(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】車両用ホイール
(51)【国際特許分類】
B60B 21/02 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
B60B21/02 J
(21)【出願番号】P 2021083564
(22)【出願日】2021-05-18
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】391006430
【氏名又は名称】中央精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115233
【氏名又は名称】樋口 俊一
(72)【発明者】
【氏名】長坂 昌宏
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2012/114470(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0059624(US,A1)
【文献】特開2012-077838(JP,A)
【文献】国際公開第2011/080793(WO,A1)
【文献】特開平09-044167(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0148158(US,A1)
【文献】特開2015-081034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ空気室と連通孔を介して連通する副気室を有する複数のヘルムホルツレゾネータを備える車両用ホイールであって、
前記複数のヘルムホルツレゾネータは、前記タイヤ空気室内の気柱共鳴音の1次の共鳴周波数に対する消音特性を有するように設定された1つ又は複数の第1ヘルムホルツレゾネータと、前記気柱共鳴音の2次以上の次数の共鳴周波数に対する消音特性を有するように設定された1つ又は複数の第2ヘルムホルツレゾネータと、を含
み、
前記気柱共鳴音のa次(a:自然数)の共鳴周波数に対する消音特性を有する前記ヘルムホルツレゾネータがb個(b:2以上の自然数)含まれる場合において、b個の前記ヘルムホルツレゾネータにそれぞれ設けられたb個の前記連通孔のうちの1つを基準連通孔とし、前記基準連通孔以外の(b-1)個の前記連通孔の各々に、2以上且つb以下の(b-1)個の自然数cの各々を一対一に割り当て、nを任意の自然数としたとき、前記基準連通孔以外の(b-1)個の前記連通孔の各々について、前記基準連通孔との間に成す前記基準連通孔からのホイール周方向の一側向きへの角度z(単位:度)が、z=-180(c-1)/ab+180n/aで表される値になっている、
車両用ホイール。
【請求項2】
請求項1
に記載の車両用ホイールにおいて、
前記複数のヘルムホルツレゾネータは、ホイール周方向に沿って並ぶようにホイール周方向の互いに異なる位置に配置され、
前記第2ヘルムホルツレゾネータの前記副気室のホイール周方向長さが前記第1ヘルムホルツレゾネータの前記副気室のホイール周方向長さよりも短く設定され、
前記複数のヘルムホルツレゾネータをホイール周方向に隔てる複数の隔壁が、前記車両用ホイールの回転軸心を通る直径相当の線分に対して線対称となるように、ホイール周方向に沿って並ぶように配置され、
前記タイヤ空気室に空気を供給するバルブを装着するためのバルブ穴が、ホイール周方向における前記線分上の位置に配置される、車両用ホイール。
【請求項3】
請求項
2に記載の車両用ホイールにおいて、
前記複数の第2ヘルムホルツレゾネータのうち、最も高い次数の共鳴周波数と等しい共鳴周波数を有するように設定された1つ又は複数の前記第2ヘルムホルツレゾネータが、ホイール周方向における前記回転軸心を挟んで前記バルブ穴と対向する側の位置に配置される、車両用ホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両走行時に発生するロードノイズを低減するため、タイヤ空気室と連通孔を介して連通する副気室を有するヘルムホルツレゾネータを備える車両用ホイールが広く知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際特許出願公開第2015/137370号
【発明の概要】
【0004】
特許文献1に記載の車両用ホイールでは、タイヤ空気室内の気柱共鳴音の1次の共鳴周波数或いはそれに近い共鳴周波数に対する消音特性を有するように設定されたヘルムホルツレゾネータが設けられている。これにより、車両の走行中において、タイヤ空気室内で生じた1次の共鳴周波数の気柱共鳴音が消音されて、車両走行時に発生するロードノイズが低減される。
【0005】
しかしながら、タイヤ空気室内の気柱共鳴音は、実際には、1次の共鳴周波数の共鳴音のみならず、2次以上の次数の共鳴周波数の共鳴音をも含んでいる。特許文献1に記載の車両用ホイールでは、車両の走行中において、タイヤ空気室内で生じた1次の共鳴周波数の気柱共鳴音が消音される一方で、タイヤ空気室内で生じた2次以上の次数の共鳴周波数の気柱共鳴音は消音され得ない。このため、ヘルムホルツレゾネータによるタイヤ空気室内の気柱共鳴音の消音作用が必ずしも十分であるとはいえなかった。ヘルムホルツレゾネータによるタイヤ空気室内の気柱共鳴音の消音作用をより一層向上させることが要求されているところである。
