(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】内燃機関を作動させるための制御装置、コンピュータ制御内燃機関システム、及び、内燃機関を作動させる方法
(51)【国際特許分類】
F02D 21/00 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
F02D21/00
(21)【出願番号】P 2023044365
(22)【出願日】2023-03-20
(62)【分割の表示】P 2021131759の分割
【原出願日】2015-12-28
【審査請求日】2023-03-20
(32)【優先日】2014-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517229888
【氏名又は名称】ブンジェス ダグラス デイヴィッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブンジェス ダグラス デイヴィッド
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-291847(JP,A)
【文献】特開2003-049650(JP,A)
【文献】特開2005-264767(JP,A)
【文献】特開平03-096636(JP,A)
【文献】特開平11-173195(JP,A)
【文献】特開2007-023917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の燃焼室と、前記燃焼室内の燃料の燃焼に応答して回転可能な出力軸と、1つ以上の空気噴射装置と
、前記1つ以上の燃焼室を画定する1つ以上のシリンダとを含み、前記1つ以上の空気噴射器以外の前記1つ以上の燃焼室への空気の流れを開閉するための吸気弁を有さ
ず、前記1つ以上のシリンダの各シリンダで4工程サイクルの動作を実行するように構成された内燃機関を作動させるための制御装置であって、
プロセッサと、
前記プロセッサに結合されたメモリであって、前記プロセッサによって実行されたとき、
前記内燃機関の作動パラメータに関する1つ以上の作動入力を受け取る動作と、
排出気体中の酸素の量を検出するように構成された第1センサを含む1つ以上のセンサから1つ以上の入力を受け取る動作と、
前記第1センサからの信号に少なくとも部分的に基づいて、ガソリン直接噴射(GDI)燃料噴射器又は燃料層別噴射(FSI)燃料噴射器の少なくとも1つを含む、圧縮空気源と流体連通する前記1つ以上の空気噴射装置を通して前記内燃機関の前記1つ以上の燃焼室に噴射する圧縮空気の量を決定する動作と、
前記1つ以上の燃焼室の対応する1つ内に所定の燃焼容積を生み出すようにして、前記制御装置によって決定された量の圧縮空気のみを前記内燃機関の前記1つ以上の燃焼室に供給し、直接噴射するように、1つ以上の前記空気噴射装置の前記GDI燃料噴射器又は前記FSI燃料噴射器の少なくとも1つを作動させる動作と、
前記1つ以上の燃焼室に燃料を直接噴射するように、前記1つ以上の空気噴射装置とは別の1つ以上の燃料噴射装置を作動させる動作とを前記制御装置に実施させる、コンピュータ実行可能命令を含む、メモリとを備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、前記内燃機関が、複数の燃焼室を画定する複数のシリンダ及びピストンを含み、前記内燃機関の1つ以上の燃焼室に噴射する空気の量を決定することは、互いに独立して前記複数のシリンダの各々内に噴射する空気の量を決定することを含むことを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の制御装置であって、前記1つ以上の燃焼室に空気を直接噴射するように1つ以上の空気噴射装置の少なくとも1つを作動させ、前記1つ以上の燃焼室に燃料を直接噴射するように1つ以上の燃料噴射装置を作動させることが、前記内燃機関の前記出力軸の回転を反転させることを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の制御装置であって、前記コンピュータ実行可能命令が、さらに、前記1つ以上の燃焼室の少なくとも1つに空気を直接噴射するように1つ以上の空気噴射装置の少なくとも1つを作動させ、前記1つ以上の燃焼室の前記少なくとも1つに燃料を直接噴射するように1つ以上の燃料噴射装置を作動させ、前記燃焼室の前記少なくとも1つ内の前記燃料に点火することによって、前記制御装置に前記内燃機関の前記出力軸の回転を開始する動作を実行させることを特徴とする制御装置。
【請求項5】
1つ以上の燃焼室と、前記燃焼室内の燃料の燃焼に応答して回転可能な出力軸と、1つ以上の空気噴射装置とを含み、前記1つ以上の空気噴射器以外の前記1つ以上の燃焼室への空気の流れを開閉するための吸気弁を有さない内燃機関を作動させるための制御装置であって、
プロセッサと、
前記プロセッサに結合されたメモリであって、前記プロセッサによって実行されたとき、
前記内燃機関の作動パラメータに関する1つ以上の作動入力を受け取る動作と、
排出気体中の酸素の量を検出するように構成された第1センサを含む1つ以上のセンサから1つ以上の入力を受け取る動作と、
前記第1センサからの信号に少なくとも部分的に基づいて、ガソリン直接噴射(GDI)燃料噴射器又は燃料層別噴射(FSI)燃料噴射器の少なくとも1つを含む、圧縮空気源と流体連通する前記1つ以上の空気噴射装置を通して前記内燃機関の前記1つ以上の燃焼室に噴射する圧縮空気の量を決定する動作と、
前記1つ以上の燃焼室の対応する1つ内に所定の燃焼容積を生み出すようにして、前記制御装置によって決定された量の圧縮空気のみを前記内燃機関の前記1つ以上の燃焼室に供給し、直接噴射するように、1つ以上の前記空気噴射装置の前記GDI燃料噴射器又は前記FSI燃料噴射器の少なくとも1つを作動させる動作と、
前記1つ以上の燃焼室に燃料を直接噴射するように、前記1つ以上の空気噴射装置とは別の1つ以上の燃料噴射装置を作動させる動作とを前記制御装置に実施させる、コンピュータ実行可能命令を含む、メモリとを備え、
前記圧縮空気源と、前記圧縮空気源と吸気マニホールドとの間の圧力を調整するように構成された空気圧調整器と、の間に設けられた第1空気圧センサ、及び、前記空気圧調整器と前記吸気マニホールドとの間に設けられ、前記吸気マニホールド内の空気圧を検出するように構成された第2の空気圧センサから入力を受け取るように構成されている、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の制御装置であって、空気を前記1つ以上の燃焼室に噴射するように1つ以上の空気噴射装置の少なくとも1つを作動させることは、前記1つ以上の空気噴射装置の対応する1つを所定の時間の間開くことを含むことを特徴とする制御装置。
【請求項7】
請求項
5に記載の制御装置であって、前記内燃機関の前記1つ以上の燃焼室に噴射する空気の量を決定することは、1つ以上のセンサからの前記受け取られた1つ以上の入力に少なくとも部分的に基づくことを特徴とする制御装置。
【請求項8】
コンピュータ制御内燃機関システムであって、
出力軸、
1つ以上の燃焼室、
前記1つ以上の燃焼室内の圧力上昇を前記出力軸の回転に変換するように構成されたエネルギー変換機構、
空気を圧縮する圧縮機、
前記1つ以上の燃焼室の対応する1つ及び前記圧縮機に動作可能に連結され、前記出力軸から機械的に分離され、遮られることなく、前記圧縮機によって圧縮された空気を前記1つ以上の燃焼室内に噴射するように構成され、ガソリン直接噴射(GDI)燃料噴射器又は燃料層別噴射(FSI)燃料噴射器の少なくとも1つを含む、1つ以上の空気管を介して前記圧縮機と流体連通する1つ以上の空気噴射装置、及び、
前記1つ以上の燃焼室の対応する1つに動作可能に連結された、前記1つ以上の空気噴射装置とは別の1つ以上の燃料噴射装置、
前記1つ以上の燃焼室を画定する1つ以上のシリンダ、
を含
み、前記1つ以上のシリンダの各シリンダで4工程サイクルの動作を実行するように構成された内燃機関と、
前記1つ以上の空気噴射装置に動作可能に結合された制御装置であって、
前記内燃機関の作動パラメータに関する1つ以上の作動入力を受け取り、
排出気体中の酸素の量を検出するように構成された第1センサを含む1つ以上のセンサから1つ以上の入力を受け取り、
前記第1センサからの信号に少なくとも部分的に基づいて、1つ以上の空気噴射装置の前記GDI燃料噴射器又は前記FSI燃料噴射器の少なくとも1つを通して前記内燃機関の1つ以上の燃焼室に噴射する、前記圧縮機からの圧縮空気の量を決定し、
前記1つ以上の燃焼室の対応する1つ内に所定の燃焼容積を生み出すようにして、前記量の圧縮空気を前記内燃機関の前記1つ以上の燃焼室に直接噴射するように1つ以上の空気噴射装置のの前記GDI燃料噴射器又は前記FSI燃料噴射器の少なくとも1つを作動させるように構成される、制御装置とを備えることを特徴とするコンピュータ制御内燃機関システム。
【請求項9】
請求項
8に記載のコンピュータ制御内燃機関システムであって、前記制御装置が、前記1つ以上の空気噴射装置を互いに独立して作動させるように構成されることを特徴とするコンピュータ制御内燃機関システム。
【請求項10】
請求項
8に記載のコンピュータ制御内燃機関システムであって、前記制御装置が、互いに独立して前記1つ以上の空気噴射装置の少なくとも1つを所定の時間の間開いて維持することによって、前記内燃機関の前記1つ以上の燃焼室に圧縮空気を直接噴射するように1つ以上の空気噴射装置の少なくとも1つを作動させるように構成されることを特徴とするコンピュータ制御内燃機関システム。
【請求項11】
請求項
8に記載のコンピュータ制御内燃機関システムであって、前記制御装置が、前記1つ以上の燃焼室に燃料を噴射するように前記1つ以上の燃料噴射装置を互いに独立して作動させるように構成されることを特徴とするコンピュータ制御内燃機関システム。
【請求項12】
請求項
8に記載のコンピュータ制御内燃機関システムであって、前記内燃機関が、前記1つ以上の燃焼室の対応する1つに動作可能に連結され、前記出力軸から機械的に分離される、1つ以上の排気弁を含み、前記制御装置が、前記1つ以上の排気弁を、互いに独立して開位置と閉位置の間で作動させるように構成されることを特徴とするコンピュータ制御内燃機関システム。
【請求項13】
コンピュータ制御内燃機関システムであって、
出力軸、
1つ以上の燃焼室、
前記1つ以上の燃焼室内の圧力上昇を前記出力軸の回転に変換するように構成されたエネルギー変換機構、
空気を圧縮する圧縮機、
前記1つ以上の燃焼室の対応する1つ及び前記圧縮機に動作可能に連結され、前記出力軸から機械的に分離され、遮られることなく、前記圧縮機によって圧縮された空気を前記1つ以上の燃焼室内に噴射するように構成され、ガソリン直接噴射(GDI)燃料噴射器又は燃料層別噴射(FSI)燃料噴射器の少なくとも1つを含む、1つ以上の空気管を介して前記圧縮機と流体連通する1つ以上の空気噴射装置、及び、
前記1つ以上の燃焼室の対応する1つに動作可能に連結された、前記1つ以上の空気噴射装置とは別の1つ以上の燃料噴射装置、
前記圧縮機と吸気マニホールドの間の圧力を調整するように構成され、前記内燃機関の作動中に所定の圧力に自動的に調整可能である空気圧調整
器、
前記内燃機関に動作可能に連結され、前記内燃機関の作動に関する1つ以上の状態を検出するように構成された1つ以上のセンサであって、前記圧縮機と前記空気圧調整器との間に設けられ、前記圧縮機の出力空気圧を検出するように構成された第1空気圧センサ、及び、前記空気圧調整器と前記吸気マニホールドとの間に設けられ、前記吸気マニホールド内の空気圧を検出するように構成された第2の空気圧センサ、を含む1つ以上のセン
サ、
を含む
内燃機関と、
前記1つ以上の空気噴射装置に動作可能に結合された制御装置であって、
前記内燃機関の作動パラメータに関する1つ以上の作動入力を受け取り、
排出気体中の酸素の量を検出するように構成された第1センサを含む1つ以上のセンサから1つ以上の入力を受け取り、
前記第1センサからの信号に少なくとも部分的に基づいて、1つ以上の空気噴射装置の前記GDI燃料噴射器又は前記FSI燃料噴射器の少なくとも1つを通して前記内燃機関の1つ以上の燃焼室に噴射する、前記圧縮機からの圧縮空気の量を決定し、
前記1つ以上の燃焼室の対応する1つ内に所定の燃焼容積を生み出すようにして、前記量の圧縮空気を前記内燃機関の前記1つ以上の燃焼室に直接噴射するように1つ以上の空気噴射装置のの前記GDI燃料噴射器又は前記FSI燃料噴射器の少なくとも1つを作動させるように構成される、制御装置とを備える、
ことを特徴とするコンピュータ制御内燃機関システム。
【請求項14】
請求項
13に記載のコンピュータ制御内燃機関システムであって、前記制御装置が、前記1つ以上のセンサから受け取られた信号に少なくとも部分的に基づいて、前記1つ以上の空気噴射装置又は1つ以上の排気弁の少なくとも1つを作動させるように構成されることを特徴とするコンピュータ制御内燃機関システム。
【請求項15】
請求項
14に記載のコンピュータ制御内燃機関システムであって、前記内燃機関が、前記1つ以上の燃焼室を画定する1つ以上のシリンダと、1つ以上のピストンであって、前記1つ以上のシリンダの対応する1つ内に移動可能に位置付けられ、前記シリンダ内の前記ピストンの移動が前記出力軸の回転を生み出すように前記出力軸に動作可能に連結される、1つ以上のピストンとを含み、
前記1つ以上のセンサの少なくとも1つが、前記出力軸の配向を検出するように構成され、
前記内燃機関は、前記1つ以上のシリンダの各シリンダで4工程サイクルの動作を実行するように構成されることを特徴とするコンピュータ制御内燃機関システム。
【請求項16】
内燃機関を作動させる方法であって、
前記内燃機関の作動パラメータに関する1つ以上の作動入力を受け取ることと、
排出気体中の酸素の量を検出するように構成された第1センサを含む1つ以上のセンサから1つ以上の入力を受け取ることと、
前記第1センサからの信号に少なくとも部分的に基づいて、ガソリン直接噴射(GDI)燃料噴射器又は燃料層別噴射(FSI)燃料噴射器の少なくとも1つを含む、圧縮空気源と流体連通する1つ以上の空気噴射装置を通して前記内燃機関の1つ以上の燃焼室に噴射する圧縮空気の量を決定することと、
前記1つ以上の燃焼室に動作可能に連結された1つ以上の空気噴射装置の少なくとも1つを作動させることによって決定された前記量の圧縮空気を前記内燃機関の前記1つ以上の燃焼室に噴射することにより、前記1つ以上の燃焼室の対応する1つ内に所定の燃焼容積を生み出すことと、
前記1つ以上の空気噴射装置とは別の1つ以上の燃料噴射装置を通して、所定量の燃料を前記内燃機関の前記1つ以上の燃焼室に噴射することと、
前記燃料を前記1つ以上の燃焼室内で燃焼させ、それによって前記内燃機関の出力軸を回転させることと、
前記1つ以上の燃焼室を画定する1つ以上のシリンダを含み、前記1つ以上のシリンダの各シリンダで4工程サイクルの動作を実行するように構成された前記内燃機関の前記出力軸から連結解除された1つ以上の排気弁を作動させることと、
を含むことを特徴とする内燃機関を作動させる方法。
【請求項17】
請求項
16に記載の方法であって、前記量の圧縮空気を前記内燃機関の前記1つ以上の燃焼室に噴射することは、前記1つ以上の空気噴射装置の少なくとも1つを所定の時間の間開いて維持し、前記圧縮空気を遮られることなく前記1つ以上の燃焼室に流すことを含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、気体燃料、液体燃料、固体燃料、又はそれらの組み合わせにおいて作動することができる内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年12月29日出願の米国仮特許出願第62/097,495号及び2014年12月29日出願の米国仮特許出願第62/097,506号に対する優先権を主張するものであり、本開示を全体的に本願に引用して援用する。
【0003】
