(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】杭頭免震構造
(51)【国際特許分類】
E02D 27/34 20060101AFI20240515BHJP
E02D 27/12 20060101ALI20240515BHJP
E02D 5/34 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
E02D27/34 B
E02D27/12 Z
E02D5/34 A
(21)【出願番号】P 2021087301
(22)【出願日】2021-05-25
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大野 瞳
(72)【発明者】
【氏名】有山 伸之
(72)【発明者】
【氏名】伊坂 隆則
(72)【発明者】
【氏名】柴田 宜伸
(72)【発明者】
【氏名】市川 大真
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-035674(JP,A)
【文献】特開2010-101159(JP,A)
【文献】特開2018-084035(JP,A)
【文献】特開2009-221769(JP,A)
【文献】特開2011-256695(JP,A)
【文献】特開2017-057600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/34
E02D 27/12
E02D 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎杭の杭頭部に免震装置が設置される杭頭免震構造であって、
既製コンクリート造の前記基礎杭と、
前記基礎杭の
前記杭頭部を覆い、前記免震装置が設置される基礎鉄筋コンクリート部と、
前記基礎鉄筋コンクリート部に埋設される杭頭補強材と、を備え、
前記杭頭補強材は、各々がU字形状に形成され、前記基礎杭の横断面中央に設けられる中空部に対して、放射状に設けられる複数の縦補強筋と、前記縦補強筋に結束される円環状をなす横補強筋と、を有し、
複数の前記縦補強筋の各々の一方材端は、前記基礎杭の前記中空部に充填されたコンクリート体に埋設され、他方材端が前記基礎鉄筋コンクリート部に埋設され
、
前記コンクリート体と、前記基礎鉄筋コンクリート部とは、分けて段階的に打設されて、前記基礎鉄筋コンクリート部は、前記コンクリート体の上面に接するように設けられていることを特徴とする杭頭免震構造。
【請求項2】
複数の前記縦補強筋の各々は、前記基礎杭の前記中空部と、前記杭頭部の上方の部分で、上下方向に延びて設けられた第一延材部と、前記基礎杭よりも径方向外側に配置され、上下方向に延びて設けられた第二延材部と、前記第一延材部と前記第二延材部の上端部同士を連結する連結部と、を備え、
前記第一延材部は、前記コンクリート体と前記基礎鉄筋コンクリート部を跨るように設けられて、前記コンクリート体と前記基礎鉄筋コンクリート部を連結していることを特徴とする請求項1に記載の杭頭免震構造。
【請求項3】
前記基礎杭は、
最外郭に鋼管が設けられた外殻鋼管付きコンクリート杭
であり、
前記鋼管の径方向外側には、鉛直方向に延在するパイルアンカーが接合され、
前記基礎鉄筋コンクリート部の上端部には、前記免震装置を固定する袋ナットが埋設され、
前記パイルアンカーは、前記縦補強筋と、上下方向にオーバーラップするように設けられ、
前記パイルアンカーと前記袋ナットは対応して位置づけられていることを特徴とする請求項1または2に記載の杭頭免震構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎杭の杭頭部に免震装置が設置される杭頭免震構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、基礎杭の杭頭と、杭頭の外周側を包囲する外筒体との間に充填されたコンクリートからなるコンクリート台座上に、ベースプレートを介して免震装置が取り付けられ、杭頭の外周面に接合されて周方向へ連続又は断続して延びる支圧リングがコンクリート台座に埋設された構成が開示されている。さらに、この構成において、アンカー筋が円周方向等配状に設けられている。このような構成では、基礎杭の杭頭と外筒体との間のコンクリートに、支圧リング、およびアンカー筋を埋設することで、基礎杭の杭頭部のせん断強度を高め、建物の躯体の強度を強固なものとする。
また、特許文献2には、杭頭部の周囲を取り囲む外鋼管と、杭頭部に挿通すると共に外鋼管の下端に固着する水平ダイアフラムとからなる拡頭リングの上部にナットを固定し、拡頭リング内に充填コンクリートを充填して拡頭リングと杭頭部とを一体化させ、免震装置の下部フランジに挿通させたボルトを拡頭リングのナットに螺合させることで、免震装置を杭頭部に剛接合させる構成が開示されている。
また、特許文献3には、免震装置と鋼管杭とを連結する短柱と、短柱に接続されることで、複数の杭の杭頭部を相互に連結する基礎梁と、を備え、鋼管杭の杭頭部が短柱内部のコンクリート部に埋め込んで保持され、かつ、鋼管杭の柱頭部に、短柱内部のコンクリート部に埋め込まれ、円環状に鋼管杭の鋼管を囲むように取り付けられたずれ止め板が設けられ、短柱内部のコンクリート部は、鋼棒により上下方向に締め付けられた構成が開示されている。
