IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本碍子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-セラミックサセプタ 図1
  • 特許-セラミックサセプタ 図2
  • 特許-セラミックサセプタ 図3
  • 特許-セラミックサセプタ 図4
  • 特許-セラミックサセプタ 図5
  • 特許-セラミックサセプタ 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】セラミックサセプタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240515BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240515BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240515BHJP
   C23C 14/50 20060101ALI20240515BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/31 C
H01L21/31 B
H01L21/302 101G
C23C14/50
C23C16/458
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023536448
(86)(22)【出願日】2023-01-16
(86)【国際出願番号】 JP2023001014
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100218800
【弁理士】
【氏名又は名称】河内 亮
(72)【発明者】
【氏名】天野 真悟
(72)【発明者】
【氏名】石川 征樹
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-021781(JP,A)
【文献】特開2003-163259(JP,A)
【文献】特開2020-202372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/31
H01L 21/3065
C23C 14/50
C23C 16/458
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハが載置されるための第一面と、前記第一面と対向する第二面とを有する、セラミックサセプタ本体と、
前記セラミックサセプタ本体に埋設される内部電極と、
一端が前記内部電極に接続し、かつ、他端が前記セラミックサセプタ本体の第二面に到達する端子と、
を備え、
前記内部電極が、前記第一面と平行に設けられる水平部と、前記水平部から前記第一面又は前記第二面に向かって延在する非水平部とを有し、前記水平部及び非水平部は、1枚の電極を折り曲げることにより一体形成されたものであり、それにより前記水平部及び前記非水平部の境界を成す折り曲げ部が存在する、セラミックサセプタ。
【請求項2】
前記内部電極が1枚の金属メッシュで構成される、請求項1に記載のセラミックサセプタ。
【請求項3】
前記折り曲げ部における前記水平部と前記非水平部の成す角度が50~130°である、請求項1に記載のセラミックサセプタ。
【請求項4】
前記非水平部の数が1~100である、請求項1又は2に記載のセラミックサセプタ。
【請求項5】
前記セラミックサセプタ本体が、窒化アルミニウム及び/又は酸化アルミニウムで構成される、請求項1又は2に記載のセラミックサセプタ。
【請求項6】
前記1枚の電極が、円板状の電極主要部と、前記電極主要部から延出する延出部とを有し、前記電極主要部が前記水平部を構成し、前記延出部が折り曲げられて前記非水平部を構成する、請求項1又は2に記載のセラミックサセプタ。
【請求項7】
前記1枚の電極が、円板状の電極主要部と、前記電極主要部から延出する延出部とを有し、
前記電極主要部における前記延出部の根本に対応する部分に、前記電極主要部の外周よりも内側で折り曲げ可能とするための1対の切り込みが形成されており、
