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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】化合物
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/62 20060101AFI20240515BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20240515BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240515BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
C07K7/62
A61K38/08
A61P31/00
A61P31/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020571762
(86)(22)【出願日】2019-06-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019066819
(87)【国際公開番号】W WO2020002325
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】62/689,602
(32)【優先日】2018-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519429495
【氏名又は名称】スペロ・セラピューティクス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,パメラ
(72)【発明者】
【氏名】ドーソン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】シモノビック,モナ
(72)【発明者】
【氏名】ボークス,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】デュパーチー,エスター
(72)【発明者】
【氏名】リバース,ディーン
(72)【発明者】
【氏名】レスター,ロイ
(72)【発明者】
【氏名】コールマン,スコット
【審査官】井関 めぐみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-538692(JP,A)
【文献】特表2017-510570(JP,A)
【文献】国際公開第2012/168820(WO,A1)
【文献】特表2014-533678(JP,A)
【文献】Journal of Medicinal Chemistry,2013年,Vol.56,p.5079-5093
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 7/62
A61K 38/08
A61P 31/00
A61P 31/04
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II):
【化1】
の化合物並びにその塩、溶媒和物及び保護された形態。
【請求項2】
前記化合物が、式:
【化2】
の化合物である、請求項1に記載の化合物並びにその塩、溶媒和物及び保護された形態
【請求項3】
前記化合物が、式:
【化3】
の化合物である、請求項1に記載の化合物並びにその塩、溶媒和物及び保護された形態
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の化合物を、所望により1種又は複数の医薬的に受容可能な担体と一緒に含んでなる、医薬組成物。
【請求項5】
治療又は予防の方法で使用するための、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
微生物感染、例えば、細菌感染を治療する方法において使用するための、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記微生物感染がグラム陰性菌感染である、例えば、Escherichia spp.、Klebsiella spp.、Enterobacter spp.、Salmonella spp.、Shigella spp.、Citrobacter spp.、Morganella morganii、Yersinia pseudotuberculosis及び他の腸内細菌科、Pseudomonas spp.、Acinetobacter spp.、Moraxella、Helicobacter、Stenotrophomonas、Bdellovibrio、酢酸菌、Legionella並びにアルファプロテオバクテリアから選択される、グラム陰性菌による感染である、請求項6に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年6月25日(25.06.2018)に出願されたUS62/689602の利益及び優先権を主張するものであり、これらの内容は、本明細書中に参考文献としてその全てが援用される。
【0002】
本発明は、新規なポリミキシン化合物、化合物を含んでなる医薬組成物、並びに医学的治療のための、例えば、特にグラム陰性細菌によって起こされる微生物感染の治療のための化合物及び医薬組成物及び組合せの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
WO2013/072695及びWO2014/188178は、ポリミキシンB又はコリスチンのN末端の脂肪酸アシル部分及び隣接するジアミノ酪酸部分がアミノ置換基を有する末端基によって置き換えられているポリミキシン誘導体を記載している。そのような誘導体は、良好な抗細菌活性を有する一方で、細胞傷害性が緩和されている。
【0004】
WO2015/135976も、この場合もポリミキシンB又はコリスチンのN末端の脂肪アシル部分及び隣接するジアミノ酪酸がアミノ置換基を有する末端基によって置き換えられているポリミキシン誘導体を記載している。この場合、アミノ置換基の特異的な位置及びN末端部分における他の置換基の配置が、Escherichia coli、Klebsiella pneumoniae、Pseudomonas aeruginosa及びAcinetobacter baumanniiなどの広範な重要な病原体にわたる強力な抗菌活性には重要であることが示された。開示の化合物はまた、低い細胞傷害性を保持した。
【0005】
WO2016/083531は、この場合もポリミキシンB又はコリスチンのN末端の脂肪アシル部分及び隣接するジアミノ酪酸が、WO2013/072695、WO2014/188178及びWO2015/135976に存在する基などのアミノ置換基を有する末端基によって置き換えられているポリミキシン誘導体を記載している。加えて、6及び/又は7位におけるアミノ酸残基がポリミキシンB及びコリスチンについて置換されている。
【0006】
現在利用可能なポリミキシンよりも、全身性感染の非経口治療のために有用であるために、新たなポリミキシン誘導体は、少なくともこれら公知のポリミキシンの活性に匹敵する一方で、in vivoで有意に低い腎臓毒性を有する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
一般的な側面において、本発明は、3位におけるアミノ酸残基がDapで置換されていて、本明細書で定義するとおりの基-X-R15をそのN末端において有する、ポリミキシンB又はコリスチンのノナペプチド(nonapetide)核などの脱アシル化ポリミキシン核を有する化合物を提供する。そのような化合物は、所望により第2の活性剤と組合せて、治療又は予防の方法で使用される。上記化合物は、微生物感染、例えばグラム陰性細菌感染を治療するために使用することができる。
【0008】
本発明の化合物は、非経口投与後の受容可能な腎臓中薬物レベルとバランスの取れた低い細胞傷害性を有することが示されている。本発明の化合物は、ポリミキシンB、更には本出願人が以前に報告したものを含む当技術分野で公知の修飾ポリミキシン化合物の両方よりも優れていることが示されている。この優位性は、次の特徴のうちの一つ又は複数において明白である:より低い細胞傷害性、非経口投与後の受容可能な腎臓中薬物レベル(すなわち、腎臓中薬物レベルが高くないことから生じる、受容可能な腎臓毒性)、マウス大腿及び肺モデルにおける有効性、及び/又は他のものにおいては従来技術化合物と同等でありながら病原細菌株に対しては優れたMIC。
【0009】
典型的には、当技術分野で公知の化合物は、これらの有利な特徴の全部ではないが、一つ、又はことによると二つを示す。例えば、細胞傷害性が低いポリミキシン化合物を見出すことは今や比較的一般的なことであるが、この低い細胞傷害性は多くの場合に、抗細菌活性の低下を伴う。更に、細胞傷害性が低い化合物はそれにもかかわらず、投与後に腎臓内で高レベルで見出され得る。従って、そのような化合物は、いっそう毒性であり、医学的治療の方法において有用ではない。
【0010】
本発明の第1の側面において、式(I)の化合物、並びにその医薬的に受容可能な塩、溶媒和物、保護された形態及びプロドラッグ形態を提供する。
式(I)の化合物は下式:
【0011】
【化1】
【0012】
[式中、
-X-は、-C(O)-を表し;
-Rは、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、フェニルアラニン、ロイシン、ノルロイシン、バリン又はノルバリン残基であり;
-Rは、1個のヒドロキシル基で所望により置換されているC1~4アルキルであり;
-Rは、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、トレオニン残基であり;
-Rは、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、L-DapなどのDapであり;
-Rは、水素又はメチルであり;
-R15は、基:
【0013】
【化2】
【0014】
であり、
-R16は、水素であり;
-R17は、水素であり;
-L-は、共有結合又はメチレン(-CH-)であり;
-Arは、置換フェニルなどの所望により置換されているアリールである]
のように表される。
【0015】
式(I)の化合物はまた、下式:
【0016】
【化3】
【0017】
[式中、
-R、-R、-R及び-Arは、上記と同じ意味を有する]
のように表され、更に、その医薬的に受容可能な塩、溶媒和物、保護された形態及びプロドラッグ形態である。
【0018】
本発明はまた、式(I)の化合物を所望により1種又は複数の医薬的に受容可能な担体と一緒に含んでなる医薬組成物を提供する。
更なる一つの側面において、治療又は予防の方法において使用するための、式(I)の化合物、又は式(I)の化合物を含んでなる医薬組成物を提供する。
【0019】
また更なる一つの側面において、微生物感染を治療する方法において使用するための、式(I)の化合物、又は式(I)の化合物を含んでなる医薬組成物を提供する。
本発明はまた、それを必要とする被験者に式(I)の化合物、又は式(I)の化合物を含んでなる医薬組成物を投与するステップを含む、治療の方法を提供する。上記方法は微生物感染を治療するための方法であり得る。
【0020】
微生物感染は、グラム陰性菌感染などの細菌感染であり得る。グラム陰性菌感染は、Escherichia spp.、Klebsiella spp.、Enterobacter spp.、Salmonella spp.、Shigella spp.、Citrobacter spp.、及び他の腸内細菌科、Pseudomonas spp.、Acinetobacter spp.、Stenotrophomonas、及びLegionellaからなる群から選択され得る。
【0021】
本発明はまた、式(I)の化合物、更には式(I)の化合物の調製において使用するための中間体化合物を調製するための方法を提供する。
本発明のこれら及び他の側面及び態様を下記で更に詳細に記載する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、医学的治療において、所望により第2の活性剤と一緒に使用するための、下記で更に詳細に記載するとおりの式(II)及び(III)の化合物を含む式(I)の化合物を提供する。
【0023】
広くは、式(I)、(II)及び(III)の化合物は、ノナペプチド核であるポリミキシン核、及びそのポリミキシン核のN末端にある基-X-R15を有する。基-R15は、置換γ-アミノプロピル基である。γ-アミノプロピル基は、-X-部分に対するβ位において、所望により置換されているアリール又はアラルキル基で置換されている。本発明の化合物の環外鎖中の第1のアミノ酸残基(ポリミキシンにおける3位に対応)は、ポリミキシンB及びコリスチンにおいて存在するようなL-Dab残基(L-ジアミノ酪酸)ではなく、L-DapなどのDap残基(ジアミノプロピオン酸)である。
【0024】
ポリミキシン化合物の6及び7位(ポリミキシンで使用されるナンバリングに従って)におけるアミノ酸残基は、ポリミキシンB及びコリスチンにおいて存在するアミノ酸残基に対応し得る。6及び/又は7位におけるアミノ酸残基は、ポリミキシンB及びコリスチン内に存在するものとは異なるアミノ酸残基で置換されていてもよい。
【0025】
現在公知の一連のポリミキシン化合物よりも全身性感染の非経口治療に有用であるように、新たなポリミキシン誘導体は、少なくともこれら公知のポリミキシン化合物の抗細菌活性に匹敵する一方で、in vivoで有意に低い腎臓毒性を有する必要がある。
【0026】
現在、ポリミキシン化合物が比較的低い細胞傷害性を示しても十分ではなく、それというのも、そのことが多くの場合にin vivoでの毒性の低下を伴わないためであることが見出されている。従って、腎臓における薬物の蓄積及び腎臓からのクリアランスも有利である必要がある。言い換えると、非経口投与後の細胞傷害性及び腎臓中薬物レベルの組合せが、有利なin vivo毒性プロファイルにつながるものである。
【0027】
これは、以下の表Aに示されている実施例の比較によって示され得、この際、PMBNはポリミキシンBノナペプチド核を指し、PMENは、ポリミキシンEノナペプチド核を指し、適切な場合には、示されている3及び6位(ポリミキシンナンバリングによる)におけるアミノ酸残基への置換を伴う(例えば、3位においてDabがDapに置換、6位においてフェニルアラニンがシクロヘキシルアラニン(CHA)に置換)。
【0028】
【表1-1】
【0029】
【表1-2】
【0030】
本出願人は以前に、WO2015/135976において、N末端のγ-アミノプロピル基がフェニル又はベンジル部分で置換されているポリミキシンノナペプチドを開示している。しかしながら、それらのフェニル又はベンジル置換基は、-X-基に対してβ位ではなく、α位に提供されている。WO2015/135976はまた、N末端のβ-アミノエチル基がα位においてベンジル基で置換されているポリミキシンノナペプチドを記載している。ここでは、アミノ官能基が、-X-基に対してγ位ではなくβ位に提供されている。
【0031】
これらの既知の化合物は、ポリミキシンBと比較して有望な活性及び中等度に改善された細胞傷害性を示すが、これらの化合物は、投与後に受容可能な腎臓中レベルとバランスの取れた低い細胞傷害性の組合せを示さないということにおいて、本発明の化合物よりも劣る。
【0032】
これは、以下の表Bに示されている実施例の比較によって示され、この際、PMBNは、ポリミキシンBノナペプチド核を指し、適切な場合には、3位におけるアミノ酸残基への置換を伴う(例えば、3位においてDabがDapに置換)。
【0033】
【表2】
【0034】
本出願人は以前に、WO2016/083531において、修飾されたN末端基、特にβ-アリール又はβ-アラルキル基を含むものを伴うポリミキシンノナペプチドを開示している。しかしながら、これらの既知の化合物は、シクロヘキシルアラニン残基などの親油性アミノ酸残基を6位において有するが、本出願の化合物は、例えば、フェニルアラニン、ロイシン、ノルロイシン、バリン又はノルバリン残基を6位において有する。これらの既知の化合物も再び、投薬後の細胞傷害性及び腎臓中薬物レベルの不十分な組合せを考慮すると、本発明の化合物よりも劣る。
【0035】
このことは、以下の表Cに示されている実施例の比較によって示されており、この際、PMBNは、適切な場合には、示されている3及び6位でアミノ酸残基への置換を伴うポリミキシンBノナペプチド核を指す(例えば、3位においてDabがDapに置換、6位においてフェニルアラニンがシクロヘキシルアラニン(CHA)に置換)。
【0036】
【表3】
【0037】
化合物50及び58はWO2016/083531から公知であり、これらは、その出願において異性体1として特定された化合物である。
ポリミキシン化合物
式(I)の化合物は、ポリミキシンノナペプチドシリーズの化合物のN末端誘導体である。式(I)の化合物の核は、3位におけるアミノ酸残基がDapで置換されているポリミキシンBノナペプチド(PMBN、ポリミキシンB2-10)などのノナペプチドの誘導体である。所望により、6位及び/又は7位におけるアミノ酸残基が、本明細書に記載のものなどの別のアミノ酸で置換されている。式(I)の化合物は、ポリミキシン核のN末端において基-X-R15を有する。これを下記で詳細に記載する。
【0038】
-R
基-Rは、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、ポリミキシンシリーズの化合物での6位におけるアミノ酸残基に対応する。
【0039】
6位におけるアミノ酸残基は、ポリミキシンBの6位におけるアミノ酸残基と同じであってもよい。すなわち、Rは、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、D-フェニルアラニン残基であってもよい。
【0040】
6位におけるアミノ酸残基は、コリスチンの6位におけるアミノ酸残基と同じであってもよい。すなわち、Rは、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、D-ロイシン残基であってもよい。
【0041】
一つの態様において、-Rは、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、フェニルアラニン、ロイシン、ノルロイシン、バリン又はノルバリン残基である。アミノ酸残基は、D型であってもよい。
【0042】
一つの態様において、-Rは、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、フェニルアラニン、ロイシン又はノルロイシン残基などのアミノ酸残基である。アミノ酸残基はD型であってもよい。
【0043】
一つの態様において、-Rは、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、フェニルアラニン残基、例えば、D-フェニルアラニン、又はD-ロイシン残基などのロイシン残基である。
【0044】
