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特許7488811グリコールアルデヒドからモノエタノールアミンを製造するための方法及び触媒系
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】グリコールアルデヒドからモノエタノールアミンを製造するための方法及び触媒系
(51)【国際特許分類】
   C07C 213/02 20060101AFI20240515BHJP
   C07C 215/08 20060101ALI20240515BHJP
   B01J 25/02 20060101ALI20240515BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20240515BHJP
   B01J 29/06 20060101ALI20240515BHJP
   C07C 309/14 20060101ALI20240515BHJP
   C07C 303/02 20060101ALI20240515BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240515BHJP
【FI】
C07C213/02
C07C215/08
B01J25/02 Z
B01J31/02 103Z
B01J29/06 Z
C07C309/14
C07C303/02
C07B61/00 300
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021505774
(86)(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 US2019044073
(87)【国際公開番号】W WO2020028322
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】62/713,777
(32)【優先日】2018-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507303309
【氏名又は名称】アーチャー-ダニエルズ-ミッドランド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ブラジル,ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】マ,チ チェン
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107011194(CN,A)
【文献】特表2013-514306(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0186725(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0022912(US,A1)
【文献】特開平07-179415(JP,A)
【文献】Angewandte Chemie International Edition,2017年02月03日,Vol.56, No.11,p3050-3054,doi:10.1002/anie.201610964
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノエタノールアミンを製造する方法であって、
水素化触媒及び酸共触媒の両方の存在下で、グリコールアルデヒドをアミノ化剤と還元的アミノ化条件下で反応させて前記モノエタノールアミンを製造することを含み、
前記水素化触媒が、ラネーニッケルであり、
前記酸共触媒が、200未満のシリカ対アルミナのモル骨格比を有するゼオライト分子ふるいを含み、
前記ゼオライト分子ふるいが、Zeolyst CBV8014である、
方法。
【請求項2】
前記還元的アミノ化条件が、20℃~200℃の温度、3MPa~20MPaの水素分圧、及び0.5時間~10時間の滞留時間を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応が、前記グリコールアルデヒド及び前記アミノ化剤が加えられる水性反応混合物中で起こる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸共触媒が、前記水性反応混合物中の固体である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記酸共触媒が、200~1200μmol/gのルイス酸部位の密度を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記グリコールアルデヒドが、アルドース又はケトースの熱分解により得られる、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記モノエタノールアミンの少なくとも一部を硫酸エステル化して、2-アミノエチル硫酸を製造すること;及び
