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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20240516BHJP
   H01G 11/12 20130101ALI20240516BHJP
   H01G 11/80 20130101ALI20240516BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240516BHJP
   H01M 50/131 20210101ALI20240516BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20240516BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01G11/12
H01G11/80
H01M10/48 Z
H01M50/131
H01M50/184 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020187854
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022077153
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】岡本 夕紀
(72)【発明者】
【氏名】大森 修
(72)【発明者】
【氏名】水野 佳世
(72)【発明者】
【氏名】高橋 睦
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 加内江
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-153535(JP,A)
【文献】特開2020-21551(JP,A)
【文献】特開2011-192540(JP,A)
【文献】特開2020-57543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00 -10/39
H01M 50/10 -50/198
H01M 10/48
H01G 11/00 -11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って積層された複数の蓄電セルを含む積層体と、
前記積層体を封止するためのシール部材と、
を備え、
前記積層体は、前記第1方向に沿って延在する外側面である複数の積層体側面を含み、
前記シール部材は、前記複数の積層体側面に接触して設けられており、
前記蓄電セルは、
前記第1方向に交差する第1面を含む第1電極板と、前記第1面に設けられた第1活物質層とを含む第1電極と、
前記第1方向に交差する第2面を含む第2電極板と、前記第2面に設けられ、前記第1活物質層と異なる極性の第2活物質層とを含み、前記第2活物質層が前記第1活物質層に対向するように前記第1電極に積層された第2電極と、
前記第1方向から見て前記第1活物質層及び前記第2活物質層を囲うように前記第1電極板と前記第2電極板との間に設けられたスペーサと、
を含み、
前記シール部材のうち、少なくとも1つの前記積層体側面に設けられた部分は、前記スペーサよりも小さい弾性率を有する低弾性率部である、
蓄電モジュール。
【請求項2】
前記第1電極板は、前記第1面の反対側の第3面を含み、
前記第2電極板は、前記第2面の反対側の第4面を含み、
前記積層体は、一の前記蓄電セルの前記第1電極板の前記第3面と、別の前記蓄電セルの前記第2電極板の前記第4面と、が重ね合されるように、複数の前記蓄電セルを積層することにより構成されている、
請求項1記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
互いに隣り合う前記第3面と前記第4面との間に介在され、前記第1電極板及び前記第2電極板の少なくとも一方に接続されることにより、前記蓄電セルの状態を検出するための検出線をさらに備え、
前記検出線は、前記シール部材から外部に突出しており、
前記シール部材のうち、少なくとも前記検出線が突出している前記積層体側面に設けられた部分は、前記低弾性率部である、
請求項2記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記シール部材のうち、前記検出線が突出している前記積層体側面に設けられた部分は、別の前記積層体側面に設けられた部分よりも小さい弾性率を有する、
請求項3記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
前記第1方向における前記積層体の一端及び他端のそれぞれに設けられた一対の集電体をさらに備え、
前記シール部材には、前記積層体側面に交差する第2方向から見て前記第1方向と交差する方向に延在する溝部が形成されている、
請求項1~4のいずれか一項記載の蓄電モジュール。
【請求項6】
前記第2方向から見て、前記溝部は、前記第1方向に対して斜めに延在している、
請求項5記載の蓄電モジュール。
【請求項7】
前記スペーサは、前記第1電極板と前記第2電極板との間の空間に臨む内側面と、前記内側面の反対側の外側面と、を含み、
前記積層体側面に交差する方向における前記シール部材の厚さは、前記スペーサの前記内側面と前記外側面との間の厚さよりも薄い、
請求項1~6のいずれか一項に記載の蓄電モジュール。
【請求項8】
前記シール部材の融点は、前記スペーサの融点よりも低い、
