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特許7488866油脂組成物、その用途及び油脂組成物を含有する食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】油脂組成物、その用途及び油脂組成物を含有する食品
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20240515BHJP
   A23G 1/38 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
A23D9/00 500
A23G1/38
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022161589
(22)【出願日】2022-10-06
(62)【分割の表示】P 2020535516の分割
【原出願日】2018-12-24
(65)【公開番号】P2022185090
(43)【公開日】2022-12-13
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】201711430246.2
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514297958
【氏名又は名称】▲豊▼益(上海)生物技▲術▼研▲発▼中心有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 翔
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ 妍
(72)【発明者】
【氏名】池 永清
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06123979(US,A)
【文献】特開昭63-240745(JP,A)
【文献】日本結晶学会誌,2014年,vol.56, no.5,pp.319-322
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 7/00-9/06
A23G 1/00-1/56
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の総量で、50~99.5質量%のトリグリセリドと0.5~50質量%のワックスを含有するが、種晶を含まない油脂組成物であって、ここで、
前記トリグリセリドは、下記の一般式(1)
【化1】
(式中、
、RとRは、それぞれに同じまたは異なり、R、RとRは、炭素数12~28の直鎖または分岐に由来する飽和または不飽和的脂肪酸基を表し、
、RとRのうちの少なくとも一つは、炭素数12~28の直鎖または分岐に由来する飽和または不飽和的脂肪酸基を表し;
前記トリグリセリドにおいて、R、RとRの総炭素数が52~60である脂肪酸由来基の含有量は、5~23質量%であり、
前記トリグリセリドにおいて、R、RとRの総炭素数が62である脂肪酸由来基の含有量は、少なくとも65質量%であり、
前記トリグリセリドにおいて、R、RとRの総炭素数が64である脂肪酸由来基及びR、RとRの総炭素数が66である脂肪酸由来基の含有量は、5質量%未満である)で示され;
前記ワックスが、ワックスエステル(Wes)/アルカン(HCs)の重量比で、1以上であり、及び、前記アルカンの炭素数は15~27であり、
重量の比で、前記ワックスが、脂肪酸(FAs)と脂肪アルコール(FALs)の総量が15質量%未満であり、
前記ワックスは、ぬかワックス、ひまわりワックス、蜜蝋、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ナッツワックス、フルーツワックスから選択される少なくとも一つであり、かつ、
前記トリグリセリドは、米油、ひまわり種子油、菜油、パーム油、パーム核油、落花生油、菜種油、大豆油、綿実油、ベニバナ種子油、しその実油、チャ実油、オリーブ油、カカオ豆油、ナンキンハゼ実オイル、へんとう油、アーモンドオイル、桐油、ゴム種子油、コーン油、小麦胚芽油、ごま油、ひまし油、月見草種子油、ヘーゼルナッツオイル、かぼちゃの種油、クルミ油、グレープシードオイル、ルリチシャ油、シーバックソーン種子油、トマト種子油、マカダミア油、ヤシ油、ココアバターまたは藻油から由来する少なくとも一つである
油脂組成物。
【請求項2】
組成物の総量で、55~95質量%のトリグリセリドを含有し、および/または、上記組成物の総量で、5~45質量%のワックスを含有し、および/または、前記ワックスは、天然ワックス、半合成ワックスまたは合成ワックスの少なくとも一つである、請求項1に記載された組成物。
【請求項3】
重量の比で、ワックスのワックスエステル(Wes)/アルカン(HCs)が1~30であり、重量の比で、前記ワックスの脂肪酸(FAs)と脂肪アルコール(FALs)の総量が10質量%未満である、請求項1に記載された組成物。
【請求項4】
式(1)中、Rは、炭素数12~28の直鎖または分岐に由来する不飽和脂肪酸基を表し、RとRは、それぞれに独立に炭素数12~28の直鎖または分岐に由来する飽和脂肪酸基を表し、および/または、
式(1)中、R、RとRの総炭素数の和は、36~84であり、および/または、一般式(1)中、R、RとRの総炭素数の和は、52~68であり、および/または、一般式(1)中、R、RとRの総炭素数の和は、62であり、および/または、トリグリセリドの総量で、前記トリグリセリドにおいて、炭素数22の飽和脂肪酸に由来する基の含有量は、55~72質量%であり、
および/または、トリグリセリドの総量で、前記トリグリセリドにおいて、ジグリセリドの含有量は、10質量%未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
トリグリセリドの総量で、前記トリグリセリドにおいて、R、RとRの総炭素数の和は62である脂肪酸由来基の含有量は、70~88質量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
式(1)中、Rは、オレイン酸に由来する基であり、R及びRは、それぞれに独立に、ベヘン酸に由来する基である、請求項1に記載された組成物。
【請求項7】
トリグリセリドが、化学的トランスエステル化または酵素的トランスエステル化であるトランスエステル化工程を含む方法で得られたものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物を含有する、食品。
【請求項9】
食品総量100質量部に対して、組成物は、0.01~15質量部であり、および/または、前記食品は、ココアバターおよび/またはココアバターのようなもの、および/またはココアバター代用脂を含有する食品であり、又はチョコレートまたはチョコレートを含有する食品であり、および/または、前記食品総量100質量部に対して、さらにココアバターおよび/またはココアバターのようなものおよび/またはココアバター代用脂30~50質量部を含有し、および/または、
前記食品総量100質量部に対して、さらにココアパウダー10~20質量部、糖30~50質量部、リン脂質0.1~5質量部を含有する、請求項8の食品。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一つに記載された組成物の、食品の製造における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂組成物、上記の油脂組成物を含有する食品、及び上記の油脂組成物の用途に関わる。
