(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】冷凍機用作動流体組成物、冷凍機油及び冷凍機
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20240515BHJP
C09K 5/04 20060101ALI20240515BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240515BHJP
C10M 105/38 20060101ALN20240515BHJP
C10M 129/10 20060101ALN20240515BHJP
C10M 129/66 20060101ALN20240515BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20240515BHJP
C10N 40/30 20060101ALN20240515BHJP
【FI】
C10M169/04
C09K5/04 C
F25B1/00 396Z
C10M105/38 ZAB
C10M129/10
C10M129/66
C10N30:00 Z
C10N40:30
(21)【出願番号】P 2021530556
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(86)【国際出願番号】 JP2020023788
(87)【国際公開番号】W WO2021005983
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2019126492
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】永井 郷司
(72)【発明者】
【氏名】中島 達貴
(72)【発明者】
【氏名】水谷 祐也
(72)【発明者】
【氏名】尾形 英俊
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-053199(JP,A)
【文献】特表2007-532766(JP,A)
【文献】国際公開第2018/022943(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/022888(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/022949(WO,A1)
【文献】特開2014-114354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
C09K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三フッ化ヨウ化メタンを含
み、不飽和フッ化炭化水素を含まない冷媒と、
多価アルコールと脂肪酸とのポリオールエステル
、酸捕捉剤及びヒンダードフェノール化合物を含み、該ヒンダードフェノール化合物の含有量が、冷凍機油全量基準で0.6~10質量%である冷凍機油と、
を含む、冷凍機用作動流体組成物
であって、
前記脂肪酸中の3,5,5-トリメチルヘキサン酸の割合が60モル%以上である、冷凍機用作動流体組成物。
【請求項2】
前記酸捕捉剤がグリシジルエステル型エポキシ化合物である、請求項1に記載の冷凍機用作動流体組成物。
【請求項3】
多価アルコールと脂肪酸とのポリオールエステル
、酸捕捉剤及びヒンダードフェノール化合物を含み、該ヒンダードフェノール化合物の含有量が、冷凍機油全量基準で0.6~10質量%であり、
前記脂肪酸中の3,5,5-トリメチルヘキサン酸の割合が60モル%以上であり、
三フッ化ヨウ化メタンを含
み、不飽和フッ化炭化水素を含まない冷媒と共に用いられる、冷凍機油。
【請求項4】
前記酸捕捉剤がグリシジルエステル型エポキシ化合物である、請求項3に記載の冷凍機油。
【請求項5】
圧縮機、凝縮器、膨張機構及び蒸発器がこの順で配管接続されている冷媒循環システムと、
前記冷媒循環システム内に充填されている請求項1又は2に記載の冷凍機用作動流体組成物と、
を備える冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍機用作動流体組成物、冷凍機油及び冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫、カーエアコン、ルームエアコン、自動販売機等の冷凍機は、冷媒を冷凍サイクル内に循環させるための圧縮機を備える。そして、圧縮機には、摺動部材を潤滑させるための冷凍機油が充填される。冷凍機油は一般的に、耐摩耗性、安定性等の特性が求められており、要求特性に応じて選択される潤滑油基油及び各種添加剤を含有する。
【0003】
