(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】散光式警光灯システムおよびそれを備える車両
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/52 20060101AFI20240515BHJP
B60Q 5/00 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
B60Q1/52
B60Q5/00 620D
B60Q5/00 680E
B60Q5/00 610B
(21)【出願番号】P 2022028630
(22)【出願日】2022-02-25
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】312001937
【氏名又は名称】株式会社パトライト
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅本 孝哉
(72)【発明者】
【氏名】松井 宏維
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-217841(JP,A)
【文献】特開2011-121385(JP,A)
【文献】特開2002-245804(JP,A)
【文献】特開2017-222259(JP,A)
【文献】国際公開第2009/019945(WO,A1)
【文献】特開2008-171669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/00- 1/56
B60Q 5/00- 7/02
H05B 39/00-39/10
H05B 45/00-45/59
H05B 47/00-47/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
警告灯ユニットを含む散光式警光灯と、
サイレンを吹鳴するサイレン装置と、
前記警告灯ユニットにより警告光を発生させ、かつ前記サイレン装置によりサイレンを吹鳴させる第1モードと、前記警告灯ユニットにより光を発生させる一方、前記サイレン装置によるサイレンの吹鳴は行わない第2モードとを設定するモード設定装置と、
前記モード設定装置によって前記第2モードが設定されると、ホタルの光の明滅を模擬した光量増減パターンに従って前記警告灯ユニットによる光照射を制御するホタル光照射制御を実行する警告灯ユニット制御装置と、を含む、散光式警光灯システム。
【請求項2】
前記ホタル光照射制御は、前記警告灯ユニットの全周方向に対して同時に光を照射する全周同時照射制御を含む、請求項1に記載の散光式警光灯システム。
【請求項3】
前記全周同時照射制御は、前記警告灯ユニットから前記散光式警光灯の中央部の方向を除く全周方向に対して同時に光を照射する制御である、請求項2に記載の散光式警光灯システム。
【請求項4】
前記警告灯ユニットは、第1警告灯ユニットと第2警告灯ユニットとを含み、前記ホタル光照射制御は、前記第1警告灯ユニットおよび前記第2警告灯ユニットの光量を前記光量増減パターンに従って異なる位相で増減させる、請求項1~3のいずれか一項に記載の散光式警光灯システム。
【請求項5】
前記ホタル光照射制御において、前記第1警告灯ユニットの光量の立ち下がり区間と、前記第2警告灯ユニットの光量の立ち上がり区間とが部分的に重複する、請求項4に記載の散光式警光灯システム。
【請求項6】
前記ホタル光照射制御において、前記第1警告灯ユニットの光量と前記第2警告灯ユニットの光量とが等しくなる交差ポイントにおける当該光量は、前記第1警告灯ユニットまたは前記第2警告灯ユニットの最大光量の50%未満である、請求項5に記載の散光式警光灯システム。
【請求項7】
前記ホタル光照射制御において、前記第1警告灯ユニットの光量が前記最大光量となる時刻から前記交差ポイントまでの第1経過時間が、前記交差ポイントから前記第1警告灯ユニットの光量が最小光量となるまでの第2経過時間よりも長い、請求項6に記載の散光式警光灯システム。
【請求項8】
前記光量増減パターンは、最小光量から最大光量まで立ち上がり区間と、前記最大光量から最小光量まで立ち下がり区間とを含み、前記立ち上がり区間の長さである立ち上がり時間が、前記立ち下がり区間の長さである立ち下がり時間よりも
短い光量波形の繰り返しパターンである、請求項1~7のいずれか一項に記載の散光式警光灯システム。
【請求項9】
前記光量波形は、前記立ち上がり区間に前記立ち下がり区間が連なり、前記立ち下がり区間に連なり、前記最小光量が維持される最小光量区間をさらに含む、請求項8に記載の散光式警光灯システム。
【請求項10】
前記最小光量区間の長さである最小光量時間が、前記立ち上がり時間よりも長く、前記立ち下がり時間よりも短い、請求項9に記載の散光式警光灯システム。
【請求項11】
前記立ち下がり時間は、前記光量波形の1周期のほぼ半分である、請求項9または10に記載の散光式警光灯システム。
【請求項12】
前記立ち下がり時間は、前記立ち上がり時間および前記最小光量時間の和にほぼ等しい、請求項10に記載の散光式警光灯システム。
【請求項13】
前記警告灯ユニット制御装置は、前記モード設定装置によって前記第1モードが設定されると、少なくとも一つの警告灯ユニットから警告光を回転放射する回転照射制御を実行する、請求項1~12のいずれか一項に記載の散光式警光灯システム。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の散光式警光灯システムを備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、散光式警光灯システムおよびそれを備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
散光式警光灯システムは、散光式警光灯およびサイレン装置を備え、周囲に向けて、警告光を放射し、かつサイレンを吹鳴するように構成されている。散光式警光灯システムは、たとえば、パトロールカー、救急車、消防車等の緊急車両に備えられ、緊急走行時に、周囲の人や車両に向けて警告光を放射し、かつサイレンを吹鳴して注意を喚起するために用いられる。緊急車両のほかにも、道路維持作業用自動車、防犯パトロール車、輸送車両においても散光式警光灯システムが用いられる場合があり、これらの場合には、黄色、青色、緑色等の赤色以外の警告灯が用いられる。このような散光式警光灯システムの例は、たとえば、特許文献1,2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平3-30306号公報