【背景技術】
【0002】
チョコレート生産には、テンパリングは、良質のチョコレートを得るのに重要な役割を果たし、チョコレートの光沢、脆さ、生地、熱感度、霜付けなどの品質に影響する。チョコレートのテンパリングとは、温度変化と機械処理で、後の冷却・凝固にココアバターを安定な結晶形で早く結晶化できるように、チョコレートにおけるココアバターを、適当な時間に適当な数と大小を有する安定な結晶形(V型の結晶)に形成することである。工業界のチョコレートテンパリングは複雑で高価なプロセスであり、製造コストが増加する。
【0003】
テンパリングの最終的な目標は、高品質のチョコレートを得るために安定した結晶を製造することである。テンパリングにおける種晶の添加は、安定した結晶の産生を加速し、チョコレートの離型性、耐霜性及び光沢を改善し、テンパリングを簡素化できる。現在、採用された種晶は、ココアバター種晶とトリグリセリド種晶に分け、前者は、V、VI結晶形のココアバターを指し、後者は、主にβ2とβ1型StOSt(1,3位はステアリン酸残基で、2位はオレイン酸残基であるトリグリセリド)とBOB(1,3位はベヘン酸残基で、2位はオレイン酸残基であるトリグリセリド)を指す。非特許文献1では、種晶がカカオバターとチョコレートの結晶化と品質に及ぼす影響を研究した。VI型カカオバター、β1型StOStとβ2型BOBの添加は、V型結晶形のカカオバターとチョコレートの凝固を促進し、離型性と耐霜性を改善でき、ただし、β2型BOBが最も効果的である。Pseudo-β’型BOBが、離型性を向上できるが、耐霜性を向上できない。β型StStSt(1,2,3位はステアリン酸残基であるトリグリセリド)が、離型性と耐霜性のいずれも改善できない。BOBのβ2が、カカオバターをV型に結晶化することを促進でき、それを種晶とし、チョコレートテンパリングに応用する場合、チョコレートの離型性と耐霜性を大幅に向上でき、チョコレートテンパリングを簡素化し、ないし省略できる。(非特許文献1)。特許文献1では、ベヘン酸が豊富なトリグリセリドを製造する方法を記載し、このトリグリセリドは必要なBOB含有量が少なく、主にβ’結晶形であって、チョコレート用油脂ではなく、食品分野に応用されることを目標とする。特許文献2(中国特許出願番号CN1987107818)は、チョコレート添加剤及び当該添加剤で生産されたチョコレートを開示した。当該添加剤は、主にSUSからなる粉末状の安定した結晶型顆粒を含み、ただし、SUSの不飽和脂肪酸部分は、18個以上の炭素原子を有し、飽和脂肪酸部分は、20~24個炭素原子を有する。特許文献2によると、記載された添加剤が、効果的にチョコレート生産における温度調節処理過程を省略または簡素化でき、かつ効果的に熱安定なチョコレートも得られる。特許文献3(CN95107742.2)が、軟化点は15~30℃であるチョコレートを提供し、ただし、当該チョコレートの脂肪成分は、少なくとも40%(重量)のSUS豊富な脂肪を含み、記載されたグリセリドにおける主な飽和脂肪酸部分は、16~18個炭素原子を有する;なお、炭素原子20~24のSUS(1,3位は、炭素数14以上の飽和脂肪酸残基で、2位は、炭素数16以上の飽和脂肪酸残基であるトリグリセリド)安定型結晶も含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許US5654018号
【文献】日本特開昭63-240745
【文献】JP254503/1994
【非特許文献】
【0005】
【文献】Iwao Hachiya, Tetsuo Koyano and Kiyotaka Sato. ココアバターとダークチョコレートの凝固挙動に及ぼす種晶添加効果。II.ダークチョコレートの物理的性質(Seeding effects on solidification behavior of cocoa butter and dark chocolate.II.physical properties of dark chocolate)[J].JAOCS,1989,66(12):1763-1770
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
種晶をチョコレートテンパリングに添加する方式は、チョコレート加工技術の最適化とチョコレート製品品質の向上には、非常に重要なことである。従来の種晶(例えばココアバターのVとIV結晶形、SOSのβ2とβ1型及びBOBのβ2結晶形の種晶)を検討した結果は、それらの種晶が、特別な結晶形で製造する必要があり、貯蔵と添加(例えばプロセス温度、粒子径と分散)などのプロセスの条件も厳しいから、チョコレートを製造する際のテンパリングを省略できるが、種晶を生産と使用するためのプロセスは複雑であるので、チョコレートの製造プロセスを簡素化し、チョコレート製品の品質を向上するように、より効果的な種晶とその使用方法を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が、特定の結晶形を有する種晶を必要とせず、特定の油脂とワックスを、特定の比で混合するだけでよく、テンパリングを省略でき、操作が簡単な組成物を提供する。当該組成物が食品(例えば温度調節されたチョコレート)における応用も提供し、得られた製品(例えばチョコレート製品)は、優れた霜付け抗性と離型性を有する。本発明が、上記の組成物の総量で、50~99.5質量%のトリグリセリドと0.5~50質量%のワックスを含有することを特徴とする油脂組成物を提供し、上記のトリグリセリドは、下記の一般式(1)
【0008】
【化1】
(式(1)中、R、RとRは、それぞれに同じまたは異なり、R、RとRは、炭素数12~28の直鎖または分岐に由来する飽和または不飽和的脂肪酸基を表し、ただし、R、RとRのうちの少なくとも一つは、炭素数12~28の直鎖または分岐に由来する飽和または不飽和的脂肪酸基を表す)
で示される。
【0009】
本発明の組成物は、上記の組成物の総量で、55~95質量%のトリグリセリドを含有する。
【0010】
本発明の組成物は、上記の組成物の総量で、60~90質量%のトリグリセリドを含有する。
【0011】
本発明の組成物は、上記の組成物の総量で、5~45質量%のワックスを含有する。
【0012】
本発明の組成物は、上記の組成物の総量で、10~40質量%のワックスを含有する。
【0013】
本発明の組成物は、上記のワックスは、天然ワックス、半合成ワックスまたは合成ワックスの少なくとも一つである。
【0014】
本発明の組成物は、上記の天然ワックスは、動物ワックスまたは植物ワックスである;合成ワックスは、化学法または酵素法で合成されたワックスエステルである。
【0015】
本発明の組成物は、上記のワックスは、ぬかワックス、ひまわりワックス、蜜蝋とキャンデリラワックス、カルナウバワックス、ナッツワックス、フルーツワックスから選択される少なくとも一つである。
【0016】
本発明の組成物は、重量の比で、上記のワックスは、ワックスエステル(Wes)/アルカン(HCs)≧1、上記のアルカンの炭素数は、15~27であることを満足する。
【0017】
本発明の組成物は、重量の比で、上記のワックスは、ワックスエステル(Wes)/アルカン(HCs)が1より大きいことを満足する。
