(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】ボルトの緩み推定装置、ボルトの緩み推定方法及びボルトの緩み推定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 13/00 20190101AFI20240515BHJP
G01H 13/00 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
G01M13/00
G01H13/00
(21)【出願番号】P 2022156531
(22)【出願日】2022-09-29
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】荒井 慎平
(72)【発明者】
【氏名】織田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】鈴村 健
(72)【発明者】
【氏名】王 碩
(72)【発明者】
【氏名】村椿 喜一
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】若林 章弘
(72)【発明者】
【氏名】海野 大
(72)【発明者】
【氏名】小川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】久保田 智子
(72)【発明者】
【氏名】山元 明彦
(72)【発明者】
【氏名】上野 豪
(72)【発明者】
【氏名】栗原 雄一
(72)【発明者】
【氏名】本田 宗寛
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-337011(JP,A)
【文献】特開2018-040725(JP,A)
【文献】特開2020-148504(JP,A)
【文献】特開2019-152538(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0231515(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00
G01H 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動の周波数を変更しつつ、ボルト締めを有する鋼材を加振する加振部と、
ボルトに緩みが有る場合に前記加振部による加振に応じてボルトが共振する際の共振音を集音可能
であり、指向性を有する複数のマイクロフォンを含むマイク部と、
前記マイク部によって集音した共振音
のうち音の強度が最も高い共振音を集音したマイクロフォンを特定し、当該マイクロフォンの指向性を有する方向にボルトに緩みが有ることを推定する推定部と、
を備えるボルトの緩み推定装置。
【請求項2】
前記推定部は、前記マイク部で集音した音の周波数に基づいて共振音を特定し、当該共振音が有る場合にボルトに緩みが有ると推定する
請求項1に記載のボルトの緩み推定装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記マイク部で集音した音についての周波数に応じた音の強度と、ボルトに緩みがない鋼材を加振した際に生じる音についての周波数に応じた音の基準となる強度とに基づいて、ボルトに緩みが有ることを推定する
請求項1に記載のボルトの緩み推定装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記マイク部で集音した音についての周波数に応じた音の強度と、当該周波数と同一となる周波数に応じた基準となる強度とを比較し、前記マイク部で集音した音の強度が基準となる強度よりも大きい場合に、ボルトに緩みが有ると推定する
請求項3に記載のボルトの緩み推定装置。
【請求項5】
前記推定部は、ボルトに緩みが有る場合に鋼材を加振した際に生じる音と、ボルトに緩みが無い場合に鋼材を加振した際の音とを学習した学習済モデルと、前記マイク部で集音した共振音とに基づいて、ボルトに緩みが有ることを推定する
請求項1に記載のボルトの緩み推定装置。
【請求項6】
前記加振部は、振動の周波数を20Hz~20000Hzの間で変更して、鋼材を加振する
請求項1~5のいずれか1項に記載のボルトの緩み推定装置。
【請求項7】
加振部によって、振動の周波数を変更しつつ、ボルト締めを有する鋼材を加振する加振ステップと、
指向性を有する複数のマイクロフォンを含むマイク部によって、ボルトに緩みが有る場合に前記加振部による加振に応じてボルトが共振する際の共振音を集音する集音ステップと、
推定部によって、前記マイク部によって集音した共振音
のうち音の強度が最も高い共振音を集音したマイクロフォンを特定し、当該マイクロフォンの指向性を有する方向にボルトに緩みが有ることを推定する推定ステップと、
を実行するボルトの緩み推定方法。
【請求項8】
指向性を有する複数のマイクロフォンを含むマイク部で集音した音を受け付けるコンピュータに、
振動の周波数を変更しつつ、ボルト締めを有する鋼材を加振する加振機能と、
ボルトに緩みが有る場合に前記加振機能による加振に応じてボルトが共振する際の共振音を前記マイク部によって集音した際の当該共振音
