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  • 特許-フォトダイオード 図1A
  • 特許-フォトダイオード 図1B
  • 特許-フォトダイオード 図2A
  • 特許-フォトダイオード 図2B
  • 特許-フォトダイオード 図3
  • 特許-フォトダイオード 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】フォトダイオード
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/10 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
H01L31/10 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021033532
(22)【出願日】2021-03-03
(65)【公開番号】P2022134417
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】野本 真司
(72)【発明者】
【氏名】増永 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】桑名 諒
(72)【発明者】
【氏名】鳥谷部 祐
(72)【発明者】
【氏名】河村 哲史
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-080045(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112086524(CN,A)
【文献】特開2006-210494(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0148580(US,A1)
【文献】特開2018-019039(JP,A)
【文献】特開平08-321632(JP,A)
【文献】特開2005-347539(JP,A)
【文献】特開2002-110958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/08-31/119
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一導電型であって不純物濃度が比較的高い半導体層である第一導電型高濃度層と、
第二導電型であって不純物濃度が比較的高い半導体層である第二導電型高濃度層と、
第二導電型であって不純物濃度が比較的低い半導体層であり前記第一導電型高濃度層と前記第二導電型高濃度層とを表面に有する第二導電型低濃度層と、
前記表面を覆う絶縁体層と、
前記絶縁体層を貫き前記第一導電型高濃度層と接続する第一導体と、
前記絶縁体層を貫き前記第二導電型高濃度層と接続する第二導体を備えるフォトダイオードであって、
前記第二導体と同電位であって前記絶縁体層の中に設けられる第三導体をさらに備えることを特徴とするフォトダイオード。
【請求項2】
請求項1に記載のフォトダイオードであって、
前記第三導体は、前記表面と垂直な方向から見たときに、前記第一導体の側に突出する凸部を有する形状であることを特徴とするフォトダイオード。
【請求項3】
請求項2に記載のフォトダイオードであって、
前記第三導体の前記凸部は、前記表面と垂直な方向から見たときに、前記第一導電型高濃度層と重なるように設けられることを特徴とするフォトダイオード。
【請求項4】
請求項2に記載のフォトダイオードであって、
前記第一導体は、前記表面と垂直な方向から見たときに、前記第三導体の前記凸部と噛み合うように前記第三導体の側に突出する凸部を有する形状であることを特徴とするフォトダイオード。
【請求項5】
請求項4に記載のフォトダイオードであって、
前記第一導体は、前記第一導体の前記凸部において前記絶縁体層を貫き前記第一導電型高濃度層と接続することを特徴とするフォトダイオード。
【請求項6】
請求項1に記載のフォトダイオードであって、
前記第三導体は、前記第二導体の一部と同じ層として形成されることを特徴とするフォトダイオード。
【請求項7】
第一導電型であって不純物濃度が比較的高い半導体層である第一導電型高濃度層と、
第二導電型であって不純物濃度が比較的高い半導体層である第二導電型高濃度層と、
第二導電型であって不純物濃度が比較的低い半導体層であり前記第一導電型高濃度層と前記第二導電型高濃度層とを表面に有する第二導電型低濃度層と、
前記表面を覆う絶縁体層と、
前記絶縁体層を貫き前記第一導電型高濃度層と接続する第一導体と、
前記絶縁体層を貫き前記第二導電型高濃度層と接続する第二導体を備えるフォトダイオードであって、
前記第二導体と同電位であって前記絶縁体層の中または上に設けられる第三導体をさらに備え、
前記第二導電型低濃度層と前記絶縁体層とともにゲート電極を備えるゲート絶縁型トランジスタが併設され、
前記第三導体は、前記ゲート電極と同じ層として形成されることを特徴とするフォトダイオード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線耐性に優れたフォトダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
