(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】光検出装置、電子装置及び光検出方法
(51)【国際特許分類】
G01J 1/42 20060101AFI20240515BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20240515BHJP
H01L 31/107 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
G01J1/42 H
H01L31/10 G
H01L31/10 B
(21)【出願番号】P 2021144185
(22)【出願日】2021-09-03
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【氏名又は名称】鈴木 順生
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【氏名又は名称】川崎 康
(72)【発明者】
【氏名】タ トァン タン
(72)【発明者】
【氏名】崔 明秀
(72)【発明者】
【氏名】杉本 俊貴
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-202312(JP,A)
【文献】特開2020-112495(JP,A)
【文献】特開2019-169842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00-G01J 1/60
G01J 11/00
H01L 31/00-H01L 31/0392
H01L 31/08-H01L 31/20
G01C 3/00-G01C 3/32
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光検出素子と、
前記光検出素子が光を検出した後、前記光検出素子の一端を初期化電圧に設定するとともに、前記光検出素子の一端に供給される電流を可変可能な可変電流源を有するリセット回路と、
前記光検出素子が光を検出してから前記光検出素子の一端が前記初期化電圧に設定されるまでの間に、前記可変電流源が前記光検出素子の一端に供給する電流を段階的又は連続的に増加させる制御回路と、
それぞれが前記光検出素子を有する複数の画素と、を備え、
前記可変電流源は、
2以上の前記画素で共用され
前記光検出素子の一端に供給される電流を生成する第1回路と、
前記複数の画素のそれぞれごとに設けられ
、前記光検出素子の一端に供給されるとともに前記第1回路よりも電流精度が低い電流を生成する第2回路と、を有する、光検出装置。
【請求項2】
前記第1回路は、前記光検出素子が光を検出した後、前記光検出素子の一端に第1電流量の電流を供給し、
前記第2回路は、前記光検出素子の一端に前記第1電流量の電流を供給した後、前記光検出素子の一端に前記第1電流量よりも多い第2電流量の電流を供給する、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項3】
光検出素子と、
前記光検出素子が光を検出した後、前記光検出素子の一端を初期化電圧に設定するとともに、前記光検出素子の一端に供給される電流を可変可能な可変電流源を有するリセット回路と、
前記光検出素子が光を検出してから前記光検出素子の一端が前記初期化電圧に設定されるまでの間に、前記可変電流源が前記光検出素子の一端に供給する電流を段階的又は連続的に増加させる制御回路と、
それぞれが前記光検出素子を有する複数の画素と、を備え、
前記可変電流源は、
前記光検出素子が光を検出した後、前記光検出素子の一端に第1電流量の電流を供給する第1回路と、
前記光検出素子の一端に前記第1電流量の電流
を供給した後、前記光検出素子の一端に前記第1電流量よりも多い第2電流量の電流を供給する第2回路と、
前記光検出素子の一端に前記
第2電流量の電流を供給した後、前記光検出素子の一端に前記第2電流量
よりも多い第3電流量の電流を供給する第3回路と、を有し、
前記第1回路及び前記第2回路は、2以上の前記画素で共用され、
前記第3回路は、前記複数の画素のそれぞれの内部に設けられる、光検出装置。
【請求項4】
光検出素子と、
前記光検出素子が光を検出した後、前記光検出素子の一端を初期化電圧に設定するとともに、前記光検出素子の一端に供給される電流を可変可能な可変電流源を有するリセット回路と、
前記光検出素子が光を検出してから前記光検出素子の一端が前記初期化電圧に設定されるまでの間に、前記可変電流源が前記光検出素子の一端に供給する電流を段階的又は連続的に増加させる制御回路と、
それぞれが前記光検出素子を有する複数の画素と、を備え、
前記可変電流源は、
前記光検出素子が光を検出した後、前記光検出素子の一端に第1電流量の電流を供給する第1回路と、
前記光検出素子の一端に前記第1電流量の電流
を供給した後、前記光検出素子の一端に前記第1電流量よりも多い第2電流量の電流を供給する第2回路と、
前記光検出素子の一端に前記第
2電流量の電流を供給した後、前記光検出素子の一端に前記第2電流量
よりも多い第3電流量の電流を供給する第3回路と、を有し、
前記第2回路は、2以上の前記画素で共用され、
前記第1回路及び前記第3回路は、前記複数の画素のそれぞれの内部に設けられる、光検出装置。
【請求項5】
前記リセット回路は、第1電圧ノードと前記光検出素子の一端との間に接続されており、
前記制御回路は、前記前記光検出素子が光を検出してから前記光検出素子の一端が前記初期化電圧に設定されるまでの間に、前記第1電圧ノードと前記光検出素子の一端との間のオン抵抗を変化させる、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項6】
前記光検出素子が光を検出して、前記光検出素子の一端が第1電位になると、前記光検出素子の一端を前記第1電位よりも低い第2電位に所定期間維持させるホールド回路を備え、
前記制御回路は、前記所定期間が経過した後に、前記光検出素子の一端から他端に流れる電流を段階的又は連続的に増加させる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項7】
前記制御回路は、前記所定期間が経過した後に、前記可変電流源から前記光検出素子の一端に供給する電流を第1電流量に設定し、前記光検出素子の一端が前記第1電位より高くて前記初期化電圧より低い第3電位になると、前記可変電流源から前記光検出素子の一端に供給される電流を前記第1電流量よりも多い第2電流量に設定する、請求項6に記載の光検出装置。
【請求項8】
前記制御回路は、前記光検出素子の一端が前記第3電位より高くて前記初期化電圧より低い第4電位になると、前記可変電流源から前記光検出素子の一端に供給される電流を前記第2電流量よりも多い第3電流量に設定する、請求項7に記載の光検出装置。
【請求項9】
前記制御回路は、ホールド期間とアフターパルス率との対応関係を示す複数のグラフに接する包絡線において、前記アフターパルス率が所定の設計値になるときの前記ホールド期間を前記光検出素子のデッドタイムとして設定し、
前記ホールド期間は、前記光検出素子が光を検出した後に前記光検出素子の一端の電圧が維持される期間であり、
前記複数のグラフは、前記ホールド期間がそれぞれ異なっており、前記光検出素子が光を検出した後に前記光検出素子の一端に供給される電流を掃引させることにより得られる、請求項6乃至8のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項10】
前記可変電流源は、前記制御回路から出力される制御信号が入力される制御端子を有し、前記制御端子の電位レベルにより出力電流を制御するトランジスタを有し、
前記出力電流は前記光検出素子の一端に供給される、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項11】
前記可変電流源は、
第1トランジスタと、
前記第1トランジスタの出力電流に応じた電流を前記光検出素子の一端に供給する第2トランジスタと、
前記第1トランジスタのドレイン又はソース電位が所定の基準電位に等しくなるように、前記第1トランジスタの制御端子及び前記第2トランジスタの制御端子の電位を制御する差動増幅器と、を有する、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項12】