のうち音の強度が最も高い共振音を集音したマイクロフォンを特定し、当該マイクロフォンの指向性を有する方向にボルトに緩みが有ることを推定する推定機能と、
を実現させるボルトの緩み推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ボルトの緩み推定装置、ボルトの緩み推定方法及びボルトの緩み推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検査対象の劣化を判定する検査装置がある。検査装置は、被検査対象に取り付けられる、ハンマー装置及び振動検出センサを備える。ハンマー装置は、駆動することにより、打音を発生させる。振動検出センサは、被検査対象を経由して伝播してきた打音を検出し、その打音の振動波形から被検査対象の劣化状況を判定する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された検査装置は、トンネル壁等の被検査対象の劣化を判定する装置である。
ところで、鉄塔等の構造物にはボルト締めを有する鋼材が用いられることが有るが、その構造物の検査ではボルトの緩みの有無を調べることがある。特許文献1に記載された検査装置では、ボルトの緩みの有無を調べることができず、ボルトの緩みが有ることの検査を行うことが可能な検査装置が求められていた。
【0005】
本開示は、ボルトに緩みが有ることの推定を行う、ボルトの緩み推定装置、ボルトの緩み推定方法及びボルトの緩み推定プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様のボルトの緩み推定装置は、振動の周波数を変更しつつ、ボルト締めを有する鋼材を加振する加振部と、ボルトに緩みが有る場合に加振部による加振に応じてボルトが共振する際の共振音を集音可能なマイク部と、マイク部によって集音した共振音に基づいて、ボルトに緩みが有ることを推定する推定部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
一態様によれば、ボルトに緩みが有ることの推定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係るボルトの緩み推定装置について説明するための図である。
【
図2】一実施形態に係る推定装置について説明するためのブロック図である。
【
図3】振動の周波数を時間に応じて徐々に変化させた場合の時間と音(共振音)の強度との関係の一例を示す図である。(A)は、ボルトに緩みが有る場合の時間と音(共振音)の強度との関係の一例を示す図、(B)は、ボルトに緩みが無い場合の時間と音(共振音)の強度との関係の一例を示す図である。
【
図4】振動の周波数と振動の強度との関係の一例を示す図である。(A)は、ボルトに緩みが有る場合の、振動(加振)の周波数と、振動(加振)の周波数を変化させつつ加振に応じてボルトが振動する際の振動の強度との関係の一例を示す図、(B)は、ボルト締めを有する母材を振動させる加振器において、振動(加振)の周波数と、振動の強度との関係の一例を示す図である。
【
図5】一実施形態に係るボルトの緩み推定方法について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態について説明する。
【0010】
[ボルトの緩み推定装置100の概要]
まず、一実施形態に係るボルトの緩み推定装置100の概要について説明する。
図1は、一実施形態に係るボルトの緩み推定装置100について説明するための図である。
【0011】
ボルトの緩み推定装置100は、例えば、ボルト締めのある構造物においてボルトの緩みを検査することが可能な検査装置等として構成されてもよい。ボルトの緩み推定装置100は、上述した一例の装置に限らず、種々の装置等を構成してもよい。
ボルトの緩み推定装置100は、例えば、情報処理装置として構成されてもよい。情報処理装置は、例えば、サーバ、デスクトップ、ラップトップ、タブレット及びスマートフォン等のコンピュータであってもよい。
以下では、「ボルトの緩み推定装置」を簡略化して「推定装置」と記載する場合がある。
【0012】
推定装置(情報処理装置)100は、振動の周波数を変更しつつ、ボルト締めを有する鋼材(母材)200を加振する。鋼材200は、鉄塔及び鋼橋等を始めとする種々の構造物に用いられる。したがって、推定部112は、鋼材200を用いた構造物を加振してもよい。ここで、推定装置100は、例えば、加振器、アクチュエータ及び振動子等を始めとする、鋼材200(構造物)に振動を加えることが可能な加振実行部121を制御することにより、鋼材200(構造物)に振動を加えてもよい。
【0013】
鋼材200に配されるボルトによるボルト締めに緩みが有る場合、鋼材200への加振に応じて、緩みの有るボルトが振動する(又は、共振する)ことが実験で分かっている。さらに、ボルトが振動(共振)する際には「ガチャガチャ」等の音(例えば、共振音等)が発生することが実験でわかっている。すなわち、実験により、緩みの有るボルト(締め付けトルクにより母材と締結されていないボルト)が共振する際の周波数によりボルトの固有振動が増幅され、金属がぶつかり合うような共鳴音が発生することが確認された。