一般に、内燃機関は、任意の数の構成及びサイズを有することができる。例えば、内燃機関は、直列型、フラット型(ボクサー型としても知られている)及びV字構成などのさまざまなピストン配置を有することができる。また、内燃機関は、回転式構成を有することもできる。内燃機関の構造及び/又は作動を改良することにより、改良された、又はより効率的な作動、耐用年数の改善、作動コストの低減などがもたらされ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、内燃機関のユーザ及び製造者は、引き続きその改良を求めている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書において説明する実施形態は、少なくとも1つの燃焼室と、出力軸と、燃料の燃焼中に生み出されたエネルギーを出力軸における機械的出力に変換する(例えば、燃焼室内の圧力上昇を出力軸の回転に変換する)ためのエネルギー変換機構とを含む内燃機関を対象とする。一実施形態では、燃料及び酸化剤が燃焼室内に噴射され、燃焼反応がその中で圧力上昇を生み出す。機関は、燃焼室内の上昇した圧力を、出力軸の回転などの機械的エネルギーに変換するように構成された1つ以上のエネルギー変換機構を含むことができる。
【0006】
少なくとも1つの実施形態は、出力軸及び1つ以上の燃焼室を有する燃焼機関を含む。さらに、そのような燃焼機関は、1つ以上の燃焼室の対応する1つ内に各々配置された1つ以上の変換機構を含む。1つ以上の変換機構は、燃焼室内の圧力上昇を出力軸の回転に変換するように構成される。そのような燃焼機関はまた、燃料の供給部に動作可能に連結され、燃料を燃焼室に直接噴射するように構成された、1つ以上の燃料噴射装置も含む。追加的に、そのような燃焼機関は、酸化剤の供給部と動作可能に連結され、酸化剤を燃焼室内に噴射するように構成された、1つ以上の酸化剤噴射装置を含む。
【0007】
本開示はまた、1つ以上の追加又は代替の実施形態による燃焼機関も含む。そのような燃焼機関は、1つ以上のシリンダをその中に含む機関ブロックを含む。そのような燃焼機関はまた、機関ブロックに回転可能に固定されたクランク軸と、1つ以上のシリンダ内に移動可能に位置付けられ、クランク軸に動作可能に連結された、1つ以上のピストンとを含む。さらに、そのような燃焼機関は、遮られることなく1つ以上のシリンダの対応する1つに開口する1つ以上の燃料噴射ポートと、遮られることなく1つ以上のシリンダの対応する1つに開口する1つ以上の酸化剤噴射ポートとを含む。そのような燃焼機関は、さらに、1つ以上の酸化剤噴射ポートの対応する1つ内に位置付けられ、酸化剤を対応する1つ以上のシリンダに噴射するように構成された、1つ以上の酸化剤噴射装置を含む。
【0008】
少なくとも1つの実施形態は、1つ以上の燃焼室と、燃焼室内の燃料の燃焼に応答して回転可能な出力軸とを含む内燃機関を作動させるための制御装置を含む。制御装置は、プロセッサと、プロセッサに結合され、コンピュータ実行可能命令を含む、メモリとを含む。さらに、プロセッサによるコンピュータ実行可能命令の実行は、制御装置に、内燃機関の作動パラメータに関する1つ以上の作動入力を受け取り、1つ以上のセンサから1つ以上の入力を受け取る動作を実行させる。加えて、プロセッサによるコンピュータ実行可能命令の実行は、制御装置に、内燃機関の1つ以上の燃焼室に噴射する空気の量を決定し、1つ以上の空気噴射装置を作動させて、空気を内燃機関の1つ以上の燃焼室に直接噴射する動作を実行させる。
【0009】
実施形態はまた、内燃機関及び制御装置を含むコンピュータ制御内燃機関システムも含む。内燃機関は、出力軸と、1つ以上の燃焼室と、1つ以上の燃焼室内の圧力上昇を出力軸の回転に変換するように構成されたエネルギー変換機構とを含む。内燃機関はまた、1つ以上の空気噴射装置であって、1つ以上の燃焼室の対応する1つに動作可能に連結され、出力軸から機械的に分離され、空気を遮られることなく1つ以上の燃焼室に噴射するように構成される、空気噴射装置も含む。制御装置は、1つ以上の空気噴射装置に動作可能に結合される。さらに、制御装置は、内燃機関の作動パラメータに関する1つ以上の作動入力を受け取り、1つ以上のセンサから1つ以上の入力を受け取るように構成される。制御装置はまた、内燃機関の1つ以上の燃焼室に噴射する空気の量を決定し、1つ以上の空気噴射装置を作動させて空気を内燃機関の1つ以上の燃焼室に直接噴射するように構成される。
【0010】
1つ以上の実施形態は、内燃機関を作動させる方法を含む。方法は、内燃機関の作動パラメータに関する1つ以上の作動入力を受け取ることと、1つ以上のセンサから1つ以上の入力を受け取ることとを含む。方法はまた、内燃機関の1つ以上の燃焼室に噴射する空気の量を決定することと、1つ以上の燃焼室に動作可能に連結された1つ以上の空気噴射装置を作動させることによって、選択された及び/又は所定量の空気を内燃機関の1つ以上の燃焼室に噴射することとを含む。方法は、さらに、選択された及び/又は所定量の燃料を内燃機関の1つ以上の燃焼室に噴射することと、1つ以上の燃焼室内で燃料を燃焼させ、それによって内燃機関の出力軸を回転させることとを含む。
【0011】
開示する実施形態のいかなる特徴も、限定されることなく、互いに組み合わせて使用することができる。加えて、本開示の他の特徴及び利点は、次の詳細な説明及び添付の図を考慮することによって当業者に明らかになるであろう。
【0012】
図はいくつかの実施形態を例示しており、ここでは同一の参照番号は、種々の図又は図に示す実施形態において同一又は類似の要素又は特徴を指す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態による内燃機関の前面等角図である。
【
図4】
図1の内燃機関の部分的な長手方向断面図である。
【
図5】
図1の内燃機関の部分的な横断方向断面図である。
【
図6】一実施形態による燃料システムの概略ブロック図である。
【
図7】別の実施形態による燃料システムの概略ブロック図である。
【
図8】一実施形態による空気システムの概略ブロック図である。
【
図9】一実施形態による内燃機関の作動を制御する方法の流れ図である。
【
図10】別の実施形態による内燃機関の作動を制御する方法の流れ図である。
【
図11】さらに別の実施形態による内燃機関の作動を制御する方法の流れ図である。
【
図12】一実施形態による制御装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に説明する実施形態は、少なくとも1つの燃焼室と、出力軸と、燃料の燃焼中に生み出されたエネルギーを出力軸における機械的出力に変換する(例えば、燃焼室内の圧力上昇を出力軸の回転に変換する)ためのエネルギー変換機構とを含む内燃機関を対象とする。一実施形態では、燃料及び酸化剤が燃焼室内に噴射され、燃焼反応がその中で圧力上昇を生み出す。機関は、燃焼室内の上昇した圧力を、出力軸の回転などの機械的エネルギーに変換するように構成された1つ以上のエネルギー変換機構を含むことができる。
【0015】
通常、燃焼室及び/又はエネルギー変換機構は、実施形態によってさまざまになり得る。例えば、内燃機関は、その燃焼室を画定又は形成し得る1つ以上のシリンダ及び対応するピストンを含むことができる。エネルギー変換機構は、燃料及び空気の混合気の燃焼に応答してシリンダ内で移動可能なピストンを含むことができる。ピストンを、出力軸上(例えばクランク軸上)に回転可能に装着することができ、それにより、その線形/往復移動(例えば2行程又は4行程サイクル)をクランク軸の回転に変換することができる。代替的又は追加的には、機関は、燃焼室内の燃焼及び/又は圧力上昇に応答して線形に移動及び/又は往復され得る線形出力機構を含むことができる。
【0016】
追加的又は代替的には、内燃機関は、回転式機関(例えば、ヴァンケル(Wankel)機関など)であってよく、燃焼中に生み出されたエネルギーを出力軸の回転に変換することができる非往復機構によって少なくとも部分的に形成又は画定された燃焼室を含むことができる。例えば、機関の燃焼室を、ロータ及びハウジングによってそれらの間に形成又は画定することができる(例えば、ヴァンケル機関の場合)。故に、例えば、エネルギー変換機構は、ロータを含むことができ、このロータは、燃料の燃焼中及び/又は燃焼後にハウジング内に生み出された圧力上昇に応答して出力軸を回転させることができる。
【0017】
場合によっては、1つ以上のピストンを含む往復内燃機関の4行程サイクルでは、空気及び燃料は、下降するピストンによってシリンダの上側端部に入ることができ、ピストンがその上方向行程中に上昇するにつれて圧縮され得る。混合気は点火され、シリンダ内で燃焼され、それによってピストンにその次の下方向行程を開始させる。最後の上方向行程は、燃焼の結果生じる気体を放出し、その後次の吸引行程が開始する。通常、空気は、ピストンの下り行程中開き得る1つ以上の吸気弁を通って機関の燃焼室に入る。さらに、燃料がシリンダ内に送出され、吸気弁が閉じた後、上記で説明したサイクルが開始する。
【0018】
従来の機関では、各々のシリンダは、吸気弁によって制御される少なくとも1つの燃料-空気吸気ポートと、これもまた排気弁によって制御され得る、排出気体のための少なくとも1つの排気ポートとを有することができる。一部の従来の機関は、2つ以上の吸気弁及び/又は2つ以上の排気弁を有することができる。通常、吸気弁及び/又は排気弁は、機関サイクル中、正確な時間で開閉することができ、これには、複雑なタイミング連結部(例えばベルト、鎖など)と、吸気弁及び/又は排気弁を作動させることができるカムとを伴い得る。例えば、タイミングベルトは、機関のクランク軸をカム軸に連結することができ、このカム軸は、クランク軸の回転及び対応するシリンダ内のピストンの位置に基づいて吸気弁及び/又は排気弁を開閉する(すなわち、ピストンの位置を吸気弁及び排気弁の開閉に調子を合わせる)ことができる。一部の従来の機関は、電子制御及び/又は作動される吸気弁及び/又は排気弁を含むことができる。
【0019】
場合によっては、従来の機関は、燃料噴射装置が燃料をシリンダに直接供給することができるガソリン直接噴射(GDI)システムを有することができる。GDIシステムを有する従来の機関は、吸気のために開き得る吸気弁(例えばポペット弁又はステム弁)と、気体排出のために開き得る排気弁とを含むことができる。故に、そのような機関は、タイミング機構及びカム軸を含み、これによって機関サイクル中、吸気弁及び排気弁の開閉の調子を合わせることができる。
【0020】
通常、上記で述べたように、本明細書に説明する1つ以上の実施形態による内燃機関は、1つ以上の燃焼室を含む(例えば、内燃機関は、燃焼室を含み得る1つ以上のシリンダを有することができ、これらシリンダは、任意の適切なやり方で配置されてよく、任意の適切なサイズを有することができる)。一実施形態では、燃焼システムは、燃料、空気、燃料-空気混合気又はそれらの組み合わせを内燃機関の1つ以上の燃焼室(例えば、ヴァンケル機関などの回転式機関のシリンダ、燃焼室など)に噴射するための1つ以上の機構を含む。追加的に、一部の例では、噴射された燃料、空気、燃料-空気混合気又はそれらの組み合わせの量を、内燃機関の作動中、正確に測定及び/又は制御すると共に調整することができる。明細書における参照は、全般的に「空気」になされるが、任意の適切な酸化剤(例えば酸素(O2))を燃料と混合し、及び/又はシリンダに噴射してよいことを理解されたい。
【0021】
さらに、一部の実施形態では、内燃機関内の可動部材を(従来の燃焼機関と比較して)少なくすることにより、作動中の機械的損失(例えばさまざまな構成要素の摩擦の結果生じる損失)が低減され、内燃機関の重量が低減され、及び/又は別の形でその効率性が改良され得る。追加的又は代替的には、少なくとも1つの実施形態では、内燃機関は、製作し及び/又は作動中に保全を行うことがより簡単又はより安価になり得る。
【0022】
一実施形態では、内燃機関は、1つ以上の燃料噴射装置を含み、これによって燃料を燃焼室に(例えばシリンダに)直接噴射する。さらに、一部の実施形態では、内燃機関は、空気を燃焼室に(例えば内燃機関のシリンダに)直接噴射することができる1つ以上の空気噴射装置を含む。例えば、従来の機関とは対照的に、本明細書に説明する内燃機関は、燃焼室内への空気の流れを開く及び/又は閉じるための吸気弁を有さなくてよい。
【0023】
1つ以上の実施形態によれば、空気噴射装置を燃焼室の状態から独立して(例えばピストンの位置及び/又はクランク軸の回転から独立して)作動させることができる。例えば、燃焼サイクルのいくつかの部分中、内燃機関は、燃料及び/又は空気を燃焼室内で(例えばピストンの上り行程中に)圧縮することができる。換言すれば、空気、燃料、燃料-空気混合気を、燃焼サイクル中いつでも(例えばピストンがシリンダ内の任意の適切な位置に配置されたときに)燃焼室に噴射することができる。
【0024】
一実施形態では、内燃機関は、燃焼された気体を燃焼室から排気するための1つ以上の排気ポートを含む。一部の作動状態下では、排気ポートは、出力軸の回転から独立して(例えば、クランク軸の回転及び/又はシリンダ内のピストン場所の往復運動から独立して)作動することができる。例えば、シリンダの1つ、一部、又は各々は、専用の排気ポートを含むことができ、排気弁(例えば電気機械弁)は、対応するシリンダから排気ポートを通る排出気体の流れを制御することができる。
【0025】
少なくとも1つの例では、内燃機関のシリンダの1つ、一部、又は各々は、燃料噴射ポートと、空気噴射ポートと、排気ポートとを含み、その各々は、それぞれのシリンダと流体連通する。より詳細には、燃料を、燃料噴射ポートを通してシリンダに噴射することができ、空気を、空気噴射ポートを通してシリンダに噴射することができ、排出気体は、排気ポートを通ってシリンダを退出することができる。上記で述べたように、対応するポートにおける燃料噴射、空気噴射、及び気体排出を制御する弁は、互いに独立して作動することができる。さらに、燃焼室に噴射された空気及び/又は燃料の量を、その噴射の前に決定及び/又は事前設定することができる。
【0026】
例えば、空気噴射ポートにおける1つ以上の弁又は噴射装置は、選択された(例えば算出された)及び/又は所定量の空気をシリンダに噴射するために、選択された(例えば、算出された)及び/又は所定の時間の間開くことができる(例えば、弁を電気的又は電磁的に作動させる、油圧作動させるなど)。一部の実施形態では、内燃機関のシリンダの1つ、一部、又はすべては、複数の燃料噴射ポート、複数の空気噴射ポート、複数の排気ポート、又はその組み合わせを有することができる。
【0027】
一部の実施形態において上記で述べたように、内燃機関は、燃焼サイクル中、対応するシリンダ内で往復する往復ピストンを含む。通常、シリンダ内のピストンの往復移動は、クランク軸の回転を生み出すことができる。故に、クランク軸の1分あたりの回転数(RPM)は、機関のシリンダの1つ、一部、又はすべてにおけるピストン又はサイクルの往復数に比例することができる。従来の機関では、ばね懸架された弁の開放及び/又は閉鎖は、シリンダ内のピストンサイクルの頻度を限定し得る(例えば、弁開放の頻度が増大するとき、弁を閉じるばねは、適切な時間後に弁を閉じることができなくなる、及び/又は弁が離座するようになり得る)。これは、さらに、従来の機関のRPMの作動範囲も限定し得る。しかし、これとは対照的に、本明細書に説明する内燃機関は、RPMの任意の適切な範囲において作動し得ることを理解されたい。例えば、内燃機関内のシリンダへの空気の直接噴射(並びに弁及びばねの不在)は、従来の機関と比較して(例えば類似する数のシリンダ及び/又は変位と比較して)より高いRPMでの機関の作動を容易にすることができる。
【0028】
図1は、一実施形態による内燃機関10の前面等角図である。例示する実施形態では、機関10は、機関10の燃焼室を少なくとも部分的に画定する、直線に配置された6列のシリンダを有するブロック12を含む。しかし、機関は、上記で論じたように、任意の数のシリンダ及び任意の数の適切なシリンダ配置(例えばV字、回転式、ボクサー型など)を有し得ることを理解されたい。
【0029】
上記で説明したように、機関10は、通常、燃焼室と、その中で燃料を燃焼させるための機構と、燃焼中生み出されたエネルギーを機械的エネルギー(例えば出力軸の回転)に変換するための機構とを含む。例えば、機関10の燃焼室は、シリンダ及び対応するピストンによって画定されるが、機関が任意の数の適切に構成された燃焼室を有し得ることも理解されたい。一部の実施形態では、機関は、単一のシリンダから駆動される及び/又はその中で作動する複数の(例えば、2本、3本などの)ピストンを有することができ、それによって、共同して燃焼室を画定することができる。さらに、上記で指摘したように、1つ以上の実施形態では、機関は、非往復及び/又はピストン無しの機関とすることができ、燃焼中生み出された圧力を回転動作に直接変換することができる(例えば、ウェーブディスク(wave disc)機関、ヴァンケル機関など)。
