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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/173 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
H02K5/173 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022576170
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(86)【国際出願番号】 JP2022023532
(87)【国際公開番号】W WO2023238409
(87)【国際公開日】2023-12-14
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 鴻之介
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-068231(JP,A)
【文献】特開2013-204740(JP,A)
【文献】実開昭62-112321(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/173
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受ブラケットを有した筐体と、
前記筐体に収容され、前記筐体に固定されたステータと、
前記筐体に収容され、前記ステータの内側に位置したロータと、
一部が前記筐体に収容され、前記ロータに固定されたシャフトと、
前記軸受ブラケットに支持され、前記シャフトを回転中心軸まわりに回転可能に支持し、油が供給される軸受と、
前記軸受に対して前記ロータとは反対側に位置し、前記回転中心軸まわりの筒状に形成され、内側に前記シャフトが入れられ、前記シャフトの外周面と第1の間隔をあけて離間した油切り部と、前記油切り部に対して前記軸受とは反対側に位置し前記回転中心軸まわりの筒状に形成され、前記外周面と第1の間隔よりも小さい第2の間隔をあけて離間したシール部とが一体に形成され、前記筐体に固定された筒状部材と、
を備え、
前記軸受は、
内輪と、
供給路と排出路とが形成された外輪と、
前記内輪と前記外輪との間に介在した転動体と、
を有し、
前記軸受ブラケットには、
前記外輪の前記供給路と通じ、供給された前記油が前記外輪の前記供給路に流れる供給路と、
前記外輪の前記排出路と通じ、前記外輪の前記排出路から前記油が流入する排出路と、
が形成され、
前記シャフトは、
前記軸受に対して前記ロータとは反対側に位置した、第1の直径の第1の直径部と、
前記第1の直径部に対して前記軸受とは反対側に位置した、前記第1の直径よりも小さい第2の直径の第2の直径部と、
を有し、
前記油切り部には、前記第1の直径部が入れられ、
前記シール部には、前記第2の直径部が入れられ、
前記第1の直径部と前記シール部との間には、前記油切り部と前記第1の直径部との間の隙間と通じた空間が形成され、
前記筒状部材には、前記シール部と前記第2の直径部との間の隙間とは別であり、前記空間と通じ前記空間内の油を排出する流路が形成された、
回転電機。
【請求項2】
前記シャフトは、
前記内輪の内側に入れられ、前記第1の直径部の一部及び前記第2の直径部を含むベース部材と、
前記軸受に対して前記ロータとは反対側に位置し前記第1の直径部の前記一部を囲い当該一部とともに前記第1の直径部を構成し、前記内輪を前記ベース部材に固定した固定部材と、
を有した、
請求項に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筐体と、筐体を貫通したシャフトと、筐体に支持されシャフトを回転可能に支持する軸受と、を備え、軸受が油によって冷却される回転電機がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-187059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の回転電機では、例えば、軸受に供給される油が外部に漏れるのを抑制するための油切り部材と、筐体内に埃等の異物が入るのを抑制するためのシール部材とが、シャフトの外周面に対向して設けられた構成が知られている。しかしながら、上記従来技術では、油切り部材とシール部材とが別々の部材であるため、回転電機の部品点数が多くなり、回転電機の組立工数が増加するという問題がある。
【0005】