請求項1~7のいずれか一項に記載の蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電モジュールとして、特許文献1に記載のバイポーラ電池ユニットに用いられる蓄電モジュールがある。特許文献1に記載のバイポーラ電池ユニットは、第一集電体と、第二集電体と、第一集電体と第二集電体の間かつ辺縁に設けられた内部封止層と、前述の内部封止層として形成した樹脂層の外部に設けられた外部封止層と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-175778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の蓄電モジュールでは、第一集電体、負極層、絶縁層、正極層、及び、第二集電体がこの順に積層されると共に、内部封止層等の封止層により封止されて蓄電セルが構成されていると捉えられる。例えば、このような蓄電セル内でガスが発生した場合、当該ガスに起因して蓄電セルに膨張が生じる場合がある。蓄電セルに膨張が生じた場合、第1集電体及び第2集電体と封止層との接合部分に剥離が生じ、蓄電セルのシール性が損なわれる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、シール性を向上させることができる蓄電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る蓄電モジュールは、第1方向に沿って積層された複数の蓄電セルを含む積層体と、積層体を封止するためのシール部材と、を備え、積層体は、第1方向に沿って延在する外側面である複数の積層体側面を含み、シール部材は、複数の積層体側面に接触して設けられており、蓄電セルは、第1方向に交差する第1面を含む第1電極板と、第1面に設けられた第1活物質層とを含む第1電極と、第1方向に交差する第2面を含む第2電極板と、第2面に設けられ、第1活物質層と異なる極性の第2活物質層とを含み、第2活物質層が第1活物質層に対向するように第1電極に積層された第2電極と、第1方向から見て第1活物質層及び第2活物質層を囲うように第1電極板と第2電極板との間に設けられたスペーサと、を含み、シール部材のうち、少なくとも1つの積層体側面に設けられた部分は、スペーサよりも小さい弾性率を有する低弾性率部である。
【0007】
この蓄電モジュールでは、積層体は、第1方向に沿って積層された複数の蓄電セルを含む。蓄電セルは、それぞれ、互いに積層された第1電極及び第2電極と、それらの間に設けられたスペーサとを含む。一方、積層体における第1方向に沿って延在する複数の積層体側面には、積層体を封止するためのシール部材が設けられている。そして、当該シール部材のうち、少なくとも1つの積層体側面に設けられた部分は、蓄電セルを構成するスペーサよりも小さい弾性率を有する低弾性率部である。このような構成によれば、何らかの要因によって膨張やズレ等の変形が蓄電セルに生じたときに、相対的に変形しやすいシール部材が、シール性を確保しつつ当該変形に追従して十分に変形可能である。したがって、この蓄電モジュールによれば、シール性を向上させることができる。
【0008】
本発明に係る蓄電モジュールでは、第1電極板は、第1面の反対側の第3面を含み、第2電極板は、第2面の反対側の第4面を含み、積層体は、一の蓄電セルの第1電極板の第3面と、別の蓄電セルの第2電極板の第4面と、が重ね合わされるように、複数の蓄電セルを積層することにより構成されていてもよい。この場合、互いに隣り合う蓄電セルの間に、電極板同士が重ね合された部分が発生する。したがって、蓄電セル同士の積層ずれのおそれがあることから、相対的に変形しやすいシール部材によるシール性の確保がより有効となる。
【0009】
本発明に係る蓄電モジュールは、互いに隣り合う第3面と第4面との間に介在され、第1電極板及び第2電極板の少なくとも一方に接続されることにより、蓄電セルの状態を検出するための検出線をさらに備え、検出線は、シール部材から外部に突出しており、シール部材のうち、少なくとも検出線が突出している積層体側面に設けられた部分は、低弾性率部であってもよい。この場合、積層体側面から突出している検出線の根元を、シール部材のうちの比較的柔らかい部分で支持することができる。これにより、検出線の振動をシール部材で吸収して検出線の断線を抑制することができる。
【0010】
本発明に係る蓄電モジュールでは、シール部材のうち、検出線が突出している積層体側面に設けられた部分は、別の積層体側面に設けられた部分よりも小さい弾性率を有してもよい。この場合、シール部材のうち、検出線が突出している積層体側面以外の積層体側面に設けられた部分が相対的に高弾性率となる。このため、蓄電モジュールの全体の剛性を確保したまま、検出線の断線を抑制することができる。
【0011】
本発明に係る蓄電モジュールは、第1方向における積層体の一端及び他端のそれぞれに設けられた一対の集電体をさらに備え、シール部材には、積層体側面に交差する第2方向から見て第1方向と交差する方向に延在する溝部が形成されていてもよい。この場合、溝部によって、集電体間における積層体側面の沿面距離が延長される。この結果、例えば、シール部材が全体的に平坦な場合と比較して、シール部材の表面に結露等により生じた水が積層体側面の途中で途切れやすくなる。この結果、集電体間の短絡が抑制される。
【0012】
本発明に係る蓄電モジュールでは、第2方向から見て、溝部は、第1方向に対して斜めに延在していてもよい。これにより、シール部材の表面に結露等により生じた水を所望の方向に誘導することができる。
【0013】
本発明に係る蓄電モジュールでは、スペーサは、第1電極板と第2電極板との間の空間に臨む内側面と、内側面の反対側の外側面と、を含み、積層体側面に交差する方向におけるシール部材の厚さは、スペーサの内側面と外側面との間の厚さよりも薄くてもよい。この場合、蓄電モジュールの大型化及びコスト増を抑制しつつ、シール性を確保することができる。
【0014】
