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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/03 20060101AFI20240515BHJP
   B60K 15/035 20060101ALI20240515BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20240515BHJP
   F16K 31/20 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
B60K15/03 Z
B60K15/035 A
B60K15/035 B
F02M37/00 301G
F16K31/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022576719
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2022001789
(87)【国際公開番号】W WO2022158489
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2021009749
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】三原 健太
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/122408(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/031726(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/198596(WO,A1)
【文献】特開2018-13087(JP,A)
【文献】国際公開第2020/084156(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/03
B60K 15/035
F02M 37/00
F16K 31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕切壁を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室、上方に燃料タンク外に連通する通気室が設けられ、前記仕切壁に前記弁室及び前記通気室を連通する通気孔が形成された、ハウジングと、
前記弁室内に昇降可能に収容され、前記通気孔を開閉するフロート弁と、
前記通気室内に昇降可能に配置された弁体とを有しており、
前記ハウジングには、前記仕切壁よりも上方に、前記通気室内に連通する燃料蒸気排出口が形成されていると共に、この燃料蒸気排出口に連通し且つ前記燃料タンク外に配置されたキャニスターに連結される燃料蒸気排出管が設けられており、
前記弁体は、前記通気孔を通過し前記通気室内に流入する流体の単位時間当たりの流量が所定値を超えるときに押し上げられて、前記燃料蒸気排出口に部分的に当接して塞ぐように構成されていることを特徴とする弁装置。
【請求項2】
仕切壁を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室、上方に燃料タンク外に連通する通気室が設けられ、前記仕切壁に前記弁室及び前記通気室を連通する通気孔が形成された、ハウジングと、
前記弁室内に昇降可能に収容され、前記通気孔を開閉するフロート弁と、
前記通気室内に昇降可能に配置された弁体とを有しており、
前記ハウジングには、前記仕切壁よりも上方に、前記通気室内に連通する燃料蒸気排出口が形成されていると共に、この燃料蒸気排出口に連通し且つ前記燃料タンク外に配置されたキャニスターに連結される燃料蒸気排出管が設けられており、
前記弁体は、前記通気孔を通過し前記通気室内に流入する流体の単位時間当たりの流量が所定値を超えるときに押し上げられて、前記燃料蒸気排出口を部分的に塞ぐように構成されており、
前記ハウジングには、前記通気室の内方に向けて管状に突出し、前記燃料蒸気排出管に連通する突出部が設けられており、該突出部の外周に、前記燃料蒸気排出口が形成されていることを特徴とする弁装置。
【請求項3】
仕切壁を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室、上方に燃料タンク外に連通する通気室が設けられ、前記仕切壁に前記弁室及び前記通気室を連通する通気孔が形成された、ハウジングと、
前記弁室内に昇降可能に収容され、前記通気孔を開閉するフロート弁と、
