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特許7488813カーボンブラックを含有するスラリー、電極ペースト、電極の製造方法、及び二次電池の製造方法
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  • 特許-カーボンブラックを含有するスラリー、電極ペースト、電極の製造方法、及び二次電池の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】カーボンブラックを含有するスラリー、電極ペースト、電極の製造方法、及び二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20240515BHJP
   C09C 1/48 20060101ALI20240515BHJP
   C09C 3/10 20060101ALI20240515BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240515BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
C09D17/00
C09C1/48
C09C3/10
H01M4/139
H01M4/62 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021516085
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(86)【国際出願番号】 JP2020016942
(87)【国際公開番号】W WO2020218211
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】P 2019085855
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】與田 晃
(72)【発明者】
【氏名】永井 達也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 哲哉
【審査官】河村 明希乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-089575(JP,A)
【文献】特開2018-206579(JP,A)
【文献】特開2017-143027(JP,A)
【文献】特開2003-157846(JP,A)
【文献】特開2009-205950(JP,A)
【文献】特表2018-530113(JP,A)
【文献】特開2013-084397(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0063894(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 17/00
C09C 1/00-3/12
H01M 4/00-4/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともカーボンブラック及び分散媒を含有するスラリーであって、
当該スラリー中のカーボンブラック濃度が5質量%以上25質量%以下であり、且つ、
レーザー回折・散乱法で測定されるカーボンブラックの体積基準の粒度の頻度分布において、粒径0.6μm以上のカーボンブラックの体積濃度をx(%)、粒径0.3μm以上0.6μm未満のカーボンブラックの体積濃度をy(%)、粒径0.3μm未満のカーボンブラックの体積濃度を100-(x+y)(%)とすると、10≦x≦70、30≦y≦90、0≦100-(x+y)≦30であるスラリー。
【請求項2】
レーザー回折・散乱法で測定されるカーボンブラックの体積基準の粒度の累積分布における累積50%粒度(D50)が、0.40~0.85μmである請求項1に記載のスラリー。
【請求項3】
レーザー回折・散乱法で測定されるカーボンブラックの体積基準の粒度の累積分布における累積90%粒度(D90)が、1.0~30.0μmである請求項1又は2に記載のスラリー。
【請求項4】
分散媒としてN-メチル-2-ピロリドンを含有する請求項1~3の何れか一項に記載のスラリー。
【請求項5】
分散剤を含有する請求項1~4の何れか一項に記載のスラリー。
【請求項6】
前記スラリー中の分散剤含有量が前記カーボンブラック100質量部に対して、5質量部以上20質量部以下である請求項5に記載のスラリー。
【請求項7】
分散剤として非イオン性分散剤を含有する請求項5又は6に記載のスラリー。
【請求項8】
分散剤としてポリビニルアルコールを含有する請求項5~7の何れか一項に記載のスラリー。
【請求項9】
前記ポリビニルアルコールのケン化度が、86~97モルパーセントである請求項8に記載のスラリー。
【請求項10】
30≦x≦60、30≦y≦60、10≦100-(x+y)≦30を満たす請求項1~9の何れか一項に記載のスラリー。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載のスラリー、電極活物質及びバインダーを含有する電極ペースト。
【請求項12】
請求項11に記載の電極ペーストを集電体に塗布することを含む電極の製造方法。
【請求項13】
正極、負極及び電解質を備えた二次電池の製造方法であって、請求項12に記載の製造方法を実施することで正極及び負極の一方又は両方を製造することを含む二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカーボンブラックを含有するスラリーに関する。また、本発明は電極ペースト、電極の製造方法、及び二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型ポータブル化が進んでおり、それに伴って付帯する電池に対しても小型化、軽量化が必要となっている。具体的な性能として、電池の体積及び質量当たりのエネルギー密度を可能な限り大きくすることが要求されている。一般にポータブル機器に使用されている二次電池の中で、質量及び体積当たりのエネルギー密度が大きい二次電池はリチウムイオン二次電池であり、スマート型携帯電話及びタブレット型パソコン等の小型民生用機器の電源として幅広く用いられている。また、電気自動車及びハイブリッド車用の電池、更には家庭用蓄電池としてもリチウムイオン二次電池の活用が増加しており、中型・大型のリチウムイオン二次電池の需要が増大することが見込まれている。
