(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】冷凍機油
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20240515BHJP
C10M 105/32 20060101ALN20240515BHJP
C10M 107/32 20060101ALN20240515BHJP
C10M 107/24 20060101ALN20240515BHJP
C10M 145/14 20060101ALN20240515BHJP
C10M 105/38 20060101ALN20240515BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20240515BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20240515BHJP
C10N 40/30 20060101ALN20240515BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M105/32
C10M107/32
C10M107/24
C10M145/14
C10M105/38
C10N30:06
C10N30:00 Z
C10N40:30
(21)【出願番号】P 2023043072
(22)【出願日】2023-03-17
(62)【分割の表示】P 2021127456の分割
【原出願日】2017-04-14
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2016081259
(32)【優先日】2016-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】新保 紘子
(72)【発明者】
【氏名】山口 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】尾形 英俊
(72)【発明者】
【氏名】大城戸 武
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-509179(JP,A)
【文献】国際公開第2015/050120(WO,A1)
【文献】特開平06-122888(JP,A)
【文献】特表2011-513538(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057614(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/057613(WO,A1)
【文献】特開2007-204568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M
C10N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍機油全量基準で60質量%以上の、エステル及びエーテルから選ばれる少なくとも1種の潤滑油基油と、
冷凍機油全量基準で40質量%以下の、下記式(I)で表される構造単位を有し、重量平均分子量(Mw)が5000~100000かつ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.9以下であるポリマーと、を含有し、
前記式(I)で表される構造単位の含有量が、前記ポリマーを構成する構造単位全量を基準として、50モル%以上である、冷凍機油。
【化1】
[式(I)中、R
a、R
b及びR
cは、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表し、R
dは酸素含有有機基又は炭素数1~18の炭化水素基を表す。]
【請求項2】
前記潤滑油基油が、多価アルコールとカルボン酸とのエステルである、請求項1に記載の冷凍機油。
【請求項3】
飽和フッ化炭化水素冷媒、不飽和フッ化炭化水素冷媒、炭化水素冷媒及び自然系冷媒から選ばれる少なくとも1種の冷媒と共に用いられる、請求項1又は2に記載の冷凍機油。
【請求項4】
冷媒と、請求項1~3のいずれか一項に記載の冷凍機油とを含有する冷凍機用作動流体組成物。
【請求項5】
前記冷媒が、飽和フッ化炭化水素冷媒、不飽和フッ化炭化水素冷媒、炭化水素冷媒及び自然系冷媒から選ばれる少なくとも1種である、請求項4に記載の冷凍機用作動流体組成物。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載の冷凍機油を含有する冷凍機。
【請求項7】
請求項4又は5に記載の冷凍機用作動流体組成物を含有する冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍機油に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫、カーエアコン、ルームエアコン、自動販売機などの冷凍機は、冷媒を冷凍サイクル内に循環させるための圧縮機を備える。そして、圧縮機には、摺動部材を潤滑させるための冷凍機油が充填される。冷凍機油には、耐摩耗性等の潤滑性に加えて種々の特性が要求される。
【0003】
冷凍機油に求められる特性の一つとして、例えば油戻り性が挙げられる。特許文献1に記載されているように、油戻り量が低下すると、例えば圧縮機の摺動部材が摩耗してしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、潤滑性(特に耐摩耗性)及び油戻り性に優れる冷凍機油を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一態様において、潤滑油基油と、冷凍機油全量基準で40質量%以下の、下記式(I)で表される構造単位を有し、重量平均分子量が500~100000であるポリマーと、を含有する冷凍機油を提供する。
【化1】
[式(I)中、R
a、R
b及びR
cは、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表し、R
dは酸素含有有機基又は炭素数1~18の炭化水素基を表す。]
【0007】
潤滑油基油は、好ましくは、エステル及びエーテルから選ばれる少なくとも1種の含酸素油を含有する。当該エステルは、好ましくは、多価アルコールとカルボン酸とのエステルを含む。上記冷凍機油は、好ましくは、飽和フッ化炭化水素冷媒、不飽和フッ化炭化水素冷媒、炭化水素冷媒及び自然系冷媒から選ばれる少なくとも1種の冷媒と共に用いられる。
【0008】
本発明は、他の一態様において、冷媒と、上記冷凍機油とを含有する冷凍機用作動流体組成物を提供する。当該冷媒は、好ましくは、飽和フッ化炭化水素冷媒、不飽和フッ化炭化水素冷媒、炭化水素冷媒及び自然系冷媒から選ばれる少なくとも1種である。
【0009】
本発明は、他の一態様において、上記冷凍機油を含有する冷凍機、又は上記冷凍機用作動流体組成物を含有する冷凍機を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、潤滑性(特に耐摩耗性)及び油戻り性に優れる冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】実施例における油戻り性試験に用いた装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態に係る冷凍機油は、潤滑油基油と、下記式(I)で表される構造単位を有し、重量平均分子量が500~100000であるポリマー(以下「アクリレート系ポリマー」ともいう。)と、を含有する。
【化2】
[式(I)中、R
a、R
b及びR
cは、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表し、R
dは酸素含有有機基又は炭素数1~18の炭化水素基を表す。]
【0013】