前記第1トランジスタのドレイン-ソース間を流れる電流を制御するか、又は前記基準電位を制御することにより、前記第2トランジスタのドレイン-ソース間の電流を制御する、請求項11に記載の光検出装置。
【請求項13】
前記可変電流源は、制御端子同士が接続される第1トランジスタ及び第2トランジスタを有するカレントミラー回路を有し、
前記制御回路から出力される制御信号により前記第1トランジスタの前記第2トランジスタに対するサイズ比を調整して、前記第2トランジスタから前記光検出素子の一端に供給される電流を制御する、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項14】
前記制御回路から出力される制御信号の電位レベルを変換するレベルシフタを備え、
前記可変電流源は、前記レベルシフタで電位レベルが変換された制御信号に基づいて、前記第2トランジスタから前記光検出素子の一端に供給される電流を制御する、請求項11又は13に記載の光検出装置。
【請求項15】
一次元又は二次元方向に配置される複数の前記光検出素子と、
前記複数の光検出素子のそれぞれに対応して配置される、前記リセット回路を有するアクティブクエンチ回路と、を備え、
前記複数の光検出素子のそれぞれは、アバランシェ・フォトダイオードである、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか一項に記載の光検出装置を有し、第1の光が対象物で反射された反射光を含む第2の光を受光する受光部と、
前記第2の光に対応するデジタル信号を生成するAD変換部と、
前記デジタル信号を記憶する記憶部と、
前記第1の光の投光タイミングと、前記受光部での前記反射光の受光タイミングとに基づいて、前記対象物までの距離を計測する距離計測部と、を備える、電子装置。
【請求項17】
前記第1の光を投光する投光部をさらに備え、
前記距離計測部は、前記第1の光の投光タイミングを取得する、請求項16に記載の電子装置。
【請求項18】
光検出素子にて光を検出し、
リセット回路が前記光検出素子が光を検出してから前記光検出素子の一端が初期化電圧に設定されるまでの間に、前記リセット回路内の可変電流源が前記光検出素子の一端に供給する電流を段階的又は連続的に増加させ、
複数の画素のそれぞれが前記光検出素子を有し、
前記可変電流源は、2以上の前記画素で共用され
前記光検出素子の一端に供給される電流を生成する第1回路と、前記複数の画素のそれぞれごとに設けられ
、前記光検出素子の一端に供給されるとともに前記第1回路よりも電流精度が低い電流を生成する第2回路とにより、前記光検出素子の一端に供給する電流を段階的又は連続的に増加させる、光検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、光検出装置、電子装置及び光検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
受光された光を電気信号に変換する光検出素子の一つに、アバランシェフォトダイオード(以下、APD)がある。特に、APDをガイガーモードで動作させる場合、APDは、光子1個の微弱な光を検出する能力を持っている。ところが、ガイガーモードで動作するAPDは感度が高くなるものの、光子を検知した後に動作状態が変化し、光を高感度に検知できなくなる。このため、APDにクエンチ回路を接続して、APDのリセットを行う必要がある。クエンチ回路には、パッシブクエンチ回路とアクティブクエンチ回路がある。パッシブクエンチ回路は、APDに直列に抵抗素子を接続して、抵抗素子を介してAPDに電流を流すことにより、リセットを行う。パッシブクエンチ回路は、回路構成は簡易であるが、動作が遅いという問題がある。これに対して、アクティブクエンチ回路は、トランジスタ等を用いて強制的にAPDに電流を流すものであり、APDのリセット動作を高速に行うことができる。
【0003】
しかしながら、従前のアクティブクエンチ回路では、APDのリセットのためにAPDに電流を流している最中にAPDが光を検出すると、APDに流れる電流を制御できなくなり、APDが過度の発熱を起こして破壊するおそれがある。また、APDに大量の電流が流れると、APDが発光してしまい、周囲に存在する他のAPDにクロストークによる電流が流れてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一態様は、発熱やクロストークを低減させ、微弱な光を高速に検出可能な光検出装置、電子装置及び光検出方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一実施形態によれば、光検出素子と、
前記光検出素子が光を検出した後、前記光検出素子の一端を初期化電圧に設定するとともに、前記光検出素子の一端に供給される電流を可変可能な可変電流源を有するリセット回路と、
前記光検出素子が光を検出してから前記光検出素子の一端が前記初期化電圧に設定されるまでの間に、前記可変電流源が前記光検出素子の一端に供給する電流を段階的又は連続的に増加させる制御回路と、を備える、光検出装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図7】
図6の包絡線上の各点におけるアフターパルス率、ホールド期間、及び第1リセット電流の対応関係をリスト化した図。
【
図11】
図9の一変形例による可変電流源の回路図。
【
図15】レベルシフタと可変電流源の少なくとも一部を統合する第1例の回路図。
【
図16】レベルシフタと可変電流源の少なくとも一部を統合する第2例の回路図。
【
図17】レベルシフタと可変電流源の少なくとも一部を統合する第3例の回路図。
【
図18】第4の実施形態による光検出装置1の主要部の構成を示す回路図。
【
図22】複数のSiPMとアクティブクエンチ回路群を半導体基板上に配置したレイアウト図。
【
図23】光検出装置1を内蔵する受光モジュールを備えた電子装置の概略構成を示すブロック図。
【
図24】受光モジュールと信号処理部をパッケージの基板上に実装した例を示す模式的な斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、光検出装置、電子装置及び光検出方法の実施形態について説明する。以下では、光検出装置及び電子装置の主要な構成部分を中心に説明するが、光検出装置及び電子装置には、図示又は説明されていない構成部分や機能が存在しうる。以下の説明は、図示又は説明されていない構成部分や機能を除外するものではない。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態による光検出装置1の回路図である。
図1の光検出装置1は、光検出素子2と、リセット回路3と、制御回路4とを備えている。
【0010】
リセット回路3と制御回路4は、アクティブクエンチ回路5を構成している。アクティブクエンチ回路5は、光検出素子2が光を検出した後に、光検出素子2に対して強制的なリセット動作を行うものである。
【0011】
光検出素子2は、例えばAPD6である。APD6には、APD6の降伏電圧よりも高い逆バイアス電圧が印加され、ガイガーモードと呼ばれる領域で駆動される。ガイガーモード時のAPD6の利得は105~106のオーダで非常に高いため、光子1個の微弱な光でさえ計測可能となる。以下では、光検出素子2としてAPD6を用いる例を主に説明する。本明細書では、APD6が光を検出することを「発火」と呼ぶ場合がある。
【0012】
図1の光検出装置1では、第1電圧ノードVhiとAPD6のカソードとの間に、リセット回路3が接続されている。APD6のアノードは所定の電圧Vlowに設定されている。
【0013】
リセット回路3は、APD6が光を検出した後、APD6のカソードを初期化電圧に設定する。初期化電圧は、例えば第1電圧ノードVhiと同電圧である。リセット回路3は、APD6のカソードに供給される電流を可変可能な可変電流源7を有する。可変電流源7は、制御回路4からの制御信号により、APD6のカソードに供給される電流を調整する。
【0014】