【0006】
本発明は上記問題に対処するためになされたものであり、その目的は、タイヤ空気室内の気柱共鳴音に対する消音作用をより一層向上させるヘルムホルツレゾネータを有する車両用ホイールを提供することである。
【0007】
本発明に係る車両用ホイールは、タイヤ空気室と連通孔を介して連通する副気室を有する複数のヘルムホルツレゾネータを備える。
【0008】
本発明に係る車両用ホイールの特徴は、前記複数のヘルムホルツレゾネータは、前記タイヤ空気室内の気柱共鳴音の1次の共鳴周波数に対する消音特性を有するように設定された1つ又は複数の第1ヘルムホルツレゾネータと、前記気柱共鳴音の2次以上の次数の共鳴周波数に対する消音特性を有するように設定された1つ又は複数の第2ヘルムホルツレゾネータと、を含む、ことにある。
【0009】
ここにおいて、複数のヘルムホルツレゾネータは、ホイール周方向に沿って並ぶように(ホイール周方向に互いにオーバーラップしないように)ホイール周方向の互いに異なる位置に配置されることが好適であるが、ホイール軸方向に沿って並び且つホイール周方向に互いにオーバーラップするように配置されていてもよい。
【0010】
これによれば、1つ又は複数の第1ヘルムホルツレゾネータにより、タイヤ空気室内で生じた1次の共鳴周波数の気柱共鳴音が消音されることに加え、1つ又は複数の第2ヘルムホルツレゾネータにより、タイヤ空気室内で生じた2次以上の次数の共鳴周波数の気柱共鳴音も消音され得る。このため、特許文献1に記載の車両用ホイールと比べて、少なくとも、2次以上の次数の共鳴周波数の気柱共鳴音が消音される分だけ、ヘルムホルツレゾネータによるタイヤ空気室内の気柱共鳴音の消音作用が大きくなる。
【0011】
上記本発明に係る車両用ホイールでは、前記気柱共鳴音のa次(a:自然数)の共鳴周波数に対する消音特性を有する前記ヘルムホルツレゾネータがb個(b:2以上の自然数)含まれる場合において、b個の前記ヘルムホルツレゾネータにそれぞれ設けられたb個の前記連通孔のうちの1つを基準連通孔とし、前記基準連通孔以外の(b-1)個の前記連通孔の各々に、2以上且つb以下の(b-1)個の自然数cの各々を一対一に割り当て、nを任意の自然数としたとき、前記基準連通孔以外の(b-1)個の前記連通孔の各々について、前記基準連通孔との間に成す前記基準連通孔からのホイール周方向の一側向きへの角度z(単位:度)が、z=-180(c-1)/ab+180n/aで表される値になっている、ことが好適である。
【0012】
発明者による検討によれば、a次の共鳴周波数に対する消音特性を有するb個のヘルムホルツレゾネータにそれぞれ設けられたb個の連通孔におけるホイール周方向の配置が、上記で特定される配置となっている場合に、ヘルムホルツレゾネータによるa次の共鳴周波数の気柱共鳴音の消音効果のばらつきを極力小さくできる(詳細は後述する)。
【0013】
上記本発明に係る車両用ホイールでは、前記複数のヘルムホルツレゾネータは、ホイール周方向に沿って並ぶようにホイール周方向の互いに異なる位置に配置され、前記第2ヘルムホルツレゾネータの前記副気室のホイール周方向長さが前記第1ヘルムホルツレゾネータの前記副気室のホイール周方向長さよりも短く設定され、前記複数のヘルムホルツレゾネータをホイール周方向に隔てる複数の隔壁が、前記車両用ホイールの回転軸心を通る直径相当の線分に対して線対称となるように、ホイール周方向に沿って並ぶように配置され、前記タイヤ空気室に空気を供給するバルブを装着するためのバルブ穴が、ホイール周方向における前記線分上の位置に配置されることが好適である。
【0014】
これによれば、質量を有する複数の隔壁が、直径相当の線分に対して線対称となるように配置され、且つ、バルブ穴に装着される質量を有するバルブが、ホイール周方向における直径相当の線分上の位置に配置される。従って、ホイール周方向における直径相当の線分の一側の領域と、ホイール周方向における直径相当の線分の他側の領域との重量バランスを均一とすることができる。また、第2ヘルムホルツレゾネータの副気室のホイール周方向長さが、第1ヘルムホルツレゾネータの副気室のホイール周方向長さより短く設定されているため、例えば、第1及び第2ヘルムホルツレゾネータの副気室のホイール周方向長さが同一で第2ヘルムホルツレゾネータの副気室の容積を小さくさせた態様と比べ、車両用ホイールの軽量化を図ることもできる。
【0015】
この場合、前記複数の第2ヘルムホルツレゾネータのうち、最も高い次数の共鳴周波数と等しい共鳴周波数を有するように設定された1つ又は複数の前記第2ヘルムホルツレゾネータが、ホイール周方向における前記回転軸心を挟んで前記バルブ穴と対向する側の位置に配置されることが更に好適である。
【0016】
