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特許7488903結腸直腸癌又は腺腫を検出するためのバイオマーカー及びその方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】結腸直腸癌又は腺腫を検出するためのバイオマーカー及びその方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/50 20060101AFI20240515BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20240515BHJP
【FI】
G01N33/50 Z
G01N27/62 V
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022539743
(86)(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-03
(86)【国際出願番号】 CN2020140431
(87)【国際公開番号】W WO2021129881
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】62/954,483
(32)【優先日】2019-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522257012
【氏名又は名称】中精普康(北京)医薬科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】PRECOGIFY PHARMACEUTICAL CHINA CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】A402, Zhongguancun Biomedicine Park No. 5, Shangdi Kaituo Road, Haidian District Beijing 100085, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リン カイ
(72)【発明者】
【氏名】ダイ シドン
(72)【発明者】
【氏名】テン ウィ
(72)【発明者】
【氏名】ワン グァン
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-169376(JP,A)
【文献】特表2009-508091(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0040383(US,A1)
【文献】国際公開第2013/171586(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体の結腸直腸癌又は結腸直腸腺腫(CRC/CRA)を検出する方法であって、
(a)被験体からのサンプル中の複数の代謝産物のパネルにおける1つ以上の代謝産物の存在量を定量化するステップであって、前記複数の代謝産物が表Aの化合物を含むステップと、

(b)ステップ(a)で定量化された前記代謝産物のそれぞれの存在量を処理することによりサンプルスコアを決定するステップと、
(c)前記サンプルスコアをカットオフスコアと比較することにより前記被験体のCRC/CRAを検出するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記複数の代謝産物は、表Bの化合物を更に含み、

表Aの8種全ての化合物の存在量及び表Bの少なくとも1種の化合物の存在量が定量化される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の代謝産物は、表Cの化合物を更に含み、



表Aの8種全ての化合物の存在量及び表Cの全ての化合物の存在量が定量化される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
サンプルスコアは、前記被験体がCRC/CRAを有する確率を示す、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(b)は、
ステップ(a)で定量化された前記代謝産物のそれぞれの存在量を正規化するステップと、
前記正規化された存在量を予測モデルで処理することにより前記サンプルスコアを決定するステップと、を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記予測モデルは、ロジスティック回帰法により確立される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記予測モデルは、既知の正常、CRC又はCRAステータスとなっているサンプルからの代謝産物の存在量の測定に基づいてロジスティック回帰法により確立される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(c)は、前記サンプルスコアが前記カットオフスコア以上である場合、前記被験体のCRC/CRAを検出するステップを更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
受信者動作特性(ROC)曲線について、0.80を超える曲線下面積(AUC)を有し、前記サンプル中のCRC/CRAを検出する感度と特異度の両方が75%以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
被験体のステージI/II CRCを検出する方法であって、
(a)質量分析により、前記被験体からのサンプル中の複数の代謝産物のパネルにおける少なくとも5つの成分の存在量を定量化するステップであって、前記複数の代謝産物が表Aの化合物を含むステップと、

(b)ステップ(a)で定量化された前記代謝産物のそれぞれの存在量を処理することによりサンプルスコアを決定するステップと、
(c)評価値をカットオフ値と比較することにより前記被験体のステージI/II CRCを検出するステップと、
を含む、方法。
【請求項11】
被験体のステージIII/IV CRCを検出する方法であって、
(a)質量分析により、前記被験体からのサンプル中の複数の代謝産物のパネルにおける少なくとも5つの成分の存在量を定量化するステップであって、前記複数の代謝産物が表Aの化合物を含むステップと、

(b)ステップ(a)で定量化された前記代謝産物のそれぞれの存在量を処理することによりサンプルスコアを決定するステップと、
(c)評価値をカットオフ値と比較することにより前記被験体のステージIII/IV CRCを検出するステップと、
を含む、方法。
【請求項12】
結腸直腸癌(CRC)又は結腸直腸腺腫(CRA)の診断に使用可能な診断用バイオマーカーの群であって、表Dの代謝産物の少なくとも1、2、3、4、5又は6種を含む群。

【請求項13】
表Dの6種全ての代謝産物を含む、請求項12に記載の診断用バイオマーカーの群。
【請求項14】
表Bの少なくとも1種の化合物を更に含む、請求項13に記載の診断用バイオマーカーの群。

【請求項15】
表Cの全ての化合物を更に含む、請求項13に記載の診断用バイオマーカーの群。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本願は、2019年12月28日に出願された米国仮特許出願第62/954,483号の優先権を主張し、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は一般に、結腸直腸異常の検出、特に、結腸直腸癌又は腺腫を検出するためのバイオマーカー及びその方法に関する。
【背景技術】
【0003】
結腸直腸癌(CRC)は通常、結腸又は直腸(大腸の一部)から発生した癌を指す。CRCは、世界中で増大する臨床的課題となっているが、早期診断は、CRC患者の生存率を改善する効果的な方法として認識される。腺腫は通常、上皮組織の良性腫瘍を指す。「結腸直腸腺腫(CRA)」又は「腺腫性ポリープ」とも呼ばれる結腸腺腫は、悪性になる傾向があり、CRCを引き起こす。したがって、CRA又はCRCの診断は、患者の結腸直腸の健康状態を評価する上で重要である。
【0004】
CRC及び/又はCRAの診断には、非侵襲的アプローチ及び侵襲的アプローチを含むいくつかのアプローチが臨床的に用いられる。例えば、非侵襲的アプローチは、癌胎児性抗原(CEA)などの腫瘍バイオマーカーを使用した便潜血検査(FOBT)などを含む。別の例として、侵襲的アプローチは、結腸内視鏡を使用して、可視腫瘍病変又は腺腫性ポリープがあるか否かを判断する生検検査などを含む。侵襲的アプローチは、依然としてCRC/CRA診断における究極の判断基準であるが、多くの場合、患者に不快感、痛み、更に組織の損傷をもたらす。結果として、非侵襲的アプローチが好まれる場合がある。しかし、従来の非侵襲的アプローチの多くは、精度が低いという欠点がある。したがって、CRC又はCRAを精度よく検出するための非侵襲的方法を可能にする新しいバイオマーカーを見つけることが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、結腸直腸癌(CRC)又は腺腫の診断に使用可能な診断用バイオマーカー群が提供される。いくつかの実施形態では、診断用バイオマーカー群は、表Aにリストされた1種以上の代謝産物を含み得る。
【0006】
いくつかの実施形態では、前記複数の代謝産物は、表Bの代謝産物を更に含み得る。いくつかの実施形態では、表Aの8種全ての代謝産物の存在量及び表Bの少なくとも1種の代謝産物の存在量が定量化される。
【0007】
いくつかの実施形態では、前記複数の代謝産物は、表Cの代謝産物を更に含み得る。いくつかの実施形態では、表Aの8種全ての代謝産物の存在量及び表Cの全ての代謝産物の存在量が定量化され得る。
【0008】
本開示の別の態様によれば、被験体のCRC/CRAを検出する方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、前記被験体からのサンプル中の複数の代謝産物のパネルにおける1つ以上の成分の存在量を定量化するステップa)を含み得る。前記複数の代謝産物は、本開示において先に記載されたように、表A、表B及び/又は表Cにリストされた代謝産物を含み得る。いくつかの実施形態では、本方法は、ステップa)で定量化された前記代謝産物のそれぞれの存在量を処理することによりサンプルスコアを決定するステップを更に含み得る。いくつかの実施形態では、本方法は、前記サンプルスコアをカットオフスコアと比較することにより前記被験体のCRC/CRAを検出するステップc)を更に含み得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記予測モデルは、ロジスティック回帰法により確立され得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記予測モデルは、既知の正常、CRC又はCRAステータスとなっているサンプルからの代謝産物の存在量の測定に基づいてロジスティック回帰法により確立され得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、ステップ(c)は、前記サンプルスコアが前記カットオフスコア以上である場合、前記被験体のCRC/CRAを検出するステップを更に含み得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、受信者動作特性(ROC)曲線について、本方法は、0.80を超える曲線下面積(AUC)を有し、サンプル中のCRC/CRAを検出する感度と特異度の両方が75%以上であり得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、ROC曲線について、本方法は、0.85を超えるAUCを有し、サンプル中のCRC/CRAを検出する感度と特異度の両方が80%以上である。
【0014】
本開示の別の態様によれば、被験体のCRC/CRAを検出する方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、前記被験体からのサンプル中の複数の代謝産物のパネルにおける1つ以上の成分の存在量を定量化するステップa)を含み得る。前記複数の代謝産物は、本開示において先に記載されたように、表A、表B及び/又は表Cにリストされた代謝産物を含み得る。いくつかの実施形態では、本方法は、ステップa)で定量化された前記代謝産物のそれぞれの存在量を処理することによりサンプルスコアを決定することを更に含み得る。いくつかの実施形態では、本方法は、前記サンプルスコアをカットオフスコアと比較することにより前記被験体のCRC/CRAを検出するステップc)を更に含み得る。
【0015】
本開示の別の態様によれば、被験体のCRAを検出する方法が提供される。本方法は、前記被験体からのサンプル中の複数の代謝産物のパネルにおける少なくとも5つの成分の存在量を定量化するステップa)を含み得る。本方法は、ステップa)で定量化された前記代謝産物のそれぞれの存在量を処理することによりサンプルスコアを決定するステップb)を更に含み得る。本方法は、評価値をカットオフ値と比較することにより前記被験体のCRAを検出するステップc)を更に含み得る。いくつかの実施形態では、前記複数の代謝産物は、本開示において先に記載されたように、表A、表B及び/又は表Cにリストされた代謝産物を含み得る。
【0016】
本開示の更に別の態様によれば、被験体のステージI/II CRCを検出する方法が提供される。本方法は、(a)質量分析により、前記被験体からのサンプル中の複数の代謝産物のパネルにおける1つ以上の成分の存在量を定量化するステップであって、前記複数の代謝産物が表Aの代謝産物を含むステップと、(b)ステップ(a)で定量化された前記代謝産物のそれぞれの濃度を処理することによりサンプルスコアを決定するステップと、(c)評価値をカットオフ値と比較することにより前記被験体のステージI/II CRCを検出するステップと、を含み得る。いくつかの実施形態では、前記複数の代謝産物は、本開示において先に記載されたように、表A、表B及び/又は表Cにリストされた代謝産物を含み得る。
【0017】
