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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】パック電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/35 20210101AFI20240515BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20240515BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20240515BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240515BHJP
   H01M 50/213 20210101ALN20240515BHJP
【FI】
H01M50/35 201
H01M50/342 101
H01M10/0566
H01M10/052
H01M50/213
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020567404
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(86)【国際出願番号】 JP2019048015
(87)【国際公開番号】W WO2020153016
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2019011546
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 健明
(72)【発明者】
【氏名】竹田 憲作
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0090261(KR,A)
【文献】特開2005-322434(JP,A)
【文献】特開2007-027011(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0308182(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/30-50/392
H01M 50/213
H01M 10/0566
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内圧が設定圧力を越えると開弁する排出弁を有する電池セルと、
前記電池セルを収納してなるケースとを備えるパック電池であって、
前記ケース内に前記排出弁からの排出ガスを前記ケース外に排出する排気ダクトを配置しており、
前記排気ダクトは、
排出側を前記ケース外に開口して、流入側を前記ケース内に開口し、
厚さが幅よりも小さい形状の薄筒ダクトであり、
前記薄筒ダクトが、
前記薄筒ダクトの厚さ方向を前記ケースの厚さ方向として前記ケース内に配置されてなり、
前記ケースは、
排出ガスの拡散スペースを内部に設けており、
前記排出弁が前記拡散スペースに排出ガスを噴射し、
前記拡散スペースの排出ガスを前記排気ダクトを介して前記ケース外に排出する構造としてなるパック電池。
【請求項2】
請求項に記載するパック電池であって、
複数の前記電池セルが、平行姿勢で同一平面に配置されて電池ブロックを構成しており、
前記電池ブロックと前記ケース内面との間に前記薄筒ダクトが配置されてなることを特徴とするパック電池。
【請求項3】
請求項1または2に記載するパック電池であって、
前記ケース内の対向する辺に沿って一対の前記排気ダクトを配置してなることを特徴とするパック電池。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれかに記載するパック電池であって、
前記排気ダクトが、
前記ケースの幅方向に伸びる姿勢で配置されて、
前記排気ダクトの全長が、前記ケースの幅方向の60%よりも長いことを特徴とするパック電池。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれかに記載するパック電池であって、
前記排気ダクトが、
前記ケースの長手方向に伸びる姿勢で配置されて、
前記排気ダクトの全長が、前記ケースの長手方向の60%よりも長いことを特徴とするパック電池。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれかに記載するパック電池であって、
前記排気ダクトが、
前記電池セルの長手方向に対して交差する方向に伸びる姿勢で前記ケース内に配置されてなることを特徴とするパック電池。
【請求項7】
請求項1ないしのいずれかに記載するパック電池であって、
前記排気ダクトの排出側に、
前記排出弁から排出される排出ガスで剥離され、あるいは溶融されるラベルを付着してなることを特徴とするパック電池。