【文献】特開平9-306208号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】臼田昭司、深田三夫、奥田昌宏、「ホタルの光計測」、光学、2003年、第32巻、第3号、p.176-180
【文献】大場信義、「ホタル類の光コミュニケーションと夜間照明」、環動昆、2002年、第13巻、第2号、p.67-76
【文献】下村尚道、「日本に生息するホタルの発光時間と発光間隔の違い」、地球環境保全学研究室 卒業研究要旨集、平成26年度(2014年度)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
散光式警光灯システムは、警告光を発生させ、かつサイレンを吹鳴させるように作動させることができるほかに、サイレンを吹鳴させることなく、警告光を発生させるように作動させることもできる。具体的には、緊急車両の使用者は、緊急走行の際には、警告光を発生させ、サイレンを吹鳴させるが、緊急走行以外の活動時、たとえば警ら中には、サイレンを吹鳴させることなく、警告光を発生させることができる。
【0006】
しかし、活動状況による動作の相違は、サイレンの吹鳴の有無であるので、聴覚が使えない者にとっては、その区別ができない。具体的には、聴覚障害者、イヤホンまたはヘッドフォン装着者などは、実質的に警告光のみが認知対象となる場合があり、サイレンの吹鳴の有無によって情報を得ることができない。
【0007】
散光式警光灯のなかには、複数種類の光り方が可能なものもある。しかし、従来の散光式警光灯は、緊急車両等の存在を周囲から明確に認知させることを目的とした思想のもと、刺激の強い光で視認性を高める光り方に設計されている。すなわち、散光式警光灯において、活動状況を伝達する目的で複数の光り方を設計するという思想がない。したがって、とりわけ一般人が、散光式警光灯の光り方から活動状況を知ることは至難であり、散光式警光灯が照射する警告光は、実質上、緊急走行以外の活動状況を伝達する手段として機能せず、その機能を実質上期待することもできない。そもそも、従来からの散光式警光灯には、活動状況の違いを伝達する手段として警告光を利用する明確な設計思想が存在しない。
【0008】
そこで、この発明の一実施形態は、散光式警光灯が照射する光を活動状況の伝達のために利用できる散光式警光灯システム、およびそれを備える車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の一実施形態は、警告灯ユニットを含む散光式警光灯と、サイレンを吹鳴するサイレン装置と、前記警告灯ユニットにより警告光を発生させ、かつ前記サイレン装置によりサイレンを吹鳴させる第1モードと、前記警告灯ユニットにより光を発生させる一方、前記サイレン装置によるサイレンの吹鳴は行わない第2モードとを設定するモード設定装置と、前記モード設定装置によって前記第2モードが設定されると、ホタルの光の明滅を模擬した光量増減パターンに従って前記警告灯ユニットによる光照射を制御するホタル光照射制御を実行する警告灯ユニット制御装置と、を含む、散光式警光灯システムを提供する。
【0010】
この構成によれば、サイレンの吹鳴を行わずに光を発生させる第2モードにおいては、ホタルの光の明滅を模擬した光量増減パターンで警告灯ユニットによる光照射が実行される。つまり、ホタルの光の明滅を模擬した柔和な光が警告灯ユニットから照射される。このような柔和な光は、散光式警光灯が装備される機械または設備(たとえば車両)の存在を明確に表しながら、緊急性または重大性のニュアンスを緩和した情報を周囲の者に視覚を通じて伝達する伝達媒体となり得る。したがって、第1モードにおいて、従来からの警告光のような緊急性または重大性のニュアンスの濃い通常の警告光照射を行う一方で、第2モードにおいては、通常の警告光照射とは明確に異なる柔和なホタル光照射を行うことにより、明確に異なる視覚的効果によって、少なくとも2種類の情報を伝達することが可能となる。それにより、聴覚を利用できない者に対しても、活動状況を伝達しやすい散光式警光灯システムを提供できる。
【0011】
前記ホタル光照射制御は、前記警告灯ユニットの全周方向に対して同時に光を照射する全周同時照射制御を含むことが好ましい。
【0012】
前記全周同時照射制御は、前記警告灯ユニットから前記散光式警光灯の中央部の方向を除く全周方向に対して同時に光を照射する制御であってもよい。
【0013】
前記警告灯ユニットは、第1警告灯ユニットと第2警告灯ユニットとを含んでもよい。この場合に、前記ホタル光照射制御は、前記第1警告灯ユニットおよび前記第2警告灯ユニットの光量を前記光量増減パターンに従って異なる位相で増減させることが好ましい。
【0014】
前記ホタル光照射制御において、前記第1警告灯ユニットの光量の立ち下がり区間と、前記第2警告灯ユニットの光量の立ち上がり区間とが部分的に重複することが好ましい。
【0015】
前記ホタル光照射制御において、前記第1警告灯ユニットの光量と前記第2警告灯ユニットの光量とが等しくなる交差ポイントにおける当該光量は、好ましくは、前記第1警告灯ユニットまたは前記第2警告灯ユニットの最大光量の50%未満、より好ましくは40%未満、さらに好ましくは30%未満、一層好ましくは25%以下である。
【0016】
前記ホタル光照射制御において、前記第1警告灯ユニットの光量が前記最大光量となる時刻から前記交差ポイントまでの第1経過時間が、前記交差ポイントから前記第1警告灯ユニットの光量が最小光量(たとえば、消灯または微点灯状態)となるまでの第2経過時間よりも長いことが好ましい。
【0017】
前記光量増減パターンは、最小光量から最大光量まで立ち上がり区間と、前記最大光量から最小光量まで立ち下がり区間とを含み、前記立ち上がり区間の長さである立ち上がり時間が、前記立ち下がり区間の長さである立ち下がり時間よりも短い光量波形の繰り返しパターンであることが好ましい。
【0018】
前記光量波形は、前記立ち上がり区間に前記立ち下がり区間が連なり、前記立ち下がり区間に連なり、前記最小光量が維持される最小光量区間をさらに含むことが好ましい。
【0019】
