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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03D 3/04 20060101AFI20240515BHJP
   F03B 15/04 20060101ALI20240515BHJP
   F03B 7/00 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
F03D3/04 Z
F03B15/04 L
F03B7/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023161946
(22)【出願日】2023-09-26
【審査請求日】2023-09-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509087380
【氏名又は名称】松岡 昭一
(73)【特許権者】
【識別番号】509087391
【氏名又は名称】嶋本 妙子
(74)【代理人】
【識別番号】100186510
【弁理士】
【氏名又は名称】豊村 祐士
(72)【発明者】
【氏名】松岡 昭一
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-172245(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2180515(KR,B1)
【文献】特開昭56-138467(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0028745(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0070087(US,A1)
【文献】特表2006-526732(JP,A)
【文献】特開2009-047069(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0026069(KR,A)
【文献】特開昭57-117773(JP,A)
【文献】米国特許第04372732(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 3/04
F03B 15/04
F03B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略水平方向に延伸するシャフトと、
前記シャフトの円周方向に所定の間隔で配置された複数の羽部材と、
ラジアル軸受で構成され、前記シャフトを回転可能に支持する少なくとも二つの第1支持部材と、
風力の強度に応じて変位する風受け部材と、
前記シャフトの延伸方向の両端側に設けられ、前記シャフトの回転を制動する一対のブレーキ機構と、
発電機と、
を備え、
前記羽部材は、少なくとも二つの前記第1支持部材の間に設けられ、
風力に基づき前記発電機で発電し、
前記ブレーキ機構は、前記シャフトの外面に沿って、前記シャフトの一部を周回するように配置されたブレーキベルトを含み、
前記ブレーキベルトは、前記風受け部材の変位に基づいて、前記シャフトに当接あるいは離隔するように構成されており、
前記ブレーキベルトは、前記シャフトに当接した際、前記シャフトにラジアル荷重を加えて、前記シャフトの回転を制動することを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記ブレーキベルトと対面する部位において、前記シャフトの表面に面粗し加工を施したことを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記シャフト、前記羽部材及び前記第1支持部材を収納する風洞部を備え、
前記風洞部を通過する風力に基づき前記発電機で発電することを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項4】
前記風洞部において、風が流出する流出側開口部の開口面積を、風が流入する流入側開口部の開口面積より大きくしたことを特徴とする請求項3に記載の発電装置。
【請求項5】
前記羽部材で構成された第1羽群と第2羽群とを備え、
前記第1羽群と前記第2羽群とは、前記シャフトの延伸方向に順に配置されており、
前記第1羽群と前記第2羽群との間に、前記シャフトを回転可能に支持する第2支持部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項6】
水源に接続され、水を吐出する吐出部を備え、
前記吐出部を、前記羽部材と対向して設けたことを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項7】
前記羽部材で構成された第1羽群と第2羽群とを備え、
前記第1羽群と前記第2羽群とは、前記シャフトの延伸方向に順に配置されており、
前記シャフトの延伸方向から目視したとき、前記第1羽群を構成する前記羽部材と前記第2羽群を構成する前記羽部材とが、互いに重ならないように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項8】
前記風洞部を浮体に設置し、
前記浮体を貯水部に浮上させるようにしたことを特徴とする請求項3に記載の発電装置。
【請求項9】
水源に接続され、水を吐出する吐出部と、
前記貯水部の水位を計測する水位センサと、
前記水源と前記吐出部との間に設けられた開閉弁と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記水位センサの出力に基づいて前記開閉弁を制御することを特徴とする請求項8に記載の発電装置。