タイヤ空気室内で生ずる気柱共鳴音の共鳴周波数の次数が高いほど、その共鳴音に対する消音特性を有するヘルムホルツレゾネータの周方向長さが短くなり、そのヘルムホルツレゾネータをホイール周方向に画成する2つの隔壁の周方向の間隔が狭くなる。従って、上記構成のように、最も高い次数の共鳴周波数に対する消音特性を有する1つ又は複数の第2ヘルムホルツレゾネータが、回転軸心を挟んでバルブ穴と対向する側の位置に配置される場合、ホイール周方向におけるバルブ穴と対向する側の領域には、ホイール周方向におけるバルブ穴側の領域と比べて、質量を有する隔壁が多く配置される。これにより、この車両用ホイールでは、ホイール周方向におけるバルブ穴と対向する側の領域が、ホイール周方向におけるバルブ穴側の領域より重くなる傾向がある。この点、上記構成よれば、バルブがバルブ穴に配置された状態(即ち、車両用ホイールの使用状態)において、質量を有するバルブがホイール周方向におけるバルブ穴側(=相対的に軽い側)に配置されることで、ホイール周方向におけるバルブ穴と対向する側の領域と、ホイール周方向におけるバルブ穴側の領域との重量バランスが均一に近づく。
【0017】
上記本発明に係る車両用ホイールでは、前記車両用ホイールのホイールリムの内部に形成されて、ホイール周方向に沿って並ぶようにホイール周方向の異なる位置に配置された複数の空洞部と、前記車両用ホイールのホイールリムに形成されて、ホイール周方向に隣接する前記空洞部同士を互いに隔てる複数の隔壁と、前記車両用ホイールのホイールリムに形成されて、前記複数の空洞部の各々と前記タイヤ空気室とを連通する複数の貫通孔と、を備え、前記複数の空洞部の各々が前記複数の副気室の各々として機能し、前記複数の貫通孔の各々が前記複数の連通孔の各々として機能し、前記複数の空洞部の各々とその空洞部に設けられた前記貫通孔とによって、前記複数のヘルムホルツレゾネータが構成されることが好適である。
【0018】
これによれば、例えば、樹脂製の複数のヘルムホルツレゾネータ(副気室部材)をホイールに別途設けることなく、上記本発明に係る車両用ホイールを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用ホイールを模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、変形例に係る車両用ホイールを模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、他の変形例に係る車両用ホイールを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る車両用ホイール10について
図1を参照しながら説明する。車両用ホイール10は、アルミニウム合金製であることが好適であるが、スチール製又は樹脂製であってもよい。車両用ホイール10を構成するホイールディスクとホイールリムとは、一体で構成されていても、別体で構成されていてもよい。
【0021】
図1に示すように、車両用ホイール10では、ホイールリム11の内部にて、複数(具体的には、6つ)の空洞部12が、ホイール周方向に沿って並ぶように(ホイール周方向に互いにオーバーラップしないように)ホイール周方向の互いに異なる位置に形成されている。6つの空洞部12は、複数(具体的には、6つ)の隔壁13によって周方向に互いに隔てられており、互いに独立した空間となっている。複数の空洞部12の各々には、タイヤ空気室Rと連通する貫通孔14が形成されている。
【0022】
複数の空洞部12、複数の隔壁13、及び、複数の貫通孔14は、ホイールリム11に一体に形成されている。このような構造は、例えば、国際特許出願公開第2012/114470号に記載の製造方法によって実現可能である。なお、複数の隔壁13は、ホイールリム11とは別部材(例えば、樹脂部材やゴム部材)で形成されてもよい。
【0023】
複数の空洞部12の各々とその空洞部12に設けられた貫通孔14とによって、複数(具体的には、6つ)のヘルムホルツレゾネータHが構成されている。即ち、空洞部12は、ヘルムホルツレゾネータHの副気室12として機能し、貫通孔14は、ヘルムホルツレゾネータHの連通孔14として機能する。このように、車両用ホイール10では、6つのヘルムホルツレゾネータHが、ホイールリム11に一体に形成されている。
【0024】
以下、説明の便宜上、
図1に示すように、6つの隔壁13の各々を、隔壁13a,13b,13c,13d,13e,13fと区別して呼び、6つのヘルムホルツレゾネータHの各々を、ヘルムホルツレゾネータHa,Hb,Hc,Hd,He,Hfと区別して呼ぶ。
【0025】
ヘルムホルツレゾネータHaは、ホイール周方向に隣接する隔壁13a,13bによって画成され、ヘルムホルツレゾネータHbは、ホイール周方向に隣接する隔壁13b,13cによって画成され、ヘルムホルツレゾネータHcは、ホイール周方向に隣接する隔壁13c,13dによって画成され、ヘルムホルツレゾネータHdは、ホイール周方向に隣接する隔壁13d,13eによって画成され、ヘルムホルツレゾネータHfは、ホイール周方向に隣接する隔壁13f,13aによって画成されている。
【0026】