6位におけるアミノ酸残基の置換は、例えば、WO2016/083531から公知である。
-R
基-Rは、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、ポリミキシンシリーズの化合物での7位におけるアミノ酸残基に対応する。
【0045】
基-Rは、所望により1個のヒドロキシル基で置換されているC1~4アルキルである。
一つの態様において、-Rは、C1~4アルキルである。この基は、置換されていない。
【0046】
一つの態様において、-Rは、1個のヒドロキシル基で所望により置換されている、非置換など、CアルキルなどのC3~4アルキルである。
7位における基、アミノ酸残基は、ポリミキシンB及びコリスチンの7位におけるアミノ酸残基と同じであってもよい。すなわち、Rは、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、L-Leu残基であってもよい。
【0047】
一つの態様において、-Rは、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、ロイシン、イソ-ロイシン、フェニルアラニン、トレオニン、バリン、ノル-バリン、アラニン、トレオニン又はアミノブチラート残基である。アミノ酸残基は、L型であってもよい。
【0048】
一つの態様において、-Rは、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、ロイシン、アミノブチラート、又はトレオニン残基である。アミノ酸残基は、L型であってもよい。
【0049】
他の態様において、7位におけるアミノ酸残基は、ポリミキシンB及びコリスチンとは別のアミノ酸残基で置換されていてもよい。
一つの態様において、-Rは、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、L-ロイシン、L-トレオニン又はL-Abuなどのロイシン、トレオニン又はアミノ酪酸(Abu)残基である。
【0050】
7位におけるアミノ酸残基の置換は、例えば特に、WO2016/083531及びVelkov et al.に記載されている。
-R
基-Rは、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、ポリミキシンシリーズの化合物での10位におけるアミノ酸残基に対応する。
【0051】
基-Rは、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、L-トレオニンなどのトレオニンである。
-R
基-Rは、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、ポリミキシンシリーズの化合物での3位におけるアミノ酸残基に対応する。
【0052】
本発明の化合物では、3位におけるアミノ酸残基は、ポリミキシンB及びコリスチンの3位におけるアミノ酸残基であるL-Dabではない。本発明の化合物では、-Rは、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、L-DapなどのDapである。
【0053】
-RがL-DapなどのDap側鎖である化合物は、WO2015/135976に記載の方法を使用して調製することができる。
式(I)の化合物では、Dap側鎖内のアミノ基は保護されていてもよく、例えば、そのアミノ基はBocで保護されていてもよい。
【0054】
-R
基-Rは、カルボニル基及びこれが、ヒドロキシメチレンスペーサー(-CH(OH)-)を介して接続している炭素に対してベータにある窒素と一緒に、ポリミキシンシリーズの化合物での2位におけるアミノ酸残基に対応する。
【0055】
2位におけるアミノ酸残基は、ポリミキシンB及びコリスチンの2位におけるアミノ酸残基と同じであってもよい。すなわち、Rは、カルボニル基及びこれが、ヒドロキシメチレンスペーサーを介して接続している炭素に対してベータにある窒素と一緒に、L-トレオニン残基であってもよい。
【0056】
基-Rを含むアミノ酸残基は、ポリミキシンシリーズの化合物での2位に対応する。
一つの態様において、-Rは、メチルである。従って、得られるアミノ酸はThrである。
【0057】
一つの態様において、-Rは、Hである。従って、得られるアミノ酸はSerである。
典型的には、-Rは、メチルである。
【0058】
-X-
基-X-は、-C(O)-である。
星印は、NH、ポリミキシンノナペプチド核のアミノ末端、2位におけるアミノ酸などへの接続点を示している。基-X-の左側は、-R15への接続点である。
【0059】
-R15
基-R15は、-X-と一緒に、ポリミキシン核のN末端の修飾部である。
本発明の化合物は、N末端部分、-R15でのγ-アミノプロピル基のβ位において立体中心を含有する。立体異性体の一つが、より低い細胞傷害性及びより低い腎臓中薬物レベルと関連していることが見出されている。この立体異性体は、本出願の実例で詳細に記載するとおり、逆相クロマトグラフィーで、より早く溶離する立体異性体である。
【0060】
一つの態様において、基-R15は:
【0061】
【化4】
【0062】
である。
この立体型は、逆相クロマトグラフィーにおいて、より早く溶離する立体型である。
別法では、基-R15は:
【0063】
【化5】
【0064】
であり得る。
この立体型は、より遅く溶離する立体型である。
一つの態様において、基-R15は:
【0065】
【化6】
【0066】
である。
一つの態様において、基-R15は:
【0067】
【化7】
【0068】
である。
-R15内の例示的な基を以下に提示する。
-R16及び-R17
基-R16及び-R17は両方とも水素である。
【0069】
式(I)の化合物では、基-NR1617は、保護されていてもよく、例えば、基-NR1617は、Boc保護されていてもよい。
-L-
この基は、共有結合メチレン(-CH-)であってもよい。
【0070】
典型的には、-L-は共有結合である。
-Ar
基-Arは、カルボアリール又はヘテロアリール基などのアリール基である。アリール基は所望により置換されている。
【0071】
アリール基は、フェニルなどのCアリール基、又はチオフェンなどのCアリール基であってもよい。
基-Arは、フェニルであってもよく、これは所望により置換されており、例えば置換されている。一つの態様において、-Arは、非置換フェニルである。
【0072】
アリール基は、1個又は複数の基-Rなどで置換されていてもよい。各基-Rは独立に、ハロ、アルキル、ハロアルキル及びアリール、例えば、ハロ及びアルキルから選択される。
【0073】
アリール基は、1、2又は3個の-R基、例えば1又は2個の基、例えば1個の基(一置換)で置換されていてもよい。
ハロ基は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードから選択されてよく、フルオロ及びクロロ、例えばクロロから選択され得る。
【0074】
ハロ基は、クロロであってもよい。
アルキル基は、C1~6アルキル、例えばC1~4アルキル、例えばC1~3アルキル、例えばCアルキルであってもよい。
【0075】
アルキル基は、メチル、エチル、並びにn-プロピル及びi-プロピルを含むプロピルから選択され得る。
アルキル基は、i-プロピルであってもよい。
【0076】
ハロアルキル基は、1個又は複数のハロ基で置換されているC1~6アルキル基、例えばC1~4アルキル、例えばC1~2アルキルであってもよい。アルキル基は、フルオロでペル置換されているなど、ハロでペル置換されていてもよい。
【0077】
ハロアルキル基は、トリフルオロメチルであってもよい。
-Rがアリール基である場合、これはカルボアリール又はヘテロアリールであってもよい。アリールは、C5~6アリール、例えばCアリールであってもよい。Cアリールは、チオフェニル、フラニル、ピロリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル及びイソオキサゾリルから選択され得る。Cアリールはフェニルであってもよい。
【0078】
アリール基は、チオフェニル、例えばチオフェン-2-イルであってもよい。
アリール基はそれ自体、1、2又は3個の-RAr基、例えば1又は2個の基、例えば1個の基(一置換)で所望により置換されていてもよい。各基-RArは独立に、ハロ、アルキル、ハロアルキル及びアリール、例えばハロ及びアルキルから選択される。これらの基は、アリール基が置換されていないことを除いて、上記の基と同じ意味を有してもよい。
【0079】
基-Arは、ハロフェニル又はアルキルフェニルであってもよい。
ハロフェニルは、2-クロロフェニルなどの2-ハロフェニル、3-クロロフェニルなどの3-ハロフェニル、及び4-クロロフェニルなどの4-ハロフェニルから選択され得る。
【0080】
アルキルフェニルは、2-イソプロピルフェニルなどの2-アルキルフェニル、3-イソプロピルフェニルなどの3-アルキルフェニル、及び4-イソプロピルフェニルなどの4-アルキルフェニルから選択され得る。
【0081】
基-Arは、2-クロロフェニル又は3-イソプロピルフェニルであってもよい。
基-Arは、2-クロロフェニルであってもよい。
選択される-R15
基-R15は、以下:
【0082】
【化8】
【0083】
の基から選択され得る。
基-R15は、以下:
【0084】
【化9】
【0085】
の基から選択され得る。
基-R15は、以下:
【0086】
【化10】
【0087】
の基から選択され得る。
式(I)の化合物に関連する態様
幾つかの態様において、式(I)の化合物は、以下に図示するとおりのR、R、R、及びR部分の配向を有する式(Ia):
【0088】
【化11】
【0089】
[式中、-X-、-R、-R、-R、-R、-R及び-R15は、式(I)の化合物について定義されたとおりである]
の化合物又はその医薬的に受容可能な塩、溶媒和物、保護された形態若しくはプロドラッグ形態である。
【0090】
式(Ia)の化合物の範囲内では、-Rは、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、D-フェニルアラニン、D-ロイシン又はD-ノルロイシンである。
【0091】
式(Ia)の化合物の範囲内では、-Rは、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、L-ロイシン、L-アミノブチラート、又はL-トレオニン残基である。
【0092】
式(Ia)の化合物は、-L-が共有結合又は-CH-であり、-Arがハロ、C1~C6アルキル、所望により置換されているアリール及び所望により置換されているヘテロアリールからなる群から選択される1又は2個の基で所望により置換されているフェニルである化合物であってもよい。例えば、-Arは、クロロ、ブロモ、チオフェニル、フェニル、メチル、イソプロピル、及びイソブチルからなる群から選択される1又は2個の基で所望により置換されているフェニルであってもよい。
【0093】
この場合、-Arは、フェニル、3-クロロフェニル、4-クロロフェニル、3-イソプロピルフェニル、3-イソブチルフェニル、3-メチルフェニル、3-ブロモフェニル、1,1’-ビフェニル-3-イル、3,5-ジクロロフェニル、及びチオフェン-3-イルフェニルから選択されてよい。
【0094】
本発明の化合物は、
-Rが、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、D-フェニルアラニン、D-ロイシン又はD-ノルロイシンであり;
-Rが、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、L-ロイシン、L-アミノブチラート、又はL-トレオニン残基であり;
-Rが、L-トレオニンであり;
-Rが、L-Dapであり;
-Rが、メチルであり;
15-X-が、
【0095】
【化12-1】
【0096】
【化12-2】
【0097】
からなる群から選択される、式(I)の化合物並びにその塩、溶媒和物、保護された形態及びプロドラッグ形態であってもよい。
化合物(II)及び化合物(III)
式(I)の化合物は、以下に示すとおりの式(II):
【0098】
【化13】
【0099】
の化合物並びにその塩、溶媒和物及び保護された形態であってもよい。
式(I)の化合物は、以下に示すとおりの式(IIa):
【0100】
【化14】
【0101】
の化合物並びにその塩、溶媒和物及び保護された形態であってもよい。
式(I)の化合物は、以下に示すとおりの式(IIb):
【0102】
【化15】
【0103】
の化合物並びにその塩、溶媒和物及び保護された形態であってもよい。
式(I)の化合物は、以下に示すとおりの式(III):
【0104】
【化16】
【0105】
の化合物並びにその塩、溶媒和物及び保護された形態であってもよい。
式(I)の化合物は、以下に示すとおりの式(III):
【0106】
【化17】
【0107】
の化合物並びにその塩、溶媒和物及び保護された形態であってもよい。
ポリミキシン化合物
本出願で使用するための化合物は、ポリミキシンBノナペプチド及びコリスチンノナペプチドなどの既知のポリミキシン化合物の修飾形態に基づく。
【0108】
ポリミキシンBノナペプチドは、以下:
【0109】
【化18】
【0110】
[式中、2、4及び10位が示されており(ポリミキシンBデカペプチドで使用されるナンバリングシステムを参照)、アミノ酸残基は、示されていない限り、L配置である]
に示す構造を有する。
【0111】
本発明の化合物は、(i)N末端アミノ基、-NHが本明細書に記載のとおりの基-NH-X-R15で置換されており;(ii)3位におけるアミノ酸残基がDapで置換されており、かつ所望により(iii)2、6及び/又は7位におけるアミノ酸残基が別のアミノ酸残基で置換されている、ポリミキシンBノナペプチドの誘導体である。
【0112】
便宜的に、本発明の化合物は、式(I)によって表され、2、3、6、7又は10位におけるアミノ酸はそれぞれ基R、R、R、R及びRの性質によって決定される。上記のバリアントを含む本発明の化合物は、生物学的に活性である。
【0113】
合成方法
本発明の化合物の調製は、当業者には、特に、修飾ポリミキシンノナペプチドを調製するためのWO2015/135976に記載の方法について知識がある当業者にはよく分かるであろう。本出願で用いられる新規のN末端基を考慮して、当技術分野に記載の方法を本出願の化合物の調製において使用するために容易に適合させることができる。
【0114】
概して、本発明の化合物は、適切に保護されたポリミキシンノナペプチド中間体を、基-R15を有するカルボン酸とカップリングすることによって調製することができる。この反応の生成物は典型的には、式(I)の化合物の保護された形態である。保護基の除去を所望により行うことができる。これは、WO2015/135976から公知の一般的な戦略である。
【0115】
適切に保護されたノナペプチド中間体自体も、WO2015/135976に提示の方法に従って調製することができる。本明細書に記載のとおり、適切に保護されたノナペプチド中間体はまた、直鎖ノナペプチドの固相合成、続く、固体支持体からの直鎖形態の切断、次いでその後の、その直鎖形態の4及び10位におけるアミノ残基間での環化によって調製することができる。
【0116】
本発明の化合物は、当業者に公知の方法を使用して従来のペプチド合成によって作製することができる。適切な方法には、de Visser et al,J.Peptide Res,61,2003,298~306、Vaara et al,Antimicrob.Agents and Chemotherapy,52,2008.3229~3236、又はVelkov et al.,ACS Chem.Biol.9,2014,1172によって記載されたような固相合成が含まれる。これらの方法は、適切な保護戦略、及び環化ステップのための方法を含む。
【0117】
必要ならば、式(I)の化合物は、例えば、生成物のジアステレオマー型を分離するために少なくとも部分的に精製され得る。
本発明の更なる一つの側面において、式(X):
【0118】
【化19】
【0119】
[式中、
-R16は、水素であり;
-R17は、水素であり;
-L-は、共有結合又はメチレンであり;
-Arは、置換フェニルなどの所望により置換されているアリールである]
の化合物並びにその塩、溶媒和物、保護された形態及び活性化形態を提供する。
【0120】
式(X)の化合物が、式(I)の化合物の調製で使用される。典型的には、その保護された形態にあるような化合物(X)が式(XI)の保護されたポリミキシンノナペプチドとカップリングされて、式(I)の化合物の保護された形態をもたらす。
【0121】
基-L-及び-Arに関する式(I)の化合物での態様が、式(X)の化合物にも当てはまる。
典型的には、基-NR1617であるアミノ官能基を保護する。
【0122】
一つの態様において、式(X)の化合物中のアミノ官能基はBoc-又はCBZ-保護される。この場合、-R16は、水素であり、-R17は、-C(O)O-t-Bu又は-C(O)O-Bnである。
【0123】
式(XI)の化合物は、基R15-X-が水素であることを除いて式(I)の化合物並びにその塩、溶媒和物、及び保護された形態である。
基-R、-R、-R、-R及び-Rに関して式(I)の化合物で選択された態様が、式(XI)の化合物にも当てはまる。
【0124】
式(XI)の化合物は典型的には保護され、より具体的には、3、5、8及び9位におけるアミノ酸残基の側鎖中のアミノ基は保護され、例えば、3、5、8及び9位におけるアミノ酸のそれぞれは、Boc保護又はCBZ保護され、2位、及び所望により10位におけるアミノ酸残基の側鎖中のヒドロキシル基は保護され、例えば、これらのアミノ酸のそれぞれは、tBu保護される。
【0125】
式(X)のカルボン酸化合物は、従来のアミドカップリング条件を使用して式(XI)のアミノ化合物とカップリングすることができる。式(X)の化合物を活性化形態で使用することができ、この形態は、式(XI)の化合物との反応のためにin situで生成することができる。
【0126】
活性化形態は、所望により塩基の存在下でのアミド結合形成反応におけるカップリング剤の適切な選択を介してin situで生成することができる。
式(X)のカルボン酸は、標準的な活性化剤、例えば、DIC(N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド)又はEDCI(水溶性カルボジイミド;1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)などのカルボジイミドの反応によって活性化させることができる。上記酸の活性化形態は、O-アシルイソ尿素である。
【0127】
カルボン酸は、HOBt(1-ヒドロキシ-ベンゾトリアゾール)又はHOAt(1-ヒドロキシ-7-アザ-ベンゾトリアゾール)などのヒドロキシベンゾトリアゾール又はヒドロキシアザベンゾトリアゾールによって活性化させることができる。上記酸の活性化形態は、エステルである。
【0128】