【0003】
一般に、基礎杭の杭頭部には、上下方向に作用する引張力や、水平方向に作用するせん断力に抵抗するために、強度を高めることが望まれる。
特許文献1~3に開示されたような構成において、引張力やせん断に抵抗するために強度を高めようとすると、コンクリート台座等のコンクリート部を大型化してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-84035号公報
【文献】特開2009-221769号公報
【文献】特開2011-256695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、強固な躯体をコンパクトに実現可能な杭頭免震構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の杭頭免震構造は、基礎杭の杭頭部に免震装置が設置される杭頭免震構造であって、既製コンクリート造の前記基礎杭と、前記基礎杭の杭頭部を覆い、前記免震装置が設置される基礎鉄筋コンクリート部と、前記基礎鉄筋コンクリート部に埋設される杭頭補強材と、を備え、前記杭頭補強材は、各々がU字形状に形成され、前記基礎杭の横断面中央に設けられる中空部に対して、放射状に設けられる複数の縦補強筋と、前記縦補強筋に結束される円環状をなす横補強筋と、を有し、複数の前記縦補強筋の各々の一方材端は、前記基礎杭の前記中空部に充填されたコンクリート体に埋設され、他方材端が前記基礎鉄筋コンクリート部に埋設されていることを特徴とする。
このような構成によれば、基礎杭の杭頭部に杭頭補強材を設け、かつこれを基礎鉄筋コンクリート部に埋設させることで、杭頭部が杭頭補強材、及び基礎鉄筋コンクリート部で拘束されるために、杭頭部のせん断強度を増大させることができる。特に、杭頭補強材は、U字形状の縦補強筋と、縦補強筋に結束される円環状の横補強筋とを備えているため、杭頭部を効率良く補強することができる。
さらに、縦補強筋の一方材端が基礎杭の中空部に充填されたコンクリート体に埋設されているため、例えば、縦補強筋の一方材端を埋設させるようにコンクリート体を充填打設した後に、縦補強筋の他方材端を含む杭頭補強材を埋設するように基礎鉄筋コンクリート部を形成して、杭頭免震構造を構築することが可能となる。すなわち、このように杭頭免震構造を構築すれば、縦補強筋の一方材端を埋設させるようにコンクリート体を充填打設した後には、杭頭補強材がコンクリート体によって基礎杭に固定されるため、基礎鉄筋コンクリート部を形成するに際し、何らかの支持材を用いて、杭頭補強材を自立させて配置する必要はない。このように支持材が不要となるため、杭頭免震構造をコンパクトにすることができる。
また、仮に上記のように、基礎杭の中空部のコンクリート体と、基礎杭の杭頭部を覆う基礎鉄筋コンクリート部とを分けて段階的に打設したとしても、縦補強筋の一方材端がコンクリート体に、他方材端が基礎鉄筋コンクリート部に、それぞれ埋設されて、コンクリート体と基礎鉄筋コンクリート部が縦補強筋によって連結されているため、杭頭免震構造を強固なものとすることができる。
このようにして、強固な躯体をコンパクトに実現可能な杭頭免震構造を提供することができる。
【0007】
本発明の一態様においては、本発明の杭頭免震構造は、前記基礎鉄筋コンクリート部を外方から覆う外側鋼管を更に備えている。
このような構成によれば、杭頭部を覆う基礎鉄筋コンクリート部を外側鋼管で外方から覆い、杭頭部が2重鋼管からなる外殻鋼管付きコンクリート杭が形成される。よって、杭頭部を覆う基礎鉄筋コンクリート部は、杭頭補強筋、及び外側鋼管で一様に拘束されるために、せん断強度をさらに高めることができる。したがって、杭頭部周りに大型のコンクリート部を設けて杭頭免震構造を形成される必要はなく、基礎躯体の縮小化が可能な、杭頭免震構造を提供することができる。
また、杭頭部が2重鋼管からなる外殻鋼管付きコンクリート杭とすることで、杭頭部の曲げ強度、及びせん断強度が高められるために、基礎杭同士を基礎梁等で連結させて、基礎杭のせん断抵抗力を高める必要はなく、基礎梁なしの独立フーチング形式の杭頭免震構造であってもせん断抵抗可能であり、基礎躯体を縮小できる。
【0008】
本発明の一態様においては、前記基礎杭は、鉄筋コンクリート杭、プレストレストコンクリート杭、高強度プレストレストコンクリート杭、高強度プレストレスト鉄筋コンクリート杭、及び外殻鋼管付きコンクリート杭のうち、いずれかである。
このような構成によれば、鉄筋コンクリート杭、プレストレストコンクリート杭、高強度プレストレストコンクリート杭、高強度プレストレスト鉄筋コンクリート杭、及び外殻鋼管付きコンクリート杭のいずれかである基礎杭の杭頭部のせん断強度を高め、強固な躯体をコンパクトに実現可能な杭頭免震構造を提供することができる。