【0003】
従来、リチウムイオン二次電池の正極は、正極活物質、導電材料及びバインダーを含有する電極ペーストを、集電体に塗工することより製造されている。正極活物質としては、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム等のリチウム含有複合酸化物が用いられてきた。活物質自体は導電性に乏しいことから、導電性を付与する目的で、ストラクチャー(一次粒子が複数融着した構造:一次凝集体)が発達したカーボンブラックや、異方性で結晶が発達した黒鉛等の導電材料を添加することが行われてきた(特許文献1)。
【0004】
導電材料の基本的な役割は、導電性を有しない活物質に導電性を付与して、充放電時に電極活物質が繰り返し膨張収縮して導電性が損なわれるのを防止することである。そのため、電極作製において、導電材料として使用されるカーボンブラックは、ストラクチャーの大きさがある範囲内に制御されていることが重要である。制御が十分でない場合や活物質間での分散が悪い場合には、活物質とカーボンブラックの接触が十分得られず、導電パスが確保できなくなり、活物質であるリチウム含有複合酸化物の性能を十分に引き出せないという問題が生じる。結果として、電極内に導電性の劣る部分が局所的に現れ、活物質が有効に利用されずに放電容量が低下、電池の寿命が短くなる原因となっている。
【0005】
そこで、特許文献2には、スラリー中のカーボンブラックの分散性を改善するため、分散剤であるポリビニルピロリドンの存在下でカーボンブラックを高圧ジェットミルにより溶剤にサブミクロンオーダーで分散させる方法が行われている。特許文献2によれば、分散状態が安定したカーボンブラックを正極に使用することで、高容量で、かつサイクル特性が優れたリチウムイオン二次電池を得ることができることが記載されている。
【0006】
特許文献3には、リチウムイオン二次電池用正極において、分散安定性と少量添加で優れた導電性を発揮する導電材料について記載されている。具体的には、N-メチル-2-ピロリドンを分散媒とし、これに平均粒径0.1~1μmのカーボンブラックを3~30質量%の割合で懸濁させると共に、ビニルピロリドン系ポリマーを0.1~10質量%添加してなることを特徴とするカーボンブラックスラリーが提案されている。特許文献3の実施例には、レーザー回折・散乱分光法により求めた平均粒径が0.3μmであるカーボンブラックが記載されており、当該カーボンブラックを正極の導電材料として用いて作製したリチウムイオン二次電池は放電容量が高かったことが示されている。
【0007】
特許文献4では、良好な分散性および導電性を確保することを目的として、平均一次粒子径が40nm以下であり、かつ、平均分散粒子径が400nm以下であるカーボンブラックであるか、または、平均外径が30nm以下であり、かつ、凝集せずに分散しているカーボンナノチューブであり、分散剤が、非イオン性分散剤を含有する導電材分散液が提案されている。特許文献4においては、この導電材分散液を用いて作製した電極ペーストをアルミ箔上に塗布した上で電気抵抗を測定することにより導電性を論じている。
【0008】
特許文献5には、カーボンブラックと、分散剤としてのポリビニルアルコールと、溶剤としてのN-メチル-2-ピロリドンとを含んでなるカーボンブラック分散液を用い、カーボンブラックの比表面積と、けん化度が60~85mol%であるポリビニルアルコールの添加量とを所定の範囲に制御することで、電池電極合材層の表面抵抗および50サイクル後の容量維持率が良好になることが記されている。
【0009】
特許文献6には、粒状のアセチレンブラックを使用した正極導電材ペーストの分散状態を粒径と体積頻度を規定し、電池の直流抵抗値と出力特性を向上できることが示されている。
【0010】
特許文献7には、少量添加においてもリチウムイオン二次電池用の大電流放電特性を大幅に向上できるカーボンブラックを提供することを目的として、一次粒子の平均粒子径が20nm以下で、揮発分が0.20%以下であるリチウムイオン二次電池用カーボンブラックが提案されている。
【0011】
特許文献8には、導電性付与能力と分散性に優れた粉状カーボンブラック組成物が提案されている。具体的には、一次粒子径20~30nmのカーボンブラック粉末90~99質量%とポリアミン重合物10~1質量%を含有し、BET比表面積110~150m2/gでかつDBP吸収量190~230ml/100gの粉状カーボンブラック組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2008-227481号公報
【文献】特開2004-281096号公報
【文献】特開2003-157846号公報
【文献】特開2011-70908号公報
【文献】国際公開2014/132809号公報
【文献】特開2013-109852号公報
【文献】特開2014-194901号公報
【文献】特開2018-62545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように、電極における導電材料であるカーボンブラックの分散性を向上させたり、粒径を制御したりすることで、電池特性を向上させることが従来提案されてきた。しかしながら、従来、カーボンブラックの特性と二次電池の内部抵抗の関係については十分な研究がなされていない。内部抵抗は、電極の導電性を高めても必ずしも低下するとは限らず、未解明の部分が残されている。二次電池の内部抵抗は、電池が大型化して電流量が増えるにつれて問題が大きくなることから、二次電池の内部抵抗の低減に有効なカーボンブラックの実施態様が解明できれば有利であろう。