逆バイアスが印加されるフォトダイオードでは、より高い逆バイアス電圧を印加することでpn接合部に形成される空乏層を拡げて検出感度を高くするために、逆方向耐圧の向上が図られる。
【0003】
特許文献1には、p型高濃度半導体領域を内側に有するp型低濃度半導体領域が表面に設けられるn型半導体層と絶縁体層とが積層される半導体装置において、逆方向耐圧を向上させるために、空乏層内の電界集中を緩和する構造が開示される。具体的には、絶縁体層のスルーホールに設けられる第1導体がp型高濃度半導体領域に接続され、絶縁体層の上または中に設けられ、第1導体に接続される第2導体が表面の垂直方向から見たときにp型高濃度半導体領域よりも外側に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5818238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、高放射線場におけるリーク電流の発生に関する配慮がなされていない。入射する放射線によって絶縁体層の中に電子とともに誘起される正孔は、絶縁体層の中に水素ラジカルを発生させる。水素ラジカルは、絶縁体層に形成される電界によって絶縁体層と半導体層との界面に移動して界面欠陥を発生させ、リーク電流を増大させる。
【0006】
そこで本発明は、高放射線場であってもリーク電流を抑制可能なフォトダイオードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、第一導電型であって不純物濃度が比較的高い半導体層である第一導電型高濃度層と、第二導電型であって不純物濃度が比較的高い半導体層である第二導電型高濃度層と、第二導電型であって不純物濃度が比較的低い半導体層であり前記第一導電型高濃度層と前記第二導電型高濃度層とを表面に有する第二導電型低濃度層と、前記表面を覆う絶縁体層と、前記絶縁体層を貫き前記第一導電型高濃度層と接続する第一導体と、前記絶縁体層を貫き前記第二導電型高濃度層と接続する第二導体を備えるフォトダイオードであって、前記第二導体と同電位であって前記絶縁体層の中または上に設けられる第三導体をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高放射線場であってもリーク電流を抑制可能なフォトダイオードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】実施形態1のフォトダイオードの平面図である。
図1B】実施形態1のフォトダイオードの断面図である。
図2A】実施形態2のフォトダイオードの平面図である。
図2B】実施形態2のフォトダイオードの一部が切り出された斜視図である。
図3】実施形態3のフォトダイオードの断面図である。
図4】実施形態4のフォトダイオードの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明のフォトダイオードの実施形態について説明する。なお、実施形態の説明に用いられる全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0011】
(実施形態1)
図1A図1Bを用いて、本発明のフォトダイオードの実施形態1について説明する。なお図1Aは平面図であり、図1B図1AのA-A断面図である。
【0012】
フォトダイオードは可視光や放射線を検出する装置であり、基板1と絶縁体層6の間にエピタキシャル層2と第二導電型低濃度層3、第二導電型高濃度層4、第一導電型高濃度層5が設けられる。第一導電型高濃度層5は第一導電型であって不純物濃度が比較的高い半導体層である。第二導電型高濃度層4は第一導電型と異なる第二導電型であって不純物濃度が比較的高い半導体層である。第二導電型低濃度層3は第二導電型であって不純物濃度が比較的低い半導体層である。すなわち第一導電型がp型であれば第二導電型はn型であり、高濃度層は低濃度層よりも不純物濃度が高い。
【0013】
エピタキシャル層2は基板1の上に形成され、第一導電型高濃度層5と第二導電型高濃度層4を表面に有する第二導電型低濃度層3はエピタキシャル層2の上に形成される。また第二導電型低濃度層3の表面は絶縁体層6で覆われる。なお図1Aでは、位置を明確にするために、第二導電型低濃度層3、第二導電型高濃度層4、第一導電型高濃度層5が点線で示される。
【0014】
第一導電型高濃度層5には、絶縁体層6を貫くスルーホール7を通じて第一導体9が接続され、第二導電型高濃度層4には第二導体8が接続される。第一導体9と第二導体8は導電体であって外部回路が接続され、第二導体8に接続される第二導電型高濃度層4には、第一導体9に接続される第一導電型高濃度層5よりも高い電位が印加される。第二導電型低濃度層3と第一導電型高濃度層5との接合部に形成される空乏層は、外部回路から電位が印加されることよって拡げられ、フォトダイオードの検出感度が高くなる。
【0015】
さらに絶縁体層6の上または中には第三導体10が設けられる。第三導体10は導電体であって、第一導体9と第二導体8の間に設けられ、第二導体8と電気的に接続される。すなわち、第三導体10と第二導体8とは同電位であり、第二導体8に接続される第二導電型高濃度層4と第二導電型低濃度層3も同電位である。
【0016】