前記1枚の電極が前記電極主要部の内側で前記1対の切り込みで区画された根元部を含む形で折り曲げられ、それにより前記延出部及び前記根元部が前記非水平部を構成し、かつ、前記電極主要部の前記根元部以外の残りの部分が前記水平部を構成する、請求項1又は2に記載のセラミックサセプタ。
【請求項8】
前記内部電極の非水平部が前記第一面に到達している、請求項1又は2に記載のセラミックサセプタ。
【請求項9】
前記内部電極が接地電極として機能する、請求項8に記載のセラミックサセプタ。
【請求項10】
前記セラミックサセプタが、イオン注入装置又は物理気相成長(PVD)装置に用いられるものである、請求項9に記載のセラミックサセプタ。
【請求項11】
前記セラミックサセプタ本体が、前記第一面を与える円板状の第一層と、前記第一層よりも大きい直径を有し、かつ、前記第二面を与える円板状の第二層とを備え、それにより、前記セラミックサセプタ本体の外周に沿って前記第二層が前記第一層の外周端よりも延出して外周ステップ部を成しており、
前記セラミックサセプタが、前記第二層の前記外周ステップ部に埋設され、かつ、前記内部電極に接続する第二の内部電極をさらに備える、請求項1又は2に記載のセラミックサセプタ。
【請求項12】
前記内部電極が、前記第一層内に埋設される前記水平部、並びに前記第一層及び前記第二層に埋設される前記非水平部を有し、
前記第二の内部電極が、前記第二層の前記外周ステップ部を含む外周部分に前記水平部と平行に埋設され、かつ、前記非水平部の下端に接続される、請求項11に記載のセラミックサセプタ。
【請求項13】
前記内部電極と前記第二の内部電極とが、別個の電極である、請求項11に記載のセラミックサセプタ。
【請求項14】
前記内部電極と前記第二の内部電極とが、1枚の電極を折り曲げることにより一体形成されたものである、請求項11に記載のセラミックサセプタ。
【請求項15】
前記セラミックサセプタが、プラズマを用いる成膜装置又はエッチング装置に用いられるものである、請求項11に記載のセラミックサセプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックサセプタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置用のセラミックサセプタとして、水平方向に広がる電極と縦方向に伸びた電極とが電気的に接続された構造の内部電極が埋設されたものが知られている。
【0003】
特許文献1(特開2003-163259号公報)には、セラミック製の本体部内に内部電極が埋設されたセラミック部品が開示されており、この内部電極は、本体部内の厚さ方向に互いに離間した第1の電極片及び第2の電極片がコイル状の導通部材を介して接続されたものである。
【0004】
特許文献2(特許第6754890号公報)には、円板状のセラミック基体の内部にRF電極とヒータ電極とが埋設されたウェハ支持台が開示されている。このRF電極は、同一平面上の複数のRFゾーン電極によって構成され、所定の円の内側に設けられた第1RFゾーン電極と、その円の外側に設けられた第2RFゾーン電極とで構成される。第2RFゾーン電極は、第2RFゾーン電極用導体にジャンパを介して接続され、第2RFゾーン電極の裏面の2点に内部端子の上端が接続される。ジャンパは、ウェハ載置面と平行な導電性で帯状のメッシュシートである。
【0005】
特許文献3(特開2020-202372号公報)には、セラミックシートの垂直方向の収縮率を補償することができる電気伝導性連結部材によって第1伝導性構造物及び第2伝導性構造物が電気的に連結された構造を含む、セラミック構造体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-163259号公報
【文献】特許第6754890号公報
【文献】特開2020-202372号公報
【発明の概要】
【0007】
特許文献1~3に開示されるような、セラミックサセプタに埋設される従来の内部電極は、水平方向に設けられる水平電極と縦方向に設けられる縦電極とが接続された構成を有する。しかし、これらの従来の内部電極は、水平電極及び縦電極を接合して構成されたものであるため、接続不具合による導通不良が起こるという問題があった。
【0008】