【0014】
本発明は上記事情に鑑みて創作されたものであり、一実施形態において、カーボンブラックを含有するスラリーであって、二次電池の内部抵抗低減に寄与可能なスラリーを提供することを課題とする。また、本発明は別の一実施形態において、そのようなスラリーを含有する電極ペーストを提供することを課題とする。また、本発明は更に別の一実施形態において、そのような電極ペーストを用いた電極の製造方法を提供することを課題とする。また、本発明はそのような電極の製造方法を実施することを含む二次電池の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討したところ、電池の内部抵抗を有意に低減させるには、カーボンブラックをサブミクロンオーダーに微細化することのみでは足りず、粒径0.6μm以上のカーボンブラック、粒径0.3μm以上0.6μm未満のカーボンブラック、及び、粒径0.3μm未満のカーボンブラックの体積濃度をそれぞれ適切に制御したスラリーを使用して電極ペーストを作製することが有効であることを見出した。本発明は上記知見に基づき完成したものであり、以下に例示される。
【0016】
[1]
少なくともカーボンブラック及び分散媒を含有するスラリーであって、
当該スラリー中のカーボンブラック濃度が5質量%以上25質量%以下であり、且つ、
レーザー回折・散乱法で測定されるカーボンブラックの体積基準の粒度の頻度分布において、粒径0.6μm以上のカーボンブラックの体積濃度をx(%)、粒径0.3μm以上0.6μm未満のカーボンブラックの体積濃度をy(%)、粒径0.3μm未満のカーボンブラックの体積濃度を100-(x+y)(%)とすると、10≦x≦70、30≦y≦90、0≦100-(x+y)≦30であるスラリー。
[2]
レーザー回折・散乱法で測定されるカーボンブラックの体積基準の粒度の累積分布における累積50%粒度(D50)が、0.40~0.85μmである[1]に記載のスラリー。
[3]
レーザー回折・散乱法で測定されるカーボンブラックの体積基準の粒度の累積分布における累積90%粒度(D90)が、1.0~30.0μmである[1]又は[2]に記載のスラリー。
[4]
分散媒としてN-メチル-2-ピロリドンを含有する[1]~[3]の何れか一項に記載のスラリー。
[5]
分散剤を含有する[1]~[4]の何れか一項に記載のスラリー。
[6]
前記スラリー中の分散剤含有量が前記カーボンブラック100質量部に対して、5質量部以上20質量部以下である[5]に記載のスラリー。
[7]
分散剤として非イオン性分散剤を含有する[5]又は[6]に記載のスラリー。
[8]
分散剤としてポリビニルアルコールを含有する[5]~[7]の何れか一項に記載のスラリー。
[9]
前記ポリビニルアルコールのケン化度が、86~97モルパーセントである[8]に記載のスラリー。
[10]
30≦x≦60、30≦y≦60、10≦100-(x+y)≦30を満たす[1]~[9]の何れか一項に記載のスラリー。
[11]
[1]~[10]の何れか一項に記載のスラリー、電極活物質及びバインダーを含有する電極ペースト。
[12]
[11]に記載の電極ペーストを集電体に塗布することを含む電極の製造方法。
[13]
正極、負極及び電解質を備えた二次電池の製造方法であって、[12]に記載の製造方法を実施することで正極及び負極の一方又は両方を製造することを含む二次電池の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一実施形態に係るカーボンブラックを含有するスラリーを用いて電極ペーストを作製し、当該電極ペーストを用いて作製した電極を使用することで、内部抵抗が有意に低減され、容量維持率にも優れた二次電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】リチウムイオン二次電池の基本構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(1.カーボンブラックを含有するスラリー)
本発明の一実施形態によれば、少なくともカーボンブラック及び分散媒を含有するスラリーが提供される。カーボンブラックは、電極全体の導電性を保つとともに、活物質の膨張・収縮の緩衝材としての役割を担う。カーボンブラックとしては、サーマルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等が例示される。これらの中でも純度の高さから、アセチレンブラックが好ましい。
【0020】
当該スラリー中のカーボンブラック濃度は、5質量%以上25質量%以下であることが好ましい。当該スラリー中のカーボンブラック濃度の下限が5質量%より少ない場合は、濃度が低く、輸送や分散媒費用の割合が高くなるため、割高の価格となってしまう。当該スラリー中のカーボンブラック濃度の下限は6質量%以上であることがより好ましく、7質量%以上であることが更により好ましい。また、当該スラリー中のカーボンブラック濃度の上限が25質量%を超えると、粘度が高すぎて分散が困難となり、目的とする導電性付与効果を得ることが難しくなる。当該スラリー中のカーボンブラック濃度の上限は23質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更により好ましく、14質量%以下であることが更により好ましく、11質量%以下であることが更により好ましい。
【0021】
当該スラリー中のカーボンブラックは、レーザー回折・散乱法で測定されるカーボンブラックの体積基準の粒度の頻度分布において、粒径0.6μm以上のカーボンブラックの体積濃度をx(%)、粒径0.3μm以上0.6μm未満のカーボンブラックの体積濃度をy(%)、粒径0.3μm未満のカーボンブラックの体積濃度を100-(x+y)(%)とすると、10≦x≦70、30≦y≦90、0≦100-(x+y)≦30を満たすことが好ましい。このような粒度分布をもつカーボンブラックを導電材料として使用することにより、電池の内部抵抗を有意に低減することができる。10≦x≦60、30≦y≦80、5≦100-(x+y)≦30を満たすことがより好ましく、30≦x≦60、30≦y≦60、10≦100-(x+y)≦30を満たすことが更により好ましい。