【0018】
本発明の組成物は、重量の比で、上記のワックスが、ワックスエステル(Wes)/アルカン(HCs)は1~30であることを満足する。
【0019】
本発明の組成物は、重量の比で、上記のワックスが、ワックスエステル(Wes)/アルカン(HCs)は2~28であることを満足する。
【0020】
本発明の組成物は、重量の比で、上記のワックスが、脂肪酸(FAs)と脂肪アルコール(FALs)の総量は15質量%より少ないことを満足する。
【0021】
本発明の組成物は、重量の比で、上記のワックスが、脂肪酸(FAs)と脂肪アルコール(FALs)の総量は10質量%より少ないことを満足する。
【0022】
本発明の組成物は、重量の比で、上記のワックスが、脂肪酸(FAs)と脂肪アルコール(FALs)の総量は7質量%より少ないことを満足する。
【0023】
本発明の組成物は、一般式(1)中、Rは、炭素数12~28の直鎖または分岐に由来する不飽和脂肪酸基を表し、RとRは、それぞれに独立に炭素数12~28の直鎖または分岐に由来する飽和脂肪酸基を表す。
【0024】
本発明の組成物は、一般式(1)中、Rは、炭素数16~20の直鎖に由来する不飽和脂肪酸基を表し、RとRは、それぞれに独立に、炭素数18~24の直鎖に由来する飽和脂肪酸基を表す。
【0025】
本発明の組成物は、一般式(1)中、R、RとRの総炭素数の和は、36~84である。
【0026】
本発明の組成物は、一般式(1)中、R、RとRの総炭素数の和は、52~68である。
【0027】
本発明の組成物は、一般式(1)中、R、RとRの総炭素数の和は、62である。
【0028】
本発明の組成物は、トリグリセリドの総量で、上記のトリグリセリドにおいて、R、RとRの総炭素数の和は62である脂肪酸由来基の含有量は、65質量%以上である。
【0029】
本発明の組成物は、トリグリセリドの総量で、上記のトリグリセリドにおいて、R、RとRの総炭素数の和は62である脂肪酸由来基の含有量は、68~95質量%である。
【0030】
本発明の組成物は、トリグリセリドの総量で、上記のトリグリセリドにおいて、R、RとRの総炭素数の和は62である脂肪酸由来基の含有量は、70~88質量%である。
【0031】
本発明の組成物は、トリグリセリドの総量で、上記のトリグリセリドにおいて、R、RとRの総炭素数の和は52~60である脂肪酸由来基の含有量は、0~25質量%である。
【0032】
本発明の組成物は、トリグリセリドの総量で、上記のトリグリセリドにおいて、R、RとRの総炭素数の和は52~60である脂肪酸由来基の含有量は、5~23質量%である。
【0033】
本発明の組成物は、トリグリセリドの総量で、上記のトリグリセリドにおいて、R、RとRの総炭素数の和は64である脂肪酸由来基と、R、RとRの総炭素数の和は66である脂肪酸由来基の総含有量は、5質量%より少ない。
【0034】
本発明の組成物は、トリグリセリドの総量で、上記のトリグリセリドにおいて、R、RとRの総炭素数の和は64である脂肪酸由来基と、R、RとRの総炭素数の和は66である脂肪酸由来基の総含有量は、4.5質量%より少ない。
【0035】
本発明の組成物は、トリグリセリドの総量で、上記のトリグリセリドにおいて、炭素数22の飽和脂肪酸に由来する基の含有量は、55~72質量%である。
【0036】
本発明の組成物は、トリグリセリドの総量で、上記のトリグリセリドにおいて、炭素数22の飽和脂肪酸に由来する基の含有量は、60~70質量%である。
【0037】
本発明の組成物は、トリグリセリドの総量で、上記のトリグリセリドにおいて、ジグリセリドの含有量は、10質量%より少ない。
【0038】
本発明の組成物は、トリグリセリドの総量で、上記のトリグリセリドにおいて、ジグリセリドの含有量は、5質量%より少ない。
【0039】
本発明の組成物は、一般式(1)中、Rは、オレイン酸に由来する基を表し、RとRは、それぞれに独立にベヘン酸に由来する基を表す。
【0040】
本発明の組成物は、上記のトリグリセリドは、エステル交換ステップを含む方法で得られる。
【0041】
本発明の組成物は、上記のエステル交換は、化学法エステル交換または酵素法エステル交換である。
【0042】
本発明の組成物は、上記のエステル交換ステップは、トリグリセリドと脂肪酸またはその誘導体を、固定化リパーゼの存在で行うものである。
【0043】
本発明の組成物は、上記の方法は、分子蒸留ステップも含み、上記の分子蒸留ステップは、エステル交換ステップの前またはエステル交換ステップの後に行われる。
【0044】
本発明の組成物は、上記の方法は、分別ステップも含み、上記の分別ステップは、乾式分別ステップまたは溶剤分別ステップから選択される。
【0045】
本発明の組成物は、上記の方法は、精錬ステップも含む。
【0046】
本発明の組成物は、上記の脂肪酸は、炭素数12~28の直鎖の飽和脂肪酸から選択される少なくとも一つである。
【0047】
本発明の組成物は、上記の脂肪酸誘導体は、炭素数12~28の直鎖の飽和脂肪酸と炭素数1~6のアルコールのエステルから選択される少なくとも一つである。
【0048】
本発明の組成物は、上記の脂肪酸またはその誘導体は、ベヘン酸、メチルベヘン酸またはエチルベヘン酸のうちの少なくとも一つである。
【0049】
本発明の組成物は、上記のトリグリセリドは、植物に由来するもの、動物に由来するもの、または植物または動物に由来する油脂を変性して得られるものである。
【0050】
本発明の組成物は、上記のトリグリセリドは、米油、ひまわり種子油、菜油、パーム油、パーム核油、落花生油、菜種油、大豆油、綿実油、ベニバナ種子油、しその実油、チャ実油、オリーブ油、カカオ豆油、ナンキンハゼ実オイル、へんとう油、アーモンドオイル、桐油、ゴム種子油、コーン油、小麦胚芽油、ごま油、ひまし油、月見草種子油、ヘーゼルナッツオイル、かぼちゃの種油、クルミ油、グレープシードオイル、ルリチシャ油、シーバックソーン種子油、トマト種子油、マカダミア油、ヤシ油、ココアバターまたは藻油に由来する少なくとも一つである。
【0051】
本発明の組成物は、上記のトリグリセリドが、高オレイン酸油脂に由来する。
【0052】
本発明の組成物は、上記の高オレイン酸油脂は、高オレイン酸ひまわり種子油、高オレイン酸菜種油、または高オレイン酸パーム油から選択される少なくとも一つである。
【0053】
本発明の組成物は、上記のトリグリセリドが、深海魚油に由来する。
【0054】
本発明の組成物は、上記のトリグリセリドが、鮭油またはいわし油に由来する少なくとも一つである。
【0055】
本発明の組成物は、上記の組成物は、50~99.5質量%のトリグリセリドと0.5~50質量%のワックスからなるものである。
【0056】
本発明が、上記の本発明の組成物を含有する食品を提供する。
【0057】
本発明の食品は、食品総量100質量部に対して、上記の組成物は、0.01~15質量部である。
【0058】
本発明の食品は、食品総量100質量部に対して、上記の組成物は、0.05~10質量部である。
【0059】
本発明の食品は、食品総量100質量部に対して、上記の組成物は、0.1~5質量部である。
【0060】
本発明の食品は、上記の食品は、ココアバターおよび/またはココアバターのようなものを含有する食品である。
【0061】
本発明の食品は、食品総量100質量部に対して、ココアバターおよび/またはココアバターのようなものを30~50質量部も含有する。