前記通気室内に昇降可能に配置された弁体とを有しており、
前記ハウジングには、前記仕切壁よりも上方に、前記通気室内に連通する燃料蒸気排出口が形成されていると共に、この燃料蒸気排出口に連通し且つ前記燃料タンク外に配置されたキャニスターに連結される燃料蒸気排出管が設けられており、
前記弁体は、前記通気孔を通過し前記通気室内に流入する流体の単位時間当たりの流量が所定値を超えるときに押し上げられて、前記燃料蒸気排出口を部分的に塞ぐように構成されており、
前記燃料蒸気排出口は、前記仕切壁に向けて開口した部分を有していることを特徴とする弁装置。
【請求項4】
前記突出部は、前記仕切壁に対向する端面を有しており、
前記弁体は板状をなしており、上昇時に前記突出部の端面に当接するように構成されている請求項2記載の弁装置。
【請求項5】
前記ハウジングは、前記仕切壁に対向する天井壁を有しており、この天井壁から前記仕切壁に向けて突起が突出しており、
前記弁体は、上昇して前記突出部の端面に当接したときに、前記突起の下端面にも当接するように構成されている請求項4記載の弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の燃料タンクに取付けられ、燃料流出防止弁や満タン規制弁等として用いられる、弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の車両の燃料タンクには、車両が傾いたり横転したりしたときに、燃料タンク内の燃料が、燃料タンク外へ漏れるのを防止する弁装置が取付けられている。このような弁装置は、一般的に、通気孔を有する仕切壁を介して、上方に通気室、下方に弁室を設けたハウジングと、弁室内に昇降可能に配置されたフロート弁とを有する。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、弁ケース内が、隔壁によりガス収集室と通気室とに区画され、隔壁にガス収集室と通気室とを連通させる連通口が形成され、隔壁上に、連通口の周縁部を囲むように筒状のガイド壁が立設され、ガイド壁に、弁ケース外に連通するための排出口が形成され、ガイド壁内に、連通口周縁部を弁座として、弁体が離着座可能に設けられた、弁装置が記載されている。また、弁体の着座面は、弁体が連通口周縁部から離間して弁ケースに当接したときに、連通口周縁部に対して傾斜すると共に、弁体の着座面のうち、連通口周縁部から最も離間している側が、排出口側に位置されるように設定されている。なお、ガス収集室内には、フロート弁が昇降可能に配置されている。
【0004】
上記弁装置の場合、燃料タンクの内圧が大幅に上昇すると、燃料蒸気が連通口を通過して通気室内に流入し、ガイド壁内の弁体が押し上げられて、弁体が弁ケースの当接面に傾斜した状態で着座する。そのため、弁体と隔壁との間に、流路面積が比較的大きい末広がり状のガス排出路が形成されるため、燃料蒸気が流通しやすくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-147215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ガソリンエンジンと電気モーターとからなるハイブリッドカーでは、モーター作動時に燃料蒸気がエンジン側へ吸引されないため、タンク内が高圧になりやすい。この状態で、燃料タンク内に給油しようとすると、給油管の開口から燃料が噴出するという不都合があった。そのため、燃料タンク内の圧力を迅速に下降させたいという要望がある。
【0007】
上記特許文献1の弁装置では、タンク内圧上昇時に、流路面積の大きな末広がり状のガス排出路が形成され、燃料蒸気が流通しやすくなっているので、ガス収集室内に配置されたフロート弁が、燃料蒸気によって浮き上がりやすくなる。そのため、連通口が閉塞されやすくなるので、上記のようなハイブリットカーに適用した場合は、燃料タンク内の圧力を下降させにくい。
【0008】
したがって、本発明の目的は、フロート弁を浮き上がりにくくして、燃料タンク内の圧力を下降させやすい、弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る弁装置は、仕切壁を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室、上方に燃料タンク外に連通する通気室が設けられ、前記仕切壁に前記弁室及び前記通気室を連通する通気孔が形成された、ハウジングと、前記弁室内に昇降可能に収容され、前記通気孔を開閉するフロート弁と、前記通気室内に昇降可能に配置された弁体とを有しており、前記ハウジングには、前記仕切壁よりも上方に、前記通気室内に連通する燃料蒸気排出口が形成されていると共に、この燃料蒸気排出口に連通し且つ前記燃料タンク外に配置されたキャニスターに連結される燃料蒸気排出管が設けられており、前記弁体は、前記通気孔を通過し前記通気室内に流入する流体の単位時間当たりの流量が所定値を超えるときに押し上げられて、前記燃料蒸気排出口を部分的に塞ぐように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、燃料タンク内の圧力が上昇して、燃料蒸気等の流体が通気孔を通過して通気室内に流入して、その単位時間当たりの流量が所定値を超えると、弁体が押し上げられて、燃料蒸気排出口を部分的に塞ぐので、燃料蒸気排出口の流路面積が絞られる。