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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】ストレッチ包装用フィルム
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/02 20060101AFI20240515BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240515BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20240515BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
B65D65/02 E
B65D65/40 D
C08L27/06
C08K5/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021526936
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(86)【国際出願番号】 JP2020024202
(87)【国際公開番号】W WO2020262249
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2019116168
(32)【優先日】2019-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】521475990
【氏名又は名称】株式会社キッチニスタ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】宮田 裕幸
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/094729(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/021400(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/163998(WO,A1)
【文献】特開2010-209193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/02
B65D 65/40
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ塩化ビニル系樹脂と、可塑剤と、青色着色剤と、を含有し、
前記可塑剤が、下記式(1)で表される化合物を含み、
【化1】

[式(1)中、R 及びR はそれぞれ独立にアルキル基を表す。]
前記青色着色剤の含有量に対する前記可塑剤の含有量の質量比が30以上45以下であり、
前記青色着色剤の含有量に対する前記式(1)で表される化合物の含有量の質量比が20以上33以下であり、
前記青色着色剤の含有量に対する、前記式(1)におけるR 及びR が炭素数9のアルキル基である化合物の含有量の質量比が、6以上20以下である、ストレッチ包装用フィルム。
【請求項2】
前記可塑剤がエポキシ化大豆油を更に含む、請求項1に記載のストレッチ包装用フィルム。
【請求項3】
前記青色着色剤の含有量に対する、前記式(1)におけるR及びRが炭素数9のアルキル基である化合物の含有量の質量比が、15以上20以下である、請求項1又は2に記載のストレッチ包装用フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレッチ包装用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ストレッチ包装用フィルムは、例えば、スーパーマーケット等において、ストレッチ包装装置によって生鮮食品等の食品を包装する際に使用されている。中でも、ポリ塩化ビニル系樹脂に可塑剤を含有させたストレッチ包装用フィルムは種々検討されてきた。このようなストレッチ包装用フィルムとして、例えば特許文献1には、塩化ビニル系樹脂組成物からなる(A)層を最外層に配し、(A)層を構成する塩化ビニル系樹脂組成物が、塩化ビニル系樹脂100質量部に、可塑剤1~70質量部を配合してなるストレッチ包装用フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-213340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ストレッチ包装用フィルムは、上述したとおり食品に対して使用されるため、ストレッチ包装用フィルムの破片が食品に混入した場合でも容易に識別できることが求められる。これに対し、青色着色剤を含有させることで、ストレッチ包装用フィルムを青色に着色し、識別しやすくすることが考えられる。しかし、本発明者らの検討によれば、従来のストレッチ包装用フィルムに単に青色着色剤を含有させただけでは、ストレッチ包装用フィルムに求められるストレッチ性、剥離性、引出性等の特性が必ずしも良好ではないことが判明した。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みたものであり、青色着色剤を含んでいても、ストレッチ性、剥離性及び引出性に優れたストレッチ包装用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、青色着色剤の含有量に対する可塑剤の含有量の比を特定の範囲内とすることにより、ストレッチ性、剥離性及び引出性を両立できるストレッチ包装用フィルムを形成可能であることを見出した。