本開示の更に別の態様によれば、被験体のステージIII/IV CRCを検出する方法が提供される。本方法は、(a)質量分析により、前記被験体からのサンプル中の複数の代謝産物のパネルにおける1つ以上の成分の存在量を定量化するステップであって、前記複数の代謝産物が表Aの代謝産物を含むステップと、(b)ステップ(a)で定量化された前記代謝産物のそれぞれの濃度を処理することによりサンプルスコアを決定するステップと、(c)評価値をカットオフ値と比較することにより前記被験体のステージIII/IV CRCを検出するステップと、を含み得る。いくつかの実施形態では、前記複数の代謝産物は、本開示において先に記載されたように、表A、表B及び/又は表Cにリストされた代謝産物を含み得る。
【0018】
本開示の更に別の態様によれば、被験体のCRC/CRAを治療する方法が提供される。本方法は、本開示において先に記載された方法に従ってCRC/CRAを検出するステップと、前記被験体にCRC/CRAの治療を施すステップと、を含み得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、本方法は、結腸内視鏡検査によりCRC/CRAを検証することを更に含み得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記治療は、結腸切除術又はオストミーを更に含み得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記治療は、化学療法、放射線療法、標的薬物療法又は免疫療法を更に含み得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記治療は緩和ケアを含み得る。
【0023】
本開示の更に別の態様によれば、腸内細菌叢関連(GMA)代謝産物をCRC/CRAの予測パネルのためのバイオマーカーとして同定する方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、CRC/CRA患者及びCRC/CRAを有さない人の対照群からのサンプルに対して非標的質量分析を実施することによりソースデータを取得することを含み得る。本方法は、CRC/CRA患者において有意に変化する代謝産物の第1の群を同定することを更に含み得る。代謝産物の第2の群は、腸内細菌叢との有意な相関を示す代謝産物を選択することにより前記第1の群から同定され得る。本方法は、選択モデルを使用して、前記代謝産物の第2の群から前記予測パネルのためのGMA代謝産物を選択するステップを更に含み得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、本方法は、メタゲノムシーケンスにより前記代謝産物の第2の群を検証するステップを更に含み得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記選択モデルは、最小絶対収縮及び選択演算子(LASSO)アルゴリズムを利用することができる。
【0026】
追加の特徴は、以下の説明に部分的に記載され、これらの特徴の一部は、以下の添付図面を検討することで、当業者にとって明らかになり、又は実施例の製造又は動作によって知られ得る。本開示の特徴は、以下に説明する具体的な実施例に記載された方法論、手段及び組合せの様々な態様を実施又は使用することにより、実現及び達成されるであろう。
【0027】
本開示は、例示的な実施形態に関して更に説明される。これらの例示的な実施形態は、図面を参照して詳細に説明される。図面は縮尺通りではないことに留意されたい。これらの実施形態は、非限定的で例示的な実施形態であり、図面のいくつかの図にわたって、同様の参照符号は、類似する構造を示す。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A】本開示のいくつかの実施形態による実験計画及び分析手順の概要を示す概略図である。
図1B】本開示のいくつかの実施形態による、負イオンモード及び正イオンモードにおける非標的LC-MS特徴のR値の分布図を示す分析図である。
図1C】本開示のいくつかの実施形態による、負イオンモードにおける代謝産物特徴の二乗平均平方根誤差(RMSE)値の分布を示す分析図である。
図1D】本開示のいくつかの実施形態による、正イオンモードにおける代謝産物特徴の二乗平均平方根誤差(RMSE)値の分布を示す分析図である。
図1E】本開示のいくつかの実施形態による、全てのプールされたCRCサンプルにおける非標的LC-MS特徴の変動係数(CV%)の分布図を示す分析図である。
図1F】本開示のいくつかの実施形態による、全てのサンプルの代謝産物の主成分分析(PCA)プロットである。
図1G】本開示のいくつかの実施形態による、正常群、腺腫群及び結腸直腸癌群における有意に変化した代謝産物の数の比較図である。
図1H】本開示のいくつかの実施形態による、正常被験体と比較して、腺腫被験体及び結腸直腸癌被験体の両方において有意な変化を示した代謝産物に基づいた、正常被験体(N、青)、腺腫被験体(A、赤)及び結腸直腸癌被験体(C、緑)からのサンプルの血清メタボロミクス状態の識別を示すPCAプロットである。
図2A】本開示のいくつかの実施形態による、一致コホートにおける糞便メタボローム及び血清メタボロームの統合分析の手順を示す分析図である。
図2B】本開示のいくつかの実施形態による、種レベルでの各個体における15個のOUTを示す棒グラフである。
図2C】本開示のいくつかの実施形態による、一致コホートの正常及び結腸直腸異常患者におけるいくつかのCRC関連腸内細菌叢種の相対的存在量を示す分析図である。
図2D】本開示のいくつかの実施形態による、結腸直腸異常被験体における腸内細菌叢と血清代謝産物との間の相互関係マップである。
図2E】本開示のいくつかの実施形態による、CRC関連腸内細菌とそれらの相関血清代謝産物との間の共変動を示すサンキーダイアグラムである。
図3A】検証セットに従って表Aにリストされた8種の代謝産物の存在量を利用する予測モデルのROCである。
図3B】本開示のいくつかの実施形態による、標的メタボロームに基づいた8種の代謝産物のROCを示す分析図である。
図3C】本開示のいくつかの実施形態による、非標的メタボローム分析を使用する正常及び結腸直腸の不健康な患者のPCAプロットである。
図3D】本開示のいくつかの実施形態による、標的メタボローム分析を使用する正常及び結腸直腸の不健康な患者のPCAプロットを示す。
図3E】一致コホートにおける非標的メタボロミクス分析に基づいた正常群及び結腸直腸異常群の識別のためのCRC腸内細菌叢関連血清代謝産物(GMSM)パネルのROC曲線を示す分析図である。
図3F】メタボローム分析を使用したCICAM及びSDの正常及び結腸直腸の不健康な患者のPCAプロットである。
図4A】本開示のいくつかの実施形態による、モデリング群におけるGMSMパネルの識別効率を示すROC曲線を示す分析図である。
図4B】本開示のいくつかの実施形態による、モデリング群における正常被験体及び結腸直腸異常被験体のCRC及び腺腫バイオマーカーシグネチャスコアを示す分析図である。
図4C】本開示のいくつかの実施形態による、0.541のカットオフスコアの下での検証群における予測モデルの識別効率を示すROC曲線を示す。
図4D】本開示のいくつかの実施形態による、腺腫患者及び正常被験体の検証群におけるCRC GMSMパネルの識別効率を示すROC曲線を示す。
図5A】本開示のいくつかの実施形態による、CEA及びCRC予測モデルの識別効率を示すROC曲線を示す。
図5B】本開示のいくつかの実施形態による、正常及び結腸直腸異常患者を識別する際の予測モデル及びCEA効率のグラフ比較のための散布図を示す。
図6A-6D】検証群におけるCRC GMSMパネルの識別効率を示すROC曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の説明は、当業者が本開示を実施及び使用することを可能にするために提示され、特定の用途及びその要件に照らして提供される。開示された実施形態の様々な変形は、当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義された一般原則は、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、他の実施形態及び用途にも適用することができる。したがって、本開示は、示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。
【0030】
本明細書において使用される用語は、単に特定の例示的な実施形態を説明するためのものであり、限定を意図したものではない。本明細書において使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「上記(the)」は、文脈中に特に明示しない限り、複数形も含むことを意図し得る。更に、本明細書において使用される場合、用語「含み/含む(comprises/comprising、includes/including)」は、記載された特徴、整数、ステップ、動作、素子、及び/又は、構成要素の存在を特定するものであるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、素子、構成要素、及び/又は、これらのグループの存在や追加を排除するものではないことが理解されよう。
【0031】
本開示のこれら及び他の特徴及び特性、動作の方法、構造の関連する素子及び部品の組み合わせの機能、及び製造上の経済性は、本明細書の一部を形成する添付の図面を参照して以下の説明を検討することによってより明らかとなるであろう。しかしながら、図面は単に例示及び説明のためのものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではないことが明らかに理解される。図面は縮尺通りではないことが理解される。
【0032】
本開示は、結腸直腸癌又は結腸直腸腺腫の診断に使用可能な診断用バイオマーカーの群を提供する。診断用バイオマーカーの群を使用して結腸直腸癌又は結腸直腸腺腫を検出する方法も提供される。例えば、本開示に係る方法は、体液又は他のサンプル(例えば、血清サンプル、糞便サンプル)を利用して結腸直腸癌を検出する非侵襲的アプローチである。更に、結腸直腸癌を検出する方法は、異なる段階(例えば、前癌段階、初期、中期、後期)の結腸直腸癌を検出することができる。被験体における初期又は前癌段階の結腸直腸癌の検出は、CRC患者の生存率を効果的に改善する。結腸直腸癌を検出するための従来の方法(例えば、CEAバイオマーカーを使用する方法)と比較して、本開示に係る結腸直腸癌を検出する方法は、より正確であり、CRC/CRAを有する被験体を正常被験体と効果的に区別する。
【0033】
本明細書において使用されるように、本開示の「被験体」という用語は、任意のヒト又は非ヒト動物を指す。例示的な非ヒト動物は、哺乳動物(例えば、チンパンジー及び他の類人猿及びサル種)、家畜(例えば、牛、羊、豚、山羊及び馬)、家畜(例えば、犬及び猫)、実験動物(例えば、マウス、ラット及びモルモット)などを含み得る。いくつかの実施形態では、被験体はヒトである。
【0034】
本開示の一態様によれば、結腸直腸癌(CRC)又は腺腫の診断に使用可能な診断用バイオマーカー群が提供される。いくつかの実施形態では、腺腫は、腺腫性ポリープとも呼ばれる結腸直腸腺腫(CRA)を含む。本開示における「CRC/CRA」という用語は、正常状態とは異なるCRC又はCRAのいずれかを指す。
【0035】
いくつかの実施形態では、診断用バイオマーカーの群は、CRC/CRAと相関する1種以上の代謝産物を含み得る。1種以上の代謝産物は、腸内細菌によって産生されるか又は腸内細菌による影響を受ける可能性があり、調節機能などの様々な機能を実行するために被験体の異なる部分に運ばれる可能性がある。本明細書において使用されるように、「腸内細菌による影響を受ける」という語句は、腸内細菌の影響下で代謝産物の存在量が変化(例えば、増加又は減少)する可能性があることを意味する。
【0036】
いくつかの実施形態では、正常被験体から得られたサンプル中の代謝産物の存在量は、CRC/CRAを有する被験体から得られたサンプル中の代謝産物の存在量とは異なり得る。本明細書において使用されるように、「存在量」という用語は、特定のサンプル中の物質の量(quantity)又は量(amount)を指す。サンプルは、固体サンプル、流体サンプル、ガスサンプルなど、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。固体サンプルは、例えば、糞便、耳垢などを含み得る。流体サンプルは、血液、血清、唾液、尿、汗などの被験体の体液、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。ガスサンプルは、腸内ガス、呼気などを含み得る。単なる例として、1種以上の代謝産物が血清中に存在する可能性があり、「血清代謝産物」と呼ばれてもよい。いくつかの実施形態では、代謝産物の存在量を測定するために、流体サンプル(例えば、血清)、固体サンプル又はガスサンプル(例えば、腸内ガス)中の代謝産物の濃度又は量を測定することができる。いくつかの実施形態では、代謝産物の存在量は、正規化された値又は対照に対する相対値であり得る。この場合、代謝産物の存在量は「相対存在量」とも呼ばれる。例えば、代謝産物の存在量は、サンプル内の代謝産物の測定値と全ての代謝産物の合計測定値に基づいたzスコアを反映することができる。いくつかの実施形態では、測定値は、質量分析、クロマトグラフィー(例えば、HPLC)及び任意の他の技術によって得ることができる。いくつかの実施形態では、対照は、被験体に人工的に添加される化学物質のセットの正確な濃度又は量、例えばスパイクイン対照であり得る。或いは、対照は、CRC/CRAを有さず、身体的に健康であると考えられる被験体のプールから得られたサンプルの同じ代謝産物の濃度又は量であり得る。
【0037】