前記最小光量区間の長さである最小光量時間が、前記立ち上がり時間よりも長く、前記立ち下がり時間よりも短いことが好ましい。
【0020】
前記立ち下がり時間は、前記光量波形の1周期のほぼ半分であってもよい。
【0021】
前記立ち下がり時間は、前記立ち上がり時間および前記最小光量時間の和にほぼ等しくてもよい。
【0022】
前記警告灯ユニット制御装置は、前記モード設定装置によって前記第1モードが設定されると、少なくとも一つの警告灯ユニットから警告光を回転放射する回転照射制御を実行することが好ましい。
【0023】
この発明の一実施形態は、前述のような散光式警光灯システムを備える車両を提供する。
【発明の効果】
【0024】
この発明により、散光式警光灯が照射する光を活動状況の伝達のために利用できる散光式警光灯システム、およびそれを備える車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る散光式警光灯システムが取り付けられた車両の一例を示す模式的な斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る散光式警光灯システムが取り付けられた車両の他の例を示す模式的な斜視図である。
【
図4】警告灯ユニットの構成例を示す模式的な平断面図である。
【
図5】散光式警光灯システムの電気的構成を説明するためのブロック図である。
【
図6】ホタル光照射のための光量増減パターンの一例を説明するための波形図である。
【
図7A-7C】ホタル光照射のための様々な基本光量波形を示す。
【
図8】
図7Cに類似した基本光量波形を適用し、光量波形の位相をずらした例を示す。
【
図10A-10D】異なる光量波形の組合せ例を示す。
【
図11】この発明の他の実施形態に係る散光式警光灯システムの構成例を説明するための図解的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
図1および
図2は、本発明の一実施形態に係る散光式警光灯システムが取り付けられた車両100の一例を示す模式的な斜視図である。車両100は、パトカー(
図1参照)や、救急車(
図2参照)等の緊急車両である。散光式警光灯システム20は、散光式警光灯1と、車内に装備されるサイレンアンプ15とを含む。この例では、散光式警光灯1には、サイレン装置14が組み込まれており、このサイレン装置14も散光式警光灯システム20の構成要素である。
【0028】
散光式警光灯1は、本実施形態では車両100のルーフ100A上に取り付けられるが、車両100のボンネット100B等に取り付けられてもよい。車両100に取り付けられた状態における散光式警光灯1は、車両100の車幅方向である左右方向に長手である。また、左右方向における散光式警光灯1の中心C(
図3参照)は、左右方向における車両100の中心と一致している。
【0029】
散光式警光灯1は、散光式警光灯1の外殻において底部以外のほとんどの領域を構成する左右方向に長手のグローブ2と、散光式警光灯1の底部を構成する左右方向に長手の基台3(
図1参照)とを含む。グローブ2および基台3は、散光式警光灯1の本体を構成する。
【0030】
グローブ2は、透光性を有する樹脂等によって構成されている。グローブ2は、透明であってもよいし、着色されていてもよく、本実施形態では赤色等によって着色されている。グローブ2は、平面視で基台3を上方および/または側方から包囲する形状を有し、基台3を上側から覆った状態で基台3に固定されている。
【0031】
グローブ2は、
図1に示すように、車両100のルーフ100Aから上側へ膨出する凸状に形成されてもよい。または、グローブ2は、
図2に示すように、ルーフ100Aの前端から斜めに下降してフロントウィンドウ100Cの上端につながるように車両100の車体に一体形成されてもよく、この場合のグローブ2は、散光式警光灯1の一部でなく、車両100の一部とみなせる。以下では、
図1に示す形状のグローブ2を含む散光式警光灯1を、一例として説明する。
【0032】
図3は、散光式警光灯1の模式的な平面図である。以下では、散光式警光灯1が車両100に取り付けられた状態を想定して、車両100の上下方向、左右方向および前後方向に基づいて散光式警光灯1の向きを特定する。
【0033】
基台3は、金属製の板であり、ボルト等の締結部材(図示せず)によって、車両100のルーフ100Aに固定される。基台3は、中央領域3Cと、中央領域3Cから左側へ延びる左領域3Lと、中央領域3Cから右側へ延びる右領域3Rとを含み、散光式警光灯1の中心Cに対して平面視で左右対称に構成される。中心Cは、前後方向に沿って延びる仮想的な直線である。本実施形態では、左領域3Lが左後側へ傾斜して延び、右領域3Rが右後側へ傾斜して延びることによって、基台3は、平面視でV字状の全体形状を有する。別の例として、左領域3Lが中央領域3Cから真左へ延び、右領域3Rが中央領域3Cから真右へ延びることによって、基台3全体が、左右方向に沿って一直線に延びるバー形状を有してもよい。
【0034】
散光式警光灯1は、複数の警告灯ユニット4をさらに含む。本実施形態では、一例として4つの警告灯ユニット4が備えられている。具体的には、左右方向に並ぶ一対の内側警告灯ユニット4Aと、一対の内側警告灯ユニット4Aに対して左右方向における両外側に隣接して配置される一対の外側警告灯ユニット4Bとを含む。一対の内側警告灯ユニット4Aにおいて、左側に位置する内側警告灯ユニット4Aを左内側警告灯ユニット4ALといい、右側に位置する内側警告灯ユニット4Aを右内側警告灯ユニット4ARということにする。また、一対の外側警告灯ユニット4Bにおいて、左側に位置する外側警告灯ユニット4Bを左外側警告灯ユニット4BLといい、右側に位置する外側警告灯ユニット4Bを右外側警告灯ユニット4BRということにする。左外側警告灯ユニット4BLは、4つの警告灯ユニット4において左端に位置する警告灯ユニット4であり、右外側警告灯ユニット4BRは、右端に位置する警告灯ユニット4である。
【0035】
左内側警告灯ユニット4ALおよび左外側警告灯ユニット4BLは、散光式警光灯1において互いに隣接する一対の警告灯ユニット4の一例である。同様に、右内側警告灯ユニット4ARおよび右外側警告灯ユニット4BRは、散光式警光灯1において互いに隣接する一対の警告灯ユニット4の一例である。さらに、左内側警告灯ユニット4ALおよび右内側警告灯ユニット4ARは、散光式警光灯1において互いに隣接する一対の警告灯ユニット4の一例である。これらの4つの警告灯ユニット4のうちの任意の一対(好ましくは隣接する一対)が、第1警告灯ユニットおよび第2警告灯ユニットの例となり得る。