【請求項10】
前記水源と前記吐出部との間に設けられた開閉弁と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記発電機が発電した発電量を計測し、
計測された前記発電量に基づき、前記開閉弁を制御することを特徴とする請求項6に記載の発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に風力によって発電する発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、いわゆる再生可能エネルギーの一形態として風力発電の普及が急速に進んでいる。風力発電に用いられる風力発電装置は、持続可能なエネルギーの供給に貢献し、二酸化炭素の排出を削減する有効な手段となりうる。特に小型の風力発電装置は、個人、事業主体等による自家消費や地域におけるエネルギーの地産地消を可能とし、また電力需要が逼迫した際に余剰電力をグリッドに供給することで、電力インフラの安定性を高める手段として期待されている。
【0003】
小型風力発電装置に関連する技術については、例えば、複数のガイド板を円周上に配置したガイド部と、該ガイド部の内側に配置され、複数の回転翼が取付けられたドラム型風車と、該ドラム型風車の回動軸に連結された発電装置とを備え、前記ガイド部によって導かれた外部の風で前記ドラム型風車を回転させ、前記ドラム型風車の回転によって前記発電装置を駆動する風力発電装置において、風受け部分を有し、前記ガイド部の隣接するガイド板の間の開口部に移動可能に設けられた風力調整板であって、前記外部の風を前記風受け部分で受けて移動し、前記開口部の開口面積を変化させるように構成された風量調節板と、前記外部の風の大きさに応じて前記ドラム型風車の回転を制動するように構成されたブレーキ機構とを備える風力発電装置が知られている。(特許文献1)
【0004】
特許文献1によれば、強風の場合でも損傷するおそれがなく、定格回転数の範囲内でドラム型風車を回転させて発電を継続して行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-241692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で開示された技術では、ドラム型風車の回転軸は垂直方向に延伸されており、風力発電装置は、いわゆる垂直軸型の構成を備えている。このような構成においては、回転軸は風力発電装置の底部に設けられた支持部で回転可能に支持されるが、強風が吹く劣悪な環境下では当該支持部にラジアル方向(径方向)の大きな負荷がかかることが想定される。
【0007】
また、特許文献1で開示された技術では、外部の風の大きさに応じてドラム型風車の回転を制動するブレーキ機構を備えているが、当該ブレーキ機構は、制御ユニットと電気的に接続されており、制御ユニットの指示に基づいて作動する。具体的には、風力発電装置の外部に風速計が配置されており、当該風速計で計測された値が制御ユニットに入力され、制御ユニットは油圧式のブレーキ装置を作動させて風力発電装置の回転を制動する。このような構成では、油圧を加える際に電力を使用することとなり、この電力を差し引くと、発電装置の発電効率を実質的に低下させることとなる。
【0008】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するべく案出されたものであり、その目的は、発電装置を構成する回転体の軸受にかかる負荷を分散し、強風が吹く劣悪な環境下でも損傷することがなく、更に高い発電効率を継続的に得ることが可能な発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するためになされた本発明は、略水平方向に延伸するシャフトと、前記シャフトの円周方向に所定の間隔で配置された複数の羽部材と、前記シャフトを回転可能に支持する少なくとも二つの第1支持部材と、発電機と、を備え、前記羽部材は、少なくとも二つの前記第1支持部材の間に設けられ、風力に基づき前記発電機で発電する発電装置である。
【0010】
これによって、シャフトと羽部材とで構成される回転体は、水平方向の少なくとも二か所で支持されることで、回転体にかかる応力・負荷が複数の軸受に分散され、強風等の劣悪な環境に晒されたとしても、損傷や故障等を防止することが可能となる。
【0011】
また、本発明は、前記シャフト、前記羽部材及び前記第1支持部材を収納する風洞部を備え、前記風洞部を通過する風力に基づき前記発電機で発電するようにしたものである。
【0012】
これによって、更にネット等を併用することで、風洞部の内部空間に鳥や動物等が侵入することが防止され、更に人等が不用意に回転体に接触することが防止される。
【0013】
また、本発明は、前記風洞部において、風が流出する流出側開口部の開口面積を、風が流入する流入側開口部の開口面積より大きくしたものである。
【0014】
これによって、風洞部の流出側開口部では気流の渦が発生して気圧が低下する。渦によって風洞部を通過する気流の風速が増加し、発電量の増大を図ることが可能となる。
【0015】
また、本発明は、前記羽部材で構成された第1羽群と第2羽群とを備え、前記第1羽群と前記第2羽群とは、前記シャフトの延伸方向に順に配置されており、前記第1羽群と前記第2羽群との間に、前記シャフトを回転可能に支持する第2支持部材を備えるようにしたものである。
【0016】
これによって、シャフトと羽部材とで構成される回転体は、水平方向の三か所で支持されることで、回転体にかかる応力・負荷が複数の軸受に分散され、強風等の劣悪な環境に晒されたとしても、発電装置の損傷や故障等を防止することが可能となる。
【0017】
