(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20240515BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
E02F9/22 E
E02F9/26 B
(21)【出願番号】P 2023517138
(86)(22)【出願日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2022011879
(87)【国際公開番号】W WO2022230417
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-08-14
(31)【優先権主張番号】P 2021076666
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠介
(72)【発明者】
【氏名】中野 寿身
(72)【発明者】
【氏名】金成 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】楢▲崎▼ 昭広
(72)【発明者】
【氏名】廻谷 修一
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/111148(WO,A1)
【文献】特開2014-074315(JP,A)
【文献】国際公開第2014/054194(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/114869(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回可能に取り付けられた上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられた、作業具を含む多関節型の作業装置と、
施工対象の目標形状を表す複数の設計面の情報を含む施工図面を記憶する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記複数の設計面の中から前記作業具の施工目標となる目標設計面を選択する作業機械において、
前記上部旋回体の振動を検出する振動検出装置
と、
前記上部旋回体および前記作業装置を操作するための操作装置とを備え、
前記制御装置は、
前記操作装置の操作量を基に前記作業具の動作速度を算出し、
前記作業具の位置と前記動作速度とを基に所定時間後の前記作業具の予測位置を算出し、
前記作業具の位置に対応する施工目標高さと前記作業具の予測位置に対応する施工目標高さとの差分である施工目標高さ変化に基づき、前記作業具を用いた作業内容が掘削、または、前記作業具を掘削開始位置まで移動させる位置合わせのいずれであるかを判断し、
前記作業内容が位置合わせであると判断した場合は、前記振動検出装置の検出値に関わらず、前記目標設計面の更新を行い、
前記作業内容が掘削であると判断し、かつ前記振動検出装置の検出値が所定の閾値以下の場合には、前記目標設計面の更新を行わない
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記制御装置は、
前記施工目標高さ変化が所定の高さ変化閾値以下の場合は、前記作業具の旋回方向の速度が所定の第1旋回速度閾値以下のときに、前記作業内容を掘削と判断し、前記作業具の旋回方向の速度が前記第1旋回速度閾値を超えたときに、前記作業内容を位置合わせと判断し、
前記施工目標高さ変化が前記高さ変化閾値を超えた場合は、前記作業具の旋回方向の速度が前記第1旋回速度閾値よりも小さい所定の第2旋回速度閾値以下のときに、前記作業内容を掘削と判断し、
前記作業具の旋回方向の速度が前記第2旋回速度閾値を超えたときに、前記作業内容を位置合わせと判断する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記振動検出装置は、前記上部旋回体の角度を検出する角度センサを有し、
前記制御装置は
、前記角度センサで検出した前記上部旋回体の角度の変化率
に基づき、前記上部旋回体の振動の大きさを判断する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1に記載の作業機械において、
動力源となる原動機を備え、
前記振動検出装置は、前記原動機の回転数を検出する回転数センサを有し、
前記制御装置は
、前記回転数センサで検出した前記原動機の回転数の変化率
に基づき、前記上部旋回体の振動の大きさを判断する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項1に記載の作業機械において、
動力源となる原動機を備え、
前記振動検出装置は、前記上部旋回体の角度を検出する角度センサと、前記原動機の回転数を検出する回転数センサとを有し、
前記制御装置は
、前記上部旋回体の角度の変化率
と前記原動機の回転数の変化率とに基づき、前記上部旋回体の振動の大きさを判断する
