(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】血液ポンプ
(51)【国際特許分類】
A61M 60/829 20210101AFI20240515BHJP
F04D 13/02 20060101ALI20240515BHJP
A61M 60/221 20210101ALI20240515BHJP
A61M 60/416 20210101ALI20240515BHJP
A61M 60/804 20210101ALI20240515BHJP
A61M 60/825 20210101ALI20240515BHJP
A61M 60/104 20210101ALN20240515BHJP
A61M 60/178 20210101ALN20240515BHJP
【FI】
A61M60/829
F04D13/02 D
A61M60/221
A61M60/416
A61M60/804
A61M60/825
A61M60/104
A61M60/178
(21)【出願番号】P 2022142061
(22)【出願日】2022-09-07
(62)【分割の表示】P 2021057879の分割
【原出願日】2016-03-16
【審査請求日】2022-10-04
(32)【優先日】2015-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507116684
【氏名又は名称】アビオメド オイローパ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジース トルステン
(72)【発明者】
【氏名】アボウルホーセン ワリド
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-078995(JP,A)
【文献】国際公開第2001/007760(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/00-60/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路(7)によって接続された血流入口(5)および血流出口(6)を有するポンプケーシング(2)と、
回転軸(9)を中心にして回転可能であるようにして、前記ポンプケーシング(2)内に配置されたインペラ(3)であって、前記通路(7)に沿って前記血流入口(5)から前記血流出口(6)まで血液を運搬するようにサイズおよび形状が決められた羽根(4)を備え、前記ポンプケーシング(2)の軸受表面に面するインペラ(3)の軸受表面を備える少なくとも1つの接触型軸受(20)によって前記ポンプケーシング(2)内で回転可能に支持された、インペラ(3)とを備え、
少なくとも1つの洗い流しチャネル(43’)が、前記インペラ(3)を通って延在すると共に、第1の開口部(44’)を介して前記通路(7)と、また第2の開口部を介して前記軸受(20)と流体接続しており、前記洗い流しチャネル(43’)が、前記洗い流しチャネル(43’)を通って前記軸受(20)に向かって血液を給送する補助ポンプと動作的に関連付けられ、
前記補助ポンプが、
前記羽根(4)のうち1つを通るように前記インペラ(3)を通っ
て、前記回転軸(9)に対して径方向に延在する、前記少なくとも1つの洗い流しチャネル(43’)によって少なくとも部分的に形成さ
れ、
前記洗い流しチャネル(43’)は、前記羽根(4)のうち1つの径方向外縁部に配設された出口開口部(45’)を出て、前記第1の開口部(44’)が、前記出口開口部(45’)の反対側に配設されることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項2】
請求項
1に記載の血液ポンプであって、前記回転軸(9)と前記第1の開口部(44’)との間の距離が、前記回転軸(9)と洗い流しフローが前記通路(7)に出る地点(36)との間の距離の50%未満であることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の血液ポンプであって、前記インペラ(3)が、前記回転軸(9)に沿って延在し、前記軸受(20)を受け入れる中央開口部(32)を備え、前記第2の開口部が前記中央開口部(32)と流体接続していることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記第1の開口部(44’)の断面が円形または非円形であることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記第1の開口部(44’)は、前記洗い流しチャネル(43’)が前記インペラ(3)の表面に対して傾斜していることによって少なくとも部分的に露出した、前記洗い流しチャネル(43’)の端部部分によって形成されることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、突起(38)が、前記洗い流しチャネル(43’)の前記第1の開口部(44’)内へと延在し、前記第1の開口部(44’)を通って前記洗い流しチャネル(43’)に入る血流を増加させるようにサイズおよび形状が決められていることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記インペラ(3)が、前記インペラから径方向に延在し、前記洗い流しチャネル(43’)の前記第1の開口部(44’)に隣接して、また回転方向に対して前記第1の開口部の後方に配設された、少なくとも1つのウィング(39)を備えることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項8】
請求項
7に記載の血液ポンプであって、前記ウィング(39)が、前記洗い流しチャネル(43’)の前記第1の開口部(44’)の上を延在し、血液が前記第1の開口部(44’)に入ることができるように回転方向で開いていることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記回転軸(9)に対して対称的に配置された2つ以上の洗い流しチャネル(43’)を備えることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項10】
請求項1から
9のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記インペラ(3)が、径方向外側に延在する下流方向に部分(33)を有し、前記洗い流しチャネル(43’)の前記第1の開口部(44’)が前記部分(33)に配設されることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項11】
請求項1から1
0のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記洗い流しチャネル(43’)の前記第1の開口部(44’)が前記インペラ(3)の下流側半分に配設されることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項12】
請求項1から1
1のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記洗い流しチャネル(43’)の前記第1の開口部(44’)が、前記血液ポンプ(1)の動作中、血流を前記第1の開口部(44’)から前記洗い流しチャネル(43’)を通って前記軸受(20)に至らせるように前記軸受(20)が配設された前記インペラ(3)の区域よりも高い圧力下にある、前記インペラ(3)の区域に配設されたことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項13】
請求項1から1
2のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記第1の開口部(44’)から前記洗い流しチャネル(43’)に至る血流が、前記ポンプケーシング(2)の前記血流出口(6)に向かう方向であることを特徴とする血液ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の心臓を支援するため、患者に埋め込まれる血液ポンプに関する。特に、血液ポンプは、患者の心臓が十分に回復するまで血液ポンプが一時的に支援する、「回復への橋渡しをする」デバイスとして使用されることがある。
【0002】
軸流血液ポンプ、遠心血液ポンプ、または軸方向力および半径方向力の両方によって血流が生じる混合型血液ポンプなど、様々なタイプの血液ポンプが知られている。血液ポンプは、カテーテルを用いて、大動脈などの患者の血管に挿入されてもよく、または胸腔内に配置されてもよい。血液ポンプは、一般的に、通路によって接続された血流入口および血流出口を有するポンプケーシングを備える。通路に沿って血流入口から血流出口までの血流を生じさせるために、血液を運搬する羽根を備えたインペラが、ポンプケーシング内で回転可能に支持される。
【0003】
インペラは、少なくとも1つの軸受によってポンプケーシング内で支持されるが、軸受は、例えば、血液ポンプが短期間(数時間もしくは数日間)の使用のみに向けたものであるか、長期間(数週間もしくは数年間)の使用のみに向けたものであるかといった、血液ポンプの意図される用途に応じて、異なるタイプのものであってもよい。接触型軸受および非接触型軸受など、異々な軸受が知られている。非接触型軸受では、例えば、反発する磁力によって軸受表面が「浮揚」する磁気軸受の場合、軸受表面は互いに接触しない。一般に、接触型軸受は、例えば、滑り軸受、ピボット軸受、動圧軸受、静圧軸受、玉軸受など、またはそれらの任意の組み合わせでは、ポンプの動作中の任意の時点で(即ち、常にもしくは断続的に)軸受表面が少なくとも部分的に接触してもよい全てのタイプの軸受を含んでよい。特に、接触型軸受は、軸受表面が血液接触を有する「血液浸潤軸受」であってもよい。接触型軸受は、使用中に昇温することがあり、ポンプの動作中の回転する軸受表面と静止した軸受表面との接触によって機械的摩耗を起こし易い。血液自体など、軸受に対して冷却流体を供給することが望ましい。非接触型軸受では、軸受表面は物理的接触を有さず、通路または他の流体供給部と流体接続している隙間によって離間されている。同様に、例えばインペラの下流側前面において、血液の凝固および目詰まりを回避するため、インペラとポンプケーシングとの間の他の隙間が洗い流されるべきである。
【0004】
血液ポンプ内の隙間または軸受表面をすすぐための構成が、例えば、米国出願公開第2011/0238172A1号に開示されている。洗い流しチャネルは、インペラを通って延在し、第1および第2の開口部を介して通路および隙間と流体連通している。ポンプケーシング内の圧力分布は、圧力がインペラに沿って下流方向で増加する場合、隙間および洗い流しチャネルを通る血流を生じさせ、血液は、インペラの下流側端部で隙間に入り、洗い流しチャネルを通って、低圧で通路の区域に向かって流れる。この洗い流しフローには、血流を生じさせる圧力差を作り出さなければならないことにより、インペラの回転速度に依存するという不利な点がある。遠心力、および洗い流しフローの逆方向による反力などの他の力も、克服しなければならない。インペラが動圧軸受によってポンプケーシング内で支持される、米国出願公開第2011/0238172A1号に開示されている別の実施形態では、洗い流しチャネルの入口開口部はインペラの上流側端部に配設されている。インペラの下流側端部の補助羽根は、低圧区域から高圧区域への方向で洗い流しチャネルおよび隙間を通る洗い流しフローを生じさせるために設けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の主な目的は、血液ポンプの回転部分と静止部分との間、特に軸受またはインペラおよびポンプケーシングの静止部分と回転部分との間の隙間における、血流の停滞ならびに血液の凝固および目詰まりが、ポンプの回転速度または動作条件とは独立して有効に回避される、血液ポンプを提供することである。本発明の更なる目的は、接触型軸受の有効な冷却が可能な血液ポンプを提供することである。本発明の更に別の目的は、隙間を有効に洗い流すことができる血液ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
主な目的は、本発明にしたがって、独立請求項1の特徴を備えた血液ポンプによって達成される。本発明の好ましい実施形態および更なる発展例は、独立請求項に従属する請求項において特定される。
【0007】