上記エステルは、カルボジイミド-活性化形態を介して形成することができるか、又は例えば、HATU、HBTU、PyBOP、PyBROP、又はTBTUなどの適切な試薬を使用して、カルボン酸から直接形成することができる。
【0129】
有機塩基が、DIPEA又はTEAなどの活性化形態を形成するために存在してもよい。
保護された形態
式(I)の化合物、(II)及び(III)の化合物などの本発明の化合物は、保護された形態で提供することができる。ここで、反応性官能基、例えばアミノ官能基は、合成工程中のその反応を防止するために遮蔽することができる。保護基は、反応性官能基を遮蔽するために提供され、この保護基は、本来の反応基の官能基を明らかにするために合成の後の段階で除去することができる。
【0130】
一つの態様において、保護された形態は、アミノ、ヒドロキシル、チオール及び/又はカルボキシル官能基が、保護基によって保護(遮蔽)された化合物である。一つの態様において、保護された形態は、化合物中のアミノ酸残基の側鎖の官能基が保護された化合物である。
【0131】
式(I)、(II)及び(III)の化合物において、5、8及び9位におけるアミノ酸残基は、Dab残基であり、Dab残基の側鎖は、アミノ官能基を含む。それぞれのDab残基のアミノ酸官能基は、本明細書中に記載されるように、アミノ保護基で保護することができる。同様に、3位におけるアミノ酸残基はDapであり、このアミノ酸残基の側鎖はアミノ官能基を含む。
【0132】
基-R15はアミノ官能基を基-R1617の形態で含み、例えば、-R16及び-R17のそれぞれは水素である。アミノ官能基は、本明細書に記載のとおりのアミノ保護基で保護されていてもよい。
【0133】
保護基、例えばアミノ酸残基に対するものは、周知であり、当技術において十分に記載されている。
側基保護を、所望によってアミノ及びカルボキシ保護と一緒に有するアミノ酸は、商業的に入手可能である。従って、保護されたポリミキシン化合物は、適当に保護されたアミノ酸出発物質から調製することができる。
【0134】
Velkov et al.は、適当に保護されたアミノ酸を使用する固相のポリミキシン化合物の工程ごとの調製を記載している。トレオニン及びDabの保護された形態の使用が開示されている(補足情報を参照されたい)。
【0135】
保護基が使用されている場合、これは、ポリミキシン核の構造を実質的に破壊しない条件、例えばアミノ酸残基の立体化学を変化しない条件下で除去可能である。
一つの態様において、保護基は、酸に不安定、塩基に不安定であるか、又は還元条件下で除去可能である。
【0136】
アミノ官能基のための例示的保護基は、Boc(tert-ブトキシカルボニル)、Bn(ベンジル、Bzl)、CbZ(ベンジルオキシカルボニル、Z)、2-CL-Z(2-クロロ)、ivDde(1-[4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキサ-1-イリデン]-3-メチルブチル)、Fmoc(フルオレニルメチルオキシカルボニル)、HSO-Fmoc(スルホニル化Fmoc、例えば2-スルホ-Fmoc、例えばSchechter et al,J.Med Chem 2002,45(19)4264中に記載されているような)、Dde(1-[4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキサ-1-イリデン]エチル)、Mmt(4-メトキシトリチル)、Mtt(4-メチルトリチル)、Nvoc(6-ニトロベラトロイルオキシカルボニル)、Tfa(トリフルオロアセチル)、及びAlloc(アリルオキシカルボニル)を含む。
【0137】
芳香族窒素官能基のための例示的保護基は、Boc、Mtt、Trt及びDnp(ジニトロフェニル)を含む。
一つの態様において、アミノ官能基のための保護基は、Boc、ivDde、CbZ、Bn並びにFmoc及びHSO-Fmocから選択される。
【0138】
一つの態様において、アミノ官能基のための保護基は、Boc、ivDde、Fmoc又はCbZ、例えば、Boc、ivDde又はCbzである。
Boc保護を、5、8及び9位に、及び所望により3位に存在するアミノ酸残基の側鎖に存在するアミノ官能基に与えてもよい。
【0139】
ヒドロキシル官能基のための例示的保護基は、Trt(トリチル)、Bn(ベンジル)、及びtBu(tert-ブチル)を含む。
一つの態様において、ヒドロキシル官能基のための保護基はtBuである。
【0140】
更なる例示的な保護基は、シリルエーテル保護基、例えばTMS、TES、TBS、TIPS、TBDMS、及びTBDPSを含む。そのような保護基は、例えばTBAFで除去可能である。
【0141】
カルボキシル官能基のための例示的な保護基は、Bn(ベンジル、Bz)、tBu(tert-ブチル)、TMSET(トリメチルシリルエチル)及びDmab({1-[4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキサ-1-イリデン]-3-メチルブチル}アミノベンジル)を含む。
【0142】
芳香族窒素官能基のための例示的保護基は、例えば、そのような官能基が基-Arに存在する場合、Boc、Mtt、Trt及びDnp(ジニトロフェニル)を含む。
幾つかの態様において、幾つかの種類の官能基のみが保護される。例えば、アミノ基を、例えばアミノ酸残基の側鎖のアミノ基のみを保護してもよい。
【0143】
一つの態様において、アミノ基及びヒドロキシル基が保護される。
LogP
式(I)、(II)又は(III)の化合物などの本発明の化合物は、ある特定の限界内のLogP値として表されるような分配係数を有し得る。分配係数は、化合物の親油性の指標を与え得る。
【0144】
本発明者らは、親油性が高い化合物ほど、細胞傷害性が不十分であることを立証している。本発明の化合物は典型的には、下記のLogP値など、低い細胞傷害性と関連するLogP値を有する。
【0145】
化合物でのLogP値は、実験的に(例えば、オクタノールと水との間での化合物の分配によって)決定され得るか、又は標準的な計算方法を使用して予測され得る。
例えば、LogPに対する言及は、本明細書中に参考文献としてその全てが援用されるGhose et al.J.Phys.Chem.A,1998,102,3762~3772に記載の方法を使用して決定され得るALogPに対する言及であり得る。従って、ALogPは、LogPでのGhose/Crippen基寄与推定値である。
【0146】
一つの態様において、化合物は、少なくとも-6.5、少なくとも-6.6、少なくとも-6.7、少なくとも-6.8、少なくとも-6.9、少なくとも-7.0、少なくとも-7.5、又は少なくとも-8.0のALogP値などのLogP値を有する。
【0147】
一つの態様において、化合物は、最大で-6.4、最大で-6.3、最大で-6.2、最大で-6.1、最大で-6.0、最大で-5.9、又は最大で-5.8のALogP値などのLogP値を有する。
【0148】
一つの態様において、化合物は、上記の限界から適切に選択される上限及び下限を有する範囲内、例えば、-5.8~-8.0、例えば-6.0~-6.7、例えば-6.3~-6.7の範囲内のLogP値を有する。これらの範囲は、基-Rが非置換アルキルであるときに選択され得る。
【0149】
別の態様において、化合物は、-6.7~-7.4の範囲内のLogP値を有する。この範囲は、基-Rが1個のヒドロキシル基で置換されているアルキルであるときに選択され得る。
【0150】
上記で論じた限界内のALogP値などのLogP値を有する化合物は、ポリミキシン感受性及びポリミキシン耐性菌株の両方に対して優れた活性を有することが見出されている。上記化合物は、ポリミキシンBに匹敵する抗菌活性を有し得る。有利には、そのような化合物は、ポリミキシンBと比較して低い細胞傷害性も有し得る。
【0151】
本発明者等は、最適なLogP値を有する化合物を、6及び/又は7位におけるアミノ酸残基の適切な選択と共に(-R及び/又は-Rの適切な選択などと共に)本出願の-R15基を選択することによって得ることができることを見出している。
【0152】
活性剤
式(I)、(II)又は(III)の化合物は、それぞれ、第2の活性剤と一緒に使用することができる。本発明人等は、このような組合せが、両方の化合物の個々の活性から予測されるものであるものより大きい生物学的活性を有することを見出している。式(I)、(II)又は(III)の化合物は、第2の活性剤の活性を増強するために使用することができる。特に、式(I)、(II)又は(III)の化合物は、薬剤の、例えばグラム陰性細菌に対する抗菌活性を向上するために第2の活性剤と一緒に使用することができる。
【0153】
理論によって束縛されることを望むものではないが、式(I)、(II)又は(III)の化合物は、細胞、例えばグラム陰性細菌の細胞の外部膜に作用して、その細胞への第2の活性剤の取込みを容易にすることができると信じる。従って、外部膜を通ることにおいて他の方法では不可能又は不良であった薬剤を、式(I)、(II)又は(III)の化合物の作用によって、標的細胞に取り込むことができる。
【0154】
一つの態様において、式(I)、(II)又は(III)の化合物の第2の活性剤との組合せは、グラム陰性細菌に対して活性である。ここで、個々の式(I)、(II)若しくは(III)の化合物又は第2の活性剤のいずれかが、グラム陰性細菌に対する活性を有することは、必須ではない。
【0155】
一つの態様において、第2の活性剤は、特定の微生物、例えば細菌に対する、10より少ない、5より少ない、又は1マイクログラム/mLより少ない測定されたMIC値を有する薬剤である。微生物は、グラム陰性菌、例えば、E.coli、S.enterica、K.pneumoniae、K.oxytoca;E.cloacae、E.aerogenes、E.agglomerans、A.calcoaceticus、A.baumannii;Pseudomonas aeruginosa、及びStenotrophomonas maltophilaからなる群から選択されるグラム陰性菌であることができる。
【0156】
グラム陰性細菌に対する活性を有する第2の活性剤の例は、ベータラクタム、テトラサイクリン、アミノグルコシド及びキノロンを含む。
一つの態様において、第2の活性剤は、特定の微生物、例えばグラム陰性細菌に対する、4より大きい、8より大きい、16より大きい、又は32マイクログラム/mLより大きい測定されたMIC値を有する活性剤である。この態様において、第2の活性剤は、グラム陽性細菌に対して活性であることができる。例えば、第2の活性剤は、特定のグラム陽性細菌に対する、10より小さい、5より小さい又は1マイクログラム/mLより小さい測定されたMIC値を有する活性剤である。ここで、式(I)、(II)又は(III)の化合物は、グラム陰性細菌の細胞への第2の活性剤の取込みを容易にするために作用する。従って、第2の活性剤は、グラム陰性細菌の細胞内の標的に作用することが可能であり、この標的は、グラム陽性細菌の細胞中の第2の活性剤の標的と同じであることができる。
【0157】
グラム陽性細菌は、Staphylococcus及びStreptococcus 細菌、例えばS.aureus(MRSAを含む)、S.epidermis、E.faecalis、及びE.faeciumからなる群から選択することができる。
【0158】
グラム陽性細菌に対する活性(例えば、上記で与えたMIC値で)、及びグラム陰性細菌に対して中程度の活性を有する第2の活性剤の例は、リファンピシン、ノボビオシン、マクロライド、プロイロムリチンを含む。一つの態様において、グラム陰性細菌に対して中程度の活性を有する化合物は、32より小さい、64より小さい、又は128マイクログラム/mLより小さいグラム陰性細菌に対する測定されたMIC値を有することができる。
【0159】
更に、使用のために適したものは、グラム陽性細菌に対する活性を有し、グラム陰性細菌に対して本質的に不活性である薬剤である。例は、フシジン酸、オキサゾリジニン(例えばリネゾリド)、グリコペプチド(例えばバンコマイシン)、ダプトマイシン及びランチビオティックスを含む。
【0160】
一つの態様において、グラム陰性細菌に対して本質的に活性を持たない化合物は、32より大きい、64より大きい、128より大きい、256マイクログラム/mLより大きいグラム陰性細菌に対する測定されたMIC値を有することができる。
【0161】
正常な環境下で、このような薬剤は、グラム陰性細菌の細胞の外部膜を通るその比較的不良な能力のために、グラム陰性細菌に対する使用のためには必ずしも適していない。上記で説明したように、式(I)、(II)又は(III)の化合物と一緒に使用する場合、このような薬剤は、使用のために適している。
【0162】
一つの態様において、活性剤は、リファンピシン(リファンピン)、リファブチン、リファラジル、リファペンチン、リファキシミン、アズトレオナム、オキサシリン、ノボビオシン、フシジン酸、アジスロマイシン、シプロフロキサシン、メロペネム、チゲサイクリン、ミノシクリン、エリスロマイシン、クラリスロマイシン及びムピロシン、並びに医薬的に受容可能な塩、溶媒和物及びこれらのプロドラッグの形態からなる群から選択することができる。
【0163】
本発明人等は、式(I)、(II)又は(III)のポリミキシン化合物を、微生物感染を治療するためにリファマイシンのファミリー中のある種の化合物と一緒に使用することができることを見出している。リファマイシンのファミリーは、単離したリファマイシンA、B、C、D、E、S及びSV、並びにこれらの化合物の全身性供給変種、例えばリファンピシン(リファンピン)、リファブチン、リファラジル、リファペンチン、及びリファキシミン、並びに医薬的に受容可能な塩及びこれらの溶媒和物を含む。
【0164】
一つの態様において、活性剤はリファンピシン(リファンピン)並びに医薬的に受容可能な塩、溶媒和物及びこれらのプロドラッグの形態である。
塩、溶媒和物及び他の形態
式(I)、(II)及び(III)の化合物の塩の例は、全ての医薬的に受容可能な塩、例えば、制約されるものではないが、強無機酸の酸付加塩、例えばHCl及びHBr塩、並びに強有機酸の付加塩、例えばメタンスルホン酸塩を含む。塩の更なる例は、硫酸塩及び酢酸塩、例えばトリフルオロ酢酸塩又はトリクロロ酢酸塩を含む。
【0165】
一つの態様において、本開示の化合物は、硫酸塩又はトリフルオロ酢酸(TFA)塩として提供される。一つの態様において、本開示の化合物は、酢酸塩などの酢酸塩類として提供される。
【0166】
式(I)、(II)又は(III)の化合物は、更にプロドラッグとして処方することができる。プロドラッグは、本明細書中に記載される、1個又は複数のアミノ基が、in vivoで開裂する基で保護されて、生物学的に活性な化合物を放出することができる抗細菌化合物含むことができる。一つの態様において、プロドラッグは、“アミンプロドラッグ”である。アミンプロドラッグの例は、例えば、Bergen et al,Antimicrob.Agents and Chemotherapy,2006,50,1953中に記載されているようなスルホメチル、又は例えば、Schechter et al,J.Med Chem 2002,45(19)4264中に記載されているようなHSO-FMOC及びその塩を含む。アミンプロドラッグの更なる例は、Krise and Oliyai in Biotechnology:Pharmaceutical Aspects,2007,5(2),101-131によって与えられている。
【0167】
一つの態様において、式(I)、(II)又は(III)の化合物は、プロドラッグとして提供される。
式(I)、(II)若しくは(III)の化合物、又は本明細書に記載のいずれかの他の化合物に対する言及は、更にこの化合物の溶媒和物に対する言及でもある。溶媒和物の例は、水和物を含む。
【0168】
式(I)、(II)若しくは(III)の化合物、又は本明細書に記載のいずれかの他の化合物は、原子が、天然に存在する又は天然に存在しない同位元素によって置換された化合物を含む。一つの態様において、同位元素は、安定な同位元素である。従って、本明細書に記載される化合物は、例えば重水素を含有する化合物等を含む。例えば、Hは、H、H(D)、及びH(T)を含むいずれもの同位元素の形態であることができ;Cは、12C、13C、及び14Cを含むいずれもの同位元素の形態であることができ;Oは、16O及び18Oを含むいずれもの同位元素の形態であることができる;等である。
【0169】
式(I)、(II)若しくは(III)のある種の化合物、又は本明細書に記載のいずれかの他の化合物は、制約されるものではないが、cis及びtrans型;E及びZ型;c、t、及びr型;エンド及びエキソ型;R、S及びメソ型;D及びL型;d及びl型;(+)及び(-)型;ケト、エノール、及びエノラート型;シン及びアンチ型;向斜及び背斜型;α及びβ型;アキシアル及びエクアトリアル型;ボート、イス、ネジレ、封筒、及び半イス型;及びこれらの混合物を含む一つ又は複数の特定の幾何、光学、鏡像異性、ジアステレオ異性、エピマー、アトロプ、立体異性、互変異性、配座異性、又はアノマーの形態で存在することができ、本明細書中で、以下集合的に“異性体”(又は異性の形態)と呼ぶ。
【0170】
互変異性型に対して以下で考察されるようなものを除き、本明細書中で使用されるような“異性体”の用語から特定的に除外されるものは、構造的(若しくは構成的)異性体(即ち、単に空間中の原子の位置によるより、むしろ原子間の接続において異なる異性体)であることに注意されたい。例えば、メトキシ基、-OCHに対する言及は、その構造異性体、ヒドロキシメチル基、-CHOHに対する言及とは解釈されない。同様に、オルト-クロロフェニルに対する言及は、その構造異性体、メタ-クロロフェニルに対する言及とは解釈されない。然しながら、構造の群に対する言及は、その群に入る構造的異性の形態を十分に含むことができる(例えば、C1~6アルキルは、n-プロピル及びイソ-プロピルを含み;ブチルは、n-、イソ-、sec-、及びtert-ブチルを含み;メトキシフェニルは、オルト-、メタ-、及びパラ-メトキシフェニルを含む)。
【0171】
他に規定しない限り、特定の化合物に対する言及は、その混合物(例えば、ラセミ混合物)を含む全てのこのような異性の形態を含む。このような異性の形態の調製(例えば不斉合成)及び分離(例えば、分別結晶化及びクロマトグラフ的手段)の方法は、当技術において既知であるか、又は本明細書中で教示される方法、或いは既知の方法を、既知の様式で適合することによるかのいずれかによって容易に得ることができる。
【0172】
本発明の一つの側面は、実質的に精製された形態及び/又は実質的に混入物を含まない形態の化合物に関する。
一つの態様において、実質的に精製された形態は、少なくとも50重量%、例えば少なくとも60重量%、例えば少なくとも70重量%、例えば少なくとも80重量%、例えば少なくとも90重量%、例えば少なくとも95重量%、例えば少なくとも97重量%、例えば少なくとも98重量%、例えば少なくとも99重量%である。
【0173】