本発明が解決する課題の一例は、組立工数を削減しやすい新規な構成の回転電機を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの実施形態に係る回転電機は、筐体と、ステータと、ロータと、シャフトと、軸受と、筒状部材と、を備える。前記筐体は、軸受ブラケットを有する。前記ステータは、前記筐体に収容され、前記筐体に固定されている。前記ロータは、前記筐体に収容され、前記ステータの内側に位置している。前記シャフトは、一部が前記筐体に収容され、前記ロータに固定されている。前記軸受は、前記軸受ブラケットに支持され、前記シャフトを回転中心軸まわりに回転可能に支持し、油が供給される。前記筒状部材には、前記軸受に対して前記ロータとは反対側に位置し、前記回転中心軸まわりの筒状に形成され、内側に前記シャフトが入れられ、前記シャフトの外周面と第1の間隔をあけて離間した油切り部と、前記油切り部に対して前記軸受とは反対側に位置し前記回転中心軸まわりの筒状に形成され、前記外周面と第1の間隔よりも小さい第2の間隔をあけて離間したシール部とが一体に形成されている。前記筒状部材は、前記筐体に固定されている。前記軸受は、内輪と、供給路と排出路とが形成された外輪と、前記内輪と前記外輪との間に介在した転動体と、を有する。前記軸受ブラケットには、前記外輪の前記供給路と通じ、供給された前記油が前記外輪の前記供給路に流れる供給路と、前記外輪の前記排出路と通じ、前記外輪の前記排出路から前記油が流入する排出路と、が形成されている。前記シャフトは、前記軸受に対して前記ロータとは反対側に位置した、第1の直径の第1の直径部と、前記第1の直径部に対して前記軸受とは反対側に位置した、前記第1の直径よりも小さい第2の直径の第2の直径部と、を有する。前記油切り部には、前記第1の直径部が入れられ、前記シール部には、前記第2の直径部が入れられ、前記第1の直径部と前記シール部との間には、前記油切り部と前記第1の直径部との間の隙間と通じた空間が形成され、前記筒状部材には、前記シール部と前記第2の直径部との間の隙間とは別であり、前記空間と通じ前記空間内の油を排出する流路が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、例えば、組立工数を削減しやすい新規な構成の回転電機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る回転電機を概略的に示す断面図である。
図2図2は、実施形態の回転電機のシャフトの一部及び軸受構造体を概略的に示す断面図である。
図3図3は、実施形態の回転電機のシャフトの一部及び軸受構造体の一部を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用及び効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0010】
また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実と異なる場合がある。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0011】
図1は、実施形態に係る回転電機10を概略的に示す断面図である。回転電機10は、例えば、かご形三相誘導電動機であり、電動機又は発電機として利用される。なお、回転電機10は、この例に限られない。
【0012】
回転電機10は、ステータ11と、ロータ12と、筐体13と、シャフト14と、二つの軸受15A,15Bと、内扇16と、二つの筒状部材17A,17Bとを有する。以後、二つの軸受15A,15Bの総称として軸受15を用い、二つの筒状部材17A,17Bの総称として筒状部材17を用いる。なお、回転電機10は、この例に限られない。
【0013】
ステータ11は、固定子鉄心21と、固定子巻線22とを有する。固定子鉄心21は、回転中心軸Axを囲む略円筒状に形成されている。回転中心軸Axは、回転電機10におけるロータ12及びシャフト14の回転の中心であり、例えばシャフト14の中心を通る仮想的な直線である。固定子巻線22は、固定子鉄心21に設けられたスロットを貫通して、当該固定子鉄心21に取り付けられる。
【0014】
本明細書において、便宜上、軸方向、径方向、及び周方向が定義される。軸方向は、回転中心軸Axに沿う方向である。径方向は、回転中心軸Axと直交する方向である。周方向は、回転中心軸Axまわりに回転する方向である。
【0015】
ロータ12は、回転子鉄心31と、導体32とを有する。回転子鉄心31は、回転中心軸Axを囲む略円筒状に形成され、固定子鉄心21の内側に配置されている。導体32は、互いに周方向に間隔を介して配置されている。導体32は、例えば、回転子鉄心31を軸方向に貫通する導体バーと、全ての導体バーの軸方向における端部に結合された短絡リングとを有する。
