(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】加工用錫メッキ原板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20240515BHJP
C22C 38/14 20060101ALI20240515BHJP
C22C 38/54 20060101ALI20240515BHJP
C21D 9/46 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
C22C38/00 301T
C22C38/14
C22C38/54
C21D9/46 K
(21)【出願番号】P 2022538261
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(86)【国際出願番号】 KR2020018455
(87)【国際公開番号】W WO2021125790
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-08-16
(31)【優先権主張番号】10-2019-0171864
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ジ-イク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、 ジェ-チュン
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-242857(JP,A)
【文献】特開2010-150571(JP,A)
【文献】特開2002-317248(JP,A)
【文献】特開昭59-074233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
C21D 9/46- 9/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、炭素(C)0.0005~0.005%、マンガン(Mn)0.15~0.60%、アルミニウム(Al)0.01~0.06%、窒素(N)0.0005~0.004%、ボロン(B)0.0005~0.003%、チタニウム(Ti)0.01~0.035%、
シリコン(Si)0.03%以下(0%は除外)、リン(P)0.01~0.03%、硫黄(S)0.003~0.015%、クロム(Cr)0.02~0.15%、ニッケル(Ni)0.01~0.1%、および銅(Cu)0.02~0.15%を含み、残部
は鉄(Fe)および不可避不純物
からなり、
下記式1
および式2を満足
し、
表面硬度(Hr30T)が54~60である錫メッキ原板。
[式1]4.8≦([Ti]+[Al])/[N]-[B]≦12.5
(式1において、[Ti]、[Al]、[N]、および[B]はそれぞれメッキ原板内のTi、Al、N、およびBの含量(重量%)を各原子量で割った値を意味する。)
[式2]0.015≦[Mn]*[Cu]/[S]≦0.050
(式2において、[Mn]、[Cu]、および[S]はそれぞれメッキ原板内のMn、Cu、およびSの含量(重量%)を各原子量で割った値を意味する。)
【請求項2】
下記式3をさらに満足する、請求項
1に記載の錫メッキ原板。
[式3]0.8≦([Ti]-[N])/[C]≦2.5
(式3において、[Ti]、[N]、および[C]はそれぞれメッキ原板内のTi、N、およびCの含量(重量%)を各原子量で割った値を意味する。)
【請求項3】
前記メッキ原板は、抵抗溶接後母材部と溶接熱影響部の平均結晶粒の粒径差が3μm未満である、請求項1
または2のいずれか一項に記載の錫メッキ原板。
【請求項4】
前記メッキ原板を
240℃でティンメルティングおよび
180~220℃範囲でベーキング処理した後の降伏点延伸率は0.5%未満である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の錫メッキ原板。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の錫メッキ原板の一面または両面に位置する錫メッキ層を含む錫メッキ鋼板。
【請求項6】
重量%で、炭素(C)0.0005~0.005%、マンガン(Mn)0.15~0.60%、アルミニウム(Al)0.01~0.06%、窒素(N)0.0005~0.004%、ボロン(B)0.0005~0.003%、チタニウム(Ti)0.01~0.035%、
シリコン(Si)0.03%以下(0%は除外)、リン(P)0.01~0.03%、硫黄(S)0.003~0.015%、クロム(Cr)0.02~0.15%、ニッケル(Ni)0.01~0.1%、および銅(Cu)0.02~0.15%を含み、残部
は鉄(Fe)および不可避不純物を
からなり、
下記式1
および式2を満足するスラブを製造する段階;
前記スラブを加熱する段階;
前記加熱されたスラブを熱間圧延して熱延鋼板を製造する段階;
前記熱延鋼板を巻き取る段階;
前記巻取られた熱延鋼板を80~95%の圧下率で冷間圧延して冷延鋼板を製造する段階;および
前記冷延鋼板を680~780℃の温度範囲で焼鈍する段階;
を含
み、
表面硬度(Hr30T)が54~60である錫メッキ原板の製造方法。
[式1]4.8≦([Ti]+[Al])/[N]-[B]≦12.5
(式1において、[Ti]、[Al]、[N]、および[B]はそれぞれメッキ原板内のTi、Al、N、およびBの含量(重量%)を各原子量で割った値を意味する。)
[式2]0.015≦[Mn]*[Cu]/[S]≦0.050
(式2において、[Mn]、[Cu]、および[S]はそれぞれメッキ原板内のMn、Cu、およびSの含量(重量%)を各原子量で割った値を意味する。)
【請求項7】
前記スラブを加熱する段階;は1150~1280℃で加熱する、請求項