既知の血液ポンプと同じく、本発明による血液ポンプは、通路によって接続された血流入口および血流出口を有するポンプケーシングを備える。ポンプケーシングは、血液ポンプの全ての静止部分を備えるものとして理解されてもよい。インペラまたはロータは、インペラの長手方向軸線であってもよい回転軸を中心にして回転可能であるようにして、前記ポンプケーシング内に配置され、インペラは、通路に沿って血流入口から血流出口まで血液を運搬するようにサイズおよび形状が決められた羽根を備える。インペラは、ポンプケーシングの軸受表面に面するインペラの軸受表面を備える、少なくとも1つの接触型軸受、好ましくはピボット軸受によって、ポンプケーシング内で回転可能に支持される。
【0008】
少なくとも1つの洗い流しチャネルは、インペラを通って延在すると共に、第1の開口部を介して通路と、また第2の開口部を介して軸受と流体接続している。動的洗い流しフローと呼ばれることがある洗い流しフローを生じさせるために、洗い流しチャネルは、洗い流しチャネルを通って軸受に向かって血液を給送する補助ポンプと動作的に関連付けられる。本発明によれば、補助ポンプは、少なくとも1つの接線方向成分を有する方向に沿ってインペラを通って延在する、前記少なくとも1つの洗い流しチャネルによって少なくとも部分的に形成される。換言すれば、第2のポンプは、特に、洗い流しチャネルを通して軸受に向かって血液を給送するようにサイズ決めされ、形作られ、配置された、前記少なくとも1つの洗い流しチャネル自体によって、少なくとも部分的に形成される。動的洗い流しフローを生じさせる補助ポンプを設けることによって、接触型軸受のすすぎ、およびそれによる軸受の冷却を、軸受に向かって血液を動的に給送する手段を有さない構成に比べて改善することができる。補助ポンプは、更に詳細に後述する、ポンプ内の好適な圧力分布によって支持されてもよい。しかしながら、補助ポンプは、ポンプ内の圧力分布とは独立して働くことが理解されるであろう。
【0009】
動的洗い流しフローは、軸受を洗い流し冷却するために軸受に送達される血液の量が、補助ポンプがないポンプと比べて増加するので、接触型軸受または「血液浸潤軸受」にとって特に有用である。軸受の冷却は、軸受表面からの熱を有効に散逸させることによって更に改善することができる。この目的で、軸受は、例えば、セラミックスまたはチタンなどよりも良好に熱を散逸させることができる、ステンレス鋼などの高伝導性材料を含んでもよい。特に、軸受表面が、例えばセラミックキャップの形態で提供される、セラミックスなどの平滑で耐性がある材料で作られ、軸受表面から離れる方向に面する軸受の部分が、ステンレス鋼などの高伝導性材料で作られていることがある場合、少なくとも2つの構成要素を備えた軸受を提供するのが有利なことがある。
【0010】
一実施形態では、洗い流しチャネルは、インペラを通って直線状で延在し、回転軸に対して心ずれ(offset relative to the axis of rotation)していてもよい。特に、洗い流しチャネルは、回転軸に平行な面内で延在してもよい。回転軸に対して斜めである、即ち回転軸と交差しない、直線状の洗い流しチャネルを有する配置を提供することによって、動的洗い流しフローを洗い流しチャネルに流すことが可能である。
【0011】
別の実施形態では、洗い流しチャネルは、曲線状であって、回転軸の周囲を回る方向で、特に螺旋形状に沿って、第1の開口部から延在してもよい。螺旋形状は、任意の長さで回転軸の周りの方向における、任意の曲線状、螺旋状、ヘリカル、または別の曲線形状として理解されるものとする。かかる形状は、軸受に向かって動的洗い流しフローを支援することができるので有利である。
【0012】
好ましくは、洗い流しチャネルは、第1の開口部から、回転方向とは反対の円周方向でインペラの表面に対してある角度で延在する。特に、インペラの表面に対して垂直に延在する洗浄チャネルとは対照的に、角度を付けた入口開口部によって、血液が洗い流しチャネルに入るのが容易になり、洗い流しチャネルを通る流量が増加する。この効果は、適切な角度を選択することによって更に改善することができる。例えば、角度は、20°未満、好ましくは15°未満、より好ましくは10°未満であってもよい。洗い流しチャネルは、第1の開口部から、インペラの表面に対して実質的に接線方向で、換言すれば、インペラの表面に対して非常に小さい角度で延在してもよい。しかしながら、洗い流しチャネルがインペラの表面に対して垂直に延在する配置と比べて、洗い流しチャネルを通って流れる血液の量を増加させるため、角度が回転方向とは反対の円周方向であり、換言すれば、第1の開口部が回転方向に開いていることが重要である。
【0013】
一実施形態では、第2の開口部と回転軸との間の距離は、第1の開口部と回転軸との間の距離以下であってもよい。換言すれば、下流方向で、洗い流しチャネルは回転軸に向かう方向で延在する。好ましくは、洗い流しチャネル内の洗い流しフローが克服しなければならない遠心力を低減するために、第1の開口部と回転軸との間の距離はできるだけ短い。換言すれば、径方向内側方向での第1の開口部と第2の開口部との間の距離は、できるだけ短くするべきである。更に、回転軸と第1の開口部との間の距離が、回転軸と洗い流しフローが通路に出る地点との間の距離よりも大幅に短い、例えば半分(50%)以下、40%未満、または更には30%未満であることが好ましい。この構成は、遠心血液ポンプにおいて、軸流または混合型血液ポンプよりも改善することができ、即ち、第1の開口部と洗い流しフローが通路に出る地点との間の距離を増加させることができる。
【0014】
インペラは、回転軸に沿って延在し、軸受を受け入れる中央開口部を備えてもよく、第2の開口部は中央開口部と流体接続している。更に、洗い流しチャネルは、第2の開口部において実質的に径方向で、回転軸に向かって向き付けられてもよい。これにより、軸受のすすぎを、またそれによって軸受の冷却を改善することができる。
【0015】