実施形態1の構成によれば、同電位である第三導体10と第二導電型低濃度層3に挟まれる絶縁体層6の領域は無電界となる。その結果、絶縁体層6への放射線の入射によって電子-正孔対が誘起され、正孔が水素ラジカルを発生させたとしても、絶縁体層6と半導体層との界面に移動して界面欠陥を生じさせる水素ラジカルを低減できるので、リーク電流を抑制できる。
【0017】
なお絶縁体層6において無電界となる領域をより拡げるために、第三導体10は第一導体9のより近傍に配置されることが望ましい。また界面近傍を無電界となる領域にするために、絶縁体層6の中に第三導体10が設けられる場合、第二導電型低濃度層3のより近傍に第三導体10が配置されることが望ましい。
【0018】
(実施形態2)
図2A図2Bを用いて、本発明のフォトダイオードの実施形態2について説明する。なお図2Bは、平面図である図2Aの中の直線a、b、cによって切り出された部分の斜視図である。
【0019】
実施形態2が実施形態1と異なる点は、平面図における第三導体10の形状である。すなわち、表面と垂直な方向から見たときの第三導体10の形状が、実施形態1では正方形であるのに対し、実施形態2では内側に突出する凸部を有する形状である。第三導体10が凸部を有する形状であることにより、絶縁体層6において無電界となる領域をより拡げられるので、リーク電流をより抑制できる。なお、第三導体10の凸部は、表面と垂直な方向から見たときに第一導電型高濃度層5と重なるように設けられることが望ましい。
【0020】
さらに第三導体10の凸部が、平面図において絶縁体層6を貫くスルーホール7と重ならないようにするため、第三導体10の凸部と対応する凹部が第一導体9の外側に設けられることが望ましい。すなわち第三導体10と第一導体9の凹凸は互いに噛み合うように設けられる。またスルーホール7は第一導体9の凸部に設けられる。
【0021】
実施形態2の構成によれば、同電位である第三導体10と第二導電型低濃度層3に挟まれ、絶縁体層6において無電界となる領域がより拡げられるので、リーク電流をより抑制できる。なおスルーホール7は、図2A図2Bに例示される形状に限定されず、平面図において第三導体10の凸部と重ならなければ任意の形状であっても良い。
【0022】
(実施形態3)
図3を用いて、本発明のフォトダイオードの実施形態3について説明する。実施形態3が実施形態1と異なる点は、第二導体8と第三導体10の構成である。すなわち実施形態1では第二導体8と第三導体10は個別に設けられるのに対し、実施形態3では両者が一体化して構成される。
【0023】
実施形態3の構成によれば、第二導体8と第三導体10が一体化して構成されるので、両者を配線などで接続せずにすみ、フォトダイオードの構造をより簡略化できる。また第二導体8の一部と第三導体10とは同じ層として形成されるので、フォトダイオードの製造プロセスをより簡略化できる。
【0024】
なお第二導体8が多層化される場合は、半導体層により近い層を第三導体10と同じ層にすることが好ましい。このような構成により、第三導体10と第二導電型低濃度層3とに挟まれる絶縁体層6が薄くなるので、電子-正孔対が誘起される確率を低減でき、リーク電流をより抑制できる。
【0025】
(実施形態4)
図4を用いて、本発明のフォトダイオードの実施形態4について説明する。実施形態4では、フォトダイオードから出力される光電流を増幅したり読み出したりするゲート絶縁型トランジスタ13が、フォトダイオードと同じ製造プロセスにより基板1の上に集積化される。すなわちゲート絶縁型トランジスタ13においても、基板1の上にエピタキシャル層2や第二導電型低濃度層3、絶縁体層6等が積層され、絶縁体層6の中にゲート電極11とゲート酸化膜12が設けられる。なおフォトダイオードに併設されるゲート絶縁型トランジスタ13は一つでも複数でも良い。
【0026】
実施形態4では第三導体10が、ゲート絶縁型トランジスタ13のゲート電極11と同じ層として形成される。すなわち第三導体10はゲート電極11とともにゲート酸化膜12の上に積層される。
【0027】
実施形態4の構成によれば、ゲート電極11と第三導体10が同じ層で形成されるので、フォトダイオードの製造プロセスをより簡略化できる。また第三導体10と第二導電型低濃度層3に挟まれる絶縁体は、膜厚が非常に薄いゲート酸化膜12だけになるので、電子-正孔対が誘起される確率を低減でき、リーク電流をより抑制できる。さらに製造精度の高いゲート電極11と同じ層で形成される第三導体10は、第一導体9のより近傍に高精度に形成されるので、無電界となる領域をより拡げることができ、リーク電流をより抑制できる。
【0028】
以上、本発明の複数の実施形態について説明した。本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形したり、各実施形態を適宜組み合わせたりしても良い。さらに、上記実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除しても良い。
【符号の説明】
【0029】
1:基板、2:エピタキシャル層、3:第二導電型低濃度層、4:第二導電型高濃度層、5:第一導電型高濃度層、6:絶縁体層、7:スルーホール、8:第二導体、9:第一導体、10:第三導体、11:ゲート電極、12:ゲート酸化膜、13:ゲート絶縁型トランジスタ
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4