(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】制御装置、車両及び制御方法
(51)【国際特許分類】
B60G 17/015 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
B60G17/015 A
B60G17/015 B
(21)【出願番号】P 2022527250
(86)(22)【出願日】2021-05-10
(86)【国際出願番号】 IB2021053935
(87)【国際公開番号】W WO2021240276
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2020094408
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(72)【発明者】
【氏名】増田 誠
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-165298(JP,A)
【文献】実開昭63-095991(JP,U)
【文献】特開2005-199944(JP,A)
【文献】特開2006-027549(JP,A)
【文献】特開2008-144685(JP,A)
【文献】特開2010-100094(JP,A)
【文献】特開2019-077197(JP,A)
【文献】国際公開第2019/077761(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 17/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(101)と車輪(103)との間に設けられた減衰力調整式のショックアブソーバー(111)を備えた車両(100)に搭載され、前記ショックアブソーバー(111)の減衰力を制御する制御装置(1)であって、
前記制御装置(1)は、
前記車両(100)がジャンプしたことを検出するジャンプ検出部(3)と、
前記ジャンプ検出部(3)が前記車両(100)のジャンプを検出した
場合に、前記ショックアブソーバー(111)の収縮時の減衰力を規定減衰力(DF1)以下に制限する着陸時減衰力制御を行う制御部(4)と、
を備え
、
前記ジャンプ検出部(3)が前記車両(100)のジャンプを検出する前における前記ショックアブソーバー(111)の減衰力特性を、第1減衰力特性(C1)とした場合、
前記制御部(4)は、
前記着陸時減衰力制御において、
前記ショックアブソーバー(111)の収縮速度が規定速度よりも小さくなっている場合には、前記ショックアブソーバー(111)の減衰力特性を、前記第1減衰力特性(C1)よりもハードな第2減衰力特性(C2)にし、
前記ショックアブソーバー(111)の収縮速度が前記規定速度よりも大きくなっている場合には、前記ショックアブソーバー(111)の減衰力特性を、前記第2減衰力特性(C2)よりもソフトな第3減衰力特性(C3)にする
制御装置(1)。
【請求項2】
前記制御部(4)は、
前記ジャンプ検出部(3)が前記車両(100)のジャンプを検出した後の、前記ショックアブソーバー(111)の最初の収縮工程において、前記着陸時減衰力制御を行
う
請求項
1に記載の制御装置(1)。
【請求項3】
請求項1
又は請求項
2に記載の制御装置(1
)を備えた
車両(100)。
【請求項4】
オフロード車両である
請求項
3に記載の車両(100)。
【請求項5】
車体(101)と車輪(103)との間に設けられた減衰力調整式のショックアブソーバー(111)を備えた車両(100)に用いられる、前記ショックアブソーバー(111)の減衰力を制御する制御方法であって、
制御装置(1)が、前記車両(100)がジャンプしたことを検出するジャンプ検出ステップ(S20)と、
前記ジャンプ検出ステップ(S20)において前記車両(100)のジャンプ
が検出
された
場合に、
前記制御装置(1)が、前記ショックアブソーバー(111)の収縮時の減衰力を規定減衰力(DF1)以下に制限する着陸時減衰力制御ステップ(S30)と、
を備え
、
前記ジャンプ検出ステップ(S20)において前記車両(100)のジャンプが検出される前における前記ショックアブソーバー(111)の減衰力特性を、第1減衰力特性(C1)とした場合、
前記制御装置(1)が、
前記着陸時減衰力制御ステップ(S30)において、
前記ショックアブソーバー(111)の収縮速度が規定速度よりも小さくなっている場合には、前記ショックアブソーバー(111)の減衰力特性を、前記第1減衰力特性(C1)よりもハードな第2減衰力特性(C2)にし、
前記ショックアブソーバー(111)の収縮速度が前記規定速度よりも大きくなっている場合には、前記ショックアブソーバー(111)の減衰力特性を、前記第2減衰力特性(C2)よりもソフトな第3減衰力特性(C3)にする
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された減衰力調整式のショックアブソーバーの減衰力を制御する制御装置、該制御装置を備えた車両、及び、車両に搭載された減衰力調整式のショックアブソーバーの減衰力の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体と各車輪との間に減衰力特性が固定されているショックアブソーバーを備えた車両が知られている。また、近年では、制御装置によって減衰力特性を変更できる減衰力調整式のショックアブソーバーを車体と各車輪との間に備えた車両も提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばオフロード車両等のように、走行中にジャンプする可能性のある車両がある。なお、ジャンプとは、走行中に全ての車輪のタイヤが路面から離れた状態になることである。ジャンプした車両が着陸した際、ショックアブソーバーの減衰力特性が変更されないと、場合によっては、減衰力が不足してショックアブソーバーが所謂底付きしてしまう。すなわち、ジャンプした車両が着陸した際、ショックアブソーバーが収縮側の端部まで収縮してしまい、ショックアブソーバーのピストンがストッパーに衝突してしまう。その結果、瞬間的な衝撃が搭乗者に伝わり、搭乗者の乗り心地が悪化してしまう。これを解消するには、ショックアブソーバーが底付きしないように、ショックアブソーバーの減衰力を大きくする必要がある。しかしながら、ショックアブソーバーの減衰力を単純に大きくするだけでは、ショックアブソーバーが硬くなりすぎる。このため、やはり、瞬間的な衝撃が搭乗者に伝わり、搭乗者の乗り心地が悪化する。