6に記載の錫メッキ原板の製造方法。
【請求項8】
前記加熱されたスラブを熱間圧延して熱延鋼板を製造する段階;の仕上げ熱間圧延温度は890~950℃である、請求項
6または
7に記載の錫メッキ原板の製造方法。
【請求項9】
前記熱延鋼板を巻き取る段階;の巻取り温度は600~720℃である、請求項
6~
8のいずれか一項に記載の錫メッキ原板の製造方法。
【請求項10】
前記冷延鋼板を焼鈍する段階;以後に、
前記焼鈍された冷延鋼板を3%未満に調質圧延する段階;をさらに含む、請求項
6~
9のいずれか一項に記載の錫メッキ原板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
加工用錫メッキ原板およびその製造方法に関するものである。より具体的に、食/飲料缶(Can)、ガス(gas)などの貯蔵容器などに使用される加工性および溶接性に優れた錫メッキ原板およびその製造方法に関するものである。さらに具体的に、鋼成分および製造プロセスなどを最適化して溶接後溶接熱影響部の組織が微細化されるようにして溶接部破れを防止し鋼内固溶元素制御によって加工性に優れた錫メッキ原板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表面処理メッキ原板には耐食性を付与するかまたは美麗な表面特性を得るためにその用途に適するように多様なメッキが行われる。このようにメッキされた鋼板を表面処理メッキ鋼板と称し、その例として錫メッキ鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛-ニッケルメッキ鋼板などがある。このように表面処理メッキ原板はメッキの種類によって多様に分類されるが、基本的に要求される成形性、溶接性などの特性が確保されなければならない。
【0003】
一般に、缶(Can)用素材として使用される鉄鋼素材である錫メッキ原板(BP、Blackplate)に錫メッキした錫メッキ鋼板(TP、Tinplate)は大部分素材厚さが薄いので、ロックウェル表面硬度であるHr30T(測定荷重30kg、補助荷重3kg適用)で測定される調質度(Temper Grade)によって評価される。これにより、調質度T1(Hr30T 49±3)、T2(Hr30T 53±3)およびT3(Hr30T 57±3)までの軟質ブリキ板と、調質度T4(Hr30T 61±3)、T5(Hr30T 65±3)およびT6(Hr30T 70±3)までの硬質ブリキ板に区分することができる。
【0004】
錫をメッキしていない状態の錫メッキ原板もこれに準じて区分されている。1回圧延法によって製造されるブリキ原板のうち、調質度T3以下の軟質ブリキ原板の主使用用途は加工性が要求される部位であり、反面、調質度T4以上の硬質ブリキ原板は缶の本体、蓋(EndおよびBottom)などのように加工性よりは内容物による内圧を耐えることができる性質が要求される部位に広く使用されている。
【0005】
錫メッキ原板を用いて内容物を貯蔵するための缶を作るためには、原板の表面に錫(Tin、元素記号Sn)などを電気メッキして耐食性を付与し、一定の大きさに切断した後、円形または角形に加工して使用する。容器を加工する方法としては、容器が蓋と本体(Body)の二部分から構成される2ピース(Piece)缶のように溶接せずに加工する方法と、缶の構成が胴、上蓋(End)および底蓋(Bottom)の三部分からなる3ピース(Piece)缶のように溶接または接着によって胴を締結する方法に分けられる。
【0006】
溶接のない製缶法は、ブリキ板をドローイング(Drawing)するかドローイング後にアイアニング(Ironing)して容器を加工する方法を経る。一方、溶接を実施する製缶法は、一般に、上蓋と下蓋はそれぞれ加工して付着し、胴は原板から切断された素材をワイヤーシーム(Wire Seam)溶接のような抵抗溶接法によって円形に接合する方法を経る。容器の用途によって円形に加工される缶は拡缶(Expanding)という加工工程によって2次加工を受けることもある。一般に、小型飲料缶のような3ピース缶は円形に加工した後、抵抗溶接法で接合するが、食用油、ペイントなどを貯蔵する容器は貯蔵および運送に有利なように溶接後に円周方向に拡缶加工を実施することもある。したがって、これら用途に使用される素材の場合、加工性だけでなく抵抗溶接性に優れなければならない。溶接法で容器を加工する場合、溶接部位に欠陥が発生すれば、内容物の流出によって保管が難しいだけでなく、拡缶のような2次加工時、溶接熱影響部などで破れが発生して容器として使用することができなくなる。したがって、抵抗溶接法によって容器を加工する用途に適用する錫メッキ鋼板は溶接部特性を改善する必要があるだけでなく、激しい加工を受ける部位に主に使用されるので、加工性も共に向上させなければならない。
【0007】
加工度が大きく要求される容器用素材として使用される加工用ブリキ原板は主に箱焼鈍法によって製造されてきたが、この場合、熱処理に多くの時間がかかって生産性が低下するだけでなく、製品の材質が部位別に不均一であるという問題点があった。したがって、最近は生産費が低く材質が均一であり平坦度と表面特性に優れた連続焼鈍法によって製造する比率が増加しているのが実情である。しかし、連続焼鈍法によって調質度T3級の加工用素材を生産する場合、低炭素アルミニウムキルド鋼を用いることによってブリキ工程で錫層を合金化するために行うティンメルティング(Tin-melting)段階や、製缶工程でラッカー(Lacquer)などの有機物を乾燥させるためのベーキング(Baking)工程を経るが、この工程で鋼内固溶元素によって時効現象が発生することによって缶の加工時角形に折れるフルーティング(Fluting)または鋼板表面に縞模様欠陥を誘発するストレッチャーストレイン(Strectuer strain)のような加工欠陥を誘発するという問題点があった。したがって、連続焼鈍法によって調質度T3級の加工用ブリキ原板を製造する場合、時効特性を抑制することによってフルーティングまたはストレッチャーストレインを防止して成形性を改善しようとする検討が行われてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