冷凍サイクル内に循環させる冷媒としては、近年、地球温暖化対策及び安全面での対策から、地球温暖化係数(GWP)が低く、不燃性の冷媒を適用することが検討されている。例えば下記特許文献1では、冷凍システムにおける冷媒として、三フッ化ヨウ化メタンを含む冷媒が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記三フッ化ヨウ化メタンを含む冷媒は、安定性が非常に低い傾向があることが知られていることに加え、更に本発明者らの検討によれば、当該冷媒を用いることにより、夾雑物が発生するという問題が生じることが判明した。夾雑物が生成すると、冷凍機のキャピラリー閉塞や冷却効率の低下等の性能低下をもたらすおそれがある。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、三フッ化ヨウ化メタンを含む冷媒を用いた場合であっても、夾雑物の発生を抑制することが可能な冷凍機用作動流体組成物及び冷凍機油、並びにこれらが充填されている冷凍機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、所定の冷凍機油にヒンダードフェノール化合物を所定量配合することで、上記夾雑物の発生を抑制し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。なお、夾雑物の発生は、冷凍機の冷媒循環系内に存在し得る銅等の各種金属が三フッ化ヨウ化メタンや冷凍機油の分解生成物により腐食することによるものと本発明者らは推察している。
【0008】
本発明は、三フッ化ヨウ化メタンを含む冷媒と、ポリオールエステル及びヒンダードフェノール化合物を含み、該ヒンダードフェノール化合物の含有量が、冷凍機油全量基準で0.6~10質量%である冷凍機油と、を含む、冷凍機用作動流体組成物を提供する。
【0009】
冷凍機油は、酸捕捉剤を更に含んでいてもよい。
【0010】
また、本発明は、ポリオールエステル及びヒンダードフェノール化合物を含み、該ヒンダードフェノール化合物の含有量が、冷凍機油全量基準で0.6~10質量%であり、三フッ化ヨウ化メタンを含む冷媒と共に用いられる、冷凍機油を提供する。
【0011】
本発明は更に、圧縮機、凝縮器、膨張機構及び蒸発器がこの順で配管接続されている冷媒循環システムと、冷媒循環システム内に充填されている上記本発明に係る冷凍機用作動流体組成物と、を備える冷凍機を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、三フッ化ヨウ化メタンを含む冷媒を用いた場合であっても、夾雑物の発生を抑制することが可能な冷凍機用作動流体組成物及び冷凍機油を提供することができる。また、本発明によれば、三フッ化ヨウ化メタンを含む冷媒を用いた場合であっても、冷凍機油の安定性等を十分に確保することができる。さらに本発明によれば、これら冷凍機用作動流体組成物が充填されている冷凍機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0015】
本実施形態に係る冷凍機油は、ポリオールエステル及びヒンダードフェノール化合物を含む。
【0016】
ポリオールエステルは、多価アルコールと脂肪酸とのエステルである。脂肪酸としては、飽和脂肪酸が好ましく用いられる。脂肪酸の炭素数は、好ましくは4~20、より好ましくは4~18、更に好ましくは4~9、特に好ましくは5~9であり、極めて好ましくは8~9である。ポリオールエステルは、多価アルコールの水酸基の一部がエステル化されずに水酸基のまま残っている部分エステルであってもよく、全ての水酸基がエステル化された完全エステルであってもよく、また部分エステルと完全エステルとの混合物であってもよい。
【0017】
ポリオールエステルを構成する脂肪酸のうち、上述した好ましい炭素数を有する脂肪酸の割合は、好ましくは20モル%以上、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは60モル%以上、特に好ましくは70モル%以上、極めて好ましくは90モル%以上であり、割合は、好ましくは100モル%以下である。特に、ポリオールエステルを構成する脂肪酸として、炭素数9の脂肪酸を含む場合、当該脂肪酸の割合は、好ましくは40モル%以上、より好ましくは52モル%以上、更に好ましくは60モル%以上であり、好ましくは100モル%以下、より好ましくは90モル%以下、更に好ましくは80モル%以下、特に好ましくは70モル%以下である。
【0018】
また、ポリオールエステルを構成する脂肪酸のうち、上述した好ましい炭素数を有する脂肪酸(すなわち炭素数4~20の脂肪酸)としては、具体的には、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸が挙げられる。これらの脂肪酸は、直鎖状であっても分岐状であってもよいが、分岐状であることが好ましい。脂肪酸は、より好ましくはα位及び/又はβ位に分岐を有する脂肪酸であり、更に好ましくは、炭素数4~9の分岐脂肪酸である。具体的には、2-メチルプロパン酸、2-メチルブタン酸、2-メチルペンタン酸、2-メチルヘキサン酸、2-エチルペンタン酸、2-メチルヘプタン酸、2-エチルヘキサン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸及び2-エチルヘキサデカン酸から選ばれ、その中でも、2-エチルヘキサン酸又は3,5,5-トリメチルヘキサン酸が好ましい。
