオキシ)プロピルオキシ〕-2-ヒドロキシフェニル}-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンの混合物から選ばれる紫外線吸収剤と、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、セバシン酸ビス〔2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジル〕、又は、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)とセバシン酸1-メチル10-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)の混合物から選ばれるヒンダードアミン系光安定剤の組合せが用いられる。
【0027】
本発明の実施形態のフォトクロミック組成物は、マイクロカプセルに内包させてフォトクロミックマイクロカプセル顔料を形成したり、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂中に分散させてフォトクロミック樹脂粒子を形成することもできる。
フォトクロミック組成物は、マイクロカプセルに内包させることにより、化学的、物理的に安定な顔料を構成することができる。マイクロカプセル化は、従来より公知のイソシアネート系の界面重合法、メラミン-ホルマリン系等のin Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。さらに微小カプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
フォトクロミックマイクロカプセル顔料は、内包物:壁膜の質量比が7:1~1:1であることが好ましく、内包物と壁膜の質量比が上記の範囲内であることにより、発色時の色濃度及び鮮明性の低下を防止することができ、より好ましくは、内包物:壁膜の質量比は6:1~1:1である。
【0028】
フォトクロミックマイクロカプセル顔料又は樹脂粒子は、平均粒子径0.5~100μm、好ましくは1~50μm、より好ましくは1~30μmの範囲が実用を満たす。
フォトクロミックマイクロカプセル顔料又は樹脂粒子の平均粒子径が100μmを超えると、インキ、塗料、或いは樹脂中へのブレンドに際して、分散安定性や加工適性に欠ける。
一方、平均粒子径が0.5μm未満では、高濃度の発色性を示し難くなる。
なお、平均粒子径の測定は、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア〔(株)マウンテック製、製品名:マックビュー〕を用いて粒子の領域を判定し、粒子の領域の面積から投影面積円相当径(Heywood径)を算出し、その値による等体積球相当の粒子の平均粒子径として測定した値である。
また、全ての粒子或いは大部分の粒子の粒子径が0.2μmを超える場合は、粒度分布測定装置〔ベックマン・コールター(株)製、製品名:Multisizer 4e〕を用いて、コールター法により等体積球相当の粒子の平均粒子径として測定することも可能である。
さらに、上記のソフトウェア又はコールター法による測定装置を用いて計測した数値を基にして、キャリブレーションを行ったレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置〔(株)堀場製作所製、製品名:LA-300〕を用いて、体積基準の粒子径及び平均粒子径を測定しても良い。
【0029】
フォトクロミック組成物、マイクロカプセル顔料又は樹脂粒子は、水及び/又は有機溶剤と必要により各種添加剤を含むビヒクル中に分散してスクリーン印刷、オフセット印刷、プロセス印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷等に用いられる印刷インキ、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等に用いられる塗料、インクジェット用インキ、紫外線硬化型インキ、マーキングペン用、ボールペン用、万年筆用、筆ペン用等の筆記具又は塗布具用インキ、絵の具、化粧料、繊維用着色液等のフォトクロミック液状組成物として利用できる。
フォトクロミック液状組成物には各種添加剤を添加することができ、樹脂、架橋剤、硬化剤、乾燥剤、可塑剤、粘度調整剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、沈降防止剤、平滑剤、ゲル化剤、消泡剤、つや消し剤、浸透剤、pH調整剤、発泡剤、カップリング剤、保湿剤、防黴剤、防腐剤、防錆剤等が挙げられる。
【0030】