加工用錫メッキ原板およびその製造方法を提供しようとする。より具体的に、食/飲料缶(can)、ガス(gas)などの貯蔵容器などに使用される加工性および溶接性に優れた錫メッキ原板およびその製造方法を提供しようとする。さらに具体的に、鋼成分および製造プロセスなどを最適化して溶接後溶接熱影響部の組織が微細化されるようにして溶接部破れを防止し鋼内固溶元素制御によって加工性に優れた錫メッキ原板およびその製造方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態による錫メッキ原板は、重量%で、炭素(C)0.0005~0.005%、マンガン(Mn)0.15~0.60%、アルミニウム(Al)0.01~0.06%、窒素(N)0.0005~0.004%、ボロン(B)0.0005~0.003%、チタニウム(Ti)0.01~0.035%、残部鉄(Fe)および不可避不純物を含み、下記式1を満足する。
【0010】
[式1]4.8≦([Ti]+[Al])/[N]-[B]≦12.5
【0011】
このとき、式1において、[Ti]、[Al]、[N]、および[B]はそれぞれメッキ原板内のTi、Al、N、およびBの含量(重量%)を各原子量で割った値を意味する。
【0012】
錫メッキ原板は、シリコン(Si)0.03%以下(0%は除外)、リン(P)0.01~0.03%、硫黄(S)0.003~0.015%、クロム(Cr)0.02~0.15%、ニッケル(Ni)0.01~0.1%、および銅(Cu)0.02~0.15%をさらに含むことができる。
【0013】
錫メッキ原板は、下記式2をさらに満足することができる。
【0014】
[式2]0.015≦[Mn]*[Cu]/[S]≦0.050
【0015】
このとき、式2において、[Mn]、[Cu]、および[S]はそれぞれメッキ原板内のMn、Cu、およびSの含量(重量%)を各原子量で割った値を意味する。
【0016】
錫メッキ原板は、下記式3をさらに満足することができる。
【0017】
[式3]0.8≦([Ti]-[N])/[C]≦2.5
【0018】
このとき、式3において、[Ti]、[N]、および[C]はそれぞれメッキ原板内のTi、N、およびCの含量(重量%)を各原子量で割った値を意味する。
【0019】
錫メッキ原板は、表面硬度(Hr30T)が54~60であってもよい。
【0020】
錫メッキ原板は、抵抗溶接後母材部と溶接熱影響部の平均結晶粒の粒径差が3μm未満であってもよい。
【0021】
錫メッキ原板をティンメルティングおよびベーキング処理した後の降伏点延伸率は0.5%未満であってもよい。
【0022】
本発明の一実施形態による錫メッキ鋼板は、前記錫メッキ原板の一面または両面に位置する錫メッキ層を含む。
【0023】
本発明の一実施形態による加工用錫メッキ原板の製造方法は、重量%で、炭素(C)0.0005~0.005%、マンガン(Mn)0.15~0.60%、アルミニウム(Al)0.01~0.06%、窒素(N)0.0005~0.004%、ボロン(B)0.0005~0.003%、チタニウム(Ti)0.01~0.035%、残部鉄(Fe)および不可避不純物を含み、下記式1を満足するスラブを製造する段階;スラブを加熱する段階;加熱されたスラブを熱間圧延して熱延鋼板を製造する段階;熱延鋼板を巻き取る段階;巻取られた熱延鋼板を80~95%の圧下率で冷間圧延して冷延鋼板を製造する段階;および冷延鋼板を680~780℃の温度範囲で焼鈍する段階;を含む。
【0024】
[式1]4.8≦([Ti]+[Al])/[N]-[B]≦12.5
【0025】
このとき、式1において、[Ti]、[Al]、[N]、および[B]はそれぞれメッキ原板内のTi、Al、N、およびBの含量(重量%)を各原子量で割った値を意味する。
【0026】
スラブを加熱する段階;は1150~1280℃で加熱することであってもよい。
【0027】
加熱されたスラブを熱間圧延して熱延鋼板を製造する段階;の仕上げ熱間圧延温度は890~950℃であってもよい。
【0028】
熱延鋼板を巻き取る段階;の巻取り温度は600~720℃であってもよい。
【0029】
冷延鋼板を焼鈍する段階;以後に、焼鈍された冷延鋼板を3%未満に調質圧延する段階;をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の一実施形態による錫メッキ原板は、抵抗溶接性および加工性に優れる。具体的に、極低炭素鋼を活用してボロン(B)、クロム(Cr)、チタニウム(Ti)などの合金元素を適正量添加し、また、これら元素間の添加比を最適化することによって、強度、抵抗溶接性、拡缶性および加工性に優れる。
【0031】
本発明の一実施形態による錫メッキ原板は、抵抗溶接後2次加工を適用する用途および継続的な使用で溶接部の疲労特性が要求される部位に適用時、優れた物性を示す。これだけでなく、焼付およびリフロー処理時、変形時効によるフルーティングおよびストレッチャーストレインの発生を抑制することができる。
【0032】
本発明の一実施形態による錫メッキ原板は、適切な成分制御および製造プロセスの最適化を通じて生産性が向上する。
【0033】
本発明の一実施形態による錫メッキ原板は、合金元素制御を通じて食飲料缶、耐圧缶、ペール缶(Pail can)のような容器などに使用することができる。また、溶接特性の強化を通じて作業の効率性を高めることによって拡缶用用途への適用も容易である。
【0034】