また、本発明は、風力の強度に応じて変位する風受け部材と、前記シャフトの回転を制動する制動部材と、を備え、前記制動部材は、前記風受け部材の変位に基づいて、前記シャフトに当接あるいは離間するように構成したものである。
【0018】
これによって、ブレーキ機構を作動させる電力を不要として、発電効率を実質的に向上させることが可能となる。
【0019】
また、本発明は、水源に接続され、水を吐出する吐出部を備え、前記吐出部を、前記羽部材と対向して設けたものである。
【0020】
これによって、発電装置は、風力のみならず水力を用いて発電することが可能となる。また吐出部から放出される水流によって、羽部材に付着した汚れを除去することも可能となる。
【0021】
また、本発明は、前記シャフトに配置された前記羽部材のうち、円周方向に隣接する前記羽部材が成す角度をθとし、前記シャフトの中心から前記羽部材の先端までの長さをRとしたとき、前記吐出部は、前記シャフトの中心から半径方向にRcosθ離れた位置から前記羽部材の半径方向の外端までの間に配置されているものである。
【0022】
これによって、シャフトと羽部材とで構成される回転体において、羽部材が円周方向のどの位置にあっても、吐出部から吐出された水流は、少なくとも1つの羽部材に確実に当たるため、水力発電モードにおいて、水を無駄なく発電に利用できるとともに、回転体の回転速度の変動を小さくすることが可能となる。
【0023】
また、本発明は、前記羽部材で構成された第1羽群と第2羽群とを備え、前記第1羽群と前記第2羽群とは、前記シャフトの延伸方向に順に配置されており、前記シャフトの延伸方向から目視したとき、前記第1羽群を構成する前記羽部材と前記第2羽群を構成する前記羽部材とが、互いに重ならないように配置されているものである。
【0024】
これによって、水力発電モードにおいて、更に回転体の回転速度の変動を小さくすることが可能となる。
【0025】
また、本発明は、前記風洞部を浮体に設置し、前記浮体を貯水部に浮上させるようにしたものである。
【0026】
これによって、水上に配置された風洞部は、風の向きに応じて容易に回転し、効率よく風を受けることが可能となる。
【0027】
また、本発明は、水源に接続され、水を吐出する吐出部と、前記貯水部の水位を計測する水位センサと、前記水源と前記吐出部との間に設けられた開閉弁と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記水位センサの出力に基づいて前記開閉弁を制御するようにしたものである。
【0028】
これによって、貯水部の水位が下がった場合は、吐出部から水流を放出して、発電装置の動作モードを水力発電モードに切り替えるとともに、貯水部を水で満たすことが可能となる。
【0029】
また、本発明は、前記水源と前記吐出部との間に設けられた開閉弁と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記発電機が発電した発電量を計測し、計測された前記発電量に基づき、前記開閉弁を制御するようにしたものである。
【0030】
これによって、風が吹いていない状況では発電機の動作モードを風力発電モードから水力発電モードに切り替えて発電を継続することが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
このように、本発明によれば、発電装置を構成する回転体にかかる応力・負荷が複数のの軸受に分散させ、強風が吹く劣悪な環境下でも損傷することがなく、更に高い発電効率を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施形態に係る発電装置1の概要を示す説明図
図2】発電装置1及びその付帯設備の構成を示す説明図
図3】回転体2c及びその周辺の構成を示す説明図
図4】(A)、(B)は、発電装置1のブレーキ機構30の構成を説明する説明図
【発明を実施するための形態】
【0033】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る発電装置1の概要を示す説明図である。発電装置1は、発電装置本体2と、浮体3と、浮体3の複数個所(例えば4か所)で発電装置本体2を支持する本体支持部4と、を含んでいる。なお、以降の説明において、図1に示す気流Fが流入する側を前、その逆方向を後、気流Fが流入する側に向って右側を右、その逆方向を左、発電装置1において発電装置本体2が配置された側を上、浮体3が配置された側を下と称することがある。
【0034】
発電装置本体2のサイズは特に限定されないが、例えば、幅(左右方向)は1.5m、奥行(前後方向)は60cm、高さ(上下方向)は60cm程度に小型化されている。発電装置本体2は、略水平方向に配置されたシャフト2a、シャフト2aに設けられた羽部材2b(シャフト2aと羽部材2bとを合わせて回転体2cと称することがある。)、シャフト2aを延伸方向の両端部近傍で支持する二つの第1回転体支持部2p、シャフト2aを略中央部分で支持する第2回転体支持部2q、発電機2e、風受け部材6、及び風洞部2fで構成される。なお、発電装置本体2の上に屋根板等を配置してもよい。
【0035】
シャフト2aは、例えばアルミニウムで構成された円筒形の部材である。なお、シャフト2aは6061合金、5052合金といったアルミニウム合金あるいはステンレス鋼で構成してもよい。羽部材2bもシャフト2aと同様にアルミニウム合金等で構成される。羽部材2bとして、より軽量でかつ強度が高い、例えばCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)やGFRP(Glass Fiber Reinforced Plastic)といった、樹脂と補強材とで構成される複合材を用いてもよい。図示するように、シャフト2aは水平方向に延伸して配置されている。ここでシャフト2aは実質的に水平方向に延伸していればよく、例えば水平方向から10度[deg]程度、傾斜していても構わない。
