(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】非極性III族窒化物二元及び三元材料、それらの取得方法及び用途
(51)【国際特許分類】
C30B 29/38 20060101AFI20240515BHJP
C30B 23/08 20060101ALI20240515BHJP
H01L 21/18 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
C30B29/38 D
C30B29/38 C
C30B29/38 Z
C30B23/08 M
H01L21/18
(21)【出願番号】P 2022524593
(86)(22)【出願日】2020-10-19
(86)【国際出願番号】 EP2020079359
(87)【国際公開番号】W WO2021078682
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2022-06-02
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522166688
【氏名又は名称】シェ フェンジェ
【氏名又は名称原語表記】XIE, Fengjie
【住所又は居所原語表記】Room 301. no 20,1888 Lane Chun Shen Road Shanghai 200237, China
(73)【特許権者】
【識別番号】522166699
【氏名又は名称】シェ メングヤオ
【氏名又は名称原語表記】XIE, Mengyao
【住所又は居所原語表記】Paseo Juan XXIII, 23, piso 2, 1 28040 Madrid, Spain
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シェ メングヤオ
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンド サアベドラ、アマリア ルイーザ
(72)【発明者】
【氏名】ベンゴエチェア エンカボウ、アナ マリア
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】カレヤ パルド、エンリケ
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス ガルシア、ミゲル エンジェル
(72)【発明者】
【氏名】ロペス-ロメロ モラルダ、デイビッド
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/021606(WO,A1)
【文献】特開2015-166293(JP,A)
【文献】特開2006-315947(JP,A)
【文献】特表2018-520502(JP,A)
【文献】特開2001-345282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/38
C30B 23/08
H01L 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非極性III族窒化物材料を得るための方法であって、
複数のナノピラーを形成するように非極性III族窒化物テンプレートをエッチングするステップであって、前記非極性III族窒化物テンプレートは、式X
xZ
1-xNを有するm面又はa面配向の単結晶であり、XとZは、Ga、In及びAlからなる群から独立して選択され、0≦x≦1であり、前記複数のナノピラーは、ナノピラーの配列を形成するように2つの方向に沿って配置され、前記2つの方向は、c方向及び前記c方向に対する直交方向を含むステップと、
ナノタイルの配列を得るように前記ナノピラーの配列上に
第1のIII族窒化物を成長させるステップと、
前記
ナノタイルの配列及び合体した非極性III族窒化物層を含む前記非極性III族窒化物材料を得るために、前記合体した非極性III族窒化物層を形成するように前記
ナノタイルの配列上に
第2のIII族窒化物を成長させるステップと、を含
み、
前記ナノピラーの断面形状は円形であり、
前記ナノピラーの配列において、前記ナノピラーは、100nm~1000nmの範囲の高さ、20nm~2000nmの範囲の断面サイズ、及び50nm~2000nmの範囲の2つのナノピラーの中心間のピッチを有し、
前記第1のIII族窒化物の材料は前記ナノピラーの配列の材料と同じであり、
前記第2のIII族窒化物の材料は前記第1のIII族窒化物の材料と異なる、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記c方向における2つの隣接するナノピラーの間のピッチは、前記直交方向における2つの隣接するナノピラーの間のピッチよりも大きい、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非極性III族窒化物テンプレートをエッチングする前に、前記非極性III族窒化物テンプレート上にパターン化されたマスクを形成するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ナノピラーの配列上に前記III族窒化物を成長させる前に、前記ナノピラーの配列の上面を露出させるように前記パターン化されたマスクを除去するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記非極性III族窒化物テンプレートは、第1基板上に成長した非極性III族窒化物2D層であり、又は、前記非極性III族窒化物テンプレートは、非極性III族窒化物基板である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1基板は、Al
2O
3、SiC、Si、LiAlO
2、LiGaO
2、m面GaN及びm面AlNからなる群から選択され、前記非極性III族窒化物基板は、III族窒化物バルク材料から切り出すことによって形成され、前記III族窒化物バルク材料は、GaN、AlN、InN、Al
xGa
1-xN、ln
xGa
1-xN及びln
xAl
1-xNからなる群から選択され、0<x<1である、ことを特徴とする請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記非極性III族窒化物テンプレートは、100nm以上の厚さを有する前記非極性III族窒化物2D層を前記第1基板上に成長させることによって形成され、前記非極性III族窒化物2D層は、結晶多形のないm面又はa面配向の単結晶である、ことを特徴とする請求項
5に記載の方法。
【請求項8】
前記合体した非極性III族窒化物層を形成するように前記ナノタイルの配列上に前記III族窒化物を成長させた後に、前記合体した非極性III族窒化物層上に厚い層をホモエピタキシァル過成長させるステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記合体した非極性III族窒化物層を形成するように前記
ナノタイルの配列上に前記III族窒化物を成長させた後に、
前記テンプレートから前記非極性III族窒化物層を分離すること、又は、
前記非極性III族窒化物層を支持する前記テンプレートの残りの部分から前記非極性III族窒化物層を分離すること