そのうち、筆記具用インキに用いられる筆記具用ビヒクルとしては、有機溶剤を含む油性ビヒクル、或いは、水と、必要により有機溶剤を含む水性ビヒクルが挙げられる。
有機溶剤としては、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、スルフォラン、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等を例示できる。
【0031】
筆記具用インキとしては、ビヒクル中に剪断減粘性付与剤を含む剪断減粘性インキ、ビヒクル中に水溶性高分子凝集剤を含み、顔料を緩やかな凝集状態に懸濁させた凝集性インキが挙げられる。
剪断減粘性付与剤を添加することにより、顔料の凝集、沈降を抑制することができると共に、筆跡の滲みを抑制することができるため、良好な筆跡を形成できる。
さらに、上記のインキを充填する筆記具がボールペン形態の場合、不使用時のボールとチップの間隙からのインキ漏れを防止したり、筆記先端部を上向き(正立状態)で放置した場合のインキの逆流を防止することができる。
剪断減粘性付与剤としては、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100万~800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万~15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する増粘多糖類、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アミド等のHLB値が8~12のノニオン系界面活性剤、ジアルキル又はジアルケニルスルホコハク酸の塩類、N-アルキル-2-ピロリドンとアニオン系界面活性剤の混合物、ポリビニルアルコールとアクリル系樹脂の混合物等を例示できる。
【0032】
水溶性高分子凝集剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、水溶性多糖類等が挙げられる。
水溶性多糖類としては、トラガントガム、グアーガム、プルラン、サイクロデキストリン、水溶性セルロース誘導体等を例示でき、水溶性セルロース誘導体として具体的には、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等を例示できる。
【0033】
高分子凝集剤と共に、側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤及び有機窒素硫黄化合物を併用することにより、高分子凝集剤によるマイクロカプセル顔料の緩い凝集体の分散性を向上させることができる。
側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤としては、側鎖に複数のカルボキシル基を有する櫛型高分子化合物であれば特に限定されるものではないが、側鎖に複数のカルボキシル基を有するアクリル高分子化合物が好適であり、具体的には、日本ルーブリゾール(株)製、商品名:ソルスパース43000を例示できる。
【0034】
有機窒素硫黄化合物は、インキを筆記具に充填して実用に供する際、振動によるマイクロカプセル顔料の沈降をいっそう抑制する。
これは、マイクロカプセル顔料の緩い凝集体を側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤によって分散させる分散性をより向上させるものである。
有機窒素硫黄化合物としては、チアゾール系化合物、イソチアゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾイソチアゾール系化合物から選ばれる化合物が用いられる。
有機窒素硫黄化合物として具体的には、2-(4-チアゾイル)-ベンズイミダゾール(TBZ)、2-(チオシアネートメチルチオ)-1,3-ベンゾチアゾール(TCMTB)、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンから選ばれる一種又は二種以上の化合物が用いられ、好ましくは、2-(4-チアゾイル)-ベンズイミダゾール(TBZ)、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンから選ばれる一種又は二種以上の化合物が用いられる。
有機窒素硫黄化合物としては、(株)パーマケム・アジア製、商品名:トップサイド88、同133、同170、同220、同288、同300、同400、同500、同600、同700Z、同800、同950、北興産業(株)製、商品名:ホクスターHP、同E50A、ホクサイドP200、同6500、同7400、同MC、同369、同R-150を例示できる。