制御回路4は、APD6が光を検出してからAPD6のカソードが初期化電圧に設定されるまでの間に、リセット回路3からAPD6のカソードに供給される電流を変化させる。より具体的には、制御回路4は、APD6が光を検出してからAPD6のカソードが初期化電圧に設定されるまでの間に、リセット回路3がAPD6のカソードに供給する電流を段階的又は連続的に増やす。これにより、APD6のカソード電圧は段階的又は連続的に引き上げられる。
【0015】
あるいは、制御回路4は、APD6が光を検出してからAPD6のカソードが初期化電圧に設定されるまでの間に、第1電圧ノードVhiとAPD6のカソードとの間のオン抵抗を変化させる。リセット回路3は、オン抵抗が小さいほど、より多くの電流をAPD6のカソードに供給する。制御回路4は、APD6が光を検出してからAPD6のカソードが初期化電圧に設定されるまでの間に、リセット回路3のオン抵抗を段階的に又は連続的に小さくする。
【0016】
また、制御回路4は、APD6が光を検出したか否かを示す光検出信号を出力する。制御回路4から出力される光検出信号はアナログ信号であり、
図1では不図示のA/D変換器によりデジタル信号に変換される。このデジタル信号は、例えば距離計測に用いることができる。
【0017】
図1の光検出装置1では、APD6のカソードに接続される可変電流源7は1個のみである。したがって、APD6のカソードの寄生容量を小さくでき、APD6のカソード電圧を迅速に初期化電圧に復帰させることができる。このように、
図1の光検出装置1は、APD6が光を検出してから、次の光を検出可能になるまでのデッドタイムを短縮できる。
【0018】
図2及び
図3は
図1のAPD6のカソードの電圧波形図である。
図2の例では、時刻t0でAPD6が光を検出すると、APD6内部のアバランシェ電流が発生し、APD6のカソード電圧が下がり、時刻t1でV0に到達する。リセット回路3は、時刻t1~t2の期間内に第1リセット電流をAPD6のカソードに供給し、時刻t2~t3の期間内に第2リセット電流をAPD6のカソードに供給し、時刻t3~t4の期間内に第3リセット電流をAPD6のカソードに供給する。第2リセット電流は第1リセット電流よりも大きく、第3リセット電流は第2リセット電流よりも大きい。このように、
図1の光検出装置1は、APD6のカソードに供給するリセット電流を段階的に増やす。さらに、時刻t4以降ではリセット回路3の設定電流値はゼロ、または第1リセット電流、または第2リセット電流、または異なる第4リセット電流で設定しても良い。
【0019】
図2の時刻t1~t2の期間の長さと、時刻t2~t3の期間の長さと、時刻t3~t4の期間の長さとは任意である。ただし、時刻t1~t2の期間が短いと、APD6の内部で受光により発生された電子-正孔対がAPD6から排出されない間にAPD6のカソードに大きな電流が供給されて、APD6が再発火してしまうおそれがある。このため、時刻t1~t2の期間を時刻t2~t3の期間よりも長くするとともに、時刻t2~t3の期間を時刻t3~t4の期間よりも長くするのが望ましい。
【0020】
制御回路4は、APD6のカソード電圧が電圧V0まで低下すると(時刻t1)、リセット回路3内の可変電流源7から第1リセット電流をAPD6のカソードに供給させる。これにより、APD6のカソード電圧は
図2に示すように緩やかに上昇する。
【0021】
制御回路4は、APD6のカソード電圧が第1閾値電圧Vth1になると(時刻t2)、可変電流源7から第2リセット電流をAPD6のカソードに供給させる。これにより、時刻t2~t3の期間内のAPD6のカソード電圧の上昇度合いは時刻t1~t2の期間内の上昇度合いよりも大きくなる。ちなみに、Vth1の代わりに、時間t1~t2の期間内のカソード電圧を固定値に設定しても良い。
【0022】
制御回路4は、APD6のカソード電圧が第2閾値電圧Vth2になると(時刻t3)、可変電流源7から第3リセット電流をAPD6のカソードに供給させる。これにより、時刻t4でAPD6のカソード電圧は初期化電圧Vhiになる。時刻t3~t4の期間内のAPD6のカソード電圧の上昇度合いは時刻t2~t3の期間内の上昇度合いよりも大きくなる。
【0023】
図2では、3段階に分けて段階的にリセット電流を増やしているが、
図3に示すように、2段階に分けて段階的にリセット電流を増やしてもよい。
図3の例では、時刻t0でAPD6が光を検出すると、APD6内部のアバランシェ電流が発生し、APD6のカソード電圧が下がり、時刻t1でV0に到達する。リセット回路3は、時刻t1~t2の期間内に第1リセット電流をAPD6のカソードに供給し、時刻t2~t3の期間内に第2リセット電流をAPD6のカソードに供給する。
図3の時刻t1~t2の期間の長さと時刻t2~t3の期間の長さは任意であるが、APD6の再発火を防止する観点では、時刻t1~t2の期間を時刻t2~t3の期間よりも長くしてもよい。
【0024】
図3の場合、制御回路4は、APD6のカソード電圧が電圧V0まで低下すると(時刻t1)、可変電流源7から第1リセット電流をAPD6のカソードに供給させる。APD6のカソード電圧が閾値電圧Vthまで上がると(時刻t2)、制御回路4は可変電流源7から第2リセット電流をAPD6のカソードに供給させる。これにより、時刻t4でAPD6のカソード電圧は初期化電圧Vhiになる。
【0025】
このように、第1の実施形態では、APD6が光を検出すると、リセット回路3内の可変電流源7からAPD6のカソードに供給される電流を段階的又は連続的に増やすため、APD6の再発火を抑制しつつ、APD6が光を検出してから、次に光を検出可能になるまでのデッドタイムを短縮できる。
【0026】
また、本実施形態では、APD6のカソードに接続される可変電流源7を1個だけとすることで、APD6のカソードの寄生容量を小さくすることができる。よって、APD6のカソード電圧を迅速に初期化電圧に復帰させることができる。また、本実施形態では、光検出装置1を小さい回路規模で実現できるため、多数の光検出装置1を同一の半導体基板上に配置する集積化が容易になる。
【0027】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る光検出装置1は、APD6が光を検出すると、APD6のカソード電圧を一定に維持するホールド期間を設けるものである。
【0028】
図4は第2の実施形態による光検出装置1の回路図、
図5は
図1のAPD6のカソードの電圧波形図である。
図4では、
図1と共通する構成部分には同一符号を付しており、以下では相違点を中心に説明する。
【0029】
図4の光検出装置1は、
図1と同様に、APD6からなる光検出素子2と、可変電流源7を有するリセット回路3と、制御回路4とを備えることに加えて、ホールド回路8を備えている。
【0030】
ホールド回路8は、APD6が光を検出して、APD6のカソード電圧が電圧Vth以下に低下すると、APD6のカソード電圧を電圧V0よりも低い電圧VAQまで低下させ、その状態で所定期間の間(時刻t1~t2)、電圧VAQを維持する。所定期間は、ホールド期間とも呼ばれる。
【0031】
ホールド回路8は、例えばNMOSトランジスタQ1を有する。このトランジスタQ1のドレインはAPD6のカソードに接続され、ソースは電圧VAQに設定されている。このトランジスタQ1のゲートには、制御回路4からのホールド制御信号が入力される。
【0032】
ホールド制御信号は、制御回路4内のホールド制御回路4aで生成される。
図5に示すように、ホールド制御回路4aは、APD6のカソード電圧が電圧Vth以下に低下した時刻t1から、ホールド期間(時刻t1~t2)の間、ホールド制御信号をハイレベルに維持する。これにより、ホールド制御信号がハイレベルの期間は、APD6のカソード電圧は電圧VAQを維持する。
【0033】
時刻t2になると、制御回路4は、ホールド信号をローレベルに制御しトランジスタQ1をオフにしながら、可変電流源7から第1リセット電流をAPD6のカソードに供給させる。第1リセット電流は、
図2や
図3の第1リセット電流よりも大きな電流である。このため、