の少なくとも1つを実行するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
非極性III族窒化物材料であって、
複数の
ナノタイルと、
非極性III族窒化物層と、を含み、
前記複数の
ナノタイルは少なくとも部分的に前記非極性III族窒化物層に埋め込まれ、
前記非極性III族窒化物層は、前記複数のナノタイル上に第2のIII族窒化物を成長させて形成され、
前記複数の
ナノタイルは、
ナノタイルの配列を形成するように2つの方向に沿って配置され、前記2つの方向は、c方向及び前記c方向に対する直交方向を含み、
前記ナノタイルの配列はナノピラーの配列上に第1のIII族窒化物を成長させて形成され、
前記ナノピラーの断面形状は円形であり、
前記ナノピラーの配列において、前記ナノピラーは、100nm~1000nmの範囲の高さ、20nm~2000nmの範囲の断面サイズ、及び50nm~2000nmの範囲の2つのナノピラーの中心間のピッチを有し、
前記第1のIII族窒化物の材料は前記ナノピラーの配列の材料と同じであり、
前記第2のIII族窒化物の材料は前記第1のIII族窒化物の材料と異なり、
前記非極性III族窒化物層及び前記複数の
ナノタイルのそれぞれは、結晶多形のないm面又はa面配向の単結晶材料であり、
前記非極性III族窒化物層及び前記複数の
ナノタイルのそれぞれは、
GaN、AlN、InN、Al
x
Ga
1-x
N、ln
x
Ga
1-x
N及びln
x
Al
1-x
Nからなる群から選択され、0<x<1であり、かつ、分子式X
xZ
1-xNを
有し、XとZは、Ga、In及びAlからなる群から独立して選択され、0≦x≦1である、ことを特徴とする非極性III族窒化物材料。
【請求項11】
前記c方向における2つの隣接する
ナノタイルの間のピッチは、前記直交方向における2つの隣接する
ナノタイルの間のピッチよりも大きい、ことを特徴とする請求項
10に記載の非極性III族窒化物材料。
【請求項12】
各
ナノタイルの断面形状は長方形であり、前記長方形の2つの長辺は前記c方向に延在し、前記長方形の2つの短辺はa方向又はm方向に延在する、ことを特徴とする請求項
10に記載の非極性III族窒化物材料。
【請求項13】
前記非極性III族窒化物層は、Al又はInの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項
10に記載の非極性III族窒化物材料。
【請求項14】
光電子デバイス、高出力電子デバイス、又は高周波電子デバイスを含むデバイスであって、
前記光電子デバイス、高出力電子デバイス、又は高周波電子デバイスは、テンプレート又は基板を含み、
前記テンプレート又は前記基板は、請求項10から13のいずれか一項に記載の非極性III族窒化物材料を含む、
デバイス。
【請求項15】
前記光電子デバイスは、発光ダイオード(LED)、レーザダイオード(LD)、及び太陽電池からなる群から選択され、
前記高出力電子デバイスと前記高周波電子デバイスはそれぞれ、電界効果トランジスタ及びバイポーラートランジスタからなる群から独立して選択される、ことを特徴とする請求項
14に記載のデバイス。
【請求項16】
多層構造体であって、
異なる組成を有する2つのIII族窒化物層と、
前記2つのIII族窒化物層の間に配置された、非極性III族窒化物材料を含むバッファー層と、を含み、
前記バッファー層は、請求項10から13のいずれか一項に記載の非極性III族窒化物材料を含む、
ことを特徴とする多層構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体材料及び対応する作製方法に関し、特に、得られる2D層における歪みと欠陥の低減のためのナノ結晶の秩序配列の合体に関する。
【背景技術】
【0002】
本文中のIII族窒化物という用語は、三元合金GaxAl1-xN、InxAl1-xN及びGaxIn1-xN(0<x<1)、並びに二元のGaN、AlN及びInNを含む。これらは、高出力/高周波デバイス及び高効率光電デバイスの作製のために非常に有望な半導体材料である。現在、中~近紫外線範囲とほとんどの可視スペクトルをカバーするIII族窒化物発光ダイオード(LED)及びレーザダイオード(LD)が市販されている。
【0003】
III族窒化物の安定した構造は、六方晶系ウルツである。III族窒化物ベースのデバイスのほとんどは、分極効果によって強い内部電界を誘導する極性c面配向(
図1.a)に沿って成長し、光電デバイスの性能に悪影響を及ぼす。一例として、この効果は、c面InGaN/GaN量子井戸(QWs)を使用して高性能の緑色LED及びLDを実現するための最も関連性のある障害の1つである。III族窒化物ベースのデバイスの分極を変更することが解決策になる場合がある。ウルツ構造のm面(
図1b)とa面(
図1c)は、非極性面である。
【0004】
成長技術によって制限され、GaNとAlNの2つの二元非極性バルク基板のみが市場で入手可能である。しかしながら、バルク材料から切り出された最新の非極性AlNとGaN基板は、まだ成熟にはほど遠いものであり、非常に高価であり、非標準サイズ(50.8mm-2”-標準ウェーハよりも小さい)を有する。さらに、物理的気相輸送(PVT)の実際の成長技術により、バルクAlNには、非常に高密度の不純物と、C、O及びN空孔などの固有の欠陥とが含まれる。そのため、結晶は、分子線エピタキシー(MBE)又は有機金属気相エピタキシー(MOVPE)によって成長したAlNフィルムに典型的な無色の透明度の代わりに目に見える茶色を示す。大量の点欠陥は、AlN結晶の光学特性を変化させるだけでなく、基板としてのバルクAlNの格子構造と成長動力学にも影響を与える。また、バルクAlNからの不純物の分離により、その後の上部の層の成長が汚染される可能性がある。
【0005】
異種基板はまた、その上に層やデバイスの成長を可能にし、低コストでかなり大きく標準的なサイズを有する非極性配向を示す。しかしながら、極性又は非極性方向のどちらの方向に沿っているかに関係なく、異種基板上にIII族窒化物を成長させると、フィルム内に高い貫通転位(TD)密度及び積層欠陥(SF)が発生する。例えば、サファイア上のa面GaN層のTD密度は、市販のLED及びLDの作製に必要な制限値よりもそれぞれ100~10000倍高くなる可能性がある(M.S. Shur and A. Zukauskas (2004), UV Solid-State Light Emitters and Detectors. Springer Netherlands; B.A. Haskell, F. Wu, M. D. Craven, S. Matsuda, P.T. Fini, T. Fujii, K. Fujito, S.P. DenBaars, J.S. Speck, and S. Nakamura (2003), Applied Physics Letters 83 (4), 644)。
【0006】