【0016】
筐体13は、フレーム41と、二つの軸受ブラケット42とを有する。フレーム41は、回転中心軸Axを囲む略円筒状に形成されている。ステータ11及びロータ12は、フレーム41の内側に配置されている。固定子鉄心21は、フレーム41に固定されている。
【0017】
二つの軸受ブラケット42は、軸方向におけるフレーム41の両端部に接続されている。軸受ブラケット42は、フレーム41の内部の空間を塞ぐ。軸受ブラケット42のそれぞれは、対応する軸受15を支持している。具体的には、軸受ブラケット42には、孔42aが設けられている。孔42aは、軸受ブラケット42を軸方向に貫通している。孔42aに軸受15が入れられている。軸受ブラケット42は、壁とも称される。
【0018】
シャフト14は、回転中心軸Axに沿って延びる略円柱状に形成される。シャフト14は、軸受ブラケット42を貫通して、筐体13の内部と外部とに亘って延びている。シャフト14は、軸受15によって回転中心軸Axまわりに回転可能に支持されている。
【0019】
シャフト14は、ステータ11及びロータ12の内側を通って軸方向に延びている。シャフト14は、ロータ12の回転子鉄心31に結合される。ロータ12及びシャフト14は、ステータ11に対して回転中心軸Axまわりに一体的に回転することができる。
【0020】
二つの軸受15A,15Bは、ロータ12に対して軸方向の一方側と他方側とに位置している。すなわち、二つの軸受15A,15Bの間にロータ12が位置している。
【0021】
内扇16は、筐体13の内部において、シャフト14に結合される。内扇16は、シャフト14と一体的に回転中心軸Axまわりに回転することができる。内扇16は、回転することで、ステータ11及びロータ12を冷却する気流を発生させる。
【0022】
筒状部材17は、軸受15ごとに設けられている。二つの筒状部材17A,17Bは、二つの軸受15A,15Bの一方側と他方向とに位置している。すなわち、二つの筒状部材17A,17Bの間に二つの軸受15A,15Bが位置している。筒状部材17と軸受15とは、軸受構造体20を構成する。すなわち、本実施形態では、二つの軸受構造体20が設けられている。
【0023】
次に、シャフト14、軸受15、筒状部材17、及び軸受ブラケット42の詳細を説明する。図2は、実施形態の回転電機10のシャフト14の一部及び軸受構造体20を概略的に示す断面図である。
【0024】
図2に示すように、軸受15は、例えばころがり軸受であり、内輪15aと、外輪15bと、複数の転動体15cとを有する。内輪15aは、回転中心軸Axまわりの円筒状に形成され、シャフト14に固定されている。内輪15aは、シャフト14と一体的に回転可能である。外輪15bは回転中心軸Ax回りの円筒状に形成され、内輪15aを囲んでいる。外輪15bは、筐体13の軸受ブラケット42に固定されている。複数の転動体15cは、回転中心軸Ax回りに並べられ、内輪15aと外輪15bとの間に介在している。転動体15cは、例えば玉(球体)である。なお、軸受15は、上記に限定されない。
【0025】
軸受15は、油によって冷却される。例えば、軸受15の油冷方式は、強制油冷式である。外輪15bにおける鉛直方向の上方側の部分には、油が供給される供給路15dが形成されている。外輪15bにおける鉛直方向の下方側の部分には、油を排出する排出路15eが形成されている。
【0026】
軸受ブラケット42には、軸受15の供給路15dと通じた供給路42bと、軸受15の排出路15eと通じた排出路42cとが形成されている。排出路42cは、流路42cb,42cc,42cd,42ce,42cfを有する。流路42cbは、軸受15に対してロータ12とは反対側で軸受ブラケット42の孔42aと通じている。流路42cbにおける鉛直方向の下方側の端部には、排出口42caが形成されている。流路42ccは、軸受15の排出路15eと通じている。流路42cdは、軸受15に対してロータ12側で軸受ブラケット42の孔42aと通じている。流路42cc,42cdは、流路42ceを介して流路42cbと通じている。また、流路42cfは、流路42cbと通じている。
【0027】
上記構成において、供給路42bには、油供給装置(不図示)から油が供給される。油供給装置から供給路42bに供給された油は、供給路15dに流入し、外輪15bと内輪15aとの間の転動体15cを経由して排出路15eから軸受ブラケット42の排出路42cの流路42ccに流入する。流路42ccに流入した油は、排出口42caから外部に排出される。また、このとき、外輪15bと内輪15aとの間から軸方向の外側に漏れ出た油は、例えば、軸受ブラケット42の排出路42cの流路42cb,42cdに流入し、排出口42caから排出される。