本発明の一実施形態による錫メッキ原板は、調質度T3材を得るために必須の合金元素の添加が要求される。これに関連して、過量含有される場合、偏析現象によって加工性を劣化させるマンガン(Mn)の添加量を減らす代わりに、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)を一定量添加して調質度T3材を安定的に確保することができる。
【0035】
本発明の一実施形態による錫メッキ原板は、粗大な析出物として存在してフェライト再結晶を抑制しないながら固溶窒素、固溶炭素などを固着するチタニウム(Ti)、ボロン(B)を添加して耐時効性を確保することができる。
【0036】
本発明の一実施形態による錫メッキ原板は、抵抗溶接時熱影響部(HAZ、Heat Affect Zone)組織を変態フェライト化することによって熱影響部組織の異常成長を抑制することができるボロン(B)を添加し、さらに過剰ボロン値を制御して溶接熱影響部の粒子を微細化させて溶接部亀裂を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本明細書で、第1、第2および第3などの用語は多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これら用語はある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためにのみ使用される。したがって、以下で叙述する第1部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと言及することができる。
【0038】
本明細書で、ある部分がある構成要素を“含む”というとき、これは特に反対になる記載がない限り他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに含むことができるのを意味する。
【0039】
本明細書で、使用される専門用語はただ特定実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数形態は文句がこれと明確に反対の意味を示さない限り複数形態も含む。明細書で使用される“含む”の意味は特定特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるのではない。
【0040】
本明細書で、マーカッシュ形式の表現に含まれている“これらの組み合わせ”の用語はマーカッシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群より選択される一つ以上の混合または組み合わせを意味するものであって、前記構成要素からなる群より選択される一つ以上を含むことを意味する。
【0041】
本明細書で、ある部分が他の部分“の上に”または“上に”あると言及する場合、これは直ぐ他の部分の上にまたは上にあるか、その間に他の部分が伴われることがある。対照的に、ある部分が他の部分“の真上に”あると言及する場合、その間に他の部分が介されない。
【0042】
異なって定義しなかったが、ここに使用される技術用語および科学用語を含む全ての用語は本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が一般に理解する意味と同一の意味を有する。通常使用される辞典に定義された用語は関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を有すると追加解釈され、定義されない限り理想的または非常に公式的な意味に解釈されない。
【0043】
また、特に言及しない限り、%は重量%を意味し、1ppmは0.0001重量%である。
【0044】
本発明の一実施形態で追加元素をさらに含むことの意味は、追加元素の追加量だけ残部の鉄(Fe)を代替して含むことを意味する。
【0045】
以下、本発明の実施形態について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳しく説明する。しかし、本発明は様々の異なる形態に実現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0046】
本発明の一実施形態による錫メッキ原板は、重量%で、炭素(C)0.0005~0.005%、マンガン(Mn)0.15~0.60%、アルミニウム(Al)0.01~0.06%、窒素(N)0.0005~0.004%、ボロン(B)0.0005~0.003%、チタニウム(Ti)0.01~0.035%、残部鉄(Fe)および不可避不純物を含み、下記式1を満足する。
【0047】
[式1]4.8≦([Ti]+[Al])/[N]-[B]≦12.5
【0048】
このとき、式1において、[Ti]、[Al]、[N]、および[B]はそれぞれメッキ原板内のTi、Al、N、およびBの含量(重量%)を各原子量で割った値を意味する。
【0049】
錫メッキ原板は、シリコン(Si)0.03%以下(0%は除外)、リン(P)0.01~0.03%、硫黄(S)0.003~0.015%、クロム(Cr)0.02~0.15%、ニッケル(Ni)0.01~0.1%、および銅(Cu)0.02~0.15%をさらに含むことができる。
【0050】
また、下記式2をさらに満足することができる。
【0051】
[式2]0.015≦[Mn]*[Cu]/[S]≦0.050
【0052】
このとき、式2において、[Mn]、[Cu]、および[S]はそれぞれメッキ原板内のMn、Cu、およびSの含量(重量%)を各原子量で割った値を意味する。
【0053】
また、下記式3をさらに満足することができる。
【0054】
[式3]0.8≦([Ti]-[N])/[C]≦2.5
【0055】
このとき、式3において、[Ti]、[N]、および[C]はそれぞれメッキ原板内のTi、N、およびCの含量(重量%)を各原子量で割った値を意味する。
【0056】
以下、錫メッキ原板の成分および式1~式3の限定の理由を説明する。