【0036】
羽部材2bは、表面に塗装(コーティング)を行ってもよい。塗装においては、例えば黒色塗料を用いてもよい。表面を黒色にすることで日照によって表面温度が上昇し、表面に付着した有機物等の分解が促進される。また羽部材2bに光触媒塗装を施してもよい。光触媒塗料に含まれる酸化チタンは、紫外線が照射されると親水性を発揮して羽部材2bの表面に水の薄膜を生成するとともに、更に触媒として作用して活性酸素を生成する。活性酸素は有機物を分解することから、分解された有機物は親水性をもつ羽部材2bの表面を雨(あるいは、吐出部10a(図3参照)から放出される水流WS(後述する))の勢いで流される。このように、光触媒塗料はセルフクリーニング機能を有しており、羽部材2bに有機物等が付着するのを防止し、回転体2cを常に円滑に回転させるのに寄与しうる。もちろん、シャフト2aについても同様に塗装を施してよい。
【0037】
羽部材2bは、シャフト2aの外周に例えばボルトで固定されており、複数の羽部材2b(ここでは8つ)が円周方向に等角度で(所定の間隔で)配置されている。なお、羽部材2bを金属で構成した場合は、羽部材2bとシャフト2aとを溶接で接合してもよく、羽部材2bを樹脂を含む複合材で構成した場合は、例えばシャフト2aに溝部(図示せず)を形成し、当該溝部に羽部材2bの端部を挿入し、これを接着剤で固定してもよい。羽部材2bは、シャフト2aの延伸方向において、左右の二領域に配置されており、それぞれ第1羽群2bF、第2羽群2bSを構成している。
【0038】
風洞部2fは、例えば金属製フレームに、金属製あるいは樹脂製の板材を組み付けて構成される。風洞部2fの前方には流入側開口部2gが設けられ、後方には流出側開口部2h(図3参照)が設けられている。気流F(風)は流入側開口部2gから内部空間Sに流入し、流出側開口部2hから流出する。なお、流出側開口部2hの後方に風見安定用の翼を設けてもよい。風見安定用の翼を設けることで、流入側開口部2gは、安定して風上の方向を向くようになる。
【0039】
回転体2c、第1回転体支持部2p、第2回転体支持部2qは、風洞部2fの内部空間Sに収納されている。風洞部2fは、後方において前部よりも開口面積が徐々に大きくされ、後部はいわゆるラッパ形状を成している。風洞部2fの後部をラッパ形状とすることで、風洞部2fは風レンズ(風集中器)を構成する。
【0040】
このように、本実施形態の発電装置1は、風洞部2fにおいて、風が流出する流出側開口部2hの開口面積を、風が流入する流入側開口部2gの開口面積より大きくしている。これによって、風洞部2fの流出側開口部2hでは気流の渦ST(図3参照)が発生して気圧が低下する。これによって、気流Fの流入側開口部2gの風速が増加する。発電量は風速の3乗に比例することから、発電量の増大が図られる。なお、流入側開口部2g及び流出側開口部2hに、ネット等(図示せず)を配置してもよい。これによって、シャフト2a、羽部材2b及び第1支持部材(第1回転体支持部2p)を風洞部2fに収納することと併せ、風洞部2fの内部空間Sに、鳥や動物等が侵入することが防止され、更に人等が不用意に回転体2cに接触することが防止される。
【0041】
風洞部2fの内部空間Sにおいて、風洞部2fの下部の内面にはベアリングを含む第1回転体支持部2p(第1支持部)が立設されている。第1回転体支持部2pは、少なくともシャフト2aの両端部の近傍に配置され、シャフト2aを回転可能に支持する。即ち、羽部材2bは、シャフト2aの延伸方向において、二つの第1回転体支持部2pの間に設けられている。
【0042】
ここでベアリングは、ボールベアリング、ローラーベアリング等が採用され、径方向の負荷を受けるラジアル軸受として機能する。また、第1羽群2bFと第2羽群2bSとの間には第2回転体支持部2q(第2支持部)が設けられている。第2回転体支持部2qもベアリングで構成されており、シャフト2aを回転可能に支持する。シャフト2aの一端は発電機2eと機械的に連結されている。発電機2eとしては、例えばアジテーション発電機、永久磁石発電機が用いられる。
【0043】
発電機2eには増速機(図示せず)が内蔵され、発電機2eとシャフト2aとは増速機を介して連結されている。後述するように、本実施形態の発電装置1は、風力で発電する風力発電モード、及び水力で発電する水力発電モードの二つの動作モードを切り替え可能に構成されている。そして、動作モードによって増速機の増速比が変更される。風力発電モードでは、風力が弱い場合であっても回転体2cが容易に回転するよう増速率は小さく設定される。他方、水流WS(図3参照)は、気流Fよりも運動量を大きくしやすいことから、水力発電モードでは増速率は大きく設定される。
【0044】
風洞部2f(発電装置本体2)は、本体支持部4を介して浮体3の上に設置されている。本体支持部4の材質は特に限定されないが、例えば金属や樹脂製のブロックが好適に利用できる。浮体3は、表面に耐候・耐光性塗装を施したポリプロピレン等の樹脂で構成され、上下に扁平な円柱形状を呈し、更に浮力を増大させるため中空構造とされている。そして、発電装置本体2が設置された浮体3は、水を蓄えた貯水部8に浮上した状態で使用に供される。
【0045】
ここで、浮体3の浮力は、発電装置本体2を設置した状態で、少なくとも浮体3の上部が貯水部8に張られた水の水面から露出するように設定される。なお、上方から見たとき、浮体3及び発電装置本体2の全体(即ち、発電装置1)の重心と、浮体3の中心とが重なるように、浮体3の所定位置にバランサを設置してもよい。もちろん、浮体3上における発電装置本体2の位置を適宜調整して、発電装置1の重心と浮体3の中心とを重ねてもよい。また、上述した風見安定用の翼は、浮体3に設けてもよい。特に、当該翼を発電装置本体2の後方で、かつ浮体3の外縁近傍に設けることで、風速が小さい場合であっても、流入側開口部2gは、安定して風上の方向を向くようになる。