図5では、より短時間でAPD6のカソード電圧を引き上げることができる。ちなみに、t1~t2の間に可変電流源7から第1リセット電流をAPD6のカソードに供給しても、第1リセット電流はトランジスタQ1が引き込める電流よりも小さいため、APD6のカソード電圧がVAQ付近に維持できる。この場合、電流を無駄にVhiからトランジスタQ1を介してVAQに流すことになるが、制御回路4の制御を簡易化することができる。
【0034】
APD6のカソード電圧が閾値電圧Vthまで上昇すると、制御回路4は、可変電流源7から第2リセット電流をAPD6のカソードに供給させる。これにより、APD6のカソードは、初期化電圧(例えば電圧Vhi)に復帰する。
【0035】
ホールド回路8を設ける理由は以下の通りである。APD6が光を検出すると、APD6の内部に電子-正孔対が生成され、電子又は正孔によるアバランシェ電流が生じて、大量の電子-正孔対が生成される。これがAPD6の発火現象である。大量の電子-正孔対が発生することでAPD6両端の電位差がAPD6のブレークダウン電圧以下に低下し、アバランシェ電流が止まる。APD6が発火した後、APD6の内部の電子及び正孔を排出し終わらない間にAPD6のカソードが発火できる電圧(APD6の両端の電位差がブレークダウン電圧以上になるカソード電圧)に復帰すると、光を検出しないにもかかわらずAPD6の内部に再びアバランシェ電流が流れて、再発火するおそれがある。これはアフターパルス現象と呼ばれる。APD6が光を検出してから、次に光を検出可能になるまでのデッドタイムを短くすると、APD6の内部の電子及び正孔を排出し終わらない間にアバランシェ電流が流れるおそれがあり、アフターパルス現象が起きやすくなる。
【0036】
図4の光検出装置1では、APD6が光を検出して、APD6のカソード電圧がVth以下に下がったときに、ホールド回路8内のトランジスタQ1をオンして、APD6のカソード電圧を電圧VAQまで引き下げる。APD6のカソード電圧を電圧V0よりも低い電圧VAQにすることで、トランジスタQ1を介してAPD6内部の電子-正孔対を迅速に引き抜くことができる。よって、時刻t2~t3では、
図2や
図3の第1リセット電流よりも大きな電流を可変電流源7からAPD6のカソードに供給しても、APD6にアバランシェ電流が流れなくなる。APD6に大きな電流を流せるということは、APD6のカソード電圧を初期化電圧に設定するまでの時間を短縮できることを意味し、デッドタイムを短縮できる。
【0037】
上述したホールド期間は、光検出装置1を動作させる前に事前に設定される。
図6と
図7はホールド期間の設定方法の一例を示す図である。
図6は複数のホールド期間の特性曲線を示している。
図6の横軸はデッドタイムDT、縦軸はアフターパルス率である。
図6の各曲線w1~w3は、予め設定した複数のホールド期間T1~T3のそれぞれについて、第1リセット電流を掃引した場合の、デッドタイムとアフターパルス率の対応関係を示している。
図6の曲線w4は、曲線w1~w3を含む複数の曲線のアフターパルス率が最小になる点を繋いだ包絡線である。なお、
図6では、3つの曲線w1~w3を図示しているが、実際には、それぞれホールド期間が異なる多数の曲線のアフターパルス率が最小になる点を繋いで包絡線が生成される。
【0038】
図7は、
図6の包絡線上の各点におけるアフターパルス率、ホールド期間、及び第1リセット電流の対応関係をリスト化した図である。
図7の各データは、実際に測定又はシミュレーションにより得られたデータでもよいし、測定又はシミュレーションにより得られた複数のデータを補間して生成されたデータを含んでいてもよい。
【0039】
ホールド期間を設定する場合は、アフターパルス率の設計値に近似するアフターパルス率を有する曲線を選択する。具体的には、アフターパルス率の設計値Xが
図7のリスト中のアフターパルス率X2とX3の間の値の場合、X2とX3のうち設計値Xにより近い方(例えばX3)を選択し、選択したアフターパルス率に対応するホールド期間T3と第1リセット電流I3を選択する。あるいは、アフターパルス率の設計値Xに近いアフターパルス率X2とX3と、対応するホールド期間T2、T3と第1リセット電流I2、I3を用いて補間処理を行って、設計値Xに対応するホールド期間Tと、対応する第1リセット電流を求める。
【0040】
このように、第2の実施形態では、APD6が光を検出してAPD6のカソード電圧が電圧V0まで低下すると、ホールド回路8にてAPD6のカソード電圧をさらに低い電圧VAQまで低下させた状態で、予め定めたホールド期間の間、その電圧を維持する。これにより、ホールド期間内にAPD6の内部の電子及び正孔を迅速かつ十分に引き抜くことができる。よって、ホールド期間が終わった後に、APD6のカソードに可変電流源7から大きな電流を供給しても、APD6にアバランシェ電流が流れるおそれがなくなり、デッドタイムを短縮できる。
【0041】
(第3の実施形態)
図1や
図4の可変電流源7と制御回路4には、互いに異なる電源電圧が供給される場合がある。例えば、可変電流源7は、APD6のカソードを初期化電圧に引き上げることから、制御回路4よりも高い電源電圧が供給される場合がある。この場合、
図1や
図4の可変電流源7の入力ノードと制御回路4の出力ノードは互いに異なる電位レベルになり、可変電流源7の入力ノードと制御回路4の出力ノードを直接接続できなくなる。
【0042】
例えば、可変電流源7の電源電圧が制御回路4の電源電圧よりも高い場合、
図1や
図4の可変電流源7の入力ノードの電位レベルは、制御回路4の出力ノードの電位レベルより高くなる。このため、制御回路4から出力された制御信号にて可変電流源7の電流を制御する場合、制御信号の電位レベルの変換が必要となる。
【0043】
図8は第3の実施形態による光検出装置1の回路図である。
図8の光検出装置1は、
図1の回路構成にレベルシフタ11を追加したものである。
【0044】
レベルシフタ11は、制御回路4から出力された制御信号の信号レベル、具体的には電位レベルの変換を行う。レベルシフタ11でレベル変換された制御信号は、可変電流源7に入力されて、可変電流源7から出力される電流が制御される。
【0045】
なお、
図4の光検出装置1にレベルシフタ11を追加して、
図4の光検出装置1内の制御回路4から出力された制御信号の電位レベルをレベルシフタ11で変換してから、可変電流源7に入力してもよい。後述するように、レベルシフタ11と可変電流源7の少なくとも一部を統合することも可能である。
【0046】
このように、第3の実施形態では、制御回路4から出力された制御信号の電位レベルを変換するレベルシフタ11を設けて、レベル変換後の制御信号にて可変電流源7の電流を制御する。このため、可変電流源7と制御回路4に互いに異なる電源電圧が供給される場合であっても、制御回路4によって可変電流源7を制御できる。
【0047】
(第4の実施形態)
第1~第3の実施形態による可変電流源7の内部構成には種々の構成が考えられる。以下では、可変電流源7の代表的な構成を説明する。
【0048】
(可変電流源7の第1例)
図9は可変電流源7の第1例の回路図である。
図9の可変電流源7は、PMOSトランジスタQ2を有する。
図9のトランジスタQ2のゲートには、制御回路4からの制御信号が入力される。制御信号は
図8のように、レベルシフタ11でレベル変換した後の制御信号でもよい。
図9のトランジスタQ2のソースは第1電圧ノードVhiに接続され、ドレインから出力された電流がAPD6のカソードに供給される。
【0049】
図10は
図9の可変電流源7の特性図である。
図10の横軸は
図9のトランジスタQ2のドレイン-ソース間電圧(-Vds)、縦軸はゲート-ソース間電圧(-Vgs)である。
【0050】
可変電流源7の電流は、α(Vgs-Vth)2で表される。VthはトランジスタQ2の閾値電圧、αはトランジスタQ2のゲート-ソース間電圧VgsからトランジスタQ2のドレイン-ソース間電流を求める係数である。αとVthは、半導体プロセスやトランジスタQ2のサイズにより決まる定数である。
【0051】
このように、
図10の可変電流源7の電流は、α(Vgs-Vth)
2の式からわかるように、制御信号、すなわちVgsが小さい間は少しずつ変化し、制御信号が大きくなるほど、変化量が大きくなる。
【0052】
図9は可変電流源7をPMOSトランジスタQ2で構成する例を示したが、