従って、異種基板上に任意の組成で非極性III族窒化物疑似基板を成長させることは、それらの大きな標準サイズ(2”-50.8mm-以上の直径に等しい)と、現在非極性バルク基板として提供されていない、面内格子定数エンジニアリングを使用したIII族窒化物デバイスのホモエピタキシャル成長の可能性の両方のために不可欠になる。しかしながら、前述のとおり、異種基板上に直接非極性III族窒化物層を成長させると、大量の欠陥が発生する。この種のIII族窒化物層は、その上に成長したIII族窒化物デバイスの疑似基板として機能することができない。これは、それらがすべての欠陥を継承するためである。一方、研究努力のほとんどは、高品質の非極性GaN疑似基板に向けられてきた。非極性GaN疑似基板の達成は、III族窒化物の分野全体のブレークスルーを引き起こすことが期待されている(US 8338273 B2、US 7955983 B2、GB 24885887 B、及びUS 8652947 B2)。しかしながら、現在、報告されている、又は市販されている高品質の非極性AlN、InN、又は三元合金疑似基板はない。
【0007】
欠陥密度を低減した高品質の非極性GaN疑似基板を実現するための次の2つの有望なアプローチがある。a)欠陥(欠陥は、TD、SF、寄生c面GaN介在物を含む)をブロックするための誘電体又は金属マスクの使用、及びb)欠陥をフィルタリングするためのナノピラー(ナノロッド、ナノカラム、ナノワイヤーとも呼ばれる)の使用である。
【0008】
現在、第1アプローチa)に関して、高品質のGaN疑似基板を成長させる最も確率された方法は、エピタキシァル横方向過成長技術(ELOG)、側壁横方向エピタキシァル過成長(SLEO)及び選択的領域成長(SAG)と合体など、欠陥をブロックするための誘電体又は金属マスクの使用に基づいている。ELOGは、特定の幅と周期性を持ち、特定の結晶軸(面内)に沿って整列したマスク材料(ストライプ)から形成されたトレンチからの横方向の成長を強化することにより、TDとSFを低減する。このようにして、マスク材料上で横方向に過成長した材料には、異なる微結晶がマージする場所やマスクの「窓」領域に蓄積する傾向のある転位がない。高品質デバイス(均質な過成長層)に使用できる完全な領域を得るには、Double ELOG(US 8338273 B2)又はSLEO(US 7955983 B2)の技術を使用して、横方向成長ステップを繰り返す面倒でコストのかかるプロセスを実行する必要がある。2つの横方向成長ステッププロセスのもう1つの欠点は、平坦な表面を実現するために厚さ10~20μmの過成長した材料が必要であることである。ただし、この値は、マスクにナノスケールの開口があるSAG(S. Albert, A. Bengoechea-Encabo, J. Zuniga-Perez, P. de Mierry, P. Val, M. A. Sanchez-Garcia, and E. Calleja (2014), Applied Physics Letters 105 (9) 091902)又はナノスケールSLEO(GB 24885887 B)によって1~2μmに縮小できる。ごく最近、ナノスケールSLEOによって成長したサファイアテンプレート上の50.8mm-2”-a面GaNが市販された(GB 24885887 B)。
【0009】
しかしながら、上記の方法は、Al及び/又はIn元素を含有するIII族窒化物に適用されていない。その結果、これまでELOG、SLEO及びSAGに使用されていたマスク、ならびに成長条件は、開発もチェックもされていない。一般的に使用されているマスク材料であるSiO2、SiNx及びTiNxが、Al及び/又はInを含有するIII族窒化物に適切に機能するという科学的証拠はない。これは、これらの元素を含む合金はマスク上で核形成し、寄生極性材料を生成する傾向があるためである。
【0010】
この問題と第2アプローチb)に関して、エッチングされたc面AlNピラー(Michele Conroy, Vitaly Z. Zubialevich, Haoning Li, Nikolay Petkov, Justin D. Holmes, and Peter J. Parbrook (2015), J. Mater. Chem. C3 (2), 431)、又はSAGによって成長したc面GaNナノピラーのパターン(A. Bengoechea-Encabo, S. Albert, M. Muller, M.Y. Xie, P. Veit, F. Bertram, M. A. Sanchez-Garcia, J. ZuniGa-Perez, P. de Mierry, J. Christen, and E. Calleja (2017), Nanotechnology 28 (36), 365704)によってのみ、寄生核生成を回避する極性AlNの成長に関する証拠がある。これは、どちらの方法でも効率的なシャドーイング効果を提供するためである。しかしながら、非極性AlN疑似基板を目指した研究がない。非極性の場合、面内成長が優先されるため、シャドーイング効果が達成できない。
図4.cには、TiN
xマスクを使用してSAGによって成長した寄生c面AlNに囲まれた非極性AlNナノ結晶の例が挙げられている。最後になったが大切なことは、これらの方法の適用は、マスクが、結果として得られる層の内部に、さらに、作製されたデバイス内に残ることを意味し、それによって汚染及び寄生容量効果のリスクが高まることである。
【0011】
非極性ナノピラーは、エッチングによるトップダウンアプローチとは対照的に、非極性III族窒化物ナノピラーの成長が一般的に非常に困難であるため、ほとんど研究されていない。c面配向での成長は、一般的に使用されるほとんどの平面(非極性、半極性)の中で最も高い成長率を有する。したがって、非極性ナノピラーを成長させようとすると、垂直方向の成長が無視できるナノ結晶を生成し、かなり速い合体後に2Dフィルムを生成する。これは、SAGによって非極性GaNを成長させるときに起こることである(S. Albert, A. Bengoechea-Encabo, J. ZuniGa-Perez, P. de Mierry, P. Val, M.A. Sanchez-Garcia, and E. Calleja (2014), Applied Physics Letters 105 (9) 091902)。また、プロセスにAl原子とIn原子が関与している場合、マスク上にc面配向物質の寄生核生成の傾向が強い(S. Albert, A. Bengoechea-Encabo, M.A. Sanchez-Garcia, E. Calleja, and U. Jahn (2013), J. Appl. Phys., 113 (11) 114306)。非極性結晶の無視できる垂直成長は、マスク上での寄生核生成を回避できる効率的なシャドーイング効果を提供することができない。これは、SAGを使用して非極性AlNを成長させる場合に起こる現象である(
図4.cを再度参照)。従って、このアプローチは、効率的なIII族窒化物ナノピラーや、高品質の純粋な六角形の2D非極性層、特にA
l(Ga)N及び
In(Ga)Nなどの三元III族窒化物層を得るのに役立たない。SAGは、十分なシャドーイング効果を有する非極性III族窒化物ナノピラーの秩序配列を得るには不適切であるため、代替技術を見つけることが新たな課題になる。
【0012】
a面非極性GaN疑似基板を得ることを目的としたナノピラーの使用の利点を示す4つの先行する研究がある(GB 24885887 B; US 8652947 B2; Shih-Chun Ling et al. (2009), Applied Physics Letters 94 (25) 251912; and Q.M. Li, Y. Lin, J.R. Creighton, J.J. Figiel, and G.T. Wang (2009), Adv. Mater., 21 (23), 2416)。しかしながら、言及された参考文献は、プロセスの主な欠点、特にナノピラーの不規則に分布した配列の合体についても強調している。