その結果、燃料蒸気排出口を流通する流体の流通抵抗が増大して、ハウジング内において流体を流通しにくくすることができるので、フロート弁を浮き上がりにくくすることが可能となり、燃料タンク内の圧力を下降させやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る弁装置の、一実施形態を示す分解斜視図である。
図2】同弁装置の斜視図である。
図3図2のA-A矢視線における断面図である。
図4】同弁装置を構成する上部カバーの、図1とは異なる方向から見た斜視図である。
図5】同上部カバーの平面図である。
図6】本発明に係る弁装置において、弁体が下降した状態の要部拡大断面斜視図である。
図7図6の状態の拡大説明図である。
図8】本発明に係る弁装置において、弁体が上昇した状態の要部拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(弁装置の一実施形態)
以下、図面を参照して、本発明に係る弁装置の、一実施形態について説明する。
【0013】
図1及び図3に示すように、この実施形態における弁装置10は、仕切壁23を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室V、上方に燃料タンク外に連通する通気室Rが設けられ、仕切壁23に弁室V及び通気室Rを連通する通気孔25が形成された、ハウジング15と、弁室V内に昇降可能に収容され、通気孔25を開閉するフロート弁45と、通気室R内に昇降可能に配置された弁体80とを有している。
【0014】
また、この実施形態のハウジング15は、ハウジング本体20と、ハウジング本体20の下方に装着される下部キャップ40と、ハウジング本体20の上方に装着される上部カバー50とを有している。
【0015】
なお、以下の説明において、「燃料」とは、液体の燃料(燃料の飛沫も含む)を意味し、「燃料蒸気」とは、蒸発した燃料(気体の燃料)を意味するものとする。
【0016】
まず、ハウジング本体20について、図1図4~6を参照して説明する。
【0017】
前記ハウジング本体20は、略円筒状をなした周壁21を有しており、その上方に前記仕切壁23が配置されている。この仕切壁23の中央に、弁室V及び通気室Rを連通させる、円形状をなした通気孔25が形成されている。なお、通気孔25の内側には、略十字状をなしたリブ25aが設けられている。
【0018】
上記周壁21の下方には、複数の第1係止爪21aが、周方向に均等な間隔を空けて突設されている。また、周壁21の上方には、複数の第2係止爪21bが、周方向に均等な間隔を空けて突設されている。更に周壁21の上方外周からは、フランジ部27が張り出している。このフランジ部27の内側には、リング装着溝27aが形成されており、このリング装着溝27aに、環状のシールリング27bが装着されるようになっている(図3参照)。
【0019】
また、図1に示すように、仕切壁23の上面側であって、前記通気孔25の外側には、周方向に均等な間隔を空けて、複数の突部29が突設されている。これらの突部29は、弁体80を、仕切壁23の上面から浮かせた状態に支持して(図3参照)、弁体80の下降時においても、通気孔25が完全に閉塞されないようにする。
【0020】
更に図1に示すように、仕切壁23の上面側であって、複数の突部29の外側には、周方向一部に切離部31aを設けた、略円筒状をなしたガイド壁31が立設している。このガイド壁31は、その内側に弁体80が配置されて、同弁体80の昇降動作をガイドすると共に径方向の位置規制を図る。
【0021】
下部キャップ40は、底壁41と、該底壁41の周縁から立設した周壁43とを有している。底壁41には、複数の通孔41aが形成されている。また、周壁43には、周方向に均等な間隔を空けて複数の係止孔43aが形成されている。そして、下部キャップ40の周壁43を、ハウジング本体20の周壁21の下端部外周に被せて、各係止孔43aに対応する第1係止爪21aをそれぞれ係止させることで、ハウジング本体20の下方に下部キャップ40が装着される(図2参照)。その結果、仕切壁23を介して、ハウジング下方に図示しない燃料タンクの内部に連通する弁室Vが形成される(図3参照)。