【0014】
そこで、推定装置(情報処理装置)100は、鋼材200(構造物)の相対的に近くにマイク部122を配しておき、そのマイク部122で共振音を集音すると、その共振音に基づいてボルトに緩みが有ることを推定する。
すなわち、推定装置(情報処理装置)100は、構造物の脚元等に加振実行部121を設置し、加振する周波数を変動させながら緩んでいるボルトを共振させ、共鳴音の発生の有無を確認することで、緩んでいるボルトが構造物に存在するか否かを検査する。
【0015】
[推定装置100の詳細]
次に、一実施形態に係る推定装置100について詳細に説明する。
図2は、一実施形態に係る推定装置100について説明するためのブロック図である。
【0016】
推定装置100は、例えば、加振実行部121、マイク部122、通信部131、記憶部132、表示部133及び制御部110等を備える。通信部131、記憶部132及び表示部133は、出力部の一実施形態であってもよい。制御部110は、例えば、加振部111、推定部112及び出力制御部113等を備える。制御部110は、例えば、推定装置100の演算処理装置等によって構成されてもよい。制御部110(例えば、演算処理装置等)は、例えば、記憶部132等に記憶される各種プログラム等を適宜読み出して実行することにより、各部(例えば、加振部111、推定部112及び出力制御部113等)の機能を実現してもよい。
【0017】
加振実行部121は、例えば、鋼材(母材)(又は、構造物等)に振動を加えることが可能な装置である。加振実行部121は、例えば、加振器、アクチュエータ及び振動子等を始めとする種々の振動発生装置等であってもよい。加振実行部は、鋼材に加える振動の周波数を可変可能であってもよい。一例として、加振実行部は、振動の周波数を20Hz~20000Hzの間で変化させて、それぞれの周波数の振動を鋼材に加えることが可能であってもよい。
【0018】
マイク部122は、例えば、ボルトの緩みについての検査対象となる鋼材(母材)(又は構造物等)の周囲に配される。
マイク部122は、ボルトに緩みが有る場合に加振部111による加振に応じてボルトが共振する際の共振音を集音することができる。マイク部122は、例えば、1又は複数有ってもよい。また1つのマイク部122は、1又は複数のマイクロフォンを備えてもよい。
なお、マイク部122は、例えば、複数のマイク部122が異なる位置に配されるマイク群等であってもよい。この場合、マイク群(マイク部122)は、例えば、指向性を有するマイクロフォンを複数備えてもよい。なお、マイク群を構成する複数のマイク部122それぞれは、例えば、鋼材(又は、構造物等)の周囲の異なる位置に配されてもよい。一例として、マイク群を構成する複数のマイク部122それぞれは、鋼材(又は、構造物等)に対して三方又は四方等の周囲に配されてもよい。
また、マイク部122は、例えば、複数のマイクロフォンを備えるマイクアレイ等であってもよい。マイクアレイは、例えば、指向性を有する複数のマイクロフォンの集音方向を異なる方向に向けて配置した構成であってもよい。
【0019】
通信部131は、例えば、情報処理装置の外部にある装置(外部装置)(図示せず)等との間で種々の情報の送受信が可能な通信インターフェースである。
【0020】
記憶部132は、例えば、種々の情報及びプログラムを記憶してもよい。記憶部132の一例は、メモリ、ソリッドステートドライブ及びハードディスクドライブ等であってもよい。なお、記憶部132は、例えば、クラウド上にある記憶領域及びサーバ等であってもよい。
【0021】
表示部133は、例えば、種々の文字、記号及び画像等を表示することが可能なディスプレイである。
【0022】
加振部111は、例えば、加振実行部121を制御することにより、ボルト締めを有する鋼材等の母材(又は、構造物等)を加振してもよい。すなわち、加振部111は、ボルト締めを有する鋼材等の母材(又は、構造物等)に振動を加えるように加振実行部121を制御してもよい。
【0023】
この場合、加振部111は、振動の周波数を変更しつつ、ボルト締めを有する鋼材(母材)を加振してもよい。一例として、加振部111は、振動の周波数を20Hz~20000Hzの間で変更して、鋼材(母材)を加振してもよい。すなわち、加振部111は、例えば、加振実行部121によって生成する振動の周波数が20Hz~20000Hzの間で徐々に連続的又は段階的に変化するように、その加振実行部121を制御してもよい。換言すると、加振部111は、時間の経過に応じて振動の周波数が変化するように加振実行部121を制御してもよい。
なお、上述した周波数の範囲は一例であり、ボルト締めを有する材料(例えば、鋼材等)、ボルトの材料及び大きさ(サイズ)、並びに、構造物の種類及び大きさ(サイズ)等を始めとする種々のパラメータに応じて周波数の範囲が設定されてもよい。
【0024】
推定部112は、マイク部122によって集音した共振音に基づいて、ボルトに緩みが有ることを推定する。この場合、推定部112は、例えば、マイク部122によって共振音を集音した場合に、ボルトに緩みがあると推定してもよい。