【0046】
貯水部8は、浮体3を設置した際、浮体3の側面と貯水部8の内面との間に間隙が生じる大きさに形成されており、更に、当該間隙には、複数(少なくとも3つ)の浮体位置規制部9が設けられている。浮体位置規制部9は、ゴム等で構成されて浮体3の側面と当接して回動するローラ部材と、貯水部8の底面等に設けられローラ部材を回転可能に支持する支柱部(共に図示せず)とを含む。これによって、貯水部8において、浮体位置規制部9は、風等によって浮体3が水平方向に移動するのを規制する。ただし、浮体位置規制部9によって浮体3の水平面内における回転は規制されない。即ち、浮体3は、浮体3の上面における中心を軸として水平面内を回転可能とされている。これによって、浮体3とともに発電装置本体2は、風向きに応じて貯水部8の中で回転し、気流Fは流入側開口部2gから風洞部2fに流れ込む。
【0047】
このように、本実施形態の発電装置1は、風洞部2fを浮体3に設置し、浮体3を貯水部8に浮上させるようしている。これによって、水上に配置された風洞部2fは、風の向きに応じて容易に回転し、効率よく風を受けることが可能となる。
【0048】
浮体3の下部には、接続部7が設けられている。接続部7は、更に貯水部8の底面と連結されている。接続部7は、少なくとも回転フランジ(ロータリージョイント)とスリップリング(共に図示せず)とが一体に構成されており、浮体3は接続部7を介して貯水部8に対して相対的に回転可能とされている。
【0049】
更に、接続部7において回転フランジは上下方向に伸縮する蛇腹ホース(図示せず)と接続されている。後述するように、発電装置1は風力のみならず水力によっても発電を行う。水力発電に用いる水は、回転フランジと蛇腹ホースとを介して発電装置本体2に供給される。この構成によって、気流Fの風向に応じて浮体3が回転したとしても、あるいは貯水部8の水位が変動して、浮体3と接続部7との上下位置が多少変動したとしても、継続的かつ安定して発電装置本体2に水を供給することが可能となる。
【0050】
また、発電機2eで発電された電力は、スリップリングを介して外部に取り出される。スリップリングを採用することで、浮体3が回転したとしても、あるいは浮体3と接続部7との上下位置が多少変動したとしても、継続的かつ安定して発電装置本体2から電力を取り出すことが可能となる。
【0051】
更に、貯水部8の側面には、余剰水排出口8aが設けられており、降雨等により貯水部8に水が流れ込んだ際、余剰の水は余剰水排出口8aから排出され、貯水部8の水位が高くなることが防止される。また、例えば浮体3の縁部には水位センサ11が設けられており、水位センサ11の出力に基づいて、貯水部8の水位が低くなったと判断された場合は、貯水部8に水が注入され、貯水部8の水位が低くなることが防止される(詳細は後述する)。即ち、貯水部8の水位は実質的に一定となるように管理される。
【0052】
なお、貯水部8の一部は地下に設けられてもよいが、この際、余剰水排出口8aは地上に露出するように設けられる。なお、余剰水排出口8aから溢れ出た水は、図示しない貯水槽に導かれてもよく、当該貯水槽に蓄えられた水は、別途ポンプで汲みだされ、例えば農業用水や濾過をしたうえで生活用水として利用されうる。もちろん、ポンプ等で貯水部8から直接水を汲みだして生活用水等に利用してもよい。この場合も上述した水位センサ11の出力に基づき、貯水部8に水が補充される。
【0053】
また、風洞部2fの前部には、左右に風受け部材6が設けられている。後述するように、風受け部材6は風力に応じて変位し、この変位量に基づいて回転体2cの回転が制動される。
【0054】
なお、シャフト2aは円筒形のみならず、その延伸方向と直交する断面の形状を多角形としてもよい。また発電装置1から風洞部2fを除去した態様、あるいは発電装置本体2、浮体3を貯水部8に浮かせず地上に配置した態様、貯水部8を用いず、浮体3を海洋や池、湖沼に浮かせた態様であっても発電装置1として機能しうる。
【0055】
このように、本実施形態の発電装置1は、略水平方向に延伸するシャフト2aと、シャフト2aの円周方向に所定の間隔で配置された複数の羽部材2bと、シャフト2aを回転可能に支持する少なくとも二つの第1支持部材(第1回転体支持部2p)と、発電機2eと、を備え、羽部材2bは、少なくとも二つの第1支持部材(第1回転体支持部2p)の間に設けられ、風力に基づき発電機2eで発電する。これによって、シャフト2aと羽部材2bとで構成される回転体2cは、水平方向の少なくとも二か所で支持されることで、回転体2cにかかる応力・負荷が複数の軸受に分散され、強風等の劣悪な環境に晒されたとしても、損傷や故障等を防止することが可能となる。
【0056】
図2は、発電装置1及びその付帯設備の構成を示す説明図である。図2においては、発電装置1を流入側開口部2gの側から目視した状態を示している。図示するように、回転体2cのシャフト2aは、左側の端部(開放端)において、及び第2羽群2bSと発電機2eとの間において、それぞれ第1回転体支持部2pに回転可能に支持され、更にシャフト2aは、その延伸方向(左右方向)に順に配置された第1羽群2bFと第2羽群2bSとの間において、第2回転体支持部2qで回転可能に支持されている。
【0057】