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルに代表される作業機械の制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の油圧ショベルに代表される作業機械に備えられる装置に関するものとしては、エンジンに代表される原動機により駆動されるポンプと、ポンプに接続されておりポンプ流量(ポンプから吐出された油)の方向を切り替える方向制御弁と、方向制御弁に接続されておりポンプから吐出された油を出し入れして動作するアクチュエータから構成されたシステムが知られている。操縦者は作業機械に備えられた操作レバーに代表される操作装置を操作することでアクチュエータの動作方向と動作速度を決定している。
【0003】
また、近年においては、施工を行う土砂等に対する設計図である施工図面を入力できる手段と、バケット爪先位置情報や姿勢情報を含む作業具位置を推定し、施工図面の中から作業具位置に近い部分を実際に掘削を行いうる目標設計面として出力する手段を備え、目標設計面と作業具位置の関係を操縦者に通知するモニタなどを備えたもの(ガイダンスショベル)がある。さらに、操縦者の操作と目標設計面と作業具位置の関係から目標設計面を掘り過ぎないようにブーム動作を制御することでバケットを目標設計面に沿って移動させる制御を行い、操縦者の操作の補助を行うことで掘削精度の向上を図るもの(半自動制御ショベル)がある。
【0004】
半自動制御ショベルの先行技術文献として、例えば特許文献1がある。特許文献1に記載の半自動ショベルによれば、作業具位置に応じて定期的に目標設計面を更新することにより、操縦者の作業効率を向上させるができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ショベルを用いて施工を行う際には、車体が揺れるような振動が発生する。振動の原因としては、アクチュエータが動く事による重心の変化によるもの、掘削中の土砂固さの変化によるものなど色々な場合がありうる。さらに、ショベルが接地している地面の凹凸が大きいと、振動も大きくなる傾向がある。このように、ショベルに様々な振動が加わることで、作業具位置(バケット位置)が変わり、目標設計面が操縦者の意図に反して変化してしまう場合がある。特に車体が左右方向(ロール角度方向)に揺らされると、作業具位置が大きく変わるため、目標設計面の変化が大きくなる。
【0007】
ガイダンスショベルにおいて、振動によって目標設計面が操縦者の意図に反して変化すると、次のような問題が生じる。操縦者は目標設計面通りに施工を行うため、モニタに表示されている目標設計面に従ってバケット位置を補正する。そのため、振動によって目標設計面が意図せず変化した場合であっても、操縦者は変化後の目標設計面に従ってバケット位置を補正しようとする。しかし、振動による目標設計面の変化は一時的なものであり、その後間もなく目標設計面が元の状態に変化する。そうすると、操縦者は再び元の目標設計面に従ってバケット位置を補正しようとする。このような操作が繰り返されることにより、目標設計面に対するバケット位置が振動的になり、掘削面の滑らかさが損なわれる。加えて、掘削面の滑らかさを担保するために掘削をやり直す必要が生じ、作業効率も低下する。
【0008】
特許文献1に記載の半自動ショベルにおいては、振動によって目標設計面が操縦者の意図に反して変化すると、次のような問題が生じる。半自動ショベルは、目標設計面を掘りすぎないように施工を行うため、目標設計面に従ってアクチュエータを制御する。しかし、振動によって目標設計面が意図せず変化する状況で目標設計面に従ってアクチュエータを制御すると、ガイダンスショベルの場合と同様に、目標設計面に対するバケット位置が振動的になり、掘削面の滑らかさが損なわれる。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、車体振動による掘削精度の低下を抑制できるガイダンスショベルまたは半自動ショベルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に取り付けられた上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられた、作業具を含む多関節型の作業装置と、施工対象の目標形状を表す複数の設計面の情報を含む施工図面を記憶する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記複数の設計面の中から前記作業具の施工目標となる目標設計面を選択する作業機械において、前記上部旋回体の振動を検出する振動検出装置と、前記上部旋回体および前記作業装置を操作するための操作装置とを備え、前記制御装置は、前記操作装置の操作量を基に前記作業具の動作速度を算出し、前記作業具の位置と前記動作速度とを基に所定時間後の前記作業具の予測位置を算出し、前記作業具の位置に対応する施工目標高さと前記作業具の予測位置に対応する施工目標高さとの差分である施工目標高さ変化に基づき、前記作業具を用いた作業内容が掘削、または、前記作業具を掘削開始位置まで移動させる位置合わせのいずれであるかを判断し、前記作業内容が位置合わせであると判断した場合は、前記振動検出装置の検出値に関わらず、前記目標設計面の更新を行い、前記作業内容が掘削であると判断し、前記振動検出装置の検出値が所定の閾値以下の場合には、前記目標設計面の更新を行わないものとする。
【0011】