潤滑油基油としては、炭化水素油、含酸素油などを用いることができる。炭化水素油としては、鉱油系炭化水素油、合成系炭化水素油が例示される。含酸素油としては、エステル、エーテル、カーボネート、ケトン、シリコーン、ポリシロキサンが例示される。
【0014】
鉱油系炭化水素油は、パラフィン系、ナフテン系などの原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤精製、水素化精製、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化脱ろう、白土処理、硫酸洗浄などの方法で精製することによって得ることができる。これらの精製方法は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
合成系炭化水素油としては、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリα-オレフィン(PAO)、ポリブテン、エチレン-α-オレフィン共重合体などが挙げられる。
【0016】
アルキルベンゼンとしては、例えば炭素数1~40、好ましくは1~19の直鎖又は分岐アルキル基を1~4個、好ましくは1個若しくは2個有する直鎖又は分岐アルキルベンゼンを用いることができる。
【0017】
ポリα-オレフィン(PAO)は、例えば末端の一方にのみ二重結合を有する炭素数6~18の直鎖オレフィンの数分子を重合させ、次に水素添加して得られる化合物である。ポリα-オレフィンは、例えば炭素数10のα-デセン又は炭素数12のα-ドデセンの3量体あるいは4量体を中心とする分子量分布を有するイソパラフィンであってよい。
【0018】
エステルとしては、芳香族エステル、二塩基酸エステル、ポリオールエステル、コンプレックスエステル、炭酸エステル及びこれらの混合物などが例示される。エステルは、好ましくはポリオールエステル又はコンプレックスエステルである。エステルは、好ましくは、ポリオールエステルを主成分として含む。エステルに占めるポリオールエステルの割合は、例えば、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってよい。なお、潤滑油基油としてのエステルには、上記のアクリレート系ポリマーは含まれない。
【0019】
ポリオールエステルは、多価アルコールとカルボン酸とのエステルである。カルボン酸としては、一価又は多価のカルボン酸を用いることができ、脂肪族カルボン酸が好ましい。一価脂肪族カルボン酸である脂肪酸としては、飽和脂肪酸が好ましく用いられる。脂肪酸の炭素数は、好ましくは4~20、より好ましくは4~18、更に好ましくは4~9、特に好ましくは5~9である。ポリオールエステルは、多価アルコールの水酸基の一部がエステル化されずに水酸基のまま残っている部分エステルであってもよく、全ての水酸基がエステル化された完全エステルであってもよく、また部分エステルと完全エステルとの混合物であってもよい。ポリオールエステルの水酸基価は、好ましくは10mgKOH/g以下、より好ましくは5mgKOH/g以下、更に好ましくは3mgKOH/g以下である。本発明における水酸基価は、JIS K0070:1992に準拠して測定された水酸基価を意味する。
【0020】
ポリオールエステルを構成するカルボン酸のうち、炭素数4~20の脂肪酸の割合は、好ましくは20~100モル%、より好ましくは50~100モル%、更に好ましくは70~100モル%、特に好ましくは90~100モル%である。
【0021】
炭素数4~20の脂肪酸としては、具体的には、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸が挙げられる。これらの脂肪酸は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。脂肪酸は、好ましくはα位及び/又はβ位に分岐を有する脂肪酸であり、より好ましくは、2-メチルプロパン酸、2-メチルブタン酸、2-メチルペンタン酸、2-メチルヘキサン酸、2-エチルペンタン酸、2-メチルヘプタン酸、2-エチルヘキサン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸及び2-エチルヘキサデカン酸から選ばれ、更に好ましくは、2-エチルヘキサン酸及び3,5,5-トリメチルヘキサン酸から選ばれる。
【0022】
脂肪酸は、炭素数4~20の脂肪酸以外の脂肪酸を含んでいてもよい。炭素数4~20の脂肪酸以外の脂肪酸は、例えば炭素数21~24の脂肪酸であってよい。炭素数21~24の脂肪酸は、ヘンイコ酸、ドコサン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸等であってよく、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0023】
ポリオールエステルを構成する多価アルコールとしては、2~6個の水酸基を有する多価アルコールが好ましく用いられる。多価アルコールの炭素数は、好ましくは4~12、より好ましくは5~10である。多価アルコールは、好ましくは、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ-(トリメチロールプロパン)、トリ-(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどのヒンダードアルコールであり、冷媒との相溶性及び加水分解安定性に特に優れることから、より好ましくは、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、又はペンタエリスリトールとジペンタエリスリトールとの混合アルコールである。
【0024】
コンプレックスエステルは、好ましくは、2~4個のヒドロキシル基を有する多価アルコールから選ばれる少なくとも1種と、炭素数6~12の多塩基酸から選ばれる少なくとも1種と、炭素数4~18の一価アルコール及び炭素数2~12の一価脂肪酸から選ばれる少なくとも1種とから合成されるエステルである。
【0025】
2~4個のヒドロキシル基を有する多価アルコールとしては、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0026】
潤滑性に優れる観点から、コンプレックスエステルを構成する多価アルコールは、好ましくは、2~4個のヒドロキシル基を有する多価アルコールに加えて、ネオペンチルグリコール以外の炭素数2~10の二価アルコールを更に含有する。ネオペンチルグリコール以外の炭素数2~10の二価アルコールとしては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
【0027】
炭素数6~12の多塩基酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、トリメリット酸などが挙げられる。
【0028】
炭素数4~18の一価アルコールとしては、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、オレイルアルコールなどの脂肪族アルコールが挙げられる。これらの一価アルコールは、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0029】
炭素数2~12の一価脂肪酸としては、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸などが挙げられる。これらの一価脂肪酸は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0030】
エーテルとしては、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、パーフルオロエーテル及びこれらの混合物などが例示される。エーテルは、好ましくはポリビニルエーテル及びポリアルキレングリコールから選ばれ、より好ましくはポリビニルエーテルである。
【0031】
ポリビニルエーテルは、下記式(1)で表される構造単位を有する。