なお、側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤:有機窒素硫黄化合物の質量比は、1:1~1:10、好ましくは1:1~1:5であり、上記の範囲を満たすことにより、マイクロカプセル顔料の緩い凝集体の分散性、及び、振動によるマイクロカプセル顔料の沈降抑制を十分に発現させることができる。
【0035】
さらに、筆跡の紙面への固着性や粘性を付与するために適用される水溶性樹脂を添加すると、前述の側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤と有機窒素硫黄化合物を含むインキ中でマイクロカプセル顔料の安定性を高める機能がいっそう向上する。
水溶性樹脂としては、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等が挙げられ、好ましくはポリビニルアルコールが用いられる。
さらに、ポリビニルアルコールは、けん化度が70~89モル%の部分けん化度型ポリビニルアルコールが、インキが酸性域でも可溶性に富むため、より好適に用いられる。
水溶性樹脂の添加量としては、インキ中に0.3~3.0質量%、好ましくは0.5~1.5質量%の範囲で添加される。
【0036】
また、上記のインキをボールペンに充填して用いる場合は、オレイン酸等の高級脂肪酸、長鎖アルキル基を有するノニオン性界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、チオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルメチルエステル)やチオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルエチルエステル)等のチオ亜燐酸トリエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、或いは、それらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩等の潤滑剤を添加してボール受け座の摩耗を防止することが好ましい。
【0037】
その他、必要に応じてアクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等の樹脂を添加して紙面への固着性や粘性を付与したり、炭酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等のpH調整剤、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、サポニン等の防錆剤、石炭酸、1,2-ベンズチアゾリン-3-オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、尿素、ノニオン系界面活性剤、還元又は非還元デンプン加水分解物、トレハロース等のオリゴ糖類、ショ糖、サイクロデキストリン、ぶどう糖、デキストリン、ソルビット、マンニット、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤、消泡剤、分散剤、インキの浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン系の界面活性剤を添加してもよい。
【0038】
上記のインキの全質量に対し、好ましくは5~40質量%、より好ましくは10~40質量%、さらに好ましくは10~30質量%のマイクロカプセル顔料を含有することができる。マイクロカプセル顔料の含有量が上記の範囲内であることにより、望ましい発色濃度が達成でき、さらにインキ流出性の低下を防止することができる。
【0039】
上記のインキを収容するボールペン、マーキングペンについて説明する。
ボールペンに充填する場合、ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内に剪断減粘性インキを充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールを先端部に装着したボールペンチップに連通しており、さらにインキの端面には逆流防止用の液栓が密接しているボールペンを例示できる。
ボールペンチップについてさらに詳しく説明すると、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、或いは、金属材料をドリル等による切削加工により形成したボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、金属又はプラスチック製チップ内部に樹脂製のボール受け座を設けたチップ、或いは、チップに抱持するボールをバネ体により前方に付勢させたもの等を適用できる。