【0028】
シャフト14は、回転中心軸Ax回りの円筒状の外周面14aを有する。また、シャフト14は、回転中心軸Axまわりの円柱状の複数の領域14b~14fを有する。領域14bは、シャフト14においてロータ12が固定される部分である。領域14cは、領域14bに対してロータ12とは反対側に位置して領域14bと接続されている。領域14cの直径は、領域14bの直径よりも小さい。
【0029】
領域14dは、領域14cに対してロータ12とは反対側に位置して領域14cと接続されている。領域14dの直径d1は、領域14cの直径よりも大きい。領域14dは、第1の直径部の一例であり、領域14dの直径d1は、第1の直径の一例である。
【0030】
領域14eは、領域14dに対してロータ12とは反対側に位置して領域14dと接続されている。領域14eの直径d2は、領域14dの直径d1よりも小さい。領域14eは、第2の直径部の一例であり、領域14eの直径d2は、第2の直径の一例である。
【0031】
領域14fは、領域14eに対してロータ12とは反対側に位置して領域14eと接続されている。領域14fの直径は、領域14eの直径d2よりも小さい。
【0032】
領域14cは、軸受15の内側に入れられている。領域14bと領域14dとは、軸受15を軸方向に挟んでいる。
【0033】
また、シャフト14は、複数の部材の組み合わせによって構成されている。例えば、シャフト14は、ベース部材51と、固定部材52とを有する。
【0034】
ベース部材51は、領域14bと、領域14cと、領域14dの一部51aと、領域14eと、領域14fとを含む。
【0035】
固定部材52は、軸受15に対してロータ12とは反対側に位置してベース部材51に固定されている。固定部材52は、ベース部材51の一部51aを囲んでいる。固定部材52は、ベース部材51の一部51aとともに領域14dを構成している。ベース部材51は、例えば、ナット(雌ネジ部材)であり、ベース部材51の一部51aの外周面に設けられた雄ネジ部と結合している。なお、固定部材52は、上記に限定されない。
【0036】
筒状部材17は、軸受15に対してロータ12とは反対側に位置している。筒状部材17は、回転中心軸Ax回りの円筒状(円環状)に形成され、筐体13の軸受ブラケット42に固定されている。筒状部材17は、例えば、金属材料や合成樹脂材料によって作られている。
【0037】
図3は、実施形態の回転電機10のシャフト14の一部及び軸受構造体20の一部を概略的に示す断面図である。
【0038】
図2及び図3に示すように、筒状部材17は、一端面17aと、他端面17bと、外周面17cと、内周面17dとを有する。
【0039】
一端面17aは、回転中心軸Ax回りの円環状の平面であり、軸受15側(ロータ12側)を向いている。一端面17aは、軸受15の外輪15bに軸方向に対面している。詳細には、一端面17aは、軸受15の外輪15bに軸方向に突き当てられている。すなわち、一端面17aは、外輪15bと接触している。
【0040】
他端面17bは、一端面17aの反対側の面である。他端面17bは、回転中心軸Ax回りの円環状の平面であり、軸受15とは反対側を向いている。
【0041】
外周面17cは、回転中心軸Ax回りの円筒面状に形成され、一端面17aの径方向の外側の周縁部と他端面17bの径方向の外側の周縁部とに亘っている。
【0042】
内周面17dは、回転中心軸Ax回りの円筒面状に形成され、一端面17aの径方向の内側の周縁部と他端面17bの径方向の内側の周縁部とに亘っている。内周面17dは、面17da,17db,17dcを有する。面17daは、一端面17aの径方向の内側の周縁部から軸受15とは反対側に軸方向に沿って延びている。面17daは、回転中心軸Ax回りの円筒面状に形成されている。面17daは、シャフト14の領域14dを囲んでいる。面17dcは、他端面17bの径方向の内側の周縁部から軸受15側に軸方向に沿って延びている。面17dcは、回転中心軸Ax回りの円筒面状に形成されている。面17dcは、シャフト14の領域14eを囲んでいる。面17dbは、面17daと面17dcとを接続している。面17dbは、回転中心軸Ax回りの円環状の平面であり、軸受15側を向いている。
【0043】