【0057】
炭素(C):0.0005~0.005重量%
【0058】
炭素(C)は鋼の強度向上のために添加される元素であり、溶接熱影響部が母材と類似の特性を有するようにするために添加する元素である。C含量が過度に少なければ前述の効果が不充分であった。反面、C含量が過度に多ければ過飽和固溶炭素が増加して変形時効を起こす要因として作用し、また、降伏点延伸率が高くて缶の加工時フルーティングなど加工欠陥発生の原因になった。また、耐フルーティング性のような時効に対する加工性を改善するために添加される炭窒化物形成元素添加量を増加させて製造原価が高まり、熱処理時焼鈍温度を上げる要因として作用した。したがって、C含量は0.0005~0.005%であってもよい。さらに具体的に、0.001~0.004%であってもよい。
【0059】
マンガン(Mn):0.15~0.60重量%
【0060】
マンガン(Mn)の場合、固溶強化元素として鋼の強度を高め熱間加工性を向上させる役割を果たす。Mn含量が過度に少ない場合には、赤熱脆性の発生要因になり、オーステナイトの安定化に寄与しにくいことがある。反面、Mn含量が過度に多い場合には、多量のマンガン-スルフィド(MnS)析出物を形成して鋼の軟性および加工性が低下し中心偏析の要因として作用するだけでなく、圧延性を低下させるという問題点がある。したがって、Mn含量は0.15~0.60%であってもよい。さらに具体的に、Mn含量は0.20~0.57%であってもよい。
【0061】
シリコン(Si):0.03重量%以下
【0062】
シリコン(Si)は酸素などと結合して鋼板の表面に酸化層を形成して表面特性を悪くし耐食性を低下させる要因として作用するだけでなく抵抗溶接時溶接金属内の硬質相変態を促進して溶接部亀裂を誘発する要因として作用する。したがって、Si含量0.03%以下に限定する。さらに具体的に、Si含量は0.001~0.02%であってもよい。
【0063】
リン(P):0.010~0.030重量%
【0064】
リン(P)は鋼中固溶元素として存在しながら固溶強化を起こして強度および硬度を向上させる元素である。Pの含量が過度に少なければ、一定水準の剛性を維持しにくいことがあり、反面、P量が過度に多ければ、鋳造時中心偏析を起こし軟性が低下して加工性を劣位するようにすることができる。したがって、P含量は0.01~0.03%であってもよい。さらに具体的に、P含量は0.013~0.028%であってもよい。
【0065】
硫黄(S):0.003~0.015重量%
【0066】
硫黄(S)は鋼中マンガンと結合して非金属介在物を形成し赤熱脆性(red shortness)の要因になり、また、チタニウムとも結合して析出物を形成するので、硫黄の含量を厳格に管理しなければ、高価なマンガンおよびチタニウムの添加量の変化が大きくなるようになって製鋼工程で非時効T3材を得るための添加元素の制御が難しくなるので、一般に硫黄含量の範囲を一定部門低く管理することが必要である。また、S含量の高い場合、鋼板の母材靭性を低下させるという問題点が発生することがあるので、S含量は0.003~0.015%であってもよい。さらに具体的に、S含量は0.004~0.014%であってもよい。
【0067】
アルミニウム(Al):0.01~0.06重量%
【0068】
アルミニウム(Al)はアルミニウムキルド鋼で脱酸剤および時効による材質劣化を防止する目的で添加される元素であって、軟性確保にも効果的であり、このような効果は極低温の時より顕著に現れる。反面、Al含量が過度に多い場合にはアルミニウム-オキシド(Al2O3)のような表面介在物が急増して熱延材の表面特性を悪化させ加工性が低下するだけでなく溶接熱影響部結晶粒界に局部的にフェライトが形成されて機械的特性が低下するという問題点が発生することがある。したがって、Al含量は0.01~0.06%であってもよい。さらに具体的に、Al含量は0.015~0.055%であってもよい。
【0069】
窒素(N):0.0005~0.004重量%
【0070】
窒素(N)は、鋼内部に固溶状態で存在しながら硬度を上昇させるなど材質強化に有効な元素である。Nが過度に少なく含まれれば、目標剛性を確保し難くなることがある。反面、N含量が過度に多く含まれる場合には、時効性が急激に悪くなって加工性を劣化させるだけでなく、溶接性などの改善のために添加されるボロンと反応して析出物を形成することによって焼鈍温度上昇および溶接性低下の要因として作用することがある。したがって、N含量は0.0005~0.004%であってもよい。さらに具体的に、N含量は0.001~0.0035%であってもよい。
【0071】
クロム(Cr):0.02~0.15重量%
【0072】
クロム(Cr)は固溶強化のために添加される元素であって、0.02%以下では強化効果を得るのが困難であり、0.15%以上に添加されれば、硬度上昇側面からは有利であるが、耐食性を劣化させ高価のクロム使用により製造原価が上昇するという問題点があった。したがって、Cr含量は0.02~0.15%であってもよい。さらに具体的に、Cr含量は0.03~0.12%であってもよい。
【0073】
ニッケル(Ni):0.01~0.1重量%
【0074】
ニッケル(Ni)は軟性を向上させるのに効果的だけでなく極低温でも安定した組織を形成して低温靭性を改善する元素であって、このような効果を得るためには0.01%以上添加することが必要である。反面、0.1%を超過すれば、加工性を悪くするだけでなく表面欠陥を誘発するという問題点があり、また、根本的に高価のNiを多量添加することによって製鋼費用が顕著に上昇した。したがって、Ni含量は0.01~0.10%であってもよい。さらに具体的に、Ni含量は0.02~0.09%であってもよい。
【0075】
銅(Cu):0.02~0.15重量%
【0076】