本発明に係る蓄電モジュールでは、シール部材の融点は、スペーサの融点よりも低くてもよい。この場合、シール部材を溶着や流し込み等で形成する場合に、スペーサに与える熱影響を低減し、シール性の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シール性を向上させることができる蓄電モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、一実施形態に係る蓄電装置を示す概略的な断面図である。
図2図2は、図1に示された蓄電装置の模式的な平面図である。
図3図3は、図1に示された蓄電装置の一部の側面図である。
図4図4は、図1に示された蓄電装置の一部を拡大して示す断面図である。
図5図5(a)及び(b)は、変形例に係る溝部を示す側面図である。
図6図6(a)及び(b)は、変形例に係る溝部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して蓄電モジュールの一実施形態について説明する。なお、図面の説明においては、同一の要素同士、或いは、相当する要素同士には、互いに同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。また、各図には、X軸、Y軸、及び、Z軸からなる直交座標系を示す場合がある。
【0018】
図1は、一実施形態に係る蓄電装置を示す概略的な断面図である。図1に示される蓄電装置1(蓄電モジュール)は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリに用いられる蓄電モジュールである。蓄電装置1は、例えばニッケル水素二次電池又はリチウムイオン二次電池等の二次電池である。蓄電装置1は、電気二重層キャパシタであってもよいし、全固体電池であってもよい。本実施形態では、蓄電装置1がリチウムイオン二次電池である場合を例示する。
【0019】
蓄電装置1は、複数の蓄電セル2が積層方向(第1方向)にスタック(積層)された積層体5を含む。ここでは、蓄電セル2の積層方向をZ軸方向とする。各蓄電セル2は、正極(第1電極)11と、負極(第2電極)12と、セパレータ13と、スペーサ14とを備える。正極11は、第1電極板20と、第1電極板20の一方面(第1面)20aに設けられた正極活物質層(第1活物質層)22とを備える。正極11は、例えば矩形状の電極である。
【0020】
負極12は、第2電極板21と、第2電極板21の一方面(第2面)21aに設けられた負極活物質層(第1活物質層と異なる極性の第2活物質層)23とを備える。負極12は、例えば矩形状の電極である。一つの蓄電セル2において、負極12は、負極活物質層23が正極活物質層22と対向するように正極11に積層されている。本実施形態では、正極11及び負極12の積層方向は、蓄電セル2の積層方向と一致している(Z軸方向である)。以下、蓄電セル2の積層方向と正極11及び負極12の積層方向を単に「積層方向」と称する場合がある。本実施形態では、正極活物質層22及び負極活物質層23は、いずれも矩形状に形成されている。負極活物質層23は、正極活物質層22よりも一回り大きく形成されており、平面視において(積層方向からみたとき)、正極活物質層22の形成領域の全体が負極活物質層23の形成領域内に位置している。
【0021】
第1電極板20は、一方面20aとは反対側の面である他方面(第3面)20bを有する。他方面20bには、正極活物質層22が形成されていない。第2電極板21は、一方面21aとは反対側の面である他方面(第4面)21bを有する。他方面21bには、負極活物質層23が形成されていない。積層体5は、一の蓄電セル2の第1電極板20の他方面20bと、一の蓄電セル2と積層方向に隣り合った別の蓄電セル2の第2電極板21の他方面21bとが互いに重ね合わされるように、複数の蓄電セル2を積層することにより構成されている。
【0022】
これにより、積層体5において、複数の蓄電セル2が電気的に直列に接続される。積層体5では、積層方向に隣り合う蓄電セル2により、互いに接する第1電極板20及び第2電極板21を電極体とする疑似的なバイポーラ電極10が形成される。すなわち、1つのバイポーラ電極10は、第1電極板20、第2電極板21、正極活物質層22及び負極活物質層23を含む。積層方向の一端には、終端電極として第1電極板20(正極11)が配置される。積層方向の他端には、終端電極として第2電極板21(負極12)が配置される。なお、ここでは、一方面20a,21a及び他方面20b,21bに沿う方向をX軸方向及びY軸方向とする。なお、バイポーラ電極10は、1つの電極板の両面に正極活物質層22及び負極活物質層23が設けられることで形成されてもよい。この場合、隣り合うバイポーラ電極10の電極板の間にそれぞれ蓄電セル2が構成される。
【0023】
第1電極板20及び第2電極板21のそれぞれ(以下、単に「電極板」という場合がある)は、リチウムイオン二次電池の放電又は充電の間、正極活物質層22及び負極活物質層23に電流を流し続けるための化学的に不活性な電気伝導体である。電極板を構成する材料としては、例えば、金属材料、導電性樹脂材料、導電性無機材料等を用いることができる。導電性樹脂材料としては、例えば、導電性高分子材料又は非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂等が挙げられる。電極板は、前述した金属材料又は導電性樹脂材料を含む1以上の層を含む複数層を備えてもよい。電極板の表面は、公知の保護層により被覆されてもよい。電極板の表面は、メッキ処理等の公知の方法により処理されてもよい。
【0024】
電極板は、例えば箔、シート、フィルム、線、棒、メッシュ又はクラッド材等の形態を有してもよい。電極板は、アルミニウム箔、銅箔以外に、例えば、ニッケル箔、チタン箔又はステンレス鋼箔等の金属箔であってもよい。機械的強度を確保する観点から、電極板は、ステンレス鋼箔(例えばJIS G 4305:2015にて規定されるSUS304、SUS316、SUS301、SUS304等)であってもよい。電極板は、上記金属の合金箔であってもよい。第1電極板20は、アルミニウム膜によって被覆された基材を含む箔であってもよい。本実施形態において、第1電極板20はアルミニウム箔であり、第2電極板21は銅箔である。第2電極板21は、銅膜によって被覆された基材を含む箔であってもよい。箔状の電極板の場合、電極板の厚みは1μm~100μmの範囲内であってもよい。