本発明者らは、今般、1枚の電極を折り曲げることにより一体形成された水平部及び非水平部を有する内部電極を採用することで、内部電極の接続不具合による導通不良が起こりにくいセラミックサセプタを提供できることを見出した。
【0009】
したがって、本発明の目的は、内部電極の接続不具合による導通不良が起こりにくいセラミックサセプタを提供することにある。
【0010】
本発明によれば、以下の態様が提供される。
[態様1]
ウェハが載置されるための第一面と、前記第一面と対向する第二面とを有する、セラミックサセプタ本体と、
前記セラミックサセプタ本体に埋設される内部電極と、
一端が前記内部電極に接続し、かつ、他端が前記セラミックサセプタ本体の第二面に到達する端子と、
を備え、
前記内部電極が、前記第一面と平行に設けられる水平部と、前記水平部から前記第一面又は前記第二面に向かって延在する非水平部とを有し、前記水平部及び非水平部は、1枚の電極を折り曲げることにより一体形成されたものであり、それにより前記水平部及び前記非水平部の境界を成す折り曲げ部が存在する、セラミックサセプタ。
[態様2]
前記内部電極が1枚の金属メッシュで構成される、態様1に記載のセラミックサセプタ。
[態様3]
前記折り曲げ部における前記水平部と前記非水平部の成す角度が50~130°である、態様1又は2に記載のセラミックサセプタ。
[態様4]
前記非水平部の数が1~100である、態様1~3のいずれか一つに記載のセラミックサセプタ。
[態様5]
前記セラミックサセプタ本体が、窒化アルミニウム及び/又は酸化アルミニウムで構成される、態様1~4のいずれか一つに記載のセラミックサセプタ。
[態様6]
前記1枚の電極が、円板状の電極主要部と、前記電極主要部から延出する延出部とを有し、前記電極主要部が前記水平部を構成し、前記延出部が折り曲げられて前記非水平部を構成する、態様1~5のいずれか一つに記載のセラミックサセプタ。
[態様7]
前記1枚の電極が、円板状の電極主要部と、前記電極主要部から延出する延出部とを有し、
前記電極主要部における前記延出部の根本に対応する部分に、前記電極主要部の外周よりも内側で折り曲げ可能とするための1対の切り込みが形成されており、
前記1枚の電極が前記電極主要部の内側で前記1対の切り込みで区画された根元部を含む形で折り曲げられ、それにより前記延出部及び前記根元部が前記非水平部を構成し、かつ、前記電極主要部の前記根元部以外の残りの部分が前記水平部を構成する、態様1~6のいずれか一つに記載のセラミックサセプタ。
[態様8]
前記内部電極の非水平部が前記第一面に到達している、態様1~7のいずれか一つに記載のセラミックサセプタ。
[態様9]
前記内部電極が接地電極として機能する、態様8に記載のセラミックサセプタ。
[態様10]
前記セラミックサセプタが、イオン注入装置又は物理気相成長(PVD)装置に用いられるものである、態様9に記載のセラミックサセプタ。
[態様11]
前記セラミックサセプタ本体が、前記第一面を与える円板状の第一層と、前記第一層よりも大きい直径を有し、かつ、前記第二面を与える円板状の第二層とを備え、それにより、前記セラミックサセプタ本体の外周に沿って前記第二層が前記第一層の外周端よりも延出して外周ステップ部を成しており、
前記セラミックサセプタが、前記第二層の前記外周ステップ部に埋設され、かつ、前記内部電極に接続する第二の内部電極をさらに備える、態様1~7のいずれか一つに記載のセラミックサセプタ。
[態様12]
前記内部電極が、前記第一層内に埋設される前記水平部、並びに前記第一層及び前記第二層に埋設される前記非水平部を有し、
前記第二の内部電極が、前記第二層の前記外周ステップ部を含む外周部分に前記水平部と平行に埋設され、かつ、前記非水平部の下端に接続される、態様11に記載のセラミックサセプタ。
[態様13]
前記内部電極と前記第二の内部電極とが、別個の電極である、態様11又は12に記載のセラミックサセプタ。
[態様14]
前記内部電極と前記第二の内部電極とが、1枚の電極を折り曲げることにより一体形成されたものである、態様11又は12に記載のセラミックサセプタ。
[態様15]
