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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】フォーカスリング載置台
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240515BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021097248
(22)【出願日】2021-06-10
(65)【公開番号】P2022188946
(43)【公開日】2022-12-22
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖也
(72)【発明者】
【氏名】久野 達也
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-224710(JP,A)
【文献】特開2007-194616(JP,A)
【文献】特開2020-119997(JP,A)
【文献】特開2006-080389(JP,A)
【文献】特開2005-033181(JP,A)
【文献】特開2014-150104(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0020488(US,A1)
【文献】特許第6108051(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーカスリングが載置される円環状のセラミックヒータと、
金属ベースと、
前記金属ベースと前記セラミックヒータとを接着する接着材と、
前記金属ベースと前記セラミックヒータとの間で前記接着材の内周部に接着するように設けられた内周側保護材と、
前記金属ベースと前記セラミックヒータとの間で前記接着材の外周部に接着するように設けられた外周側保護材と、
を備え、
前記接着材の熱膨張係数は、前記内周側保護材の熱膨張係数以下で、前記外周側保護材の熱膨張係数以上である、
フォーカスリング載置台。
【請求項2】
前記接着材の熱膨張係数は、前記内周側保護材の熱膨張係数よりも小さく、前記外周側保護材の熱膨張係数よりも大きい、
請求項1に記載のフォーカスリング載置台。
【請求項3】
前記金属ベースは、前記金属ベースの側面及び前記セラミックヒータに対向する面のうち少なくとも前記内周側保護材及び前記外周側保護材が形成されている部分に絶縁膜を有する、
請求項1又は2に記載のフォーカスリング載置台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーカスリング載置台に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエハにプラズマを利用してCVDやエッチングなどを行うためにウエハ処理装置が用いられる。特許文献1には、円盤状の中心側金属ベースと円環状の外周側金属ベースとが連結された金属ベースと、中心側金属ベースの上面に設けられた円盤状の中心側静電チャックヒータと、外周側金属ベースの上面に設けられた円環状の外周側静電チャックヒータとを備えたウエハ処理装置が開示されている。このウエハ処理装置では、中心側静電チャックヒータの上面に円盤状のウエハを静電吸着すると共に、外周側静電チャックヒータの上面に円環状のフォーカスリングを静電吸着する。また、ウエハの温度とフォーカスリングの温度とは、それぞれ個別に制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-207979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外周側金属ベースと外周側静電チャックヒータとは接着シートによって接着されている。接着シートは、使用環境において腐食することがある。そのため、接着シートの周囲(内周部と外周部)を囲むように保護材を充填することにより、接着シートの腐食を防止することが考えられる。こうした技術は、本発明者らの知る限り、現在のところ公知になっていない。接着シートの周囲を囲むように保護材を充填すると、接着シートと保護材とは緊密に接着して一体化する。この状態で外周側静電チャックヒータが高温になると、接着シートも保護材も半径外方向に伸びようとする。ここで、接着シートのCTE(熱膨張係数)が保護材のCTEよりも大きい場合、接着シートの伸び量が保護材の伸び量よりも大きいため、接着シートの内周部では保護材が接着シートに引っ張られる。その結果、接着シートか保護材の少なくとも一方において剥離や亀裂が発生することがある。一方、接着シートのCTEが保護材のCTEよりも小さい場合、保護材の伸び量が接着シートの伸び量よりも大きいため、接着シートの外周部では接着シートが保護材に引っ張られる。その結果、接着シートか保護材の少なくとも一方において剥離や亀裂が発生することがある。なお、こうした問題は静電吸着機能の有無に関わりなく発生する。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、フォーカスリング用のセラミックヒータと金属ベースとを接着する接着材の内周側及び外周側を保護材で保護すると共に接着材と保護材との熱膨張差に起因する不具合の発生を防止することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のフォーカスリング載置台は、