以上のように構成した本発明によれば、作業具7の位置と振動検出装置11の検出値の大きさとに応じて目標設計面を更新することにより、車体振動に起因して目標設計面が意図更新されてしまうことを防ぐことができる。これにより、ガイダンスショベルまたは半自動ショベルにおいて、振動による掘削精度の低下を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ガイダンスショベルまたは半自動ショベルにおいて、車体振動による掘削精度の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施例に係る油圧ショベルの側面図である。
【
図2】本発明の第1の実施例における油圧制御システムの概略構成図である。
【
図3】本発明の第1の実施例におけるコントローラの処理ブロック図である。
【
図4】本発明の第1の実施例における目標設計面出力処理部の演算ブロック図である。
【
図5】本発明の第2の実施例におけるコントローラの処理ブロック図である。
【
図6】本発明の第2の実施例における車体振動判断処理部の演算ブロック図である。
【
図7】本発明の第3の実施例における車体振動判断処理部の演算ブロック図である。
【
図8】本発明の第2の実施例におけるエンジン回転数変化率および車体角度変化率と車体振動との関係を時系列で示す図である。
【
図9】本発明の第4の実施例におけるコントローラの処理ブロック図である。
【
図10】本発明の第4の実施例における目標設計面出力処理部の演算ブロック図である。
【
図11】本発明の第5の実施例における作業判断処理部の演算ブロック図である。
【
図12】本発明の第5の実施例における旋回速度演算部の演算ブロック図である。
【
図13】本発明の第5の実施例におけるバケット爪先位置予測演算部の演算ブロック図である。
【
図14】本発明の第5の実施例における油圧ショベルの座標系および幾何学演算に関わる情報を示す図である。
【
図15】本発明の第5の実施例における高さ変化予測演算部の演算ブロック図である。
【
図16】本発明の第5の実施例における作業内容推定演算部の演算ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る作業機械として油圧ショベルを例に挙げ、図面を参照して説明する。なお、各図中、同等の部材には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の第1の実施例に係る油圧ショベルの側面図である。
図1に示すように、油圧ショベル200は、下部走行体1と、下部走行体1上に旋回装置8を介して旋回可能に搭載された上部旋回体2と、上部旋回体2の前側に上下方向に回動可能に連結された作業装置210とを備えている。上部旋回体2は、油圧ショベル200の車体を構成している。
【0016】
上部旋回体2は、基礎下部構造をなす旋回フレーム2aを有する。旋回フレーム2aの前側には、作業装置210が上下方向に回動可能に連結されている。旋回フレーム2aの後側には、作業装置210との重量バランスを取るためのカウンタウェイト3が取り付けられている。旋回フレーム2aの左側前部には、運転室4が設けられている。運転室4内には、上部旋回体2および作業装置210を操作するための操作装置である左右の操作レバー15L,15R(
図2に示す)等が配置されている。旋回フレーム2a上には、原動機としてのエンジン16、エンジン16によって駆動される1つまたは複数の油圧ポンプからなるポンプ装置9、旋回装置8を駆動する旋回モータ8a、ポンプ装置9から旋回モータ8aおよび後述するブームシリンダ5a、アームシリンダ6a、バケットシリンダ7aを含む複数のアクチュエータに供給される圧油の流れを制御する複数の方向制御弁からなるコントロールバルブユニット10等が搭載されている。上部旋回体2には、車体の位置を計測するためのアンテナ17が取り付けられている。
【0017】
作業装置210は、基端部が旋回フレーム2aの右側前部に上下方向に回動可能に連結されたブーム5と、このブーム5の先端部に上下、前後方向に回動可能に連結され、ブーム5によって昇降されるアーム6と、このアーム6の先端部に上下、前後方向に回動可能に連結され、ブーム5またはアーム6によって昇降される作業具としてのバケット7と、ブーム5を駆動するブームシリンダ5aと、アーム6を駆動するアームシリンダ6aと、バケット7を駆動するバケットシリンダ7aとを備えている。
【0018】
バケット7には、バケット位置測定システム11が取り付けられている。
図1では、バケット位置測定システム11を直接バケット爪先位置を測るようなものとして図示しているが、上部旋回体2、ブーム5、アーム6およびバケット7のそれぞれの位置関係からバケット爪先位置を演算するようなものでもよい。また、バケット位置測定システム11は、上部旋回体2、ブーム5、アーム6、バケット7それぞれの角度も計測することができる。すなわち、バケット位置測定システム11は、上部旋回体2および作業装置210の角度を検出する角度センサを構成している。
【0019】
図2は、油圧ショベル200に搭載される油圧制御システムの概略構成図である。
図2に示すように、油圧制御システム300は、制御装置としてのコントローラ20と、油圧装置23と、表示装置としてのモニタ22と、操作レバー15L,15Rと、バケット位置測定システム11とを備えている。
【0020】