【0030】
上記で述べたように、機関は出力軸を含むことができる。機関10は、ブロック12内に回転可能に位置付けられ得る及び/又は固定され得るクランク軸13を含む。さらに、以下により詳細に説明するように、一部の実施形態では、ピストンは、対応するシリンダ内で往復してクランク軸13の回転を生み出す。一部の例では、ピストンは、クランク軸13に回転可能に連結され、その往復運動は、クランク軸13の対応する回転を生み出す。通常、クランク軸13は、任意の数の適切なデバイス又はシステムに連結されてよく、これに回転動力をもたらすことができる。
【0031】
一実施形態では、シリンダ内のピストンの往復移動は、シリンダ内の燃料及び酸化剤(例えば空気)の燃焼から生成される。例えば、シリンダは、燃焼中、少なくとも部分的に封止され、燃焼から生み出された圧力は、対応するピストン上に力を及ぼし、それによって(上記で説明したように)その線形及び往復移動を生み出す。例えば、機関10は、ブロック12に連結された、又はこれと一体化されたシリンダヘッド14を含み、シリンダヘッド14及びブロック12は、共同して、シリンダ内の燃料及び空気の燃焼中、実質的に気密性の環境を形成し得るようにしてシリンダを封止又は閉じる。
【0032】
一部の例では、ブロック12とシリンダヘッド14の間の封止を容易にするために、ヘッドガスケットをその間に位置付けることができる。しかし、機関は任意の数の適切な構成を有することができ、場合によってはでは、ヘッドガスケットを必要としなくてよいことを理解されたい。例えば、ブロック12及びシリンダヘッド14を一体的に形成することができる。
【0033】
上記で説明したように、空気、燃料、燃料-空気混合気、又はそれらの組み合わせをシリンダの1つ以上に直接噴射することができる。例えば、機関10は、対応するシリンダと動作可能に連結された燃料管24を含み、それにより、燃料を、燃料管を通してシリンダに直接噴射することができる。シリンダの1つ、一部、又はすべてが、これに動作可能に連結された、任意の適切な数の燃料管を含み得ることを理解されたい。
【0034】
一実施形態では、機関10は、燃料センサ28(例えばオクタンセンサ)を含む。少なくとも1つの例では、燃料センサ28は燃料管24に動作可能に連結されて、その中の燃料のタイプを検出する。したがって、例えば、機関は、任意の適切な燃料、(例えばセンサ28によって検出及び/又は特定され得る任意の燃料)を受け入れることができる。例えば、燃料センサ28は、ガソリン(ペトロール)、エタノール、ディーゼル、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)、水素などの中で差別化することができる。燃料管24の1つ、一部、又はすべては、別個の燃料センサ28を含み得ることを理解されたい。一実施形態では、燃料センサ28は、ガソリン及び/又は類似のタイプの燃料中のエタノールの量を検出するように構成され得る。
【0035】
一部の実施形態では、以下により詳細に説明するように、機関10は、燃料管24から対応するシリンダへの燃料の流れ又は噴射を調節するための制御機構を含む。例えば、機関は、燃料管24とシリンダの間に配置され得る弁、燃料噴射装置などを含むことができる(例えば、燃料管24は、そのようなシリンダ内への燃料の供給及び/又は噴射を調節し得る、対応する燃料噴射装置に連結することができる)。
【0036】
一部の実施形態では、機関10は、対応するシリンダに動作可能に連結された空気管26を含む。シリンダの1つ、一部、又はすべてがこれに動作可能に連結された1つ以上の空気管を含み得ることを理解されたい。空気管26は、1つ以上の酸化剤を機関10のシリンダ内に供給することができる。以下に説明するように、機関は、空気管26からシリンダ内への酸化剤の流れ又は供給を制御するための1つ以上の機構を含むことができる(例えば、弁、空気噴射装置など)。通常、空気などの任意の数の適切な酸化剤をシリンダに直接噴射することができる。例えば、燃料噴射装置と同様に、弁又は空気噴射装置は、空気管26とシリンダの間に位置付けられてよく、シリンダ内への空気の供給又は噴射を調節することができる(例えば、空気管26を、空気管26からシリンダ内への空気の流れを調節し得る、対応する空気噴射装置に動作可能に連結することができる)。
【0037】
一実施形態では、空気管26は、空気吸気マニホールド16に連結し、そこから空気を受け入れることができる。空気管の1つ、一部、又はすべてが空気吸気マニホールド16に連結されてよく、そこから空気を受け入れ得ることを理解されたい。代替的に、空気管の1つ以上を、任意の数の適切な酸化剤供給源に連結することができる(例えば、圧縮機、リザーバタンク又はアキュムレータなどに直接連結することができる)。いずれの場合も、空気管26は、空気を機関10のシリンダ内に供給することができる。
【0038】
以下により詳細に説明するように、吸気マニホールド16は、これに連結されたさまざまな空気管26に空気を分配することができる(例えば、吸気マニホールド16内の空気は圧縮され得る)。換言すれば、少なくとも1つの実施形態では、空気管26を圧縮空気供給源に連結することができる。しかし、空気管26への圧縮空気の特定の供給が実施形態ごとにさまざまになり得る(例えば、圧縮空気の供給源が圧縮空気タンクを含み得る)ことを理解されたい。
【0039】
通常、吸気マニホールド16は、空気を含み、これを空気管26に分配するように構成された筐体を形成する。一部の実施形態では、吸気マニホールド16は、端部が閉じられた、全体的に管状の円筒形状を有する。しかし、吸気マニホールドが任意の数の適切な形状及び/又はサイズ(例えば矩形の断面形状など)を有し得ることを理解されたい。いずれの場合も、空気を吸気マニホールド16内に供給し、それによってこれに連結された空気管26にさらに分配することができる。
【0040】
一部の実施形態では、圧縮機18は、吸気マニホールド16に動作可能に連結されてこれに空気(例えば圧縮空気)を供給し、この空気は、空気管26を通ってシリンダ内にさらに分配され得る。通常、圧縮機18は、機関10の作動から独立して作動し得る任意の適切な圧縮機であってよい(例えば、圧縮機18は、電力供給されてよい)。追加的又は代替的には、圧縮機18を、クランク軸13の回転によって、又はその回転から少なくとも部分的に駆動又は作動させることができる。いずれの場合も、圧縮機18は、空気を圧縮し、この圧縮空気を吸気マニホールド16に供給することができる。
【0041】
一部の実施形態では、機関は、空気管26、吸気マニホールド16、(以下により詳細に説明する)空気噴射装置又は前述の組み合わせに供給され得る空気を圧縮するように構成された及び/又はそれ専用の1つ以上のシリンダを含むことができる。例えば、機関は、外側環境と流体連通し、空気管26、吸気マニホールド16、(以下により詳細に説明する)空気噴射装置又は前述の組み合わせと流体連通する、1つ以上のシリンダを含むことができる。対応する1つ以上のピストンは、シリンダ内で移動又は往復して空気を吸気しその中で圧縮することができる。例えば、シリンダの内部空間を、適切な圧力に到達するまで実質的に封止することができ、その後、1つ以上の弁を開いて圧縮空気を空気管26、吸気マニホールド16、(以下により詳細に説明する)空気噴射装置、又は前述の組み合わせ内に及び/又はこれらに向かって流すことを可能にし得る。一実施形態では、ピストンを、機関の動力ピストン(例えば、以下に説明するようにクランク軸を回転させるピストン)と同じようにしてクランク軸に連結することができる。換言すれば、一部の実施形態では、圧縮機を機関と一体化することができる。
【0042】
1つ以上の例では、機関は、シリンダ内に供給される空気の品質を改良し得る1つ以上のフィルタを含むことができる。例えば、HEPAフィルタ、水分離フィルタなどを圧縮機18と機関のシリンダとの間(例えば、圧縮機18と吸気マニホールド16の間)に置くことができる。そのようなフィルタは、機関のマニホールド16及び/又はシリンダに入る空気から粒子及び/又は液体を取り除くことができる。
【0043】
少なくとも1つの実施形態による機関は、空気をシリンダに噴射する前にその温度を決定又は測定し得る温度センサを含むことができる。例えば、機関10は、吸気マニホールド16内の空気の温度を感知し得る温度センサ17を含む。例示する実施形態では、機関10は、圧力センサ19(例えばマニホールド絶対圧力センサ(MAP))を含む。例えば、制御装置5は、圧力センサ19及び/又は温度センサ17からの読み取り値に少なくとも部分的に基づいて、選択された(例えば算出された)及び/又は所定量の空気をシリンダに噴射するようにして(以下に説明する)空気噴射装置を作動させることができる。しかし、1つ以上のセンサ機能を単一のセンサ内に含むことができ、及び/又は1つ以上のセンサを単一の筐体内に含むことができることを理解されたい。さらに、一部の実施形態では、機関は、(例えば、手動で及び/又は電気機械的に作動されるように)、1つ以上の異なるセンサを含むことができ、又はセンサを全く含まなくてよい。
【0044】
通常、上記で述べたように、機関の燃焼室内の燃料の燃焼後、生み出された気体は、(例えば、追加の燃料及び空気が燃焼室に入ることを可能にするために)燃焼室から放出される。例えば、シリンダ内のピストン移動は、排出気体をシリンダから、1つ以上の連結部を通って排気マニホールド20に放出することができる。故に、例えば、機関10は、排気連結を含む。より詳細には、一実施形態では、機関10は、シリンダに動作可能に連結された排気マニホールド20を含み、それにより、シリンダからの排出気体は排気マニホールド20に入ることができる。
【0045】
以下により詳細に説明するように、1つ以上の実施形態による機関は、1つ以上の排気弁を含むことができ、この排気弁は、シリンダから排気マニホールド内への排出気体の流れを制御することができる。さらに、通常、排気マニホールドは、吸気マニホールドに類似し得る。例えば、排気マニホールド20は、気体シリンダに類似し得る管状形状及び密封された(capped)端部を有する。しかし、排気マニホールドが任意の適切な形状及び/又はサイズを有し得ることを理解されたい。
【0046】
図2~3は、一実施形態による機関10の側面図及び後面等角図をそれぞれ示す。例示する実施形態では、排気管50は、排気マニホールド20を機関10のシリンダに連結する。しかし、一部の例では、排出気体が、任意の数の適切な方法で(例えば排気管及び/又は排気マニホールドに入ることなく)シリンダの1つ、一部、又はすべてを退出し得ることを理解されたい。1つ以上の実施形態では、機関は、本明細書に説明する排気部に加えて及び/又はその代わりに任意の数の適切な排気システムを有することができる。
【0047】
例示する実施形態では、機関10は、シリンダからの排出気体の流出を制御するために、対応する排気管50に動作可能に連結された排気弁52を含む。例えば、排気弁52は、対応する排気管50上に位置付けられてよく、そこを通る気体の流れを可能にし、制限することができる。追加的又は代替的には、排気弁の1つ、一部、又はすべてを排気管50とシリンダの間に位置付けることができる(例えば、排気弁をシリンダの内側、シリンダのすぐ外側、又は別の形で排気管50とシリンダ及び/又はシリンダヘッド14との間に位置付けることができる)。
【0048】
通常、排出気体の流出を制御するために、排気弁52を全開位置(例えば、排気管50からの最も制限が小さく、又は制限されない流出)と、全閉位置(例えば、排気管50からのかなり又は完全に制限された流出)との間で作動させることができる。さらに、排気弁52を、全開位置と全閉位置の間の任意の数の部分的に制限された位置においてシリンダからの流出を制限するように作動させることができる。いずれの場合も、シリンダの1つ、一部、又は各々から排気マニホールド20内への排出気体の流れを、電気的又は電気機械的に、油圧、空気などで作動することができる、対応する排気弁52によって制御して、排出気体がシリンダの外に流れる(例えば排気マニホールド20に入る)ことを可能にすることができる。一例では、排気弁52を制御装置5から作動させることができる。故に、排気弁52の開放及び/又は閉鎖のタイミングは、電子制御されてよく、任意の数の適切なパラメータ又は入力に基づくことができる。
【0049】
排気弁52が閉じられたとき、対応するシリンダを実質的に封止することができ、それにより、燃料の燃焼がその中で圧力を生み出すことができ、ピストン上に力を及ぼしこれらを移動させることができ、それによってクランク軸を回転させ、機関10の機械的出力を生成する。排気弁52は、選択的に開かれて、排出気体が燃焼中及び/又は燃焼後にシリンダを退出することを可能にすることができる。さらに、一部の実施形態では、負圧又は部分真空を排気マニホールド50内に作り出して、シリンダからの排出気体の除去を助けることができる。いずれの場合も、排気弁52を作動させて、燃焼中、対応するシリンダの1つ、一部、又はすべてにおいて封止環境を生み出し、排出気体が、燃焼中及び/又は燃焼後にシリンダを退出することを可能にすることができる(例えば、制御装置5が排気弁52を作動させることができる)。
【0050】
1つ以上の実施形態による機関は、1つ以上のセンサ(例えば酸素センサ)を含み、これによって排出気体中の酸素の存在及び/又は量を検出することができる。例えば、機関10は、排気管50に取り付けられた排気又は酸素センサ54を含み、それにより、センサ54は排気管50を通過して排気マニホールド20に入る排出気体中の酸素の量を検出及び/又は測定することができる。通常、機関は、任意の数の適切なセンサを含むことができ、このセンサは、(例えば、排出気体がシリンダから排気マニホールド内に進むときの)排出気体の組成、排出気体の温度などを検出及び/又は測定し得ることを理解されたい。一例では、機関10は、排出気体の組成を検出及び/又は測定することができる、1つ以上のいわゆる5気体センサ(例えば、二酸化炭素(CO2)、一酸化炭素(Co)、窒素酸化物(NOx)などを検出又は特定するように構成されたセンサ)を含むことができる。
【0051】
例示する実施形態では、燃料管24は、分配レール22に連結する。例えば、分配レール22は、燃料供給リザーバ(例えば燃料タンク)に動作可能に又は流体的に連結される。したがって、燃料を燃料供給リザーバから分配レール22に、その後燃料管24内へと分配(例えば圧送)することができる。上記で説明したように、燃料管24から、燃料は、機関10のシリンダに直接噴射され得る(例えば、燃料管24内の燃料を加圧することができ、燃料噴射装置30はシリンダへの燃料の噴射を制御することができる)。
【0052】
上記で説明したように、例示する実施形態では、機関10は空気管26を含み、空気管26は、機関10のシリンダに適切な量の空気を噴射するようにサイズ設定され構成され得る。さらに、空気管を吸気マニホールドに連結することができる(例えば、機関10の空気管26は吸気マニホールド16に連結される)。一実施形態では、吸気マニホールド16を、排気マニホールド20の反対に位置付けることができる。吸気マニホールド及び排気マニホールドを、機関に対して及び互いに対して任意の場所及び/又は配向に位置付け得ることを理解されたい。
【0053】
通常、1つ以上の実施形態による機関は、シリンダの1つ、一部、又はすべてにおける燃料の不適切な燃焼及び/又は異常燃焼を特定又は感知するための1つ以上のセンサを含むことができる。例示する実施形態では、
図2及び3に示すように、機関10は、そのシリンダに関連するノックセンサ56を含み、これによって対応するシリンダ内の燃料の異常燃焼を検出する。例えば、制御装置5は、ノックセンサ56から受け取られた信号に少なくとも部分的に基づいて、噴射された燃料の量、燃料噴射のタイミング、噴射された空気の量、空気噴射のタイミング、シリンダ内のスパークのタイミング、又はその組み合わせを調整することができる。さらに、本明細書に説明するセンサの1つ、一部、又はすべてを制御装置5に結合し、及び/又はこれによって作動させることができることを理解されたい。さらに、以下により詳細に説明するように、制御装置5は、センサから受け取られた信号又は情報に少なくとも部分的に基づいて、燃料圧力、燃料噴射装置、空気圧、排気圧、空気噴射装置、スパークプラグなどを制御することができる。
【0054】
図4は、機関10の部分的長手方向断面図(すなわち、機関10の長さに沿って複数のシリンダを通過する断面)であり、