表1は、CRC/CRAの診断に使用できる代謝産物の例示的な群を示す。バイオマーカーである代謝産物それぞれは、CRC/CRAの存在と強くて忠実な相関関係を示す。いくつかの実施形態では、本開示に係る診断用バイオマーカーの群は、表1の1種以上の代謝産物を含み得る。いくつかの実施形態では、診断用バイオマーカーの群は、表1の代謝産物のうちの少なくとも1つを含み得る。いくつかの実施形態では、診断用バイオマーカーの群は、表1の代謝産物のうちの少なくとも2種を含み得る。いくつかの実施形態では、診断用バイオマーカーの群は、表1の代謝産物のうちの少なくとも3種を含み得る。いくつかの実施形態では、診断用バイオマーカーの群は、表1の代謝産物のうちの少なくとも4種を含み得る。いくつかの実施形態では、診断用バイオマーカーの群は、表1の代謝産物のうちの少なくとも5種を含み得る。いくつかの実施形態では、診断用バイオマーカーの群は、表1の代謝産物のうちの少なくとも6種を含み得る。いくつかの実施形態では、診断用バイオマーカーの群は、表1の代謝産物のうちの少なくとも7種を含み得る。別の例として、診断用バイオマーカーの群は、表1の全ての代謝産物を含み得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、表1に示された代謝産物は、被験体のCRC/CRAを検出するために使用することができ、更に、CRC/CRAの治療を容易にするために使用することができる。例えば、質量分析(又は他の技術)は、サンプル中の複数の代謝産物のパネル内の1種以上の代謝産物の存在量を定量化するために使用することができる。定量化された代謝産物のそれぞれの存在量は、CRC/CRAを検出し、及び/又は被験体のCRC/CRCの治療を容易にするように処理及び使用することができる。いくつかの実施形態では、表1の代謝産物のいずれか1つを定量化して、これらの目的に使用することができる。いくつかの実施形態では、表1の任意の2、3、又は4種の代謝産物を定量化して、これらの目的に使用することができる。いくつかの実施形態では、表1の任意の5、6、又は7種の代謝産物を定量化して、これらの目的に使用することができる。いくつかの実施形態では、表1の8種全ての代謝産物を定量化して、これらの目的に使用することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、表1の代謝産物は、質量分析によって定量化及び同定することができる。表1に示された代謝産物は、1つ以上の異性体形態に対応し得る。表2は、注釈と推定の後、表1に示された代謝産物に対応するいくつかの例示的な化合物を示す。これらの化合物の1つ以上、又はバイオマーカーの存在量は、例えば、質量分析又は他の任意の技術によって定量化することができ、被験体のCRC/CRAを検出し、及び/又は被験体のCRC/CRAの治療を容易にするために使用することができる。いくつかの実施形態では、表1又は表中の代謝産物のそれぞれは、腸内細菌叢と関連し得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、定量化して、CRC/CRAを検出し、及び/又はCRC/CRAの治療を容易にするために使用できる診断用バイオマーカー(代謝産物)の群は、9,12,13-TriHOMEを含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、9,12,18-TriHOMEを含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、クリナリサイドを含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、[(6-{[5,7-ジヒドロキシ-2-(4-オキソシクロヘキサ-2,5-ジエン-1-イリデン)-2H-クロメン-3-イル]オキシ}-3,4,5-トリヒドロキシオキサン-2-イル)メチル][1-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパ-2-エン-1-イリデン]オキシダニウムを含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、2-オクテノイルカルニチンを含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、(E)-2-(4,8-ジメチルノナ-3,7-ジエン-1-イル)-5-ヒドロキシ-2,7-ジメチル-2H-クロメン-8-カルバルデヒドを含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、N,O-ビス-(トリメチルシリル)フェニルアラニンを含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、14-HDoHEを含み得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、定量化して、CRC/CRAを検出し、及び/又はCRC/CRAの治療を容易にするために使用できる診断用バイオマーカーの群は、表2の1種以上の代謝産物を含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、表2の代謝産物のうちの少なくとも1種を含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、表2の代謝産物のうちの少なくとも2つを含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、表2の代謝産物のうちの少なくとも3種を含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、表2の代謝産物のうちの少なくとも4種を含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、表2の代謝産物のうちの少なくとも5種を含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、表2の代謝産物のうちの少なくとも6種を含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、表2の代謝産物のうちの少なくとも7種を含み得る。別の例として、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、表2の全ての代謝産物を含み得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、表2にリストされた少なくとも2種の代謝産物を含み得る。いくつかの実施形態では、少なくとも2種の代謝産物は、9,12,13-TriHOME及び2-オクテノイルカルニチンを含み得る。いくつかの実施形態では、少なくとも2種の代謝産物は、9,12,13-TriHOME及び(E)-2-(4,8-ジメチルノナ-3,7-ジエン-1-イル)-5-ヒドロキシ-2,7-ジメチル-2H-クロメン-8-カルバルデヒドを含み得る。いくつかの実施形態では、少なくとも2種の代謝産物は、クリナリサイド及び2-オクテノイルカルニチンを含み得る。いくつかの実施形態では、少なくとも2種の代謝産物は、クリナリサイド及びN,O-ビス-(トリメチルシリル)フェニルアラニンを含み得る。いくつかの実施形態では、少なくとも2種の代謝産物は、[(6-{[5,7-ジヒドロキシ-2-(4-オキソシクロヘキサ-2,5-ジエン-1-イリデン)-2H-クロメン-3-イル]オキシ}-3,4,5-トリヒドロキシオキサン-2-イル)メチル][1-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパ-2-エン-1-イリデン]オキシダニウム及び2-オクテノイルカルニチンを含み得る。いくつかの実施形態では、少なくとも2種の代謝産物は、2-オクテノイルカルニチン及びN,O-ビス-(トリメチルシリル)フェニルアラニンを含み得る。いくつかの実施形態では、少なくとも2種の代謝産物は、2-オクテノイルカルニチン及び14-HDoHEを含み得る。いくつかの実施形態では、少なくとも2種の代謝産物は、(E)-2-(4,8-ジメチルノナ-3,7-ジエン-1-イル)-5-ヒドロキシ-2,7-ジメチル-2H-クロメン-8-カルバルデヒド及びN,O-ビス-(トリメチルシリル)フェニルアラニンを含み得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、表3にリストされた少なくとも3種の代謝産物を含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、9,12,13-TriHOME、9,12,18-TriHOME及びN,O-ビス-(トリメチルシリル)フェニルアラニンを含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用され得る診断用バイオマーカーの群は、9,12,13-TriHOME、クリナリサイド及び2-オクテノイルカルニチンを含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、9,12,13-TriHOME、[(6-{[5,7-ジヒドロキシ-2-(4-オキソシクロヘキサ-2,5-ジエン-1-イリデン)-2H-クロメン-3-イル]オキシ}-3,4,5-トリヒドロキシオキサン-2-イル)メチル][1-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパ-2-エン-1-イリデン]オキシダニウム及び2-オクテノイルカルニチンを含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、9,12,13-TriHOME、(E)-2-(4,8-ジメチルノナ-3,7-ジエン-1-イル)-5-ヒドロキシ-2,7-ジメチル-2H-クロメン-8-カルバルデヒド及びN,O-ビス-(トリメチルシリル)フェニルアラニンを含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、9,12,13-TriHOME、(E)-2-(4,8-ジメチルノナ-3,7-ジエン-1-イル)-5-ヒドロキシ-2,7-ジメチル-2H-クロメン-8-カルバルデヒド及びN,O-ビス-(トリメチルシリル)フェニルアラニンを含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用され得る診断用バイオマーカーの群は、9,12,18-TriHOME、クリナリサイド及び2-オクテノイルカルニチンを含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群には、9,12,18-TriHOME、クリナリサイド及び(E)-2-(4,8-ジメチルノナ-3,7-ジエン-1-イル)-5-ヒドロキシ-2,7-ジメチル-2H-クロメン-8-カルバルデヒドを含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、9,12,18-TriHOME、[(6-{[5,7-ジヒドロキシ-2-(4-オキソシクロヘキサ-2,5-ジエン-1-イリデン)-2H-クロメン-3-イル]オキシ}-3,4,5-トリヒドロキシオキサン-2-イル)メチル][1-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパ-2-エン-1-イリデン]オキシダニウム及び2-オクテノイルカルニチンを含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、9,12,18-TriHOME、[(6-{[5,7-ジヒドロキシ-2-(4-オキソシクロヘキサ-2,5-ジエン-1-イリデン)-2H-クロメン-3-イル]オキシ}-3,4,5-トリヒドロキシオキサン-2-イル)メチル][1-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパ-2-エン-1-イリデン]オキシダニウム及び(E)-2-(4,8-ジメチルノナ-3,7-ジエン-1-イル)-5-ヒドロキシ-2,7-ジメチル-2H-クロメン-8-カルバルデヒドを含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、9,12,18-TriHOME、2-オクテノイルカルニチン及び(E)-2-(4,8-ジメチルノナ-3,7-ジエン-1-イル)-5-ヒドロキシ-2,7-ジメチル-2H-クロメン-8-カルバルデヒドを含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、9,12,18-TriHOME、2-オクテノイルカルニチン及び14-HDoHEを含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、9,12,18-TriHOME、(E)-2-(4,8-ジメチルノナ-3,7-ジエン-1-イル)-5-ヒドロキシ-2,7-ジメチル-2H-クロメン-8-カルバルデヒド及びN,O-ビス-(トリメチルシリル)フェニルアラニンを含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、9,12,18-TriHOME、N,O-ビス-(トリメチルシリル)フェニルアラニン及び14-HDoHEを含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、クリナリサイド、[(6-{[5,7-ジヒドロキシ-2-(4-オキソシクロヘキサ-2,5-ジエン-1-イリデン)-2H-クロメン-3-イル]オキシ}-3,4,5-トリヒドロキシオキサン-2-イル)メチル][1-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパ-2-エン-1-イリデン]オキシダニウム及び2-オクテノイルカルニチンを含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、クリナリサイド、[(6-{[5,7-ジヒドロキシ-2-(4-オキソシクロヘキサ-2,5-ジエン-1-イリデン)-2H-クロメン-3-イル]オキシ}-3,4,5-トリヒドロキシオキサン-2-イル)メチル][1-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパ-2-エン-1-イリデン]オキシダニウム及び14-HDoHEを含