フォーカスリングが載置される円環状のセラミックヒータと、
金属ベースと、
前記金属ベースと前記セラミックヒータとを接着する接着材と、
前記金属ベースと前記セラミックヒータとの間で前記接着材の内周部に接着するように設けられた内周側保護材と、
前記金属ベースと前記セラミックヒータとの間で前記接着材の外周部に接着するように設けられた外周側保護材と、
を備え、
前記接着材の熱膨張係数は、前記内周側保護材の熱膨張係数以下で、前記外周側保護材の熱膨張係数以上である。
【0007】
このフォーカスリング載置台は、接着材の内周部及び外周部を囲む内周側及び外周側保護材を備えている。接着材の内周側及び外周側は、保護材で保護される。また、こうしたフォーカスリング載置台では、高温になると、接着材、内周側保護材及び外周側保護材は半径外方向に伸びようとする。ここで、接着材の熱膨張係数は内周側保護材の熱膨張係数以下であるため、接着材が半径外方向に伸びる量は内周側保護材が半径外方向に伸びる量と同じかそれよりも少ない。そのため、接着材が内周側保護材を半径外方向へ引っ張る引張応力は発生しない。したがって、接着材及び内周側保護材の少なくとも一方において熱膨張に起因する不具合が発生するのを防止することができる。また、接着材の熱膨張係数は外周側保護材の熱膨張係数以上であるため、外周側保護材が半径外方向に伸びる量は接着材が半径外方向に伸びる量と同じかそれよりも少ない。そのため、外周側保護材が接着材を半径外方向へ引っ張る引張応力は発生しない。したがって、接着材及び外周側保護材の少なくとも一方において熱膨張差に起因する不具合が発生するのを防止することができる。
【0008】
本発明のフォーカスリング載置台において、前記接着材の熱膨張係数は、前記内周側保護材の熱膨張係数より小さくてもよく、前記外周側保護材の熱膨張係数より大きくてもよい。こうすれば、接着材と内周側保護材と外周側保護材との熱膨張係数を同じにする必要がない。
【0009】
本発明のフォーカスリング載置台において、前記金属ベースは、前記金属ベースの側面及び前記セラミックヒータに対向する面のうち少なくとも前記内周側保護材及び前記外周側保護材が形成されている部分に絶縁膜を有していてもよい。こうすれば、金属ベースを介して予期せぬ放電が起きるのを防止することができる。絶縁膜は、使用環境下での耐食性を有していることが好ましい。絶縁膜としては、例えばセラミック溶射膜などが挙げられる。こうした絶縁膜は、金属ベースのセラミックヒータに対向する面のうち接着材が形成されている部分に及ぶように設けてもよい。
【0010】
本発明のフォーカスリング載置台において、接着材、内周側保護材及び外周側保護材の熱膨張係数を調整するにあたっては、例えば、それぞれ異なるカテゴリーの材料を用いてもよい。材料のカテゴリーとしては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。あるいは、同じカテゴリーの樹脂の中から組成の異なるものを用いてもよい。例えば、エポキシ樹脂のカテゴリーの中には組成が異なるものが多く存在しており、組成が異なることで熱膨張係数が異なるものがある。この点は、他の樹脂についても同様である。あるいは、同じ組成の樹脂であって添加物の種類や量が異なるものを用いてもよい。添加物としては、フィラーが挙げられる。例えば、同じ組成のシリコーン樹脂に対して、添加量が多いほど熱膨張係数が低くなるフィラーを添加する場合、フィラーの添加量を内周側保護材が最も少なく、外周側保護材が最も多くなるようにすれば、(内周側保護材のCTE)>(接着シートのCTE)>(外周側保護材のCTE)にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ウエハ処理装置10の縦断面図。
図2】フォーカスリング載置台20の平面図。
図3図2のA-A断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。図1はウエハ処理装置10の縦断面図、図2はフォーカスリング載置台20の平面図、図3図2のA-A断面図(部分拡大図付き)である。以下の説明において、上下、左右、前後などを用いて説明することがあるが、上下、左右、前後は、相対的な位置関係に過ぎない。
【0013】
ウエハ処理装置10は、ウエハWにプラズマを利用してCVDやエッチングなどを行うために用いられるものであり、半導体プロセス用のチャンバ80の内部に設けられた設置板82に固定されている。ウエハ処理装置10は、ウエハ載置台12とフォーカスリング載置台20とを備えている。以下、フォーカスリングは「FR」と略すことがある。