【0005】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、車体と車輪との間に設けられた減衰力調整式のショックアブソーバーを備えた車両に搭載され、ショックアブソーバーの減衰力を制御する制御装置であって、ジャンプした車両が着陸した際の搭乗者の乗り心地を従来よりも向上させることができる制御装置を得ることを第1の目的とする。また、本発明は、このような制御装置を備えた車両を得ることを第2の目的とする。また、本発明は、車体と車輪との間に設けられた減衰力調整式のショックアブソーバーを備えた車両に用いられる、ショックアブソーバーの減衰力を制御する制御方法であって、ジャンプした車両が着陸した際の搭乗者の乗り心地を従来よりも向上させることができる制御方法を得ることを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る制御装置は、車体と車輪との間に設けられた減衰力調整式のショックアブソーバーを備えた車両に搭載され、前記ショックアブソーバーの減衰力を制御する制御装置であって、前記制御装置は、前記車両がジャンプしたことを検出するジャンプ検出部と、前記ジャンプ検出部が前記車両のジャンプを検出した際、前記ショックアブソーバーの収縮時の減衰力を規定減衰力以下に制限する着陸時減衰力制御を行う制御部と、を備えている。
【0007】
また、本発明に係る車両は、車体と、車輪と、前記車体と前記車輪との間に設けられた減衰力調整式のショックアブソーバーと、本発明に係る制御装置と、を備えている。
【0008】
また、本発明に係る制御方法は、車体と車輪との間に設けられた減衰力調整式のショックアブソーバーを備えた車両に用いられる、前記ショックアブソーバーの減衰力を制御する制御方法であって、前記車両がジャンプしたことを検出するジャンプ検出ステップと、前記ジャンプ検出ステップにおいて前記車両のジャンプを検出した際、前記ショックアブソーバーの収縮時の減衰力を規定減衰力以下に制限する着陸時減衰力制御ステップと、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、減衰力調整式のショックアブソーバーを備えた車両に採用される。このため、本発明が採用された車両は、ショックアブソーバーの減衰力を、ジャンプした車両が着陸した際にショックアブソーバーが底付きしない減衰力まで大きくすることができる。また、本発明は、車両のジャンプを検出した際、ショックアブソーバーの収縮時の減衰力を規定減衰力以下に制限する。このため、本発明が採用された車両においては、ジャンプした車両が着陸した際、ショックアブソーバーが硬くなりすぎることを抑制できる。したがって、本発明は、ジャンプした車両が着陸した際に瞬間的な衝撃が搭乗者に伝わることを抑制でき、車両が着陸した際の搭乗者の乗り心地を従来よりも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る車両の側面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る車両の平面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る制御装置を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る車両における、ジャンプ状態から着陸後までの挙動を説明するための図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る車両が
図4に示す動作を行った際に、ショックアブソーバーの減衰力特性を変化させない場合の、該ショックアブソーバーの挙動を示す図である。
【
図6】
図5に示すようにショックアブソーバーが動作した際の、該ショックアブソーバーの収縮速度を示す図である。
【
図7】
図5に示すようにショックアブソーバーが動作した際の、該ショックアブソーバーの収縮時の減衰力を示す図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る車両が
図4に示す動作を行った際に、該車両に搭載された制御装置が着陸時減衰力制御を行った場合の、ショックアブソーバーの収縮時の減衰力を示す図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る制御装置、車両及び制御方法の一例について、図面を用いて説明する。
【0012】
なお、以下では、本発明に係る車両の一例として自動四輪車を説明するが、本発明に係る車両は自動四輪車以外の車両であってもよい。自動四輪車以外の車両とは、例えば、エンジン及び電動モータのうちの少なくとも1つを駆動源とする自転車、自動二輪車及び自動三輪車等である。なお、自転車とは、ペダルに付与される踏力によって路上を推進することが可能な乗物全般を意味している。つまり、自転車には、普通自転車、電動アシスト自転車、電動自転車等が含まれる。また、自動二輪車又は自動三輪車は、いわゆるモータサイクルを意味し、モータサイクルには、オートバイ、スクーター、電動スクーター等が含まれる。
【0013】
また、以下で説明する構成及び動作等は一例であり、本発明は、そのような構成及び動作等である場合に限定されない。また、各図においては、同一の又は類似する部材又は部分に対して、同一の符号を付している場合又は符号を付すことを省略している場合がある。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
【0014】
実施の形態.
以下に、実施の形態に係る制御装置1、該制御装置1を備えた車両100、及び該制御装置1が行う制御方法について説明する。
<車両及び制御装置の構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る車両の側面図である。また、
図2は、本発明の実施の形態に係る車両の平面図である。なお、
図1及び
図2では、紙面左側が車両100の前側となっている。
車両100は、オフロード車両であり、車体101と車輪103とを備えている。また、本実施の形態に係る車両100は、自動四輪車であり、4つの車輪103を備えている。具体的には、車両100は、車輪103として、左前輪103FL、右前輪103FR、左後輪103RL、及び右後輪103RRを備えている。
【0015】
また、車両100は、スプリング110及びショックアブソーバー111を備えている。スプリング110及びショックアブソーバー111は、車体101と各車輪103との間に設けられている。このため、車両100は、4つのスプリング110と、4つのショックアブソーバー111と、を備えている。具体的には、車両100は、スプリング110として、スプリング110FL、スプリング110FR、スプリング110RL、及びスプリング110RRを備えている。また、車両100は、ショックアブソーバー111として、ショックアブソーバー111FL、ショックアブソーバー111FR、ショックアブソーバー111RL、及びショックアブソーバー111RRを備えている。
【0016】
スプリング110FL及びショックアブソーバー111FLは、車体101と左前輪103FLとの間に設けられている。スプリング110FR及びショックアブソーバー111FRは、車体101と右前輪103FRとの間に設けられている。スプリング110RL及びショックアブソーバー111RLは、車体101と左後輪103RLとの間に設けられている。スプリング110RR及びショックアブソーバー111RRは、車体101と右後輪103RRとの間に設けられている。
【0017】