このように、本実施形態の発電装置1は、羽部材2bで構成された第1羽群2bFと第2羽群2bSとを備え、第1羽群2bFと第2羽群2bSとは、シャフト2aの延伸方向に順に配置されており、第1羽群2bFと第2羽群2bSとの間に、シャフト2aを回転可能に支持する第2支持部材(第2回転体支持部2q)を備えている。これによって、シャフト2aと羽部材2bとで構成される回転体2cは、水平方向の三か所でラジアル軸受によって支持されることで、回転体2cにかかる応力・負荷が複数の軸受に分散され、強風等の劣悪な環境に晒されたとしても、発電装置1の損傷や故障等を防止することが可能となる。
【0058】
また、シャフト2aを両端部以外でも支持することで、シャフト2a全体の剛性が向上し、振動や変形を抑制できる。結果的にシャフト2a、第1回転体支持部2p、第2回転体支持部2qの耐久性が向上し、発電装置1の長寿命化を図ることが可能となる。なお、シャフト2aを略水平方向に配置することで、複数の羽群、第1回転体支持部2p、第2回転体支持部2qは、比較的低所に配置される。これによって、メンテナンス(清掃、修理、交換等)を行う際において、いわゆる高所作業が不要となり、作業性・安全性が向上する。
【0059】
回転体2cの後方の上方には、シャフト2aの延伸方向に、第1羽群2bF及び第2羽群2bSと並行して放水部10が設けられている(併せて図3を参照)。放水部10には、羽部材2bと対向する位置に複数の吐出部10aが設けられている。そして吐出部10aからは水流WS(図3参照)が放出される。この水流WSによって回転体2cが回転し、このとき発電装置1は水力発電モードで動作する。
【0060】
以下、発電装置1の付帯設備について説明する。付帯設備としては、制御部20、水源13、開閉弁14、交流/直流変換器15、蓄電池17、水位センサ11が挙げられる。制御部20は、CPU(Central Processing Unit)等で構成され、図示しないROM(Read Only Memory)、RAM(Random access memory)等の記憶部に記憶された制御プログラムに従って動作する。制御部20は図示しない外部電源あるいは蓄電池17から電力を供給されて動作する。なお、制御部20は、例えば発電装置1の近傍において発電装置1とは別筐体に収納される。
【0061】
水源13としては、例えば、河川、池等から水路を経由して引かれた水や、所定の貯水槽(図示せず)に蓄えられた雨水、上水道が用いられる。これらは所定の水圧を確保するために、発電装置1よりも高所から引き込まれ、あるいは高所に貯水される。もちろん所定の水圧が得られるのであれば、水源13として上水道を直接用いてもよい。
【0062】
水位センサ11は、貯水部8に張られた水の水位を計測する。水位センサ11としては、例えば水面に向けて音波を発射し、音波が水面で反射して戻ってくるまでの時間を計測する超音波式水位センサ、ウキを水面に浮かせ、ウキに接続されたポテンショメータ、あるいはウキの位置を非接触で検出する光学センサを用いることができる。なお、水位センサ11は浮体3上に配置されてもよく、貯水部8あるいはその近傍に配置されてもよい。
【0063】
制御部20は、水位センサ11の出力に基づいて開閉弁14を制御する。具体的には、水位センサ11によって貯水部8の水位が所定の水位より低くなった場合、制御部20は開閉弁14を開弁する。他方、水位が所定の水位以上となった場合、開閉弁14を閉弁する。貯水部8の水位が所定の値より低くなる場合としては、主にポンプ等で貯水部8から直接水を汲み出した場合が該当する。ここで「所定の水位」とは、例えば余剰水排出口8aの下縁の水位を意味する。
【0064】
開閉弁14が開弁されると、水源13の水は、排水管12によって開閉弁14、接続部7を経由して放水部10に送られ、吐出部10aから水流WS(図3参照)が放出される。吐出部10aから水流WSを放出することで、発電装置1の動作モードは、風力発電モードから水力発電モードに切り替わる。上述したように、接続部7は上下方向に伸縮する蛇腹ホースを含むため、貯水部8の水位が変動した場合であっても、水源13から吐出部10aに安定して水を供給することができる。なお、制御部20が開閉弁14を開弁した後、吐出部10aから吐出された水が貯水部8に到達するまでには遅延が発生するため、水が過剰供給される場合がある。しかしながら、余剰の水は上述した余剰水排出口8aから排出された後(あるいは、貯水部8から汲み上げられて)再利用されるため、水源13として上水道を使用した場合であっても、水資源が無駄にされることはない。
【0065】
このように、本実施形態の発電装置1は、水源13に接続され、水を吐出する吐出部10aと、貯水部8の水位を計測する水位センサ11と、水源13と吐出部10aとの間に設けられた開閉弁14と、制御部20と、を備え、制御部20は、水位センサ11の出力に基づいて開閉弁14を制御する。これによって、貯水部8の水位が下がった場合は、吐出部10aから水流WSを放出して、発電装置1の動作モードを水力発電モードに切り替えるとともに、貯水部8を水で満たすことが可能となる。
【0066】
発電機2eで発電された電力は、接続部7に設けられたスリップリング(図示せず)を介して、導線16によって発電装置1の外部に引き出され、交流/直流変換器15に入力される。交流/直流変換器15は、発電機2eが出力した交流を直流に変換する。そしてその電力は蓄電池17に蓄えられる。蓄電池17に蓄えられた電力は、直流/交流変換器(図示せず)を介して一般家庭等で使用(地産地消)されてもよく、電力グリッドを介して外部に送電されてもよい。
【0067】
ここで交流/直流変換器15の出力は、制御部20に入力される。制御部20は、電力計(図示せず)を備えており、電力計の出力に基づき発電装置1の発電量を計測する。そして、発電量が所定の値より小さいあるいはゼロの場合(以降、「条件A」と称することがある。)、制御部20は、開閉弁14を開弁し、上述した吐出部10aから水を吐出する。この場合も、発電装置1の動作モードは、風力発電モードから水力発電モードに切り替わる。