前記2-アミノエチル硫酸の少なくとも一部をスルホン化して、タウリンを製造すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の1つの側面は、バイオベースアミン合成の方法に関し、より詳細には、現在、非再生可能資源からも製造されているそのようなアミンの合成の方法に関する。本発明の別の側面は、モノエタノールアミンの製造の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの炭化水素原材料のコスト増大の長期的傾向は、多くの重要で有益な化学製品の製造のための石油系炭素に代わる代替的な源を求める大きな動機を作り出してきた。バイオマス(生きているか又は最近まで生きていた生物から誘導される材料)は、そのような多くの公知の高価値化学品を誘導できる再生可能な非石油系炭素の、容易に利用可能な高価格でない供給であると見なされている。バイオマスを、燃料、化学品、エネルギー、及び他の材料に転化できることは、地方の経済を強化し、石油及びガス資源への依存を減らし、空気及び水の汚染を減少させると期待されている。バイオマスなどの再生可能な資源からのエネルギー及び化学品の生成はまた、使用しなければ「隔離された」炭素である化石系の源からの、温室効果ガスである二酸化炭素の環境への正味の放出量を減少させる。
【0003】
それでもなお、石油系炭素からこれまで製造されてきた化学品の、再生可能な資源からの製造の持続可能な技術の開発には、依然として多大な課題が残る。例えば、近年、バイオディーゼル産業は、植物油及び獣脂中のトリグリセリドの精製の副生成物として、豊富な粗製グリセロールを提供した。このグリセロールを精製すると、非再生可能資源由来の同じ炭素数の公知の高価値化学品であるプロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)を製造するための原材料として役立ち得る。しかし、この目的のためにグリセロールを適切に精製するには、必要な工程に多大な費用がかかり、バイオディーゼル産業は、その収益性のために、税額控除及び他の形態の政府補助金に大きく依存している。
【0004】
最近の雑誌レビュー、Froidevaux et al, “Biobased Amines:From Synthesis to Polymers;Present and Future”, CHEM. REV. 116 (22):14181-14224 (2016)に述べられる通り、アミンは、例えば、ポリアミド、ポリウレア、及びポリエポキシドの合成のための重要なモノマーとして、石油系炭素由来の公知の有用な化学製品の一分類を代表し、それらは、全て、自動車、航空宇宙、建設、及び健康用途においてますます興味深いが、バイオベースの代替物が得られ得る元の天然アミンがほとんど利用可能でないという点で、さらなる課題を提示する。
【0005】
エタノールアミン-モノエタノールアミン、すなわち2-アミノエタノール(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、及びトリエタノールアミン(TEA)-は、石油系炭素由来の公知の商業的に重要なアミンの具体例であり、具体的にはエチレンオキシドをアンモニア水溶液と反応させることにより、MEA、DEA、及びTEAが互いに混合した状態で提供される。生成物分布は、種々の手段により、特に反応物の化学量論を変えることによりある程度変更できるが、それにもかかわらず、医薬品、洗剤、乳化剤、光沢剤、腐食防止剤に、又は中間体として使用するために、天然ガススクラビングのためのMEAを製造しようとするものは、一般的に、DEA及びTEAの利益を生む用途又は消費者も同様に探さなくてはならないだろう。出発物質としてのエチレンオキシドは、また、著しい毒物学的、反応性の安全性及び環境面での懸念を呈しており望ましくない。
【0006】
Froidevaux et al.の総説は、バイオベースのモノエタノールアミンがアミノ酸セリンから合成されたことに言及しているが、毎年製造されるセリンの量は、MEAの年間の需要を満たすためのバイオベースのモノエタノールアミンの合成及び供給に必要であろう量よりも数桁少なく、セリンを製造する必要性は、理想的には避けられるであろう追加のコストを暗示する。
【0007】
このように、現在の技術水準は、バイオベースのモノエタノールアミンを製造するさらなる改善された方法、特に、炭水化物からより直接に、又は中間体を経て進行する、より相応な有用性及び製造規模を有する方法から著しく利益を得るだろう。グリコールアルデヒド(C)は、まさにそのような中間体の一例であり、反応性のアルデヒドとヒドロキシル基を両方有する最小の分子であり、フルクトース又はスクロースなどのバイオマス由来の炭水化物からいくつかの転化経路により製造が可能である点で、反応性中間体として著しい有用性を有する。それでも、触媒の存在下で還元的アミノ化によりグリコールアルデヒドからMEA及びDEAを製造する方法を記載する、ごく最近より前の数年のいくつかの先例があるものの(例えば、米国特許第6,534,441号、米国特許第8,772,548号、及び米国特許第8,742,174号を参照)、グリコールアルデヒドからバイオベースMEAを商業規模で製造することが合理的に経済的に予測可能であると見なされるには、選択性及び収率の相当な改善が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、グリコールアルデヒドのモノエタノールアミンへの転化のための触媒系の改善点の発見と関連し、その触媒系は、この所望の生成物への改善された選択性を示し、その結果ジエタノールアミン及びエチレングリコールなどの副生成物に対して減少した選択性を示す。より詳細な態様は、グリコールアルデヒドの還元的アミノ化を実施して選択的にモノエタノールアミンを製造する際の酸、特にルイス酸の有益な効果に関連する。グリコールアルデヒド及びアミノ化剤が添加され、そこからモノエタノールアミンが製造される反応混合物に、水素化触媒と組み合わされるこの反応の共触媒として、ルイス酸が含まれ得る。好適なルイス酸は、一般的に共触媒と反応混合物の両方が液相にあるように(例えば、共触媒が可溶化されている場合)、反応混合物中で均一であり得る。或いは、そのようなルイス酸は、一般的に共触媒が固体として反応混合物中に存在するように、不均一であり得る。