前記セラミックサセプタが、プラズマを用いる成膜装置又はエッチング装置に用いられるものである、態様11~14のいずれか一つに記載のセラミックサセプタ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明によるセラミックサセプタの一態様を示す模式断面図である。
図2図1に示されるセラミックサセプタを示す模式上面図である。
図3図1及び2に示されるセラミックサセプタに用いられる内部電極を1枚の電極から作製する手順を示す図である。
図4】金属メッシュを折り曲げることにより一体形成された水平部及び非水平部を有する内部電極の一例を示す写真である。
図5】1対の切り込みを有する1枚の電極から内部電極を作製する一例を示す図である。
図6】本発明によるセラミックサセプタの別態様を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明によるセラミックサセプタは、半導体製造装置内においてウェハWを支持するためのセラミック製の台である。例えば、本発明によるセラミックサセプタは、半導体成膜装置用のセラミックヒータであってもよいし、半導体エッチング装置用の静電チャックであってもよい。成膜装置の典型的な例としては、CVD(化学気相成長)装置(例えば、熱CVD装置、プラズマCVD装置、光CVD装置、及びMOCVD装置)並びにPVD(物理気相成長)装置が挙げられる。
【0013】
図1及び2にセラミックサセプタの一例を示す。図1及び2に示されるセラミックサセプタ10は、セラミックサセプタ本体12と、内部電極14と、端子16とを備える。セラミックサセプタ本体12は、ウェハWが載置されるための第一面12aと、第一面12aと対向する第二面12bとを有する。内部電極14は、セラミックサセプタ本体12に埋設される。端子16は、その一端が内部電極14に接続し、かつ、他端がセラミックサセプタ本体12の第二面12bに到達する。内部電極14は、第一面12aと平行に設けられる水平部14aと、水平部14aから第一面12a又は第二面12bに向かって延在する非水平部14bとを有する。水平部14a及び非水平部14bは、1枚の電極を折り曲げることにより一体形成されたものであり、それにより水平部14a及び非水平部14bの境界を成す折り曲げ部14cが存在する。このように、1枚の電極を折り曲げることにより一体形成された水平部14a及び非水平部14bを有する内部電極14を採用することで、内部電極14の接続不具合による導通不良が起こりにくいセラミックサセプタ10を提供することができる。
【0014】
前述のとおり、特許文献1~3に開示されるような従来のサセプタにおいては、内部電極が、水平電極及び縦電極を接合して構成されたものであるため、接続不具合による導通不良が起こるという問題があった。この問題が本発明のセラミックサセプタ10によれば解消される。すなわち、本発明で採用される内部電極14は、図3に例示されるように、1枚の電極13(特に延出部13b)を折り曲げることにより、水平部14a及び非水平部14bを有するように一体形成されたものであるため、水平部14a及び非水平部14bの境界である折り曲げ部14cが、別個の電極を接合して形成されたものではなく、本来的に1枚の電極13に由来するものとなる。そのため、従来の構成であれば接続不具合が起こりがちな角度を有する境界部(すなわち折り曲げ部14c)で堅牢な構造が確保される結果、接続不具合が起こりにくくなる。
【0015】
セラミックサセプタ本体12は、セラミックサセプタ10における内部電極14及び端子16が埋設されるための母材を構成するセラミックプレートであり、公知のセラミックサセプタで採用されるセラミックプレートと同様の構成でありうる。セラミックサセプタ本体12は、優れた熱伝導性、高い電気絶縁性、及びシリコンに近い熱膨張特性等の観点から、窒化アルミニウム及び/又は酸化アルミニウムで構成されるのが好ましい。
【0016】
セラミックサセプタ本体12の好ましい形状は円板状である。もっとも、円板状のセラミックサセプタ本体12の平面視形状は、完全な円形である必要はなく、例えば、オリフラ(olientation flat)のように一部を欠いた不完全な円形であってもよい。セラミックサセプタ本体12のサイズは、使用が想定されるウェハWの直径に応じて適宜決定すればよく特に限定されないが、円形の場合、直径は典型的には150~450mmであり、例えば300mm程度である。