【0025】
なお、マイク部122は、共振音のみではなく、周囲の環境の音(環境音)等を集音する場合がある。一方、ボルトに緩みが有る際のボルトの共振音は、おおよそ特定の周波数帯で発生することが実験により推定されている。一例として、ボルトの共振音の周波数は、環境音(例えば、風切り音等)の周波数よりも高いことが多い。
したがって、推定部112は、マイク部122で集音した音の周波数に基づいて共振音を特定し、その共振音が有る場合にボルトに緩みが有ると推定してもよい。
上述したように、加振部111は、例えば、鋼材(又は、構造物等)に加える振動の周波数を変更しつつ、その鋼材を加振するように加振実行部121を制御する。推定部112は、例えば、その一連の加振の際にマイク部122によって集音した音を取得し、ボルトの共振音が生じる際の周波数で鋼材を加振した際に、マイク部122で音(共振音)を取得した場合、ボルトに緩みが有ると推定してもよい。
この場合、推定部112は、例えば、音の強度に関する閾値を予め設定しておき、ボルトの共振音が生じる際の周波数で鋼材を加振した際に生じる音(マイク部122で取得した音)が閾値よりも大きければ、ボルトに緩みが有ると推定してもよい。
【0026】
図3は、振動の周波数を時間に応じて徐々に変化させた場合の時間と音(共振音)の強度との関係の一例を示す図である。
図3(A)は、ボルトに緩みが有る場合の時間と音(共振音)の強度との関係の一例を示す図である。
図3(B)は、ボルトに緩みが無い場合の時間と音(共振音)の強度との関係の一例を示す図である。
図3(A)及び
図3(B)にいて、横軸は時間を示し、縦軸は音の強度を示す。
【0027】
上述したように、ボルトの緩みに基づく共振音は、特定の周波数帯で出現する。なお、特定の周波数帯は、素材や緩みの度合いによって異なる場合がある。一方、ボルトに緩みが無い際には共振音が発生しない。
すなわち、ボルトに緩みが有る場合に、時間に応じて母材を加振する周波数を徐々に変化させると、マイク部122で集音される音の強度の一例は
図3(A)のようになる。一方、ボルトに緩みが無い場合に、時間に応じて母材を加振する周波数を徐々に変化させると、マイク部122で集音される音の強度の一例は
図3(B)のようになる。
図3(A)と
図3(B)の横軸(時間)は互いに対応し、同一の時間において同一の振動の周波数を示すものとする。
図3(A)と
図3(B)とを比較すると、A1とB1との関係、及び、A2とB2との関係において、音の強度に違いが出ている。
図3(A)と
図3(B)との関係から、緩みの有るボルトには、加振の際に特定の周波数で音の強度の違いが生じることが分かる。
【0028】
図4は、振動の周波数と振動の強度との関係の一例を示す図である。
図4(A)は、ボルトに緩みが有る場合の、振動(加振)の周波数と、振動(加振)の周波数を変化させつつ加振に応じてボルトが共振する際の振動の強度との関係の一例を示す図である。
図4(B)は、ボルト締めを有する母材を振動させる加振器において、振動(加振)の周波数と、振動の強度との関係の一例を示す図である。
図4(A)及び
図4(B)において、横軸は周波数を示し、縦軸は振動の強度を示す。なお、
図4(A)では、ボルトに振動計を配することにより、周波数に応じた振動の強度を得ている。
【0029】
図4(A)及び
図4(B)の横軸(周波数)は互いに対応する周波数を示す。
図4(A)及び
図4(B)を比較すると、CとDとの関係において、振動の強度に違いが出ている。
図4(A)と
図4(B)との関係から、緩みの有るボルトには、加振器による加振に応じて特定の周波数で加振器の振動の強度とは違いが出る(ボルトが共振する)ことが分かる。
【0030】
したがって、ボルトの緩みが有る場合に発生する共振音の周波数(又は、周波数帯)において、ボルトに緩みが有る際の共振音の強度と、ボルトの緩みが無い際の音の強度とでは、共振音の強度がボルトの緩みが無い際の音の強度よりも大きくなることが推定される。
よって、推定部112は、マイク部122で集音した音についての周波数に応じた音の強度と、ボルトに緩みがない鋼材を加振した際に生じる音についての周波数に応じた音の基準となる強度とに基づいて、ボルトに緩みが有ることを推定してもよい。具体的には、推定部112は、マイク部122で集音した音についての周波数に応じた音の強度と、その周波数と同一となる周波数に応じた基準となる強度とを比較し、マイク部122で集音した音の強度が基準となる強度よりも大きい場合に、ボルトに緩みが有ると推定してもよい。
【0031】
より具体的には、推定部112は、例えば、加振部111によって振動の周波数を変更しつつ、ボルトの緩みの推定対象となる鋼材(又は、構造物等)を加振するように加振実行部121を制御する際の、その一連の加振の際にマイク部122によって集音した音(対象音)を取得する。同様に、推定部112は、例えば、加振部111によって振動の周波数を変更しつつ、ボルトに緩みのない基準となる鋼材(又は、構造物等)を加振するように加振実行部121を制御する際の、その一連の加振の際にマイク部122によって集音した音(基準音)を予め取得する。推定部112は、例えば、ボルトに緩みが有る際に生じる共振音の周波数(又は、周波数帯)を基準にして対象音と基準音とを比較し、対象音の強度が基準音の強度よりも大きい場合に、ボルトに緩みが有ると推定してもよい。