また、ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等の0.3~2.0mm、好ましくは0.3~1.5mm、より好ましくは0.3~1.0mm径程度のものが適用できる。
上記のインキを収容するインキ収容管は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる成形体、金属製管状体が用いられる。
インキ収容管にはチップを直接連結する他、接続部材を介してインキ収容管とチップを連結してもよい。
なお、インキ収容管はレフィルの形態として、レフィルを樹脂製、金属製等の軸筒内に収容するものでもよいし、先端部にチップを装着した軸筒自体をインキ収容体として、軸筒内に直接インキを充填してもよい。
また、上記のインキを出没式のボールペンに収容する場合、出没式ボールペンの構造、形状は特に限定されるものではなく、ボールペンレフィルに設けられた筆記先端部が外気に晒された状態で軸筒内に収納されており、出没機構の作動によって軸筒開口部から筆記先端部が突出する構造であれば全て用いることができる。
出没機構の操作方法としては、例えば、ノック式、回転式、スライド式等が挙げられる。
ノック式は、軸筒後端部や軸筒側面にノック部を有し、該ノック部の押圧により、ボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に設けたクリップ部を押圧することにより、ボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
回転式は、軸筒後部に回転部を有し、該回転部を回すことによりボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
スライド式は、軸筒側面にスライド部を有し、該スライドを操作することによりボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に設けたクリップ部をスライドさせることにより、ボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
出没式ボールペンは軸筒内に複数のボールペンレフィルを収容してなり、出没機構の作動によっていずれかのボールペンレフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合タイプの出没式ボールペンであってもよい。
【0040】
インキ収容管に収容したインキの後端にはインキ逆流防止体が充填される。
インキ逆流防止体組成物は不揮発性液体又は難揮発性液体からなる。
具体的には、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α-オレフィン、α-オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等が挙げられ、単独又は2種類以上を併用して用いることもできる。
不揮発性液体及び/又は難揮発性液体は、増粘剤を添加して好適な粘度まで増粘させることが好ましく、増粘剤としては、表面を疎水処理したシリカ、表面をメチル化処理した微粒子シリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、疎水処理を施したベントナイトやモンモリロナイトなどの粘土系増粘剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属石鹸、トリベンジリデンソルビトール、脂肪酸アマイド、アマイド変性ポリエチレンワックス、水添ひまし油、脂肪酸デキストリン等のデキストリン系化合物、セルロース系化合物等を挙げることができる。
さらに、液状のインキ逆流防止体と、固体のインキ逆流防止体を併用することもできる。
【0041】
マーキングペンに充填する場合、マーキングペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内に繊維集束体からなるインキ吸蔵体を内蔵し、毛細間隙が形成された繊維加工体からなるマーキングペンチップを直接或いは中継部材を介して軸筒に装着してなり、インキ吸蔵体とチップが連結されてなるマーキングペンのインキ吸蔵体に凝集性インキを含浸させたマーキングペンや、チップの押圧により開放する弁体を介してチップとインキ収容管とを配置し、該インキ収容管内にインキを直接収容させたマーキングペン等を例示できる。
チップは、繊維の樹脂加工体、熱溶融性繊維の融着加工体、フェルト体等の従来より汎用の気孔率が概ね30~70%の範囲から選ばれる連通気孔の多孔質部材であり、一端を砲弾形状、長方形状、チゼル形状等の目的に応じた形状に加工して実用に供される。