本実施の形態に係るショックアブソーバー111は、減衰力調整式のショックアブソーバーである。すなわち、ショックアブソーバー111は、減衰力特性を変更できるショックアブソーバーである。このため、車両100は、ショックアブソーバー111の減衰力を調整するアクチュエータ112を備えている。アクチュエータ112は、ショックアブソーバー111毎に設けられている。具体的には、車両100は、4つのアクチュエータ112を備えている。より具体的には、車両100は、アクチュエータ112として、アクチュエータ112FL、アクチュエータ112FR、アクチュエータ112RL、及びアクチュエータ112RRを備えている。アクチュエータ112FLは、ショックアブソーバー111FLの減衰力を調整する。アクチュエータ112FRは、ショックアブソーバー111FRの減衰力を調整する。アクチュエータ112RLは、ショックアブソーバー111RLの減衰力を調整する。アクチュエータ112RRは、ショックアブソーバー111RRの減衰力を調整する。なお、減衰力調整式のショックアブソーバーであれば、ショックアブソーバー111として、公知の種々のショックアブソーバーを用いることができる。
【0018】
制御装置1は、アクチュエータ112と電気的に接続されている。そして、制御装置1は、アクチュエータ112へ、ショックアブソーバー111の減衰力に対応する指令信号を出力するものである。すなわち、制御装置1は、アクチュエータ112を介して、ショックアブソーバー111の減衰力を制御する構成となっている。具体的には、本実施の形態では、制御装置1は、アクチュエータ112FLへ、ショックアブソーバー111FLの減衰力に対応する指令信号を出力する。また、制御装置1は、アクチュエータ112FRへ、ショックアブソーバー111FRの減衰力に対応する指令信号を出力する。また、制御装置1は、アクチュエータ112RLへ、ショックアブソーバー111RLの減衰力に対応する指令信号を出力する。また、制御装置1は、アクチュエータ112RRへ、ショックアブソーバー111RRの減衰力に対応する指令信号を出力する。
【0019】
ここで、ショックアブソーバー111の収縮速度が同じ状態を比較した場合、ショックアブソーバー111の減衰力は、該ショックアブソーバー111の減衰力特性によって異なる。例えば、ショックアブソーバー111の収縮速度が同じ状態を比較した場合、ショックアブソーバー111の減衰力特性をハードな方向へ変更すると、ショックアブソーバー111の減衰力が大きくなる。また例えば、ショックアブソーバー111の収縮速度が同じ状態を比較した場合、ショックアブソーバー111の減衰力特性をソフトな方向へ変更すると、ショックアブソーバー111の減衰力が小さくなる。このため、本実施の形態では、制御装置1は、アクチュエータ112へ、ショックアブソーバー111の減衰力特性に対応する指令信号を出力する。すなわち、制御装置1は、アクチュエータ112を介して、ショックアブソーバー111の減衰力特性を制御する構成となっている。例えば、ショックアブソーバー111が油圧式ショックアブソーバーの場合、制御装置1は、ショックアブソーバー111の作動油が通る流路の流路断面積を制御することで、ショックアブソーバー111の減衰力特性を制御する。また例えば、ショックアブソーバー111が磁性流体ショックアブソーバーの場合、制御装置1は、ショックアブソーバー111の磁性流体に作用する磁界又は電界を制御し、該磁性流体の動粘度を制御することで、ショックアブソーバー111の減衰力特性を制御する。
【0020】
なお、制御装置1がアクチュエータ112へ出力する指令信号は、ショックアブソーバー111及びアクチュエータ112の種類によって異なる。例えば、アクチュエータ112へ入力される電流の値に対応して、ショックアブソーバー111の減衰力特性が変更される構成の場合、制御装置1が出力する指令信号は電流である。すなわち、制御装置1は、ショックアブソーバー111の減衰力特性に対応する値の電流を、アクチュエータ112へ出力する。また例えば、アクチュエータ112へ入力される電圧の値に対応して、ショックアブソーバー111の減衰力特性が変更される構成の場合、制御装置1が出力する指令信号は電圧である。すなわち、制御装置1は、ショックアブソーバー111の減衰力特性に対応する値の電圧を、アクチュエータ112へ出力する。
【0021】
また、本実施の形態に係る車両100は、制御装置1と電気的に接続された、前後方向加速度センサー113、左右方向加速度センサー114、信号出力装置115、及びバネ下加速度センサー116を備えている。
【0022】
前後方向加速度センサー113は、車体101に設けられており、車体101の前後方向の加速度を検出するものである。左右方向加速度センサー114は、車体101に設けられており、車体101の左右方向の加速度を検出するものである。
【0023】
信号出力装置115は、車両100の速度に対応する信号を出力ものである。従来、種々の構成によって、車両の速度が求められている。このため、車両100の速度に対応する信号として、車両の速度を求める際に従来より用いられている種々の信号を用いることができる。信号出力装置115は、このような従来より公知の種々の信号を出力する信号出力装置である。例えば、従来、トランスミッションの変速段とエンジン回転数とに基づいて、車両の速度を求める構成が知られている。このような構成を車両100に用いる場合、信号出力装置115は、トランスミッションの変速段とエンジン回転数とに関する信号を出力する装置である。また例えば、車輪速に基づいて、車両の速度を求める構成が知られている。このような構成を車両100に用いる場合、信号出力装置115は、車輪速センサーである。
【0024】
バネ下加速度センサー116は、車両100のバネ下の上下方向の加速度を検出するものである。車両100のバネ下とは、車両100のうちで、ショックアブソーバー111を基準として車輪103側となる部分である。例えば、車輪103、図示せぬハブ、及び図示せぬ車軸等が、車両100のバネ下となる。本実施の形態では、車両100は、バネ下加速度センサー116として、バネ下加速度センサー116FL、バネ下加速度センサー116FR、バネ下加速度センサー116RL、及びバネ下加速度センサー116RRを備えている。
【0025】
バネ下加速度センサー116FLは、車両100のバネ下においてショックアブソーバー111FL周辺となる箇所に設けられている。そして、バネ下加速度センサー116FLは、ショックアブソーバー111FL周辺のバネ下部分に発生する上下方向の加速度を検出する。バネ下加速度センサー116FRは、車両100のバネ下においてショックアブソーバー111FR周辺となる箇所に設けられている。そして、バネ下加速度センサー116FRは、ショックアブソーバー111FR周辺のバネ下部分に発生する上下方向の加速度を検出する。バネ下加速度センサー116RLは、車両100のバネ下においてショックアブソーバー111RL周辺となる箇所に設けられている。そして、バネ下加速度センサー116RLは、ショックアブソーバー111RL周辺のバネ下部分に発生する上下方向の加速度を検出する。バネ下加速度センサー116RRは、車両100のバネ下においてショックアブソーバー111RR周辺となる箇所に設けられている。そして、バネ下加速度センサー116RRは、ショックアブソーバー111RR周辺のバネ下部分に発生する上下方向の加速度を検出する。