【0022】
上記弁室V内には、前記通気孔25を開閉するフロート弁45が、前記下部キャップ40との間で、コイルスプリングからなるフロート弁用付勢バネS1(以下、単に「付勢バネS1」ともいう)を介在させた状態で、昇降可能に収容配置されるようになっている。このフロート弁45は、燃料浸漬時に自身の浮力及び付勢バネS1の付勢力で上昇し、燃料の非浸漬時に自重で下降する。
【0023】
上記フロート弁45は、燃料浸漬時に浮力を発生させる、外周が円形状なしたフロート本体46と、該フロート本体46の上方に装着され、フロート本体46に対して相対的に昇降動作するシール部材47とを有している。また、シール部材47の上方には、ゴムや弾性エラストマー等の弾性材料からなるシール弁体47aが装着されている。このシール弁体47aが通気孔25の下方開口の周縁部に接離して、同通気孔25を開閉する。更に、フロート本体46とシール部材47との間には、中間弁体48が傾動可能に支持されている(図3参照)。このフロート弁45は、その昇降動作によって通気孔25の下方開口の周縁部に接離し、同通気孔25を開閉することで、燃料流出防止弁や満タン規制弁として機能する。
【0024】
再び、ハウジング15の説明に戻ると、ハウジング15を構成する上部カバー50は、外周が略円形状をなした周壁51と、その上方であって仕切壁23に対向して配置された天井壁53と、周壁51の下方側から外方に広がるフランジ部55とからなる、略ハット状をなしている。図4に示すように、周壁51の下端部からは、周方向に均等な間隔を空けて、複数の係止片57が延設されている。各係止片57には、ハウジング本体20に設けた第2係止爪21bが係止する、係止孔57aが形成されている。
【0025】
そして、図2に示すように、上部カバー50の各係止片57の係止孔57aに、ハウジング本体20の対応する第2係止爪21bをそれぞれ係止させることで、図3に示すように、リング装着溝27aに装着されたシールリング27bが、上部カバー50の周壁51の内周に当接した状態で、ハウジング本体20の上方に上部カバー50が装着される。その結果、仕切壁23を介して、その上方に燃料タンクの外部に連通する通気室Rが形成されるようになっている(図3参照)。なお、上部カバー50のフランジ部55を、図示しない燃料タンクの取付孔の表側周縁に溶着することで、燃料タンクに弁装置10全体が取付けられるようになっている。
【0026】
図3~5に示すように、ハウジング15には、仕切壁23よりも上方に、通気室R内に連通する燃料蒸気排出口70(以下、単に「排出口70」ともいう)が形成されていると共に、この排出口70に連通し且つ燃料タンク外に配置された図示しないキャニスターに連結される燃料蒸気排出管75(以下、単に「排出管75」ともいう)が設けられている。また、ハウジング15には、通気室Rの内方に向けて管状に突出し、排出管75に連通する突出部60が設けられており、この突出部60の外周に排出口70が形成されている。
【0027】
この実施形態では、ハウジング15を構成する上部カバー50に、排出口70及び排出管75が設けられている。また、突出部60は、上部カバー50の周壁51の周方向所定箇所であって、その内周面から上部カバー50の径方向中心(天井壁53の径方向中心)に向けて管状に突出する第1突出部61と、該第1突出部61の突出方向先端に連設され、主として下方(仕切壁23に対向する方向)が開口した枠状をなした第2突出部63とから構成されている。
【0028】
図4に示すように、第1突出部61は、上部カバー50の天井壁53に連結された天井部61aと、それとは反対側の底部61bとが互いに平行で、且つ、それらの間の両側部61c,61cが円弧状をなした、異形管状をなしている。この第1突出部61の突出方向先端に、排出管75に連通する第1排出口71が形成されている。
【0029】
また、図4及び図5に示すように、第2突出部63は、第1突出部61の突出方向先端両側から張り出した一対の張り出し壁64,64と、該張り出し壁64,64の先端から直交し且つ互いに平行となるように延出した一対の側壁65,65と、該一対の側壁65,65に直交配置され且つ両側壁65,65の端部どうしを連結すると共に、第1突出部61の第1排出口71から所定距離を空けて配置された連結壁66とからなる、下方が開口した略四角枠状をなしている。上記の各壁64,65,66の上端部は、上部カバー50の天井壁53に連結されている。また、図7に示すように、天井壁53の内面からの、側壁65及び連結壁66の突出量は、同一となっている。更に図4に示すように、側壁65及び連結壁66は、張り出し壁64よりも一段低くなるように突出している。