規定されない場合、実質的に精製された形態は、いずれもの立体異性又は鏡像異性の形態の化合物を指す。例えば、一つの態様において、実質的に精製された形態は、即ち、他の化合物に関して精製された、立体異性体の混合物を指す。一つの態様において、実質的に精製された形態は、一つの立体異性体、例えば光学的に純粋な立体異性体を指す。一つの態様において、実質的に精製された形態は、鏡像異性体の混合物を指す。一つの態様において、実質的に精製された形態は、鏡像異性体の等モルの混合物(即ち、ラセミ混合物、ラセミ体)を指す。一つの態様において、実質的に精製された形態は、一つの鏡像異性体、例えば光学的に純粋な鏡像異性体を指す。
【0174】
一つの態様において、混入物は、50重量%より多くない、例えば40重量%より多くない、例えば30重量%より多くない、例えば20重量%より多くない、例えば10重量%より多くない、例えば5重量%より多くない、例えば3重量%より多くない、例えば2重量%より多くない、例えば1重量%より多くないことを表す。
【0175】
規定しない限り、混入物は、他の化合物、即ち、立体異性体又は鏡像異性体以外のものを指す。一つの態様において、混入物は他の化合物及び他の立体異性体を指す。一つの態様において、混入物は、他の化合物及び他の鏡像異性体を指す。
【0176】
一つの態様において、実質的に精製された形態は、少なくとも60%光学的に純粋(即ち、モル基準で化合物の60%が所望の立体異性体又は鏡像異性体であり、40%は所望しない立体異性体又は鏡像異性体である)、例えば少なくとも70%光学的に純粋、例えば少なくとも80%光学的に純粋、例えば少なくとも90%光学的に純粋、例えば少なくとも95%光学的に純粋、例えば少なくとも97%光学的に純粋、例えば少なくとも98%光学的に純粋、例えば少なくとも99%光学的に純粋である。
【0177】
治療の方法
式(I)、(II)又は(III)の化合物、又はこれらの化合物を含有する医薬的製剤は、治療及び予防の方法における使用のために適している。化合物は、それを必要とする被験者に投与することができる。化合物は、活性剤(“第2の活性剤”)、例えば第2の活性剤、即ち、抗細菌剤と一緒の使用のために適している。
【0178】
式(I)、(II)又は(III)の化合物は、療法によるヒト又は動物の身体の治療の方法における使用のためのものである。本発明の幾つかの側面において、式(I)、(II)又は(III)の化合物は、微生物感染を治療するために、哺乳動物の被験者、例えばヒトに投与することができる。
【0179】
本発明のもう一つの側面は、治療における使用のための医薬の製造における式(I)、(II)又は(III)の化合物の使用に関する。一つの態様において、医薬は、式(I)、(II)又は(III)の化合物を含んでなる。一つの態様において、医薬は、微生物感染の治療における使用のためのものである。
【0180】
用語“微生物感染”は、宿主動物の病原性微生物による侵襲を指す。これは、動物の身体中又は身体上に通常存在する微生物の過剰な増殖を含む。更に一般的に、微生物感染は、微生物集団(一つ又は複数)の存在が宿主動物を損傷しているいずれもの状況であることができる。従って、動物は、過剰の数の微生物集団が動物の身体中に又は身体上に存在する場合、或いは微生物集団(一つ又は複数)の存在が動物の細胞又は他の組織を損傷している場合、微生物感染に“罹って”いる。
【0181】
化合物は、微生物感染、又は微生物、例えば細菌からの感染の危険性を有する被験者を治療するために使用することができる。
微生物感染は、細菌感染、例えばグラム陰性菌感染であることができる。
【0182】
グラム陰性菌の例は、制約されるものではないが、Escherichia spp.、Klebsiella spp.、Enterobacter spp.、Salmonella spp.、Citrobacter spp.、及び他の腸内細菌科、Pseudomonas spp.、Acinetobacter spp.、Stenotrophomonas、及びLegionella並びに多くの他のものを含む。
【0183】
医学的に関連するグラム陰性桿菌は、多数の種を含む。その幾つかは、主として、呼吸器の問題(Haemophilus influenzae、Klebsiella pneumoniae、Legionella pneumophila、Pseudomonas aeruginosa)、主に尿の問題(Escherichia coli)、Enterobacter cloacae)、及び主に消化器の問題(Salmonella enterica)を起こす。
【0184】
院内感染に関係するグラム陰性細菌は、Acinetobacter baumanniiを含み、これは、菌血症、続発性髄膜炎、及び病院施設の集中治療室の人工呼吸器関連肺炎を起こす。
【0185】
一つの態様において、グラム陰性菌種は、E.coli、S.enterica、K.pneumoniae、K.oxytoca;E.cloacae、E.aerogenes、E.agglomerans、A.calcoaceticus、A.baumannii;Pseudomonas aeruginosa、及びStenotrophomonas maltophilaからなる群から選択される。
【0186】
一つの態様において、グラム陰性菌種は、E.coli、K.pneumoniae、Pseudomonas aeruginosa、及びA.baumannii.からなる群から選択される。
【0187】
式(I)、(II)又は(III)の化合物或いは同一物を含んでなる組成物は、皮膚及び軟組織感染、消化器感染、尿路感染、肺炎、敗血症、腹腔内感染及び産/婦人科感染の治療のために有用である。感染は、グラム陰性細菌感染であることができる。
【0188】
式(I)、(II)又は(III)の化合物或いは同一物を含んでなる組成物は、P.aeruginosa感染を含むPseudomonas感染、例えば皮膚及び軟組織感染、消化器感染、尿路感染、肺炎及び敗血症の治療のために有用である。
【0189】
式(I)、(II)又は(III)の化合物或いは同一物を含んでなる組成物は、肺炎、創傷感染、尿路感染及び敗血症に対する、A.baumanii感染を含むAcinetobacter感染の治療のために有用である。
【0190】
式(I)、(II)又は(III)の化合物或いは同一物を含んでなる組成物は、肺炎、腹腔内感染、尿路感染、髄膜炎及び敗血症に対する、K.pneumoniae感染を含むKlebsiella感染の治療のために有用である。
【0191】
式(I)、(II)又は(III)の化合物或いは同一物を含んでなる組成物は、菌血症、胆嚢炎、胆管炎、腹腔内感染、尿路感染、新生児髄膜炎、及び肺炎に対する、E.coli感染を含むE.coli感染の治療のために有用である。
【0192】
式(I)、(II)若しくは(III)の化合物又は同一物を含んでなる組成物は、治療方法において活性剤と一緒に使用され得る。
活性剤は、微生物に対して活性を有する薬剤であり得る。活性剤は、グラム陰性菌に対して活性であり得る。活性剤は、上に示されたリストから選択される微生物に対して活性であり得る。
【0193】
一つの態様において、第2の活性剤は、式(I)、(II)又は(III)の化合物の非存在下でE.coliなどの微生物に対して10マイクログラム/mL以下のMIC値を有する。微生物は、上の群から選択される微生物であり得る。
【0194】
第2の活性剤として使用するための具体的な化合物は、本明細書に記載されており、それらには、
リファンピシン、リファブチン、リファラジル、リファペンチン、及びリファキシミン;
オキサシリン、メチシリン、アンピシリン、クロキサシリン、カルベニシリン、ピペラシリン、トリカルシリン、フルクロキサシリン、及びナフシリン;
アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、テリスロマイシン、セスロマイシン、及びソリスロマイシン;
アズトレオナム及びBAL30072;
メロペネム、ドリペネム、イミペネム、エルタペネム、ビアペネム、トモペネム、及びパニペネム;
チゲサイクリン、オマダサイクリン、エラバサイクリン、ドキシサイクリン、及びミノシクリン;
シプロフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、及びデラフロキサシン;
フシジン酸;
ノボビオシン;
テイコプラニン、テラバンシン、ダルババンシン、及びオリタバンシン、
並びにその医薬的に受容可能な塩及び溶媒和物;
が含まれる。
【0195】
一つの態様において、第2の活性剤として使用するための具体的な化合物は、本明細書に記載されており、それらには、リファンピシン(リファンピン)、リファブチン、リファラジル、リファペンチン、リファキシミン、アズトレオナム、オキサシリン、ノボビオシン、フシジン酸、アジスロマイシン、シプロフロキサシン、メロペネム、チゲサイクリン、エリスロマイシン、クラリスロマイシン及びムピロシン、並びにその医薬的に受容可能な塩及び溶媒和物が含まれる。
【0196】
代替の一つの側面において、式(I)の化合物は、例えば、抗真菌剤と一緒に組合せて、真菌感染の治療において使用するために適している。抗真菌剤は、ポリエン抗真菌剤、例えば、アンホテリシンB、イミダゾール、トリアゾール、又はチアゾール抗真菌剤、例えば、ミコナゾール、フルコナゾール又はアバフンギン、アリルアミン、エキノカンジン、又は別の薬剤、例えば、シクロピロックスから選択され得る。
【0197】
治療
用語“治療”は、症状を治療する文脈において本明細書中で使用される場合、ヒト又は動物(例えば獣医学的適用)であるかに関わらず、一般的に、幾つかの所望の治療効果、例えば、症状の進行の阻害が達成される治療及び療法に関係し、進行の速度の減少、進行の速度の停止、症状の徴候の軽減、症状の回復、及び症状の治癒を含む。予防的手段(即ち予防法)としての治療も更に含まれる。例えば、症状をいまだ発症していないが、しかし症状を発症する危険性を持つ患者に伴う使用は、用語“治療”に包含される。
【0198】
用語“治療的に有効な量”は、本明細書中で使用する場合、所望の治療計画によって投与された場合、妥当な利益/危険度比と釣り合った、ある程度の所望の治療効果を産生するために有効な化合物、又は物質、化合物を含んでなる組成物又は剤形の量に関する。
【0199】
用語“治療”は、本明細書中に記載されるような組合せ治療及び療法を含み、ここにおいて、二つ又はそれより多い治療又は療法が、例えば連続的に又は同時に組み合わされる。
【0200】
組合せ療法
式(I)、(II)又は(III)の化合物は、活性剤と併せて投与することができる。
【0201】
投与は、同時、別個又は連続であることができる。
投与の方法及び様式は、式(I)、(II)又は(III)の化合物及び第2の活性剤の薬物動態に依存するものである。
【0202】
“同時”投与によって、式(I)、(II)又は(III)の化合物及び第2の活性剤が、同一経路の投与による単一投与で被験者に投与されることを意味する。
“別個”投与によって、式(I)、(II)又は(III)の化合物及び第2の薬剤が、同時に起こる二つの異なった経路の投与によって被験者に投与されることを意味する。これは、例えば一つの薬剤が注入によって投与され、他方が注入の過程中に経口投与される場合に起こり得る。
【0203】
“連続”によって、二つの薬剤が異なった時点で投与されることを意味し、但し、最初に投与された薬剤の活性が、第2の薬剤が投与された時点で被験者中に存在し、継続していることを条件とする。
【0204】
一般的に、連続投与は、二つの薬剤の二番目が、最初の薬剤の48時間内に、例えば24時間内、例えば12、6、4、2又は1時間(単数又は複数)内に投与されるように起こるものである。或いは、最初に活性剤を、続いて式(I)、(II)又は(III)の化合物を投与することができる。
【0205】
最終的に、組合せ治療における化合物及び第2の薬剤の投与の順序並びに時間は、それぞれの薬物動態学的特性に依存するものである。
被験者に投与される式(I)、(II)又は(III)の化合物の量は、最終的に、被験者の特質及び治療される疾病に依存するものである。同様に、被験者に投与される活性剤の量は、最終的に、被験者の特質及び治療される疾病に依存するものである。
【0206】
製剤
一つの側面において、本発明は、式(I)、(II)又は(III)の化合物を、医薬的に受容可能な担体と一緒に含んでなる医薬組成物を提供する。医薬組成物は、第2の活性剤を更に含んでなることができる。別の態様において、第2の活性剤が療法のために提供される場合、第2の活性剤は、式(I)、(II)又は(III)の化合物と別個に処方することができる。従って、式(I)、(II)又は(III)の化合物に関して以下で行われる解説は、別個に処方される場合、第2の活性剤にも適用することができる。
【0207】
式(I)、(II)又は(III)の化合物を、単独で又は第2の活性剤と一緒に投与することは可能であるが、これを、少なくとも一つの本明細書中に記載するような式(I)、(II)又は(III)の化合物と、制約されるものではないが、医薬的に受容可能な担体、希釈剤、賦形剤、アジュバント、充填剤、緩衝剤、保存剤、抗酸化剤、潤滑剤、安定剤、可溶化剤、界面活性剤(例えば、湿潤剤)、遮蔽剤、着色剤、芳香剤、及び甘味剤を含む、一つ又は複数の当業者にとって周知の他の医薬的に受容可能な成分とを一緒に含んでなる医薬製剤(例えば、組成物、製剤、医薬)として与えることが望ましい。製剤は、更に他の活性剤、例えば、他の治療又は予防剤を含んでなることができる。
【0208】
従って、本発明は、更に、先に定義したような医薬組成物、及び本明細書中に記載されるような式(I)、(II)又は(III)の少なくとも一つの化合物を、一つ又は複数の当業者にとって周知の他の医薬的に受容可能な成分、例えば、担体、希釈剤、賦形剤、等と一緒に混合することを含んでなる医薬組成物を製造する方法を提供する。別々の単位(例えば、錠剤、等)として処方される場合、それぞれの単位は、所定の量(投与量)の化合物を含有する。組成物は、所望によって更に、第2の活性剤を所定の量で含んでなる。
【0209】
用語“医薬的に受容可能”は、本明細書中で使用する場合、健全な医学的判断の範囲において、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、或いは他の問題又は合併症を伴わずに、妥当な利益/危険度の比と釣り合って、当該被験者(例えばヒト)の組織との接触における使用のために適している化合物、成分、物質、組成物、剤形、等に関する。それぞれの担体、希釈剤、賦形剤、等は、更に、製剤の他の成分と適合性であるという意味で“受容可能”でなければならない。
【0210】
適した担体、希釈剤、賦形剤、等は、標準的な医薬の教科書、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1990;及びHandbook of Pharmaceutical Excipients,5th edition,2005中に見出すことができる。
【0211】
製剤は、薬学の技術で周知のいずれもの方法によって調製することができる。このような方法は、式(I)又は(II)の化合物を、一つ又は複数の補助成分を構成する担体と混合する工程を含む。一般的に、製剤は、化合物を担体(例えば、液体担体、微細に分割された個体担体、等)と共に均一に、緊密に混合し、次いで、必要な場合、生成物を成形することによって調製される。
【0212】
製剤は、急速又は緩慢放出;即時、遅延、時限、又は継続放出;或いはこれらの組合せで提供するために調製することができる。
製剤は、適当には、液体、溶液(例えば、水性、非水性)、懸濁液(例えば、水性、非水性)、乳液(例えば、水中油、油中水)、エリキシル、シロップ、舐剤、口腔洗浄剤、ドロップ、錠剤(例えば、被覆錠剤を含む)、顆粒、粉末、ロゼンジ、トローチ、カプセル(例えば、硬質及び軟質ゼラチンカプセルを含む)、カシェー、丸薬、アンプル、ボーラス、座薬、ペッサリー、チンキ、ゲル、ペースト、軟膏、クリーム、ローション、油、泡、噴霧、霧、又はエアゾールの形態であることができる。
【0213】
製剤は、適当には、例えば、透過、浸透、及び吸収向上剤を含む一つ又は複数の化合物、及び所望によって一つ又は複数の他の医薬的に受容可能な成分で含浸された貼布、絆創膏、包帯、ドレッシング材、等として提供することができる。製剤は、更に、適当には、デポー又はリザーバーの形態で提供することができる。
【0214】
化合物は、一つ又は複数の他の医薬的に受容可能な成分中に溶解、懸濁、又は混合することができる。化合物は、化合物が、例えば血液成分或いは一つ又は複数の器官を標的とするように設計されたリポソーム又は他の微粒子中で提示されることができる。リポソームが使用される場合、リポソームが、式(I)、(II)、(III)の化合物及び第2の活性剤の両方を含有することができることが注目される。
【0215】
経口投与のために適した製剤は(例えば、経口摂取による)、液体、溶液(例えば、水性、非水性)、懸濁液(例えば、水性、非水性)、乳液(例えば、水中油、油中水)、エリキシル、シロップ、舐剤、錠剤、顆粒、粉末、カプセル、カシェー、丸薬、アンプル、ボーラスを含む。
【0216】
頬側投与のために適した製剤は、口腔洗浄剤、ロゼンジ、トローチ、並びに、貼布、絆創膏、デポー、及びリザーバーを含む。ロゼンジは、典型的には、通常スクロース及びアラビアゴム又はトラガカントゴムである芳香基剤中の化合物を含んでなる。トローチは、典型的には、不活性基質、例えばゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアラビアゴム中の化合物を含んでなる。口腔洗浄剤は、典型的には、適した液体担体中の化合物を含んでなる。
【0217】
舌下投与のために適した製剤は、錠剤、ロゼンジ、トローチ、カプセル、及び丸薬を含む。
口腔粘膜経由投与のために適した製剤は、液体、溶液(例えば、水性、非水性)、懸濁液(例えば、水性、非水性)、乳液(例えば、水中油、油中水)、口腔洗浄剤、ロゼンジ、トローチ、並びに貼布、絆創膏、デポー、及びリザーバーを含む。
【0218】
非口腔粘膜経由投与のために適した製剤は、液体、溶液(例えば、水性、非水性)、懸濁液(例えば、水性、非水性)、乳液(例えば、水中油、油中水)、座薬、ペッサリー、ゲル、ペースト、軟膏、クリーム、ローション、油、並びに貼布、絆創膏、デポー、及びリザーバーを含む。
【0219】
経皮投与のために適した製剤は、ゲル、ペースト、軟膏、クリーム、ローション、及び油、並びに貼布、絆創膏、包帯、ドレッシング、デポー、及びリザーバーを含む。