【0026】
なお、バネ下加速度センサー116の個数及び配置位置は、あくまでも一例である。各ショックアブソーバー111周辺のバネ下に発生する上下方向の加速度を検出又は推定等によって求めることができれば、バネ下加速度センサー116の個数及び配置位置は任意である。また、前後方向加速度センサー113、左右方向加速度センサー114、信号出力装置115、及びバネ下加速度センサー116は、別々のものであってもよいし、少なくとも2つを1つのユニットとして構成してもよい。例えば、前後方向加速度センサー113及び左右方向加速度センサー114として、いわゆる慣性計測ユニットを用いてもよい。
【0027】
ここで、例えばオフロード車両等のように、走行中にジャンプする可能性のある車両がある。なお、ジャンプとは、走行中に全車輪のタイヤが路面から離れた状態になることである。ジャンプした車両が着陸した際、ショックアブソーバーの減衰力が小さいと、ショックアブソーバーが所謂底付きしてしまう。すなわち、ジャンプした車両が着陸した際、ショックアブソーバーが収縮側の端部まで収縮してしまい、ショックアブソーバーのピストンがストッパーに衝突してしまう。その結果、瞬間的な衝撃が搭乗者に伝わり、搭乗者の乗り心地が悪化してしまう。これを解消するには、ショックアブソーバーが底付きしないように、ショックアブソーバーの減衰力を大きくする必要がある。しかしながら、ショックアブソーバーの減衰力を単純に大きくするだけでは、ショックアブソーバーが硬くなりすぎる。このため、やはり、瞬間的な衝撃が搭乗者に伝わり、搭乗者の乗り心地が悪化する。
【0028】
一方、本実施の形態に係る制御装置1は、ジャンプした車両100が着陸した際、ショックアブソーバー111の底付きを抑制しつつ、ショックアブソーバー111の減衰力が大きくなりすぎないように、ショックアブソーバー111の減衰力を制御する。以下、このようにショックアブソーバー111の減衰力を制御する制御装置1の一例の詳細構成を、説明する。
【0029】
<制御装置の詳細構成>
図3は、本発明の実施の形態に係る制御装置を示すブロック図である。
制御装置1は、受信部2、ジャンプ検出部3、及び制御部4を備えている。受信部2は、前後方向加速度センサー113、左右方向加速度センサー114、信号出力装置115、及びバネ下加速度センサー116の検出値を受信する機能部である。
【0030】
ジャンプ検出部3は、車両100がジャンプしたことを検出する機能部である。本実施の形態では、ジャンプ検出部3は、前後方向加速度センサー113及び左右方向加速度センサー114の検出値に基づいて、車両100がジャンプしたことを検出している。具体的には、車両100がジャンプしている状態では、全ての車輪103のタイヤが路面から離れた状態になる。このため、車両100がジャンプしている状態では、車両100には推進力が働かない。したがって、車両100がジャンプしている状態では、前後方向加速度センサー113の検出する車体101の前後方向の加速度が小さくなる。また、車両100がジャンプしている状態では、左右方向加速度センサー114の検出する車体101の左右方向の加速度が小さくなる。このため、本実施の形態では、ジャンプ検出部3は、前後方向加速度センサー113の検出値が規定の閾値よりも小さくなり、左右方向加速度センサー114の検出値が規定の閾値よりも小さくなった際、車両100がジャンプしたと判定している。なお、前後方向加速度センサー113の閾値と左右方向加速度センサー114の閾値とは、同じ値でなくてもよい。
【0031】
ここで、ジャンプ検出部3による車両100の上述したジャンプの検出方法は、一例である。例えば、車体101の上下方向の加速度を検出する上下方向加速度センサーを車両100に備えている場合、ジャンプ検出部3は、上下方向加速度センサーの検出値に基づいて、車両100がジャンプしたことを検出してもよい。具体的には、車両100がジャンプしている状態では、全ての車輪103のタイヤが路面から離れているため、路面から車体101への入力がなくなり、車体101の上下方向の加速度が小さくなる。このため、ジャンプ検出部3は、上下方向加速度センサーの検出値が規定の閾値よりも小さくなった際、車両100がジャンプしたと判定してもよい。
【0032】
また例えば、車体101とバネ下との相対距離を測定するストロークセンサーを車両100に備えている場合、ジャンプ検出部3は、ストロークセンサーの検出値に基づいて、車両100がジャンプしたことを検出してもよい。具体的には、車両100が路面上を走行している状態では、スプリング110及びショックアブソーバー111に車体101の重量がかかる。一方、車両100がジャンプしている状態では、スプリング110及びショックアブソーバー111に車体101の重量がかからない。このため、車両100がジャンプしている状態では、車両100が路面上を走行している状態と比較し、車体101とバネ下との間の距離が大きくなる。したがって、ジャンプ検出部3は、ストロークセンサーの検出値に基づいて、車両100がジャンプしたことを検出できる。なお、車体の上下方向の加速度とバネ下の上下方向の加速度とに基づいて、車体とバネ下との相対距離を求める方法が、従来より知られている。このため、車体101の上下方向の加速度を検出する上下方向加速度センサーを車両100に備えている場合、ジャンプ検出部3は、上下方向加速度センサーの検出値とバネ下加速度センサー116の検出値とに基づいて、車体101とバネ下との相対距離を求め、車両100がジャンプしたことを検出してもよい。
【0033】
なお、ストロークセンサーは長いアーム部を備えている。このため、このようなストロークセンサーをオフロード車両に用いた場合、ストロークセンサーのアーム部が岩及び枝等に接触し、ストロークセンサーの故障が懸念される。このため、車両100がストロークセンサーを用いない構成とすることにより、車両100の耐久性を向上させることができる。
【0034】
制御部4は、着陸時減衰力制御を行う機能部である。着陸時減衰力制御とは、ジャンプ検出部3が車両100のジャンプを検出した際、ショックアブソーバー111の収縮時の減衰力を規定減衰力以下に制限する制御である。
【0035】
このように構成された制御装置1は、減衰力調整式のショックアブソーバー111を備えた車両100に搭載されている。このため、車両100は、ショックアブソーバー111の減衰力を、ジャンプした車両100が着陸した際にショックアブソーバー111が底付きしない減衰力まで大きくすることができる。また、本実施の形態に係る制御装置1においては、ジャンプ検出部3が車両100のジャンプを検出した際、制御部4は、着陸時減衰力制御により、ショックアブソーバー111の収縮時の減衰力を規定減衰力以下に制限する。このため、制御装置1が搭載された車両100においては、ジャンプした車両100が着陸した際、ショックアブソーバー111が硬くなりすぎることを抑制できる。したがって、本実施の形態に係る制御装置1は、ジャンプした車両100が着陸した際に瞬間的な衝撃が搭乗者に伝わることを抑制でき、車両100が着陸した際の搭乗者の乗り心地を従来よりも向上させることができる。