また、基礎杭に既製コンクリート杭を採用することで、建設現場で場所打ち杭を築造するための建設機械を配置する必要はなく、施工効率を高めて短工期化が可能である。また、比較的狭隘な建設敷地であっても、本発明の杭頭免震構造を実現可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、強固な躯体をコンパクトに実現可能な杭頭免震構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る杭頭免震構造の構成を示す断面図である。
【
図3】本発明の第二実施形態に係る杭頭免震構造の構成を示す断面図である。
【
図5】第一実施形態に係る杭頭免震構造の検討例において、杭頭部に作用する杭頭設計応力を示す図である。
【
図6】基礎杭の中空部の中心からの応力の広がり角度を示す図である。
【
図7】検討例での検討結果に基づき、杭を構成する外側鋼管、パイルアンカー、縦補強筋、横補強筋の例を示す図である。
【
図8】第二実施形態に係る杭頭免震構造の検討例において、杭頭部に作用する杭頭設計応力を示す図である。
【
図9】検討例での検討結果に基づき、杭を構成する基礎鉄筋コンクリート部、パイルアンカー、縦補強筋、横補強筋の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、基礎杭の杭頭部を覆うように杭頭補強筋、及び基礎鉄筋コンクリート部を設け、その基礎鉄筋コンクリート部の上面に免震装置が設置される杭頭免震構造である。具体的には、杭頭免震構造では、既製コンクリート杭の中空部に対して、放射状に設けられる複数の縦補強筋と、縦補強筋に結束される円環状をなす横補強筋とを備えた杭頭補強筋を配置し、その杭頭補強筋を基礎杭の杭頭部を覆う基礎鉄筋コンクリート部に埋設させた。また、縦補強筋は、一方材端を既製コンクリート杭の中空部に充填されたコンクリート体に埋設され、他方材端を基礎鉄筋コンクリート部に埋設されている。
第一実施形態は、基礎鉄筋コンクリート部に基礎梁が接続されない杭頭免震構造であり、基礎鉄筋コンクリート部の外周部に外側鋼管を設けている。
第二実施形態は、基礎鉄筋コンクリート部に基礎梁を接続させた、基礎梁付きの基礎鉄筋コンクリート部であり、その基礎梁付きの基礎鉄筋コンクリート部の上面に免震装置が設置される杭頭免震構造である。
以下、添付図面を参照して、本発明による杭頭免震構造を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態における杭頭免震構造を
図1に示す。
図1に示されるように、建物1は、地盤G中に構築された基礎部2Aと、基礎部2A上に設けられた上部構造部3と、免震装置4と、を備えている。基礎部2Aは、複数の基礎杭21を備えている。本実施形態において、上部構造部3の躯体は、複数の基礎杭21のそれぞれに免震装置4を介して支持された複数の柱5と、互いに隣り合う柱5同士の間に架設された梁6と、を有している。免震装置4は、基礎杭21と柱5との間に設けられている。
【0012】
図2は、
図1のI-I矢視断面図である。
図1、
図2に示されるように、杭頭免震構造20Aのそれぞれは、上記のような基礎杭21と免震装置4に加え、外側鋼管22と、基礎鉄筋コンクリート部23Aと、杭頭補強材30と、を備えている。
基礎杭21は、既製コンクリート造の、いわゆる既製杭であり、例えば、鉄筋コンクリート杭(プレキャストコンクリート杭)、プレストレストコンクリート杭、高強度プレストレストコンクリート杭、高強度プレストレスト鉄筋コンクリート杭、及び外殻鋼管付きコンクリート杭のうち、いずれかである。本実施形態において、基礎杭21は、最外郭に鋼管21mが設けられた外殻鋼管付きコンクリート杭である。基礎杭21は、工場で予め所定形状に成形されている。基礎杭21は、その横断面中央に中空部21hを有したコンクリート体である杭本体21cを備えている。鋼管21mは、杭本体21cの外周面を覆うように設けられている。中空部21hは、杭本体21cの上部において上下方向に連続して延び、基礎杭21の杭頭部21tで上方に向かって開口している。基礎杭21の中空部21hには、コンクリートが打設充填されることで形成されたコンクリート体24が設けられている。
【0013】
外側鋼管22は、基礎杭21の杭頭部21tの径方向外側に設けられている。
図1に示すように、外側鋼管22は、基礎杭21よりも上下方向の長さが小さい。地盤Gは、基礎杭21の周囲で、一定の深さで掘削されており、その根切底の上に礫26が設けられている。外側鋼管22は、礫26の上に設けられたレベルコンクリート25上に設けられており、これによって、外側鋼管22が設けられる高さが調整されている。外側鋼管22と、後に説明する免震装置4の下部ベースプレート41とは、直接接合されていない。外側鋼管22は、基礎杭21よりも上方まで延びている。外側鋼管22の内径は、杭頭部21tの外径よりも大きい。
外側鋼管22の径方向外側には、土間コンクリート28が敷設されている。
図1、
図2に示すように、外側鋼管22の外周面には、土間コンクリート28に埋設される複数のダボ筋29が接合されている。複数のダボ筋29は、基礎杭21の中空部21hを、より詳細には基礎杭21及び中空部21hの中心軸Cを中心とした円周方向に間隔をあけて配置されている。複数のダボ筋29は、外側鋼管22の外周面から径方向外側に放射状に延び、土間コンクリート28に埋設されている。