【0019】
なお、ポリオールエステルを構成する脂肪酸が炭素数4~9の分岐脂肪酸を含む場合、動粘度及び冷媒溶解粘度維持の観点から、三フッ化ヨウ化メタンとの相溶性がよい3,5,5-トリメチルヘキサン酸を40モル%以上含むことが好ましい。一方、3,5,5-トリメチルヘキサン酸が多すぎると、三フッ化ヨウ化メタン共存下においてポリオールエステルの分解が起こりやすい傾向にあることから、3,5,5-トリメチルヘキサン酸の割合は、好ましくは51モル%以上、より好ましくは60モル%以上であり、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下、特に好ましくは70モル%以下であってよい。
【0020】
脂肪酸は、炭素数4~20の脂肪酸以外の脂肪酸を含んでいてもよい。炭素数4~20の脂肪酸以外の脂肪酸は、例えば炭素数21~24の脂肪酸であってよい。炭素数21~24の脂肪酸は、ヘンイコ酸、ドコサン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸等であってよく、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0021】
ポリオールエステルを構成する多価アルコールとしては、2~6個の水酸基を有する多価アルコールが好ましく用いられる。多価アルコールの炭素数は、好ましくは4~12、より好ましくは5~10である。多価アルコールは、好ましくは、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ-(トリメチロールプロパン)、トリ-(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等のヒンダードアルコールなどであり、冷媒との相溶性及び加水分解安定性に特に優れることから、より好ましくは、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、又はペンタエリスリトールとジペンタエリスリトールとの混合アルコールである。
【0022】
本実施形態に係る冷凍機油は、潤滑油基油として、上記ポリオールエステルのみを含んでいてもよいが、上記ポリオールエステル以外の潤滑油基油を含んでいてもよい。潤滑油基油における上記ポリオールエステルの含有量は、潤滑油基油全量基準で、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってよい。
【0023】
このような潤滑油基油としては、炭化水素油、上記ポリオールエステル以外の含酸素油等を用いることができる。炭化水素油としては、鉱油系炭化水素油、合成系炭化水素油が例示される。含酸素油としては、ポリオールエステル以外のエステル、エーテル、カーボネート、ケトン、シリコーン及びポリシロキサンが例示される。
【0024】
鉱油系炭化水素油は、パラフィン系、ナフテン系等の原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤精製、水素化精製、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化脱ろう、白土処理、硫酸洗浄等の方法で精製することによって得ることができる。これらの精製方法は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
合成系炭化水素油としては、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリα-オレフィン(PAO)、ポリブテン、エチレン-α-オレフィン共重合体等が挙げられる。
【0026】
ポリオールエステル以外のエステルとしては、芳香族エステル、二塩基酸エステル、コンプレックスエステル、炭酸エステル及びこれらの混合物等が例示される。
【0027】
エーテルとしては、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、パーフルオロエーテル及びこれらの混合物等が例示される。
【0028】
潤滑油基油の40℃における動粘度は、好ましくは3mm2/s以上、より好ましくは4mm2/s以上、更に好ましくは5mm2/s以上であってよい。潤滑油基油の40℃における動粘度は、好ましくは1000mm2/s以下、より好ましくは500mm2/s以下、更に好ましくは400mm2/s以下であってよい。潤滑油基油の100℃における動粘度は、好ましくは1mm2/s以上、より好ましくは2mm2/s以上であってよい。潤滑油基油の100℃における動粘度は、好ましくは100mm2/s以下、より好ましくは50mm2/s以下であってよい。本発明における動粘度は、JIS K2283:2000に準拠して測定された動粘度を意味する。
【0029】
潤滑油基油の含有量は、冷凍機油全量基準で、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってよい。
【0030】