【0014】
ウエハ載置台12は、ウエハ用セラミックヒータ14と、ウエハ用冷却板16とを備えている。ウエハ用冷却板16は、ウエハ用セラミックヒータ14のウエハ載置面である表面14aとは反対側の裏面14bに接着シート15を介して接着されている。接着シート15は、円形の両面接着テープである。接着シート15の材料としては、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0015】
ウエハ用セラミックヒータ14は、円盤状の部材であり、セラミック基体14cに抵抗発熱体14dが埋設されたものである。セラミック基体14cは、アルミナ、窒化アルミニウム、イットリアなどに代表されるセラミック材料からなる円盤状のプレートである。セラミック基体14cの表面14aには、ウエハWが載置される。抵抗発熱体14dは、導電性のあるコイル又は印刷パターンで作製され、平面視したときに全面にわたって一筆書きの要領で一端から他端まで交差することなく配線されている。抵抗発熱体14dの一端と他端は、設置板82、ウエハ用冷却板16及び接着シート15を貫通しセラミック基体14cに差し込まれた図示しない一対の給電棒に接続されている。抵抗発熱体14dには、この給電棒を介して電圧が印加されるようになっている。
【0016】
ウエハ用冷却板16は、アルミニウムやアルミニウム合金などに代表される金属からなる円盤状のプレートであり、内部に冷媒が循環可能な図示しない冷媒通路を備えている。この冷媒通路は、設置板82を貫通する図示しない冷媒供給路及び冷媒排出路に接続されており、冷媒排出路から排出された冷媒は温度調整されたあと再び冷媒供給路に戻される。ウエハ用冷却板16は、ウエハ用冷却板16の下端部(設置板82に近い側の端部)の外周面から半径外向きに突き出したウエハ用冷却板フランジ部16aを備えている。ウエハ用冷却板フランジ部16aには、周方向に沿って複数の貫通孔16bが設けられている。
【0017】
FR載置台20は、ウエハ載置台12とは別体であり、ウエハ載置台12の外周に配置されている。FR載置台20は、FR用セラミックヒータ22と、FR用冷却板24とを備えている。FR用冷却板24は、FR用セラミックヒータ22のFR載置面である表面22aとは反対側の裏面22bに接着シート25を介して接着されている。接着シート25は、円環状の両面接着テープである。接着シート25の材料としては、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0018】
FR用セラミックヒータ22は、セラミック基体22cに抵抗発熱体22dが埋設されたものである。セラミック基体22cは、セラミック基体14cと同様の材料からなるリング状のプレートである。セラミック基体22cの表面22aには、フォーカスリングFRが載置される。抵抗発熱体22dは、導電性のあるコイル又は印刷パターンで作製され、平面視したときに全面にわたって一筆書きの要領で一端から他端まで交差することなく配線されている。抵抗発熱体22dの一端と他端は、設置板82、FR用冷却板24及び接着シート25を貫通しセラミック基体22cに差し込まれた図示しない一対の給電棒に接続されている。抵抗発熱体22dには、この給電棒を介して電圧が印加されるようになっている。
【0019】
FR用冷却板24は、アルミニウムやアルミニウム合金などに代表される金属からなるリング状のプレートであり、内部に冷媒が循環可能な図示しない冷媒通路を備えている。この冷媒通路は、設置板82を貫通する冷媒供給路及び冷媒排出路に接続されており、冷媒排出路から排出された冷媒は温度調整されたあと再び冷媒供給路に戻される。FR用冷却板24は、FR用冷却板24の下面には、周方向に沿って複数の凸部24aが設けられている。ウエハ載置台12は、FR用冷却板24の裏面に設けられた凸部24aをウエハ用冷却板フランジ部16aの貫通孔16bに嵌め込んだ状態で、設置板82の裏面からボルト84を凸部24aのネジ穴に締結することにより、FR載置台20を介して設置板82に固定される。
【0020】
FR用セラミックヒータ22とFR用冷却板24との間のうち接着シート25の内周側には、接着シート25の内周部(内周面)を囲むように接着性の内周側保護材27iが設けられている。接着シート25と内周側保護材27iとは、接着されている。FR用セラミックヒータ22とFR用冷却板24との間のうち接着シート25の外周側には、接着シート25の外周部(外周面)を囲むように接着性の外周側保護材27oが設けられている。接着シート25と外周側保護材27oとは、接着されている。接着シート25の熱膨張係数(CTE)は、内周側保護材27iのCTE以下であり、好ましくは内周側保護材27iよりも小さい。接着シート25のCTEは、外周側保護材27oのCTE以上であり、好ましくは外周側保護材27oよりも大きい。