【0014】
基礎鉄筋コンクリート部23Aは、外側鋼管22の内側に現場で打設充填されたコンクリートからなる。基礎鉄筋コンクリート部23Aは、基礎杭21の杭頭部21tと外側鋼管22との間に設けられ、基礎杭21の杭頭部21tを径方向外側から覆っている。基礎鉄筋コンクリート部23Aは、基礎杭21の杭頭部21tよりも径方向外側に拡径したフーチングを形成する。基礎鉄筋コンクリート部23Aは、外側鋼管22によって外方から覆われている。基礎鉄筋コンクリート部23Aは、基礎杭21のコンクリート体24の上面に接するように、杭頭部21tより上方にも設けられている。基礎鉄筋コンクリート部23Aの上端面には、免震装置4が設けられている。基礎杭21の杭頭部21tは、基礎鉄筋コンクリート部23A内に埋設されている。
【0015】
杭頭補強材30は、複数の縦補強筋31と、横補強筋32と、を有している。
複数の縦補強筋31は、基礎杭21の中空部21hを、より詳細には基礎杭21及び中空部21hの中心軸Cを中心とした円周方向に間隔をあけて、平面視したときに放射状に配置されている。複数の縦補強筋31は、複数の袋ナット44に対し、円周方向で互いに干渉しない位置に配置されている。複数の縦補強筋31の各々は、全体としてU字形状で、第一延在部31aと、第二延在部31bと、連結部31cと、を一体に有している。第一延在部31aは、基礎杭21の中空部21hと、杭頭部21tの上方の部分で、上下方向に延びている。第二延在部31bは、第一延在部31aに対して基礎杭21の径方向外側に間隔をあけて配置されている。第二延在部31bは、基礎杭21よりも径方向外側に配置され、上下方向に延びている。連結部31cは、第一延在部31aと第二延在部31bの上端部同士を連結している。このように、縦補強筋31はU字形状に形成されて、このU字を上下方向に逆にしたように姿勢づけられている。
各縦補強筋31の第一延在部31aの下端である一方材端31sは、基礎杭21の中空部21hに充填されたコンクリート体24に埋設されている。第一延在部31aの上部は、基礎杭21よりも上方で、基礎鉄筋コンクリート部23Aに埋設されている。これにより、第一延在部31aは、コンクリート体24と基礎鉄筋コンクリート部23Aを跨るように設けられて、これらを連結している。
連結部31cは、基礎杭21よりも上方で、基礎鉄筋コンクリート部23Aに埋設されている。
各縦補強筋31の第二延在部31bは、全体が、基礎鉄筋コンクリート部23Aに埋設されており、下端となる他方材端31tも、基礎鉄筋コンクリート部23Aに埋設されている。
【0016】
横補強筋32は、内周横補強筋32Aと、外周横補強筋32Bと、を有している。
内周横補強筋32Aは、いわゆるフープ筋であり、上方から見て円環状で、上下方向に間隔をあけて複数設けられている。各内周横補強筋32Aは、平面視したときに中空部21hの内径よりも小さな径の円形となるように形成されており、複数の縦補強筋31の第一延在部31aに結束されている。複数の内周横補強筋32Aのうちの一部は、基礎杭21の中空部21h内でコンクリート体24に埋設されており、残りは基礎杭21の杭頭部21tよりも上方で、基礎鉄筋コンクリート部23Aに埋設されている。
外周横補強筋32Bは、いわゆるフープ筋であり、上方から見て円環状で、上下方向に間隔をあけて複数設けられている。各外周横補強筋32Bは、平面視したときに基礎杭21の外径よりも大きな径の円形となるように形成されており、複数の縦補強筋31の第二延在部31bに結束されている。複数の外周横補強筋32Bは、基礎杭21と外側鋼管22の間において、基礎鉄筋コンクリート部23Aに埋設されている。
【0017】
また、基礎杭21の鋼管21mの径方向外側には、鉛直方向に延在する複数のパイルアンカー35が設けられている。複数のパイルアンカー35は、中心軸Cを中心とした円周方向に間隔をあけて配置されている。複数のパイルアンカー35は、複数の縦補強筋31と円周方向で干渉しない位置に配置されている。特に本実施形態においては、複数のパイルアンカー35の各々は、後に説明する、基礎鉄筋コンクリート部23Aの上端部に設けられた袋ナット44と対応付けられている。
図2に示されるように平面視したときに、パイルアンカー35と対応する袋ナット44を通る直線を延伸させると基礎杭21の中心を通るように、パイルアンカー35と袋ナット44が位置づけられている。
各パイルアンカー35は、接続金物37を介して基礎杭21の鋼管21mに接合されている。接続金物37は、ナット部材(図示なし)を備えている。各パイルアンカー35は、ネジ鉄筋であり、その下端部が接続金物37のナット部材にねじ込まれることで、各パイルアンカー35は基礎杭21に接合されている。各パイルアンカー35は、上下方向に延び、その上端部にはプレートおよびナットからなる定着具38が設けられている。本実施形態においては、定着具38は基礎杭21の上端よりも上方の高さに位置づけられている。このようなパイルアンカー35、及び接続金物37は、基礎鉄筋コンクリート部23A内に埋設されている。パイルアンカー35は、杭頭補強材30の縦補強筋31の第二延在部31bと、上下方向(鉛直方向)において所定長オーバーラップするように設けられている。