車両用ホイール10では、2つのヘルムホルツレゾネータHc,Hfの各々は、タイヤ空気室R内で生じた1次の共鳴周波数の気柱共鳴音を消音すべく、当該1次の共鳴周波数に対する消音特性を有するように設定されている。2つのヘルムホルツレゾネータHa,Hbの各々は、タイヤ空気室R内で生じた2次の共鳴周波数の気柱共鳴音を消音すべく、当該2次の共鳴周波数に対する消音特性を有するように設定されている。2つのヘルムホルツレゾネータHd,Heの各々は、タイヤ空気室R内で生じた3次の共鳴周波数の気柱共鳴音を消音すべく、当該3次の共鳴周波数に対する消音特性を有するように設定されている。なお、タイヤ空気室R内の気柱共鳴音の1次、2次及び3次の共鳴周波数は、タイヤ空気室Rのホイール周方向の長さ等によって定まる。
【0027】
2次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHa,Hbは周方向に隣接して配置され、3次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHd,Heも周方向に隣接して配置されている一方で、1次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHc,Hfは周方向に隣接して配置されていない(2つのヘルムホルツレゾネータHc,Hfの間に、3次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHd,Heが介在している)。
【0028】
ヘルムホルツレゾネータHが有する消音特性は、副気室12の容積、連通孔14の開口径、及び連通孔14の長さ等によって定まる。連通孔14の開口径、及び連通孔14の長さが同等である場合、タイヤ空気室R内で生じる気柱共鳴音の共鳴周波数が低くなるほど、その共鳴周波数に対する消音特性を有するヘルムホルツレゾネータHの副気室12の容積が大きくなる。
【0029】
このため、
図1から理解できるように、1次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHc,Hfの副気室12のホイール周方向長さが、2次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHa,Hbの副気室12のホイール周方向長さより長く、2次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHa,Hbの副気室12のホイール周方向長さが、3次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHd,Heの副気室12のホイール周方向長さより長くなっている。
【0030】
車両用ホイール10では、2つのヘルムホルツレゾネータHc,Hfにより、タイヤ空気室R内で生じた1次の共鳴周波数の気柱共鳴音が消音され、2つのヘルムホルツレゾネータHa,Hbにより、タイヤ空気室R内で生じた2次の共鳴周波数の気柱共鳴音が消音され、2つのヘルムホルツレゾネータHd,Heにより、タイヤ空気室R内で生じた3次の共鳴周波数の気柱共鳴音が消音される。これにより、タイヤ空気室内で生じた1次の共鳴周波数の気柱共鳴音のみが消音される特許文献1に記載の車両用ホイールと比べて、少なくとも、2次及び3次の共鳴周波数の気柱共鳴音が消音される分だけ、ヘルムホルツレゾネータHa~Hfによるタイヤ空気室R内の気柱共鳴音の消音作用が大きくなる。
【0031】
更に、車両用ホイール10では、複数の隔壁13a~13fが、車両用ホイール10の回転軸心Oを通る直径相当の線分Lに対して線対称となるように、ホイール周方向に沿って並ぶように配置され、且つ、タイヤ空気室Rに空気を供給するバルブ(図示省略)を装着するためのバルブ穴15が、ホイール周方向における線分L上の位置に配置されている。
【0032】
これにより、質量を有する複数の隔壁13a~13fが、線分Lに対して線対称となるように配置され、且つ、バルブ穴15に装着される質量を有するバルブが、ホイール周方向における線分L上の位置に配置されることになる。この結果、ホイール周方向における線分Lの一側の領域(
図1にて、線分Lより上側の領域)と、ホイール周方向における線分Lの他側の領域(
図1にて、線分Lより下側の領域)との重量バランスを均一とすることができる。
【0033】
更に、車両用ホイール10では、最も高い次数である3次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHd,Heが、ホイール周方向における回転軸心Oを挟んでバルブ穴15と対向する側(
図1にて、回転軸心Oより右側)の位置に配置されている。
【0034】
タイヤ空気室内で生ずる気柱共鳴音の共鳴周波数の次数が高いほど、その気柱共鳴音の共鳴周波数に対する消音特性を有するヘルムホルツレゾネータHの周方向長さが短くなり、そのヘルムホルツレゾネータHをホイール周方向に画成する2つの隔壁13の周方向の間隔が狭くなる。従って、上記のように、最も高い次数である3次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHd,Heが、回転軸心Oを挟んでバルブ穴15と対向する側の位置に配置される場合、ホイール周方向におけるバルブ穴15と対向する側の領域(
図1にて、回転軸心Oより右側の領域)には、ホイール周方向におけるバルブ穴15側の領域(