本実施形態に係る冷凍機油は、ヒンダードフェノール化合物を含む。本明細書においてヒンダードフェノール化合物とは、ベンゼン環に少なくとも1つの水酸基と、少なくとも1つ、好ましくは2つのtert.-ブチル基が隣接して結合した構造を有する化合物である。ヒンダードフェノール化合物としては、例えば、2,6-ジ-tert.-ブチル-p-クレゾール(DBPC)、2,6-ジ-tert.-ブチル-フェノール、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert.-ブチル-フェノール)等及びこれらの類似構造の化合物群が挙げられ、DBPCが好ましく用いられる。ヒンダードフェノール化合物の含有量は、冷凍機油全量基準で、0.6質量%以上であり、好ましくは0.7質量%以上、より好ましくは0.8質量%以上、更に好ましくは0.9質量%以上である。ヒンダードフェノール化合物の含有量が、冷凍機油全量基準で0.6質量%以上、好ましくは0.7質量%以上であると、後述する三フッ化ヨウ化メタンに起因する夾雑物の発生を十分に抑制できる傾向があり、冷凍機油の安定性を確保することができる。一方でヒンダードフェノール化合物の含有量が、冷凍機油全量基準で0.5質量%以下であると、三フッ化ヨウ化メタンに起因する夾雑物の発生を十分に抑制できない傾向となる。また、ヒンダードフェノール化合物の含有量は、冷凍機油全量基準で、10質量%以下であり、これを超える場合、添加量に見合った効果が発揮されない。また、ヒンダードフェノール化合物の含有量を増やしていくと、副次的に冷凍機油の動粘度及び粘度指数が低下する傾向にある他、空気混入時に着色しやすくなる傾向にあるため、このような観点から、ヒンダードフェノール化合物の含有量は、冷凍機油全量基準で、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下であり、特に好ましくは2.9質量%以下、極めて好ましくは2.8質量%以下、非常に好ましくは2.7質量%以下である。
【0031】
本実施形態に係る冷凍機油は、酸捕捉剤を更に含んでいてもよい。
【0032】
酸捕捉剤としては、例えばエポキシ化合物(エポキシ系酸捕捉剤)が挙げられる。エポキシ化合物としては、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、アリールオキシラン化合物、アルキルオキシラン化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステル、エポキシ化植物油等が挙げられる。これらの酸捕捉剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、例えば下記式(1)で表されるアリールグリシジルエーテル型エポキシ化合物又はアルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物を用いることができる。
【0034】
【化1】
[式(1)中、R
aはアリール基又は炭素数5~18のアルキル基を表す。]
【0035】
式(1)で表されるグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、フェニルグリシジルエーテル、n-ブチルフェニルグリシジルエーテル、i-ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ペンチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキシルフェニルグリシジルエーテル、ヘプチルフェニルグリシジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、デシルフェニルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテルが好ましい。
【0036】
Raで表されるアルキル基の炭素数が5以上であると、エポキシ化合物の安定性が確保され、水分、脂肪酸、酸化劣化物と反応する前に分解したり、エポキシ化合物同士が重合する自己重合を起こしたりするのを抑制でき、目的の機能が得られやすくなる。一方、Raで表されるアルキル基の炭素数が18以下であると、冷媒との溶解性が良好に保たれ、冷凍装置内で析出して冷却不良などの不具合を生じにくくすることができる。
【0037】
グリシジルエーテル型エポキシ化合物として、式(1)で表されるエポキシ化合物以外に、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル等を用いることもできる。
【0038】
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、例えば下記式(2)で表されるものを用いることができる。
【0039】
【0040】
式(2)中、Rbはアリール基、炭素数5~18のアルキル基、又はアルケニル基を示す。
【0041】
式(2)で表されるグリシジルエステル型エポキシ化合物としては、グリシジルベンゾエート、グリシジルネオデカノエート、グリシジル-2,2-ジメチルオクタノエート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートが好ましい。