【0018】
免震装置4は、下部ベースプレート41と、上部ベースプレート42と、積層ゴム部43と、を備えている。下部ベースプレート41は、水平面に沿った板状で、基礎鉄筋コンクリート部23Aの上端面上に設けられている。基礎鉄筋コンクリート部23Aの上端部には、袋ナット44が埋設されている。下部ベースプレート41は、周方向に間隔をあけた複数個所で、それぞれ取付ボルト(図示なし)を下部ベースプレート41に貫通させて袋ナット44に締結することで、基礎鉄筋コンクリート部23Aの上端部に固定されている。上部ベースプレート42は、水平面に沿った板状で、柱5の下端面に沿って設けられている。柱5の下端部には、袋ナット45が埋設されている。上部ベースプレート42は、周方向に間隔をあけた複数個所で、それぞれ、取付ボルト(図示なし)を上部ベースプレート42に貫通させて袋ナット45に締結することで、柱5の下端部に固定されている。積層ゴム部43は、複数のゴム層43aと複数の鋼板43bとを上下に交互に積層することで構成されている。
【0019】
上記のような杭頭免震構造20Aにおいて、基礎杭21に曲げモーメントが作用して引張力Tが生じると、この引張力Tは、基礎杭21に接合されたパイルアンカー35に伝達される。この、パイルアンカー35に伝達された引張力は、杭頭補強材30の縦補強筋31、袋ナット44を介して、免震装置4に伝達される。
また、柱5から免震装置4へと鉛直方向の圧縮軸力が作用すると、これは、免震装置4の下部ベースプレート41から、基礎杭21の杭頭部21tと下部ベースプレート41との間の基礎鉄筋コンクリート部23Aを介して、基礎杭21に伝達される。また、圧縮軸力は、下部ベースプレート41から、基礎杭21の径方向外側の、基礎杭21と外側鋼管22の間の基礎鉄筋コンクリート部23Aと、及びレベルコンクリート25とを介しても、基礎杭21に伝達される。
【0020】
(杭頭免震構造の構築方法)
上記のような杭頭免震構造20Aは、次のようにして構築することができる。
まず、既製コンクリート造の基礎杭21を地盤に打ち込む。
次に、各々がU字形状に形成された複数の縦補強筋31と、縦補強筋31に結束される円環状をなす横補強筋32と、を有する杭頭補強材30を、複数の縦補強筋31の各々の一方材端31sが基礎杭21の横断面中央に設けられる中空部21hに位置するように、かつ複数の縦補強筋31が基礎杭21の中空部21hを中心とした円周方向に間隔をあけて、平面視したときに放射状となるように設ける。
そのうえで、基礎杭21の中空部21hにコンクリートを充填してコンクリート体24を形成して、複数の縦補強筋31の各々の一方材端31sをコンクリート体24に埋設させる。
そして、基礎杭21の杭頭部21tを覆い、かつ複数の縦補強筋31の各々の他方材端31tを埋設するように基礎鉄筋コンクリート部23Aを形成する。
最後に、基礎鉄筋コンクリート部23Aの上に免震装置4を設置する。
【0021】
(作用効果)
上述したような杭頭免震構造は、基礎杭21の杭頭部21tに免震装置4が設置される杭頭免震構造20Aであって、既製コンクリート造の基礎杭21と、基礎杭21の杭頭部21tを覆い、免震装置4が設置される基礎鉄筋コンクリート部23Aと、基礎鉄筋コンクリート部23Aに埋設される杭頭補強材30と、を備え、杭頭補強材30は、各々がU字形状に形成され、基礎杭21の横断面中央に設けられる中空部21hに対して、放射状に設けられる複数の縦補強筋31と、縦補強筋31に結束される円環状をなす横補強筋32と、を有し、複数の縦補強筋31の各々の一方材端31sは、基礎杭21の中空部21hに充填されたコンクリート体24に埋設され、他方材端31tが基礎鉄筋コンクリート部23Aに埋設されている。
このような構成によれば、基礎杭21の杭頭部21tに杭頭補強材30を設け、かつこれを基礎鉄筋コンクリート部23Aに埋設させることで、杭頭部21tが杭頭補強材30、及び基礎鉄筋コンクリート部23Aで拘束されるために、杭頭部21tのせん断強度を増大させることができる。特に、杭頭補強材30は、U字形状の縦補強筋31と、縦補強筋31に結束される円環状の横補強筋32とを備えているため、杭頭部21tを効率良く補強することができる。
さらに、縦補強筋31の一方材端31sが基礎杭21の中空部21hに充填されたコンクリート体24に埋設されているため、例えば、縦補強筋31の一方材端31sを埋設させるようにコンクリート体24を充填打設した後に、縦補強筋31の他方材端31tを含む杭頭補強材30を埋設するように基礎鉄筋コンクリート部23Aを形成して、杭頭免震構造20Aを構築することが可能となる。すなわち、このように杭頭免震構造20Aを構築すれば、縦補強筋31の一方材端31sを埋設させるようにコンクリート体24を充填打設した後には、杭頭補強材30がコンクリート体24によって基礎杭21に固定されるため、基礎鉄筋コンクリート部23Aを形成するに際し、何らかの支持材を用いて、杭頭補強材30を自立させて配置する必要はない。このように支持材が不要となるため、杭頭免震構造20Aをコンパクトにすることができる。