【0032】
また上記とは異なり、推定部112は、学習済モデルと、マイク部122で集音した共振音とに基づいて、ボルトに緩みが有ることを推定してもよい。学習済モデルは、ボルトに緩みが有る場合に鋼材(母材)(又は、構造物等)を加振した際に生じる音(例えば、共振音等)と、ボルトに緩みが無い場合に鋼材(母材)(又は、構造物等)を加振した際の音との関係を学習したモデルであってもよい。この場合、学習済モデルは、例えば、振動の周波数(例えば、20Hz~20000Hzの間等)を変更しつつ鋼材(又は、構造物等)を加振した際に生じる音と、共振音(ボルトが緩んでいる際に生じる音)等の教師データ(正解ラベル)とを学習したモデル等であってもよい。
学習済モデルは、例えば、制御部110に配される学習部(図示せず)によって学習処理が行われることにより生成されてもよい。又は、学習済モデルは、例えば、推定装置100の外部に有る学習装置(図示せず)によって学習処理が行われることにより生成されてもよい。推定部112は、例えば、学習部又は学習装置から学習済モデルを取得してもよい。
推定部112は、例えば、上述した学習済モデルに、マイク部122で集音した音を入力し、その音に共振音が有るかの推定結果を出力してもよい。推定部112は、例えば、共振音が有ると推定する場合、ボルトに緩みが有ると推定してもよい。
【0033】
なお、推定部112は、例えば、複数のマイク部122が配される場合、複数のマイク部122のうち最も強度の大きい音を集音したマイク部122の付近に、緩みの有るボルトが位置する(又は、位置する領域がある等)と推定してもよい。この場合、マイク部122は、ボルト締めを有する鋼材(又は、構造部等)の周囲の異なる位置に複数配されてもよい。一例として、構造物が長尺構造物等の場合には、所定の長さ毎にマイク部122を配してもよい。また、推定部112は、マイク部122で集音される音(音情報)と、マイク部122を識別可能な識別情報と、マイク部122を配置した位置に関する位置情報とを対応付けた対応情報に基づいて、音の強度が最も強いマイク部122を識別して、そのマイク部122の位置を特定してもよい。
【0034】
又は、推定部112は、例えば、マイク部122が上述した複数のマイク部122から構成されるマイク群の場合、複数のマイク部122で取得される共振音の強度に基づいて、共振音が発生する位置(又は、領域等)を推定してもよい。すなわち、推定部112は、例えば、複数のマイク部122それぞれで集音される共振音の強度(音量)が相対的に高い位置(又は、方向等)を推定し、複数のマイク部122によって推定した位置(又は、方向等)を合成した交点付近、すなわち、共振音の強度が相対的に高い位置が集まる領域、又は、共振音が相対的に高い方向が重なる交点を含む位置(又は、領域等)に、緩みの有るボルトが位置すると推定してもよい。
【0035】
又は、推定部112は、例えば、マイク部122が上述したマイクアレイの場合、そのマイクアレイを構成する指向性を有する複数のマイクロフォンのうち、強度(音量)が最も高い共振音を集音したマイクロフォンを特定し、その特定したマイクロフォンの方向(指向性を有する方向)に、緩みの有るボルトが位置すると推定してもよい。
【0036】
また、振動の周波数(例えば、20Hz~20000Hz)を変更しつつ鋼材(又は、構造物等)を加振する場合、ボルトの共振音(ボルトが緩んでいる際に生じる音)は特定の1つの周波数のみで生じることはなく、可聴域(変更する周波数の範囲)で複数存在する場合が多い。推定部112は、周波数を変更する際に生じる複数の共振音のうち、マイク部122によって少なくとも1つの共振音を集音することにより、ボルトに緩みが有ると推定することが可能である。この場合、推定部112は、変更する周波数の範囲で少なくとも1回の共振音が集音できればボルトに緩みが有ると推定するので、ボルトの緩みを推定する際の精度を高めることができる。
【0037】
出力制御部113は、例えば、推定部112によって推定した結果を出力するよう出力部を制御してもよい。推定部112による推定結果の一例は、ボルトに緩みがあることの推定結果と、緩みの有るボルトの位置の推定結果とのグループのうち少なくとも1つの推定結果であってもよい。出力部は、例えば、通信部131、記憶部132及び表示部133等であってもよい。
一例として、出力制御部113は、推定部112の推定結果に関する情報を外部(外部装置(図示せず))に送信するよう通信部131を制御してもよい。外部装置は、例えば、推定装置(情報処理装置)100の外部にあるサーバ及び端末等であってもよい。
また一例として、出力制御部113は、推定部112の推定結果に関する情報を記憶するよう記憶部132を制御してもよい。
また一例として、出力制御部113は、推定部112の推定結果を表示するよう表示部133を制御してもよい。
【0038】
[ボルトの緩み推定方法(情報処理方法)]
次に、一実施形態に係るボルトの緩み推定方法(情報処理方法)について説明する。