図5は、一実施形態による機関10の横断方向断面図(すなわち単一のシリンダを通過し、機関10の幅に沿ったもの)である。
図4~5に示し、上記で説明したように、機関10は、シリンダ15と、対応するピストン21とを含み、ピストン21は、シリンダ15内で往復し、それによってクランク軸を回転させ、機関10の機械的動力出力を生成することができる。
【0055】
上記で述べたように、往復機関の燃焼室は、シリンダ及び対応するピストンによって形成され得る。例えば、機関10は、シリンダ15及び対応するピストン21によって形成又は画定された燃焼室23を含む。燃焼室の実際の容積は、燃料の点火及び/又は燃焼中(例えば、下死点と上死点の間で往復されるピストンがシリンダ内に位置するとき)その中のピストンの位置に応じて変化し得ることを理解されたい。さらに、以下により詳細に論じるように、燃焼室内の燃焼容積は、シリンダ内に噴射された空気の量によって決まり得る。換言すれば、燃焼容積は、気体が大気圧であるときの燃焼室内の気体(例えば空気)の容積となり得る。
【0056】
通常、燃料は、シリンダ15に直接噴射され得る。例えば、燃料を、機関の対応するシリンダに開口し得る、対応する燃料ポートを通してシリンダ内に直接噴射することができる。例示する実施形態では、機関10は、(例えばシリンダヘッド14から)シリンダに直接開口する燃料ポート36を含む。より詳細には、燃料管24は、燃料噴射ポート38内に配置された及び/又は固定された、対応する燃料噴射装置30に連結する。一実施形態では、燃料噴射装置30を、燃料管24から対応するシリンダ15内への燃料の流れ又は噴射を可能にする又は制限するように作動させることができる。また、機関が、燃料をシリンダに噴射するための任意の数の適切な機構を含み得ることも理解されたい。
【0057】
燃料をシリンダに直接噴射することに加えて、又はその代わりに、場合によっては、空気を機関のシリンダに直接噴射することができる。例示する実施形態では、機関10は、対応するシリンダ15に(例えばシリンダヘッド14から)開口する空気噴射ポート40を含む。例えば空気管26は、1つ以上の対応する空気噴射装置34に連結され、空気噴射装置34は、空気を空気噴射ポート40から対応するシリンダ15に直接噴射することができる。場合によっては、空気噴射装置34は、対応する空気噴射ポート40内に位置付けられ及び/又は固定され、このポートに空気を空気管26から噴射するように構成され得る。上記で述べたように、制御装置は、空気噴射装置34の作動(例えば、噴射のタイミング、噴射の持続時間及び/又は量など)を制御することができる。
【0058】
通常、空気及び/又は燃料は、任意の数の適切な角度及び/又は場所においてシリンダに噴射され得る。例えば、空気の少なくとも一部を、シリンダ内側で燃料と空気の混合を容易にし得る渦巻き効果を形成するように噴射することができる。一実施形態では、空気及び/又は燃料をシリンダヘッド内のある場所又はポートから噴射することができる(例えば、空気を、ピストン21の移動に対して全体的に平行な方向に沿って噴射することができ、ピストンは、シリンダ内側に渦巻き効果を生み出すようにして空気を方向付け得る1つ以上のポケット又はくぼみを含むことができる)。代替的又は追加的には、空気及び/又は燃料の少なくとも一部を、ピストン21の移動に対して全体的に垂直の方向に沿って噴射することができる。例えば、空気を、燃料噴射の場所に実質的に対向する場所において噴射することができる。さらに、空気噴射装置34及び/又は燃料噴射装置30が、これに対応して複数の角度及び/又は噴射角度もしくはファンにおいて空気及び燃料を噴射し、それによってシリンダ内側の空気及び燃料の混合を容易にし得ることを理解されたい。
【0059】
空気噴射装置34は、対応するシリンダへの空気噴射を調節及び/又は制御することができる任意の適切な弁及び/又は測定機構(gazing mechanism)を含むことができる。一部の実施形態では、空気噴射装置34は、燃料噴射装置(例えばGDI噴射装置)に類似する又は同じとすることができる。例えば、燃料噴射装置は、(例えば、制御装置5によって)電気又は電子制御することができ、燃料供給部に(例えば、分配レール22などの分配要素を介して)動作可能に連結することができる、市販のGDI又は(例えばBoschによって製造される)FSI燃料噴射装置などのFSI燃料噴射装置、ディーゼル直噴装置などに類似する又は同じとすることができる。
【0060】
いずれの場合も、空気噴射装置34は、所定の及び/又は制御された量の空気が空気管26から機関10の対応するシリンダ15に入ること可能にするように制御されるように構成され得る。さらに、シリンダへの空気の噴射は、通常、遮られないものになり得る。例えば、上記で指摘したように、噴射ポート40は、シリンダ内に直接開口し、シリンダ15に入る空気の流れを干渉し又は妨げ得るいかなる妨害物も有さない。代替的には、一部の実施形態では、機関は、空気をシリンダ15内で案内及び/分配することができる1つ以上の妨害物又は転換機構(例えば邪魔板)を含むことができる。
【0061】
一部の実施形態では、制御装置は、対応するシリンダ15に噴射された空気の量(例えば、選択された圧力における空気の容積又は空気の質量)を調節又は制御することができ、所定の燃焼容積を生成することができる。故に、一部の作動状態下では、制御装置は、シリンダの容積(例えば、ピストン21が下死点にあるときのシリンダの容積)と同じ容積を有し得る空気の量を噴射するように空気噴射装置34を作動させることができる。場合によっては、制御装置5は、シリンダ15の容積より多い容積を(例えば大気圧において)有し得る空気の量を噴射するように空気噴射装置34を作動させることができる(例えば、それによってシリンダ15の作動容積を増大させる)。
【0062】
さらに、一部の例では、制御装置5は、シリンダ15の容積より少なくなり得る空気の量を噴射するように空気噴射装置34を作動させることができる(例えば、それによってシリンダ15の作動容積を減少させ、及び/又はシリンダ15内で大気圧を下回る圧力を生み出す)。シリンダ15内の圧力を大気圧以下に低減する(例えば、作動サイクルの一部の部分において部分真空でシリンダ15を作動させる)ことにより、シリンダ15に噴射され得る燃料の蒸発が改善され又は助けられ、それによって燃焼を改良できることも理解されたい。
【0063】
一部の実施形態では、
図4~5に示すように、燃料噴射ポート及び/又は空気噴射ポート38、40及び/又は対応する燃料噴射装置及び空気噴射装置30、34は、ピストン21の移動にほぼ平行に配向される。追加的又は代替的には、燃料噴射ポート及び/又は空気噴射ポート、及び/又は対応する燃料噴射装置及び空気噴射装置は、ピストン21の移動に対して非平行の配向を有することができる。さらに、一部の例では、燃料噴射ポート及び/又は空気噴射ポート、及び/又は対応する燃料噴射装置及び空気噴射装置をシリンダの1つ以上の側壁内に配置することができる。
【0064】
1つ以上の実施形態では、機関のシリンダの1つ、一部、又は各々は、複数の燃料噴射ポート及び/又は空気噴射ポートを有することができる。いずれの場合も、燃料噴射ポート及び/又は空気噴射ポートは、シリンダの中心軸に対して、又はシリンダ内のピストンの移動に対して任意の適切な配向を有することができる。したがって、燃料及び/又は空気を、シリンダ内にそれらの適切な分配を生み出す(例えば分配を最適化する)ことができるようにしてシリンダに噴射することができる。一部の例では、燃料噴射装置及び/又は空気噴射装置は、シリンダ内の燃料及び空気の適切な分配及び/又は混合を生み出すように順次又は非同期に作動され得る。
【0065】
上記で述べたように、空気及び/又は燃料を、通常、遮られることなく(例えば、弁又は機関10の他の要素もしくは構成要素によって実質的に遮られない、対応する燃料噴射ポート及び空気噴射ポート38、40を通って)シリンダに噴射することができる。故に、シリンダ内に噴射された空気及び/又は燃料の量を、正確に又は(弁を含む従来の機関と比較して)より良好に制御することができる。追加的又は代替的には、燃料及び/又は空気の噴射速度は、シリンダ内のそれらの適切な混合を生み出すように制御され得る。例えば、燃料及び/又は空気を、噴射の任意の数の適切な順序又は段階で、及び/又は任意の数の(シリンダに対して及び/又は互いに)適切な角度でシリンダに噴射することができる。
【0066】
さらに、一部の実施形態では、燃料及び空気を、別個又は個々の噴射ポートを通ってシリンダに噴射することができ、シリンダ内で混合することができるが、本開示はそのように限定されない。例えば、空気及び燃料は、同じポートからシリンダの1つ、一部、又はすべてに入ることができる(例えば、各々のシリンダは、空気及び燃料の両方を噴射するための単一のポートを含むことができる)。一実施形態では、空気及び燃料を、シリンダ内に入る前に少なくとも部分的に事前混合することができる(例えば、空気及び燃料を、噴射ポートの近くで少なくとも部分的に事前混合することができる)。
【0067】
一実施形態では、機関10は、1つ以上のスパークプラグ46を含み、これによって対応するシリンダ15内で燃料-空気混合気に点火する。例えば、ねじ切りされた開口部は、シリンダ15に(例えばシリンダヘッド14から)開口することができ、対応するスパークプラグ46をシリンダ15に対して固定することができる。いずれの場合も、場合によっては、スパークプラグ46を、対応するシリンダ15内で燃料-空気混合気に点火するように作動させることができる(例えば、制御装置は、選択された、所定の及び/又は調整可能なタイミングに基づいて、スパークプラグを制御し及び/又は動力を供給することができる)。
【0068】
1つ以上の実施形態では、機関10のシリンダ15の1つ、一部、又はすべては、スパークプラグ46無しで、及び/又はスパークプラグ46の1つ、一部、又はすべてを作動させることなく作動することができる。例えば、ディーゼルを、機関のシリンダ15の1つ、一部、又はすべてに噴射することができ、スパーク点火無しに点火し燃焼させることができる。さらに、一実施形態では、シリンダ15の1つ又は一部は、対応するスパークプラグ46からのスパークによって点火され得るガソリンを受け入れることができ、一方でシリンダ15の1つ又は一部は、(例えば、対応するスパークプラグ46を作動させることなく)圧縮中に燃焼され得るディーゼルを受け入れることができる。
【0069】
一部の例では、スパークプラグ46をシリンダヘッド14内で少なくとも部分的にくぼませることができる。例えば、シリンダヘッド14は、くぼみ42を含むことができ、くぼみ42は、対応するねじ切りされた開口部に連結されてよく、又はそこから延びることができる。上記で述べたように、スパークプラグ46を、スパークプラグのスパーク生成部分が対応するシリンダ15内に延びるように、ねじ切りされた開口部にねじ込むことができる。
【0070】
上記で説明したように、シリンダ15からの排出気体は、排気マニホールド20内に退出する。例示する実施形態では、機関10は、1つ、一部、又は各々のシリンダ15と流体連通する排気ポート48を含む。一部の例では、排気ポート48は、マニホールド20に連結され得る、対応する排気管50と流体連通する。故に、燃料の燃焼中に生み出された排出気体は、排気ポート48を通ってシリンダ15を退出し、排気管50に入り、さらに排気マニホールド20に入ることができる。いずれの場合も、排出気体は、対応する排気ポート48を通ってシリンダ15を退出することができる。
【0071】
場合によっては、機関10は、排気弁52を含むことができ、排気弁52は、排気ポート48における及び/又はこれを通る流れを選択的に開き及び/又は閉じることができる(例えば、排気弁52の1つ、一部、又はすべては、制御装置によって電気又は電子制御され得る)。より詳細には、一部の実施形態では、排気弁52を閉じることにより、(例えば燃料の燃焼中)対応するシリンダ15内に少なくとも部分的に封止された又は密封性の環境がもたらされる。これとは反対に、排気弁52を開くことにより、対応するシリンダ15内の排出気体がそこから退出する及び/又は引き出されることが可能になる。
【0072】
機関及び/又はその構成要素又は要素の作動もまた、概略的に表され得る。例えば、機関は、
図6に示すブロック図で概略的に表される、燃料システム90aを含むことができ、又はこれに連結され得る。上記で述べたように、機関は、任意の数のシリンダを含むことができ、この数は実施形態に応じてさまざまになり得る。説明を容易にするために、
図6のブロック図は、4つのシリンダ機関に含まれる、又はこれに連結される燃料システム90aを例示する。
【0073】
一実施形態では、燃料システム90a内の燃料は、ポンプ60aによって燃料タンク58aから圧送される。一部の実施形態では、燃料を、任意の数の適切なデバイス又は構成によって燃料タンクから進めることができる(例えば、燃料を燃料タンクから重力により送ることができる)ことを理解されたい。追加的又は代替的には、例示する実施形態では、燃料システム90aは、(例えば燃料と流体連通する)圧力センサ62aを含み、これによって(例えば、燃料が燃料ポンプ60aを退出した直後に)燃料管内の燃料の圧力を測定する。
【0074】
一実施形態では、燃料ポンプ60aは、分配レール22aと流体連通しており、燃料を分配レール22a内に圧送することができる。上記で説明したように、分配レール22aは、燃料管24aに入る燃料に連結され、燃料をその燃料管に分配することができる。燃料管24aは、燃料を対応するシリンダ機関に向かって及び/又はその中に分配することができる。一実施形態では、燃料システム90aは、燃料圧力調節装置64aを含み、燃料圧力調節装置64aは、燃料管24a及び/又は分配レール22a内の圧力を調節することができる。例えば、燃料圧力調節装置64aは、燃料レール22a及び/又は燃料管24a内にほぼ一定の圧力を維持することを容易にすることができる。
【0075】
場合によっては、燃料圧力調節装置64aは、管内及び/又は分配レール22a内の燃料圧力を解放又は低減して、その中に適切な及び/又は選択された及び/又は所定の圧力を生み出すことができる。例えば、燃料圧力調節装置64aは、一部の燃料が分配レール22aを退出することを可能にすることによって分配レール22a内の圧力を低減することができる。一部の実施形態では、分配レール22aを退出する燃料は、(例えば戻りライン66aに沿って)燃料タンク58aに戻るように流れることができ、又は圧送され得る。
【0076】
少なくとも1つの実施形態では、燃料システム90aは、機関のシリンダに至る燃料管24aに対応する1つ以上の燃料センサ28aを含む。例えば、燃料センサ28aは、燃料管24a内の燃料タイプを検出することができる。また、上記で説明したように、燃料を、燃料噴射装置30aによって又はこれを通してシリンダに噴射することができる。例えば、制御装置は、選択された及び/又は所定量の燃料が機関のそれぞれのシリンダに入るように燃料噴射装置30aが開いたままである時間の長さを決定することができる。制御装置はまた、燃料噴射装置30aの任意のものを常時及び(例えば各々のシリンダに合わせた燃料のカスタマイズされた噴射を生み出すために)任意の時間の間作動させることができることも理解されたい。さらに、制御装置は、燃料センサ28aの1つ、一部、又はすべてからの信号又は読み取り値に少なくとも部分的に基づいて、燃料噴射装置30aを作動させることができる。
【0077】
一部の実施形態では、燃料圧力調節装置を、分配レール22の後に(例えば燃料の流れの下流側に)順次配置することができるが、本開示はそのように限定されない。
図7は、1つ以上の実施形態による燃料システム90bの概略ブロック図である。
図7に示すように、少なくとも1つの例では、燃料圧力調節装置64bは、分配レール22bと圧縮気体タンク58bの間に配置される(例えば、圧縮気体燃料が圧縮気体タンク58b内に配置され得る)。一実施形態では、圧縮気体タンク58b内の燃料を、(液相である場合)燃料ポンプによって、又は(気体相である場合)圧縮機によって加圧することができ、圧縮気体タンク58b内でほぼ一定の、及び/又は選択された及び/又は所定の圧力に維持することができる。さらに、一部の実施形態では、燃料システム90bは、(例えば分配レール内、燃料管内などの)燃料をほぼ一定の圧力に維持するための1つ以上の機構を含むことができる。
【0078】