よって、中空部のコンクリート体24を介して、基礎杭21と杭頭補強材30を一体化させて基礎杭21の構造性能を増大させた。また、縦補強筋31の一方材端31sを基礎杭21の中空部21hに充填されたコンクリート体24に埋設させることで、コンクリート体24が縦補強筋31の高さ調整機能を兼ねている。
また、仮に上記のように、基礎杭21の中空部21hのコンクリート体24と、基礎杭21の杭頭部21tを覆う基礎鉄筋コンクリート部23Aとを分けて段階的に打設したとしても、縦補強筋31の一方材端31sがコンクリート体24に、他方材端31tが基礎鉄筋コンクリート部23Aに、それぞれ埋設されて、コンクリート体24と基礎鉄筋コンクリート部23Aが縦補強筋31によって連結されているため、杭頭免震構造20Aを強固なものとすることができる。
このようにして、強固な躯体をコンパクトに実現可能な杭頭免震構造20Aを提供することができる。
【0022】
また、杭頭免震構造20Aは、基礎鉄筋コンクリート部23Aを外方から覆う外側鋼管22を更に備えている。
このような構成によれば、杭頭部21tを覆う基礎鉄筋コンクリート部23Aを、外側鋼管22で外方から覆い、杭頭部21tのみが2重鋼管からなる外殻鋼管付きコンクリート杭が形成される。よって、杭頭部21tを覆う基礎鉄筋コンクリート部23Aは、杭頭補強筋20、及び外側鋼管22で一様に拘束されるために、せん断強度をさらに高めることができる。したがって、杭頭部21t周りに大型のコンクリート部を設けて杭頭免震構造20Aを形成させる必要はなく、基礎躯体の縮小化が可能な、杭頭免震構造20Aを提供することができる。
また、杭頭部21tのみが2重鋼管からなる外殻鋼管付きコンクリート杭とすることで、杭頭部21tの曲げ強度、及びせん断強度が高められるために、基礎杭21同士を基礎梁等で連結させて、基礎杭21のせん断抵抗力を高める必要はなく、基礎梁なしの独立フーチング形式の杭頭免震構造であってもせん断抵抗可能であり、基礎躯体を縮小できる。
【0023】
さらに、外側鋼管22は、レベルコンクリート25上に設けられている。これにより、レベルコンクリート25により、外側鋼管22の設置高さを調整可能である。
さらに、外側鋼管22は、免震装置4の下部ベースプレート41に対して接合されておらず、非接合とされている。これにより、地震時の変形が下部ベースプレート41に影響することはない。
【0024】
また、基礎杭21は、鉄筋コンクリート杭、プレストレストコンクリート杭、高強度プレストレストコンクリート杭、高強度プレストレスト鉄筋コンクリート杭、及び外殻鋼管付きコンクリート杭のうち、いずれかである。
このような構成によれば、鉄筋コンクリート杭、プレストレストコンクリート杭、高強度プレストレストコンクリート杭、高強度プレストレスト鉄筋コンクリート杭、及び外殻鋼管付きコンクリート杭のいずれかである基礎杭21の杭頭部21tのせん断強度を高め、強固な躯体をコンパクトに実現可能な杭頭免震構造20Aを提供することができる。
また、基礎杭21に既製コンクリート杭を採用することで、建設現場で場所打ち杭を築造するための建設機械を配置する必要はなく、施工効率を高めて短工期化が可能である。また、比較的狭隘な建設敷地であっても、本発明の杭頭免震構造20Aを実現可能である。
【0025】
特に本実施形態においては、基礎杭21が、最外郭に鋼管21mが設けられた外殻鋼管付きコンクリート杭であり、鋼管21mの外側には、鉛直方向に延在し、かつ縦補強筋31と鉛直方向にオーバーラップするように設けられたパイルアンカー35が接合されている。
このような構成によれば、基礎杭21に作用する引張力を、効率的に、免震装置4へと伝達可能である。
【0026】
また、上記のような、基礎杭21の杭頭部21tに免震装置4が設置される杭頭免震構造20Aの構築方法においては、既製コンクリート造の基礎杭21を地盤に打ち込み、各々がU字形状に形成された複数の縦補強筋31と、縦補強筋31に結束される円環状をなす横補強筋32と、を有する杭頭補強材30を、複数の縦補強筋31の各々の一方材端31sが基礎杭21の横断面中央に設けられる中空部21hに位置するように、かつ複数の縦補強筋31が基礎杭21の中空部21hを中心とした円周方向に間隔をあけて、平面視したときに放射状となるように設け、基礎杭21の中空部21hにコンクリートを充填してコンクリート体24を形成して、複数の縦補強筋31の各々の一方材端31sをコンクリート体24に埋設させ、基礎杭21の杭頭部21tを覆い、かつ複数の縦補強筋31の各々の他方材端31tを埋設するように基礎鉄筋コンクリート部23Aを形成し、基礎鉄筋コンクリート部23Aの上に免震装置4を設置する。
このような構成によれば、強固な躯体をコンパクトに実現可能な杭頭免震構造20Aを実現することができる。
【0027】
[第二実施形態]
本発明の第二実施形態における杭頭免震構造を
図3に示す。
図4は、
図3のII-II矢視断面図である。
図3に示されるように、本実施形態における杭頭免震構造において、基礎部2Bは、複数の杭頭免震構造20Bと、基礎梁50と、を備えている。
【0028】