【化3】
[式(1)中、R
1、R
2及びR
3は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭化水素基を表し、R
4は二価の炭化水素基又は二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を表し、R
5は炭化水素基を表し、mは0以上の整数を表す。mが2以上である場合には、複数のR
4は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0032】
R1、R2及びR3で表される炭化水素基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上であり、また、好ましくは8以下、より好ましくは7以下、更に好ましくは6以下である。R1、R2及びR3の少なくとも1つが水素原子であることが好ましく、R1、R2及びR3の全てが水素原子であることがより好ましい。
【0033】
R4で表される二価の炭化水素基及びエーテル結合酸素含有炭化水素基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上であり、また、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下である。R4で示される二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基は、例えばエーテル結合を形成する酸素を側鎖に有する炭化水素基であってもよい。
【0034】
R5は、好ましくは炭素数1~20の炭化水素基である。この炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、アリール基、アリールアルキル基などが挙げられる。当該炭化水素基は、好ましくはアルキル基、より好ましくは炭素数1~5のアルキル基である。
【0035】
mは、好ましくは0以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは2以上であり、また、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下である。ポリビニルエーテルを構成する全構造単位におけるmの平均値は、好ましくは0~10である。
【0036】
ポリビニルエーテルは、式(1)で表される構造単位から選ばれる1種で構成される単独重合体であってもよく、式(1)で表される構造単位から選ばれる2種以上で構成される共重合体であってもよく、式(1)で表される構造単位と他の構造単位とで構成される共重合体であってもよい。ポリビニルエーテルが共重合体であることにより、冷凍機油の冷媒との相溶性を満足しつつ、潤滑性、絶縁性、吸湿性等を一層向上させることができる。この際、原料となるモノマーの種類、開始剤の種類、共重合体における構造単位の比率等を適宜選択することにより、上記の冷凍機油の諸特性を所望のものとすることが可能となる。共重合体は、ブロック共重合体又はランダム共重合体のいずれであってもよい。
【0037】
ポリビニルエーテルが共重合体である場合、当該共重合体は、上記式(1)で表され且つR5が炭素数1~3のアルキル基である構造単位(1-1)と、上記式(1)で表され且つR5が炭素数3~20、好ましくは3~10、更に好ましくは3~8のアルキル基である構造単位(1-2)と、を有することが好ましい。構造単位(1-1)におけるR5としてはエチル基が特に好ましく、構造単位(1-2)におけるR5としてはイソブチル基が特に好ましい。ポリビニルエーテルが上記の構造単位(1-1)及び(1-2)を有する共重合体である場合、構造単位(1-1)と構造単位(1-2)とのモル比は、好ましくは5:95~95:5、より好ましくは20:80~90:10、更に好ましくは70:30~90:10である。当該モル比が上記範囲内であると、冷媒との相溶性をより向上させることができ、吸湿性を低くすることができる傾向にある。
【0038】
ポリビニルエーテルは、上記式(1)で表される構造単位のみで構成されるものであってもよいが、下記式(2)で表される構造単位を更に有する共重合体であってもよい。この場合、共重合体は、ブロック共重合体又はランダム共重合体のいずれであってもよい。
【0039】
【化4】
[式(2)中、R
6~R
9は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を表す。]
【0040】
ポリビニルエーテルは、式(1)で表される構造単位に対応するビニルエーテル系モノマーの重合、又は、式(1)で表される構造単位に対応するビニルエーテル系モノマーと式(2)で表される構造単位に対応するオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとの共重合により製造することができる。式(1)で表される構造単位に対応するビニルエーテル系モノマーとしては、下記式(3)で表されるモノマーが好適である。
【0041】
【化5】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びmは、それぞれ式(1)中のR
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びmと同一の定義内容を示す。]
【0042】
ポリビニルエーテルは、好ましくは、以下の末端構造(A)又は(B)を有する。
【0043】
(A)一方の末端が、式(4)又は(5)で表され、かつ他方の末端が式(6)又は(7)で表される構造。
【0044】
【化6】
[式(4)中、R
11、R
21及びR
31は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1~8の炭化水素基を示し、R
41は炭素数1~10の二価の炭化水素基又は二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、R
51は炭素数1~20の炭化水素基を示し、mは式(1)中のmと同一の定義内容を示す。mが2以上の場合には、複数のR
41は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0045】
【化7】
[式(5)中、R
61、R
71、R
81及びR
91は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を示す。]
【0046】
【化8】
[式(6)中、R
12,R
22及びR
32は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1~8の炭化水素基を示し、R
42は炭素数1~10の二価の炭化水素基又は二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、R
52は炭素数1~20の炭化水素基を示し、mは式(1)中のmと同一の定義内容を示す。mが2以上の場合には、複数のR
41は同一でも異なっていてもよい。]
【0047】
【化9】
[式(7)中、R
62、R
72、R
82及びR
92は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を示す。]
【0048】
(B)一方の末端が上記式(4)又は(5)で表され、かつ他方の末端が下記式(8)で表される構造。
【0049】
【化10】
[式(8)中、R
13、R
23及びR
33は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1~8の炭化水素基を示す。]
【0050】
このようなポリビニルエーテルの中でも、以下に挙げる(a),(b),(c),(d)及び(e)のポリビニルエーテルが基油として特に好適である。
(a)一方の末端が式(4)又は(5)で表され、かつ他方の末端が式(6)又は(7)で表される構造を有し、式(1)におけるR1、R2及びR3がいずれも水素原子、mが0~4の整数、R4が炭素数2~4の二価の炭化水素基、R5が炭素数1~20の炭化水素基であるポリビニルエーテル。