錠剤は、慣用的手段、例えば、所望によって一つ又は複数の補助成分と共に、圧縮又は成形することによって製造することができる。圧縮錠剤は、自由流動形態、例えば粉末又は顆粒の化合物を、所望によって一つ又は複数の結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、アラビアゴム、ソルビトール、トラガカントゴム、ヒドロキシピロピルメチルセルロース);充填剤又は希釈剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロース、リン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ);崩壊剤(例えば、グリコール酸デンプンナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム);表面活性或いは分散又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム);保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル、ソルビン酸);芳香剤、芳香向上剤、及び甘味剤と共に混合し、適した機械で圧縮することによって調製することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿潤化された粉末の化合物の混合物を、適した機械で成形することによって製造することができる。錠剤は、所望によって被覆し、又は刻み目を入れることができ、例えば、所望の放出特性を提供するために、各種の比率のヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用して、その中の化合物の緩慢又は制御放出を提供するように処方することができる。錠剤は、所望によって被覆、例えば、放出に影響するために、例えば胃ではなく腸の一部における放出を提供するための腸溶性被覆を伴って提供することができる。
【0220】
軟膏は、典型的には、化合物及びパラフィン系又は水混和性の軟膏基剤から調製される。
クリームは、典型的には、化合物及び水中油クリーム基剤から調製される。所望する場合、クリーム基剤の水相は、例えば、少なくとも30重量/重量%の多価アルコール、即ち、二つ又はそれより多いヒドロキシル基を有するアルコール、例えばプロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール及びポリエチレングリコール並びにこれらの混合物を含むことができる。局所製剤は、好ましくは、皮膚又は影響された他部位を通る化合物の吸収又は浸透を向上する化合物を含むことができる。このような皮膚透過向上物質の例は、ジメチルスルホキシド及び関連する類似体を含む。
【0221】
乳剤は、典型的には、化合物及び所望によって単に乳化剤(他にエマルジェント(emulgents)として知られる)を含んでなることができる、或いは少なくとも一つの乳化剤の脂肪又は油との、或いは脂肪及び油の両方との混合物を含んでなることができる油性相から調製される。親水性乳化剤が、安定剤として作用する親油性乳化剤と一緒に含まれ得る。油及び脂肪の両方を含むことも可能である。まとめれば、安定剤(一つ又は複数)を伴う又は伴わない乳化剤(一つ又は複数)は、いわゆる乳化ワックスを作り出し、油及び/又は脂肪と一緒のワックスは、いわゆる乳化軟膏基剤を作り出し、これは、クリーム製剤の油分散相を形成する。
【0222】
適したエマルジェント及び乳化安定剤は、Tween60、Span80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、及びラウリル硫酸ナトリウムを含む。製剤のための適した油又は脂肪の選択は、医薬的な乳化製剤に使用される可能性のある殆どの油中の化合物の溶解度が、非常に低いものであり得るために、所望の美容的特性を達成することに基づく。従って、クリームは、好ましくは、チューブ又は他の容器からの漏洩を回避するための適した稠度を伴う、べたべたせず、染まらない、洗浄可能な産物でなければならない。例えばジ-イソアジピン酸の直鎖或いは分枝鎖の一又は二塩基性アルキルエステル、ステアリン酸イソセチル、ココナツ脂肪酸のプロピレングリコールのジエステル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル又はクロダモルCAPとして知られる分枝鎖エステルのブレンドを使用することができる。これらは、必要な特性によって、単独で又は組合せて使用することができる。或いは、高融点脂質、例えば白色軟質パラフィン及び/又は液体パラフィン或いは他の鉱油を使用することができる。
【0223】
鼻腔内投与のために適した製剤は、担体が液体である場合、例えば鼻腔噴霧、点鼻剤を含み、或いはネブライザーによるエアゾール投与によるものは化合物の水性又は油性溶液を含む。投与の別の方法として、乾燥粉末の送達を、噴霧化エアゾールの代替物として使用することができる。
【0224】
鼻腔内投与のために適した製剤は、担体が固体である場合、例えば、嗅ぎ薬が摂取される様式で、即ち鼻に密接して保持された粉末の容器からの鼻腔を経由する急速な吸入によって投与される、例えば約20ないし約500ミクロンの範囲の粒子サイズを有する粗い粉末として提示されるものを含む。
【0225】
肺投与(例えば、吸入又は吹送療法による)のために適した製剤は、適した噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ-テトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適したガスの使用を伴う、加圧パックからのエアゾール噴霧として提示されるものを含む。更に又は別に、肺投与のための製剤は、ネブライザー又は乾燥粉末吸入器からの投与のために処方することができる。例えば、製剤は、肺組織における保持を向上するために適当な投与量(does)の送達を援助するために、肺の適当な部分に達するために適した粒子サイズを提供するために、担体又はリポソームと共に提供することができる。
【0226】
眼内投与のために適した製剤は、化合物が適した担体、特に化合物のための水性溶媒中に溶解又は懸濁された点眼剤を含む。
直腸投与のために適した製剤は、例えば天然の又は硬化された油、ワックス、脂肪、半液体又は液体ポリオール、例えば、ココアバター又はサリチル酸塩を含んでなる適した基剤を伴う座薬として;或いは浣腸による治療のための溶液又は懸濁液として提示することができる。
【0227】
膣投与のために適した製剤は、化合物に加えて、当技術において適当であると知られたような担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡又は噴霧製剤として提示することができる。
【0228】
非経口投与(例えば、例えば注射又は注入により静脈内又は皮下で)のために適した製剤は、化合物が、溶解、懸濁、又は他の方法で(例えば、リポソーム又は他の微粒子中の)提供される水性又は非水性の、等張の、パイロジェンフリーの、滅菌液体(例えば、溶液、懸濁液)を含む。このような液体は、更に、他の医薬的に受容可能な成分、例えば抗酸化剤、緩衝液、保存剤、安定剤、殺細菌剤、懸濁剤、増粘剤、及び製剤を、意図する受容者の血液(又は他の関連する体液)と等張にする溶質を含有することができる。賦形剤の例は、例えば、水、アルコール、糖、ポリオール、グリセロール、植物油、等を含む。このような製剤中の使用のために適した等張の担体の例は、塩化ナトリウム液、リンゲル液、又は乳酸リンゲル液を含む。典型的には、液体中の化合物の濃度は、約1ng/mLから約500μg/mLまで、例えば約1ng/mLから約100μg/mLまで、例えば約10ng/mLから約10μg/mLまで、例えば約10ng/mLから約1μg/mLまでである。製剤は、単位投与又は多回投与の密封容器、例えばアンプル及びバイアル中で提示することができ、使用の直前に、滅菌液体担体、例えば注射用水の添加のみを必要とする、水冷凍乾燥(凍結乾燥)条件で貯蔵することができる。即時注射溶液及び懸濁液は、滅菌粉末、顆粒、及び錠剤から調製することができる。
【0229】
投与量
一般的に、本発明の方法は、抗細菌効果を提供するために、有効な量の式(I)、(II)又は(III)の化合物を被験者に投与することを含んでなることができる。式(I)、(II)又は(III)の化合物は、第2の活性剤の活性を増強するために十分な量で投与することができる。第2の活性剤は、抗細菌効果を提供するように有効な量で被験者に投与される。
【0230】
式(I)、(II)又は(III)の化合物又は活性剤、及び式(I)、(II)又は(III)の化合物又は活性剤を含んでなる組成物の適当な投与量が、患者によって変更することができることは当業者によって認識されるものである。最適な投与量を決定することは、一般的にいずれもの危険性又は有害な副作用に対する治療の利益のレベルの釣り合いをとることを含むものである。選択される投与量のレベルは、制約されるものではないが、式(I)、(II)又は(III)の特定の化合物又は活性剤の活性、投与の経路、投与の時間、化合物の排出の速度、治療の期間、組合せて使用される他の薬物、化合物、及び/又は物質、症状の重篤度、並びに患者の種、性別、年齢、体重、症状、一般的健康状態、及び従来の病歴を含む各種の因子に依存するものである。式(I)、(II)又は(III)の化合物又は活性剤の量及び投与の経路は、一般的に投与量は、作用の部位における局所濃度を達成し、実質的に危険な又は有害な副作用を起こすことなく所望の効果を達成するために選択されるものであるが、最終的に医師、獣医師、又は臨床医の裁量にあるものである。
【0231】
投与は、治療の過程を通して、一回投与、連続的又は間欠的に(例えば、適当な間隔の分割投与で)行うことができる。投与の最も有効な手段及び投与量を決定する方法は、当業者にとって周知であり、治療のために使用される製剤、治療の目的、治療される標的細胞(一つ又は複数)、及び治療される被験者に伴い変化するものである。一回又は多数回投与は、治療する医師、獣医師、又は臨床医師によって選択される投与量レベル及び様式によって行うことができる。
【0232】
一般的に、式(I)、(II)又は(III)の化合物又は活性剤の適した投与量は、一日当たり、被験者の体重のキログラム当たり約10μgないし約250mg(更に典型的には、約100μgないし約25mg)の範囲である。式(I)、(II)又は(III)の化合物又は活性剤が、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、等である場合、投与される量は、親化合物に基づいて計算され、従って使用される実際の重量は、比例的に増加される。
【0233】
キット
本発明の一つの側面は、例えば、典型的には適した容器中で及び/又は適した包装を伴って提供される(a)式(I)、(II)又は(III)の化合物、又は式(I)、(II)又は(III)のいずれか一つにおいて定義されるような化合物を含んでなる組成物;及び(b)化合物又は組成物を投与する方法に対する使用のための指示、例えば文書の指示を含んでなるキットに関する。
【0234】
文書の指示は、更に式(I)、(II)又は(III)の化合物が、適した治療剤である適応症のリストを含むことができる。
一つの態様において、キットは、更に(c)第2の活性剤、又は第2の活性剤を含んでなる組成物を含んでなる。ここで、文書の指示は、更に式(I)、(II)又は(III)の化合物と一緒の第2の活性剤が、治療のために適している適応症のリストを含むことができる。
【0235】
投与の経路
式(I)、(II)又は(III)の化合物、第2の活性剤、又は式(I)、(II)若しくは(III)の化合物又は第2の活性剤を含んでなる医薬組成物は、全身的に/末梢的に又は局所的に(即ち、所望の作用の部位において)を問わず、いずれもの慣用的な投与の経路によって被験者に投与することができる。
【0236】
投与の経路は、制約されるものではないが、口腔(例えば、経口摂取による);頬側;舌下;経皮(例えば、貼布、プラスター、等を含む)、粘膜経由(例えば、貼布、プラスター、等を含む)、鼻腔内(例えば鼻腔噴霧による);眼(例えば、点眼剤による);肺(例えばエアゾールによる、例えば口又は鼻を通して使用する、例えば吸入又は吹送療法による);直腸(例えば、座薬又は浣腸による);膣(例えば、ペッサリーによる);例えば、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、動脈内、心臓内、クモ膜下腔内、脊髄内、嚢内、嚢下、眼窩内、腹腔内、気管内、表皮下、関節内、クモ膜下、及び胸骨内を含む注射又は注入による非経口;例えば皮下或いは筋肉内的なデポー又はリザーバーのインプラントによるものを含む。
【0237】
被験者/患者
被験者/患者は、脊索動物、脊椎動物、哺乳動物、有胎盤哺乳動物、有袋類(例えば、カンガルー、ウオンバット)、齧歯類(例えば、モルモット、ハムスター、ラット、マウス)、ネズミ(例えば、マウス)、ウサギ(例えば、兎)、鳥類(例えば、鳥)、イヌ(例えば、犬)、ネコ(例えば、猫)、ウマ(例えば、馬)、ブタ(例えば、豚)、ヒツジ(例えば、羊)、ウシ(例えば、牛)、霊長動物、サル(例えば、猿又は類人猿)、サル(例えば、マーモセット、ヒヒ)、類人猿(例えば、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、手長猿)、又はヒトであることができる。更に、被験者/患者は、その成長の形態のいずれか、例えば胎児であることができる。
【0238】
一つの態様において、被験者/患者は、ヒトである。
本発明が、微生物感染を有する非ヒト動物に対して実行することができることも更に想定されている。非ヒトの哺乳動物は、齧歯類であることができる。齧歯類は、研究所の研究に使用される、ラット、マウス、モルモット、チンチラ及び他の類似のサイズの小さい齧歯類を含む。
【0239】
他の選択肢
先に記載した態様のそれぞれの及びあらゆる適合性の組合せは、それぞれの及びあらゆる組合せが、個々に、明確に引用されているように、本明細書中に明確に開示される。
【0240】
本発明の各種の更なる側面及び態様は、本開示の観点から、当業者にとって明白であるものである。
“及び/又は”は、本明細書中で使用される場合、二つの具体的な特徴又は成分のそれぞれの、他方を伴う、又は伴わない具体的な開示と解釈されるものである。例えば、“A及び/又はB”は、(i)A、(ii)B並びに(iii)A及びBのそれぞれの、単にそれぞれが本明細書中に個々に記述されたような、具体的な開示と解釈される。
【0241】
文脈が他に指示しない限り、先に記載した特徴の記載及び定義が、本発明のいずれもの特定の側面又は態様を制約するものではなく、記載された全ての側面及び態様に均等に適用される。技術的に適当である場合、態様は組合せることができ、従って、開示は、本明細書中に提供される態様の全ての順列及び組合せに拡張される。
【0242】
本発明のある種の側面及び態様は、ここに、実施例及び先に記載した図の参照によって例示されるものである。
【実施例
【0243】
以下の実施例は、単に本発明を例示するために提供され、本明細書中に記載されるような本発明の範囲を制約することを意図していない。
【0244】
【表4-1】
【0245】
【表4-2】
【0246】
合成実施例
N末端酸の合成
本作業において、3-置換4-アミノブタン酸を適切に保護された形態で使用した。非標準アミノ酸の合成を、鏡像異性体分離のための方法と一緒に下記で詳述する。
【0247】
4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸 - 異性体1及び異性体2
【0248】
【化20】
【0249】
(i)3-(3-クロロフェニル)-4-ニトロブタン酸メチル
【0250】
【化21】
【0251】
3-クロロケイ皮酸(10g)、メタノール(100mL)及び濃硫酸(4mL)の混合物を20時間、室温で撹拌した。混合物を乾燥状態まで蒸発し、残渣をジクロロメタン(DCM)及び水間に分配した。水相を分離し、追加のDCMで抽出した。有機抽出物を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、乾燥状態まで蒸発して、メチルエステルを白色の固体(10.19g)として生成した。この固体をニトロメタン(32mL)中に溶解し、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)(8.5mL)で処理した。混合物を20時間、室温で撹拌し、次いで、乾燥状態まで蒸発し、残渣を0.5M HCl水溶液及びジエチルエーテル間で分配した。水相を分離し、追加のジエチルエーテルで抽出した。有機抽出物を合わせ、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、乾燥状態まで蒸発した。残渣をシリカで、ヘキサン及び酢酸エチル(0~100%)で溶離して精製した。適切な画分を合わせ、乾燥状態まで蒸発して、所望の生成物を黄色の油状物として生成した(9.93g、収率70%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ (ppm) 2.71-2.79 (2H, m), 3.66(3H, s), 3.93-4.01 (1H, m), 4.62及び4.73 (2H, ABq, 見かけ上2x dd , J 12.8, 8.0 Hz), 7.11-7.28 (4H, m).
(ii)4-アミノ-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸メチル
【0252】
【化22】
【0253】
約0℃で撹拌されている酢酸(90mL)中の3-(3-クロロフェニル)-4-ニトロブタン酸メチル(9.93g)の溶液に、亜鉛粉末(20.1g)を少しずつ添加した(注:発熱の延長)。混合物を室温に加温し、19時間撹拌した。混合物を乾燥状態まで蒸発し、残渣をNaHCO水溶液及び酢酸エチル間で分配した。次いで、混合物をセライトに通して濾過し、水相及び有機相を分離した。水相を追加の酢酸エチルで再抽出した。有機抽出物を合わせ、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、乾燥状態まで蒸発し、所望の生成物をオレンジ色油状物(4.80g)として生成した。
【0254】
(iii)標題化合物 - ラセミ体
4-アミノ-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸メチル(4.80g)、二炭酸ジ-tert-ブチル(5.28g)及びジクロロメタン(100mL)の混合物を18時間、室温で撹拌した。混合物を乾燥状態まで蒸発し、残渣をシリカで、石油エーテル40-60及び酢酸エチル(0~100%)で溶離して精製した。適切な画分を合わせ、乾燥状態まで蒸発し、Boc-保護された4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸メチルエステルをクリーム状の固体(2.59g)として生成した。
【0255】
4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸メチル(2.49g)、水酸化リチウム(546mg)、1,4-ジオキサン(40mL)及び水(40mL)の混合物を64時間、室温で撹拌した。次いで、混合物を乾燥状態まで蒸発した。残渣を水中に溶解し、1M HCl水溶液で中和し、酢酸エチル(×2)で抽出した。有機抽出物を合わせ、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、乾燥状態まで蒸発し、所望の生成物を黄色の油状物(2.51g)として生成した。m/z 314(MH)C1520ClNOは313.11を要する。1H NMR (400MHz, CD3OD): δ(ppm) 1.40 (9H, s), 2.42-2.73 (2H, m), 3.24-4.49 (4.4 H, m, CH3OD, CH2,及びCHを含む), 7.17-7.38 (4H, m).