操作レバー15L,15Rは、操縦者が油圧ショベル200の動作をコントローラ20に指示するための装置であり、操縦者によるレバー操作に応じた操作信号をコントローラ20へ出力する。コントローラ20は、施工図面情報と、エンジン回転数と、操作レバー15L,15Rからの操作信号と、バケット位置測定システム11からの姿勢情報とを基に油圧装置23に動作指令を出力する。施工図面は、例えば3D-CADデータとしてコントローラ20に記憶される。施工図面は、施工対象の目標形状を表す複数の設計面を定義している。以下、施工図面に定義された複数の設計面のうちバケット7が施工目標とする1つの設計面を目標設計面と称する。
【0021】
油圧装置23は、コントローラ20からの動作指令に基づきブームシリンダ5a、アームシリンダ6a、バケットシリンダ7a、旋回モータ8aに圧油を供給し、ブーム5、アーム6、バケット7、旋回装置8を駆動する。モニタ22は、コントローラ20から出力される作業具位置、目標設計面、施工図面等の情報を表示する。
【0022】
図3は、コントローラ20の処理ブロック図である。
図3に示すように、コントローラ20は、操縦者指令処理部30と、目標設計面出力処理部31と、半自動制御処理部32とを有する。
【0023】
操縦者指令処理部30は、操作レバー15L,15Rの操作量からアクチュエータに対する要求速度である操縦者要求速度を決定する。目標設計面出力処理部31は、車体振動情報と作業具位置情報と施工図面情報とを基に目標設計面を決定し、半自動制御処理部32およびモニタ22へ出力する。
【0024】
半自動制御処理部32は、操縦者指令処理部30からの操縦者要求速度と、目標設計面出力処理部31からの目標設計面と、作業具位置情報とを基に、施工対象を掘り過ぎないようにバケット7を目標設計面に沿って移動させる動作指令を油圧装置23へ出力する。
【0025】
なお、本実施例に係る油圧ショベル200は、目標設計面とバケット位置の関係を操縦者に通知する機能と、バケット7を目標設計面に沿って移動させる半自動制御機能の双方を備えているが、いずれか一方の機能のみを備える構成としても良い。具体的には、
図3において、目標設計面出力処理部31からモニタ22へ目標設計面を出力する処理を省略した構成、または、半自動制御処理部32を省略し、操縦者指令処理部30から油圧装置23へ操縦者要求速度を直接出力する構成としても良い。
【0026】
図4は、目標設計面出力処理部31の演算ブロック図である。
図4に示すように、目標設計面出力処理部31は、設計面抽出演算部40と、目標設計面更新演算部41とを有する。
【0027】
設計面抽出演算部40は、施工図面で定義されている複数の設計面の中から、作業具位置からの距離が最小である設計面を抽出し、目標設計面更新演算部41へ出力する。
【0028】
目標設計面更新演算部41は、車体振動が小さい場合は、設計面抽出演算部40から出力される設計面で自身が保持している目標設計面を更新すると共に、更新後の目標設計面を出力する。一方、車体振動が大きい場合は、設計面抽出演算部40から出力される設計面で自身が保持している目標設計面を更新せず、自身が保持している目標設計面を出力する。
【0029】
[第1の実施例の効果]
本実施例では、下部走行体1と、下部走行体1に旋回可能に取り付けられた上部旋回体2と、上部旋回体2に取り付けられた、作業具7を含む多関節型の作業装置210と、施工対象の目標形状を表す複数の設計面の情報を含む施工図面を記憶するコントローラ20(制御装置)とを備え、コントローラ20は、前記複数の設計面の中から作業具7の施工目標となる目標設計面を選択する油圧ショベル200(作業機械)において、上部旋回体2の振動を検出するバケット位置測定システム11(振動検出装置)を備え、コントローラ20は、作業具7の位置と振動検出装置11の検出値の大きさとに応じて前記目標設計面を更新する。なお、本実施例におけるコントローラ20は、作業具7の位置に応じて、前記複数の設計面の中から1つの設計面を選択した後に、バケット位置測定システム11の検出値に応じて、前記目標設計面を前記1つの設計面に更新するように構成されているが、バケット位置測定システム11の検出値に応じて目標設計面を更新することを決定した後に、作業具7の位置に応じて前記1つの設計面を選択しても良い。
【0030】
以上のように構成した本実施例によれば、作業具7の位置と振動検出装置11の検出値の大きさとに応じて目標設計面を更新することにより、車体振動に起因して目標設計面が意図せず更新されることを防ぐことができる。これにより、ガイダンスショベルまたは半自動ショベルにおいて、振動による掘削精度の低下を抑制することが可能となる。
【実施例2】
【0031】
図5は、本発明の第2の実施例におけるコントローラ20の処理ブロック図である。以下、第1の実施例(
図3に示す)との差分を説明する。
図5に示すように、コントローラ20は、車体振動判断処理部33を更に有する。車体振動判断処理部33は、上部旋回体2の角度またはエンジン16の回転数を基に車体振動の大小を判断し、判断結果を車体振動情報として目標設計面出力処理部31へ出力する。
【0032】
図6は、車体振動判断処理部33の演算ブロック図である。