【0007】
本発明の一側面は、ポリ塩化ビニル系樹脂と、可塑剤と、青色着色剤と、を含有し、青色着色剤の含有量に対する可塑剤の含有量の質量比が30以上である、ストレッチ包装用フィルムに関する。
【0008】
可塑剤は、下記式(1)で表される化合物を含み、青色着色剤の含有量に対する下記式(1)で表される化合物の含有量の質量比が20以上であってよい。
【化1】
式(1)中、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表す。
【0009】
式(1)におけるRは、炭素数9のアルキル基であってよい。
【0010】
式(1)におけるRは、炭素数9のアルキル基であってよい。
【0011】
青色着色剤の含有量に対する、式(1)におけるR及びRが炭素数9のアルキル基である化合物の含有量の質量比が、15以上であってよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、青色着色剤を含んでいても、ストレッチ性、剥離性及び引出性に優れたストレッチ包装用フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一実施形態に係るストレッチ包装用フィルム(以下、単に「フィルム」ともいう)は、ポリ塩化ビニル系樹脂と、可塑剤と、青色着色剤と、を含有する。
【0014】
「ストレッチ包装用フィルム」とは、ストレッチ包装(ストレッチ包装装置による包装)に用いられるフィルムである。ストレッチ包装用フィルムとしては、典型的には、青果物、精肉、惣菜等をトレー(例えば軽量トレー)に載せてオーバーラップするプリパッケージ用のストレッチ包装用フィルム、荷物運搬時に荷物を固定するためにオーバーラップする包装用フィルムなどを挙げることができる。
【0015】
(ポリ塩化ビニル系樹脂)
ポリ塩化ビニル系樹脂は、機械特性に優れる観点から、塩化ビニルホモポリマー(ポリ塩化ビニル樹脂)であってもよく、他の特性を付与する目的から、塩化ビニルとこれに共重合可能なその他のモノマーとの共重合体であってもよい。共重合体は、グラフト共重合体、ブロック共重合体又はランダム共重合体であってよい。その他のモノマーの例としては、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン;酢酸ビニル、ラウリン酸ビニル等の飽和酸のビニルエステル;アクリル酸メチルエステル、メタクリル酸メチルエステル等の不飽和酸のアルキルエステル;ラウリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;マレイン酸、アクリロニトリル、スチレン、メチルスチレン、フッ化ビニリデン;などが挙げられる。
【0016】
ポリ塩化ビニル系樹脂が共重合体である場合、共重合体における塩化ビニル単位の含有量は、モノマー単位全量基準で、10質量%以上であってよく、機械特性に優れる観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。共重合体における塩化ビニル単位の含有量の上限は、特に限定されず、例えば、モノマー単位全量基準で99質量%以下であってよい。
【0017】
ポリ塩化ビニル系樹脂は、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンの三次元ポリマー等とのポリマーブレンド、アルコール等による後処理物、含塩素化合物による後処理物であってもよい。これらの場合、ポリ塩化ビニル系樹脂における塩化ビニル単位の含有量は、ポリ塩化ビニル系樹脂全量基準で10質量%以上であってよい。
【0018】
ポリ塩化ビニル系樹脂は、ストレッチ包装用フィルムの成形性、耐熱性及び流動性に優れる観点から、好ましくは、平均重合度700~1300のポリ塩化ビニル系樹脂である。本明細書における平均重合度は、JIS K6720-2に準じて測定された平均重合度を意味する。
【0019】
ポリ塩化ビニル系樹脂の含有量は、生産性に優れる観点から、ストレッチ包装用フィルム全量基準で、例えば、60質量%以上、65質量%以上又は70質量%以上であってよく、80質量%以下又は75質量%以下であってよい。
【0020】
(可塑剤)
可塑剤としては、エポキシ化アマニ油、エポキシ化大豆油(エポキシ化脂肪酸グリセライド)、エポキシ化脂肪酸アルキルエステル等のエポキシ化油、アセチルクエン酸トリブチル(例えばアセチルクエン酸トリブチル)等のヒドロキシ多価カルボン酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル(例えばセバシン酸ジノルマルブチル)等の二塩基酸エステル、ペンタエリスリトールエステル、ジエチレングリコールベンゾエート等の多価アルコールエステル、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート等のリン酸エステル、グリセリンジアセトモノラウレート、塩素化パラフィン、ポリエステル系可塑剤などが挙げられる。可塑剤は、フィルムの耐寒性を向上させる観点から、好ましくは二塩基酸カルボン酸エステル、より好ましくはアジピン酸エステルである。これらの可塑剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0021】
アジピン酸エステルは、例えば下記式(1)で表される。すなわち、可塑剤は、好ましくは下記式(1)で表される化合物を含む。