【0068】
このように、本実施形態の発電装置1は、水源13と吐出部10aとの間に設けられた開閉弁14と、制御部20と、を備え、制御部20は、風洞部2fを通過する風(気流F(図1参照))の力に基づいて発電機2eが発電した発電量を計測し、計測された発電量に基づき、開閉弁14を制御する。これによって、風が吹いていない状況では発電モードを風力発電モードから水力発電モードに切り替えて発電を継続することが可能となる。
【0069】
水力発電モードに移行する際、制御部20は、発電機2eに所定の制御コマンドを送信する。制御コマンドを受信した発電機2eは、上述した増速機のギアトレインを増速率が大きくなるように組み替える。これによって、水力発電モードにおいては、回転体2cの回転が増速されて発電が行われる。水力発電モードは所定の期間(例えば5分間)継続され、その後、制御部20は開閉弁14を閉弁し、動作モードを風力発電モードに切り替える。風力発電モードでは、増速機のギアトレインは増速率が小さくなるように組み替えられる。風力発電モードに切り替えた後、制御部20は交流/直流変換器15の出力を参照し、上述した条件Aが満たされる場合、再度動作モードを再度水力発電モードに切り替える。
【0070】
図3は、回転体2c及びその周辺の構成を示す説明図である。図3は、発電装置本体2を右側から側面視した状態を示している。ただし、風洞部2fの筐体や発電機2eの記載は省略している。また、シャフト2aに配置された羽部材2bのうち、第1羽群2bFは実線で描き、第2羽群2bSは二点鎖線で描いている。
【0071】
図示するように、羽部材2bは外周に向うほど、円周方向に湾曲するように形成され、更にその外端部は、略L字形状とされている。このように、羽部材2bは凹部2biで気流Fを受ける構造とされ、気流Fを受けた回転体2cは方向D1に回転し、回転体2cと連結された発電機2e(図2参照)で発電が行われる。羽部材2bのうちシャフト2aに当接する基部は、シャフト2aの外周面と同じ曲率に形成され、羽部材2bとシャフト2aとは、ボルト(図示せず)あるいは溶接で接合される。なお、羽部材2bを更に左右方向(シャフト2aの延伸方向)に湾曲させて凹部2biを椀状に構成してもよい。
【0072】
そして側面視にて、第1羽群2bFを構成する羽部材2bと第2羽群2bSを構成する羽部材2bとは、シャフト2aの円周方向に所定の角度だけ互いにシフトして配置されている。具体的には第1羽群2bF、第2羽群2bSのそれぞれにおける羽部材2bの枚数を8枚とするとき、各羽群において円周方向に隣接する羽部材2bは、θ=360/8=45[deg]の間隔で配置されている。そして、第1羽群2bFと第2羽群2bSとの関係においては、各羽群を構成する羽部材2bは、円周方向にθ/2=22.5[deg]の間隔で配置されている。
【0073】
もちろん一つの羽群を構成する羽部材2bの枚数は任意に定めてよい。羽部材2bの枚数をNとするとき、一つの羽群における羽部材2bは、円周方向にθ=360/N[deg]の間隔で配置され、二つの羽群の関係において、羽部材2bは、θ/2=360/2N[deg]の間隔で配置される。更に、シャフト2aの延伸方向に順に配置される羽群の数をMとするとき、M個の羽群の関係において、羽部材2bは、θ/M=360/(M×N)[deg]の間隔で配置される。
【0074】
放水部10には前後方向に複数列(ここでは三列)の吐出部10aが設けられている。吐出部10aは各羽群あたり左右方向に複数行(三行)設けられており(図2参照)、本実施形態では計9個×羽群の数(ここでは2つ)の吐出部10aが羽部材2bの凹部2biと向き合うように配置されている。吐出部10aから水流WSを放出することによって、羽部材2bは方向D1に回転する。
【0075】
このように、本実施形態の発電装置1は、水源13(図2参照)に接続され、水(水流WS)を吐出する吐出部10aを備え、吐出部10aを、羽部材2bと対向して設けている。吐出部10aは放水部10から射出口に向けて開口がテーパー状に絞り込まれており、水流WSの吐出速度が高速化される。発電装置1は風力のみならず水流WSを用いて発電する。また水流WSによって、羽部材2bに付着した汚れを除去することも可能となる。特に羽部材2bに光触媒塗装を施した場合、クリーニング効果は顕著なものとなる。
【0076】
ここで、各羽群において円周方向に隣接する羽部材2bの配置間隔、即ち、隣接する二つの羽部材2bが成す角をθとし、シャフト2aの中心から羽部材2bの先端までの長さ(回転体2cの半径)をRとしたとき、吐出部10aは、シャフト2aの中心から半径方向にRcosθ離れた位置と羽部材2bの半径方向の外端との間に配置されている。即ち、シャフト2aの半径方向における吐出部10aの水(水流WS)の吐出範囲L1は、L1=R(1-cosθ)となる。
【0077】
これによって、回転体2cにおける羽部材2bが円周方向のどの位置にあっても、吐出部10aから吐出された水流WSは、少なくとも1つの羽部材2bに確実に当たるため、水力発電モードにおいて、水を無駄なく発電に利用できるとともに、回転体2cの回転速度の変動を小さくすることが可能となる。
【0078】
また、本実施形態の発電装置1は、上述したように羽部材2bで構成された第1羽群2bFと第2羽群2bSとを備え、第1羽群2bFと第2羽群2bSとは、シャフト2aの延伸方向に順に配置されており(図2参照)、シャフト2aの延伸方向から目視したとき、第1羽群2bFを構成する羽部材2bと第2羽群2bSを構成する羽部材2bとが、互いに重ならないように(非重畳に)配置されている。これによって、水力発電モードにおいて、更に回転体2cの回転速度の変動を小さくすることが可能となる。