図6に示すように、車体振動判断処理部33は、微分演算部50と、振動判断演算部51とを有する。微分演算部50は、上部旋回体角度(またはエンジン回転数)を時間微分して変化率を算出し、振動判断演算部51へ出力する。振動判断演算部51は、微分演算部50から出力される変化率が所定の閾値よりも大きい場合は車体振動が大きいと判断し、前記変化率が前記閾値以下の場合は車体振動が小さいと判断する。振動判断演算部51は、車体振動の判断結果を車体振動情報として出力する。
【0033】
[第2の実施例の効果]
本実施例における、上部旋回体2の振動を検出する振動検出装置は、上部旋回体2の角度を検出するバケット位置測定システム11(角度センサ)を有し、コントローラ20(制御装置)は、バケット位置測定システム11(角度センサ)で検出した上部旋回体2の角度の変化率が所定の角度変化率閾値を超えた場合は、目標設計面の更新を停止し、バケット位置測定システム11で検出した上部旋回体2の角度の変化率が前記角度変化率閾値以下の場合は、目標設計面の更新を行う。
【0034】
または、本実施例に係る油圧ショベル200(作業機械)は、動力源となるエンジン16(原動機)を備え、上部旋回体2の振動を検出する振動検出装置は、エンジン16(原動機)の回転数を検出する回転数センサ18(
図2に示す)を有し、コントローラ20(制御装置)は、回転数センサ18で検出したエンジン16の回転数の変化率が所定の回転数変化率閾値を超えた場合は、目標設計面の更新を停止し、回転数センサ18で検出したエンジン回転数の変化率が前記回転数変化率閾値以下の場合は、目標設計面の更新を行う。
【0035】
以上のように構成した本実施例によれば、ガイダンスショベルまたは半自動ショベルにおいて、上部旋回体角度(またはエンジン回転数)の変化率を基に車体振動の大小を判断し、車体振動が大きく目標設計面の変化が大きくなると予想される場合は目標設計面の更新を行わないことにより、目標設計面が意図に反して変化することを防ぐことができる。これにより、振動による掘削精度の低下を抑制できるショベルを提供することが可能となる。
【実施例3】
【0036】
図7は、本発明の第3の実施例における車体振動判断処理部33の演算ブロック図である。以下、第2の実施例との差分を説明する。
図7に示すように、車体振動判断処理部33は、微分演算部52と、振動判断演算部53と、微分演算部54と、回転数変化判断演算部55とを有する。
【0037】
微分演算部52は、上部旋回体角度を時間微分して角度変化率を算出し、振動判断演算部53へ出力する。微分演算部54は、エンジン回転数を時間微分して回転数変化率を算出し、回転数変化判断演算部55へ出力する。回転数変化判断演算部55は、回転数変化率が所定の閾値(回転数変化率閾値)より大きければ回転数変化が大きく、そうでなければ回転数変化が小さいと判断し、判断結果を振動判断演算部53へ出力する。
【0038】
振動判断演算部53は、角度変化率が所定の閾値(第1角度変化率閾値)よりも大きい場合、または、角度変化率が第1角度変化率閾値よりも小さく設定された第2角度変化率閾値より大きくかつ回転数変化が大きい場合は、車体振動が大きいと判断し、それ以外の場合(角度変化率が第2角度変化率閾値以下の場合、または、回転数変化率が小さい場合)は、車体振動が小さいと判断する。振動判断演算部53は、車体振動の判断結果を車体振動情報として出力する。
【0039】
図8は、エンジン回転数変化率および車体角度変化率と車体振動の大小との関係を時系列で示す図である。時刻t1から時刻t2までの間、車体角度変化率が第1角度変化率閾値を超えているため、車体振動は大きいと判断される。時刻t3の直後は、車体角度変化率は第2角度変化率閾値を超えかつエンジン回転数変化率は回転数変化率閾値を超えているため、車体振動は大きいと判断される。その後、車体角度変化率は第1角度変化率閾値を超えているため、車体振動は大きいと判断される。車体角度変化率が比較的小さい状態(第1角度変化率閾値以下の状態)でも、エンジン回転数の変化率が大きければ車体振動が大きいと判断する理由は、時間経過とともにエンジン回転数の変化が上部旋回体2に伝わり、車体角度の変化が大きくなる場合があるためである。
【0040】
また、車体角度の変化率に関する閾値の決め方の例としては、バケット位置変化の許容値から角度変化率の許容値を幾何学的に求め、決定する方法がある。バケット位置変化の許容値は、掘削精度に影響のでる単位時間あたりの位置変化を考慮し、「1秒間あたりの変化がバケット幅の長さ」などと規定できる。第1角度変化率閾値は前述の許容値の決め方で算出し、第2角度変化率閾値は第1角度変化率閾値に割合をかけて設定すればよい。
【0041】
また、エンジン回転数の変化率に関する閾値の決め方の例としては、エンジンの回転数仕様から決定する方法がある。負荷が一定の時、エンジンは目標回転数に対して一定の幅をもって回転している。そのため、エンジン回転数の変化が一定の幅を超えた場合は、負荷が一定でなくなり、車体振動が大きくなるとみなすことができる。従って、回転数変化率閾値は「1秒間あたりのエンジン回転数の変化が一定の幅に達する回転数変化率」などと規定できる。
【0042】
[第3の実施例の効果]