【0022】
当該スラリー中のカーボンブラックは、レーザー回折・散乱法で測定されるカーボンブラックの体積基準の粒度の累積分布における累積50%粒度(D50)が、0.40~0.85μmであることが好ましい。上述したカーボンブラックの体積基準の粒度の頻度分布と合わせて、D50を制御することにより、電池の内部抵抗を更に低減可能である。D50は、0.45~0.80μmであることがより好ましく、0.45~0.75μmであることが更により好ましい。
【0023】
当該スラリー中のカーボンブラックは、レーザー回折・散乱法で測定されるカーボンブラックの体積基準の粒度の累積分布における累積90%粒度(D90)が、1.0~30.0μmであることが好ましい。上述したカーボンブラックの体積基準の粒度の頻度分布と合わせて、D90を制御することにより、電池の内部抵抗を更に低減可能である。D90は、1.0~27.5μmであることがより好ましく、1.0~25.0μmであることが更により好ましい。
【0024】
本明細書において、レーザー回折・散乱法によるカーボンブラックの体積基準の粒度分布は、粒度分布測定装置(例:マイクロトラックベル社製、「マイクロトラックMT3300EXII」「極少容量循環器USVR」)を用い、以下の方法で測定可能である。
測定条件:測定範囲/0.02~2000μm、粒子透過性/吸収、粒子形状/非球形、溶媒/N-メチルピロリドン、循環出力/5
サンプル投入量:サンプル投入時に表示される最適濃度範囲になるよう、スラリーを追加、調整
【0025】
なお、ここで測定されるカーボンブラックの粒度分布は、カーボンブラックの一次粒子径の粒度分布ではなく、カーボンブラックの一次粒子が凝集することで形成されるストラクチャーの粒度分布である。
【0026】
分散媒としては、限定的ではないが、ペンタン、ノルマルヘキサン、オクタン、シクロペンタン及びシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン及びシメン等の芳香族炭化水素系溶媒、フルフラル等のアルデヒド系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン及びシクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸メチル、ブチルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート及びエチレングリコールジアセテート等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン及びエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、オクチルアルコール、シクロヘキサノール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、クレゾール及びフルフリルアルコール等のアルコール系溶媒、グリセロール、エチレングリコール及びジエチレングリコール等のポリオール系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びジエチレングリコールモノブチルエーテル等のアルコールエーテル系溶媒、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド及びジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、並びに、水が挙げられる。溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンを使用する際には、溶解性の点で、N-メチル-2-ピロリドンが好ましい。
【0027】
当該スラリーは、カーボンブラックの分散安定性を高めるために、分散剤を含有することが好ましい。分散剤としては、電池特性に影響を及ぼさず、また、電池中で電圧を印加したときに分解しないものが好ましい。分散剤としては、例えば、イオン性官能基を有しない非イオン性分散剤を用いることができる。但し、非イオン性分散剤は少量のイオン性官能基を有してもよい。分散剤の具体例としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、ポリビニルブチラール、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、各種ゴム、リグニン、ペクチン、ゼラチン、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、セルロース系樹脂、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、キチン類、キトサン類、デンプン及びポリアミン等が挙げられる。分散剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
分散剤としては、バインダーとしての効果も併せ持つポリビニルアルコールが好ましい。ポリビニルアルコールとしては、完全ケン化型及び部分ケン化型の何れのタイプでもよいが、正極中において高い電圧を印可された際に副反応が限りなく少ない、ケン化度が86~97モルパーセントであるポリビニルアルコールがより好ましく、ケン化度が86~90モルパーセントであるポリビニルアルコールが更により好ましい。ケン化度は、JIS K6726:1994に準拠して測定される。すなわち、水酸化ナトリウムで試料中の残存酢酸基(モル%)を定量し、100から差し引くことで求めることができる。
【0029】