(b)式(1)で表される構造単位のみを有するものであって、一方の末端が式(4)で表され、かつ他方の末端が式(6)で表される構造を有し、式(1)におけるR1、R2及びR3がいずれも水素原子、mが0~4の整数、R4が炭素数2~4の二価の炭化水素基、R5が炭素数1~20の炭化水素基であるポリビニルエーテル。
(c)一方の末端が式(4)又は(5)で表され、かつ他方の末端が式(8)で表される構造を有し、式(1)におけるR1、R2及びR3がいずれも水素原子、mが0~4の整数、R4が炭素数2~4の二価の炭化水素基、R5が炭素数1~20の炭化水素基であるポリビニルエーテル。
(d)式(1)で表される構造単位のみを有するものであって、一方の末端が式(5)で表され、かつ他方の末端が式(8)で表される構造を有し、式(1)におけるR1、R2及びR3がいずれも水素原子、mが0~4の整数、R4が炭素数2~4の二価の炭化水素基、R5が炭素数1~20の炭化水素基であるポリビニルエーテル。
(e)上記(a),(b),(c)及び(d)のいずれかであって、式(1)におけるR5が炭素数1~3の炭化水素基である構造単位と該R5が炭素数3~20の炭化水素基である構造単位とを有するポリビニルエーテル。
【0051】
ポリビニルエーテルの重量平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは600以上であり、また、好ましくは3000以下、より好ましくは2000以下、更に好ましくは1500以下である。ポリビニルエーテルの重量平均分子量が500以上であると、冷媒共存下での潤滑性に優れる。重量平均分子量が3000以下であると、低温条件下で冷媒に対して相溶性を示す組成範囲が広くなり、冷媒圧縮機の潤滑不良や蒸発器における熱交換の阻害を抑制できる。
【0052】
ポリビニルエーテルの数平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは600以上であり、また、好ましくは3000以下、より好ましくは2000以下、更に好ましくは1500以下である。ポリビニルエーテルの数平均分子量が500以上であると、冷媒共存下での潤滑性に優れる。数平均分子量が3000以下であると、低温条件下で冷媒に対して相溶性を示す組成範囲が広くなり、冷媒圧縮機の潤滑不良や蒸発器における熱交換の阻害を抑制できる。
【0053】
ポリビニルエーテルの重量平均分子量及び数平均分子量は、それぞれGPC分析により得られる重量平均分子量及び数平均分子量(ポリスチレン(標準試料)換算値)を意味する。重量平均分子量及び数平均分子量は、例えば以下のように測定することができる。
【0054】
溶剤としてクロロホルムを使用し、希釈してポリビニルエーテル濃度を1質量%とした溶液を調製する。その溶液を、GPC装置(Waters Alliance2695)を用いて分析を行う。溶剤の流速は1ml/min、分析可能分子量100から10000のカラムを使用し、屈折率検出器を用いて分析を実施する。なお、分子量が明確なポリスチレン標準を用いてカラム保持時間と分子量との関係を求め、検量線を別途作成した上で、得られた保持時間から試料の分子量を決定する。
【0055】
ポリビニルエーテルの不飽和度は、好ましくは0.04meq/g以下、より好ましくは0.03meq/g以下、更に好ましくは0.02meq/g以下である。ポリビニルエーテルの過酸化物価は、好ましくは10.0meq/kg以下、より好ましくは5.0meq/kg以下、更に好ましくは1.0meq/kg以下である。ポリビニルエーテルのカルボニル価は、好ましくは100重量ppm以下、より好ましくは50重量ppm以下、更に好ましくは20重量ppm以下である。ポリビニルエーテルの水酸基価は、好ましくは10mgKOH/g以下、より好ましくは5mgKOH/g以下、更に好ましくは3mgKOH/g以下である。
【0056】
本発明における不飽和度、過酸化物価及びカルボニル価は、それぞれ日本油化学会制定の基準油脂分析試験法により測定した値をいう。すなわち、本発明における不飽和度は、試料にウィス液(ICl-酢酸溶液)を反応させ、暗所に放置し、その後、過剰のIClをヨウ素に還元し、ヨウ素分をチオ硫酸ナトリウムで滴定してヨウ素価を算出し、このヨウ素価をビニル当量に換算した値(meq/g)をいう。本発明における過酸化物価は、試料にヨウ化カリウムを加え、生じた遊離のヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで滴定し、この遊離のヨウ素を試料1kgに対するミリ当量数に換算した値(meq/kg)をいう。本発明におけるカルボニル価は、試料に2,4-ジニトロフェニルヒドラジンを作用させ、発色性あるキノイドイオンを生ぜしめ、この試料の480nmにおける吸光度を測定し、予めシンナムアルデヒドを標準物質として求めた検量線を基に、カルボニル量に換算した値(重量ppm)をいう。
【0057】
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどが例示される。ポリアルキレングリコールは、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン等を構造単位として有する。これらの構造単位を有するポリアルキレングリコールは、それぞれモノマーであるエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドを原料として、開環重合により得ることができる。
【0058】
ポリアルキレングリコールとしては、例えば下記式(9)で表される化合物が挙げられる。
Rα-[(ORβ)f-ORγ]g (9)
[式(9)中、Rαは水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアシル基又は2~8個の水酸基を有する化合物の残基を表し、Rβは炭素数2~4のアルキレン基を表し、Rγは水素原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数2~10のアシル基を表し、fは1~80の整数を表し、gは1~8の整数を表す。]
【0059】
Rα、Rγで表されるアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。当該アルキル基の炭素数は、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~6である。アルキル基の炭素数が10を超えると、冷媒との相溶性が低下する傾向にある。
【0060】
Rα、Rγで表されるアシル基のアルキル基部分は直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。アシル基の炭素数は、好ましくは2~10であり、より好ましくは2~6である。当該アシル基の炭素数が10を超えると冷媒との相溶性が低下し、相分離を生じる場合がある。
【0061】
Rα、Rγで表される基が、ともにアルキル基である場合、あるいはともにアシル基である場合、Rα、Rγで表される基は同一でも異なっていてもよい。gが2以上の場合、同一分子中の複数のRα、Rγで表される基は同一でも異なっていてもよい。
【0062】
Rαで表される基が2~8個の水酸基を有する化合物の残基である場合、この化合物は鎖状であっても環状であってもよい。
【0063】
ポリアルキレングリコールの重量平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは600以上であり、また、好ましくは3000以下、より好ましくは2000以下、更に好ましくは1500以下である。ポリアルキレングリコールの重量平均分子量が500以上であると、冷媒共存下での潤滑性に優れる。重量平均分子量が3000以下であると、低温条件下で冷媒に対して相溶性を示す組成範囲が広くなり、冷媒圧縮機の潤滑不良や蒸発器における熱交換の阻害を抑制できる。