【0036】
左内側警告灯ユニット4ALは、基台3の左領域3Lの右端部上に配置され、右内側警告灯ユニット4ARは、基台3の右領域3Rの左端部上に配置されている。左外側警告灯ユニット4BLは、左領域3Lの左端部上に配置され、右外側警告灯ユニット4BRは、右領域3Rの右端部上に配置されている。
【0037】
本実施形態では基台3がV字状の全体形状を有するので、一対の内側警告灯ユニット4Aが、一対の外側警告灯ユニット4Bよりも前側にずれて配置されている。別の構成として、一対の内側警告灯ユニット4Aと一対の外側警告灯ユニット4Bとが前後方向にずれて配置されるのではなく、左右方向に沿って一直線に並んで配置されてもよく、この場合の散光式警光灯1の全体形状は、左右方向に沿って一直線に延びるバー形状を呈する。いずれの構成であっても、一対の内側警告灯ユニット4Aおよび一対の外側警告灯ユニット4B、つまり4つ全ての警告灯ユニット4は、前側から見て左右方向に並んでいる。また、4つ全ての警告灯ユニット4は、前述した中心Cを対称中心として左右対称に配置されている。
【0038】
散光式警光灯1には、基台3の中央領域3C上に配置されたサイレン装置14が組み込まれている。
【0039】
図4は、警告灯ユニット4の構成例を示す模式的な平断面図である。警告灯ユニット4は、基台3の上面に固定されたベース5と、ベース5から上側へ延びる筒状のインナーグローブ6と、インナーグローブ6によって取り囲まれた発光部7とを含む。本実施形態では、ベース5は、平面視で円板状である。インナーグローブ6は、平面視で円筒状であって、ベース5と同軸上に配置されている。別の構成として、ベース5が矩形板状であってもよい。この場合、インナーグローブ6が矩形状の断面を有する角筒状であってもよい。平面視におけるベース5およびインナーグローブ6の中心、本実施形態ではベース5およびインナーグローブ6の円中心を通って上下方向に延びる仮想線を「回転軸線J」という。インナーグローブ6は、無色透明または白色透光性を有してもよいし、グローブ2と同じ色によって着色されていてもよい。
【0040】
本実施形態における発光部7は、ベース5に固定された単数または複数の基板8と、基板8に設けられた光源9とを含む。各基板8は、上下方向に沿って平行に延びる一対の主面8Aを有する。一例として、3枚の基板8が、平面視で回転軸線Jを取り囲む三角形をなすように配置されている。
【0041】
光源9は、白色での発光が可能あってもよいし、グローブ2と同じ色での発光が可能であってもよい。光源9の一例は、発光ダイオード(LED)である。光源9は、各基板8における一対の主面8Aにおいて回転軸線J側とは反対側の外主面8AAに、たとえば2つずつ横並びで実装されている。つまり、発光部7は、複数の光源9を含み、これらの光源9は、回転軸線Jまわりの回転方向Rに並んでいる。なお、これらの光源9は、回転軸線Jを取り囲むように配置されるのであれば、回転方向Rに厳密に沿う円環状に配置されなくてもよい。また、基板8が単数だけ存在する構成(図示せず)では、この基板8は、平面視における基板8の中心が回転軸線Jと一致するように配置され、この基板8の一対の主面8Aのそれぞれに単数または複数の光源9が実装される。
【0042】
各光源9からの光は、回転軸線Jと直交する径方向に沿ってインナーグローブ6を透過して警告灯ユニット4の外に照射される。複数の光源9の発光を制御することによって、警告灯ユニット4は、回転軸線Jのまわりの任意の放射方向に光を照射することができる。たとえば、警告灯ユニット4は、回転軸線Jまわりに光が回転しながら照射されるように発光する回転放射を行うことができる。また、警告灯ユニット4は、回転軸線Jのまわりの全周方向に対して同時に光を照射する全周同時放射を行うことができる。警告灯ユニット4の外に照射された光は、グローブ2の色によって着色されてからグローブ2の外に照射される。
【0043】
なお、光源9が発した光の向きを定めるレンズ(図示せず)が、各光源9とインナーグローブ6との間に設けられてもよい。本実施形態では、インナーグローブ6がレンズの機能を有しており、インナーグローブ6の内周側には、各光源9からの光を水平方向に広げるレンズ部分(図示せず)が設けられ、インナーグローブ6の外周側には、各光源9からの光を垂直方向に制御するフレネルレンズが設けられる。
【0044】
図5は、散光式警光灯システム20の電気的構成を説明するためのブロック図である。散光式警光灯1は、プロセッサ(CPU(中央処理ユニット))12aおよびメモリ12b等を含む警告灯ユニット制御装置12をさらに含む。プロセッサ12aは、メモリ12bに格納されたプログラムに従って動作し、それによって、警告灯ユニット4の発光を制御する。警告灯ユニット制御装置12は、サイレンアンプ15に接続されている。サイレンアンプ15には、サイレン装置14が接続されている。
【0045】
警告灯ユニット制御装置12は、有線または無線の信号線13を介して各警告灯ユニット4に対して電気的に接続されていて、各警告灯ユニット4の発光を制御する。警告灯ユニット制御装置12は、本実施形態では、散光式警光灯1の本体内、具体的には基台3に固定されている(
図3参照)。他の構成として、警告灯ユニット制御装置12は、散光式警光灯1の本体の外に配置されてもよく、その場合の信号線13は、たとえばCAN(Controller Area Network)によって構成されてもよい。また、車両100に備えられた電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)が、警告灯ユニット制御装置12を兼ねてもよい。また、警告灯ユニット制御装置12の機能が、サイレンアンプ15に組み込まれていてもよい。
【0046】