銅(Cu)は耐食性および固溶強化のために添加される元素であって、0.02%以下では目標とする効果を得にくく、過度に多く添加されれば、連鋳時表面欠陥を誘発し高温で低温亀裂の要因として作用するという問題点があった。したがって、Cu含量は0.02~0.15%であってもよい。さらに具体的に、Cu含量は0.03~0.12%であってもよい。
【0077】
ボロン(B):0.0005~0.0030重量%
【0078】
ボロン(B)は焼入れ性を高めて溶接亀裂の主要因である溶接熱影響部組織を変態フェライト化することによって熱影響部組織の異常成長を抑制する元素として作用し、過度に少なく添加されれば、このような効果が得られないことによって溶接部亀裂の要因になった。反面、Bが過度に多く添加されれば、再結晶温度を上昇させて焼鈍作業性が低下するだけでなく加工性が悪くなるという問題点が発生した。したがって、B含量は0.0005~0.003%であってもよい。さらに具体的に、B含量は0.0008~0.0025%であってもよい。
【0079】
チタニウム(Ti):0.010~0.035重量%
【0080】
特殊元素無添加極低炭素鋼は鋼内に固溶状態で存在する元素によってメッキ工程のリフローおよび製缶工程の焼付処理過程で変形時効を起こして缶加工時ストレッチャーストレインまたはフルーティングのような欠陥が発生するという問題点がある。これを防止するために、炭窒化物形成元素として添加されたチタニウム(Ti)は添加量を制御することによって比較的に粗大な析出物として存在して再結晶を大きく抑制せず、また、鋼に窒素を固着することによって加工性向上およびボロンによる溶接部安定性を促進させる役割を果たす。このためには、Tiが0.01%以上添加されなければならず、Tiを過度に多く添加すれば極薄材の焼鈍作業性を悪化させるという問題点があった。したがって、Ti含量は0.01~0.035%であってもよい。さらに具体的に、Ti含量は0.012~0.033%であってもよい。
【0081】
一方、本発明の一実施形態による錫メッキ原板は、式1の過剰ボロン値、([Ti]+[Al])/[N]-[B]が4.8~12.5に限定することが必要であった。
【0082】
また、本発明の一実施形態による錫メッキ原板は、式2の[Mn]*[Cu]/[S]が0.015~0.050、式3の([Ti]-[N])/[C]が0.8~2.5であってもよい。
【0083】
[式1]4.8≦([Ti]+[Al])/[N]-[B]≦12.5(過剰ボロン値)
【0084】
抵抗溶接時、溶接熱影響部の結晶粒を微細化させて溶接部亀裂を抑制するためには、鋼内に固溶されたボロン(析出されていないボロン、即ち、過剰ボロン)が存在しなければならず、このような過剰ボロンが12.5以上存在時、再結晶温度を上昇させ加工性を劣化させ、反面、4.8以下では溶接熱影響部組織の異常成長を抑制することができなくてワイヤーシームのような抵抗溶接時、溶接部亀裂現象が発生するという問題点があった。したがって、過剰ボロン値、式1([Ti]+[Al])/[N]-[B]は4.8~12.5であってもよい。さらに具体的に、過剰ボロン値、式1([Ti]+[Al])/[N]-[B]は5.0~12.3であってもよい。
【0085】
[式2]0.015≦[Mn]*[Cu]/[S]≦0.050
【0086】
前記のように含有される元素のうちのマンガンと銅に対する硫黄の原子比[Mn]*[Cu]/[S]が0.015~0.050範囲になるように含有量を調節することができる。マンガンと銅に対する硫黄の原子比が過度に小さい場合には赤熱脆性が発生して加工性を悪くし、反面、過度に高い場合には偏析および表面欠陥が増加するという問題点を示した。したがって、[Mn]*[Cu]/[S]原子比は0.015~0.050であってもよい。さらに具体的に、式2[Mn]*[Cu]/[S]原子比は0.016~0.048であってもよい。
【0087】
[式3]0.8≦([Ti]-[N])/[C]≦2.5
【0088】
一方、炭窒化物形成元素として作用するチタニウムの場合、硫黄以外にも炭化物、窒化物などを形成するので、炭素、窒素の量と共にチタニウム添加量を制御してこそ加工性および溶接性などを確保することができた。溶接性および加工性に優れた錫メッキ原板を安定的に生産するためには、([Ti]-[N])/[C]原子比を制御することが必要であった。([Ti]-[N])/[C]原子比が過度に低ければ、ティンメルティングおよびベーキング工程で時効現象が発生して加工性を顕著に悪化させる要因として作用した。反面、([Ti]-[N])/[C]原子比が過度に高い場合には、再結晶現象が顕著に抑制されて極薄材の熱処理作業性が悪くなってヒートバックルのような致命的な欠陥に連結されることもあった。したがって、([Ti]-[N])/[C]原子比は0.8~2.5であってもよい。さらに具体的に、([Ti]-[N])/[C]原子比は0.82~2.38であってもよい。
【0089】
本発明の一実施形態による錫メッキ原板は表面硬度特性に優れる。より具体的に、表面硬度(Hr30T)が54~60であってもよい。溶接缶用素材の場合、メッキおよび印刷後、多段ロール(Roll)を通過して一定の形状を取り接合のための本体(Body)部溶接作業が行われる。このとき、素材の材質が不均一であれば、加工された本体部の巻き程度に差があって溶接不良の要因になることがある。したがって、加工前素材の表面硬度値が一定の範囲を有することが要求される。このような物性を満足することによって目標とする加工用錫メッキ原板として好ましく適用することができる。表面硬度が過度に低ければ、加工時缶の本体部加工程度が過度に大きくなって溶接部が互いに重畳するという問題点があった。反面、表面硬度が過度に高ければ、ロール加工がよく行われないことにより溶接線が形成されないという問題点があった。さらに具体的に、表面硬度が55~59であってもよい。
【0090】
