(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】粒揃いの鋼球を多く充填して少しずつ排出する容器。
(51)【国際特許分類】
F16F 7/01 20060101AFI20240515BHJP
F16F 9/30 20060101ALI20240515BHJP
E05F 3/12 20060101ALN20240515BHJP
【FI】
F16F7/01
F16F9/30
E05F3/12
(21)【出願番号】P 2022071981
(22)【出願日】2022-04-25
【審査請求日】2024-01-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592106948
【氏名又は名称】岡本 耕一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 耕一
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-176415(JP,A)
【文献】特開2003-236193(JP,A)
【文献】特開2010-094228(JP,A)
【文献】特公昭30-000663(JP,B1)
【文献】特公昭49-035772(JP,B1)
【文献】特開2011-206719(JP,A)
【文献】特開昭58-155860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 7/00―7/14
F16F 9/00―9/58
E05F 1/00―13/04
E05F 17/00
A63F 7/02
G04F 1/06
B65D 1/00―90/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部の円筒状のシリンダSLと、それに連続してシリンダSL内径を徐々に小さくした下部のロート部SLBと、それらに充填される数多くの大きさが全て同じである鋼球SAと、ロート部SLBの下部末端に設けられる排出口HSとを備え、上記鋼球SAが自重によって下降しながら少しずつ、しかも止まることなく排出し続ける容器SLにおいて、
上
記ロート部SLB内に調整弁BBを収容し、上記調整弁BBとロート部内壁SLBとの間と、それに連続して調整弁BBと排出口HS外延部との間は、幅が鋼球直径DSAの1倍より大きく2倍より小さい環状の流路Gであることを特徴とする容器SL。
【請求項2】
上部の円筒状のシリンダSLと、それに連続してシリンダSL内径を徐々に小さくした下部のロート部SLBと、それらに充填される数多くの大きさが全て同じである鋼球SAと、ロート部SLBの下部末端に設けられる排出口HSとを備え、上記鋼球SAが自重によって下降しながら少しずつ、しかも止まることなく排出し続ける容器SLにおいて、
上
記ロート部SLB内に調整弁BBを収容し、上記調整弁BBは排出口HSの一部分を塞いで、上記調整弁BBと排出口HS外延部との間の開口部は中央部が鋼球が2個通過できる大きさであって、中央部から先端部に近づくほど小さくなることを特徴とする容器SL。
【請求項3】
上部の円筒状のシリンダSLと、それに連続してシリンダSL内径を徐々に小さくした下部のロート部SLBと、それらに充填される数多くの大きさが全て同じである鋼球SAと、ロート部SLBの下部末端に設けられる排出口HSとを備え、上記鋼球SAが自重によって下降しながら少しずつ、しかも止まることなく排出し続ける容器SLにおいて、
上記排出口HSから下の容器SLの外部に平板BCが設置され、上記排出口HSから排出された鋼球が平板BCの上に積みあがって山を築きながら平板BCの上から零れ落ち、上記山の頂上は排出口HSに達することを特徴とする容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
大きさが同じの鋼球を多く充填して少しずつ排出する容器とピストンPSで構成される減速器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1
図11(b)を
図1(a)に示す。
図1(a)に示す減圧器は、ピストンPSと、シリンダSLと、シリンダSL内に収容される粉粒体SAと、排出口Hsとを備え、上記排出口Hsの面積は上記粉粒体SAが止まることなく排出される大きさ(粉粒体粒子の6倍以上の大きさと言われている。)以上であり、ピストンPSに押圧される粉粒体表層面SASから排出口HSまでの距離は、上記ピストンPSが粉粒体SA表層面SASを押圧する力の大きさによって、ピストンPSの移動速度がほぼ変化しない距離である減速器Dcであって、上記粉粒体SAが自重によって落下して上記排出口HSから流出することにより上記ピストンPSが移動することを特徴とする減速器DCであって、ピストンPSを取り除くと単なる砂時計である。
一般に大きな力が作用するほど早く動く。一般の減速器は減速比が大きくなるほど抵抗が大きくなり、非常に小さな力では動かない。