【0013】
確かに、不規則に分布したNiナノドット(Ni媒介)の助けを借りて成長した自己組織化(SA)a面GaNナノピラー(Q.M. Li, Y. Lin, J.R. Creighton, J.J. Figiel, and G.T. Wang (2009), Adv. Mater., 21 (23), 2416)は、高さと直径が大きく分散しているため、実用的ではない。SAナノピラーから得られた合体した層は、サファイア上で直接成長した2Dフィルムと比較してわずかに低いTD値(109cm-2)を示す。これは、LED及びLDの商業的作製に必要な値からまだ非常に遠い値である。合体した層のTDは、主にナノピラー間の合体した領域に現れ、元のナノピラーの方位方向と直径と平均距離に強く依存して、均一に分布していない。引用された文書では、不規則に分布した配列内のナノピラー密度とマージ面の両方が制御不能であるため、マージされた領域で新たに生成されたTDは制御不能である。これは、ナノピラーを準備するために不規則な配列を使用することの避けられない欠点である。上記の研究には、すべてのナノピラーが基板表面に対して垂直に成長するわけではないが、かなりの割合が表面法線方向から30°又は60°に傾いているため、SAナノピラーを使用する場合のデメリットの別の例が挙げられている。
【0014】
エッチングされたGaNナノピラーの不規則に分布した配列(GB 24885887 B, US 8652947 B2 and Shih-Chun Ling et al. (2009), in Applied Physics Letters 94, (25), 251912)は、垂直方向を維持するが、それらはランダムに分布する。従って、ナノピラーを除いて、上記の3つの関連研究では、誘電体マスクを使用して、TDの侵入をブロックするか(トップマスク)、c面GaN(横のマスク)に沿った寄生成長を停止する。ナノ結晶の再成長にはTDフィルター効果は利用されなかった。さらに、マスクの使用は、Al又はIn成分を有する高品質の非極性III族窒化物の実現を妨げる。最初の参考文献であるGB 24885887 Bは、ナノスケールでのSLEOプロセスと見なすことができる。このエッチングされたナノピラーの不規則な配列の場合、SiO2マスクはそれらの上部に残り、成長はナノピラーの側壁から開始する。他の2つの参考文献は、エッチング後のナノピラー側壁への誘電体マスクのex-situ堆積に依存している。その結果、それらの両方のプロセス全体は、非常に複雑になり、品質と再現性に悪影響を及ぼす可能性のある多くのステップを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、言及されたすべての困難と技術的問題を克服し、3×107cm-2のオーダーで推定される低いTD密度で、簡略化された作製プロセスにより、異種基板上に非極性で歪みのないIII族窒化物緻密フィルムを実現する。このタイプのフィルム又は層は、通常、技術分野では2Dフィルム/層と名付けられ、柱状層のような3D成長層とは対照的に、合体した層の一般的な用語である。「2D」という用語は、島のない滑らかな表面(つまり、柱状の表面ではない)を強調しただけである。エッチングされたナノピラーの秩序配列を合体させると、先行する研究のように、欠陥をブロックしたり寄生成長を回避したりするためにフィルムの成長中に誘電体/金属マスクは不要である。ナノピラーをエッチングした後、合体した層のTDの密度が制御可能になり、基板との格子不整合による歪みが除去される。
【0016】
本発明は、金属又は誘電体マスクを使用することなく、ナノピラーを合体させる簡単な方法によって、高品質のIII族窒化物層を実現できることを証明している。ナノピラー合体プロセスでの横方向成長は、TDとSFに強いフィルター効果をもたらす。これにより、高品質の材料を得るための作製プロセスを簡略化することができる。ナノピラーを使用するもう1つの明らかな利点は、それらに自然に歪みがないので、合体によって得られる2Dフィルムも、使用される開始基板に関係なく、基本的に歪みがないことである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、エッチングされた非極性III族窒化物ナノピラーの秩序配列の合体によって非極性III族窒化物緻密層を得るための方法を目的とする。さらに、本発明はまた、開示された方法によって得られ、有利な特性を有する、非極性III族窒化物二元及び三元の緻密で連続的な(2D)フィルム、層、又は疑似基板に関する。さらに、本発明は、In、Al及び両方の元素からなる群から選択された成分の1つを有し、それを得る方法に関係なく、III族窒化物ナノ結晶の秩序配列を包み込むIII族窒化物フィルムの特定の群を含む。III族窒化物フィルムの組成とIII族窒化物ナノ結晶の組成は異なっていてもよい。前記フィルムの群は、非極性InN、非極性AlN、非極性GaxAl1-xN、非極性InxAl1-xN及び非極性GaxIn1-xNからなる材料群から選択された組成の一つを有し、0<x<1である。
【0018】
本発明の第1の目的に関して、非極性III族窒化物二元及び三元層又はフィルムを得るためのプロセスは、以下のステップを含む。
【0019】
a)非極性III族窒化物テンプレート上にパターン化されたマスクを作製し、続いて、その上に孔のサイズが20nm~2000nmのスケールの範囲の秩序パターンを画定するステップであって、孔の秩序分布は、孔中心間の距離(ピッチ)が50nmと2000nmの間にあるパターンに従い、III族窒化物テンプレートは、式XxZ1-xNを有する結晶多形のないm面又はa面配向の単結晶材料であり、XとZは、Ga、In及びAlからなる元素群から独立して選択され、0≦x≦1であり、前記テンプレートは100nm以上の厚さを有するステップ。
【0020】
b)前のステップで予め定められたパターンに従って、ナノピラーの秩序配列をマスクによって前記テンプレート上にエッチングするステップ。
【0021】
c)前記マスクを除去するステップ。得られた構造は、今後は、合体によって2Dフィルムを実現するための開始テンプレートと呼ばれる(
図2.aを参照)。
【0022】
d)ナノピラーが、配列の組成と同じ組成を有するナノ結晶になるように、エッチングされたナノピラーの表面上にIII族窒化物を再成長させるステップ。このステップでは、ナノピラーに存在するほとんどのTDは、フィルターで除去される(
図2.bを参照)。関与する平面間で成長速度が異なるため、エッチングされたピラーの元の形状に関係なく、成長後、各ナノピラーは、長方形ブロックの上部形状を有するナノ結晶になる(今後は、
図3.bに示されるナノタイル)。これらのナノ結晶のジオメトリ及びサイズにより、次のステップでの最適な合体プロセスが可能になる。
【0023】
e)ナノタイル(再成長のステップdで得られる)上で実行される、III族窒化物をさらに成長させることによって2Dフィルムに合体するステップ(
図2.cを参照)。緻密層は、ステップa)のテンプレートと同じ又は異なる組成(即ち、GaN、AlN、InN又は任意の三元合金)を有し得る。基本的に、ステップe)は、ステップd)で得られたナノ結晶上で実行される、III族窒化物をさらに成長させることによって緻密層に合体することを意味する。