当該スラリー中の分散剤含有量は、前記カーボンブラック100質量部に対して、5質量部以上20質量部以下であることが好ましい。当該スラリー中の分散剤含有量の下限が、前記カーボンブラック100質量部に対して5質量部より少ない場合は、分散した際、分散性が乏しく、再凝集により活物質と混合する際に分散不良となりやすい。当該スラリー中の分散剤含有量の下限は、前記カーボンブラック100質量部に対して6質量部以上であることがより好ましく、7質量部以上であることが更により好ましい。また、当該スラリー中の分散剤含有量の上限が、前記カーボンブラック100質量部に対して20質量部を超えると、電池特性の低下が懸念されるほか、分散処理の際、カーボンブラックのストラクチャーの切断がより促進される。当該スラリー中の分散剤含有量の上限は、前記カーボンブラック100質量部に対して15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが更により好ましい。
【0030】
(2.カーボンブラックを含有するスラリーの製造)
上述したカーボンブラックを含有するスラリーの製造方法の一例について説明する。まず、炭化水素等の原料ガスを反応炉の炉頂に設置されたノズルから供給し、熱分解反応及び/又は部分燃焼反応によりカーボンブラック粉末を製造し、反応炉下部に直結されたバグフィルターから捕集する。使用する原料ガスは特に限定されるものではなく、アセチレン、メタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン及びブタジエン等のガス状炭化水素、並びに、トルエン、ベンゼン、キシレン、ガソリン、灯油、軽油及び重油等のオイル状炭化水素をガス化したものを使用することができる。原料ガスは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。原料ガスとしては、硫黄分等の不純物が少ないアセチレンガスを使用することが好ましい。
【0031】
カーボンブラック粉末の一次粒子の平均粒子径は15~30nmが適正である。平均粒子径が15nmより小さいと後述する分散処理ができなくなり、30nmより大きくなると適正なストラクチャーの大きさが得づらく、目標とする導電性付与能力が得られない。ここでいう一次粒子の平均粒子径とは透過型電子顕微鏡等で撮影した写真をもとに測定した粒子径を平均したものである。また、粒子径は一次粒子の面積から算出した円相当径である。具体的なカーボンブラック粉末としては上市されているものが挙げられ、デンカ社製のアセチレンブラックLi-435やFX-35及びその加工品を挙げることができる。
【0032】
次に、所定量のカーボンブラック粉末及び分散剤を分散媒中に投入し、分散処理を実施することで、カーボンブラックを含有するスラリーが製造される。カーボンブラックの粒度分布の制御が可能であれば、通常の分散等に用いられている分散処理装置が使用できる。例えば、ディスパー、ホモミキサー、ヘンシェルミキサー及びプラネタリーミキサー等のミキサー類、ビーズミル等の媒体を用いる分散処理装置、超音波ホモジナイザー及び湿式微粒化装置等の無媒体の分散処理装置を挙げることができる。分散処理装置は、これらに限定されるものではない。また、分散処理装置は、一機種に限らず複数種の装置を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0033】
何れの分散処理装置を使用する場合においても、粒径0.6μm以上のカーボンブラックの体積濃度(%)、粒径0.3μm以上0.6μm未満のカーボンブラックの体積濃度(%)、粒径0.3μm未満のカーボンブラックの体積濃度(%)が所定の範囲に入るように分散処理条件を設定することが重要である。分散処理は、エネルギーが大きく、時間が長いほど、カーボンブラック粉末の二次的な凝集の解消及びストラクチャーの切断が進展することにより、粒径0.3μm未満のカーボンブラックの体積濃度(%)が増加する。また、分散処理は、エネルギーが小さく、時間が短いほど、カーボンブラック粉末の二次的な凝集の解消及びストラクチャーの切断が進展しないため、粒径0.6μm以上のカーボンブラックの体積濃度(%)が増加する。
【0034】
(3.電極ペーストの製造)
本発明に係るカーボンブラックを含有するスラリーに、電極活物質及びバインダーを添加することで電極ペーストを製造可能である。例えば、当該スラリー中のカーボンブラック1質量部に対して、電極活物質を95~99質量部添加することができ、好ましくは97~99質量部添加することができる。当該スラリー中のカーボンブラック1質量部に対して、バインダーを1~2質量部添加することができ、好ましくは0.5~1質量部添加することができる。電極活物質には正極活物質及び負極活物質がある。本発明に係るスラリーは正極ペースト及び負極ペーストの何れの製造にも使用可能である。
【0035】
正極活物質としては、限定的ではないが、LixMO2(但し、Mは一種類以上の遷移金属であり、0.05≦x≦1.0である)を主体とするリチウム複合酸化物、TiS2、FeS、MoS2、NbSe2、及びV25等のリチウムを含有しない金属硫化物及び金属酸化物を使用することができる。中でも、LiCoO2、LiNi1/3Mn1/3Co1/32、LiMn24等のコバルト及び/又はマンガンを含むリチウム含有遷移金属酸化物が電池の起電力を高めることができる点で好ましい。その他の正極活物質として、コバルトの一部をニッケル又はアルミに置換したLiNixCoyAlz2、コバルト及びマンガンの一部をニッケルに置換し、ニッケル配合比を高くしたLiNixMnyCoz2(x>y、z)、マンガンの一部をニッケルに置換したLiNixMn24等を用いても良い。更には、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、及びポリチオフェン等の導電性高分子を使用することもできる。正極活物質は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