好ましくは、洗い流しチャネルの第1の開口部は、回転方向に対して羽根の順方向側(一般に、羽根の正圧側と呼ばれる)において、インペラの羽根の1つに隣接して配設される。この区域では、圧力は、特に羽根の逆方向側(一般に、羽根の負圧側と呼ばれる)における区域よりも高く、それによって軸受に向かって洗い流しチャネルを通る動的洗い流しフローを改善することができる。一実施形態では、第1の開口部は羽根の順方向側に配設されてもよく、第2の開口部は羽根の逆方向側に配設されてもよく、つまり、両方の開口部はインペラの径方向外側表面に配設され、洗い流しチャネルは下方に延在し、羽根を横切る。別の実施形態では、洗い流しチャネルは羽根内で延在してもよく、それにより、第1の開口部は羽根の順方向側に配設され、第2の開口部は羽根に、特に羽根の径方向外縁部に配設される。洗い流しチャネルは、洗い流される区域と流体連通していることを理解されたい。
【0016】
説明したように、補助ポンプの性能または出力は、インペラの表面に対してある角度で延在してもよい、インペラを通る洗い流しチャネルの特定の構成、例えば直線状または曲線状の洗い流しチャネルによって改善することができる。補助ポンプの性能は、洗い流しチャネルの第1の開口部の断面によって更に改善されてもよい。第1の開口部の断面は円形または非円形であってもよい。洗い流しチャネルが円形断面を有し、インペラの表面に対してある角度で延在する場合、これは、楕円形断面などの非円形断面をもたらす。一実施形態では、第1の開口部は、洗い流しチャネルがインペラの表面に対して傾斜していることによって少なくとも部分的に露出した、洗い流しチャネルの端部部分によって形成されてもよい。換言すれば、第1の開口部はインペラの表面では細長くてもよく、このことによって、血液ポンプの動作中に洗い流しチャネルに入る血液の量を更に増加させることができる。
【0017】
別の実施形態では、突起は、洗い流しチャネルの第1の開口部内へと延在し、特に、突起がない第1の開口部の断面と比べて、第1の開口部を通って洗い流しチャネルに入る血流を増加させるようにサイズおよび形状が決められている。突起がない第1の開口部の形状は、円形または非円形のどちらかであってもよい。突起は、回転方向に対して第1の開口部の逆方向側に配設されるので、第1の開口部への血液の流入を促進し、それによって補助ポンプの性能を改善する「エアフォイル」として作用する。別の方法として、またはそれに加えて、インペラは、そこから径方向に延在し、洗い流しチャネルの第1の開口部に隣接して、また回転方向に対して第1の開口部の後方に配設された、ウィングを備えてもよい。好ましくは、ウィングは、洗い流しチャネルの第1の開口部の上を延在し、血液が第1の開口部に入ることができるように、回転方向で開いている。ウィングは、インペラの回転中に血液を回収し、回収した血液を第1の開口部内へと向き付ける、ポケットを形成する。同様の効果を達成するために、インペラは、第1の開口部の断面がインペラの表面に対してある角度で、好ましくは45°超過の角度で、より好ましくは90°の角度で延在し、回転方向で開いているようにして、第1の開口部を備えるノーズまたは突起を備えてもよい。これにより、洗い流しチャネルに流入する血液の量を大幅に増加させることができる。
【0018】
好ましくは、血液ポンプは、回転軸に対して対称的に配置されてもよい、2つ以上の上述した洗い流しチャネルを備える。特に、血液ポンプは、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの洗い流しチャネルを備えてもよい。
【0019】
補助ポンプの少なくとも一部を形成する洗い流しチャネルのサイズ、形状、および配置に加えて、補助ポンプは、インペラの表面に形成された溝または羽根を更に備えてもよい。かかる補助溝または羽根は、インペラの下流側前面に配設されて、血流が洗い流しチャネルを通って軸受に向かうのを支援してもよい。
【0020】
一実施形態では、インペラは、径方向外側に延在する下流方向に部分を有してもよく、洗い流しチャネルの第1の開口部は前記部分に配設される。特に、前記部分は、下流方向で径方向外側に向かう円錐形のテーパー状となっている。その部分は、インペラと一体的に形成されるか、または別個に形成されてもよい。補助ポンプの性能は、第1の開口部をインペラの径方向で延在する部分に配置して、通路を通る血流の主方向とは反対の方向に向き付けられるようにすることによって、更に向上させることができる。それにより、第1の開口部はより多くの血液を捕えることができ、補助ポンプの性能が改善される。インペラの羽根は前記部分の上を延在してもよい。
【0021】
好ましい一実施形態では、洗い流しチャネルの第1の開口部は、ポンプの動作中、第2の開口部よりも高い圧力下にあって、血流を第1の開口部から洗い流しチャネルを通して軸受に至らせるように、インペラの区域に配置される。換言すれば、洗い流しチャネルの第1の開口部、即ち洗い流しチャネルの入口開口部はインペラの高圧区域にあるが、インペラの下流側では圧力が低いので、洗い流しフローは、「順」方向に、即ちポンプケーシングの血流出口に向かう方向に向き付けられる。したがって、血液ポンプの動作中に生じるこの圧力差を、特に洗い流しチャネル内の局所圧力勾配を利用することによって、順方向フローの洗い流しが作り出される。これには、回転速度および動作条件(例えば、前負荷、後負荷、初期順方向フローの大きさ)とは独立して、特にインペラの回転が始まり回転速度が遅い、特に血液ポンプの設計速度未満である、動作の開始時にも、ポンプの動作中は常に必要な圧力差が存在するという利点がある。対照的に、洗い流しフローが「逆」方向に向き付けられる、既知の血液ポンプでは、圧力差を構築しなければならず、それにはある程度の時間が掛かり、その間は洗い流しフローが遅いか、または停滞することがある。このことは、隙間もしくは洗い流しチャネル、またはその両方における、血液の凝固および目詰まりに結び付く。更に、逆方向フローは、フローの主方向によって生じる力を克服しなければならず、そのこともまた、洗い流しフローの停滞に、また結果として血液の凝固および目詰まりに結び付くことがある。本発明によれば、洗い流しフローは、血液ポンプの動作時間全体を通して「順」方向で存在し、特に、ポンプの動作中におけるポンプケーシング内の圧力分布を利用する。
【0022】
洗い流しチャネルの第1の開口部は、インペラの下流側半分に配設されてもよい。ポンプの動作中、圧力は、インペラの長さに沿って、特にインペラの羽根が配設されている領域で増加する。したがって、インペラの下流側半分では、インペラの上流側半分よりも高い圧力が存在する。洗い流しチャネルの第1の開口部における高圧が好ましいので、第1の開口部をインペラの下流側半分に配置することが好ましい。より好ましくは、第1の開口部は、インペラの下流側3分の1、下流側4分の1、または下流側5分の1に配置されてもよい。特に、第1の開口部をインペラの下流側端部のできるだけ近くに、例えば下流方向でインペラの長さの最後10%以内に配置するのが有利である。