【0064】
ポリアルキレングリコールの数平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは600以上であり、また、好ましくは3000以下、より好ましくは2000以下、更に好ましくは1500以下である。ポリアルキレングリコールの数平均分子量が500以上であると、冷媒共存下での潤滑性に優れる。数平均分子量が3000以下であると、低温条件下で冷媒に対して相溶性を示す組成範囲が広くなり、冷媒圧縮機の潤滑不良や蒸発器における熱交換の阻害を抑制できる。
【0065】
ポリアルキレングリコールの重量平均分子量及び数平均分子量は、それぞれGPC分析により得られる重量平均分子量及び数平均分子量(ポリプロピレングリコール(標準試料)換算値)を意味する。重量平均分子量及び数平均分子量は、例えば以下のように測定することができる。
【0066】
溶剤としてクロロホルムを使用し、希釈してポリアルキレングリコール濃度を1質量%とした溶液を調製する。その溶液を、GPC装置(Waters Alliance2695)を用いて分析を行う。溶剤の流速は1ml/min、分析可能分子量100から10000のカラムを使用し、屈折率検出器を用いて分析を実施する。なお、分子量が明確なポリアルキレングリコール標準を用いてカラム保持時間と分子量との関係を求め、検量線を別途作成した上で、得られた保持時間から試料の分子量を決定する。
【0067】
潤滑油基油の40℃における動粘度は、好ましくは3mm2/s以上、より好ましくは4mm2/s以上、更に好ましくは5mm2/s以上であってよい。潤滑油基油の40℃における動粘度は、好ましくは1000mm2/s以下、より好ましくは500mm2/s以下、更に好ましくは400mm2/s以下であってよい。潤滑油基油の40℃における動粘度は、好ましくは25~125mm2/s、特に好ましくは50~75mm2/sである。潤滑油基油の100℃における動粘度は、好ましくは1mm2/s以上、より好ましくは2mm2/s以上であってよい。潤滑油基油の100℃における動粘度は、好ましくは100mm2/s以下、より好ましくは50mm2/s以下であってよい。本発明における動粘度は、JIS K2283:2000に準拠して測定された動粘度を意味する。
【0068】
潤滑油基油の含有量は、冷凍機油全量基準で、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってよい。
【0069】
アクリレート系ポリマーは、下記式(I)で表される構造単位を有する。
【化11】
[式(I)中、R
a、R
b及びR
cは、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表し、R
dは酸素含有有機基又は炭素数1~18の炭化水素基を表す。]
【0070】
Ra、Rb及びRcで表される炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~8、より好ましくは1~5、更に好ましくは1~3である。Ra、Rb及びRcで表される炭化水素基は、好ましくはアルキル基である。Ra及びRbが水素原子であり、かつRcが水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0071】
Rdで表される酸素含有有機基としては、例えばエーテル結合を形成する酸素原子を含有する直鎖又は分岐の炭化水素基、グリシジル基を有する炭化水素基などが挙げられる。Rdで表される炭化水素基の炭素数は、油戻り性に優れる観点から、好ましくは、1~18、1~15、1~12、1~10、1~8、1~6、又は1~5である。アクリレート系ポリマーを構成する全構造単位におけるRdで表される炭化水素基の炭素数の平均値は、好ましくは、1~18、1~15、1~12、1~10、又は1~5である。Rdで表される炭化水素基は、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、アリール基、アリールアルキル基等であってよく、好ましくはアルキル基である。
【0072】
式(I)における-OR
dは、好ましくは下記式(II)で表される。
【化12】
[式(II)中、R
eは二価の炭化水素基又は二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を表し、R
fは炭化水素基を表し、nは0以上の整数を表す。nが2以上である場合、複数のR
eは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0073】
Reで表される二価の炭化水素基及びエーテル結合酸素含有炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~5、更に好ましくは1~3である。Reで表される二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基は、例えばエーテル結合を形成する酸素原子を側鎖に有する炭化水素基であってよい。
【0074】
Rfは、好ましくは炭素数1~20の炭化水素基である。Rfで表される炭化水素基は、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、アリール基、アリールアルキル基等であってよく、好ましくはアルキル基であり、より好ましくは炭素数1~5のアルキル基である。
【0075】
nは、好ましくは0以上、より好ましくは1以上の整数であり、また、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは5以下の整数である。アクリレート系ポリマーを構成する全構造単位におけるnの平均値は、好ましくは0~10である。
【0076】
アクリレート系ポリマーは、式(I)で表される構造単位から選ばれる1種で構成される単独重合体であってもよく、式(1)で表される構造単位から選ばれる2種以上で構成される共重合体であってもよく、式(1)で表される構造単位と他の構造単位とで構成される共重合体であってもよい。アクリレート系ポリマーを共重合体とすることにより、潤滑性、絶縁性、吸湿性等を一層向上させることができる。式(I)で表される構造単位の含有量は、アクリレート系ポリマーを構成する構造単位全量を基準として、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上であり、100モル%であってもよい。
【0077】
アクリレート系ポリマーが共重合体である場合、当該共重合体は、好ましくは、式(I)におけるRdが炭素数1~4のアルキル基である構造単位から選ばれる少なくとも1種の構造単位を有する。この共重合体は、式(I)におけるRdが炭素数1~4のアルキル基である構造単位から選ばれる2種以上の構造単位を有していてもよく、式(I)におけるRdが炭素数1~4のアルキル基である構造単位から選ばれる1種以上の構造単位と、式(I)におけるRdが酸素含有有機基又は炭素数5~8のアルキル基である構造単位から選ばれる1種以上の構造単位とを有していてもよい。式(I)におけるRdが炭素数1~4のアルキル基である構造単位の含有量は、共重合体を構成する構造単位全量を基準として、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。
【0078】
上記の共重合体のうち、例えば下記(A)~(E)の共重合体が好適である。なお、(A)~(E)中のRa~Rdは、それぞれ式(I)におけるRa~Rdを意味する。
(A)Ra~Rcが水素原子であり、Rdがエチル基である構造単位と、Ra~Rcが水素原子であり、Rdがn-ブチル基である構造単位と、Ra~Rcが水素原子であり、Rdがi-ブチル基(2-メチルプロピル基)である構造単位とを有する共重合体。
(B)Ra~Rcが水素原子であり、Rdがエチル基である構造単位と、Ra~Rcが水素原子であり、Rdがプロピル基である構造単位とを有する共重合体。