【化2】
式(1)中、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表す。
【0022】
式(1)で表される化合物の含有量(2種以上の式(1)で表される化合物が含まれる場合はそれらの合計の含有量)は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、例えば10質量部以上又は15質量部以上であってよく、フィルムの耐寒性を向上させる観点から、好ましくは20質量部以上、より好ましくは25質量部以上であり、ストレッチ性を更に向上させる観点から、更に好ましくは27質量部以上であり、例えば、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下又は50質量部以下であってよい。
【0023】
式(1)におけるRは、直鎖状のアルキル基であってよく、分岐状のアルキル基であってもよい。式(1)におけるRは、例えば炭素数6~12のアルキル基であってよく、炭素数8又は9のアルキル基であってよく、炭素数9のアルキル基であってよい。
【0024】
式(1)におけるRは、直鎖状のアルキル基であってよく、分岐状のアルキル基であってもよい。式(1)におけるRは、例えば炭素数6~12のアルキル基であってよく、炭素数8又は9のアルキル基であってよく、炭素数9のアルキル基であってよい。
【0025】
式(1)におけるR及びRが炭素数8のアルキル基である(式(1)におけるRが炭素数8のアルキル基であり、かつ式(1)におけるRが炭素数8のアルキル基である)化合物としては、例えばアジピン酸ジオクチル(アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル))等が挙げられる。式(1)におけるR及びRが炭素数9のアルキル基である(式(1)におけるRが炭素数9のアルキル基であり、かつ式(1)におけるRが炭素数9のアルキル基である)化合物としては、例えばアジピン酸ジイソノニル等が挙げられる。
【0026】
式(1)におけるR及びRが炭素数9のアルキル基である化合物の含有量は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、例えば、5質量部以上、8質量部以上又は10質量部以上であってよく、フィルムの耐寒性を向上させる観点から、好ましくは12質量部以上、より好ましくは15質量部以上である。式(1)におけるR及びRが炭素数9のアルキル基である化合物の含有量は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、例えば、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下又は50質量部以下であってよい。
【0027】
可塑剤の合計含有量は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、例えば25質量部以上又は30質量部以上であってよく、フィルムの耐寒性を向上させ、フィルムのストレッチ性を更に向上させる観点から、好ましくは35質量部以上、より好ましくは40質量部以上である。可塑剤の合計含有量は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、例えば、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下又は50質量部以下であってよい。
【0028】
(青色着色剤)
青色着色剤は、例えば、可視光領域(波長:380~750nmの全域)における最大吸収波長が600~750nmに存在する着色剤である。青色着色剤の可視光領域における最大吸収波長での吸光度は、波長470nmでの吸光度の好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上である。具体的には、青色着色剤は、銅フタロシアニン(銅フタロシアニンブルー)、ヘキサシアノ鉄(II)酸鉄(III)、酸化第一コバルトと酸化アルミニウムとの混合物、インディゴ又はウルトラマリンであってよい。青色着色剤は、強度、分散性及び耐溶剤性をより向上させる観点から、好ましくは青色顔料である。青色着色剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
青色着色剤の含有量は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、例えば0.2質量部以上又は0.5質量部以上であってよく、フィルムのストレッチ性を更に向上させる観点から、好ましくは1.0質量部以上である。青色着色剤の含有量は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、例えば、3.0質量部以下、2.0質量部以下又は1.5質量部以下であってよい。
【0030】
本実施形態に係るストレッチ包装用フィルムにおいて、青色着色剤の含有量X1に対する可塑剤の含有量Y1の質量比(Y1/X1)は、フィルムのストレッチ性、剥離性及び引出性を向上させる観点から、30以上である。Y1/X1は、青色着色剤の分散性を向上させる観点から、好ましくは32以上、より好ましくは34以上である。Y1/X1は、例えば、50以下、45以下又は35以下であってよい。
【0031】