(iv)標題化合物 - 異性体の分離 - 方法1
4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸(2.09g)を60mg/mLまでメタノール中に溶解し、次いで、下記の条件(分取分離条件1)を用いるSFCによって精製した。富化した異性体1(早く流出)及び異性体2(遅く流出)を含有する合わせた画分を合わせ、濃縮し、それぞれを個々に、同じクロマトグラフィー条件下で再精製した。
【0256】
次いで、異性体1及び異性体2のそれぞれの合わせた画分を、回転蒸発器を用いてほぼ乾燥状態まで蒸発し、DCMを含む最終容器に移し、これを、40℃で窒素流下で除去し、その後、真空オーブン内で40℃及び5mbarで16時間、貯蔵した。
【0257】
4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸(異性体1)
白色の固体、883mg、95.6%ee。分析システム1で保持時間2.89分
4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸(異性体2)
白色の固体、876mg、98.6%ee。分析システム1で保持時間3.29分
分取分離条件1:
Berger Multigram II SFC
カラム詳細:Lux A1(Phenomenex、21.2mm×250mm、5μm)
カラム温度:40℃
流速:50mL/分
BPR:125BarG
検出器波長:210nm
注入体積:300μL(18mg)
定組成条件:12:88 EtOH:CO(0.1%v/vNH
分析条件1:
Waters UPC2
カラム詳細:Lux C4(Phenomenex、4.6mm×250mm、5μm)
カラム温度:40℃
流速:4mL/分
検出器波長:210~400nm
注入体積:1.0μL
BPR:125BarG
定組成条件:10:90 EtOH:CO(0.1%v/vNH
(v)標題化合物 - 異性体の分離 -方法2
4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸を、下記の条件(分取分離条件2)を用いるSFCによって精製した。分離後に、画分を、回転蒸発器を介して浴温度40℃で乾燥して、所望の分離された鏡像異性体を得た。より遅く流出した鏡像異性体を同じカラムで、20%Bで溶離して更に精製した。
【0258】
分取分離条件2:
機器:Thar200分取SFC(SFC-10)
カラム:ChiralPak AY、300×50mm内径、10μm
移動相:AはCO及びBはIPA
勾配:B25%
流速:200mL/分
背圧:100バール
カラム温度:38℃
波長:220nm
循環時間:約4.5分
分析条件2:
機器:Waters UPC2分析用SFC(SFC-H)
カラム:ChiralPak AY、150×4.6mm内径、3μm
移動相:AはCO及びBはIPA(0.05%DEA)
勾配:B5~40%
流速:2.5mL/分
背圧:100バール
カラム温度:40℃
波長:220nm
4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸(異性体1)。
保持時間2.796分。下記の異性体(2)との比較によって、(R)-立体化学を指定した。
【0259】
4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸(異性体2)。
保持時間3.264分。下記のとおりのBOC-保護された物質の小分子結晶学によって、(S)-立体化学を指定した。
【0260】
(vi)立体化学の確認
(S)-4-アミノ-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸のトリフルオロ酢酸塩
ジクロロメタン(20ml)中の4-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸異性体2(分析方法2で保持時間3.264分)(1.5g、4.78mmol)の冷却された氷水溶液に、トリフルオロ酢酸(5mL)を添加した。添加の後に、混合物を4時間、この温度で撹拌した。次いで、反応混合物を濃縮した。粗製の混合物を水(10mL)中に溶解し、凍結乾燥して、生成物;(S)-4-アミノ-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸のTFA塩(1.5g、収率95%)を得た。LC-MS:m/z214(M+H)
(S)-4-アミノ-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸
水(10mL)中の(S)-4-アミノ-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸のトリフルオロ酢酸塩(0.5g、1.53mmol)の溶液に、pHが7に達するまで希水酸化アンモニウム水溶液を添加した。得られた溶液を、開放した25mLフラスコで貯蔵し、一日、室温で放置した。結晶化したら、母液をデカンテーションし、固体の結晶をX線回折研究にかけた。
【0261】
X線回折研究によって、化合物が(S)立体化学を有することが示された。
X線回折条件:
Bruker APEX-II CCD回折計を使用した。
【0262】
上記結晶はデータ収集中に、302.71Kで維持された。Olex2(Dolomanov et al.)を使用して、構造をShelXT[2]構造解析プログラム(Sheldrick A71)で、Intrinsic Phasing法を用いて解析し、ShelXL[3]精密化パッケージで、Least Squares minimisation(Sheldrick C71)を用いて精密化した。
【0263】
4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(2-クロロフェニル)ブタン酸
【0264】
【化23】
【0265】
化合物を2-クロロケイ皮酸から、上記ステップ(i)から(iii)に記載のとおりの4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸の方法に従って調製した。化合物を無色の油状物として得た。
m/z 314(MH)、C15OClNOの正確な質量は、313.11。
【0266】
3-ベンジル-4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ブタン酸
【0267】
【化24】
【0268】
3-ベンジル-4-ニトロブタン酸メチル(Tetrahedron Asymmetry,19,2008,945)を、上記ステップ(i)から(iii)に記載のとおりの4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸の方法に従って、標題化合物に変換した。
m/z 294(MH)、C1623NOの正確な質量は、293.16。
【0269】
4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-イソブチルフェニル)ブタン酸
【0270】
【化25】
【0271】
(i)3-(3-ブロモフェニル)-4-ニトロブタン酸エチル
【0272】
【化26】
【0273】
鉱油(394.26mg、9.86mmol)及び1,2-ジメトキシエタン(22.5mL)(DME)中の水素化ナトリウム(60%)の混合物を0℃に冷却した。ホスホノ酢酸トリエチル(10.2mL、51.43mmol)を滴下添加し、混合物を10分間撹拌した。DME(5mL)中の3-ブロモベンズアルデヒド(1.0mL、8.57mmol)の溶液を滴下添加した。反応混合物を室温に加温し、3時間還流した。
【0274】
混合物を乾燥状態まで蒸発し、残渣をヘキサン及び水間で分配した。水層を分離し、追加のヘキサンで抽出した。有機抽出物を合わせ、水で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、乾燥状態まで蒸発した。残渣をシリカで石油エーテル40-60及び酢酸エチル(0~100%)で溶離して精製した。適切な画分を合わせ、乾燥状態まで蒸発して、(E)-3-(3-ブロモフェニル)プロパ-2-エン酸エチルを白色の固体(1.44g、65%)として生成した。これを、4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸の調製においてステップ(i)でニトロ化するための上記のとおりの条件を用いて3-(3-ブロモフェニル)-4-ニトロブタン酸エチルに変換して、生成物を収率60%で得た。
m/z316、318(MH)。C1214BrNOは315.01を要する。
【0275】
(ii)4-アミノ-3-(3-ブロモフェニル)ブタン酸エチル
【0276】
【化27】
【0277】
3-(3-ブロモフェニル)-4-ニトロブタン酸エチル(1.08g)を、4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸のためにステップ(ii)において上記した条件を用いて4-アミノ-3-(3-ブロモフェニル)ブタン酸エチルに変換して、生成物を収率67%で得た。
m/z286及び288(MH)、C1216BrNOの正確な質量は、285.04。
【0278】
(iii)4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-ブロモフェニル)ブタン酸エチル
【0279】
【化28】
【0280】
4-アミノ-3-(3-ブロモフェニル)ブタン酸エチル(655mg)を、4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸のためにステップ(iii)において上記した条件下で4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-ブロモフェニル)ブタン酸エチルに変換して、生成物を収率72%で得た。
m/z386及び388(MH)、C1724BrNOの正確な質量は、385.09。
【0281】
(iv)4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-イソブチルフェニル)ブタン酸エチル
【0282】
【化29】
【0283】
トルエン(9mL)中のRuphos(48.3mg、0.1mmol)、第三リン酸カリウム(330mg、1.55mmol)、3-(3-ブロモフェニル)-4-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)ブタン酸エチル(200mg、0.52mmol)及びイソブチルボロン酸(132mg、1.29mmol)の混合物を排気/窒素フラッシュによって四回脱気し、その後、酢酸パラジウム(II)(5.8mg、0.03mmol)を添加した。混合物を100分間、110℃で撹拌した。反応混合物を冷却し、その後、これをセライトに通して濾過し、溶液で終夜放置した。混合物を乾燥状態まで蒸発し、シリカで石油エーテル40-60及び酢酸エチル(0~100%)で溶離して精製した。適切な画分を合わせ、乾燥状態まで蒸発して、4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-イソブチルフェニル)ブタン酸エチルを無色の油状物(74mg、39%)として生成した。
m/z364(MH)。C2133NOの正確な質量は、363.24。
【0284】
(v)標題化合物
1,4-ジオキサン(3mL)及び水(3mL)中の4-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-(3-イソブチルフェニル)ブタン酸エチル(74mg、0.2mmol)及び水酸化リチウム(15mg、0.6mmol)の混合物を16時間、室温で撹拌した。混合物を乾燥状態まで蒸発し、残渣を酢酸エチル及び水間で分配した。有機相を分離し、廃棄した。水相(aqueous)を1M HCl(水溶液)で酸性化し、酢酸エチル(×2)で抽出した。有機抽出物を合わせ、MgSOで乾燥し、濾過し、乾燥状態まで蒸発して、4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-イソブチルフェニル)ブタン酸を無色の油状物(65mg)として生成した。m/z336(MH)C1929NOの正確な質量は、335.21。
【0285】
4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-クロロベンジル)ブタン酸
【0286】
【化30】
【0287】
2-(3-クロロフェニル)アセトアルデヒドを、上記のとおり4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-イソブチルフェニル)ブタン酸のためにステップ(i)において記載したとおり、3-(3-クロロベンジル)-4-ニトロブタン酸エチルに変換した。ステップ(ii)及び(iii)においてのとおりの還元及び保護、続く、上記のステップ(v)においてのとおりの加水分解によって、標題化合物を無色の油状物として得た。
m/z328(MH)。C1622ClNOの正確な質量は、327.12。
【0288】
4-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-3-(3-イソプロピルフェニル)ブタン酸
【0289】
【化31】
【0290】
4-アミノ-3-(3-イソプロピルフェニル)ブタン酸エチル(1.55g、6.21mmol)(上記のとおり4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-イソブチルフェニル)ブタン酸、ステップ(i)~(ii)の方法を使用して調製)、及び炭酸水素ナトリウム(0.783g、9.32mmol)の混合物を水(10mL)及び1,4-ジオキサン(5mL)中に溶解した。混合物を氷浴で冷却し、クロロギ酸ベンジルの溶液(0.98mL、6.84mmol)で処理した。混合物を1時間、10℃で撹拌し、次いで、室温に加温した。20時間撹拌した後に、混合物を乾燥状態まで蒸発し、残渣をジエチルエーテル及び0.5M HCl水溶液間で分配した。水層を分離し、追加のジエチルエーテルで抽出した。有機抽出物を合わせ、ブラインで洗浄し、無水MgSO上で乾燥し、蒸発した。粗製の生成物をシリカで、石油エーテル40-60及び酢酸エチル(0~100%)で溶離して精製した。生成物含有画分を合わせ、淡黄色の油状物(1.74g、73%)に蒸発した。エチルエステルを、4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-イソブチルフェニル)ブタン酸の調製のためのステップ(iii)で前記したとおり、水酸化リチウムで加水分解し、続いて、シリカで石油エーテル40-60及び酢酸エチル(0~100%)で溶離してクロマトグラフィー処理して、標題化合物を白色の固体(60%)として得た。
m/z356(MH)。C2125NOの正確な質量:355.18。
【0291】
4-([1,1’-ビフェニル]-3-イル)-3-(((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)メチル)ブタン酸
【0292】
【化32】
【0293】
(i)4-アミノ-3-(3-ブロモフェニル)ブタン酸塩酸塩
【0294】
【化33】
【0295】
4-(3-ブロモフェニル)ピロリジン-2-オン(1.0g、4.16mmol)及び6M HCl水溶液(15.0mL、90mmol)の混合物を16時間、100℃で加熱した。混合物を乾燥状態まで蒸発し、水、続いて酢酸エチル、次いでジクロロメタン(DCM)と同時蒸発して、所望の生成物を白色の固体として、推測された定量的収率で生成した。
m/z258及び260(MH) C1012BrNOの正確な質量:257.01.
(ii)3-(3-ブロモフェニル)-4-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)ブタン酸
【0296】
【化34】
【0297】
4-アミノ-3-(3-ブロモフェニル)ブタン酸塩酸塩(1.31g、4.45mmol)、tert-ブトキシカルボニルtert-ブチルカルボナート(Boc-O-Boc、1.41g、6.45mmol)、1,4-ジオキサン(8mL)及び1M NaOH水溶液(8.0mL、8mmol)の混合物を64時間、室温で撹拌した。混合物を乾燥状態まで蒸発した。残渣を水中に溶解し、1M HCl水溶液で中和し、酢酸エチル(×2)で抽出した。有機抽出物を合わせ、MgSOで乾燥し、濾過し、乾燥状態まで蒸発して、所望の生成物(1.60g、86%)を無色の油状物として得た。
m/z357.5及び359.4(MH)。C1520BrNOの正確な質量:357.06。
【0298】
(iii)標題化合物
1,4-ジオキサン(130mL)中の3-(3-ブロモフェニル)-4-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)ブタン酸(2.69g、7.51mmol)、フェニルボロン酸(2.3g、18.8mmol)、酢酸パラジウム(II)(84mg、0.38mmol)、Xphos(716mg、1.5mmol)及び第三リン酸カリウム(4781.9mg、22.53mmol)の混合物を2時間、100℃で窒素雰囲気下で撹拌した。次いで、混合物を室温に冷却し、セライトに通して濾過し、酢酸エチルで洗浄し、乾燥状態まで蒸発した。残渣をシリカで、石油エーテル及び酢酸エチル(0~100%)で溶離して精製した。適切な画分を合わせ、乾燥状態まで蒸発し、所望の生成物1.44gを灰色の固体(収率42%)として生成した。
実測値m/z355(M)。C2125NOの正確な質量:355.18。
【0299】
(iv)キラル分離
4-([1,1’-ビフェニル]-3-イル)-3-(((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)メチル)ブタン酸(1.44g)を30mg/mLまでMeOH中に溶解し、次いで、下記の方法を用いるSFCによって精製した。次いで、異性体1(早く流出)及び異性体2(遅く流出)のそれぞれの合わせた画分を、回転蒸発器を用いてほぼ乾燥状態まで蒸発し、DCMを含む最終容器に移し、これを圧縮空気流下で40℃で除去し、その後、真空炉内で40℃及び5mbarで、恒量まで貯蔵した。
【0300】
4-([1,1’-ビフェニル]-3-イル)-3-(((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)メチル)ブタン酸、異性体1。白色の固体523mg。保持時間:(分析条件3)2.70分。ee99.8%。
【0301】