内周側保護材27i及び外周側保護材27oは、ウエハ処理装置10が使用される環境の雰囲気(例えばプロセスガスやプラズマなどの雰囲気)において接着シート25よりも耐食性の高い材料で形成されている。そのため、内周側保護材27i及び外周側保護材27oは、使用環境の雰囲気から接着シート25を保護する役割を果たす。例えば、接着シート25の材料としてエポキシ樹脂を用いた場合、内周側保護材27i及び外周側保護材27oの材料としてシリコーン樹脂を用いることができる。この場合、内周側保護材27iのCTEと外周側保護材27oのCTEとを異なる値にするにあたっては、同じ組成のシリコーン樹脂を用いてそのシリコーン樹脂に加えるフィラーの種類や量を調節してもよいし、異なる組成のシリコーン樹脂を用いてもよい。フィラーとしては、例えばアルミナやイットリアなどが挙げられる。
【0021】
FR用冷却板24は、内周側絶縁膜29i及び外周側絶縁膜29oを有している。内周側絶縁膜29iは、FR用冷却板24の内周面と、FR用冷却板24のFR用セラミックヒータ22に対向する面のうち内周側保護材27iが形成されている部分に設けられている。本実施形態では、内周側絶縁膜29iは、接着シート25に入り込んでいる。外周側絶縁膜29oは、FR用冷却板24の外周面と、FR用冷却板24のFR用セラミックヒータ22に対向する面のうち外周側保護材27oが形成されている部分に設けられている。本実施形態では、外周側絶縁膜29oは、接着シート25に入り込んでいる。絶縁膜29i,29oは、使用環境下での耐食性を有していることが好ましい。絶縁膜29i,29oとしては、例えば溶射膜を採用することができる。溶射膜の材質としては、絶縁性のセラミックス(例えばアルミナやイットリアなど)が挙げられる。
【0022】
このFR載置台20は、例えば以下の方法により製造することができる。まず、FR用セラミックヒータ22、FR用冷却板24及び両面テープを準備する。両面テープは、最終的には接着シート25になるものであり、両面に剥離紙を備えたものである。続いて、両面テープの一方の面から剥離紙を剥がして接着面を露出させ、FR用冷却板24の表面に両面テープの接着面を貼り付ける。続いて、両面テープのもう一方の面から剥離紙を剥がして接着面を露出させ、そこにFR用セラミックヒータ22の裏面22bを載せて接着させる。これにより、FR用セラミックヒータ22とFR用冷却板24とが接着シート25によって接着された状態になる。その後、FR用セラミックヒータ22とFR用冷却板24との間であって接着シート25の周囲(内周側と外周側)に、接着性の充填材を充填する。充填材は、最終的には内周側及び外周側保護材27i,27oになるものである。このとき、充填材と接着シート25とが密着するように充填材を充填する。その後、充填材を硬化させて内周側及び外周側保護材27i,27oとする。こうすることにより、FR載置台20が得られる。
【0023】
次に、ウエハ処理装置10の使用例について図1を用いて説明する。チャンバ80は、内部にウエハ処理装置10を設置するための設置板82を備えている。設置板82には、上述したようにウエハ処理装置10が設置されている。チャンバ80の天井面には、プロセスガスを多数のガス噴射孔からチャンバ80の内部へ放出するシャワーヘッド90が配置されている。
【0024】
ウエハ処理装置10の表面14aには、円盤状のウエハWが載置される。ウエハWの温度は、ウエハ用セラミックヒータ14の抵抗発熱体14dへ供給する電力やウエハ用冷却板16の図示しない冷媒通路へ供給する冷媒の温度を調節することによって制御することができる。ウエハWの温度制御は、図示しない温度検出センサによってウエハWの温度を検出し、その温度が目標温度となるようにフィードバックすることにより実行される。
【0025】
ウエハ処理装置10の表面22aには、フォーカスリング(FR)が載置される。フォーカスリングは、ウエハWと干渉しないように上端部の内周に沿って段差を備えている。フォーカスリングの温度は、FR用セラミックヒータ22の抵抗発熱体22dへ供給する電力やFR用冷却板24の図示しない冷媒通路へ供給する冷媒の温度を調節することによって制御することができる。フォーカスリングの温度制御は、図示しない温度検出センサによってフォーカスリングの温度を検出し、その温度が目標温度となるようにフィードバックすることにより実行される。
【0026】
この状態で、チャンバ80の内部を所定の真空雰囲気(又は減圧雰囲気)になるように設定し、シャワーヘッド90からプロセスガスを供給しながらウエハ載置台12のウエハ用冷却板16とシャワーヘッド90との間に高周波電力を供給してプラズマを発生させる。そして、そのプラズマを利用してウエハにCVD成膜を施したりエッチングを施したりする。なお、設置板82の下方空間は大気雰囲気である。
【0027】
ウエハWがプラズマ処理されるのに伴ってフォーカスリングも消耗するが、フォーカスリングは厚さが厚いため、フォーカスリングの交換は複数枚のウエハWを処理したあとに行われる。
【0028】