図11のようにNMOSトランジスタQ3を用いて構成してもよい。
図11は
図9の一変形例による可変電流源7の回路図、
図12は
図11の可変電流源7の特性図である。
図12の横軸は
図11のトランジスタQ3のドレイン-ソース間電圧Vds、縦軸はゲート-ソース間電圧Vgsである。
【0053】
図11の可変電流源7の電流は、
図9の可変電流源7と同様に、α(Vgs-Vth)
2で表される。
【0054】
(可変電流源7の第2例)
図13は可変電流源7の第2例の回路図である。
図13の可変電流源7は、カレントミラー回路を構成する2つのPMOSトランジスタQ4、Q5と、オペアンプ(差動増幅器)12と、可変抵抗13とを有する。
【0055】
可変抵抗13の抵抗値は、制御回路4から出力される制御信号により制御される。可変抵抗13は、トランジスタQ4のドレインと接地ノードの間に接続されている。オペアンプ12の正側入力端子には、トランジスタQ4のドレインと可変抵抗13の一端が接続されている。オペアンプ12の負側入力端子には基準電圧Vrefが入力されている。
【0056】
オペアンプ12の出力端子は、トランジスタQ4、Q5の両ゲートに接続されている。トランジスタQ4、Q5の両ソースは第1電圧ノードVhiに接続されている。トランジスタQ5のドレインから出力された電流がAPD6のカソードに供給される。
【0057】
図13の可変電流源7内のオペアンプ12は、可変抵抗13の一端側(トランジスタQ4のドレイン)電圧が基準電圧Vrefと等しくなるように帰還制御を行う。可変抵抗13の抵抗値は、制御回路4から出力される制御信号により変化する。オペアンプ12は、可変抵抗13の一端側電圧と基準電圧Vrefとの電圧差に応じた信号を出力する。この信号はトランジスタQ4、Q5の両ゲートに入力され、トランジスタQ4のドレイン電圧、すなわち可変抵抗13の一端側電圧が変化し、オペアンプ12の負側入力端子に帰還される。
【0058】
制御回路4からの制御信号が変化すると、可変抵抗13の抵抗値が変化して、可変抵抗13を流れる電流が変化する。オペアンプ12は、正側入力端子と負側入力端子の電位が等しくなるように帰還制御を行うため、トランジスタQ5のドレインからは、可変抵抗13を流れる電流に比例した電流が出力されて、APD6のカソードに供給される。トランジスタQ4、Q5のサイズが同じであれば、可変抵抗13を流れる電流と同じ電流がトランジスタQ5のドレインからAPD6のカソードに供給される。
【0059】
このように、
図13の可変電流源7では、制御回路4からの制御信号によって可変抵抗13の抵抗値を制御でき、これにより、可変電流源7からAPD6のカソードに供給される電流を制御できる。
【0060】
図13の可変電流源7の一変形例として、可変抵抗13を抵抗値が固定の抵抗とし、かつ制御回路4からの制御信号により、基準電圧Vrefの電圧レベルを制御してもよい。この場合、基準電圧Vrefの電圧レベルに応じて抵抗の一端側電圧レベルが変化し、これにより、抵抗を流れる電流が変化し、可変電流源7からAPD6のカソードに供給される電流も変化する。
【0061】
(可変電流源7の第3例)
図14は可変電流源7の第3例の回路図である。
図14の可変電流源7は、カレントミラー回路を構成する2つのPMOSトランジスタQ4a、Q5と、電流源14とを有する。
【0062】
トランジスタQ4aは、制御信号によりサイズを可変させることができ、これにより駆動能力を可変させることができる。すなわち、トランジスタQ4aは、制御信号により、そのドレイン電流を可変させることができる。トランジスタQ4aとQ5はカレントミラー回路を構成しているため、制御信号によりトランジスタQ4aのドレイン電流が変化すると、そのドレイン電流に比例した電流がトランジスタQ5のドレインから出力される。
【0063】
トランジスタQ4aを、並列接続された複数の子トランジスタで構成し、制御回路4からの制御信号により、複数の子トランジスタのうち任意の数の子トランジスタを選択できるようにすることで、制御信号によりトランジスタQ4aのサイズを可変させ、トランジスタQ4aのドレイン電流を変化させることができる。
【0064】
電流源14は、トランジスタQ4aのドレインと接地ノードの間に接続されている。制御信号により、トランジスタQ4aのドレイン電流を可変させる場合、そのドレイン電流と同じ電流を電流源14に流すようにする。よって、電流源14は、制御信号により電流を可変できる可変電流源である。
【0065】
(レベルシフタ11と可変電流源7を統合する第1例)
図8の光検出装置1はレベルシフタ11を備えているが、レベルシフタ11と可変電流源7の少なくとも一部を統合する構成も考えられる。
【0066】
図15はレベルシフタ11と可変電流源7の少なくとも一部を統合する第1例の回路図である。
図15のレベルシフタ11は、PMOSトランジスタQ6と可変電流源15とを有する。
【0067】
制御回路4は低耐圧の部品で構成可能であるが、可変電流源15は高耐圧の部品で構成する必要がある。トランジスタQ6は、可変電流源7を構成するPMOSトランジスタQ7とカレントミラー回路を構成している。トランジスタQ6とQ7の両ソースは第1電圧ノードVhiに接続されている。トランジスタQ6のゲートは、トランジスタQ6のドレイン、可変電流源15の一端、及びトランジスタQ7のゲートと接続されている。
【0068】
可変電流源15から出力される電流は、制御回路4からの制御信号により制御される。可変電流源15を流れる電流が変化すると、トランジスタQ6のドレイン電流が変化し、トランジスタQ6とカレントミラー回路を構成するトランジスタQ7のドレイン電流も変化する。トランジスタQ7のドレイン電流は、APD6のカソードに供給される。
【0069】
(レベルシフタ11と可変電流源7を統合する第2例)
図16はレベルシフタ11と可変電流源7の少なくとも一部を統合する第2例の回路図である。
図16のレベルシフタ11は、PMOSトランジスタQ6と、NMOSトランジスタQ8、Q9と、可変電流源16とを有する。
【0070】
トランジスタQ6とQ8は、第1電圧ノードVhiと接地ノードの間にカスコード接続されている。トランジスタQ6は、可変電流源7を構成するNMOSトランジスタQ7とカレントミラー回路を構成している。トランジスタQ6とQ7の両ソースは第1電圧ノードVhiに接続されている。トランジスタQ7のドレイン電流は、APD6のカソードに供給される。
【0071】
トランジスタQ8は、トランジスタQ9とカレントミラー回路を構成している。トランジスタQ8とQ9の両ソースは接地ノードに接続されている。トランジスタQ9のドレインと第2電圧ノードVlogicの間には可変電流源16が接続されている。可変電流源16から出力される電流は、制御回路4からの制御信号により制御される。電圧Vlogicは電圧Vhiよりも低い電圧であり、トランジスタQ8、Q9を有するカレントミラー回路により、電圧レベルの変換を行う。制御回路4と可変電流源16は、低耐圧の部品で構成可能であるのに対して、トランジスタQ6とQ7は高耐圧のトランジスタにする必要がある。
【0072】
可変電流源16が、制御回路4からの制御信号に応じた電流を出力すると、その電流はトランジスタQ9のソースに流れ、その電流に比例した電流がトランジスタQ8のソースと、トランジスタQ6のドレインに流れる。これにより、トランジスタQ6のドレイン電流に比例した電流がトランジスタQ7のドレインに流れて、APD6のカソードに供給される。
図16内の2つのカレントミラー回路のカレントミラー比が1:1であれば、可変電流源16から出力される電流と同じ電流がトランジスタQ7のドレインからAPD6のカソードに供給される。
【0073】
(レベルシフタ11と可変電流源7を統合する第3例)
図17はレベルシフタ11と可変電流源7の少なくとも一部を統合する第3例の回路図である。
図17のレベルシフタ11は、PMOSトランジスタQ6と、NMOSトランジスタQ8、Q9と、第1可変電流源16と、第2可変電流源17とを有する。
【0074】
トランジスタQ6とQ8は、第1電圧ノードVhiと接地ノードの間にカスコード接続されている。トランジスタQ6は、可変電流源7を構成するNMOSトランジスタQ7とカレントミラー回路を構成している。