4-([1,1’-ビフェニル]-3-イル)-3-(((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)メチル)ブタン酸、異性体2。白色の固体537mg。保持時間:(分析条件3)3.46分。ee99.8%。
【0302】
精製条件3:
Berger Multigram II SFC
カラム詳細:Lux A1(Phenomenex、21.2mm×250mm、5μm)
カラム温度:40℃
流速:50mL/分
BPR:100BarG
検出器波長:215nm
注入体積:1,000μL(30mg)
定組成条件:15:85 EtOH:CO(0.2%v/v NH
分析条件3:
Waters UPC2
カラム詳細:Amy-C(YMC Gmbh、4.6mm×250mm、5μm)
カラム温度:40℃
流速:4mL/分
検出器波長:210~400nm
注入体積:1.0μL
BPR:125BarG
定組成条件:15:85 EtOH:CO(0.2%v/v NH
4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-メチルフェニル)ブタン酸
【0303】
【化35】
【0304】
4-(3-メチルフェニル)ピロリジン-2-オンを、4-([1,1’-ビフェニル]-3-イル)-3-(((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)メチル)ブタン酸の調製のためにステップ(i)~(ii)において上記した方法を用いて標題化合物に変換した。標題化合物を無色の油状物として得た。
【0305】
m/z294(MH)。C1623NOの正確な質量は、293.16。
4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3,5-ジクロロフェニル)ブタン酸
【0306】
【化36】
【0307】
3,5-ジクロロベンズアルデヒドを、4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-イソブチルフェニル)ブタン酸の調製のためにステップ(i)~(iii)において上記した方法を用いて標題化合物に変換した。エチルエステルを、(3-イソブチルフェニル)ブタン酸の調製においてステップ(v)のために記載したとおりに加水分解して、標題化合物を無色の油状物として得た。
m/z348.(MH)。C1519ClNOの正確な質量は、347.07。
【0308】
4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-(チオフェン-3-イル)フェニル)ブタン酸
【0309】
【化37】
【0310】
4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-ブロモフェニル)ブタン酸エチル(207mg、0.54mmol)を、(3-イソブチルフェニル)ブタン酸の調製のためにステップ(iv)において上記した方法を用いて、3-チエニルボロン酸と反応させた。生成物を、ステップ(v)において記載したとおりに加水分解して、標題化合物を無色の油状物として得た。
m/z362(MH)。C1923NOSの正確な質量は、361.13。
【0311】
中間体ポリミキシンノナペプチド及び生成物の化合物
中間体1:H-Thr(O-tBu)-Dap(BOC)-シクロ[Dab-Dab(BOC)-DPhe-Leu-Dab(BOC)-Dab(BOC)-Thr]
WO2015/135976において中間体11 - テトラ-(N-Boc)-L-Thr(O-tBu)-L-Dap-ポリミキシンBヘプタペプチドとして以前に記載された。
【0312】
中間体2:H-Thr(O-Bu)-Dap(BOC)-シクロ[Dab-Dab(BOC)-Leu-Leu-Dab(BOC)-Dab(BOC)-Thr]
WO2015/135976において中間体14 - テトラ-(N-Boc)-L-Thr(O-tBu)-L-Dap-ポリミキシンEヘプタペプチドとして以前に記載された。
【0313】
中間体3:H-Thr(O-Bu)-Dap(BOC)-シクロ[Dab-Dab(BOC)-Dleu-L-Abu-Dab(BOC)-Dab(BOC)-Thr(O-tBu)]
【0314】
【化38】
【0315】
(i)CBZ-Thr(O-Bu)-Dap(Boc)-Dab-Dab(Boc)-Dleu-L-Abu-Dab(Boc)-Dab(Boc)-Thr(O-tBu)-OH
直鎖ペプチドCBZ-Thr(O-tBu)-Dap(Boc)-Dab(ivDde)-Dab(Boc)-Dleu-L-Abu-Dab(Boc)-Dab(Boc)-Thr(O-tBu)を樹脂上で、Fmoc化学を用いる固相ペプチド合成によって、上記の一般的方法3の方法を用いて調製した。配列は塩化クロロトリチル(CTC)-樹脂(2.0g)で開始し、Fmoc-Thr(tBu)-OHを0.75mmol/gの負荷量で先に負荷した。樹脂結合ペプチド(3.93g、1.5mmolに対応)を500mL円錐フラスコに入れ、DMF中4%ヒドラジン(100mL)で処理した。混合物を振盪機上に設置し、30分間、穏やかに振盪した。混合物を焼結カラムに注ぎ入れ、次いで、DMF(3×100mL)で洗浄した。圧縮空気を施与して最終の痕跡量のDMFを除去した。次いで、手順をTHF及びDCMで繰り返した。
【0316】
次いで、樹脂を4:1のDCM:ヘキサフルオロイソプロパノール(100mL)で処理して、ペプチドを樹脂から切断した。30分後に、カラムを空にし、この手順を繰り返した。次いで、樹脂をDCM(100mL)で三回洗浄した。合わせた溶離液及び洗浄液を減圧下で蒸発し、終夜、真空中で乾燥した。白色の固体724mg(2.35g、quant.)を得た。
m/z1552、C731261422は1550.92を要する。
【0317】
(ii)CBZ-Thr(O-tBu)-Dap(Boc)-シクロ[Dab-Dab(Boc)-DLeu-L-Abu-Dab(Boc)-Dab(Boc)-Thr(O-tBu)]
粗製のCBZ-Thr(O-tBu)-Dap(Boc)-Dab-Dab(Boc)-DLeu-L-Abu-Dab(Boc)-Dab(Boc)-Thr(O-tBu)-OH(724mg、0.466mmol)をDMF(75mL)中に溶解し、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(361mg、0.49mL、2.8mmol)で処理し、次いで、氷浴内で冷却した。ジフェニルリン酸アジド(256mg、0.2mL、0.93mmol)を滴下添加し、次いで、混合物を2時間、氷浴で冷却しながら撹拌した。氷浴を取り外し、溶液を更に2時間、室温で撹拌した。溶媒を蒸発し、残渣をSiO ISCOカラム(40g)に施与し、DCM中0~10%MeOHでクロマトグラフィー処理した。生成物含有画分を合わせ、蒸発して白色の泡にした。418mg(58%)を得た。
m/z1534、C731241421は1532.91を要する。
【0318】
(iii)標題化合物
CBZ-Thr(O-tBu)-Dap(Boc)-シクロ[Dab-Dab(Boc)-DLeu-L-Abu-Dab(Boc)-Dab(Boc)-Thr(O-tBu)](531mg、0.346mmol)をメタノール(50mL)中に溶解し、ギ酸アンモニウム(545mg、8.6mmol)及び10%Pd/C(173mg)で処理した。終夜室温で撹拌した後に、反応混合物をセライトに通して濾過し、残渣をMeOHで洗浄した。溶媒を蒸発し、残渣を、MeOH10%を含有するEtOAc中に溶解し、水×3で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を蒸発すると白色の固体が残った。痕跡量のギ酸塩を全て除去するために、固体をメタノール(160mL)中に溶解し、30分間、Ambersep900樹脂(12mL)と共に振盪した。混合物を濾過し、乾燥状態まで蒸発して、白色の固体464mg(96%)を得た。
m/z1400、C651181419は1398.87を要する。
【0319】
一般的方法
ポリミキシンノナペプチド誘導体の全合成を下記のとおり実施した。
環化に関与するDab残基のγ-アミノ基のオルトゴナルな保護を伴う直鎖ペプチドを樹脂上で構築し、その際、C末端アミノ酸(典型的にはThr)が固相に接続している。環化に関与するDab(ポリミキシンナンバリングシステムにおける残基4)の部分的脱保護、続く、樹脂からの取り外しの後に、得られた直鎖ペプチドを樹脂から外して(off-resin)環化した。下記のとおりの二つの一般的方法を使用した。
【0320】
一般的方法1:アミン基のCBZ保護を用いての全合成
保護された直鎖ペプチド(残基2~10及びN末端基)の合成を、標準的なFmoc固相ペプチド化学を用いる自動ペプチドシンセサイザーで実施した。具体的には、合成を、Fmoc-Thr(tBu)-PEG-PS樹脂を出発物質として使用して行った。Fmoc-アミノ酸のカップリングと末端アミノ基上でのCBZ保護とを、DMF中の5モル当量(樹脂負荷に対して)のFmocアミノ酸及びHATUを使用して行い、その際、in situでの活性化を伴い、10モル当量のDIPEAを使用した。Fmoc脱保護を、ジメチルホルムアミド中20%ピペリジンを用いて行った。BOCを、環化に関与するDab上のオルトゴナルな保護基として使用した。
【0321】
樹脂結合直鎖ペプチドを2時間、TFA/TIS/HO(96/2/2v/v)で処理して、環化に関与するDab残基を露出させ、樹脂からペプチドを切断した。この物質を3時間、DMF中でPyBop/HOBt/NMM(当初負荷に対して4/4/8モル当量)を用いて環化した。粗製の物質を部分的に蒸発し、アセトニトリル/水に入れ、終夜凍結乾燥した。次いで、CBZ基を、酢酸/MeOH/水(5/4/1v/v)中で10%Pd/Cを用いて除去した。
【0322】
粗製の生成物を精製し、ジアステレオマーを分取HPLCによって分離した(表3)。ジアステレオマーの各対について、具体的な条件を最適化したことに注意されたい。
一般的方法2:アミン基のBoc保護を用いての全合成
保護された直鎖ペプチド(残基2~10及びN末端基)の合成を、標準的なFmoc固相ペプチド化学を用いる自動ペプチドシンセサイザーで実施した。具体的には、合成を、塩化クロロトリチル(CTC)-樹脂を使用して行い、Fmoc-Thr(tBu)-OH(約0.78mmol/gを負荷)を0.05~0.1mmolスケールで予め負荷した。Fmoc-アミノ酸のカップリングを、DMF中の5モル当量(樹脂負荷に対して)のFmocアミノ酸及びHATUを使用して行い、その際、in situでの活性化を伴い、10モル当量のDIPEAを使用した。Fmoc脱保護を、ジメチルホルムアミド中20%ピペリジンを用いて行った。ivDde保護基を、環化に関与するDab残基上のオルトゴナルな保護基として使用した。
【0323】
ivDde基を除去するために、直鎖ペプチドをDMF中3%ヒドラジン(100μmolあたり100mL、二回繰り返す)で処理し、続いて、DMF×3、EtOH×3及びジエチルエーテル×3で洗浄した。次いで、部分的に脱保護された直鎖ペプチドを、DCM中20%HFIPで樹脂を洗浄することによって樹脂から切断した。得られた残渣を50%アセトニトリル/水中に溶解し、終夜、凍結乾燥した。保護された直鎖ペプチドをDMF(20mL/樹脂mmol)中に溶解し、DPPA、(樹脂の負荷に対して3モル当量)及びDIPEA(樹脂の負荷に対して6モル当量)で環化した。この溶液を終夜、室温で撹拌した。BOC基をTFAで除去し、粗製のペプチドを凍結乾燥した。
【0324】
粗製の生成物を精製し、ジアステレオマーを、下記の分取HPLC条件4を用いる分取HPLCによって分離した。ジアステレオマーの各対について、具体的な条件を最適化したことに注意されたい。
【0325】
一般的方法3:ノナペプチドへの酸のカップリング及び分離
ノナペプチドのN末端をアミノ酸にカップリングするための方法を実施例化合物5及び6に関して以下に記載する。記載の条件は、ノナペプチド及びアミノ酸の他の組合せにも適合させることができる。
【0326】
ステップ1
H-Thr(O-Bu)-Dap(BOC)-シクロ[Dab-Dab(BOC)-DPhe-Leu-Dab(BOC)-Dab(BOC)-Thr](中間体1)(0.07mmol)をジクロロメタン(4mL)中に溶解し、4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸(ポリミキシン基質に対して1.5当量)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(3.0当量)、続いて、HATU(2.0当量)で処理した。16時間後に、LCMSによって反応の完了を確認し、反応混合物を乾燥状態まで蒸発した。水(約10mL)を添加し、混合物を摩砕し、次いで、1時間、激しく撹拌した。得られた沈澱物を濾取し、終夜、真空中で乾燥した。
【0327】
ステップ2
ステップ1からのBoc-保護された誘導体をジクロロメタン(3mL)中に溶解し、TFA(1mL)で処理した。反応混合物を、LCMSによって完全な脱保護が確認されるまで室温で撹拌した。溶媒を蒸発し、残渣を、分取HPLC条件4に示されている条件を用いる分取HPLCによってクロマトグラフィー処理して、ジアステレオマーを分離した。早く流出するジアステレオマーを含有する画分を合わせ、低体積まで蒸発し、凍結乾燥して実施例5をTFA塩として得た。遅く流出するジアステレオマーを含有する画分を合わせ、低体積まで蒸発し、凍結乾燥して実施例6をTFA塩として得た。
【0328】
ジアステレオマーの各対について、具体的な条件を最適化したことに注意されたい。
分取HPLC条件4:
カラム:Waters Sunfire C18 OBD 5μm×19mm×150mm
移動相:A:水/アセトニトリル 90/10、v/v、0.15%TFA。
【0329】
B:アセトニトリル/水 90/10、v/v、0.15%TFA
流速:10mL/分
勾配:時間(分) 移動相A%
0 100%
3 100%
8 85%
13.5 85%
15 75%
18 0%
23 100%
25 100%
検出:210nm
分析用HPLC条件4:
カラム:Phenomenex Hyperclone C18 BDS 5μm×4.6mm×150mm
移動相:A:水/アセトニトリル 90/10、v/v、0.15%TFA。
【0330】
B:アセトニトリル/水 90/10、v/v、0.15%TFA
流速:1mL/分
勾配:時間(分) 移動相A%
0 100%
20 40%
21 0%
23 0%
23.5 100
25 100
検出:210、254nm
注入体積:20μL
一般的方法3b:ノナペプチドへの個々の鏡像異性体のカップリング
鏡像異性的に純粋なアミノ酸を、鏡像異性的に混合されたアミノ酸のために一般的方法3aにおいて上記したのと同じ条件を用いてノナペプチド化合物のN末端にカップリングした。
【0331】
化合物の実施例5及び6
一般的方法3aの条件下での4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸(異性体2)(保持時間3.46分、分析方法1又は3.264分、分析方法2)のカップリング、続く、脱保護によって、実施例5を得た。実施例(5)を、4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸(異性体2)から得られた4-アミノ-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸の絶対配置のX線決定に従って、(S)立体化学と指定した。
【0332】
一般的方法3aの条件下での4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸(異性体1、保持時間2.89分、分析方法1又は2.796分、分析方法2)のカップリング、続く、脱保護によって、実施例6を得た。実施例(6)を、4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸(異性体1)から得られた4-アミノ-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸の絶対配置のX線決定に従って、(R)立体化学と指定した。
【0333】
一般的方法4:酢酸塩への変換
AG1-X2樹脂(Bio-Rad Laboratories Ltd)酢酸塩形態200-4-メッシュを、10%酢酸水溶液、続いて、1%酢酸水溶液で洗浄することによって再生し、焼結カートリッジに入れた。水中のTFA塩としての化合物の溶液を、TFA塩1gに対して樹脂30gの負荷を用いてカラムに施与し、カラムを、重力下で水で溶離してドリップした。生成物含有画分を合わせ、白色の固体に凍結乾燥した。
【0334】
最終化合物の分析を、上記条件を用いるHPLCによって実施した(分析用HPLC条件)。
酢酸塩としての実施例5及び6の化合物での例示的な分析用データを以下に示す。
【0335】
実施例5:(早い方の異性体)酢酸塩の1H NMR (400 MHz, D2O): δ(ppm) 0.70 (3 H, d, J 6.1 Hz), 0.77 (3 H, d, J 6.3 Hz), 0.78-0.90 (1H, m), 1.13 (3H, d, J 6.3 Hz), 1.17 (3H, d, J 6.4Hz), 1.36-1.52 (2H, m), 1.75-2.06 (17 H, m, 1.91, s, OAcを含む), 2.10-2.30 (4H, m), 2.72-2.91 (4H, m), 3.02-3.49 (14H, m), 4.12-4.32 (8 H, m), 4.48 (1 H, dd, J 5.6, 9.0 Hz), 4.54-4.60 (1H, m), 4.63-4.68 (1H, m), 7.25-7.41(9H, m). m/z 1145 [MH+], 573[M+2H]2+.
実施例6:(遅い方の異性体)酢酸塩の1H NMR (400 MHz, D2O): δ(ppm) 0.60- 0.67 (6 H, m), 0.69 - 0.84 (4 H, m), 1.16 (3H, d, J 6.4Hz), 1.33-1.50 (2 H, m), 1.76-2.04 (19 H, m, 1.88, s, OAcを含む), 2.06-2.26 (4 H, m), 2.67-2.86 (4 H, m), 3.00-3.46 (14 H, m), 3.98-4.04 (1 H, m) 4.14-4.30 (7H, m), 4.45 (1 H, dd, J 5.6, 9.0 Hz), 4.54 (1 H,見かけ上t, J 8.3 Hz), 4.72 (1 H, dd, J 5.0, 8.9 Hz), 7.20-7.40 (9 H, m). m/z 1145 [MH+], 573[M+2H]2+.