(C)Ra及びRbが水素原子であり、Rc及びRdがメチル基である構造単位と、Ra~Rcが水素原子であり、Rdがi-オクチル基(例えば2-エチルヘキシル基)である構造単位とを有する共重合体。
(D)Ra~Rcが水素原子であり、Rdがエチル基である構造単位と、Ra及びRbが水素原子であり、Rcがメチル基であり、Rdがグリシジル基である構造単位とを有する共重合体。
(E)Ra~Rcが水素原子であり、Rdがi-ブチル基(2-メチルプロピル基)である構造単位と、Ra及びRbが水素原子であり、Rcがメチル基であり、Rdがメトキシエチル基である構造単位とを有する共重合体。
【0079】
アクリレート系ポリマーは、例えば国際公開01/083619号に記載されているような公知の方法により製造される。この際、原料となるモノマーの種類、開始剤の種類、共重合体における構造単位の比率等を適宜選択することにより、冷凍機油の諸特性を所望のものとすることが可能となる。したがって、冷凍システム又は空調システムにおけるコンプレッサの型式、潤滑部の材質、冷凍能力、冷媒の種類等により異なる潤滑性、相溶性等の要求に応じた冷凍機油を自在に得ることができる。共重合体は、ブロック共重合体又はランダム共重合体のいずれであってもよい。
【0080】
アクリレート系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、耐摩耗性に優れる観点から、500以上であり、好ましくは1000以上、より好ましくは3000以上、更に好ましくは3500以上、特に好ましくは5000以上である。アクリレート系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、油戻り性に優れる観点から、100000以下であり、好ましくは80000以下、より好ましくは50000以下、更に好ましくは30000以下、特に好ましくは25000以下である。アクリレート系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、油戻り性に加えて耐摩耗性にも特に優れる観点から、好ましくは15000以下、より好ましくは10000以下、更に好ましくは8000以下、特に好ましくは6000以下である。
【0081】
アクリレート系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、耐摩耗性及び油戻り性の両方に優れる観点から、好ましくは、500~100000、500~80000、500~50000、500~30000、500~25000、1000~100000、1000~80000、1000~50000、1000~30000、1000~25000、3000~100000、3000~80000、3000~50000、3000~30000、3000~25000、3000~15000、3000~10000、3000~8000、3000~6000、3500~100000、3500~80000、3500~50000、3500~30000、3500~25000、3500~15000、3500~10000、3500~8000、3500~6000、5000~100000、5000~80000、5000~50000、5000~30000、5000~25000、5000~15000、5000~10000、5000~8000、又は5000~6000である。
【0082】
アクリレート系ポリマーの数平均分子量(Mn)は、例えば、450以上、700以上、1500以上、又は3000超えであってよく、また、2000以上、100000以下、60000以下、40000以下、20000以下、15000以下、10000以下、6000以下、又は4000以下であってよい。
【0083】
アクリレート系ポリマーにおいては、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、例えば、1.0以上、1.1以上、1.2以上、1.5以上、又は1.6以上であってよく、また、3.0以下、2.5以下、2.2以下、2.0以下、又は1.9以下であってよい。
【0084】
アクリレート系ポリマーの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、GPC分析により得られるMw、Mn及びMw/Mn(ポリスチレン(標準試料)換算値)を意味する。Mw、Mn及びMw/Mnは、例えば以下のように測定される。
【0085】
溶剤としてテトラヒドロフランを使用し、希釈してアクリレート系ポリマー濃度を1質量%とした溶液を調製する。その溶液を、GPC装置(Waters Alliance2695)を用いて分析を行う。溶剤の流速は1ml/min、例えば分析可能分子量100から10000のカラム(分析対象であるアクリレート系ポリマーの分子量が10000を超える場合は、分子量に応じた適切なカラム)を使用し、屈折率検出器を用いて分析を実施する。なお、分子量が明確なポリスチレン標準を用いてカラム保持時間と分子量との関係を求め、検量線を別途作成した上で、得られた保持時間から分子量を決定する。
【0086】
アクリレート系ポリマーの引火点は、好ましくは、195℃以上、200℃以上、又は205℃以上である。本発明における引火点は、JIS K2265-4:2007「引火点の求め方-第4部:クリーブランド開放法」に準拠して測定される引火点を意味する。
【0087】
アクリレート系ポリマーの自然発火点は、好ましくは、335℃以上、340℃以上、又は345℃以上である。本発明における自然発火点は、ASTM E659-1978に準拠して測定される自然発火点を意味する。
【0088】
アクリレート系ポリマーの動粘度は、上述した構造及び重量平均分子量に応じた範囲内であれば特に制限されず、アクリレート系ポリマーは、通常の潤滑油基油並みのものから常温で流動性を持つ程度の高粘性のものであってもよい。例えば、アクリレート系ポリマーの動粘度は、40℃又は100℃において、1mm2/s以上100万mm2/s以下、好ましくは10mm2/s以上10万mm2/s以下であってよく、又は、100mm2/s以上又は1000mm2/s以上であってよい。
【0089】
アクリレート系ポリマーの40℃における動粘度は、より具体的には、好ましくは10mm2/s以上、より好ましくは20mm2/s以上、更に好ましくは30mm2/s以上であり、また、ハンドリング等が良好である点で、好ましくは1000mm2/s以下、より好ましくは400mm2/s以下、更に好ましくは300mm2/s以下、特に好ましくは200mm2/s以下である。
【0090】
アクリレート系ポリマーの100℃における動粘度は、より具体的には、好ましくは1mm2/s以上、より好ましくは2mm2/s以上、更に好ましくは3mm2/s以上であり、また、ハンドリング等が良好である点で、好ましくは200mm2/s以下、より好ましくは50mm2/s以下、更に好ましくは40mm2/s以下、特に好ましくは30mm2/s以下である。
【0091】
アクリレート系ポリマーの流動点は、好ましくは-10℃以下、より好ましくは-20℃以下であり、また、その下限は特に制限されないが、好ましくは-50℃以上である。本発明における流動点は、JIS K2269:1987に準拠して測定される流動点を意味する。
【0092】
アクリレート系ポリマーの含有量は、特に制限はなく、油戻り性に優れる観点から、冷凍機油全量基準で、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であるが、油戻り性及び耐摩耗性に優れる観点から、好ましくは7質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上である。アクリレート系ポリマーの含有量は、耐摩耗性に優れる観点から、冷凍機油全量基準で、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%以下である。アクリレート系ポリマーの含有量は、耐摩耗性及び油戻り性の両方に優れる観点から、冷凍機油全量基準で、好ましくは、1~40質量%、1~35質量%、1~30質量%、5~40質量%、5~35質量%、5~30質量%、7~40質量%、7~35質量%、7~30質量%、7~25質量%、10~40質量%、10~35質量%、10~30質量%、10~25質量%、15~40質量%、15~35質量%、15~30質量%、15~25質量%、20~40質量%、20~35質量%、20~30質量%、又は20~25質量%である。