【0042】
Rbで表されるアルキル基の炭素数が5以上であると、エポキシ化合物の安定性が確保され、水分、脂肪酸、酸化劣化物と反応する前に分解したり、エポキシ化合物同士が重合する自己重合を起こしたりするのを抑制でき、目的の機能が得られやすくなる。一方、Rbで表されるアルキル基又はアルケニル基の炭素数が18以下であると、冷媒との溶解性が良好に保たれ、冷凍機内で析出して冷却不良などの不具合を生じにくくすることができる。
【0043】
脂環式エポキシ化合物とは、下記一般式(3)で表される、エポキシ基を構成する炭素原子が直接脂環式環を構成している部分構造を有する化合物である。
【0044】
【0045】
脂環式エポキシ化合物としては、例えば、1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシシクロペンタン、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ-2,3-エポキシノルボルナン、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)-スピロ(1,3-ジオキサン-5,3’-[7]オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、4-(1’-メチルエポキシエチル)-1,2-エポキシ-2-メチルシクロヘキサン、4-エポキシエチル-1,2-エポキシシクロヘキサンが好ましい。
【0046】
アリールオキシラン化合物としては、1,2-エポキシスチレン、アルキル-1,2-エポキシスチレンなどが例示できる。
【0047】
アルキルオキシラン化合物としては、1,2-エポキシブタン、1,2-エポキシペンタン、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシヘプタン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシノナン、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシウンデカン、1,2-エポキシドデカン、1,2-エポキシトリデカン、1,2-エポキシテトラデカン、1,2-エポキシペンタデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、1,2-エポキシヘプタデカン、1,1,2-エポキシオクタデカン、2-エポキシノナデカン、1,2-エポキシイコサンなどが例示できる。
【0048】
エポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、エポキシ化された炭素数12~20の脂肪酸と、炭素数1~8のアルコール又はフェノールもしくはアルキルフェノールとのエステルなどが例示できる。エポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、エポキシステアリン酸のブチル、ヘキシル、ベンジル、シクロヘキシル、メトキシエチル、オクチル、フェニルおよびブチルフェニルエステルが好ましく用いられる。
【0049】
エポキシ化植物油としては、大豆油、アマニ油、綿実油等の植物油のエポキシ化合物などが例示できる。
【0050】
酸捕捉剤は、好ましくはグリシジルエステル型エポキシ化合物及びグリシジルエーテル型エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種であり、冷凍機内の部材に使用されている樹脂材料との適合性に優れる観点からは、好ましくはグリシジルエステル型エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種である。
【0051】
酸捕捉剤の含有量は、冷凍機油全量基準で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上であり、好ましくは4質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下、特に好ましくは1.2質量%以下である。
【0052】
本実施形態に係る冷凍機油が酸捕捉剤を含む場合、冷凍機油におけるヒンダードフェノール化合物及び酸捕捉剤の含有量の合計に対する酸捕捉剤の含有量の質量比(酸捕捉剤の含有量/ヒンダードフェノール化合物及び酸捕捉剤の含有量の合計)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上であり、また、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.9以下、更に好ましくは0.8以下である。
【0053】
本実施形態に係る冷凍機油が酸捕捉剤を含む場合、冷凍機油におけるヒンダードフェノール化合物及び酸捕捉剤の含有量の合計は、冷凍機油全量基準で、好ましくは0.7質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、特に好ましくは2質量%以上であり、また、好ましくは6質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは4質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。