【0024】
図2は、次のようなステップb)、c)、d)及びe)のスケッチを示す。マスク除去後のナノピラーを有する構造(ステップb)とc)、ナノピラーをナノタイルに変える再成長(ステップd)、及び、合体したIII族窒化物フィルムを得るための更なる成長(ステップe)である。
【0025】
本明細書がステップd)の「再成長」に言及しているときはいつでも、ステップd)で「成長」と言うのと同じであると理解する必要がある。これは、実際には本質的なプロセスにおけるナノピラーの成長の最初の成長ステップであるためである。
【0026】
ナノピラー中心間の距離は50nm~2000nmであり、平均値からの偏差は5%未満であり、ピラーの断面サイズは20nm~2000nmであり、平均値の偏差は5%未満である。好ましくは、ナノピラーの高さは100nmと1000nmの間であり、平均値からの偏差は5%未満である。ナノピラーの前記距離、断面サイズ及び高さは、走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定することができる。
【0027】
III族窒化物テンプレートは、c面又は亜鉛ブレンド(立方体)領域との混合など、指定されたもの以外のツインズ又は相(結晶多形なし)を含まない、単結晶m面又はa面配向でなければならない。非極性III族窒化物テンプレートは、a)基板上に支持された非極性III族窒化物2D層(バッファー層と名付けられる)、又はb)非極性III族窒化物基板(その上にバッファー層が支持されていない)であり得る。非極性III族窒化物2D層を支持する基板は、異種基板や(非極性)III族窒化物基板など、任意の基板であり得る。例えば、方法は、大きいサイズ(50.8mm-2”-以上)、低コスト(価格は、バルク材料から切り出された非極性III族窒化物基板よりも低い)、及び高品質(TDの密度は3x107cm-2と低い)の非極性III族窒化物疑似基板を実現するために、SiCやAl2O3などの異種基板によって支持された非極性III族窒化物2D層を使用して実施することができる。また、例として、開示された方法は、歪みのない中間Ga(約50%)組成の三元エピタキシァル2D層を実現するために、バルク材料から切り出されたm面GaN基板によって支持された非極性の高Ga(80%を超える)組成の三元バッファー層を使用して実施することができる。また、方法は、バッファー層のないm面GaN基板を使用して、歪みのないm面InN層を実現するために実施することができる。いずれの場合も、テンプレートは100nm以上の厚さを有する。
【0028】
特定の実施形態では、方法は、100nm以上の厚さを有する異種基板であり得る基板上に、非極性III族窒化物均一2D層(バッファー層)を成長させる前の開始ステップを含み得、前記層は、結晶多形のないm面又はa面配向の単結晶材料である。
【0029】
均一に分布したナノタイルの配列を実現するための課題は、極性方向と非極性方向に沿った異なる面内成長速度のバランス、ならびにナノピラー配列の幾何学的配置、即ち、c方向に沿ったナノピラー距離及び直交する面内のものに決定的に依存する。
【0030】
本発明は、高品質の非極性III族窒化物疑似基板を得るために、以前に定義したように、制御された位置、直径及び高さを有するナノピラーの秩序配列が、TDの密度が低減された合体及び高品質の2D(緻密)層を制御することに、より適していることを証明している。まず、マスクを使用せずに寄生核生成を回避できるように、効率的なシャドウイング効果を提供するために、ナノピラー中心間の高さ、直径及び距離(ピッチ)が最適化される。効果的なシャドーイング効果は、寄生c面材料の出現のない非極性III族窒化物の成長も保証する。第二に、先行技術に見られるように、任意複数の結晶面の間の合体が高いTD密度をもたらすので、本発明の決定的な利点は、2つの面内配向のみが、合体、いわゆる「二次元合体」中に役割を果たすナノタイルのうまく整列され均一に分布した配列を提供することであることを再度言及する価値がある。この目的のために、重要な側面は、ピッチと直径に依存する、ナノピラー間の距離である。大きすぎると、合体が困難になり、c面(垂直)材料の寄生核生成が発生する可能性がある。小さすぎると、ナノ結晶のマージが速すぎて、部分的な合体が発生する前に材料を変更する(つまり、GaNからAlNに)機会が妨げられる。次に、マージ領域のTDは、ナノピラーの密度とマージ面、即ちナノピラーの位置とねじれが制御されているときに制御可能である。成長したナノピラーでは、直径と高さは、非極性III族窒化物テンプレートから継承されるTDの数を減らすための決定的なパラメーターである(P. Aseev, Z. Gacevic, A. Torres-Pardo, J.M. Gonzalez-Calbet, and E. Calleja (2016), Applied Physics Letters 108 (25), 253109)。エッチングされたナノピラーでは、直径が小さいほど、最終的に合体した層に入る可能性のある転位が発生する可能性が低くなる。
【0031】
従って、本発明は、Al/In元素の有無に関わらず、低いTD密度及び寄生核生成のない非極性III族窒化物層を実現するための鍵として、管理可能なパラメーターを有するナノピラーの秩序配列を提供する。
【0032】
このプロセスにより、非極性III族窒化物バッファー層を介して大きいサイズ(50.8mm-2”-以上)の異種基板上に目的の製品を成長させることができ、大きいサイズ、高品質、低コストの疑似基板になる。エッチングされた秩序配列からナノピラーを合体させる単純化された作製プロセスによるだけでなく、サファイアなどの低コスト異種基板の使用にもよるため、コストは低い。前述のように、III族窒化物エッチングされたナノピラーは、異種基板との格子不整合による歪みがない。最適化されたエッチングされた秩序配列は、前のセクションで述べたように、SA又はランダムに分布したナノピラーのすべての欠点を克服し、合体した層のTD(マージナノピラーの横方向の境界の数から推定される3x107cm-2まで)の密度を最小限に抑える。
【0033】
また、このプロセスは、最終製品の構造に誘電体/金属マスクを保持する必要がなくなり、最終的にその上に寄生成長が生じる可能性がある。
【0034】
上記したように、本発明の第2目的は、開示されたプロセスによって得られる一連の非極性III族窒化物二元及び三元緻密フィルム/層を対象とし、即ち、緻密層は、エッチングされたナノピラーから秩序配列で合体する。ここで、「III族窒化物」は、三元合金GaxAl1-xN、InxAl1-xN及びGaxIn1-xN(0<x<1)、並びに、二元のもの、GaN、AlN及びInNを含み、XxZ1-xNとして表され、カチオンXとZはIn、Ga及びAlを指し、0≦x≦1である。本発明によってカバーされる材料群は、非極性GaN、非極性AlN、非極性InN、非極性GaxAl1-xN、非極性InxAl1-xN及び非極性GaxIn1-xNの組成により形成され、0<x<1である。
【0035】
上記の説明から、最終結果は、少なくとも以下の層を含む多層材料になり得ることが、明らかに導き出される。
-再成長後にさらにナノ結晶長方形ブロック(ナノタイル)に発展するナノピラーの秩序のある(エッチングされた)配列として処理される、非極性III族窒化物テンプレートである層。