【0025】
正極活物質層22は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出し得る正極活物質を含む。正極活物質としては、層状岩塩構造を有するリチウム複合金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物、ポリアニオン系化合物など、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用可能なものを採用すればよい。また、2種以上の正極活物質を併用してもよい。本実施形態において、正極活物質層22は複合酸化物としてのオリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO)を含む。
【0026】
負極活物質層23は、リチウムイオンなどの電荷担体を吸蔵及び放出可能である単体、合金又は化合物であれば特に限定はなく使用可能である。例えば、負極活物質としてLiや、炭素、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素もしくはその化合物等が挙げられる。炭素としては天然黒鉛、人造黒鉛、あるいはハードカーボン(難黒鉛化性炭素)やソフトカーボン(易黒鉛化性炭素)を挙げることができる。人造黒鉛としては、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ等が挙げられる。リチウムと合金化可能な元素の例としては、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。本実施形態において、負極活物質層23は炭素系材料としての黒鉛を含む。
【0027】
正極活物質層22及び負極活物質層23のそれぞれ(以下、単に「活物質層」という場合がある)は、必要に応じて電気伝導性を高めるための導電助剤、結着剤、電解質(ポリマーマトリクス、イオン伝導性ポリマー、電解液等)、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩(リチウム塩)等をさらに含み得る。活物質層に含まれる成分又は当該成分の配合比及び活物質層の厚さは特に限定されず、リチウムイオン二次電池についての従来公知の知見が適宜参照され得る。活物質層の厚みは、例えば2~150μmである。電極板の表面に活物質層を形成させるには、ロールコート法等の従来から公知の方法を用いてもよい。正極11又は負極12の熱安定性を向上させるために、電極板の表面(片面又は両面)又は活物質層の表面に耐熱層を設けてもよい。耐熱層は、例えば、無機粒子と結着剤とを含み、その他に増粘剤等の添加剤を含んでもよい。
【0028】
導電助剤は、正極11又は負極12の導電性を高めるために添加される。そのため、導電助剤は、正極11又は負極12の導電性が不足する場合に任意に加えられてもよく、正極11又は負極12の導電性が十分に優れている場合には加えられなくてもよい。導電助剤は、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等である。
【0029】
結着剤は、活物質又は導電助剤を電極板の表面に繋ぎ止める役割を果たす。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、アクリル酸やメタクリル酸などのモノマー単位を含むアクリル系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、水溶性セルロースエステル架橋体、デンプン-アクリル酸グラフト重合体を例示することができる。これらの結着剤は、単独で又は複数で用いられ得る。溶媒には、例えば、水、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等が用いられる。
【0030】
セパレータ13は、正極11と負極12とを隔離し、両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオン等の電荷担体を通過させる。一つの蓄電セル2において、セパレータ13は、正極11と負極12との間に配置されている。セパレータ13は、蓄電セル2をスタックした際に隣り合うバイポーラ電極10,10間の短絡を防止する。
【0031】
セパレータ13は、例えば、電解質を吸収保持するポリマーを含む多孔性シート又は不織布である。セパレータ13を構成する材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)からなる多孔質フィルムが用いられる。セパレータ13を構成する材料は、ポリプロピレン或いはメチルセルロース等からなる織布又は不織布等であってもよい。セパレータ13は、単層構造又は多層構造を有してもよい。多層構造は、例えば、耐熱層としてのセラミック層等を有してもよい。セパレータ13には、電解質が含浸されてもよい。セパレータ13自体を全固体電解質(高分子固体電解質、無機固体型電解質)等の電解質で構成してもよい。
【0032】
セパレータ13に含浸される電解質としては、具体的には、従来公知の材料として、液体電解質(電解液)、高分子ゲル電解質を用いることができる。電解液は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質とを含む。高分子ゲル電解質は、ポリマーマトリックス中に保持された電解質を含む。
【0033】