また、本発明の一実施形態による錫メッキ原板は溶接部組織均一性に優れる。より具体的に、抵抗溶接後、母材部と溶接熱影響部の平均結晶粒の粒径差が3μm未満であってもよい。溶接部組織均一性は、本発明の一実施形態による錫メッキ原板で製造された溶接缶の溶接熱影響部と母材間の結晶粒大きさ差で表される。抵抗溶接後、母材部と溶接熱影響部の平均結晶粒差が3μm未満であってもよい。溶接部組織均一性が3μmより高くなれば、溶接後拡缶などの加工時、部位別結晶粒大きさ差によって主に結晶粒が大きい熱影響部で亀裂が発生するという問題点があった。より具体的に、2.5μm未満であってもよい。
【0091】
ここで、粒径とは、粒子と同一な体積を有する球を仮定して、その球の直径を意味する。
【0092】
また、本発明の一実施形態による錫メッキ原板は、ティンメルティングおよびベーキング後の加工性に優れる。具体的に、錫メッキ工程で行われる約240℃でのティンメルティング処理および製缶工程で有機物乾燥のための180~220℃範囲のベーキング処理を経た後にも降伏点延伸率が0.5%未満であってもよい。降伏点延伸率が高い場合、加工時折れやシワが発生するなど表面欠陥に露出されており、また、拡缶などの加工時加工亀裂が発生する要因になるので、加工用溶接缶においては厳格に管理することが必要である。より具体的に、0.3%未満であってもよい。
【0093】
一方、本発明の一実施形態による錫メッキ鋼板は、前記の錫メッキ原板の一面または両面に位置する錫メッキ層を含む。
【0094】
本発明の一実施形態による錫メッキ原板の製造方法は、重量%で、炭素(C)0.0005~0.005%、マンガン(Mn)0.15~0.60%、アルミニウム(Al)0.01~0.06%、窒素(N)0.0005~0.004%、ボロン(B)0.0005~0.003%、チタニウム(Ti)0.01~0.035%、残部鉄(Fe)および不可避不純物を含み、下記式1を満足するスラブを製造する段階;スラブを加熱する段階;加熱されたスラブを熱間圧延して熱延鋼板を製造する段階;熱延鋼板を巻き取る段階;巻取られた熱延鋼板を80~95%の圧下率で冷間圧延して冷延鋼板を製造する段階;および冷延鋼板を680~780℃の温度範囲で焼鈍する段階;を含む。
【0095】
[式1]4.8≦([Ti]+[Al])/[N]-[B]≦12.5
【0096】
このとき、式1において、[Ti]、[Al]、[N]、および[B]はそれぞれメッキ原板内のTi、Al、N、およびBの含量(重量%)を各原子量で割った値を意味する。
【0097】
以下、各段階別に具体的に説明する。
【0098】
まず、スラブを製造する。製鋼段階で、C、Mn、Si、P、S、Al、N、Ti、B、Cr、Cu、Niなどを適正含量に制御する。製鋼段階で成分が調整された溶鋼は連続鋳造を通じてスラブとして製造される。
【0099】
スラブの各組成については、前述の錫メッキ原板で詳しく説明したので、重複する説明を省略する。錫メッキ原板製造工程中で合金成分が実質的に変わらないので、スラブと最終製造された錫メッキ原板の合金成分が同一であり得る。
【0100】
その次に、スラブを加熱する。これは、後続する熱延工程を円滑に行い、スラブを均質化処理するためにスラブを1150~1280℃で加熱することができる。スラブ加熱温度が過度に低ければ、後続する熱延時、荷重が急激に増加して圧延性を低下させる問題があり、反面、過度に高ければ、エネルギー費用が増加するだけでなく、表面スケール発生が増加して材料損失が発生した。より具体的に、スラブ加熱温度が1180~1250℃であってもよい。
【0101】
その次に、加熱されたスラブを熱間圧延して熱延鋼板を製造する。このとき、仕上げ熱間圧延温度は890~950℃であってもよい。仕上げ圧延温度が過度に低ければ、低温領域で熱間圧延が仕上げられることによって結晶粒の混粒化が急激に進められて熱間圧延性および加工性の低下を招くことがある。反面、仕上げ圧延温度が過度に高い場合には、表面スケールの剥離性が低下し、厚さ全般にわたって均一な熱間圧延が行われなくて形状不良の原因になることがある。さらに具体的に、仕上げ圧延温度が900~940℃であってもよい。
【0102】
その次に、熱延鋼板を巻き取る。このとき、巻取り温度は600~720℃であってもよい。熱間圧延後巻取り前熱延鋼板の冷却は、ラン-アウト-テーブル(ROT、Run-out-table)で行うことができる。巻取り温度が過度に低ければ、冷却および維持する間に幅方向温度不均一によって低温析出物の生成挙動に差が発生して材質偏差を誘発することによって、加工性に良くない影響を与える。反面、巻取り温度が過度に高い場合にも、微細組織が粗大化されて表面材質軟化および製缶時オレンジピール(orange-peel)のような欠陥を誘発するという問題点があった。より具体的に、巻取り温度が610~700℃であってもよい。
【0103】
熱延鋼板を巻き取った以後、巻取られた熱延鋼板を冷間圧延する前に巻取られた熱延鋼板を酸洗する段階を追加的に含むことができる。
【0104】
その次に、巻取られた熱延鋼板を冷間圧延して冷延鋼板を製造する。このとき、圧下率は80~95%である。冷間圧下率が過度に少なければ、再結晶の駆動力が低くて局部的な組織成長が発生するなど均一な材質を確保し難く、また、最終製品の厚さを考慮すれば、熱延板厚さを十分に薄く作業しなければならないなど全体的に熱延作業性を顕著に悪くするという問題点がある。反面、圧下率が過度に高ければ、圧延機負荷増大によって冷間圧延作業性を低下させるという問題点がある。したがって、圧下率は80~95%であってもよい。より具体的に、85~91%であってもよい。
【0105】
その次に、冷延鋼板を焼鈍する。冷間圧延で導入した変形によって強度が高まっている状態から焼鈍を実施することによって目標とする強度および加工性を確保することができる。このとき、焼鈍温度は680~780℃である。焼鈍温度が過度に低ければ、圧延によって形成された変形が十分に除去されなくて加工性が顕著に低下するという問題点があり、反面、焼鈍温度が過度に高ければ、連続焼鈍時、高温焼鈍による炉内張力制御が困難であって通板性を悪くするだけでなく、焼鈍作業時、ヒートバックル(Heat buckle)のような欠陥を誘発するという問題点があった。さらに具体的に、焼鈍温度が700~770℃であってもよい。