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、クリナリサイド、2-オクテノイルカルニチン及びN,O-ビス-(トリメチルシリル)フェニルアラニンを含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、クリナリサイド、2-オクテノイルカルニチン及び14-HDoHEを含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、[(6-{[5,7-ジヒドロキシ-2-(4-オキソシクロヘキサ-2,5-ジエン-1-イリデン)-2H-クロメン-3-イル]オキシ}-3,4,5-トリヒドロキシオキサン-2-イル)メチル][1-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパ-2-エン-1-イリデン]オキシダニウム、2-オクテノイルカルニチン及び(E)-2-(4,8-ジメチルノナ-3,7-ジエン-1-イル)-5-ヒドロキシ-2,7-ジメチル-2H-クロメン-8-カルバルデヒドを含み得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、[(6-{[5,7-ジヒドロキシ-2-(4-オキソシクロヘキサ-2,5-ジエン-1-イリデン)-2H-クロメン-3-イル]オキシ}-3,4,5-トリヒドロキシオキサン-2-イル)メチル][1-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパ-2-エン-1-イリデン]オキシダニウム、2-オクテノイルカルニチン及びN,O-ビス-(トリメチルシリル)フェニルアラニンを含み得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、[(6-{[5,7-ジヒドロキシ-2-(4-オキソシクロヘキサ-2,5-ジエン-1-イリデン)-2H-クロメン-3-イル]オキシ}-3,4,5-トリヒドロキシオキサン-2-イル)メチル][1-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパ-2-エン-1-イリデン]オキシダニウム、2-オクテノイルカルニチン及び14-HDoHEを含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、[(6-{[5,7-ジヒドロキシ-2-(4-オキソシクロヘキサ-2,5-ジエン-1-イリデン)-2H-クロメン-3-イル]オキシ}-3,4,5-トリヒドロキシオキサン-2-イル)メチル][1-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパ-2-エン-1-イリデン]オキシダニウム、(E)-2-(4,8-ジメチルノナ-3,7-ジエン-1-イル)-5-ヒドロキシ-2,7-ジメチル-2H-クロメン-8-カルバルデヒド及びN,O-ビス-(トリメチルシリル)フェニルアラニンを含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、[(6-{[5,7-ジヒドロキシ-2-(4-オキソシクロヘキサ-2,5-ジエン-1-イリデン)-2H-クロメン-3-イル]オキシ}-3,4,5-トリヒドロキシオキサン-2-イル)メチル][1-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパ-2-エン-1-イリデン]オキシダニウム、2-オクテノイルカルニチン及び14-HDoHEを含み得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、2-オクテノイルカルニチン、(E)-2-(4,8-ジメチルノナ-3,7-ジエン-1-イル)-5-ヒドロキシ-2,7-ジメチル-2H-クロメン-8-カルバルデヒド及び14-HDoHEを含み得る。いくつかの実施形態では、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの群は、2-オクテノイルカルニチン、N,O-ビス-(トリメチルシリル)フェニルアラニン及び14-HDoHEを含み得る。
【0047】
表1にリストされた代謝産物(バイオマーカー)は、CRC/CRAを検出し、及び/又はCRC/CRAの治療を容易にするために使用できるパネルを提供する。それにもかかわらず、いくつかの実施形態では、本開示に係る診断用バイオマーカーの群は、表1にリストされていない1つ以上の他の代謝産物を含み得る。例えば、本開示に係る診断用バイオマーカーの群は、表3の少なくとも1種の代謝産物を含み得る。表3の代謝産物のそれぞれは、腸内細菌叢に関連し得る。表3の代謝産物のそれぞれは、CRC/CRAの存在と密接に関連することが分かる。いくつかの実施形態では、表3の代謝産物のうちの1つ以上は、被験体のCRC/CRAを検出し、及び/又はCRC/CRAの治療を容易にするために、表1又は表2にリストされた代謝産物とは独立して使用され得る。いくつかの実施形態では、表3の代謝産物のうちの1つ以上は、被験体のCRC/CRAを検出し、及び/又はCRC/CRAの治療を容易にするために、表1又は表2にリストされた代謝産物に加えて使用され得る。いくつかの実施形態では、表3の1種以上の代謝産物の存在量は、例えば、質量分析によって定量化され、CRC/CRAを検出し、及び/又はCRC/CRAの治療を容易にするために処理され得る。いくつかの実施形態では、表3の1種以上の代謝産物の存在量は、例えば、質量分析によって定量化され、表1又は表2の1種以上の代謝産物の定量化された存在量と同じグループに分けられ、CRC/CRAを検出し、及び/又はCRC/CRAの治療を容易にするために処理され得る。いくつかの実施形態では、表3の代謝産物のうちの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21又は22の代謝産物のみが定量化される。いくつかの実施形態では、表3の代謝産物のうちの23種全ての代謝産物の存在量が定量化される。示されているように、表3の代謝産物の定量化された存在量は、表1又は表2の代謝産物の定量化された存在量とは独立して使用することができ、又は表1又は表2の代謝産物の定量化された存在量と一緒に同じグループに分けることができる。
【0048】
特定の実施形態では、表1又は表2の8種全ての代謝産物、並びに表3の1種の代謝産物のみが、定量化され、一緒に同じグループに分けられ、処理され、そして被験体のCRC/CRAを検出し、及び/又はCRC/CRAの治療を容易にするために使用される。特定の実施形態では、表1又は表2の8種全ての代謝産物、並びに表3の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21又は22の代謝産物のみが、定量化され、一緒に同じグループに分けられ、処理され、そして被験体のCRC/CRAを検出し、及び/又はCRC/CRAの治療を容易にするために使用される。特定の実施形態では、表1又は表2の8種全ての代謝産物、並びに表3の23種全ての代謝産物が、定量化され、一緒に同じグループに分けられ、処理され、そして被験体のCRC/CRAを検出し、及び/又はCRC/CRAの治療を容易にするために使用される。
【0049】
特定の実施形態では、表1又は表2の1、2、3、4、5、6又は7種の代謝産物のみ、並びに表3の1種の代謝産物のみが、定量化され、一緒に同じグループに分けられ、処理され、そして被験体のCRC/CRAを検出し、及び/又はCRC/CRAの治療を容易にするために使用される。特定の実施形態では、表1又は表2の1、2、3、4、5、6又は7種の代謝産物、並びに表3の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21又は22の代謝産物のみが、定量化され、一緒に同じグループに分けられ、処理され、そして被験体のCRC/CRAを検出し、及び/又はCRC/CRAの治療を容易にするために使用される。特定の実施形態では、表1又は表2の1、2、3、4、5、6又は7種の代謝産物、並びに表3の23種全ての代謝産物が、定量化され、一緒に同じグループに分けられ、処理され、そして被験体のCRC/CRAを検出し、及び/又はCRC/CRAの治療を容易にするために使用される。
【0050】
更に別の例として、本開示に係る診断用バイオマーカーの群は、表4の1種以上の代謝産物を含み得る。いくつかの実施形態では、本開示に係る診断用バイオマーカーの群は、表4の全ての代謝産物を更に含み得る。表4の代謝産物のそれぞれは、腸内細菌叢に関連し得る。表4の代謝産物のそれぞれは、CRC/CRAの存在と関連することが分かる。いくつかの実施形態では、表4の代謝産物のうちの1つ以上は、被験体のCRC/CRAを検出し、及び/又はCRC/CRAの治療を容易にするために、表1、表2又は表3にリストされた代謝産物とは独立して使用され得る。いくつかの実施形態では、表4の代謝産物のうちの1つ以上は、被験体のCRC/CRAを検出し、及び/又はCRC/CRAの治療を容易にするために、表1又は表2にリストされた代謝産物に加えて使用され得る。いくつかの実施形態では、表4の代謝産物のうちの1つ以上は、被験体のCRC/CRAを検出し、及び/又はCRC/CRAの治療を容易にするために、表1、表2及び表3にリストされた代謝産物に加えて使用され得る。いくつかの実施形態では、表4の代謝産物のうちの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50の代謝産物のみが定量化される。いくつかの実施形態では、表4の代謝産物のうちの51種全ての代謝産物の存在量が定量化される。示されているように、表4の代謝産物の定量化された存在量は、表1又は表2、並びに表3の代謝産物の定量化された存在量とは独立して使用することができ、又は表1又は表2、並びに表3の代謝産物の定量化された存在量と一緒に同じグループに分けることができる。
【0051】
特定の実施形態では、表1又は表2の8種全ての代謝産物、並びに表4の1種の代謝産物のみが、定量化され、一緒に同じグループに分けられ、処理され、そして被験体のCRC/CRAを検出し、及び/又はCRC/CRAの治療を容易にするために使用される。特定の実施形態では、表1又は表2の8種全ての代謝産物、並びに表4の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50の代謝産物のみが、定量化され、一緒に同じグループに分けられ、処理され、そして被験体のCRC/CRAを検出し、及び/又はCRC/CRAの治療を容易にするために使用される。特定の実施形態では、表1又は表2の8種全ての代謝産物、並びに表4の51種全ての代謝産物が、定量化され、一緒に同じグループに分けられ、処理され、そして被験体のCRC/CRAを検出し、及び/又はCRC/CRAの治療を容易にするために使用される。
【0052】
特定の実施形態では、表1又は表2の1、2、3、4、5、6、又は7種の代謝産物のみ、並びに表4の1種の代謝産物のみが、定量化され、一緒に同じグループに分けられ、処理され、そして被験体のCRC/CRAを検出し、及び/又はCRC/CRAの治療を容易にするために使用される。特定の実施形態では、表1又は表2の1、2、3、4、5、6又は7種の代謝産物、並びに表4の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50の代謝産物のみが、定量化され、一緒に同じグループに分けられ、処理され、そして被験体のCRC/CRAを検出し、及び/又はCRC/CRAの治療を容易にするために使用される。特定の実施形態では、表1又は表2の1、2、3、4、5、6又は7種の代謝産物、並びに表4の51種全ての代謝産物が、定量化され、一緒に同じグループに分けられ、処理され、そして被験体のCRC/CRAを検出し、及び/又はCRC/CRAの治療を容易にするために使用される。
【0053】
表1、表2、表3及び/又は表4にリストされた代謝産物の少なくとも1つの存在量を利用する予測モデルのAUC、特異度、及び感度は比較的高く、これは、これらの代謝産物の存在量を利用した予測モデルがCRC/CRAを有する被験体を正常被験体と効果的に区別できることを示している。
【0054】
表5は、表1にリストされた代謝産物の情報を示す。表5の代謝産物の特徴は、例えば質量分析を使用して測定できる質量電荷比を示す。表5の「倍率変化」という用語は、元の測定とその後の測定の間で量が変化する程度を表すパラメータを指す。表5の「P値」という用語は、検定統計量の未知の分布に関する帰無仮説の下で、実際に観測された値より極端又はより極端な値を観測した確率を指す。
【0055】
表1、3又は4にリストされた代謝産物の1つ以上は、1つ以上の異性体形態を有し得、本開示に係る診断用バイオマーカーの群の範囲に含まれることに留意されたい。
【0056】
本開示の別の態様によれば、被験体のCRC/CRAを検出する方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、被験体からのサンプル中の複数の代謝産物のパネルにおける1つ以上の成分の存在量を定量化するステップa)を含み得る。複数の代謝産物は、本開示において先に説明されたように、表1、表2、表3及び/又は表4にリストされた代謝産物を含み得る。いくつかの実施形態では、本方法は、ステップa)で定量化された代謝産物のそれぞれの存在量を処理することによりサンプルスコアを決定するステップを更に含み得る。いくつかの実施形態では、本方法は、サンプルスコアをカットオフスコアと比較することにより被験体のCRC/CRAを検出するステップc)を更に含み得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、複数の代謝産物のパネルにおける1つ以上の成分の存在量は、質量分析(MS、例えば、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)、ガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOFMS))、紫外線分析などを使用して測定され得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、サンプルスコアの決定は、コンピューティングデバイス上で実行され得る。コンピューティングデバイスは、サンプルスコアを決定するための予測モデルを取得することができる。ステップa)で定量化された代謝産物のそれぞれの存在量は、予測モデルに入力され得る。予測モデルは、ステップa)で定量化された代謝産物のそれぞれの存在量を処理し、サンプルスコアを出力することができる。サンプルスコアは、被験体がCRC/CRAを有する確率を示すことができる。