【0054】
本実施形態に係る冷凍機油は、その他の添加剤を更に含有していてもよい。その他の添加剤としては、アミン系酸化防止剤等の酸化防止剤、極圧剤、油性剤、消泡剤、金属不活性化剤、耐摩耗剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤等が挙げられる。これらの添加剤の含有量は、冷凍機油全量基準で、10質量%以下又は5質量%以下であってよい。
【0055】
冷凍機油の40℃における動粘度は、好ましくは3mm2/s以上、より好ましくは4mm2/s以上、更に好ましくは5mm2/s以上であってよい。冷凍機油の40℃における動粘度は、好ましくは500mm2/s以下、より好ましくは400mm2/s以下、更に好ましくは300mm2/s以下であってよい。冷凍機油の100℃における動粘度は、好ましくは1mm2/s以上、より好ましくは2mm2/s以上であってよい。冷凍機油の100℃における動粘度は、好ましくは100mm2/s以下、より好ましくは50mm2/s以下であってよい。
【0056】
冷凍機油の流動点は、好ましくは-10℃以下、より好ましくは-20℃以下であってよい。本発明における流動点は、JIS K2269:1987に準拠して測定される流動点を意味する。
【0057】
冷凍機油の体積抵抗率は、好ましくは1.0×109Ω・m以上、より好ましくは1.0×1010Ω・m以上、更に好ましくは1.0×1011Ω・m以上であってよい。本発明における体積抵抗率は、JIS C2101:1999に準拠して測定した25℃での体積抵抗率を意味する。
【0058】
冷凍機油の水分含有量は、冷凍機油全量基準で、好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、更に好ましくは50ppm以下であってよい。
【0059】
冷凍機油の酸価は、好ましくは1.0mgKOH/g以下、より好ましくは0.1mgKOH/g以下であってよい。本発明における酸価は、JIS K2501:2003に準拠して測定された酸価を意味する。
【0060】
冷凍機油の灰分は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下であってよい。本発明における灰分は、JIS K2272:1998に準拠して測定された灰分を意味する。
【0061】
本実施形態に係る冷凍機油は、通常、冷凍機において、三フッ化ヨウ化メタンを含む冷媒と混合された冷凍機用作動流体組成物として存在している。すなわち、本実施形態に係る冷凍機油は、三フッ化ヨウ化メタンを含む冷媒と共に用いられ、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物は、本実施形態に係る冷凍機油と、三フッ化ヨウ化メタンを含む冷媒と、を含む。
【0062】
かかる冷媒は、三フッ化ヨウ化メタンを含む限りにおいて特に制限されず、三フッ化ヨウ化メタンのみを含んでいてもよく、三フッ化ヨウ化メタン以外の冷媒を更に含んでいてもよい。三フッ化ヨウ化メタンの含有量は、冷媒全量基準で、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。また、三フッ化ヨウ化メタンの含有量は、冷媒全量基準で、好ましくは100質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
【0063】
三フッ化ヨウ化メタン以外の冷媒としては、例えば、飽和フッ化炭化水素冷媒、不飽和フッ化炭化水素冷媒、炭化水素冷媒、パーフルオロエーテル類等の含フッ素エーテル系冷媒、ビス(トリフルオロメチル)サルファイド冷媒、及び、アンモニア、二酸化炭素等の自然系冷媒、並びにこれらの冷媒から選ばれる2種以上の混合冷媒が例示される。
【0064】
飽和フッ化炭化水素冷媒としては、好ましくは炭素数1~3、より好ましくは炭素数1~2の飽和フッ化炭化水素が挙げられる。具体的には、ジフルオロメタン(R32)、トリフルオロメタン(R23)、ペンタフルオロエタン(R125)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(R134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)、1,1,1-トリフルオロエタン(R143a)、1,1-ジフルオロエタン(R152a)、フルオロエタン(R161)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R227ea)、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン(R236ea)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(R236fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(R245fa)、及び1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(R365mfc)、又はこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0065】