負極活物質としては、限定的ではないが、天然黒鉛、人造黒鉛、グラファイト、活性炭、コークス、ニードルコークス、フリュードコークス、メソフェーズマイクロビーズ、炭素繊維、及び熱分解炭素等の各種の炭素質材料を使用することができる。また、負極活物質としては、金属リチウム又はその合金(LiSn合金、LiSi合金、LiBi合金、LiPb合金等)、リチウム複合酸化物(チタン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、ケイ酸リチウム、リチウム含有鉄酸化物等)、導電性高分子(ポリアセチレン、ポリ-p-フェニレン等)も挙げられる。負極活物質は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
バインダーとしては、限定的ではないが、ポリエチレン、ニトリルゴム、ポリブタジエン、ブチルゴム、ポリスチレン、スチレン・ブタジエンゴム、多硫化ゴム、ニトロセルロース、セチルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、四フッ化エチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、及びポリフッ化クロロプレン等、通常使用されているものを採用することができる。バインダーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
電極活物質は、平均粒子径が0.05~100μmの範囲内であることが好ましく、0.1~50μmの範囲内であることがより好ましい。本明細書において、電極活物質の平均粒子径は、電子顕微鏡で測定したときの電極活物質の粒子径の平均値である。また、粒子径は一次粒子の面積から算出した円相当径である。
【0039】
(4.電極の製造)
電極は、電極ペーストを金属箔等の集電体に塗布し、その後、溶媒を蒸発させて乾燥することにより、集電体の上に電極合材層が積層された積層体として製造可能である。電極としては正極及び負極の何れを製造することも可能である。電極に使用する集電体の材質としては、限定的ではないが、金、銀、銅、白金、アルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、マンガン、鉛、タングステン、及びチタン等の金属並びにこれらの何れか一種を主成分とする合金(ステンレス等)が使用される。中でも、正極にはアルミニウムを、負極には銅を用いることが好ましい。集電体は、箔の形態で提供されるのが一般的であるが、それに限られるものではなく、穴あき箔状及びメッシュ状の集電体も使用できる。
【0040】
集電体に電極ペーストを塗布する方法としては、限定的ではないが、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法、及び静電塗装法等が挙げられる。乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0041】
また、塗布後に平版プレス又はカレンダーロール等による圧延処理を行っても良い。集電体と電極合材層をロールプレス等により加圧して密着させることにより、目的とする電極を得ることができる。
【0042】
(5.電池の製造)
本発明の一実施形態によれば、上記の手順で得られた正極及び負極の一方又は両方を用いて、二次電池を製造することができる。二次電池としては、リチウムイオン二次電池の他、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウム二次電池、アルカリ二次電池、鉛蓄電池、ナトリウム硫黄二次電池、リチウム空気二次電池等が挙げられ、それぞれの二次電池において、従来から知られている電解質及びセパレーター等を適宜用いることができる。
【0043】
例えばリチウムイオン二次電池の場合、電解質としてはリチウムを含んだ電解質を非水系の溶媒に溶解したものを用いることができる。具体例としては、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、Li(CF3SO22N、LiC49SO3、Li(CF3SO23C、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF2、LiSCN、又はLiBPh4等が挙げられる。電解質は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
非水系の溶媒としては、限定的ではないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート及びジエチルカーボネート等のカーボネート類;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン及びγ-オクタノイックラクトン等のラクトン類;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、1,2-メトキシエタン、1,2-エトキシエタン及び1,2-ジブトキシエタン等のグライム類;メチルフォルメート、メチルアセテート及びメチルプロピオネート等のエステル類;ジメチルスルホキシド及びスルホラン等のスルホキシド類;並びに、アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
また、電解質としては、有機固体電解質及び/又は無機固体電解質を使用することもできる。有機固体電解質としては、限定的ではないが、ポリエチレンオキシド(PEO)等の高分子電解質、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)等の有機電解質塩が挙げられる。無機固体電解質としては、限定的ではないが、硫化物系無機固体電解質(例:LPS系、LGPS系)及び酸化物系無機固体電解質(例:LLZ系)が挙げられる。
【0046】