図3に示すように、面17daは、シャフト14の外周面14aと第1の間隔t1をあけて離間している。詳細には、面17daは、シャフト14の外周面14aに含まれる領域14dの外周面14daと、第1の間隔t1をあけて離間している。すなわち、面17daと外周面14daとの間には、回転中心軸Ax回りの円筒状の隙間101が形成されている。面17dcは、シャフト14の外周面14aと第2の間隔t2をあけて離間している。詳細には、面17dcは、シャフト14の外周面14aに含まれる領域14eの外周面14eaと、第2の間隔t2をあけて離間している。すなわち、面17dcと外周面14eaとの間には、回転中心軸Ax回りの円筒状の隙間102が形成されている。第2の間隔t2は、第1の間隔t1よりも小さい。
【0044】
また、図2及び図3に示すように、筒状部材17には、油切り部17mと、シール部17nとが一体に形成されている。すなわち、筒状部材17は、油切り部17mと、シール部17nとを有する。図2及び図3において、線L1は、油切り部17mと、シール部17nとの境界の位置の一例を模式的に示している。線L1の部分において、油切り部17mとシール部17nとは連続している。すなわち、油切り部17mとシール部17nとの間には合わせ面が存在しない。なお、油切り部17mとシール部17nとの境界の位置は、線L1に限定されない。筒状部材17は、材料の一つの塊によって構成されている。筒状部材17は、例えば、ブロック状の素材に対する機械加工によって作られる。筒状部材17は、外側部材や一体形成部品とも称される。
【0045】
油切り部17mは、一端面17aと、外周面17cの一部と、内周面17dにおける面17daの一部17daaとを含む。すなわち、油切り部17mは、軸受15に対してロータ12とは反対側に位置し、回転中心軸Axまわりの筒状に形成されている。また、油切り部17mは、内側にシャフト14が入れられ、シャフト14の外周面14aと第1の間隔t1をあけて離間している。
【0046】
シール部17nは、他端面17bと、外周面17cの一部と、内周面17dにおける面17daの一部17dabと、面17dbと、面17dcとを含む。すなわち、シール部17nは、油切り部17mに対して軸受15とは反対側に位置し回転中心軸Axまわりの筒状に形成されている。また、油切り部17mは、外周面14aと第2の間隔t2をあけて離間している。
【0047】
また、シール部17nとシャフト14の領域14dとの間には、油が流入する空間103が形成されている。空間103は、室とも称される。空間103は、油切り部17mと領域14dとの間の隙間101と通じている。また、図2に示すように、筒状部材17には、油を排出する排出路17pが形成されている。排出路17pは、空間103と通じ空間103内の油を排出可能である。具体的には、排出路17pは、軸受ブラケット42の排出路42cの流路42cfと通じている。
【0048】
上記構成において、油切り部17mの面17daとシャフト14の領域14dの外周面14daとの間の隙間101は、軸受15からの油の移動を抑制する第1の間隔t1(図3)に形成されている。すなわち、油切り部17mは、軸受15からの油が隙間101を通過するのを抑制する。ただし、一部の油は、隙間101を通過する可能性がある。隙間101を通過した油は、空間103に流入する。このとき、シール部17nの面17dcとシャフト14の領域14eの外周面14eaとの間の隙間102は、軸受15からの油の移動を油切り部17mよりも抑制する第2の間隔t2(図3)に形成されている。すなわち、シール部17nは、軸受15からの油が隙間102を通過するのを抑制する。これにより、空間103に流入した油は、隙間102を通過するのが抑制され、排出路17p(図2)に流入する。このように、シール部17nは、空間103に流入した油を排出路17pに案内する。排出路17pに流入した油は、流路42cf(図2)を通って、排出口42caから外部に排出される。
【0049】
また、上記構成において、シール部17nの面17dcとシャフト14の外周面14daとの間の隙間102は、外部からの埃等の異物の移動を抑制する第2の間隔t2(図3)に形成されている。すなわち、シール部17nは、外部からの埃等の異物が隙間102を通過するのを抑制する。また、油切り部17mの面17daとシャフト14の外周面14daとの間の隙間101は、外部からの埃等の異物が移動する抑制する第1の間隔t1(図3)に形成されている。すなわち、油切り部17mは、外部からの異物が隙間101を通過するのを抑制する。
【0050】