燃料圧力調節装置64bは、圧縮気体タンク58bから分配レール22bに入る燃料流れを生み出し、又は生成するように、制御装置によって(例えば、圧力センサ62bからの信号又は情報に少なくとも部分的に基づいて制御装置によって調節されるように)作動され得る。例えば、燃料圧力調節装置64bは、分配レール22b内及び/又は燃料管24b内の燃料がほぼ一定の圧力であるようにして作動され得る。
【0079】
上記で説明したように、機関は、空気噴射システムを含むことができ、又はこれに連結することができる。
図8は、一実施形態による空気噴射システム95の概略ブロック図を例示する。例示する実施形態では、空気噴射システム95は、圧縮機18cを含み、圧縮機18cは、(例えば大気圧の)空気を引き入れ、(例えば大気圧より大きい圧力の)加圧された空気を出力することができる。一部の実施形態では、空気噴射システム95は、空気圧縮機18cの出力空気圧を検出することができる第1の空気圧センサ68を含む。故に、制御装置は、空気圧センサからの読み取り値又は信号に少なくとも部分的に基づいて、圧縮機18cの作動を調節することができる。
【0080】
一部の例では、空気噴射システム95は、空気圧縮機18cと吸気マニホールド16cの間の圧力を調節することができる空気圧調節装置70を含む。例えば、空気圧調節装置70を、選択された及び/又は所定の圧力に設定することができ、又は機関10cの作動中(例えば制御装置によって)動的に及び/又は自動的に調整することができる。少なくとも1つの実施形態では、空気噴射システム95は、吸気マニホールド16内の空気圧を確認し得る第2の空気圧センサ72を含む。例えば、制御装置は、第2の空気圧センサ72からの読み取り値又は情報に少なくとも部分的に基づいて、空気圧調節装置70を調整し、それによって選択された、所定の及び/又は適切な圧力を吸気マニホールド16c内、及び空気を機関10の対応するシリンダに供給する空気管26c内に生み出すことができる。一実施形態では、吸気マニホールド16c内及び/又は空気管26c内の空気をほぼ一定の圧力に維持することができる。
【0081】
1つ以上の実施形態では、機関のシリンダへの空気噴射を、空気噴射装置34cによって制御及び/又は調節することができる。上記で説明したように、空気噴射装置34cは、機関サイクル中の任意の1つ以上の時に空気管26cから対応するシリンダに噴射される空気の量を制御することができる。例えば、制御装置は、空気噴射装置34cの1つ、一部、又はすべてを任意の適切な時に任意の適切な時間の間作動させて、空気管26cからの適切な又は選択された及び/又は所定量の空気を対応する空気噴射装置34cを通して流し、機関10cのシリンダに噴射することを可能にすることができる。
【0082】
一部の実施形態では、機関は、圧縮空気を使用してこれに動力供給する時間の間アイドル状態になり得る。換言すれば、クランク軸の回転を生み出す流れでピストンを下方向に強制するようにして空気噴射装置34cを順次作動させることによって、圧縮空気をシリンダに噴射することができる。一例では、圧縮空気を使用して、(例えば、開始装置が動作不能である、又はバッテリ電力が開始装置に利用できない場合)機関を開始し、又は開始するのを助けることができる。例えば、加圧空気を含み得るタンク(例えばリザーバタンク)から圧縮空気を供給することができる。さらに、一部の例では、機関の作動中、空気を連続的にタンクに加え及び/又はタンクから(例えば、圧縮空気を生み出し得る機関の作動から、及び/又は空気圧縮機から)循環させることができる。
【0083】
上記で述べたように、機関10cは、排気システムを含むことができ、又はこれに連結され得る。例えば、シリンダからの排気は、対応する排気管50cに入ることができ、排気マニホールド20c内に流れることができる。一部の実施形態では、排気マニホールド20cを、排気システムの1つ以上の追加の構成要素又は要素(例えば触媒コンバータ、消音器など)に連結することができる。
【0084】
一実施形態では、空気噴射装置、燃料噴射装置、排気弁、又はその組み合わせの1つ、一部、又はすべてを出力軸から(例えばクランク軸から)機械的に分離し、又は連結解除することができ、及び/又は制御装置によって(直接的又は作動のための命令を提供するなどによって間接的を含んで)作動させることができる。通常、制御装置は、プログラム可能となり得る、任意の適切な汎用の又は特殊目的のコンピューティングデバイスであってよい。例えば、制御装置は、1つ以上のプロセッサと、プロセッサに動作可能に結合されたメモリ(例えば記憶メモリ、RAMなど)と、命令又は信号を受け取り、送るための入力/出力(I/O)インターフェースとを含むことができる。いずれの場合も、制御装置は、(例えば本明細書に説明するセンサからの情報又は信号に少なくとも部分的に基づいて)機関の1つ以上の要素又は構成要素を作動させるように構成され得る。
【0085】
一実施形態では、制御装置は、任意の数の適切なパラメータ及び/又は入力に基づいて、燃料噴射装置、空気噴射装置、排気弁、又はその組み合わせの作動を調節することができる。一実施形態では、機関又は燃焼システムは、スロットル指示器(例えばガスペダル)の位置の変化を検出することができる、スロットル位置センサを含むことができ、及び/又はこれに連結され得る。さらに、クランク軸位置センサは、クランク軸の位置を検出することができ、クランク軸位置についての情報を制御装置に提供することができる(クランク軸の位置に基づいて、制御装置は、機関のシリンダの1つ、一部、又はすべて内のピストンのそれぞれの位置を決定することができる)。いずれのケースも、任意の数の適切なパラメータ及び/又は入力に基づいて、制御装置は、機関又はその任意の部分の作動を調整することができる(例えば、シリンダの1つ又は一部への燃料及び/又は空気の供給は、他のシリンダの1つ又は一部とは異なることができ、及び/又はシリンダの任意の1つ又は一部を常に動作不能にすることができる)。
【0086】
1つ以上の実施形態により、燃料噴射装置及び空気噴射装置の作動及びこれらが作動された、又は開いたままである時間が、燃料及び/又は空気を各々のシリンダに段階的に提供するようにして制御され得ることを理解されたい。例えば、ピストンがその上方向行程を完了した後(例えば上死点)かつピストンが下り行程中下るときに、燃料及び/空気の第1の充填を、ピストンの第1の位置においてもたらすことができる。下り行程中ピストンがさらに下るとき、燃料及び/又は空気の1つ以上の追加の充填を、ピストンが下方向行程の末端(例えば下死点)に到達する前の、ピストンの1つ以上の追加の位置においてシリンダ内にもたらすことができる。さらに、燃料及び/又は空気の追加又は代替の充填は、ピストンが上死点又は下死点に到達する前にシリンダ内に供給され得る(例えば、さまざまな構成及び段階設定により、種々の燃料の燃焼特性に対して調整可能であるように機関を構成することができる)。
【0087】
一部の例では、機関は、(例えば、2行程サイクルで機関を作動させることによって)短時間の動力の急増をもたらすように作動され得る。例えば、燃料及び空気を、(4行程サイクルの隔行程ごとの代わりに)ピストンが下方向行程を開始する度に噴射することができる。さらに、任意の1つ以上のシリンダが、機関からの動力出力の急増を生成するように2行程サイクルで作動され得る。
【0088】
上記で説明したように、通常、内燃機関は、少なくとも1つの燃焼室と、燃焼室内の燃料の燃焼に応答して回転可能な出力軸とを含む。例えば、内燃機関は、燃焼室内の燃料の燃焼中に生み出されたエネルギーを、出力軸における機械的出力に変換する(例えば、燃焼室内の圧力上昇を出力軸の回転に変換する)ためのエネルギー変換機構を含むことができる。一実施形態では、燃料及び酸化剤は、燃焼室内に噴射され、燃焼反応がその中で圧力上昇を生み出す。エネルギー変換機構は、燃焼室内の上昇した圧力を、出力軸(例えば、シリンダ内で移動可能であり、出力軸に連結されたピストン、出力軸に連結されたハウジング及び回転可能なロータなど)の回転などの機械的エネルギーに変換するように構成される。
【0089】
いずれの場合も、1つ以上の実施形態では、制御装置又は制御システムは、燃料及び/又は空気の燃焼室内の噴射を制御することによって、及び/又は燃焼室からの排気を制御することによって、内燃機関の作動を制御することができる。例えば、制御装置は、それぞれ燃料及び酸化剤を機関の燃焼室(例えばシリンダ)に噴射することができる1つ以上の燃料噴射装置及び/又は1つ以上の空気噴射装置と、排気が対応する燃焼室を退出することを防止する又は可能にすることができる排気弁とを含み得る機関を制御することができる。以下により詳細に説明するように、少なくとも1つの実施形態では、燃料噴射装置、空気噴射装置、排気弁、又はそれらの組み合わせは、出力軸から機械的に分離され、又は連結解除され、制御装置によって作動させることができる。また、通常、シリンダ内に噴射された燃料及び/又は空気の量並びにそのような噴射のタイミングを制御することにより、機関に適切な任意の数の作動状態を生み出すことができる。
【0090】
一部の実施形態では、制御装置は、機関の1つ以上の要素又は構成要素に動作可能に連結されてよく、及び/又はその作動を制御又は作動させることができる。例えば、制御装置を含む制御システムは、さまざまな入力を制御装置に提供し得る任意の数の適切なセンサを含むことができる。一部の例では、制御システムは、制御装置に結合された1つ以上の入力インターフェースデバイス(例えば、ユーザインターフェースを含むデバイス)を含み、それにより、制御装置は、そこから入力(例えば、ユーザによって提供され得る及び/又は機関の作動パラメータに関し得る入力)を受け取ることができる。故に、制御装置は、1つ以上の入力を受け取ることができ、機関(及び/又は機関に連結された要素又は構成要素)を(直接的又は間接的に)作動させ、それによって機関の作動を改変することができる。例えば、制御装置は、動力出力、出力軸の1分あたりの回転数(RPM)、出力軸の回転方向、燃焼効率、燃焼容積、前述の組み合わせなどを変更及び/又は最適化するように機関の作動を改変又は調整することができる。
【0091】
1つ以上の実施形態では、制御システムは、1つ以上の作動入力(例えば機関のユーザからの入力)に基づいて、機関のシリンダ内に噴射される燃料及び/又は空気の量を決定又は算出することができる。例えば、作動入力は、動力出力要件、出力軸のRPM、燃焼容積などに関する入力を含むことができ、制御システムは、作動入力に対応する機関の作動を達成する、又は生み出すための、機関要素及び/又は構成要素のパラメータを決定することができる。例えば、以下により詳細に説明するように、制御装置は、シリンダに噴射する燃料及び/又は空気の量及び/又はそのような噴射のタイミング、シリンダ内の空気-燃料混合気の点火のタイミング、排気弁の開放のタイミング及び持続時間などを決定することができる。
【0092】
通常、内燃機関は、ガソリン(ペトロール)、エタノール、ディーゼル、液化天然ガス(LNG)、液化天然石油ガス(LGP)、水素などの任意の適切なタイプの燃料を燃焼させることができる。さらに、酸素などの任意の適切な酸化剤が、燃料の燃焼を容易にする及び/又は促進することができる。
【0093】
上記で論じたように、(例えば
図1に示すような)燃焼機関10は、一実施形態により、コンピュータ制御され、制御装置5に動作可能に結合され得る。再度、機関は、上記で論じたように任意の数のシリンダ及び任意の数の適切なシリンダ配置(例えば、V字、回転式、ボクサー型など)を有し得ることを理解されたい。
【0094】
上記で説明したように、燃料及び/又は空気は、機関10のシリンダに直接噴射され得る。例えば、機関10は、機関10の対応するシリンダに関連付けられた燃料噴射装置30及び空気噴射装置26(
図4)を含む。一部の実施形態では、制御装置5は、燃料噴射装置30及び/又は空気噴射装置26を(直接的に、又は作動のための指示を提供するなどによって間接的に作動させることを含んで)作動させ、これは以下により詳細に説明する。
【0095】
上記で説明したように、空気噴射装置26を、空気又は任意の数の適切な酸化剤の任意の数の供給源又は供給部に連結することができる。1つ以上の実施形態では、空気噴射装置26は、空気吸気マニホールド16に連結する。例えば、空気吸気マニホールド16は、空気を含むことができ、及び/又は空気(例えば圧縮空気)を、(例えば、空気噴射装置26と吸気マニホールド16の間の1つ以上の対応する空気管を介して)空気噴射装置26に分配することができる。一部の実施形態では、空気吸気マニホールド16は、圧縮空気を空気吸気マニホールド内に供給し得る圧縮機18と流体連通することができる。同じようにして、燃料噴射装置30を燃料の供給部に連結することができる(例えば、燃料ポンプが燃料を燃料噴射装置30に又はこれに向かって供給することができる)。
【0096】
1つ以上の実施形態では、制御装置5は、燃料噴射装置30及び/又は空気噴射装置26を、(直接的に、又は作動のための命令を提供するなどによって間接的に)作動させ、これは以下により詳細に説明する。例えば、燃焼機関10の排気弁52を制御装置5に動作可能に結合し、それによって開位置と閉位置の間で作動させることができ、それにより、開位置では、排気は、燃焼中及び/又は燃焼後にシリンダを退出することができ、閉位置では、排気弁52は、排気が対応するシリンダを退出することを少なくとも部分的に防止する。さらに、上記で述べたように、制御装置5は、1つ以上のセンサに連結されてよく、このセンサは、機関10の作動について及び/又は機関10の作動のための作動パラメータについての情報を提供することができる。いくつかの実施形態では、オクタン又は燃料のセンサが、制御装置5に連結され、燃料噴射装置30に向かって又は燃料噴射装置に流れる燃料と接触して位置付けられる(
図4)。故に、制御装置5は、機関10のシリンダに向かって及び/又はシリンダに流れる燃料に関する情報又は信号を受け取ることができる。
【0097】
制御装置5はまた、機関10のシリンダに供給されている酸化剤についての情報を提供することができる1つ以上のセンサに連結され得る。例えば、機関10は、制御装置5に連結され、吸気マニホールド16内の空気と連通する、圧力及び/又は温度センサ17を含むことができる。同様に、制御装置5を、機関10の1つ以上のシリンダを退出する排気についての情報を提供することができる、1つ以上のセンサに連結することができる。
【0098】
一実施形態では、機関10は、排気センサ54を含み、排気センサ54は、機関10の対応するシリンダを退出する排気と連通し、制御装置5に連結される。例えば排気センサ54は、機関10の対応するシリンダを退出する排出気体内に存在する酸素の量を検出又は決定することができる。さらに、一部の例では、制御装置5を、入来する空気(例えば、吸気マニホールド16内、吸気マニホールド16を空気噴射装置26に連結する空気管内の空気)と連通する1つ以上の酸素センサに連結することができる。故に、制御装置は、機関10の燃焼室に向かって流れる空気中の酸素成分又は濃度、又は噴射に関する入力又は信号を受け取ることができる。
【0099】
以下により詳細に説明するように、制御装置は、任意の数の適切なセンサ、例えば出力軸に連結された位置センサ、ノックセンサ、スロットル位置センサなどに連結されてよく、及び/又はそこからの情報を受け取ることができる。さらに、一部の例では、制御装置は、機関に非関連になり得るセンサ及び/又は入力デバイスから入力を受け取ることができる。いずれの場合も、制御装置は、制御装置に連結されたセンサから受け取られた情報又は信号に少なくとも部分的に基づいて、空気噴射装置、燃料噴射装置、排気弁、又はそれらの組み合わせを作動させることができる。
【0100】
図9は、少なくとも1つの実施形態による、内燃機関内の燃焼及び/又はその作動を制御することができる、制御システムの制御装置によって実施され得る作動又は動作の流れ図を示す。一実施形態では、制御装置は、機関の作動パラメータに関する1つ以上の作動入力を受け取る動作100を実施又は実行する。例えば、制御装置は、機関によって生み出された動力出力及び/又はRPMに関する入力又は情報(例えば、機関クランク軸のRPMを増大させる要求)を受け取ることができる。通常、入力は、任意の数の適切な方法で及び/又は任意の数の適切な入力インターフェース及び/又は入力インターフェースデバイスから制御装置に提供又は供給され得る。例えば、車両では、入力インターフェースデバイスはスロットル(例えば、スロットルペダル、レバー、ハンドルなど)とすることができる。