【0036】
ここで、本実施の形態に係る制御装置1の制御部4は、着陸時減衰力制御において、ショックアブソーバー111の収縮時の減衰力の制限によるショックアブソーバー111のストロークの増加を抑制し、車両100が着陸した際の搭乗者の乗り心地をさらに向上させている。以下、このような着陸時減衰力制御の一例について説明する。なお、以下では、本実施の形態に係る着陸時減衰力制御の理解を容易とするため、まず、ショックアブソーバー111の減衰力特性を変化させずにショックアブソーバー111の底付きを抑制した場合の、車両100の挙動について説明する。そして、その後に、本実施の形態に係る着陸時減衰力制御を行った場合の車両100の挙動について説明する。
【0037】
図4は、本発明の実施の形態に係る車両における、ジャンプ状態から着陸後までの挙動を説明するための図である。なお、
図4に示す横軸Tは、時間を表している。
時間T1においてジャンプしている車両100は、時間T2にて路面120に着陸する。車両100が着陸した際の運動エネルギーは、ショックアブソーバー111が収縮する際に熱エネルギーに変換されることで、ショックアブソーバー111に吸収されていく。そして、時間T3において、車両100のショックアブソーバー111は、最も収縮した状態となる。なお、制御装置1の制御部4は、ジャンプ検出部3が車両100のジャンプを検出した後の、ショックアブソーバー111の最初の収縮工程において、着陸時減衰力制御を行う。すなわち、制御部4は、
図4の時間T2から時間T3までの時間において、着陸時減衰力制御を行う。
【0038】
図5は、本発明の実施の形態に係る車両が
図4に示す動作を行った際に、ショックアブソーバーの減衰力特性を変化させない場合の、該ショックアブソーバーの挙動を示す図である。なお、
図5に示す横軸Tは、時間を表している。また、
図5に示す縦軸STは、ショックアブソーバー111のストロークである。この縦軸STは、車両100が路面120に停止している状態を、基準状態の0としている。また、この縦軸STは、ショックアブソーバー111が基準状態から収縮する方向を正の値とし、ショックアブソーバー111が基準状態から伸張する方向を負の値としている。また、
図5に挙動が示されているショックアブソーバー111の減衰力は、ショックアブソーバー111の底付きを抑制できる大きさとなっている。
【0039】
時間T1では、車両100は、ジャンプしている。このため、時間T1では、スプリング110及びショックアブソーバー111に車体101の重量がかかっていない。このため、ショックアブソーバー111は、基準状態よりも伸びた状態となっている。時間T2において車両100が着陸すると、ショックアブソーバー111に車体101の重量がかかっていき、ショックアブソーバー111が収縮していく。そして、時間T3において、車両100のショックアブソーバー111は、最も収縮した状態となる。
【0040】
図6は、
図5に示すようにショックアブソーバーが動作した際の、該ショックアブソーバーの収縮速度を示す図である。なお、
図6に示す横軸Tは、時間を表している。また、
図6に示す縦軸DVは、ショックアブソーバー111の収縮速度である。
時間T2において車両100が着陸し、ショックアブソーバー111が収縮し始めると、ショックアブソーバー111の収縮速度が増加していく。また、ショックアブソーバー111が収縮する過程において、車両100が着陸した際の運動エネルギーは、熱エネルギーに変換されることで、ショックアブソーバー111に吸収されていく。このため、ショックアブソーバー111が収縮している途中で、ショックアブソーバー111の収縮速度が減少していく。そして、車両100のショックアブソーバー111が最も収縮する時間T3では、ショックアブソーバー111の収縮速度は0となる。
【0041】
図7は、
図5に示すようにショックアブソーバーが動作した際の、該ショックアブソーバーの収縮時の減衰力を示す図である。なお、
図7に示す横軸Tは、時間を表している。また、
図7に示す縦軸DFは、ショックアブソーバー111の収縮時の減衰力である。
ショックアブソーバー111の減衰力は、ショックアブソーバー111の伸縮速度の関数である。このため、ショックアブソーバー111の減衰力特性を変化させない場合、ショックアブソーバー111の収縮時の減衰力を示す波形は、ショックアブソーバー111の収縮速度を示す波形と同様となる。具体的には、時間T2において車両100が着陸し、ショックアブソーバー111の収縮速度が増加していくと、ショックアブソーバー111の収縮時の減衰力も増加していく。また、ショックアブソーバー111の収縮速度が減少し始めると、ショックアブソーバー111の収縮時の減衰力も減少していく。そして、車両100のショックアブソーバー111が最も収縮する時間T3では、ショックアブソーバー111の収縮時の減衰力は0となる。
【0042】
図5~
図7で示したように、ショックアブソーバー111の減衰力特性を変化させずに該ショックアブソーバー111の底付きを抑制した場合、上述のように、ショックアブソーバーが硬くなりすぎる場合がある。このため、車両100が着陸した際、瞬間的な衝撃が搭乗者に伝わり、搭乗者の乗り心地が悪化する場合がある。例えば、ショックアブソーバー111の減衰力が
図7に示す規定減衰力DF1よりも大きくなった場合、車両100が着陸した際、瞬間的な衝撃が搭乗者に伝わり、搭乗者の乗り心地が悪化する場合がある。
【0043】
一方、上述のように、本実施の形態に係る制御装置1の制御部4は、車両100の着陸後に行う際着陸時減衰力制御において、ショックアブソーバー111の収縮時の減衰力を規定減衰力DF1以下に制限する。そして、ジャンプした車両100が着陸した際、ショックアブソーバー111が硬くなりすぎることを抑制して、瞬間的な衝撃が搭乗者に伝わることを抑制し、搭乗者の乗り心地を従来よりも向上している。また、
図8で後述するように、制御装置1の制御部4は、着陸時減衰力制御において、ショックアブソーバー111の収縮時の減衰力の制限によるショックアブソーバー111のストロークの増加を抑制し、車両100が着陸した際の搭乗者の乗り心地をさらに向上させている。
【0044】
図8は、本発明の実施の形態に係る車両が
図4に示す動作を行った際に、該車両に搭載された制御装置が着陸時減衰力制御を行った場合の、ショックアブソーバーの収縮時の減衰力を示す図である。なお、
図8に示す横軸Tは、時間を表している。また、
図8に示す縦軸DFは、ショックアブソーバー111の収縮時の減衰力である。なお、
図8には、ショックアブソーバー111の減衰力特性を変化させない場合におけるショックアブソーバー111の収縮時の減衰力も、すなわち
図7で示した波形も二点鎖線で示されている。
【0045】
図8に示すように、本実施の形態に係る制御装置1の制御部4は、車両100の着陸後に行う着陸時減衰力制御において、ショックアブソーバー111の収縮時の減衰力が規定減衰力DF1以下の減衰力である目標減衰力DF2に近づくように、ショックアブソーバー111の減衰力特性を制御する。本実施の形態のようにショックアブソーバー111の減衰力特性を制御することにより、ジャンプした車両100が着陸した際、ショックアブソーバー111の収縮時の減衰力を規定減衰力DF1以下に制限することができ、瞬間的な衝撃が搭乗者に伝わることを抑制できる。