サイレンアンプ15は、サイレン装置14からサイレンを吹鳴させる機能を有している。具体的には、サイレン音データを合成し、その合成されたサイレン音データの音信号を増幅してサイレン装置14を駆動し、それよって、サイレンを吹鳴させる。サイレンアンプ15は、さらに、警告灯ユニット制御装置12に対して、光照射を指令する機能を有している。より具体的には、サイレンアンプ15は、警告灯ユニット制御装置12に対して、第1モード光照射指令および第2モード光照射指令を与える。光照射指令が与えられなければ、警告灯ユニット制御装置12は、警告灯ユニット4を消灯状態とする。サイレンアンプ15は、第1モードを設定するために使用者によって操作される第1モード設定スイッチ151と、第2モードを設定するための使用者によって操作される第2モード設定スイッチ152とを有している。これらのモード設定スイッチ151,152は、モード設定装置の一例である。第1モードが設定されると、サイレンアンプ15は、警告灯ユニット制御装置12に第1モード光照射指令を与え、かつサイレン装置14によりサイレンを吹鳴させる。第2モードが設定されると、サイレンアンプ15は、警告灯ユニット制御装置12に第2モード光照射指令を与えるが、サイレン装置14によるサイレンの吹鳴は行わせない。第1モードは、車両100が緊急走行を行うときに選択される。それに対して、第2モードは、緊急走行以外の活動、たとえば警ら活動を行うときに選択される。
【0047】
警告灯ユニット制御装置12は、第1モード光照射指令を受けると、少なくとも一つの警告灯ユニット4から警告光を回転放射する回転照射制御を実行する。たとえば、警告灯ユニット制御装置12は、第1モード光照射指令を受けると、一対の外側警告灯ユニット4Bから警告光を回転放射する回転照射制御を実行してもよい。このとき、警告灯ユニット制御装置12は、一対の内側警告灯ユニット4Aから、警告光を閃光放射(たとえば車両100の前後方向に向けて放射)する閃光照射制御を併せて実行してもよい。このような閃光照射制御に代えて、警告灯ユニット制御装置12は、右内側警告灯ユニット4ARおよび左内側警告灯ユニット4ALを交互に点滅させる交互点滅制御や、それらを同時に点滅させる同時点滅制御を実行してもよい。交互点滅または同時点滅による光の照射方向は車両100の前後方向であってもよい。
【0048】
回転照射制御を実行するとき、警告灯ユニット制御装置12は、たとえばPWM(Pulse Width Modulation)制御によって、各警告灯ユニット4の発光部7における複数の光源9を回転軸線Jまわりの順番に発光させる。警告灯ユニット制御装置12は、これらの光源9を、発光する順に段階的に明るさ(いわゆる発光強度)が変化するように発光制御してもよい。この場合には、警告灯ユニット4の光の明るさは、回転軸線Jまわりの回転方向Rの位置が変わるにつれて、アナログ的またはデジタル的に増減する。特に、警告灯ユニット制御装置12は、警告灯ユニット4が照射したい方向の光が最も明るくなるように、つまり発光強度が100%になるようにしながら、発光強度100%の光が回転方向Rに順次移動するように、これらの光源9を発光制御する。これにより、視認性を高めた警告光を周囲に向けて放射できる。
【0049】
一方、警告灯ユニット制御装置12は、第2モード光照射指令を受けると、少なくとも一つの警告灯ユニット4から、ホタルの光の明滅を模擬した光量増減パターンでの光照射(ホタル光照射)を行わせるホタル光照射制御を実行する。すなわち、警告灯ユニット制御装置12は、ホタルの光の明滅を模擬した光量増減パターンに従って警告灯ユニット4による光照射を制御するホタル光照射制御を実行する。それにより、警告光とは異なる柔和な光が警告灯ユニットから照射される。このような柔和な光は、車両100の存在を明確に表しながら、緊急性または重大性のニュアンスを緩和した情報を周囲の者に視覚を通じて伝達する伝達媒体となり得る。したがって、第1モードにおいて、従来からの警告光のような緊急性または重大性のニュアンスの濃い通常の警告光照射を行う一方で、第2モードにおいては、通常の警告光照射とは明確に異なる柔和なホタル光照射を行うことにより、明確に異なる視覚的効果によって、少なくとも2種類の情報を伝達することが可能となる。それにより、第2モードのときには、柔和なホタル光照射によって、聴覚を利用できない者に対しても、警ら等の活動状況を視覚だけで伝達しやすくなる。
【0050】
警告灯ユニット制御装置12は、少なくとも外側警告灯ユニット4Bに対してホタル光照射制御を実行することが好ましい。さらに、警告灯ユニット制御装置12は、外側警告灯ユニット4Bだけでなく、内側警告灯ユニット4Aに対しても(すなわち、全ての警告灯ユニット4に対して)、ホタル光照射制御を実行することが好ましい。この場合、警告灯ユニット制御装置12は、内側警告灯ユニット4Aおよび外側警告灯ユニット4B(すなわち、隣接する一対の警告灯ユニット4)でホタル光の明滅を同期させてもよいし、内側警告灯ユニット4Aおよび外側警告灯ユニット4Bでホタル光の明滅が非同期となるようにしてもよい。換言すれば、内側警告灯ユニット4Aおよび外側警告灯ユニット4B(隣接する一対の警告灯ユニット4)で、ホタル光の光量増減の位相が、等しくてもよく、異なっていてもよい。光量増減の位相を異ならせることにより、発光の切れ目を短く、または無くすことができるので、好ましい。また、右側の一対の警告灯ユニット4AR,4BRから同位相でホタル光照射を行わせ、左側の一対の警告灯ユニット4AL,4BLから同位相でホタル光照射を行わせる一方で、左側の一対の警告灯ユニット4AR,4BRからのホタル光照射と右側の一対の警告灯ユニット4AL,4BLからのホタル光照射との位相をずらしてもよい。
【0051】
ホタル光照射制御は、各警告灯ユニット4からその周囲の全方向、すなわち、全周方向に対して同時にホタル光を照射させる全周同時照射制御を含むことが好ましい。つまり、ホタル光照射制御を実行することによって、警告灯ユニット4の全周方向に向けてホタル光が同時照射される。また、ホタル光照射制御において、外側警告灯ユニット4Bに対しては全周同時照射制御を行う一方で、内側警告灯ユニット4Aに対しては、特定方向、たとえば前後方向に向けてホタル光を照射させる特定方向照射制御を行ってもよい。
【0052】
警告灯ユニット制御装置12のメモリ12bには、上記のようなホタル光照射制御を実行するための光量増減パターン(すなわち、光量波形)を表すデータ(光量増減パターンデータ、光量波形データ)が格納されている。光量増減パターンデータ(光量波形データ)は、具体的には、時間経過に伴う光量の増減を表すデータであり、典型的には時系列に従う光量データの列からなっていてもよい。警告灯ユニット制御装置12のプロセッサ12aは、メモリ12bに格納された光量増減パターンデータ(光量波形データ)を読み出すことによって、ホタル光照射制御を実現する。警告灯ユニット制御装置12は、光量増減パターンデータ(光量波形データ)に基づいて、たとえばPWM制御によって、各警告灯ユニット4の発光部7における複数の光源9を制御する。それにより、ホタル光照射が実現される。