【0075】
トランジスタQ9は、トランジスタQ8とカレントミラー回路を構成している。トランジスタQ9のドレインと第2電圧ノードVlogicとの間には第1可変電流源16が接続されている。トランジスタQ9のソースは接地されている。トランジスタQ8のドレインと接地ノードの間には、第2可変電流源17が接続されている。
【0076】
第1可変電流源16と第2可変電流源17は、制御回路4からの制御信号により電流を制御する。第1可変電流源16は低耐圧の電流源であるのに対し、第2可変電流源17は高耐圧の電流源である。
【0077】
制御回路4からの制御信号により、第1可変電流源16から出力される電流が変化すると、トランジスタQ9のドレイン-ソース間の電流も変化し、トランジスタQ6とカレントミラー回路を構成するトランジスタQ8のドレイン-ソース間の電流も変化する。
【0078】
また、制御回路4からの制御信号により、第2可変電流源17から出力される電流も変化する。トランジスタQ8のドレイン-ソース間の電流と第2可変電流源17の電流を合わせた電流がトランジスタQ6のソース-ドレイン間に流れる。よって、トランジスタQ6とカレントミラー回路を構成するトランジスタQ7のドレイン電流が変化し、そのドレイン電流がAPD6のカソードに供給される。
【0079】
第1可変電流源16とトランジスタQ9は、APD6が光を検出した直後の第1リセット電流を生成する。第1リセット電流は小さく、リセット時間が長いために電流の誤差がリセット時間の誤差に大きく影響し、電流の精度が要求されるため、低耐圧小型なトランジスタで構成することで複雑な構造でもサイズが小さい第1可変電流源16とトランジスタQ9で生成される。これに対して、第2リセット電流は大きくリセット時間が短いため、電流の誤差があってもリセット時間の誤差が小さく、第2リセット電流はそれほど精度が要求されないため、例えば
図11に示す簡易な回路で第2可変電流源17を構成しても良い。
【0080】
このように、第3の実施形態では、種々の回路構成にて可変電流源7を実現できる。また、レベルシフタ11と可変電流源7の少なくとも一部を統合することにより、精度が要求されない部分は簡易な回路構成とし、精度が要求される部分は複雑な回路構成とすることで、必要最小限の回路規模で光検出装置1を構成できる。
【0081】
(第4の実施形態)
第1~第3の実施形態による光検出装置1を一つの画素として、二元方向に複数個ずつ画素を配置した受光センサを構成することができる。受光センサは、例えば対象物までの距離を計測する目的で使用できる。距離計測精度を向上させるには、画素数を増やす必要があるが、そのためには、画素サイズをできるだけ小さくしなければならない。また、画素数が増えると、消費電力が増えるため、低消費電力の画素構造にするのが望ましい。以下に説明する第4の実施形態による光検出装置1は、画素サイズを小さくする工夫を施したものである。
【0082】
図18は第4の実施形態による光検出装置1の主要部の構成を示す回路図であり、リセット回路3内の可変電流源7の回路構成を示している。
【0083】
図18の可変電流源7は、複数の画素PXで共用される第1回路81と、画素PXごとに設けられる第2回路82とを有する。
【0084】
第1回路81は、APD6が光を検出した直後に動作し、APD6のカソードに第1電流量の電流を供給する。以下では、APD6に供給される第1電流量の電流を第1リセット電流と呼ぶ。
【0085】
第2回路82は、APD6のカソードに第1電流量よりも多い第2電流量の電流を供給する。以下では、APD6に供給される第2電流量の電流を第2リセット電流と呼ぶ。
【0086】
第1回路81は、電流源84とNMOSトランジスタQ9を有する。第2回路82は、カレントミラー回路を構成するPMOSトランジスタQ6、Q7と、NMOSトランジスタQ8、Q10とを有する。
【0087】
第1回路81内のトランジスタQ9と第2回路82内のトランジスタQ8はカレントミラー回路を構成している。トランジスタQ9のドレインは電流源84に接続され、トランジスタQ8、Q9の両ソースは接地されている。
【0088】
トランジスタQ6、Q8は、第1電圧ノードVhiと接地ノードの間にカスコード接続されている。トランジスタQ10のゲートには制御回路4からの制御信号が入力される。トランジスタQ10のドレインはトランジスタQ6、Q7のゲートと、トランジスタQ6、Q8の両ドレインに接続されている。トランジスタQ10のソースは接地されている。トランジスタQ10は、APD6のカソード電圧が閾値電圧Vth以上になるとオンし、ドレイン-ソース間に第2リセット電流から第1リセット電流を減じた電流量の電流を流す。このとき、トランジスタQ8のドレイン-ソース間には第1リセット電流が流れるため、トランジスタQ6のドレイン-ソース間には、第2リセット電流が流れる。トランジスタQ6とQ7のカレントミラー比が1:1の場合には、トランジスタQ7のドレイン-ソース間には第2ドレイン電流が流れ、この電流がAPD6のカソードに供給される。
【0089】
APD6が光を検出した直後は、第1回路81内の電流源84からの電流がトランジスタQ9のドレイン-ソース間に流れ、トランジスタQ9とカレントミラー回路を構成するトランジスタQ8に、トランジスタQ9のソース電流に比例した電流が流れる。この電流はトランジスタQ6のソース-ドレイン間に流れる。この電流は、トランジスタQ6とカレントミラー回路を構成するトランジスタQ9のドレインにも流れる。トランジスタQ8、Q9のカレントミラー比と、トランジスタQ6、Q7のカレントミラー比がいずれも1:1の場合、トランジスタQ9のドレイン-ソース間に流れる第1リセット電流と同じ電流量の第1リセット電流がトランジスタQ7のドレイン-ソース間に流れ、この電流がAPD6のカソードに供給される。
【0090】
その後、制御回路4からの制御信号により、トランジスタQ10がオンして、トランジスタQ10のドレイン-ソース間に、第2リセット電流から第1リセット電流を減じた電流量の電流が流れると、トランジスタQ6のドレイン-ソース間には第2リセット電流が流れ、この電流がAPD6のカソードに供給される。
【0091】
図18では、第1リセット電流を生成する第1回路81を複数の画素PXで共用し、第2リセット電流を生成する第2回路82を画素PXごとに設ける例を示したが、リセット回路3内の可変電流源7の回路構成には種々の変形例が考えられる。以下では、代表的な変形例(第1変形例と第2変形例)を順に説明する。
【0092】
(第1変形例)
図19は可変電流源7の第1変形例の回路図である。
図19の可変電流源7は、第1回路81、第2回路82、及び第3回路83を有する。
【0093】
第1回路81は、
図18の第1回路81と同様に構成されており、電流源84とNMOSトランジスタQ9を有する。
図19の電流源84は、
図18の電流源84と同じであり、電流源84から出力された電流は、トランジスタQ9のドレイン-ソース間に流れる。この電流は、第1電流量の第1リセット電流である。第1回路81は、2以上の画素PXで共用される。トランジスタQ9のソースは接地されており、ゲートとドレインは互いに接続されている。トランジスタQ9は、第3回路83内のNMOSトランジスタQ8とカレントミラー回路を構成している。
【0094】
第2回路82は、電流源85とNMOSトランジスタQ11を有する。電流源85から出力された電流は、トランジスタQ11のドレイン-ソース間に流れる。この電流は、第2リセット電流と第1リセット電流の差分の電流である。トランジスタQ11のソースは接地されており、ゲートとドレインは互いに接続されている。トランジスタQ11は、第3回路83内のNMOSトラにスタQ12とカレントミラー回路を構成している。第2回路82は、2以上の画素PXで共用される。
【0095】
第3回路83は、PMOSトランジスタQ6、Q7からなるカレントミラー回路と、NMOSトランジスタQ8、Q10及びQ12と、切替回路86とを有する。第3回路83は、画素PXごとに設けられる。
【0096】
トランジスタQ6~Q8とQ10の接続は、
図18と同様である。トランジスタQ12のドレインはトランジスタQ6、Q8の両ドレインに接続されている。トランジスタQ12のソースは接地されている。
【0097】