飽和フッ化炭化水素冷媒としては、上記の中から用途や要求性能に応じて適宜選択されるが、例えばR32単独;R23単独;R134a単独;R125単独;R134a/R32=60~80質量%/40~20質量%の混合物;R32/R125=40~70質量%/60~30質量%の混合物;R125/R143a=40~60質量%/60~40質量%の混合物;R134a/R32/R125=60質量%/30質量%/10質量%の混合物;R134a/R32/R125=40~70質量%/15~35質量%/5~40質量%の混合物;R125/R134a/R143a=35~55質量%/1~15質量%/40~60質量%の混合物などが好ましい例として挙げられる。さらに具体的には、R134a/R32=70/30質量%の混合物;R32/R125=60/40質量%の混合物;R32/R125=50/50質量%の混合物(R410A);R32/R125=45/55質量%の混合物(R410B);R125/R143a=50/50質量%の混合物(R507C);R32/R125/R134a=30/10/60質量%の混合物;R32/R125/R134a=23/25/52質量%の混合物(R407C);R32/R125/R134a=25/15/60質量%の混合物(R407E);R125/R134a/R143a=44/4/52質量%の混合物(R404A)等を用いることができる。
【0066】
三フッ化ヨウ化メタンと上記飽和フッ化炭化水素冷媒との混合冷媒としては、例えば、R32/R125/三フッ化ヨウ化メタン混合冷媒、R32/R410A/三フッ化ヨウ化メタン混合冷媒が好ましい例として挙げられる。このような混合冷媒におけるR32:三フッ化ヨウ化メタンの比率は、冷凍機油との相溶性、低GWP及び不燃性とのバランスから、好ましくは10~90:90~10、より好ましくは30~70:70~30、更に好ましくは40~60:60~40、特に好ましくは50~60:50~40であり、同様に、R32及び三フッ化ヨウ化メタンの混合冷媒:R125の比率は、好ましくは10~95:90~5であり、低GWPの観点から、より好ましくは50~95:50~5、更に好ましくは80~95:20~5である。
【0067】
不飽和フッ化炭化水素(HFO)冷媒は、好ましくはフルオロプロペン、より好ましくはフッ素数が3~5のフルオロプロペンである。不飽和フッ化炭化水素冷媒としては、具体的には、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ye)、及び3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)のいずれか1種又は2種以上の混合物であることが好ましい。冷媒物性の観点からは、HFO-1225ye、HFO-1234ze及びHFO-1234yfから選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【0068】
炭化水素冷媒は、好ましくは炭素数1~5の炭化水素、より好ましくは炭素数2~4の炭化水素である。炭化水素としては、具体的には例えば、メタン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン(R290)、シクロプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、シクロブタン、メチルシクロプロパン、2-メチルブタン、ノルマルペンタン又はこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの中でも、25℃、1気圧で気体のものが好ましく用いられ、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、2-メチルブタン又はこれらの混合物が好ましい。
【0069】
冷凍機用作動流体組成物における冷凍機油の含有量は、冷媒100質量部に対して、好ましくは1~500質量部、より好ましくは2~400質量部であってよい。
【0070】
本実施形態に係る冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物は、往復動式や回転式の密閉型圧縮機を有するエアコン、冷蔵庫、開放型又は密閉型のカーエアコン、除湿機、給湯器、冷凍庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷凍機、遠心式の圧縮機を有する冷凍機等に好適に用いられる。
【0071】