図5は、一実施形態に係るボルトの緩み推定方法について説明するためのフローチャートである。
【0039】
ステップST101において、加振部111は、振動の周波数を変更しつつ母材(又は、構造物等)を加振する。母材は、例えば、ボルト締めの有る鋼材等であってもよい。一例として、加振部111は、振動の周波数を20Hz~20000Hzの間で変更して、母材(又は、構造物等)を加振してもよい。この場合、加振部111は、母材(又は、構造物等)に振動を加えるように加振実行部121を制御してもよい。
【0040】
ステップST102において、マイク部122は、音を集音する。この場合、マイク部122は、ボルトに緩みが有る場合に、ステップST101の加振に応じてボルトが共振する際の共振音を集音する。
【0041】
ステップST103において、推定部112は、ステップST102で集音した音(例えば、共振音等)に基づいて、ボルトに緩みが有ることを推定する。
この場合、推定部112は、ステップST102で集音した音の周波数に基づいて共振音を特定し、その共振音が有る場合にボルトに緩みが有ると推定してもよい。
また、推定部112は、ステップST102で集音した音についての周波数に応じた音の強度と、ボルトに緩みがない鋼材を加振した際に生じる音についての周波数に応じた音の基準となる強度とに基づいて、ボルトに緩みが有ることを推定してもよい。具体的には、推定部112は、ステップST102で集音した音についての周波数に応じた音の強度と、その周波数と同一となる周波数に応じた基準となる強度とを比較し、マイク部122で集音した音の強度が基準となる強度よりも大きい場合に、ボルトに緩みが有ると推定してもよい。
又は、推定部112は、学習済モデルと、ステップST102で集音した音とに基づいて、ボルトに緩みが有ることを推定してもよい。学習済モデルは、ボルトに緩みが有る場合に母材(又は、構造物等)を加振した際に生じる音(例えば、共振音等)と、ボルトに緩みが無い場合に母材(又は、構造物等)を加振した際の音とを学習したモデルであってもよい。
【0042】
なお一例として、出力制御部113は、ステップST103で推定した結果を出力するよう出力部を制御してもよい。出力部は、例えば、通信部131、記憶部132及び表示部133等であってもよい。
【0043】
上述した推定装置(情報処理装置)100の各部は、コンピュータの演算処理装置等の機能として実現されてもよい。すなわち、推定装置(情報処理装置)100の加振部111、推定部112及び出力制御部113(制御部110)は、コンピュータの演算処理装置等による加振機能、推定機能及び出力制御機能(制御機能)としてそれぞれ実現されてもよい。
推定プログラム(情報処理プログラム)は、上述した各機能をコンピュータに実現させることができる。推定プログラム(情報処理プログラム)は、例えば、メモリ、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ又は光ディスク等の、コンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体等に記録されていてもよい。記録媒体は、例えば、非一時的なコンピュータ可読媒体と言い換えてもよい。
また、上述したように、推定装置(情報処理装置)100の各部は、コンピュータの演算処理装置等で実現されてもよい。その演算処理装置等は、例えば、集積回路等によって構成される。このため、推定装置(情報処理装置)100の各部は、演算処理装置等を構成する回路として実現されてもよい。すなわち、推定装置(情報処理装置)100の加振部111、推定部112及び出力制御部113(制御部110)は、コンピュータの演算処理装置等を構成する加振回路、推定回路及び出力制御回路(制御回路)として実現されてもよい。
また、推定装置(情報処理装置)100の加振実行部121及びマイク部122、並びに、通信部131、記憶部132及び表示部133(出力部)は、例えば、演算処理装置等の機能を含む加振実行機能及びマイク機能、並びに、通信機能、記憶機能及び表示機能(出力機能)として実現されもよい。また、推定装置(情報処理装置)100の加振実行部121及びマイク部122、並びに、通信部131、記憶部132及び表示部133(出力部)は、例えば、集積回路等によって構成されることにより加振実行回路及びマイク回路、並びに、通信回路、記憶回路及び表示回路(出力回路)として実現されてもよい。また、推定装置(情報処理装置)100の加振実行部121及びマイク部122、並びに、通信部131、記憶部132及び表示部133(出力部)は、例えば、複数のデバイスによって構成されることにより加振実行部121装置及びマイク装置、並びに、通信装置、記憶装置及び表示装置(出力装置)として構成されてもよい。
【0044】
推定装置100は、上述した複数の各部のうち1又は任意の複数を組み合わせることが可能である。
本開示では、「情報」の文言を使用しているが、「情報」の文言は「データ」と言い換えることができ、「データ」の文言は「情報」と言い換えることができる。
【0045】
[変形例]
次に、上述した実施形態の変形例について説明する。