図1にて、回転軸心Oより左側の領域)と比べて、質量を有する隔壁13が多く配置される。これにより、車両用ホイール10では、ホイール周方向におけるバルブ穴15と対向する側の領域が、ホイール周方向におけるバルブ穴15側の領域より重くなる傾向がある。この点、上記構成よれば、バルブがバルブ穴に配置された状態(即ち、車両用ホイールの使用状態)において、質量を有するバルブがホイール周方向におけるバルブ穴側(=相対的に軽い側)に配置されることで、ホイール周方向におけるバルブ穴15と対向する側の領域と、ホイール周方向におけるバルブ穴15側の領域との重量バランスが均一に近づく。
【0035】
更に、車両用ホイール10では、
図1に示すように、1次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHc,Hfの連通孔14同士のホイール周方向の間隔が90度に設定され、2次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHa,Hbの連通孔14同士のホイール周方向の間隔が45度に設定され、3次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHd,Heの連通孔14同士のホイール周方向の間隔が30度に設定されている。以下、この構成による作用について説明する。
【0036】
一般に、車両用ホイールのタイヤ空気室内で生じる気柱共鳴音の波形は、タイヤ空気室内にてホイール周方向に移動しない定常波となり、ホイール周方向において腹の位置と節の位置とを交互に有する。従って、ヘルムホルツレゾネータを備える車両用ホイールでは、車両用ホイールの回転に伴い、ヘルムホルツレゾネータの連通孔が、気柱共鳴音の腹の位置と節の位置とを交互に通過することなる。このことに起因して、ヘルムホルツレゾネータによる消音効果が高くなる時間と低くなる時間とが交互に現れ、この結果、ヘルムホルツレゾネータの消音効果にばらつきが発生し得る。このような消音効果のばらつきを抑制するため、ヘルムホルツレゾネータをホイール周方向に複数配置すると共に、複数のヘルムホルツレゾネータの連通孔におけるホイール周方向の配置を調整する手法が知られている。
【0037】
ここで、複数のヘルムホルツレゾネータの連通孔のホイール周方向の配置に関し、発明者は、以下のことを見出した。即ち、気柱共鳴音のa次(a:自然数)の共鳴周波数に対する消音特性を有するヘルムホルツレゾネータがb個(b:2以上の自然数)含まれる場合において、b個のヘルムホルツレゾネータにそれぞれ設けられたb個の連通孔のうちの1つを基準連通孔とし、基準連通孔以外の(b-1)個の連通孔の各々に、2以上且つb以下の(b-1)個の自然数cの各々を一対一に割り当て、nを任意の自然数としたとき、基準連通孔以外の(b-1)個の連通孔の各々について、基準連通孔との間に成す基準連通孔からのホイール周方向の一側向きへの角度z(単位:度)が、以下の(1)式で表される値になっている場合に、ヘルムホルツレゾネータによるa次の共鳴周波数の気柱共鳴音の消音効果のばらつきを極力小さくできる。
【0038】
z=-180(c-1)/ab+180n/a・・・(1)
【0039】
ここで、1次(a=1)の共鳴周波数に対する消音特性を有するヘルムホルツレゾネータに関し、上記(1)式において、a=1,b=2,c=2,n=1とおくと、z=90度となる。従って、
図1に示す車両用ホイール10において、1次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHc,Hfの連通孔14に関し、ヘルムホルツレゾネータHcの連通孔14を基準連通孔としたとき、ヘルムホルツレゾネータHfの連通孔14について、基準連通孔との間に成す基準連通孔からのホイール周方向の反時計回りの向きへの角度z(=90度)は、上記(1)式にて表される値である。従って、車両用ホイール10では、2つのヘルムホルツレゾネータHc,Hfによる1次の共鳴周波数の気柱共鳴音の消音効果のばらつきを極力小さくできる。
【0040】
同様に、2次(a=2)の共鳴周波数に対する消音特性を有するヘルムホルツレゾネータに関し、上記(1)式において、a=2,b=2,c=2,n=1とおくと、z=45度となる。従って、
図1に示す車両用ホイール10において、2次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHa,Hbの連通孔14に関し、ヘルムホルツレゾネータHaの連通孔14を基準連通孔としたとき、ヘルムホルツレゾネータHbの連通孔14について、基準連通孔との間に成す基準連通孔からのホイール周方向の反時計回りの向きへの角度z(=45度)は、上記(1)式にて表される値である。従って、車両用ホイール10では、2つのヘルムホルツレゾネータHa,Hbによる2次の共鳴周波数の気柱共鳴音の消音効果のばらつきを極力小さくできる。
【0041】
同様に、3次(a=3)の共鳴周波数に対する消音特性を有するヘルムホルツレゾネータに関し、上記(1)式において、a=3,b=2,c=2,n=1とおくと、z=30度となる。従って、