全ての実施例において、早く溶離する異性体での1.13ppmから、遅く溶離する異性体での約0.65ppmへと移動するThr残基の化学シフトと共に、HPLC保持時間(早く、及び遅く溶離する異性体)に基づき、ジアステレオマーを指定した。
【0336】
実施例化合物
表1に、本発明の実施例化合物を列挙する。これらは、以下:
【0337】
【化39】
【0338】
に示す一般構造を有する化合物である。
基Rは、本発明の化合物における-X-R15に対応し、この基は表に、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒になった場合に、それぞれ基-R及び-Rに対応する6及び7位におけるアミノ酸残基(ポリミキシンナンバリングシステムを用いて、それぞれAA-6及びAA-7)と一緒に示されている。
【0339】
これらの実施例化合物において、基-Rは、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒になって、L-Thrであり、-Rは、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒になって、L-Dapであり(従って、-Rは、-CHNHである)、-Rは、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒になって、L-Thrである(従って、-Rは、メチルである)。
【0340】
側鎖-Rにおける絶対立体化学は、既知の絶対立体化学の物質に対応している実施例5及び実施例6との比較によって指定されている。
実施例1~6及び15~33において、この決定は、ジアステレオマーの相対保持時間及びH NMRスペクトルの比較によって成された(例えば、2位におけるThr残基の化学シフトを考慮した)。
【0341】
実施例7~14において、この決定は、ジアステレオマーの相対HPLC保持時間の比較によって成された。
表は、実施例化合物でのHPLC保持時間を示している。分析で使用されたHPLC条件を以下に示す。
カラム:Phenomenex Hyperclone BDS C18、4.6mm×150mm、5μm
流速:1mL/分
溶離液:
A=AcN10%/水90%/TFA0.15%
B=AcN90%/水10%/TFA0.15%
勾配:分 A% B%
0 100 0
20 40 60
21 0 100
23 0 100
23.5 100 0
25 100 0
決定:210、254nm
【0342】
【表5-1】
【0343】
【表5-2】
【0344】
【表5-3】
【0345】
【表5-4】
【0346】
【表5-5】
【0347】
【表5-6】
【0348】
【表5-7】
【0349】
【表5-8】
【0350】
【表5-9】
【0351】
【表5-10】
【0352】
【表5-11】
【0353】
生物学的結果
本発明の化合物を試験し、結果を、当技術分野で以前に報告された化合物を含む比較例と比較した。
【0354】
MICの決定
接種物を、単離されたコロニー(18-24時間のMueller-Hinton寒天プレートから選択)の直接懸濁液を製造することによって、マクファーランド標準の0.5に調節して調製した。MIC試験を、滅菌の96ウェルマイクロタイタープレート中のカチオン調節されたMueller-Hintonブロス中の抗生物質の一連の2倍希釈によって、170μL(抗細菌剤を含有する150μLのブロス、20μLの接種物)の全体積で行った。アッセイを二重で行った。プレートを、振盪せずに18~20時間、35℃で好気的にインキュベートし、MICを、目に見える増殖を防止した薬物の最低濃度と定義した。幾つかの化合物は多数回の試験にかけられ、このような場合、表示のMICは、得られた中央値である。MIC値はμg/mLで示されている。
【0355】
in vitro腎臓細胞毒性アッセイ
次のプロトコルに従って、in vitro腎臓細胞毒性アッセイを行った。
HK-2細胞を、5ng/mLの上皮成長因子(EGF)及び50μg/mLのウシ下垂体抽出物(BPE)を補充された角質細胞-SFM培地中で維持し、アッセイした。細胞を1ウェルあたり7,500細胞で96ウェルプレートに播種し、終夜、付着させた。ポリミキシンB(PMB)及び試験化合物を水中10%DMSO中に溶解して、それぞれ20及び60mg/mLのストック溶液を得た。試験化合物を半対数希釈で3,000又は1,000μg/mLの最高濃度が得られるように希釈して、9ポイントの濃度範囲とビヒクル対照とを得た。PMBも、半対数希釈で1,000μg/mlの最高濃度が得られるように希釈した。水及びDMSOレベルは、それぞれ5%及び0.5%で一定に維持した。試験化合物を細胞と共に24時間、37℃、5%COで、加湿雰囲気下でインキュベートした。CellTiter-BlueをPBS中で希釈し(1:4)、20%(v/v)添加し、37℃で2時間インキュベートし、その後、蛍光生成物を検出した。
【0356】
培地のみのバックグラウンド値を差し引き、その後、データを、GraphPad Prismを使用して分析した。個々の値を各化合物で、ビヒクル対照ウェルに対して正規化した。化合物濃度値をlog値としてプロットして、用量反応曲線をフィットさせることを可能にした。曲線の底をゼロにし、IC50値を決定した。
【0357】
IC50値は、同じ実験におけるPMBでのIC50値に対して表されている。複数の決定が成された場合、中央値が表されている。
4時間目の腎臓中レベル測定
化合物を、遊離塩基17.2mg/kgでマウス(n=2又は3)に皮下投与した。投与から4時間後に、動物を安楽死させ、腎臓を取り出し、脂肪及び結合組織を除去し、秤量し、直ちに急速凍結した。室温で解凍した後に、各動物からの腎臓対を、予め秤量しておいたセリア安定化酸化ジルコニウムビーズを含有する2mL円錐管に入れた。トリフルオロ酢酸、TFA(0.25mL、水中0.15%v/v)を添加し、管をFastPrep-24ホモジナイザー(MP Biomedicals Europe)に装填し、それぞれ6m/秒の速度で30秒のサイクルに三回かけた。ホモジネートのアリコット(200μL)を、計算された体積のTFA溶液(水中0.15%v/v)で希釈して、腎臓0.167グラム/ホモジネートグラムの最終濃度を得た。
【0358】
腎臓ホモジネート(100μL)をメタノール(190μL)及びTFA(110μL、水中10%v/v)と混合し、タンパク質沈殿のために終夜、-20℃で貯蔵した。13,000rpm及び6℃での10分間の遠心分離後に、上清200μlをガラスインサートに移し、LC-MS-MSによって分析した。
【0359】
【表6-1】
【0360】
【表6-2】
【0361】
【表6-3】
【0362】
追加の生物学的データ
腎臓毒性の比較 - 実施例5並びに参照例D77及び38
マウス(n=6)に、ポリミキシンB、硫酸コリスチン、参照例D77、参照例38又は実施例5を遊離塩基17.2mg/kgで一日三回皮下投与した。四日目の初回の投与直後に開始して、マウスを個々の代謝ケージに移し、続く24時間にわたって尿を収集して、バイオマーカーレベル(アルブミン、シスタチンC、KIM-1)を決定した。幾何平均バイオマーカーレベルを以下の表に示す:
【0363】
【表7】
【0364】
PMB値は、四つの実験からの範囲を、コリスチンは、二つの実験からの範囲を示している。
尿におけるアルブミン、シスタチンC又はKIM-1の上昇は、腎臓損傷の徴候である。実施例5は、腎臓毒性の三つ全てのバイオマーカーで最低レベルを示した。
【0365】
参照例D77は、WO2015/135976に記載されている。参照例38は、WO2016/083531に記載されている。
腎臓毒性の比較 - 実施例5、9及び17
マウス(n=6)に、8時間間隔で四回の投与でPMB、実施例5、実施例9又は実施例17を遊離塩基25mg/kgで皮下投与した。四回目の投与後に、動物を個々の代謝ケージに移し、尿を24時間、収集して、尿バイオマーカーを決定した。尿の収集後に、マウスを安楽死させ、組織病理学のために腎臓を採取した。
【0366】
【表8】
【0367】
実施例5又は実施例9群の動物は、組織病理学によると変性又は再生のいずれの徴候も示さなかった。対照的に、PMBで処置された六匹の動物は全て、軽微な尿細管再生を示した。
【0368】
別の実験において、実施例17をPMBと比較した。
【0369】
【表9】
【0370】
組織病理学的徴候も評価した:
【0371】
【表10】
【0372】
カニクイザルにおける実施例5及びPMBの腎臓毒性の比較
雄のカニクイザル(n=3)に一日三回、七日間、実施例5を20mg/kg/用量で1時間かけて静脈内注入によって投与した。別の実験において、雄のサル(n=3)に同じ期間、PMBを4mg/kg/用量で投与した。両方の実験で、対照動物に一日三回、生理食塩水を投与した。
【0373】
七日間の終了時に、血液を採取し、血液尿素窒素及びクレアチニンの血清レベルを腎臓損傷の指標として決定した。実施例5の例では、平均BUN及びクレアチニンレベルが生理食塩水対照動物と比較して50%未満上昇した。しかしながら、PMBを投与された動物では、BUNレベルは対照動物と比較して76%上昇し、クレアチニンレベルは2.6倍高かった。
【0374】
七日間の投与期間の終了時に腎臓を採取し、顕微鏡で検査した。PMBで処置された三匹の動物のうち、二匹が軽度の尿細管変性を、一匹が軽微な尿細管変性を示した。実施例5で処置された動物のうち、一匹は軽度の尿細管変性を示し、二匹は軽微な変性を示した。
【0375】
これらの実験における用量は、実施例5では、PMBよりも5倍多かったが、腎臓毒性の徴候は減少した。投与七日目での一回の投与サイクルからの薬物暴露(AUC0~8hr)は、実施例5では234μg.hr/mL、及びPMBでは117μg.hr/mLであった。
【0376】
E.coli ATCC 25922に感染した好中球減少性マウス大腿モデルにおける化合物の有効性
好中球減少性にした後(シクロフォスファミド150mg/kg d-4、100mg/kg d-1)、CD-1マウス(n=5)に、各大腿において約105cfuのE.coli ATCC25922を接種した。マウスに、0.125、0.5、及び3mg/kgの硫酸PMB又は試験化合物(同等重量の遊離塩基)を感染から1、3.5及び6時間後にIV投与した。感染後9時間目に、マウスを安楽死させ、大腿をコロニーカウントのために準備した。
【0377】
ビヒクル対照に対するコロニーカウントの減少を以下の表に示す。それぞれの場合に、同じ実験においてPMBで観察された減少をカッコ内に示す:
【0378】
【表11】
【0379】
全ての化合物が、PMBと同様に有効であった。
K.Pneumoniae ATCC 43816に感染した好中球減少性マウス大腿モデルにおける化合物の有効性
好中球減少性にした後(シクロフォスファミド150mg/kg d-4、100mg/kg d-1)、CD-1マウス(n=5)に、各大腿において約105cfuのK.Pneumoniae ATCC 43816を接種した。マウスに、適切な用量の硫酸PMB又は試験化合物(同等重量の遊離塩基)を感染から2、6及び10時間後にIV投与した。感染後16時間目に、マウスを安楽死させ、大腿をコロニーカウントのために準備した。
【0380】
ビヒクル対照に対するコロニーカウントの減少を以下の表に示す。それぞれの場合に、同じ実験においてPMBで観察された減少をカッコ内に示す:
【0381】
【表12】
【0382】
両方の化合物が、PMBと同様に有効であった。
A.baumannii NCTC13301に感染した好中球減少性マウス大腿モデルにおける化合物の有効性
好中球減少性にした後(シクロフォスファミド150mg/kg d-4、100mg/kg d-1)、CD-1マウス(n=5)に、各大腿において約105cfuのA.baumannii NCTC13301を接種した。マウスに、0.125、0.5、1及び4mg/kgの硫酸PMB又は試験化合物(同等重量の遊離塩基)を感染から2、6及び10時間後にIV投与した。感染後16時間目に、マウスを安楽死させ、大腿をコロニーカウントのために準備した。
【0383】
ビヒクル対照に対するコロニーカウントの減少を以下の表に示す。それぞれの場合に、同じ実験においてPMBで観察された減少をカッコ内に示す:
【0384】
【表13】
【0385】
両方の化合物が、PMBと同様に有効であった。
A.baumannii NCTC13301に感染した好中球減少性マウス肺モデルにおける化合物の有効性
好中球減少性にした後(シクロフォスファミド200mg/kg d-4、150mg/kg d-1)、CD-1マウス(n=8)に、肺あたり約107cfuのA.baumannii NCTC13301を鼻腔内接種した。マウスに、硫酸PMB(20mg/kg)又は適切な用量の試験化合物(同等重量の遊離塩基)を感染から2、6及び10時間後にSC投与した。感染後16時間目に、マウスを安楽死させ、肺をコロニーカウントのために準備した。
【0386】
ビヒクル対照に対するコロニーカウントの減少を以下の表に示す。それぞれの場合に、同じ実験においてPMBで観察された減少をカッコ内に示す:
【0387】
【表14】
【0388】
PMBは、このモデルにおいて、最大耐量でも有効ではなかった。実施例5は20mg/kgでも、より有効であり、毒性の低下によって、より高いレベルで投与して、より大きな効果を達成することもできた。
【0389】
P.aeruginosa ATCC 27853に感染した好中球減少性マウス肺モデルにおける化合物の有効性
好中球減少性にした後(シクロフォスファミド200mg/kg d-4、150mg/kg d-1)、CD-1マウス(n=8)に、肺あたり104~105cfuのP.aeruginosa ATCC27853を鼻腔内接種した。マウスに、適切な用量の硫酸PMB又は試験化合物(同等重量の遊離塩基)を感染から2、6及び10時間後にSC投与した。感染後16時間目に、マウスを安楽死させ、肺をコロニーカウントのために準備した。
【0390】
ビヒクル対照に対するコロニーカウントの減少を以下の表に示す。それぞれの場合に、同じ実験においてPMBで観察された減少をカッコ内に示す:
【0391】
【表15】
【0392】
両方の化合物が、このモデルにおいてPMBよりも優れた有効性を示した。
リファンピシンの存在下での実施例5のMIC値
【0393】
【表16】
【0394】
MIC値(μg/mL)を、CLSI条件下でのブロス微量希釈によって決定した。
PMB及び実施例5は両方とも、ポリミキシンに対して低い感受性を有する菌株に対しても、リファンピシンとの強力な相乗作用を示している。
【0395】
立体化学研究
本発明の化合物は、N末端部分におけるγ-アミノプロピル基のβ位において立体中心を含有する。驚くべきことに、この位置における立体異性体のうちの1種が通常、より低い細胞傷害性及びより低い腎臓中薬物レベルと関連することが見出された。これは、逆相クロマトグラフィーでより早く溶離する立体異性体である。
【0396】
例えば、実施例5及び6に関するジアステレオ異性体の対において、逆相HPLCカラムからより早く溶離するジアステレオマーは、対応する遅い方の異性体よりも低い腎臓曝露及び低い細胞傷害性を示す。早い方のジアステレオマー(実施例5)は、対応するアミノ酸の小分子X線解析によると(S)-4-アミノ-3-(3-クロロフェニル)ブタン酸から得られる(以下のスキームに図示されているとおり)。
【0397】
【化40】
【0398】
更なる比較を以下の表3に示す。逆相クロマトグラフィーでより早く溶離し、かつ実施例5で示されたものと同様のNMR化学シフトを有するジアステレオマー(N末端基でのエピマー)は、上記のとおり、実施例5と同じ絶対立体化学を有する可能性がある。
【0399】
表3中の化合物のそれぞれに指定される絶対立体化学は表1に示されている。
【0400】
【表17】
【0401】
細胞傷害性は、HK-2細胞系に対してポリミキシンBで記録されたものに対する、測定されたIC50を指す。
薬物レベルは、マウスモデルにおける17.2mg/kgのsc投与後4時間目に腎臓で見出された化合物の量(μg/g)を指す。
【0402】
追加のデータ
実施例24の腎臓毒性を、マウスにおける四回の投与後にPMBと比較した
雄のCD-1マウス群(n=5)に、遊離塩基12.5若しくは25mg/kgのポリミキシンB(PMB)、又は遊離塩基25、50若しくは75mg/kgの実施例24の化合物のいずれかを8時間間隔で四回、皮下投与した。四回目の投与直後に、マウスを代謝ケージに移し、尿を24時間収集して、尿バイオマーカーを決定した。尿の収集後に、マウスを腎臓組織病理学のために、と殺した。平均バイオマーカーレベルを以下の表4に示す。
【0403】
【表18】
【0404】
尿バイオマーカーを尿クレアチニンに対して正規化した。
5種全てのバイオマーカーで、50mg/kgの実施例24での表示は、25mg/kgのPMBよりも少なく、5種のバイオマーカーのうちの2種(Kim-1、NGAL)で、75mg/kg用量での表示は、25mg/kgでのPMBよりも少なかった。
【0405】
組織病理学の結果を以下の表5に示す。
【0406】
【表19】
【0407】
50mg/kg用量の実施例24での腎臓組織病理は、25mg/kg用量でのPMBについてよりも重篤度が低く、腎臓組織病理は、75mg/kg用量の実施例24で、25mg/kgでのPMBの用量と比較して同様であった。
【0408】
非限定的に、本発明は以下の態様を含む。
[態様1]
式(I):
【化1】
[式中、
-X-は、-C(O)-を表し;
-Rは、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、フェニルアラニン、ロイシン、ノルロイシン、バリン又はノルバリン残基であり;
-Rは、1個のヒドロキシル基で所望により置換されているC1~4アルキルであり;
-Rは、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、トレオニン残基であり;
-Rは、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、Dapであり;
-Rは、水素又はメチルであり;
-R15は、基:
【化2】
であり、
-R16は、水素であり;
-R17は、水素であり;
-L-は、共有結合又はメチレンであり;
-Arは、置換フェニルなどの所望により置換されているアリールである]
の化合物並びにその塩、溶媒和物及び保護された形態。
[態様2]
-Rが、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、フェニルアラニン又はロイシン残基である、態様1又は2に記載の化合物。
[態様3]
-Rが、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、ロイシン、アミノブチラート、イソ-ロイシン、トレオニン、バリン又はノル-バリン残基である、態様1又は2に記載の化合物。
[態様4]
-Rが、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、ロイシン又はアミノブチラート残基である、態様3に記載の化合物。
[態様5]
-Rが、カルボニル基及びこれが接続している炭素に対してアルファにある窒素と一緒に、L-Dapである、態様1ないし4のいずれか一項に記載の化合物。
[態様6]
-Rがメチルである、態様1ないし5のいずれか一項に記載の化合物。
[態様7]
-R15が:
【化3】
である、態様1ないし6のいずれか一項に記載の化合物。
[態様8]
-L-が共有結合である、態様1ないし7のいずれか一項に記載の化合物。
[態様9]
-L-がメチレンである、態様8に記載の化合物。
[態様10]
-Arが所望により置換されているフェニルである、態様1ないし9のいずれか一項に記載の化合物。
[態様11]
前記フェニルが1又は2個の基-Rで置換されており、各-Rが独立に、ハロ、アルキル、ハロアルキル及びアリールから選択される、態様10に記載の化合物。
[態様12]
前記フェニルが1又は2個の基-Rで置換されており、各-Rが独立に、クロロ、プロピル、フェニル及びチオフェニルから選択される、態様10に記載の化合物。
[態様13]
式(II):
【化4】
の化合物並びにその塩、溶媒和物及び保護された形態である、態様1に記載の式(I)の化合物。
[態様14]
式(II):
【化5】
の化合物並びにその塩、溶媒和物及び保護された形態である、態様1に記載の式(I)の化合物。
[態様15]
態様1ないし14のいずれか一項に記載の化合物を、所望により1種又は複数の医薬的に受容可能な担体と一緒に含んでなる、医薬組成物。
[態様16]
治療又は予防の方法で使用するための、態様1ないし14のいずれか一項に記載の化合物又は態様15に記載の医薬組成物。
[態様17]
微生物感染を治療する方法において使用するための、態様1ないし14のいずれか一項に記載の化合物又は態様15に記載の医薬組成物。
[態様18]
前記感染が細菌感染である、態様17に記載の化合物又は医薬組成物。
[態様19]
前記細菌感染がグラム陰性菌感染である、態様18に記載の化合物又は医薬組成物。
[態様20]
前記グラム陰性菌感染が、Escherichia spp.、Klebsiella spp.、Enterobacter spp.、Salmonella spp.、Shigella spp.、Citrobacter spp.、Morganella morganii、Yersinia pseudotuberculosis及び他の腸内細菌科、Pseudomonas spp.、Acinetobacter spp.、Moraxella、Helicobacter、Stenotrophomonas、Bdellovibrio、酢酸菌、Legionella並びにアルファプロテオバクテリアから選択される、態様19に記載の化合物又は医薬組成物。
参照文献
本明細書に記載の文献は全て、本明細書中に参考文献としてその全てが援用される。
【0409】
【表20】