インキ吸蔵体は、捲縮状繊維を長手方向に集束させたものであり、プラスチック筒体やフィルム等の被覆体に内在させて、気孔率が概ね40~90%の範囲に調整して構成される。
また、弁体は、従来より汎用のポンピング式形態が使用できるが、筆圧により押圧開放可能なバネ圧に設定したものが好適である。
【0042】
さらに、ボールペンやマーキングペンの形態は前述したものに限らず、相異なる形態のチップを装着させたり、相異なる色のインキを導出させるペン先を装着させた両頭式筆記具であってもよい。
【0043】
フォトクロミック液状組成物を塗布又は印刷する場合、支持体の材質は特定されず、全て有効であり、紙、合成紙、繊維、布帛、合成皮革、レザー、プラスチック、ガラス、陶磁材、金属、木材、石材等を例示でき、平面状に限らず、凹凸状であってもよい。
支持体上に、フォトクロミック組成物を含む光変色層を設けて積層体(印刷物)が得られる。
支持体上に非変色性着色層(像を含む)が予め形成されているものにあっては、光照射により着色層を、光変色層によって隠顕させることができ、変化の様相をさらに多様化させることができる。
さらに、本発明の実施形態のフォトクロミック組成物は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ワックス類等に溶融ブレンドしてペレット、粉末、又はペースト形態としてフォトクロミック成形用樹脂組成物として利用することもでき、汎用の射出成形、押出成形、ブロー成形、又は注型成形等の手段により、任意形象の立体造形物、フィルム、シート、板、フィラメント、棒状物、パイプ等の形態の成形体が得られる。
また、熱可塑性樹脂やワックス類に溶融ブレンドしてクレヨン、鉛筆芯、シャープペンシル芯、トナー、粉体塗料を得ることもできる。
なお、フォトクロミック液状組成物やフォトクロミック成形用樹脂組成物中には、一般の染料及び顔料を配合し、有色(1)から有色(2)への変色挙動を呈することもできる。
積層体、或いは、成形用樹脂組成物を用いて成形した成形体上には、光安定剤及び/又は透明性金属光沢顔料を含む層を積層することによって耐光性を向上させたり、或いは、トップコート層を設けて耐久性を向上させることもできる。
光安定剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、一重項酸素消光剤、スーパーオキシドアニオン消光剤、オゾン消光剤が挙げられる。
透明性金属光沢顔料としては、芯物質として天然雲母、合成雲母、ガラス片、アルミナ、透明性フィルム片の表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆した顔料を例示できる。
【0044】
フォトクロミック組成物、マイクロカプセル顔料又は樹脂粒子を用いた製品として具体的には、以下のものを例示することができる。
(1)玩具類
人形又は動物形象玩具、人形又は動物形象玩具用毛髪、人形の家や家具、衣類、帽子、鞄、及び靴等の人形用付属品、アクセサリー玩具、ぬいぐるみ、描画玩具、玩具用絵本、ジグソーパズル等のパズル玩具、積木玩具、ブロック玩具、粘土玩具、流動玩具、こま、凧、楽器玩具、料理玩具、鉄砲玩具、捕獲玩具、背景玩具および乗物、動物、植物、建築物、および食品等を模した玩具等、
(2)衣類
Tシャツ、トレーナー、ブラウス、ドレス、水着、レインコート、及びスキーウェア等の被服、靴や靴紐等の履物、ハンカチ、タオル、及び風呂敷等の布製身の回り品、手袋、ネクタイ、帽子、スカーフ、マフラー等、
(3)屋内装飾品
絨毯、カーテン、カーテン紐、テーブル掛け、敷物、クッション、カーペット、ラグ、椅子張り地、シート、マット、額縁、造花、及び写真立て等、
(4)家具
布団、枕、マットレス等の寝具、及び照明器具等、
(5)装飾品
指輪、腕輪、ティアラ、イヤリング、髪止め、付け爪、リボン、スカーフ、時計、及び眼鏡等、
(6)文房具類
筆記具、スタンプ具、消しゴム、下敷き、定規、及び粘着テープ等、
(7)日用品
口紅、アイシャドー、マニキュア、染毛剤、付け爪、付け爪用塗料等の化粧品、及び歯ブラシ等、
(8)台所用品
コップ、皿、箸、スプーン、フォーク、鍋、及びフライパン等、
(9)その他
カレンダー、ラベル、カード、記録材、及び偽造防止用の各種印刷物、インジケーター、絵本等の書籍、鞄、包装用容器、刺繍糸、運動用具、釣り具、コースター、楽器、財布等の袋物、傘、乗物、建造物、及び教習具等。
【実施例
【0045】
以下に実施例を示すが、本発明の実施形態はこれら実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の部は、質量部を示す。
【0046】
実施例1
フォトクロミック組成物の調製