【0106】
冷延鋼板を焼鈍する段階以後、焼鈍された冷延鋼板を調質圧延する段階をさらに含むことができる。調質圧延を通じて素材の形状を制御し目標とする表面粗さを得ることができるが、調質圧下率が過度に高ければ、材質は硬化されるが、加工性を低下させるという問題点があるので、調質圧延は圧下率3%以下に適用することができる。より具体的に、調質圧延圧下率は0.3~2.0%であってもよい。
【0107】
一方、製造された錫メッキ原板一面または両面に錫を電気メッキして錫メッキ層を形成することができる。錫メッキ層を形成して錫メッキ鋼板を製造することができる。
【0108】
以下では実施例を通じて本発明をさらに詳しく説明する。しかし、このような実施例は単に本発明を例示するためのものであり、本発明がこれに限定されるのではない。
【実施例】
【0109】
(実施例)
下記表1のように形成されたアルミニウムキルド鋼のスラブを1230℃で加熱した後、下記表2に整理された製造条件で熱間圧延、巻取り、冷間圧延、連続焼鈍した後、1.2%の調質圧下率を適用した錫メッキ原板を得た。
【0110】
【0111】
このとき、式1~式3は下記の値で計算した。
[式1]([Ti]+[Al])/[N]-[B]
[式2][Mn]*[Cu]/[S]
[式3]([Ti]-[N])/[C]
ここで、[Ti]は、メッキ鋼板内Tiの含量(重量%)を原子量(48)で割った値である。
【0112】
[Al]は、メッキ鋼板内Alの含量(重量%)を原子量(27)で割った値である。
[N]は、メッキ鋼板内Nの含量(重量%)を原子量(14)で割った値である。
[B]は、メッキ鋼板内Bの含量(重量%)を原子量(11)で割った値である。
[Mn]は、メッキ鋼板内Mnの含量(重量%)を原子量(55)で割った値である。
[Cu]は、メッキ鋼板内Cuの含量(重量%)を原子量(64)で割った値である。
[S]は、メッキ鋼板内Sの含量(重量%)を原子量(32)で割った値である。
[C]は、メッキ鋼板内Cの含量(重量%)を原子量(12)で割った値である。
【0113】
【0114】
このような錫メッキ原板の様々の特性を測定してその結果を下記表3に示した。
【0115】
通板性は、冷間および熱間圧延時圧延負荷がなく連続焼鈍時ヒートバックル(Heat buckle)のような欠陥が発生しなければ“O”で表し、圧延負荷が発生するか連続焼鈍時板破断のような欠陥が発生した場合“X”で表した。
【0116】
表面硬度値は、ロックウェル表面硬度機を用いて主荷重30kg、補助荷重3kgであるHr30Tで測定した値を示した。
【0117】
抵抗溶接性は、これら錫メッキ板を活用して加工後、ワイヤーシームのような抵抗溶接を実施した後3%の拡缶を適用して、抵抗溶接部で破断が発生しなければ“良好”、溶接部破断が発生すれば“不良”で表した。
【0118】
溶接部部位別結晶粒大きさ差は、それぞれの素材および製造方法で製造された素材の本体部位を溶接した溶接缶で、溶接の熱影響を受けない基地(Matrix)部位である母材部分と溶接部近隣部位である溶接熱影響部部分でそれぞれ平均結晶粒粒径を測定した後、この二部分の間の平均結晶粒粒径差を測定して示した。
【0119】
降伏点延伸率の場合、錫メッキ原板に対して240℃で3秒間ティンメルティング熱処理を行った後、再び200℃で20分間ベーキング処理を行った試片に対して引張試験を実施して求めた値を示した。
【0120】
【0121】
表1~表3を通じて分かるように、本発明の合金組成と製造条件を全て満足する発明例1~8は通板性が良好であるだけでなく、目標とする錫メッキ原板の材質基準である表面硬度54~60、降伏点延伸率0.5%未満に該当する。したがって、加工時フルーティング、ストレッチャーストレインのような欠陥や加工亀裂が発生しなくて優れた加工性を確保することができた。これだけでなく、溶接部位別結晶粒粒径差も5μm以下で良好な抵抗溶接性も得ることができた。
【0122】
反面、比較例1~4は本発明で提示する合金組成は満足したが、製造条件を満足しなかった場合であって、圧延通板性(比較例1および3)および焼鈍通板性(比較例4)が悪くなるという問題点があった。また、表面硬度が目標に対比して高いか(比較例1および3)または低く(比較例2および4)、溶接部位別結晶粒粒径差が3μm以上で拡缶加工時溶接熱影響部で亀裂が発生するなど抵抗溶接性が不良であり、加工時亀裂が発生するのを確認することができて、全体的に目標とする錫メッキ原板の特性を確保することができなかった。
【0123】
比較例5~9は本発明で提示した製造条件は満足するが、合金組成を満足しなかった場合であり、比較例10は合金組成および製造条件を全て満足しない場合である。比較例5~10は大部分、本発明の目標表面硬度、抵抗溶接性、溶接部位別結晶粒差、降伏点延伸率および加工性などを満足しなく、比較例10の場合、通板性も良好でないなど目標特性を確保することができなくて、加工時多様な欠陥が発生する問題があった。比較例11と12の場合にも過剰ボロン管理基準が満足しないことによって溶接部部位別結晶粒径が大きくなるという問題点があって抵抗溶接性を確保した。
【0124】
本発明は実施例に限定されるわけではなく、互いに異なる多様な形態に製造することができ、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更せず他の具体的な形態に実施することができるというのを理解することができるはずである。したがって、以上で記述した実施例は全ての面で例示的なものであり限定的ではないと理解しなければならない。