本実施形態に係る冷凍機油又は冷凍機用作動流体組成物を好適に用いることができる冷凍機は、圧縮機、凝縮器(ガスクーラー)、膨張機構(キャピラリ、膨張弁等)及び蒸発器(熱交換器)がこの順で配管接続されている冷媒循環システムを少なくとも備えている。特に、冷凍機における配管として銅配管が使用されている場合、本実施形態に係る冷凍機油又は冷凍機用作動流体組成物を好適に用いることができる。なお冷媒及び冷凍機油は、別々に本実施形態に係る冷凍機に充填されてもよい。
【0072】
本実施形態に係る冷凍機油又は冷凍機用作動流体組成物を好適に用いることのできる冷凍機の一例を
図1に示す。
図1は、冷凍機の一実施形態を示す模式図である。
図1に示すように、冷凍機10は、圧縮機(冷媒圧縮機)1と、凝縮器(ガスクーラー)2と、膨張機構(キャピラリ、膨張弁等)3と、蒸発器(熱交換器)4とが配管(流路)5で順次配管接続された冷媒循環システム6を少なくとも備えている。
【0073】
冷媒循環システム6においては、まず、圧縮機1から配管5内に吐出された高温の冷媒が、凝縮器2にて高密度流体(超臨界流体等)となる。続いて、冷媒は、膨張機構3を有する狭い流路を通ることによって液化し、更に蒸発器4にて気化して低温となる。冷凍機10による冷房は、冷媒が蒸発器4において気化する際に周囲から熱を奪う現象を利用している。
【0074】
圧縮機1内においては、高温条件下で、少量の冷媒と多量の冷凍機油とが共存する。圧縮機1から配管5に吐出される冷媒は、気体状であり、少量(通常1~10体積%)の冷凍機油をミストとして含んでいるが、このミスト状の冷凍機油中には少量の冷媒が溶解している(
図1中の点a)。
【0075】
圧縮機1としては、冷凍機油を貯留する密閉容器内に回転子と固定子からなるモータと、回転子に嵌着された回転軸と、この回転軸を介して、モータに連結された圧縮機部とを収納し、圧縮機部より吐出された高圧冷媒ガスが密閉容器内に滞留する高圧容器方式の圧縮機、冷凍機油を貯留する密閉容器内に回転子と固定子からなるモータと、回転子に嵌着された回転軸と、この回転軸を介して、モータに連結された圧縮機部とを収納し、圧縮機部より吐出された高圧冷媒ガスが密閉容器外へ直接排出される低圧容器方式の圧縮機、等が例示される。なお、圧縮機としては、圧縮機1のようなロータリー式のものには限られず、ピストン・クランク式等の往復式、スクリュー式、遠心式であっても良いが、往復式が特に好ましい。また、圧縮機の密閉構造としては、開放型、半密閉型、密閉型のいずれであっても良いが、密閉型が特に好ましい。
【実施例】
【0076】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0077】
実施例及び比較例においては、以下に示す基油及び添加剤を用いて表1に示す組成(冷凍機油全量基準での質量%)を有する冷凍機油を調製した。これらの冷凍機油の40℃における動粘度は、概ね70~75mm2/sの範囲にあった。
(基油)
A1:ペンタエリスリトールと、2-エチルヘキサン酸/3,5,5-トリメチルヘキサン酸の混合脂肪酸(モル比:37/63)とのポリオールエステル(40℃における動粘度:75.5mm2/s、100℃における動粘度:8.9mm2/s)
(添加剤)
B1:2,6-ジ-tert.-ブチル-p-クレゾール
C1:グリシジルネオデカノエート(エポキシ系酸捕捉剤)
C2:フェニルグリシジルエーテル(エポキシ系酸捕捉剤)
D1:ジフェニルアミン(アミン系酸化防止剤)
【0078】
三フッ化ヨウ化メタンを含む冷媒として、ジフルオロメタン(R32)、ジフルオロメタン(R32)/ペンタフルオロエタン(R125)の50/50質量%の混合物(R410A)、及び三フッ化ヨウ化メタンを混合し、R32、R125及び三フッ化ヨウ化メタンを含む混合冷媒(混合比(質量比):R32/R410A/三フッ化ヨウ化メタン=37.5/23/39.5)(R32/R125/三フッ化ヨウ化メタン=49.0/11.5/39.5)を調製した。この組成の混合冷媒は、GWPが733とされ、ASHRAEによるカテゴリーでは、不燃性冷媒(A1)にあたるとされている。
【0079】
実施例1~5及び比較例1~2の各冷凍機油について、以下に示す評価試験を実施した。
【0080】
オートクレーブ中に、水分を10ppm以下に調製した冷凍機油(初期色相L0.5、初期酸価0.01mgKOH/g以下)30gと、上記で調製した混合冷媒30gと、0.6mmφ×50mmの触媒(銅、鉄、アルミニウムの各1本)とを200mlオートクレーブに仕込み、175℃に加熱して48時間保持した。48時間後の冷凍機油について、夾雑物の含有量、色相(ASTM D156)及び酸価を測定した。結果を表1に示す。
【0081】
【0082】
また、実施例1及び実施例2、並びに比較例1の冷凍機油について、上記保持時間を48時間から72時間に延長して、上記と同様に夾雑物の含有量及び酸価を測定したところ、比較例1の冷凍機油を用いた場合の夾雑物量及び酸価に対し、実施例1の冷凍機油を用いた場合では、それぞれ86%、25%の割合で大幅に低減することができ、実施例2の冷凍機油を用いた場合では、それぞれ97%、84%の割合で大幅に低減することができた。
【符号の説明】
【0083】
1…圧縮機、2…凝縮器、3…膨張機構、4…蒸発器、5…配管、6…冷媒循環システム、10…冷凍機。