【0030】
また、各壁64,65,66で囲まれた空間は、第1突出部61の第1排出口71と連通している。そして、第2突出部63の下方開口部が第2排出口72をなしており、上記の複数の壁64,65,66で囲まれた空間に連通している。また、各側壁65には、各壁64,65,66で囲まれた空間に連通する第3排出口73が、切欠かれて形成されている。この第3排出口73は、連結壁66側の内面73aが鉛直面をなしている一方、張り出し壁64側の内面73bが、天井壁53側から下端に向けて、内面73aに対して次第に幅広となるように傾斜したテーパ面状をなしている。
【0031】
各側壁65の下端部(仕切壁23に対向する端部)であって内面73a側の端面、及び、連結壁66の下端部(仕切壁23に対向する端部)の端面は、段差のない連続した平坦面状をなした弁体当接面67をなしており(図4参照)、この弁体当接面67に、弁体上昇時に弁体80が当接するようになっている(図8参照)。この弁体当接面67が、本発明における突出部の「仕切壁に対向する端面」をなしている。なお、各側壁65の下端部であって内面73b側の端面67a(図4参照)は、弁体80が上昇しても当接する面とはなっていない。
【0032】
そして、この実施形態においては、第1突出部61に形成した第1排出口71と、第2突出部63に設けた第2排出口72と、第2突出部63の側壁65に形成した第3排出口73とが、本発明における「燃料蒸気排出口」をなしている。なお、本発明における「燃料蒸気排出口」とは、燃料蒸気排出管の内部空間に連通し、且つ、通気室の内部に連通する開口を意味する。また、排出口70を構成する第2排出口72が、本発明における「仕切壁に向けて開口した部分」をなしている。
【0033】
なお、上記構造をなした突出部60は、上述したようにハウジング本体20の上方に上部カバー50を装着したときに、図7に示すように、第2突出部63の連結壁66の下端部が、ガイド壁31の内部に入り込むと共に、第1突出部61が、切離部31aに整合する位置であってガイド壁31の外側に配置されて、第1突出部61に形成した第1排出口71が切離部31aに対向配置されるようになっている。
【0034】
また、この実施形態では、上記のように、第1突出部61及び第2突出部63からなる突出部60を設けて、該突出部60の外周に、第1排出口71と第2排出口72と第3排出口73とからなる燃料蒸気排出口70を設けたが、燃料蒸気排出口としては、この態様に限定されるものではない。例えば、(1)上部カバー50の周壁51の所定箇所に、燃料蒸気排出口を設けたり、(2)周壁51から突出した管状突出部の突出方向先端に、燃料蒸気排出口を設けたり(本実施形態における第1突出部61のみを設けたような構造)、(3)天井壁53の所定箇所や、天井壁53から延出した管状突出部の突出方向先端に、燃料蒸気排出口を設けたりしてもよい。更に、突出部としては、その全体形状を、例えば、単なる直管状に延びる形状としたり、或いは、突出部を構成する第2突出部を、円形や、楕円形、小判形の枠状としたり、第2突出部に下方開口を設けずに、側壁のみに開口を設けたりしてもよく、突出部の形状や構造は特に限定されない。また、この実施形態における燃料蒸気排出口70を構成する第1排出口71の開口角度(開口で囲まれた面の角度を意味する。以下の説明でも同様)は、鉛直(弁体の昇降方向に対して平行)となっており、また、第2排出口72の開口角度は、水平(弁体の昇降方向に対して直交)となっているが、燃料蒸気排出口の開口角度としては、弁体の昇降方向に対して所定角度で傾斜していてもよい。
【0035】
図3及び図4に示すように、上部カバー50の周壁51の外面側であって、第1突出部61に整合する位置から、排出管75が外径方向に延出している。図5に示すように、ハウジング15を軸方向から見たときに、排出管75は、第1突出部61に対して同一直線上となるように延びている。この排出管75には、燃料タンクの外部に配置されるキャニスターに連結される図示しないチューブが接続されるようになっている。
【0036】
更に図4及び図5に示すように、上部カバー50の天井壁53の径方向中央であって、その内面側からは、仕切壁23に向けて、略円柱状をなした突起77が突出している。この突起77は、天井壁53の面方向に対して直交して突出している。また、突起77の突出方向先端部である下端面77aは、平坦面状をなしている。なお、図7に示すように、天井壁53の内面からの、突起77の突出量は、側壁65及び連結壁66の突出量と同一となっている。
【0037】