【請求項8】
請求項1ないしのいずれかに記載するパック電池であって、
前記電池セルが非水系電解液二次電池であることを特徴とするパック電池。
【請求項9】
請求項に記載するパック電池であって、
前記電池セルがリチウムイオン電池であることを特徴とするパック電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装ケースに充電できる電池を収納しているパック電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型電気機器の電源として使用されるパック電池は、近年高出力化が一層求められており、単位体積あたりの効率に優れたリチウムイオン電池等の非水系電解液二次電池が採用されている。リチウムイオン電池は、高出力である反面、何らかの原因によって内圧が上昇することがある。電池の内圧上昇に対する安全性を確保するために、設定圧力で開弁して破裂を防止する排出弁を設けている。排出弁が開弁するとき、電池は異常な発熱状態にあって排出弁からは高温のガスが勢いよく噴出される。排出弁から排出される排出ガスを外部に排出するために外装ケースに穴を設けているパック電池が開発されている。(特許文献1参照)
さらに、外装ケースに複数の貫通穴を設けて、内部の通気性を向上し、電池の放熱を進行して、ケース内に熱がこもることを防止するパック電池も開発されている。(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-196039号公報
【文献】特開平10-162795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のパック電池は、外装ケースに穴を設けて、排出弁から噴射される排出ガスを外部に排出する。このパック電池は、電池セルから勢いよく噴射される高温の排出ガスを安全に外部に排出するのが難しい。とくに、非水系電解液二次電池であるリチウムイオン電池の排出弁から噴射される排出ガスは、400℃以上と異常に高温で、しかも勢いよく噴射されることから、排出ガスが外装ケースを熱溶融し、さらに高温状態でケース外に噴射される排出ガスによる発煙や発火などによって充分な安全性を確保できない。また、外装ケース内で生じる火炎が、外装ケースの穴からケース外に放出するため、さらに安全性を確保できない。
【0005】
本発明は、以上の弊害を防止することを目的として開発されたもので、本発明の主な目的は、開弁する排出弁から噴射される高温の排出ガスによる弊害及び火炎がケース外へ放出することを抑制して安全性を確保するパック電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のパック電池は、内圧が設定圧力を越えると開弁する排出弁を有する電池セル1と、電池セル1を収納しているケース2とを備えている。ケース内には、排出弁からの排出ガスをケース外に排出する排気ダクト5を配置しており、排気ダクト5は、厚さが幅よりも小さい形状の薄筒ダクト5Aで、排出側をケース外に開口して、流入側をケース内に開口しており、薄筒ダクト5Aの厚さ方向をケース2の厚さ方向として、排気ダクト5をケース内に配置している。ケース2は、排出ガスの拡散スペース25を内部に設けており、排出弁が拡散スペース25に排出ガスを噴射し、拡散スペース25の排出ガスを排気ダクト5を介してケース外に排出する構造としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明のパック電池は、電池セルの排出弁から噴射される高温の排出ガスによる弊害を抑制して安全性を高めることができる。それは、以上のパック電池が、ケースの内部に排気ダクトを設けて、この排気ダクトの流入側をケース内に、排出側をケース外に開口し、さらに、ケース内には排出ガスの拡散スペースを設ける構造として、排出弁が拡散スペースに排出ガスを噴出し、拡散スペースで噴出された排出ガスを膨張させた後、さらに排気ダクトに集めて排出ガスをケース外に排出するからである。以上のパック電池は、電池セルから噴射された排出ガスのエネルギーを、拡散スペースで膨張して拡散し、衝突させてエネルギーを減衰し、拡散スペースに拡散された排出ガスのエネルギーを、排気ダクトに集めてケース外に排出することで、エネルギーをさらに減衰してケース外に排気する。すなわち、以上のパック電池は、排出弁から噴出される排出ガスのエネルギーを、拡散スペースで減衰した後、拡散スペースから排気ダクトに集めて流入させる工程と、排気ダクトを通過する両方の工程で減衰させて外部に排気する。排出弁から勢いよく噴出される高温の排出ガスは、熱エネルギーと運動のエネルギーの両方が減衰されてケース外に排出される。したがって、以上のパック電池は、排出弁から勢いよく噴射される高温の排出ガスを低エネルギー状態でケース外に排気して、高温の排出ガスに起因する安全性の低下及び排気ダクトを火炎が通過することにより、火炎の勢いが弱まり、ケース内で生じる火炎をケース外に放出することを抑制できる特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態1に係るパック電池の内部構造を示す概略水平断面図である。