【0046】
また、本実施の形態のようにショックアブソーバー111の減衰力特性を制御することにより、
図8に示すように、ショックアブソーバー111の収縮時の減衰力が比較的小さい領域では、ショックアブソーバー111の減衰力特性を変化させない場合と比べ、ショックアブソーバー111の収縮時の減衰力を大きくすることができる。また、本実施の形態のようにショックアブソーバー111の減衰力特性を制御することにより、
図8に示すように、ショックアブソーバー111の収縮時の減衰力が比較的大きい領域では、ショックアブソーバー111の減衰力特性を変化させない場合と比べ、ショックアブソーバー111の収縮時の減衰力を小さくすることができる。
【0047】
ここで、
図8に示すように、本実施の形態のようにショックアブソーバー111の減衰力特性を制御することにより、ショックアブソーバー111の収縮時の減衰力が比較的大きい領域では、領域Aに示す分だけ、ショックアブソーバー111の減衰力特性を変化させない場合と比べ、ショックアブソーバー111の吸収するエネルギーは減少する。一方、
図8に示すように、本実施の形態のようにショックアブソーバー111の減衰力特性を制御することにより、ショックアブソーバー111の収縮時の減衰力が比較的小さい領域では、領域B1及び領域B2に示す分だけ、ショックアブソーバー111の減衰力特性を変化させない場合と比べ、ショックアブソーバー111の吸収するエネルギーを増大させることができる。このため、本実施の形態のようにショックアブソーバー111の減衰力特性を制御することにより、ショックアブソーバー111の収縮時の減衰力の制限によるショックアブソーバー111のストロークの増加を抑制でき、車両100が着陸した際の搭乗者の乗り心地をさらに向上させることができる。
【0048】
目標減衰力DF2に近づくようにショックアブソーバー111の減衰力特性を制御する上述の着陸時減衰力制御は、ショックアブソーバー111の減衰力特性を無段階に変更していく方法でも実施できるが、本実施の形態では、ショックアブソーバー111の減衰力特性を多段的に変更していく方法を採用している。なぜならば、減衰力特性を変更した場合、ショックアブソーバー111の伸縮速度からショックアブソーバー111の減衰力を求めるための数式又はマップ等が異なるものとなる。また、減衰力特性を変更した場合、ショックアブソーバー111の伸縮速度も変化する。このため、ショックアブソーバー111の減衰力特性を変更する回数が多いほど、ショックアブソーバー111の減衰力を求める作業が複雑となる。したがって、ショックアブソーバー111の減衰力特性を多段的に変更していく方法の方が、ショックアブソーバー111の減衰力特性を無段階に変更していく方法と比べ、ショックアブソーバー111の減衰力特性を変更する回数を抑制でき、ショックアブソーバー111の減衰力の制御を容易にできる。
【0049】
以下、ショックアブソーバー111の減衰力特性を多段的に変更していく方法の詳細について説明する。ここで、当該方法を説明するに際し、ジャンプ検出部3が車両100のジャンプを検出する前の状態のショックアブソーバー111の減衰力特性を、第1減衰力特性C1とする。
【0050】
本実施の形態に係る制御装置1の制御部4は、車両100の着陸後に行う着陸時減衰力制御において、ショックアブソーバー111の収縮速度が規定速度よりも小さくなっている状態では、ショックアブソーバー111の減衰力特性を、第1減衰力特性C1よりもハードな第2減衰力特性C2とする。すなわち、ショックアブソーバー111の収縮速度が同じ場合、第2減衰力特性C2となっているショックアブソーバー111の減衰力は、第1減衰力特性C1となっているショックアブソーバー111の減衰力よりも大きくなる。
図8では、時間T2から時間T4までの時間と、時間T5から時間T3までの時間とにおいて、ショックアブソーバー111の収縮速度が規定速度よりも小さくなっている。また、本実施の形態では、ショックアブソーバー111の収縮速度が規定速度よりも小さくなっている状態の全ての時間において、ショックアブソーバー111の減衰力特性が第2減衰力特性C2となっている。なお、ショックアブソーバー111の収縮速度が規定速度よりも小さくなっている状態の少なくとも一部の時間において、ショックアブソーバー111の減衰力特性が第2減衰力特性C2となっていれば、ショックアブソーバー111の収縮時の減衰力の制限によるショックアブソーバー111のストロークの増加を抑制できる。
【0051】
また、本実施の形態に係る制御装置1の制御部4は、車両100の着陸後に行う着陸時減衰力制御において、ショックアブソーバー111の収縮速度が規定速度以上になっている状態では、ショックアブソーバー111の減衰力特性を、第2減衰力特性C2よりもソフトな第3減衰力特性C3とする。すなわち、ショックアブソーバー111の収縮速度が同じ場合、第3減衰力特性C3となっているショックアブソーバー111の減衰力は、第2減衰力特性C2となっているショックアブソーバー111の減衰力よりも小さくなる。
図8では、時間T4から時間T5までの時間において、ショックアブソーバー111の収縮速度が規定速度以上になっている。すなわち、
図8では、時間T4から時間T5までの時間において、ショックアブソーバー111の減衰力特性が第3減衰力特性C3となっている。なお、ショックアブソーバー111の減衰力特性を第3減衰力特性C3とするタイミングは、ショックアブソーバー111の収縮速度が規定速度以上となる前であってもよい。また、ショックアブソーバー111の減衰力特性を第3減衰力特性C3から他の減衰力特性に変更するタイミングは、ショックアブソーバー111の収縮速度が規定速度よりも小さくなった後でもよい。
【0052】
このようにショックアブソーバー111の減衰力特性を多段的に変更していくことにより、目標減衰力DF2に近づくようにショックアブソーバー111の減衰力特性を制御することができる。なお、一度の着陸時減衰力制御中に、制御部4は、第2減衰力特性C2となる減衰力特性を時間によって変更していってもよい。同様に、一度の着陸時減衰力制御中に、制御部4は、第3減衰力特性C3となる減衰力特性を時間によって変更していってもよい。しかしながら、本実施の形態では、一度の着陸時減衰力制御中、制御部4は、第2減衰力特性C2として1つの減衰力特性を用いており、第3減衰力特性C3ととして1つの減衰力特性を用いている。すなわち、本実施の形態では、一度の着陸時減衰力制御中、制御部4は、第2減衰力特性C2とする際に一定値の指令信号を出力する構成となっている。また、一度の着陸時減衰力制御中、制御部4は、第3減衰力特性C3とする際に一定値の指令信号を出力する構成となっている。上述のように、ショックアブソーバー111の減衰力特性を変更する回数を抑制するほど、ショックアブソーバー111の減衰力の制御を容易にできるからである。
【0053】