図1(a)に示す減圧器は、シリンダSLの長さが一定値を超えるとピストンPSが粉粒体SA表層面SASを強く押圧してもHSから排出される粉粒体の排出速度は速くならない。また押圧しなくても粉粒体は排出され続けて、粉粒体表層面は移動し続け、ピストンも移動し続ける。ピストンに如何に大きな力が作用しても無関係にゆっくりと動く。また、小さな力が作用しても止まらず動く。
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1(a)において、鋼球を容器に出来るだけ多く充填して、排出口HSから出来るだけ少しずつ排出するほど、ピストンPSの移動はゆっくりと、しかも長時間継続する。
鋼球を排出口HSから少しずつ排出して一瞬にして終了しないように排出口HSを小さくし、排出口HSを小さくしても鋼球が排出口HSから排出されなくならないようにすることが課題であって、排出口HS付近の鋼球を如何にして停留させないようにするかが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
図1(a)に示すように、容器SLは数多くの鋼球SAを収容し、上部の円筒状のシリンダSLと、下部のシリンダSL内径を徐々に小さくしたロート部SLBと、ロート部SLBの下部末端に設ける排出口HSとを備え、鋼球SAが少しずつ、しかも止まることなく排出し続ける排出口は、頂点を下にした半球キャップの底に設けられ、
図5において説明するように、容器SLに入れた鋼球を全部排出する排出口HSの直径DHSは鋼球直径DSAの3倍以上である容器SL。
【0006】
図1(b)に示すように、ピストンPSは底面が頂点を下にした半球キャップの凹面であって、鋼球SAを底面内に取り込んで上記鋼球SAの表層面SASを押圧し、ピストンPSとシリンダ内壁SLLとの間に鋼球が入り込んでも構わない容器。
【0007】
図2,
図6(a),
図8に示すように、「容器SLは数多くの鋼球SAを収容し、上部の円筒状のシリンダSLと、下部のシリンダSL内径を徐々に小さくしたロート部SLBと、ロート部SLBの下部末端に設ける排出口HSと、ロート部SLB内に収容される調整弁BBとを備え、調整弁BBとロート部内壁SLBとの間と、それに連続して調整弁BBと排出口HS外延部との間とに、幅が鋼球直径DSAの1倍より大きく2倍より小さい流路Gを備えることを特徴とする容器。」は排出口HSに入ろうとする複数の鋼球を攪拌する効果を発揮する。
【0008】
図8(b)に示すように、「ロート部内壁面SLBは排出口HSに近づくに従い下に凸の内壁面SLBから上に凸内壁面SLBBに移行する容器。」は排出口近傍HSSで鋼球が拡散する空間をより大きくする効果を発揮する。
【発明の効果】
【0009】
何回も繰り返され短時間に終了する運動を減速する減速器で、例えば、強力な力で高速に閉止するドアを抵抗少なく所定の速度に減速するドアクローザに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】砂時計にピストンを備えてなる減速器の説明図
【
図5】排出口近傍で複数の鋼球が連鎖してなる環の説明図
【
図7】ロート内壁SLB沿って下降する鋼球SAの展開図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は容器SLの断面図で、容器SLの上部は円筒状で下部はロート状のシリンダであって、下部末端にシリンダSL内径を小さくした排出口HSを備える。鋼球SAの表層面SASを押圧するストンPSを備えて減速器とする。
【0012】
円は面積に対して長さが最小であるので、円筒部は、円筒内壁に接する鋼球数を少なくして数多くの鋼球を収容する。シリンダ内壁に接する鋼球の摩擦は小さくなり、鋼球の移動の際の抵抗は小さくなる。
【0013】
図1(a)において容器SLに充填される粉粒体は鋼球SAであって、鋼球SAは例えばベアリングの球であって、すべて同じ大きさの変形しない球体である。シリンダSL内壁とピストンPS外周面との間の隙間GSLに入り込まない。
また鋼球SAは摩耗が少なく、シリンダSL内壁とピストンPS外周面の摩耗を少なくし、減速器の性能を長く安定させる。
【0014】
図1(b)において粉粒体は砂SAであって、あるいは微細な鋼球SAであって、砂SAはシリンダSL内壁とピストンPS外周面との間の隙間に入り込んでも構わないとする。ピストンPSが砂表層面SASを押圧する面は凹面PSSであって、押圧する砂SAを逃がすことなく凹面内に留める。凹面PSSが強く粉粒体表層面SASを押圧して、ピストンPSが粉粒体表層面SASから深い位置まで沈み込まない。
【0015】
ピストンPSが粉粒体表層面SASから深い位置まで沈み込むほど、ピストンPSを引き上げるときに抵抗を受ける。
シリンダSL内壁とピストンPS外周面との間の隙間GSLに鋼球SAが入り込んだ場合、下降したピストンPSを引き上げるとき大きな抵抗を受ける。砂SAが入り込んだ場合は、受ける抵抗は小さい。
【0016】
断面図の