図2】本発明の実施形態1に係るパック電池の垂直縦断面図である。
図3】本発明の実施形態1に係るパック電池の垂直横断面図である。
図4】本発明の実施形態1に係るパック電池の内部構造を示す概略斜視図である。
図5】本発明の実施形態2に係るパック電池の内部構造を示す垂直横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の発明は、内圧が設定圧力を越えると開弁する排出弁を有する電池セルと、電池セルを収納しているケースとを備えるパック電池であって、ケース内に排出弁からの排出ガスをケース外に排出する排気ダクトを配置しており、排気ダクトは、排出側をケース外に開口して、流入側をケース内に開口しており、ケースは、排出ガスの拡散スペースを内部に設けており、排出弁が拡散スペースに排出ガスを噴射し、拡散スペースの排出ガスを排気ダクトを介してケース外に排出する構造としている。
【0010】
本発明の第2の発明は、排気ダクトが、厚さが幅よりも小さい形状の薄筒ダクトで、薄筒ダクトの厚さ方向をケースの厚さ方向として、排気ダクトをケース内に配置している。この構造のパック電池は、ケース内の狭い領域に排気ダクトを配置できる。また、排気ダクトの厚さを薄くして通過抵抗を大きくし、より効率よく排出ガスのエネルギーを減衰及び火炎の勢いを弱めることができる。
【0011】
本発明の第3の発明は、複数の電池セルが、平行姿勢で同一平面に配置されて電池ブロックを構成しており、電池ブロックとケース内面との間に薄筒ダクトが配置されている。この構造のパック電池は、複数の電池セルで構成される電池ブロックを薄くしながら、電池ブロックとケース内面との間に薄筒ダクトを配置することで、パック電池全体を薄くしながら、排気ダクトを省スペースに配置できる。
【0012】
本発明の第4の発明は、ケース内の対向する辺に沿って排気ダクトを配置している。この構造のパック電池は、ケース内に複数の排気ダクトを配置して、排出ガスをスムーズにケース外に排気できる。
【0013】
本発明の第5の発明は、排気ダクトが、ケースの幅方向に伸びる姿勢で配置されて、その全長をケース幅方向の60%よりも長くしている。このパック電池は、ケースの幅方向に対して排気ダクトを長くして、排出ガスのエネルギーを効率よく減衰して排気できる。
【0014】
本発明の第6の発明は、排気ダクトが、ケースの長手方向に伸びる姿勢で配置されて、排気ダクトの全長をケースの長手方向の60%よりも長くしている。このパック電池は排気ダクトを長くして、排出ガスの抵抗を大きくできる。
【0015】
本発明の第7の発明は、排気ダクトが、電池セルの長手方向に対して交差する方向に伸びる姿勢でケース内に配置されている。この構造のパック電池は、排出ガスの噴射方向と排気ダクトの排気方向とを互いに交差する姿勢とするので、電池セルから噴射される排出ガスをケース内で方向変換しながら外部に排出することで、排出ガスのエネルギーを効率よく減衰できる。
【0016】
本発明の第8の発明は、排気ダクトの排出側に、排出弁から排出される排出ガスで剥離されるラベルを付着している。このパック電池は、排気ダクトの排出側をラベルで閉塞するので、外部から排気ダクトに異物が侵入するのを有効に防止できる。
【0017】
本発明の第9の発明は、電池セルを非水系電解液二次電池としている。さらに、本発明の第10の発明は、電池セルをリチウムイオン電池としている。
【0018】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0019】
(実施形態1)
図1図4に示すパック電池100は、充電できる電池セル1と、この電池セル1を収納しているケース2と、このケース2に収納している排気ダクト5と、電池の保護回路などの電子部品を実装している回路基板3とを備える。
【0020】
(電池セル1)
電池セル1は円筒形電池である。円筒形電池は、円筒状の金属ケースに電極と電解液を収納している。金属ケースは、底を閉塞している外装缶の開口部に、封口板を気密に固定している密閉構造としている。外装缶は、金属板をプレス加工して製作される。封口板は、絶縁材のパッキンを介して外装缶の開口部周縁にカシメ加工して気密に固定される。
【0021】