【0017】
内部電極14は、前述のとおり、水平部14a及び非水平部14bを有する。水平部14a及び非水平部14bは、図3に示されるように、1枚の電極13(特に延出部13b)を折り曲げることにより一体形成されたものであり、それにより水平部14a及び非水平部14bの境界を成す折り曲げ部14cが存在する。好ましくは、1枚の電極13は、円板状の電極主要部13aと、電極主要部13aから延出する延出部13bとを有し、電極主要部13aが水平部14aを構成し、延出部13bが折り曲げられて非水平部14bを構成する。
【0018】
内部電極14は、折り曲げ可能な導電部材であれば特に限定されないが、熱膨張率が窒化アルミニウムや酸化アルミニウムと近いモリブデン、タングステン等の金属で構成されるのが好ましい。特に好ましくは、内部電極14は、図4に例示されるような1枚の金属メッシュで構成される。金属メッシュには、内部電極14が埋設された成形体を焼成してセラミックサセプタ本体12を作製する際に、焼成に伴う収縮に対して金属メッシュが圧縮変形して追随できるとの利点がある。そのため、焼成時の収縮を緩和して、折り曲げ部14cにおける接続不具合の発生をより効果的に防止することができる。
【0019】
金属メッシュは、複数の金属線が互いに交わるように張り巡らされた網目構造を有するものであれば特に限定されない。金属メッシュを構成する金属線の直径(線径)は、特に限定されないが、0.20~0.50mmが好ましく、より好ましくは0.25~0.45mm、さらに好ましくは0.30~0.40mmである。金属メッシュの目開き(網目の隙間部分の寸法)は、特に限定されないが、0.50~0.90mmが好ましく、より好ましくは0.60~0.80mm、さらに好ましくは0.65~0.75mmである。
【0020】
水平部14aは、セラミックサセプタ本体12内に第一面12aと平行に設けられる。もっとも、水平部14aは、第一面12aと完全に平行である必要はなく、内部電極14としての機能を損ねない程度に概ね水平方向に設けられていればよい。
【0021】
非水平部14bは水平部14aから第一面12a又は第二面12bに向かって延在する。すなわち、図1に示されるように非水平部14bは水平部14aから第一面12aに向かって延在していてもよい。あるいは、後述する図6に示されるように、非水平部14bは水平部14aから第二面12bに向かって延在するものであってもよい。
【0022】
折り曲げ部14cにおける水平部14aと非水平部14bの成す角度は、50~130°であるのが好ましく、より好ましくは60~120°、さらに好ましくは70~110°特に好ましくは80~100°、最も好ましくは85~95°、例えば90°である。すなわち、非水平部14bはいわゆる縦電極であるのが最も好ましい。上記範囲内の角度であると、折り曲げによる電極13の損傷が起こりにくく、折り曲げ部14cにおける導通不具合が生じにくい。
【0023】
非水平部14bの数は1~100であるのが好ましく、より好ましくは2~40、さらに好ましくは2~20、特に好ましくは2~10、最も好ましくは2~6、例えば4である。
【0024】
前述のとおり、折り曲げ前の1枚の電極13は、円板状の電極主要部13aと、電極主要部13aから延出する延出部13bとを有しうる。この場合、図5に示されるように、電極主要部13aにおける延出部13bの根本に対応する部分に、電極主要部13aの外周よりも内側で折り曲げ可能とするための1対の切り込み13cが形成されているのが好ましい。この構成において、1枚の電極13が電極主要部13aの内側で1対の切り込み13cで区画された根元部13dを含む形で折り曲げられ、それにより延出部13b及び根元部13dが非水平部14bを構成し、かつ、電極主要部13aの根元部13d以外の残りの部分が水平部14aを構成するのが好ましい。かかる構成によれば、電極主要部13aないし水平部14aの外周又はそれよりも外側で折り曲げる場合と比べて、折り曲げ部14cの安定性を向上することができる。
【0025】