【0023】
圧力分布に関して、洗い流しチャネルの第1の開口部は、好ましくは、ポンプの動作中、インペラが載置される通路の長さに沿った圧力分布に対して中間圧力よりも圧力が高い、より好ましくは圧力が実質的に最大圧力である、インペラの区域に配設される。洗い流しチャネルの第1および第2の開口部の間の高い圧力差により、洗い流しチャネルの第1の開口部から軸受までの洗い流しフローが改善される。特に、高い圧力差は補助ポンプを支持するのに有利である。
【0024】
上述の概要、ならびに好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付図面と併せ読むことによってより良く理解されるであろう。本開示を例証する目的で、図面を参照する。しかしながら、本開示の範囲は、図面に開示する特定の実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】心臓外用途向けの本発明による血液ポンプの断面図である。
【
図1A】心臓外用途向けの本発明による血液ポンプの断面図である。
【
図2】カテーテルポンプとして設計された本発明による血液ポンプの断面図である。
【
図6a】インペラの一部分の他の実施形態を示す図である。
【
図6b】インペラの一部分の他の実施形態を示す図である。
【
図7】別の実施形態による血液ポンプの一部を示す断面図である。
【
図8】別の実施形態によるインペラの一部を示す断面図である。
【
図9】別の実施形態によるインペラの一部を示す断面図である。
【
図10】更に別の実施形態によるインペラの一部を示す断面図である。
【
図11】別の実施形態による血液ポンプの一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1を参照すると、血液ポンプ1の断面図が示されている。血液ポンプ1は、体外、心臓外、または管腔外用途向けに設計されており、血流入口5および血流出口6を有するポンプケーシング2を備える。動作中、ポンプケーシング2は患者の体外に位置し、血流入口5および血流出口6は、それぞれのコネクタ(特に、心臓からの流入および大動脈への流出)に接続される。
図2は、カテーテルポンプ1’として設計されている点が異なる、
図1に類似した一実施形態を示している。血流入口5’は、大動脈弁などの心臓弁を通して配置された可撓性カテーテル50の端部にあり、使用中、血流出口6’は、ポンプケーシング2’の側に位置し、大動脈などの心臓血管内に位置する。血液ポンプ1’はカテーテル51に接続され、電気ワイヤ52が、ポンプ1’を駆動するためにカテーテル51を通って延在する。血液ポンプ1および1’は両方とも同じように機能する。後述する全ての特徴は両方の実施形態に適用可能であることが理解されるであろう。
【0027】
血液は、血流入口5および血流出口6を接続する通路7に沿って運搬される。インペラ3は、血液を通路7に沿って運搬するために設けられ、第1の軸受10および第2の軸受20によって、ポンプケーシング2内で回転軸9を中心にして回転可能に装着される。回転軸は、好ましくはインペラ3の長手方向軸線である。軸受10、20は両方とも接触型軸受である。しかしながら、軸受10、20の少なくとも一方は、磁気または動圧軸受など、非接触型軸受であることができる。第2の軸受20は、回転移動ならびに枢動移動をある程度まで許容する、球状の軸受表面を有するピボット軸受である。第1の軸受10は、支持部材15内に配設されてインペラ3の回転を安定させ、支持部材15は、血流のための少なくとも1つの開口部16を有する。インペラ3が回転すると血液を運搬するように、羽根4がインペラ3上に設けられる。インペラ3の回転は、インペラ3の端部部分37に磁気結合された電動モータステータ8によって引き起こされる。当業者には理解されるように、他の好適な駆動メカニズムが可能である。図示される血液ポンプ1は混合型血液ポンプであり、主要なフロー方向は軸方向である。インペラ3の、特に羽根4の配置に応じて、血液ポンプ1は、純粋な軸流血液ポンプであってもよいことが理解されるであろう。
【0028】
インペラ3は、インペラ3の下流側部分に配設され、径方向外側に延在する部分33を備える。部分33は、ヨーク、フランジ部分、または端部部分と呼ぶことができる。この実施形態では、部分33は、回転軸9に対して45°の角度で延在する外表面を備える。他の適切な角度、例えば30°~60°の角度を選択することができ、または湾曲表面であることができる。部分33は、インペラ3と一体的に、またはこの実施形態で示されるように別個に形成されてもよい。少なくとも1つの洗い流しチャネル30、好ましくは3つ、4つ、5つ、または6つなど、2つ以上の洗い流しチャネル30は、
図1にはその1つのみが示されているが、インペラ3を通って、特に部分33を通って延在して、ピボット軸受20、およびインペラ3と、血液ポンプ1の静止部分、特にポンプケーシング2またはポンプケーシング2と関連付けられていると見なされてもよいモータ8との間の隙間31の洗い流しまたはすすぎを可能にしている。少なくとも1つの洗い流しチャネル30はまた、少なくとも部分的に、部分33を越えてインペラ3の主要部分内へと延在してもよい。
【0029】
洗い流しチャネル30は、第1の開口部34または入口開口部と、第2の開口部35または出口開口部とを有する。第1の開口部34は、通路7と洗い流しチャネル30との間に流体接続を形成し、第2の開口部35は隙間31と流体接続している。特に、第2の開口部35は、第2の軸受20を受け入れる、部分33の中央ボアまたは中央開口部32と流体接続している。隙間31は、隙間遷移点36を、即ち隙間31が通路7に対して開いている位置を介して、通路7と流体接続している。
【0030】