本実施例に係る油圧ショベル200(作業機械)は、動力源となるエンジン16(原動機)を備え、上部旋回体2の振動を検出する振動検出装置は、上部旋回体2の角度を検出するバケット位置測定システム11(角度センサ)と、エンジン16(原動機)の回転数を検出する回転数センサ18とを有し、コントローラ20(制御装置)は、上部旋回体2の角度の変化率が所定の第1角度変化率閾値を超えた場合、または、上部旋回体2の角度の変化率が前記第1角度変化率閾値よりも小さい所定の第2角度変化率閾値を超え、かつエンジン16の回転数の変化率が所定の回転数変化率閾値を超えた場合は、目標設計面の更新を停止し、上部旋回体2の角度の変化率が前記第2角度変化率閾値以下の場合、または、エンジン16の回転数の変化率が前記回転数変化率閾値以下の場合は、目標設計面の更新を行う。
【0043】
以上のように構成した本実施例によれば、ガイダンスショベルまたは半自動ショベルにおいて、上部旋回体角度およびエンジン回転数の変化率を基に車体振動の大小を判断し、車体振動が大きく目標設計面の変化が大きくなると予想される場合は目標設計面の更新を行わないことにより、目標設計面が意図に反して変化することを防ぐことができる。これにより、振動による掘削精度の低下を抑制できるショベルを提供することが可能となる。
【実施例4】
【0044】
図9は、本本発明の第4の実施例におけるコントローラ20の処理ブロック図である。以下、第2の実施例(
図5に示す)との差分を説明する。
図9に示すように、コントローラ20は、作業内容判断処理部34を更に有する。
【0045】
作業内容判断処理部34は、操作レバー15L,15Rからの信号(レバーL操作量およびレバーR操作量)と作業具位置情報とを基に作業内容を判断し、判断結果を作業内容情報として目標設計面出力処理部31へ出力する。目標設計面出力処理部31は、施工図面情報と作業具位置情報と車体振動判断処理部33の出力である車体振動情報と作業内容判断処理部34の出力である作業内容情報とを基に設計面を決定し、半自動制御処理部32およびモニタ22へ出力する。
【0046】
図10は、本実施例における目標設計面出力処理部31の演算ブロック図である。以下、第1の実施例(
図4に示す)との差分を説明する。本実施例における目標設計面出力処理部31は、目標設計面更新演算部41の演算処理が第1の実施例と異なる。
【0047】
目標設計面更新演算部41は、車体振動判断処理部33の出力である車体振動情報と作業内容判断処理部34の出力である作業内容とを基に、自信が保持している目標設計面を設計面抽出演算部40の出力である設計面で更新するか否かを決定し、自身が保持している目標設計面を出力する。具体的には、車体振動が小さい場合は、自身が保持している目標設計面を設計面抽出演算部40から出力される設計面で更新し、更新後の目標設計面を出力する。車体振動が大きくかつ作業内容が位置合わせである場合も同様に、自身が保持している目標設計面を設計面抽出演算部40から出力される設計面で更新し、更新後の目標設計面を出力する。車体振動が小さくかつ作業内容が掘削である場合は、自身が保持している目標設計面を設計面抽出演算部40から出力される設計面で更新せず、自身が保持している目標設計面を出力する。
【0048】
ここで、作業内容が位置合わせの場合に、車体振動の大小に関わらず、目標設計面更新演算部41が保持している目標設計面を更新する理由を述べる。作業内容が位置合わせの場合は、掘削を行う場所を決めるため、バケット位置に応じて目標設計面を常に変化させた方が操縦者にとって都合が良く、作業内容が掘削の場合は、掘削面を精度よく仕上げるため、目標設計面の意図しない変化が無い方が操縦者にとって都合が良いためである。
【0049】
[第4の実施例の効果]
本実施例における作業機械200は、上部旋回体2および作業装置210を操作するための操作レバー15L,15R(操作装置)を備え、コントローラ20(制御装置)は、操作レバー15L,15R(操作装置)からの信号を基に、バケット7(作業具)を用いた作業内容が掘削、または、バケット7を掘削開始位置まで移動させる位置合わせのいずれであるかを判断し、前記作業内容が位置合わせであると判断した場合は、バケット位置測定システム11,回転数センサ18(振動検出装置)の検出値に関わらず、目標設計面の更新を行う。
【0050】
以上のように構成した本実施例においても、第1~第3の実施例と同様の効果を達成することができる。また、作業内容が位置合わせと判断された場合は、車体振動の大小に関わらず、バケット7の位置に応じて目標設計面が更新される。これにより、掘削精度の低下を抑制しつつ、バケット7の位置合わせを円滑に行うことが可能となる。
【実施例5】
【0051】
図11は、本発明の第5の実施例における作業内容判断処理部34の演算ブロック図である。
図11に示すように、作業内容判断処理部34は、旋回速度予測演算部60と、バケット爪先位置予測演算部61と、高さ変化予測演算部62と、作業内容推定演算部63とを有する。
【0052】
旋回速度予測演算部60は、操作レバー15L,15Rからのレバー操作量とバケット位置測定システム11からの姿勢情報とを基に旋回複合動作時の旋回速度予測値を算出し、バケット爪先位置予測演算部61および作業内容推定演算部63へ出力する。バケット爪先位置予測演算部61は、操作レバー15L,15Rからのレバー操作量とバケット位置測定システム11からの姿勢情報と旋回速度予測演算部60からの旋回速度予測値とを基にバケット爪先予測位置を算出し、高さ変化予測演算部62へ出力する。
【0053】