電池セル1は、図示しないが、金属ケースの内圧が異常に高くなって破損するのを防止するために、封口板に排出弁を設けている。排出弁は、開口する状態で内部のガスなどを排出する開口部を封口板に設けている。ただし、電池セルは、外装缶の底部に排出弁とその開口部を設けることもできる。排出弁は、内圧が設定圧力、たとえば1.5MPaよりも高くなると開弁して、内圧上昇による金属ケースの破壊を防止する。排出弁は、異常な状態で開弁される。したがって、排出弁が開弁する状態では、電池セル1の温度も非常に高くなっている。このため、開弁する排出弁から排出されるガスや電解液(噴出物)は異常な高温となっている。とくに、電池セル1をリチウムイオン電池等の非水系電解液二次電池とするパック電池は、排出ガスが400℃以上である異常な高温となる。さらに、リチウムイオン電池は、非水系の電解液を充填していることから、これが高温でケース外に排出されると、空気に触れて発火して、さらに異常な高温となることがある。リチウムイオン電池に限らず、他の充電できる電池においても、開弁する排出弁から噴出される排出ガスは高温となるので、排出ガスのエネルギーを減衰してケース外に排気することは安全性を高くすることから大切である。
【0022】
(ケース2)
ケース2は、ポリカーボネート等の熱可塑性の樹脂製で、全体を四角形の箱形に成形して、内部には電池セル1と回路基板3と排気ダクト5を内蔵している。図のケース2は、上ケース2Aと下ケース2Bとからなる。下ケース2Bと上ケース2Aは、四角形、図にあっては長方形の表面プレート21の周囲に周壁22を設けている。下ケース2Bと上ケース2Aは、周壁22の開口端面を合わせ面として連結している。下ケース2Bと上ケース2Aの周壁22は、長方形の表面プレート21の長手方向に伸びる両側の側部壁23と、この側部壁23に直交する端部壁24とからなる。排出弁の開口部と対向する端部壁24は、内側に耐熱カバー6を配置している。耐熱カバー6は排出ガスの温度に耐える耐熱性のあるプレートやシートである。耐熱カバー6は、排出弁から噴射される排出ガスが直接に端部壁24に噴射されるのを阻止して、排出ガスを四方に飛散させる。耐熱性のある材料で端部壁を成形しているケースは、耐熱カバーを設けることなく、排出ガスを端部壁で周囲に飛散できる。
【0023】
図1図3のパック電池100は、ケース内に電池ブロック10を配置している。電池ブロック10は、2組の電池組立11からなる。電池組立11は、電池ホルダー4に電池セル1を挿入して電池セル1を定位置に配置している。電池ホルダー4は、ケース2の側部壁23と平行に4列に電池セル1を配置している。2組の電池組立11がケース2の長手方向に2段に配列されて、4列2段に8本の電池セル1を直列と並列に接続している電池ブロック10を構成している。各々の電池組立11は、2本の電池セル1の排出弁の開口部を端部壁24と対向してケース内に配置されている。図のパック電池100は、電池組立11を4個の電池セル1で構成して、2組の電池組立11で電池ブロック10を構成して、電池ブロック10をケース内に配置しているが、本発明のパック電池は、ケースに収納する電池セルの個数や接続状態を特定しない。
【0024】
(回路基板3)
回路基板3は、電池セル1に接続されて電池セル1の保護回路を実現する電子部品(図示せず)を実装している。保護回路は、電池セル1の過充電や過放電を防止する回路、あるいは過電流を防止する回路、あるいは又温度が異常に上昇する状態で電流を遮断する回路である。
【0025】
(排気ダクト9)
パック電池100は、ケース2の内部に、排出弁の開口部から噴出される排出ガスをケース2の外部に排出する排気ダクト5を設けている。排気ダクト5は、ケース内で排出ガスを流入してケース外に排気できるように、流入側をケース内に開口して、排出側をケース外に開口している。図1のパック電池100は、排気ダクト5の排出側に、排出ガスで剥離され、あるいは溶融されるラベル7を付着している。このパック電池100は、排気ダクト5の排出側をラベル7で閉塞して、異物が侵入するのを防止できる。パック電池100は、排出弁から排出される排出ガスを、ケース内に設けた拡散スペース25に噴出し、拡散スペース25から排気ダクト5に流入し、排気ダクト5を介してケース外に排出する。ケース2は、内部に拡散スペース25を設けている。図1図4のパック電池100は、ケース2の内部にできる空間を排出ガスの拡散スペース25としている。拡散スペース25は、ケース内に噴射され排出ガスを拡散した排気ダクト5に案内する空隙である。図のパック電池100は、ケース内に、電池ブロック10と回路基板3等を内蔵構造物として配置するので、拡散スペース25はケース2と内蔵構造物との間の空隙で構成される。さらに、電池ブロック10は、電池ホルダー4で電池セル1を定位置に配置しているが、電池ホルダー4及び電池セル1とケース2との間にできる空隙も拡散スペース25となる。拡散スペース25は、排出弁から瞬時的に排出される排出ガスを拡散し、排出ガスのエネルギーを減衰させて排気ダクト5に流入する。
【0026】