【0062】
本発明の食品は、食品総量100質量部に対して、ココアパウダー10~20質量部、糖30~50質量部、リン脂質0.1~5質量部も含有する。
【0063】
本発明の食品は、上記の食品は、チョコレートまたはチョコレートを含有する食品である。
【0064】
本発明の食品は、食品におけるココアバターおよび/またはココアバターのようなもの総量100質量部に対して、上記の組成物0.01~15質量部を含有する。
【0065】
本発明の食品は、食品におけるココアバターおよび/またはココアバターのようなもの総量100質量部に対して、上記の組成物0.05~10質量部を含有する。
【0066】
本発明の食品は、食品におけるココアバターおよび/またはココアバターのようなもの総量100質量部に対して、上記の組成物0.1~5質量部を含有する。
【0067】
本発明の組成物は、食品の製造における使用も提供する。
【0068】
本発明の用途は、上記の食品は、チョコレートまたはチョコレートを含有する食品である。
【発明の効果】
【0069】
本発明の組成物は、特定の結晶形を有する種晶を必要とせず、特定の油脂とワックスを、特定の比で混合するだけでよく、テンパリングを省略でき、操作が簡単な組成物である。当該組成物を食品(例えば温度調節されたチョコレート)に応用することより、得られた製品(例えばチョコレート製品)は、優れた霜付け抗性と離型性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0070】
油脂組成物
組成物の総量で、50~99.5質量%のトリグリセリドと0.5~50質量%のワックスを含有することを特徴とする本発明の油脂組成物であって、上記のトリグリセリドは、下記の一般式(1)
【0071】
【化1】
(式(1)中、R、RとRは、それぞれに同じまたは異なり、R、RとRは、炭素数12~28の直鎖または分岐に由来する飽和または不飽和的脂肪酸基を表し、ただし、R、RとRのうちの少なくとも一つは、炭素数12~28の直鎖または分岐に由来する飽和または不飽和的脂肪酸基を表す)
で示される。
【0072】
炭素数12~28の直鎖または分岐に由来する飽和または不飽和的脂肪酸基として、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコサトリエン酸、オクタデカテトラエン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ベヘン酸、テトラコサン酸などに由来する基が挙げられる。
【0073】
本発明において、上記の脂肪酸由来基とは、脂肪酸から水酸基を除去して得る残基を指す。
【0074】
本発明の好ましい実施形態において、一般式(1)中、Rは、炭素数12~28の直鎖または分岐に由来する不飽和脂肪酸基を表し、RとRは、それぞれに独立に炭素数12~28の直鎖または分岐に由来する飽和脂肪酸基を表す。
【0075】
本発明の好ましい実施形態において、一般式(1)中、Rは、炭素数16~20の直鎖に由来する不飽和脂肪酸基を表し、RとRは、それぞれに独立に、炭素数18~24の直鎖に由来する飽和脂肪酸基を表す。
【0076】
本発明の具体的な実施形態において、一般式(1)中、Rは、オレイン酸に由来する基を表し、RとRは、それぞれに独立にベヘン酸に由来する基を表す。この際に、一般式(1)がBOB油脂を表し、ただし、Oが、オレイン酸を表し、Bがベヘン酸を表す。
【0077】
本発明の組成物において、上記の組成物の総量で、55~95質量%のトリグリセリドを含有し、好ましくは、上記の組成物の総量で、60~90質量%のトリグリセリドを含有する。本発明の具体的な実施形態において、上記の組成物の総量で、60質量%、70質量%、75質量%、80質量%のトリグリセリドを含有する。
【0078】
上記のワックスは、天然ワックス、半合成ワックスまたは合成ワックスの少なくとも一つである。上記の天然ワックスは、動物ワックスまたは植物ワックスである;合成ワックスは、化学法または酵素法で合成されたワックスエステルである。上記の植物ワックスは、ぬかワックス、ひまわりワックス、蜜蝋とキャンデリラワックス、カルナウバワックス、ナッツワックス、フルーツワックスから選択される少なくとも一つである。
【0079】
本発明の組成物において、上記の組成物の総量で、5~45質量%のワックスを含有し、好ましくは、上記の組成物の総量で、10~40質量%のワックスを含有する。本発明の具体的な実施形態において、上記の組成物の総量で、20質量%、25質量%、30質量%、40質量%のワックスを含有する。
【0080】
上記のワックスが、ワックスエステル(Wes)/アルカン(HCs)≧1(重量の比で)を満足し、好ましくは、重量の比で、上記のワックスが、ワックスエステル(Wes)/アルカン(HCs)が1を超えることを満足し、より好ましくは、重量の比で、上記のワックスが、ワックスエステル(Wes)/アルカン(HCs)が1~30にあることを満足し、特に好ましくは、重量の比で、上記のワックスが、ワックスエステル(Wes)/アルカン(HCs)が2~28にあることを満足する。本発明の具体的な実施形態において、重量の比で、上記のワックスが、ワックスエステル(Wes)/アルカン(HCs)は、2.6、3.1、5.5、25.2であることを満足する。上記のアルカンの炭素数は、15~27である。
【0081】
ワックスエステルは、長鎖の高級脂肪酸と高級脂肪アルコールとを形成してなるエステルであり、高級脂肪酸は、14-26個の炭素原子を有する脂肪酸残基であり、高級脂肪アルコールは、18-38個の炭素原子を有する脂肪アルコール残基である。
【0082】
ワックスエステルは、天然ワックス、半合成ワックスまたは合成ワックスであってよい;天然ワックスは、動物ワックスまたは植物ワックスである;合成ワックスは、化学法または酵素法で合成されたワックスエステルである;及び上記の二つ以上の混合物でもよい。
【0083】
上記のワックスが、脂肪酸(FAs)と脂肪アルコール(FALs)の総量が15質量%(重量の比で)未満であることを満足し、好ましくは、重量の比で、上記のワックスが、脂肪酸(FAs)と脂肪アルコール(FALs)の総量が10質量%未満であることを満足し、より好ましくは、重量の比で、上記のワックスが、脂肪酸(FAs)と脂肪アルコール(FALs)の総量が7質量%を未満であることを満足する。本発明の具体的な実施形態において、重量の比で、上記のワックスが、脂肪酸(FAs)と脂肪アルコール(FALs)の総量は、3.1、4.4、6.0、6.4であることを満足する。
【0084】
本発明の一つの実施形態において、本発明の組成物は、50~99.5質量%のトリグリセリドと0.5~50質量%のワックスからなるものである。
【0085】
一般式(1)中、R、RとRの総炭素数の和は、36~84であり、好ましくは、一般式(1)中、R、RとRの総炭素数の和は、52~68である。本発明の具体的な実施形態において、一般式(1)中、R、RとRの総炭素数の和は、62である。
【0086】