【0093】
冷凍機油は、アクリレート系ポリマーに加えて、その他の添加剤を更に含有していてもよい。その他の添加剤としては、例えば、酸捕捉剤、酸化防止剤、極圧剤、油性剤、消泡剤、金属不活性化剤、摩耗防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤などが挙げられる。これらの添加剤の合計の含有量は、冷凍機油全量基準で、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下であってよい。
【0094】
冷凍機油の40℃における動粘度は、好ましくは3mm2/s以上、より好ましくは4mm2/s以上、更に好ましくは5mm2/s以上であってよい。冷凍機油の40℃における動粘度は、好ましくは500mm2/s以下、より好ましくは400mm2/s以下、更に好ましくは300mm2/s以下であってよい。
【0095】
冷凍機油の100℃における動粘度は、好ましくは1mm2/s以上、より好ましくは2mm2/s以上であってよい。冷凍機油の100℃における動粘度は、好ましくは100mm2/s以下、より好ましくは50mm2/s以下であってよい。
【0096】
冷凍機油の流動点は、好ましくは-10℃以下、より好ましくは-20℃以下であってよい。
【0097】
冷凍機油の体積抵抗率は、好ましくは1.0×109Ω・m以上、より好ましくは1.0×1010Ω・m以上、更に好ましくは1.0×1011Ω・m以上であってよい。特に密閉型の冷凍機用に用いる場合には、電気絶縁性は高いことが好ましい。本発明における体積抵抗率は、JIS C2101:1999に準拠して測定した25℃での体積抵抗率を意味する。
【0098】
冷凍機油の水分含有量は、冷凍機油全量基準で、好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、更に好ましくは50ppm以下であってよい。特に密閉型の冷凍機用に用いる場合には、冷凍機油の熱・化学的安定性や電気絶縁性への影響の観点から、水分含有量は少ないことが好ましい。
【0099】
冷凍機油の酸価は、冷凍機又は配管に用いられている金属への腐食を防止する観点から、好ましくは1.0mgKOH/g以下、より好ましくは0.1mgKOH/g以下であってよい。本発明における酸価は、JIS K2501:2003に準拠して測定された酸価を意味する。
【0100】
冷凍機油の灰分は、冷凍機油の熱・化学的安定性を高めスラッジ等の発生を抑制する観点から、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下であってよい。本発明における灰分は、JIS K2272:1998に準拠して測定された灰分を意味する。
【0101】
本実施形態に係る冷凍機油は、冷媒と共に用いられる。本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物は、本実施形態に係る冷凍機油と、冷媒とを含有する。かかる冷媒としては、飽和フッ化炭化水素冷媒、不飽和フッ化炭化水素冷媒、炭化水素冷媒、パーフルオロエーテル類等の含フッ素エーテル系冷媒、ビス(トリフルオロメチル)サルファイド冷媒、3フッ化ヨウ化メタン冷媒、及び、アンモニア、二酸化炭素等の自然系冷媒が例示される。
【0102】
飽和フッ化炭化水素冷媒としては、好ましくは炭素数1~3、より好ましくは1~2の飽和フッ化炭化水素が挙げられる。具体的には、ジフルオロメタン(R32)、トリフルオロメタン(R23)、ペンタフルオロエタン(R125)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(R134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)、1,1,1-トリフルオロエタン(R143a)、1,1-ジフルオロエタン(R152a)、フルオロエタン(R161)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R227ea)、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン(R236ea)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(R236fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(R245fa)、および1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(R365mfc)、又はこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0103】
飽和フッ化炭化水素冷媒としては、上記の中から用途や要求性能に応じて適宜選択されるが、例えばR32単独;R23単独;R134a単独;R125単独;R134a/R32=60~80質量%/40~20質量%の混合物;R32/R125=40~70質量%/60~30質量%の混合物;R125/R143a=40~60質量%/60~40質量%の混合物;R134a/R32/R125=60質量%/30質量%/10質量%の混合物;R134a/R32/R125=40~70質量%/15~35質量%/5~40質量%の混合物;R125/R134a/R143a=35~55質量%/1~15質量%/40~60質量%の混合物などが好ましい例として挙げられる。さらに具体的には、R134a/R32=70/30質量%の混合物;R32/R125=60/40質量%の混合物;R32/R125=50/50質量%の混合物(R410A);R32/R125=45/55質量%の混合物(R410B);R125/R143a=50/50質量%の混合物(R507C);R32/R125/R134a=30/10/60質量%の混合物;R32/R125/R134a=23/25/52質量%の混合物(R407C);R32/R125/R134a=25/15/60質量%の混合物(R407E);R125/R134a/R143a=44/4/52質量%の混合物(R404A)などを用いることができる。
【0104】
不飽和フッ化炭化水素(HFO)冷媒は、好ましくは炭素数2~3の不飽和フッ化炭化水素、より好ましくはフルオロプロペン、更に好ましくはフッ素数が3~5のフルオロプロペンである。不飽和フッ化炭化水素冷媒は、好ましくは、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ye)、及び3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)のいずれか1種又は2種以上の混合物である。不飽和フッ化炭化水素冷媒は、冷媒物性の観点からは、好ましくは、HFO-1225ye、HFO-1234ze及びHFO-1234yfから選ばれる1種又は2種以上である。不飽和フッ化炭化水素冷媒は、フルオロエチレンであってもよく、好ましくは1,1,2,3-トリフルオロエチレンであってもよい。
【0105】