洗い流しチャネル30の第1の開口部34は、インペラ3の下流側半分に配設される。特に、第1の開口部34は、血液ポンプ1の動作中、インペラ3の回転によって生じる高圧下にある、インペラ3の区域に配設される。特に、第1の開口部34は、ポンプケーシング2内の最大圧力に近いかまたは最大圧力の区域にあってもよい。圧力は、羽根4によって、また、軸流方向から径方向への流体の偏向によって増加し、羽根4の下流で減少する。したがって、インペラ3の下流側端部近くである、第1の開口部34の位置の適切な選択によって、隙間遷移点36における圧力は洗い流しチャネル30の第1の開口部34よりも低い。この圧力分布は、羽根4の形状を選択することによって適宜向上させることができ、第1の開口部34から洗い流しチャネル30および隙間31を通って隙間遷移点36に至るフロー方向をもたらす。あるいは、点36の近傍でベンチュリ効果によって局所圧力降下を作り出すことによって、例えば、通路7の狭窄部53(
図1Aを参照)を設けることによって、点36における更なる圧力降下を達成することができる。換言すれば、血液は、洗い流しチャネル30を通って順方向でポンプケーシング2の血流出口6に向かって流れる。血液ポンプ1の動作中、特に血液ポンプ1の設計速度を下回る低い回転速度の位相中も、順方向フローの洗い流しがいずれの回転速度でも生じることにより、血液の凝固を有効に回避することができる。
【0031】
ピボット軸受20および隙間31の洗い流しとは別に、洗い流しチャネル30を通る血流はピボット軸受20の冷却をもたらす。ピボット軸受20は、部分33の中央開口部32内に配置される。したがって、血液は、洗い流しチャネル30を通って軸受20に向かって運搬される。ピボット軸受20は、有効に冷却しすすぐことができる。詳細に後述するように、洗い流しチャネル30を通って軸受20に向かって血液を能動的に給送する補助ポンプを設けることによって、効果を更に改善することができる。記載したような洗い流しチャネル30を通る洗い流しフローの「順」方向が有利であるが、洗い流しフローは任意の方向で向き付けられてもよい。
【0032】
次に
図3を参照すると、インペラ3の一実施形態が示されている。インペラは、インペラ3の本体の周りに配置された羽根4を有する。羽根4は、インペラ3が回転方向(
図3の矢印によって示される)に回転すると血液を運搬するようにサイズおよび形状が決められている。インペラ3はその下流側端部に33を有し、部分33は、入口開口部34を有する少なくとも1つの洗い流しチャネル30を有する。上述したように、入口開口部34はインペラ3の区域内に配置される。インペラ3は、高圧下では、洗い流しチャネル30を通る血流が第1の開口部34または入口開口部から第2の開口部35へと向き付けられることを担保する。この実施形態では、入口開口部34は、回転方向に対して羽根4の1つの順方向側(羽根の正圧側とも呼ばれる)に配設される。特に、羽根4の逆方向側(羽根の負圧側とも呼ばれる)と比べて、圧力は順方向側の方が高く、それによって洗い流しチャネル30の入口開口部34への流入方向が支持される。いずれにせよ、開口部34は羽根4の逆方向側に配設される。羽根4の逆方向側は、開口部34がインペラ3の下流側端部にある部分33に配設されるために圧力が十分に高くてもよい方向側である。
【0033】
図4a~4bでは、部分33の一実施形態の様々な図が示されている。この実施形態では、洗い流しチャネル30は、洗い流しチャネル30からそれぞれの第1の開口部34を通って第2の開口部35まで、したがって中央開口部32および軸受20まで、更には隙間遷移点36(
図1を参照)まで血液を給送する補助ポンプを形成する。この実施形態では、洗い流しチャネル30は、インペラ3を通って直線状に延在し、回転軸9(部分33の下面図である、
図4bの破線によって示される)に対して心ずれしている。洗い流しチャネル30は、回転軸9に平行な面内で延在するので、洗い流しチャネル30は接線成分を有する方向に沿って延在する。この配置により、血流が、第1の開口部34から第2の開口部35へと向けられる。この実施形態では2つの洗い流しチャネル30が示されている。しかしながら、3つ、4つ、またはそれ以上の洗い流しチャネルを同様に設けることができ、それらは回転軸9の周りに対称的に配置されてもよいことが理解されるであろう。特に、
図4bの線B-Bに沿った断面図である
図4dで分かるように、洗い流しチャネル30は下流方向で傾斜している。第1の開口部34に対して下流側である第2の開口部35は、第1の開口部34よりも回転軸9に近い。洗い流しチャネル30は、
図1に示されるように、第2の軸受20を少なくとも部分的に受け入れる、中央開口部32に対して開いている。
【0034】
補助ポンプを形成する洗い流しチャネル30を有するインペラ3の更なる実施形態が、
図5aおよび5bに示されている。
図5aの実施形態によれば、第1の開口部34は円形ではない。より正確には、第1の開口部34を通って洗い流しチャネル内へと流れる血液の量を増加させるため、突起38が第1の開口部34内へと延在している。突起38は、回転方向に対して、第1の開口部34の逆方向側に配置される。第1の開口部34の結果的な形状は、キドニー形状と呼んでもよい。インペラ3が回転すると引っ張りまたは吸引が作り出されて、特に突起38がない実施形態(
図3の実施形態など)と比べて、第1の開口部34に入る血液の量が増加するので、これは「エアフォイル」のように作用する。突起38の形状は、洗い流しチャネル30を通って流れるべき血液の所望量にしたがって選択することができる。第1の開口部34の断面は、対称または非対称であってもよい。
【0035】
突起38の代わりに、またはそれに加えて、
図5bに示されるようにウィング39を設けることができる。ウィング39は、回転方向に対して第1の開口部34の後方に配置され、回転方向でインペラ3が回転すると、より多量の血液を捕えるポケットを形成する。ウィング39は、ウィング39がない実施形態(
図3の実施形態など)と比べて、第1の開口部34に入る血液の量を増加させるのに適した、任意のサイズおよび形状を有してもよい。第1の開口部34を、インペラ3から径方向で延在するノーズまたは突起に配置し、第1の開口部34が回転方向を指すことによって、同じ効果を達成することができる。
【0036】
次に