-連続的な成長は、ナノピラー、特にナノタイルによって支持された合体した非極性III族窒化物層をもたらす。
再成長したナノ結晶は、非極性III族窒化物フィルムの組成と同じ又は異なる組成を有する。
【0036】
本発明の第3目的はまた、その取得方法に関係なく、以下の式に従ったm面又はa面配向の非極性III族窒化物単結晶フィルムの特定のグループに関する。
-XxGa1-xN、カチオンXはIn又はAlを指し、0<x≦1であり、あるいは
-InxAl1-xN、0<x≦1である。
フィルムは、秩序配列でナノ結晶長方形ブロック(ナノタイル)を含み、単結晶フィルムに全体的又は部分的に埋め込まれ、前記ブロックは、式XxZ1-xNを有し、XとZは、第III族元素Ga、In及びAlから独立して選択され、0≦x≦1である。
【0037】
最終製品の支持体として基板を含めることができる。
【0038】
本発明で主張される製品は、デバイスが上に作られるときに、埋め込まれたマスクから生じる汚染及び寄生容量のリスクがない。要約すると、本発明は、歪みのない(又は大幅に低減された)III族窒化物光電子デバイス又は電子デバイスの更なるホモエピタキシャル成長を可能にする面内格子定数エンジニアリングを提供する、種々の組成を有する非極性III族窒化物2Dフィルムを提供する。特に興味深いのは、深紫外線及び緑-オレンジ-赤の発光デバイスのLED及びLDのQWで高いAl%及びIn%を達成するための面内格子定数のエンジニアリングである。一般的に言えば、III族窒化物テンプレート、又は現在市場で入手可能な疑似基板と比較して、本発明の製品は、非極性配向、より大きなサイズ、より低い価格、及び高品質を有する。さらに、この製品は、タンデム太陽電池などのタンデムデバイスを作製するための逐次プロセスの基礎を可能にする。
【0039】
本発明は、エッチングされたナノピラーの秩序配列に依存する。非極性III族窒化物テンプレートの場合、エッチングされたピラーは、効率的なシャドーイング効果のために十分な高さを提供することができる。さらに、合体は、基本的にc-及びm-/a-方向に沿って面内に発生し、マージ(2Dマージ)には2つの直交する平面のみが関与する。合体に関与する2つの結晶面は、同じ成長速度を示していない。つまり、c面は常により速い。従って、配列の長方形のパターンが必要である(
図2と3を参照)。さらに、c-及びm-/a-方向に沿ってピッチ、並びに再成長後のナノ結晶のサイズが正確に決定される。エッチングされたナノピラー上で成長した材料には、TDがないが、新たなTDがマージ領域に現れる可能性がある。成長条件の最適化によるごくわずかなねじれでの配列ジオメトリ及びピッチ(ナノピラーの密度)の最適化は、これらの新たなTDを最小化することにつながる。ナノピラー密度は、直径及びピッチに依存する。密度が低いと、非常に低いシャドーイング効果によって(特定の高さで)寄生成長を引き起こす可能性があるため、注意が必要である。シャドーイング効果を制御するもう1つのパラメーターは、エッチングの深さ(ナノピラー高さ)である。これらの変数はすべて、最適な配列ジオメトリを設計するための高い柔軟性を提供する。一方、かなり大きな直径(パックされた配列)は、ナノタイルが適切に整列される前に早い合体を引き起こす。前述のように、最適化に関与する3つのパラメーターの最適な範囲は、以下のとおりである。ナノピラー中心間の距離又はピッチは50nm~2000nmであり、平均値からの偏差は5%未満である。ピラーの断面サイズ(柱状ピラーの直径)は20nm~2000nmであり、平均値からの偏差は5%未満である。高さは100nm~1000nmであり、平均値からの偏差は5%未満である。
【0040】
本明細書に範囲が開示される場合、本発明の一部として、下限及び上限が含まれる。
【0041】
SAG MBEによってm面GaN2D層を作製するために、エッチングされたm面GaNナノピラーのパラメーター選択の具体例を以下に示す。効果的なシャドーイング効果を提供し、TD密度が3x107cm-2(マージナノピラーの横方向境界の数から推定)の合体したm面GaN2D層を得る、200nmの直径、c方向に沿った2000nmのピッチ、方位でa方向に沿った1500nmのピッチ、1000nmのエッチング深さを備えた、m面GaNナノピラーの長方形パターンに従った秩序配列である。
【0042】
本発明はまた、光電子デバイス、ならびに高出力デバイス及び高周波デバイスを開発するための開始テンプレート又は疑似基板としての、本方法により得られる製品だけでなく、ここに記載される新規の非極性フィルム群の用途にも関する。光電デバイスとしては、UV LEDと可視LED、UV LDと可視LD、及び太陽電池が考えられる。高出力デバイスと高周波デバイスとしては、電界効果トランジスタとバイポーラートランジスタが想定される。疑似基板はまた、組成の異なる任意2つのIII族窒化物層間の歪みのない層として、タンデム太陽電池などのデバイスに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】a)c面極性(0001)、b)III族窒化物中の六方晶系単位胞の非極性面であるa面(110)、及びc)m面(100)のスケッチである。
【
図2】非極性III族窒化物高品質の2Dフィルムの作製における主なステップを示し、a.1)とa.2)は、非極性ナノピラーのエッチングされた秩序配列であり、b.1)とb.2)は、再成長後の非極性ナノ結晶の秩序配列であり、c.1)とc.2)は、合体した2Dフィルムである。図では、合体したIII族窒化物層の組成は、エッチングされたナノピラー又は成長したナノ結晶(ナノタイル)の組成とは異なる。
【
図3】a)m面ナノピラーのエッチングされた秩序配列、b)再成長後のm面ナノ結晶の秩序配列、及びc)2Dm面フィルムへの二次元(面内)合体の走査型電子顕微鏡(SEM)上面画像を示す。
【
図4】合体した非極性AlN層の特性評価結果である、本発明に記載の方法によって作製された合体したm面非極性AlN層のa)表面のSEM画像とb)X線回折(XRD)θ/2θスペクトル、及びc)金属マスク(悪いシャドーイング効果)の助けを借りてSAGによって成長した非極性AlNの表面のSEM画像を示す。
【
図5】異種基板(バッファー)上に直接成長したm面GaN層、及び本発明(合体)に記載の方法を使用して成長したm面GaN層の低温(10K)フォトルミネセンススペクトルを示す。
【
図6】本発明に従って調製されたIII族窒化物デバイスの概略側面図である。
【
図7】独立した製品の例、本発明で開示されたIII族窒化物ナノ結晶の秩序配列を全体的又は部分的に包み込む非極性III族窒化物二元及び三元(In及び/又はAl元素を備えた)2Dフィルムの構造の例であり、フィルムとナノ結晶が異なる組成を有する場合、a)は、緻密層の底部に部分的に埋め込まれたIII族窒化物ナノ結晶の上部であり、b)は、緻密層の底部に埋め込まれたIII族窒化物ナノ結晶全体であり、c)とd)は、2Dフィルムが異種基板から分離された場合、
図7.aの構造の2つの可能な状況である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本明細書で開示される作製プロセスは、以下の詳細なステップを含む。