複数の杭頭免震構造20Bのそれぞれは、基礎杭21と、基礎鉄筋コンクリート部23Bと、杭頭補強材30と、を備えている。本実施形態の杭頭免震構造20Bは、外側鋼管22を備えていない。
基礎鉄筋コンクリート部23Bは、基礎杭21の杭頭部21tの径方向外側に現場で打設されたコンクリートからなる。基礎鉄筋コンクリート部23Bは、基礎杭21の杭頭部21tを径方向外側から覆っている。基礎杭21の杭頭部21tは、基礎鉄筋コンクリート部23B内に埋設されている。
基礎鉄筋コンクリート部23Bは、免震装置支持部231と、基礎梁接合部232と、を一体に有している。免震装置支持部231は、基礎梁接合部232上に設けられている。杭頭補強材30の連結部31cは、基礎梁接合部232よりも上方に延びて、免震装置支持部231内に埋設されている。
【0029】
基礎梁接合部232には、基礎梁50が接合されている。基礎梁50は、梁コンクリート51中に、梁主筋52、および梁せん断補強筋53が埋設されている。梁主筋52は、基礎鉄筋コンクリート部23B内を貫通している。
図4に示されるように、基礎梁接合部232は、平面視したときに、免震装置支持部231よりも大きくなるように形成されている。
基礎梁接合部232内には、基礎杭21の杭頭部21tの外周側と上方とに、杭頭部21tを側方と上方から覆うように、鉄筋籠62が埋設されている。鉄筋籠62は、上方から見て格子状に組まれた横筋62aを備えている。横筋62aは、上下方向に間隔をあけて複数層に設けられている。鉄筋籠62は、上下方向に延びて複数層の横筋62aを連結する縦筋62bをさらに備えている。
鉄筋籠62は、
図4に示されるように平面視したときに、最外郭が、矩形状を成すように形成されている。この矩形状の、隣接する側面の中心同士を結ぶように、平面視したときに斜め方向に延在する、補強筋61が設けられている。
【0030】
本実施形態においては、杭頭補強材30は、第一実施形態よりも上方の高さ位置に設けられている。より詳細には、接続金物37は、基礎杭21の上端部近傍に設けられ、パイルアンカー35は基礎杭21の上端部よりも更に上方に延伸して、基礎杭21の杭頭部21tと免震装置4との間の基礎鉄筋コンクリート部23Bに埋設されている。
本実施形態においても、パイルアンカー35は、縦補強筋31と鉛直方向にオーバーラップするように設けられている。
【0031】
上述したような杭頭免震構造においても、上記第一実施形態と同様、基礎杭21の杭頭部21tに杭頭補強材30を設け、かつこれを基礎鉄筋コンクリート部23Bに埋設させることで、杭頭部21tが杭頭補強材30、及び基礎鉄筋コンクリート部23Bで拘束されるために、杭頭部21tのせん断強度を増大させることができる。特に、杭頭補強材30は、U字形状の縦補強筋31と、縦補強筋31に結束される円環状の横補強筋32とを備えているため、杭頭部21tを効率良く補強することができる。
さらに、縦補強筋31の一方材端31sが基礎杭21の中空部21hに充填されたコンクリート体24に埋設されているため、例えば、縦補強筋31の一方材端31sを埋設させるようにコンクリート体24を充填打設した後に、縦補強筋31の他方材端31tを含む杭頭補強材30を埋設するように基礎鉄筋コンクリート部23Bを形成して、杭頭免震構造20Bを構築することが可能となる。すなわち、このように杭頭免震構造20Bを構築すれば、縦補強筋31の一方材端31sを埋設させるようにコンクリート体24を充填打設した後には、杭頭補強材30がコンクリート体24によって基礎杭21に固定されるため、基礎鉄筋コンクリート部23Bを形成するに際し、何らかの支持材を用いて、杭頭補強材30を自立させて配置する必要はない。このように支持材が不要となるため、杭頭免震構造20Bをコンパクトにすることができる。
また、仮に上記のように、基礎杭21の中空部21hのコンクリート体24と、基礎杭21の杭頭部21tを覆う基礎鉄筋コンクリート部23Aとを分けて段階的に打設したとしても、縦補強筋31の一方材端31sがコンクリート体24に、他方材端31tが基礎鉄筋コンクリート部23Bに、それぞれ埋設されて、コンクリート体24と基礎鉄筋コンクリート部23Bが縦補強筋31によって連結されているため、杭頭免震構造20Bを強固なものとすることができる。
このようにして、強固な躯体をコンパクトに実現可能な杭頭免震構造20Bを提供することができる。
【0032】
(実施形態の変形例)
なお、本発明の杭頭免震構造は、図面を参照して説明した上述の各実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記第一実施形態では、基礎鉄筋コンクリート部23Aを外方から覆う外側鋼管22を備える構成としたが、外側鋼管22のさらに外側にも基礎鉄筋コンクリート部を設け、外側鋼管22を基礎鉄筋コンクリート部で覆う場合であっても良い、或いは、外側鋼管22を備えない構成とすることも可能である。あるいは、上記第二実施形態では、基礎鉄筋コンクリート部23Bを外方から覆う外側鋼管を備えない構成としたが、外側鋼管を備えた構成とすることも可能である。
【0033】
(検討例1)
上記第一実施形態に示したような、外側鋼管22を備えた杭頭免震構造20Aについて、具体的な検討を行ったので、その検討例を以下に示す。