図1において、ピストンPSが粉粒体表層面SASを押圧してもしなくても、粉粒体SAは自重で排出口HSから落下する。それによって、粉粒体表層面SASが降下する。ピストンPSは粉粒体表層面SASを押圧しても関係なく降下する。
ピストンPSがなくても、粉粒体SAは自重で排出口HSから落下し粉粒体表層面SASも降下する。ピストンPSがなくても、粉粒体SAが排出口HSから止まることなく少しずつ排出しつづれば、減速器は完成したことになる。
【0017】
「排出口HSから止まることなく少しずつ排出しつづける容器」を如何にして作るかが、減速器を完成させる際の唯一の課題となる。以下は「排出口HSから止まることなく少しずつ排出しつづける容器」すなわち、「ピストンPSを取り付けない減速器」に関する。
【0018】
図1(a)において、あらゆる鋼球SAに働く力の作用線は全て、鋼球SAの中心SACを通り、鋼球SAと容器の内壁SLLとの接点PW、あるいは隣接する鋼球SAとの接点PBを通過する。
図1(a)に示すように、複数の鋼球SAの中心をつないで複数の折れ線が出来上がる。複数の折れ線が複雑に絡み合い、いずれの鋼球SAの中心についても複数の折れ線が通過する。
【0019】
通過する折れ線が上に凸であれば鋼球SAに持ち上げる力が働き、下に凸であれば押し下げる力が働く。複数の鋼球SAの中心をつないで出来上がる折れ線が、上に凸であれば崩れにくく形を変えにくい。下に凸であれば崩れやすい。
端部の鋼球SAが容器の内壁に接して、これに複数の鋼球SAが連鎖して形成される上に凸の曲線を以後アーチと言い、複数の鋼球SAが連鎖して形成される上に凸の曲面を以後ドームと言う。
【0020】
アーチの端部でシリンダ内壁に接する鋼球SAはシリンダ内壁を垂直に押圧し、シリンダ内壁と鋼球SAとの間に摩擦力が発生する。摩擦力が鋼球SAの降下に抵抗して減速するが、自重による降下を阻止するほどではない。摩擦の効果はシリンダ内壁SLLから離れるほど弱くなり、シリンダSLの中心軸ZSLに近づくほど鋼球SAは速く流れる。
【0021】
図1(a)において、収容される鋼球で表層面に近い上位円筒部に接する鋼球をSA1、排出口に近い下位ロート部に接する鋼球をSA2とし、それぞれに働く外力の作用線をF1,F2とする。作用線をF1,F2はいずれも隣接して接触する鋼球SA3の中心を通過する。矢印は働く方向を示す。自重による力は図示しない。
【0022】
容器内壁に沿って移動する鋼球SA1,SA2に働く外力の作用線F1,F2はそれぞれ鋼球の中心SAC1,SAC2と接点PB1,PB2を通過し、容器内壁に垂直な分力FW1,FW2と、それと直角方向の分力FZ1,FZ2に分けられる。鋼球SA1に働く分力FZ1は自重方向と同方向であって、常に内壁SLLに沿っている。鋼球と容器の内壁SLLとの間に摩擦力が働くが、鋼球SA1は全て円筒部内壁面に沿って降下する。
【0023】
分力FZ2が鋼球SA2を持ち上げる方向に働き、鋼球SA2が分力FZ2方向に動こうとすると、接点PW2より上の内壁SLLが鋼球SA2の行く手を阻む。鋼球SA2はその場にとどまる。
【0024】
上の鋼球が下2つの鋼球と接するとき、上の鋼球は下2つの鋼球の隙間に割り込もうとする。いわゆる楔効果を発揮する。容器内の鋼球はしっかりとかみ合い容器内壁SLLを押圧する。
上部の円筒部では、容器内壁に接して降下する鋼球を端部として、容器内壁に接しない鋼球が連鎖して形を変えないアーチあるいはドームを形成して降下する。
【0025】
排出口HS周辺では、容器内壁に接して動かない鋼球SA2を端部として、容器内壁に接しない鋼球がそれに連鎖して、動かないアーチあるいはドームを形成する。形を崩さなければ留まり続ける。留まり続けると、それより上の鋼球SAはどれも動かない。
【0026】
アーチあるいはドームは大きくなるほど崩れやすい。アーチあるいはドームは頂上に近づくほど水平に並びなり、頂上付近から崩れる。
鋼球SAが抜け落ちた部分は空洞になり、埋めるように上から次の鋼球SAが降りてくる。円筒部では鋼球SAが塊となって配列を崩さず降下する。
【0027】
空洞部周辺の複数個の鋼球SAが移動して空洞を埋めてアーチあるいはドームは崩落し、あるいは再生する。
ロート部SLBでは流路断面積が減少し、大きなアーチあるいはドームの下に、より小さなアーチあるいはドームができる。排出口HS付近で崩れ落ちた鋼球がたまって、さらに小さく崩れにくいアーチあるいはドームができる。
【0028】
排出口HSでもっとも小さなアーチあるいはドームを形成し、これが崩れて落下しなければ、より上のアーチあるいはドームは崩れない。
図1(a)は鋼球SAの排出が中断した状態図で、排出口から落下した鋼球SAと排出口HSに留まったアーチが描かれている。
【0029】
シリンダSLの内容物が液体または気体の流体の場合、シリンダSL内は至る所の液圧または気圧が一定し、液圧または気圧が大きくなるほど、先細りの排出口HSから流体が勢いよく噴出する。内容物が粉粒体の場合は全く異なる。
【0030】
粉粒体表層面SASに近い円筒部では、隣り合う粉粒体と粉粒体の間の隙間も多く認められ、複数個の粉粒体が乱雑に配される。粉粒体表層面SASから遠い円筒部では、複数個の粉粒体は互いに強く楔効果を発揮して、割り込みあいながら、強く固められて形を変えない塊になる。