トランジスタQ12のゲートと第2回路82内のトランジスタQ11のゲートは、切替回路86を介して接続されており、切替回路86がオンの場合には、トランジスタQ11、Q12はカレントミラー回路を構成する。切替回路86は、制御回路4からの制御信号によりオンまたはオフする。APD6のカソード電圧が第1閾値電圧Vth1以上かつ第2閾値電圧Vth2未満のときに切替回路86はオンし、APD6のカソード電圧が第1閾値電圧Vth1未満、又は第2閾値電圧Vth1以上のときに切替回路86はオフする。
【0098】
以下では、
図19の可変電流源7内のすべてのカレントミラー回路のカレントミラー比が1:1である例を説明する。
【0099】
APD6が光を検出した直後は、第1回路81内のトランジスタQ9のドレイン-ソース間に第1リセット電流が流れる。トランジスタQ9は、第3回路83内のトランジスタQ8とカレントミラー回路を構成しており、トランジスタQ8のドレイン-ソース間とトランジスタQ6のソース-ドレイン間にも電流が流れる。トランジスタQ6はトランジスタQ7とカレントミラー回路を構成しているため、トランジスタQ7のドレインに第1リセット電流が流れて、APD6のカソードに供給される。
【0100】
APD6のカソード電圧が第1閾値電圧Vth1に到達すると、切替回路86がオンし、トランジスタQ11のドレイン-ソース間電流と同じ電流(第2リセット電流-第1リセット電流)がトランジスタQ12のドレイン-ソース間に流れる。このとき、トランジスタQ8のドレイン-ソース間には第1リセット電流が流れている。よって、トランジスタQ6のドレイン-ソース間には、トランジスタQ12のドレイン-ソース間を流れる電流(第2リセット電流-第1リセット電流)と、トランジスタQ8のドレイン-ソース間を流れる第1リセット電流を合成した電流である第2リセット電流が流れる。よって、トランジスタQ6とカレントミラー回路を構成するトランジスタQ7のドレインには、第2リセット電流が流れて、APD6のカソードに供給される。
【0101】
その後、APD6のカソード電圧が第2閾値電圧Vth2に到達すると、トランジスタQ12がオンするとともに、切替回路86はオフする。これにより、トランジスタQ10のドレイン-ソース間には第3リセット電流-第1リセット電流が流れる。このとき、トランジスタQ8のドレイン-ソース間には第1リセット電流が流れるため、両電流を合算した第3リセット電流がトランジスタQ6のドレイン-ソース間に流れる。よって、トランジスタQ6とカレントミラー回路を構成するトランジスタQ9のドレインには第3リセット電流が流れて、APD6のカソードに供給される。
【0102】
(第2変形例)
図20は可変電流源7の第2変形例の回路図である。
図20の可変電流源7は、第1回路81、第2回路82、及び第3回路83を有する。第1回路81は2以上の画素PXで共用され、第2回路82と第3回路83は画素PXごとに設けられる。
【0103】
第1回路81は、電流源87とNMOSトランジスタQ11を有する。トランジスタQ11のドレインは電流源87に接続され、ソースは接地されている。トランジスタQ11のゲートは、第2回路82内の切替回路86を介して、トランジスタQ10のゲートに接続されている。切替回路86がオンのときは、トランジスタQ11とQ10はカレントミラー回路を構成する。電流源87は、第2リセット電流から第1リセット電流を減じた電流量の電流を出力する。この電流は、トランジスタQ11のドレイン-ソース間を流れる。
【0104】
第2回路82は、PMOSトランジスタQ6、Q7からなるカレントミラー回路と、NMOSトランジスタQ10、Q13と、切替回路86とを有する。第3回路83はトランジスタQ12を有する。また、第3回路83は、第2回路82とトランジスタQ6、Q7、Q13を共用する。
【0105】
切替回路86は、制御回路4からの制御信号によりオン又はオフする。具体的には、切替回路86は、APD6のカソード電圧が第1閾値電圧Vth1以上で、かつ第2閾値電圧Vth2未満のときにオンし、第1閾値電圧Vth1未満か、又は第2閾値電圧Vth2以上のときにオフする。
【0106】
トランジスタQ6とQ13は、第1電圧ノードVhiと接地ノードの間にカスコード接続されている。トランジスタQ13のゲートには、制御回路4からの制御信号が入力される。トランジスタQ10のドレインは、トランジスタQ13のドレインとトランジスタQ6、Q7の両ゲートに接続され、トランジスタQ10のソースは接地されている。トランジスタQ12のドレインはトランジスタQ13のドレインに接続され、トランジスタQ12のソースは接地されている。トランジスタQ12のゲートには、制御回路4からの制御信号が入力される。
【0107】
トランジスタQ13は、APD6が光を検出した直後に、ドレイン-ソース間に第1リセット電流を流す。トランジスタQ12は、APD6のカソード電圧が第2閾値電圧以上になると、第3リセット電流から第1リセット電流を減じた電流を流す。
【0108】
APD6が光を検出した直後は、制御回路4からの制御信号に応じて、トランジスタQ13はドレイン-ソース間に第1リセット電流を流す。これにより、トランジスタQ6も同じ第1リセット電流を流し、トランジスタQ6とカレントミラー回路を構成するトランジスタQ7もドレイン-ソース間に第1リセット電流を流し、この電流がAPD6のカソードに供給される。
【0109】
APD6のカソード電圧が第1閾値電圧Vth1に到達すると、切替回路86がオンし、トランジスタQ11のドレイン-ソース間を流れる第2リセット電流から第1リセット電流を減じた電流と同じ電流がトランジスタのドレイン-ソース間に流れる。これにより、トランジスタQ6のドレイン-ソース間には、第2リセット電流が流れる。よって、トランジスタQ6とカレントミラー回路を構成するトランジスタQ7のドレイン-ソース間にも第2リセット電流が流れ、この電流がAPD6のカソードに供給される。
【0110】
APD6のカソード電圧が大2閾値電圧Vth2に到達すると、制御回路4からの制御信号に応じて、切替回路86がオフするとともに、トランジスタQ12のドレイン-ソース間に第3リセット電流から第1リセット電流を減じた電流が流れる。これにより、トランジスタQ6のドレイン-ソース間には第3リセット電流が流れる。よって、トランジスタQ6とカレントミラー回路を構成するトランジスタQ7のドレイン-ソース間にも第3リセット電流が流れ、この電流がAPD6のカソードに供給される。
【0111】
このように、第4の実施形態では、可変電流源7で生成される複数のリセット電流のうち、精度が要求されるリセット電流は、高精度な回路で生成するとともに、その回路を複数の画素PXで共用し、全体の面積を削減する。また、複数のリセット電流のうち、精度が要求されないリセット電流は、画素PXごとに設けられる簡易な回路にて生成する。これにより、APD6のデッドタイムを短縮しつつ、各画素PXのサイズを必要最小限のサイズにすることができる。
【0112】
(第5の実施形態)
第1~第4の実施形態による光検出装置を一次元又は二次元方向に複数配置してチップ化する構成も考えられる。
【0113】
図21は4つのAPD6と、4つのアクティブクエンチ回路(図面ではAQと記載)5とを備えた光検出装置1の模式的なレイアウト図である。
図21の光検出装置1は、第1~第4の実施形態のいずれかによる光検出装置である。
【0114】
図21の4つのAPD6で1つのSiPM(Silicon Photomultiplier)18が構成されている。また、4つのアクティブクエンチ回路5でアクティブクエンチ回路群19が構成されている。
図21では、X方向及びY方向に2個ずつAPD6を配置したSiPM18に隣接して、X方向及びY方向に2個ずつアクティブクエンチ回路5を配置しているが、SiPM18内のAPD6の個数及び配置と、SiPM18とアクティブクエンチ回路5との位置関係等は任意である。
【0115】
実際には、
図21のようなSiPM18とアクティブクエンチ回路5が複数個ずつ半導体基板上に配置されて、ワンチップ化される。
図22は複数のSiPM18とアクティブクエンチ回路群(AQs)19を半導体基板上に配置したレイアウト図である。図示のように、SiPM18とアクティブクエンチ回路群19を一組として、X方向及びY方向に複数組が配置される。