以上のように、本実施形態の回転電機10は、筐体13と、ステータ11と、ロータ12と、軸受15と、筒状部材17とを備える。ステータ11は、筐体13に収容され、筐体13に固定されている。ロータ12は、筐体13に収容され、ステータ11の内側に位置している。シャフト14は、一部が筐体13に収容されている。シャフト14は、ロータ12に固定されている。軸受15は、筐体13に支持され、シャフト14を回転中心軸Axまわりに回転可能に支持し、油が供給される。筒状部材17は、筐体13に固定されている。筒状部材17には、油切り部17mと、シール部17nとが一体に形成されている。油切り部17mは、軸受15に対してロータ12とは反対側に位置し、回転中心軸Axまわりの筒状に形成され、内側にシャフト14が入れられている。油切り部17mは、シャフト14の外周面14aと第1の間隔t1をあけて離間している。シール部17nは、油切り部17mに対して軸受15とは反対側に位置し回転中心軸Axまわりの筒状に形成されている。シール部17nは、外周面14aと第1の間隔t1よりも小さい第2の間隔t2をあけて離間している。
【0051】
このような構成によれば、筒状部材17に、油切り部17mと、シール部17nとが一体に形成されているので、油切り部17mと、シール部17nとが別々の部材(二つの部材)に設けられている構成に比べて、部品点数を削減することができる。よって、回転電機10の組立工数を減しやすいとともに、回転電機10のコストを低減しやすい。
【0052】
ここで、油切り部17mとシール部17nとが別々の部材に設けられている場合には、それらの別々の部材のそれぞれに合わせ面が存在し、それらの合わせ面間から油が漏れ可能性がある。これに対して、本実施形態では、筒状部材17に、油切り部17mと、シール部17nとが一体に形成されているので、油切り部17mとシール部17nとの間に合わせ面が存在しない。よって、本実施形態によれば、合わせ面が存在する構成に比べて、油の漏れを抑制することができる。
【0053】
また、シャフト14は、直径d1(第1の直径)の領域14d(第1の直径部)と、直径d1よりも小さい直径d2(第2の直径)の領域14e(第2の直径部)とを有する。領域14dは、軸受15に対してロータ12とは反対側に位置している。領域14eは、領域14dに対して軸受15とは反対側に位置している。油切り部17mには、領域14dが入れられている。シール部17nには、領域14eが入れられている。領域14dとシール部17nとの間には、空間103が形成されている。空間103は、油切り部17mと領域14dとの間の隙間101と通じている。筒状部材17には、排出路17p(流路)が形成されている。排出路17pは、シール部17nと領域14eとの間の隙間102とは別である。排出路17pは、空間103と通じ空間103内の油を排出する。
【0054】
このような構成によれば、排出路17pが一つの部材(筒状部材17)に設けられているので、排出路17pを一度の孔加工によって形成することができる。よって、本実施形態によれば、油切り部17mとシール部17nとが別々の部材に設けられてそれらの別々の部材の両方に亘って排出路17pが設けられる構成に比べて、排出路17pの形成に掛かる製造工数を削減しやすい。よって、回転電機10の組立工数をより一層削減しやすいとともに、回転電機10のコストをより一層低減しやすい。
【0055】
また、軸受15は、内輪15aと、外輪15bと、転動体15cとを有する。転動体15cは、内輪15aと外輪15bとの間に介在している。シャフト14は、ベース部材51と、固定部材52とを有する。ベース部材51は、領域14dの一部51aと、領域14eとを含む。固定部材52は、軸受15に対してロータ12とは反対側に位置してベース部材51に固定されている。固定部材52は、領域14dの一部51aを囲んでいる。固定部材52は、領域14dの一部51aとともに領域14dを構成している。
【0056】
このような構成によれば、筒状部材17に、油切り部17mと、シール部17nとが一体に形成されているので、油切り部17mと、シール部17nとが別々の部材に設けられている構成に比べて、固定部材52に対する油切り部17m及びシール部17nの位置精度を高くすることができる。
【0057】
なお、上記実施形態において、油切り部17mの面17daに凹凸形状等のラビリンス構造を設けてもよい。ラビリンス構造は、例えば回転電機10の保護形式に応じて設けられてもよい。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
10…回転電機、11…ステータ、12…ロータ、13…筐体、14…シャフト、14a…外周面、14d…領域(第1の直径部)、14e…領域(第2の直径部)、15,15A,15B…軸受、15a…内輪、15b…外輪、15c…転動体、15d,42b…供給路、15e,42c…排出路、17,17A,17B…筒状部材、17m…油切り部、17n…シール部、17p…排出路、42…軸受ブラケット、51…ベース部材、51a…一部、52…固定部材、101,102…隙間、103…空間、Ax…回転中心軸、d1…直径(第1の直径)、d2…直径(第2の直径)、t1…第1の間隔、t2…第2の間隔。
図1
図2
図3