【0031】
形を崩さない塊は先頭部だけが崩落して塊全体が移動する。塊は後ろから押されてではなく、先頭部で崩落した粉粒体が排出口HSか排出されて移動する。
【0032】
塊の先頭部の鋼球SAには、それより上にある全ての鋼球STの自重の総和が働き、先頭部に近づくほど塊は強くシリンダ内壁を押圧し摩擦が強く働く。先頭部に近づくほど塊は遅く動き、円筒部では下に行くほど、塊の後方の鋼球SAに押されて塊は固まる。
【0033】
しかし、排出口HSから遠い位置では、複数個の鋼球STが整然と整列する。整然と整列するほど鋼球SAが隙間に割り込まず、楔効果が弱くなり、シリンダ内壁面の摩擦が小さくなり動きやすくなる。形を変えない塊は上部のまばらに配される部分は動きにくく遅く動く、先頭部の密に配される部分は動きやすく速く動く。先頭部だけが塊から離れやすく、はがれやすくなる。
【0034】
先行する鋼球SAが後続する鋼球SAより早く降下しなければ、後続する鋼球SAは降下できない。鋼球SAが排出口HSから出る速度は早く、それに遅れて次の鋼球SAが移動する。次のまた次の鋼球SAはさらに遅れて移動する。排出口近傍では、排出口HSから上に行くほど鋼球の移動距離が小さくなり遅く移動する。
【0035】
鋼球SAが排出口HSから排出されて出来る隙間はすぐに埋められ、埋められた隙間の上に隙間ができても、ゆっくりと埋められる。鋼球SAがまばらに配されるのは排出口HS近傍に限られる。排出口HSから遠ざかるほど隙間は小さくなり、鋼球SA は密に配される。
【0036】
排出口HS周りの内壁面はほぼ水平で、そこに乗る鋼球SAは動きにくい。アーチあるいはドームを構成する鋼球SAは排出口の中心軸に近づくほど水平に連鎖して動きやすく、中心部の鋼球SAから先に流れる。
【0037】
ロート部は上に行くほど断面積が大きくなり、鋼球SAが排出口HSから落下して出来る隙間より、上の鋼球がその隙間に移動して上にできる隙間は小さい。隙間は上に行くほど小さくなり、鋼球SAの移動も小さくなる。形を変えない塊は排出口付近だけが崩れる。
【0038】
排出口から排出される前の鋼球SAには排出口から表層面までのすべての鋼球の自重の総和が働くが、排出口から表層面が遠く離れても排出口から単位時間内に排出される鋼球の量に変化はない。この訳は、形を変えない塊は先頭部だけが崩落して移動し、後ろから押されてではなく、鋼球SAが排出口HSから排出することによって移動するからである。
【0039】
形を変えない塊の降下速度は一定していて、鋼球表層面の降下速度は速くならない。
鋼球表層面を押圧するピストンPSを取り付けて減速器とするとき、ピストンPSを大きな力で移動させようとしても、ピストンPSの降下速度は鋼球表層面の降下速度に従い速くならない。
【0040】
排出口HSで崩れないアーチを出来上がらないようにすれば、複数の鋼球STが塊となって降下し、塊が崩れて排出口HSから流出し続ける。アーチあるいはドーム端部の鋼球SAが排出口内部にあれば落下し、アーチあるいはドームの全部も落下する。
崩落したアーチの上には、それよりも大きいアーチが残るが、これがすぐに崩落するアーチであれば、鋼球の排出は継続する。
【0041】
図1に示すように、下部のロート部が半球凹面のとき、
図5において後述するように、排出口HSの直径DHSが鋼球の直径DSAの3倍以上であれば鋼球の排出は継続する。
【0042】
排出口HS直径DHSが円筒部の直径DSLと同じなら、内容物の粉粒体のすべてが一気に降下する。排出口直径DHSを小さくして鋼球SAの排出速度を小さくするが、小さく崩れないアーチが排出口HSに出来上がり、鋼球SAの排出が阻止されないようにする。
【0043】
排出口直径DHSに対して円筒部直径DSLを大きくすれば、鋼球表層面SASの降下速度は遅くなる。排出口直径DSLが鋼球直径DSAの3倍以上ではあるものの、小さな鋼球SAを採用すれば、容器も小さくなる。
図1(b)において、砂SAに代わって極小の鋼球SAを採用すればよい。
【0044】
図2に示す容器は、
図1の容器の排出口直径DHSを3倍以下にしても「鋼球SAを少しずつ排出しつづける容器」であり、
図6に示す容器は、
図1の容器の排出口直径DHSをそのままにして「鋼球SAを1つずつ排出しつづける容器」である。
【0045】
図2に示す容器は、
図1の容器に鋼球SAの排出量を調整する調整弁BBを取り付けたものである。
図2(a)、
図2(c)に示す調整弁BBは球体Bであって、
図2(b)に示す調整弁BBは円柱BCの上下両端部に半球体BHが連続する。
【0046】
調整弁BBは排出口HS周辺にドームができる領域に入り込み、排出口HS周辺にドームを形成させない。
【0047】
図2(a),(b),(c)において、球体Bあるいは半球体BHとロート部半球体の中心Oは共通で、
図2(a)において球体Bの下半分とロート部半球体SLBとの間の距離、