図5は、第一実施形態に係る杭頭免震構造の検討例において、杭頭部に作用する杭頭設計応力を示す図である。
まず、
図5に示すように、杭頭設計応力(軸力N、せん断力Q、曲げモーメントM)に対して、異なる2種類の杭(
図5中、符号F110A、F120A)を設定した。また、基礎杭21の外径Dを1200mm、基礎鉄筋コンクリート部23Aに対する基礎杭21の杭頭部21tの埋込高さhを1200mmとした。基礎鉄筋コンクリート部23Aに用いるコンクリート強度をFc36、鉄筋材料をSD390とし、主筋を12-D32とした。
次に、コンクリート強度を検討する。
基礎杭21の杭頭部21tに生じるせん断力は、基礎杭21から外側鋼管22内の基礎鉄筋コンクリート部23Aへの支圧により伝達される。せん断力に対して支圧抵抗する基礎鉄筋コンクリート部23Aのストレスブロック高さを、基礎鉄筋コンクリート部23Aに対する杭頭部21tの埋込高さhの0.3倍(0.3h)とし、
図6に示すように、基礎杭21の中空部21hの中心からの応力の広がり角度θを30度とすると、基礎鉄筋コンクリート部23Aの受圧面積Accは、
Acc=h×0.3×Dπ×2θ/360
=1200×0.3×1200π×60/360
=226080mm
2
となる。したがって、外側鋼管22内の基礎鉄筋コンクリート部23Aに作業する圧縮応力度は、
Q/Acc=600×10
3N/226080mm
2=2.654N/mm
2
となる。
基礎鉄筋コンクリート部23Aのコンクリート強度はFc36であるので、短期許容圧縮応力度は、24N/mm
2となる。
したがって、
2.654/24=0.11<1.0
であるので、コンクリート強度には問題がないことが確認された。
【0034】
また、外側鋼管22について、基礎鉄筋コンクリート部23Aから受ける圧力を算定した。外側鋼管22は、直径Dを1800mm、板厚tを12mm、材質をSTK490とした。また、せん断力に対して支圧抵抗するストレスブロック高さを、基礎鉄筋コンクリート部23Aに対する杭頭部21tの埋込高さhの0.3倍とし、基礎杭21の中空部21hの中心から外側鋼管22への応力の広がり角度θを30度とした。
基礎杭21の施工誤差100mmを考慮すると、基礎杭21の中心(杭心)から外側鋼管22の内面(板厚t=12mm)までの距離Lは、
L=1200/2+(300-100)-12=788mm
となる。すると、外側鋼管22の内面への受圧面積は、
Acs=788×2π×1/6×1200×0.3=296918mm2
となる。外側鋼管22に作用する内圧量Pは、
P=Q×Acs=600×103N/296918mm2=2.02N/mm2
となる。
【0035】
外側鋼管22に作用する周方向の応力度σは、
σ=P・D/2t=2.02×1800/(2×12)=152N/mm
2
となる。外側鋼管22の短期検定値は、
152/325=0.47<1.0
となるので、外側鋼管22が基礎鉄筋コンクリート部23Aから受ける圧力が、外側鋼管22の短期許容応力度以下であることが確認された。
以上の検討結果に基づき、外側鋼管22の鋼管径、パイルアンカー35、縦補強筋31、横補強筋32を、
図7に示すように設定した。
【0036】
(検討例2)
上記第二実施形態に示したような、外側鋼管22を備えず、基礎梁50が接合される杭頭免震構造20Bについて、具体的な検討を行ったので、その検討例を以下に示す。
まず、
図8に示すように、杭頭部に作用する杭頭設計応力(軸力N、せん断力Q、曲げモーメントM)に対して、異なる3種類の杭(符号F100、F110、F120)を設定した。また、基礎杭21の外径Dを1200mm、基礎鉄筋コンクリート部23Bに対する基礎杭21の杭頭部21tの埋込高さhを1200mm、基礎鉄筋コンクリート部23Bに用いるコンクリート強度をFc42、鉄筋材料をSD490とし、主筋を17-D38とした。
【0037】
次に、コンクリート強度を検討する。
基礎杭21の杭頭部21tに生じるせん断力は、杭頭部21tでの摩擦により伝達されるせん断力と、基礎鉄筋コンクリート部23B(パイルキャップ)のへりあきで抵抗するせん断力とを加算した短期許容せん断力で伝達させる。
設計せん断力Qを1382kN、設計応力は上下動を考慮した軸力Nが5889kNとすると、短期許容せん断力Qcrは、
Qcr=N・μ=5945×0.5=2973kN
となる。したがって、短期検定値は、
1382/2973=0.48<1.0
であるので、基礎梁50が接合される基礎鉄筋コンクリート部23Bは、杭頭部21tにおけるコンクリート間の摩擦で、せん断力を伝達可能であることが確認された。
以上の検討結果に基づき、基礎鉄筋コンクリート部23B、パイルアンカー35、縦補強筋31、横補強筋32を、
図9に示すように設定した。
【符号の説明】
【0038】
4 免震装置 28 土間コンクリート
20A、20B 杭頭免震構造 30 杭頭補強材
21 基礎杭 31 縦補強筋
21h 中空部 31s 一方材端
21m 鋼管 31t 他方材端
21t 杭頭部 32 横補強筋
22 外側鋼管 35 パイルアンカー
23A、23B 基礎鉄筋コンクリート部 50 基礎梁
24 コンクリート体