本実施形態に係るストレッチ包装用フィルムにおいて、青色着色剤の含有量X1に対する式(1)で表される化合物の含有量(2種以上の式(1)で表される化合物が含まれる場合はそれらの合計の含有量)Y2の質量比(Y2/X1)は、例えば10以上又は15以上であってよく、フィルムの耐寒性を向上させ、フィルムの引出性を更に向上させる観点から、好ましくは20以上、より好ましくは22以上又は24以上である。Y2/X1は、例えば40以下又は35以下であってよく、フィルムの引出性を更に向上させる観点から、好ましくは33以下又は30以下である。
【0032】
本実施形態に係るストレッチ包装用フィルムにおいて、青色着色剤の含有量X1に対する、式(1)におけるR及びRが炭素数9のアルキル基である可塑剤の含有量Y3の質量比(Y3/X1)は、例えば、6以上、9以上又は12以上であってよく、フィルムの耐寒性を向上させ、フィルムの引出性を更に向上させる観点から、好ましくは15以上である。Y3/X1は、例えば、45以下、35以下、30以下又は25以下であってよく、フィルムの引出性を更に向上させる観点から、好ましくは20以下又は17以下である。
【0033】
ストレッチ包装用フィルムは、フィルムのストレッチ性、剥離性及び引出性のすべてを特に向上させられる観点から、特に好ましくは、以下のY1/X1、Y2/X1及びY3/X1の条件を同時に満たす。
・Y1/X1が、30以上、32以上又は34以上であり、かつ、50以下又は45以下である。
・Y2/X1が、20以上、22以上又は24以上であり、かつ、33以下又は30以下である。
・Y3/X1が、6以上であり、かつ、20以下である。
【0034】
ストレッチ包装用フィルムは、フィルムのストレッチ性、剥離性及び引出性のすべてを最も向上させられる観点から、最も好ましくは、以下のY1/X1、Y2/X1及びY3/X1の条件を同時に満たす。
・Y1/X1が、30以上、32以上又は34以上であり、かつ、35以下である。
・Y2/X1が、20以上、22以上又は24以上、かつ、30以下である。
・Y3/X1が、12以上又は15以上であり、かつ、20以下又は17以下である。
【0035】
ストレッチ包装用フィルムは、ポリ塩化ビニル系樹脂、可塑剤及び青色着色剤に加えて、その他の成分を更に含有していてもよい。その他の成分としては、ポリ塩化ビニル系樹脂以外の熱可塑性樹脂、防曇剤、安定剤、滑剤、充填剤、プレートアウト防止剤、抗酸化剤、離型剤、粘度低下剤、界面活性剤、蛍光剤、表面処理剤、架橋剤、加工助剤、粘着剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。ストレッチ包装用フィルムがその他の成分を含有する場合、その他の成分の含有量(合計の含有量)は、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、1質量部以上であってよく、30質量部以下であってよい。
【0036】
ストレッチ包装用フィルムは、ポリ塩化ビニル系樹脂、可塑剤及び青色着色剤を含有する層の一層のみからなっていてもよく、複数の層からなっていてもよい。ストレッチ包装用フィルムが複数の層からなる場合、ストレッチ包装用フィルムは、例えば、第1の表面層と中間層と第2の表面層とをこの順に備えていてよい。この場合、例えば、第1及び第2の表面層はポリ塩化ビニル系樹脂、可塑剤及び必要に応じて添加されるその他の成分を含有し、中間層はポリ塩化ビニル系樹脂、可塑剤、青色着色剤及び必要に応じて添加されるその他の成分を含有していてよい。ストレッチ包装用フィルムは、例えば、各層間の接着性を向上させるために、酸変性ポリオレフィン樹脂等を含有する接着層を更に備えていてもよく、ストレッチ包装用フィルムの耐熱性を向上させるために、ポリアミド系樹脂を含有する耐熱層を更に備えていてもよい。
【0037】
ストレッチ包装用フィルムの厚さは、例えば5μm以上又は8μm以上であってよく、ストレッチ包装用フィルムとしての適性に更に優れる観点から、好ましくは10μm以上である。ストレッチ包装用フィルムの厚さは、取扱い性に優れる観点から、好ましくは25μm以下、より好ましくは18μm以下であってよい。
【0038】
ストレッチ包装用フィルムの全光線透過率は、視認性に優れる観点から、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上であり、例えば90%以下であってよい。全光線透過率は、JIS K7361-1に準じて入射光量及び全透過光量を測定し、全光線透過率=(全透過光量)/(入射光量)×100として算出できる。
【0039】
ストレッチ包装用フィルムは、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、可塑剤、青色着色剤及び必要に応じて上述のその他の成分を、V型ブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の混合機により混合し、更に必要に応じてミキシングロール、バンバリーミキサー、ニーダ等の混練機により混練することで組成物を得た後、例えば押出成形することにより製造される。具体的には、該組成物を押出機のホッパーに供給しインフレーション法、Tダイ法等で目的とするストレッチ包装用フィルムが得られる。
【0040】
ストレッチ包装用フィルムが複数の層からなる場合、ストレッチ包装用フィルムは、各層の構成原料を、それぞれ別々の押出機に投入して溶融押出し、インフレーション法、Tダイ法等により各層を共押出して積層することにより得られる。この際、Tダイより押出した溶融物をそのまま、キャスティングロール等で急冷しながら引き取るようにしてストレッチ包装用フィルムを形成する。