電解液は、非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質とを含んでいる。非水溶媒としては、環状カーボネート類、環状エステル類、鎖状カーボネート類、鎖状エステル類、エーテル類等の公知の溶媒を使用できる。また、これらの材料を単独、または二種以上組合せて用いてもよい。電解質としては、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(FSO、LiN(CFSO等の公知のリチウム塩を使用できる。
【0034】
スペーサ14は、少なくとも、第1電極板20と第2電極板21との間に形成され、第1電極板20及び第2電極板21の少なくとも一方(例えば第1電極板20及び第2電極板21の両方、又は第1電極板20及び第2電極板21のいずれか一方のみ)に接合又は固定される。スペーサ14は、絶縁材料を含み、第1電極板20と第2電極板21との間を絶縁することによって短絡を防止する。本実施形態において、スペーサ14は、絶縁材料として樹脂であるポリエチレン(PE)を含む。スペーサ14を構成する樹脂材料としては、ポリエチレン(PE)の他に、ポリスチレン、ABS樹脂、変性ポリプロピレン(変性PP)、及びアクリロニトリルスチレン(AS)樹脂が挙げられる。
【0035】
本実施形態において、スペーサ14は、第1電極板20の縁部20e又は第2電極板21の縁部21eに沿って延在している。スペーサ14は、積層方向からみて正極活物質層22又は負極活物質層23を取り囲む枠である。
【0036】
本実施形態において、スペーサ14は、第1電極板20と第2電極板21との間の空間Sを封止する枠状の封止部としても機能する。本実施形態では、各蓄電セル2に配置されるスペーサ14は、一対の電極板間に配置される部分と電極板の縁部よりも外側に延びる部分とを有している。スペーサ14、第1電極板20、及び第2電極板21によって囲まれた空間Sには、セパレータ13に含浸される電解質(電解液)が収容されている。本実施形態においては、スペーサ14は、平面視において矩形の枠状をなしており、第1電極板20の縁部20e及び第2電極板21の縁部21eに溶着されている。
【0037】
スペーサ14は、正極11及び負極12との間の空間Sを封止することで、電解質の漏れを防止し得る。また、スペーサ14は、正極11及び負極12との間の空間Sを封止することで、蓄電装置1の外部から空間S内への水分の侵入を防止し得る。さらに、スペーサ14は、例えば充放電反応等により正極11又は負極12から発生したガスが蓄電装置1の外部に漏れることを防止し得る。なお、セパレータ13は、縁部13eにおいてスペーサ14に埋設されている。ここでは、積層方向に沿って互いに隣り合うスペーサ14同士は、互いに離間している。したがって、積層方向に交差する第2方向(例えばX軸方向又はY軸方向)からみたとき、互いに隣り合うスペーサ14の間に第1電極板20及び第2電極板21の側端面が露出されている。
【0038】
蓄電装置1は、積層方向における積層体5の一端及び他端のそれぞれに設けられた正負一対の集電体をさらに含む。より具体的には、積層体5の一端には、積層方向から見て矩形状の正極集電体30が設けられている。また、積層体5の他端には、積層方向から見て矩形状の負極集電体40が設けられている。正極集電体30の一方面30aは、終端電極として配置された第1電極板20の他方面20bに接している。負極集電体40の一方面40aは、終端電極として配置された第2電極板21の他方面21bに接している。
【0039】
正極集電体30及び負極集電体40のそれぞれ(以下、単に「集電体」という場合がある)は、良導電性材料によって構成されている。集電体の構成材料としては、例えば電極板の構成材料と同じ材料が用いられる。集電体の厚さは、積層体5に用いられた電極板の厚さより大きくてもよい。ここでは、集電体は、積層方向からみて積層体5(蓄電セル2)よりも大きく構成されており、スペーサ14の外側面14bよりも外側に突出している。なお、スペーサ14の外側面14bは、スペーサ14における空間Sに臨む内側面14aの反対側の面である。ただし、集電体は、積層方向からみて積層体5(蓄電セル2)よりも小さく構成されていてもよい(同程度に構成されてもよい)。この場合、積層方向からみて、集電体の外縁は、スペーサ14の外側面14bよりも内側に位置していてもよい。
【0040】
以上の集電体は、一例として、端子を設けることで、当該端子を通じて蓄電装置1の充放電を行うために用いられ得る。或いは、集電体は、集電体を介して複数の蓄電装置1を積層することにより、複数の蓄電装置1を電気的に接続するために用いられ得る。なお、集電体は、積層体5(蓄電セル2)を冷却するための冷却機能を有することができる。その場合、集電体は、例えば面内方向に延在する流路を備えており、当該流路内に冷却媒体を流すことにより積層体5との間で熱交換を行ってもよい。
【0041】
積層体5の一端に配置された第1電極板20と正極集電体30との間、又は積層体5の他端に配置された第2電極板21と負極集電体40との間には、両部材間の導電接触を良好にする目的で、導電層(不図示)が更に配置されていてもよい。この場合、導電層は、電極板の他方面20b,21bに密着していてもよい。導電層は、例えば電極板の硬度よりも低い硬度を有している。導電層は、アセチレンブラック又はグラファイト等のカーボンを含む層であってもよく、Auを含むメッキ層であってもよい。
【0042】
図2は、図1に示された蓄電装置の模式的な平面図である。図2では、積層体5の一端及び他端に設けられた集電体が省略されている。図1,2に示されるように、積層体5は、積層方向に沿って延在する外側面(積層体側面)Pを有している。ここでは、積層方向からみて積層体5が四角形状であることから、積層体5は、当該四角形の4辺のそれぞれに相当する4つの外側面(積層体側面)P1,P2,P3,P4を有することとなる。外側面Pは、積層方向に沿って配列された複数のスペーサ14の外側面14bと、互いに隣り合うスペーサ14の間に露出された電極板の側端面と、によって構成されている。蓄電装置1は、外側面Pに設けられたシール部材50をさらに備える。