トリグリセリドの総量で、上記のトリグリセリドにおいて、R、RとRの総炭素数の和は62である脂肪酸由来基の含有量は、65質量%以上であり、好ましくは、トリグリセリドの総量で、上記のトリグリセリドにおいて、R、RとRの総炭素数の和は62である脂肪酸由来基の含有量は、68~95質量%であり、より好ましくは、トリグリセリドの総量で、上記のトリグリセリドにおいて、R、RとRの総炭素数の和は62である脂肪酸由来基の含有量は、70~88質量%である。本発明の具体的な実施形態において、トリグリセリドの総量で、上記のトリグリセリドにおいて、R、RとRの総炭素数の和は62である脂肪酸由来基の含有量は、70.9質量%、82.3質量%、83.3質量%、85.1質量%である。
【0087】
トリグリセリドの総量で、上記のトリグリセリドにおいて、R、RとRの総炭素数の和は52~60である脂肪酸由来基の含有量は、0~25質量%であり、好ましくは、トリグリセリドの総量で、上記のトリグリセリドにおいて、R、RとRの総炭素数の和は52~60である脂肪酸由来基の含有量は、5~23質量%である。本発明の具体的な実施形態において、トリグリセリドの総量で、上記のトリグリセリドにおいて、R、RとRの総炭素数の和は52~60である脂肪酸由来基の含有量は、8.2質量%、9.7質量%、13.4質量%、22.8質量%である。
【0088】
トリグリセリドの総量で、上記のトリグリセリドにおいて、R、RとRの総炭素数の和は64である脂肪酸由来基とR、RとRの総炭素数の和は66である脂肪酸由来基の総含有量が、5質量%未満であり、好ましくは、トリグリセリドの総量で、上記のトリグリセリドにおいて、R、RとRの総炭素数の和は64である脂肪酸由来基とR、RとRの総炭素数の和は66である脂肪酸由来基の総含有量が、4.5質量%未満である。本発明の具体的な実施形態において、トリグリセリドの総量で、上記のトリグリセリドにおいて、R、RとRの総炭素数の和は64である脂肪酸由来基とR、RとRの総炭素数の和は66である脂肪酸由来基の総含有量は、2.3質量%、2.4質量%、3.7質量%、4.5質量%である。
【0089】
トリグリセリドの総量で、上記のトリグリセリドにおいて、炭素数22の飽和脂肪酸に由来する基の含有量は、55~72質量%であり、好ましくは、トリグリセリドの総量で、上記のトリグリセリドにおいて、炭素数22の飽和脂肪酸に由来する基の含有量は、60~70質量%である。本発明の具体的な実施形態において、トリグリセリドの総量で、上記のトリグリセリドにおいて、炭素数22の飽和脂肪酸に由来する基の含有量は、63.9質量%、66.3質量%、67.3質量%、67.9質量%である。
【0090】
本発明において、C52、C54、C56、C58、C60、C62、C64とC66は、それぞれにトリグリセリドにおける全ての脂肪酸残基の炭素数の和、即、一般式(1)におけるR、RとRの総炭素数の和を指す。
【0091】
トリグリセリドの総量で、上記のトリグリセリドにおいて、ジグリセリドの含有量が、10質量%未満であり、好ましくは、トリグリセリドの総量で、上記のトリグリセリドにおいて、ジグリセリドの含有量が、5質量%未満である。本発明の具体的な実施形態において、トリグリセリドの総量で、上記のトリグリセリドにおいて、ジグリセリドの含有量は、2.0質量%、2.6質量%、2.8質量%、4.0質量%である。
【0092】
本発明において、上記のトリグリセリドは、エステル交換ステップを含む方法で得られてもよい。上記のエステル交換は、特に限定されず、例えば、化学法エステル交換または酵素法エステル交換である。上記のエステル交換ステップは、トリグリセリドと脂肪酸またはその誘導体を、固定化リパーゼの存在で行うものである。上記の脂肪酸は、炭素数12~28の直鎖飽和脂肪酸から選択される少なくとも一つである。上記の脂肪酸誘導体は、炭素数12~28の直鎖の飽和脂肪酸と炭素数1~6のアルコールのエステルから選択される少なくとも一つである。本発明の具体的な実施形態において、上記の脂肪酸またはその誘導体は、ベヘン酸、メチルベヘン酸またはエチルベヘン酸のうちの少なくとも一つである。
【0093】
上記の化学エステル交換ステップでは、例えば、上記の原料油脂を加熱下で真空乾燥し、触媒を添加して加熱する。上記の加熱を、例えば90~120℃、例えば105℃で行って、脱水時間は、例えば0.5~2時間、例えば1時間である。触媒を添加した後、好ましくは80~110℃、例えば100℃で0.1~2時間、例えば0.5時間の反応を行い、そして、温度を60~80℃、例えば70℃の真空まで下げる。
【0094】
上記の触媒は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、アルコキシドから選択される少なくとも一つである。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物は、KOH、NaOH、Ca(OH)から選択される少なくとも一つである。アルカリ金属の炭酸塩は、KCO、NaCOから選択される少なくとも一つである。アルカリ金属の重炭酸塩は、KHCO、NaHCOから選択される少なくとも一つである。アルカリ金属のアルコキシドは、例えばNaOCHである。
【0095】
本発明において、触媒の使用量は、油脂と原料油脂の総重量の0.1~3.0質量%で、好ましくは0.3~2質量%で、より好ましくは0.5~1.0質量%である。
【0096】
上記の化学エステル交換ステップの反応には、好ましくは、反応停止剤で反応を終了する。上記の停止剤として、有機酸または無機酸が挙げられる。有機酸としては、クエン酸、酒石酸などが挙げられる。無機酸としては、塩酸、リン酸、硫酸などが挙げられる。好ましくは、クエン酸が挙げられる。上記の反応を終了できれば、停止剤の添加量は、特に限定されなく、例えば原料油脂の総重量の0.5~3質量%、例えば1質量%の停止剤を添加してもよい。
【0097】
上記の酵素法エステル交換のステップにおいて、一般的な方法で、リパーゼを反応物と接触することより、または反応物を固定化リパーゼ充填層を通すことより、エステル交換を行う。
【0098】
上記のトリグリセリドを得る方法において、エステル交換ステップを含む以外に、さらに分子蒸留ステップを含み、上記の分子蒸留ステップは、エステル交換ステップの前またはエステル交換ステップの後に行われる;および/または分別ステップも含み、上記の分別ステップは、乾式分別ステップまたは溶剤分別ステップから選択される;および/または精錬ステップを含む。本発明の效果に影響を及ぼさない限り、それらのステップは、一般的な方法で行われてもよい。
【0099】
本発明において、上記のトリグリセリドは、植物に由来するもの、動物に由来するもの、または植物または動物に由来する油脂を変性して得られるものである。
【0100】
本発明において、上記のトリグリセリドは、米油、ひまわり種子油、菜油、パーム油、パーム核油、落花生油、菜種油、大豆油、綿実油、ベニバナ種子油、しその実油、チャ実油、オリーブ油、カカオ豆油、ナンキンハゼ実オイル、へんとう油、アーモンドオイル、桐油、ゴム種子油、コーン油、小麦胚芽油、ごま油、ひまし油、月見草種子油、ヘーゼルナッツオイル、かぼちゃの種油、クルミ油、グレープシードオイル、ルリチシャ油、シーバックソーン種子油、トマト種子油、マカダミア油、ヤシ油、ココアバターまたは藻油などの植物来源の油に由来する少なくとも一つである。好ましくは、上記のトリグリセリドは、高オレイン酸油脂に由来する。本発明の好ましい実施形態において、上記の高オレイン酸油脂は、高オレイン酸ひまわり種子油、高オレイン酸菜種油、または高オレイン酸パーム油から選択される少なくとも一つである。上記のトリグリセリドは、深海魚油などの動物来源の油、例えば鮭油、いわし油などに由来してもよい。上記の植物来源の油または動物来源の油を、一般的な方法(例えば、エステル交換、分別または調合などの油脂変性プロセス)で変性し、上記のトリグリセリドを得てもよい。