【0101】
場合によっては、1つ以上のセンサ(例えば位置センサ)が、スロットルから入力を受け取り、変換された入力(例えばスロットルの変位)を制御システムに送信することができる。故に、例えば、スロットルペダルの変位(例えばユーザからの入力)を、ユーザによって生み出されるスロットルペダルの変位の量を制御装置に表示し得る、対応する入力にデジタル化又は変換することができ、この入力は、制御装置に送信され又は送られる。場合によっては、(スロットルペダルに結合されたセンサからの信号又は入力によって表示されるような)スロットペダルの変位は、RPM、動力出力などの機関の1つ以上の作動パラメータを用いて制御装置によって処理され及び/又は関連付けられ得る。
【0102】
また、スロットルペダルの変位をデジタル化することができるため、変位の組み合わせ又はパターン(例えば、複数の短い変位、複数の長い変位、その組み合わせなど)が、機関の特定の作動パラメータを用いて制御装置によって相関され得る。例えば、2つの長い変位を、制御装置によって、機関の動力出力又はRPMの選択された及び/又は所定の動力出力又は割合増に相関することができる。いずれの場合も、制御装置は、機関の所望の又は要求された動力出力及び/又はRPMに関する1つ以上の入力を受け取ることができる。
【0103】
代替又は追加の実施形態では、制御装置は、要求された燃焼容積の入力を受け取ることができる。例えば、適切な入力インターフェースは、ダイヤル、キー付きインターフェース、タッチパッド、前述の組み合わせなどを含むことができる。いずれのケースも、入力インターフェースは、機関の所望の又は要求された燃焼容積の入力を容易にすることができ、これらの入力を制御装置に送り、又は送信することができる。一部の実施形態では、作動パラメータに関する入力は、機関によって生み出される、要求音(例えば、周波数、音調など)を含むことができる。例えば、インターフェースは、音のオプション(例えば、さまざまな機関又は機関モデルの音)を提供又は表示し、そのようなオプションの選択を受け取ることができる。インターフェースは、機関の作動パラメータに関する入力としてそのような選択を制御装置に送信することができる。
【0104】
さらに、1つ以上の実施形態では、入力は、機関の1つ以上の作動パラメータに間接的に関することができる。例えば、機関は、機関駆動車両内に含まれ得る。故に、例えば、入力は、車両の速度に関することができ、この速度は、車両の配向(例えば上に傾く、下に傾くなど)、車両の操作、気象条件などに応じて決まり得る。そのような例では、入力インターフェースデバイス(例えばクルーズ制御)からの入力は、クランク軸のRPMなどの機関の作動パラメータに関し得る1つ以上のパラメータ又は入力に変換又は転換され得る。
【0105】
一部の実施形態では、入力(例えば、機関の作動パラメータに間接的に関し得る入力)は、機関に対する予想される動力要件に関することができ、及び/又は少なくとも部分的に基づくことができる。例えば、機関駆動式車両の機関を制御するための作動入力は、車両及びその貨物の重量、予想される又は計画されるルート(例えば、上り坂、下り坂、曲がるなど)などに関することができ、及び/又は少なくとも部分的に基づくことができる。故に、以下により詳細に説明するように、制御装置は、そのような入力を機関の作動パラメータに相関することができる。
【0106】
一部の実施形態では、作動入力は、機関のシリンダ内に供給される特定のタイプの燃料及び/又は酸化剤を特定することを含むことができる。例えば、入力は燃料タイプ及び酸化剤の組み合わせの選択又は入力を含むことができ、これらの選択又は入力は、制御装置に結合され得る任意の適切なインターフェースを介して受け取られ得る。追加的又は代替的には、燃料及び/又は酸化剤のタイプに関する入力は、1つ以上のセンサから受け取られ得る。一部の実施形態では、制御装置は、1つ以上のセンサから入力を受け取る動作110を実施又は実行する。例えば、制御装置は、燃料及び/又は酸化剤センサから入力を受け取ることができる。場合に応じて、説明は「シリンダ」又は「複数のシリンダ」を指しているが、そのような参照は、簡易化するために行われ、機関は、上記で説明したように、任意の適切な燃焼室(複数可)を含み得ることを理解されたい。
【0107】
少なくとも1つの実施形態では、制御装置は、1つ以上の空気圧センサから入力を受け取ることができ、これら入力は、共同して空気(又は他の酸化剤)をシリンダ内に供給し得る、空気管及び/又は空気吸気マニホールド内の圧力を表示することができる。換言すれば、制御装置は、シリンダ内に(例えば弁の介入無く)直接的に強制又は噴射され得る空気の圧力又は圧縮割合についての情報を受け取ることができる。場合によっては、制御装置はまた、空気管と連通する、及び/又は空気吸気マニホールドと連通する追加又は代替のセンサから入力を受け取ることもできる。そのようなセンサは、空気管内の酸化剤のタイプ及び/又はその量(例えば、空気中に存在する酸素の割合)を特定することができる。さらに、一部の例では、制御装置は、1つ以上の排気センサから入力を受け取ることができる。例えば、排気センサは、機関のシリンダを退出する排出気体中の酸素成分に関する入力を提供することができる。
【0108】
一実施形態では、制御装置は、シリンダに供給されている燃料のタイプを特定し得る燃料センサからの入力を受け取ることができる。例えば、燃料センサは、燃料と連通することができ、そのタイプを特定することができる(例えば、ガソリン、ディーゼル、水素、天然ガス、プロパンなどを見分ける)。場合によっては、1つ以上のセンサはまた、(例えば、燃料管内、燃料噴射装置の近くなどの)燃料の圧力を決定又は特定することができる。
【0109】
一部の実施形態では、制御装置は、機関温度、空気温度、燃料温度などに関する入力又は信号を受け取ることができる。例えば、制御装置は、機関の1つ以上の部分と熱連通する1つ以上のセンサ(例えば熱電対)から、機関の温度に関連する情報を受け取ることができる。追加又は代替の実施形態では、制御装置は、機関のクランク軸の回転速度(RPM)及び/又は位置についての入力を受け取ることができる。例えば、1つ以上のエンコーダ又は類似のセンサがクランク軸に連結されてよく、クランク軸の回転位置及びその回転速度を決定することができる。さらに、一例では、エンコーダは、絶対エンコーダとすることができ、クランク軸の位置に関する位置情報を維持することができる。故に、例えば、エンコーダは、これに電力を供給することなく位置情報を維持することができ、そのような情報に関する入力をクランク軸の回転無しに(例えば機関が稼働する前に)制御装置に送信することができる。エンコーダは、任意の適切な分解能(例えば、1度、1/2度、1/4度など)を有することができ、それにより、制御装置は、1度ごと、1/2度ごと、1/4度などごとにクランク軸の回転に関する情報又は信号を受け取ることを理解されたい。代替的又は追加的には、制御装置は、クランク軸の回転の1/4回転ごと(例えば90度ごと)に関する情報又は信号を受け取ることができる。
【0110】
上記で説明したように、少なくとも1つの例では、機関は、車両に動力供給することができる。故に、場合によっては、制御装置は、そのような車両の作動状態に関し得る入力を1つ以上のセンサから受け取ることができる。例えば、そのようなセンサ(例えば加速度計、ジャイロスコープなど)は、傾いた又は上り坂移動、下に傾いた又は下り坂移動、回転、枢動などの車両の移動に関し得る入力を制御装置に送信することができる。
【0111】
一実施形態では、センサは、機関によって動力供給される車両に対する全地球測位座標系を提供することができる、全地球測位システム(GPS)を含むことができる。故に、例えば、以下により詳細に説明するように、制御装置は、GPSから受け取られた入力に少なくとも部分的に基づいて、車両の移動を推定することができる。例えば、制御装置は、全地球測位座標系及び/又はその変更を、地図上の位置に相関することができ、地図上の車両の場所及び地図に対するそのような車両の移動を決定することができる。
【0112】
1つ以上の実施形態では、制御装置は、機関の1つ以上の燃焼室に(例えば機関の1つ以上のシリンダに)噴射する空気の量を決定する動作120を実施又は実行する。より詳細には、例えば、制御装置は、センサから受け取られた情報又は読み取り値に基づいて、及び/又は機関の作動パラメータに関する、受け取られた入力に基づいて、燃焼室に噴射する空気の量を決定することができる。場合によっては、制御装置は、1つ以上のアルゴリズム、テーブル、データベース、又はその組み合わせを参照して、シリンダに噴射する空気の量を決定することができる。
【0113】
上記で述べたように、制御装置は、1つ以上の入力を機関の作動パラメータに相関することができる。特に、制御装置は、1つ以上のユーザ、センサなどから受け取られた入力を、機関の作動パラメータに相関することができる。例えば、制御装置は、GPSからの入力を処理して、機関を含む車両の場所及び/又はその現在の及び予想される移動(例えば、上り坂、下り坂)を決定することができる。車両の場所及び現在及び/又は予想される移動に基づいて、制御装置は、機関の1つ以上の作動パラメータを決定することができる。例えば、制御装置は、車両の現在の及び/又は予想される移動に基づいて、及び/又は現在の及び予想される負荷及び/又は動力要件を相関することに基づいて、機関の燃焼容積を決定又は算出することができる(例えば、制御装置は、燃焼容積の増大を決定して、車両のルート内の予想される傾きに基づいて現在のRPMを維持することができる)。一部の例では、制御装置は、1つ以上の追加又は代替のパラメータ(例えば、許容可能な排出物に関する現地法又は条例)に基づいて燃焼容積を決定することができる。例えば、現地法又は条例に基づいて、及びGPSからの入力に基づいて、制御装置は、燃焼容積を(例えば、燃焼容積が大気圧以下の圧力になるようにシリンダの内部容積未満に)低減するよう決定することができる。
【0114】
一部の実施形態では、制御装置はテーブル、チャート、1つ以上の公式又はアルゴリズムなどを参照し、これらは、燃料及び空気の選択された及び/又は所定量を、機関のクランク軸において生み出される1分あたりの回転(RPM)に相関することができる。そのようなテーブルは、実施形態ごと及び機関ごとにさまざまになり得ることを理解されたい。しかし、いずれの場合も、そのようなテーブルに少なくとも部分的に基づいて、制御装置は、シリンダに噴射する空気の量を決定することができる。
【0115】
例えば、上記で述べたように、制御装置は、機関のクランク軸のRPMなどの、機関の要求される作動パラメータに関する入力を受け取ることができる。追加的又は代替的には、上記で指摘したように、制御装置は、任意の数の適切な入力を受け取ることができ、この入力を機関の作動パラメータに変換する及び/又は相関することができる。一実施形態では、そのような入力に基づいて、制御装置は、シリンダに噴射される空気の量を決定することができる。例えば、制御装置は、要求されたRPMを生み出すための燃料の量を最小限に抑え、それによってシリンダ内の希薄燃焼を生み出すための空気の最適な量を(例えばユーザの好みに基づいて)選択又は決定することができ、これは以下により詳細に説明する。
【0116】
従来の機関は、シリンダに入る空気の量を正確に制御することができないため、一般的な従来の制御装置は、空気吸気機構(例えばスロットル、ターボなど)を調整して、要求されたRPMを達成し得る。少なくとも1つの実施形態では、シリンダ内に(例えば、選択された及び/又は所定の空気量をシリンダに直接噴射することによって)噴射される空気の量を正確に制御することにより、選択された及び/又は所定のRPMを、そのような噴射又は一連の噴射に基づいて生み出すことが容易にされ得る。換言すれば、制御装置は、シリンダなどの燃焼室に噴射する空気の特有の量を決定し、選択された、所定の、及び/又は要求されたRPM出力を生み出すことができ、これに対して従来の調整は、(例えば、従来の制御装置は、シリンダに入る空気の正確な量についての情報を有することができないために)RPMに基づいて行われる、シリンダへの空気供給に対する調整である。
【0117】
同様に、上記で述べたように、制御装置は、1つ以上のシリンダの要求された容積に関する1つ以上の入力を受け取ることができる。例えば、制御装置は、シリンダの実際の燃焼容積を(例えば100%、200%など)増大させる又は(例えば20%、40%、50%など)低減する要求を受け取ることができる。そのような要求に基づいて、制御装置は、シリンダに噴射する空気の量又は体積を決定することができる。場合によっては、噴射される空気の決定された量が、シリンダの実際の量より少なくなり得る(例えば、大気圧において、シリンダに噴射される空気の量は、シリンダの量より少なくなり得る)ことを理解されたい。
【0118】
一部の例では、制御装置は、各々の特有のシリンダに独立的に噴射する空気の量を決定することができる。例えば、制御装置は、1つ以上のシリンダに供給される空気の量を低減することができ、それによって燃焼容積を低減する。代替的又は追加的には、制御装置は、燃料節約の向上などのために希薄燃焼を生み出すために(燃料の供給の低減に基づいて)1つ以上のシリンダ内の空気供給を増大させるよう決定することができる。場合によっては、希薄燃焼は、より高い燃焼温度を有することができ、それによって機関温度の上昇をもたらすことができることを理解されたい。制御装置は、1つ以上のシリンダ内に希薄燃焼を選択的に生み出し、機関を過熱する及び/又はその要素又は構成要素に損傷を与えることを回避できるようにして、(例えば、1つ以上の温度センサからの温度入力に基づいて)希薄燃焼を生み出すシリンダを定期的に変更するよう決定することができる。
【0119】
場合によっては、制御装置は、1つ以上の排気センサからの入力に基づいて、シリンダに噴射される空気の量を調整することができる。例えば、制御装置は、排出気体中の酸素の量を特定する入力を受け取ることができる。したがって、制御装置は、排気中に存在する酸素の量に基づいて、事前に決定された空気の量を調整することができる。さらに、一部の実施形態では、制御装置は、センサの1つ以上からの入力及び/又は同じ又は類似の作動入力などの、同じ又は類似の入力を受け取ることに応答して、シリンダに噴射される空気の量の今後の決定を行うために、アルゴリズム(例えば公式)、テーブル値などを調整することができる。
【0120】
一実施形態では、制御装置は、空気の決定された量に少なくとも部分的に基づいて、1つ以上の空気噴射装置を作動させる動作130を実施又は実行する。特に、例えば、制御装置は、空気を機関のシリンダに直接噴射する(例えば、少なくとも実質的に妨げられずに空気を噴射する)ように空気噴射装置を(直接的に、又は作動のための指示を提供するなどによって間接的に)作動させることができる。例えば、制御装置は、選択された及び/又は所定の期間又は時間の間、シリンダの1つ、一部、又はすべて内の空気噴射装置を開くことができ、それによって選択された、所定の、及び/又は正確な量の空気がシリンダに入ることを可能にする。上記で述べたように、制御装置は、空気噴射装置のところ又はその近くの空気圧に関し得る入力を受け取ることができる。したがって、例えば、制御装置は、選択された及び/又は所定量の空気がシリンダに入ることを可能にするために、空気噴射装置を開いて保持するのに必要とされる時間を(例えば、空気圧センサから受け取られた入力に少なくとも部分的に基づいて)決定することができる。
【0121】
いずれの場合も、制御装置は、所定の及び/又は正確な量の空気をシリンダ内に提供するように空気噴射装置を作動させ、それによって、1つ以上の選択された、及び/又は所定の作動パラメータで(例えば、選択された及び/又は所定の又は要求されたRPM、温度、燃料、効率性などで)機関を作動させることができる。さらに、上記の動作は特定の順番で説明されているが、そのような動作を任意の数の適切な順序で実行することができ、この順序は実施形態ごとにさまざまになり得ることを理解されたい。例えば、制御装置は、最初に、1つ以上のセンサから入力を受け取り(動作110)、その後、機関の作動パラメータに関する1つ以上の作動入力を受け取ることができる(動作100)。
【0122】
上記で述べたように、制御装置は、任意の数の適切なセンサ又は入力源から情報又は信号を受け取ることができ、そのような情報又は信号は、機関の任意の数の作動状態又はパラメータに関するものになり得る。例えば、制御装置は、機関の燃焼室を退出する排気に関する情報又は信号を受け取ることができる。さらに、一部の例では、制御装置は、排気センサから受け取られた情報又は信号に少なくとも部分的に基づいて、空気噴射装置を作動させることができる。例えば、