a)マスクは、好ましくは、金属マスクであり、より好ましくは、Niマスクである。マスクは、従来の方法(ジュールや電子ビーム蒸着など)によって堆積し、マスクパターンは、電子ビ-ムリソグラフィ(EBL)、ナノインプリント(NIL)、又はナノ/マイクロピラー用の光リソグラフィによって処理される。NILは、広域をカバーする最速の方法を提供するため、最適な技術である。孔は、円形、長方形、正方形、又は三角形にすることができる。マスクの孔配列のパターン(分布)は、三角形、正方形、及びひし形、平行四辺形、六角形などの多角形、又は任意の混合物からなる材料群から選択され、明確に定義された方向を持つジオメトリを持つことができる。非極性III族窒化物の異なる方位面の不均一な成長速度を考慮すると、
図2.aの上面図に示すように、孔配列のパターンの好ましいジオメトリは、[0001]方向(c面)に沿って配向された長辺を有する長方形である。
【0045】
プロセスは、基板上にa面又はm面配向を有する非極性III族窒化物バッファー層をあらかじめ成長させることから始めることができる。この実施形態では、基板は、好ましくは、Al2O3、SiC、Si、LiAlO2(LAO)、LiGaO2(LGO)、m面GaN及びm面AlN基板からなる群から選択される。III族窒化物バッファー層は、XxZ1-xNなどの任意の合金を表し、XとZは、第III族(Ga、In、Al)から独立して選択され、0<x<1である。より具体的には、III族窒化物バッファー層は、GaN、AlN、InN、AlxGa1-xN、InxGa1-xN及びInxAl1-xNのいずれかであり得、0<x<1である。
【0046】
テンプレートが非極性III族窒化物2D基板である場合、前記基板は、GaN、AlN、InN、AlxGa1-xN、InxGa1-xN及びInxAl1-xNからなる群から選択され、0<x<1である。
【0047】
テンプレートの表面配向は、プロセス終了時の最終的な2D合体したフィルムの表面配向を決定する。例を挙げたセクションでは、2つの好ましいバッファー、即ち、MOVPEとMBEによってそれぞれ成長した(112)Al2O3上のa面GaN及び(100)LiAlO2上のm面GaNを示す。
【0048】
b)第2ステップでは、誘導結合プラズマ技術(ICP)を使用して、マスクパターンによって決定されるジオメトリ及び配向を有するナノピラーの秩序配列を特定の深さまでエッチングすることが好ましい。得られるナノピラーの断面形状は、任意のタイプ又は形態であり得る。
図2.aは、エッチングプロセスのスケッチを示し、
図3.aは、純粋な円筒形ではなくわずかな円錐台形を有する得られたナノピラーのSEM写真を示す。これは、再成長とTDフィルタリングのプロセスに悪影響を与えることはなく、さらに優れている。
【0049】
c)エッチングされたナノピラー上で再成長を行う前に、Niマスクは、好ましくはFeCl3溶液を使用して除去される。
【0050】
d)再成長に必要な時間は、使用する技術と条件によって異なる。MOVPE、ハロゲン化物気相エピタキシー(HVPE)、MBE、化学ビームエピタキシー(CBE)、スパッタリング又は物理的気相輸送(PVT)など、任意の成長技術が使用されてもよい。MBEを使用してIII族窒化物を成長させる場合、材料と最終層の形態に応じた特定のIII/V比を、450℃~1000℃の温度範囲で使用する必要がある。両方の制限が含まれる。前記温度は、材料組成によって異なる。再成長後、エッチングされたナノピラーの形状は、初期のナノピラー形状にかかわらず、非極性ナノ結晶、即ち、ナノタイルの典型的な形状に発展する。ナノ結晶の再成長は、2D層への合体プロセスの前の最後のステップである。再成長は、主に直交方向に沿って発生し、c方向に沿ってより速いが、上部の垂直方向の成長は非常に小さい。ナノピラーの長さとピッチ(及びMBEの場合の衝突角度)によっては、ナノピラーの底部までの全長で横方向の再成長が起こるか、途中で停止することがある。長さがピッチよりも長い場合、ナノ結晶は
図7.aのようになる。長さがピッチ以下である場合、
図7.bのようになり、ナノ結晶の残りの覆われていない部分は非常に小さいか、無視できる。
【0051】
ナノ結晶の均一な合体を得るために、ナノピラー配列ジオメトリは、合体に関与する2つの面内方向に沿って、異なる成長速度のバランスを取る必要がある。再成長中、ナノピラーは、c方向に向かってより速く伸び、ファセットが明確に定義される。
図3.bは、MBE再成長後に得られたm面GaNナノ結晶の秩序配列のSEM上面画像を示す。ここでは、円錐台からわずかに長方形のタイルへの明確な形状変化が観察される。このプロセス中、ナノピラー内のほとんどのTDは、ナノ結晶の横方向の自由表面に向かって曲がり、消滅する。
【0052】
e)最後のステップは、ナノタイルパターンを2つの面内直交方向に沿ってマージして2D層を生成することにより、ナノタイルパターンをさらに成長させることによる制御された合体である(
図3.c)。唯一のTDは、ナノ結晶の横方向のマージによって生成されるものであり、2つの結晶ファセットのみが役割を果たすという事実により、TD密度が制限される。前述のように、合体した層及びナノ結晶の秩序配列は、同じ組成又は異なる組成を有するIII族窒化物であり得る。例えば、2DAlN層を得るには、まず、GaNナノ結晶を再成長させ、次に、合体を生成する前にAlNナノ結晶を再成長させる必要がある。従って、最終的な2D層は、歪みがなく、TD密度が低い。SFは開始テンプレート表面に対して垂直に、即ち、ナノピラーのシリンダージェネレーターベクトル(垂直)に沿って発展するため、SF密度も低下するが、ナノ結晶は基本的に横方向に沿って成長するため、SFはない。
【0053】
任意の場合として、このプロセスは、ステップe)で高品質の非極性合体したIII族窒化物層を成長させた後、平坦で滑らかな表面を得て、所望の導電性を確立するために、より厚い層のホモエピタキシァル過成長の追加ステップ(ドーピング)を含み得る。この厚い層は、n型又はp型(Si及びMg)のいずれかでドープできる。このようにして、ナノ結晶再成長ステップは、合体プロセスに干渉するドーピングによって変更されない(このような場合)。
【0054】
別の好ましい実施形態では、この方法は、さらに、基板を除去し、及び/又は、非極性III族窒化物緻密層を、ステップe)の合体後に形成された層が支持されるテンプレートの下部残りの部分から分離し、ナノピラーの一部を維持するかまったく維持しないステップをさらに含む。このステップは、III族窒化物デバイスの成長のための疑似基板又はテンプレートとして緻密層を使用するときに実行することが好ましい。前記ステップは、ナノピラーを(即ち、レーザー、超音波浴、機械的応力などによって)破壊することによって実行することが好ましい。得られた製品は、結晶多形のない非極性ウルツIII族窒化物二元又は三元層、m面又はa面配向の単結晶材料である。前記フィルムは、過成長したフィルムの下面に全体的に又は部分的に埋め込まれた、単結晶配列の長方形ブロックを含む。
【0055】
基板を除去する、及び/又は、テンプレートの残りの下部から非極性III族窒化物層を分離するためのこのステップは、より厚い層のホモエピタキシァル過成長のステップの前又は後に実行することができ、あるいは言い換えれば、より厚い層のホモエピタキシァル過成長は、分離ステップの後又は前に実行することができる。ステップe)の後のこれらのステップの順序は交換できる。
【0056】