図2(b)において円柱BCとロート部半球体SLBとの間の距離、および円柱BC下端部半球体BHとロート部半球体SLBとの間の距離との間の距離は、至る所均一である。
【0048】
図2(c)に示す容器は
図2(a),(b)の容器と異なり、排出口HS近傍のロート部SLBは半球体の一部であって、半球の大きさより小さい。この小さいロート部SLBの上に円錐形のロートが連続する。球体Bと円錐形のロートとの間の距離との間の距離は上に行くほど漸次増加する。
【0049】
球体Bの表面と排出口HS外延部との間の距離は上記均一の流路Gの幅であって、鋼球直径DSAの1倍より大きく2倍より小さい。
図2に示す流路Gの幅は、球体Bが1個だけ辛うじて通過する幅で、鋼球直径DSAの1倍より僅かに大きい。
【0050】
シリンダSL円筒部と球体Bの上半分との間の流路Gの幅は下に行くに従い急激に減少し、鋼球SAは下に行くに従い減速する。中心Oを通る水平面h-hより上は複数個の鋼球SAが固まる。水平面h-hから下においても、流路Gの断面積は下に行くほど減少し、より鋼球SAは減速し、複数個の鋼球SAがより強固に固まる。
【0051】
しかし、排出口HSの周りの鋼球SAは排出口HSへと高速に落下する。その上の鋼球SAは上に行くほど低速になるが、上方の固まって動かない塊より早く移動する。
球体Bの周りの鋼球は在る処までは減速し、在る処から加速する。複数個の鋼球SAは在る処までは固まり、在る処から崩れる。上記の固まって動かない塊は先端部だけが剥がれ落ちて、先端部から上は崩れず動かない傾向にある。
【0052】
この塊は上からいくら強く押しても加速しない。この塊の上に充填される鋼球SAが一定以上に多くなっても、あるいは仮に鋼球表層面SASをピストンPSが強く押圧しても、塊は加速しない。鋼球表層面SASの降下速度も変わらない。
【0053】
図2(d)に図示する調整弁BBは
図2(a)のそれと異なり、球体Bは小さく球体Bの中心OOは中心Oより下にある。球体Bの表面と排出口HS外延部との間の距離は、
図2(c)においてと同じく、均一であって、鋼球直径DSAの1倍より大きく2倍より小さい。
【0054】
流路Gの断面積の変化は
図2(c)においてと同じく、中心Oを通る水平面h-hより上は複数個の鋼球SAが固まり、水平面h-hから下においても、流路Gの断面積は下に行くほど減少し、複数個の鋼球SAがより強固に固まる。排出口HSの周辺も
図2(c)においてと同じく、鋼球表層面SASから排出口に至るまで、鋼球SAの動作は
図2(c)においてと同様である。
【0055】
図2(a)に図示する「排出口HSの下に設置される平板BC」は、排出口HSから零れ落ちる鋼球SAを減速する減速弁BCであって、減速弁BCの上に零れ落ちた鋼球SAが積みあがって山を築き、山の頂上は排出口HSを塞ぐ。
減速弁BCの外延部の山の裾野から鋼球SAが零れ落ちることによって、排出口HSから鋼球STが途切れることなく排出するようにしている。
【0056】
砂に代わって鋼球SAを採用した砂時計において、容器内の何れの鋼球SAもその上の鋼球SAと接触して支持し、その下の鋼球SAにも接触して上から伝わる力を下に伝える。容器内の上から下まで、こうした力の伝達が切断される鋼球SAはない。
力の伝達が切断される鋼球SAは排出口HSから落下する鋼球SAであって、その上の鋼球SAと接触しない。
【0057】
図2(a)の排出口HSから零れ落ちる鋼球SAはその上の容器内の鋼球SAと接触したまま、しかも減速弁BCの上に零れ落ちた鋼球SAが積みあがる山の頂上の鋼球SAとも接触したまま、上から伝わる力を減速弁BCに伝える。
【0058】
こうした力の伝達の切断は球体Bの周りの境界層においても起きかねない。球体Bの上半分で減速し、あるところを境にして加速する。ここを境界層という。下の鋼球SAが早く落下し、上の鋼球が下の鋼球SAについていけないとき、上の鋼球SAと下の鋼球とが離反して、力の伝達が切断される。境界層が排出口になる。境界層から下はあっても意味がない。
【0059】
このような場合、
図2に図示する何れの容器においても、切断面h-h上の環状の流路Gが排出口になり、ロート部末端の排出口HSの穴が、切断面h-h上の環状の流路Gの大きさになったに等しい。
【0060】
切断面h-hから排出口HSまで、鋼球SA で完全に埋め尽くされ、排出口HSの穴から鋼球SAが後ろから押されてというよりも自重で自ら落下し、落下した位置に次の鋼球SAが送り込まれることによって、切断面h-h上の環状の流路Gにも鋼球SAが送り込まれる。
【0061】
切断面h-h上の環状の流路Gにおいても、鋼球SAが前方にできた隙間に後ろから押されてというよりも、自重で自ら移動する。環状の流路Gが1番目の排出口であり、2番目の排出口HSと減速弁BCの上の3番目の排出口とを含めて、
図2(a)の容器は直列に連鎖する3つの排出口HSを備える。
【0062】
図2(b)の減速弁BCは排出口HSの中心を通る中心線Zを軸にして回転し、攪拌棒BCCを装着する。攪拌棒BCCは排出口HSの外周を移動して、排出口HS周辺に留まる鋼球SAを攪拌する。鋼球STが小さい排出口HS周辺に留まって動かなくなるようになっても、鋼球STが途切れることなく排出するようになる。