【0059】
単なる例として、ステップa)で定量化された代謝産物のそれぞれの存在量は、代謝産物のそれぞれの濃度を測定することにより定量化され得る。いくつかの実施形態では、測定された濃度は正規化され得る。例えば、測定された濃度は、サンプル中の全ての代謝産物の総濃度で割ることができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、予測モデルは、訓練されたモデルであり得る。予備モデルは、複数のトレーニングデータセットを使用して取得及び訓練され得る。複数のトレーニングデータセットのそれぞれは、サンプル被験体のサンプル代謝産物の濃度、及びサンプル被験体がCRC/CRAを有するか正常であるかを示すラベルを含み得る。複数のサンプル被験体は、CRC/CRAを有さない複数の正常被験体、CRCを有する複数の被験体、及びCRAを有する複数の被験体を含み得る。単なる例として、ラベルは0~1の値であってもよい。サンプル被験体が正常である場合、対応するラベルの値は0として指定され得る。サンプル被験体がCRC/CRAを有する場合、対応するラベルの値は1として指定され得る。これにより、予測モデルによって出力されたサンプルスコアは、0~1の値であってもよい。サンプルスコアが1に近いほど、被験体がCRC/CRAを有する可能性が高くなる。
【0061】
いくつかの実施形態では、予測モデルは、ロジスティック回帰法、サポートベクターマシン(SVM)に基づいた方法、ベイズ分類器に基づいた方法、K最近傍法(KNN)に基づいた方法、決定木法など、又はそれらの任意の組み合わせにより確立され得る。
【0062】
ステップc)では、サンプルスコアが予測モデルに関連するカットオフスコアと比較される。本明細書において使用されるように、「カットオフ値」という用語は、試験結果が異なるカテゴリーに分割される測定スケール上の分割点を指す。いくつかの実施形態では、サンプルスコアがカットオフスコア以上である場合、コンピューティングデバイスは、被験体がCRC/CRAを有すると決定してもよい。カットオフ値は、予測モデルの性能に基づいて決定されてもよい。いくつかの実施形態では、カットオフ値は、0.35~0.65の値であってもよい。いくつかの実施形態では、カットオフ値は、0.40~0.60の値であってもよい。いくつかの実施形態では、カットオフ値は、0.45~0.55の値であってもよい。例えば、カットオフ値は0.48、0.50、0.52、0.541、0.55などであってもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、受信者動作特性(ROC)曲線は、予測モデルの性能を評価するために使用することができる。ROC曲線は、そのカットオフ値が変化するときの予測モデルの診断能力を示してもよい。ROC曲線は通常、特異度に対して感度をプロットすることにより生成される。曲線下面積(AUC)は、ROC曲線に基づいて決定されてもよい。AUCは、分類器(即ち、予測モデル)が、ランダムに選択されたポジティブインスタンスをランダムに選択されたネガティブインスタンスよりも高くランク付けする確率を示してもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、本開示に係る予測モデルのAUCは、0.7を超える。いくつかの実施形態では、本開示に係る予測モデルのAUCは、0.75を超える。いくつかの実施形態では、本開示に係る予測モデルのAUCは、0.77を超える。いくつかの実施形態では、本開示に係る予測モデルのAUCは、0.8を超える。いくつかの実施形態では、本開示に係る予測モデルのAUCは、0.85を超える。いくつかの実施形態では、本開示に係る予測モデルのAUCは、0.9を超える。いくつかの実施形態では、本開示に係る予測モデルのAUCは、0.95を超える。
【0065】
いくつかの実施形態では、CRC/CRAを検出するための予測モデルの感度は、70%以上である。いくつかの実施形態では、CRC/CRAを検出するための予測モデルの感度は、75以上である。いくつかの実施形態では、CRC/CRAを検出するための予測モデルの感度は、80%以上である。いくつかの実施形態では、CRC/CRAを検出するための予測モデルの感度は、85%以上である。いくつかの実施形態では、CRC/CRAを検出するための予測モデルの感度は、90%以上である。いくつかの実施形態では、CRC/CRAを検出するための予測モデルの感度は、95%以上である。
【0066】
いくつかの実施形態では、CRC/CRAを検出するための予測モデルの特異度は、70%以上である。いくつかの実施形態では、CRC/CRAを検出するための予測モデルの特異度は、75以上である。いくつかの実施形態では、CRC/CRAを検出するための予測モデルの特異度は、80%以上である。いくつかの実施形態では、CRC/CRAを検出するための予測モデルの特異度は、85%以上である。いくつかの実施形態では、CRC/CRAを検出するための予測モデルの特異度は、90%以上である。いくつかの実施形態では、CRC/CRAを検出するための予測モデルの特異度は、95%以上である。
【0067】
図3Aは、非標的メタボロミクス分析に基づいた検証セットに従って表Aにリストされた8種の代謝産物の存在量を利用する予測モデルのROCである。具体的には、図3AのROCは、サンプルスコアを決定するために表1にリストされた8種の代謝産物の存在量を利用する例示的な予測モデルに関する。本開示に係る予測モデルは、表1にリストされた8種の代謝産物のうちの少なくとも1つの存在量を利用し得ることに留意されたい。図3AのROCは、単なる説明の目的として提供される。図3Aに示すように、AUCは約0.95であり、感度は約95.4%であり、特異度は約94%である。本明細書において使用されるように、「約」という用語は、値が比較的小さい範囲内(例えば、±0.02%又は±0.05%)で変動し得ることを意味する。
【0068】
図4Cは、0.541のカットオフスコアの下での検証群における予測モデルの識別効率を示すROC曲線を示す。図4Cに示すように、予測モデルは、この検証セットにおいて、0.91のAUC、87.9%の感度、及び81%の特異度に達した。
【0069】
診断用バイオマーカーの様々な群を利用する予測モデルの識別効率に関するより多くの説明は、本開示の他の箇所、例えば、実施例7及び実施例8に見出すことができる。これらの実施例に示すように、予測モデルのAUC、特異度、及び感度は比較的高く、これは、これらの代謝産物の存在量を利用した予測モデルがCRC/CRAを有する被験体を正常被験体と効果的に区別できることを示している。
【0070】
いくつかの実施形態では、CRC/CRAを検出する方法は、結腸内視鏡検査、生検検査、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)スキャンなど、又はそれらの任意の組み合わせなどの他のアプローチを使用して、CRC/CRAを検証するステップを更に含み得る。
【0071】
本開示の別の態様によれば、被験体のCRAを検出する方法が提供される。本方法は、被験体からのサンプル中の複数の代謝産物のパネルにおける少なくとも5つの成分の存在量を定量化するステップa)を含み得る。本方法は、ステップa)で定量化された代謝産物のそれぞれの存在量を処理することによりサンプルスコアを決定するステップb)を更に含み得る。本方法は、評価値をカットオフ値と比較することにより被験体のCRAを検出するステップc)を更に含み得る。いくつかの実施形態では、複数の代謝産物は、本開示において先に説明されたように、表1、表2、表3及び/又は表4にリストされた代謝産物を含み得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、ステップb)は、ステップ(a)で定量化された代謝産物のそれぞれの存在量を正規化するステップと、正規化された存在量を予測モデルで処理することによりサンプルスコアを決定するステップとを更に含み得る。予測モデルは、複数のトレーニングデータセットを使用して確立され得る。例えば、複数のトレーニングデータセットのそれぞれは、サンプル被験体のサンプル代謝産物の濃度、及びサンプル被験体がCRCを有するか正常であるかを示すラベルを含み得る。複数のサンプル被験体は、CRCを有さない複数の正常被験体及びCRCを有する複数の被験体を含み得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、予測モデルは、正常な人々を異なる段階のCRC患者と区別するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、CRCを有する複数のサンプル被験体は、前癌段階(ステージ0)のCRCを有する複数の被験体を含み得る。いくつかの実施形態では、CRCを有する複数のサンプル被験体は、初期(ステージI)CRCを有する複数の被験体を含み得る。いくつかの実施形態では、CRCを有する複数のサンプル被験体は、中期(ステージII)CRCを有する複数の被験体を含み得る。いくつかの実施形態では、CRCを有する複数のサンプル被験体は、後期(ステージIII及びIV)CRCを有する複数の被験体を含み得る。いくつかの実施形態では、CRCを検出するための予測モデルは、本開示で先に説明したような、CRC/CRAを検出するための予測モデルと同様の方法で確立され得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、CRCを検出するための予測モデルの感度は、65%以上である。いくつかの実施形態では、CRCを検出するための予測モデルの感度は、70%以上である。いくつかの実施形態では、CRCを検出するための予測モデルの感度は、75%以上である。いくつかの実施形態では、CRCを検出するための予測モデルの感度は、80%以上である。いくつかの実施形態では、CRC/CRAを検出するための予測モデルの感度は、85%以上である。いくつかの実施形態では、CRCを検出するための予測モデルの感度は、90%以上である。
【0075】
いくつかの実施形態では、CRCを検出するための予測モデルの特異度は、70%以上である。いくつかの実施形態では、CRCを検出するための予測モデルの特異度は、75%以上である。いくつかの実施形態では、CRCを検出するための予測モデルの特異度は、80%以上である。いくつかの実施形態では、CRCを検出するための予測モデルの特異度は、85%以上である。いくつかの実施形態では、CRCを検出するための予測モデルの特異度は、90%以上である。
【0076】
例えば、実施例6で説明するように、CRCを検出するための予測モデルは、ステージ0/I CRCを有する被験体を正常被験体と区別するために使用され、0.85のAUC、82.1%の感度、及び81%の特異度を有する(例えば、図6Bを参照)。CRCを検出するための予測モデルは、ステージII CRCを有する被験体を正常被験体と区別するためにも使用され、0.89のAUC、88.9%の感度、及び81%の特異度を有する(例えば、図6Cを参照)。CRCを検出するための予測モデルは、ステージIII/IV CRCを有する被験体を正常被験体と区別するためにも使用され、0.91のAUC、85%の感度、及び81%の特異度を有する。
【0077】
本開示の更に別の態様によれば、被験体のステージI/II CRCを検出する方法が提供される。本方法は、(a)質量分析により、被験体からのサンプル中の複数の代謝産物のパネルにおける1つ以上の成分の存在量を定量化するステップであって、複数の代謝産物が表1の代謝産物を含むステップと、(b)ステップ(a)で定量化された代謝産物のそれぞれの濃度を処理することによりサンプルスコアを決定するステップと、(c)評価値をカットオフ値と比較することにより被験体のステージI/II CRCを検出するステップと、を含み得る。いくつかの実施形態では、複数の代謝産物は、本開示において先に説明されたように、表1、表2、表3及び/又は表4にリストされた代謝産物を含み得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、ステップb)は、ステップ(a)で定量化された代謝産物のそれぞれの存在量を正規化するステップと、正規化された存在量を予測モデルで処理することによりサンプルスコアを決定するステップとを更に含み得る。予測モデルは、複数のトレーニングデータセットを使用して確立され得る。例えば、複数のトレーニングデータセットのそれぞれは、サンプル被験体のサンプル代謝産物の濃度、及びサンプル被験体がステージI/II CRCを有するか正常であるかを示すラベルを含み得る。複数のサンプル被験体は、CRCを有さない複数の正常被験体及びステージI/II CRCを有する複数の被験体を含み得る。
【0079】
本開示の更に別の態様によれば、被験体のステージIII/IV CRCを検出する方法が提供される。本方法は、(a)質量分析により、被験体からのサンプル中の複数の代謝産物のパネルにおける1つ以上の成分の存在量を定量化するステップであって、複数の代謝産物が表1の代謝産物を含むステップと、(b)ステップ(a)で定量化された代謝産物のそれぞれの濃度を処理することによりサンプルスコアを決定するステップと、(c)評価値をカットオフ値と比較することにより被験体のステージIII/IV CRCを検出するステップと、を含み得る。いくつかの実施形態では、複数の代謝産物は、本開示において先に説明されたように、表1、表2、表3及び/又は表4にリストされた代謝産物を含み得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、ステップb)は、ステップ(a)で定量化された代謝産物のそれぞれの存在量を正規化するステップと、正規化された存在量を予測モデルで処理することによりサンプルスコアを決定するステップとを更に含み得る。予測モデルは、複数のトレーニングデータセットを使用して確立され得る。例えば、複数のトレーニングデータセットのそれぞれは、サンプル被験体のサンプル代謝産物の濃度、及びサンプル被験体がステージIII/IV CRCを有するか正常であるかを示すラベルを含み得る。複数のサンプル被験体は、CRCを有さない複数の正常被験体及びステージIII/IV CRCを有する複数の被験体を含み得る。