【0009】
水素化触媒と共触媒の両方が固体である場合、反応後に触媒及び共触媒から生成混合物を分離することが容易であるという点でさらなる利益が得られる。バッチ運転の場合、これは、生成混合物からの触媒の単純な濾過を可能とする。固体触媒系は、触媒及び共触媒を、プロセスが連続的に実施されるのに必要である充分に低い圧力低下を伴い、したがって商業運転により適している形で、反応器(例えば固定床反応器)に収容されるのに充分な大きさの粒子に成形することも可能にする。連続運転は、反応物グリコールアルデヒドを、例えばアンモニア又はアンモニア水溶液(水酸化アンモニウム)などのアミノ化剤と、また水素と共に連続供給することを含み得る。これらの流れは、反応器に収容されて還元的アミノ化条件で運転している水素化触媒及び共触媒と接触し得る。そのような運転は、モノエタノールアミンを含む生成混合物の連続的な回収と、それに続くこの混合物からのモノエタノールアミン含有生成物の分離も含み得る。より詳細には、モノエタノールアミン含有生成物は、未転化の反応物及び/又は副生成物から分離され得る。未転化の反応物(例えば水素)の少なくとも一部は、反応器に再循環され得る(例えば、再循環コンプレッサーを使用して、再循環ガス流中の水素を反応器に戻す)。固体触媒の場合、水素化触媒及び酸共触媒を共に固体粒子として、例えば、水素化活性とルイス酸部位の両方を有する二元機能触媒の固体粒子として配合することも可能である。
【0010】
これらの態様及び他の態様、実施形態、並び関連する利点は、以下の詳細な説明から明らかだろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(i)触媒の非存在下、(ii)ラネーニッケルのみの存在下、及び(iii)ラネーニッケル及び共触媒としての金属トリフラートの両方の存在下で、グリコールアルデヒドの還元的アミノ化を実施した実験で得られた転化率及び生成物選択性の値の棒グラフである。
図2】(i)ラネーニッケルのみの存在下、及び(ii)ラネーニッケル及び種々の固体酸共触媒の両方の存在下で、グリコールアルデヒドの還元的アミノ化を実施した実験で得られたモノエタノールアミン及びジエタノールアミン収率の値の棒グラフである。
図3】(i)ラネーニッケルのみの存在下、及び(ii)ラネーニッケル及び固体酸共触媒としての種々のゼオライトの両方の存在下で、グリコールアルデヒドの還元的アミノ化を実施した実験で得られた生成物選択性の値の棒グラフである。
【0012】
図は、関与する原理及び反応化学の理解を助けるために本発明の実施形態を提示するものであるが、添付される特許請求の範囲に定義される本発明の範囲を限定するとは理解されないものとする。当業者には明らかである通り、本開示から得られた知識により、本発明の種々の他の実施形態による還元的アミノ化プロセスは、少なくとも一部分において、具体的な目的に従って決定された特定の触媒、共触媒、及び反応条件を利用するだろう。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態の詳細な説明]
本発明の実施形態は、グリコールアルデヒドからモノエタノールアミンを製造又は合成する方法又はプロセスを対象とする。望まれる還元的アミノ化反応経路は下記の通り描写され得る:
【化1】
【0014】
用語「グリコールアルデヒド」は、上記で示された化合物並びに本明細書に記載の反応混合物の水性環境中などで、この反応性化合物がとり得る種々の形態を包含することが意味される。そのような形態には、グリコールアルデヒド二量体及びオリゴマー形態、並びに水和された形態がある。グリコールアルデヒド二量体は特によく見られる形態であり、この形態は、環状構造である、2,5-ジヒドロキシ-1,4-ジオキサンとしても知られている。モノエタノールアミンへのモル選択性及びその理論収率を決定する目的で、各モルのグリコールアルデヒド二量体は、2モルのグリコールアルデヒドに等しいと考えられる。同様な考えが、他のグリコールアルデヒドオリゴマーに適用される。
【0015】
「モノエタノールアミンへのモル選択性」は、モノエタノールアミンの形成をもたらす、転化したグリコールアルデヒドのモル基準でのパーセンテージである。モノエタノールアミンの収率は、グリコールアルデヒドを100%の転化率及び100%のモノエタノールアミンへのモル選択性で反応させることにより得られるであろう理論量に対するパーセンテージとして表され得られた量である。収率は、転化率と選択性の積として決定できる。したがって、10モルのグリコールアルデヒドが反応し、1モルのグリコールアルデヒドが(反応せずに)生成混合物中に残り、7モルのモノエタノールアミンがこの混合物中に存在する場合、(i)グリコールアルデヒドの転化率は90%(又は90モル%)であり、(ii)モノエタノールアミンへのモル選択性は78%であり(9モルのグリコールアルデヒドの転化から生じた7モルのモノエタノールアミンの形成)、及び(iii)モノエタノールアミンの収率は70%である。モル選択性及び収率の類似の定義が他の反応生成物にも適用される。
【0016】