図10は、少なくとも1つの実施形態による、制御装置によって実施され得るステップ又は動作の流れ図を示す。
【0123】
より詳細には、一実施形態では、制御装置は、排出気体に関する信号を1つ以上の燃焼室から受け取る動作110aを実施又は実行する。例えば、制御装置は、排出気体の組成を表示し又はこれに関し得る情報又は信号を排気センサから受け取ることができる(例えば、信号は、排気中に存在する酸素の量に関するものになり得る)。追加的に、一部の実施形態では、制御装置は、機関の1つ以上の燃焼室に噴射する空気の量を決定する動作120aを実行又は実施する。特に、そのような決定は、排気センサから受け取られた信号又は読み取り値に少なくとも部分的に基づくことができる。
【0124】
例えば、排気中に存在する残留酸素の量に基づいて、制御装置は、燃焼室に噴射する空気の量を決定することができ、それにより、噴射された酸素は、燃焼反応中、完全に又はかなり消費される。故に、少なくとも1つの実施形態は、制御装置によって決定された空気の量に少なくとも部分的に基づいて、1つ以上の空気噴射装置を作動させる動作130aを含む。上記で指摘したように、例えば、制御装置は、空気噴射装置を開き、選択された及び/又は所定の時間の間これを開いて維持することによって空気噴射装置を作動させることができ、それにより、選択された及び/又は所定量の空気が燃焼室に入る。追加的又は代替的には、制御装置は、燃焼室に噴射される、決定された量の空気を含む情報を提供することができる。空気噴射装置は、選択された及び/又は所定量の空気を機関の燃焼室に噴射するようにそのような情報に基づいて作動され得る。
【0125】
また、一部の実施形態では、制御装置は、機関の作動を制御し得る追加の又は代替の要素又は構成要素のための作動パラメータを決定することができ、及び/又はこれらを作動させることができる。
図11は、少なくとも1つの実施形態による、制御装置によって実施され得るステップ又は動作の流れ図を示す。本明細書に別途説明する場合を除き、以下に説明する動作は、
図9~10に関連して上記で説明した動作に類似する、又は同じとすることができる。例示する例では、制御装置は、機関の作動パラメータに関する1つ以上の作動入力を受け取る動作200及び1つ以上のセンサから入力を受け取る動作210を実行又は実施し、これらの動作は、動作100、110に類似する、又は同じとすることができる(
図9)。
【0126】
一実施形態では、制御装置は、作動入力及び/又はセンサからの入力に少なくとも部分的に基づき得る、機関の1つ以上の燃焼室(例えばシリンダ)に噴射する空気及び/又は燃料の量を決定する動作220を実施又は実行する。例えば、制御装置は、上記で説明したのと同じ又は類似するやり方でシリンダに噴射する空気の量を決定することができる。さらに、制御装置はまた、シリンダに噴射する燃料の量を決定し、それによってシリンダに噴射される空気-燃料混合気を決定することができる。
【0127】
また、一部の実施形態では、空気及び燃料を機関の燃焼室の外側で混合して一緒に噴射できることを理解されたい。故に、例えば、制御装置は、燃焼室の外側で一緒に混合することができる、選択された及び/又は所定量の空気及び/又は燃料を分注し得る1つ以上の制御構成要素(例えば、弁、噴射装置など)に、信号又は指令を提供することができる。その後、事前混合された空気-燃料混合気を機関の燃焼室に供給(例えば噴射)することができる。
【0128】
上記で述べたように、制御装置は、燃料セル(例えば気体タンク)、燃料管内、燃料噴射装置の近く又はその組み合わせ内の燃料のタイプ(例えば燃料の組成)を特定し得るセンサから入力を受け取ることができる。故に、制御装置は、シリンダに噴射され得る燃料のタイプに少なくとも部分的に基づいて、シリンダに噴射される燃料の量を決定することができる。一部の実施形態では、ガソリンがシリンダに噴射され得る(例えば、ガソリンの酸化反応は、
【数1】
として表すことができる)。
【0129】
したがって、例えば、空気中のO2の濃度に応じて、化学量論的空気-ガソリン混合気を、14.7:1(空気-ガソリン)比で燃焼させることを考えることができ、この比では、ガソリンは、燃焼後に利用可能な過剰空気又は酸素を有さずに燃焼する。故に、希薄混合気は、より多くの空気(例えば14.7:1より大きい比)を有することができ、濃混合気はより多くの燃料(例えば14.7:1より小さい比)を有することができる。例えば、最大動力出力を、約12.6:1の空気-ガソリンを有し得る濃混合気において生成することができるが、最大の燃料節約は、約15.4:1以上の空気-ガソリン比になり得る希薄空気ガソリン混合気におけるものになり得る。一部の作動状態下では、この比は、約65:1及び/又はそれ以上であるような超希薄のものになり得る。超希薄混合気は、比較的高い(例えば、化学量論的混合気より高い)温度において燃焼し得ることを理解されたい。一部の実施形態では、制御装置は、希薄混合気又は超希薄混合気の燃焼の結果生じ得る上昇した温度において、機関及び/又は1つ以上のそのシリンダを作動させるための持続時間を決定し、それによって機関及び/又はその1つ以上のシリンダに損傷を与える、及び/又は破壊することを防止することができる。さらに、制御装置は、機関が受ける負荷に対応する及び/又は予想される負荷に対応するのに適した混合気を生み出すように空気及び/又は燃料の噴射を決定及び/又は選択することができる。
【0130】
例えば、機関によって動力供給される車などの車両が、(例えば、一定又は低減速度、下り坂の車運転時などに)小さい負荷を受けたとき、希薄及び/又は超希薄混合気が生み出され得る。負荷が増大する、又は増大しようとしているとき(例えば車が上り坂を運転している、又は上り坂を運転しようとしているとき)、制御装置は、化学量論的混合気及び/又は濃混合気を生み出すよう決定することができる。
【0131】
場合によっては、制御装置は、(例えば燃料節約を改良するために)希薄空気-燃料混合気を噴射するよう決定することができる。さらに、例えば、シリンダ及びピストンによって形成された燃焼室を含む機関では、制御装置は、シリンダ内に噴射された空気燃料混合気を選択的に及び/又は継続的に変更することができる。例えば、制御装置は、1つ又は一部のシリンダ内の希薄燃焼を他のシリンダと比較してより多く生み出すことができる。場合によっては、制御装置は、1つ又は一部のシリンダ内で希薄燃焼を、1つ以上の他のシリンダ内で化学量論的燃焼又は過濃燃焼を生み出すことができる。
【0132】
少なくとも一部の燃料(例えばガソリン)の化学量論的燃焼は、過濃燃焼より高い燃焼温度を生み出すことができ、希薄燃焼は、理論空燃燃焼より高い燃焼温度を生み出すことができる。さらに、一部の作動状態下では、長い理論空燃燃焼及び/又は希薄燃焼は、1つ以上の機関構成要素に損傷を与え又はこれらを破壊し、及び/又は機関の耐用年数を短縮し得る。一実施形態では、制御装置は、機関内の温度変化を監視しながら、1つ以上のシリンダ内で化学量論的燃焼及び/又は希薄燃焼を維持し得る噴射及び/又は燃焼サイクルを決定することができ、そのような燃焼室(例えばシリンダ)内の燃焼パラメータを変更して、機関に有害になり得る温度上昇を軽減又は解消することができる。例えば、制御装置は、シリンダの1つ、一部、又はすべて内の希薄化学量論的燃焼及び/又は希薄燃焼を終了し、その中で過濃燃焼を開始するよう決定することができる。追加的又は代替的には、制御装置は、1つ又は多数のシリンダ内において希薄燃焼混合気と過濃燃焼混合気の間で交互になるよう決定することができる(例えば、一部のシリンダは希薄燃焼混合気で作動することができ、他のものは過濃燃焼混合気で作動することができる)。
【0133】
さらに、上記で指摘したように、制御装置は、(例えば往復機関の)シリンダ内のクランク軸の配向及び/又はピストンの場所についての入力又は情報を受け取ることができる。一部の作動状態下では、制御装置は、さまざまな時間及び/又はピストンの複数の場所において燃料及び/又は空気をシリンダに噴射するよう決定することができる。例えば、燃料及び/又は空気の特有の量の1回の噴射の代わりに、制御装置は、燃料噴射装置及び/又は空気噴射装置に、(例えば、燃料及び/又は空気の同じ、より少ない、又はより多い量の1回の噴射と同じ動力出力をクランク軸に生成し得る)燃料及び/又は空気の複数の噴射を行うように指示することができる。場合によっては、燃料及び/又は空気の複数の噴射は、空気-燃料の混合、燃料の燃焼などを改良することができる。同じようにして、制御装置は、燃料噴射装置及び/又は空気噴射装置に、(例えば、ロータが回転するときに)回転式機関の燃焼室への燃料及び空気(それぞれ)の複数の噴射を行うように指示することができる。
【0134】
さらに、往復機関の場合、制御装置は、燃料噴射装置及び/又は空気噴射装置に、ピストンの下方向及び/又は上方向移動の間、燃料及び空気をそれぞれ噴射するように指示することができる。一部の実施形態では、制御装置は、燃料噴射装置及び/又は空気噴射装置に、ピストンの下り行程中(例えば、4行程サイクルにおいて、吸気行程中及び/又は動力行程中)、燃料及び/又は空気を噴射するように指示することができる。例えば、動力行程中に空気及び/又は燃料を噴射することは、燃料の点火を改良することができ、及び/又は追加の動力をもたらすことができる。1つ以上の追加又は代替の実施形態では、制御装置は、燃料噴射装置及び/又は空気噴射装置に、(例えば、4行程サイクルにおける)排気行程中、燃料及び/又は空気を噴射するように指示することができ、それによってシリンダからの排出気体の排出を助けることができる。
【0135】
場合によっては、制御装置は、機関の燃焼室内の化学量論的混合気及び/又は希薄空気-燃料混合気を生み出すために空気及び燃料の複数の噴射を行うよう決定することができる。例えば、制御装置は、出力軸の選択された及び/又は所定の配向(例えば、往復機関のクランク軸の配向)、シリンダ内のピストンの選択された及び/又は所定の位置、前述の組み合わせなどに少なくとも部分的に基づいて、噴射タイミングを決定することができる。さらに、制御装置は、化学量論的混合気及び/又は希薄混合気を生み出し得る、1つ以上のそのような空気及び燃料の噴射を行い、(例えば、化学量論的燃焼及び/又は希薄燃焼中、機関の温度上昇を低減し又は最小限に抑えることができる)濃混合気を生み出し得る、1つ以上の空気及び燃料の噴射を行うよう決定することができる。
【0136】
場合によっては、制御装置は、機関の1つ以上のシリンダを任意の偶数の燃焼サイクル(例えば、2-、4-、6-など)で作動させるよう決定することができる。例えば、制御装置は、ピストンの下り行程ごと、下り行程の1つおきに、下り行程の2つおきなどにおいて1つ、一部、又はすべてのシリンダに空気及び燃料を噴射するよう決定することができる。例えば、制御装置は、制御装置によって受け取られた1つ以上の入力内に要求された動力要件を満たすために、所定の時間の間、一部又はすべてのシリンダを2行程サイクルで作動させるよう決定することができ、一部の状態下において、そのような動力要件を満たした後、シリンダを4行程サイクルで作動させ得るよう決定することができる。
【0137】
一部の実施形態では、制御装置は、燃焼室の1つ又は一部(例えば、シリンダの1つ又は一部)をオフにする、又は停止させるよう決定することができる。例えば、制御装置は、動力出力要件を満たしながら燃料効率性を改良するために、どのシリンダをオフにし得るかを決定することができる。例えば、制御装置は、1つ以上のシリンダへの燃料及び/又は空気の噴射を、(例えば、そのようなシリンダ内の燃料の燃焼を停止させるために)オフにするよう決定することができる。一部の作動状態下では、制御装置はまた、オフにされたシリンダの排気弁を閉じる及び/又は閉じて維持するよう決定することもできる。
【0138】
場合によっては、シリンダ内の空気-燃料混合気の燃焼を生み出すために、スパークが必要とされ得る。例えば、空気-ガソリン混合気を(スパークプラグなどの燃料点火装置からの)スパークによってシリンダ内で点火することができる。したがって、1つ以上の実施形態では、制御装置は、1つ以上の燃焼室内(例えばシリンダ内)のスパークのタイミングを決定する動作230を実施又は実行する。例えば、往復機関の場合、制御装置は、ピストンの下方向行程中、複数の時間及び/又は場所において燃料及び空気を噴射するよう決定することができる。同様に、制御装置は、シリンダ内にスパークをもたらすための1つ以上の時間を決定することができ、この時間は、(例えば、燃料及び空気が噴射されるのとほぼ同じ時間、空気及び/又は燃料のシリンダへの噴射の、選択された及び/又は所定の時間の後、エンコーダなどからの入力に基づき得る、ピストンの選択された及び/又は所定の場所、及び/又はクランク軸の配向時などの)燃料及び/又は空気噴射の1つ以上の時間に対応することができる。いずれの場合も、制御装置は、対応するシリンダ内にスパークをもたらしてその中で空気-燃料混合気を燃焼させるのに適した時間を決定することができる。
【0139】
上記で説明したように、通常、ピストンをクランク軸に回転可能に連結し得るピストンコネクタ棒及び対応するシリンダ内のピストン往復作動は、クランク軸の回転を生み出すことができる。したがって、クランク軸に対するピストンコネクタ棒の角度位置に応じて、ピストン上の下方向の力又は移動は、時計回り方向又は反時計回り方向のクランク軸上の対応するトルク及び/又はその回転を生み出すことができる。例えば、上死点(TDC)では、コネクタ棒は、シリンダの中心軸に平行であり、クランク軸に垂直になり得る(例えば、ピストン上の下方向の力はクランク軸の回転を生み出すことはできない)。同じようにして、ピストンが、TDCの前(BTEC)又はTDCの後(ATDC)である場所にあるとき、ピストンのコネクタ棒の連結点は、クランク軸の回転軸に対して非垂直の角度になり得る(例えば、ピストン上の下方向の力は、クランク軸の対応する時計回り又は反時計回りの回転を生み出すことができる)。例えば、ピストンがBTDCであるとき、ピストンにかけられた力は、クランク軸の対応する相対的な反時計回りの力及び/又は回転を生み出すことができる。ピストンがTDCの後(ATDC)であるとき、ピストンにかけられた力は、クランク軸の対応する相対的な時計回りの力及び/又は回転を生み出すことができる。
【0140】
上記で指摘したように、制御装置は、エンコーダから入力を受け取ることができ、そのような入力は、機関のクランク軸の相対配向を特定することができる。さらに、場合によっては、クランク軸の相対的な放射状配向に基づいて、制御装置は、(例えば、ピストンの各々がTDCに対して位置付けられる場合)シリンダ内のピストンの位置を決定又は相関することができる。一部の実施形態では、制御装置は、クランク軸の最初の回転及び/又はピストンの移動を生み出すことなく(例えば開始装置無しで)機関を開始することができる。例えば、制御装置は、ATDCに位置付けられたピストンを有する1つ以上のシリンダを決定又は特定することができ、空気及び/又は燃料をそのようなシリンダに噴射し、(適切な場合)空気-燃料混合気に点火するためにそのようなシリンダ内にスパークをもたらすよう決定することができる(例えば、制御装置は、空気-燃料混合気を提供し、そのような混合気に点火して機関を開始するためのシリンダを決定又は特定することができる)。
【0141】
さらに、ATDCにあるピストンを有するシリンダに対して、制御装置は、空気及び/又は燃料を噴射する順序、並びに(例えば、機関開始を要求する受け取られた入力に少なくとも部分的に応答して)空気-燃料混合気を点火するためにスパークをもたらす順序を決定することができる。例えば、制御装置は、クランク軸に対し選択された及び/又は所定の位置又は角度にある(例えば、選択された及び/又は所定の角度の最も近く、及び/又はそのような選択された及び/又は所定の角度の後に)ピストンを有するシリンダへの燃料及び/又は空気の噴射を開始するよう決定することができる。例えば、制御装置は、クランク軸に対して少なくともATDC 10度及び/又は10度に最も近いピストンを有するシリンダ内に、燃料及び空気の噴射を開始するよう決定することができ、及び/又は、空気-燃料混合気に点火するためのスパークをもたらすことができる。制御装置はまた、そのようなシリンダに噴射する燃料及び空気の量を決定することもできる。