正極と負極との間に必要に応じて挟むセパレーターとしては、電気絶縁性の多孔質膜、網、不織布等、充分な強度を有するものであればどのようなものでも使用可能である。特に、電解液のイオン移動に対して低抵抗であり、かつ、溶液保持に優れたものを使用するとよい。材質は特に限定しないが、ガラス繊維等の無機物繊維又は有機物繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフロン等の合成樹脂又はこれらの層状複合体等を挙げることができる。接着性及び安全性の観点からポリエチレン、ポリプロピレン又はこれらの層状複合膜が望ましい。ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリアミド不織布及びこれらに親水性処理を施したものが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0047】
二次電池の構造については、ペーパー型、円筒型、ボタン型、積層型等、使用する目的に応じた種々の形状とすることができる。
【0048】
本発明のリチウムイオン二次電池の用途は特に限定されない。例えば、スマート型携帯電話及びタブレット型パソコン、家庭用電気機器、及び電動工具等の小型民生用機器の電源として用いることが可能である。また、電気自動車及びハイブリッド車等の動力用電源、運動エネルギーの少なくとも一部を回収するシステムを有するエレベータ等の産業用機器、各種業務用や家庭用の蓄電システム用の電源等の各種大型電源として用いることも可能である。
【実施例
【0049】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0050】
<実施例1>
(1.スラリーの作製)
N-メチル-2-ピロリドン89.0質量部に、ポリビニルアルコール(デンカ社製ポバールB05、ケン化度:87%)を1.0質量部及びカーボンブラック粉末(デンカ社製アセチレンブラックLi-435)を10.0質量部加えて、プラネタリーミキサー(プライミクス社製ハイビスディスパーミックス3D-5型)で120分撹拌して、カーボンブラックを含有するスラリーを調製した。得られたスラリーを、ジルコニアビーズ(直径0.5mm)を搭載したビーズミル(アシザワ・ファインテック社製ムゲンフローMGF2-ZA)に投入し、分散処理を行った。分散処理後、ろ過にてジルコニアビーズを取り除き、スラリーを作製した。
【0051】
このようにして得られたスラリー中のカーボンブラックの体積基準の粒度の頻度分布及び累積分布を、レーザー回折・散乱式粒子径度分布測定装置(マイクロトラックベル社製、型式マイクロトラックMT3300EXII)を用いて先述した方法に従って測定した。本実施例の粒径0.6μm以上のカーボンブラックの体積濃度をx(%)、粒径0.3μm以上0.6μm未満のカーボンブラックの体積濃度をy(%)、粒径0.3μm未満のカーボンブラックの体積濃度を100-(x+y)(%)とすると、x=40.5%、y=44.1%、100-(x+y)=15.4%であった。
【0052】
(2.正極ペーストの作製)
上記で得られたスラリー中のカーボンブラック1.0質量部に対して、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンのN-メチル-2-ピロリドン溶液を溶質量で2.0質量部及び正極活物質としてリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物LiNi0.5Mn0.3Co0.22(Jiangxi Jiangte Lithium Battery Materials社製、「S532」)を97質量部加えて混合した。更に、塗工性を向上させるため、レオメータ(アントンパール社製MCR300)で測定した粘度曲線中の、シアレートが1sec-1における粘度が10000mPa・sec以下となるよう、分散媒としてN-メチル-2-ピロリドンを加えて混合し、正極ペーストを作製した。
【0053】
(3.正極の作製)
前記正極ペーストを、ベーカー式アプリケーターを用いて厚さ20μmのアルミ箔上に塗布、乾燥し、その後、プレス、裁断して、正極を作製した。
【0054】
(4.負極の作製)
負極ペースト[黒鉛(Shenzhen BTR社製、「AGP-2A」)96.0質量%、カーボンブラック(デンカ社製、「Li-400」)1.0質量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム1.0質量%、スチレン-ブタジエン共重合体2.0質量%]をベーカー式アプリケーターを用いて厚さ10μmの銅箔上に塗布、乾燥し、その後、プレス、裁断して、負極を作製した。
【0055】
(5.二次電池の作製)
図1に示すように、前記正極1にアルミ製タブ5を、前記負極2にニッケル製タブ6をそれぞれ接続し、前記正極1、ポリオレフィン製微多孔膜(セパレーター)3、前記負極2を共に重ね、積層した。その後、外装(アルミラミネートフィルム)4でパック、プレシーリングし、続いて電解液を注入し、バッテリーフォーマッティング、真空シーリングして、ラミネート型二次電池を作製した。
【0056】
(6.内部抵抗の測定)
作製した二次電池を用いて、25℃において、0.2、0.4、0.6、0.8、及び1.0mAの電流を流した際の10秒後の電圧を測定した。この時、SOC(充電深度)は50%とした。R=V/Iより、電池内部抵抗Rを算出し、Rの平均値を求めた。本実施例1の電池内部抵抗は1.45Ωであった。
【0057】
(7.出力特性(3C放電時の容量維持率))
作製した二次電池を、25℃において4.2V、0.2C制限の定電流定電圧充電をした後、0.2Cの定電流で2.75Vまで放電した。次いで、放電電流を0.2C、3Cと変化させ、各放電電流に対する放電容量を測定した。そして、0.2C放電時に対する3C放電時の容量維持率を計算した。本実施例1の3C放電時の容量維持率は82.4%であった。
【0058】
<実施例2>
実施例1のビーズミルの分散処理時間及び周速を変更した以外は、実施例1と同様な方法でスラリー、電極ペースト、正極、及び二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表1に示す。