【0116】
上述した第1乃至第5の実施形態による光検出装置1は、ToF(Time of Flight)方式の距離計測を行う電子装置に組み込むことができる。
図23は本実施形態による光検出装置1を内蔵する受光モジュール24を備えた電子装置21の概略構成を示すブロック図である。
図23の電子装置21は、投光部22と、光制御部23と、受光モジュール24と、信号処理部25と、画像処理部26とを備えている。このうち、投光部22と、光制御部23と、受光モジュール24と、信号処理部25とで、距離計測装置が構成される。上述した第1乃至第5の実施形態による光検出装置1は、受光モジュール24の少なくとも一部として実装される。
【0117】
図1の電子装置21の少なくとも一部は、1つ又は複数の半導体IC(Integrated Circuit)で構成可能である。例えば、信号処理部25と画像処理部26を一つの半導体チップの内部に集積してもよいし、この半導体チップに受光モジュール24まで含めて集積してもよい。また、この半導体チップに投光部22まで含めて集積してもよい。
【0118】
投光部22は、第1の光を投光する。第1の光は、例えば所定の周波数帯域のレーザ光である。レーザ光とは、位相及び周波数が揃ったコヒーレントな光である。投光部22は、パルス状の第1の光を所定の周期で間欠的に投光する。投光部22が第1の光を投光する周期は、第1の光の一つのパルスに基づいて距離計測装置で距離を計測するのに要する時間以上の時間間隔である。
【0119】
投光部22は、発振器31と、投光制御部32と、光源33と、第1駆動部34と、第2駆動部35とを有する。発振器31は、第1の光を投光する周期に応じた発振信号を生成する。第1駆動部34は、発振信号に同期させて、光源33に間欠的に電力を供給する。光源33は、第1駆動部34からの電力に基づいて、第1の光を間欠的に出射する。光源33は、単一のレーザ光を出射するレーザ素子でもよいし、複数のレーザ光を同時に出射するレーザユニットでもよい。投光制御部32は、発振信号に同期させて、第2駆動部35を制御する。第2駆動部35は、投光制御部32からの指示に応じて、発振信号に同期した駆動信号を光制御部23に供給する。
【0120】
光制御部23は、光源33から出射された第1の光の進行方向を制御する。また、光制御部23は、受光された第2の光の進行方向を制御する。
【0121】
光制御部23は、第1レンズ41と、ビームスプリッタ42と、第2レンズ43と、走査ミラー44と、を有する。
【0122】
第1レンズ41は投光部22から出射された第1の光を集光させて、ビームスプリッタ42に導く。ビームスプリッタ42は、第1レンズ41からの第1の光を二方向に分岐させて、第2レンズ43と走査ミラー44に導く。第2レンズ43は、ビームスプリッタ42からの分岐光を受光モジュール24に導く。第1の光を受光モジュール24に導光する理由は、受光モジュール24にて投光タイミングを検出するためである。
【0123】
走査ミラー44は、投光部22内の第2駆動部35からの駆動信号に同期して、ミラー面を回転駆動する。これにより、ビームスプリッタ42を通過して走査ミラー44のミラー面に入射された分岐光(第1の光)の反射方向を制御する。走査ミラー44のミラー面を一定周期で回転駆動することで、光制御部23から出射された第1の光を少なくとも一次元方向に走査させることができる。ミラー面を回転駆動する軸を二方向に設けることで、光制御部23から出射された第1の光を二次元方向に走査させることも可能となる。
図1では、走査ミラー44により、電子装置21から投光される第1の光をX方向及びY方向に走査させる例を示している。
【0124】
電子装置21から投光された第1の光の走査範囲内に、対象物20が存在する場合、第1の光は対象物20で反射される。対象物20で反射された反射光のうち、少なくとも一部は、受光モジュール24で受光される。
【0125】
受光モジュール24は、光検出器51と、増幅器52と、第3レンズ53と、受光センサ54と、A/D変換器55とを有する。光検出器51は、ビームスプリッタ42で分岐された光を受光して電気信号に変換する。光検出器51にて、第1の光の投光タイミングを検出できる。増幅器52は、光検出器51から出力された電気信号を増幅する。
【0126】
第3レンズ53は、対象物20で反射されたレーザ光を受光センサ54に結像させる。受光センサ54は、レーザ光を受光して電気信号に変換する。受光センサ54は、上述した第1乃至第5の実施形態による光検出装置1が適用可能である。受光センサ54は、SiPM(Silicon Photomultiplier)とも呼ばれる。
【0127】
A/D変換器55は、受光センサ54から出力された電気信号を所定のサンプリングレートでサンプリングしてA/D変換し、デジタル信号を生成する。
【0128】
信号処理部25は、第1の光を反射させた対象物20までの距離を計測するとともに、第2の光に応じたデジタル信号を記憶部61に記憶する。信号処理部25は、記憶部61と、距離計測部62と、記憶制御部63とを有する。
【0129】
距離計測部62は、第1の光及び反射光に基づいて、対象物20までの距離を計測する。より具体的には、距離計測部62は、第1の光の投光タイミングと、受光センサ54で受光された第2の光に含まれる反射光の受光タイミングとの時間差に基づいて、対象物までの距離を計測する。すなわち、距離計測部62は、以下の式(1)に基づいて、距離を計測する。
距離=光速×(反射光の受光タイミング-第1の光の投光タイミング)/2 …(1)
【0130】
式(1)式における「反射光の受光タイミング」とは、より正確には、反射光のピーク位置の受光タイミングである。距離計測部62は、第2の光に含まれる反射光のピーク位置を、A/D変換器55で生成されたデジタル信号に基づいて検出する。
【0131】
本実施形態による電子装置21の少なくとも一部は、SiP(Silicon in Package)で実装可能である。
図24は受光モジュール24と信号処理部25をパッケージの基板上に実装した例を示す模式的な斜視図である。
図24の基板71上には、第1ダイ72と第2ダイ73が設けられている。第1ダイ72上には、
図1の受光モジュール24内の受光センサ54が配置されている。受光センサ54は、上述した第1~第4の実施形態の光検出装置1を有するSiPM74である。SiPM74は、X方向及びY方向に複数個ずつ配置されている。第2ダイ73上には、
図1の受光モジュール24内のA/D変換器(ADC)55と、信号処理部25とが配置されている。第1ダイ72上のパッド76と、第2ダイ73上のパッド77とがボンディングワイヤ78で接続されている。
【0132】
図24のレイアウト図では、第1ダイ72上に複数のSiPM74を配置しているが、各SiPM74に対応づけて、APDのデッドタイムを短縮するためのアクティブクエンチ回路やパッシブクエンチ回路(AQs)を配置してもよい。
【0133】
本開示の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本開示の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0134】
1 光検出装置、2 光検出素子、3 リセット回路、4 制御回路、4a ホールド制御回路、5 アクティブクエンチ回路、7 可変電流源、8 ホールド回路、11 レベルシフタ、12 オペアンプ、13 可変抵抗、14 電流源、15、16 可変電流源、17 第2可変電流源、19 アクティブクエンチ回路群、20 対象物、21 電子装置、22 投光部、23 光制御部、24 受光モジュール、25 信号処理部、26 画像処理部、31 発振器、32 投光制御部、33 光源、34 第1駆動部、35 第2駆動部、41 第1レンズ、42 ビームスプリッタ、43 第2レンズ、44 走査ミラー、51 光検出器、52 増幅器、53 第3レンズ、54 受光センサ、55 A/D変換器、61 記憶部、62 距離計測部、63 記憶制御部、71 基板、72 第1ダイ、73 第2ダイ、76、77 パッド、78 ボンディングワイヤ、81 第1回路、82 第2回路、83 第3回路、84、85、87 電流源、86 切替回路