図1に示すように、通気室R内に昇降可能に配置された弁体80は、この実施形態の場合、例えば、ステンレス等の金属で形成された一定厚さの円板状をなしている。また、図5に示すように、ハウジング15を軸方向から見たときに、弁体80の外径は、突出部60を構成する第2突出部63の外寸よりも大きくなるように設定されている。この弁体80は、通気室R内のガイド壁31の内側であって、仕切壁23に形成した通気孔25の上方に昇降可能に配置されており、常時はその自重によって下降して、仕切壁23の上面に設けた複数の突部29によって、仕切壁23の上面から浮いた状態に支持されるようになっている。なお、弁体80は、ガイド壁31内に配置されることで、その径方向移動が規制されて、仕切壁23に形成した通気孔25の上方開口を常にカバーするようになっている。
【0038】
また、前記突起77の外周には、コイルスプリングからなる弁体用付勢バネS2(以下、単に「付勢バネS2」ともいう)が介装されており、この付勢バネS2によって、弁体80が仕切壁23側に向けて付勢されるようになっている。すなわち、弁体80は、常時は付勢手段(ここでは弁体付勢用バネS2)によって仕切壁23側に向けて付勢されるようになっている。ただし、弁体付勢用バネS2を設けずとも、弁体80の自重のみで下降するようにしてもよい。この場合、弁体80の自重が、上記付勢手段となる。
【0039】
そして、弁体80は、通気孔25を通過し通気室R内に流入する流体の、単位時間当たりの流量が、所定値を超えるときに押し上げられて、燃料蒸気排出口70を部分的に塞ぐように構成されている。
【0040】
すなわち、図示しない燃料タンク内に燃料が給油されて、燃料タンク内の圧力が上昇すると、図3図7に示すように、燃料タンク内の空気や燃料蒸気等の流体Fが吹き上がって弁室V内に流入した後、通気孔25を通過して弁体80の下面に当接する。そして、流体の単位時間当たりの流量が、付勢バネS2の付勢力及び弁体80の自重等により設定される所定値を超えると、弁体80が押し上げられていき、排出口70が部分的に塞がれる(図8参照)。なお、弁体80は、例えば、流体の単位時間当たりの流量が、200L/minを越えたときに、押し上げられることが好ましい。
【0041】
この実施形態では、図8に示すように、弁体80が、突出部60に設けた弁体当接面67、及び、突起77の下端面77aにそれぞれ当接して、弁体80のそれ以上の上昇が規制されると共に、(1)図8に示すように、第1排出口71が弁体80の厚さ分だけ部分的に塞がれ(第1排出口71の下方寄りの開口部分が、弁体80の板厚分だけ塞がれる)、(2)図5に示すように、第2排出口72が、第2突出部63よりも大きい弁体80によって部分的に塞がれ(第2排出口72の、第1突出部61寄りの部分を残して塞がれる)、(3)図5に示すように、第3排出口73が、テーパ面状の内面73bを残して、弁体80によって部分的に塞がれる。こうして排出口70が弁体80によって部分的に塞がれるようになっている。
【0042】
以上説明したハウジングを構成するハウジング本体や、下部キャップ、上部カバーの形状や構造は、特に限定されるものではない。また、ハウジングとしては、ハウジング本体、下部キャップ、上部カバーの、3部品構成としなくてもよい。更に、この実施形態におけるフロート弁45は、フロート本体46やシール部材47等からなる多部品構成となっているが、フロート弁としては、例えば、上方に弾性材料からなるシール部材を装着したフロート弁等であってもよく、通気孔25を開閉可能であれば、その形状や構造は特に限定されない。
【0043】
また、この実施形態では、弁体80が、排出口70を構成する各排出口71,72,73の全てを部分的に塞ぐようになっているが、弁体が燃料蒸気排出口を部分的に覆う構成としては、この態様に限定されるものではない。例えば、弁体を第2突出部よりも大きな四角板状に形成して、弁体の上昇によって、第2排出口72の全範囲を塞ぐ一方、第1排出口71を部分的に塞く構成としてもよい。また、弁体の板厚を厚くしたり薄くしたりして、第1排出口を部分的に塞ぐ量を調整したり、弁体を、第2排出口に対して径方向に位置ずれさせて、第2排出口や第3排出口を部分的に塞ぐ量を調整したりしてもよい。なお、この実施形態の弁体80は、円板状をなしているが、外周が多角形状をなす形状や、楕円形、小判形状等としたり、貫通孔を設けたりしてもよく、燃料蒸気排出口70を部分的に塞ぐことが可能な形状であればよい。
【0044】
(作用効果)
次に、上記構造からなる弁装置10の作用効果について説明する。
【0045】