【0101】
食品
本発明は、上記の本発明の油脂組成物を含有する食品を提供する。食品総量100質量部に対して、上記の組成物は、0.01~15質量部であり、好ましくは、食品総量100質量部に対して、上記の組成物は、0.05~10質量部であり、より好ましくは、食品総量100質量部に対して、上記の組成物は、0.1~5質量部である。
【0102】
上記の食品は、ココアバターおよび/またはココアバターのようなものおよび/またはココアバター代用脂を含有する食品である。本発明の好ましい実施形態において、食品総量100質量部に対して、さらにココアバターおよび/またはココアバターのようなものおよび/またはココアバター代用脂30~50質量部を含有する。
【0103】
本発明の好ましい実施形態において、食品総量100質量部に対して、さらにココアパウダー10~20質量部、糖30~50質量部、リン脂質0.1~5質量部を含有する。
【0104】
本発明の好ましい実施形態において、食品におけるココアバターおよび/またはココアバターのようなものおよび/またはココアバター代用脂総量100質量部に対して、0.01~15質量部、好ましくは0.05~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部の本発明の組成物を含有する。
【0105】
上記の食品は、チョコレート、またはチョコレートを含有する食品である。
【0106】
用途
本発明の油脂組成物は、食品の製造に用いられる。上記の食品は、チョコレート、またはチョコレートを含有する食品である。
【0107】
以下の実施例は本発明をさらに説明するが、本発明の内容は以下に限定されない。本発明の明細書における実施形態は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の保護範囲を限定しない。本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によってのみ定義され、本発明の開示された実施形態に基づいて当業者によって行われるあらゆる省略、置換、または修正は、本発明の保護範囲内に含まれる。
【0108】
以下の実施例では、当分野における一般的な機器を使用する。以下の実施例に具体的な条件を示しない実験方法は、一般的に、通常の条件またはメーカーの推奨条件に従う。以下の例に使用される様々な原料は、特に断らない限り、従来の市販品を使用する。本発明の明細書と以下の実施例において、特に断りのない限り、「%」は重量パーセントを意味する。
【0109】
高オレイン酸ひまわり種子油、シアバター分別ステアリンShea ST(StOSt含有量71.2%、StOSt:1,3位はStで、2位はOであるトリグリセリド)(ワイルマー工マーケティング有限会社から購入)、メチルベヘン酸(四川西普化工株式会社から購入)、米ぬかワックス、ひまわりワックス、蜜蝋、キャンデリラワックス、カルナウバワックスなど(北京麗康偉業テクノロジー株式会社から購入)、NS40086(ノボザイム(中国)インベストメント有限会社から購入)、ココアバターとココアパウダー(アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド会社から購入)、砂糖(韓国CJ第一製糖株式会社から購入)、アセトン、n-ヘキサン(中国国家製薬グループ化学試薬有限会社から購入)。
【0110】
脂肪酸組成の検測方法:AOCS cel-62;トリグリセリド組成の検測方法:AOCS ce5-86。
【実施例1】
【0111】
BOB油脂の調製
酵素法エステル交換
高オレイン酸ひまわり種子油500gとメチルベヘン酸900gを加熱し、均一に混合し、2Lガラス三口フラスコに入れ、基質重量10%のNS40086固定化酵素を添加し、70℃の条件で4h反応し、反応を終了し、液体を収集し、酵素を三口フラスコに残りそのまま使用し、精製のために反応の粗産物Iを収集した。
【0112】
分子蒸留でトリグリセリドの精製
上記反応粗産物Iは、分子蒸留で、蒸留温度230℃、回転速度300r/min、真空度1×10-3mbarの条件には、脂肪酸、モノグリセリドまたはジグリセリドなどの物質を除去し、トリグリセリド混合物IIを得た。
【0113】
溶剤の分別
300gトリグリセリド混合物IIを秤量し、油脂重量の5倍体積のアセトンに添加し、澄んだ色まで加熱し、かつ55℃の水浴に15min置き、温度を20℃まで下げ、2h保温し、濾過で高融点固体部分を除去し、液相を得た;液相を澄んだ色まで加熱し、20℃に15min保温し、続いて温度を14℃まで下げ、3h保温し、濾過し、固体を得た。
【0114】
油脂の精錬
上記の固体部分から、ロータリーエバポレータで、温度60℃、回転速度80r/min、真空度10mbar、時間0.5hの条件で、アセトンを除去した。さらに、脱水温度90℃、真空度10mbar、時間0.5hの条件で、脱水を行った。最後に、脱色と脱臭処理を行った。脱色温度105℃、油重約2%の白土を脱色吸着剤として添加し、真空度10mbarで、0.5h脱色した後、濾過した;温度230℃、真空度5mbar、窒素ガスを導入し、脱臭時間2hの条件で脱臭し、精錬した後にC62含有量82.3%のBOB油脂製品を得た。
【0115】
組成物の調製
0.75質量部のC62含有量82.3%のBOB油脂、及び0.25質量部のひまわりワックスとキャンデリラワックスの混合物(質量の比7:3)を、温度80℃、磁気攪拌500r/minの条件で、30min混合し、均一まで混合し、使用に備えた。
【実施例2】
【0116】
BOB油脂の調製
酵素法エステル交換
高オレイン酸ひまわり種子油500gとメチルベヘン酸1000gを加熱し、均一に混合し、2Lガラス三口フラスコに入れ、基質重量10%のNS40086固定化酵素を添加し、70℃の条件で4h反応し、反応を終了し、液体を収集し、酵素を三口フラスコに残りそのまま使用し、精製のために反応の粗産物Iを収集した。
【0117】
分子蒸留でトリグリセリドの精製
上記反応粗産物Iは、分子蒸留で、蒸留温度230℃、回転速度300r/min、真空度1×10-3mbarの条件には、脂肪酸、モノグリセリドまたはジグリセリドなどの物質を除去し、トリグリセリド混合物IIを得た。
【0118】
溶剤の分別
300gトリグリセリド混合物IIを秤量し、油脂重量の4倍体積のアセトンに添加し、澄んだ色まで加熱し、かつ55℃の水浴に15min置き、温度を20℃まで下げ、2h保温し、濾過で高融点固体部分を除去し、液相を得た;液相を澄んだ色まで加熱し、20℃に15min保温し、続いて温度を16℃まで下げ、3h保温し、濾過し、固体を得た。
【0119】
油脂の精錬
上記の固体部分から、ロータリーエバポレータで、温度60℃、回転速度80r/min、真空度10mbar、時間0.5hの条件で、アセトンを除去した。さらに、脱水温度90℃、真空度10mbar、時間0.5hの条件で、脱水を行った。最後に、脱色と脱臭処理を行った。脱色温度105℃、油重約2%の白土を脱色吸着剤として添加し、真空度10mbarで、0.5h脱色した後、濾過した;温度230℃、真空度5mbar、窒素ガスを導入し、脱臭時間2hの条件で脱臭し、精錬した後にC62含有量85.1%のBOB油脂製品を得た。