3,3,9,9-テトラ(4′-sec-ブトキシフェニル)-3H,9H-ナフト[2,1-b:6,5-b′]-ジピラン1部を、スチレン-α-メチルスチレン共重合体(イーストマンケミカル社製、商品名:ピコラスチックA-5)50部中に均一に加温溶解してフォトクロミック組成物を得た。
【0047】
実施例2
フォトクロミックマイクロカプセル顔料の調製
実施例1のフォトクロミック組成物60部を、膜剤として芳香族イソシアネートプレポリマー20部、酢酸エチル20部からなる混合溶液に投入した後、これを15%ゼラチン水溶液100部中に投入し、微小滴になるよう攪拌し、加温しながら反応を行ってマイクロカプセル分散液を調製した。
上記のマイクロカプセル分散液から遠心分離法によりフォトクロミックマイクロカプセル顔料を得た。
【0048】
以下の表1~4に、実施例1~26のフォトクロミック組成物の組成、マイクロカプセル化の有無を示す。なお、実施例3~5、及び実施例10~26のフォトクロミック組成物は、実施例2と同様の方法によりマイクロカプセルに内包して、フォトクロミックマイクロカプセル顔料を得た。
表中の括弧内の数字は質量部を示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
以下の表5に、比較例1~4のフォトクロミック組成物の組成、マイクロカプセル化の有無を示す。なお、比較例1~4のフォトクロミック組成物は、実施例2と同様の方法によりマイクロカプセルに内包して、フォトクロミックマイクロカプセル顔料を得た。
表中の括弧内の数字は質量部を示す。
【0054】
【表5】
【0055】
試験試料の作製
実施例1~26、及び比較例1~4のフォトクロミック組成物を、メチルエチルケトン100部に溶解し、白色合成紙にバーコーターにてウェット膜が厚み90μmになるように塗工した後、乾燥させて試験試料を得た。
【0056】
色調試験
上記の各試験試料を光源〔東芝ライテック(株)製、電球形蛍光ランプ、商品名:ネオボール5ブラックライトEFD15BLB〕から10cm離して1分間光照射した後、発色時の色調を目視にて確認した。さらに、消色時の色調を目視にて確認した。
【0057】
明度値試験
上記の各試験試料を光源から10cm離して1分間光照射した後、色差計〔東京電色(株)製、製品名:TC-3600〕にて、発色時の明度値(Y値から換算)を測定した。さらに、色差計にて、消色時の明度値(Y値から換算)を測定した。
なお、明度値は数字が大きい程色濃度が低く、小さい程色濃度が高いことを示す。
【0058】
消色速度試験
上記の各試験試料を光源から10cm離して1分間光照射して発色させた後、消色する(初期濃度に達する)までの時間を測定した。
【0059】
耐光性試験
上記の各試験試料を、35℃の温度環境下で、キセノン耐光試験機〔スガ試験機(株)製、製品名:テーブルサンXT75〕で170w/mの放射照度で継続して光照射した。
5時間毎に上記の各試験試料を取り出し、光源にて光照射して発色させ、変色機能の有無を確認し、変色機能が無くなる時間を測定した。
【0060】
以下の表6及び表7に、各試験試料の色調試験、明度値試験、消色速度試験、及び耐光性試験の結果を示す。
【0061】
【表6】
【0062】
【表7】
【0063】
応用例1
フォトクロミック表示体の作製
実施例1のフォトクロミック組成物10部と、トルエン10部とを混合してフォトクロミック液状組成物を調製した。フォトクロミック液状組成物を用いて、透明ポリプロピレンシートにワイヤーコーターにてウェット膜厚50μmで塗工し、乾燥させて光変色層を設けた後、白色紙を貼り合わせてフォトクロミック表示体を得た。
フォトクロミック表示体は、透明ポリプロピレンシート側から視覚すると、太陽光に晒す前は白色であったが、太陽光に晒すと赤色に変化した。その後、室内でしばらく放置したところ、元の白色に戻った。
【0064】
応用例2
フォトクロミックボールペンの作製
実施例2のフォトクロミックマイクロカプセル顔料27.0部と、サクシノグリカン(構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体、剪断減粘性付与剤)0.25部、グリセリン10.0部、防黴剤〔ゼネカ(株)製、商品名:プロキセルXL-2〕0.2部、消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034〕0.1部、及び潤滑剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフDB-01(中和タイプリン酸エステル)〕2.0部とを、水60.45部中で攪拌し、均一に分散することで筆記具用フォトクロミックインキを得た。