前のセクションで述べたように、本発明はまた、本明細書でコメントされる実施形態のいずれかを含む、開示された方法によって入手可能な材料にも関する。前記材料は、前に議論された改良された特性、及び開示された組成/構造のいずれかを有する。このステートメントは、非極性III族窒化物二元及び三元フィルムがナノピラー及び基板から分離される場合を含む。
【0057】
最終的な緻密層、開始テンプレート、及び再成長したナノ結晶は、同じ組成又は異なる組成を含み得る。請求された方法によって直接得られる製品の場合、ナノピラー及びナノ結晶は、プロセスで最終的に成長されるIII族窒化物層と同じ組成又は異なる組成を有し得る。
【0058】
それらを得る方法とは独立して定義される請求された製品の場合、ナノピラー及びナノ結晶は、III族窒化物緻密層の組成とは異なる組成を有する。その結果、非極性III族窒化物層は、合体した層の下部に部分的又は全体的に埋め込まれたIII族窒化物ナノ結晶の秩序配列を常に包み込んでいる。前記III族窒化物ナノ結晶は、その層の組成とは異なる組成を有する。ナノ結晶のブロックは、直方体、錐台、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される形状を有し、上面図は長方形である。
【0059】
この方法によって得られる材料とは別に、本発明はまた、前のセクションでコメントされた式を有する非極性III族窒化物二元及び三元フィルム又は層である材料の群に関する。これらは、この方法によって得られるすべての製品ではなく、非極性III族窒化物二元及び三元2Dフィルム又は層の特定の群にすぎない。特定の実施形態では、長方形のブロックは、フィルムに全体的に埋め込まれている(
図7.aを参照)が、他の特定の実施形態では、ブロックは、フィルムに部分的にのみ埋め込まれている。即ち、フィルムの表面からブロックの突出部分がある(
図7.bを参照)。別の特定の場合では、材料又は製品は、特定のパターンに従うナノピラーの秩序配列の上部である、長方形のブロック上に支持された非極性III族窒化物二元又は三元フィルムである。ナノピラーのパターンと組成の方法で開示されていることは、この非極性フィルムの群にも当てはまる。
【0060】
実施例
<実施例1>MBEによるm面AlN疑似基板の取得
本実施例は、MBEによって成長した高品質m面AlN2D層の成長プロセスを示す。プロセスは、プラズマアシストMBE(PA-MBE)システムを使用して、(100)γ-LiAlO2基板上にm面GaNバッファー層を成長させることによって開始する。熱NIL技術が、バッファー上に予め堆積したNiフィルム上のパターンを画定するために使用された。
【0061】
次に、室温及び1×10-5torr未満の圧力で、BCl3:Cl2(20sccm:10sccm)混合物を備えたICPを使用して、ナノピラー配列をバッファーから、必要とされた深さ及び最適化されたジオメトリ(実施例1の2つのパラメーターの場合、それぞれ0.5マイクロメートルとディスク形状)にドライエッチングする。
【0062】
その後、Niディスクは、FeCl3溶液を使用して各ピラーの上部から除去された。
【0063】
図2と3に示すように、c方向とa方向に沿ったピッチサイズが625nmの正方形のパターンが得られた。しかしながら、特定の成長条件下におけるAlNに対するa面とc面の成長速度の関数として決定されたc方向とa方向に沿ったナノピラー間の距離を有する長方形のパターンが好ましい。
【0064】
ナノピラー上でのGaNの再成長プロセスは、まず、エッチング損傷を回復し、歪みのない、実質的にTDのない均質な長方形のナノ結晶(ナノタイル)の配列をさらに発展させるのに役立つ。AlN疑似基板を得るために、これはまさにAlNナノ結晶がGaNナノタイル配列上で再成長するステップである。最終的に、2Dm面AlN層が、AlNナノ結晶の合体によって得られた。
【0065】
図4.aと4.bは、合体したm面非極性AlN層の特性評価結果を示す。
図4.aでは、SEM画像は、滑らかな表面を有する、合体したm面非極性AlN層を示す。
図4.bの高分解能X線回折(XRD)θ/2θスペクトル、及び更なるXRD測定(図示せず)により、他の異なる位相又は配向のない単結晶m面非極性AlNの成長が明らかになる。非極性AlN疑似基板は市販されていない。
図4.cに示すように、任意のタイプのマスク(シャドーイング効果がない)の助けを借りて非極性AlN疑似基板を成長させると、c面(垂直)AlNの寄生核生成が発展する。
【0066】
本発明の利点は、任意の組成を有するIII族窒化物のm面とa面の両方に関連する。実施例1の成長プロセスは、任意の組成を有する非極性III族窒化物を使用して進むことで、高品質の疑似基板を得ることができる。
図5は、(100)γ-LiAlO
2上に直接成長したm面GaNバッファー、及び実施例1のプロセスに従って成長した最終的なm面GaN層(合体した)からのPLスペクトルを示す。バッファースペクトルのD
0Xと対称的に、合体した層のスペクトルの強く鋭い励起子発光(D
0X)は、最初の場合の合体した層の光学品質がはるかに優れていることを示し、また、SF/D
0X強度比の劇的な減少が観測される。
【0067】
<実施例2>MBEによるInGaN-GaNタンデム太陽電池用のm面InGaN/GaN歪みのない層の取得
前のセクションで述べたように、提案された方法は、各層が異なる組成を持ち、誘電体マスクを使用せずに歪みのない多層(タンデム)デバイスを作製するのにも適している。この実施例は、MBEによって成長したm面GaNp‐n接合上に低いTD密度で歪みのないm面InGaN層を生成する方法を示す。歪みのないm面InGaN層上にさらに成長させると、InGaN-GaNタンデム太陽電池用のm面InGaNp‐n接合が生成される。
図6は、提案された方法によって成長した歪みのないp型m面InGaN層(パターンフィル)を有するm面InGaN-GaNタンデム太陽電池のスケッチを示す。
【0068】
m面GaN上にm面InGaN層を直接成長させてp‐n接合を形成することによって、InGaNとGaNの間の格子不整合によりm面InGaN層に歪みが生じる。この歪みが緩和されると、TDが生成されるため、電池特性に重大な悪影響を及ぼす。光の望ましい吸収を得るために必要な厚さが臨界厚さを超えるため、歪みは緩和する可能性が最も高くなる。
【0069】
高品質のm面GaNp‐n接合は、m面GaN疑似基板上にホモエピタキシャル成長する。m面GaNp‐n接合の上部p型GaN層は、実施例1のGaNバッファーとして機能できる。次に、幾つかの違いを除いて、同じ成長プロセスをn型m面InGaN層に適用できる。a)m面GaNp‐n接合の上部p型GaN層は、実施例1のGaN開始テンプレートよりも薄く成長させることができる。これは、そこからエッチングされたp型GaNナノピラーは、p型GaN層とn型m面InGaN層の間の歪みを開放するためにのみに使用されるためである。b)p型GaNの再成長の時間は、実施例1の意図しないドープされたGaNの再成長よりも短くする必要がある。これは、p型ドーパント(Mg)は、横方向成長速度、つまりエッチングされたGaNピラーの合体を加速する可能性があるためである。c)n型ドーピングの場合、シリコンドーピングによって引き起こされる早期合体を回避するためにInGaN合体が開始すると、Siを使用することができる。MBEによる成長を実行すると、MgドープGaNの再成長及びSiドープInGaNの合体を含む成長プロセス全体は、同時に達成することができる。