【0120】
組成物の調製
0.7質量部のC62含有量85.1%のBOB油脂、及び0.3質量部の蜜蝋と米ぬかワックスの混合物(質量の比5:5)を、温度80℃、磁気攪拌500r/minの条件で、30min混合し、均一まで混合し、使用に備えた。
【実施例3】
【0121】
BOB油脂の調製
酵素法エステル交換
高オレイン酸ひまわり種子油500gとメチルベヘン酸900gを加熱し、均一に混合し、2Lガラス三口フラスコに入れ、基質重量8%のNS40086固定化酵素を添加し、70℃の条件で4h反応し、反応を終了し、液体を収集し、酵素を三口フラスコに残りそのまま使用し、精製のために反応の粗産物Iを収集した。
【0122】
分子蒸留でトリグリセリドの精製
上記反応粗産物Iは、分子蒸留で、蒸留温度230℃、回転速度300r/min、真空度1×10-3mbarの条件には、脂肪酸、モノグリセリドまたはジグリセリドなどの物質を除去し、トリグリセリド混合物IIを得た。
【0123】
溶剤の分別
300gトリグリセリド混合物IIを秤量し、トリグリセリド重量の5倍体積のアセトンに添加し、澄んだ色まで加熱し、かつ55℃の水浴に15min置き、温度を20℃まで下げ、2h保温し、濾過で高融点固体部分を除去し、液相を得た;液相を澄んだ色まで加熱し、20℃に15min保温し、続いて温度を13℃まで下げ、3h保温し、濾過し、固体を得た。
【0124】
油脂の精錬
上記の固体部分から、ロータリーエバポレータで、温度60℃、回転速度80r/min、真空度10mbar、時間0.5hの条件で、アセトンを除去した。さらに、脱水温度90℃、真空度10mbar、時間0.5hの条件で、脱水を行った。最後に、脱色と脱臭処理を行った。脱色温度105℃、油量約2%の白土を脱色吸着剤として添加し、真空度10mbarで、0.5h脱色した後、濾過した;温度230℃、真空度5mbar、窒素ガスを導入し、脱臭時間2hの条件で脱臭し、精錬した後にC62含有量70.9%のBOB油脂製品を得た。
【0125】
組成物の調製
0.8質量部のC62含有量70.9%のBOB油脂、及び0.2質量部の米ぬかワックスと蜜蝋の混合物(質量の比9:1)を、温度80℃、磁気攪拌500r/minの条件で、30min混合し、均一まで混合し、使用に備えた。
【実施例4】
【0126】
BOB油脂の調製
酵素法エステル交換
高オレイン酸ひまわり種子油500gとメチルベヘン酸900gを加熱し、均一に混合し、2Lガラス三口フラスコに入れ、基質重量8%のNS40086固定化酵素を添加し、70℃の条件で4h反応し、反応を終了し、液体を収集し、酵素を三口フラスコに残りそのまま使用し、精製のために反応の粗産物Iを収集した。
【0127】
分子蒸留でトリグリセリドの精製
上記反応粗産物Iは、分子蒸留で、蒸留温度230℃、回転速度300r/min、真空度1×10-3mbarの条件には、脂肪酸、モノグリセリドまたはジグリセリドなどの物質を除去し、トリグリセリド混合物IIを得た。
【0128】
溶剤の分別
300gトリグリセリド混合物IIを秤量し、トリグリセリド重量の5倍体積のアセトンに添加し、澄んだ色まで加熱し、かつ55℃の水浴に15min置き、温度を20℃まで下げ、2h保温し、濾過で高融点固体部分を除去し、液相を得た;液相を澄んだ色まで加熱し、20℃に15min保温し、続いて温度を13℃まで下げ、3h保温し、濾過し、固体を得た。
【0129】
油脂の精錬
上記の固体部分から、ロータリーエバポレータで、温度60℃、回転速度80r/min、真空度10mbar、時間0.5hの条件で、アセトンを除去した。さらに、脱水温度90℃、真空度10mbar、時間0.5hの条件で、脱水を行った。最後に、脱色と脱臭処理を行った。脱色温度105℃、油重約2%の白土を脱色吸着剤として添加し、真空度10mbarで、0.5h脱色した後、濾過した;温度230℃、真空度5mbar、窒素ガスを導入し、脱臭時間2hの条件で脱臭し、精錬した後にC62含有量83.3%のBOB油脂製品を得た。
【0130】
組成物の調製
0.6質量部のC62含有量83.3%のBOB油脂、及び0.4質量部の蜜蝋とひまわりワックスの混合物(質量の比8:2)を、温度80℃、磁気攪拌500r/minの条件で、30min混合し、均一まで混合し、使用に備えた。
〔比較例1〕
BOB油脂は、実施例2で製造されたBOB油脂を使用した。
【0131】
組成物の調製
0.7質量部のC62含有量85.1%のBOB油脂、及び0.3質量部のカルナウバワックス、米ぬかワックスとキャンデリラワックスの混合物(質量の比4:4:2)を、温度80℃、磁気攪拌500r/minの条件で、30min混合し、均一まで混合し、使用に備えた。
〔比較例2〕
BOB油脂は、実施例2で製造されたBOB油脂を使用した。
【0132】
組成物の調製
0.7質量部のC62含有量85.1%のBOB油脂、及び0.3質量部のキャンデリラワックスと蜜蝋の混合物(質量の比6:4)を、温度80℃、磁気攪拌500r/minの条件で、30min混合し、均一まで混合し、使用に備えた。
〔比較例3〕
BOB油脂の調製
酵素法エステル交換
高オレイン酸ひまわり種子油500gとメチルベヘン酸900gを加熱し、均一に混合し、2Lガラス三口フラスコに入れ、基質重量8%のNS40086固定化酵素を添加し、70℃の条件で4h反応し、反応を終了し、液体を収集し、酵素を三口フラスコに残りそのまま使用し、精製のために反応の粗産物Iを収集した。
【0133】
分子蒸留でトリグリセリドの精製
上記反応粗産物Iは、分子蒸留で、蒸留温度230℃、回転速度300r/min、真空度1×10-3mbarの条件には、脂肪酸、モノグリセリドまたはジグリセリドなどの物質を除去し、トリグリセリド混合物IIを得た。
【0134】
溶剤の分別
300gトリグリセリド混合物IIを秤量し、トリグリセリド重量の5倍体積のアセトンに添加し、澄んだ色まで加熱し、かつ55℃の水浴に15min置き、温度を16℃まで下げ、2h保温し、濾過で高融点固体部分を除去し、液相を得た;液相を澄んだ色まで加熱し、16℃に15min保温し、続いて温度を5℃まで下げ、3h保温し、濾過し、固体を得た。
【0135】
油脂の精錬
上記の固体部分から、ロータリーエバポレータで、温度60℃、回転速度80r/min、真空度10mbar、時間0.5hの条件で、アセトンを除去した。さらに、脱水温度90℃、真空度10mbar、時間0.5hの条件で、脱水を行った。最後に、脱色と脱臭処理を行った。脱色温度105℃、油重約2%の白土を脱色吸着剤として添加し、真空度10mbarで、0.5h脱色した後、濾過した;温度230℃、真空度5mbar、窒素ガスを導入し、脱臭時間2hの条件で脱臭し、精錬した後にC62含有量55.8%のBOB油脂製品を得た。
【0136】
組成物の調製
0.7質量部のC62含有量55.8%のBOB油脂、及び0.3質量部の蜜蝋と米ぬかワックスの混合物(質量の比5:5)を、温度80℃、磁気攪拌500r/minの条件で、30min混合し、均一まで混合し、使用に備えた。
〔比較例4〕
BOB油脂は、実施例2で製造されたBOB油脂を使用した。
【0137】
組成物の調製
1.0質量部のC62含有量85.1%のBOB油脂、及び0質量部のワックスの混合物を、温度80℃、磁気攪拌500r/minの条件で、30min混合し、均一まで混合し、使用に備えた。
〔比較例5〕
組成物の調製