筆記具用フォトクロミックインキ0.8gを、ポリプロピレン製のインキ収容管内に吸引充填した後、ステンレススチール製パイプの先端に、直径0.8mmの超硬合金製ボールを抱持するボールペンチップを保持する樹脂製ホルダーを接続した。さらに、上記のインキの後方にポリブテンを主成分とする粘弾性を有するインキ逆流防止体(液栓)を充填した後、遠心処理を施し、軸筒内に組み付けることでフォトクロミックボールペンを得た。
フォトクロミックボールペンを用いて、室内光のもとでJIS P3201筆記用紙Aに筆記した際、筆跡は無色であったが、太陽光に晒すと赤色に発色した。その後、室内でしばらく放置したところ、元の無色に戻った。
なお、フォトクロミックボールペンは線飛び等生じることなく、ボールペンとしての高い筆記性能を有していた。
【0065】
応用例3
フォトクロミック玩具の作製
実施例4のフォトクロミックマイクロカプセル顔料20部と、アクリル樹脂/キシレン溶液30部、キシレン20部、メチルイソブチルケトン20部、及びイソシアネート系硬化剤10部とを混合して、フォトクロミックスプレー塗料を調製した。支持体として、黄緑色に着色したABS樹脂を射出成形したミニチュアカー表面に、フォトクロミックスプレー塗料を用いて光変色層を設け、フォトクロミック玩具を得た。
フォトクロミック玩具は、太陽光に晒す前は黄緑色であったが、太陽光に晒すと茶色に変化した。その後、室内でしばらく放置したところ、元の黄緑色に戻った。
また、フォトクロミック玩具に、先端部に光源としてLED(ピーク発光波長430nm)を取り付けた光照射具を用いて光照射したところ、照射箇所が黄緑色から茶色に変化した。その後、しばらく放置したところ、元の黄緑色に戻った。この色変化は繰り返し行うことができた。上記の光源はピーク発光波長が430nmであって青色光を照射するため、人体へ影響が少なく、安全性が高い玩具であった。
【0066】
応用例4
フォトクロミック複合繊維を用いた毛髪を備えた人形玩具の作製
実施例12のフォトクロミックマイクロカプセル顔料5部と、分散剤1部、融点180℃のナイロン12(94部)、及び青色の一般顔料0.1部とを、エクストルーダ-にて200℃で溶融混合し、芯部用のフォトクロミックペレットを調製した。
フォトクロミックペレットを芯部成形用押出成形機に、ナイロン12ナチュラルペレットを鞘部成形用押出成形機にそれぞれ供給し、複合繊維紡糸装置を用いて芯部:鞘部の体積比が6:4となるように、18孔の吐出孔より200℃で紡出し、外径90μmの単糸18本からなるフォトクロミック複合繊維を調製した。
さらに、フォトクロミック複合繊維を常法により人形の頭部に植毛し、フォトクロミック複合繊維を用いた毛髪を備えた人形玩具を得た。
人形玩具の毛髪は、太陽光に晒す前は青色であったが、太陽光に晒すと紫色に変化した。その後、室内でしばらく放置したところ、元の青色に戻った。
また、人形玩具の毛髪に、先端部に光源としてLED(ピーク発光波長430nm)を取り付けた光照射具を用いて光照射したところ、照射箇所が青色から紫色に変化した。その後、しばらく放置したところ、元の青色に戻った。この色変化は繰り返し行うことができた。上記の光源はピーク発光波長が430nmであって青色光を照射するため、人体へ影響が少なく、安全性が高い玩具であった。
【0067】
応用例5
フォトクロミック成形体の作製
実施例18のフォトクロミックマイクロカプセル顔料75部と、中低圧ポリエチレン750部とを混合し、押出成形機を用いて、160℃~170℃の成形温度で押し出し、ペレタイザーにてペレット化して、フォトクロミックペレットを調製した。
フォトクロミックペレットを用いて、160℃~170℃の設定温度で射出成形機を用いて、1mm厚のフォトクロミック成形体を得た。
フォトクロミック成形体は、太陽光に晒す前は白色であったが、太陽光に晒すと橙色に変化した。その後、室内でしばらく放置したところ、元の白色に戻った。
【0068】
応用例6
フォトクロミック印刷物の作製
実施例22のフォトクロミックマイクロカプセル顔料40部を、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン58部と、消泡剤3部、増粘剤1部、レベリング剤3部、及び防腐剤1部とからなるビヒクル中に均一に混合して、フォトクロミックスクリーンインキを調製した。
支持体として白色合成紙上に、フォトクロミックスクリーンインキを用いてスクリーン印刷により星柄の光変色層を設け、フォトクロミック印刷物を得た。
フォトクロミック印刷物は、太陽光に晒す前は白色であったが、太陽光に晒すと橙色の星柄が出現した。その後、室内でしばらく放置したところ、星柄は消えて元の白色に戻った。
【0069】
本出願は、出願日が2018年12月27日である日本国特許出願、特願第2018-244604号を基礎出願とする優先権主張を伴う。特願第2018-244604号は参照することにより本明細書に取り込まれる。
図1