【0063】
図3において、鋼球STが排出口HS周辺に留まって動かなくなる状態を説明する。
図4において、排出口HS周辺に留まった鋼球STが排出される状態を説明する。
図5において、ロート部の排出口HS周辺に留まった鋼球STが排出される状態を説明する。
図3は断面が長方形の流路Gを示し、
図3(a1)は流路Gを上から見た平面図で、流路Gは片方の末端に排出口HSを備える。
図3(a2)は流路Gの断面図で、
図3(a1)に記載するa-a矢視である。
図3(a3)は流路Gを横から見た側面図で、
図3(a1)に記載するb-b矢視である。
【0064】
流路Gは底面WFとそれと向かい合う上面WCと両側面WSとに囲まれ、長方形断面の縦の長さGHは鋼球直径DSAの1倍より大きく2倍より小さい。球体Bが2個縦に並ぶことなく、横1列に並んで通過する。この流路Gを以後、一列路Gという。
【0065】
一列路Gは水平面h-hに設置されず、鋼球SAは末端の排出口HSに向かって移動する。一列路Gの上部の筒部においては、何れの鋼球SAも後ろの鋼球SAに押されて側面あるいは上面あるいは底面を押圧しながらし下降、前の鋼球SAが下降すれば、前の鋼球SAと接触したまま必ず下降する。
【0066】
排出口HSで流路Gの断面積が減少し、流路Gの断面積が減少するところには、必ず複数の鋼球SAが連鎖してアーチが出来る。一列路Gは排出口HSで両側面WSが互いに近づき、流路Gは絞り込まれて、鋼球SAの行く手を狭くする。鋼球SAの流れはアーチが崩れるときは動きだし、崩れないとき止まってしまう。
【0067】
図3(a1),(b)は、排出口HS近傍に崩れないアーチができた状態を示す。鋼球SA3がアーチ両端の2つの鋼球SA2の間に割り込んで、降下方向と反対方向に力FZがアーチ両端の2つの鋼球SA2に働く。アーチ両端部の鋼球SA2は分力FZ2方向に動けない。
アーチは上から降りてくる鋼球SAを下ろさない。
【0068】
図4(a1),(b1)は、鋼球SA3がアーチ両端の2つの鋼球SA2と一直線上に配される状態を示し、
図4(a2),(b2)は、鋼球SA3がアーチ両端の2つの鋼球SA2とともに下に凸の折れ線を作る状態を示す。何れの場合も鋼球SA3が下降可能で、下降して出来る隙間にアーチ両端の2つの鋼球SA2が移動する。側面WSから離れて落下し、さらに上の鋼球SAも落下する。
【0069】
排出口HSを大きくして、アーチが大きくなると、アーチの頂点付近の鋼球SAが一直線上あるいは下に凸の折れ線上に配される。このような個所が必ずできて、鋼球の排出が止まらなくなる。
【0070】
図2(b)に示した円柱の表面と筒の内面SLLとの間の流路は環状の一列路Gであって、
図4(a)と
図4(b)に示すようなアーチの両端部の鋼球SAを支持する流路の側面WSがない。
図4(a)と
図4(b)に示す「一列路Gの排出口HSにできるアーチの両端の鋼球SA」はつながり、弧は環になる。末端部がない無限の長さのアーチともいえる。
【0071】
環を構成する何れの鋼球STが楔効果を受けても、
図3(a3)と同様に、何れの鋼球SAにはシリンダ内壁面SLL或いは円柱の表面から垂直の力だけが作用する。何れの鋼球SAもそれより下の鋼球SAが降下すれば、必ず降下して出来上がる隙間を埋めるように降下する。
【0072】
図5は排出口HS周辺を上から見た透視図で、排出口HS周辺の複数個の鋼球SAが排出口HSから落下するどうかの説明図である。
図5(a)に示すように、排出口HS周辺の複数個の鋼球SAが連鎖して出来上がるアーチは環状であって、環を構成する何れかの鋼球SAが排出口HSに嵌まり込んで抜け落ちると、残りの鋼球も連鎖して排出口HSに落ち込む。
【0073】
何れの鋼球SAが排出口HSに嵌まり込まないとき、環が崩れない限り、残りの鋼球は排出口HS周辺のロート内壁SLB上に留まり、排出口HSに落ち込まない。環を作る鋼球SAがすべて落ち込む排出口の外延を円HS1で図示し、円HS1より小さくすべてが留まる排出口の外延を円HS2で示す。
【0074】
図5(b)に示すように、排出口HSに落ち込まない環は円であって、円の環を作る鋼球SAのすべてが
図5(b)に破線で示す排出口HSに引っかかって乗っかっている。
【0075】
円の環を作るN個の鋼球SAの中心をつないで正N角形ができる
例えば4個の鋼球SAが正方形を作ったとして、すべての鋼球SAを
図5(b)に実線で示す排出口HS内に収容出来れば、4個の鋼球SAの全部が同時に落下する。
【0076】
4個の鋼球SAの外側に5個の鋼球SAが正5角形の環が残るとして、排出口HSを大きくして、5個の鋼球SAのすべてを排出口HS内に収容出来れば、全部が同時に落下する。排出口HSを大きくしなくても、正5角形の大きな環は必ず崩れるとすれば、4個の鋼球SAをすべて収容する排出口HSは容器に収容される鋼球SAのすべてを途中で止まることなく排出する。
【0077】
半径Rの鋼球SAがN個連鎖して正N角形の環をつくり、N個の鋼球SAのすべてを収容する円の半径の最小値は(1+cosec(180/N))*Rである。