【0059】
<実施例3>
実施例1をベースに、N-メチル-2-ピロリドンを85.5質量部に、カーボンブラック粉末を13.5質量部にそれぞれ変更したカーボンブラックを含有するスラリーを用いた以外は、実施例1と同様な方法でスラリー、電極ペースト、正極、及び二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表1に示す。
【0060】
<実施例4>
実施例1をベースに、N-メチル-2-ピロリドンを83.5質量部に、ポリビニルアルコールを1.5質量部に、及びカーボンブラック粉末を15.0質量部にそれぞれ変更したカーボンブラックを含有するスラリーを用いた以外は、実施例1と同様な方法でスラリー、電極ペースト、正極、及び二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表1に示す。
【0061】
<実施例5>
実施例1をベースにN-メチル-2-ピロリドンを80.2質量部に、ポリビニルアルコールを1.8質量部に、及びカーボンブラック粉末を18.0質量部にそれぞれ変更したカーボンブラックを含有するスラリーを用いた以外は、実施例1と同様な方法でスラリー、電極ペースト、正極、及び二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表1に示す。
【0062】
<実施例6>
実施例1をベースにN-メチル-2-ピロリドンを78.0質量部に、ポリビニルアルコールを2.0質量部に、及びカーボンブラック粉末を20.0質量部にそれぞれ変更したカーボンブラックを含有するスラリーを用いた以外は、実施例1と同様な方法でスラリー、電極ペースト、正極、及び二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表1に示す。
【0063】
<実施例7>
ビーズミルの分散処理時間及び周速を変更した以外は、実施例2と同様な方法でスラリー、電極ペースト、正極、及び二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表1に示す。
【0064】
<実施例8>
実施例1をベースにN-メチル-2-ピロリドンを72.5質量部に、ポリビニルアルコールを2.5質量部に、及びカーボンブラック粉末を25.0質量部にそれぞれ変更したカーボンブラックを含有するスラリーを用いた以外は、実施例1と同様な方法でスラリー、電極ペースト、正極、及び二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表1に示す。
【0065】
<実施例9>
N-メチル-2-ピロリドン95.0質量部及びカーボンブラック粉末(デンカ社製アセチレンブラックLi-435)を5.0質量部を50mlのバイアル瓶に投入し、超音波洗浄器(アズワン社製ASU-6)で60分撹拌して、カーボンブラックを含有するスラリーを調製した以外は、実施例1と同様な方法で電極ペースト、正極、及び二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表1に示す。
【0066】
<比較例1>
ビーズミルの分散処理時間や周速を変更した以外は、実施例3と同様な方法でスラリー、電極ペースト、正極、及び二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表1に示す。
【0067】
<比較例2>
ビーズミルの分散処理時間や周速を変更した以外は、実施例4と同様な方法でスラリー、電極ペースト、正極、及び二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表1に示す。
【0068】
<比較例3>
ビーズミルの分散処理時間や周速を変更した以外は、比較例1と同様な方法でスラリー、電極ペースト、正極、及び二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表1に示す。
【0069】
<比較例4>
実施例1をベースにN-メチル-2-ピロリドンを94.5質量部に、ポリビニルアルコールを0.5質量部に、及びカーボンブラック粉末を5.0質量部にそれぞれ変更したカーボンブラックを含有するスラリーを用いて、更にビーズミルの分散処理時間及び周速を変更した以外は、実施例1と同様な方法でスラリー、電極ペースト、正極、及び二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表1に示す。
【0070】
<比較例5>
ビーズミルの分散処理時間及び周速を変更した以外は、実施例8と同様な方法でスラリー、電極ペースト、正極、及び二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表1に示す。
【0071】
<比較例6>
実施例1をベースにN-メチル-2-ピロリドンを69.2質量部に、ポリビニルアルコールを2.8質量部に、及びカーボンブラック粉末を28.0質量部にそれぞれ変更したカーボンブラックを含有するスラリーを用いた以外は、実施例1と同様な方法でスラリー、電極ペースト、正極、及び二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表1に示す。
【0072】
<比較例7>
比較例1をベースにN-メチル-2-ピロリドンを95.6質量部に、ポリビニルアルコールを0.4質量部に、及びカーボンブラック粉末を4.0質量部にそれぞれ変更したカーボンブラックを含有するスラリーを用いた以外は、比較例1と同様な方法でスラリー、電極ペースト、正極、及び二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【符号の説明】
【0074】
1 非水系二次電池正極
2 非水系二次電池負極
3 絶縁層(ポリオレフィン製微多孔膜)
4 外装
5 アルミ製タブ
6 ニッケル製タブ
図1