0質量部のBOB油脂、及び1.0質量部の蜜蝋と米ぬかワックスの混合物(質量の比5:5)を、温度80℃、磁気攪拌500r/minの条件で、30min混合し、均一まで混合し、使用に備えた。
〔比較例6〕
実施例4で調製されたBOB油脂を、BOB油脂として使用し、BOB油脂のβ2型種晶の製造を行った(参照:王雨沢など.対称トリグリセリドBOBの多結晶製造に関する研究[J].中国穀物・油ジャーナル,1998,13(5):19-21.)。
【0138】
BOB油脂β2型種晶と液体窒素を万能破砕機で破砕し、100メッシュのふるいにかけ、回収した。
〔比較例7〕
BOB油脂β2種晶の調製と使用は、比較例6と同じ、ワックスは実施例4を参照する。
〔比較例8〕
溶剤の分別
300gのShea STを秤量し、油脂重量の4倍体積のアセトンに添加し、澄んだ色まで加熱し、かつ55℃の水浴に15min置き、温度を24℃まで下げ、2h保温し、濾過で高融点固体部分を除去し、液相を得た;液相を澄んだ色まで加熱し、24℃に15min保温し、続いて温度を5℃まで下げ、2h保温し、濾過し、固体を得た。
【0139】
油脂の精錬
上記の固体から、ロータリーエバポレータで、温度60℃、回転速度80r/min、真空度10mbar、時間0.5hの条件で、アセトンを除去した。さらに、脱水温度90℃、真空度10mbar、時間0.5hの条件で、脱水を行った。最後に、脱色と脱臭処理を行った。脱色温度105℃、油重約2%の白土を脱色吸着剤として添加し、真空度10mbarで、0.5h脱色した後、濾過した;温度230℃、真空度5mbar、窒素ガスを導入し、脱臭時間2hの条件で脱臭し、精錬で製品を得た。
【0140】
組成物の調製
0.7質量部のStOSt含有量86.5%の油脂、及び0.3質量部の蜜蝋と米ぬかワックスの混合物(質量の比5:5)を、温度80℃、磁気攪拌500r/minの条件で、30min混合し、均一まで混合し、使用に備えた。
【0141】
比較例1 FAs+FALsの異なる影響を調査した。
比較例2 WEs/HCsの異なる影響を調査した。
比較例3 BOB油脂の純度の異なる影響を調査した。
比較例4 BOB油脂だけ存在する場合の影響を調査した。
比較例5 ワックスだけ存在する場合の影響を調査した。
比較例6 BOB β2種晶しか添加しない場合の影響を調査した。
比較例7 BOB β2種晶とワックスを添加する場合の相乗的な影響を調査した。
比較例8 高純度StOSt(86.5%)グリセリドとワックスを添加する場合の相乗的な影響を調査した;高純度StOSt油脂は、Shea STアセトンで分別され得られた。
【0142】
〔比較例9〕 ワックスを添加したココアバタースラリーが、非温度調節チョコレートチャンクに対する影響を調査した。
【0143】
〔比較例10〕 従来の大理石での温度調節より、純脂チョコレートチャンクを製造した。

表1 実施例及び比較例の組成分析表
【0144】
【表1】
表1には、C52、C54、C56、C58、C60、C62、C64とC66は、トリグリセリドにおける全ての脂肪酸残基の炭素数の和を指す。C62(%)が、一般式(1)におけるR、RとRの総炭素数の和は62である基の含有量を指し、C52~C60(%)が、一般式(1)におけるR、RとRの総炭素数の和は52~60である脂肪酸由来基の含有量を指し、C64+C66(%)が、一般式(1)におけるR、RとRの総炭素数の和は64である脂肪酸由来基とR、RとRの総炭素数の和は66である脂肪酸由来基の総含有量を指し、DAG(%)が、上記のBOB油脂におけるジグリセリドの含有量を指し、C22:0(%)が、上記のトリグリセリドにおける炭素数22的飽和脂肪酸に由来する基の含有量を指す。

〔応用例〕
実施例1~4及び比較例1~10の組成物を、配合表2によって、下記のチョコレート製造方法で、チョコレートチャンクを製造した。
表2 チョコレート配合
【0145】
【表2】
【0146】
【表3】
注:添加量は、表2におけるココアバターの量で計算されたものである。

チョコレートスラリーの研磨:ボールミルを大豆油で洗い、その後、ボールミルの流出液が完全に冷えるまで、カカオバターでボールミルを濯いた。表2と3の配合に基づき、それぞれに正確に各材料を秤量し、粉末材料(ココアパウダー、粉砂糖)とオイルサンプル(ココアバター)をそれぞれに秤量し、ボールミルの温度を55℃に設定し、研磨した;ボールミルをレベル1に調整し、粉末材料を混ぜ、そしてオイルサンプルの3/4とともにボールミルに投入し、ボールミルをレベル3に調整し、5分間研磨した;ボールミルをレベル7に調整し、30min研磨した;配合に基づき、リン脂質と余分のオイルサンプルを混ぜたからボールミルに投入し、30min研磨し、終了した。
【0147】
チョコレートの製造
研磨されたスラリーを55℃のオーブンに置き、その中の冷却された結晶を完全に融化し、チョコレートスラリーを得た。
【0148】
〔応用実施例1~4及び応用比較例1~5、8と9〕
チョコレートスラリーの温度を、33℃まで下げ、表3によって全チョコレート配合におけるココアバター重量の0.5~5wt%の組成物(実施例1~4及び比較例1~10の組成物)を添加し、均一まで混合し、スラリー温度33℃で、型を注ぐための準備を整えた。
【0149】
〔応用比較例6〕
チョコレートスラリーの温度を、33℃まで下げ、全チョコレート配合におけるココアバター量の5wt%のBOB種晶粉末を添加し、均一まで混合し、スラリー温度33℃で、型を注ぐための準備を整えた。
【0150】
〔応用比較例7〕
チョコレートスラリーの温度を、33℃まで下げ、全チョコレート配合におけるココアバター量の3wt%のBOB種晶粉末と2wt%蜜蝋と米ぬかワックスの混合物を添加し、均一まで混合し、スラリー温度33℃で、型に注入する準備を整えた。
【0151】
〔応用比較例10〕
大理石での温度調節によるチョコレートチャンクの製造;純脂チョコレートを製造し、表2と表3のチョコレート配合より、大理石での温度調節でチョコレートチャンクを製造した。温度調節ステップ:チョコレートスラリーの温度を、40~45℃まで下げ、その後、1/3のチョコレートスラリーを大理石台に置き、スクレーパーでチョコレートスラリーを速くに大理石台に塗った。次に、シャベルを使用して、大理石台に散らばったチョコレートスラリーを大理石台の中央に積み重ね、均一に冷却した。操作を繰り返して温度を測定し、温度が26~27℃に下がることを確認し、チョコレートをスラリーたらいに戻し、チョコレートの温度が29~30℃に戻るまでよく攪拌し、テンパリングが成功したことを確認して、ボードに注入する注ぐ準備をした。
【0152】
チョコレートチャンクの製造及び応用試験
離型性試験
チョコレートスラリーを型に注き、7~10℃の冷たい風で15min冷却し、離型した。チャンクにおける自然離型の個数を記録した(16個/板)。
【0153】
霜付け抗性実験
霜付け抗性は、交互に22℃と32℃の環境で放置(温度ごとに12h)し、所定の日数が経過したチョコレートチャンクの状態を官能評価したものである。霜付け抗性は、-(良好)、*(光沢を消す)、**(霜付け)、***(重度の霜付け)で示された。

表4 チョコレートチャンクの応用例
【0154】
【表4】
表4によると、本発明の組成物を添加したチョコレートチャンクの応用には、温度調節が必要なく、且つ特定の結晶形を有する種晶を必要とせず、チョコレートの製造プロセスを大幅に簡素化し、チョコレートチャンクの離型性と霜付け抗性が著しく向上した。