特定の実施形態は、モノエタノールアミンを製造する方法であって、グリコールアルデヒド(この化合物の上述の形態を含む)を、水素化触媒と酸共触媒の両方の存在下で、還元的アミノ化条件でアミノ化剤と反応させて、モノエタノールアミンを(例えば、1つ以上の分離工程の後で精製された形態などでモノエタノールアミンが回収され得る生成混合物中で)製造することを含む方法を対象とする。代表的な水素化触媒はスポンジメタル触媒であり、粒状又は粉末形態の金属又は金属合金を指す。好ましい水素化触媒はスポンジニッケル触媒であり、ラネーニッケルとして知られている材料が例示的である。この触媒は、すなわち、ニッケル-アルミニウム合金として存在するニッケルから主に構成されている微粒の固体である。水素化触媒は、より一般的に、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、及びルテニウム(Ru)からなる群から選択される1種以上の遷移金属など、1種以上の水素化活性金属を含み得る。例えば、代表的な水素化触媒は、少なくとも重量で5%(重量%)、典型的には少なくとも10重量%、多くの場合少なくとも15重量%のそのような金属を含み得る。そのような遷移金属は、固体担体上に配置又は堆積されていてもよく、これは、活性金属が担体表面上にあるか、及び/又は担体の多孔性内部構造内にある触媒を包含するものとする。したがって、そのような水素化活性金属に加えて、代表的な水素化触媒は固体担体をさらに含み得るが、例示的な固体担体としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、及び酸化スズなどからなる群から選択されるものなど、1種以上の金属酸化物が挙げられる。固体担体は、例えば1種以上の金属酸化物が固体担体の少なくとも95重量%の量又は合計量で存在するように、全て又は実質的に全ての1種以上のそのような金属酸化物を含み得る。
【0017】
重要なことに、本発明の態様は、水素化触媒(例えば、ラネーニッケル又は上述の他のもの)が、酸度、例えば固体共触媒の場合には酸部位(acid site)を有する共触媒により促進されている場合に得られ得る利点に関する。共触媒は、具体的には、ルイス酸であってもよく、固体共触媒の場合にはルイス酸部位を有してもよい。ルイス酸部位の密度は、公知の分析方法に従って、例えば、ピリジン吸着フーリエ変換赤外(FTIR)分光法を使用して、1450cm-1の特性吸収帯の積分吸光度に基づいて測定できる。これは、例えば、Takagaki et al.によりTHE ROYAL SOCIETY OF CHEMISTRY (RSC) ADVANCES (2014), Vol. 4:43785-91に記載されている。還元的アミノ化条件下で(したがって、反応混合物の存在下で)固体であるものを含む代表的な固体酸共触媒は、一般的にグラムあたり50~2000マイクロモル(μmol/g)、典型的には200μmol/g~1200μmol/g、多くの場合300~900μmol/gのルイス酸部位の密度を有する。特に記載がない限り、固体共触媒に関連して使用される場合の用語「酸」又は「酸性」は、酸部位を有する性質、又は例えば還元的アミノ化に使用される反応混合物の導入の外側で、若しくは導入前のような「調製されたまま」の形態で塩基(例えば、NaOH)により滴定される能力を指す。これは、酸部位密度の特定の範囲への言及に関しても当てはまる。理論には拘束されないが、閾値レベルを超えない特定のレベルの酸度が、本明細書に記載の反応においてモノエタノールアミンへの選択性を増大させるのに有益であると考えられている。本開示から得られた知識により、当業者は、所与の組の還元的アミノ化条件に対して酸度のレベルを最適化できる。
【0018】
代表的な固体酸共触媒は、ゼオライト又は非ゼオライト分子ふるい、金属酸化物、活性炭、又は樹脂を含み得る。ゼオライト分子ふるいの場合、酸度は、シリカ対アルミナ(SiO/Al)のモル骨格比(molar framework ratio)の関数であり、低い比は高密度の酸部位に対応する。酸触媒がゼオライト分子ふるい(ゼオライト)を含む実施形態において、そのシリカ対アルミナのモル骨格比は、200未満(例えば、5~200)、又は100未満(例えば、10~100)であり得る。特定の固体酸触媒は、FAU、FER、MEL、MTW、MWW、MOR、BEA、LTL、MFI、LTA、EMT、ERI、MAZ、MEI、及びTONからなる群から選択され、好ましくはFAU、FER、MWW、MOR、BEA、LTL、及びMFIの1種以上から選択される構造型を有する1種以上のゼオライト分子ふるい(ゼオライト)を含み得る。これらの構造型及び他の構造型を有するゼオライトの構造は、Meier, W. M, et al., Atlas of Zeolite Structure Types, 4th Ed., Elsevier:Boston (1996)に記載され、また、さらなる参照文献が提供されている。具体例には、ゼオライトY(FAU構造)、ゼオライトX(FAU構造)、MCM-22(MWW構造)、ZSM-5(MFI構造)、及びゼオライトβ(BEA構造)がある。好ましいものは構造型BEA及びMFIである。
【0019】
非ゼオライト分子ふるいには、無水ベースで以下の式により表される経験的な化学組成により包含されるELAPO分子ふるいがある:
(ELAl)O
式中、ELは、ケイ素、マグネシウム、亜鉛、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、クロム、及びそれらの混合物からなる群から選択される元素であり、xはELのモル分率であり、多くの場合少なくとも0.005であり、yはアルミニウムのモル分率であり、少なくとも0.01であり、zはリンのモル分率であり、少なくとも0.01であり、x+y+z=1である。ELが金属の混合物である場合、xは存在する元素混合物の総量を表す。種々のELAPO分子ふるいの調製は当技術分野に周知であり、米国特許第5,191,141号(ELAPO);米国特許第4,554,143号(FeAPO);米国特許第4,440,871号(SAPO);米国特許第4,853,197号(MAPO、MnAPO、ZnAPO、CoAPO);米国特許第4,793,984号(CAPO);米国特許第4,752,651号、及び米国特許第4,310,440号に見出すことができる。代表的なELAPO分子ふるいにはALPO及びSAPO分子ふるいがある。