高さ変化予測演算部62は、施工図面情報とバケット爪先位置予測演算部61からのバケット爪先予測位置とを基に施工目標の高さ変化の有無を判断し、判断結果を高さ変化判断情報として作業内容推定演算部63へ出力する。作業内容推定演算部63は、旋回速度予測演算部60からの旋回速度予測値と高さ変化予測演算部62からの高さ変化判断情報とを基に作業内容を推定し、推定結果を作業内容情報として目標設計面出力処理部31へ出力する。
【0054】
図12は、旋回速度予測演算部60の演算ブロック図である。
図12に示すように、旋回速度予測演算部60は、旋回角速度予測演算部70と、乗算部71とを有する。
【0055】
旋回角速度予測演算部70は、旋回操作量と旋回角速度とを対応付けた変換テーブルを参照し、操作レバー15L,15Rのレバー操作量に含まれる旋回操作量に応じた旋回角速度を旋回角速度予測値(AngSpdSw)として乗算部71へ出力する。また、旋回角速度予測演算部70は、バケット位置測定システム11からの姿勢情報に含まれる旋回半径(旋回中心からバケット爪先位置までの距離)が小さくなるほど旋回操作量に対する旋回角速度の変化率が大きくなるように変換テーブルを補正する。これは、旋回半径が小さくなるほど旋回モーメントが小さくなり、旋回操作量の変化に対する旋回角速度の変化の度合いが大きくなるためである。乗算部71は、旋回角速度予測値(AngSpdSw)と旋回半径とを乗算し、乗算結果を旋回速度予測値(SpdSw)として出力する。
【0056】
図13は、バケット爪先位置予測演算部61の演算ブロック図である。
図13に示すように、バケット爪先位置予測演算部61は、アーム速度予測演算部80と、車体前後方向爪先速度演算部81と、バケット爪先速度ベクトル演算部82と、バケット爪先位置予測演算部83とを有する。
【0057】
アーム速度予測演算部80は、アーム操作量とアーム速度とを対応付けた変換テーブルを参照し、操作レバー15L,15Rのレバー操作量に含まれるアーム操作量に応じたアーム速度をアーム速度予測値(AngSpdAm)として車体前後方向爪先速度演算部81へ出力する。
【0058】
車体前後方向爪先速度演算部81は、バケット位置測定システム11からの姿勢情報に含まれるアーム角度(AngAm)とアーム6の回動支点からバケット爪先までの長さ(LAm+LBk)とアーム速度予測演算部80からのアーム速度予測値(ApgSpdAm)を基に、アーム動作に伴う車体前後方向のバケット爪先速度(XSpdAm)を算出し、バケット爪先速度ベクトル演算部82へ出力する。ここで、油圧ショベル200の座標系および幾何学演算に関わる情報を
図14に示す。
【0059】
図13に戻り、バケット爪先速度ベクトル演算部82は、車体前後方向爪先速度演算部81から出力される車体前後方向バケット爪先速度(XSpdAm)をバケット爪先速度ベクトルのX方向成分(XSpd)に設定し、旋回速度予測演算部60から出力される旋回速度予測値(SpdSw)をバケット爪先速度ベクトルのY方向成分(YSpd)に設定し、バケット爪先速度ベクトル(XSpd,YSpd)をバケット爪先位置予測演算部83へ出力する。
【0060】
バケット爪先位置予測演算部83は、バケット位置測定システム11からの姿勢情報に含まれるバケット爪先位置(X1,Y1)とバケット爪先速度ベクトル演算部82からのバケット爪先速度ベクトル(XSpd,YSpd)とを基に所定時間dT後のバケット爪先位置(X2,Y2)を算出し、バケット爪先予測位置(X2,Y2)として出力する。ここで、所定時間dTの例としては、コントローラ20の演算周期が挙げられる。なお、
図13に示す例では、車体前後方向爪先速度(XSpd)を算出する際にアーム操作量のみを考慮しているが、バケット操作量やブーム操作量も加味して算出しても良い。
【0061】
図15は、高さ変化予測演算部62の演算ブロック図である。
図15に示すように、高さ変化予測演算部62は、バケット位置測定システム11からのバケット爪先位置(X1,Y1)と施工図面とを照らし合わせて現在のバケット爪先位置(X1,Y1)における施工目標の高さZ1を算出すると共に、バケット爪先位置予測演算部61からのバケット爪先予測位置(X2,Y2)と施工図面とを照らし合わせてバケット爪先予測位置(X2,Y2)における施工目標の高さZ2を算出する。
【0062】
高さ変化予測演算部62は、高さZ1と高さZ2との偏差dZが0であれば「高さ変化なし」と判断し、偏差dZが0でなければ「高さ変化あり」と判断し、判断結果を高さ変化判断情報として出力する。ここで、高さ変化の判断方法はこれに限られず、ノイズの影響等を除くために、偏差dZが0よりわずかに大きく設定された上限閾値を超えた場合、または、偏差dZが0よりわずかに小さく設定された下限閾値を下回った場合に「高さ変化あり」と出力し、上限閾値以下でかつ下限閾値以上の場合に「高さ変化なし」と出力するように構成しても良い。
【0063】
図16は、作業内容推定演算部63の演算ブロック図である。
図16に示すように、作業内容推定演算部63は、旋回速度予測演算部60からの旋回速度予測値と高さ変化予測演算部62からの高さ変化判断情報とを基に作業内容を推定し、推定結果を作業内容情報として出力する。以下、作業内容の推定方法を具体的に説明する。
【0064】