ここで、本実施の形態に係る制御装置1は、信号出力装置115から、車両100の速度に対応する信号を受けることができる。すなわち、本実施の形態に係る制御装置1は、車両100の速度を把握することができる。このような場合、制御部4は、車両100の速度に応じて、少なくとも着陸時減衰力制御毎に、第2減衰力特性C2として用いられる減衰力特性、及び第3減衰力特性C3として用いられる減衰力特性を異ならせることが好ましい。車両100の速度によって、車両100が着陸した際の運動エネルギーが異なるからである。このため、車両100の速度に応じて、少なくとも着陸時減衰力制御毎に、第2減衰力特性C2として用いられる減衰力特性、及び第3減衰力特性C3として用いられる減衰力特性を異ならせることにより、第2減衰力特性C2及び第3減衰力特性C3としてより好適な減衰力特性を用いることができ、車両100が着陸した際の搭乗者の乗り心地をさらに向上させることができる。
【0054】
なお、ショックアブソーバー111の収縮速度は、種々の方法により求めることができる。
【0055】
例えば、本実施の形態に係る制御装置1は、車両100のバネ下の上下方向の加速度を検出するバネ下加速度センサー116を備えている。車両100の着陸後において、車両100のバネ上である車体101の上下動とバネ下の上下動とを比べた場合、車体101の上下動は、バネ下の上下動よりも遅い。このため、バネ下加速度センサー116の検出値から、車体101とバネ下との大まかな相対距離を求めることができる。すなわち、バネ下加速度センサー116の検出値から、ショックアブソーバー111のおおまかなストロークを求めることができ、ショックアブソーバー111のおおまかな収縮速度を求めることができる。
【0056】
具体的には、本実施の形態では、制御部4は、バネ下加速度センサー116の検出値に基づいて、次のように、ショックアブソーバー111の収縮速度を求めている。
図6で説明したように、車両100が着陸した後のショックアブソーバー111の収縮過程では、ショックアブソーバー111の収縮速度が増加していった後、ショックアブソーバー111の収縮速度が減少していく。すなわち、車両100が着陸した後のショックアブソーバー111の収縮過程では、ショックアブソーバー111の収縮速度が増加している途中において、ショックアブソーバー111の収縮加速度が最大となる状態がある。本実施の形態では、バネ下加速度センサー116の検出値から、ショックアブソーバー111の収縮加速度が最大となる状態を求めている。
【0057】
より具体的には、本実施の形態では、制御部4は、バネ下加速度センサー116の検出値を微分し、加加速度の符号が正から負に変わる状態を検出している。この状態は、ショックアブソーバー111の収縮加速度が最大となる状態である。車両100が着陸した後のショックアブソーバー111の収縮過程において、ショックアブソーバー111の収縮速度が規定速度となる前のある状態を検出できれば、当該状態から第1規定時間後にショックアブソーバー111の収縮速度が規定速度以上になることを推定できる。また、ショックアブソーバー111の収縮速度が規定速度となる前のある状態を検出できれば、当該状態から第1規定時間よりも遅い第2規定時間後に、ショックアブソーバー111の収縮速度が規定速度よりも小さくなることを推定できる。
【0058】
なお、制御部4は、車両100の速度に応じて、上述の第1規定時間及び第2規定時間を異ならせることが好ましい。車両100の速度によって、車両100が着陸した際の運動エネルギーが異なるため、バネ下加速度センサー116の検出値より求めたショックアブソーバー111の状態からの、ショックアブソーバー111の収縮速度の変化度合いが異なるからである。このため、車両100の速度に応じて上述の第1規定時間及び第2規定時間を異ならせることにより、ショックアブソーバー111の収縮速度をより正確に推定することができる。
【0059】
また、車体101の上下方向の加速度を検出する上下方向加速度センサーを車両100に備えている場合、上下方向加速度センサーの検出値とバネ下加速度センサー116の検出値とに基づいて、車体101とバネ下との相対距離を求めることができる。すなわち、上下方向加速度センサーの検出値とバネ下加速度センサー116の検出値とに基づいて、ショックアブソーバー111のストロークを求めることができ、ショックアブソーバー111の収縮速度を求めることができる。なお、この場合、制御部4は、例えば、ショックアブソーバー111のストロークを微分して、ショックアブソーバー111の収縮速度を直接求めてもよい。
【0060】
上下方向加速度センサーの検出値とバネ下加速度センサー116の検出値とに基づいて、ショックアブソーバー111の収縮速度を求めることにより、ショックアブソーバー111の収縮速度をより正確に求めることができる。一方、バネ下加速度センサー116の検出値のみでショックアブソーバー111の収縮速度を求めることにより、制御構成を簡略化できる。
【0061】
また、車体101とバネ下との相対距離を測定するストロークセンサーを車両100に備えている場合、ストロークセンサーの検出値に基づいて、ショックアブソーバー111のストロークを求めることができ、ショックアブソーバー111の収縮速度を求めることができる。なお、この場合、制御部4は、例えば、ショックアブソーバー111のストロークを微分して、ショックアブソーバー111の収縮速度を直接求めてもよい。ただし、上述のように、オフロード車両にストロークセンサーを用いた場合、ストロークセンサーの故障が懸念される。このため、車両100がストロークセンサーを用いない構成とすることにより、車両100の耐久性を向上させることができる。
【0062】
<制御装置の動作>
続いて、制御装置1の動作について説明する。
【0063】
図9は、本発明の実施の形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
制御の開始条件となった際、ステップS10において制御装置1は、
図9に示す制御を開始する。制御の開始条件とは、車両100のエンジンが起動したとき等である。ステップS20は、ジャンプ検出ステップである。ステップS20において制御装置1のジャンプ検出部3は、車両100がジャンプしたか否かを判定する。ジャンプ検出部3は、車両100がジャンプしたと判定するまで、換言すると車両100がジャンプしたことを検出するまで、ステップS20のジャンプ検出ステップを繰り返す。また、ジャンプ検出部3が車両100のジャンプを検出した際、制御装置1は、ステップS30に進む。
【0064】
ステップS30は、着陸時減衰力制御ステップである。ステップS30において制御装置1の制御部4は、ショックアブソーバー111の収縮時の減衰力を規定減衰力DF1以下に制限する制御を行う。すなわち、ステップS30において制御部4は、着陸時減衰力制御を行う。本実施の形態では、制御部4は、ステップS30の着陸時減衰力制御ステップにおいて、ステップS31~ステップS36を行い、ショックアブソーバー111の収縮時の減衰力が規定減衰力DF1以下の減衰力である目標減衰力DF2に近づくように、ショックアブソーバー111の減衰力特性を多段制御する。以下、ステップS31~ステップS36について、具体的に説明する。