パック電池100は、電池セル1の排出弁から噴射された排出ガスを拡散スペース25に拡散して、拡散スペース25でエネルギーを減衰させた後、さらに排気ダクト5でエネルギーを減衰してケース外に排出する。排気ダクト5は、排出ガスが内部を通過する抵抗で、排出ガスのエネルギーを減衰してケース外に排気する。さらに、ケース内で火炎を生じる場合でも、排気ダクト5を火炎が通過することで消炎することができ、火炎をケース外に放出することを防止できる。図1図4の排気ダクト5は、厚さが幅よりも小さい形状の薄筒ダクト5Aである。薄筒ダクト5Aは、薄くして排出ガスの通過抵抗を大きくしてエネルギーを効果的に減衰でき、しかも狭いスペースに配置できる特徴がある。
【0027】
図2図3のパック電池100は、ケース2の表面プレート21の内側であって、電池ブロック10との間にできる隙間に薄筒ダクト5Aを配置している。図3のパック電池100は、回路基板3の両側に2列の薄筒ダクト5Aを配置している。薄筒ダクト5Aは、厚さ方向をケース2の厚さ方向とする姿勢で、ケース2の表面プレート21の内側に配置される。図3図4のパック電池100は、ケース内の対向する辺に沿って一対の排気ダクト5を配置している。ケース2は直方体で、長方形の表面プレート21の内側の両端部に、ケース2の幅方向に伸びる姿勢で2列に排気ダクト5を配置している。排気ダクト5は、排出ガスの通過抵抗が長さに比例して大きくなる。図1図2のパック電池100は、排気ダクト5の長さを、ケース2の横幅にほぼ等しくして、ガスの通過抵抗を大きくしている。排気ダクト5は、好ましくは、ケース2の横幅の60%よりも長くして、排出ガスのエネルギーを効率よく減衰して排気する。
【0028】
図4の概略斜視図に示すパック電池100は、ケース内に配置する電池セル1と排気ダクト5とを互いに交差する方向に伸びる姿勢で配置する。電池セル1は、長方形の表面プレート21の長手方向に伸びる姿勢で配置され、排気ダクト5は、幅方向に伸びる姿勢で配置されて、電池セル1と排気ダクト5を直交する方向に配置している。電池セル1は、開弁する排出弁からケース2の長手方向に排出ガスを噴射し、排気ダクト5は、流入される排出ガスをケース2の幅方向に流して排気する。すなわち、排出ガスの噴射方向と、排気ダクト5の排気方向は互いに交差する姿勢となり、図にあっては直交する方向となり、排出ガスは、ケース内で方向変更して外部に排気される。
【0029】
なお、図1図4において、電池セル1は、長方形の表面プレート21の長手方向に伸びる姿勢で配置されたが、長方形の表面プレートの幅方向に伸びる姿勢で配置されても良い。この場合、排気ダクトは、長方形の表面プレートの長手方向に伸びる姿勢で配置される。このように配置することで、電池セルの排出弁からの排出ガス噴出方向と、排気ダクトの排気方向は、交差する姿勢となる。さらに、電池セルがケース内の高さ方向に伸びる姿勢で配置される場合、排気ダクトは、長方形の表面プレートの長手方向に伸びる姿勢または幅方向に伸びる姿勢のいずれの姿勢に配置されても良い。いずれの姿勢でも、電池セルからの排出ガスの噴射方向と、排気ダクトの排気方向は、交差する姿勢となる。
【0030】
排出弁からケース内に噴射された排出ガスは、図4の矢印で示す方向に流動してケース外に排気される。電池セル1の排出弁は、開口部をケース2の端部壁24に対向して配置している。排出弁から噴射される排出ガスは、端部壁24に向かって噴射される。端部壁24の内側には耐熱カバー6を配置しているので、排出ガスは耐熱カバー6に衝突して周囲に飛散される。耐熱カバー6に衝突した排出ガスは、拡散スペース25に流入して拡散される。拡散スペース25に流入する排出ガスは、図の矢印で示すように、ケース2の内面に衝突し、分散され、方向転換されて排気ダクト5に流入する。図4の矢印で示すように、ケース2の内面に衝突し、分散し、方向転換してエネルギーを減衰して排気ダクト5に流入し、さらに排気ダクト5の抵抗でエネルギーを減衰してケース外に排気される。エネルギーを減衰してケース外に排気する構造は、ケース外での発火等の弊害を抑制して安全性を向上できる。
【0031】
(実施形態2)
図5の断面図に示すパック電池200は、排気ダクト5の内部に耐熱繊維8を充填している。耐熱繊維8には、ロックウール等の無機繊維や金属繊維が使用できる。耐熱繊維8を充填している排気ダクト5は、短くして排出ガスの抵抗を大きくでき、また、耐熱繊維8の充填密度を調整して排出ガスの通過抵抗をコントロールできる特徴がある。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は排出ガスを安全に排気するパック電池に有効に使用できる。
【符号の説明】
【0033】
100、200…パック電池
1…電池セル
2…ケース
2A…上ケース
2B…下ケース
3…回路基板
4…電池ホルダー
5…排気ダクト
5A…薄筒ダクト
6…耐熱カバー
7…ラベル
8…耐熱繊維
10…電池ブロック
11…電池組立
21…表面プレート
22…周壁
23…側部壁
24…端部壁
25…拡散スペース
図1
図2
図3
図4
図5