図6aおよび6bを参照すると、洗い流しチャネル30’を有する部分33’の一実施形態が示されている。回転方向は矢印によって示されている。上述した実施形態のように、洗い流しチャネル30’は、中央開口部32’に面する第1の開口部34’および第2の開口部35’を有する。洗い流しチャネル30’は、他の実施形態と関連して記載したような補助ポンプの一部を形成して、血流を、第1の開口部34’から第2の開口部35’への方向で第2の軸受20に向かって押し流す。この実施形態では、洗い流しチャネル30’は曲線状であり、螺旋形状で回転軸9の周りを延在する。「螺旋形状」という用語は、規則的な螺旋を形成するか、または少なくとも1つの接線成分を有する他の任意の曲線形状を形成するかにかかわらず、任意の曲線形状を含むことが理解されるであろう。洗い流しチャネル30’は、小さい角度で第1の開口部でインペラ3に入り、それによって第1の開口部34’は、洗い流しチャネル30’の露出部分によって形成され、細長い形状を有する。これにより、血液の捕捉が促進され、特に洗い流しチャネル30が、垂直または実質的に垂直などの大きい角度でインペラ3の表面へと延在する構成と比べて、第1の開口部34’に入る血液の量を増加させる助けとなる。洗い流しチャネル30’は、中央開口部32’に向かって曲線形状で延在し、実質的に径方向で第2の開口部35’を出る。血液は、中央開口部32’内へと、したがって第2の軸受20へと有効に給送されて、第2の軸受20のすすぎおよび冷却が行われる。
図1と関連して説明したように、洗い流しチャネル30’を通る血流は、回転するインペラ3と静止したポンプケーシング2との間の隙間31を有効に洗い流す。補助ポンプの性能を更に改善するために、補助ポンプは、インペラ3の表面に、特に隙間31に形成された、溝または羽根を更に備えてもよい。
【0037】
上述した補助ポンプは、隙間31における遠心給送動作による支援なしでは、大きい直径から小さい直径まで延在する、任意の形状の回転するチャネルの遠心効果を克服することはできないことが理解されるべきである。
【0038】
補助ポンプの性能は、回転軸9に対する、また特に互いに対する、第1の開口部34および隙間遷移点36の少なくとも1つの位置によって、更に改善することができる。
図7に示されるように、第1の開口部は回転軸9までの第1の距離d
1を有し、隙間遷移点36は回転軸9までの第2の距離d
2を有する。補助ポンプの性能は、第1の開口部34が回転軸にできるだけ近い場合に、つまり、距離d
1ができるだけ小さく、洗い流しチャネル30が回転軸9に向かってわずかな距離のみ延在する場合に改善することができる。これにより、回転軸に向かう方向で流れる洗い流しフローが克服しなければならない遠心力が低減される。特に、第1の距離d
1が第2の距離d
2に比べて小さい場合が有利であり、好ましくは、d
1はd
2の半分以下であってもよい。
【0039】
図8の回転軸9に垂直な断面で示される別の実施形態では、インペラ3は、第1の開口部41および第2の開口部42がインペラ3の径方向外側表面に配設された、洗い流しチャネル40を含む。第1の開口部41は、回転方向(
図8の矢印によって示される)に対して羽根4のうち1つの順方向側に配設され、第2の開口部42は羽根4の逆方向側に配設される。これによって、第1の開口部41から第2の開口部42への血流が生じる。洗い流しチャネル40は、中央開口部32と流体連通して、軸受20を洗い流し冷却する。
図9の実施形態では、
図8の実施形態と同様に、羽根4のうち1つの順方向側に配設された第1の開口部44を有する、洗い流しチャネル43が設けられる。しかしながら、洗い流しチャネル43は、羽根4を通って延在し、羽根4の縁部に配置された第2の開口部45を出る。この配置により、第1の開口部44から第2の開口部45へと洗い流しフローを向けるのに、遠心力を利用することが可能になる。
図10は、
図9に類似した別の実施形態を示している。しかしながら、洗い流しチャネル43’の第1の開口部44’は、羽根4の対角線方向反対側に配設され、そこを通ってチャネル43’が延在し、そこでチャネル43’が第2の開口部45’を出る。したがって、この実施形態では、洗い流しチャネル43’は、
図9の実施形態のような接線方向ではなく、対角線方向または径方向に通っているので、軸受20の全ての面に触れる。
【0040】
図8に類似した一実施形態が
図11に示されている。洗い流しチャネル40’は、回転方向に対して羽根4のうち1つの順方向側に配設された第1の開口部41’を有し、第2の開口部42’は羽根4の逆方向側に配設される(洗い流しチャネル40’は、
図11では断面図で示されているが、断面の面内で延在するのではなく、
図8に示される断面に類似していることに留意されたい)。洗い流しチャネル40’は羽根4の下方に延在する。しかしながら、
図11の実施形態では、洗い流しチャネル40’は、長手方向軸線9に垂直な1つの面内で延在するのではなく、第2の開口部42’は第1の開口部41’の下流側に配設される。したがって、第2の開口部42’はまた、第1の開口部41’から径方向外側に配設される。この配置により、洗い流しフローを、第2の開口部42’に至る洗い流しチャネル40’の出口区画における遠心力によって増大させることができる。また、通路7内における第1の開口部41’と第2の開口部42’との間の圧力差によって、洗い流しフローが向上する。
【0041】
図8~11と関連して記載した洗い流しチャネル40、40’、43、43’の少なくとも1つは、上述の洗い流しチャネル30、30’の代わりに、またはそれらに加えて提供されてもよいことが理解されるであろう。また、チャネル40、40’、43、43’は、中央開口部32および隙間31と流体連通しており、それによって上述したのと同じ方式の総合的な洗い流しフローが可能になることを理解されたい。
【0042】
好ましい実施形態について、以下のパラグラフに記載する。
【0043】
1.通路7によって接続された血流入口5および血流出口6を有するポンプケーシング2と、
回転軸9を中心にして回転可能であるようにして、前記ポンプケーシング2内に配置されたインペラ3であって、通路7に沿って血流入口5から血流出口6まで血液を運搬するようにサイズおよび形状が決められた羽根4を備え、ポンプケーシング2の軸受表面に面するインペラ3の軸受表面を有する少なくとも1つの接触型軸受20によってポンプケーシング2内で回転可能に支持された、インペラ3とを備え、
少なくとも1つの洗い流しチャネル30が、インペラ3を通って延在すると共に、第1の開口部34を介して通路7と、また第2の開口部35を介して軸受20と流体接続しており、洗い流しチャネル30が、洗い流しチャネル30を通って軸受20に向かって血液を給送する補助ポンプと動作的に関連付けられ、