炭化水素冷媒は、好ましくは炭素数1~5の炭化水素、より好ましくは炭素数2~4の炭化水素である。炭化水素としては、具体的には例えば、メタン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン(R290)、シクロプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、シクロブタン、メチルシクロプロパン、2-メチルブタン、ノルマルペンタン又はこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの中でも、25℃、1気圧で気体の炭化水素冷媒が好ましく用いられ、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、2-メチルブタン又はこれらの混合物がより好ましく用いられる。
【0106】
本実施形態に係る冷凍機油は、上記の冷媒の中でも、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンとの混合物、ジフルオロメタン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、プロパン及び二酸化炭素から選ばれる冷媒との相溶性に特に優れているため、これらの冷媒と共に特に好適に用いられる。すなわち、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物は、冷媒として、好ましくは、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンとの混合物、ジフルオロメタン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、プロパン及び二酸化炭素から選ばれる冷媒を含有する。
【0107】
本実施形態に係る冷凍機油は、通常、冷凍機において、冷媒と混合された冷凍機用作動流体組成物の形で存在している。冷凍機用作動流体組成物における冷凍機油の含有量は、冷媒100質量部に対して、好ましくは1~500質量部、より好ましくは2~400質量部である。
【0108】
本実施形態に係る冷凍機は、上記の冷凍機油又は冷凍機用作動流体組成物を含有する。すなわち、本実施形態に係る冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物は、往復動式や回転式の密閉型圧縮機を有するエアコン、冷蔵庫、開放型又は密閉型のカーエアコン、除湿機、給湯器、冷凍庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷凍機、遠心式の圧縮機を有する冷凍機等に好適に用いられる。
【0109】
図1は、本実施形態に係る冷凍機の構成の一例を示す概略図である。
図1に示すように、冷凍機10は、例えば、冷媒圧縮機1と、ガスクーラー2と、膨張機構3(キャピラリ、膨張弁など)と、蒸発器4とが流路5で順次接続された冷媒循環システムを少なくとも備えている。かかる冷媒循環システムにおいては、先ず、冷媒圧縮機1から流路5内に吐出された高温(通常70~120℃)の冷媒が、ガスクーラー2にて高密度の流体(超臨界流体等)となる。続いて、冷媒は膨張機構3が有する狭い流路を通ることによって液化し、さらに蒸発器4にて気化して低温(通常-40~0℃)となる。
【0110】
図1中の冷媒圧縮機1内においては、高温(通常70~120℃)条件下、少量の冷媒と多量の冷凍機油とが共存する。冷媒圧縮機1から流路5に吐出される冷媒は、気体状であり、少量(通常1~10%)の冷凍機油をミストとして含んでいるが、このミスト状の冷凍機油中には少量の冷媒が溶解している(
図1中の点a)。次に、ガスクーラー2内においては、気体状の冷媒が圧縮されて高密度の流体となり、比較的高温(通常50~70℃前後)条件下で多量の冷媒と少量の冷凍機油とが共存する(
図1中の点b)。さらに、多量の冷媒と少量の冷凍機油との混合物は膨張機構3、蒸発器4に順次送られて急激に低温(通常-40~0℃)となり(
図1中の点c、d)、再び冷媒圧縮機1に戻される。
【実施例】
【0111】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0112】
以下に示す基油及び添加剤を用いた。
(基油)
A1:ペンタエリスリトールと2-メチルプロパン酸/3,5,5-トリメチルヘキサン酸(モル比:50/50)とのポリオールエステル(40℃動粘度:56mm2/s、100℃動粘度:7.1mm2/s、粘度指数:81)
A2:ペンタエリスリトールと2-エチルヘキサン酸/3,5,5-トリメチルヘキサン酸(モル比:50/50)とのポリオールエステル(40℃動粘度:68mm2/s、100℃動粘度:8.3mm2/s、粘度指数:88)
A3:エチルビニルエーテル重合体(数平均分子量(Mn):1900、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn):1.29、40℃動粘度:71mm2/s、100℃動粘度:8.6mm2/s、粘度指数:89)
A4:ポリプロピレングリコールジメチルエーテル(数平均分子量(Mn):1000、40℃動粘度:46.0mm2/s、粘度指数:190、流動点:-45℃、引火点:218℃)
(添加剤)
B1~B7:表1に示すアクリレート系ポリマー
なお、表1中の略称の意味は、以下のとおりである。
AC2:アクリル酸エチル
AnC4:アクリル酸ブチル
AEtOM:アクリル酸エトキシメチル
MAC1:メタクリル酸メチル
MAnC4:メタクリル酸ブチル
MAnC6:メタクリル酸へキシル
MAiC8:メタクリル酸2-エチルヘキシル
MAnC18:メタクリル酸ステアリル
MAnC20:メタクリル酸エイコシル
【0113】
【0114】
上記の基油及び添加剤を表2~4に示すとおりに配合し、冷凍機油を調製した。各冷凍機油について、以下に示す耐摩耗性試験及び油戻り性試験を実施した。試験結果を表2~4に示す。
【0115】
(耐摩耗性試験)
耐摩耗性試験は、実コンプレッサと類似の冷媒雰囲気にできる、神鋼造機(株)製の高圧雰囲気摩擦試験機(回転ベーン材と固定ディスク材との回転しゅう動方式)を用いた。評価冷媒としては、R410A、R32、HFO-1234yf、CO2及びR290のいずれかを使用し、ベーン材としてSKH-51、ディスク材としてFC250を用い、試験油量600mL、試験温度90℃、試験容器内圧力1.6MPa、回転数550rpm、負荷荷重90kgf、試験時間1時間の条件で試験を行った。
なお、R290の試験は、安全性の観点から、n-ヘキサンを代替として用い、n-ヘキサンを冷凍機油に対して20容量%配合した。また、試験容器内圧力を常圧より若干高い圧力とした以外は、上記の他の冷媒についての条件と同じ条件で試験を行った。
耐摩耗性の評価は、ディスク材の摩耗量が極めて少ないことから、ベーン材の摩耗深さ(μm)によって行った。ベーン材の摩耗深さが小さいほど(R410A使用時は例えば12μm以下、R32使用時は例えば13μm以下、好ましくは10.3μm以下、HFO-1234yf使用時は例えば15μm以下、R290使用時は例えば16μm以下、CO2使用時は例えば17μm以下)、耐摩耗性に優れているといえる。
【0116】
(油戻り性試験)
図2に示す装置を用いた。冷媒タンク11にR410A冷媒を充填し、長さ1.5m、内径0.0036mの銅配管12のうち恒温槽15に浸漬している部分12aに冷凍機油5.0gを充填した。恒温槽15の温度を-20℃に設定し、冷媒タンク11から油受17へ向けて毎分0.001m
3の流量で冷媒を銅配管12内に流した。この際、冷媒の流量を流量計13で、冷媒タンク11と恒温槽15との間の銅配管12内の圧力を圧力計14で、恒温槽15と油受17との間の銅配管12内の圧力を圧力計16で、それぞれ監視した。冷媒を流し始めてから30分後に、油受17に溜まった冷凍機油の質量を測定し、以下の式に従って油戻り率を算出した。油戻り率が大きいほど(例えば40質量%以上)、油戻り性に優れているといえる。
油戻り率(質量%)=(油受に溜まった冷凍機油の質量(g)/5.0(g))×100
【0117】
【0118】
【0119】
【符号の説明】
【0120】
1…冷媒圧縮機、2…ガスクーラー、3…膨張機構、4…蒸発器、5…流路、10…冷凍機。11…冷媒タンク、12…銅配管、13…流量計、14,16…圧力計、15…恒温槽、17…油受。