【0053】
図6は、ホタル光照射のための光量増減パターン(光量波形)の一例を説明するための波形図である。
図6には、内側警告灯ユニット4A(第1の警告灯ユニットの一例)の光量波形WA(以下「内側光量波形WA」という。)と、外側警告灯ユニット4B(第2の警告灯ユニットの一例)の光量波形WB(以下「外側光量波形WB」という。)とが示されている。
【0054】
自然界で観測されるホタルの発光は、急峻に立ち上がり、緩慢に立ち下がる光量波形を有することが知られている(非特許文献1および非特許文献2参照)。これを模擬して、
図6に示す光量波形WA,WBの一例は、立ち上がり区間Saの長さである立ち上がり時間Taが、立ち下がり区間Sbの長さである立ち下がり時間Tbよりも短い三角波形状を有している。光量波形WA,WBは、立ち上がり区間Sa、これに連なる立ち下がり区間Sb、およびこれに連なる最小光量区間Scを1周期として、最小光量区間Scに次の周期の立ち上がり区間Saが連なる繰り返しパターンである。この例では、最小光量区間Scの長さである最小光量時間Tcは、立ち上がり時間Taよりも長く、立ち下がり時間Tbよりも短い。また、この例では、立ち下がり時間Tbは、光量波形WA,WBの1周期Tの約半分である。換言すれば、立ち下がり時間Tbは、最小光量時間Tcおよび立ち上がり時間Taの和に等しい。より具体的には、立ち下がり時間Tbを6分の3周期(=3T/6)、立ち上がり時間Taを6分の1周期(=T/6)、最小光量時間Tcを6分の2周期(=2T/6)の長さとしてもよい。自然界で観測されるホタルの発光は、1周期が、2秒~4秒であるので(非特許文献3参照)。光量波形の1周期Tは、2秒~4秒が好ましい。たとえば、1周期Tが3秒である場合、立ち下がり時間Tbは、その半分(=T/2)の1.5秒であってもよい。また、立ち上がり時間Taは、6分の1周期(=T/6)の0.5秒であってもよい。そして、最小光量時間Tcは、6分の2周期(=2T/6)の1.0秒であってもよい。このような光量波形WA,WBを用いて警告灯ユニット4を制御することにより、ホタルの発光(明滅)を模擬したホタル光照射を行うことができる。
【0055】
図6に示す例では、内側光量波形WAと外側光量波形WBとは、同じ波形であり、互いに位相がずらされている。具体的には、光量波形WA,WBは、2分の1周期(=T/2)だけ位相がずれている。このような位相差を設けることにより、内側警告灯ユニット4Aおよび外側警告灯ユニット4Bのそれぞれからのホタル光照射を区別して視認できるので、視認性が高まる。しかも、散光式警光灯1から照射される全体の光量の変化を抑制できるので、この観点からも視認性を高める効果が得られる。
【0056】
また、この例では、内側光量波形WAの立ち下がり区間Sbと、外側光量波形WBの立ち上がり区間Saとが部分的に重複しており、それらの光量波形WA,WBは、それぞれの立ち下がり区間Sbおよび立ち上がり区間Saにおいて波形が交差する交差ポイントCPを有する。そして、交差ポイントCPでは、内側光量波形WAおよび外側光量波形WBの光量が等しく、その光量は、最小光量MINよりも大きい。このような交差ポイントCPを有するように光量波形WA,WBおよびそれらの位相差を定めることにより、内側警告灯ユニット4Aおよび外側警告灯ユニット4Bの両方が最小光量MINとなることがない。したがって、間断なくホタル光照射を行うことができ、それにより、視認性を高めることができる。
【0057】
図6の例では、内側光量波形WAと外側光量波形WBとは、最大光量MAXが等しい。各光量波形WA,WBにおいて、交差ポイントCPにおける光量Pcpは、当該波形の最大光量MAXの50%未満、好ましくは40%未満、さらに好ましくは30%未満、一層好ましくは25%以下である。
図6には、交差ポイントCPにおける光量Pcpが最大光量MAXの25%程度である例を示す。交差ポイントCPでの光量が大きいと、隣り合う二つの警告灯ユニット4A,4Bが交互に点灯しているような印象の光り方に近くなり、ホタルの光のような余韻のある光り方の印象が少なくなる。とくに、交差ポイントCPにおける光量Pcpが最大光量MAXの50%以上になると、隣り合う2つの警告灯ユニット4A,4Bが交互に明るく光るイルミネーションとなり、余韻のある光り方の印象が少なくなる。交差ポイントCPにおける光量Pcpを、最大光量MAXの50%未満、好ましくは40%未満、さらに好ましくは30%未満、一層好ましくは25%程度またはそれ未満で、かつ視認可能な値とすることによって、一方の警告灯ユニット4からの光量の立ち下がりを看者が視覚によって十分に認識でき、かつ他方の警告灯ユニット4からの光量の立ち上がりを看者が視覚によって同時に十分に認識できる。それにより、目立ちやすい発光でありながら、余韻のある印象の光り方を実現でき、しかも、間断なく光を発生することができる。
【0058】
また、
図6の例では、各光量波形WA,WBにおいて、最大光量MAXの時刻(立ち下がり区間Sbの始期)から交差ポイントCPまでの第1経過時間T1は、交差ポイントCPから最小光量MINの時刻(立ち下がり区間Sbの終期)までの第2経過時間T2(<T1)よりも短い。交差ポイントCPをこのように定めることによって、各警告灯ユニット4からのホタルの明滅を模擬した光量変化を明瞭に認識することができる。
【0059】
なお、内側光量波形WAと外側光量波形WBとは、最大光量MAXが等しくなくてもよい。また、内側光量波形WAと外側光量波形WBとは、最小光量MINが等しくなくてもよい。また、最小光量MINは、零(完全消灯)であってもよいし、零よりも大きな値であってもよい。最小光量MINが零よりも大きな値であるときは、最小光量区間Scでは、警告灯ユニット4は、微少光量で発光する微点灯状態となる。このような微点灯状態も、この明細書では、「消灯」または「消灯状態」と表現する場合がある。
【0060】