【0079】
図4(A)、(B)は、発電装置1のブレーキ機構30の構成を説明する説明図である。以降、図4図1を併用して説明する。シャフト2aの延伸方向の両端部近傍には、一対のブレーキ機構30が設けられている。ブレーキ機構30は、風受け部材6、風受け部材支持部30a、板ばね部材30b、リンク機構30c、ブレーキベルト30dで構成される。
【0080】
風受け部材6は、樹脂あるいはステンレスやアルミニウム合金等の金属で構成された板状の部材であり、風洞部2fの左右前面において、風洞部2fから突出するように設けられている(図1参照)。風受け部材6は、風洞部2fの内部において上下方向に延伸する風受け部材支持部30aで回動可能に支持され、回転軸Axを中心として方向D2と方向D3との間で変位する。
【0081】
風受け部材支持部30aと風洞部2fとの間には、ステンレスあるいはチタン等の金属で構成された板ばね部材30bが配置されている。板ばね部材30bによって、風受け部材6は無風状態では方向D3に付勢され、風を受けると方向D2に変位する。そして強い風を受けるほど、方向D2への変位量が大きくなる。
【0082】
風受け部材支持部30aのうち、風洞部2fの内部に延伸する側の端部には、リンク機構30cの一端が接続されている。そしてリンク機構30cの他端にはブレーキベルト30dが接続されている。ここでブレーキベルト30dの材料としては、例えばゴム等を用いることができるが、ベース材に金属や繊維材といった摩擦材を混入した材料を用いて構成してもよい。
【0083】
図4(B)に示すように、ブレーキベルト30dのうち、リンク機構30cと接続されていない側は、風洞部2fに係合されている。そして、ブレーキベルト30dは、シャフト2aの外面に沿って、その一部を周回するように設けられている。
【0084】
無風状態においては、風受け部材支持部30aが方向D3に付勢されることで、リンク機構30cは方向D5に付勢されている。この状態においては、シャフト2aとブレーキベルト30dとは離間しており、ブレーキベルト30dがシャフト2aの回転を妨げることはない。他方、強風が吹く状況では、風受け部材支持部30aは方向D2に変位し、これによってリンク機構30cは方向D4に変位する。これに伴って、リンク機構30cと接続された側のブレーキベルト30dの端部も、方向D4に変位する。そしてブレーキベルト30dが方向D4に引かれて、シャフト2aの外面と当接し、シャフト2aの回転に制動がかかる。このときの制動力は風力が大きくなるほど強くなる。なお、ブレーキベルト30dと対面する部位において、シャフト2aの表面に梨地処理等の面粗し加工を施してもよく、これによって制動力を更に大きくすることができる。
【0085】
このように、本実施形態の発電装置1は、風力の強度に応じて変位する風受け部材6と、シャフト2aの回転を制動する制動部材(ブレーキベルト30d)と、を備え、制動部材は、風受け部材6の変位に基づいて、シャフト2aに当接あるいは離間するように構成されている。これによって、ブレーキ機構30を作動させる電力を不要として、発電効率を実質的に向上させることが可能となる。
【0086】
以上、本発明に係る発電装置1について特定の実施形態に基づいて詳細に説明したが、これらはあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。例えば、上述した実施形態において、回転体2cは、第1羽群2bF及び第2羽群2bSの二つの羽群を備えるものとして説明したが、羽群の数を3以上に増やし、複数の羽群の間に、第2支持部材(第2回転体支持部2q)を設けてもよい。
【0087】
また、回転体2cとして実施形態とは異なる構成を採用してもよく、例えばダリウス型、ジャイロミル型、直線翼型、クロスフロー型、サボニウス型、パドル型、S字ロータ型の風車を用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明に係る発電装置は、回転体にかかる応力・負荷が複数の軸受に分散され、強風が吹く劣悪な環境下でも損傷することがなく、更に高い発電効率を継続的に得ることが可能であるから、例えば一般家庭、事業所、商業施設や電力が供給しにくい地域における電力供給源として、広く利用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 発電装置
2 発電装置本体
2a シャフト
2b 羽部材
2bi 凹部
2bF 第1羽群
2bS 第2羽群
2c 回転体
2e 発電機
2f 風洞部
2g 流入側開口部
2h 流出側開口部
2p 第1回転体支持部
2q 第2回転体支持部
3 浮体
6 風受け部材
7 接続部
8 貯水部
8a 余剰水排出口
10 放水部
10a 吐出部
11 水位センサ
13 水源
14 開閉弁
15 交流/直流変換器
17 蓄電池
20 制御部
30 ブレーキ機構
30a 風受け部材支持部
30b 板ばね部材
30c リンク機構
30d ブレーキベルト
Ax 回転軸
F 気流
WS 水流
【要約】
【課題】回転体にかかる応力・負荷を複数の軸受に分散し、強風が吹く劣悪な環境下でも損傷することがなく、更に高い発電効率を得ることが継続的に可能な発電装置を提供する。
【解決手段】
略水平方向に延伸するシャフト2aと、シャフト2aの円周方向に所定の間隔で配置された複数の羽部材2bと、シャフト2aを回転可能に支持する少なくとも二つの第1支持部材(第1回転体支持部2p)と、発電機2eと、を備え、羽部材2bは、少なくとも二つの第1支持部材(第1回転体支持部2p)の間に設けられ、風力に基づき前記発電機2eで発電する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4