【0081】
本開示の更に別の態様によれば、被験体のCRC/CRAを治療する方法が提供される。本方法は、本開示において先に説明された方法に従ってCRC/CRAを検出するステップと、被験体にCRC/CRAの治療を施すステップと、を含み得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、CRC/CRAを治療するための方法は、結腸内視鏡検査、生検検査、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)スキャンなど、又はそれらの任意の組み合わせなどの他のアプローチを使用して、CRC/CRAを検証するステップを更に含み得る。いくつかの実施形態では、本開示のプロセスは、結腸内視鏡検査、生検検査、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)スキャンなど、又はそれらの任意の組み合わせによるCRC/CRAの検証を命令するステップを更に含み得る。特定の実施形態では、適切な治療を適用できるように、これらのアプローチを使用してCRCとCRAを区別することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、治療は、化学療法、放射線療法、標的薬物療法、免疫療法など、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、治療は緩和ケアを含み得る。例えば、被験体が後期CRCと診断され、他の治療アプローチが無効であると判明した場合、被験体の痛み及びストレスを軽減するために、緩和ケアが被験体に提供され得る。本明細書において使用される「CRC/CRAの治療」又は「CRCの治療」は、癌転移を含む結腸直腸癌の進行を部分的又は完全に阻害、遅延又は予防すること、癌転移を含む癌の再発を抑制、遅延又は予防すること、又は哺乳動物、例えばヒトの癌の発生又は発症を予防(化学的予防)することを指す。更に、本発明の方法は、癌を有するヒト患者の治療のために実施され得る。しかし、本方法は他の哺乳動物の癌の治療にも有効である可能性もある。
【0084】
本開示の更に別の態様によれば、腸内細菌叢関連(GMA)代謝産物を、CRC/CRAの予測パネルのためのバイオマーカーとして同定する方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、CRC/CRA患者及びCRC/CRAを有さない人の対照群からのサンプルに対して非標的質量分析を実施することによりソースデータを取得するステップを含み得る。本方法は、CRC/CRA患者において有意に変化する代謝産物の第1の群を同定するステップを更に含み得る。代謝産物の第2の群は、腸内細菌叢との有意な相関を示す代謝産物を選択することにより、第1の群から同定され得る。本方法は、選択モデルを使用して、代謝産物の第2の群から予測パネルのためのGMA代謝産物を選択するステップを更に含み得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、メタボロミクスプロファイリング分析は、ソースデータを使用して実行され、代謝産物の第1の群を同定し得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、代謝産物の第2の群は、相関分析により代謝産物の第1の群から選択され得る。例えば、ピアソン相関係数分析をCRC/CRC患者内で実行して、第1の閾値よりも高い相対的存在量の腸内細菌叢種と第2の閾値よりも高い存在量の代謝産物とをプロファイリングすることができる。例えば、特定の腸内微生物叢種の相対的存在量は、サンプル中の全ての細菌叢種の量に対する細菌叢種の量の比率に基づいて決定され得る。代謝産物の相対的存在量は、代謝産物に対応するMS/MSで検出されたフラグメントのカウントの合計に基づいて決定され得る。例えば、第1の閾値は、0.01%、0.05%、0.1%、0.5%などの0.01%~1%の値であり得る。別の例として、第2の閾値は、1000、3000、5000、10000、12000、15000、18000、2000などの1000~2000の値であり得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、腸内細菌叢種及びそれらの存在量は、CRC/CRA患者及びCRC/CRAを有さない人の対照群からの糞便サンプルを使用して検出され得る。糞便サンプル中の腸内細菌叢種及びそれらの存在量は、メタゲノムシーケンスを使用して検出され得る。例えば、メタゲノムシーケンスのために糞便サンプルから核酸を抽出してもよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、予測パネルのためのGMA代謝産物は、選択モデルを使用して、代謝産物の第2の群から選択され得る。例えば、選択モデルは、回帰アルゴリズムに基づいたモデルであり得る。回帰アルゴリズムは、最小絶対収縮及び選択演算子(LASSO)アルゴリズム、線形回帰アルゴリズム、多項式回帰アルゴリズム、リッジ回帰アルゴリズム、ElasticNet回帰アルゴリズムなど、又はそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0089】
いくつかの実施形態では、予測パネルのGMA代謝産物を決定するために、選択モデルを使用して選択された代謝産物の診断効率の安定性を更に評価してもよい。例えば、代謝産物が非標的及び標的検出において一貫したアップレギュレーション又はダウンレギュレーションの傾向を示す場合、代謝産物の診断効率は安定であると見なされる。加えて、又は代替的に、様々なアプローチ(例えば、標的LC-MS検出、非標的メタボローム)を使用して代謝産物を安定して測定できる場合、代謝産物の診断効率は安定であると見なされる。
【0090】
本開示に係る方法及び代謝産物バイオマーカーは、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない以下の実施例に従って更に説明される。
【0091】
<実施例>
方法
CRCメタボロミクスプロファイリングの血清コホート
血清コホートは、2017年~2019年の間に45歳~75歳の512人の被験体をランダムに選択することにより確立された。術前放射線療法又は化学療法治療を受けた、又は過去にCRCの病歴がある被験体は除外された。血清コホートは、発見セット、モデリングセット及び検証セットという3つのセットに分けられた。発見セットには、正常群、腺腫群及び結腸直腸癌群という3つの群に分類された92人の被験体が含まれた。正常群(又は略してN)には31人の被験体が含まれた。腺腫群(又は略してA)には12人の被験体が含まれた。結腸直腸癌群(又は略してC)には49人の被験体が含まれた。モデリングセットには265人の被験体が含まれ、そのうち97人は正常であり、168人は結腸直腸異常患者であった。モデリングセットの被験体の30%はランダムにトレーニングセットに選択され、残りはテストセットに選択された。検証セットには、69人の正常被験体と120人の結腸直腸異常患者を含む189人の被験体が含まれた。病理学的診断及び病期は、対癌米国合同委員会と国際対癌連合によって維持されている腫瘍リンパ節転移(TNM)病期分類システムに基づいて決定された。3つのセットの被験体の血液は治療前にサンプリングされた。
【0092】
糞便血清一致コホート
55人の被験体を含む糞便血清一致コホート(又は一致コホートと呼ばれる)が確立され、そのうち16人は正常で、39人は結腸直腸癌又は腺腫の患者であった。糞便と血清の両方が同じ被験体から収集された。糞便サンプルは液体窒素で急速凍結され、更に使用するまで-80℃で保管された。
【0093】
非標的メタボロミクス検出のための代謝産物抽出
非標的メタボロミクス検出での代謝産物抽出について、240mlのアセトニトリル/イソプロパノール(容量で3:1)を60mlの予め解凍された血清サンプルに添加して、300ml容量の血清溶液を得た。血清タンパク質を沈殿させるために、60μLのギ酸アンモニウム(0.5g/ml)を(Sigma-Aldrich社の100ug/mlのL-チロシン-(フェニル-3,5-d2)、Cambridge Isotope Laboratories社の10ug/mlの13C-コール酸、MedChem Express社の60ug/mlのドキセルカルシフェロールを含む)6μLの内部標準溶液とともに、血清溶液に添加して混合血清溶液を得た。内部標準溶液には、100ug/mlのL-チロシン-(フェニル-3,5-d2)(Sigma-Aldrich)、10ug/mlの13C-コール酸(Cambridge Isotope Laboratories)、及び60ug/mlのドキセルカルシフェロール(MedChem Express)が含まれた。混合血清溶液を4分間ボルテックスし、13,000rpm(又は17,949g)で5分間遠心分離した。次に、混合血清溶液の全ての代謝産物を含む200μlの上清を別のチューブに移し、Centrivapコールドトラップ遠心分離により乾燥させて、乾燥した代謝産物抽出物を得た。最後に、更に分析するために、乾燥した代謝産物抽出物を、0.1%のギ酸(Thermo Fisher)を含む75μLの55%メタノール(Thermo Fisher)で再構成した。
【0094】
標的メタボロミクス検出のための代謝産物抽出
標的メタボロミクス検出での代謝産物抽出について、以下の変更を除いて、上記と同様の方法を使用した。5μg/mLの13C-コール酸を含む6μLの内部標準溶液を、240?Lのアセトニトリル及びイソプロパノール(4:1の比率、Thermo Fisher)と60μLのギ酸アンモニウム(0.5g/ml)とともに、60μLの血清に添加して混合溶液を得た。混合溶液を13,000rpm(17,949g)で5分間遠心分離した。次に、混合溶液の80μLの上清を200μLの水で希釈してから使用した。
【0095】
QCサンプルの調製
発見セット内の各正常被験体及び各CRC被験体に由来する血清は、それぞれCプール及びNプールとしてプールされた(プールされた各サンプルの総量は10mlである)。一連の7つの追加の品質管理(QC)サンプルは、容量でCプールの10%、20%、30%、40%、50%、75%、及び90%をNプールと混合して調製された。QCサンプルは、半定量的な非標的メタボロミクスプロファイリングに使用された。
【0096】
非標的代謝産物プロファイリング
血清コホート及び糞便血清一致コホートの発見セットから抽出された代謝産物は、UltiMate3000 UPLC(Thermo Fisher)に結合されたQ Exactive又はQ Exactive質量分析計によって分析された。MSフルスキャンモードで70,0000の分解能で、130~1200Daの質量/電荷比(m/z)範囲でデータを取得した。エレクトロスプレー源の条件は、シースガスを40psiとし、キャピラリー温度を320℃とし、スプレー電圧を3kV(正のHESI)及び3.2kV(負のHESI)とするように設定された。CORTECS(Waters)C18カラム(1.6μm、2.1*100mm)は35℃に維持されたオーブン温度で使用された。流速を0.3mL/minに設定し、各サンプルを5?L注入した。移動相A(例えば、0.1%のギ酸を含むアセトニトリル)を(例えば、0.5~14分で5%~45%、32分で75%、42分で80%、50~55分で100%であり、次の5分間で5%に戻る)グラジエントとして適用した。移動相Bは、0.1%のギ酸を含むメルクミリポア水であった。得られた質量スペクトルは、更なる処理のためにProgenesis QI ソフトウェア(NonlinearDynamics、Durham、NC、USA)にエクスポートされた。
【0097】
代謝産物の注釈及び推定
代謝産物の注釈は、以下の変更によって行われた。簡単に説明すると、MS-DIAL4.24が注釈に適用された。まず、QC MS1/MS2を、HMDB、MoNA及びMassBankを含む公開スペクトルライブラリにおいてスペクトル検索した。次に、脂質ブラストは、リピドミクス機能によって更に行われた。デフォルトの類似度スコアカットオフが適用された。最後に、同様の読み出しを確認及び区別するために、参照データベースによる手動チェックが行われた。現在の状況ではMS/MSを確実に取得できない代謝産物については、HMDB及びBio-MLデータベースにおいてそのMZを検索して潜在的なアイデンティティを推定した。代謝産物の注釈の信頼レベルは次のように設定された:現在のクロマグラフィー及びMS条件の参照化合物からのMS/MS>ライブラリからのMS/MS>MZマッチング。
【0098】
メタゲノムシーケンスと分類学的プロファイリング
一致コホートに関与した55人の被験体の糞便サンプルは、QIAamp DNA Stool Mini Kit(QIAGEN)によるDNA抽出に使用され、そのうち44人のDNAサンプルは品質管理に合格した。全ゲノムショットガンメタゲノムシーケンスは、腸内細菌叢の分類と機能分析に使用された。ライブラリの構築及びその後のメタゲノムシーケンスは、サンプルあたり10Gbを超えるシーケンスをターゲットにするShanghai OE Biotech Co.Ltdで、150塩基対とペアエンドリードにより、HiSeq 4000プラットフォーム(イルミナ)で実行された。
【0099】
シーケンス生データは、Trimmomatic V0.36を使用して処理された。この処理には、アダプタートリミング、低品質の読み取り又は塩基対の減少、及びBowtie2を使用したヒトゲノム(hg19)に対するマッピングによるホスト汚染の除去が含まれる。その後、クリーン読み取りは、デフォルトパラメータでMetaPhlAn2バージョン2.2.0を使用して構築され、更に分類学的にプロファイリングされた。合計で、12445の細菌叢種がプロファイリングされ、そのうち、少なくとも1人の被験体で相対存在量が0.1%を超える640種のみが、更なる細菌叢-メタボローム相互関係分析のために考慮された。