【0043】
シール部材50は、積層体5を封止するための絶縁性の部材である。シール部材50は、全ての外側面P1~P4にわたって一体的に設けられている。シール部材50は、外側面P、すなわち、スペーサ14の外側面14bと、互いに隣り合うスペーサ14の間に露出する電極板の側端面と、に設けられている(接触されている)。すなわち、シール部材50は、互いに隣り合うスペーサ14の間に入り込むことにより、互いに隣り合う蓄電セル2間における第1電極板20及び第2電極板21の側端面(界面)を封止する。また、シール部材50は、積層方向について、正極集電体30から負極集電体40にわたって延在している。なお、ここでは、スペーサ14の外側面14bは、電極板の側端面よりも外側に位置している。この場合には、シール部材50は、スペーサ14の外側面14bのみに接触していてもよい。
【0044】
そして、シール部材50は、積層体5の一端では正極集電体30の一方面30aに接触されると共に、積層体5の他端では負極集電体40の一方面40aに接触されている。これにより、シール部材50は、蓄電セル2のそれぞれを含む積層体5の全体を取り囲んで封止している。なお、ここでは、シール部材50は、外側面P1に設けられた部分51、外側面P2に設けられた部分52、外側面P3に設けられた部分53、及び、外側面P4に設けられた部分54からなる。
【0045】
以上のシール部材50の材料は、例えば、シリコンゴム、ポリオレフィン、又はウレタンゴム等を用いることができる。特に、シール部材50の材料は、少なくとも部分51~54のうちの1つの部分の弾性率が、スペーサ14の弾性率よりも小さくなるように選択され得る。換言すれば、シール部材50は、少なくとも、複数の外側面P1~P4のうちの少なくとも1つに設けられた部分が、スペーサ14よりも小さい弾性率を有する低弾性率部Lとされている。ここでは、一例として、シール部材50の全ての部分51~54が一様の弾性率を有しており、低弾性率部Lとされている。また、シール部材50の低弾性率部Lの弾性率は、10MPa以上600MPa以下程度であり、スペーサ14の弾性率は100MPa以上2000MPa以下程度である。
【0046】
このようなシール部材50は、例えば、複数の蓄電セル2を積層して積層体5を構成すると共に、積層体5の両端に集電体を配置した後に、積層体5の外側面Pに対して未硬化の上記材料を塗布して硬化させることにより形成され得る。シール部材50が溶融した状態の材料をスペーサ14に塗布することで形成される場合、シール部材50を形成する際にスペーサ14に与える熱影響を低減する目的から、シール部材50を構成する材料を、スペーサ14を構成する材料の融点よりも低い融点の材料とすることができる。
【0047】
図3は、図1に示された蓄電装置の一部の側面図である。図1,3に示されるように、シール部材50の外側面50sには、複数の溝部60が設けられている。シール部材50の外側面50sは、シール部材50におけるスペーサ14の外側面14bに臨む(接触する)面と反対側の面である。複数の溝部60は、積層方向に交差する方向(第2方向)からみたとき、互いに平行に、且つ、積層方向に直交する方向に沿って延在している。溝部60は、一例として、シール部材50の全ての部分51~54に設けられている。なお、ここでは、各溝部60は、シール部材50の厚さ(外側面Pに交差する方向の寸法)が積層方向に沿って漸増する部分と、シール部材50の厚さが最も厚くなる最厚部60aと、シール部材50の厚さが積層方向に沿って漸減する部分と、シール部材50の厚さが最も薄くなる最薄部60bと、が交互に配列されることにより構成されている。
【0048】
したがって、ここでは、シール部材50は、積層方向に沿って厚さが一定となる平坦部分を含まないが、平坦部分を含んでもよい。例えば、シール部材50の厚さが全体的に積層方向に沿って漸増又は漸減することなく、段差状に(段階的に)シール部材50の厚さが変化してもよい。なお、溝部60が設けられず、シール部材50の全体の厚さが一定であってもよい。また、ここでは、シール部材50は、相対的に厚い部分において、正極集電体30の一方面30a及び負極集電体40の一方面40aに接触されている。具体的には、シール部材50と、一方面30a又は一方面40aとが接触する部分が最厚部60aとなるように溝部60が形成され得る。さらに、ここでは、シール部材50の相対的に厚い部分が、互いに隣り合うスペーサ14の間に露出する電極板の側端面上に配置されている。具体的には、最厚部60aと、互いに隣り合う蓄電セル2間における第1電極板20及び第2電極板21の界面とが一致するように溝部60が形成され得る。すなわち、本実施形態では溝部60は、蓄電セル2の積層数と同じ本数だけ設けられる。なお、溝部60の本数は任意である。溝部60の本数と蓄電セル2との積層数が異なる場合には、最薄部60bと、互いに隣り合う蓄電セル2間における第1電極板20及び第2電極板21の界面とが一致しないように溝部60が設けられることが好ましい。
【0049】
本実施形態では、シール部材50の厚さは、最厚部60aにおいて、スペーサ14の内側面14aと外側面14bとの間の厚さよりも薄くなっている。シール部材50の厚さは、一例として、最も薄い部分において1mm程度とすることができる。
【0050】
図4は、図1に示された蓄電装置の一部を拡大して示す断面図である。図2,4に示されるように、蓄電装置1は、蓄電セル2のそれぞれに対し、電圧検出線55が設けられている。ここでは、電圧検出線55は、蓄電セル2の状態として蓄電セル2のそれぞれの電圧を検出するために用いられる。電圧検出線55は、シール部材50の外側から隣り合う2つの蓄電セル2のスペーサ14の間を通り、積層体5の内側に至るように設けられている。