図1に示す車両用ホイール10において、3次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHd,Heの連通孔14に関し、ヘルムホルツレゾネータHdの連通孔14を基準連通孔としたとき、ヘルムホルツレゾネータHeの連通孔14について、基準連通孔との間に成す基準連通孔からのホイール周方向の反時計回りの向きへの角度z(=30度)は、上記(1)式にて表される値である。従って、車両用ホイール10では、2つのヘルムホルツレゾネータHd,Heによる3次の共鳴周波数の気柱共鳴音の消音効果のばらつきを極力小さくできる。
【0042】
以上、車両用ホイール10では、1次の共鳴周波数の気柱共鳴音の消音効果のばらつきに加えて、2次及び3次の共鳴周波数の気柱共鳴音の消音効果のばらつきをも極力小さくできる。
【0043】
(作用・効果)
以上、本発明の実施形態に係る車両ホイール10によれば、2つのヘルムホルツレゾネータHc,Hfにより、タイヤ空気室R内で生じた1次の共鳴周波数の気柱共鳴音が消音されることに加え、2つのヘルムホルツレゾネータHa,Hbにより、タイヤ空気室R内で生じた2次の共鳴周波数の気柱共鳴音が消音され、且つ、2つのヘルムホルツレゾネータHd,Heにより、タイヤ空気室R内で生じた3次の共鳴周波数の気柱共鳴音が消音され得る。このため、特許文献1に記載の車両用ホイールと比べて、少なくとも、2次及び3次の共鳴周波数の気柱共鳴音が消音される分だけ、ヘルムホルツレゾネータHa~Hfによるタイヤ空気室R内の気柱共鳴音の消音作用が大きくなる。
【0044】
本発明は、上記の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0045】
図1に示す上記実施形態に係る車両用ホイール10では、2次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHa,Hbが周方向に隣接して配置され、3次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHd,Heも周方向に隣接して配置され、一方、1次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHc,Hfが周方向に隣接して配置されていない(2つのヘルムホルツレゾネータHc,Hfの間に、3次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHd,Heが介在している)。これに対し、
図2に示す変形例に係る車両用ホイール10Aが採用されてもよい。
図2において、
図1に示す各構成と同じ又は等価な構成については、
図1に示す符号と同じ符号を付すことで、それらの説明に代える。
【0046】
図2に示す車両用ホイール10Aでは、車両用ホイール10とは異なり、1次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHa,Hbが周方向に隣接して配置され、3次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHd,Heも周方向に隣接して配置され、一方、2次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHc,Hfが周方向に隣接して配置されていない(2つのヘルムホルツレゾネータHc,Hfの間に、3次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHd,Heが介在している)。
【0047】
図2に示す車両用ホイール10Aでは、車両用ホイール10と同様、複数の隔壁13a~13fが、車両用ホイール10の回転軸心Oを通る直径相当の線分Lに対して線対称となるように、ホイール周方向に沿って並ぶように配置され、且つ、タイヤ空気室Rに空気を供給するバルブ(図示省略)を装着するためのバルブ穴15が、ホイール周方向における線分L上の位置に配置されている。従って、車両用ホイール10Aでは、車両用ホイール10と同様、ホイール周方向における線分Lの一側の領域(
図2にて、線分Lより上側の領域)と、ホイール周方向における線分Lの他側の領域(
図2にて、線分Lより下側の領域)との重量バランスを均一とすることができる。
【0048】
図2に示す車両用ホイール10Aでは、車両用ホイール10と同様、最も高い次数である3次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHd,Heが、ホイール周方向における回転軸心Oを挟んでバルブ穴15と対向する側(
図2にて、回転軸心Oより右側)の位置に配置されている。従って、車両用ホイール10Aでは、車両用ホイール10と同様、バルブがバルブ穴に配置された状態(即ち、車両用ホイールの使用状態)において、質量を有するバルブがホイール周方向におけるバルブ穴側(=相対的に軽い側)に配置されることで、ホイール周方向におけるバルブ穴15と対向する側の領域と、ホイール周方向におけるバルブ穴15側の領域との重量バランスが均一に近づく。
【0049】