図示は省略するが、内側光量波形WAと外側光量波形WBとの位相差を零として、内側警告灯ユニット4Aの光量変化と、外側警告灯ユニット4Bの光量変化とを同期させてもよい。この場合には、内側警告灯ユニット4Aおよび外側警告灯ユニット4Bが同期して明滅するので、それらの両方が最小光量MINとなる期間、すなわち、それらの両方が消灯状態となる期間が生じる。内側警告灯ユニット4Aおよび外側警告灯ユニット4Bが同期して明滅するホタル光照射は、光量のコントラストが大きくなるので、好ましい場合がある。前述のとおり、内側光量波形WAと外側光量波形WBとの位相差を零とする一方で、右側の2つの警告灯ユニット4と左側の2つの警告灯ユニット4との間で位相差を設けた光量波形を適用してもよい。
【0061】
図7A~
図7Cは、ホタル光照射のための光量増減パターンを規定する様々な基本光量波形を示す。前述のとおり、ホタル光照射のための光量波形は、立ち上がり区間Sa、立ち下がり区間Sbおよび最小光量区間Scを有するが、最小光量区間Scでは最小光量MINが維持されるので、ここでは、立ち上がり区間Saおよび立ち下がり区間Sbの特徴について説明する。
図7A~
図7Cのいずれの基本光量波形においても、立ち上がり時間Taは、立ち下がり時間Tbよりも短く、したがって、光量が、急峻に立ち上がり、その後に緩慢に立ち下がる光量増減パターンを規定しており、ホタルの発光(明滅)を模擬した光量波形となっている。
【0062】
図7Aの基本光量波形は、
図6に示した光量波形WA,WBに相当する。具体的には、立ち上がり区間Saにおいて、光量が単調に増加している。より具体的には、立ち上がり区間Saにおいて、光量が線形に増加しており、区間Sa内における光量増加率(傾き)が一定である。また、立ち下がり区間Sbにおいて、光量が単調に減少している。より具体的には、立ち下がり区間Sbにおいて、光量が線形に減少しており、区間Sb内における光量減少率(傾き)は一定である。したがって、三角波形状の波形である。波形の立ち上がりは急峻で、波形の立ち下がりは緩慢であり、立ち下がり時間Tbが立ち上がり時間Taよりも長い。たとえば、立ち下がり時間Tbは立ち上がり時間Taの約3倍であってもよい。これにより、余韻のある光を看者に視認させることができる。立ち下がり時間Tbは、立ち上がり時間Taの2倍以上が適当であり、急峻な立ち上がり期間における発光も視認できるように、立ち下がり時間Tbは立ち上がり時間Taの5倍未満が適当である。前述の実施形態では、立ち上がり時間Taを1とするとき、立ち下がり時間Tbが3、消灯時間(最小光量時間Tc)が2である。三角波形状の波形とすることにより、最高光量に到達するのは一瞬であり、非常に短い時間である。したがって、光量増減が急激であるので、目立ちやすく、それでいて余韻のある光を看者に視認させることができる。
【0063】
図7Bの基本光量波形においては、立ち上がり区間Saの光量変化は
図7Aの場合と実質的に同様であるが、立ち下がり区間Sbの光量変化が異なる。具体的には、立ち下がり区間Sbにおいて、光量が単調に減少しているものの、その光量の変化(減少)は、非線形である。さらに具体的には、立ち下がり区間Sbにおける光量変化は、下に凸の湾曲した曲線に従い、光量減少率(傾きの絶対値)は、時間経過とともに減少している。したがって、最高光量の点から、急激な光量減少が始まり、徐々に光量減少幅が小さくなりながら最小光量へと収束している。これにより、余韻が長引く光り方とすることができる。
【0064】
図7Cの基本光量波形においては、立ち上がり区間Saの光量変化は
図7Aの場合と実質的に同様であるが、立ち下がり区間Sbの光量変化が異なる。具体的には、立ち下がり区間Sbにおいては、光量変化は全体的(巨視的)には減少傾向であるが、微視的には増減を繰り返しながら最小光量MINへと向かっている。すなわち、巨視的には単調に減少する傾向を示しつつ、微視的には抑揚を持つ光量変化であり、抑揚を持ちながら暗くなっていく光り方を規定する波形である。より詳細に説明すると、最高光量から急激な光量減少が始まり、ある時間が経過すると急激な光量増加へと反転する。さらにある時間が経過すると、急激な光量減少へと反転する。このような光量の増加/減少の反転を繰り返しながら、最小光量へと向かっていく。光量増加から光量減少へと反転する反転ポイントを結ぶラインL1(上側包絡線)は最小光量へと近づくように徐々に減少していく。同様に、光量減少から光量増加へと反転する反転ポイントを結ぶラインL2(下側包絡線)も最小光量へと近づくように減少していく。自然界で観測されるホタルの光は、最高光量から光量増減を繰り返しながら消灯へと向かう光量変化を示す。したがって、
図7Cの基本波形を採用することにより、ホタルの光に一層近似したホタル光照射を実現できる。なお、微視的な光量変化は、立ち下がり区間Sbの全体に渡って継続されてもよいし、立ち下がり区間Sbの一部の期間のみに微視的な光量変化を適用してもよい。また、立ち下がり区間Sbにおける光量の巨視的な減少傾向は、
図7Aのような線形的な傾向であってもよく、
図7Bのような非線形的な傾向であってもよい。
【0065】
図示は省略するが、立ち上がり区間Saの光量変化についても、非線形(たとえば指数関数的)に光量が増加する変化であってもよく、また、抑揚を持ちながら光量が増加する変化が適用されてもよい。
【0066】
図8には、一例として、
図7Cに類似した基本光量波形を適用し、内側光量波形WAと外側光量波形WBとの位相をずらした例を示す。
図8には、
図6および
図7Cと同様の参照符号を付してあり、それにより、重複した説明を省く。
【0067】
この光量波形WA,WBにおいては、立ち下がり区間Sbにおける光量変化は、全体的(巨視的)には減少傾向であるが、微視的には増減を繰り返しながら最小光量MINへと向かっており、立ち下がり区間Sbにおいて抑揚を持ちながら光量が減少している。抑揚の振幅(ラインL1,L2の間隔)は、時間経過に伴って小さくなっていき、立ち下がり区間Sbの終期において零に収束している。
【0068】
このような光量波形WB,WAを採用することにより、ホタルの発光(明滅)に一層近似したホタル光照射を実現できる。
【0069】
図9Aおよび
図9Bは、内側光量波形WAおよび外側光量波形WBの位相ずれの例を示す。
【0070】
図9Aの例は、内側光量波形WAおよび外側光量波形WBが2分の1周期(=T/2)だけずれている場合を示す。この場合、内側光量波形WAの立ち上がりから外側光量波形WBの立ち上がりまでの時間と、外側光量波形WBの立ち上がりから内側光量波形WAの立ち上がりまでの時間が等しい。これにより、目立ちやすい発光でありながら、余韻のある光を継続的に発生できる。内側光量波形WAおよび外側光量波形WBが同じ波形である場合、光量波形WA,WBが重なり合う領域の面積は、一定である。