【0100】
標的代謝産物プロファイリング
ExionLC ACシステムは、別々のイオンモード(正と負)で動作する6500 QTrap 質量分析計(Sciex)に接続された。逆相液体クロマトグラフィーの移動相とカラムは、非標的代謝産物プロファイリングと同じであった。各サンプルの注入量は10μlであった。各遷移のデータ取り込み時間は、中程度の衝突ガスが10ms、カーテンガスが40msであり、イオンスプレー電圧は5,000Vと-4,500Vであり、ソース温度は450℃であった。代謝産物は、最初に移動相Bの12%で、続いて移動相Bの60%に増加した量で、0.3mL/minの流速で2.5分間カラムから溶出された。移動相Bの線形60%-85%及び85%-100%は、それぞれ6分及び8.5分に設定された。標的分析の品質管理サンプルは、次のようにプールされた:対照群(252サンプル)、癌群(261サンプル)、及び対照群:癌群(1:1)。デクラスタリング電位と衝突エネルギーは、対照群の品質管理サンプルから最適化された。代謝産物のピークは、Sciex Analyst 1.6.3ソフトウェアを使用して統合された。
【0101】
CRC及び隣接正常組織の気流支援脱離エレクトロスプレーイオン化質量分析イメージング(AFADESI-MSI)分析
質量分析イメージングでは、進行性腺腫又はCRC並びに対応隣接非癌性組織を含む合計9ペアのヒト結腸直腸組織サンプルを収集した。これらのサンプルは、生検直後に液体窒素で新たに凍結され、極低温バイアルに移されて-80℃で保存された。CM 1860 UV クリオスタットミクロトーム(Leica)を使用して、10μmでのセクショニングを行った。従来のHE染色及び質量分析イメージングのために、隣接する切片を顕微鏡スライドに解凍マウントした。
【0102】
ADADESI-MSI分析は、Q-Exactive質量分析計(Thermo Scientific)を使用して、正イオンモードと負イオンモードの両方で70,000の質量分解能で70~1,000m/zの範囲で行われた。簡単に説明すると、ADAESI-MSIの条件は次のとおりである。アセトニトリルと水(容量で8:2)の混合物であるスプレー溶媒を、イオン化中に5μL/分の流速で適用した。噴霧器と輸送管の電圧は、正イオンモードでそれぞれ7,500Vと2,000Vに設定され、負イオンモードでそれぞれ-5,500Vと-1,500Vに設定された。抽出ガス流速は45L/min、キャピラリー温度は350℃であった。ADAESI-MSIスキャンは、顕微鏡スライドの長辺(スキャンのX軸)に沿って200μm/sの一定速度で設定され、200μmの垂直ステップがY軸の隣接する線を分離した。スキャンは、顕微鏡スライドの左上隅で開始し、顕微鏡スライドの右下隅で終了した。
【0103】
データ分析
データの前処理、統計分析及び予測モデルの構築は、The R(v3.6.1)を使用して実施された。
【0104】
メタボロミクスデータの前処理
Progenesis QI ソフトウェアを使用して、ピーク抽出とアラインメントを行った。より信頼性の高いピークを取得するために、保持時間を小数点以下1桁にし、m/zを小数点以下3桁にして代謝産物を集約した。バックグラウンドシグナルを除外するために、85%を超える被験体における、存在量が5000未満の代謝産物又は存在量がゼロに等しい代謝産物は除外された。バッチ間の差を排除するために、R前処理コアソフトウェアパッケージ(v1.47.1)をロバストマルチアレイアベレージ(RMA)の正規化のために使用し、代謝産物の存在量比を計算した。
【0105】
統計
Tukey正直有意差(HSD)検定でAnovaを使用して、p値が0.005未満の代謝産物を有意に変化した代謝産物として選択した。この結果に基づいて、結腸直腸異常被験体と正常被験体の倍率変化が1.2未満で0.8を超える代謝産物が濾過された。バッチ間で15%を超える差がある代謝産物は削除された。
【0106】
腸内細菌叢-血清メタボローム相関分析
腸内細菌叢種と血清代謝産物の間のピアソンの相関係数を使用したペアワイズ相関係数は、一致コホートの33人の結腸直腸異常被験体で適用された。種と代謝産物のペアのペアワイズ相関係数及びp値が計算され、1E-3以下のp値のカットオフと有意に関連すると見なされた。
【実施例1】
【0107】
CRC患者と腺腫患者の両方で有意に変化した代謝産物を明らかにした、発見セットからの血清中の半定量的な非標的メタボロミクスプロファイリング
血清メタボロームと結腸直腸腺腫又は結腸直腸癌との関係は、LCMSを介して検出セットで非標的メタボロームプロファイルを実行することにより決定された。図1Aは、実験計画及び分析手順の概要を示す概略図である。図1に示すように、発見セットは、正常群、腺腫群及び結腸直腸癌群に分けられた。存在量の少ないシグナル(例えば、3つの群の平均存在量<5000)は、最初に濾過して除去された。非標的メタボロミクスデータの精度及び線形性を更に評価するために、上述のように、容量でCプールの10%、20%、30%、40%、50%及び75%をNプールと混合して一連のQCサンプルを実行した。正規化された相対的存在量がバックグラウンドブランクカットオフを上回った負イオンモードの13666種の代謝産物及び正イオンモードの14758種代謝産物の精度は、測定された存在量から導出されたそれらの混合比をCプールとNプールの間の予想された混合比と比較することにより推定された。図1Bは、負イオンモード及び正イオンモードにおける非標的LC-MS特徴のR値の分布図を示す分析図である。負イオンモードと正イオンモードのいずれかで検出された各代謝産物の予想された混合比と測定された混合比との間の線形回帰モデルのR値をそれぞれ、図1Bに示す。図1Bに示すように、50%を超える代謝産物のR値は、負イオンモードと正イオンモードの両方で0.9を超え、これは、代謝産物の大部分が非常に正確に測定でき、これらの代謝産物の相対的存在量が、プールされた正常群とCRC癌群の差の10%~100%の範囲内で、強い線形性を示すことを示す。
【0108】
図1Cは、負イオンモードにおける代謝産物特徴の二乗平均平方根誤差(RMSE)値の分布を示す分析図である。図1Dは、正イオンモードにおける代謝産物特徴の二乗平均平方根誤差(RMSE)値の分布を示す分析図である。上記の代謝産物プロファイリングの精度は、その線形回帰モデルの二乗平均平方根誤差(RMSE)によって評価された。全ての代謝産物の特徴のRMSE値の分布は、負イオンモードと正イオンモードの両方でRMSEが0.2未満の代謝産物の50%以上を示す(図1C図1Dを参照)。結論として、代謝産物プロファイリングは、かなりの精度で半定量的な方法で正確にかつ繰り返して測定することができる。
【0109】
図1Eは、全てのプールされたCRCサンプルにおける非標的LC-MS特徴の変動係数(CV%)の分布図を示す分析図である。プールされたCRCサンプルを品質管理として使用して、全ての代謝産物の特徴について変動係数(CV%)を決定したことは、これらの特徴の90%以上のCV%が15%未満であることを明らかにし(図1E)、異なる検出バッチ間の安定性を示唆している。
【0110】
代謝産物は、各群間のいずれかのペア間で有意に異なる存在量を示した(p値<0.005、倍率変化>1.2又は<0.8)。図1Fは、全てのサンプルの代謝産物の主成分分析(PCA)プロットである。図1Fから分かるように、腺腫群の分布と結腸直腸癌群の分布は類似していたが、正常群はこれらの2つの群と明確に区別することができた。図1Gは、正常群、腺腫群及び結腸直腸癌群における有意に変化した代謝産物の数の比較図である。図1Gから分かるように、N対Cは、N対Aとの最大の類似性を示し、これは、腫瘍形成が腺腫段階で既に有意な血清代謝変化を誘発したことを示す。結腸直腸異常関連代謝産物と呼ばれる、C対N群とA対N群の両方で有意に変化したこれらの代謝産物は、腺腫と結腸直腸癌患者の両方の早期かつ一貫した検出に有利な腫瘍進行中の初期及び持続的な変化の両方を示したため、更なる分析に使用された。合計で、1426種の代謝産物の特徴が含まれた。図1Hは、正常被験体と比較して、腺腫及び結腸直腸癌被験体の両方において有意な変化を示した代謝産物に基づいた、正常被験体(N、青)、腺腫被験体(A、赤)、及び結腸直腸癌被験体(C、緑)からのサンプルの血清メタボロミクス状態の識別を示すPCAプロットである。同様に、これらの代謝産物に基づいて、正常被験体と結腸直腸異常被験体(C&A)との間の明確な区分も実現することができた(図1Hを参照)。
【0111】
<実施例2>
結腸直腸異常患者で有意に変化する腸内細菌叢関連血清代謝産物の測定
図2Aは、一致コホートにおける糞便メタボローム及び血清メタボロームの統合分析の手順を示す分析図である。合計で、一致コホートの44人の被験体(11人の正常及び33人の結腸直腸異常)からのデータが品質管理に合格した。メタゲノムデータの分類学的プロファイリングにより、12455種の細菌叢種が明らかになった。図2Bは、種レベルでの各個体における15個のOUTを示す棒グラフである。上位15個の最も豊富な種の中で、腸管毒素原性バクテロイデスフラジリス(ETBF)の上昇が観察され、CRC開始のキーストーン病原体であると提案されている。図2Cは、一致コホートの正常及び結腸直腸異常患者におけるいくつかのCRC関連腸内細菌叢種の相対的存在量を示す分析図である。図2Cに示すように、Fusobacterium nucleatum、Parvimonas micra及びCampylobacter jejuniを含む他のいくつかのCRC促進種の存在量は全て、CRC患者で有意にアップレギュレートされたが、Bifidobacterium longumなどのプロバイオティクスはダウンレギュレートされた。これらの結果は先の報告とよく一致し、メタゲノムシーケンスデータの品質を更に裏付けている。
【0112】
少なくとも1人の被験体で相対的存在量が0.1%を超える細菌叢種と存在量が5000を超える代謝産物を使用して、一致コホートの33人の結腸直腸異常被験体に対してピアソン相関係数分析を行って細菌叢関連血清代謝産物を決定した。図2Dは、結腸直腸異常被験体における腸内細菌叢と血清代謝産物との間の相互関係マップである。有意な相関のカットオフは1E-3のp値に設定されたが、この点での誤検出率(FDR)は図2Dで18%であった。相関する種と代謝産物のペアの中で、前述の1426種の結腸直腸異常関連代謝産物内の322種の代謝産物の特徴は、腸内細菌叢との有意な関連性を示した。図2Eは、CRC関連腸内細菌とそれらの相関血清代謝産物との間の共変動を示すサンキーダイアグラムである。結腸直腸癌で腫瘍を促進すると先に報告された種との関連、抗腫瘍種との関連、及びこれらの代謝産物と他の細菌種との関連を図2Eに示した。腸内細菌叢には、CRCを促進するフソバクテリウム・ヌクレアタム、パルビモナス・ミクラ、アリスティペス・ファインゴールディイ、及びオドリバクター・スプランクニカス、並びにプロバイオティクスのビフィドバクテリウム・ロンガム及びパラバクテロイデス・ジスタソニスなど、CRCの開始及び進行に関連すると報告された一連の細菌種が含まれた。結腸直腸異常の予測において細菌叢関連代謝産物の潜在的な寄与を評価することにより、CRC関連細菌叢種に関連する63種の代謝産物を使用するだけで、発見コホートにおける正常メタボロームと結腸直腸異常メタボロームとの間の全分散の87%(サンプル外の平均R=0.87)を説明できるが、合計1426種の結腸直腸異常関連代謝産物が、全分散の93%(サンプル外の平均R=0.93)を説明することが観察された。これらの観察結果は、CRC関連細菌叢種が血清代謝産物の変化につながる可能性があり、63種の腸内細菌叢関連血清代謝産物が発見コホートでの結腸直腸異常の検出に大きく貢献したことを強く示唆している。更に、先に特徴づけられたCRC関連種に加えて、これらの代謝産物は、結腸直腸異常との関連が不明な他の膨大な数の種とも密接な関連性を示した。これらの種のいくつか、例えば、バクテロイデス・フラクサス、Dore asp.D27、及びバクテロイデス属細菌KA00251は、正常被験体と結腸直腸異常被験体の間で有意に変化した存在量も示した。
【0113】
<実施例3>
腸内細菌叢関連血清代謝産物に基づいた、パネルによる発見コホートにおける結腸直腸異常の予測
上記の腸内細菌叢関連血清代謝産物に基づいて、LASSOアルゴリズムを実施して結腸直腸異常のための主要な代謝産物バイオマーカーを探した。10倍交差検証(CV)を備えたLASSOアルゴリズムは、先に決定された血清メタボロミクスデータ及び腸内細菌叢メタボロミクスからの特徴選択に使用された。正常サンプルとCRC又は腺腫サンプルとの間で有意に変化する322種の代謝産物の特徴(adjp<5E-3)は、腸内細菌叢との有意な相関(p<1E-3、FDR<=18%)を示した。パネル投票アプローチを使用すると、32種の代謝産物の特徴が200回のLASSO実行の75%以上に関与する。同定可能な場合、MS2イオンペアを含むそれらの化学構造の注釈は、前述のようにMS/MSスペクトルマッチングによって確立された。上述したように、32種の代謝産物の特徴のうち8種の代謝産物の特徴を表1に示す。これらの8種の代謝産物は、発見コホートと同じ群の被験体を使用したMRMベースの標的LC-MS検出によって検出でき、一貫した変動を示し、これは、これらの代謝産物が異なるアプローチを使用して安定して測定できることを示す(表6を参照)。8種の推定した代謝産物の化学的特性は、最初に、対応する特徴が非標的LC-MSによって最初に発見されたものと同じサンプルセットを使用して、標的LC-MSによって評価された。上述したように、32種の代謝産物の特徴のうち他の23種の代謝産物の特徴を表3に示す。これらの代謝産物は腸内細菌叢と関連することも示され、サンプルのCRC/CRA異常との有意な相関関係が実証された。
【0114】
8種の代謝産物の予測効率は、発見群で評価された。図3Aは、検証セットに従って表1にリストされた8種の代謝産物の存在量を利用する予測モデルのROCである。非標的メタボロームによって検出された存在量に基づいて、発見コホートの正常被験体と結腸直腸の不健康な患者を効率的に識別して、(図3Aに示すように)0.95のAUC(95% CI:0.85-1.00)、97.8%の感度(95% CI:90.7%-100%)、及び91%の特異度(95% CI:72.8-100%)に達することができる。