【0046】
(第1変形例)
上述した実施形態では、ボルト締めを有する鋼材を加振して、ボルトに緩みが有ることの推定を行う一例について説明した。しかしながら、本実施形態はこの一例に限定されず、種々の材料(一例として、プラスチック材、フッ素樹脂等の樹脂材等)にボルト締めが有る場合のそのボルトの緩みを推定してもよい。ボルト締めを有する材料は、母材と言い換えてもよい。
なお、ボルトは、共振音が生じうる材料のものであれば特に限定されず、鋼材、プラスチック材及び樹脂材等を始めとする種々の材料で形成されていてもよい。
【0047】
(第2変形例)
上述した実施形態では、推定装置100の制御部110(推定部112)は、マイク部122で集音した音(共振音)を取得する構成について説明したが、この一例に限定されることはない。
すなわち、推定装置100の制御部110は、例えば、音(音情報)を取得する取得部を備えてもよい。取得部は、演算処理装置の一機能として取得機能として構成されてもよく、又は、演算処理装置を構成する取得回路として構成されてもよい。
【0048】
取得部は、例えば、マイク部122で集音された音に関する音情報を取得してもよい。
【0049】
また、取得部は、例えば、通信部を介して、推定装置100の外部にある外部装置(例えば、サーバ及び飛翔体等)(図示せず)から音情報を取得してもよい。
サーバは、例えば、マイク部122で集音された音に関する音情報を取得して蓄積する。この場合、サーバは、マイク部122が配される位置又はマイク部122で音を集音した際の構造物等を識別可能な識別情報と、そのマイク部122で集音した際の音情報とを対応付けて蓄積してもよい。
飛翔体は、例えば、マイク部を備えるドローン等であり、ボルトの緩みの検査対象となる、母材(例えば、鋼材等)を備える構造物等の周囲を飛行してもよい。例えば、飛翔体にマイク部を搭載して母材(例えば、構造物等)の周囲を飛行させることにより、加振実行部の位置(加振点)から相対的に離れた位置にあるボルトであっても、そのボルトに緩みが有るかを推定することが可能になる。なお、上述した実施形態で複数のマイク部122を配する場合と同様に、複数の飛翔体を同一の母材(又は、構造物等)の周囲の異なる位置に飛行させてもよい。
推定装置100の取得部は、例えば、識別情報に基づいて、ボルトの緩みの検査対象となる構造物を特定し、その構造物に対応する音情報をサーバから取得してもよい。また、推定装置100の取得部は、例えば、飛翔体から送信される、マイク部で集音した音(音情報)を取得してもよい。
【0050】
また、取得部は、例えば、推定装置100に配されるインターフェース(図示せず)に、マイク部122で集音された音(音情報)が記録された外部メモリ(図示せず)等が挿入された場合、その外部メモリから音情報を取得してもよい。
【0051】
推定装置100の推定部112は、取得部によって取得された音(音情報)に基づいて共振音を特定し、その共振音が有る場合にボルトに緩みが有ると推定してもよい。
【0052】
(第3変形例)
また、推定部112は、例えば、識別情報を参照すること等により特定可能な同一の母材(又は、構造物等)について、時間的に異なるタイミング(例えば、時刻t1,t2…)で取得した複数の音情報を互いに比較し、相対的に新しい時刻(例えば、t2等)の音情報(音)についての周波数に応じた音の強度と、相対的に古い時刻(例えば、t1等)の音情報(音)についての周波数に応じた音の強度とに基づいて、ボルトに緩みが有ることを推定することとしてもよい。
すなわち、構造物等に有るボルトの緩みに関する検査は、例えば、所定のタイミング毎に行われる場合ある。また、ボルトの緩みは、より時間が経過することにより生じる場合がある。したがって、推定部112は、構造物等に有るボルトの緩みの検査を行う際に、例えば、時間的に最新の音(マイク部122で集音した音)と、時間的に過去の音(マイク部122で集音した音)とを比較し、互いに対応する周波数(周波数帯)(例えば、共振音が生じる周波数等)で、最新の音の強度が過去の音の強度よりも大きい場合に、ボルトに緩みが有ると推定してもよい。
【0053】
[本実施形態の態様及び効果]
次に、本実施形態の一態様及び各態様が奏する効果について説明する。なお、以下に記載する各態様は出願時の一例であり、本実施形態は以下に記載する態様に限定されることはない。すなわち、本実施形態は以下に記載する各態様に限定されることはなく、上述した各部を適宜組み合わせて実現されてもよい。また、下位の態様は、それよりも上位の態様のいずれでも引用できる場合がある。
また、以下に記載する効果は一例であり、各態様が奏する効果は以下に記載するものに限定されることはない。また、各態様は、例えば、以下に記載する少なくとも1つの効果を奏してもよい。
【0054】
(態様1)
一態様のボルトの緩み推定装置は、振動の周波数を変更しつつ、ボルト締めを有する鋼材を加振する加振部と、ボルトに緩みが有る場合に加振部による加振に応じてボルトが共振する際の共振音を集音可能なマイク部と、マイク部によって集音した共振音に基づいて、ボルトに緩みが有ることを推定する推定部と、を備える。