【0020】
他の固体酸共触媒は、カーボンブラック又は活性炭を含み、任意選択で酸性化して、望まれる密度の酸官能基を導入できる(例えば、硝酸、アセテート、スルホン酸など適切な官能基を有する試薬による処理により)。したがって、これらの共触媒は、一般的に、酸性炭素又は酸性活性炭と呼ばれることがある。用語「活性炭」自体は、公知の技法(例えば水蒸気処理)に従って処理されてその表面積及び細孔容積が増加した一形態の炭素を指す。同様に、そのような共触媒は、酸官能基を有するイオン交換樹脂などの樹脂を含み得る。例えば、Amberlyst(商標)Polymeric Catalystsの群内にある樹脂はスルホン酸官能基を有する。他の樹脂には、Dowex(登録商標)群内にあるものがある。本明細書に記載されているいずれの種類の固体酸共触媒の酸度も、必要な場合、アンモニア又はピリジンなどの塩基による処理により調整又は弱めることができる。例えば、ゼオライトZSM-5は、NHとの接触により少なくとも部分的にアンモニウム型に転化でき、それにより、水素型ZSM-5と比べて、所与の還元的アミノ化反応に望まれるレベルまで酸度が減少する。したがって、一般に、アンモニウム型又はアンモニウム交換ゼオライト(例えば、NH-ZSM-5又はNH-BEA)、特にこれらの型を提供するためのアンモニア吸着がルイス酸強度を弱め、ルイス酸部位密度が上記に与えられた範囲内の値に調整又は減少されたものが、酸共触媒として使用され得る。或いは、この酸度の制御又は減少は、反応混合物中で、特に水酸化アンモニウムなどのアミノ化剤の存在下で、インサイチュで起こり得る。本発明に有用なさらに他の固体酸共触媒は、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化スズなどのいずれか1つ以上などの金属酸化物を含み得る。酸化スズの場合、例えばメタスズ酸又はスズ酸として、水和型及び/又は酸性型で存在し得る。
【0021】
金属酸化物はまた、水素化活性金属の固体担体として有用であるという文脈において上記に記載される。したがって、より一般的に、「水素化触媒」及び「酸共触媒」は別々な触媒の形態である必要がなく、固体の二元機能触媒の粒子の形態で共に存在してもよいことが認識され得る。そのような二元機能触媒において、(i)上述のあらゆる「水素化触媒」又はその成分は、そのような二元機能触媒の水素化活性構成要素として存在し得て、(ii)上述のあらゆる「酸共触媒」又はその成分は、そのような二元機能触媒の酸性構成要素として存在し得る。例えば、二元機能触媒は、上述の固体酸共触媒(例えばゼオライト又は金属酸化物)のいずれかに堆積された、上述の1種以上の水素化活性金属(例えばニッケル)のいずれかを含み得る。水素化活性金属は、そのような二元機能触媒中に、水素化活性構成要素として、上記に与えられた量で(例えば、二元機能触媒重量に対して少なくとも5重量%で)、又は2つの触媒を一体化した結果として、場合により少量で(例えば、二元機能触媒重量に対して少なくとも2.5重量%で)存在し得る。酸性構成要素としての固体酸共触媒は、上記に与えられた範囲(例えば、50~2000μmol/g)、又は2つの触媒を一体化した結果として、場合により低い範囲(例えば、25~1000)のルイス酸部位の密度を有し得る。
【0022】
酸共触媒、特にルイス酸は、反応混合物中で均一であり得て、このとき、一般的に、共触媒と反応混合物の両方が液相中にある(例えば、可溶化されている共触媒の場合)。特定の実施形態によると、共触媒は、アミノ化剤としてアンモニア水溶液(水酸化アンモニウム)を含む水性液体反応混合物に可溶化される。代表的な可溶性酸共触媒は、金属トリフラートとしても知られる金属トリフルオロメチルスルホナートである。具体例には、15種のランタニド元素のトリフラート並びにスカンジウム及びイットリウムのトリフラートがある。特定の実施形態によると、トリフラート共触媒は、ビスマス(Bi)トリフラート、ガリウム(Ga)トリフラート、銅(Cu)トリフラート、ユウロピウム(Eu)トリフラート、銀(Ag)トリフラート、インジウム(In)トリフラート、セリウム(Ce)トリフラート、ガドリニウム(Gd)トリフラート、エルビウム(Er)トリフラート、アルミニウム(Al)トリフラート、及びこれらのトリフラートのいずれか2種以上の混合物からなる群から選択され得る。均一ルイス酸として作用する共触媒の他の例には、アミノ化剤として使用される場合の水酸化アンモニウム以外のアンモニウム化合物がある。酢酸アンモニウム及び塩化アンモニウムが例示的である。
【0023】