【0065】
ステップS31は、減衰力特性ハード方向変更ステップである。ステップS31において制御部4は、ショックアブソーバー111の減衰力特性を、第1減衰力特性C1から、該第1減衰力特性C1よりもハードな第2減衰力特性C2に変更する。ステップS31の後のステップS32は、減衰力特性変更判定ステップである。ステップS32において制御部4は、ショックアブソーバー111の減衰力特性を第2減衰力特性C2から第3減衰力特性C3に変更するタイミングが来たか否かを判定する。制御部4は、ショックアブソーバー111の減衰力特性を第2減衰力特性C2から第3減衰力特性C3に変更するタイミングが来るまで、ステップS32を繰り返す。また、制御部4は、ショックアブソーバー111の減衰力特性を第2減衰力特性C2から第3減衰力特性C3に変更するタイミングが来た際、ステップS33に進む。
【0066】
ステップS33は、減衰力特性ソフト方向変更ステップである。ステップS33において制御部4は、ショックアブソーバー111の減衰力特性を、第2減衰力特性C2から、該第2減衰力特性C2よりもソフトな第3減衰力特性C3に変更する。ステップS33の後のステップS34は、減衰力特性変更判定ステップである。ステップS34において制御部4は、ショックアブソーバー111の減衰力特性を第3減衰力特性C3から第2減衰力特性C2に変更するタイミングが来たか否かを判定する。制御部4は、ショックアブソーバー111の減衰力特性を第3減衰力特性C3から第2減衰力特性C2に変更するタイミングが来るまで、ステップS34を繰り返す。また、制御部4は、ショックアブソーバー111の減衰力特性を第3減衰力特性C3から第2減衰力特性C2に変更するタイミングが来た際、ステップS35に進む。
【0067】
ステップS35は、減衰力特性ハード方向変更ステップである。ステップS35において制御部4は、ショックアブソーバー111の減衰力特性を、第3減衰力特性C3から、該第3減衰力特性C3よりもハードな第2減衰力特性C2に変更する。ステップS35の後のステップS36は、終了判定ステップである。ステップS36において制御部4は、着陸時減衰力制御を終了するか否かを判定する。制御部4は、着陸時減衰力制御を終了すると判定するまで、ステップS36を繰り返す。また、制御部4は、着陸時減衰力制御を終了すると判定すると、ステップS40に進み、
図9に示す制御を終了する。なお、制御部4が着陸時減衰力制御を終了すると判定する条件は、例えば、ジャンプ検出部3が車両100のジャンプを検出した後の、ショックアブソーバー111の最初の収縮工程の終了である。
【0068】
<制御装置の効果>
本実施の形態に係る制御装置1は、車体101と車輪103との間に設けられた減衰力調整式のショックアブソーバー111を備えた車両100に搭載され、ショックアブソーバー111の減衰力を制御するものである。制御装置1は、ジャンプ検出部3と、制御部4とを備えている。ジャンプ検出部3は、車両100がジャンプしたことを検出する。制御部4は、ジャンプ検出部3が車両100のジャンプを検出した際、ショックアブソーバー111の収縮時の減衰力を規定減衰力DF1以下に制限する着陸時減衰力制御を行う。
【0069】
上述のように、このように構成された制御装置1においては、ジャンプした車両100が着陸した際、ショックアブソーバー111の底付きによる瞬間的な衝撃を抑制でき、ショックアブソーバー111が硬くなりすぎることによる瞬間的な衝撃も抑制できる。このため、このように構成された制御装置1においては、車両100が着陸した際の搭乗者の乗り心地を従来よりも向上させることができる。
【0070】
好ましくは、制御装置1の制御部4は、着陸時減衰力制御において、ショックアブソーバー111の収縮時の減衰力が規定減衰力DF1以下の減衰力である目標減衰力DF2に近づくように、ショックアブソーバー111の減衰力特性を制御する構成である。
このように構成された制御装置1においては、ショックアブソーバー111の収縮時の減衰力の制限によるショックアブソーバー111のストロークの増加を抑制でき、車両100が着陸した際の搭乗者の乗り心地をさらに向上させることができる。
【0071】
好ましくは、目標減衰力DF2に近づくようにショックアブソーバー111の減衰力特性を制御する着陸時減衰力制御において、制御装置1の制御部4は、ショックアブソーバー111の減衰力特性を次のように制御する構成である。ジャンプ検出部3が車両100のジャンプを検出する前の状態のショックアブソーバー111の減衰力特性を、第1減衰力特性C1とする。この場合、制御部4は、着陸時減衰力制御において、ショックアブソーバー111の収縮速度が規定速度よりも小さくなっている状態の少なくとも一部の時間では、ショックアブソーバー111の減衰力特性を、第1減衰力特性C1よりもハードな第2減衰力特性C2とする。また、制御部4は、着陸時減衰力制御において、ショックアブソーバー111の収縮速度が規定速度以上になっている状態では、ショックアブソーバー111の減衰力特性を、第2減衰力特性C2よりもソフトな第3減衰力特性C3とする。
ショックアブソーバー111の減衰力特性をこのように多段的に変更していくことにより、ショックアブソーバー111の減衰力特性を無段階に変更していく場合と比べ、ショックアブソーバー111の減衰力特性を変更する回数を抑制でき、ショックアブソーバー111の減衰力の制御を容易にできる。
【0072】
好ましくは、ショックアブソーバー111の減衰力特性を多段的に変更していく際、制御部4は、第2減衰力特性C2とする際に一定値の指令信号を出力する構成となっている。また、制御部4は、第3減衰力特性C3とする際に一定値の指令信号を出力する構成となっている。
このように制御装置1を構成することにより、ショックアブソーバー111の減衰力特性を変更する回数をより抑制でき、ショックアブソーバー111の減衰力の制御をより容易にできる。
【0073】
好ましくは、制御装置1が搭載される車両100は、オフロード車両である。オフロード車両は、ジャンプを伴う走行が想定されやすい。このため、車両100が着陸した際の搭乗者の乗り心地を向上できる制御装置1は、オフロード車両に搭載されるのが好適である。
【0074】
以上、本実施の形態に係る制御装置1について説明したが、本発明に係る制御装置は、本実施の形態の説明に限定されるものではなく、本実施の形態の一部のみが実施されてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 制御装置、2 受信部、3 ジャンプ検出部、4 制御部、100 車両、101 車体、103 車輪、103FL 左前輪、103FR 右前輪、103RL 左後輪、103RR 右後輪、110(110FL,110FR,110RL,110RR) スプリング、111(111FL,111FR,111RL,111RR) ショックアブソーバー、112(112FL,112FR,112RL,112RR) アクチュエータ、113 前後方向加速度センサー、114 左右方向加速度センサー、115 信号出力装置、116(116FL,116FR,116RL,116RR) バネ下加速度センサー、120 路面。