【0051】
より具体的には、電圧検出線55は、一端部55aと一端部55aの反対側の他端部55bとを含む。電圧検出線55の一端部55aは、積層体5の内部に配置され、他端部55bはシール部材50の外部に配置されている。シール部材50の外部とは、積層方向からみてシール部材50の外周面よりも外側(積層体5の反対側)である。したがって、電圧検出線55は、一端部55aと他端部55bとの間において、積層方向からみたときにスペーサ14及びシール部材50に重なる部分を含む。電圧検出線55のそれぞれは、シール部材50の外側面50sから突出している。
【0052】
電圧検出線55の一端部55aは、互いに隣り合う蓄電セル2のうちの一方の蓄電セル2の(第1電極板20の)他方面20bと、他方の蓄電セル2の(第2電極板21の)他方面21bとの間に介在され、それらの他方面20b,他方面21bに接触している。これにより、電圧検出線55は、互いに隣り合う蓄電セル2のうちの一方の蓄電セル2の第1電極板20及び他方の蓄電セル2の第2電極板21に電気的に接続されている。なお、一端部55aは、積層方向からみて正極活物質層22及び負極活物質層23が対向する領域に至らないよう、第1電極板20及び第2電極板21の活物質層が設けられていない領域にのみ介在する。
【0053】
本実施形態では、電圧検出線55のシール部材50からの引出部分は、シール部材50のうちの一部に集約されている。一例として、ここでは、全ての電圧検出線55が、シール部材50のうちの外側面P1に設けられた部分51から外部に引き出されている。上述したように、ここでは、シール部材50の全ての部分51~54が低弾性率部Lとされている。したがって、シール部材50のうち、電圧検出線55が突出している外側面P1に設けられた部分51は、低弾性率部Lとなる。なお、シール部材50における電圧検出線55の引出部分は、隣り合う電圧検出線55同士の接触を避けるために、積層方向に交差する方向に沿って互いにオフセットされている(すなわち、積層方向からみて重複が避けられている)。また、電圧検出線55は、シール部材50の相対的に厚い部分(最厚部60a)から引き出されている。
【0054】
以上説明したように、蓄電装置1では、積層体5は、積層方向に沿って積層された複数の蓄電セル2を含む。蓄電セル2は、それぞれ、互いに積層された正極11及び負極12と、それらの間に設けられたスペーサ14とを含む。一方、積層体5における積層方向に沿って延在する複数の外側面Pには、積層体5を封止するためのシール部材50が設けられている。そして、全ての外側面Pに設けられたシール部材50は、蓄電セル2を構成するスペーサ14よりも小さい弾性率を有する低弾性率部Lである。このような構成によれば、何らかの要因によって膨張やズレ等の変形が蓄電セル2に生じたときに、相対的に変形しやすいシール部材50が、シール性を確保しつつ当該変形に追従して十分に変形可能である。したがって、この蓄電装置1によれば、シール性を向上させることができる。
【0055】
なお、蓄電装置1では、第1電極板20は、一方面20aの反対側の他方面20bを含み、第2電極板21は、一方面21aの反対側の他方面21bを含み、積層体5は、一の蓄電セル2の第1電極板20の他方面20bと、別の蓄電セル2の第2電極板21の他方面21bと、が重ね合わされるように、複数の蓄電セル2を積層することにより構成されている。このため、互いに隣り合う蓄電セル2の間に、電極板同士が重ね合された部分が発生する。したがって、蓄電セル2同士の積層ずれのおそれがあることから、相対的に変形しやすいシール部材50によるシール性の確保がより有効となる。
【0056】
なお、蓄電装置1は、互いに隣り合う他方面20bと他方面21bとの間に介在され、第1電極板20及び第2電極板21の少なくとも一方に接続されることにより、蓄電セル2の状態を検出するための電圧検出線55をさらに備え、電圧検出線55は、シール部材50から外部に突出しており、シール部材50のうち、少なくとも電圧検出線55が突出している外側面Pに設けられた部分は、低弾性率部Lである。このため、外側面Pから突出している電圧検出線55の根元を、シール部材50のうちの比較的柔らかい部分で支持することができる。これにより、電圧検出線55の振動をシール部材50で吸収して電圧検出線55の断線を抑制することができる。
【0057】
なお、蓄電装置1は、積層方向における積層体5の一端及び他端のそれぞれに設けられた正極集電体30及び負極集電体40をさらに備え、シール部材50には、外側面Pに交差する方向から見て積層方向と交差する方向に延在する溝部60が形成されている。この場合、溝部60によって、正極集電体30及び負極集電体40の間における外側面Pの沿面距離が延長される。このため、例えば、シール部材50が全体的に平坦な場合と比較して、シール部材50の表面に結露等により生じた水が外側面Pの途中で途切れやすくなる。この結果、正極集電体30及び負極集電体40の間の短絡が抑制される。
【0058】
なお、上述したように、積層方向から見たとき、集電体が積層体5(蓄電セル2)よりも小さく構成される結果、集電体の外縁がスペーサ14の外側面14bよりも内側に位置する場合、集電体の外縁がスペーサ14の外側面14bよりも外側に位置する場合と比較して、集電体間の短絡が生じにくい。しかし、このような場合でも、シール部材50の外側面50sに上述した溝部60が設けられていることにより、正極集電体30及び負極集電体40の間における外側面Pの沿面距離が延長される結果、より確実に正極集電体30及び負極集電体40の間の短絡を抑制できる。
【0059】
また、蓄電装置1では、スペーサ14は、第1電極板20と第2電極板21との間の空間Sに臨む内側面14aと、内側面14aの反対側の外側面14bと、を含み、外側面Pに交差する方向におけるシール部材50の厚さは、スペーサ14の内側面14aと外側面14bとの間の厚さよりも薄い。このため、蓄電装置1の大型化を抑制しつつ、シール性を確保することができる。