図1に示されるセラミックサセプタ10においては、内部電極14の非水平部14bが第一面12aに到達している。この場合、第一面12aに非水平部14bの端部が露出するため、第一面12aに載置されたウェハWに非水平部14bが接触し、その結果、内部電極14及び端子16を介してウェハWの接地ないし除電を行うことが可能となる。換言すれば、内部電極14を接地電極として機能させることができる。具体的には、端子16の一端が内部電極14(典型的には水平部14a)に接続し、かつ、端子16の他端がセラミックサセプタ本体12の第二面12bに到達するようにすることで、端子16を介して内部電極14が接地可能となる。このような除電可能な構成のセラミックサセプタ10は、イオン注入装置又は物理気相成長(PVD)装置に好ましく用いることができる。もっとも、用途によっては、後述する図6に示されるセラミックサセプタ10’のように、内部電極14の非水平部14bが(第一面12aではなく)第二面12bに向かって(第二面12bに到達することなくその手前まで)延在している構成であってもよい。
【0026】
セラミックサセプタ本体12の外周端部は、図1に示されるようなフラットな形状であってもよいが、図6に示されるようにステップ状になっていてもよい。図6に示されるセラミックサセプタ10’において、セラミックサセプタ本体12’は、第一面12aを与える円板状の第一層12cと、第一層12cよりも大きい直径を有し、かつ、第二面12bを与える円板状の第二層12dとを備え、それにより、セラミックサセプタ本体12’の外周に沿って第二層12dが第一層12cの外周端よりも延出して外周ステップ部12eを成している。この場合、セラミックサセプタ10’が、第二層12dの外周ステップ部12eに埋設され、かつ、内部電極14に接続する第二の内部電極15をさらに備えるのが好ましい。例えば、内部電極14が、第一層12c内に埋設される水平部14a、並びに第一層12c及び第二層12dに埋設される非水平部14bを有する一方、第二の内部電極15が、第二層12dの外周ステップ部12eを含む外周部分に水平部14aと平行に埋設され、かつ、非水平部14bの下端に接続される。かかる構成によれば、プラズマを用いる成膜装置やエッチング装置向けのサセプタにおいて、ウェハWの外周部分まで高周波電圧をかけてプラズマの均一性を改善することができる。換言すれば、内部電極14をプラズマ発生のためのRF電極として機能させることができる。したがって、このような外周ステップ部12eに第二の内部電極15を備えた構成のセラミックサセプタ10は、プラズマを用いる成膜装置又はエッチング装置に好ましく用いることができる。内部電極14と第二の内部電極15とは、別個の電極であってもよいし、1枚の電極を折り曲げることにより一体形成されたものであってもよい。いずれにしても、第二の内部電極15は、ウェハWの外周部におけるプラズマの均一性を改善する観点から、平面視した場合に、円板状の電極主要部13aを外周に沿って取り囲むようなリング状に構成されるのが好ましい。
【0027】
端子16は、前述したとおり、その一端が内部電極14に接続し、かつ、他端がセラミックサセプタ本体12の第二面12bに到達する。典型的には、端子16は第二面12bから延出している。端子16は、導電部材であれば特に限定されず、モリブデン、ニッケル等の金属で構成されうるが、熱膨張率の観点からモリブデンで構成されるのが好ましい。
【0028】
セラミックサセプタ本体12には、上述した内部電極14や第二の内部電極15の他、他の電極が埋設されてもよい。そのような他の電極の例としては、ヒータ電極、ESC電極(静電電極)が挙げられる。
【要約】
内部電極の接続不具合による導通不良が起こりにくいセラミックサセプタが提供される。このセラミックサセプタは、ウェハが載置されるための第一面と、第一面と対向する第二面とを有する、セラミックサセプタ本体と、セラミックサセプタ本体に埋設される内部電極と、一端が内部電極に接続し、かつ、他端がセラミックサセプタ本体の第二面に到達する端子とを備える。内部電極は、第一面と平行に設けられる水平部と、水平部から第一面又は第二面に向かって延在する非水平部とを有する。水平部及び非水平部は、1枚の電極を折り曲げることにより一体形成されたものであり、それにより水平部及び非水平部の境界を成す折り曲げ部が存在する。

図1
図2
図3
図4
図5
図6