酸共触媒が、反応混合物中で固体(不均一)であるか、反応混合物中で液体(均一)であるか、固体であり水素化触媒とは別であるか、又は固体であり水素化触媒と一体化されているかにかかわらず、本発明の態様は、グリコールアルデヒドの還元的アミノ化方法において、酸共触媒の使用により生じる改善に関する。特定の改善は、目的化合物であるモノエタノールアミンへの選択性の増加、及び/又は、二量体化された副生成物であるジエタノールアミン、及び/又は水素化された副生成物であるエチレングリコールなどの望まれない副生成物への選択性の減少である。所与の効果(例えば、選択性の改善)を得るための酸共触媒の量は、使用される特定の酸共触媒及び所与の組の還元的アミノ化条件に依存し、本開示から得られる知識により、当業者は、各場合に好適な量を決定できる。一般的に、上述の酸共触媒又は酸共触媒の組合せは、水素化触媒及び水などの溶媒を含む反応混合物中に、一般的に0.1重量%~99重量%の量又は合計量で存在し得る。より典型的には、共触媒は、0.3重量%~15重量%又は0.5重量%~10重量%など、0.1重量%~20重量%の量又は合計量で存在し得る。連続プロセスの場合、酸共触媒は、以下で説明される通り、この触媒に対する毎時重量空間速度(WHSV)を達成するのに必要な量で存在し得る。酸共触媒並びに水素化触媒、及び任意選択で本明細書に記載の一体化された構成要素を有する二元機能触媒は、例えば、含浸/初期湿潤法(impregnation/incipient wetness)、共沈法、又は水熱法を含む、当技術分野に公知であるあらゆる方法により調製できる。
【0024】
したがって、代表的なプロセスは、上述の酸共触媒が存在しないか、又は存在しても上記で述べられ以下に例示される形で利用されていない従来のプロセスと比べて、モノエタノールアミンへの比較的高い選択性を特徴とする。特定の実施形態によると、グリコールアルデヒドは、45%以上~98%以下、他の実施形態において55%以上~94%以下、他の実施形態において70%以上~90%以下のモノエタノールアミンへのモル選択性で転化され得る。特定の実施形態において、MEAへのモル選択性は、少なくとも45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、又は98パーセントである。そのような選択性は、二量体化された副生成物であるジエタノールアミンへの比較的低い選択性と関連し得る。特定の実施形態によると、グリコールアルデヒドは、20%未満、10%未満、又は5%未満、例えば、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6又は5パーセント未満のジエタノールアミンへのモル選択性で転化され得る。或いは、選択性の改善は、全ての還元的アミノ化条件(例えば、圧力、温度、滞留時間、原料(アミノ化剤を含む)、触媒など)が、酸共触媒が存在しないことを除いて同一である基準プロセスから得られる基準モル選択性に対して特徴づけられてもよい。特定の実施形態によると、グリコールアルデヒドは、基準モル選択性を少なくとも3%超えるモノエタノールアミンへのモル選択性で転化され得る。すなわち、基準モル選択性が50%の場合、酸共触媒の使用が、少なくとも53%に増加したモル選択性をもたらす。他の実施形態において、グリコールアルデヒドは、基準モル選択性を、少なくとも5%、又はさらに少なくとも10%、例えば、少なくとも3、4、5、6、7、8、9又は10パーセント超えるモノエタノールアミンへのモル選択性で転化され得る。当業者は、選択性のわずかな増加ですら、商業規模で著しい経済的利益を潜在的にもたらし得ることを認識するだろう。
【0025】
上述のモル選択性は、グリコールアルデヒドの高レベルの転化率で得られる。特定の実施形態によると、グリコールアルデヒド転化率は、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又はさらに少なくとも99%、そのため、少なくとも85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99パーセントであり得る。したがって、モノエタノールアミンの代表的な収率は、収率が転化率と選択性の積として決定されることを考慮すれば、得られる理論収率の45%以上~98%以下、他の実施形態において55%以上~94%以下、又は他の実施形態において70%以上~90%以下など、上記に与えられたモル選択性範囲と同じ又は実質的に同じであり得る。
【0026】
典型的な還元的アミノ化条件は、少なくとも3メガパスカル(MPa)(435psi)などの高い水素分圧を含み、それは、水素化触媒及び酸共触媒との組合せで、グリコールアルデヒドのモノエタノールアミン生成物への選択的な転化を実施するための還元的アミノ化環境を提供する。この水素圧は、原料(例えば、グリコールアルデヒドを含む水性原料)及びアミノ化剤(例えば、アンモニア水溶液)を触媒(又は上述の二元機能触媒)と接触させて生成物を得るために使用される反応器内に閉じ込められ得る。原料及びアミノ化剤が加えられ、生成混合物が回収される(例えば、触媒からの分離後)反応混合物は、好ましくは水性であり、還元的アミノ化条件下で溶存水素を含む。上述の通り、酸共触媒は、反応混合物中で均一でも不均一でもよい。アンモニア水溶液に加えて、又は代わりに、アミノ化剤は、他の場合ガス状アンモニアを含み、それはバッチ式又は連続的に反応器に加えることができ、例えば、連続運転の場合、それは、水素又は水素を含む再循環ガス流と共に加えられ得る。ガス状アンモニアの添加は、一般的に、水性反応混合物の存在下で、アンモニア水溶液のインサイチュ形成を起こすだろう。他の可能なアミノ化剤には、式NHRの一級及び二級アミンがあり、式中、RとRの少なくとも一方はC~Cアルキル基である。グリコールアルデヒド及びアミノ化剤は、アミノ化剤のモル過剰で、例えばアミノ化剤:グリコールアルデヒドのモル比が2:1~20:1又は5:1~15:1で、反応器にバッチ式に充填してよく、あるいは連続的に反応器に加えてもよい。
【0027】