補助ポンプが、少なくとも1つの接線方向成分を有する方向に沿ってインペラ3を通って延在する、前記少なくとも1つの洗い流しチャネル30によって少なくとも部分的に形成される、血液ポンプ1。
【0044】
2.洗い流しチャネル30が、インペラ3を通って直線状で延在し、回転軸9に対して心ずれしている、パラグラフ1の血液ポンプ。
【0045】
3.洗い流しチャネル30が回転軸9に平行な面内で延在する、パラグラフ2の血液ポンプ。
【0046】
4.洗い流しチャネル30が曲線状であり、回転軸9の周囲を回る方向で第1の開口部34から延在する、パラグラフ1の血液ポンプ。
【0047】
5.洗い流しチャネル30が、第1の開口部34から、回転方向とは反対の円周方向でインペラ3の表面に対してある角度で延在する、パラグラフ1から4のいずれか1つの血液ポンプ。
【0048】
6.角度が20°未満、好ましくは15°未満、より好ましくは10°未満である、パラグラフ5の血液ポンプ。
【0049】
7.洗い流しチャネル30が、インペラ3の表面に対して実質的に接線方向で第1の開口部34から延在する、パラグラフ5または6の血液ポンプ。
【0050】
8.第2の開口部35と回転軸9との間の距離が、第1の開口部34と回転軸9との間の距離以下である、パラグラフ1から7のいずれか1つの血液ポンプ。
【0051】
9.回転軸9と第1の開口部34との間の距離が、回転軸9と洗い流しフローが通路7に出る地点36との間の距離の50%未満、好ましくは40%未満、より好ましくは30%未満である、パラグラフ1から8のいずれか1つの血液ポンプ。
【0052】
10.インペラ3が、回転軸9に沿って延在し、軸受20を受け入れる中央開口部32を備え、第2の開口部35が中央開口部32と流体接続している、パラグラフ1から9のいずれか1つの血液ポンプ。
【0053】
11.第2の開口部35における洗い流しチャネル30が、実質的に径方向で回転軸9に向かって向き付けられる、パラグラフ1から10のいずれか1つの血液ポンプ。
【0054】
12.洗い流しチャネル30の第1の開口部34が、回転方向に対して羽根4の順方向側において、インペラ3の羽根4の1つに隣接して配設される、パラグラフ1から11のいずれか1つの血液ポンプ。
【0055】
13.第1の開口部34の断面が円形である、パラグラフ1から12のいずれか1つの血液ポンプ。
【0056】
14.第1の開口部34の断面が非円形である、パラグラフ1から12のいずれか1つの血液ポンプ。
【0057】
15.第1の開口部34が、洗い流しチャネル30がインペラ3の表面に対して傾斜していることによって少なくとも部分的に露出した、洗い流しチャネル30の端部部分によって形成される、パラグラフ1から13のいずれか1つの血液ポンプ。
【0058】
16.突起38が、洗い流しチャネル30の第1の開口部34内へと延在し、第1の開口部34を通って洗い流しチャネル30に入る血流を増加させるようにサイズおよび形状が決められた、パラグラフ1から15のいずれか1つの血液ポンプ。
【0059】
17.インペラ3が、そこから径方向に延在し、洗い流しチャネル30の第1の開口部34に隣接して、また回転方向に対してその後方に配設された、少なくとも1つのウィング39を備える、パラグラフ1から16のいずれか1つの血液ポンプ。
【0060】
18.ウィング39が、洗い流しチャネル30の第1の開口部34の上を延在し、血液が第1の開口部34に入ることができるように回転方向で開いている、パラグラフ17の血液ポンプ。
【0061】
19.インペラ3が、そこから径方向に延在する突起を備え、突起が、第1の開口部34の断面がインペラ3の表面に対してある角度で延在し、回転方向で開いているような第1の開口部34を備え、角度が好ましくは45°超過、より好ましくは90°である、パラグラフ1から16のいずれか1つの血液ポンプ。
【0062】
20.回転軸9に対して対称的に配置された2つ以上の洗い流しチャネル30を備える、パラグラフ1から19のいずれか1つの血液ポンプ。
【0063】
21.補助ポンプが、インペラ3の表面に形成された溝または羽根を備える、パラグラフ1から20のいずれか1つの血液ポンプ。
【0064】
22.インペラ3が、径方向外側に延在する下流方向に部分33を有し、洗い流しチャネル30の第1の開口部34が前記部分33に配設される、パラグラフ1から21のいずれか1つの血液ポンプ。
【0065】
23.前記部分33が、下流方向で径方向外側に向かう円錐形のテーパー状である、パラグラフ22の血液ポンプ。
【0066】
24.インペラ3の羽根4が前記部分33の上を延在する、パラグラフ22または23の血液ポンプ。
【0067】
25.部分33が、インペラ3と一体的に形成されるか、または別個に形成される、パラグラフ22から24のいずれか1つの血液ポンプ。
【0068】
26.洗い流しチャネル30の第1の開口部34がインペラ3の下流側半分に配設される、パラグラフ1から25のいずれか1つの血液ポンプ。
【0069】
27.洗い流しチャネル30の第1の開口部34が、血液ポンプ1の動作中、血流を第1の開口部34から洗い流しチャネル30を通って軸受20に至らせるように軸受20が配設されたインペラ3の区域よりも高い圧力下にある、インペラ3の区域に配設された、パラグラフ1から26のいずれか1つの血液ポンプ。
【0070】
28.第1の開口部34から洗い流しチャネル30に至る血流が、ポンプケーシング2の血流出口6に向かう方向である、パラグラフ1から27のいずれか1つの血液ポンプ。
【0071】
29.第1の開口部41が羽根4の順方向側に配設され、第2の開口部42が羽根4の逆方向側に配設され、洗い流しチャネル40が羽根4の下方を延在する、パラグラフ1から28のいずれか1つの血液ポンプ。
【0072】
30.洗い流しチャネル43が羽根4内で延在し、第1の開口部44が羽根4の順方向側に配設され、第2の開口部45が羽根4に、特に羽根4の径方向外縁部に配設される、パラグラフ1から29のいずれか1つの血液ポンプ。
【0073】
31.接触型軸受20がピボット軸受である、パラグラフ1から30のいずれか1つの血液ポンプ。
【0074】
32.血液ポンプ1が、軸流血液ポンプ、遠心血液ポンプ、または混合型血液ポンプである、パラグラフ1から31のいずれか1つの血液ポンプ。