この弁装置10は、主として、ガソリンエンジンと電気モーターとを有する、いわゆるハイブリッドカー(シリーズ方式、パラレル方式、スプリット方式等の、どの種類のハイブリッドカーでもでもよい)の燃料タンクに取付けられる。ただし、ハイブリッドカーではなく、通常のガソリンエンジンのみを採用した車両の燃料タンクに、本発明の弁装置10を取付けても勿論よい。
【0046】
そして、図3に示すように、燃料タンク内へ燃料が十分に給油されておらず、フロート弁45が燃料に浸漬していない状態では、フロート弁45は自重で下降して、シール弁体47aが通気孔25の下方開口周縁部から離反し、通気孔25の下方開口が開いている。また、上記状態では、仕切壁23の上方において、弁体80が自重及び付勢バネS2によって付勢されて下降し、複数の突部29で仕切壁23の上面から浮いた状態で支持されており、通気孔25の上方開口も開いている。そのため、通気孔25を通じて弁室Vと通気室Rとが連通した状態となっている。
【0047】
この状態で燃料タンク内に燃料が給油されると、図3図7に示すように、燃料タンク内の空気や燃料蒸気等の流体Fが、ハウジング15の下部キャップ40の通孔41a等を通過して弁室V内に流入した後、通気孔25を通過して弁体80の下面に当接する。そして、流体の単位時間当たりの流量が、付勢バネS2の付勢力及び弁体80の自重等により設定される所定値を超えると、弁体80が押し上げられて、図8に示すように、弁体80が、突出部60の弁体当接面67及び突起77の下端面77aにそれぞれ当接して、弁体80の上昇が規制されると共に、上記段落番号0041の(1)~(3)で説明したように、第1排出口71が弁体80の厚さ分だけ部分的に塞がれ(図8参照)、第2排出口72及び第3排出口73が弁体80によって部分的に塞がれて(図5参照)、排出口70が弁体80によって部分的に塞がれる。
【0048】
その結果、排出口70の流路面積が絞られるので、排出口70を流通する流体Fの流通抵抗が増大して、ハウジング15内において流体Fを流通しにくくすることができる。それによって、フロート弁45を浮き上がりにくくすることができるので、燃料タンク内の圧力を下降させやすくすることができる。
【0049】
また、図3~5に示すように、この実施形態では、ハウジング15には、通気室Rの内方に向けて管状に突出し、排出管75に連通する突出部60が設けられており、この突出部60の外周に排出口70が形成されている。
【0050】
この態様によれば、排出口70を形成する際の、自由度を高めることができるので、排出口70を弁体80で部分的に塞ぎやすい形状等にすることができる。なお、突出部60を設けない場合には、例えば、上部カバー50の周壁51等に排出口70を設ける必要があり、排出口70を弁体80で部分的に塞ぎにくい構成となりやすい。
【0051】
更に、この実施形態においては、排出口70は、仕切壁23に向けて開口した部分を有している(ここでは図7に示すように、第2排出口72が仕切壁23に向けて開口している)。
【0052】
この態様によれば、排出口70の流路面積を確保しながら弁体80で塞ぎやすい構造にすることができると共に、車両の横転時や反転時に、燃料蒸気排出口に燃料を流入しにくくすることができる。
【0053】
また、この実施形態においては、突出部60は、仕切壁23に対向する端面(ここでは弁体当接面67)を有しており、弁体80は板状をなしており、上昇時に突出部60の端面に当接するように構成されている(図8参照)。
【0054】
この態様によれば、弁体80の上昇時に、突出部60に対して弁体80を安定した姿勢で当接させることができるので、排出口70の流路面積をより安定して絞ることができる。
【0055】
更に、この実施形態においては、ハウジング15は、仕切壁23に対向する天井壁53を有しており、この天井壁53から仕切壁23に向けて突起77が突出しており、弁体80は、上昇して突出部60の端面(弁体当接面67)に当接したときに、突起77の下端面77aにも当接するように構成されている(図8参照)。
【0056】
この態様によれば、弁体80の上昇時に、突出部60の端面及び突起77の下端面77aの2箇所によって、突出部60に対して弁体80をより安定した姿勢で当接させることができる。
【0057】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
10 燃料タンク弁装置(弁装置)
15 ハウジング
20 ハウジング本体
23 仕切壁
25 通気孔
40 下部キャップ
45 フロート弁
50 上部カバー
51 周壁
53 天井壁
60 突出部
67 弁体当接面(端面)
70 燃料蒸気排出口(排出口)
75 燃料蒸気排出管(排出管)
77 突起
80 弁体
V 弁室
R 通気室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8