ちなみに、r=2ミリのとき、鋼球SA4個を同時に落下させる排出口HSの半径は4.8ミリであって、排出口直径は鋼球直径の2.4倍である。鋼球SA5個の場合は5.4ミリである。鋼球SA5個の場合は5.4ミリで、2.7倍である。鋼球SA6個の場合は6ミリで、3倍である。
【0078】
頂点に排出口HSを設けた半球キャップの上下を逆転し、半球キャップの凹面に鋼球SAを充填して、排出口HSを空けて鋼球SAを排出する実験で、鋼球直径DSAを5ミリにしたときの実験では、排出口直径DHSが15.5ミリで、鋼球直径DSAの3倍であるとき、鋼球SAは止まることなく排出され、充填した鋼球SA全部が排出される。排出口直径DHSが12ミリのとき、すぐに排出されなくなる。
【0079】
水平の平板に開けられた直径15.5ミリの穴からも、円錐形のロートの直径15.5ミリの排出口HSからも、充填した鋼球SA全部は排出されない。水平の平板に開けられた穴の周辺に乗った鋼球SAは最後まで動かない。
半球キャップをひっくり返したロートを採用する場合、排出口HSの周りにできる形を崩さないドームは、円錐形のロートを採用する場合よりできにくい。
【0080】
鋼球直径DSAがそれより大きい鋼球SAや小さい場合についても、おおむね排出口直径DHSが鋼球直径DSAの3倍であるとき、鋼球SAは止まることなく排出されると推測する。
【0081】
図5(c)に示すように、鋼球SAが3つ横1列に配され、真ん中の鋼球SAの周りに隣接する6個の鋼球SAは正6角形の円環を作る。正7角形の円環を構成する7個の鋼球SA1個が抜け落ちて正6角形の円環出来上るが、排出口HSの周りでは、正7角形の完全な円ではなく、単なる7角形の歪んだ円の環が6角形の歪んだ円の環になる。6鋼球SAの1つが排出口HSに落ちて、落ちた鋼球SAに隣接していた鋼球SAが後続する。
【0082】
6角形の歪んだ円の環の外側に7角形の歪んだ円の環があり、7角形の歪んだ円の環の外側に8角形の歪んだ円の環があり、排出口HSの近傍にある環の外側により大きな環ができ、排出口HSの近傍から遠くなるほど、大きな環が崩れて、わずかに小さくなる。
排出口HSの近傍から遠くなるほど、複数個の鋼球が整然と整列して円環になる。
【0083】
シリンダSLの円筒部の面積が排出口HSの面積よりはるかに大きい場合、排出口HS近傍が大きく動いても、円筒部の中の動きは微量である。
複数個の鋼球SAで構成される塊は、排出口HS近傍の先頭部だけが崩れて、円筒部の塊は形を変えず、非常に少しずつ降下する。
【0084】
図2(b)に示す調整弁BBは円柱上下両端部に半球体BHが連続し、中心軸ZBBがシリンダSLの中心軸Zと一致する。
図6(a)は
図2(b)に示す調整弁BBが右にずれて、中心軸ZBBがシリンダSLの中心軸Zから右に離れる状態を示している。
調整弁BBの円柱部とシリンダ内壁SLLとの間の隙間は、右側が狭く左側は広い。右側の隙間に1個の鋼球SAも収容できなく、左側の隙間の幅は鋼球直径DSAの2倍以上である場合について考える。
【0085】
調整弁BBの左側の流路は
図5(b)に示す一列路Gではなく、多くの鋼球SAが収容される。
ロート部SLBの排出口HS近傍が水平面ではなく、凹面から凸面に移行し、降下方向に直角面ではない。排出口HS近傍にのる鋼球SAが必ず排出されるようになっている。ロート部内壁は排出口から離れるに従い鉛直面に近づき、排出口から1個でも鋼球SAが落下すれば、調整弁BBの左側の流路に収容される多くの鋼球SAの何れもが移動して落下する。
【0086】
図6(b)は上から見た平面図で、円BHは半球体BHが
図6(a)に示すa-a切断面と交わる。
排出口HSは右が広く左に行くほど狭くなる三日月形になる。三日月形の排出口HSの右側の最も広い部分を辛うじて1~2個の鋼球SAが通過できる広さにする。
【0087】
この辛うじて通過する1個の鋼球SAを頂点にして、複数個の鋼球SAが調整弁BBに沿いながら、かつ上昇しながら連鎖し、下に凸のアーチを形成する。このアーチの上に、アーチが何層も重なる。これらのアーチは頂点の鋼球SAから崩れ始め、頂点の鋼球SAが移動すれば、これに連鎖する鋼球SAも次々と移動して落下する。
【0088】
図6(b)において、「三日月形の排出口HSの右側の最も広い部分から落下する鋼球SA」を頂点にして複数個の鋼球SAが連鎖して出来上がるU型のアーチは、端部に行くほど円BBから次第に離れている。
図5(a)に示すように環状にならないが、
図5(a)の場合と同じく、頂点の鋼球SAが排出口HSから落下すれば、それに連鎖する複数個の鋼球SAが1つずつ排出口HSに落下する。
【0089】
図6(b)に示すように、半球体BHに沿って上昇しながら形成するU型のアーチと、このU型のアーチの外側で且つ上側に形成するさらに大きなU型のアーチとは、面となってドームを形成する。ドームはドームの頂点である排出口HS周辺から崩れる。
【0090】
図7、
図8は排出口HS近傍の鋼球の流れについての説明図で、
図7は球体BHに沿って下降する鋼球SAの展開図で、