【0060】
なお、蓄電装置1では、シール部材50の融点は、スペーサ14の融点よりも低い。このため、シール部材50を溶着や流し込み等で形成する場合に、スペーサ14に与える熱影響を低減し、シール性の低下を抑制できる。
【0061】
以上の実施形態は、本発明の一側面を説明したものである。したがって、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、任意に変形され得る。
【0062】
上記実施形態では、溝部60は、積層方向に交差する方向(第2方向)から見て、積層方向に直交する方向に延在しているが、溝部60が延在する方向については、様々なものを採用することができる。図5は、変形例に係る溝部を示す側面図である。例えば図5(a),(b)に示されるように、溝部60は、積層方向に交差する方向(第2方向)からみて、互いに平行であり、且つ、積層方向に対して斜めに延在していてもよい。溝部60の傾斜角度は、例えば溝部60をつたって移動する水分を誘導するための任意の角度に設定され得るが、図示の例では、45度程度である。ここでは、シール部材50の少なくとも1つの部分(部分51~54)内では、全ての溝部60が同一方向に延在している。
【0063】
一方、例えば図5(b)に示されるように、シール部材50の少なくとも1つの部分(部分51~54)内において、互いに傾斜角度が異なる複数のグループの溝部60A,60Bが形成されていてもよい。ここでは、積層方向に交差する方向(第2方向)からみたとき、シール部材50の少なくとも1つの部分内に、積層方向に沿って配列された複数の溝部60Aであって、積層方向に対して一方向に傾斜する複数の溝部60Aを含む第1のグループと、積層方向に沿って配列された複数の溝部60Bであって、積層方向に対して別方向に傾斜する複数の溝部60Bの第2のグループと、が形成されている。図示の例では、溝部60Bの傾斜角度は、溝部60Aの傾斜角度に直交するように設けられている。この場合、これらのグループの境界に向けて水分を誘導することが可能となる。このような溝部60,60A,60Bが形成されていることにより、シール部材50の外側面50sに結露等により生じた水を所望の方向に誘導することができる。
【0064】
図5(a)及び(b)に示される変形例では、上記実施形態と同様に、複数の溝部60がそれぞれ平行に形成されている。溝部60が積層方向に対して傾いている角度の大きさは、本発明の効果を奏する限りにおいて、適宜変更することができる。本変形例に係る蓄電装置1では、このような溝部60が形成されていることにより、シール部材50の表面に結露等により生じた水を所望の方向に誘導することができる。これにより、例えば水はけのよい排水口等に向けて結露水を誘導することにより、シール部材50の外側面50sの水切れがよくなる。したがって、上記構成によれば、正極集電体30及び負極集電体40の間の短絡がより確実に抑制される。
【0065】
また、上記実施形態では、溝部60は、シール部材50の厚さが積層方向に沿って漸増する部分と漸減する部分とが交互に配列されることにより構成されていた。しかし、溝部60の構成はこれに限定されない。例えば、図6の(a)に示されるように、溝部60は、シール部材50の厚さが積層方向に沿って漸増する部分と不連続に減少する部分とが交互に配列されることで構成されてもよい。或いは、図6の(b)に示されるように、溝部60は、シール部材50の厚さが漸増する部分と漸減する部分とが交互に配列され、且つ、それらの接続部分が滑らかに形成されて(面取りされて)構成されてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、シール部材50の全ての部分51~54が、一様の弾性率とされ、スペーサ14の弾性率よりも低い弾性率を有する低弾性率部Lとされていた。しかし、シール部材50の部分51~54のうち、少なくとも1つが低弾性率部Lであればよく、他の部分はスペーサ14の弾性率と例えば同等の弾性率を有していてもよい。一例として、電圧検出線55の保護の観点からは、シール部材50の部分51~54のうち、電圧検出線55が突出している外側面P1に設けられた部分51が少なくとも低弾性率部Lであればよい。さらに、シール部材50の全ての部分51~54の間で弾性率に分布を形成することもできる。この場合も、シール部材50のうち、電圧検出線55が突出している外側面P1に設けられた部分51が、別の外側面P2~P4に設けられた部分52~54よりも小さい弾性率を有していればよい。この場合、シール部材50のうち、電圧検出線55が突出している外側面P1以外の外側面P2~P4に設けられた部分52~54が、部分51に対して相対的に高弾性率となる。このため、全体の剛性を確保したまま電圧検出線55の断線を抑制することができる。なお、この場合には、シール部材50の全ての部分51~54が低弾性率部Lであってもよいし、一部が低弾性率部Lでなくてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1…蓄電装置(蓄電モジュール)、2…蓄電セル、5…積層体、11…正極(第1電極)、12…負極(第2電極)、14…スペーサ、14a…内側面、14b…外側面、20…第1電極板、20a…一方面(第1面)、20b…他方面(第3面)、21…第2電極板、21a…一方面(第2面)、21b…他方面(第4面)、22…正極活物質層(第1活物質層)、23…負極活物質層(第2活物質層)、30…正極集電体(集電体)、40…負極集電体(集電体)、50…シール部材、55…電圧検出線(検出線)、60…溝部、L…低弾性率部、P…外側面(積層体側面)、S…空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6