旋回速度が大きい場合(旋回速度予測値(SpdSw)が所定の第1旋回速度閾値を超える場合)は、高さ変化の有無に関わらず、作業内容を位置合わせと推定する。旋回速度が中程度の場合(旋回速度予測値(SpdSw)が第1旋回速度閾値以下でかつ第1旋回速度閾値より小さい所定の第2旋回速度閾値を超える場合)は、高さ変化があるときに作業内容を位置合わせと推定し、高さ変化がないときに作業内容を掘削と推定する。旋回速度が小さい場合(旋回速度予測値(SpdSw)が第2旋回速度閾値以下の場合)は、高さ変化の有無に関わらず、作業内容を掘削と推定する。
【0065】
ここで、旋回速度が小さい場合に、高さ変化に応じて掘削か位置合わせかを推定する理由を述べる。操縦者がショベルを用いて施工を行う場合、掘削を行う際はバケットを設計面に対し一定距離の範囲(掘削精度を考慮した範囲)に維持し、単にバケットを移動させる場合はバケットを設計面から遠ざけるまたは近づけるような操作を行う。そのため、旋回速度が小さい場合は、高さ変化が無い場合に作業内容を掘削と推定し、高さ変化がある場合に作業内容を位置合わせと推定するのが操縦者の意図に沿っている。
【0066】
また、旋回速度が大きい場合に高さ変化に関わらず作業内容を位置合わせと推定し、旋回速度が中程度の場合は、高さ変化があるときに作業内容を位置合わせと推定し、高さ変化がないときに作業内容を掘削と推定する理由を述べる。旋回を行いながら施工を行う場合、設計面の形状によってはバケットと設計面の距離が大きく変わる場合がある。ここでの設計面の形状の例としては、
図14の下図に示すように、水平面(傾斜がない面)と法面(傾斜がついた面)の隣接部分の形状であり、バケットと設計面の距離が大きく変わる場合の例としては、ショベルが旋回を行うことでバケットが位置する設計面が水平面(高さ変化無し)から法面(高さ変化あり)に急に移行する場合である。そのため、操縦者は掘削を行う際は、旋回速度を落として高さ変化が小さくなるようにショベルを動作させる傾向がある。従って、高さ変化がない場合に作業内容を掘削と位置合わせとに分ける旋回速度の閾値(第1旋回速度閾値)は、高さ変化がある場合に作業内容を掘削と位置合わせとに分ける旋回速度の閾値(第2旋回速度閾値)よりも高く設定するのが操縦者の意図に沿っている。
【0067】
[第5の実施例の効果]
本実施例におけるコントローラ20(制御装置)は、操作レバー15L,15R(操作装置)の操作量を基にバケット7(作業具)の動作速度を算出し、バケット7の位置と前記動作速度とを基に所定時間後のバケット7の予測位置を算出し、バケット7の位置に対応する施工目標高さ高さとバケット7の予測位置に対応する施工目標高さとの差分である施工目標高さ変化を算出し、前記施工目標高さ変化が所定の高さ変化閾値以下の場合は、バケット7の旋回方向の速度が所定の第1旋回速度閾値以下のときに、作業内容を掘削と判断し、バケット7の旋回方向の速度が前記第1旋回速度閾値を超えたときに、作業内容を位置合わせと判断し、前記施工目標高さ変化が前記高さ変化閾値を超えた場合は、バケット7の旋回方向の速度が前記第1旋回速度閾値よりも小さい所定の第2旋回速度閾値以下のときに、作業内容を掘削と判断し、バケット7の旋回方向の速度が前記第2旋回速度閾値を超えたときに、作業内容を位置合わせと判断する。
【0068】
以上のように構成した本実施例においても、第4の実施例と同様の効果を達成すことができる。また、施工目標の高さ変化と旋回速度とを基に作業内容を判断することにより、操縦者の意図に即して作業内容を判断することが可能となる。
【0069】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成の一部を加えることも可能であり、ある実施例の構成の一部を削除し、あるいは、他の実施例の一部と置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0070】
1…下部走行体、2…上部旋回体、2a…旋回フレーム、3…カウンタウェイト、4…運転室、5…ブーム、5a…ブームシリンダ(アクチュエータ)、6…アーム、6a…アームシリンダ(アクチュエータ)、7…バケット(作業具)、7a…バケットシリンダ(アクチュエータ)、8…旋回装置、8a…旋回モータ(アクチュエータ)、9…ポンプ装置、10…コントロールバルブユニット、11…バケット位置測定システム(角度センサ)、15L…操作レバー(操作装置)、15R…操作レバー(操作装置)、16…エンジン(原動機)、17…アンテナ、18…回転数センサ、20…コントローラ(制御装置)、22…モニタ(表示装置)、23…油圧装置、30…操縦者指令処理部、31…目標設計面出力処理部、32…半自動制御処理部、33…車体振動判断処理部、34…作業内容判断処理部、40…設計面抽出演算部、41…目標設計面更新演算部、50…微分演算部、51…振動判断演算部、52…微分演算部、53…振動判断演算部、54…微分演算部、55…回転数変化判断演算部、60…旋回速度予測演算部、61…バケット爪先位置予測演算部、62…高さ変化予測演算部、63…作業内容推定演算部、70…旋回角速度予測演算部、71…乗算部、80…アーム速度予測演算部、81…車体前後方向爪先速度演算部、82…バケット爪先速度ベクトル演算部、83…バケット爪先位置予測演算部、200…油圧ショベル(作業機械)、210…作業装置、300…油圧制御システム。