【0071】
図9Bの例は、内側光量波形WAおよび外側光量波形WBの位相ずれT′(≠T/2)が2分の1周期(T/2)とは異なる場合を示す。この場合、内側光量波形WAの立ち上がりから外側光量波形WBの立ち上がりまでの時間と、外側光量波形WBの立ち上がりから内側光量波形WAの立ち上がりまでの時間とは等しくない。この場合も同様に、目立ちやすい発光でありながら、余韻のある光を継続的に発生できる。この例の場合には、内側光量波形WAおよび外側光量波形WBが同じ波形であっても、光量波形WA,WBが重なり合う領域の面積が変動する。また、光量波形WAから光量波形WBへと移るときの交差ポイントCP1と、光量波形WBから光量波形WAへと移るときの交差ポイントCP2とでは、光量が異なっている。これらの交差ポイントCP1,CP2での光量は、いずれも、最大光量MAXの50%未満、好ましくは40%未満、さらに好ましくは30%未満(たとえば25%程度またはそれ未満)であることが好ましい。ただし、たとえば、光量波形WBから光量波形WAに移るときの交差ポイントCP2の光量が比較的大きく(たとえば25%よりも大きく)ても、波形WB,WAの合成波形が、
図7Cに示したような抑揚を持ちながら光量が減少する波形となる。それにより、2つの警告灯ユニット4によって、ホタルの光を模擬した発光を実現することができる。
【0072】
なお、光量波形に位相差を設ける一対の警告灯ユニットのうちの一方に光量波形WAを適用し、他方に光量波形WBを適用すれば、同様の視覚的効果が得られる。つまり、内側警告灯ユニット4Aと外側警告灯ユニット4Bとで、光量波形WA,WBを交換してもよい。このことは、前述のまたは以下に説明する光量波形の組合せにも該当する。
【0073】
図10A~
図10Dは、内側光量波形WAと外側光量波形WBとが異なる例を示す。
図10Aおよび
図10Bは、内側光量波形WAと外側光量波形WBとの最大光量MAX
A,MAX
Bが異なる例である。
図10Aの例では、内側光量波形WAの最大光量MAX
Aが外側光量波形WBの最大光量MAX
Bよりも小さい。
図10Bの例では、内側光量波形WAの最大光量MAX
Aが外側光量波形WBの最大光量MAX
Bよりも大きい。
図10Cおよび
図10Dは、内側光量波形WAと外側光量波形WBとの周期T
A,T
Bが異なる例を示す。
図10Cの例では、内側光量波形WAの周期T
Aが外側光量波形WBの周期T
Bよりも短い。
図10Dの例では、内側光量波形WAの周期T
Aが外側光量波形WBの周期T
Bよりも長い。
【0074】
図11は、この発明の他の実施形態に係る散光式警光灯システムの構成例を説明するための図解的な平面図である。
図11において、
図3の各部の対応部分に同一参照符号を付す。この構成例では、平面視において、グローブ2の輪郭に沿って、複数の基板8が並べられて基台3に支持されている。各基板8には、一つ以上の光源9(典型的にはLED素子)が実装されている。各基板8は、光源9が実装された主面をグローブ2の内面に対向させて、すなわち、光を照射すべき外方に向けて、基台3に支持されている。
【0075】
複数の基板8に実装された複数の光源9は、複数のグループに分けて、それらの点灯を制御することが可能である。すなわち、左外側に配置された複数の光源9のグループによって、左外側警告灯ユニット4BLを構成でき、左内側に配置された複数の光源9のグループによって、左内側警告灯ユニット4ALを構成できる。同様に、右外側に配置された複数の光源9のグループによって、右外側警告灯ユニット4BRを構成でき、右内側に配置された複数の光源9のグループによって、右内側警告灯ユニット4ARを構成できる。そして、これらの警告灯ユニット4を構成する光源9の各グループに対して、前述の実施形態と同様に、回転照射制御、全周同時照射制御、ホタル光照射制御、点滅制御、閃光照射制御等を行うことができる。
【0076】
外側警告灯ユニット4Bは、中央側に向けられた光源を備えていないので、外側警告灯ユニット4Bに対して全周同時照射制御を行う場合には、中央部の方向を除く全周照射となる。また、内側警告灯ユニット4Aは、外側および中央側に向けられた光源を備えていないので、内側警告灯ユニット4Aに対して全周同時照射制御を行う場合には、外側および中央側を除く全周同時照射となる。
【0077】
また、中心Cに対して右側の全ての光源9を一つのグループとして扱って、右側警告灯ユニット4Rとして制御することもできる。同様に、中心Cに対して左側の全ての光源9を一つのグループとして扱って、左側警告灯ユニット4Lとして制御することができる。これらの右側警告灯ユニット4Rおよび左側警告灯ユニット4Lを構成する光源9のグループに対して、前述の実施形態と同様に、回転照射制御、全周同時照射制御、ホタル光照射制御、点滅制御、閃光照射制御等を行うことができる。この場合、右側警告灯ユニット4Rおよび左側警告灯ユニット4Lは、中央側に向けられた光源を有していないので、それらに対して全周同時照射制御を行う場合には、中央側を除く全周同時照射となる。ホタル光照射制御を行う場合、右側警告灯ユニット4Rおよび左側警告灯ユニット4Lの光量増減パターンに関しては、前述の実施形態における内側警告灯ユニット4Aおよび外側警告灯ユニット4Bの光量増減パターンと同様に、様々なパターンを適用することができる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、さらに他の形態で実施することもできる。
【0079】
たとえば、前述した実施形態に係る散光式警光灯1は、左右方向における片側で2つずつ合計4つの警告灯ユニット4を含むが、片側で3つ以上の警告灯ユニット4を含んでもよい。
【0080】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 :散光式警光灯
4 :警告灯ユニット
12 :警告灯ユニット制御装置
14 :サイレン装置
15 :サイレンアンプ
20 :散光式警光灯システム
100 :車両
151 :第1モード設定スイッチ
152 :第2モード設定スイッチ
CP,CP1,CP2 :交差ポイント
Sa :立ち上がり区間
Sb :立ち下がり区間
Sc :最小光量区間
T1 :第1経過時間
T2 :第2経過時間
Ta :立ち上がり時間
Tb :立ち上がり時間
Tc :最小光量時間