ここで、FR載置台20の接着シート25や内周側及び外周側保護材27i,27oの挙動について、図3の部分拡大図を参照しながら説明する。FR載置台20が高温になると、接着シート25も内周側及び外周側保護材27i,27oも半径外方向(図3の部分拡大図の矢印方向)に伸びようとする。ここで、接着シート25のCTEは内周側保護材27iのCTE以下であるため、接着シート25が半径外方向に伸びる量(図3の黒矢印)は内周側保護材27iが半径外方向に伸びる量(図3のグレー矢印)と同じかそれよりも少ない。そのため、接着シート25が内周側保護材27iを半径外方向へ引っ張る引張応力は発生しない。したがって、接着シート25及び内周側保護材27iの少なくとも一方において熱膨張に起因する不具合(例えば剥離や亀裂など)が発生するのを防止することができる。また、接着シート25のCTEは外周側保護材27oのCTE以上であるため、外周側保護材27oが半径外方向に伸びる量(図3の白矢印)は接着シート25が半径外方向に伸びる量(図3の黒矢印)と同じかそれよりも少ない。そのため、外周側保護材27oが接着シート25を半径外方向へ引っ張る引張応力は発生しない。したがって、接着シート25及び外周側保護材27oの少なくとも一方において熱膨張に起因する不具合が発生するのを防止することができる。
【0029】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のFR載置台20が本発明のフォーカスリング載置台に相当し、FR用セラミックヒータ22がセラミックヒータに相当し、FR用冷却板24が金属ベースに相当し、接着シート25が接着材に相当し、内周側及び外周側保護材27i,27oがそれぞれ内周側及び外周側保護材に相当する。
【0030】
以上説明したFR載置台20では、接着シート25は内周側及び外周側保護材27i,27oによって保護されているため、FR載置台20の使用環境での接着シート25の耐食性が向上する。また、接着シート25のCTEを内周側保護材27iのCTE以下で且つ外周側保護材27oのCTE以上としたため、接着シート25、内周側保護材27i及び外周側保護材27oのいずれかにおいて熱膨張差に起因する不具合が発生するのを防止することができる。
【0031】
また、FR用冷却板24は、FR用冷却板24の側面及びFR用セラミックヒータ22に対向する面のうち内周側及び外周側保護材27o,27iが形成されている部分に内周側絶縁膜29i及び外周側絶縁膜29oを有しているため、FR用冷却板24を介して予期せぬ放電が起きるのを防止することができる。
【0032】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0033】
例えば、上述した実施形態において、接着シート25と内周側保護材27iとを異なる材料で形成したり、接着シート25と外周側保護材27oとを異なる材料で形成したりする場合には、それらのCTEを同じにするのは容易でないことがある。そのため、接着シート25のCTEを、内周側保護材27iのCTEより小さくし、外周側保護材27oのCTEより大きくしてもよい。
【0034】
上述した実施形態において、ウエハ用セラミックヒータ14のうち表面14aと抵抗発熱体14dとの間に静電電極を設け、静電電極に直流電圧を印加することによりウエハWを表面14aに吸着させてもよい。あるいは、FR用セラミックヒータ22のうち表面22aと抵抗発熱体22dとの間に静電電極を設け、静電電極に直流電圧を印加することによりフォーカスリングを表面22aに吸着させてもよい。
【0035】
上述した実施形態では、ウエハ用冷却板16とFR用冷却板24とを別部材としたが、ウエハ用冷却板16とFR用冷却板24とを一体化して一つの部材としてもよい。
【0036】
上述した実施形態において、例えば、接着シート25、内周側保護材27i及び外周側保護材27oの材料をすべてエポキシ樹脂とし、内周側保護材27iとしてCTEが3×10-5[/℃]のエポキシ樹脂を用い、接着シート25としてCTEが1×10-5[/℃]のエポキシ樹脂シートを用い、外周側保護材27oとしてCTEが6×10-6[/℃]のエポキシ樹脂を用いてもよい。
【0037】
上述した実施形態では、接着材として、接着シート25を例示したが、接着シート25の代わりに、流動性のある樹脂を硬化させたものなどを用いてもよい。
【符号の説明】
【0038】
10 ウエハ処理装置、12 ウエハ載置台、14 ウエハ用セラミックヒータ、14a 表面、14b 裏面、14c セラミック基体、14d 抵抗発熱体、15 接着シート、16 ウエハ用冷却板、16a ウエハ用冷却板フランジ部、16b 貫通孔、20 フォーカスリング(FR)載置台、22 FR用セラミックヒータ、22a 表面、22b 裏面、22c セラミック基体、22d 抵抗発熱体、24 FR用冷却板、24a 凸部、25 接着シート、27i 内周側保護材、27o 外周側保護材、29i 内周側絶縁膜、29o 外周側絶縁膜、80 チャンバ、82 設置板、84 ボルト、90 シャワーヘッド、 W ウエハ。
図1
図2
図3