【0115】
これらの8種の代謝産物の予測効率の安定性は、同じ被験体セットの標的メタボロミクスを使用して決定された。これらの8種の代謝産物は全て、非標的検出と標的検出の両方で一貫したアップレギュレーション又はダウンレギュレーションの傾向を示した。図3Bは、標的メタボロームに基づいた8種の代謝産物のROCを示す分析図である。更に、図3Bから分かるように、標的メタボロミクス検出によるこれらの代謝産物も、0.95のAUC(95% CI:0.85-1.00)に達し、感度と特異度がそれぞれ、95.4%(95% CI:82.8-100%)と94%(95% CI:78.6-100%)である。非標的LC-MSからの同じサンプルセットのROCのAUCは0.95であり、標的LC-MSからのROCのAUCもこの値に達し、これは、代謝産物が、対応するrt/mzを備えた元の特徴として、正常被験体をCRC又は腺腫被験体から安定して区別できることを示唆している。
【0116】
図3Cは、非標的メタボローム分析を使用した正常及び結腸直腸の不健康な患者のPCAプロットである。図3Dは、標的メタボローム分析を使用した正常及び結腸直腸の不健康な患者のPCAプロットを示す。PCAプロットを使用すると、これらの代謝産物による正常及び結腸直腸の不健康な患者を、非標的メタボロームと標的メタボロームの両方を使用して明確に分離することができる(図3C及び3Dを参照)。図3Eは、一致コホートにおける非標的メタボロミクス分析に基づいた正常群及び結腸直腸異常群の識別のためのCRC GMSMパネルのROC曲線を示す分析図である。図3Fは、メタボローム分析を使用したCICAM及びSDの正常及び結腸直腸の不健康な患者のPCAプロットである。2つのセンター、CICAM、及びSDからの結腸直腸異常患者は、PCAプロットで一緒にクラスター化され、両方ともCICAM由来の正常被験体から明確に分離された。更に、独立した糞便血清一致コホートでは、これらの代謝産物も高い診断効率を示し、AUCは0.93(95% CI:0.76-1.00)、感度と特異度はそれぞれ、91.9%(95% CI:77.7-100%)と96.3%(95% CI:60.3-100%)。したがって、(表1、表2及び表6に示された)8種の腸内細菌叢関連血清代謝産物を含むパネルは、CRC GMSMパネルとも呼ばれ、結腸直腸の不健康な患者を忠実に予測することができる。更に、独立した糞便血清一致コホートでは、他の多くの代謝産物も高い診断効率を示した。上述したように、これらの代謝産物のうち51種を表4に示す。
【0117】
<実施例4>
コホートにおける腺腫及びCRC患者の診断値を示すGMSMパネルに基づいた予測モデル
発見コホートで発見されたこの代謝産物パネルに基づいて、モデリング群を使用して予測モデルを構築し、結腸直腸異常におけるその効率を独立した検証群で調べた。合計で、103人の正常と181人の不健康な患者を含む、CICAMから得られた284人の被験体をモデリングコホートに採用し、標的MRM法を使用して8種のGMSM代謝産物の相対的存在量を測定した。図4Aは、モデリング群におけるGMSMパネルの識別効率を示すROC曲線を示す分析図である。予測モデルは、ロジック回帰法を使用して生成され、モデリング群のテストセットで0.94のAUC(95% CI:0.90~0.99)に達した(図4Aを参照)。図4Bは、モデリング群における正常被験体及び結腸直腸異常被験体のCRC及び腺腫バイオマーカーシグネチャスコアを示す分析図である。正常及び結腸直腸の不健康な被験体のバイオマーカースコアをプロットすることにより、腺腫及びCRC群で有意に高いスコアが見出された(図4Bを参照)。図4Bに示すように、腺腫及びCRC群のカットオフ値は0.825であり、正常群のカットオフ値は0.375であった。モデリング群で最高の精度を達成するために、バイオマーカースコアのカットオフは0.541に設定され、感度は92.3%、特異度は87.4%になった。
【0118】
次に、予測モデルの診断性能が、CICAMとASCHの2つの別個のソースから取得された107人の結腸直腸の不健康な患者と63人の正常被験体からなる独立した検証群で評価された(例えば、表7を参照)。図4Cは、0.541のカットオフスコアの下での検証群における予測モデルの識別効率を示すROC曲線を示す。モデリング群から導出されたカットオフ値を直接転送することにより、GMSM予測モデルは、この検証セットで、0.91のAUC、87.9%の感度、及び81%の特異度に達した(図4Cを参照)。図4Dは、腺腫患者及び正常被験体の検証群におけるCRC GMSMパネルの識別効率を示すROC曲線を示す。このモデルの特定の段階の性能は、腺腫、初期/中期(ステージI/II)及び後期(ステージIII/IV)CRC患者を含む検証群の結腸直腸の不健康な患者の腺腫から後期癌までの結腸直腸異常の進行に従って別々に調べられた。結果は、モデルが、AUCが0.81、感度が80.0%の腺腫患者と正常を区別することを示した。初期/中期(ステージI/II)患者は、AUCが0.91であり、感度が88.2%であったが、後期(ステージIII/IV)CRC患者は、感度が85%に達し、そのAUCは0.91であった(図4D及び表を参照)。これらの結果は、予測モデルが、正常被験体を、前癌段階から後期の外科的に解剖可能な階段までのCRC患者のうち結腸直腸腺腫及びCRCを有する被験体から区別する上で有望な効率を提示していることを示した。
【0119】
<実施例5>
結腸直腸異常の識別における予測モデルと臨床バイオマーカーCEAとの比較
血清CEAは、癌検出の臨床バイオマーカーとして日常的に使用されており、最近の報告では、CEAと一連の腫瘍関連遺伝子の変異体の無細胞DNA(cfDNA)テストを組み合わせて、CRCを含む外科的に解剖可能な癌を検出できることも示された。CEAの効率と、CRC及び腺腫患者の検出のための腸内細菌叢関連血清代謝産物の予測モデルを比較するために、モデリングと検証セットの両方で血清CEAスコアを持つ全ての被験体からなるCEA比較コホートでの性能を評価した。図5Aは、CEA及びCRC予測モデルの識別効率を示すROC曲線を示す。CEAのみを使用して結腸直腸異常を診断すると、臨床的に使用されたカットオフレベル5U/mlで、AUCは0.77、感度は32.5%、特異度は100%になるが、感度を85%以上に設定すると、カットオフは2.86U/ml、感度は53.6%、特異度は85.3%になる。これらの結果は、CEAマーカーが非常に低い感度を示したことを示し、これは、CRC識別におけるこのバイオマーカーの高い偽陰性率に関する先の報告と一致した。一方、カットオフ値0.541をこの群に直接転送することにより、予測モデルは、このCEA比較コホートで、CEAよりもはるかに高い0.94のAUC、89.5%の感度、及び85.3%の特異度に達した(図5Aを参照)。図5Bは、正常(緑のスポット)及び結腸直腸異常患者(赤いスポット)を識別する際の予測モデル(赤い破線)及びCEA(臨床的カットオフ、青い破線;最適化されたカットオフ、緑の破線)効率のグラフ比較のための散布図を示す。図5Bに示すように、209人の結腸直腸の不健康な患者のうち187人は予測モデルを使用して検出できたが、この数は、臨床的カットオフでCEAのみを使用した場合にわずか68に減少し、CRCの不健康な患者の大部分が診断されなかった。したがって、予測モデルは、結腸直腸異常の識別において臨床バイオマーカーCEAよりも優れている。
【0120】
<実施例6>
予測モデルは、正常被験体と異なる段階のCRCを有する被験体を区別することができる。
図6A図6Dは、検証群におけるCRC GMSMパネルの識別効率を示すROC曲線である。この予測モデルの特定の段階の性能は、検証群の結腸直腸の不健康な患者の初期から後期までの結腸直腸異常の進行に従って別々に調べられた。図6Aは、予測モデルが正常被験体とCRC患者を区別し、AUCが0.89、感度が89.7%であることを示した。図6Bは、予測モデルが、AUCが0.85、感度が82.1%、特異度が81%の初期CRC患者と正常被験体を区別したことを示した。図6Cは、予測モデルが、AUCが0.89、感度が88.9%、特異度が81%の中期CRC患者と正常被験体を区別したことを示した。図6Dは、予測モデルが、AUCが0.91、感度が85%、特異度が81%の後期CRC患者と正常被験体を区別したことを示した。これらの結果は、予測モデルが、正常被験体及び腺腫患者をCRC患者と区別し、更に、初期、中期、後期などの異なる段階のCRC患者と正常被験体とを区別する上で有望な効率を提示していることを示した。
【0121】
この実施例は、予測モデルを使用して、被験体のステージI/II/III/IV CRCを区別できることを示す。
【0122】
<実施例7>
予測モデルは、表2にリストされた少なくとも2種の代謝産物の存在量を使用して、CRC/CRAを有する被験体と正常被験体とを区別することができる。
いくつかの実施形態では、定量化して、CRC/CRAを検出し、及び/又はCRC/CRAの治療を容易にするために使用できる診断用バイオマーカーの群は、表2にリストされた2種以上の代謝産物を含み得る。単なる例として、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの例示的な群を表8に示す。診断用バイオマーカーのこれらの群を利用する予測モデルの対応する性能も評価される。表8に示すように、予測モデルのAUC、特異度、及び感度は比較的高く、これは、これらの代謝産物の存在量を利用した予測モデルがCRC/CRAを有する被験体を正常被験体と効果的に区別できることを示している。
【0123】
<実施例8>
予測モデルは、表3にリストされた少なくとも2種の代謝産物の存在量を使用して、CRC/CRAを有する被験体と正常被験体を区別することができる。
いくつかの実施形態では、定量化して、CRC/CRAを検出し、及び/又はCRC/CRAの治療を容易にするために使用できる診断用バイオマーカーの群は、表2にリストされた3種以上の代謝産物を含み得る。単なる例として、定量化してこれらの目的のために使用できる診断用バイオマーカーの例示的な群を表9に示す。診断用バイオマーカーのこれらの群を利用する予測モデルの対応する性能も評価される。表9に示すように、予測モデルのAUC、特異度、及び感度は比較的高く、これは、これらの代謝産物の存在量を利用した予測モデルがCRC/CRAを有する被験体を正常被験体と効果的に区別できることを示している。
【0124】
このように、基本的な概念を説明したが、当業者であれば、本明細書の詳細な開示を読んだ後、前述の詳細な開示が単なる例として提示されることを意図しており、限定的なものではないことが明らかであろう。本明細書には明示的に記載されていないが、様々な変更、改良及び変形が想到され、これらは意図当業者を対象としている。これらの変更、改良及び変形は、本開示に示唆されることを意図し、本開示の例示的な実施形態の精神及び範囲内にある。
【0125】
また、本開示の実施形態を説明するために所定の用語が使用されている。例えば、「一実施形態」、「実施形態」及び「いくつかの実施形態」という用語は、実施形態に関連して説明する特定の特徴、構造、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の様々な部分における「実施形態」、「一実施形態」、又は「代替実施形態」に対する2つ以上の参照は、必ずしも全てが同じ実施形態を参照するわけではないことが強調され、理解されるべきである。更に、特定の特徴、構造及び特性は、本開示の1つ以上の実施形態において適宜組み合わせてもよい。
【0126】
また、当業者によって理解されるように、本開示の態様は、任意の新規で有用なプロセス、機械、製造工程、若しくは物質の組成、又は任意の新規で有用なその改善を含む、いくつかの特許性のある種類又は状況のうちの任意のものにおいて、本明細書において図示及び説明することができる。したがって、本開示の態様は、全体的にハードウェア又はソフトウェア(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)によって実装されてもよく、又はソフトウェアとハードウェアの組み合わせによって実装されてもよく、これらは全て、本明細書では一般に「ブロック」、「モジュール」、「エンジン」、「ユニット」、「コンポーネント」又は「システム」と呼ぶことができる。更に、本開示の態様は、そこに具体化されたコンピュータ可読プログラムコードを有する、1つ以上のコンピュータ可読媒体内に具体化されたコンピュータプログラム製品の形態をとることもできる。
【0127】
更に、処理要素もしくはシーケンスの記述された順序、又は数字、文字、もしくは他の指定の使用は、特許請求の範囲に指定されている場合を除き、特許請求されたプロセス及び方法をいずれの順序に限定することを意図するものではない。上記開示は、本開示の様々な有用な実施形態であると現在のところ考えられる様々な具体例によって議論されているが、そのような詳細事項は説明のためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲は開示される実施形態に限定されず、むしろ、開示される実施形態の精神及び範囲内の変形及び均等な配置を包含するように意図されることが理解されるべきである。例えば、上述した各構成要素の実装は、ハードウェアデバイスに具現化されてもよいが、ソフトウェア-唯一の解決法-例えば、既存のサーバ又はモバイルデバイスへのインストールとして実装されてもよい。
【0128】
同様に、本開示の実施形態の前述の説明において、様々な特徴は、様々な実施形態のうちの1つ以上の理解を助ける開示を簡略化するために、単一の実施形態、図面、又はその説明にまとめられている場合があることが理解されるべきである。しかしながら、本開示の方法は、特許請求された主題が、各請求項に明示的に記載されたものよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映しているものとして解されるべきでない。むしろ、特許請求された主題は、先に開示された単一の実施形態の全ての特徴よりも少ない特徴を含む場合がある。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D