図2に示す車両用ホイール10Aでは、1次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHa,Hbの連通孔14同士のホイール周方向の間隔が90度に設定され、2次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHc,Hfの連通孔14同士のホイール周方向の間隔が135度に設定され、3次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHd,Heの連通孔14同士のホイール周方向の間隔が30度に設定されている。
【0050】
ここで、1次(a=1)の共鳴周波数に対する消音特性を有するヘルムホルツレゾネータに関し、上記(1)式において、a=1,b=2,c=2,n=1とおくと、z=90度となる。従って、
図2に示す車両用ホイール10Aにおいて、1次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHa,Hbの連通孔14に関し、ヘルムホルツレゾネータHaの連通孔14を基準連通孔としたとき、ヘルムホルツレゾネータHbの連通孔14について、基準連通孔との間に成す基準連通孔からのホイール周方向の反時計回りの向きへの角度z(=90度)は、上記(1)式にて表される値である。従って、車両用ホイール10Aでは、2つのヘルムホルツレゾネータHa,Hbによる1次の共鳴周波数の気柱共鳴音の消音効果のばらつきを極力小さくできる。
【0051】
同様に、2次(a=2)の共鳴周波数に対する消音特性を有するヘルムホルツレゾネータに関し、上記(1)式において、a=2,b=2,c=2,n=2とおくと、z=135度となる。従って、
図2に示す車両用ホイール10Aにおいて、2次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHc,Hfの連通孔14に関し、ヘルムホルツレゾネータHcの連通孔14を基準連通孔としたとき、ヘルムホルツレゾネータHfの連通孔14について、基準連通孔との間に成す基準連通孔からのホイール周方向の反時計回りの向きへの角度z(=135度)は、上記(1)式にて表される値である。従って、車両用ホイール10Aでは、2つのヘルムホルツレゾネータHc,Hfによる2次の共鳴周波数の気柱共鳴音の消音効果のばらつきを極力小さくできる。
【0052】
同様に、3次(a=3)の共鳴周波数に対する消音特性を有するヘルムホルツレゾネータに関し、上記(1)式において、a=3,b=2,c=2,n=1とおくと、z=30度となる。従って、
図2に示す車両用ホイール10Aにおいて、3次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHd,Heの連通孔14に関し、ヘルムホルツレゾネータHdの連通孔14を基準連通孔としたとき、ヘルムホルツレゾネータHeの連通孔14について、基準連通孔との間に成す基準連通孔からのホイール周方向の反時計回りの向きへの角度z(=30度)は、上記(1)式にて表される値である。従って、車両用ホイール10Aでは、2つのヘルムホルツレゾネータHd,Heによる3次の共鳴周波数の気柱共鳴音の消音効果のばらつきを極力小さくできる。
【0053】
以上、車両用ホイール10Aでも、車両用ホイール10と同様、1次の共鳴周波数の気柱共鳴音の消音効果のばらつきに加えて、2次及び3次の共鳴周波数の気柱共鳴音の消音効果のばらつきをも極力小さくできる。
【0054】
更に、
図3に示す変形例に係る車両用ホイール10Bが採用されてもよい。
図3において、
図1に示す各構成と同じ又は等価な構成については、
図1に示す符号と同じ符号を付すことで、それらの説明に代える。
【0055】
図3に示す車両用ホイール10Bでは、車両用ホイール10とは異なり、1次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHa,Hbが周方向に隣接して配置され、2次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHe,Hfも周方向に隣接して配置され、3次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHc,Hdも周方向に隣接して配置されている。
【0056】
図3に示す車両用ホイール10Bでは、1次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHa,Hbの連通孔14同士のホイール周方向の間隔が90度に設定され、2次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHe,Hfの連通孔14同士のホイール周方向の間隔が45度に設定され、3次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHc,Hdの連通孔14同士のホイール周方向の間隔が30度に設定されている。
【0057】
ここで、1次(a=1)の共鳴周波数に対する消音特性を有するヘルムホルツレゾネータに関し、上記(1)式において、a=1,b=2,c=2,n=1とおくと、z=90度となる。従って、