モノエタノールアミンの製造の間反応混合物がさらされている還元的アミノ化条件は、高い圧力及び水素分圧を含む。代表的な絶対反応器圧力は、一般的に2.07MPa(300psi)~24.1MPa(3500psi)、典型的には3.45MPa(500psi)~20.7MPa(3000psi)、多くの場合5.17MPa(750psi)~10.3MPa(1500psi)の範囲である。反応器圧力は、主に又は実質的に水素から生じ得て、その場合これらの範囲の全圧が水素分圧の範囲にも相当し得る。しかし、ガス状アンモニア又は他のアミノ化剤、並びに反応混合物から蒸発した他のガス状の種の存在は、これらの全体圧力と比較して水素分圧の減少をもたらし得て、その場合、例えば水素分圧が、一般的に1.38MPa(200psi)~22.4MPa(3250psi)、典型的には3.00MPa(435psi)~20.0MPa(2901psi)、多くの場合4.82MPa(700psi)~9.31MPa(1350psi)の範囲であり得る。
【0028】
反応器内の他の還元的アミノ化条件には、一般的に20℃(68°F)~200℃(392°F)、典型的には50℃(122°F)~150℃(302°F)の温度がある。反応時間、すなわち反応混合物が、任意の目標値又は上記で与えられた圧力及び温度の範囲のいずれかの目標部分範囲の圧力及び温度の条件に保たれている(例えば、8.27MPa(1200psi)の目標全圧値及び85℃(185°F)の目標温度)時間は、バッチ反応の場合、0.5時間~24時間、好ましくは1時間~5時間である。連続プロセスでは、これらの反応時間は反応器滞留時間に相当する。連続プロセスに関連する追加のパラメーターは毎時重量空間速度(WHSV)であり、当技術分野において、反応器に入る原料(例えば、グリコールアルデヒド及びNHOHを含む水性原料)の重量流量を、触媒重量(例えば、水素化触媒及び酸共触媒の合わせた重量、又は二元機能触媒の重量)で割ったものであると理解されている。したがって、このパラメーターは、1時間に処理される原料の等価触媒床重量を表し、反応器滞留時間の逆数に関連する。代表的な実施形態によると、還元的アミノ化条件は、一般的に0.01時-1~20時-1、典型的には0.05時-1~5時-1のWHSVを含む。しかし、酸共触媒のみに関しては、これらの範囲はより高くなり得て、例えば一般的に0.02時-1~40時-1、典型的には0.1時-1~10時-1であり得る。
【0029】
上述の通り、連続固定床プロセスなどの連続プロセスは、不均一な酸共触媒(例えば、必要な密度のルイス酸部位を有する分子ふるい、活性炭、金属酸化物、又は樹脂を含む)との適合性が高くなり得る。そのような連続プロセスは、触媒を含み反応器内に収容されている反応混合物への、グリコールアルデヒド、アミノ化剤、及び水素の連続供給並びに触媒を実質的に含まずモノエタノールアミンを含む生成混合物の反応器からの連続回収により実施され得る。次いで、生成混合物の一部を分離してモノエタノールアミンを精製及び回収し、任意選択でアミノ化剤及び/又は水素などの未転化の反応物を再循環することにより、この生成混合物はさらに処理され得る。一実施形態によると、生成混合物はフラッシュ分離に付されて、主として水素を含有する気相を分離し得るが、その少なくとも一部が(例えば、望まれない不純物の過度の蓄積を防ぐためのパージ流の除去の後に)上述の再循環ガス流を提供し得る。フラッシュ分離から回収される所望のモノエタノールアミンを含む液相は、相分離、抽出(例えば、モノエタノールアミンに対する優先的な親和性を有する有機溶媒を使用する)、及び蒸留の1つ以上を含むいくつかの可能な分離工程のいずれかに連続的に任意の順序で付され得る。或いは、抽出及び蒸留を、単一の抽出蒸留工程に代替的に組み合わせることができる。再循環ガス流と同様に、分離された液体生成物(例えば、アミノ化剤及び/又は未転化のグリコールアルデヒド)は同様に反応器に再循環され得る。バッチ式に実施しても連続的に実施しても、特定の実施形態は、反応物としてアンモニア水溶液と共に水性反応混合物に加えられるグリコールアルデヒドの還元的アミノ化を実施することを含むモノエタノールアミンを製造する方法に関連する。これは、この反応混合物及び水素を、上述の還元的アミノ化条件で、水素化触媒と酸共触媒の両方と接触させる(例えば、両触媒を同時に接触させる)ことにより実施できる。有利なことに、この組み合わせた触媒、又はそうでない場合組み合わせた二元機能触媒の構成要素は、還元的アミノ化を触媒して、理論収率の少なくとも70%の収率など、上述の転化率、選択性、及び収率性能基準のいずれかに従って、モノエタノールアミンを製造する。
【0030】
さらなる実施形態によると、モノエタノールアミンの製造は、例えばバイオマス由来の化学品の全体的な製造における上流及び/又は下流の処理工程と一体化され得る。上流処理との一体化の場合、グリコールアルデヒドは、アルドース又はケトン(例えば、グルコース、フルクトース、又はスクロース)の熱分解から得られ得る。下流処理の場合、代表的な方法は、モノエタノールアミンの少なくとも一部を硫酸エステル化して(例えば、上述の生成混合物からの回収後に)、2-アミノエチル硫酸を製造することをさらに含み得る。この転化のための簡便な硫酸化剤は硫酸であり、この第1の転化工程の硫酸エステルは、同時生成する水が可能な限り速く完全に反応混合物から除去されて、平衡を2-アミノエチル硫酸製造の方に動かす条件下で、好適に調製される。この場合、代表的な方法は、2-アミノエチル硫酸の少なくとも一部をスルホン化して(例えば、硫酸化から得られた生成混合物からの回収の後で)、タウリンを製造することも含み得る。断続的に加熱しながら水溶液中で実施されるスルホン化工程の好適な試薬は亜硫酸ナトリウムである。代表的な2段階プロセスは、各工程での合成条件の詳細と共に、例えばBondareva et al.により、PHARMACEUTICAL CHEMISTRY JOURNAL, 42(3):142-144に記載されている。このようにして、再生可能な炭素源からのタウリンの実行可能な合成方法が確立される。