ことが好ましい。
【0041】
このようにして得られたストレッチ包装用フィルムに対して、熱収縮率、自然収縮率等の軽減;幅収縮の発生の抑制;などの目的に応じて、加熱ロール間での縦延伸、各種の熱固定、エージング等の熱処理を行ってもよく、防曇性、帯電防止性、粘着性等を向上させる目的で、コロナ処理;熟成処理;印刷、コーティング等の表面処理;表面加工;などを行ってもよい。
【0042】
なお、一般的に「フィルム」とは、長さおよび幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、ロールの形で供給されうるものをいい(必要であれば、日本工業規格JIS K6900を参照できる)、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本実施形態において文言上両者を区別する必要がないので、本明細書においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。また、「フィルム」は、上記の定義のうちでも特にラップフィルムを含む概念である。
【実施例
【0043】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0044】
以下のポリ塩化ビニル系樹脂及び添加剤を用いて、表1に示す組成を有するストレッチ包装用フィルムを作製した。なお、表1中の組成(質量部)は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対する各成分の含有量(質量部)を示し、Y1は可塑剤の合計含有量を示し、Y2はアジピン酸ジイソノニル及びアジピン酸ジオクチルの合計含有量(式(1)で表される化合物の含有量)を示し、Y1/X1は、青色着色剤の含有量X1に対する可塑剤の合計含有量Y1の質量比を示し、Y2/X1は、青色着色剤の含有量X1に対するアジピン酸ジイソノニル及びアジピン酸ジオクチルの合計含有量(式(1)で表される化合物の含有量)Y2の質量比を示し、Y3/X1は、青色着色剤の含有量X1に対するアジピン酸ジイソノニルの含有量Y3の質量比を示す。また、すべての実施例及び比較例に共通して、防曇剤D1の含有量は1.2質量部、安定剤E1の含有量は0.15質量部、安定剤E2の含有量は1.1質量部とした。
【0045】
ポリ塩化ビニル系樹脂
・A1:ポリ塩化ビニル系樹脂(大洋塩ビ株式会社製、「TH-1000」、平均重合度:1000)
【0046】
可塑剤
・B1:アジピン酸ジイソノニル(DINA、田岡化学工業株式会社製、「DINA」)
・B2:アジピン酸ジオクチル(DOA、新日本理化株式会社製、「サンソサイザーDOA」)
・B3:エポキシ化大豆油(ESBO、三和合成株式会社製、「ケミサイザーSE-100」)
【0047】
青色着色剤
・C1:青色着色剤(大日精化工業株式会社製、「NX-053ブルー」)
【0048】
防曇剤
・D1:(理研ビタミン株式会社製、「XO-71」)
【0049】
安定剤
・E1:(協和化学工業株式会社製、「アルカマイザー1」)
・E2:(株式会社ADEKA製、「SC-308E」)
【0050】
より具体的には、各成分をスーパーミキサーに投入した後、攪拌しながら材料温度を常温から130℃まで昇温し、混合して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について、70℃まで冷却した時点で取り出し、Tダイ(幅350mm、ギャップ0.4mm)を装着した直径40mm単軸押出機(L/D=20)にて、樹脂組成物の温度が200℃となる状態で押出し、芯材に巻回することによって、厚さ15μmのストレッチ包装用フィルムを作製した。
【0051】
<ストレッチ包装用フィルムの評価>
得られた各ストレッチ包装用フィルムについて、ストレッチ性、剥離性及び引出性を以下の手順で測定した。結果を表1に示す。
【0052】
(ストレッチ性)
幅300mmとしたストレッチ包装用フィルムを用い、手動包装機(ARC株式会社製、マルチラッパーW460B)により、発泡ポリスチレン樹脂トレー(長さ175mm、幅120mm、高さ30mm)を連続5回パック包装した。このときの包装皺(包装したトレー上面の皺)の発生の程度に応じて、以下の基準でストレッチ性を評価した。
A:皴が発生しない。
B:皺の面積がフィルム面積の30%未満。
C:皺の面積がフィルム面積の30%以上。
D:皺がフィルムのほぼ全面に発生する。
【0053】
(剥離性)
250mm×150mmの大きさに切り出したストレッチ包装用フィルムを40枚重ねた状態で、20℃の恒温室に24時間静置した。静置後のフィルムを平滑なステンレス板に両面テープで貼り付けた後、それを恒温室中に設置した引っ張り試験機(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、フィルム1枚を剥がす際に必要な剥離力を求めた。
A:剥離力が150gf/250mm未満
B:剥離力が150gf/250mm以上200gf/250mm未満
C:剥離力が200gf/250mm以上250gf/250mm未満
D:剥離力が250gf/250mm以上
【0054】
(引出性)
芯材に巻回されたフィルムを箱体に収容し、フィルムを箱体から引出すときの引出力をプッシュプルゲージ(アイコーエンジニアリング株式会社製)で評価した。
A:引出力が500gf未満
B:引出力が500gf以上650gf未満
C:引出力が650gf以上800gf未満
D:引出力が800gf以上
【0055】
【表1】