すなわち、推定装置は、鋼材等の母材を加振して、加振点から離れた位置にある、緩んでいるボルトが共振して発生する共振音を確認することにより、ボルトの緩みを判別する。
これにより、推定装置は、ボルトの緩みが有ることの推定を行うことができる。
また、鋼材を含む構造物においてボルトの緩みを推定する場合であっても、構造物の周囲(例えば、地上等)からボルトの緩みの推定を行うことができる。すなわち、構造物が鉄塔等であってもその鉄塔に作業員が登ることなくボルトの緩みを推定することができる。したがって、推定装置は、推定作業を行う作業員の転落事故等を防ぐことができ、作業員の安全を確保することができる。
【0055】
(態様2)
一態様のボルトの緩み推定装置では、推定部は、マイク部で集音した音の周波数に基づいて共振音を特定し、その共振音が有る場合にボルトに緩みが有ると推定することとしてもよい。
ボルトに緩みが有る際に生じる共振音は、特定の周波数(又は、周波数帯)で生じると考えられる。推定装置は、鋼材を加振する際の周波数を変更して、上述した特定の周波数(又は、周波数帯)で音が生じる場合にはその音を共振音と推定する。したがって、推定装置は、共振音が有ると推定される場合には、ボルトに緩みが有ると推定することができる。
【0056】
(態様3)
一態様のボルトの緩み推定装置では、推定部は、マイク部で集音した音についての周波数に応じた音の強度と、ボルトに緩みがない鋼材を加振した際に生じる音についての周波数に応じた音の基準となる強度とに基づいて、ボルトに緩みが有ることを推定することとしてもよい。
すなわち、推定装置は、ボルトの緩みに基づいて共振音が生じる際に、母材で正常に締まっているボルトと、緩みが生じたボルトと比較して、ボルトの音の強度及び周波数に差異が有ることに着目してボルトの緩みを判別する。
上述したように、ボルトに緩みが有る際に生じる共振音は、特定の周波数(又は、周波数帯)になると考えられる。したがって、推定装置は、その特定の周波数において、マイク部で集音した音の強度と、ボルトに緩みが無い母材に基づく基準となる音の強度(基準強度)とを比較し、マイク部で集音した音の強度が基準強度よりも大きいかを判定する。推定装置は、マイク部で集音した音の強度が基準強度よりも大きければ、ボルトに緩みが有ると推定することができる。
【0057】
(態様4)
一態様のボルトの緩み推定装置では、推定部は、マイク部で集音した音についての周波数に応じた音の強度と、その周波数と同一となる周波数に応じた基準となる強度とを比較し、マイク部で集音した音の強度が基準となる強度よりも大きい場合に、ボルトに緩みが有ると推定することとしてもよい。
推定装置は、ボルトに緩みが有る際に生じる共振音の周波数(又は、周波数帯)を基準に、マイク部で集音した音の強度が基準強度よりも大きければ、ボルトに緩みが有ると推定することができる。
【0058】
(態様5)
一態様のボルトの緩み推定装置では、推定部は、ボルトに緩みが有る場合に鋼材を加振した際に生じる音と、ボルトに緩みが無い場合に鋼材を加振した際の音とを学習した学習済モデルと、マイク部で集音した共振音とに基づいて、ボルトに緩みが有ることを推定することとしてもよい。
推定装置は、マイク部で集音した音を学習済モデルに入力し、共振音が有ることの推定を行う。推定装置は、共振音が有ると推定される場合に、ボルトに緩みが有ると推定することができる。
【0059】
(態様6)
一態様のボルトの緩み推定装置では、加振部は、振動の周波数を20Hz~20000Hzの間で変更して、鋼材を加振することとしてもよい。
ボルトに緩みが有る場合、振動の周波数が20Hz~20000Hzの間のいずれかでそのボルトが共振すると考えられる。したがって、推定装置は、ボルトに緩みが有ることの推定を行うことができる。
【0060】
(態様7)
一態様のボルトの緩み推定方法は、加振部によって、振動の周波数を変更しつつ、ボルト締めを有する鋼材を加振する加振ステップと、マイク部によって、ボルトに緩みが有る場合に加振部による加振に応じてボルトが共振する際の共振音を集音する集音ステップと、推定部によって、マイク部によって集音した共振音に基づいて、ボルトに緩みが有ることを推定する推定ステップと、を実行する。
これにより、ボルトの緩み推定方法は、上述した一態様のボルトの緩み推定装置と同様の効果を奏することができる。
【0061】
(態様8)
一態様のボルトの緩み推定プログラムは、マイク部で集音した音を受け付けるコンピュータに、振動の周波数を変更しつつ、ボルト締めを有する鋼材を加振する加振機能と、ボルトに緩みが有る場合に加振機能による加振に応じてボルトが共振する際の共振音をマイク部によって集音した際のその共振音に基づいて、ボルトに緩みが有ることを推定する推定機能と、を実現させる。
これにより、ボルトの緩み推定プログラムは、上述した一態様のボルトの緩み推定装置と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0062】
100 ボルトの緩み推定装置(情報処理装置)
110 制御部
111 加振部
112 推定部
113 出力制御部
121 加振実行部
122 マイク部
131 通信部
132 記憶部
133 表示部
200 鋼材(母材)