【0142】
一部の実施形態では、制御装置は、空気及び/又は燃料を噴射するための及び/又は空気-燃料混合気を点火するためのシリンダを決定又は特定して、(例えば、クランク軸の回転の停止及び/又は反転を表示する、受け取られた入力に少なくとも部分的に応答して)クランク軸の回転を停止及び/又は反転させることができる。上記で述べたように、制御装置は、シリンダ内のピストンの場所を特定し得る入力を受け取ることができる。例えば、制御装置は、BTDC(例えばピストン上り行程上)に位置付けられたピストンを有するシリンダを決定又は特定することができ、クランク軸の回転を停止させ、及び/又はその回転を反転させるための燃焼圧力を生み出すのに適した空気及び/又は燃料の量を決定することができる。換言すれば、機関の作動及び/又は1つ以上の受け取られた入力(例えばクランク軸のRPM、軸に連結された機構からの外部負荷などのクランク軸上の負荷、クランク軸の回転を停止又は反転させる要求を受け取った時のシリンダ内のピストンの場所など)に基づいて、制御装置は、回転を停止及び/又は反転させるのに必要とされる、又は適したトルクの量を決定することができる。さらに、一部の例では、制御装置は、クランク軸の回転を停止及び/又は反転させるために決定されたトルク量を生み出すために1つ以上のシリンダに噴射する空気及び燃料の量を決定することができる。
【0143】
上記で述べたように、機関は、任意の数の機関駆動式車両(例えば、自動車、水上オートバイ、航空機など)に含まれ得る。故に、例えば、そのような車両の操作者は、車両の移動の回転の反転のための入力又は要求をインターフェースに提供することができる。制御装置は、その後、機関のクランク軸の回転の反転のための要求を表示する入力を受け取ることができ、そのような反転を生み出すためにシリンダに噴射する空気及び燃料の量を決定することができると共に、空気及び燃料のそのような噴射を行うための特有の又は適したシリンダを特定することができる。
【0144】
少なくとも1つの実施形態では、制御装置は、決定された空気-燃料混合気に少なくとも部分的に基づいて、1つ以上の空気噴射装置及び/又は燃料噴射装置を作動させる動作240を実施又は実行する。上記で述べたように、燃料及び/又は空気は、選択された及び/又は所定のシリンダに直接噴射され得る。換言すれば、制御装置は、空気及び燃料を噴射すると共に空気-燃料混合気をその中で点火する1つ以上のシリンダを決定又は特定することができる。制御装置は、噴射する空気及び/又は燃料の量を決定することができる。制御装置は、その順序(例えば、シリンダの中での空気及び/又は燃料の噴射順)を決定することができる。制御装置は、前述の組み合わせを決定することができる。
【0145】
一部の実施形態では、制御装置は、(例えば動作230において)決定されたスパークのタイミングに少なくとも部分的に基づいて1つ以上の燃料点火装置(例えばスパークプラグ)を作動させる動作250を実施又は実行する。例えば、往復機関の場合、制御装置は、(例えば、クランク軸の配向及び/又はピストンの対応する位置に関し得る及び/又はこれを特定し得る、エンコーダからの入力に基づいて)シリンダの1つ以上内にスパークをもたらすタイミングを決定することができる。さらに、上記で説明したように、エンコーダは、(例えば、1/2度以下など)任意の適切な分解能を有することができる。故に、少なくとも1つの実施形態では、制御装置は、エンコーダからの入力を受け取ることと、決定された燃料点火装置を作動させることとの間に追加の又は意図的な遅延を有さずに(例えば、制御装置から燃料点火装置への信号送信固有の及び/又は制御装置の算出作動固有の遅延のみを有して)燃料点火装置を作動させることができる。
【0146】
また、上記で説明したように、制御装置は、ピストンの下り行程上の複数の時間及び/又はピストンの位置において空気及び/又は燃料を噴射するよう決定することができる。さらに、制御装置は、そのような決定された時間及び(ピストンの)場所において、並びに決定された量で、空気及び燃料をシリンダに噴射するように燃料及び空気噴射装置を作動させることができる。少なくとも1つの実施形態では、制御装置は、空気噴射装置及び燃料噴射装置の制御装置の作動の時間に関し得る又は対応し得る、複数の選択された及び/又は所定の時間及び/又はシリンダ内のピストンの位置において、燃料点火装置を作動させることができる。
【0147】
上記で説明した動作210~250を、制御装置によって任意の適切な順で実行することができることを理解されたい。さらに、一部の実施形態では、動作の1つ以上を省略してよく、及び/又は置き換えてよい。例えば、機関は、任意の数の適切な燃料(例えば、ディーゼル、水素、プロパンなど)で作動することができ、一部の作動状態下では、制御装置は、スパーク無しで機関(例えば、ディーゼル燃料で作動する機関)を作動させ又は制御することができる。したがって、一部の例では、動作230及び/又は250を省略することができる。
【0148】
通常、本明細書に説明する制御装置は、任意の数の適切なコンピューティングデバイス(例えば、ハードウェア及び/又はソフトウェアでプログラムされ得る及び/又は作動され得る機関制御ユニット(ECU))を含むことができる。さらに、本明細書に説明する動作又はステップを、コンピューティングデバイス上(例えば、コンピューティングデバイスのメモリ内)に記憶されたソフトウェア命令によって、及び/又はそのような動作又はステップを実行するように構成されたハードウェアによって実行することができる。適切なコンピューティングデバイスの一例は、
図12に示される。より詳細には、
図12は、一実施形態によるコンピューティングデバイス300のブロック図である。コンピューティングデバイス300は、上記で説明したプロセス又は動作の1つ以上を実施するように構成され得る。
【0149】
例えば、コンピューティングデバイス300は、(例えば、ソフトウェア又はハードウェアコード化された)コンピュータプログラムを含むことができ、このコンピュータプログラムは、上記で説明した動作を実施するようにコンピューティングデバイス300のさまざまな構成要素及び/又は要素に指示し又は命令を提供することができる。一実施形態では、コンピューティングデバイスは、プロセッサ310、メモリ320、記憶デバイス330、I/Oインターフェース340、通信インターフェース350、又はそれらの組み合わせを備えることができる。
図12は、例示的なコンピューティングデバイス300を例示しているが、例示された構成要素は、限定的でないものとする。追加又は代替の構成要素を他の実施形態で使用することができる。さらに、特定の実施形態では、コンピューティングデバイス300は、
図12に示すものより少ない構成要素を含むことができる。
【0150】
一部の実施形態では、プロセッサ310は、コンピュータプログラムを構成するものなどの命令を実行するためのハードウェアを含む。限定的ではなく一例として、命令を実行するために、プロセッサ310は、内部レジスタ、内部キャッシュ、メモリ320又は記憶デバイス330から命令を検索し(又は引き出し)、これらを復号し、実行することができる。特定の実施形態では、プロセッサ310は、データ、命令、又はアドレスのための1つ以上の内部キャッシュを含むことができる。限定的ではなく一例として、プロセッサ310は、1つ以上の命令キャッシュ、1つ以上のデータキャッシュ、及び1つ以上の変換索引バッファ(translation lookaside buffer)(TLB)を含むことができる。命令キャッシュ内の命令は、メモリ320又は記憶デバイス330内の命令のコピーになり得る。
【0151】
コンピューティングデバイス300は、プロセッサ310に結合されたメモリ320を含むことができる。メモリ320は、プロセッサによる実行のためのデータ、メタデータ、プログラム又はそれらの組み合わせを記憶するために使用され得る。メモリ320は、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)、読出し専用メモリ(「ROM」)、ソリッドステートディスク(「SSD」)、フラッシュ、相変化メモリ(Phase Change Memory)(「PCM」)、又は他のタイプのデータ記憶装置などの揮発性及び非揮発性のメモリの1つ以上を含むことができる。メモリ320は、内部又は分配のメモリであってよい。
【0152】
コンピューティングデバイス300は、データ及び/又は命令を記憶するための記憶装置を有し得る記憶デバイス330を含むことができる。限定的ではなく一例として、記憶デバイス330は、上記で説明した固定記憶媒体を備えることができる。記憶デバイス330は、ハードディスクドライブ(HDD)、フロッピーディスクドライブ、フラッシュメモリ、光ディスク、光磁気ディスク、磁気テープ、又はユニバーサルシリアルバス(USB)ドライブ、又はこれらの2つ以上の組み合わせを含むことができる。記憶デバイス330は、適宜、取り外し式又は非取り外し式の(又は固定された)媒体を含むことができる。記憶デバイス330は、コンピューティングデバイス300の内部又は外部にあってよい。一部の実施形態では、記憶デバイス330は、非揮発性のソリッドステートメモリである。追加的又は代替的には、記憶デバイス330は、読出し専用メモリ(「ROM」)を含むことができる。適宜、このROMは、マスクプログラムされたROM、プログラム可能なROM(PROM)、消去可能なPROM(EPROM)、電気的に消去可能なPROM(EEPROM)、電気的に変更可能なROM(EAROM)、もしくはフラッシュメモリ、又はこれらの2つ以上の組み合わせであってよい。
【0153】
コンピューティングデバイス300はまた、1つ以上の入力又は出力(「I/O」)インターフェース340を含むこともでき、インターフェース340は、ユーザがコンピューティングデバイス300に入力を提供し、そこから出力を受け取り、別の形でコンピューティングデバイス300にデータを転送し、そこから転送することを可能にするために設けられ得る。例えば、I/Oインターフェース340を1つ以上のセンサ(上記で説明したような(例えば、圧力センサ、温度センサ、燃料センサなど))に及び/又は1つ以上の入力デバイス(例えば、スロットル、ユーザインターフェース、マウス、キーパッド又はキーボード、タッチスクリーン、カメラ、光学スキャナ、ネットワークインターフェース、モデム、他の知られているI/Oデバイス、又はそれらの組み合わせ)に結合することができる。タッチスクリーンは、スタイラス又は指によって起動され得る。
【0154】
I/Oインターフェース340は、それだけに限定されないが、グラフィックエンジン、ディスプレイ(例えばディスプレイスクリーン)、1つ以上の出力ドライバ(例えば、ディスプレイドライバ)、1つ以上のオーディオスピーカ、及び1つ以上のオーディオドライバを含む、ユーザに出力を提示するための1つ以上のデバイスを含み、及び/又はこれに結合され得る。一部の実施形態では、インターフェース340は、ユーザへの提示のためにグラフィックデータをディスプレイに提供するように構成され得る。グラフィックデータは、1つ以上のグラフィカルユーザインターフェース及び/又は特定の実装を提供し得る任意の他のグラフィックコンテンツを表すものになり得る。
【0155】
コンピューティングデバイス300は、さらに、通信インターフェース350を含むことができる。通信インターフェースは、ハードウェア、ソフトウェア、又はその両方を含むことができる。通信インターフェース350は、コンピューティングデバイスと1つ以上の他のコンピューティングデバイス300又は1つ以上のネットワークとの間の(例えば、パケットベース通信などの)通信のための1つ以上のインターフェースを提供することができる。限定的ではなく一例として、通信インターフェース350は、イーサーネット又は他の有線ネットワークと通信するためのネットワークインターフェース制御装置(NIC)もしくはネットワークアダプタ、又はワイファイ(WI-FI)(登録商標)などの無線ネットワークと通信するための無線NIC(WNIC)もしくは無線アダプタを含むことができる。
【0156】
本開示は、任意の適切なネットワーク及び任意の適切な通信インターフェース350を企図する。限定的ではなく一例として、コンピューティングデバイス300は、アドホックネットワーク(ad hoc network)、パーソナルエリアネットワーク(personal area network)(PAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(wide area network)(WAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(metropolitan area network)(MAN)、もしくはインターネットの1つ以上の部分、又はこれらの2つ以上の組み合わせと通信することができる。これらのネットワークのうち1つ以上の1つ以上の部分は無線又は有線とすることができる。一例として、コンピューティングシステム300は、(例えばブルートゥース(BLUETOOTH)(登録商標)WPANなどの)無線PAN(WPAN)、ワイファイネットワーク、ワイマックスネットワーク、(例えば、汎欧州デジタル移動電話方式(Global System for Mobile Communications)(GSM)ネットワークなどの)小型携帯移動電話機(cellular telephone)ネットワーク、他の適切な無線ネットワーク又はその組み合わせと通信することができる。コンピューティングデバイス300は、適宜、これらのネットワークのいずれに対しても任意の適切な通信インターフェース350を含むことができる。
【0157】
コンピューティングデバイス300は、さらに、バス360を含むことができる。バス360は、コンピューティングデバイス300の構成要素を互いに結合するハードウェア、ソフトウェア、又はその両方を備えることができる。限定的ではなく一例として、バス360は、アクセラレーテッドグラフィックスポート(Accelerated Graphics Port)(AGP)又は他のグラフィックバス、拡張業界標準アーキテクチャ(Enhanced Industry Standard Architecture)(EISA)バス、フロントサイドバス(front-side bus)(FSB)、ハイパートランスポート(HYPERTRANSPORT)(HT)インターコネクト、業界標準アーキテクチャ(Industry Standard Architecture)(ISA)バス、インフィニバンド(INFINIBAND)インターコネクト、ローピンカウント(low-pin-count)(LPC)バス、メモリバス、マイクロチャネルアーキテクチャ(MicroChannel Architecture)(MCA)バス、ペリフェラルコンポーネントインターコネクト(Peripheral Component Interconnect)(PCI)バス、ピーシーアイエクスプレス(PCI-Express)(PCIe)バス、シリアルアドバンスドテクノロジーアタッチメント(serial advanced technology attachment)(SATA)バス、ビデオエレクトロニクススタンダーズアソシエーションローカル(Video Electronics Standards Association local)(VLB)バスもしくは別の適切なバス又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0158】
一部の実施形態では、適切な機関制御ユニット(ECU)が、機関の要素及び/又は構成要素を制御し、及び/又は本明細書に説明する動作を実施するように使用され及び/又はプログラムされ得る。例えば、AEM Electronicsから入手可能であるEMS-4は、4シリンダ機関に関して本明細書に説明する動作を実施し得るようにプログラムされてよく、及び/又はこの動作を実施する実行可能なソフトウェアコードを記憶することができる。一部の実施形態では、制御装置又はコンピューティングデバイスは、適切なECUなどの特殊用途コンピュータであってよいが、追加の又は代替の実施形態では、制御装置又はコンピューティングデバイスは、汎用コンピュータであってよいことを理解されたい。
【0159】
前述は、本発明の実施形態を対象とするが、本発明の他の及び別の実施形態を、その基本的な範囲から逸脱することなく考案することができ、その範囲は、特許請求の範囲によって決定される。