【0031】
以下の実施例は、本発明を代表するものとして述べられる。他の等価な実施形態が本開示及び添付の請求項に照らして明らかであるため、これらの実施例は本発明の範囲を限定すると解釈されないものとする。
【実施例
【0032】
実施例1-Al-トリフラート共触媒、グリコールアルデヒドからのモノエタノールアミンの合成
下記をHastelloy製の100mlのParr反応器に充填した:1グラムのグリコールアルデヒド二量体、1.5グラムの湿ったラネーニッケル(W.R. Grace & Co.)、及び20mlのNHOH(28%)中の0.18グラムのアルミニウムトリス(トリフルオロメタンスルホナート)(Al-トリフラート)。反応器をNで2回パージし、次いで、6.2MPa(900psi)Hを充填した。反応混合物を、1100rpmで2時間85℃(185°F)で撹拌した。この期間の後で、反応器を室温に冷却し、反応混合物を濾過して、ニッケル触媒を無色の生成混合物から分離した。この混合物のガスクロマトグラフ(GC)分析に基づいて計算された収率は、93%モノエタノールアミン収率、2%エチレングリコール収率、及び0.5%ジエタノールアミン収率であった。
【0033】
実施例2-金属トリフラート共触媒、グリコールアルデヒドからのモノエタノールアミンの合成
いくつかの実験を実施して、可溶化された(均一)共触媒としての種々の金属トリフルオロメタンスルホナート(トリフラート)の性能を調査した。各場合に、28%アンモニア水溶液中の5重量%のグリコールアルデヒド二量体を含む原料を、固定量のラネーニッケル及び金属トリフラートと共に、ハイスループットスクリーニングバッチ反応器内で反応させた。ラネーニッケル触媒も金属トリフラート共触媒もなしに、並びにラネーニッケル触媒のみ(金属トリフラート共触媒の非存在下)で、対照実験も実施した。触媒的還元的アミノ化反応を、密封された水素化分解反応器内で、85℃(185°F)及び8.27MPa(1200psi)水素圧の下で、2時間の保持時間で実施した。固体触媒からの分離後に、反応生成物をGCにより分析した。結果は、ラネーニッケルのみの使用と比べて金属トリフラートを共触媒として使用すると、モノエタノールアミンの選択性が増大され得ることを実証した。グリコールアルデヒド転化レベル、副生成物プロピレングリコール及びエチレングリコールへの選択性、並びにモノエタノールアミンへの選択性を含む結果を図1に示す。
【0034】
実施例3-固体酸共触媒、グリコールアルデヒドからのモノエタノールアミンの合成
いくつかの実験を実施して、種々の固体(不均一)酸共触媒の性能を調査した。各場合に、28%アンモニア水溶液中に5重量%グリコールアルデヒド二量体を含む原料を、固定量のラネーニッケル及び固体酸共触媒と共に、ハイスループットスクリーニングバッチ反応器内で反応させた。ラネーニッケル触媒のみ(固体酸共触媒の非存在下)で、参照実験も実施した。触媒的還元的アミノ化反応を、密封された水素化分解反応器内で、85℃(185°F)及び8.27MPa(1200psi)水素圧の下で、2時間の保持時間で実施した。固体触媒からの分離後に、反応生成物をGCにより分析した。結果は、ラネーニッケルのみの使用と比べて、ゼオライト並びに酸性化された活性炭及び水和又は酸性型の酸化スズなどの固体酸を含む固体酸共触媒を使用すると、モノエタノールアミンへの選択性及びその結果モノエタノールアミンの収率が、増大され得ることを実証した。種々の固体酸共触媒のエタノールアミン及びジエタノールアミン収率結果を図2に示す。
【0035】
実施例4-ゼオライト共触媒、グリコールアルデヒドからのモノエタノールアミンの合成
いくつかの実験を実施して、固体(不均一)酸共触媒としての種々のゼオライトの性能を調査した。各場合に、28%アンモニア水溶液中に5重量%グリコールアルデヒド二量体を含む原料を、固定量のラネーニッケル及びゼオライトと共に、ハイスループットスクリーニングバッチ反応器内で反応させた。ラネーニッケル触媒のみ(ゼオライトの非存在下)で、参照実験も実施した。別の実験を、ラネーニッケル及び均一共触媒としての酢酸アンモニウムにより実施した。触媒的還元的アミノ化反応を、密封された水素化分解反応器内で、85℃(185°F)及び8.27MPa(1200psi)水素圧の下で、2時間の保持時間で実施した。固体触媒からの分離後に、反応生成物をGCにより分析した。結果は、ラネーニッケルのみの使用と比べて、ゼオライトを固体(不均一)酸共触媒として使用すると、モノエタノールアミンの選択性が、増大され得ることを実証した。モノエタノールアミンへの選択性、並びに副生成物エチレングリコール、エチレンジアミン、及びジエタノールアミンへの選択性を含む結果を図3に示す。
【0036】
全体として、本発明の態様は、種々の酸共触媒を使用して達成可能である、グリコールアルデヒドの還元的アミノ化によるモノエタノールアミンへの反応選択性の増加に関する。再生可能な原料から高価値化学品への合成経路の効率及びそれに伴う経済性が改善される。当業者は、本開示から得られた知識により、これらの利点及び他の利点を得る際に、本開示の範囲から逸脱せずに、開示された触媒及びプロセスに種々の変更を加えることが可能であると認識するだろう。したがって、本開示の特徴の改変及び/又は置換が可能であることを理解されたい。本明細書で説明及び記載された具体的な実施形態は、説明のために過ぎず、添付される特許請求の範囲に述べられる本発明を限定しないものとする。
図1
図2
図3