図8は排出口HS近傍で鋼球SAが拡散する状態を説明する。
【0091】
図2(a)に示すように、流路に複数の排出口が直列に設けられるとき、容器に気体や液体が充填する場合は、それぞれの排出口を通過するたびに大きな摩擦抵抗を受け、最初の排出口を勢いよく通過しても、最後の排出口から噴射される気体や液体の勢いは、弱くなっている。
【0092】
容器に鋼球などの粉粒体が充填する場合、
図2(a)で説明すると、ロート部末端の排出口HSから鋼球が排出されて、出来た隙間に上の鋼球が入りこみ、さらに上の鋼球が下にできた隙間に降りてくる。上に行くほど、鋼球と鋼球との間の隙間が小さくなり、鋼球の移動は僅かになる。
排出口HSの面積に比べてh-h切断面上の環の流路の面積は大きく、そこを通過する鋼球は略止まって見える。
【0093】
仮に、h-h切断面上の環が最後の排出口とすると、鋼球は勢いよく排出されるが、ロート部末端にある最後の排出口の影響を受けてほぼ止まってしまう。
最後の排出口の前の排出口を通過する鋼球速度も、それより前にある複数の排出口を通過する鋼球速度も、最後の排出口から排出される鋼球速度に従うが、最後の排出口から排出される鋼球速度は、それより前にある複数の排出口があってもなくても無関係に、常に一定である。
【0094】
球BBは流れに抵抗せず、鋼球の配列を乱す役割を果たす。
円筒部では表層面SASに近づくほど、容器内の鋼球の配列は疎らで、鋼球に囲まれる隙間は大きい。表層面SASから遠ざかるほど、隙間に鋼球に鋼球が割り込んで、隙間は小さくなり、鋼球の配列は密になる。
【0095】
図2(a)に示すj-j切断面上の容器内では円内にギッシリと数多くの鋼球が詰め込まれるが、h-h切断面上の環内には数少ない鋼球が詰め込まれる。j-j切断面からh-h切断面上に行くに従い環の内側の円が大きくなり、環内に収容される鋼球の数は次第に減少する。
【0096】
j-j切断面上で容器内壁に沿う鋼球の配列が完全な円としても、そこにあった鋼球の1つでも円から押し出されなければ、下にある隙間を埋めることはできない。鋼球が環から押し出され、環の配列が崩れて、より小さな環となり、押し出された鋼球はこの「より小さな環」の下に「さらにより小さな環」を作る。
【0097】
h-h切断面から下においても、下に行くに従い、環の内側の円も外側の円も小さくなり、環内に収容される鋼球の数は次第に減少する。j-j切断面から排出口まで、小さな環の下に、より小さな環を作るようになる。
【0098】
図7は球体BHとロート内壁SLBとの間を下降する鋼球SAの立面図を展開したもので、図示される線分HSの両端をつないでできる円は排出口HSである。
横に連鎖する鋼球の数は上に行くほど多くなる。鋼球の中心をつないでできる波を、下からW1,W2,W3とし、例えば、波W1,の両端の2つの鋼球がつながって、まさに排出口から出ようとする環になる。その上の波W2の両端の2つの鋼球がつながって、この「まさに排出口から出ようとする環の上」にできる「より大きな環」である。
【0099】
環となる鋼球の配列は、
図7の展開立面図において、上下に波打つ波形で図示される。
波の上にある鋼球SA3は、上の波の下でもあって、鋼球SA3の上に隣接する上2つの鋼球SA2によって下に押し出された鋼球である。また、鋼球SA3の下に隣接する下2つの鋼球SA1は鋼球SA3を押し上げずに、鋼球SA3の周りを公転しながら降下し、互いに接近する。
【0100】
一番下の波W1は排出口から出ようとする鋼球が作る波であって、下の鋼球が1つでも抜け落ちて、より小さな波になり、排出口から出る。
同時に、排出口から出た波の後に、波が新たに出きて、容器内の鋼球が止まることなく排出し続ける。
【0101】
排出口HSから出た鋼球は、排出口HS近傍に残った鋼球SAから離れて自由になる。排出口HS近傍HSSの鋼球は、拡散する空間が大きいほど、鋼球SAが排出口HS近傍HSSに留まらず排出されやすくなる。
図8(a),(b)はそれぞれ
図2(a),(b)に示したh-h切断面から下の半球体BHを除去した調整弁BBである。
【0102】
調整弁BB底面外周円とロート内壁SLB との間は、鋼球SAが1個通過可能な流路で、この流路幅は排出口HS近傍HSSで拡大され、排出口HS近傍HSSの鋼球は大きく拡散し、排出口HSに2個以上の鋼球SAが留まり続けないようになる。
【0103】
図8(b)に示す円柱BBの底面外周円BBBとロート内壁SLB との間は、鋼球SAが1個通過可能な流路で、排出口HSに近づくロート面は下に行くに従い下に凸SLBから上に凸SLBBに移行する。
鋼球が拡散する空間がより大きくなって、複数の鋼球が排出口から同時にではなく、1つずつ、あるいは2つずつ排出されるようになる。排出口HSを更に小さくしても、止まることなく排出される。
【0104】
ちなみに、鋼球直径DSAと円柱直径を共に5ミリにした実験では、排出口直径DHSを11ミリまで小さくできた。
【符号の説明】
【0105】
SL シリンダ
SLB ロート部
SA 鋼球
HS 排出口
G 隙間
DSA 鋼球直径