図3に示す車両用ホイール10Bにおいて、1次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHa,Hbの連通孔14に関し、ヘルムホルツレゾネータHaの連通孔14を基準連通孔としたとき、ヘルムホルツレゾネータHbの連通孔14について、基準連通孔との間に成す基準連通孔からのホイール周方向の反時計回りの向きへの角度z(=90度)は、上記(1)式にて表される値である。従って、車両用ホイール10Bでは、2つのヘルムホルツレゾネータHa,Hbによる1次の共鳴周波数の気柱共鳴音の消音効果のばらつきを極力小さくできる。
【0058】
同様に、2次(a=2)の共鳴周波数に対する消音特性を有するヘルムホルツレゾネータに関し、上記(1)式において、a=2,b=2,c=2,n=1とおくと、z=45度となる。従って、
図3に示す車両用ホイール10Bにおいて、2次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHe,Hfの連通孔14に関し、ヘルムホルツレゾネータHeの連通孔14を基準連通孔としたとき、ヘルムホルツレゾネータHfの連通孔14について、基準連通孔との間に成す基準連通孔からのホイール周方向の反時計回りの向きへの角度z(=45度)は、上記(1)式にて表される値である。従って、車両用ホイール10Bでは、2つのヘルムホルツレゾネータHe,Hfによる2次の共鳴周波数の気柱共鳴音の消音効果のばらつきを極力小さくできる。
【0059】
同様に、3次(a=3)の共鳴周波数に対する消音特性を有するヘルムホルツレゾネータに関し、上記(1)式において、a=3,b=2,c=2,n=1とおくと、z=30度となる。従って、
図3に示す車両用ホイール10Bにおいて、3次の共鳴周波数に対する消音特性を有する2つのヘルムホルツレゾネータHc,Hdの連通孔14に関し、ヘルムホルツレゾネータHcの連通孔14を基準連通孔としたとき、ヘルムホルツレゾネータHdの連通孔14について、基準連通孔との間に成す基準連通孔からのホイール周方向の反時計回りの向きへの角度z(=30度)は、上記(1)式にて表される値である。従って、車両用ホイール10Bでは、2つのヘルムホルツレゾネータHc,Hdによる3次の共鳴周波数の気柱共鳴音の消音効果のばらつきを極力小さくできる。
【0060】
以上、車両用ホイール10Bでも、車両用ホイール10と同様、1次の共鳴周波数の気柱共鳴音の消音効果のばらつきに加えて、2次及び3次の共鳴周波数の気柱共鳴音の消音効果のばらつきをも極力小さくできる。
【0061】
図1に示す実施形態、及び、
図2及び
図3に示す変形例では、タイヤ空気室R内の気柱共鳴音の1次の共鳴周波数に対する消音特性を有するように設定されたヘルムホルツレゾネータHとして、2つのヘルムホルツレゾネータHが設けられている。これに対し、タイヤ空気室R内の気柱共鳴音の1次の共鳴周波数に対する消音特性を有するように設定された、3つ以上又は単一のヘルムホルツレゾネータHが設けられてもよい。
【0062】
図1に示す実施形態、及び、
図2及び
図3に示す変形例では、タイヤ空気室R内の気柱共鳴音の2次の共鳴周波数に対する消音特性を有するように設定されたヘルムホルツレゾネータHとして、2つのヘルムホルツレゾネータHが設けられている。これに対し、タイヤ空気室R内の気柱共鳴音の2次の共鳴周波数に対する消音特性を有するように設定された、3つ以上又は単一のヘルムホルツレゾネータHが設けられてもよい。更には、このように設定されたヘルムホルツレゾネータHが設けられなくてもよい。
【0063】
図1に示す実施形態、及び、
図2及び
図3に示す変形例では、タイヤ空気室R内の気柱共鳴音の3次の共鳴周波数に対する消音特性有するように設定されたヘルムホルツレゾネータHとして、2つのヘルムホルツレゾネータHが設けられている。これに対し、タイヤ空気室R内の気柱共鳴音の3次の共鳴周波数に対する消音特性を有するように設定された、3つ以上又は単一のヘルムホルツレゾネータHが設けられてもよい。更には、このように設定されたヘルムホルツレゾネータHが設けられなくてもよい。
【0064】
図1に示す実施形態、及び、
図2及び
図3に示す変形例では、複数のヘルムホルツレゾネータHa~Hfが、ホイールリム11に一体に形成されている。これに対し、例えば、樹脂製の複数のヘルムホルツレゾネータ(副気室部材)がホイールリム11に固定配置されることで、発明に係る車両用ホイールを実現してもよい。
【0065】
この場合、樹脂製の複数のヘルムホルツレゾネータは、ホイール周方向に沿って並ぶように(ホイール周方向に互いにオーバーラップしないように)ホイール周方向の互いに異なる位置に配置されてもよいし、ホイール軸方向に沿って並び且つホイール周方向に互いにオーバーラップするように配置されてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10・・・車両用ホイール、11・・・ホイールリム、12・・・空洞部・副気室、13(13a~13f)・・・隔壁、14・・・貫通孔・連通孔、15・・・バルブ、H(Ha~Hf)・・・ヘルムホルツレゾネータ(第1ヘルムホルツレゾネータ、第2ヘルムホルツレゾネータ)、R・・・タイヤ空気室